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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】水性香料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230328BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230328BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/34
A61Q13/00 102
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020024906
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130612
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512214971
【氏名又は名称】シャネル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロメイン,カロライン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-119123(JP,A)
【文献】特表2004-512350(JP,A)
【文献】特開平08-231980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11B 9/00- 9/02
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、香料、およびエステルを含む、エタノール非含有香料組成物であって、
前記エステルが、グリセレス-17ココエートまたはグリセレス-20ココエートを含み、
前記組成物の総重量に対して、エタノールの含有量が5重量%未満であり、香料の量が1重量%から40重量%の範囲にあり、エステルの量が20重量%から60重量%の範囲にあり、水の量が15重量%から75重量%の範囲にある、組成物。
【請求項2】
前記エステル対前記水の重量比が、3:1から0.33:1の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
3から10個の炭素原子を有するアルカン-1,2-ジオールを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
香料対エステルの重量比が、1:1.1から1:16の範囲にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
着色剤、顔料、保存剤および/または殺菌剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
水、香料、およびエステルからなるエタノール非含有香料組成物であって、
前記エステルが、グリセレス-17ココエートまたはグリセレス-20ココエートを含
前記組成物の総重量に対して、エタノールの含有量が5重量%未満であり、香料の量が1重量%から40重量%の範囲にあり、エステルの量が20重量%から60重量%の範囲にあり、水の量が15重量%から75重量%の範囲にある、組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のエタノール非含有香料組成物の調製のための方法であって、以下のステップ:
a.攪拌下、水および前記エステルの溶液を調製し、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと、
b.前記溶液に前記香料を加え、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
ファインパフューム組成物、または化粧料組成物またはパーソナルクレンジング組成物の調製のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の香料組成物の使用。
【請求項9】
水への香料の溶解度を改善するための、ならびに/または水および香料を含む香料組成物に透明性を与えるための、請求項1から6のいずれか一項に記載のエタノール非含有香料組成物中でのグリセレス-17ココエートまたはグリセレス-20ココエートを含むエステルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーブオン型化粧料に適切な、エタノール非含有香料組成物であって、明澄で、透明で、貯蔵中安定性である、組成物に関する。本発明はまた、エタノール非含有香料製剤の水中希釈によって得ることが可能な、エタノール非含有香料製品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、香料は、揮発性アルコール、主にエタノール中に、またはエタノールと水との混合物中に、フレグランスオイルを溶解させることによって調製されてきた。界面活性剤の工業化およびコロイド科学の進歩によって、界面活性剤での乳化による水へのフレグランスの可溶化が可能になった。エマルションは、約140nm以下の粒径を有する場合、マイクロエマルションと呼ばれる。フレグランスオイルを含有する、これらのマイクロエマルションの小さいサイズは、明澄なまたはほとんど明澄な香料製品をもたらし、従来のエタノールベースの香料と外観があまり変わらない。マイクロエマルションは、膨潤ミセル、逆ミセルまたは連続する二層として説明できる物理構造を含有する。これらの構造のいずれも、従来のエタノールベースの香料製品中に存在しない。
