(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】バッテリー収容ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20230329BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230329BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230329BHJP
【FI】
H01M50/291
B60K1/04 Z
H01M50/289 101
H01M50/293
H01M50/224
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2019190960
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157560(JP,A)
【文献】特開2016-100291(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061109(WO,A1)
【文献】特開2018-131133(JP,A)
【文献】特開2017-168223(JP,A)
【文献】特開2013-133044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及び当該底壁と一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備え、
前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成され、
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するバッテリー収容空間が形成され
、
前記内部底壁は前記底壁周縁境界部の上側の位置に配置される、バッテリー収容ユニット。
【請求項2】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及び当該底壁と一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備え、
前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成され、
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するバッテリー収容空間が形成され、
前記容器本体は5000系アルミニウム合金からなり、前記内部底壁は6000系アルミニウム合金からなる板材により構成されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項3】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及び当該底壁と一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備え、
前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成され、
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するバッテリー収容空間が形成され、
前記底壁と前記内部底壁との間に介在して当該底壁の上向きの変形を抑制する底壁補強部をさらに備え、
前記底壁補強部は、それぞれが前記底壁および前記内部底壁に沿った特定の長手方向に延びる複数の底壁補強材を含み、当該複数の底壁補強材が前記長手方向と直交する方向に間隔をおいて配置され、
前記複数の底壁補強材のそれぞれは、前記長手方向に延びて前記底壁の上面と対向しかつ接触可能な底壁対向部と、前記長手方向に延びて内部底壁の下面と対向しかつ接触可能な内部底壁対向部と、前記長手方向に延びて前記底壁対向部と前記内部底壁対向部とを上下方向に連結する連結部と、を一体に有し、
前記内部底壁対向部及び前記底壁対向部の一方は、前記長手方向と直交する方向に互いに間隔をおいてそれぞれが当該長手方向に延びる第1対向部及び第2対向部により構成され、他方は前記第1対向部と前記第2対向部との間の位置で前記長手方向に延びる中間対向部であり、前記連結部は前記中間対向部と前記第1対向部とを上下方向に連結する第1連結部と、前記中間対向部と前記第2対向部とを上下方向に連結する第2連結部と、を含み、
前記複数の底壁補強材のそれぞれの長手方向は、前記車体の前後方向と平行な方向である、バッテリー収容ユニット。
【請求項4】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及び当該底壁と一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備え、
前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成され、
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するバッテリー収容空間が形成され、
前記底壁と前記内部底壁との間に介在して当該底壁の上向きの変形を抑制する底壁補強部をさらに備え、
前記底壁補強部は、それぞれが前記底壁および前記内部底壁に沿った特定の長手方向に延びる複数の底壁補強材を含み、当該複数の底壁補強材が前記長手方向と直交する方向に間隔をおいて配置され、
前記底壁補強材は7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項5】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及び当該底壁と一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備え、
前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成され、
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するバッテリー収容空間が形成され、
前記車体の左右方向において前記容器本体の外側に位置する自動車のサイドシルと前記容器本体との間に介在するサイドシル連結部材をさらに備え、当該サイドシル連結部材は前記容器本体が当該サイドシル連結部材を介して前記サイドシルに支持されるように当該容器本体を当該サイドシルに連結
し、
前記サイドシル連結部材は前記車体の左右方向に延びる横壁を含み、前記車体の上下方向において、前記横壁の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が前記内部底壁の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なっている、バッテリー収容ユニット。
【請求項6】
請求項
5記載のバッテリー収容ユニットであって、前記サイドシル連結部材は、前記サイドシルに対して前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重により圧壊して当該衝撃荷重を吸収するように左右方向に並ぶ複数の閉断面を有する、バッテリー収容ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するための構造として、特許文献1に記載されるものが知られている。この構造は、底板と、周壁と、天板と、を備える。前記底板は前記車体の下部を構成するサイドシル(特許文献1ではロッカー)に連結されて当該サイドシルにより支持される。前記周壁は、左右側壁部と、前壁部と、後壁部と、を含み、前記底板上で電池(バッテリー)の収容空間を囲むように当該底板上に配置される。前記天板は前記収容空間を覆うように前記周壁に締結される。
