IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス遮断装置管理システム 図1
  • 特許-ガス遮断装置管理システム 図2
  • 特許-ガス遮断装置管理システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ガス遮断装置管理システム
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20230324BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20230324BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20230324BHJP
   F17D 3/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
F23K5/00 304
G01F3/22 B
G01F1/00 Y
G01F3/22 D
F17D3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019102062
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197313
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横畑 光男
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-242389(JP,A)
【文献】特開2007-333305(JP,A)
【文献】特開2008-032483(JP,A)
【文献】特開2008-026000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00 - 5/22
F17D 1/00 - 5/08
F23N 1/00 - 5/26
G01F 1/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター、複数のガス遮断装置、および携帯端末を含み、通信回線を介して、センターと複数のガス遮断装置とが通信可能に接続される、ガス遮断装置管理システムであって、
前記センターは、
前記ガス遮断装置および前記携帯端末と通信するセンター通信部と、
各種情報を記憶するセンター記憶部と、
当該センターの動作を制御するセンター制御部と、を備え、
前記ガス遮断装置は、
ガス流量を計測する流量計測部と、
計測したガス流量を用いて配管に接続されるガス器具の使用状態を監視するガス器具監視部と、
ガス流路を遮断するガス遮断部と、
各種情報を記憶するガス遮断記憶部と、
少なくとも前記センターと通信するガス遮断通信部と、
当該ガス遮断装置の動作を制御するガス遮断制御部と、を備えるとともに、
前記ガス遮断記憶部に記憶される前記各種情報には、当該ガス遮断装置の設定情報と当該ガス遮断装置の運転に伴う学習情報とが含まれ、
前記ガス遮断制御部は、前記ガス器具監視部の監視結果に基づいて前記ガス遮断部を動作させて前記ガス流路を遮断するとともに、前記監視結果の根拠となる前記ガス器具の使用状態を、前記学習情報として前記ガス遮断記憶部に記憶し、
複数の前記ガス遮断装置のうちいずれかを交換する際には、交換対象である設置済のものを旧ガス遮断装置とし、新たに設置されるものを新ガス遮断装置としたときに、前記携帯端末は、前記旧ガス遮断装置の個体情報である旧装置個体情報と前記新ガス遮断装置の個体情報である新装置個体情報とを少なくとも取得して、前記センターに送信し、
前記センターの前記センター制御部は、受信した前記個体情報を前記センター記憶部に記憶するとともに、前記センター通信部により前記旧ガス遮断装置と通信して前記ガス遮断記憶部から前記各種情報を読み出して前記センター記憶部に記憶し、さらに、読み出された前記各種情報、もしくは、前記個体情報が前記センター記憶部に記憶されてから前記センター通信部により前記ガス遮断記憶部から読み出された前記各種情報を、前記旧装置個体情報に関連付けた旧装置各種情報として前記センター記憶部に記憶し、
前記旧ガス遮断装置が前記新ガス遮断装置に交換された後には、前記センターの前記センター制御部は、記憶した前記新装置個体情報に基づいて前記センター通信部により前記新ガス遮断装置と通信し、前記センター記憶部に記憶された前記旧装置各種情報を前記新ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部に書き込む、