【0003】
水ベースの香料の主要な利点は、VOC(揮発性有機化合物)の削減である。別の利点は、エタノールまたはエタノール様アルコールがないことに起因して、フレグランスオイルの固有の性質を直接知覚できることである。しかし、マイクロエマルション水ベースの製品は、フレグランスを可溶化するのに必要な界面活性剤の存在に起因して、泡沫状、粘着性、またはさらに皮膚への刺激性の傾向がある。
【0004】
これらの欠点は、界面活性剤または香料の含有量が増加するにつれて拡大する。この含有量は、選択された界面活性剤系の固有効率、フレグランスオイル自体の可溶化の難易度、および最終香料製品中のフレグランスオイルの総含有量によって決まる。いずれの場合でも、T. J. Linは、Surfactants in Cosmetics, Surfactants Sci. Ser. Vol. 16, (1985), 29-52に、これらのマイクロエマルション製品の実際の調製が、1/1をはるかに超える、界面活性可溶化剤系対フレグランスオイルの比率を必要とするであろうと述べた。したがって、低い濃度の皮膚適合性界面活性剤でマイクロエマルションを作ることが必要である。
【0005】
米国特許第5374614号明細書は、界面活性剤含有量を削減した、香料用途のための低いVOCマイクロエマルションを開示している。界面活性剤系は、非イオン性部分および陰イオン性部分からなり、米国特許第7655613号明細書などの当技術分野のその他の開示にもまた表されている。
【0006】
これらの文書における非イオン性部分は、優秀なフレグランス可溶化特性で知られているエトキシル化界面活性剤をベースとしている。両方の特許は、エトキシル化化合物の長いリストを開示している。しかし、米国特許第5374614号明細書に開示されていて消費者製品においてもはや使用されていない、400から1200の範囲の分子量を有し、脂肪酸、脂肪アルコール、およびさらにアルキルフェノールをベースとするエトキシル化界面活性剤は、角質層の脂質を破壊することが知られている。多くの消費者および産業製品における使用に許容され、フレグランス可溶化の他に機能を有し得る一方で、これらの界面活性剤は、皮膚または毛髪への適用のための香料製品にあまり適していない。米国特許第8461099号明細書に開示されているエトキシル化ヒマシ油材料などの高い分子量を有するエトキシル化非イオン性界面活性剤は、個人使用向けの香料に非常に適している。
【0007】
これらの特許に開示されている陰イオン性界面活性剤はまた、多くのパーソナルクレンジング製品、家庭向け製品、洗濯用製品および洗剤製品全般における使用でも知られている。陰イオン性界面活性剤は、個人使用向けの香料製品の場合のように、特に皮膚に沈着して残った場合、皮膚の角質細胞と負に相互作用して刺激を引き起こすことが知られている。
【0008】
したがって、透明で、長期にわたって安定したままである一方で、皮膚に非刺激性である、エタノール非含有水ベースの香料組成物に対する必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第5374614号明細書
【文献】米国特許第7655613号明細書
【文献】米国特許第8461099号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】T. J. Lin, Surfactants in Cosmetics, Surfactants Sci. Ser. Vol. 16, (1985), 29-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、先行技術において必須であると記載されている、エタノールまたは陰イオン性材料に完全に取って代わる、新規の特定のエステルを組み込むことによって、これらの要求の全てに対する予想外で有利な解決策を提供する。したがって、本発明の目的は、貯蔵安定性であり、特に明澄なままであり、かつ皮膚に非刺激性である、新規のリーブオン型エタノール非含有水ベースの香料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水、香料、およびエステルを含む、エタノール非含有香料組成物であって、前記エステルが、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含む、組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、前記エタノール非含有香料組成物の調製のための方法であって、以下のステップ:
a.攪拌下、水および前記エステルの溶液を調製し、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと、
b.前記溶液に香料を加え、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと
を含む、方法も対象とする。
【0014】
本発明はまた、ファインパフューム組成物、または化粧料組成物またはパーソナルクレンジング組成物の調製のための前記香料組成物の使用も対象とする。
【0015】
本発明はまた、水中への香料の溶解度を改善するための、ならびに/または水および香料を含む香料組成物に透明性を与えるための、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含むエステルの使用に関連する。
【0016】
特定のエステル、香料、および水の組合せによって、皮膚に完全に非刺激性である、明澄で、透明で、貯蔵安定性である、エタノール非含有香料組成物の提供が可能になったことを発見したことには、本発明者らの利益である。
【0017】
