IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池 図1
  • 特許-電池 図2
  • 特許-電池 図3
  • 特許-電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230324BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230324BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230324BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230324BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230324BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230324BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230324BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/36 C
H01B1/06 A
H01M4/133
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019567903
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045585
(87)【国際公開番号】W WO2019146293
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018011526
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018011527
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018173450
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】大島 龍也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-523626(JP,A)
【文献】特開2014-241282(JP,A)
【文献】特開2006-244734(JP,A)
【文献】特開2001-052733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
H01B 1/06
C01B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられる電解質層と、
を備え、
前記電解質層は、第1固体電解質材料を含み、
前記第1固体電解質材料は、ハロゲン化物固体電解質であり、Li、M、およびXを含み、かつ、硫黄を含まず、
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記負極は、負極活物質および硫化物固体電解質を含み、
記負極活物質の周囲は前記硫化物固体電解質で覆われている、
電池。
【請求項2】
前記第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表され、
Liαβγ ・・・式(1)
ここで、α、β、およびγは、それぞれ独立して、いずれも0より大きい値である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記Mは、Yを含む、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1固体電解質材料は、
Li2.50.5Zr0.5Cl、LiYCl、およびLiYBrからなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記硫化物固体電解質は、硫化リチウムと硫化リンとを含む、
請求項1から4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記硫化物固体電解質は、LiS-Pである、
請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記負極活物質は、グラファイトを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
記負極と前記電解質層との間に設けられる第2電解質層をさらに備え、
記第2電解質層は、第2硫化物固体電解質を含む、
請求項1から7のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
前記第2硫化物固体電解質は、硫化リチウムと硫化リンとを含む、
請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記第2硫化物固体電解質は、LiS-Pである、
請求項9に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インジウムを含むハロゲン化物を固体電解質として用いた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-244734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池の内部抵抗のさらなる低減が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられる電解質層と、
を備え、
前記電解質層は、第1固体電解質材料を含み、
前記第1固体電解質材料は、ハロゲン化物固体電解質であり、Li、M、およびXを含み、かつ、硫黄を含まず、
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記負極は、負極活物質および硫化物固体電解質を含み、
記負極活物質の周囲は前記硫化物固体電解質で覆われている、
電池を提供する
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電池の内部抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態1における電池1000の断面図を示す。
図2図2は、実施の形態2における電池2000の断面図を示す。
図3図3は、実施例1および比較例1における電池の初期充放電特性を示すグラフである。
図4図4は、実施例4および比較例2における電池の初期充電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電池1000断面図を示す。
【0010】
実施の形態1における電池1000は、正極101、負極103、および電解質層111を備える。
【0011】
電解質層111は、正極101および負極103の間に設けられる。
【0012】
電解質層111は、第1固体電解質材料を含む。
【0013】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される材料である。
Liαβγ ・・・式(1)
ここで、α、β、およびγは、それぞれ独立して、0より大きい値である。
Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0014】
負極103は、負極活物質と硫化物固体電解質とを含む。
【0015】
以上の構成によれば、電池の内部抵抗を低減することができる。すなわち、負極活物質と負極内固体電解質の界面抵抗を低減することができる。
【0016】
ハロゲン化物固体電解質(すなわち、第1固体電解質材料)を用いることで、高いリチウムイオン伝導度を有する電池を実現できる。しかし、ハロゲン化物固体電解質は、対Li電位1.5V以下で還元してしまう。ここで、実施の形態1の電池においては、電気化学的に安定な硫化物固体電解質を用いて、負極活物質の周囲を硫化物固体電解質で覆う。これにより、ハロゲン化物固体電解質と負極活物質の接触を抑制できる。このため、ハロゲン化物固体電解質の還元を低減することができる。この結果、電池の充放電特性を向上させることができる。
【0017】
