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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20230324BHJP
   F21V 7/04 20060101ALI20230324BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20230324BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20230324BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20230324BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20230324BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230324BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230324BHJP
【FI】
F21S2/00 310
F21V7/04 300
F21V7/00 320
F21V9/30
F21V3/00 320
F21V8/00 250
F21V8/00 281
G02B5/20
F21Y115:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019064331
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166967
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高平 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】北岡 信一
(72)【発明者】
【氏名】芝田 悠大
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0054646(US,A1)
【文献】特開2013-092752(JP,A)
【文献】特開2005-300823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/04
F21V 7/00
F21V 9/30
F21V 3/00
F21V 8/00
G02B 5/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を導光する光ファイバと、
前記光ファイバに導光された前記レーザ光を伝送する伝送路を有し、前記伝送路を内包したカレイドスコープと、
前記伝送路から出射された前記レーザ光によって波長変換光を発する波長変換素子とを備え、
前記カレイドスコープは、前記光ファイバと前記波長変換素子との間に配置され、
前記レーザ光が伝送する方向と直交する平面で前記伝送路を切断した場合の前記伝送路の断面は、多角形状であり、
前記カレイドスコープは、前記光ファイバに導光された前記レーザ光が入射する前記カレイドスコープの一端の開口と、前記光ファイバに導光された前記レーザ光が出射する前記カレイドスコープの他端の開口とを有し、
前記波長変換素子は、前記カレイドスコープの他端の開口を覆うように配置されている
照明装置。
【請求項2】
さらに、前記光ファイバと前記カレイドスコープとの間に配置され、前記光ファイバによって導光された前記レーザ光を拡散及び透過させる拡散板を備え、
前記カレイドスコープには、前記拡散板を拡散及び透過した前記レーザ光が入射する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散板と前記カレイドスコープとの間の距離は、前記拡散板を拡散及び透過した前記レーザ光が前記カレイドスコープに入射する入射面積の平方根以下である
請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記カレイドスコープは、ライトパイプである
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光ファイバは、導光された前記レーザ光を出射する出射面を有し、
前記出射面には、前記レーザ光を拡散及び透過させる粗面が形成されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記出射面側の端部は、前記伝送路内に配置されている
請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記伝送路の断面は、十角形よりも角数の少ない多角形状である
請求項1~6のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、照明装置の一例として開示されている、レーザ光源から出射されたレーザ光を導光させる光ファイバと、光ファイバを導光したレーザ光の波長を変換する波長変換部材とを備える発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/043122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術の光ファイバでは、コア断面形状が円形の場合出射する光を均一にすることは困難である。これは、光ファイバを通過する際にレーザ光が十分にミキシングされていないことが原因であると考えられるが、ミキシングするために光ファイバの断面形状を加工するには、製造コストが高騰化するため、照明用では使用し難くなる。
【0005】
そこで、製造コストの高騰化を抑制するとともに、色度を安定化させることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る照明装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を導光する光ファイバと、前記光ファイバに導光された前記レーザ光を伝送する伝送路を有し、前記伝送路を内包するカレイドスコープと、前記伝送路から出射された前記レーザ光によって波長変換光を発する波長変換素子とを備え、前記カレイドスコープは、前記光ファイバと前記波長変換素子との間に配置され、前記レーザ光が伝送する方向と直交する平面で前記伝送路を切断した場合の前記伝送路の断面は、多角形状であり、前記カレイドスコープは、前記光ファイバに導光された前記レーザ光が入射する前記カレイドスコープの一端の開口と、前記光ファイバに導光された前記レーザ光が出射する前記カレイドスコープの他端の開口とを有し、前記波長変換素子は、前記カレイドスコープの他端の開口を覆うように配置されている