特に、本発明の意味の範囲内で、組成物のpHは、5℃または45℃での貯蔵の間、長期にわたって(少なくとも3週まで、好ましくは12週まで)安定したままである。安定とは、試験された様々な貯蔵条件下でのpHの変動が1pH単位を超えないことと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
エタノール非含有組成物
本発明の文脈において、エタノール非含有香料組成物は、5重量%未満、好ましくは4重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満のエタノールを含む組成物であり、より好ましい実施形態において、前記組成物はエタノールを含有しない。
【0019】

本発明の香料組成物は、少なくとも50重量%の水を含む。一実施形態において、前記組成物は、5重量%から75重量%の水を含む。さらなる実施形態において、前記組成物は、10重量%から50重量%の水、好ましくは15重量%から30重量%の水を含む。
【0020】
香料
上に述べたとおり、本発明のアルコール非含有組成物は、少なくとも1種の香料を含む。
【0021】
本明細書の文脈において、用語「香料」は、心地良いにおいを提供する、香料の調合において現在使用されている嗅覚的に活性な材料の1つまたはその混合物を意味すると理解される。香料の混合物は、「香料組成物(perfumed composition)」と呼ぶことができる。香料は、天然または合成起源であり得る。一般的な様式において、香料は、テルペン系炭水化物、酢酸エステル、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、ニトリル、窒素もしくは硫黄複素環式化合物および天然もしくは合成起源の精油など多様な化学的クラスに属する疎水性化合物である。当業者は、成分に精通し、香料を添加された製品の性質および所望の嗅覚効果にしたがって、成分を選択できるので、より詳細な説明は、ここでは必要とされない。
【0022】
フレグランスの水溶性は、「log P オクタノール/水」または「log Pow」として対数で通常表される、理論上のオクタノール/水の分配係数と逆相関する。低いlog Pow値は、より水溶性の分子を示す一方で、より高いlog Pow値は、より疎水性の化合物を示す。しかし、log Powは、界面活性剤を含有しない化学環境におけるフレグランスを特徴づけている。界面活性剤が存在する場合、log Powは、界面活性剤ミセルの多様な場所へのフレグランス成分の組み込みによって今や支配されているフレグランス固有の溶解度を、部分的にしか説明していない可能性がある。
【0023】
一実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して、1重量%から40重量%、優先的に2重量%から25重量%の間の香料を含む。
【0024】
極性エモリエントエステル
本発明の香料組成物はまた、極性エモリエントエステルを含む。極性エモリエントエステルは、本発明の意味の範囲内で、両親媒性ポリマーと定義される。両親媒性という用語は、水溶性部分および油溶性部分を含む分子を定義する。実際に、このクラスは、強い親和性を有し、極性材料に対して、したがって香料に対して、化学結合を形成できる可能性がある。
【0025】
したがって、本発明は、エタノール非含有香料組成物であって、前記エステルが、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含む、組成物に関する。
【0026】
好ましい実施形態において、6から22個の炭素原子を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドは、以下の式(I)
【0027】
【化1】
[式中、
m、n、およびlのそれぞれは独立して、0から40の数字を表し、
mとnとlの合計は、8から200、好ましくは9から30、より好ましくは15から25の範囲内にあり、
B1、B2、およびB3は独立して、Hまたは6から22個の炭素原子を有するアシル残基を表すが、但し、B1、B2、およびB3の少なくとも1つは、6から22個の炭素原子を有するアシル残基である]
の化合物を含む。
【0028】
特に、エトキシル化グリセリドは、
(i)B1、B2、およびB3のそれぞれが独立して、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表す、式(I)の化合物、
(ii)B1、B2、およびB3の2つが独立して、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表し、残りがHを表す、式(I)の化合物、
(iii)B1、B2、およびB3の1つが、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表し、残りがHを表す、式(I)の化合物、
(iv)B1、B2、およびB3のそれぞれがHを表す、式(I)の化合物
を含み、化合物(i)/(ii)/(iii)の重量比が、46から90/9から35/1から15である、上の式(I)の化合物の混合物として望ましくは使用される。
【0029】
これらの化合物は、トリグリセリドおよびグリセリドとエチレンオキシドとの間の反応によって好ましくは調製される。
【0030】
6から22個の炭素原子、望ましくは12から18個の炭素原子を有するアシル基は、天然の脂肪もしくは油または合成グリセリドから好ましくは誘導される。好ましい脂肪および油(油脂)としては、植物性のパーム核油、ヒマワリ油、菜種油、ヒマシ油、オリーブ油、大豆油、ならびに動物性脂肪、例えば、獣脂、骨油、魚油、それらの硬化油および半硬化油、ならびにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましくは、ココナッツ油、パーム油および牛脂などの獣脂から誘導されるアシル基である。