ガス遮断装置管理システム。
【請求項2】
前記携帯端末による前記ガス遮断装置の前記個体情報は、当該携帯端末への手入力、または、バーコード等による読み取りにより取得される、
請求項1に記載のガス遮断装置管理システム。
【請求項3】
前記ガス遮断装置は、さらに、使用中の前記ガス器具の種類を判別するガス器具判別部を備え、
前記ガス遮断制御部は、前記ガス器具判別部の判別結果である前記ガス器具の種類を、前記学習情報として前記ガス遮断記憶部に記憶し、
前記旧ガス遮断装置を前記新ガス遮断装置に交換する際には、前記センターの前記センター制御部により、前記ガス器具の種類も前記新ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部に書き込まれる、
請求項1または2に記載のガス遮断装置管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断装置を交換する際に、旧ガス遮断装置から新ガス遮断装置に各種情報を移植設定することが可能な、ガス遮断装置管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス遮断装置を交換する場合には、専用の設定器を用いることが一般的であった。例えば、交換される(設置済で交換対象の)ガス遮断装置を旧ガス遮断装置とし、交換すべき(新たに設置される)ガス遮断装置を新ガス遮断装置としたときに、設定器を介して旧ガス遮断装置の情報を読取り、その後、センターとの通信により新ガス遮断装置を登録していた。しかしながら、このような従来の手法では、専用の設定器を用いてセンターと回線接続したり、新旧ガス遮断装置のそれぞれに設定器を接続して設定を繰り返したりするという手間が生じていた。
【0003】
そこで、特許文献1には、他のガス遮断装置と信号線を介して通信可能であり、設定値を読み出して移植する移植設定手段を備えているガス遮断装置が開示されている。具体的には、旧ガス遮断装置と新ガス遮断装置とを信号線により通信可能に接続し、新ガス遮断装置の移植設定手段により、旧ガス遮断装置に設定されている設定情報を読み出して、新ガス遮断装置の設定情報として新たに設定する。これにより専用の設定器を用いることなく、旧ガス遮断装置から新ガス遮断装置に設定情報を移植することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のガス遮断装置では、設定情報の移植は可能であるものの、設定情報以外の各種情報、特に、ガス遮断装置の設置に伴って学習した各種情報(学習情報)を移植することができない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、ガス遮断装置およびセンターを含み、ガス遮断装置の設定情報とともに学習情報も移植することが可能な管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス遮断装置管理システムは、前記の課題を解決するために、センター、複数のガス遮断装置、および携帯端末を含み、通信回線を介して、センターと複数のガス遮断装置とが通信可能に接続される、ガス遮断装置管理システムであって、前記センターは、前記ガス遮断装置および前記携帯端末と通信するセンター通信部と、各種情報を記憶するセンター記憶部と、当該センターの動作を制御するセンター制御部と、を備え、前記ガス遮断装置は、ガス流量を計測する流量計測部と、計測したガス流量を用いて配管に接続されるガス器具の使用状態を監視するガス器具監視部と、ガス流路を遮断するガス遮断部と、各種情報を記憶するガス遮断記憶部と、少なくとも前記センターと通信するガス遮断通信部と、当該ガス遮断装置の動作を制御するガス遮断制御部と、を備えるとともに、前記ガス遮断記憶部に記憶される前記各種情報には、当該ガス遮断装置の設定情報と当該ガス遮断装置の運転に伴う学習情報とが含まれ、前記ガス遮断制御部は、前記ガス器具監視部の監視結果に基づいて前記ガス遮断部を動作させて前記ガス流路を遮断するとともに、前記監視結果の根拠となる前記ガス器具の使用状態を、前記学習情報として前記ガス遮断記憶部に記憶し、複数の前記ガス遮断装置のうちいずれかを交換する際には、交換対象である設置済のものを旧ガス遮断装置とし、新たに設置されるものを新ガス遮断装置としたときに、前記携帯端末は、前記旧ガス遮断装置の個体情報である旧装置個体情報と前記新ガス遮断装置の個体情報である新装置個体情報とを少なくとも取得して、前記センターに送信し、前記センターの前記センター制御部は、受信した前記個体情報を前記センター記憶部に記憶するとともに、前記センター通信部により前記