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る照明装置は、製造コストの高騰化を抑制するとともに、色度を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る照明装置の斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る照明装置において、励起光源を例示した模式図であり、図1のII-II線における灯具等を例示した断面図である。
図3A図3Aは、実施の形態に係る照明装置の光ファイバ、フェルール、拡散板、カレイドスコープ、及び、波長変換素子等を例示する部分拡大断面図である。
図3B図3Bは、その他変形例に係る照明装置の光ファイバ、フェルール、カレイドスコープ、及び、波長変換素子等を例示する部分拡大断面図である。
図3C図3Cは、その他変形例に係る照明装置の光ファイバ、カレイドスコープ、及び、波長変換素子等を例示する部分拡大断面図である。
図3D図3Dは、その他変形例に係る照明装置の光ファイバ、カレイドスコープ、及び、波長変換素子等を例示する部分拡大断面図である。
図3E図3Eは、その他変形例に係る照明装置の複数の光ファイバ、カレイドスコープ、及び、波長変換素子等を例示する部分拡大断面図である。
図3F図3Fは、その他変形例に係る照明装置の複数の光ファイバから出射されたレーザ光の各々の輝度分布を示す図と、複数の光ファイバから出射されたレーザ光がカレイドスコープを伝送した後の輝度分布を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る照明装置が出射した光の色度座標上の光色を示す図と、比較例に係る照明装置が出射した光の色度座標上の光色を示す図である。
図5A図5Aは、実施の形態に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する図である。
図5B図5Bは、実施の形態に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する、図5Aとは別の図である。
図6図6は、実施の形態に係る照明装置のカレイドスコープの長さと、色度変化量との関係を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る照明装置のカレイドスコープから出射した光が照射面に照射されたときの放射輝度分布を例示する図と、カレイドスコープの断面の形状と光の均斉度との関係を例示する図である。
図8A図8Aは、比較例に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する図である。
図8B図8Bは、比較例に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する、図8Aとは別の図である。
図9A図9Aは、図8Aの輝度分布を例示するために用いられた比較例に係るレーザ光源を例示した模式図である。
図9B図9Bは、図8Bの輝度分布を例示するために用いられた比較例に係るレーザ光源を例示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ、ステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されてはいない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0011】
また、以下の実施の形態において、略平行等の表現を用いている。例えば、略直交は、完全に直交であることを意味するだけでなく、実質的に直交である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略直交は、本開示による効果を奏し得る範囲において直交という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0012】
以下の実施の形態に係る照明装置について説明する。
【0013】
(実施の形態)
[構成]
[照明装置1]
図1は、実施の形態に係る照明装置1の斜視図である。図2は、実施の形態に係る照明装置1において、励起光源3を例示した模式図であり、図1のII-II線における灯具5等を例示した断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、照明装置1は、レーザ光を用いた反射型の照明装置であり、励起光源3と、複数の光ファイバ11と、フェルール12と、拡散板20と、カレイドスコープ30と、灯具5とを備える。照明装置1は、例えば、ダウンライト、スポットライト等に用いられる。ここで、レーザ光を用いた反射型の照明装置1とは、レーザ光が、蛍光部40の後面(カレイドスコープ30側の面)に照射され、波長を変換された波長変換光(蛍光)が、蛍光部40の前面から送出される装置である。
【0015】
[励起光源3]
励起光源3は、1以上のレーザ素子を備え、レーザ光を出射する装置である。本実施の形態では、励起光源3は、2以上のレーザ素子を備える。励起光源3は、例えば図2に示すように、収容体81と、レーザ光源83と、複数のプリズム85と、複数のレンズ87と、フェルール88と、ヒートシンク89と、駆動回路91とを有する。
【0016】
<収容体81>
収容体81は、図1に示す励起光源3の筐体部分である。収容体81は、図2に示すように、複数のレーザ光源83と、プリズム85と、レンズ87と、フェルール88と、ヒートシンク89と、駆動回路91とを収容している。
【0017】
<レーザ光源83>
複数のレーザ光源83それぞれは、半導体発光素子レンズが含まれており、略コリメートされたレーザ光を出射する。複数のレーザ光源83は、基板に実装されており、基板を介してヒートシンク89に熱的に接続されている。図2に示す例では、複数のレーザ光源83のうち一部のレーザ光源83を一組としている。一組のレーザ光源83は、プリズム85にレーザ光を入射することで、光ファイバ11の一端面である入射面にレーザ光を入射させる。なお、本実施の形態では、複数のレーザ光源83を用いているが、1つのレーザ光源83を用いるだけでもよい。本実施の形態では、レーザ光源83が出射するレーザ光は、紫色から青色までの波長帯域のうちの所定の波長の光である。
