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特許7252990分子真空ポンプ及び分子真空ポンプの排気速度に影響を及ぼす方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】分子真空ポンプ及び分子真空ポンプの排気速度に影響を及ぼす方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
F04D19/04 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021009273
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2021116814
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】20153779
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20217527
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・ビルケンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ホフマン
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-211604(JP,A)
【文献】特開平03-225245(JP,A)
【文献】特表2008-518155(JP,A)
【文献】特表平08-500675(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102889219(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
G01M 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子真空ポンプ(250、282)の内部の排気速度に影響を及ぼす方法において、分子真空ポンプ(250、282)は、少なくとも1つの分子ポンプ段(252、254、296、298)を有し、分子ポンプ段(252、254、296、298)によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプ(250、282)の入口(256、258、288、290)から出口へ向けて流路に沿って圧送可能であり、分子ポンプ段(252、254、296、298)は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有し、
分子真空ポンプ(250、282)の流路における第1の位置とは異なる第2の位置にブロック要素(262)を設けて、通過断面を局所的に減少させることによって、第1の位置で、第1のガスの排気速度と第2のガスの排気速度との間の差と比との少なくとも一方が増大するようにし、
分子ポンプ段(252、254、296、298)は、少なくとも、ロータディスクとステータディスクとを具備するターボポンプ段(252、296)を有し、ターボポンプ段(252、296)に、第1の位置及び第2の位置が位置し、
第2の位置は、第1の位置から離間していることと、第1の位置の下流側に配置されていることとの少なくとも一方であり、
ブロック要素は、ステータディスクの一部として構成されていることと、ステータディスクに代えて構成されていることとの少なくとも一方である、方法。
【請求項2】
第1のガスは、10g/mol以上又は20g/mol以上のモル質量を有することと、
第2のガスは、10g/mol未満又は5g/mol未満のモル質量を有することと、
第1のガスは、窒素と空気との少なくとも一方であることと、
第2のガスは、ヘリウムと水素との少なくとも一方であることと、
の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の位置は、分子真空ポンプ(250)のハウジング内で、入口(256、258、288、290)に直接に接続された領域と入口(256、258、288、290)又は中間入口の軸方向領域との少なくとも一方に配置されていることと、
第2の位置は、入口(256、258、288、290)から離れて配置されていることと、
の少なくとも一方である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ブロック要素(262)は、第2の位置における第1のガスの排気速度と第2のガスの排気速度との差が最大で毎秒2リットル(L/s)又は最大で毎秒1リットル(L/s)となるように構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分子真空ポンプ(250、282)において、
