(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】二重床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/02 20060101AFI20230329BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20230329BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20230329BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20230329BHJP
E04B 5/12 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E04B5/02 F
E04F15/00 101D
E04B1/86 M
E04B5/43 H
E04B5/12
E04B5/02 M
(21)【出願番号】P 2019046246
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-132093(JP,A)
【文献】特開2015-137449(JP,A)
【文献】特開平07-279287(JP,A)
【文献】特開2017-057646(JP,A)
【文献】特開2019-031777(JP,A)
【文献】特開平10-245969(JP,A)
【文献】特開2000-179041(JP,A)
【文献】特開平05-340029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04F 15/00
E04B 1/86
E04B 1/10,1/14
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の床部と、
床部と接合されて上部側が床部の上面よりも上方に突出するように設けられた木質の梁と、
床部の上に配置された複数の支持脚と、
複数の支持脚及び梁の上に設けられた床板構成部と、
を備え
、
木質の床部は、CLT又は集成材により形成された床部、あるいは、CLT又は集成材により形成された床部と当該床部の上面にコンクリートを打設して形成されたコンクリート床部とで構成された床部であることを特徴とする二重床構造。
【請求項2】
梁の上面と床板構成部との間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体を備えたことを特徴とする請求項1に記載の二重床構造。
【請求項3】
床板構成部支持体は、梁の上面と接触する面及び床板構成部と接触する面のうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された板であることを特徴とする請求項2に記載の二重床構造。
【請求項4】
床板構成部支持体は、複数の板が積層されて構成され、
複数の板は、それぞれ異なる材料により形成された遮音性能が異なる板、あるいは、それぞれ同じ材料により形成されて遮音性能が異なる板であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の二重床構造。
【請求項5】
床部と梁とが金属製の接合部材を介して接合され、
接合部材は、梁の下面に沿って当該梁の材軸方向及び梁の幅方向に延長するとともに梁の幅方向において梁の側面よりも外方向に突出する床接合部を有した床接合板と、床接合板より延長するように設けられた梁接合板とを備え、
梁接合板と梁とが接合手段により接合され、かつ、床接合板の床接合部と床部とが接合手段により接合されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の二重床構
造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質の床部と、床部の上面よりも上方に突出するように形成された木質の梁とを備えた逆梁工法における二重床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梁の上部側が床の上面よりも上方に突出するように形成された逆梁工法が知られている(特許文献1参照)。