【0018】
また、本実施の形態では、一組のレーザ光源83を用いているが、複数組のレーザ光源83を用いてもよい。この場合、プリズム85、レンズ87、及び、フェルール88は、一組のレーザ光源83と一対一で対応する数だけ設けられる。
【0019】
レーザ光源83は、半導体レーザによって構成されており、例えばInGaN系レーザダイオードで構成されているが、レーザ光源83は、出射する光が蛍光部40の波長変換素子41を励起できるのであれば、他の波長の半導体レーザ又はLED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0020】
なお、レーザ光源83が出射するレーザ光の出力は、駆動回路91によって制御される。また、レーザ光源83に、蛍光部40の波長変換素子41を励起しない波長帯域のレーザ光を出射するレーザがはいっていてもよい。
【0021】
<プリズム85>
プリズム85は、透光性の板状の部材である。プリズム85は、一組のレーザ光源83から出射されたレーザ光をレンズ87に入射させる。
【0022】
プリズム85は、レーザ光源83が出射するレーザ光の光軸と直交するように配置、つまり一組のレーザ光源83と対向するように配置されている。
【0023】
このように、プリズム85は、一組のレーザ光源83が出射するレーザ光をレンズ87に導くライトガイドの機能を有する。なお、本構成は、2組のミラーで置き換える事も可能である。
【0024】
<レンズ87>
レンズ87は、プリズム85と一対一で対向するように配置されている。レンズ87は、プリズム85から出射されたレーザ光を集光して、光ファイバ11の一端面に入射させる。なお、図2に示す例では、レンズ87は、凸レンズであるが、レーザ光を集光して、光ファイバ11の一端面に入射させる事ができる光学デバイスであれば良く、例えば凹面鏡であってもよい。
【0025】
<フェルール88>
フェルール88は、収容体81に固定され、対応する光ファイバ11の一端を保持している。つまり、フェルール88は、レンズ87から出射されたレーザ光を光ファイバ11に入射させるように、光ファイバ11の一端を保持している。
【0026】
<ヒートシンク89>
ヒートシンク89は、複数のレーザ光源83に生じた熱を放熱するための放熱部材であり、複数のフィンを有する。また、ヒートシンク89は、レーザ光源83を実装した基板を固定している。
【0027】
<駆動回路91>
駆動回路91は、電力線等によって電力系統と電気的に接続され、電力を各々のレーザ光源83に供給する。また、駆動回路91は、各々のレーザ光源83が所定のレーザ光を発するように、各々のレーザ光源83の出力を駆動制御する。
【0028】
駆動回路91は、各々のレーザ光源83が発するレーザ光を調光する機能を有してもよい。また、駆動回路91は、パルス信号に基づいて、レーザ光源83を駆動する発振器等で構成されていてもよい。
【0029】
次に、光ファイバ11、カレイドスコープ30等の構成について、図3Aを用いて説明する。図3Aは、実施の形態に係る照明装置1の光ファイバ11、フェルール12、拡散板20、カレイドスコープ30、及び、蛍光部40等を例示する部分拡大断面図である。
【0030】
[光ファイバ11]
図2及び図3Aに示すように、光ファイバ11は、例えば高屈折率のコアをコアより低屈折率のクラッド層が包んだ二重構造で構成される伝送体であり、例えば、石英ガラス、プラスチック等の材料で構成されている。光ファイバ11は、レーザ光源83が出射するレーザ光を伝送させる。本実施の形態では、光ファイバ11は、2以上あり、2以上のレーザ光源83のうち対応するレーザ素子が出射するレーザ光を伝送させる。図2に示す例では、光ファイバ11は、4つからなる。光ファイバ11の一端には、励起光源3の発するレーザ光が入射され、光ファイバ11の他端から励起光源3の発したレーザ光が他端から出射される。
【0031】
なお、光ファイバ11の一端は、レーザ光が伝送する光路の上流であり、他端はレーザ光が伝送する光路の下流であるとする。
【0032】
図3Aに示すように、光ファイバ11は、導光されたレーザ光が出射する出射面11aを有する。出射面11aは、光ファイバ11の他端である。出射面11aは、フェルール12を介して拡散板20と対向している。出射面11aは略鏡面つまり略平坦な面である。出射面11aの粗面は、例えば研磨により形成してもよく、光ファイバ11をクリーブすることで形成してもよい。なお、出射面11aには、粗面が形成されていてもよい。また、端面での光ロスを低減するための構造が形成されていてもよい。光ロスを低減するための構造として、例えば、誘電体膜によるARコート及びインプリント加工等があげられる。なお、誘電体膜は、レーザ耐性の観点より、無機膜である事が好ましい。
【0033】
[フェルール12]
フェルール12は、光ファイバ11の他端を保持している。具体的には、フェルール12は、光ファイバ11の出射面11aから出射されたレーザ光を、拡散板20を介してカレイドスコープ30に入射させるように、光ファイバ11の他端を保持している。ここでいう、フェルール12の光軸は、主たる光の出射方向と一致する直線であり、中心軸Oとおおよそ一致している。
【0034】
[拡散板20]
拡散板20は、中心軸O上、かつ、光ファイバ11とカレイドスコープ30との間に配置され、光ファイバ11によって導光されたレーザ光を拡散及び透過させる板状の光学部材である。拡散板20は、レーザ光が入射する入射面と、入射面と反対側の面であり、拡散及び透過したレーザ光を出射する出射面とを有する。
【0035】
拡散板20の入射面は、光ファイバ11の先端に設けられるフェルール12と対向し、かつ、フェルール12の光軸と略直交する。拡散板20の出射面は、カレイドスコープ30と対向し、かつ、フェルール12の光軸と略直交する。
【0036】
また、拡散板20とカレイドスコープ30との間の距離Dは、拡散板20を拡散及び透過したレーザ光がカレイドスコープ30に入射する入射面積Eの平方根以下である。より具体的には、拡散板20の出射面とカレイドスコープ30の一端の開口32との距離は、拡散板20を拡散及び透過したレーザ光がカレイドスコープ30に入射する一端の開口32の面積の平方根以下である。入射面積Eは、一端の開口32の開口面積であり、伝送路31の断面積である。
【0037】
