(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】熱伝導性改良剤、熱伝導性改良方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20230328BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230328BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08K3/22
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2021545124
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024187
(87)【国際公開番号】W WO2021049123
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019164406
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克廣
(72)【発明者】
【氏名】岩本 禎士
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235918(WO,A1)
【文献】特開2013-234275(JP,A)
【文献】特開2015-168783(JP,A)
【文献】特開2019-038911(JP,A)
【文献】特開2019-038912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
アスペクト比が
45以上で、長径が30μm未満の第1熱伝導性フィラーと、
アスペクト比が2以下の第2熱伝導性フィラーと
を含
み、
前記第1熱伝導性フィラーが水酸化マグネシウムで形成され、前記第2熱伝導性フィラーが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つで形成される、熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1熱伝導性フィラーの厚みが10nm以上200nm以下である、請求項
1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1熱伝導性フィラーの長径が20μm以下である、請求項1
または請求項2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2熱伝導性フィラーの粒径が2μm以上である、請求項1から
請求項3のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2熱伝導性フィラーの粒径が前記第1熱伝導性フィラーの長径よりも大きい、請求項1から
請求項4のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第1熱伝導性フィラーおよび/または前記第2熱伝導性フィラーが、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸とのエステル類、アクリル系ポリマーおよびシリコーン処理剤からなる群から選択される表面処理剤のうち、少なくとも1つで表面処理されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂100重量部に対し、前記第1熱伝導性フィラーおよび前記第2熱伝導性フィラーを90重量部以上700重量部以下含有する、請求項1から
請求項6のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2熱伝導性フィラーの含有量に対する前記第1熱伝導性フィラーの含有量の比(第1熱伝導性フィラーの重量/第2熱伝導性フィラーの重量)が、0.1以上5以下である、請求項1から
請求項7のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1熱伝導性フィラーおよび前記第2熱伝導性フィラーの合計体積比率が、25%以上70%以下である、請求項1から
請求項8のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から
請求項9のいずれか
1項に記載の熱伝導性樹脂組成物から形成される、熱伝導性樹脂成形体。
【請求項11】
シート状である、請求項
10に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項12】
面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比(厚み方向の熱伝導率/面方向の熱伝導率)が0.5以上である、請求項
11に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項13】
アスペクト比が
45以上で、長径が30μm未満の第1熱伝導性フィラーと、
アスペクト比が2以下の第2熱伝導性フィラーと
を含
み、