また、スラブ上に支持脚を介して床板構成部を設けた二重床構造が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-58572号公報
【文献】特開2015-137449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))等の木材を用いて形成された床、梁、柱等を使用した大中規模の建築物が注目され始めているが、このようなCLT等の木材を用いた建築物において上述した逆梁工法に適用した二重床構造は確立されていない。
本発明は、木質の床及び木質の梁による逆梁工法に適用した二重床構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る二重床構造は、木質の床部と、床部と接合されて上部側が床部の上面よりも上方に突出するように設けられた木質の梁と、床部の上に配置された複数の支持脚と、複数の支持脚及び梁の上に設けられた床板構成部と、を備え、木質の床部は、CLT又は集成材により形成された床部、あるいは、CLT又は集成材により形成された床部と当該床部の上面にコンクリートを打設して形成されたコンクリート床部とで構成された床部であることを特徴とするので、木質の床及び木質の梁による逆梁工法に適用した二重床構造を提供できる。
また、梁の上面と床板構成部との間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体を備えたことを特徴とするので、当該逆梁となる梁を介した下階への遮音性能を向上させることができる二重床構造を提供できる。
また、床板構成部支持体は、梁の上面と接触する面及び床板構成部と接触する面のうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された板であることを特徴とするので、凹凸面が変形することにより、遮音性能が向上する。
また、床板構成部支持体は、複数の板が積層されて構成され、複数の板は、それぞれ異なる材料により形成された遮音性能が異なる板、あるいは、それぞれ同じ材料により形成されて遮音性能が異なる板であることを特徴とするので、遮音性能が異なる各板の組み合わせにより構成された床板構成部支持体となり、より広い周波数帯での遮音性能を向上させることができる。
また、床部と梁とが金属製の接合部材を介して接合され、接合部材は、梁の下面に沿って当該梁の材軸方向及び梁の幅方向に延長するとともに梁の幅方向において梁の側面よりも外方向に突出する床接合部を有した床接合板と、床接合板より延長するように設けられた梁接合板とを備え、梁接合板と梁とが接合手段により接合され、かつ、床接合板の床接合部と床部とが接合手段により接合されたことを特徴とするので、逆梁工法を採用する木造建物において、木質の床部と上部側が床部の上面よりも上方に突出するように配置される木質の梁とを簡単に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】床板構成部支持体を示す断面図(実施形態1)。
【
図3】床板構成部支持体を示す断面図(実施形態1)。
【
図5】梁床接合構造の接合手順を示す図(実施形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係る二重床構造は、木質の床部1と、床部1と接合されて上部側が床部1の上面1tよりも上方に突出するように設けられた木質の梁2と、床部1の上に配置された複数の支持脚10,10…と、複数の支持脚10,10…上に設けられた床板構成部11と、梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に設けられた床板構成部支持体12とを備えた構成とした。
尚、
図1において、左端の梁2は例えば大梁であり、中央及び右端の梁2は例えば大梁又は小梁である。
また、
図1において、100は例えば上部耐力壁、101は例えば間仕切壁、102はダクト、103は配管である。
また、本明細書においては、上、下、左、右は、
図1に示した方向と定義して説明する。
【0008】
床板構成部支持体12は、例えば、ゴム板、発泡ゴム板、発泡ウレタン樹脂板、発泡ポリエチレン樹脂板、発泡ポリオレフィン樹脂板等の遮音性能を有した材料により形成された板により構成される。
【0009】
即ち、二重床構造においては、床板構成部11を支持する支持脚10は、後述するように、床部1と接触する部分に防振ゴム10aを備えるため、支持脚10を介した下階への遮音性能が確保されている。