【0003】
前記構造では、自動車全体の軽量化のため、前記底板、前記周壁及び前記天板のそれぞれがアルミニウム合金等の軽金属により成形される。具体的に、前記底板は、アルミニウム合金等からなる板材であってプレス成形されたものにより構成される。前記周壁を構成する前記左右側壁部、前記前壁部及び前記後壁部のそれぞれは、アルミニウム合金等により中空断面を有するように押出成形された押出形材により構成され、前記底壁に溶接等の手段で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように自動車の車体の下部においてバッテリーを収容する構造には、前記軽量化の他、バッテリー収容空間内への水の浸入を阻止する防水性が求められる。しかし、前記特許文献1に記載される構造では、前記天板、前記左右側壁部、前記前壁部及び前記後壁部が互いに別の部材として構成されているので、その部材同士の隙間からバッテリー収容空間内に水が浸入しやすく、当該水の浸入を阻止するためには複雑なシール構造をそれぞれの部材同士の間に与えなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑み、複雑な構造を要することなく高い防水性を確保することが可能なバッテリー収容ユニットを提供することを目的とする。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明者らは、容器本体をアルミニウム合金製の深絞り成形品により構成することに想到した。当該深絞り成形品では、容器本体の底壁と周壁とを連続させることができるので、底壁と周壁とが別の部材で構成されるものと異なり、複雑なシール構造を用いることなく高い防水性を確保することが可能である。
【0008】
しかし、前記深絞り成形品、特にアルミニウム合金製の深絞り成形品では、その成形時のコーナー部における皺や破断の発生を回避するために当該コーナー部に比較的大きな曲率半径をもつR形状、すなわち外向きに凸の曲面形状、を与えなければならず、このことは、バッテリー収容面積の低下という不都合を招く。具体的に、アルミニウム合金製の深絞り成形品によって底壁と周壁とが一体につながった容器本体が構成される場合、その底壁周縁と周壁との境界部分に相当する底壁周縁境界部には比較的大きな曲率半径をもつ曲面形状が与えられなければならず、このことが、前記底壁上でバッテリーを収容することが可能な空間の面積(上方から見た面積)の削減を招く。
【0009】
本発明は、このような観点からなされたものである。本発明により提供されるのは、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及びこれと一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、前記容器本体の内部に配置される内部底壁と、を備える。前記容器本体のうち前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成される。前記内部底壁は前記底壁よりも上側の位置に配置され、当該内部底壁の上に前記バッテリーを収容するためのバッテリー収容空間が形成される。
【0010】
このバッテリー収容ユニットでは、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により容器本体が構成されることにより当該容器本体の底壁と周壁とが一体につながっているので、前記底壁と前記周壁とが互いに別の部材で構成される容器と異なり、複雑なシール構造を要することなく高い防水性を確保することができる。この容器本体では、その深絞り成形のために前記底壁の周縁と前記周壁との境界部分である前記底壁周縁境界部の内側面が外向きに凸の曲面で構成される必要があるが、前記バッテリー収容ユニットは、前記容器本体の内部において当該容器本体の底壁よりも上側の位置で前記周壁の内側面に接合される内部底壁をさらに備え、当該内部底壁の上にバッテリー収容空間が形成されるので、前記底壁上に直接バッテリーが載置される場合に比べて当該バッテリーの収容面積を大きく確保することが可能である。すなわち、前記内部底壁は、前記底壁よりも上側の位置で容器本体におけるバッテリー収容空間の新たな底面、つまり、前記底壁の上面のうち前記底壁周縁境界部の除く平らな部分の面積よりも大きな面積をもつ底面、を画定することにより、前記境界部分の曲面形状にかかわらずその上側の位置で大きな使用可能面積(すなわち周壁によって囲まれた面積)を確保することができる。
【0011】
しかも、前記内部底壁の配置を利用してその下方に当該内部底壁と前記容器本体の底壁との間に介在する下側保護空間を確保することができる。当該下側保護空間は、路面から前記容器本体の底壁に加えられる荷重が前記内部底壁上のバッテリーに伝わるのを有効に抑止することができ、これにより当該荷重から前記バッテリーを有効に保護することができる。
【0012】
前記内部底壁は前記底壁よりも上側の高さ位置に配置されていればよく、例えば前記底壁周縁境界部の中間の高さ位置、つまり当該底壁周縁境界部の上端よりも低い位置、に配置されてもよいが、好ましくは、当該底壁周縁境界部の上側(例えば当該底壁周縁境界部の上端の高さ位置)に配置されるのがよい。このことは、前記底壁周縁境界部の形状(外向きに凸の曲面形状)による影響を全く受けずに前記内部底壁の上に最大限の使用可能面積を確保することを可能にする。
【0013】
深絞り成形品により構成される前記容器本体には成形性に優れた5000系アルミニウム合金を採用する一方、当該容器本体に比べて複雑な形状が求められない内部底壁には5000系アルミニウム合金よりも成形性は低いが強度の高い6000系アルミニウム合金からなる板材を採用することが可能である。このことは、前記容器本体の深絞り成形のために当該容器本体について5000系アルミニウム合金を採用しながら、それよりも強度の高い6000系アルミニウム合金からなる内部底壁によって当該内部底壁上に配置されるバッテリーを有効に保護することを可能にする。
【0014】
前記バッテリー収容ユニットは、前記底壁と前記内部底壁との間に介在して当該底壁の上向きの変形を抑制する底壁補強部をさらに備えることが、好ましい。当該底壁補強部は、前記下部保護空間を利用してコンパクトに配置されながら前記容器本体の底壁を有効に補強することができる。
【0015】
前記底壁補強部は、それぞれが前記底壁および前記内部底壁に沿った特定の長手方向に延びる複数の底壁補強材を含み、当該複数の底壁補強材が前記長手方向と直交する方向に間隔をおいて配置されているものが、好適である。このような複数の底壁補強材の分散配置は、例えば大面積を有する単一の底壁補強材を用いる態様に比べて軽量な構造で、前記底壁を広い範囲にわたって有効に補強することが可能である。
【0016】
具体的に、前記複数の底壁補強材のそれぞれは、前記長手方向に延びて前記底壁の上面と対向しかつ接触可能な底壁対向部と、前記長手方向に延びて内部底壁の下面と対向しかつ接触可能な内部底壁対向部と、前記長手方向に延びて前記底壁対向部と前記内部底壁対向部とを上下方向に連結する連結部と、を一体に有するものが、好適である。このような底壁補強材は、簡単な断面形状を有しながら前記底壁を有効に補強することが可能である。
【0017】
より具体的に、前記内部底壁対向部及び前記底壁対向部の一方は、前記長手方向と直交する方向に互いに間隔をおいてそれぞれが当該長手方向に延びる第1対向部及び第2対向部により構成され、他方は前記第1対向部と前記第2対向部との間の位置で前記長手方向に延びる中間対向部であり、前記連結部は前記中間対向部と前記第1対向部とを上下方向に連結する第1連結部と、前記中間対向部と前記第2対向部とを上下方向に連結する第2連結部と、を含むものが、好適である。このような底壁補強材は、上下方向の圧縮荷重に対して高い剛性を有することが可能である。