また、拡散板20は、出射面を入射面よりも粗面にすることで、透過するレーザ光を拡散している。なお、出射面を入射面よりも粗面にしてもよく、出射面及び入射面の両方を粗面にしてもよい。
【0038】
拡散板20は、レーザ耐性の観点から、無機材料、特に無機ガラスが好ましい。但し、アクリル、ポリカーボネート等の透光性樹脂材料等の使用を否定するものではない。拡散板20は、レーザ耐性の観点から、ガラス表面に拡散加工を施すことによって拡散性を有するように構成されている。例えば、シボ加工又はレーザ加工等の表面処理を施すことによって透明パネルの表面に微小凹凸(シボ、マイクロプリズム等)を形成したり、透明パネルの表面にドットパターンを印刷やエッチングしたりすることによって、光拡散性を有するように構成してもよい。なお、光ロスを低減する目的で、拡散板20の入射面及び出射面にARコートを施すことが好ましい。なお、ARコートは、レーザ耐性の観点より、無機膜であることが好ましい。又、透過率の観点より、多層膜であることが好ましいが、安価である単層膜としてもよい。
【0039】
拡散板20は、光拡散材(光散乱材)がガラス内部に分散された乳白色の拡散板であってもよい。このような拡散板20は、例えば、気泡をガラス内部に分散させることによって作製することができるが、後方散乱による光ロスを生じやすくなるため、光拡散材(例えば気泡)のサイズを適切に設計する必要がある。
【0040】
また、拡散板20は、透明パネルの表面(内面又は外面)に光拡散材等を含む乳白色の光拡散膜を形成することによって構成されていてもよいが、レーザ耐性を考慮し、材料を選択する必要がある。
【0041】
[カレイドスコープ30]
本実施の形態のカレイドスコープ30は、レーザ波長を高効率で反射するよう誘電体多層膜が内面にコートされた、ガラスを基材とするライトパイプである。断面が4角形の場合、ガラス板4枚を張り合わせて製造する。
【0042】
レーザ波長を高効率で反射するようなコートがされた面が内側にある、金属で形成されたライトパイプでもよい。例えば、折り曲げ加工して製造可能である。後述するガラスロッドタイプに対しライトパイプタイプは、側面を直接保持する事ができ、扱いが容易である。また、カレイドスコープ30は、多角形形状をコアとした大口径ガラスファイバ、キャプラリ形状のものでもよい。
【0043】
また、ガラス等の透光性の部材で構成されるガラスロッドであってもよい。なお、カレイドスコープ30がガラスロッドの場合は、伝送路31とカレイドスコープの外形は略一致する。
【0044】
カレイドスコープ30の中心軸は、上述の中心軸Oと略一致し、かつ、フェルール12の光軸と略一致する。カレイドスコープ30の中心軸Oは、カレイドスコープ30の一端における開口32の開口面と直交し、かつ開口面の中心を通過する直線である。
【0045】
また、カレイドスコープ30は、光ファイバ11に導光されたレーザ光を伝送する伝送路31を有する。カレイドスコープ30は、伝送路31を通過したレーザ光を出射する。カレイドスコープ30では、レーザ光が伝送する方向と直交する平面で伝送路を切断した場合の、伝送路31の断面が多角形状である。カレイドスコープ30の伝送路31が多角形状であれば、導光するレーザ光がカレイドスコープ30の内部で、幾度も反射を繰り返しながら導光するため、内部を導光するレーザ光は、ミキシングされ易くなる。このように、カレイドスコープ30は、光ファイバ11を導光したレーザ光をミキシングしながら伝送させる。つまり、カレイドスコープ30に1以上の光ファイバ11を導光したレーザ光が入射しても、カレイドスコープ30は、光ファイバ11により導光された各々のレーザ光をミキシングし、ミキシングしたレーザ光を出射する。
【0046】
ここで、伝送路31の断面が多角形状とは、正多角形を含むだけでなく、実質的に多角形状と見なせるものを含む。つまり、多角形を形成する複数の面の一部又は全ての面が平面だけでなく、湾曲していてもよく、波面状になっていてもよい。なお、伝送路31の断面には、少なくとも直線の一辺を有していてもよく、残りの辺が円弧状であってもよい。
【0047】
本実施の形態のカレイドスコープ30の構成について説明する。
【0048】
カレイドスコープ30は、鏡面で囲まれたレーザ光が通過する伝送路31を有する。また、カレイドスコープ30には、一端の開口32と、他端の開口33とが形成されている。カレイドスコープ30は、板バネなどで灯具5に固定される。
【0049】
伝送路31は、一端の開口32から他端の開口33までのカレイドスコープ30における空間であり、レーザ光が通過する。つまり、伝送路31では、一端の開口32から他端の開口33にかけてレーザ光が通過する。また、伝送路31の径(一端の開口32及び他端の開口33の径)は、蛍光部40の径よりも小さく、光ファイバ11のコア径よりも大きい。
【0050】
一端の開口32及び他端の開口33は、カレイドスコープ30の一端及び他端に形成された開口である。一端の開口32は、光ファイバ11を導光したレーザ光が入射する入射面となる。また、また、他端の開口33は、光ファイバ11を導光したレーザ光が出射する出射面となる。
【0051】
図2に示すように板バネなどで灯具5に固定される。
【0052】
図3Aに示すように、また、カレイドスコープ30は、光ファイバ11と蛍光部40の波長変換素子41との間の光路上に配置されている。具体的には、カレイドスコープ30は、一端(一端の開口32)が光ファイバ11の出射面11aと対向するように配置されており、かつ、他端(他端の開口33)が蛍光部40と対向するように配置されている。
【0053】
また、カレイドスコープ30は、1以上の光ファイバ11を伝送したレーザ光を1つに纏めて出射する。図2に示すように、カレイドスコープ30は、光ファイバ11により伝送された4つのレーザ光源83のレーザ光を1つに纏めて出射するが、3組以下又は5組以上のレーザ光源83のレーザ光を1つに纏めて出射してもよい。
【0054】
また、カレイドスコープ30は、灯具5に対して着脱自在である。カレイドスコープ30は、例えば、バネ等の固定部材によって灯具5に固定される。
【0055】
[灯具5]
灯具5は、光ファイバ11を介して伝送された励起光源3からのレーザ光の波長を変換し、照明光として出射するために用いられる。灯具5は、例えば、ステンレス製のファイバカップリング、ガラス製のレンズ、アルミ製のホルダー、及び、アルミ製の外郭で構成される。
【0056】