旧ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部から予め読み出された前記各種情報、もしくは、前記個体情報が前記センター記憶部に記憶されてから前記センター通信部により読み出された前記各種情報を、前記旧装置個体情報に関連付けた旧装置各種情報として前記センター記憶部に記憶し、前記旧ガス遮断装置が前記新ガス遮断装置に交換された後には、前記センターの前記センター制御部は、記憶した前記新装置個体情報に基づいて前記センター通信部により前記新ガス遮断装置と通信し、前記センター記憶部に記憶された前記旧装置各種情報を前記新ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部に書き込む構成である。
【0008】
前記構成によれば、携帯端末により新旧のガス遮断装置の個体情報を取得してセンターに予め送信することになる。それゆえ、ガス遮断装置の交換現場では、個体情報を取得して送信するだけでよく、各種情報の移植はセンターからの通信により実行することができる。その結果、ガス遮断装置の交換に際して、各種情報の移植に要する作業を簡素化できる。
【0009】
さらに、移植される各種情報は設定情報だけでなく、相対的にデータ量の大きい学習情報も含まれる。通常、データ量の大きい学習情報は設定情報に比較して移植に時間を要する。前記構成によれば、交換現場では個体情報の取得および送信だけで済み、移植作業そのものはセンターから通信で実施される。そのため、ガス遮断装置を交換した後に、任意のタイミングで通信により容易に学習情報を移植することができる。
【0010】
また、ガス消費者(ガス需用家)では、交換されたガス遮断装置は、一定期間運転して学習情報を改めて取得しなくても、交換前の学習情報に基づいて好適化された状態でガス器具を保安監視することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、以上の構成により、ガス遮断装置およびセンターを含み、ガス遮断装置の設定情報とともに学習情報も移植することが可能な管理システムを提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の代表的な実施の形態に係るガス遮断装置管理システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1に示すガス遮断装置管理システムを構成するセンターおよびガス遮断装置の代表的な構成例を示す要部ブロック図である。
図3】(A)~(D)は、図1に示すガス遮断装置管理システにおけるガス遮断装置の交換に伴う各種情報の読み出しおよび書き込みのプロセスの一例をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示に係るガス遮断装置管理システムは、センター、複数のガス遮断装置、および携帯端末を含み、通信回線を介して、センターと複数のガス遮断装置とが通信可能に接続される、ガス遮断装置管理システムであって、前記センターは、前記ガス遮断装置および前記携帯端末と通信するセンター通信部と、各種情報を記憶するセンター記憶部と、当該センターの動作を制御するセンター制御部と、を備え、前記ガス遮断装置は、ガス流量を計測する流量計測部と、計測したガス流量を用いて配管に接続されるガス器具の使用状態を監視するガス器具監視部と、ガス流路を遮断するガス遮断部と、各種情報を記憶するガス遮断記憶部と、少なくとも前記センターと通信するガス遮断通信部と、当該ガス遮断装置の動作を制御するガス遮断制御部と、を備えるとともに、前記ガス遮断記憶部に記憶される前記各種情報には、当該ガス遮断装置の設定情報と当該ガス遮断装置の運転に伴う学習情報とが含まれ、前記ガス遮断制御部は、前記ガス器具監視部の監視結果に基づいて前記ガス遮断部を動作させて前記ガス流路を遮断するとともに、前記監視結果の根拠となる前記ガス器具の使用状態を、前記学習情報として前記ガス遮断記憶部に記憶し、複数の前記ガス遮断装置のうちいずれかを交換する際には、交換対象である設置済のものを旧ガス遮断装置とし、新たに設置されるものを新ガス遮断装置としたときに、前記携帯端末は、前記旧ガス遮断装置の個体情報である旧装置個体情報と前記新ガス遮断装置の個体情報である新装置個体情報とを少なくとも取得して、前記センターに送信し、前記センターの前記センター制御部は、受信した前記個体情報を前記センター記憶部に記憶するとともに、前記センター通信部により前記旧ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部から予め読み出された前記各種情報、もしくは、前記個体情報が前記センター記憶部に記憶されてから前記センター通信部により読み出された前記各種情報を、前記旧装置個体情報に関連付けた旧装置各種情報として前記センター記憶部に記憶し、前記旧ガス遮断装置が前記新ガス遮断装置に交換された後には、前記センターの前記センター制御部は、記憶した前記新装置個体情報に基づいて前記センター通信部により前記新ガス遮断装置と通信し、前記センター記憶部に記憶された前記旧装置各種情報を前記新ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部に書き込む構成である。