【0018】
前記複数の底壁補強材のそれぞれの長手方向は、前記車体の前後方向と平行な方向であることが、好ましい。このことは、車両の走行中に車体の前後方向の成分を含む荷重が前記底壁補強材に作用したときの当該底壁補強材の変形を抑制することを可能にする。
【0019】
前記のような断面形状を有する底壁補強材は7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。7000系アルミニウム合金は、5000系及び6000系アルミニウム合金に比べて高い強度を有するので、前記底壁の効果的な補強が可能である。当該7000系アルミニウム合金は、反面、比較的応力腐食割れが生じやすい特性を有するが、当該底壁補強材は前記のように防水性に優れた容器本体の内部の前記下側保護空間に配置されているので、前記底壁補強材が7000系アルミニウム合金からなるものであってもその応力腐食割れを有効に防ぐことができる。
【0020】
前記バッテリー収容ユニットは、前記車体の左右方向において前記容器本体の外側に位置するサイドシルと前記容器本体との間に介在するサイドシル連結部材をさらに備え、当該サイドシル連結部材は前記容器本体が当該サイドシル連結部材を介して前記サイドシルに支持されるように当該容器本体を当該サイドシルに連結するように構成されているのが、好ましい。
【0021】
この場合、前記サイドシル連結部材は、前記サイドシルに対して前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重により圧壊して当該衝撃荷重を吸収するように前記左右方向に並ぶ複数の閉断面を有するのが、好ましい。当該サイドシル連結部材は、前記容器本体を前記サイドシルに連結して当該容器本体の支持を可能にする連結部材として機能するのに加え、当該サイドシルに加えられる衝撃荷重を吸収する補強部材として機能することが可能である。
【0022】
また、前記サイドシル連結部材が前記車体の左右方向に延びる横壁を含む場合、前記車体の上下方向において、当該横壁の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が前記内部底壁の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なっていることが、好ましい。このことは、サイドシルから前記サイドシル連結部材に加えられる左右方向内向きの荷重がその横壁から前記内部底壁に良好に伝達されることを可能にし、これにより、当該内部底壁が前記荷重を有効に受けることを可能にする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、複雑な構造を要することなく高い防水性及び大きなバッテリー収容面積を確保することが可能なバッテリー収容ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの一部断面斜視図である。
【
図2】前記実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの容器本体及び内部補強材を示す平面図である。
【
図3】前記実施の形態に係る容器本体の底隅部及びその周辺部分を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】前記実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの要部を示す断面図であって当該要部の車体の左右方向に沿った断面を示す正面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿った断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1~
図5は、本発明の実施の形態に係るバッテリー収容ユニットを示す。このバッテリー収容ユニットは、自動車の車体の下部に
図2に示されるバッテリー4を収容するものであって、
図1に示される容器本体10、蓋20、内部底壁30、複数の底壁補強材40、複数の内部補強材50、複数のクロスメンバー60、及び一対のサイドシル連結部材70を備える。
【0027】
前記バッテリー収容ユニットは、前記車体の下部を構成する左右のサイドシル2同士の間に配置される。前記左右のサイドシル2は、例えばドアピラーの下方の位置で前後方向に延びるように配置される。
【0028】
前記容器本体10は、上向きに開口する形状を有し、前記蓋20とともに、前記バッテリー4を収容するためのバッテリー容器を構成する。前記バッテリー4は、この実施の形態では複数のバッテリーモジュール6により構成される。それぞれのバッテリーモジュール6は複数のバッテリーセルの集合体である。前記バッテリー容器は、前記複数のバッテリーモジュール6が水平方向に配列された状態でこれらを収容する。
【0029】
前記容器本体10は、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成される。具体的に、この実施の形態に係る前記容器本体10は、底壁12と周壁14とを一体に有するように、アルミニウム合金の中では成形性に優れた5000系アルミニウム合金によって深絞り成形されたものである。前記容器本体10は、より好ましくは、5000系アルミニウム合金の中でも特に成形性に優れた5000系O調質材からなる深絞り成形品により構成される。このように底壁12と周壁14とが一体に連続する深絞り成形品からなる容器本体10は、従来のように底壁と周壁とが別部材で構成されるものと異なり、複雑なシール構造を要することなく高い防水性を有すること、すなわち、当該容器本体10内への水の浸入を防ぐこと、が可能である。
【0030】
前記底壁12は平板状をなし、略矩形の平面形状を有する。前記容器本体10は、前記底壁12が略水平となる姿勢で前記車体に組み込まれる。具体的には、前記一対のサイドシル連結部材70を介して前記右及び左サイドシル2に取付けられる。
【0031】
前記周壁14は、前記底壁12の周縁から上向きに立ち上がるように当該底壁12と一体につながる。当該周壁14は、前記底壁12の上方の空間であって平面視で略矩形状の容器内空間の下半部を囲む形状を有する。具体的に、当該周壁14は、右側壁14a、左側壁14b、前側壁14f及び後側壁14rを一体に有する。前記右側壁14a及び前記左側壁14bは、前記車体の左右方向について前記容器内空間の右側及び左側にそれぞれ位置して前記車体の前後方向に延びる。前記前側壁14f及び前記後側壁14rは、前記車体の前後方向について前記容器内空間の前側及び後側にそれぞれ位置して前記車体の左右方向に延びる。
【0032】
前記周壁14は、複数の隅部を有する。当該複数の隅部は、この実施の形態では、右前隅部14fa、左前隅部14fb、右後隅部14ra及び左後隅部14rbであり、それぞれが前記容器本体10の深さ寸法だけ、すなわち前記周壁14の高さ寸法だけ、上下方向に延びる。前記右前隅部14faは前記前側壁14fと前記右側壁14aとの境界部分であり、当該右前隅部14faにおいて前記前側壁14fの右端部と前記右側壁14aの前端部とが一体につながる。前記左前隅部14fbは前記前側壁14fと前記左側壁14bとの境界部分であり、当該左前隅部14fbにおいて前記前側壁14fの左端部と前記左側壁14bの前端部とが一体につながる。前記右後隅部14raは前記後側壁14rと前記右側壁14aとの境界部分であり、当該右後隅部14raにおいて前記後側壁14rの右端部と前記右側壁14aの後端部とが一体につながる。前記左後隅部14rbは前記後側壁14rと前記左側壁14bとの境界部分であり、当該左後隅部14rbにおいて前記後側壁14rの左端部と前記左側壁14bの後端部とが一体につながる。