少なくとも1つの分子ポンプ段(252、254、296、298)を備え、分子ポンプ段(252、254、296、298)によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプ(250、282)の入口(256、258、288、290)から出口(294)へ向けて流路に沿って圧送可能であり、
分子ポンプ段(252、254、296、298)は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有し、
分子真空ポンプ(250、282)の流路における第1の位置とは異なる第2の位置にブロック要素(262)が設けられていて、ブロック要素(262)によって、通過断面が局所的に減少されていて、これにより、第1の位置で、分子真空ポンプ(250、282)の内部の排気速度である第1のガスの排気速度と第2のガスの排気速度との間の差と比との少なくとも一方が増大するようになっていて、
分子ポンプ段(252、254、296、298)は、少なくとも、ロータディスクとステータディスクとを具備するターボポンプ段(252、296)を有し、ターボポンプ段(252、296)に、第1の位置及び第2の位置が位置し、
第2の位置は、第1の位置から離間していることと、第1の位置の下流側に配置されていることとの少なくとも一方であり、
ブロック要素は、ステータディスクの一部として構成されていることと、ステータディスクに代えて構成されていることとの少なくとも一方である、
分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項6】
分子真空ポンプ(250、282)は、ポンプ段(252、296)内に又は2つのポンプ段(252、296)の間に配置された中間入口(258、290)を備える、請求項5に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項7】
ブロック要素(262)は、ポンピング方向で入口(256、258、288、290)の後方に又は中間入口の後方に配置されている、請求項5又は6に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項8】
ブロック要素(262)は、
入口(256、258、288、290)から離れて配置されていることと、
ポンプ段(252、254、296、298)の内側に配置されていることと、
の少なくとも一方である、請求項5から7のいずれか1項に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項9】
ブロック要素(262)は、ポンプロータの回転軸を基準に角度範囲(264)にわたって、又は180°より大きい、又は270°より大きい角度範囲にわたって閉じている、請求項5から8のいずれか1項に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項10】
ブロック要素(262)は、ポンピング作用を及ぼす構造を有する、請求項5から9のいずれか1項に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項11】
ポンピング作用を及ぼす構造は、所定数の又は有効数のポンピング作用を及ぼす特徴(272)を有し、数は、最小で1と、最大で10又は最大で4との少なくとも一方である、請求項5から10のいずれか1項に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
【請求項12】
漏れ検知器において、
請求項5から11のいずれか1項に記載の分子真空ポンプ(282)と試験ガスを検出する検出装置(284)とを備え、
分子真空ポンプ(282)は、第1の入口(288)と中間入口(290)とを有し、
第1の入口(288)は、検出装置(284)又は質量分析計に接続されていて、
中間入口(290)は、漏れが検査されるべき真空システムに接続されている又は接続可能であり、
ブロック要素(262)は、中間入口(290)の下流側に設けられていて、
少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす要素が、ポンピング方向で、中間入口(290)とブロック要素(262)との間に設けられている、漏れ検知器。
【請求項13】