なお、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
本明細書において用いられる「金属元素」は、
(i)周期表1族から12族中に含まれるすべての元素(ただし、水素を除く)、および
(ii)周期表13族から16族に含まれるすべての元素(ただし、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く)
を含む。すなわち、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
【0019】
なお、組成式(1)においては、Mは、Y(すなわち、イットリウム)を含んでもよい。
【0020】
すなわち、第1固体電解質材料は、金属元素MとしてYを含んでもよい。
【0021】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0022】
Yを含む第1固体電解質材料として、例えば、LiMe(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Meの価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0023】
Meとして、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、Nbのいずれか、もしくはこれらの混合物を用いてもよい。
【0024】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0025】
なお、第1固体電解質材料は、Li2.50.5Zr0.5Cl、または、LiYCl、または、LiYBr、であってもよい。
【0026】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上させることができる。
【0027】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A1)により表される材料であってもよい。
Li6-3d・・・式(A1)
ここで、組成式(A1)においては、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される2つ以上の元素である。
【0028】
また、組成式(A1)においては、0<d<2を満たす。
【0029】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0030】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A2)により表される材料であってもよい。
LiYX・・・式(A2)
ここで、組成式(A2)においては、Xは、Cl、Br、Iおよびからなる群より選択される2つ以上の元素である。すなわち、組成式(A1)において、d=1であってもよい。
【0031】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0032】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δCl・・・式(A3)
ここで、組成式(A3)においては、0<δ≦0.15が満たされる。
【0033】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0034】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δBr・・・式(A4)
ここで、組成式(A4)においては、0<δ≦0.25が満たされる。
【0035】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0036】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A5)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ+a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A5)
ここで、組成式(A5)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0037】
また、組成式(A5)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0038】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0039】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A6)
ここで、組成式(A6)においては、Meは、Al、Sc、Ga、およびBiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0040】
また、組成式(A6)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0041】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0042】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A7)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A7)
ここで、組成式(A7)においては、Meは、Zr、Hf、およびTiからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0043】
また、組成式(A7)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0044】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0045】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A8)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-2a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A8)
ここで、組成式(A8)においては、Meは、TaおよびNbからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0046】
また、組成式(A8)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、および
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0047】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0048】
なお、第1固体電解質材料として、例えば、LiYX、LiMgX、LiFeX、Li(Al、Ga、In)X、Li(Al、Ga、In)X、など、が用いられうる。
【0049】
なお、硫化物固体電解質は、硫化リチウムと硫化リンとを含んでもよい。
【0050】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0051】
なお、硫化物固体電解質は、LiS-Pであってもよい。
【0052】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0053】
硫化物固体電解質として、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、など、が用いられうる。また、これらに、LiX(X:F、Cl、Br、I)、LiO、MO、LiMO(M:P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、Znのいずれか)(p、q:自然数)などが、添加されてもよい。
【0054】
負極活物質は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。
【0055】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を好適に使用できる。