前記第1熱伝導性フィラーが水酸化マグネシウムで形成され、前記第2熱伝導性フィラーが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つで形成される、熱伝導性改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性改良剤、熱伝導性改良方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、携帯電話などの電子機器には、電子部品が多く内蔵されている。電子部品は、電子機器の駆動により発熱して電子機器に悪影響を及ぼすため、一般的に、発熱体の熱を放熱する放熱体が用いられる。また、発熱体の熱を放熱体へ伝える熱伝導部材も度々用いられる。熱伝導部材は、代表的には、熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物で形成される(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0003】
例えば、近年の電子部品の高密度化・薄型化の理由から、上記熱伝導部材において、さらに優れた熱伝導性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-24045号公報
【文献】国際公開第2015/190324号
【文献】特開2014-234407号公報
【文献】特許第6490877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、優れた熱伝導性を有する樹脂組成物の提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面によれば、熱伝導性樹脂組成物が提供される。この熱伝導性樹脂組成物は、樹脂と、アスペクト比が10以上で、長径が30μm未満の第1熱伝導性フィラーと、アスペクト比が2以下の第2熱伝導性フィラーとを含む。
1つの実施形態においては、上記第1熱伝導性フィラーは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1つで形成される。
1つの実施形態においては、上記第2熱伝導性フィラーは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つで形成される。
1つの実施形態においては、上記第1熱伝導性フィラーの厚みは10nm以上200nm以下である。
1つの実施形態においては、上記第1熱伝導性フィラーの長径は20μm以下である。
1つの実施形態においては、上記第2熱伝導性フィラーの粒径は2μm以上である。
1つの実施形態においては、上記第2熱伝導性フィラーの粒径は上記第1熱伝導性フィラーの長径よりも大きい。
1つの実施形態においては、上記熱伝導性樹脂組成物は、上記樹脂100重量部に対し、上記第1熱伝導性フィラーおよび上記第2熱伝導性フィラーを90重量部以上700重量部以下含有する。
1つの実施形態においては、上記第2熱伝導性フィラーの含有量に対する上記第1熱伝導性フィラーの含有量の比(第1熱伝導性フィラーの重量/第2熱伝導性フィラーの重量)は、0.1以上5以下である。
1つの実施形態においては、上記熱伝導性樹脂組成物における、上記第1熱伝導性フィラーおよび上記第2熱伝導性フィラーの合計体積比率は、25%以上70%以下である。
【0007】
本発明の別の局面によれば、熱伝導性樹脂成形体が提供される。この熱伝導性樹脂成形体は、上記熱伝導性樹脂組成物から形成される。
1つの実施形態においては、上記熱伝導性樹脂成形体はシート状である。
1つの実施形態においては、上記シート状の熱伝導性樹脂成形体は、面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比(厚み方向の熱伝導率/面方向の熱伝導率)が0.5以上である。
【0008】
本発明のさらに別の局面によれば、熱伝導性改良剤が提供される。この熱伝導性改良剤は、アスペクト比が10以上で、長径が30μm未満の第1熱伝導性フィラーと、アスペクト比が2以下の第2熱伝導性フィラーとを含む。
【0009】
本発明のさらに別の局面によれば、熱伝導性改良方法が提供される。この熱伝導性改良方法は、上記熱伝導性改良剤を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アスペクト比が10以上で長径が30μm未満の第1熱伝導性フィラーとアスペクト比が2以下の第2熱伝導性フィラーとを組み合わせることにより、優れた熱伝導性を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1の樹脂組成物を用いて成形した成形体の断面SEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0013】
(用語の定義)
本明細書における用語の定義は、下記の通りである。
1.粒径
粒径は、粒度分布測定における平均粒径である。
2.長径
走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定した値であり、無作為に選んだ1次粒子の長径(例えば、
図1Aおよび
図1BのL)の平均値である。なお、一次粒子とは、SEMにより観察される最小の粒子であって、その他凝集している粒子(二次粒子)とは区別される。
3.厚み
SEM観察により測定した値であり、無作為に選んだ1次粒子の厚み(例えば、
図1Aおよび
図1BのT)の平均値である。
4.アスペクト比(長径/厚み)
上記長径から上記厚みを除して算出した値である。
【0014】
A.熱伝導性改良剤
本発明の1つの実施形態における熱伝導性改良剤は、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーを含む。