【0033】
また、前記容器本体10は、前記底壁12の周縁と前記周壁14の下縁との境界部分である底壁周縁境界部13を有する。当該底壁周縁境界部13は、前記底壁12の右縁と前記右側壁14aとの境界部分と、前記底壁12の左縁と前記左側壁14bとの境界部分と、前記底壁12の前縁と前記前側壁14fとの境界部分と、前記底壁12の後縁と前記後側壁14rとの境界部分と、を含む。
【0034】
前記容器本体10では、当該容器本体10の深絞り成形の際に皺や破断が生じることを回避するために、前記複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rb及び前記底壁周縁境界部13にR形状が与えられる。すなわち、当該複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rb及び前記底壁周縁境界部13の内側面が外向きに凸の曲面となるように容器本体10が成形されている。前記曲面の曲率半径は、前記深絞り成形の条件に応じて設定される。特に、前記複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rbのそれぞれの下端と前記底壁周縁境界部13の四隅との接続部分、換言すれば、前記隅部14fa,14fb,14ra,14rbの下端部、である容器底隅部15(
図3)にはさらに大きな曲率半径が与えられる。
図3は前記容器底隅部のうち前記右後隅部14raの下端部に相当する容器底隅部15を示している。
【0035】
前記蓋20は、前記容器本体10の上側で前記容器内空間を覆うように当該容器本体10に装着される。この実施の形態に係る前記蓋20は、天壁22と周壁24とを一体に有する。前記天壁22は、前記容器本体10の前記底壁12の平面形状に対応した平面形状(この実施の形態では略矩形状)を有する。前記周壁24は、前記容器本体10の前記周壁14の平面形状に対応した平面形状(この実施の形態では略矩形状)を有し、前記天壁22の周縁から下方に突出するように当該周縁と一体につながる。
【0036】
前記蓋20の周壁24の下縁部及び前記容器本体10の前記周壁14の上縁部からはそれぞれ外向きにフランジ部26,16が突出し、これらのフランジ部26,16が上下方向に互いに突き合わされた状態で互いに着脱可能に結合される。図例では両フランジ部26,16同士が図示しないシール材を介して複数のボルト28により締結される。前記容器内空間は、前記蓋20の前記天壁22と前記容器本体10の前記底壁12との間の空間であって、前記蓋20および前記容器本体10の周壁24,14によって囲まれた空間である。
【0037】
前記蓋20の材質は特に限定されない。当該蓋20は、例えば、5000系アルミニウム合金、好ましくは5000系アルミニウム合金のO調質材、からなる板材をプレス成形することにより製造されることが可能である。
【0038】
前記内部底壁30は、平板状をなし、前記容器本体10の内部において前記底壁周縁境界部13、すなわち前記R形状が与えられた部分、の上側の位置、好ましくは当該底壁周縁境界部13の上端と内部底壁30の下面とがほぼ合致する位置、に底壁12と平行な姿勢で配置される。前記内部底壁30は、前記底壁周縁境界部13よりも上側の前記周壁14の内側面の平面形状に対応する形状の周縁部を有し、当該周縁部が当該周壁14の内側面に溶接等の手段で接合される。これにより、当該内部底壁30は
図4,
図5に示されるようなバッテリー収容空間Sb、すなわち前記容器内空間の一部であって前記バッテリー4を収容するための空間、の下端面を画定する。すなわち、当該内部底壁30の上に前記バッテリー収容空間Sbが形成される。詳しくは、前記バッテリー4を構成する前記複数のバッテリーモジュール6が水平方向に並びながら前記内部底壁30の上に載置された状態で前記容器本体10及び前記蓋20からなる前記バッテリー容器内に収容されることが可能である。
【0039】
前記内部底壁30の材質は特に限定されない。しかし、当該内部底壁30は、前記容器本体10のように複雑な形状を有することを要求されず、例えば平板のように単純な形状を有することが許容されるので、5000系アルミニウム合金のO調質材よりも成形性が低くて高い強度を有するアルミニウム合金、例えば5000系アルミニウム合金のH調質材、さらには、5000系アルミニウム合金よりも成形性が低くて高い強度を有するアルミニウム合金、例えば6000系アルミニウム合金、からなる板材により構成されることが可能である。これらのことは、前記内部底壁30の上に載置される前記バッテリー4のより確実な保護を可能にする。
【0040】
前記容器内空間において前記底壁周縁境界部13の上側に前記内部底壁30が配置されることにより、当該内部底壁30の上面と前記蓋20の天壁22の下面との間の前記バッテリー収容空間Sbに加え、
図4及び
図5に示されるように前記内部底壁30の下面と前記底壁12の上面との間に下側保護空間Suが画定される。この下側保護空間Suは、路面から前記底壁12に加えられる荷重、一般には上向きの荷重、を受け止め、あるいはその衝突エネルギーを吸収することにより、当該荷重による衝撃が前記内部底壁30の上に配置されたバッテリー4に伝わるのを抑制することが可能である。
【0041】
前記複数の底壁補強材40は、前記下側保護空間Su内に配置されて前記内部底壁30の下面と前記底壁12の上面との間に介在する底壁補強部を構成する。当該複数の底壁補強材40は、前記介在により、前記内部底壁30の下面と前記底壁12の上面との間隔の保持に寄与する。換言すれば、前記複数の底壁補強材40は、前記底壁12が前記荷重によって上向きすなわち前記内部底壁30に近づく向きに変形するのを抑止する。また、その荷重がさらに大きい場合には、前記複数の底壁補強材40が圧壊変形して衝突エネルギーを吸収することにより、前記内部底壁30の上に配置された前記バッテリー4の損傷を防止する。
【0042】
前記複数の底壁補強材40のそれぞれは、前記底壁12および前記内部底壁30に沿った特定の長手方向に直線状に延び、当該複数の底壁補強材40が前記長手方向と直交する配列方向に間隔をおいて配置されている。この実施の形態において、前記長手方向は車体の前後方向であり、前記配列方向は車体の左右方向である。
【0043】
前記複数の底壁補強材40のそれぞれは、その長手方向について一様な断面を有する。具体的に、それぞれの底壁補強材40は、第1対向部である右側対向部41と、第2対向部である左側対向部42と、中間対向部44と、第1連結部である右側連結部45と、第2連結部である左側連結部46と、を一体に有する。
【0044】
前記右側及び左側対向部41,42は、前記内部底壁30の下面と上下方向に対向しかつ当該下面と接触可能な上面をそれぞれ有する内部底壁対向部であり、前記長手方向と直交する方向である左右方向に互いに間隔をおいてそれぞれが当該長手方向に延びる。当該右側及び左側対向部41,42は、好ましくは前記内部底壁30の下面に溶接等の手段で接合される。前記中間対向部44は、前記底壁12の上面すなわち裏面と上下方向に対向しかつ当該上面と接触可能な下面を有する底壁対向部であり、前記右側対向部41と前記左側対向部42との中間位置で前記長手方向に延びる。当該中間対向部44は、好ましくは前記底壁12の上面に溶接等の手段で接合される。前記右側連結部45は前記中間対向部44の右側端部と前記右側対向部41の左側端部(内側端部)とを上下方向に連結し、前記左側連結部46は前記中間対向部44の左側端部と前記左側対向部42の右側端部(内側端部)とを上下方向に連結する。つまり、前記右側連結部45及び前記左側連結部46はそれぞれ前記長手方向に延びて前記底壁対向部と前記内部底壁対向部とを上下方向に連結する連結部である。