【0056】
なお、負極活物質は、グラファイトを含んでもよい。
【0057】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0058】
負極103は、図1に示されるように、負極活物質粒子104および硫化物固体電解質粒子105を含んでもよい。
【0059】
なお、硫化物固体電解質粒子105の形状は、限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状、など、であってもよい。例えば、硫化物固体電解質粒子105の形状は、粒子状であってもよい。
【0060】
負極活物質粒子104のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子104のメジアン径が0.1μmより小さいと、負極において、負極活物質粒子104および硫化物固体電解質粒子105が、良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。また、負極活物質粒子104のメジアン径が100μmより大きいと、負極活物質粒子104内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0061】
負極活物質粒子104のメジアン径は、硫化物固体電解質粒子105のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子104および硫化物固体電解質粒子105が良好に分散し得る。
【0062】
負極103において、負極活物質粒子104および硫化物固体電解質粒子105の合計体積に対する負極活物質粒子104の体積を表す体積比Vnは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vnが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vnが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0063】
負極103の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極103の厚みが10μm未満である場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保することが困難となる可能性がある。また、負極103の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0064】
正極101は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。正極101は、例えば、正極活物質を含んでもよい。
【0065】
正極活物質には、例えば、
リチウム含有遷移金属酸化物(例えば、Li(NiCoAl)O、Li(NiCoMn)O、LiCoO、など)、
遷移金属フッ化物、
ポリアニオン材料、
フッ素化ポリアニオン材料、
遷移金属硫化物、
遷移金属オキシ硫化物、
遷移金属オキシ窒化物、など、
が用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0066】
正極101は、固体電解質を含んでもよい。以上の構成によれば、正極101の内部のリチウムイオン伝導性を高め、高出力での動作が可能となる。
【0067】
固体電解質材料としては、ハロゲン化物固体電解質または硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質が含まれてもよい。
【0068】
ハロゲン化物固体電解質としては、例えば、上述の電解質層111に含まれる第1固体電解質材料の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0069】
硫化物固体電解質としては、例えば、上述の負極103に含まれる硫化物固体電解質の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0070】
酸化物固体電解質としては、例えば、
LiTi(POおよびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、
(LaLi)TiO系のペロブスカイト型固体電解質、
Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOおよびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、
LiLaZr12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、
LiNおよびそのH置換体、
LiPOおよびそのN置換体、
LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物をベースとして、LiSO、LiCOなどが添加されたガラス、
ガラスセラミックスなど、
が用いられうる。
【0071】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子電解質はリチウム塩を多く含有することができるので、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0072】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH-LiI、LiBH-Pなど、が用いられうる。
【0073】
正極活物質粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。正極活物質粒子のメジアン径が0.1μmより小さいと、正極101において、正極活物質粒子および固体電解質材料が、良好に分散しないため、電池の充放電特性が低下し得る。また、正極活物質粒子のメジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0074】
正極活物質粒子のメジアン径は、固体電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子と固体電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0075】
正極101において、正極活物質粒子および固体電解質材料の合計体積に対する正極活物質粒子の体積を表す体積比Vpは、0.3以上0.95以下であってもよい。体積比Vpが0.3未満である場合には、電池のエネルギー密度を十分に確保することが困難となり得る。一方、体積比Vpが0.95を超える場合には、高出力での電池の動作が困難となり得る。
【0076】
正極101の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。正極101の厚みが10μm未満である場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保することが困難となる可能性がある。また、正極101の厚みが500μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0077】
電解質層111には、イオン伝導性を高める目的で、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質が含まれてもよい。
【0078】
硫化物固体電解質としては、例えば、電解質層111の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0079】
酸化物固体電解質としては、例えば、正極101の例示として挙げる材料を用いてもよい。
【0080】
高分子固体電解質としては、例えば、正極101の例示として挙げる材料を用いてもよい。
【0081】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、正極101の例示として挙げる材料を用いてもよい。
【0082】
正極活物質は被覆してもよい。被覆材料としては、電子伝導性が低い材料が用いられうる。被覆材料として、酸化物材料、酸化物固体電解質などが用いられうる。
【0083】
酸化物材料としては、例えば、SiO、Al、TiO、B、Nb、WO、ZrOなどが用いられうる。