【0015】
A-1.第1熱伝導性フィラー
上記第1熱伝導性フィラーのアスペクト比は、10以上であり、好ましくは30以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは55以上、特に好ましくは65以上である。例えば、第1熱伝導性フィラー間に後述の第2熱伝導性フィラーが分散して、熱伝導パスが形成されやすいからである。一方、第1熱伝導性フィラーのアスペクト比は、例えば200以下であり、好ましくは100以下である。このような第1熱伝導性フィラーは、後述の樹脂に充填しやすく、例えば、後述の熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0016】
第1熱伝導性フィラーの長径は、例えば0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。上記熱伝導パスが良好に形成され得るからである。一方、第1熱伝導性フィラーの長径は、30μm未満であり、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。このような第1熱伝導性フィラーは、後述の樹脂に充填しやすく、例えば、後述の熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0017】
第1熱伝導性フィラーの厚みは、例えば10nm以上であり、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。このような第1熱伝導性フィラーは、後述の樹脂に充填しやすく、例えば、後述の熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。一方、第1熱伝導性フィラーの厚みは、例えば200nm以下であり、好ましくは180nm以下である。上記熱伝導パスが良好に形成され得るからである。
【0018】
第1熱伝導性フィラーは、上記アスペクト比を満足し得る限り、任意の適切な形状を有し得る。第1熱伝導性フィラーの形状としては、例えば、鱗片状、板状、膜状、繊維状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状が挙げられる。好ましくは、鱗片状が採用される。上記アスペクト比を良好に達成し得るからである。また、このような第1熱伝導性フィラーは面方向に等方的な熱伝導率を有し得るため、優れた熱伝導性を達成し得る。具体的には、このような第1熱伝導性フィラーを用いることにより、後述の熱伝導性樹脂成形体において、フィラー間のチャンネルが繋がりやすく(熱伝導パスが形成されやすく)、優れた熱伝導性を達成し得る。
【0019】
第1熱伝導性フィラーは、代表的には、母体粒子を含む。第1熱伝導性フィラー(母体粒子)は、任意の適切な材料で形成され得る。代表的には、第1熱伝導性フィラー(母体粒子)は、絶縁性材料で形成される。第1熱伝導性フィラー(母体粒子)の形成材料としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、窒化ホウ素、水酸化アルミニウムが挙げられる。1つの実施形態においては、第1熱伝導性フィラー(母体粒子)は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1つで形成される。中でも、水酸化マグネシウムが好ましい。このような材料を用いることにより、例えば、上記長径およびアスペクト比を良好に達成し得る。具体的には、上記長径およびアスペクト比を有する粒子を良好に調製することができる。また、コスト面にも優れ、難燃性の向上にも寄与し得る。
【0020】
上記母体粒子は、表面処理が施されていることが好ましい。具体的には、母体粒子は、任意の適切な表面処理剤を用いて表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸とのエステル類、アクリル系ポリマーおよびシリコーン処理剤からなる群から選択される少なくとも1つが用いられる。
【0021】
上記高級脂肪酸類としては、例えば、ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸、これら高級脂肪酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0022】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
上記リン酸エステル類としては、例えば、オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコールとが脱水縮合したリン酸モノエステル、リン酸ジエステルまたはこれらの混合物、それらのアルカリ金属塩またはアミン塩が挙げられる。
【0024】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルエトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ベーター(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。
【0025】
上記多価アルコールと脂肪酸とのエステル類としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエートが挙げられる。