【0045】
前記底壁補強材40は、前記右側対向部41及び前記左側対向部42が前記底壁12の上面に対向する底壁対向部に相当し、逆に前記中間対向部44が前記内部底壁30の下面に対向する内部底壁対向部に相当するような断面形状を有していてもよい。
【0046】
このような一様断面を有する底壁補強材40は、例えば7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。このことは、当該底壁補強材40が高い強度及び剛性を有することを可能にする。前記7000系アルミニウム合金は、例えば5000系または6000系アルミニウム合金に比べて応力腐食割れが生じやすい性質を有するが、前記底壁補強材40は前記のように防水性に優れた容器本体10の内部に配置されるので、当該底壁補強材40が7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されていてもその応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。
【0047】
前記複数の内部補強材50は、前記内部底壁30の上側で前記周壁14の内側に当該周壁14に沿うように配置され、これにより前記バッテリー容器を内側から補強する。当該複数の内部補強材50のそれぞれは、一方向に直線状に延びる形状を有し、前記容器本体10に固定される。好ましくは、前記周壁14の内側面及び前記内部底壁30の上面に溶接等の手段で接合される。
【0048】
前記複数の内部補強材50は、右内部補強材50A、左内部補強材50B、前内部補強材50F及び後内部補強材50Rを含む。前記右内部補強材50Aは前記右側壁14aに沿うように当該右側壁14aの内側すなわち左側に配置される。前記左内部補強材50Bは前記左側壁14bに沿うように当該左側壁14bの内側すなわち右側に配置される。前記前内部補強材50Fは前記前側壁14fに沿うように当該前側壁14fの内側すなわち後側に配置される。前記後内部補強材50Rは前記後側壁14rに沿うように当該後側壁14rの内側すなわち前側に配置される。以下の説明において、「複数の内部補強材50」は前記右内部補強材50A、前記左内部補強材50B、前記前内部補強材50F及び前記後内部補強材50Rの総称として用いられる。
【0049】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、前記バッテリー収容空間Sbに収容されるバッテリー4と前記周壁14との間に介在するように配置される。換言すれば、前記容器内空間のうち前記内部底壁30の上側で前記複数の内部補強材50により囲まれる空間が前記バッテリー収容空間Sbを構成する。当該バッテリー収容空間Sbは、前記バッテリー4を構成する前記複数のバッテリーモジュール6が縦横に(車体の前後方向及び左右方向に)配列された状態で当該複数のバッテリーモジュール6を収容することが可能な大きさ及び形状(この実施の形態では平面視略矩形状)を有する。
【0050】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、7000系アルミニウム合金により形成される。好ましくは、前記複数の内部補強材50A,50B,50F,50Rのそれぞれは7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成される。このことは、前記内部補強材50A,50B,50F,50Rのそれぞれが特定の長手方向に直線状に延び、かつ、当該長手方向に一様な断面形状を有することを可能にする。このような形状は、前記複数の内部補強材50のそれぞれが前記周壁14に沿うようにその内側に効率よく配置され、かつ、当該周壁14の内側面及び前記内部底壁30の上面に接合されることを容易にする。また、前記内部補強材50A,50B,50F,50Rの内側に広いバッテリー収容空間Sbを囲みながらこれに収容されるバッテリー4を有効に保護することが可能である。前記内部補強材50を構成する7000系アルミニウム合金としては、特に強度の高い(例えば0.2%耐力が300MPa以上の)ピーク時効材(T5調質材)が用いられることが好ましい。
【0051】
前記のように、7000系アルミニウム合金は5000系または6000系アルミニウム合金に比べて応力腐食割れが生じやすい特性を有するが、前記複数の内部補強材50は前記のように防水性に優れた容器本体10の内部に配置されているので、当該複数の内部補強材50が7000系アルミニウム合金からなるものであっても、その応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。
【0052】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、
図4に示すように内部空間を囲む中空断面を有し、具体的には、前記内部空間を囲む外壁52と、横リブ54と、を有する。前記外壁52は、縦長の略矩形状をなし、前記内部空間の右側、左側、上側及び下側のそれぞれに位置する右壁52a、左壁52b、上壁52c及び下壁52dを含む。前記横リブ54は、前記内部補強材50の横断面における上下方向中間の高さ位置で前記内部空間を水平方向に横切るように配置され、前記右壁52a及び前記左壁52bの上下方向中間部位にそれぞれつながる両端部を有する。このような中空断面を有する前記内部補強材50は、車両の軽量化に寄与しながら、上下方向に厚みを有して前記内部空間を水平方向に横切る前記横リブ54を含むことにより、水平方向の荷重に対して十分耐え得る強度を有することができる。
【0053】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、前記容器内空間のうち前記内部底壁30の上側に画定されるバッテリー収容空間Sbの高さ寸法と略同等の高さ寸法を有する。具体的には、前記下壁52dの下面が前記内部底壁30の上面に接合され、前記右壁52a及び前記左壁52bのうち容器外側に位置する壁の下半部の外側面が前記容器本体10の周壁14の内側面に接合され、この状態で前記内部補強材50A,50B,50F,50Rの上半部が前記周壁14の上端よりも上側に突出する。当該上半部は、前記周壁14の上端部に装着される前記蓋20の周壁24によって包囲される。
【0054】
前記4つの内部補強材50A,50B,50F,50Rは、全体として前記周壁14の内側面に沿う枠を構成する。当該枠は
図2に示すように矩形状をなし、前記周壁14の4つの隅部14fa,14fb,14ra,14rbにそれぞれ対応する4つの角部を有する。しかし、前記4つの隅部14fa,14fb,14ra,14rbの内側面は上述のように前記容器本体10の深絞り成形のために外向きに凸の曲面とされており、その形状は前記枠の4つの角部の形状と合致しない。そこで、両者の干渉を避けるように前記枠の4つの角部のそれぞれが斜め切りされている。
【0055】
具体的に、前記右及び左内部補強材50A,50Bの前端部同士の間に前記前内部補強材50Fが配置され、前記右及び左内部補強材50A,50Bの後端部同士の間に前記後内部補強材50Rが配置されており、当該右及び左内部補強材50A,50Bの前後両端部がそれぞれ前記4つの角部を構成している。従って、この実施の形態では、当該右及び左内部補強材50A,50Bの前後両端部の外側部分が前記4つの隅部14fa,14fb,14ra,14rbの内側面との干渉を避けるように斜め切りされて
図1及び
図2に示すように当該隅部14fa,14fb,14ra,14rbの内側に退避した斜辺55を形成している。
【0056】
なお、前記複数の内部補強材50は本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、当該複数の内部補強材50は省略されてもよい。例えば、前記周壁14のすぐ内側に前記内部補強材50を介さずにバッテリー4が配置されてもよい。