酸化物固体電解質としては、例えば、
LiNbOなどのLi-Nb-O化合物、
LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物、
LiAlOなどのLi-Al-O化合物、
LiSiOなどのLi-Si-O化合物、
LiSO
LiTi12などのLi-Ti-O化合物、
LiZrOなどのLi-Zr-O化合物、
LiMoOなどのLi-Mo-O化合物、
LiVなどのLi-V-O化合物、
LiWOなどのLi-W-O化合物
などが用いられうる。
【0084】
酸化物固体電解質は、イオン導電率が高く、高電位安定性が高い。このため、酸化物固体電解質を用いることで、充放電効率をより向上することができる。
【0085】
なお、電解質層111は、第1固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、電解質層111は、第1固体電解質材料を、例えば、電解質層111の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0086】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0087】
また、電解質層111は、第1固体電解質材料を、例えば、電解質層111の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0088】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0089】
電解質層111は、さらに、不可避的な不純物を含み得る。電解質層111は、固体電解質材料の合成のために用いられた出発原料を含み得る。電解質層111は、固体電解質材料を合成する際に生成した副生成物または分解生成物を含み得る。
【0090】
電解質層111に含まれる固体電解質材料の電解質層111に対する重量比は、実質的に1であり得る。「重量比が実質的に1である」とは、電解質層111に含まれ得る不可避不純物を考慮せずに算出された重量比が1であるという意味である。すなわち、電解質層111は、固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0091】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0092】
以上のように、電解質層111は、第1固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0093】
なお、電解質層111は、第1固体電解質材料として挙げられた材料のうちの2種以上を含んでもよい。例えば、電解質層111は、第1固体電解質材料と硫化物固体電解質材料とを含んでもよい。
【0094】
電解質層111の厚みは1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層111の厚みが1μm未満である場合には、正極101および負極103が短絡する可能性が高まる。また、電解質層111の厚みが300μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0095】
正極101と、電解質層111と、負極103とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上するために、用いられる。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。
また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。
また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0096】
正極101と負極103との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。
導電助剤としては、例えば、
天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、
アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、
炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、
フッ化カーボン、
アルミニウムなどの金属粉末類、
酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、
酸化チタンなどの導電性金属酸化物、
ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、
など、が用いられうる。
炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0097】
なお、実施の形態1における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【0098】
<第1固体電解質材料の製造方法>
実施の形態1における第1固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0099】
生成物の組成比を考慮して二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、LiYClを作製する場合には、LiClとYClを、3:1のモル比で用意する。
【0100】
このとき、原料粉の種類を選択することで、上述の組成式における「M」「Me」、および「X」の元素を決定することができる。また、原料粉、配合比、および合成プロセスを調整することで、「α」、「β」、「γ」、「d」、「δ」、「a」、「x」、および「y」の値が決定される。
【0101】
原料粉をよく混合する。次いで、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉は粉砕される。このようにして、原料粉は反応し、第1固体電解質材料を得る。もしくは、原料粉がよく混合した後、真空中で焼結して、第1固体電解質材料を得てもよい。
【0102】
これにより、結晶相を含む前述の固体電解質材料が得られる。
【0103】
なお、固体電解質材料における結晶相の構成(すなわち、結晶構造)は、原料粉どうしの反応方法および反応条件の選択により、決定され得る。
【0104】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0105】
図2は、実施の形態2における電池2000の概略構成を示す断面図である。
【0106】
実施の形態2における電池2000は、上述の実施の形態1における電池1000の構成に加えて、下記の構成をさらに備える。
【0107】
すなわち、実施の形態2における電池2000は、第2電解質層112をさらに備える。
【0108】
第2電解質層112は、負極103および電解質層111の間に設けられる。
【0109】
第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質を含む。
【0110】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0111】
硫化物固体電解質と正極活物質とが触れた場合には、正極活物質および硫化物固体電解質の界面に、空間電荷層と呼ばれる抵抗層が形成される。一方で、ハロゲン化物固体電解質は、正極活物質と触れても、抵抗層を形成しない。このため、負極103および電解質層111の間に第2電解質層112を設けることで、第2電解質層112に抵抗層が形成されることを抑制できる。この結果、充放電効率を向上させることができる。
【0112】
なお、第2硫化物固体電解質としては、上述の実施の形態1における硫化物固体電解質として示された材料が、用いられうる。
【0113】
なお、第2硫化物固体電解質は、硫化リチウムと硫化リンとを含んでもよい。
【0114】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0115】
なお、第2硫化物固体電解質は、LiS-Pであってもよい。
【0116】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0117】