【0026】
母体粒子の表面処理方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、湿式法を採用してもよいし、乾式法を採用してもよい。湿式法を採用する場合、例えば、母体粒子のスラリーに、上記表面処理剤を液状または分散体の状態で添加して混合する方法が用いられる。ここで、混合は加熱(例えば100℃以下に)しながら行ってもよい。混合方法は特に限定されず、例えば、機械的に行ってもよい。乾式法を採用する場合、例えば、母体粒子(粉末)をヘンシェルミキサー等の混合機を用いて攪拌しながら、ここに、上記表面処理剤を液状、固形状または分散体の状態で添加して加熱または非加熱下で混合する方法が用いられる。
【0027】
表面処理剤の使用量は、母体粒子の10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0重量%~8.0重量%、特に好ましくは1.0重量%~3.0重量%である。このような範囲によれば、例えば、フィラーの熱伝導性を低下させることなく、分散性を向上させて、後述の熱伝導性樹脂成形体を良好に成形し得る。
【0028】
上記表面処理後、母体粒子は、必要に応じて、任意の適切なその他の処理が施され得る。その他の処理としては、例えば、水洗、脱水、造粒、乾燥、粉砕、分級が挙げられる。
【0029】
上記表面処理は、後述の被覆層が形成された母体粒子に対しても施し得る。この場合、表面処理に用いられる表面処理剤としては、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤および多価アルコールと脂肪酸とのエステル類からなる群から選択される少なくとも一つが好ましく用いられる。
【0030】
第1熱伝導性フィラーは、上記母体粒子の表面に形成された被覆層を有し得る。被覆層は、母体粒子に任意の適切な被覆剤を作用させることにより形成され得る。
【0031】
1つの実施形態においては、第1熱伝導性フィラーの耐酸性を向上させるために、母体粒子表面に、耐酸性を有する被覆層が形成される。耐酸性を有する被覆層は、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニア、亜鉛およびホウ素からなる群から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物を含む。好ましくは、耐酸性を有する被覆層は、ケイ素の酸化物および/またはケイ素の水酸化物を含む。この場合、例えば、被覆剤としてケイ酸およびその可溶性塩類を母体粒子に作用させることにより被覆層を形成することができる。
【0032】
被覆剤の使用量は、母体粒子の2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01重量%~1.5重量%、特に好ましくは0.01重量%~1.0重量%である。
【0033】
A-2.第2熱伝導性フィラー
上記第2熱伝導性フィラーのアスペクト比は、2以下である。具体的には、第2熱伝導性フィラーのアスペクト比は、1以上2以下である。このような第2熱伝導性フィラーを用いることにより、上記第1熱伝導性フィラー間に介在し、良好に(例えば、様々な方向に)熱伝導パスを形成し得る。その結果、優れた熱伝導性を達成し得る。具体的には、後述の熱伝導性樹脂成形体において、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。また、このような第2熱伝導性フィラーは、後述の樹脂への充填性に優れ、例えば、後述の熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0034】
第2熱伝導性フィラーの粒径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上である。このような第2熱伝導性フィラーを用いることにより、上記第1熱伝導性フィラー間に介在し、良好に(例えば、様々な方向に)熱伝導パスを形成し得る。例えば、第1熱伝導性フィラーの配向を乱し得る。その結果、優れた熱伝導性を達成し得る。具体的には、後述の熱伝導性樹脂成形体において、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。また、第1熱伝導性フィラーと組み合わせることによる効果をより顕著に得られ得る。1つの実施形態においては、第2熱伝導性フィラーの粒径は、第1熱伝導性フィラーの長径よりも大きい。一方、第2熱伝導性フィラーの粒径は、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。このような第2熱伝導性フィラーは、後述の樹脂への充填性に優れ、例えば、後述の熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0035】
第2熱伝導性フィラーは、上記アスペクト比を満足し得る限り、任意の適切な形状を有し得る。第2熱伝導性フィラーの形状としては、例えば、球状、凝集塊状、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状が挙げられる。好ましくは、球状が採用される。このような第2熱伝導性フィラーを用いることにより、上記第1熱伝導性フィラー間に介在し、良好に(例えば、様々な方向に)熱伝導パスを形成し得る。その結果、優れた熱伝導性を達成し得る。具体的には、後述の熱伝導性樹脂成形体において、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。