【0057】
前記複数のクロスメンバー60は、前記バッテリー収容空間Sb内で縦横に配列される前記複数のバッテリーモジュール6のうち互いに隣り合うバッテリーモジュール6の間に効率的に配置されながら前記複数の内部補強材50と協働して前記バッテリー容器を内側から有効に補強する。また、当該複数のクロスメンバー60は、前記バッテリー収容空間Sbを前記複数のバッテリーモジュール6にそれぞれ対応した複数のモジュール収容空間に区画する仕切り部材としても機能し得る。
【0058】
前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは一方向に直線状に延びる形状であって、前記複数の内部補強材50のそれぞれと近似する断面形状を有する。すなわち、前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは、前記複数の内部補強材50の高さ寸法と略同等の高さ寸法を有するとともに、内部空間を囲む中空断面を有する。
【0059】
具体的に、前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは、例えば
図5に示されるように、前記内部空間を囲む外壁62と、前記内部空間を水平方向に横切る横リブ64と、を有する。前記外壁62は、前記外壁52と同様に縦長の略矩形状をなし、前記内部空間の右側、左側、上側及び下側のそれぞれに位置する右壁62a、左壁62b、上壁62c及び下壁62dを含む。前記横リブ64は、前記クロスメンバー60の横断面における上下方向中間の高さ位置で前記内部空間を水平方向に横切るように配置され、前記右壁62a及び前記左壁62bの上下方向中間部位にそれぞれつながる両端部を有する。このような中空断面を有する前記クロスメンバー60は、車両の軽量化に寄与しながら、上下方向に厚みを有して前記内部空間を水平方向に横切る前記横リブ64を含むことにより、水平方向の荷重に対して十分耐え得る強度を有することができる。
【0060】
このように一方向に延びかつ一様断面を有する前記複数のクロスメンバー60は、前記複数の内部補強材50と同様、高い強度を有する7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。しかも、当該複数のクロスメンバー60は前記複数の内部補強材50と同様に前記容器本体10の内部に配置されるので、7000系アルミニウム合金からなるものであってもその応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。当該複数のクロスメンバー60のそれぞれにも、特に強度の高い7000系のピーク時効材を用いることが可能である。
【0061】
この実施の形態において、前記複数のバッテリーモジュール6は、
図1及び
図2に示されるように左右2列で前後に2列よりも多い複数列(
図1に示される例では6列)にわたり配列される。この配列に対応して前記複数のクロスメンバー60は、単数本の縦クロスメンバー60Aと、これによりも多い複数の(
図1に示される例では5本の)横クロスメンバー60Bとを含む。以下の説明において、「複数のクロスメンバー60」は前記縦クロスメンバー60A及び前記複数の横クロスメンバー60Bの総称である。
【0062】
前記縦クロスメンバー60Aは、互いに車体の左右方向に隣り合うバッテリーモジュール6同士の間で車体の前後方向に延びるように配置される。当該縦クロスメンバー60Aは、その前後両端部が前記前及び後内部補強材50F,50Rの左右方向中間部位の内側面にそれぞれ接触する(好ましくは溶接等により接合される)ことが可能となる長さを有する。
【0063】
前記複数の横クロスメンバー60Bのそれぞれは、前記縦クロスメンバー60Aと右及び左内部補強材50A,50Bとの間において互いに車体の前後方向に隣り合うバッテリーモジュール6同士の間で車体の左右方向に延びるように配置される。それぞれの横クロスメンバー60Bは、その左右両端部が前記縦クロスメンバー60Aの右側面または左側面と前記右内部補強材50Aまたは前記左内部補強材50Bとにそれぞれ接触する(好ましくは溶接等により接合される)ことが可能となる長さを有する。
【0064】
前記複数のクロスメンバー60のそれぞれの幅寸法(横断面における水平方向の寸法)は前記複数の内部補強材50のそれぞれの幅寸法よりも小さいことが好ましい。内部補強材50は、横方向の荷重がクロスメンバー60同士の間に作用した場合には当該横方向の荷重を当該内部補強材50の曲げ変形によって吸収するので、高い曲げ強度を有することが好ましく、そのためには、内部補強材50の幅寸法が大きいことが好ましい。これに対してクロスメンバー60は内部補強材50を介して圧縮方向の荷重を受けるので、高い圧縮強度を有することが好ましいが、当該圧縮強度は断面積にのみ依存するので、必ずしも大きな幅寸法を要しない。従って、当該クロスメンバー60の幅寸法を小さく抑えて前記複数のバッテリーモジュール6の収容面積を大きく確保しながら、当該クロスメンバー60の肉厚を大きくすることでその圧縮強度を確保することが好ましい。
【0065】
前記複数のクロスメンバー60も本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、当該複数のクロスメンバー60は省略されてもよい。例えば、前記複数のバッテリーモジュール6が前記クロスメンバー60を介さずに互いに直接隣り合うように配列されてもよい。あるいは、単一のモジュールからなるバッテリーがバッテリー収容空間に収容されてもよい。
【0066】
前記一対のサイドシル連結部材70は、前記容器本体10と車体の左右方向について当該容器本体10の両外側にそれぞれ位置する前記左右のサイドシル2との間にそれぞれ介在するように配置され、前記容器本体10が当該一対のサイドシル連結部材70を介して前記左右のサイドシル2に支持されるように当該容器本体10を当該サイドシル2に連結する。
【0067】
この実施の形態に係る前記サイドシル連結部材70は、前記サイドシル2に対して前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重により圧壊して当該荷重を吸収するように前記左右方向に並ぶ複数の(図例では4つの)閉断面76を有する。当該複数の閉断面76のそれぞれは、この実施の形態では矩形状の内部空間を囲む形状を有する。このような構造を有する前記サイドシル連結部材70は、前記バッテリー容器が前記サイドシル2に支持されることを可能にする支持部材としての機能に加え、前記衝撃荷重を吸収して前記バッテリー容器及びこれに収容されるバッテリー4を有効に保護する補強部材として機能することが可能である。
【0068】
具体的に、前記サイドシル連結部材70は、上外壁71と、下外壁72と、内側外壁73と、外側外壁74と、少なくとも一つの、好ましくは複数の(図例では3つの)、縦リブ75と、を含む。
【0069】
前記上下外壁71,72は、上下方向に間隔をおいて互いに平行となる姿勢で配置され、それぞれは水平方向、この実施の形態では車体の左右方向、に延びる水平壁であって横壁である。当該上下外壁71,72のそれぞれは、車体の左右方向の両端部、すなわち、前記容器本体10に近い側の端部である内側端部と、その反対側の端部であって前記サイドシル2に近い側の端部である外側端部と、を有する。前記内側端部は、右側のサイドシル連結部材70では左側端部、左側のサイドシル連結部材70では右側端部であり、前記外側端部は、右側のサイドシル連結部材70では右側端部、左側のサイドシル連結部材70では左側端部である。
【0070】