【0014】
前記構成によれば、携帯端末により新旧のガス遮断装置の個体情報を取得してセンターに予め送信することになる。それゆえ、ガス遮断装置の交換現場では、個体情報を取得して送信するだけでよく、各種情報の移植はセンターからの通信により実行することができる。その結果、ガス遮断装置の交換に際して、各種情報の移植に要する作業を簡素化できる。
【0015】
さらに、移植される各種情報は設定情報だけでなく、相対的にデータ量の大きい学習情報も含まれる。通常、データ量の大きい学習情報は設定情報に比較して移植に時間を要する。前記構成によれば、交換現場では個体情報の取得および送信だけで済み、移植作業そのものはセンターから通信で実施される。そのため、ガス遮断装置を交換した後に、任意のタイミングで通信により容易に学習情報を移植することができる。
【0016】
また、ガス消費者(ガス需用家)では、交換されたガス遮断装置は、一定期間運転して学習情報を改めて取得しなくても、交換前の学習情報に基づいて好適化された状態でガス器具を保安監視することが可能となる。
【0017】
前記構成のガス遮断装置管理システムにおいては、前記携帯端末による前記ガス遮断装置の前記個体情報は、当該携帯端末への手入力、または、バーコード等による読み取りにより取得される構成であってもよい。
【0018】
前記構成によれば、通信回線を介して携帯端末とガス遮断装置とを通信させなくても、ガス遮断装置の個体情報を容易に取得することができる。
【0019】
また、前記構成のガス遮断装置管理システムにおいては、前記ガス遮断装置は、さらに、使用中の前記ガス器具の種類を判別するガス器具判別部を備え、前記ガス遮断制御部は、前記ガス器具判別部の判別結果である前記ガス器具の種類を、前記学習情報として前記ガス遮断記憶部に記憶し、前記旧ガス遮断装置を前記新ガス遮断装置に交換する際には、前記センターの前記センター制御部により、前記ガス器具の種類も前記新ガス遮断装置の前記ガス遮断記憶部に書き込まれる構成であってもよい。
【0020】
前記構成によれば、学習情報にガス器具の種類を含めることで、交換後のガス遮断装置においても、ガス消費者(ガス需用家)が保有するガス器具を管理することができる。また、ガス器具監視部は、ガス器具の種類を把握した上でガス器具の使用状態を監視することになるので、使用状態の異常を判定する精度の向上を図ることができる。
【0021】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
まず、本開示に係るガス遮断装置管理システムの構成の一例について、図1を参照して具体的に説明する。本実施の形態では、図1に示すように、ガス遮断装置管理システムは、センター10、複数のガス遮断装置20、および携帯端末30を含み、図中点線で示す通信回線を介して、センター10と複数のガス遮断装置20とが通信可能に接続されている。また、携帯端末30もセンター10と通信可能に接続されている。
【0023】
なお、図1では、複数のガス遮断装置20のうち、交換対象である設置済の1台を旧ガス遮断装置20Aとしている。また、この旧ガス遮断装置20Aと交換されて新たに設置される1台を新ガス遮断装置20Bとしている。旧ガス遮断装置20Aは通信回線に接続されているが、新ガス遮断装置20Bは通信回線には接続されていない。
【0024】
それぞれのガス遮断装置20(ただし新ガス遮断装置20Bは除く)には、少なくとも1台のガス器具が図中太線で示す配管を介して接続されている。図1に示す例では、旧ガス遮断装置20Aにおいてのみガス器具の接続を図示しており、他のガス遮断装置20では図示を省略している。また、これから設置される新ガス遮断装置20Bには、配管もガス器具も接続されていない。
【0025】
図1に示す構成では、旧ガス遮断装置20Aに接続されるガス器具として、それぞれ1台の燃料電池41、ガステーブル42、およびファンヒータ43を例示しているが、ガス器具の種類および接続台数についてはこれにこれらに限定されない。