本実施の形態では、灯具5は、蛍光部40と、蛍光体での発熱を放熱するためのヒートシンク151と、外装部153と、レンズ158と、反射部材157とを有する。
【0057】
<蛍光部40>
蛍光部40は、カレイドスコープ30にミキシングされたレーザ光を蛍光に変換する波長変換体である。蛍光部40は、平板状のプレートである。本実施の形態では、蛍光部40は、例えば、サファイア基板42上に蛍光体層(波長変換素子41)等が形成された構造体である。サファイア基板42は、ヒートシンク151に接触した状態で、ヒートシンク151に固定される。
【0058】
波長変換素子41は、一方の面に入射されたレーザ光を波長変換して他方の面から出射する。より具体的には、波長変換素子41は、カレイドスコープ30を伝送したレーザ光が一方(カレイドスコープ30側)の面に入射される。本実施の形態では、波長変換素子41の一方の面に入射される光の強度分布は、均斉化されており、レーザ光の照射面で略均一である。波長変換素子41の一方の面に入射されたレーザ光を波長変換して、他方(反射部材157側)の面から出射される。
【0059】
波長変換素子41は、例えば平板状に形成される。波長変換素子41は、レーザ光によって波長変換光を発する蛍光体を含み、当該蛍光体をガラス等のセラミック、シリコーン樹脂等からなる透明材料であるバインダに、分散されて保持されている。波長変換素子41は、例えばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光体、カズン系蛍光体、エスカズン系蛍光体あるいはBAM(Ba、Mg、Al)系蛍光体等であり、レーザ光の種類に応じて適宜選択することができる。なお、バインダは、セラミック、シリコーン樹脂に限定されるものではなく、透明ガラス等のその他の透明材料を用いてもよい。
【0060】
図2及び図3Aに示す例では、波長変換素子41は、カレイドスコープ30から出射されたレーザ光が入射し、入射されたレーザ光を波長変換し、波長変換した波長変換光を発すると共に白色照明の場合は、一部のレーザ光が拡散透過される。なお、特定色の照明用には、レーザ光が拡散透過しない構成でもよい。より具体的には、波長変換素子41は、カレイドスコープ30側にある一方の面に入射された光の一部を波長変換する機能を有する。本実施の形態では、波長変換素子41は、カレイドスコープ30にある一方の面にレーザ光が入射され、入射されたレーザ光を波長変換した波長変換光と、波長変換されなかったレーザ光(波長変換されずに波長変換素子41を通過したレーザ光)とを他方の面から出射する。波長変換光及びレーザ光を纏めて、単に光と言うことがある。
【0061】
なお、波長変換に伴う損失は熱に変わる。波長変換素子41は温度が高くなると波長変換効率が下がる温度消光特性を有するため、波長変換素子41の放熱は非常に重要である。サファイア基板42は、ヒートシンク151で支持されている。より具体的には、サファイア基板42は、ヒートシンク151の中心軸と交差する位置でヒートシンク151の他端面に固定され、ヒートシンク151と熱的に接続されている。つまり、サファイア42は、波長変換素子41に生じる熱を、サファイア基板42を解して放熱し易くするために、サファイア基板42の一方面をヒートシンク151の他端面に接触されている。ここで、ヒートシンク151の中心軸とは、図2に示すように、例えば灯具5のように長尺な場合、長手方向において、灯具5の中心を通過する軸であり、中心軸Oと一致する。
【0062】
本実施例では基板として、熱伝導率の高いサファイア基板42を用いているが、ガラス等の透明基板の使用を排除するものではない。また、サファイア基板42には、光の効率を高めるために、カレイドスコープ30側にレーザを高効率で透過させるためのAR膜が、レンズ158側にはレーザを高効率で透過させ、波長変換光を光反射させる第クロックミラーが形成する事が好ましい。
【0063】
図3Aに示すように、また、波長変換素子41は、例えば、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等であってもよく、レーザ光により、赤色光、緑色光、青色光等の波長変換光を発してもよい。この場合、これらの赤色光、緑色光、青色光の波長変換光を混ぜて白色光としてもよい。
【0064】
本実施の形態では、波長変換素子41は、例えば、励起光源3からの青色のレーザ光の一部を吸収して緑色~黄色の波長変換光と、波長変換素子41により吸収されず出射された青色のレーザ光とが合わさり、疑似的な白色の波長変換光を出射する。なお、波長変換素子41は、励起光源3が青色のレーザ光を出射する場合、青色のレーザ光の一部を吸収して、緑色~黄色に波長変換する複数種類の蛍光体を含んでいてもよい。なお、サファイア基板42は熱伝導性を高めるために厚い事が好ましいが、波長変換素子での入射レーザ光の均一性を高めるために、カレイドスコープの有効径よりは薄い事が好ましい。
【0065】
<ヒートシンク151>
図2に示すように、ヒートシンク151は、カレイドスコープ30及び波長変換素子41に生じた熱を放熱するための放熱部材である。ヒートシンク151は、中心軸Oと交差する位置に配置される蛍光部40を保持している。
【0066】
ヒートシンク151は、複数のフィンと、挿入部151aとを有する。
【0067】
挿入部151aは、カレイドスコープ30を保持する。挿入部151aは、カレイドスコープ30が挿入された状態で、カレイドスコープ30を保持する保持部である。また、挿入部151aは、カレイドスコープ30を所定の姿勢で固定する。また、挿入部151aは、一点鎖線で示すヒートシンク151の中心軸Oと重なる(一致する)位置に形成されている。
【0068】
<外装部153>
外装部153は、ヒートシンク151と接続され、光路の下流側に配置されている。具体的には、外装部153は、波長変換素子41よりも光路の下流側に配置されている。また、外装部153は、光路の前後で開く開口を有する無底の筒体である。
【0069】
<反射部材157>
反射部材157は、波長変換素子41から出射された波長変換光をおおよそレンズ158に向けて反射する。反射部材157は、波長変換素子41からレンズ158に向けて大径化したお椀状の部材である。反射部材157は、波長変換素子41の周囲を囲むように、レンズ158と対向した状態で、ヒートシンク151の他端面に固定されている。
【0070】
<レンズ158>