前記内側外壁73は前記上下外壁71,72の内側端部同士を上下方向に連結するように当該内側端部と一体につながり、前記外側外壁74は前記上下外壁71,72の外側端部同士を上下方向に連結するように当該外側端部と一体につながる。前記複数の縦リブ75は、前記内側外壁73と前記外側外壁74との間で左右方向に略等間隔に並ぶ複数の位置にそれぞれ配され、当該位置における前記上外壁71の部位と前記下外壁72の部位とを上下方向に連結するように当該上下外壁71,72と一体につながる。
【0071】
従って、この実施の形態に係る前記サイドシル連結部材70においては、前記上下外壁71,72からなる一対の横材と、前記内側外壁73、前記外側外壁74及び前記複数の縦リブ75の中から選ばれる2つの縦材と、によって前記複数の閉断面76のそれぞれが構成される。例えば、車体の左右方向について最も内側の閉断面76は、前記内側外壁73と、これに隣り合う縦リブ75と、当該内側外壁73と当該縦リブ75との間の前記上外壁71の部位と、当該内側外壁73と当該縦リブ75との間の前記下外壁72の部位と、により構成される。
【0072】
図示される前記サイドシル連結部材70では、前記上下外壁71,72のうち前記複数の閉断面76のそれぞれを構成する部位の肉厚が車体の左右方向の外側から内側に向かうに従って順に小さくなっている。すなわち、当該上下外壁71,72は、前記縦材とつながる複数の位置をそれぞれ境界として、車体左右方向の外側から内側に向かうに従って段階的に小さくなる肉厚を有する。前記サイドシル連結部材70において衝撃荷重を受けることにより変形が生じる領域は、衝突面に近い側(車体左右方向の外側)で最も狭く、車体左右方向の外側から内側に向かうに従って広くなるので、前記のような肉厚配分は、前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重によって前記サイドシル連結部材70が均等に圧壊するのを助ける。すなわち、前記複数の閉断面のうち最も外側の閉断面よりもその内側の閉断面の方が変形範囲が広くなるため、当該閉断面に実際に加わる荷重は外側から内側に向かうに従って低くなるので、当該外側から当該内側に向かうに従って前記上下外壁71,72の肉厚を小さくすることが、前記変形の進行に伴う前記荷重の極端な増加を防ぎ、これにより、サイドシル連結部材70を比較的一定に近い荷重で圧壊変形させることを可能にする。
【0073】
前記サイドシル連結部材70の具体的な材質は限定されないが、軽量のアルミニウム合金であることが好ましい。特に、圧縮性に優れかつ7000系の中では比較的耐応力腐食割れ性に優れた過時効材(T7調質材)や、さらに耐応力腐食割れに優れた6000系の押出形材が好適である。
【0074】
車体の左右方向について、前記サイドシル連結部材70の内側端部は前記容器本体10に連結される容器連結部を構成し、外側端部は前記サイドシル2に連結されるサイドシル連結部を構成する。具体的に、前記サイドシル連結部材70の内側端部は、前記容器本体10の前記フランジ部16に例えば前記ボルト28を利用して締結され、外側端部は同様にして前記サイドシル2の適当な部位に締結される。
【0075】
この実施の形態において、前記容器本体10に対する前記右及び左サイドシル連結部材70の高さ方向すなわち車体の上下方向についての相対位置は、
図4に示されるように、下記の条件(a)~(c)を満たすように設定されている。
(a)前記右及び左サイドシル連結部材70において上下方向に厚みを有しかつ車体の左右方向に延びる横材である上外壁71及び下外壁72のいずれか一方(この実施の形態では上外壁71)の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が、前記右及び左内部補強材50A,50Bにおいて上下方向に厚みを有しかつ車体の左右方向に延びる横材である前記横リブ54及び下壁52dのいずれか一方(この実施の形態では横リブ54)の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで、当該右及び左内部補強材50A,50Bの横リブ54の高さ位置と当該上外壁71の高さ位置とが合致する。
(b)前記右及び左サイドシル連結部材70の前記上外壁71及び下外壁72のいずれか一方(この実施の形態では下外壁72)の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が前記容器本体10内の前記内部底壁30の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで当該内部底壁30の高さ位置と当該下外壁72の高さ位置とが合致する。
(c)前記複数のクロスメンバー60において上下方向に厚みを有しかつ水平方向に延びる水平壁である上壁62c、下壁62d及び横リブ64の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が前記複数の内部補強材50のうち当該クロスメンバー60の端部が接触する内部補強材50の水平壁である上壁52c、下壁52d及び横リブ54の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで、それぞれの水平壁の高さ位置が互いに合致する。
【0076】
前記条件(a)及び(b)の充足は、サイドシル2からサイドシル連結部材70に加えられた水平方向の荷重が前記内部補強材50の横リブ54及び前記内部底壁30に良好に伝達されることを可能にして当該荷重に対して有効に対抗することを可能にする。また、前記条件(c)の充足は、前記クロスメンバー60の横リブ64と当該クロスメンバー60に接触する内部補強材50の横リブ54との間での良好な荷重の伝達を可能にし、これにより当該クロスメンバー60を補強材として有効に機能させることができる。
【0077】
以上の効果を得るために必ずしも前記条件(a)~(c)の全てが同時に充足していなくてもよい。当該条件(a)~(c)のうちのいずれか一つのみが充足されてもその条件に対応する効果が得られる。
【0078】
以上説明したバッテリー収容ユニットでは、容器本体10を例えば5000系アルミニウム合金、好ましくは5000系アルミニウム合金のO調質材、からなる深絞り成形品により構成することにより当該容器本体10に高い防水性を与えることができる。このように深絞り成形品からなる容器本体10の底壁周縁境界部13の内側面は上述のように外向きに凸の曲面となるが、当該底壁周縁境界部13の上側に配置される前記内部底壁30は、前記底壁周縁境界部13の形状にかかわらず、当該内部底壁30の上側に平面視で広い面積をもつバッテリー収容空間Sbを確保すること、つまり、前記内部底壁30上でバッテリー4の収容のために使用可能な面積を大きく確保すること、を可能にする。また、当該内部底壁30の下方に路面からの荷重を吸収する下側保護空間Suを形成することも可能である。
【0079】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0080】
(A)バッテリー容器について
前記実施の形態では、容器本体10がバッテリー収容空間Sbの下半部を画定し、蓋20が当該バッテリー収容空間Sbの上半部を画定しているが、その比率は前記容器本体10の周壁14がバッテリー空間の少なくとも一部を囲むという条件を満たす範囲で適宜設定されることが可能である。例えば、容器本体の周壁がバッテリー収容空間の全体を囲み、当該バッテリー収容空間を上から覆うように平板状の蓋が前記周壁に装着される態様も本発明に包含される。
【0081】
前記容器本体10及び前記蓋20の双方がアルミニウム合金製の深絞り成形品で構成される場合、その成形性の確保のために両者を構成する板材の成形深さを小さく抑えることが望ましいが、前記実施の形態のように前記容器本体10の周壁14の内側に内部補強材50が配置される場合には、当該内部補強材50の高さ寸法の確保という観点から前記容器本体10及び前記蓋20の成形深さの比率が3:7から5:5であることが好ましい。