しかしながら、梁2が後述のようにCLT又は集成材等を用いた木質の梁2であって、かつ、当該梁2が木質の床部1と接合されて梁2の上部側が床部1の上面1tよりも上方に突出する逆梁となる場合は、当該木質の床部1及び木質の梁2は鉄筋コンクリートの梁と比べて比重が約1/5と小さいため、当該逆梁となる梁2及び床部1を介して下階に音、特に、重量床衝撃音が伝播しやすい構造となる。
そこで、実施形態1においては、逆梁となる梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体12を設けることによって、当該逆梁となる梁2及び床部1を介した下階への音の遮音性能、特に、重量床衝撃音の遮音性能を向上させるようにした。
【0010】
床板構成部支持体12は、例えば、
図2に示すような板、又は、
図3に示すように、複数の板が積層されて構成された積層板により構成される。
【0011】
即ち、床板構成部支持体12を単板により構成する場合は、例えば、
図2(a)に示すような平板、あるいは、
図2(b),
図2(c)に示すような、梁2の上面2tと接触する下面12a及び床板構成部11の下面11uと接触する面12bのうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された板を用いる。
当該凹凸面の凹凸形状は、どのような形状であっても構わない。例えば、
図2(b)に示すような断面矩形状の凹凸形状、あるいは、
図2(c)に示すような断面湾曲面状の凹凸形状等であればよい。
尚、
図2(b),
図2(c)では、梁2の上面2tと接触する下面12aが凹凸面に形成された床板構成部支持体12を例示した。
【0012】
また、床板構成部支持体12を、複数の板が積層された積層板により構成する場合も、例えば、
図3(a)に示すような平板、あるいは、
図3(b),
図3(c)に示すような、梁2の上面2tと接触する下面12a及び床板構成部11の下面11uと接触する面12bのうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された板を用いる。
このような下面12a及び面12bのうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された床板構成部支持体12を用いれば、凹凸面が変形して遮音性能が向上する。
【0013】
床板構成部支持体12は、例えば、
図3(a)に示すように、同じ材料で、かつ、遮音性能が異なる2枚の平板12A,12Bを積層した積層板、
図3(b)に示すように、異なる材料で、かつ、遮音性能が異なる3枚の板12A,12B,12Cを積層した積層板であって、梁2の上面2tと接触する下面12aが断面湾曲面状のの凹凸面に形成された積層板、
図3(c)に示すように、異なる材料で、かつ、遮音性能が異なる3枚の板12A,12B,12Cを積層した積層板であって、梁2の上面2tと接触する下面12aが断面矩形状の凹凸面に形成された積層板等で構成すればよい。
【0014】
図3(a)に示す床板構成部支持体12としては、例えば、上側の平板12Bをゴム硬度50°のゴム板により構成し、下側の平板12Aをゴム硬度70°のゴム板により構成した積層板により形成すればよい。
図3(b)に示す床板構成部支持体12としては、例えば、上側の平板12Bをゴム硬度50°のゴム板により構成し、下側の凹凸板12Aをゴム硬度70°のゴム板により構成し、上側の平板12Bと下側の凹凸板12Aとの間に挟み込まれた平板12Cを発泡倍率40倍の発泡ポリオレフィン樹脂板により構成した積層板により形成すればよい。
図3(c)に示す床板構成部支持体12としては、例えば、上側の凹凸板12Bを発泡倍率40倍の発泡ウレタン樹脂板により構成し、下側の凹凸板12Aを発泡倍率50倍の発泡ゴム板により構成し、上側の凹凸板12Bと下側の凹凸板12Aとの間に挟み込まれた平板12Cを発泡倍率30倍の発泡ポリエチレン樹脂板により構成した積層板により形成すればよい。
【0015】
即ち、床板構成部支持体12を、複数の板が積層されて構成された積層板により構成する場合、複数の板は、それぞれ異なる材料により形成されて比重や硬度や発泡倍率等が異なることにより遮音性能がそれぞれ異なる板を用いたり、あるいは、それぞれ同じ材料により形成されて比重や硬度や発泡倍率等が異なることにより遮音性能がそれぞれ異なる板を用いた。