なお、負極103に含まれる硫化物固体電解質と、第2硫化物固体電解質とは、互いに異なる材料であってもよい。
【0118】
もしくは、負極103に含まれる硫化物固体電解質と、第2硫化物固体電解質とは、互いに同じ材料であってもよい。
【0119】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0120】
なお、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質を、主成分として、含んでもよい。すなわち、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質を、例えば、第2電解質層112の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0121】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0122】
また、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質を、例えば、第2電解質層112の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0123】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0124】
第2電解質層112は、さらに、不可避的な不純物を含み得る。第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質の合成のために用いられた出発原料を含み得る。第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質を合成する際に生成した副生成物または分解生成物を含み得る。
【0125】
第2電解質層112に含まれる第2硫化物固体電解質の第2電解質層112に対する重量比は、実質的に1であり得る。「重量比が実質的に1である」とは、第2電解質層112に含まれ得る不可避不純物を考慮せずに算出された重量比が1であるという意味である。すなわち、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質のみから構成されていてもよい。
【0126】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0127】
以上のように、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質のみから構成されていてもよい。
【0128】
なお、第2電解質層112は、第2硫化物固体電解質とともに、上述の実施の形態1において示された電解質材料を、さらに含んでもよい。
【0129】
電解質層111と第2電解質層112の合計厚みは1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層111と第2電解質層112の合計厚みが1μm未満である場合には、正極101および負極103が短絡する可能性が高まる。また、電解質層111と第2電解質層112の合計厚みが300μmを超える場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0130】
(実施例)
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0131】
(実施例1)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとを、モル比でLiCl:YCl=3:2となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、実施例1による第1固体電解質材料LiYClの粉末を得た。
【0132】
[硫化物固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、LiSとPとを、モル比でLiS:P=75:25となるように、用意した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質について、不活性雰囲気中で、270度で、2時間熱処理した。これにより、実施例1によるガラスセラミックス状の硫化物固体電解質材料LiS-Pを得た。
【0133】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1の第1固体電解質材料LiYClと、Li(NiCoMn)O(以下、NCMと表記する)を、30:70の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の正極材料を作製した。
【0134】
[負極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1の硫化物固体電解質材料LiS-Pと、負極活物質のグラファイトを、60:40の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の負極材料を作製した。
【0135】
[二次電池の作製]
絶縁性外筒の中で、実施例1の負極材料(12mg)、実施例1の硫化物固体電解質材料LiS-P(40mg)、実施例1の第1固体電解質材料LiYCl(40mg)、および実施例1の正極材料(10mg)の順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成形することで、正極、第1電解質層、第2電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0136】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0137】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0138】
(実施例2)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBrとYBrとを、モル比でLiBr:YBr=3:2となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、実施例2の第1固体電解質材料LiYBrの粉末を得た。
【0139】
第1電解質層に実施例2の第1固体電解質材料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0140】
(実施例3)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとZrClとを、モル比でLiCl:YCl3:ZrCl=2.5:0.5:0.5となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、実施例3の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Clの粉末を得た。
【0141】
第1電解質層に実施例3の第1固体電解質材料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0142】
(比較例1)
[負極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1の第1固体電解質材料LiYClと、負極活物質のグラファイトを、60:40の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、比較例1の負極材料を作製した。
【0143】
[二次電池の作成]
実施例1の第1固体電解質材料LiYCl、実施例1の正極材料、および比較例1の負極材料を用いて下記のように比較例1による二次電池を作製した。
【0144】
絶縁性外筒の中で、比較例1の負極材料(12mg)、実施例1の第1固体電解質材料LiYCl(80mg)、および実施例1の正極材料(10mg)の順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成形することで、正極、電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0145】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0146】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、比較例1の電池を作製した。