【0082】
また、本発明に係る容器本体を構成するアルミニウム合金は5000系O調質材に限定されず、例えば6000系アルミニウム合金、好ましくは6000系T4調質材、であってもよい。
【0083】
(B)内部底壁について
前記実施の形態に係る内部底壁30は、前記底壁周縁境界部13の上側の位置に配置されているが、本発明に係る内部底壁は少なくとも容器本体の底壁よりも上側の位置に配置されていれば、当該底壁の上にバッテリーが載置される場合よりもその載置面積すなわちバッテリー収容面積を増大させることができるという効果が得られる。従って、当該内部底壁は底壁周縁境界部の上端よりも下側の位置、例えば上下方向について当該底部周縁境界部の中間の位置、に配置されていてもよい。しかし、前記内部底壁が前記底部周縁境界部の上側に配置されることは、当該底部周縁境界部の形状による影響を皆無にして前記バッテリー収容面積を最大限確保することを可能にする。この場合、当該内部底壁の下面の高さ位置が前記底部周縁境界部の上端の高さ位置に近いほど、当該内部底壁の上のバッテリー収容空間の高さ寸法を大きく稼ぐことが可能である。
【0084】
前記内部底壁の具体的な材質及び形状も適宜設定されることが可能である。当該内部底壁は、6000系アルミニウム合金以外のアルミニウム合金、例えば5000系アルミニウム合金のH調質材、により構成されてもよい。
【0085】
(C)底壁補強部について
本発明に係る底壁補強部は、
図1等に示されるような複数の底壁補強材40を含むものに限定されない。当該底壁補強部は、容器本体の底壁と内部底壁との間に介在して当該底壁の上向きの変形を抑制するという条件を満たす範囲で様々な態様をとることが可能である。
【0086】
前記底壁補強部は、例えば、
図1に示される前記複数の底壁補強材40に代えて下側保護空間Suの略全域に広がる大きさの単一の底壁補強材により構成されることも可能である。当該単一の底壁補強材は、例えば、
図1に示される前記底壁12の上面と前記内部底壁30の下面とに交互に接触するような波状断面をもつ板材により構成されることが可能である。当該板材は、例えば5000系アルミニウム合金からなる板材のプレス成形品により構成されることが可能である。
【0087】
このように底壁補強部が単一の底壁補強材のみを含む態様に比べ、前記実施の形態に係る複数の底壁補強材40を含む底壁補強部は、軽量な構造で広い範囲にわたって前記底壁を有効に保護することが可能である。
【0088】
この効果は、前記長手方向が車体の前後方向と異なる方向、例えば車体の左右方向、と合致するような配置であっても得ることが可能である。しかし、前記実施の形態のようにそれぞれの底壁補強材40の長手方向が車体の前後方向と合致するような配置は、車両の走行中に前記底壁補強材40に対して車両の前後方向の成分を含む荷重が作用したときの当該底壁補強材40の変形を抑制することを可能にする。例えば、前記底壁補強材40の長手方向が車体の左右方向と合致している場合、当該底壁補強材40に対して車両の前後方向の荷重は前記長手方向と直交する方向に作用することになるので、前記底壁補強材40の底壁対向部である中間対向部44が前記車両の左右方向に沿って前記荷重の向きに水平変位するように右側及び左側連結部45,46が傾くような変形が生じやすい。これに対し、前記底壁補強材40の長手方向が車両の前後方向と合致する場合、車両の前後方向の荷重は前記底壁補強材40に対してその長手方向、つまり剛性の高い方向、に作用するので、当該荷重に起因する底壁補強材40の変形は有効に抑えられる。
【0089】
前記複数の底壁補強材のそれぞれの断面形状も限定されない。当該底壁補強材は、少なくとも、前記長手方向に延びて前記底壁の上面と対向しかつ接触可能な底壁対向部と、前記長手方向に延びて内部底壁の下面と対向しかつ接触可能な内部底壁対向部と、前記長手方向に延びて前記底壁対向部と前記内部底壁対向部とを上下方向に連結する連結部と、を一体に有することにより、軽量な構造で底壁の有効な補強を行うことが可能である。前記内部底壁対向部及び前記底壁対向部のそれぞれが単数の部位からなるものも有効である。例えば、H型鋼と同等の断面形状を有する押出形材により構成されたものであってその上下一対のフランジ部が前記内部底壁対向部及び前記底壁対向部を構成するように配置されるものであってもよい。前記底壁補強材は、あるいは、内部空間を囲む中空断面を有するものであってもよい。
【0090】
前記底壁補強材は前記内部底壁と前記底壁の双方に接合されるものに限定されない。当該底壁補強材は、例えば、前記内部底壁と前記底壁のいずれか一方の壁にのみ接合され、他方の壁には対向して接触するのみ、または隙間をおいて対向しているものであっても当該隙間が微小であって前記他方の壁と実質上接触することが可能となるように配置されたものであれば、前記底壁の上向きの変形を抑制する補強部材として機能することが可能である。
【0091】
前記底壁補強材の材質は7000系アルミニウム合金に限定されない。当該底壁補強材は例えば7000系アルミニウム合金以外のアルミニウム合金からなるものでもよい。
【0092】
本発明では前記底壁補強部が省略されてもよい。あるいは、当該底壁補強部以外の手段によって前記底壁12及び前記内部底壁30の少なくとも一方が補強されてもよい。例えば、前記底壁12の上面及び下面の少なくとも一方に別の補強板が貼り付けられることにより補強が行われてもよい。ただし、前記のように底壁12と内部底壁30との間に介在する底壁補強部は、軽量な構造で効果的な底壁12の補強を実現することが可能である。
【0093】
(D)サイドシル連結部材について
本発明において、サイドシル連結部材も適宜省略が可能である。例えば、本発明に係る容器本体はサイドシル以外の車体構成部材(例えば前後のクロスメンバー)に連結されてこれに支持されてもよい。
【0094】
本発明に係るバッテリー収容ユニットがサイドシル連結部材を含む場合、当該サイドシル連結部材の具体的な構造は限定されない。当該サイドシル連結部材は、例えば、単なる板状のブラケットであってもよい。ただし、当該サイドシル連結部材は、前記サイドシル連結部材70のように車体の左右方向に並ぶ複数の閉断面を有することにより、サイドシルに加えられる衝撃荷重を当該サイドシル連結部材自体の圧壊によって吸収する補強部材として機能することが可能である。
【0095】
図4に示される構造において、サイドシル連結部材70の横壁(車体の左右方向に延びる壁)である下外壁72に代えて同じ横壁である上外壁71の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が内部底壁30の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで前者の高さ位置と後者の高さ位置とが合致するように当該サイドシル連結部材70が配置されてもよい。このような配置でも、サイドシル2から前記サイドシル連結部材70に加えられる左右方向内向きの荷重をその横壁である前記上外壁71から前記内部底壁30に良好に伝達することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
2 サイドシル
4 バッテリー
10 容器本体
12 底壁
13 底壁周縁境界部
14 周壁
20 蓋
30 内部底壁
40 底壁補強材
41 右側対向部(第1対向部)
42 左側対向部(第2対向部)
44 中間対向部
45 右側連結部(第1連結部)
46 左側連結部(第2連結部)
70 サイドシル連結部材
71 上外壁
72 下外壁
76 閉断面
Sb バッテリー収容空間
Su 下側保護空間