【0031】
好ましいエトキシル化グリセリドは、花王S.A.によってLEVENOL C-201Bの商品名で市販されている、グリセレス-17ココエートである。これは、mとnとlの合計が17であり、B1およびB2の1つの基もしくは2つの基のいずれかがココナッツ油から誘導されるアシル基である、上の式(I)の化合物の混合物である、またはエステルがグリセレス-20ココエートを含み、これは、mとnとlの合計が20であり、B1およびB2の1つの基もしくは2つの基のいずれかがココナッツ油から誘導されるアシル基である、式(I)の化合物の混合物である。
【0032】
別の好ましいエトキシル化グリセリドは、グリセレス-20ココエートである。これは、mとnとpの合計が20であり、B1およびB2の1つの基または2つの基のいずれかがココナッツ油から誘導されるアシル基である上の式(I)の化合物の混合物である。
【0033】
一実施形態において、香料対エステルの重量比は、1:1.1から1:16の間に含まれる(1:1.1と1:16を含む)。
【0034】
一実施形態において、エステル対水の重量比は、3:1から0.33:1の間に含まれる(3:1と0.33:1を含む)。
【0035】
好ましい実施形態において、組成物の総重量に対して、組成物中の香料の量は、2重量%から40重量%の範囲であり、エステルの量は、20重量%から60重量%の範囲であり、水の量は、15重量%から75重量%の範囲である。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、水、香料、および6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含むエステルから、好ましくはなり得る。
【0037】
アルカン-1,2-ジオール
本発明のアルコール非含有香料組成物は、場合によってさらに、好ましくは3から10個の炭素原子、好ましくは3から6個の炭素原子を有する、アルカン-1,2-ジオールを含んでよい。
【0038】
好ましい1,2-アルカンジオールは、SymriseによってHYDROLITE(登録商標)5GREENの名前で販売されている、ペンチレングリコール(INCI名)である。
【0039】
別の好ましい1,2-アルカンジオールは、SymriseによってHYDROLITE(登録商標)CGの名前で販売されている、カプリリルグリコール(INCI名)である。
【0040】
グリコールなどのアルカンジオールは、前記組成物を薄めることによって、改善された気化性を有する化粧料組成物を提供する。
【0041】
1,2-アルカンジオールは、組成物の総重量に対して、0.1重量%から20重量%の範囲の量で組成物中に存在してよい。
【0042】
追加の成分
本発明の特定の実施形態によれば、アルコール非含有香料組成物は、いくつかの特定のさらなる利点を提供する、例えば、着色剤、顔料、保存剤および/または殺菌剤を含む1つまたは複数の追加の成分を、場合によってさらに含んでよい。かかる追加の成分は、当業者に公知の化合物である。かかる追加の成分は、合成または天然であり得る。
【0043】
香料組成物の調製の方法
本発明による香料組成物は、例えば、全ての成分の単純混合によって、例えば、手動攪拌または必要に応じて機械攪拌機の使用によって、水および本発明のエステルを混合して明澄で均一な溶液を形成すること、最後に、香料を溶液に加えて、混合して明澄で均一な溶液を形成することによって、調製することができる。
【0044】
いわゆる「ファインパフューム」は、天然または人工の様々なエッセンスの組合せから生じるフレグランスを作り出す技術と定義される。目標は、心地良いおよび不愉快なにおいを設計することである。
【実施例
【0045】
以下の実施例は、制限的な性格をどのようにも示すことなく、本発明を例証するために使用される。これらの実施例において、成分の量は、組成物の総重量に対する重量パーセンテージで与えられる。
【0046】
[実施例1]
- エステル60%、
- 香料20%、および
- 水20%
を含む、一連のエタノール非含有香料組成物を調製した。
【0047】
14種の溶液は、本発明に従って、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含むエステル、または同様の化学構造を示すが本発明の範囲外であるエステルのいずれかを用いて調製された。
【0048】
【表1】
【0049】
上の表に示された結果から分かるとおり、6個から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを有するエステルを含む本発明の組成物は、明澄で透明な溶液をもたらした一方で、様々なエステルを含有する比較の組成物は、不透明な溶液を生じた。
【0050】
[実施例2]
以下の組成物を有する、本発明による2つのさらなるエタノール非含有香料組成物(組成物15および16)を調製した。
【0051】
【表2】
【0052】
組成物2、15、および16は、全て透明である。
【0053】
加えて、本発明によるこれら3つの組成物の長期にわたる安定性もまた、貯蔵後の組成物のpHを測定することによって評価した。
【0054】
【表3】
【0055】
本発明による組成物のpHは、貯蔵の間、長期にわたって安定したままである。試験された様々な貯蔵条件下のpHの変動は、1pH単位を全く超えない。
【0056】
[実施例3]
以下の組成物を有する、本発明による2つのさらなるエタノール非含有香料組成物(組成物17および18)を調製した。
【0057】
【表4】
【0058】