真空システム内の漏れを調べるための請求項5から11のいずれか1項に記載の分子真空ポンプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子真空ポンプに関し、分子真空ポンプの排気速度に影響を及ぼす方法に関し、分真空ポンプを備える漏れ検知器に関し、そして真空システム内の漏れを検知するための分子真空ポンプの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な真空用途において、特に排気速度に関して、分子真空ポンプの真空能力に特別な要求が課せられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、分子真空ポンプの排気速度に、分子真空ポンプの流路の特定の位置で容易にかつ的確に影響を及ぼすことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1による方法によって解決される。この方法は、分子真空ポンプの排気速度、特に内部の排気速度に影響を及ぼすために用いられる。分子真空ポンプは、少なくとも1つの分子ポンプ段を有し、分子ポンプ段によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプの入口から出口へ向けて流路に沿って圧送可能であり、ポンプ段は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有する。分子真空ポンプの流路における第1の位置で排気速度に、すなわち、分子真空ポンプの流路における第1の位置とは異なる第2の位置にブロック要素を設けることによって影響を及ぼし、ブロック要素によって、通過断面が局所的に減少されている。
【0005】
本発明の根底を成す思想は、別の位置、つまり第1の位置で排気速度に的確に影響を及ぼすために、第2の位置で排気速度を的確に低減させることにある。ブロック要素を設けることによって、第2の位置における排気速度に的確に影響を及ぼすことが可能になる。ブロック要素は、それ自体、特に簡単に構成されていて、低コストで製作可能であるので、第2の位置における排気速度の的確な影響付けを、特に簡単な手段で達成することができる。当然のこととして、第2の位置における排気速度は、第1の位置におけるブロック要素によって、完全には任意に調整可能ではない、つまり無制限に調整可能ではない。むしろ、第2の位置における排気速度は、典型的には、様々な事情、特に分子真空ポンプのその他の構成によって制限されている。原則的に、第2の位置における排気速度は、単に第1の位置におけるブロック要素によって低減させることができる場合もあり得る。多くの真空用途において、多くの場合に概して高い排気速度が目標とされるときでも、特別な真空用途では、第2の位置における排気速度の低減も必要であり得る又は有利であり得る。結局のところ、本発明に係る方法によって、全体として又は個々のガス成分に対してガス状の媒体の逆流を増加させることもできる。
【0006】
ブロック要素は、通過断面の局所的な縮小によって、第2の位置におけるガイド値の局所的な低下をもたらす。
【0007】
特に、ブロック要素が静的な要素であり、かつ/又はポンプのステータに配置されていると有利であることが判明している。というのも、特にロータにおける動的な力に基づいて、その構造的な変更が一般に極めて煩雑であるからである。つまり、本発明は、ポンプのロータを変更する必要なく、既存のポンプの変更によって実現することができる。しかも、原則的に、ブロック要素は、例えばロータに配置することもできる。
【0008】
排気速度に影響を及ぼそうとする第1の位置は、例えば、分子真空ポンプの入口領域であってよい。ただし好適には、第1の位置は、分子真空ポンプの、ポンピング方向で第1の又は単一の入口の入口領域ではなくてよい。つまり換言すると、第1の位置は、特にいわゆる高真空入口に位置しない。ただし好適には、第1の位置は、例えば中間入口に配置することができる。代替的に、第1の位置は、例えば、全ての入口領域の外側に設けることもできる。
【0009】
第1の位置は、特に、分子真空ポンプのハウジング内にかつ/又はポンピング作用を及ぼす要素の包囲部材内に位置してよい。そこで有効な排気速度は、内部の排気速度と称される。前の段落との関連において、第1の位置は、特に、ハウジング内に配置され、直接に、つまりポンピング作用を及ぼす要素を介在することなく、入口に接続された領域に設けることができる。影響付けられるべき入口付近の内部の排気速度と述べることもできる。同様に、これは、特に中間入口に当てはまる。ターボ分子ポンプ段又はホルベックポンプ段の場合、第1の位置は、特に、入口又は中間入口の軸方向領域内に設けることができる、又は入口の軸方向領域における内部の排気速度に影響を及ぼすことができる。
【0010】
特に、中間入口の周辺事情において、中間入口付近の内部の排気速度は、典型的には、中間入口自体の排気速度とは異なる。これは、例えば、通常のスプリットフローポンプの例に基づいて明らかになる。ここでは、中間入口は、例えば、ターボ分子ポンプ段のハウジング内の空所として構成することができる。この空所は、中間入口自体の排気速度に影響を及ぼすガイド値を有する。これに対して、ハウジング内における中間入口の軸方向領域では、このガイド値は、影響を有しない。そこでは、内部の排気速度が作用する。ここでの目的は、特に、関係する入口付近で内部の排気速度に影響を及ぼすことにある。ただし、入口付近での内部の排気速度への影響は、原則として、入口自体の排気速度にも影響し得る。
【0011】