【0026】
旧ガス遮断装置20Aを含むそれぞれのガス遮断装置20は、図示しないガス供給ラインを介して図示しないガス供給源に接続され得いる。ガス供給源は、原料ガス源(例えば、いわゆる都市ガスまたは液化石油ガス(LPガス)等のインフラストラクチャ)に接続されており、需要に応じて炭化水素系ガス(例えば、メタンを主成分とする天然ガス、プロパンを主成分とするLPガス)をガス供給ラインからガス遮断装置20および配管を介してガス器具に供給する。なお、ガス供給ラインには、種々の開閉弁、分岐機構等が設けられている。
【0027】
次に、ガス遮断装置管理システムを構成するセンター10およびガス遮断装置20の構成の一例について、図2を参照して具体的に説明する。なお、図2に示すガス遮断装置20は、図1においてブロックで示すガス遮断装置20だけでなく、旧ガス遮断装置20Aおよび新ガス遮断装置20Bにも共通する構成である。ガス遮断装置20(旧ガス遮断装置20Aおよび新ガス遮断装置20Bを含む)においては、図2に示す以外の構成についてはそれぞれのガス遮断装置20の間で互いに相違してもよいし、図2に示す構成の一部を備えていなくてもよい。
【0028】
センター10は、本開示に係るガス遮断装置管理システムにおいて、通信回線(図中点線)を介して接続される複数のガス遮断装置20を管理するものであり、センター制御部11、センター通信部12、センター記憶部13等を備えている。センター制御部11は、当該センター10の動作を制御し、センター通信部12は、センター制御部11の制御により、通信回線を介してガス遮断装置20および携帯端末30と通信する。
【0029】
センター記憶部13は、センター10の動作に用いられる各種情報を記憶するとともに、後述するように、ガス遮断装置20に記憶されている各種情報および携帯端末30から送信されてきた情報を記憶する。センター制御部11は、後述するように、センター通信部12を介してガス遮断装置20と通信し、当該ガス遮断装置20に記憶されている各種情報を読み出して、センター記憶部13に記憶するとともに、記憶された各種情報を別のガス遮断装置20に書き込む。
【0030】
センター制御部11、センター通信部12、およびセンター記憶部13の具体的な構成は特に限定されず、それぞれ、公知のマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラのCPU等の演算装置、公知の有線または無線通信モジュール、内部メモリまたは外付け記憶装置等で構成されればよい。
【0031】
ガス遮断装置20は、ガス遮断制御部21、ガス遮断通信部22、ガス遮断記憶部23、流量計測部24、ガス遮断部25、ガス器具監視部26、ガス器具判別部27等を備えている。
【0032】
ガス遮断制御部21は、ガス遮断装置20の動作を制御し、ガス遮断通信部22は、ガス遮断制御部21の制御により、少なくともセンター10との間で通信回線を介して通信する。ガス遮断記憶部23は、ガス遮断装置20の動作に用いられる各種情報を記憶する。この各種情報には、後述するように、当該ガス遮断装置20に設定される設定情報と当該ガス遮断装置20の運転に伴い生成される学習情報とが含まれる。
【0033】
ガス遮断制御部21、ガス遮断通信部22、およびガス遮断記憶部23の具体的な構成は特に限定されず、それぞれ、公知のマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラのCPU等の演算装置、公知の有線または無線通信モジュール、内部メモリ等で構成されればよい。
【0034】
流量計測部24は、ガス流路内でのガス流量を計測するものであり、本実施の形態では、例えば、超音波を用いてガス等の流体の流量を計測する超音波流量計測器が用いられている。代表的な超音波流量計測方法としては、伝搬時間差法を利用したものを挙げることができる。なお、伝搬時間差法を利用した超音波流量計測器の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。また、流量計測部24としては、前記超音波流量計測器以外にも、熱フローセンサ、フルディック式等の電子式流量計測器を用いることができる。
【0035】
ガス遮断部25は、流量計測部24で計測されるガス流量をガス器具監視部26により監視した結果、何らかの異常状態またはそのおそれがあると判断したときに、ガス遮断制御部21の制御により動作し、ガス流路におけるガスの流通を遮断する。ガス遮断部25の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、ソレノイド式電磁弁またはモータ駆動式弁を備える構成を挙げることができる。