レンズ158は、例えばフレネルレンズである。レンズ158は、外装部153の開口を塞ぐように外装部153に固定されている。具体的には、レンズ158は、波長変換素子41と対向する姿勢で外装部153に固定され、波長変換素子41から出射された波長変換光が入射される。そして、レンズ158は、所定の照明を行うように波長変換光を配光制御して出射する。
【0071】
[実験結果]
以下、実施の形態に係る照明装置1の実験結果について説明する。
【0072】
本実験では、レーザ光の波長を455nmとし、光ファイバ11のコア径が400μmであるものを用いた。また、カレイドスコープ30としてライトパイプを用いた。また、カレイドスコープ30の一端の開口32及び他端の開口33の内径を2×2mmの正方形であり、カレイドスコープ30の内面の反射率が99%であり、長さが8mmであるカレイドスコープ30を用いた。拡散板20は、厚みが0.7mmであり、4×4mmの正方形であるものを用いた。
【0073】
図4は、実施の形態に係る照明装置1が出射した光の色度座標(Cx、Cy)上の光色を示す図と、比較例に係る照明装置1が出射した光の色度座標上の光色を示す図である。
【0074】
図4に示すように、本実施の形態の照明装置1が出射した光は、色度座標のCxが約0.436、Cyが約0.402付近の色度である。図4では、本実施の形態の色度変化量は、0.0005である。このため、本実施の形態の照明装置1が出射した光の光色は、略均一である。
【0075】
図5Aは、実施の形態に係る照明装置1の波長変換素子41から出射される光の輝度分布を例示する図である。図5Aは、図4の色度座標上における点A1での輝度分布を例示する。図5Bは、実施の形態に係る照明装置1の波長変換素子41から出射される光の輝度分布を例示し、図5Aとは別の図である。図5Bでは、図4の色度座標上における点A2での輝度分布を例示する。波長変換素子41から出射される光は、レーザ光と波長変換光とを含む光である。図5A及び図5Bでは、横軸は、波長変換素子41から出射される光の幅を示しており、中心軸Oの位置を0(mm)としている。中心軸Oの位置0(mm)は、波長変換素子41から出射される光の光軸と略一致する。また、縦軸は、輝度分布を示している。
【0076】
図5A及び図5Bに示すように、波長変換素子41から出射される光の輝度分布は、方形状をなしており、ピーク部分が平滑化(略均一化)されている。このような、レーザ光はトップハット型のレーザ光である。つまり、本実施の形態の照明装置1が対象物である照射面に照射された光は、均斉度が高い。均斉度とは、対象物である照射面に照射された光の最小放射輝度と最大放射輝度との比率であり、明るさの変動(均一性)を示す指標である。
【0077】
図6は、実施の形態に係る照明装置1のカレイドスコープ30の長さつまり伝送路31の長さと、色度変化量との関係を示す図である。
【0078】
図6に示すように、照明装置1に拡散度の小さい第1拡散板を用いた場合を黒塗りの三角で示す。さらに、照明装置1に第1拡散板よりも拡散度の大きい第2拡散板を用いた場合を黒塗りの菱形で示す。
【0079】
図6によれば、第1拡散板及び第2拡散板を用いたいずれの場合でも、カレイドスコープ30の長さが長くなるほど、色度変化量が減少する傾向にある。つまり、カレイドスコープ30の長さが長くなるほど、光ファイバ11の出射面11aから出射されたレーザ光がカレイドスコープ30の内部を伝送する際に、よりミキシングされ易くなる。このため、カレイドスコープ30は、色度変化量が減少したレーザ光、つまり光の色斑が抑制された混色性の高いレーザ光を出射することができる。また、第1拡散板よりも第2拡散板の方が拡散度は大きいため、ライトパイプの長さが短くても、第1拡散板よりも色度変化量が小さい。
【0080】
図7は、実施の形態に係る照明装置1のカレイドスコープ30から出射した光の放射輝度を例示する図と、カレイドスコープ30の断面の形状と光の均斉度との関係を例示する図である。
【0081】
図7の(a)は、カレイドスコープ30の断面の形状を変えた場合に、カレイドスコープ30から出射面におけるレーザ光の放射輝度分布を例示している。また、図7の(a)では、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸からズレている場合に、カレイドスコープ30から出射したレーザ光が照射面に照射されたときの照射面の放射輝度分布を例示している。さらに、図7の(a)では、カレイドスコープ30の中心軸Oとフェルール12の光軸とが略一致する場合に、カレイドスコープ30から出射したレーザ光が照射面に照射されたときの照射面の放射輝度分布を例示している。
【0082】
また、図7の(b)は、カレイドスコープ30の断面形状と照明装置1のカレイドスコープ30出射面での均斉度との関係を例示する図である。図7の(b)では、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸からズレている場合、及び、カレイドスコープ30の中心軸Oとフェルール12の光軸とが略一致する場合を例示している。
【0083】
図7の(a)に示すように、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸からズレている場合では、カレイドスコープ30の断面形状である多角形の角数が増加するにつれて、放射輝度に斑が生じていることが判る。また、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸と略一致する場合でも、カレイドスコープ30の断面形状である多角形の角数が増加するにつれて、放射輝度に斑が生じていることが判る。
【0084】
また、図7の(b)に示すように、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸からズレている場合では、カレイドスコープ30の断面形状である多角形の角数が増加するにつれて、光の均斉度が低下している。また、カレイドスコープ30の中心軸Oがフェルール12の光軸と略一致する場合でも、カレイドスコープ30の断面形状である多角形の角数が増加するにつれて、光の均斉度が低下している。
【0085】
つまり、カレイドスコープ30の断面形状が円形に近づくにつれて、光の放射輝度分布に斑が生じ均斉度が低下する、つまり、カレイドスコープ30のミキシング能力が低下することが判った。このため、カレイドスコープ30の断面形状の角数が少ないことが好ましく、特に、三角形、四角形、及び、五角形等であることが好ましい。
【0086】