一般に、ゴム硬度が小さいゴム(固いゴム)や発泡倍率が小さい発泡体(沈み込み量が小さい発泡体)は、重量床衝撃音に対する遮音性能が高い傾向がある。逆に、ゴム硬度が大きいゴム(柔らかいゴム)や発泡倍率が大きい発泡体(沈み込み量が大きい発泡体)は、軽量床衝撃音に対する遮音性能が高い傾向がある。
従って、重量床衝撃音及び軽量床衝撃音に対する遮音性能を向上させるためには、同じ材料であっても例えばゴム硬度の違いで遮音性能がそれぞれ異なる板を用いることが好ましく、さらに、下面12a及び面12bのうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された床板構成部支持体12を用いれば、さらに遮音性能が向上する。
また、床板構成部支持体12を、複数の板が積層されて構成された積層板により構成する場合は、複数の板として、それぞれ異なる材料により形成された板を用いることによって、遮音性能が異なる各板の組み合わせにより構成された床板構成部支持体12となり、より広い周波数帯での遮音性能を向上させることができるようになる。
【0016】
また、床板構成部支持体12を構成する板の板厚は、床部1と床板構成部11との間の設計高さ、要求される遮音性能等を考慮して、適宜、決定すればよい。
【0017】
支持脚10は、床部1上に設置される防振ゴム10aと、下部が防振ゴム10aに取付けられて防振ゴム10aに支持される支柱10bと、支柱10bの上端部に設けられた台座10cとを備える。
支柱10bの上部の外周面は図外の雄ねじ部に形成される。
台座10cは、例えば、パーティクルボード、あるいは、構造用合板で形成される。
台座10cは、台座10cの上下面に貫通する図外の貫通孔を備え、この貫通孔内には当該貫通孔を上下に貫通する図外の筒体が固定され、当該筒体の内周面は図外の雌ねじ部に形成される。
つまり、支持脚10は、支柱10bの上部の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと図外の筒体の内周面に形成された雌ねじ部の雌ねじとのねじ嵌合により、台座10cが支柱10bに対して上下に移動可能に構成され、台座10cのレベル(高さ)を調整して床板構成部11のレベル(高さ)を調整できる構成となっている。
【0018】
床板構成部11は、下地材11Aと、下地材11Aの上に形成された床仕上げ材11Bとを備える。
床板構成部11の下面11u(下地材11Aの下面11u)と支持脚10の台座10cの上面との間には基材11Zが介在するように設けられる。
そして、梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間には、基材11Zの代わりに床板構成部支持体12が介在するように設けられる。
【0019】
基材11Zと台座10cとが図外の固定手段により固定され、基材11Zと下地材11Aとが図外の固定手段により固定される。尚、当該固定手段としては、例えば、釘、スクリュー釘、タッカー針、ビス等が用いられる。
基材11Zは、複数の支持脚10の台座10c上に載置されて水平面を形成するように並べられ、固定手段により台座10cに固定された複数の板材により構成される。
基材11Zを構成する板材としては、例えば、パーティクルボード、構造用合板等を用いる。
下地材11Aは、基材11Z及び床板構成部支持体12の上に載置されて水平面を形成するように並べられ、固定手段により基材11Zに固定された複数の板材により構成される。下地材11Aを構成する板材としては、例えば、パーティクルボード、強化パーティクルボード(通常のパーティクルボードよりもプレス圧を大きくして硬く形成されたパーティクルボード)、構造用合板、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ガラス繊維不織布入り石膏ボード等を用いる。
下地材11Aの上面に床仕上げ材11Bが取付けられる。床仕上げ材11Bは、フローリング床材、カーペット、タイル、絨毯、石板、畳等により構成される。
【0020】
尚、床板構成部支持体12は、下面12aが例えば接着剤を介してに接着され、上面12bが例えば接着剤を介して床板構成部11の下面11uに接着される。
【0021】
図4に示すように、床部1と上部側が床部1の上面1tよりも上方に突出するように設けられた梁2との梁床接合構造は、床部1と梁2とが金属製の接合部材3を介して接合された構造とした。