【0036】
ガス器具監視部26は、流量計測部24で計測したガス流量に基づいて配管に接続されるガス器具の使用状態を監視する。ガス器具監視部26による使用状態の監視手法は、特に限定されないが、例えば、ガス器具に流入するガス流量を経時的に監視することで、ガス器具の使用状態が異常か否かを判定する構成を挙げることができる。具体的な異常としては、ガス流量に基づいて、ガス器具が長時間使用されていないか否か、ガス流量が一定時間異常な数値に達していないか否か、経時的なガス流量の変化のタイムチャート等を挙げることができる。
【0037】
ガス器具判別部27は、ガス遮断装置20に接続されているガス器具のうち使用中のガス器具の種類を判別する。ガス器具判別部27によるガス器具の判別手法は特に限定されないが、例えば、ガス器具の種類に対応するガス流量の判別値に基づいてガス器具の種類を判別する構成を挙げることができる。
【0038】
携帯端末30は、本開示においては、一般的に用いられる各種情報端末装置を公的に用いることができる。代表的には、スマートフォン等の携帯電話端末、その他通信可能な情報端末(タブレット等)、携帯型のパーソナルコンピュータ等を挙げることができる。携帯端末30とセンター10との通信は、一般的な通信モジュールを用いて実行されてもよいし、専用のアプリケーションソフトウェアを用いて実行されてもよいし、専用の通信回線を用いて専用の通信モジュールを用いて実行されてもよい。また、通信端末30は必要に応じてガス遮断装置20と通信可能に構成されてもよい。
【0039】
本実施の形態では、ガス器具として燃料電池41、ガステーブル42、ファンヒータ43を例示しているが、燃料電池41は、発電のために常時稼働することが前提であり、調理器具であるガステーブル42は、調理の時点のみ稼働するので使用時間が相対的に短く、暖房器具であるファンヒータ43は、室内を暖房する間に稼働するので使用時間が相対的に長い、といった特徴を有しているので、これら特徴に応じたガス流量の判別値を予め設定しておくことで、ガス流量からガス器具の種類を判別することができる。
【0040】
ガス器具監視部26およびガス器具判別部27は、例えば、ガス遮断制御部21を構成するマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラの機能構成(ガス遮断制御部21として機能する演算装置がガス遮断記憶部23(または他の記憶手段)に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成)であればよいが、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。
【0041】
なお、本開示では、ガス遮断装置20はガス器具判別部27を備えていなくてもよい。ただし、ガス器具判別部27を備えることで、ガス器具監視部26は、ガス器具の種類を把握した上でガス器具の使用状態を監視することになるので、例えば使用状態の異常を判定する精度の向上を図ることができる。
【0042】
本開示に係るガス遮断装置管理システムでは、センター10は、センター制御部11、センター通信部12、およびセンター記憶部13以外の構成を備えてもよい。同様に、ガス遮断装置20は、ガス遮断制御部21、ガス遮断通信部22、ガス遮断記憶部23、流量計測部24、ガス遮断部25、ガス器具監視部26以外の構成を備えてもよい。例えば、センター10またはガス遮断装置20は、それぞれ、公知の表示部、入力部、計時部、報知部等を備えてもよい。また、ガス遮断装置20であれば、入力部の一例として、ガス遮断部25が動作してガス流路が遮断された状態から遮断を解除するための復帰スイッチ等を備えてもよい。
【0043】
次に、本開示に係るガス遮断装置管理システムにおいて、複数のガス遮断装置20のうち任意の一つである旧ガス遮断装置20Aを新ガス遮断装置20Bに交換する際の各種情報の移植について、図1および図2に加えて、図3を参照して具体的に説明する。
【0044】
ガス遮断装置20は法律で定められた検定満了期間が経過したり、ガス遮断装置20自身の何らかのトラブルが発生したりした場合には、当該ガス遮断装置20を交換する。このとき、旧ガス遮断装置20Aのガス遮断記憶部23に記憶されている設定情報を新ガス遮断装置20Bに移植する必要がある。この設定情報としては、例えば、旧ガス遮断装置20Aが設置されているガス消費者(ガス需用家)においてガス器具監視部26によりガス器具の使用状態を監視するための各種設定条件(特許文献1の設定内容参照)が挙げられる。