組成物17および18は、両方とも透明である。
【0059】
[実施例4]
以下の組成物を有する、本発明による1つのさらなるエタノール非含有香料組成物(組成物19)を調製した。
【0060】
【表5】
【0061】
組成物19は、透明であり、改善された気化性を示す。
なお、本発明は、以下の実施形態を包含するものとする。
[1]水、香料、およびエステルを含む、エタノール非含有香料組成物であって、前記エステルが、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含む、組成物。
[2]6から22個の炭素原子を有するカルボン酸から誘導される前記エトキシル化グリセリドが、式(I)
【化1】
[式中、
m、n、およびlのそれぞれは独立して、0から40の数字を表し、
mとnとlの合計は、8から200、好ましくは9から30、より好ましくは15から25の範囲内にあり、
B1、B2、およびB3は独立して、Hまたは6から22個の炭素原子を有するアシル残基を表すが、但し、B1、B2、およびB3の少なくとも1つは、6から22個の炭素原子を有するアシル残基である]
の化合物を含む、前記[1]に記載の組成物。
[3]前記エトキシル化グリセリドが、
(i)B1、B2、およびB3のそれぞれが独立して、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表す、式(I)の化合物、
(ii)B1、B2、およびB3の2つが独立して、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表し、残りがHを表す、式(I)の化合物、
(iii)B1、B2、およびB3の1つが、6から22個の炭素原子を有するアシル基を表し、残りがHを表す、式(I)の化合物、
(iv)B1、B2、およびB3のそれぞれがHを表す、式(I)の化合物
を含み、化合物(i)/(ii)/(iii)の重量比が、46から90/9から35/1から15である、前記式(I)の化合物の混合物である、前記[2]に記載の組成物。
[4]6から22個の炭素原子、好ましくは12から18個の炭素原子を有する前記アシル基が、天然の脂肪もしくは油または合成グリセリド、好ましくはココナッツ油から誘導される、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記エステルが、mとnとlの合計が17であり、B1およびB2の1つの基または2つの基のいずれかが、ココナッツ油から誘導されるアシル基である式(I)の化合物の混合物であるグリセレス-17ココエートを含み、または前記エステルが、mとnとlの合計が20であり、B1およびB2の1つの基または2つの基のいずれかが、ココナッツ油から誘導されるアシル基である式(I)の化合物の混合物であるグリセレス-20ココエートを含む、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記エステル対前記水の重量比が、3:1から0.33:1の範囲である、前記[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]3から10個の炭素原子、好ましくは3から6個の炭素原子を有するアルカン-1,2-ジオールを含む、前記[1]から[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]前記組成物の総重量に対して、1重量%から40重量%、好ましくは2重量%から25重量%の香料を含む、前記[1]から[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]香料対エステルの重量比が、1:1.1から1:16の範囲にある、前記[1]から[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10]前記組成物の総重量に対して、香料の量が2重量%から40重量%の範囲にあり、エステルの量が20重量%から60重量%の範囲にあり、水の量が15重量%から75重量%の範囲にある、前記[1]から[9]のいずれか一項に記載の組成物。
[11]5重量%未満、好ましくは4重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満のエタノールを含み、より好ましい実施形態において、エタノールを含有しない、前記[1]から[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]着色剤、顔料、保存剤および/または殺菌剤を含む、前記[1]から[11]のいずれか一項に記載の組成物。
[13]水、香料および6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含むエステルからなる、前記[1]から[12]のいずれか一項に記載の組成物。
[14]前記[1]から[13]のいずれか一項に記載のエタノール非含有香料組成物の調製のための方法であって、以下のステップ:
a.攪拌下、水および前記エステルの溶液を調製し、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと、
b.前記溶液に前記香料を加え、明澄で均一な溶液が得られるまで混合するステップと
を含む、方法。
[15]ファインパフューム組成物、または化粧料組成物またはパーソナルクレンジング組成物の調製のための、前記[1]から[13]に記載の香料組成物の使用。
[16]水への香料の溶解度を改善するための、ならびに/または水および香料を含む香料組成物に透明性を与えるための、6から22個の炭素原子部分を有するカルボン酸から誘導されるエトキシル化グリセリドを含むエステルの使用。