好適には、ブロック要素は、1つのポンプ段内に設けることができる。これは、ポンプ段が、ブロック要素の上流側及び下流側の両方にポンピング作用を及ぼす要素を有することを意味する。この場合、ブロック要素は、特に、関係するポンプ段の端部に配置されていない。
【0012】
原則として、複数の第1の位置を設けることもできる。つまり、複数の位置で排気速度に影響を及ぼすことができる。同様に、複数のブロック要素を各々の第2の位置に設けることができ、例えば、これにより1つの第1の位置又は複数の第1の位置で排気速度に影響が及ぼされる。
【0013】
特に、第2の位置は、第1の位置から離間することができる。このことは、本開示において、少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす要素が、第1の位置と第2の位置との間に設けられることを意味する。
【0014】
第2の位置は、好適には、第1の位置の下流側に配置することができる。ブロック要素は、その上流側で又は第1の位置の上流側で、簡単に有利な形で排気速度に影響を及ぼす。
【0015】
方法の特に有利な形態では、第1のガスの部分的な排気速度、特に内部の部分的な排気速度と、第2のガスの部分的な排気速度、特に内部の排気速度との間の差及び/又は比が増大するように、第1の位置で特に内部の排気速度に影響が及ぼされる。この場合、有利には、ブロック要素によって、第1の位置で、それぞれ異なるガスの部分的な排気速度に、それぞれ異なる形で影響を及ぼすことができることが利用される。したがって、ブロック要素の的確な配置及び構成によって、それぞれ異なるガスの2つの部分的な排気速度の間の差又は比ができるだけ大きくなるように、部分的な排気速度に的確に影響を及ぼすことができる。部分的な排気速度の差又は比の増大によって、特に、ポンピング方向とは逆向きに流れる第2のガスに対する、逆向きに流れる第1のガスの量比が変化する。これにより、例えばある種の選択を実現することができる。差が大きいほど、選択がより強くなる。
【0016】
より一般には、この思想ひいては本発明は、さらに、前述の形態の方法を含む、第1のガスの部分的な排気速度と第2のガスの部分的な排気速度との差及び/又は比を増大させる方法に関する。
【0017】
差は、特に、第1のガスと第2のガスとがそれぞれ異なるモル質量を有するときに効果的に増大させることができる。第1のガスは、好適には、10g/mol以上、特に20g/mol以上のモル質量を有することができる。第1のガスは、例えば、以下にN2とも称される窒素であってよい。窒素は、約28g/molのモル質量を有する。第1のガスは、例えば空気であってもよい。第2のガスは、好適には、10g/mol未満、特に5g/mol未満のモル質量を有することができる。第2のガスは、例えば、以下にHeとも称されるヘリウムであってよい。ヘリウムは約4g/molのモル質量を有する。第2のガスは、例えば水素であってもよい。水素は、約2g/molのモル質量を有する。第2のガスは、例えば、漏れ検知のための試験ガスであってよい。
【0018】
さらに、値について差に影響を及ぼすだけではなく、正負符号を含んだ意味でも差に影響を及ぼすことができる。正負符号を含んだ意味での差の増大は、第1のガスの部分的な排気速度が第2のガスの部分的な排気速度よりも可能な限り高い値だけより大きいことを含む。したがって、差が負の符号を有しないという目的もある。
【0019】
もちろん、3種以上のガスの部分的な排気速度の、互いに対する差及び/又は比に、本発明によるブロック要素によって有利に影響を及ぼすことができる。
【0020】
有利には、第1の位置は、分子真空ポンプのハウジング内で、入口に直接に結合された領域にかつ/又は入口の軸方向領域に配置されていることが想定され得る。入口は、好適には、中間入口であってよい。第2の位置におけるブロック要素によって、第1の位置で作用する、特に内部の排気速度に、容易にかつ的確に影響を及ぼすことができる。
【0021】
別の一形態は、第2の位置又はブロック要素が、入口領域の外側、特に全ての入口領域の外側に配置されることを想定している。一般に好適には、第2の位置又はブロック要素が、分子真空ポンプのハウジング内に設けられている。より一般に好適には、第2の位置又はブロック要素は、1つのポンプ段内に設けることができる。この場合、ブロック要素が、そのすぐ傍で、排気速度の著しく急激な、局所的な低減を及ぼすことができるという事項が利用される。第2の位置が入口領域に配置されているとき、これにより、関係する入口における排気速度が大幅に低減されることがあり、これは多くの場合所望されない。これに対して、ブロック要素が入口に対してある程度の間隔を置いて配置されると、この入口における排気速度は、急激な低減なしに影響を及ぼすことができる。これは、特に部分的な排気速度間の差又は比の的確な影響付けに関連して有利であることが判明している。ゆえに、部分的な排気速度の差又は比だけでなく、部分的な排気速度の高さも、単独でみて有利であることが多い。