接合部材3は、梁2の下面20に沿って当該梁2の材軸方向及び梁2の幅方向に延長するとともに梁2の幅方向において梁2の側面21,21よりも外方向に突出する床接合部31,31を有した床接合板32と、床接合板32より延長するように設けられた梁接合板33とを備え、床接合板32の床接合部31と床部1とが接合手段により接合され、かつ、梁接合板33と梁2とが接合手段により接合された構成である。
【0022】
図4,
図5に示すように、木質の梁2は、例えば、材軸方向と直交する断面が矩形状に形成された複数の梁構成部材が接合されて1つの梁構成部材の断面よりも大きい断面を持つように形成された梁であって、材軸方向に沿った対向面2a,2a同士が所定の間隔を隔てて互いに対向するように配置された一方の梁構成部材2A及び他方の梁構成部材2Bと、互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の梁構成部材2Aの対向面2aと他方の梁構成部材2Bの対向面2aとの間に設けられた上述した梁接合板33と、梁接合板33の一方の板面33aと一方の梁構成部材2Aの対向面2aとが接触し、かつ、梁接合板33の他方の板面33bと他方の梁構成部材2Bの対向面2aとが接触した状態で、当該一方の梁構成部材2Aと梁接合板33と他方の梁構成部材2Bとを接合した接合手段とを備えて構成されている。
【0023】
床部1、一方の梁構成部材2A、他方の梁構成部材2Bは、CLT又は集成材により形成される。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
【0024】
接合部材3は、例えば、床接合板32として機能させる横板と、梁接合板33として機能させる縦板とを有した断面T字状のT形鋼30を用いた。
【0025】
一方の梁構成部材2Aと梁接合板33と他方の梁構成部材2Bとを接合した接合手段は、例えば、一方の梁構成部材2Aと梁接合板33と他方の梁構成部材2Bとに亘って連続するように設けられた連結軸挿入用貫通孔4と、連結軸挿入用貫通孔4に挿入された連結軸5と、連結軸5を連結軸挿入用貫通孔4に固定する固定部材としてのナット6とで構成した。
【0026】
図4に示すように、連結軸挿入用貫通孔4は、一方の梁構成部材2Aの左右の面(対向面2aと側面21)に貫通するように形成された貫通孔4Aと、他方の梁構成部材2Bの左右の面(対向面2aと側面21)に貫通するように形成された貫通孔4Bと、梁接合板33に形成された貫通孔4Cとで構成される。
即ち、連結軸挿入用貫通孔4は、T形鋼30の縦板により構成された梁接合板33と、梁接合板33の一方の板面33aと対向面2aとが接触するように設置された一方の梁構成部材2Aと、梁接合板33の他方の板面33bと対向面2aとが接触するように設置された他方の梁構成部材2Bとに連続するように形成された貫通孔4A,4C,4Bとで構成される。
【0027】
連結軸挿入用貫通孔4の孔径は、連結軸5を挿入可能なように、連結軸5の軸径に対応して当該軸径より若干大きい寸法に形成されている。
【0028】
図4に示すように、連結軸挿入用貫通孔4の両端側には、ナット6の径に対応して当該ナット6の径より若干大きい寸法の径に形成された大径部41,41を備えている。
一方の大径部41は、連結軸挿入用貫通孔4の一端開口より延長して一方の梁構成部材2Aの対向面2aと対向する側面21に開口する大径孔に形成される。
同様に、他方の大径部41は、連結軸挿入用貫通孔4の他端開口より延長して他方の梁構成部材2Bの対向面2aと対向する側面21に開口する大径孔に形成される。
【0029】
連結軸5は、連結軸挿入用貫通孔4の長さよりも長く、かつ、梁2の例えば左右幅寸法よりも短い長さに形成され、連結軸挿入用貫通孔4を貫通して当該連結軸挿入用貫通孔4の両端よりそれぞれ大径部41,41に突出する両端部は、ナット6が螺着されるねじ部51,51に形成されている。
【0030】
即ち、
図5(a),(b),
図4に示すように、一方の梁構成部材2Aの対向面2aと他方の梁構成部材2Bの対向面2aとの間に、これら対向面2a,2aと梁接合板33として機能させるT形鋼30の縦板の板面33a,33bとを接触させるとともに、貫通孔4A,4C,4Bの中心軸を一致させて連結軸挿入用貫通孔4を形成するように、一方の梁構成部材2Aと他方の梁構成部材2Bと梁接合板33とを位置決めし、かつ、床接合板32として機能させるT形鋼30の横板における縦板側の面32a,32bと梁2の下面2uとを接触させた状態に設定する。