これは、伝送路31の角数が増加すると、多角形の一辺あたりの長さが短くなるため、レーザ光が伝送路31の中心軸Oに集まり易くなる。一方、三角形、四角形等は、多角形の一辺あたりの長さが長いため、レーザ光が伝送路31の中心軸Oに集まり難くなる。
【0087】
[比較例]
図8Aは、比較例に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する図である。また、図8Aは、図4の色度座標上に点B1での輝度分布を例示する。図8Bは、比較例に係る照明装置の波長変換素子から出射される光の輝度分布を例示する、図8Aとは別の図である。図9Aは、図8Aの輝度分布を例示するために用いられた比較例に係るレーザ光源を例示した模式図である。図9Bは、図8Bの輝度分布を例示するために用いられた比較例に係るレーザ光源を例示した模式図である。
【0088】
図8Bは、図8Aに対して光ファイバ11への入射のセットアップが異なる。レーザ83、プリズム85、レンズ87、フェルール88(ファイバ入射端面)の相対位置が、図9Bの実線で示すように(二点鎖線は図9Aの位置と同様である)、光軸方向と垂直方向にずれている。なお、図9Aのレーザ光源におけるレーザ83、プリズム85、レンズ87、フェルール88(ファイバ入射端面)の相対位置は図2と同様である。
【0089】
ファイバ入射側のアライメントによってファイバ出射側の輝度分布が変化してしまう事が課題である。入射側の組み付け精度等により、色度が変化してしまう。本発明では、円形コアファイバとカレイドスコープを用いる事により、安価に、器具間での色度を安定化させる事が可能となる。
【0090】
また、図8Bは、図4の色度座標上に点B2での輝度分布を例示する。
【0091】
比較例に係る照明装置は、図3Aのような伝送路31の断面が多角形のカレイドスコープ30を有しておらず、このカレイドスコープ30の代わりに、円柱状の透光性のロッドを使用している照明装置である。この照明装置の波長変換素子から出射される光は、レーザ光と波長変換光とを含む光である。図8A及び図8Bでは、横軸は、波長変換素子から出射される光の幅を示しており、中心軸Oの位置を0(mm)としている。中心軸Oの位置0(mm)は、光軸と略一致する。また、縦軸は、輝度分布を示している。
【0092】
図8A及び図8Bに示すように、波長変換素子から出射される光の輝度分布は、放物線状をなしており、出射された光に斑があり、出射された光の輝度分布が均一化されていない。つまり、比較例の照明装置が対象物である照射面に照射された光は、均斉度が低い。
【0093】
また、図4で示すように、比較例の照明装置が出射した光は、色度座標のCxが約0.425~約0.428、Cyが約0.398~約0.399付近の色度である。図4では、色度変化量は、0.0045である。このため、比較例の照明装置が出射した光の光色は、均一でない。つまり、比較例の照明装置が出射した光は、本実施の形態の照明装置1が出射した光よりも、色度変化量が高く、かつ、均斉度が低い、つまり光に色斑があり、かつ、光の輝度分布に斑がある。このため、比較例の照明装置では、均一化された光を出射することができていない。
【0094】
[作用効果]
次に、本実施の形態における照明装置1の作用効果について説明する。
【0095】
上述したように、本実施の形態の照明装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源83と、レーザ光を導光する光ファイバ11と、光ファイバ11に導光されたレーザ光を伝送する伝送路31を有し、伝送路31を内包するカレイドスコープ30と、伝送路31から出射されたレーザ光によって波長変換光を発する波長変換素子41とを備える。また、カレイドスコープ30は、光ファイバ11と波長変換素子41との間に配置される。そして、レーザ光が伝送する方向と直交する平面で伝送路31を切断した場合の伝送路31の断面は、多角形状である。
【0096】
これによれば、カレイドスコープ30が光ファイバ11を導光したレーザ光をミキシングすることで、ミキシングしたレーザ光を波長変換素子41に入射させることができる。また、このカレイドスコープ30の断面が多角形状であるため、カレイドスコープ30内を伝送する光をミキシングすることができる。
【0097】
また、断面形状が円形の光ファイバ11を、多角形の断面形状にするなどの加工を行う必要もないこのため、照明装置1の製造コストが高騰化し難い。
【0098】
したがって、光ファイバ11を用いたレーザ光源83と波長変換素子41による波長変換光とを分離した照明装置1において、製造コストの高騰化を抑制するとともに、色度を安定化させることができる。つまり、この照明装置1では、出射する光の均一性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施の形態の照明装置1は、さらに、光ファイバ11とカレイドスコープ30との間に配置され、光ファイバ11によって導光されたレーザ光を拡散及び透過させる拡散板20を備える。そして、カレイドスコープ30には、拡散板20を拡散及び透過したレーザ光が入射する。
【0100】
これによれば、拡散板20は、光ファイバ11に導光されたレーザ光を拡散及び透過させることができる。このため、拡散板20は、拡散及び透過させたレーザ光をカレイドスコープ30に入射させることができる。つまり、カレイドスコープ30は、よりミキシングした光を出射することができる。その結果、照明装置1は、出射する光をより均一にすることができる。
【0101】
また、本実施の形態の照明装置1は、拡散板20とカレイドスコープ30との間の距離は、拡散板20を拡散及び透過したレーザ光がカレイドスコープ30に入射する入射面積の平方根以下である。
【0102】
これによれば、拡散板20がレーザ光を拡散及び透過するため、波長変換素子41からより均一化された光を出射することができる。
【0103】
また、本実施の形態の照明装置1において、カレイドスコープ30は、ライトパイプである。
【0104】
例えば、カレイドスコープ30として柱状の透光性部材(例えば透光性のロッド)を用いた場合、光ファイバ11に対して透光性部材を支持部材等の何らかの手段で支持する必要が生じる。支持部材で透光性部材を支持すると、支持部材と透光性部材との接触面では、屈折率が異なってしまい、予定していた透光性部材のミキシング能力に差異が生じることがある。このため、所望のミキシング能力を得るために、透光性部材の設計、透光性部材を支持する支持部材の設計が困難になる。