【0036】
第2熱伝導性フィラーは、代表的には、母体粒子を含む。第2熱伝導性フィラー(母体粒子)は、任意の適切な材料で形成され得る。代表的には、第2熱伝導性フィラー(母体粒子)は、絶縁性材料で形成される。第2熱伝導性フィラー(母体粒子)の形成材料としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物、窒化ホウ素、シリカが挙げられる。1つの実施形態においては、第2熱伝導性フィラー(母体粒子)は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つで形成される。中でも、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムが好ましく、さらに好ましくは酸化マグネシウムである。上記第1熱伝導性フィラー間に介在させるのに適しており(例えば、上記形状を良好に達成し得)、優れた熱伝導性を達成し得るからである。また、これらの材料はコスト面にも優れ得る。
【0037】
上記第1熱伝導性フィラーと同様、第2熱伝導性フィラーの母体粒子は表面処理が施されていてもよい。また、被覆層が形成されていてもよい。なお、表面処理および被覆層の詳細については、上述のとおりである。
【0038】
A-3.含有比
上記熱伝導性改良剤において、上記第2熱伝導性フィラーの含有量に対する上記第1熱伝導性フィラーの含有量の比(第1熱伝導性フィラーの重量/第2熱伝導性フィラーの重量)は、0.1以上であることが好ましい。このような含有比によれば、後述の熱伝導性樹脂成形体において、第1熱伝導性フィラーと第2熱伝導性フィラーとのチャンネルが繋がりやすく、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。1つの実施形態においては、上記含有比は、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。
【0039】
上記第2熱伝導性フィラーの含有量に対する上記第1熱伝導性フィラーの含有量の比は、5以下であることが好ましい。このような含有比によれば、後述の熱伝導性樹脂成形体において、第1熱伝導性フィラー間を繋ぐ第2熱伝導性フィラーのチャンネルが十分に形成され、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。また、後述の熱伝導性樹脂成形体を良好に成形し得る。1つの実施形態においては、上記含有比は、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0040】
A-4.その他
上記熱伝導性改良剤は、その他の成分を含み得る。その他の成分としては、例えば、後述の任意成分が採用される。
【0041】
A-5.使用方法
本発明の1つの実施形態における熱伝導性改良方法は、上記熱伝導性改良剤を用いる。具体的には、熱伝導性を向上させたい対象物に上記熱伝導性改良剤を含有させる。例えば、上記熱伝導性改良剤を樹脂に含有させる。以下、樹脂と熱伝導性改良剤を含有する熱伝導性樹脂組成物について説明する。
【0042】
B.熱伝導性樹脂組成物
本発明の1つの実施形態における熱伝導性樹脂組成物は、樹脂、上記第1熱伝導性フィラーおよび上記第2熱伝導性フィラーを含む。
【0043】
B-1.樹脂
上記樹脂は、例えば、得られる熱伝導性樹脂組成物の用途等に応じて、任意の適切な樹脂が選択され得る。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーが挙げられる。また、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水添ポリマー、スチレン-イソプレンブロック共重合体およびその水添ポリマー等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが挙げられる。さらには、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。
【0044】
1つの実施形態においては、樹脂としてシリコーンゴムが好ましく用いられる。熱伝導性樹脂組成物を成形体とした際に、柔軟性、形状追従性、密着性(例えば、電子部品等の発熱体への密着性)および耐熱性に優れ得るからである。
【0045】
上記熱伝導性樹脂組成物は、上記樹脂の架橋剤を含み得る。また、上記樹脂は架橋剤で架橋された架橋物であってもよい。例えば、上記樹脂としてシリコーンゴムを用いる場合、シリコーン骨格を有する高分子(シリコーン)の架橋は、過酸化物による架橋であってもよいし、付加反応型の架橋であってもよい。優れた耐熱性を得る観点から、好ましくは、過酸化物による架橋が採用される。
【0046】
上記過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエートが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。架橋剤の使用量は、上記樹脂100重量部に対し、例えば0.5重量部~5重量部である。架橋剤を用いる場合は、架橋促進剤や架橋促進助剤を併用し得る。
【0047】
B-2.熱伝導性フィラーの含有割合(含有量)