即ち、一方の梁構成部材2Aの下面20と梁接合板33で区切られた床接合板32の一方の上面32aとを接触させるとともに、他方の梁構成部材2Bの下面2uと梁接合板33で区切られた床接合板32の他方の上面32bとを接触させた状態に設定する。
その後、連結軸5を連結軸挿入用貫通孔4に挿入し、連結軸挿入用貫通孔4の両端側に位置される大径部41,41にそれぞれナット6を挿入して当該ナット6を連結軸5の端部のねじ部51に螺着して締結することにより、一方の梁構成部材2Aと梁接合板33と他方の梁構成部材2Bとが接合され、
図5(b)に示すような、梁2の側面21,21よりも外方向に突出する床接合部31,31を備えた梁2が構成される。
また、
図4に示すように、梁接合板33を構成する縦板の高さ寸法が、一方の梁構成部材2Aの及び他方の梁構成部材2Bの梁せいの高さ(上下高さ)寸法よりも小さい場合には、梁2の上面に開口する対向面2a,2a間の間隙に例えば木製の板2Cを挟みこむようにしてもよい。尚、当該板2Cは必ずしも設けなくともよい。
【0031】
つまり、梁2の左右幅の中間に位置される一方の梁構成部材2Aの対向面2aと他方の梁構成部材2Bの対向面2aとの間隙に梁接合板33が介在するように設けられるとともに、梁2の側面21,21よりも外方向に突出する床接合部31,31を有し、かつ、梁2の下面20に接触する床接合板32を備えて構成された、強度及び剛性の大きい安価な梁2を提供できる。
【0032】
即ち、T形鋼30の梁接合板33の一方の板面33aと一方の梁構成部材2Aの対向面2aとを接触させるとともに、T形鋼30の梁接合板33の他方の板面33bと他方の梁構成部材2Aの対向面2aとを接触させ、かつ、T形鋼30の床接合板32における梁接合板33側の板面であって梁接合板33で区切られた一方の上面32aと一方の梁構成部材2Aの下面20とを接触させるとともに、T形鋼30の床接合板32における梁接合板33側の板面であって梁接合板33で区切られた他方の上面32bと他方の梁構成部材2Aの下面20とを接触させる。
さらに、一方の梁構成部材2Aに形成された貫通孔4Aと梁接合板33に形成された貫通孔4Cと他方の梁構成部材2Bに形成された貫通孔4Bとを一致させた連結軸挿入用貫通孔4を形成し、当該連結軸挿入用貫通孔4に貫通させた連結軸5の両端側のねじ部51,51にそれぞれナット6を螺着して締結する。
以上により、梁2の下面20において梁幅方向及び材軸方向に延長して梁2の側面21,21よりも外方向に突出する床接合部31を有した梁2が構成される。
【0033】
床接合部31と床接合部31上に載置された床部1とを接合する接合手段は、例えば、床接合部31の下面に設置されたスプライスプレート(添板)35と、床部1の上面から当該床部1、床接合部31、スプライスプレート35を貫通するように形成された連結軸挿入用貫通孔40と、当該連結軸挿入用貫通孔40に挿入された連結軸50と、連結軸50を連結軸挿入用貫通孔40に固定する固定部材としてのナット6とで構成した。
【0034】
即ち、
図5(b),(c),
図5に示すように、床接合部31上に床部1を載置するとともに、床接合部31の下面にスプライスプレート35を設置した状態で、床部1の上下面に貫通するように形成された貫通孔40A、床接合部31に形成された貫通孔40B、スプライスプレート35に形成された貫通孔40Cとを一致させた連結軸挿入用貫通孔40を形成し、当該連結軸挿入用貫通孔40の下端開口から連結軸50を挿入して、当該連結軸挿入用貫通孔40に貫通させた連結軸50の先端(上端)側に形成されたねじ部52にナット6を螺着して締結する。
尚、床部1に形成された貫通孔40Aの上端側には、ナット6の径に対応して当該ナット6の径より若干大きい寸法の径に形成された大径部42を備えている。
連結軸50としては、例えばボルトを用いればよい。
【0035】
以上により、床接合板32の床接合部31と床部1とが接合手段により接合され、床部1と木質の梁2とが金属製の接合部材3及び接合手段により接合された梁床接合構造が構築される。
即ち、逆梁工法を採用する木造建物において、床部1と上部側が床部1の上面1tよりも上方に突出するように配置される木質の梁2とを簡単に接合できる梁床接合構造を提供できる。
【0036】