【0045】
ここで、ガス器具監視部26の監視結果に基づいてガス遮断部25を動作させてガス流路を遮断することに伴い、ガス遮断制御部21は、監視結果の根拠となるガス器具の使用状態を学習情報としてガス遮断記憶部23に記憶することができる。具体的な学習情報としては、例えば、ガス消費者(ガス需用家)におけるガス器具の使用状況に応じて好適化された保安状態(例えば、使用時間遮断値、合計・増加流量遮断値)等が挙げられる。あるいは、旧ガス遮断装置20Aがガス器具判別部27を備えているのであれば、ガス器具判別部27の判別結果であるガス器具の種類を学習情報としてもよい。
【0046】
このような学習情報は、交換前の旧ガス遮断装置20Aから交換された新ガス遮断装置20Bに移植する必要はない。新ガス遮断装置20Bの運転が開始されてからガス器具監視部26による監視が継続されることで、同様の学習情報を取得できるためである。しかしながら、交換された新ガス遮断装置20Bが、旧ガス遮断装置20Aと同様の学習情報を取得するためには、かなりの期間が必要になるため、交換直後から一定期間、新ガス遮断装置20Bでは、十分な学習情報が得られない状況で、ガス器具監視部26による監視がなされることになる。それゆえ、設定情報だけでなく学習情報も新ガス遮断装置20Bに移植できることが望ましい。
【0047】
ただし、従来のガス遮断装置では、設定情報の移植は可能であるものの学習情報を移植することができない。特に学習情報は、設定情報に比べて相対的にデータ量が大きくなり、データ構造も複雑な傾向があるので、従来のように、交換現場でこのような学習情報を移植しようとすると移植作業そのものが大幅に煩雑化するおそれがある。これに対して、本開示に係るガス遮断装置管理システムでは、各種情報の移植そのものはセンター10が実施し、センター10による移植をサポートするために携帯端末30を利用する。これにより、ガス遮断装置20の交換に際して、各種情報の移植に要する作業を簡素化することが可能になる。
【0048】
具体的には、まず図3(A)に示すように、旧ガス遮断装置20Aを新ガス遮断装置20Bに交換する現場において、例えば、交換作業者が保有する携帯端末30により、これらガス遮断装置20A,20Bの個体情報を取得し、センター10に送信する。図3(A)および図1では、携帯端末30による個体情報の取得を破線矢印で模式的に示している。また、図3(A)では、携帯端末30からセンター10への個体情報の送信を、点線の通信回線に沿った黒のブロック矢印で示している。
【0049】
携帯端末30によるガス遮断装置20A,20Bの個体情報の取得手法は特に限定されず、携帯端末30とガス遮断装置20A,20Bのガス遮断通信部22との間で通信回線を介して通信することにより取得してもよいが、好ましくは、携帯端末30への手入力、バーコードによる読み取り、または、QRコード(登録商標)による読み取りを挙げることができる。これらのように、手入力またはコード入力を利用することで、通信回線を介して携帯端末30とガス遮断装置20A,20Bとを通信させなくても、これらガス遮断装置20A,20Bの個体情報を容易に取得することができる。
【0050】
例えば、ガス遮断装置20A,20Bの外面に個体情報を表示(直接印刷またはラベル、プレートの貼付等も含む)しておけば、交換作業者はこれら個体情報を手入力で携帯端末30に入力することができる。また、ガス遮断装置20A,20Bの外面に、個体情報を示す一次元バーコードあるいはQRコード(登録商標)等の二次元バーコードを表示しておけば、交換作業者は、携帯端末30のカメラによりこれらバーコードを撮影して認識することで、個体情報を容易に取得することができる。なお、説明の便宜上、旧ガス遮断装置20Aの個体情報を「旧装置個体情報」と称し、新ガス遮断装置20Bの個体情報を「新装置個体情報」と称する。
【0051】
携帯端末30からセンター10に送信された旧装置個体情報および新装置個体情報は、センター10のセンター制御部11によりセンター記憶部13に記憶される。そして、図3(B)に示すように、センター10のセンター制御部11は、記憶された旧装置個体情報に基づいて、センター通信部12により通信回線を介して旧ガス遮断装置20Aを呼び出す(発呼する)。なお、図3(B),(D)では、ガス遮断装置20A,20Bの発呼を二重線矢印で示し、各種情報の読み出しまたは書き込みは黒のブロック矢印で示している。
【0052】