上記熱伝導性樹脂組成物における上記第1熱伝導性フィラーのおよび上記第2熱伝導性フィラーの合計含有割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。このような範囲によれば、極めて優れた熱伝導性を達成し得る。一方、上記合計含有割合は、好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。このような範囲によれば、熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0048】
熱伝導性樹脂組成物において、上記樹脂100重量部に対し、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーを90重量部以上含有させることが好ましく、より好ましくは140重量部以上、さらに好ましくは200重量部以上、特に好ましくは250重量部以上である。一方、上記樹脂100重量部に対し、第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーを700重量部以下含有させることが好ましく、さらに好ましくは600重量部以下である。なお、樹脂に対する充填率が低い(例えば、300重量部以下)場合であっても、優れた熱伝導性を達成し得ることが、本発明の特徴の1つである。
【0049】
熱伝導性樹脂組成物における第1熱伝導性フィラーおよび第2熱伝導性フィラーの合計体積比率は、好ましくは25%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上である。このような範囲によれば、極めて優れた熱伝導性を達成し得る。一方、上記合計体積比率は、好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である。このような範囲によれば、熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0050】
熱伝導性樹脂組成物における、第1熱伝導性フィラーと第2熱伝導性フィラーとの含有比は、上述の熱伝導性改良剤における含有比と同様である。
【0051】
熱伝導性樹脂組成物における第1熱伝導性フィラーの含有割合は、好ましくは5重量%以上である。このような範囲によれば、第1熱伝導性フィラーを良好に配向させて、優れた熱伝導性を達成し得る。例えば、フィラー間のチャンネルが繋がりやすく、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。一方、熱伝導性樹脂組成物における第1熱伝導性フィラーの含有割合は、好ましくは50重量%以下である。このような範囲によれば、熱伝導性樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0052】
熱伝導性樹脂組成物において、上記樹脂100重量部に対し、第1熱伝導性フィラーを20重量部以上含有させることが好ましく、さらに好ましくは70重量部以上である。一方、上記樹脂100重量部に対し、第1熱伝導性フィラーを140重量部以下含有させることが好ましく、さらに好ましくは110重量部以下である。
【0053】
熱伝導性樹脂組成物における第2熱伝導性フィラーの含有割合は、好ましくは20重量%以上である。このような範囲によれば、フィラー間のチャンネルが繋がりやすく、優れた熱伝導性(例えば、厚み方向の熱伝導性)を達成し得る。一方、第2熱伝導性フィラーの含有割合は、好ましくは70重量%以下である。このような範囲によれば、上記第1熱伝導性フィラーの含有量を十分に確保して、優れた熱伝導性を達成し得る。
【0054】
熱伝導性樹脂組成物において、上記樹脂100重量部に対し、第2熱伝導性フィラーを50重量部以上含有させることが好ましく、さらに好ましくは100重量部以上である。一方、上記樹脂100重量部に対し、第2熱伝導性フィラーを500重量部以下含有させることが好ましく、さらに好ましくは450重量部以下ある。
【0055】
B-3.任意成分
上記熱伝導性樹脂組成物は、上述したように、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤等の任意成分を含み得る。また、上記熱伝導性樹脂組成物は、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤、難燃剤、カップリング剤等の任意成分を含み得る。熱伝導性樹脂組成物における任意成分の含有割合は、例えば0.05重量%~10重量%である。
【0056】
C.熱伝導性樹脂成形体
本発明の1つの実施形態における熱伝導性樹脂成形体は、上記熱伝導性樹脂組成物から形成される。具体的には、熱伝導性樹脂成形体は、上記樹脂、上記第1熱伝導性フィラーおよび上記第2熱伝導性フィラーを含む。
【0057】
上記熱伝導性樹脂成形体の形状(形態)は、特に限定されないが、代表的にはシート状(放熱シート)とされる。この場合、放熱シートの厚みは、例えば200μm以上であり、代表的には200μm~3mmである。放熱シートは、厚み方向の熱伝導率が重要視される場合がある。本発明によれば、優れた厚み方向の熱伝導率を達成し得る。具体的には、放熱シートの面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比(厚み方向の熱伝導率/面方向の熱伝導率)は、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上である。1つの実施形態においては、放熱シートの厚み方向の熱伝導率は、例えば0.70W/m・K以上、好ましくは0.85W/m・K以上、さらに好ましくは1.00W/m・K以上、特に好ましくは1.20W/m・K以上である。