実施形態1に係る二重床構造によれば、逆梁となる木質の梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体12を設けたので、当該逆梁となる梁2及び床部1を介した下階への遮音性能、特に、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる二重床構造を提供できる。
【0037】
また、実施形態1に係る二重床構造によれば、床板構成部支持体12として、梁2の上面2tと接触する下面12a及び床板構成部11の下面11uと接触する上面12bのうちの少なくとも一方の面が凹凸面に形成された板を用いたので、凹凸面が変形することにより、遮音性能が向上する。
【0038】
また、実施形態1に係る二重床構造によれば、床板構成部支持体12として、複数の板が積層されて構成されものを用い、かつ、複数の板は、それぞれ異なる材料により形成された遮音性能が異なる板、あるいは、それぞれ同じ材料により形成されて遮音性能が異なる板を用いたので、遮音性能が異なる各板の組み合わせにより構成された床板構成部支持体12となり、より広い周波数帯での遮音性能を向上させることができるようになる。
【0039】
実施形態2
図1に示すように、床部は、上述したCLT又は集成材により形成された木質の床部1と、当該床部1の上面にコンクリートを打設して形成されたコンクリート床部1Cとで構成された床部1Aであってもよい。
【0040】
実施形態2によれば、床部1の上面にコンクリート床部1Cを設けた床部1Aとしたことで、逆梁となる梁2及び床部1Aを介した下階への遮音性能がより向上する二重床構造を提供できる。
【0041】
実施形態3
実施形態1,2によれば、逆梁となる木質の梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体12を設けた構成としたが、複数の支持脚10の台座10c上、及び、梁2の上面2tに、基材11Zを載置し、この基材11Zの上に床板構成部11を設けた構成の二重床構造としてもよい。
即ち、梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に設けられる床板構成部支持体12の代わりに基材11Zを設けるようにしてもよい。
この場合、例えば、基材11Zの下面と木質の梁2の上面2tとを接触させた状態で、基材11Zと梁2とを、例えば、釘、スクリュー釘、タッカー針、ビス等の固定手段によって固定すればよい。
【0042】
実施形態4
実施形態1,2によれば、逆梁となる木質の梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとの間に、遮音性能を有した材料により形成された床板構成部支持体12を設けた構成としたが、逆梁となる木質の梁2の上面2tと床板構成部11の下面11uとを接触させた構成の二重床構造としてもよい。
この場合、例えば、床板構成部11の下地材11Aの下地の下面11uと木質の梁2の上面2tとを接触させた状態で、下地材11Aと梁2とを、例えば、釘、スクリュー釘、タッカー針、ビス等の固定手段によって固定すればよい。
【0043】
実施形態3、実施形態4によれば、木質の床部1、1A及び木質の梁2による逆梁工法に適用した二重床構造を提供できる。
【0044】
尚、一方の梁構成部材2Aと他方の梁構成部材2Bとを梁接合板33に接合する接合手段は、上述した構成に加えて接着剤を併用した手段、あるいは、上述した連結軸挿入用貫通孔4に連結軸としてのドリフトピンを嵌入する手段を採用してもよい。
また、これら接合手段の数は、部材の大きさ等に応じて決めればよい。
【0045】
また、上述したスプライスプレート35は、用いた方が好ましいが、用いなくてもよい。
【0046】
また、床部1、一方の梁構成部材2A、他方の梁構成部材2Bは、無垢材により形成されたものを用いてもよい。
【0047】
また、例えば、無垢材により形成された梁の下面から梁の内部上方及び梁の材軸方向に延長する凹溝を形成し、当該凹溝に梁接合板を挿入して当該梁接合板と梁とが接合手段により接合された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A 床部、1t 床の上面、2 梁、10 支持脚、11 床板構成部、
12 床板構成部支持体、30 T形鋼(接合部材)、31 床接合部、
32 床接合板、33 梁接合板。