【0147】
[充放電試験]
上述の実施例1~3および比較例1の電池をそれぞれ用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0148】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0149】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値70μAで、定電流充電し、電圧4.2Vで充電を終了した。
【0150】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値70μAで、放電し、電圧2.5Vで放電を終了した。
【0151】
以上により、上述の実施例1~3および比較例1の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。
【0152】
【表1】

【0153】
(考察)
図3は、実施例1および比較例1における電池の初期充放電特性を示すグラフである。
【0154】
図3と表1とに示される実施例1および比較例1の結果から、電気化学的に安定な硫化物固体電解質を第1固体電解質材料と負極との間に挿入し、負極活物質の周囲を硫化物固体電解質で覆うことで、ハロゲン化物固体電解質である第1固体電解質材料と負極活物質の接触を抑制し、充放電効率が向上することが確認された。
【0155】
表1に示される実施例1~3および比較例1の結果から、LiYCl以外のハロゲン化物固体電解質においても同様の効果が確認された。
【0156】
(実施例4)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとZrClとを、モル比でLiCl:YCl3:ZrCl=2.5:0.5:0.5となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Clの粉末を得た。
【0157】
[硫化物固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、LiSとPとを、モル比でLiS:P=75:25となるように、用意した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質について、不活性雰囲気中で、摂氏270度で、2時間熱処理した。これにより、実施例4のガラスセラミックス状の硫化物固体電解質材料LiS-Pを得た。
【0158】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Clと、Li(NiCoMn)O(以下、NCMと表記する)を、30:70の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例4の正極材料を作製した。
【0159】
[負極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例4の硫化物固体電解質材料LiS-Pと、負極活物質のグラファイトを、60:40の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例4の負極材料を作製した。
【0160】
[二次電池の作成]
絶縁性外筒の中で、実施例4の負極材料(12mg)、実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Cl(80mg)、実施例4の正極材料(10mg)の順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成形することで、正極、電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0161】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0162】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0163】
(実施例5)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとを、モル比でLiCl:YCl=3:2となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYClの粉末を得た。
【0164】
電解質層に実施例5の第1固体電解質材料を用いたこと以外は実施例4と同様の方法で二次電池の作成をした。
【0165】
(実施例6)
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBrとYBrとを、モル比でLiBr:YBr=3:2となるように、用意した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrの粉末を得た。
【0166】
電解質層に実施例6の第1固体電解質材料を用いたこと以外は実施例4と同様の方法で二次電池の作成をした。
【0167】
(比較例2)
[負極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Clと、負極活物質のグラファイトを、60:40の重量比率で用意した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、比較例2の負極材料を作製した。
【0168】
[二次電池の作成]
実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Clと実施例4の正極材料、および、比較例2の負極材料を用いて下記のように比較例2による二次電池を作製した。
【0169】
絶縁性外筒の中で、実施例4の負極材料(12mg)、実施例4の第1固体電解質材料Li2.50.5Zr0.5Cl(80mg)、および実施例4の正極材料(10mg)の順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成形することで、正極、電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0170】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0171】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、比較例2の電池を作製した。
【0172】
[充放電試験]
上述の実施例4~6および比較例2の電池をそれぞれ用いて、以下の条件で、充電試験が実施された。
【0173】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0174】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値70μAで、定電流充電し、電圧4.2Vで充電を終了した。
【0175】
充電終了後の電池について、以下の条件で、交流インピーダンス試験が実施された。
基準電圧:開回路電圧
電圧振幅:10mV
周波数:100kHz-0.01Hz
【0176】
以上により、上述の実施例4~6および比較例2の電池のそれぞれの界面抵抗を得た。この結果は、下記の表2に示される。
【0177】
【表2】

【0178】
(考察)
図4は、実施例4および比較例2における電池の初期充電特性を示すグラフである。
【0179】
図4と表2に示される実施例4および比較例2の結果から、負極活物質の周囲を硫化物固体電解質で覆うことで、ハロゲン化物固体電解質である第1固体電解質材料と負極活物質の接触を抑制し、負極と固体電解質間の界面抵抗の低減が確認された。
【0180】
表2に示される実施例4~6および比較例2の結果からLi2.50.5Zr0.5Cl以外のハロゲン化物固体電解質においても同様の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0182】
1000、2000 電池
101 正極
111 電解質層
112 第2電解質層
103 負極
104 負極活物質粒子
105 硫化物固体電解質粒子
図1
図2
図3
図4