【0058】
上記放熱シートの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、上記樹脂と、上記第1熱伝導性フィラーと、上記第2熱伝導性フィラーと、必要に応じて上記任意成分とを混合(混練)して得られた熱伝導性樹脂組成物をプレスして放熱シートを得る。別の実施形態においては、上記樹脂と、上記第1熱伝導性フィラーと、上記第2熱伝導性フィラーと、必要に応じて上記任意成分とを押出機に供給して溶融混練し、これを押出機から押し出すことによって放熱シートを得る。本発明は、成形体の成形方法(放熱シートの製造方法)にかかわらず、優れた熱伝導性を達成し得ることを特徴の1つとする。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は、断りがない限り、下記の通りである。
1.粒径
レーザー回析散乱法(装置:マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000)により粒径を測定した。測定用試料は、フィラー0.7gにヘキサメタリン酸ナトリウム溶液(0.2%)を70mL加えた後、280μAで3分間超音波処理を施すことにより調製した。
2.長径
SEM観察により長径を算出した。具体的には、フィラー(粒子)のSEM写真の中から無作為に選んだ10個の1次粒子の長径を測定し、得られた測定値の算術平均(平均長径)を求めた。なお、長径のSEM観察の倍率は、第1熱伝導性フィラーについては2,000倍、第2熱伝導性フィラーについては500倍とした。
3.厚み
SEM観察により厚みを算出した。具体的には、フィラー(粒子)のSEM写真の中から無作為に選んだ10個の1次粒子の厚みを測定し、得られた測定値の算術平均(平均厚み)を求めた。なお、厚みのSEM観察の倍率は、第1熱伝導性フィラーについては20,000倍、第2熱伝導性フィラーについては500倍とした。
4.アスペクト比
SEM観察によりアスペクト比を算出した。具体的には、上記平均長径を上記平均厚みで除してアスペクト比を算出した。
【0060】
[実施例1]
シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「TSE-201」)100重量部に対し、第1熱伝導性フィラー(長径4μm、厚み57nm、アスペクト比70の鱗片状の水酸化マグネシウム粒子)90重量部、第2熱伝導性フィラー(協和化学工業株式会社製の「パイロキスマ3320」、粒径20μm、アスペクト比1の球状の酸化マグネシウム粒子)210重量部および架橋剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「TC-8」)2重量部の割合で、小型2軸プラストミル(Brabender社製)を用いて混合し、樹脂組成物を得た。
【0061】
[実施例2]
第1熱伝導性フィラーの配合量を30重量部とし、第2熱伝導性フィラーの配合量を270重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0062】
[実施例3]
第1熱伝導性フィラーの配合量を120重量部とし、第2熱伝導性フィラーの配合量を180重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0063】
[実施例4]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径3μm、アスペクト比1の酸化マグネシウム粒子(協和化学工業株式会社製の「パイロキスマ5301」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0064】
[実施例5]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径50μm、アスペクト比1の球状の酸化マグネシウム粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0065】
[実施例6]
第1熱伝導性フィラーとして、長径1.6μm、厚み32nm、アスペクト比50の鱗片状の水酸化マグネシウム粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0066】
[実施例7]
第1熱伝導性フィラーとして、長径9μm、厚み150nm、アスペクト比60の鱗片状の水酸化マグネシウム粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0067】
[実施例8]
第1熱伝導性フィラーの配合量を100重量部とし、第2熱伝導性フィラーの配合量を400重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0068】
[実施例9]
第1熱伝導性フィラーの配合量を50重量部とし、第2熱伝導性フィラーの配合量を50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0069】
[実施例10]
第1熱伝導性フィラーの配合量を100重量部とし、第2熱伝導性フィラーの配合量を50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0070】