【0022】
有利な一発展形態では、ブロック要素が、第2の位置において第1のガスの部分的な排気速度と第2のガスの部分的な排気速度とが少なくとも実質的に同一であるように構成されている。これは、例えば、ブロック素子が、ポンピング作用を及ぼす構造及び/又は少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす特徴を有することによって、容易に実現することができる。シミュレーションでは、この発展形態によって、第1の位置における部分的な排気速度の差を特に強く増大させることができることが分かっている。実質的に同一とは、最大で毎秒2リットル(L/s)、好適には最大で1L/sの差と解されるべきである。
【0023】
さらに、本発明は、前述の形態の方法を有する分子真空ポンプを設計する方法にも関する。さらに、本発明は、前述の形態の方法を有する分子真空ポンプを製造する方法にも関する。
【0024】
本発明の課題は、その課題に対応する独立請求項に記載の分子真空ポンプによっても解決される。独立請求項では、分子真空ポンプが開示されていて、この分子真空ポンプは、少なくとも1つの分子ポンプ段を備え、分子ポンプ段によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプの入口から出口へ向けて流路に沿って圧送可能であり、ポンプ段は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有し、特に静的なブロック要素が設けられていて、ブロック要素によって、通過断面が、局所的に減少されている。
【0025】
有利な形態では、分子真空ポンプが、ポンプ段内に配置された中間入口を備えることが想定されている。中間入口は、同様に有利な例では、2つのポンプ段の間に配置することもできる。中間入口を備える分子真空ポンプは、スプリットフローポンプとも称される。そのような場合、本発明による利点を特に効果的に利用することができる。
【0026】
一発展形態によれば、ブロック要素が、好適には、ポンピング方向で第1のポンプに後置されたポンプ段において、ポンピング方向で入口の後方に、特に中間流入口の後方に配置されていることが想定されている。
【0027】
別の一形態では、ブロック要素が、入口領域の外側に配置されている。これは、ポンピング方向で、関係する入口とブロック要素との間に、少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす要素が配置されていることを意味する。したがって、ブロック要素は、特に入口領域から離間して位置することができる。
【0028】
ブロック要素は、好適には、各々の入口領域の外側に配置する又は入口領域内に配置しない、かつ/又は全ての入口から離間して位置することができる。特に、ブロック要素は、1つ又は各々の出口領域の外側に配置することもできる。
【0029】
分子真空ポンプの入口領域にある、特に入口領域の直ぐ手前にあるブロック要素は、流入するガス状の媒体を導き、ポンピング方向とは逆向きの流れを減少させるのに用いることができる。これに対して、ブロック要素が入口領域の外側に配置されているとき、入口の付近で、特に、それぞれ異なるガスの特に内部の排気速度に様々に影響を及ぼすことができ、特に、第2のガスの部分的な排気速度に対する第1のガスの部分的な排気速度の差及び/又は比を増大させることができる。これは、与えられた気体分子がポンピング方向とは逆向きに流れる確率にも影響を及ぼすが、ただし直接にブロック要素のガイド機能によってではなく、第2の位置におけるブロック要素によって第1の位置における排気速度に影響を及ぼすことによってである。したがって、ブロック要素は、局所的な排気速度に関して、流路の他の位置で、ある種の遠隔作用を有する。
【0030】
ハウジング内の1つの位置においてそれぞれ異なるガスの部分的な排気速度がそれぞれ異なる影響を受けるとき、特に逆向きの流れにおけるそれぞれ異なるガスの成分が変化する。これにより、最終的に、それぞれ異なるガスの選択が達成される。関係するガスは、このようにして完全には互いに分離することはできないが、それにもかかわらず、たとえわずかであっても、逆向きの流れのガスの成分を変化させることは、特定の用途にとって有利であり得る。
【0031】
ブロック要素は、特に、ポンプ段内、つまりポンプ段の2つのポンピング作用を及ぼす要素の間に配置することができる。
【0032】
好適には、ブロック要素は、ポンピング方向で2つの入口の間に又は入口と出口との間に配置することができる。
【0033】
有利な一発展形態は、ブロック要素が、ポンプロータの回転軸に関して所定の角度範囲にわたって、特に180°より大きい、特に270°より大きい角度範囲にわたって閉じていることを想定している。角度範囲の残りは、例えば完全に開いてよい。
【0034】