【0105】
また、本実施の形態の照明装置1において、伝送路31の断面は、十角形よりも角数の少ない多角形状である。
【0106】
これによれば、照明装置1は、出射する光をより確実に均一化することができる。
【0107】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0108】
例えば、上記実施の形態に係る照明装置1は、拡散板20を用いているが、図3Bに示すように、拡散板20を備えていなくてもよい。図3Bは、その他変形例に係る照明装置1の光ファイバ11、フェルール12、カレイドスコープ30、及び、波長変換素子41等を例示する部分拡大断面図である。図3Bに示すように、拡散板20を用いなくても、照明装置1は、出射する光の輝度分布を均一にすることができる。このため、拡散板20は、照明装置1を小型化する必要が無い場合は必須の構成要件ではない。また、図6で示すように、照明装置1に拡散板20を用いていない場合(つまり、光ファイバ11とカレイドスコープ30との間に拡散板20を配置していない場合)を黒丸で示す。図6によれば、カレイドスコープ30の長さが長くなるほど、色度変化量が減少する傾向にある。つまり、カレイドスコープ30の長さが長くなるほど、照明装置1は大型化するものの光ファイバ11の出射面11aから出射されたレーザ光がカレイドスコープ30の内部を導光する際に、よりミキシングされ易くなる。このため、カレイドスコープ30は、色度変化量が減少したレーザ光、つまり光の色斑が抑制された混色性の高いレーザ光を出射することができる。
【0109】
また、上記実施の形態に係る照明装置1において、図3Cに示すように、光ファイバ11の端部にフェルール12を設けずに、光ファイバ11の端部がカレイドスコープ30にレーザ光を入射させるように保持部材99に保持されてもよい。図3Cは、その他変形例に係る照明装置1の光ファイバ11、カレイドスコープ30、及び、波長変換素子41等を例示する部分拡大断面図である。図3Cに示すように、光ファイバ11の端部における被覆を除去して光ファイバ11のクラッドを露出させ、露出したクラッドをカレイドスコープ30の一端の開口32に挿入する。カレイドスコープ30がライトパイプである場合、カレイドスコープ30は、無底の筒状である。このように、本実施の形態の照明装置1において、光ファイバ11は、導光されたレーザ光を出射する出射面11aを有する。そして、出射面11a側の端部は、カレイドスコープ30の伝送路31内に位置するよう保持されている。図7に示すように、カレイドスコープ30を用いる本実施の形態では、レーザ光の入射位置に因らずカレイドスコープ30の開口面33での均斉度を上げる事ができるため、光ファイバ11の出射面11aとカレイドスコープ30の位置関係もルーズにする事が可能となり、低コスト化可能となる。これによれば、光ファイバ11の端部にフェルール12を設けずに、光ファイバ11をカレイドスコープ30に保持することができる。このため、照明装置1の部品点数を減らすことができ、端面の鏡面にするための研磨工程や、クリーブにおいても、端面を粗面状態で適応させる事が可能となり、低コスト化する事が可能となる。なお、上記実施の形態に係る照明装置1において、図3Dに示すように、光ファイバ11の端部にフェルール12を設けて、光ファイバ11の端部が保持部材99に保持されてもよい。フェルール12は、カレイドスコープ30の伝送路31内に配置されていなくてもよい。図3Dは、その他変形例に係る照明装置1の光ファイバ11、カレイドスコープ30、及び、波長変換素子41等を例示する部分拡大断面図である。図3C及び図3Dで用いられる光ファイバ11は、バンドルファイバであってもよい。また、バンドルファイバ等、複数の光ファイバ11を用いた場合、そのままでの輝度分布が複数の光ファイバ11から出射されてしまう。図3Eに示すように複数の光ファイバ11aの出射面11aから出射されたレーザ光を、カレイドスコープ30を用いる事により、図3Fで示すように略トップハット化にすることができ、器具間による色度変化を改善することができる。なお、バンドルファイバではなく、入射側に複数の光ファイバが存在し、ファイバコンバイナを介して、出射側を単一ファイバとした構成においても同様の問題が発生するため、光ファイバを導光した後に、カレイドスコープ30を設置する構成も有効である。
【0110】
また、本実施の形態の照明装置1において、光ファイバ11は、導光されたレーザ光を出射する出射面11aを有する。そして、出射面11aには、レーザ光を拡散及び透過させる粗面が形成される。
【0111】
これによれば、出射面11aは、光ファイバ11に導光されたレーザ光を拡散及び透過させることができる。このため、出射面11aは、拡散及び透過させたレーザ光をカレイドスコープ30に入射させることができる。つまり、カレイドスコープ30は、よりミキシングした光を出射することができる。その結果、照明装置1は、出射する光をより均一化することができる。端面を荒らすことにより、拡散板を設置するのと同様の効果を得る事ができ、小型器具化が可能となる。
【0112】
また、上記実施の形態に係る照明装置1において、出射面11a側の端部は、伝送路32内(カレイドスコープ30の内部)に配置されている。このため、光ファイバ11に対するカレイドスコープ30の位置決めを容易にすることができる。これにより、波長変換素子41上のニアーフィールドパターン(NFP)の再現性を向上させることができる。
【0113】
また、上記実施の形態に係る照明装置1では、カレイドスコープ30から出射されるレーザ光の均斉度を増加(均一度を向上)させるために、カレイドスコープ30における伝送路31の断面の角数を減らすように設計を行う設計方法によって設計されたカレイドスコープ30を用いてもよい。なお、光ファイバ11がカレイドスコープ30の一端の開口32を塞ぐ部品を追加すれば、塵、埃等の侵入を抑制することができる。
【0114】
また、上記実施の形態に係る照明装置において、光コネクタが灯具に対して着脱自在であるが、着脱の手段は上述には限定されず、公知の手段を用いてもよい。
【0115】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 照明装置
11 光ファイバ
11a 出射面
20 拡散板
30 カレイドスコープ
31 伝送路
41 波長変換素子
83 レーザ光源
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B