[実施例11]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径20μm、アスペクト比1の球状の酸化アルミニウム粒子(昭和電工株式会社製の「AS-20」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0071】
[比較例1]
第2熱伝導性フィラーを配合せずに、第1熱伝導性フィラーの配合量を150重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0072】
[比較例2]
第1熱伝導性フィラーを配合せずに、第2熱伝導性フィラーの配合量を300重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0073】
[比較例3]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径3μm、アスペクト比1の酸化マグネシウム粒子(協和化学工業株式会社製の「パイロキスマ5301」)を用いたこと以外は比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0074】
[比較例4]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径50μm、アスペクト比1の球状の酸化マグネシウム粒子を用いたこと以外は比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0075】
[比較例5]
第2熱伝導性フィラーの配合量を100重量部としたこと以外は比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0076】
[比較例6]
第2熱伝導性フィラーの配合量を150重量部としたこと以外は比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0077】
[比較例7]
第2熱伝導性フィラーとして、粒径20μm、アスペクト比1の球状の酸化アルミニウム粒子(昭和電工株式会社製の「AS-20」)を用いたこと以外は比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0078】
[比較例8]
第2熱伝導性フィラーを配合せずに、第1熱伝導性フィラーの配合量を200重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物の作製を試みた。しかしながら、良好に作製することはできなかった。
【0079】
<評価方法>
各実施例および比較例で得られた樹脂組成物について、ISO/CD 22007-2により、熱伝導率を測定した。具体的には、得られた樹脂組成物を、170℃、15MPa、10分間の条件でプレス成形(1次架橋処理)して厚み7.5mm×30mmφの円盤状に成形した後、ギアオーブンにて200℃、4時間の条件で加熱(2次架橋処理)し、厚み7.5mm×30mmφの円盤状の測定用試料を得た。
【0080】
得られた測定用試料に対し、ホットディスク法熱伝導率測定装置(京都電子工業製の「TPS-2500S」)を用いて、室温大気中における厚み方向および面方向の熱伝導率を測定した。測定に際し、6mmφのセンサーを用いた。
【0081】
測定結果(厚み方向の熱伝導率、面方向の熱伝導率および面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比(厚み方向の熱伝導率/面方向の熱伝導率))を表1および表2にまとめる。
【0082】
【0083】
【0084】
表1および表2から、第1熱伝導性フィラーと第2熱伝導性フィラーとを組み合わせることにより優れた熱伝導性が得られることがわかる。
【0085】
比較例1では、厚み方向の熱伝導率が面方向の熱伝導率に比べて格段に低い。これは、フィラーが成形により配向したためと考えられる。
【0086】
例えば、実施例1-3は、比較例2に比べ、面方向だけでなく厚み方向においても熱伝導率が高い。このように、比較例2で用いたフィラーの一部を、単独では厚み方向の熱伝導率が低い比較例1で用いたフィラーで置き換えることで、厚み方向の熱伝導率が大きく向上することは予期せぬ優れた効果といえる。
【0087】
フィラーを高配合させた実施例8では、厚み方向の熱伝導率が面方向の熱伝導率よりも高い。
【0088】
<SEM観察>
実施例1の樹脂組成物を用いて成形した成形体の断面のSEM観察(2000倍)を行った。その結果(樹脂断面の画像)を
図2に示す。なお、断面SEM観察の測定用試料として、上記熱伝導率測定後の成形体を使用した。成形体の切断は、断面試料作製装置(日本電子株式会社製の「IB-09010CP」)を用いて行った。具体的には、アルゴンガス雰囲気の中、成形体に対して5.5kVの出力で4時間イオンビームを照射して断面を切り出した。
【0089】
図2中に示す矢印は、測定用試料の成形時のプレス方向を示している。具体的には、測定用試料は、
図2の上から下に向かってプレスして成形された成形体である。プレス方向に関係なく、粒径の大きい球状フィラーの周りでは、鱗片状フィラーが様々の方向に配向していることがわかる。なお、鱗片状フィラーのみを用いる場合(例えば、比較例1では)、鱗片状フィラーは横方向(プレス面)に配向する。
【符号の説明】
【0090】
L.長径
T.厚み