センター10と旧ガス遮断装置20Aとの間で通信可能になると、センター制御部11は、センター通信部12により旧ガス遮断装置20Aのガス遮断記憶部23から記憶されている各種情報を読み出して、旧装置個体情報に関連付けた「旧装置各種情報」としてセンター記憶部13に記憶する。この各種情報には、前記の通り、設定情報だけでなく学習情報も含まれる。センター10による読み出しおよび記憶は通信回線を介して実施される。そのため、現場の交換作業者は各種情報の読み出し作業を行う必要がなく、交換作業の準備を進めることができる。
【0053】
次に、図3(C)に示すように、交換作業者により旧ガス遮断装置20Aが取り外され、新ガス遮断装置20Bが新たに設置される。そして、交換後には、図3(D)に示すように、センター10のセンター制御部11は、センター記憶部13に記憶した新装置個体情報に基づいてセンター通信部12により新ガス遮断装置20Bと通信して当該新ガス遮断装置20Bを呼び出す(発呼する)。センター10と新ガス遮断装置20Bとの間で通信可能になると、センター制御部11は、センター記憶部13に記憶された旧装置各種情報を新ガス遮断装置20Bのガス遮断記憶部23に書き込む。
【0054】
センター10による旧装置各種情報の書き込みは通信回線を介して実施される。そのため、現場の交換作業者は旧装置各種情報の書き込み作業を行う必要がなく、交換作業が完了すれば現場から適時離れることができる。新ガス遮断装置20Bへの旧装置各種情報の書き込みが完了すれば、各種情報の移植作業が終了する。
【0055】
なお、図3(B)に示す例では、センター10は、受信した旧装置個体情報および新装置個体情報を記憶してから、旧ガス遮断装置20Aから旧装置各種情報を読み出して、旧装置個体情報に関連付けて旧装置各種情報を構成するが、本開示はこれに限定されない。例えば、センター10のセンター制御部11は、複数のガス遮断装置20を管理している過程で、それぞれのガス遮断装置20から各種情報を適時読み出しており、予め読み出した複数の各種情報の中から、携帯端末30より受信した旧装置個体情報に基づいて、対応するガス遮断装置20の各種情報を選択して当該旧装置個体情報に関連付けて旧装置各種情報を構成してもよい。
【0056】
このように、本開示によれば、ガス遮断装置管理システムを構成する複数のガス遮断装置20のうちいずれかを交換する際には、携帯端末30により新旧のガス遮断装置20A,20Bの個体情報を取得してセンター10に予め送信することになる。それゆえ、ガス遮断装置20A,20Bの交換現場では、それぞれの個体情報を取得して送信するだけでよく、各種情報の移植はセンター10からの通信により実行することができる。その結果、ガス遮断装置20A,20Bの交換に際して、各種情報の移植に要する作業を簡素化できる。
【0057】
さらに、移植される各種情報は設定情報だけでなく、相対的にデータ量の大きい学習情報も含まれる。通常、データ量の大きい学習情報は設定情報に比較して移植に時間を要するが、前記の通り、交換現場では、携帯端末30による個体情報の取得および送信だけで済み、移植作業そのものはセンター10から通信で実施される。そのため、ガス遮断装置20A,20Bを交換した後に、任意のタイミングで通信により容易に学習情報を含む各種情報を移植することができる。ガス消費者(ガス需用家)では、新ガス遮断装置20Bは、一定期間運転して学習情報を改めて取得しなくても、交換前の学習情報に基づいて好適化された状態でガス器具を保安監視することが可能となる。
【0058】
また学習情報にガス器具の種類を含めることで、交換後の新ガス遮断装置20Bにおいても、ガス消費者(ガス需用家)が保有するガス器具を管理することができる。また、新ガス遮断装置20Bのガス器具監視部26は、交換前の旧ガス遮断装置20Aと同様に、設置済のガス器具の種類を把握した上でガス器具の使用状態を監視することになる。それゆえ、新ガス遮断装置20Bにおいても旧ガス遮断装置20Aと同様に、使用状態の異常を判定する精度の向上を図ることができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、センターおよび複数のガス遮断装置を含むシステムの分野において、特にガス遮断装置を交換する場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
10:センター
11:センター制御部
12:センター通信部
13:センター記憶部
20:ガス遮断装置
20A:旧ガス遮断装置
20B:新ガス遮断装置
21:ガス遮断制御部
22:ガス遮断通信部
23:ガス遮断記憶部
24:流量計測部
25:ガス遮断部
26:ガス器具監視部
27:ガス器具判別部
30:携帯端末
41:燃料電池(ガス器具)
42:ガステーブル(ガス器具)
43:ファンヒータ(ガス器具)
図1
図2
図3