別の一形態によれば、ブロック要素が、ポンピング作用を及ぼす構造を有する。有利には、ブロック要素は、特定の角度範囲にわたって閉じてよく、残りの角度範囲でポンピング作用を及ぼす構造を有することができる。ブロック要素におけるポンピング作用を及ぼす構造によって、ブロック要素付近での、つまり第2の位置での、それぞれ異なるガスの部分的な排気速度を、特に同様に、最良の場合には少なくとも実質的に同一に設定することができる。その結果、特に、別の、つまり第1の位置で、排気速度の特に強い影響、特にそれぞれ異なるガスの2つの部分的な排気速度の差又は比の増大が生じ得る。
【0035】
ポンピング作用を及ぼす構造は、特に、所定数の、特に有効数の、ポンピング作用を及ぼす特徴及び/又はポンピング作用を及ぼす特徴の間の貫通部を有することができ、この場合、数は、好適には最小で1及び/又は最大で10である。この領域は、第1の位置における部分的な排気速度の可能な限り大きな差に関して特に有利であることが分かっている。最大で4の数がその上特に有利であると分かっている。
【0036】
分子真空ポンプは、好適には、ターボ分子ポンプ段、ホルベックポンプ段及び/又はジークバーンポンプポンプ段の少なくとも1つ又は任意の組合せを有することができる。ポンプ段は、特に直列に接続することができる。ポンプ段は、特に、共通のロータシャフト上に配置された複数のロータ又はロータ部分を有する、又は好適には共通のロータシャフトによって駆動されている。
【0037】
ブロック要素は、例えば、ターボ分子ポンプ段、ホルベックポンプ段又はシーグバーンポンプ段に接して又はその中に配置することができる。複数のブロック要素を、例えばそれぞれ異なる又は同種のポンプ段に設けることもできる。
【0038】
ターボ分子ポンプ段において、ポンピング作用を及ぼす要素が、ターボロータディスク又はターボステータディスクによって形成される。ポンピング作用を及ぼす特性は、ターボロータベーン又はターボステータベーンによって形成される。
【0039】
ホルベックポンプ段では、ポンピング作用を及ぼす要素が、ポンプロータの回転軸に対する軸方向部分によって形成され、この場合、この軸方向部分において、複数のホルベックウェブが、特に少なくとも実質的に全周にわたって分配して配置されている。ポンピング作用を及ぼす特徴は、ホルベックウェブ部分によって形成される。
【0040】
ジークバーンポンプ段において、ポンピング作用を及ぼす要素は、ポンプロータの回転軸に対する半径方向部分によって形成され、この場合、この半径方向部分において、複数のジークバーンウェブが、特に少なくとも実質的に全周にわたって分配して配置されている。ポンピング作用を及ぼす特徴は、ジークバーンウェブ部分よって形成される。
【0041】
ブロック要素は、例えば複数のポンプ段のうちの1つに配置することもでき、特に、これにより、ハウジング内の、別のポンプ段に接して又はその中に配置された位置、特に入口に直接に接続された位置で排気速度に影響が及ぼされる。ゆえに、例えば、分子真空ポンプが、ブロック要素が中に配置されたホルベックポンプ段を有し、この場合、ホルベックポンプに前置されたターボ分子ポンプ段内に、又はホルベックポンプ段に前置された2つのターボ分子ポンプ段の間に配置された中間入口において排気速度に影響が及ぼされることが想定され得る。
【0042】
別の例は、ブロック要素が、2つのポンプ段の間に、特にホルベックポンプ段とターボ分子ポンプ段との間に配置されていることを想定している。同様にこれは、ホルベックポンプ段に前置されたターボ分子ポンプ段内に、又はホルベックポンプ段に前置された2つのターボ分子ポンプ段の間に配置された中間入口における排気速度に影響を及ぼすのに役立つ。
【0043】
原則として、ブロック要素は、例えば、2つの入口の間に、特に2つの中間入口の間に設けることもできる。ゆえに、ブロック要素は、例えば、その前後に入口又は中間入口が設けられたポンプ段に配置することができる。2つの入口の間のブロック要素は、例えば、入口の間でポンプ段の圧縮が変化する又は圧縮に影響が及ぼされるようにすることができる。ゆえに、これにより、関係する複数の入口の間の圧力比に影響が及ぼされる。
【0044】
技術的に簡単な例によれば、ブロック要素は、特にこのブロック要素がターボ分子ポンプ段内に又はこれに接して配置されているとき、金属薄板から製造することができる。ブロック要素は、例えば、ポンピング作用を及ぼす特徴、例えば打抜き加工及び/又は曲げ加工によって製造されるターボステータブレード有することができる。
【0045】
ホルベックポンプ段又はジークバーンポンプ段内に又はこれに接して、ブロック要素は、例えば1つ又は複数のホルベック溝又はジークバーン溝を遮断する横壁として構成することができる。例えば、1つのポンプ段の複数又は全てのホルベック溝又はジークバーン溝は、軸方向位置又は半径方向位置で、ポンピング方向に対して直交方向のウェブによって閉じることができ、この場合、1つの溝又は個々の溝だけが標準的に構成されている、つまり開いている。
【0046】
ブロック要素は、原則として、例えば、遮蔽体として構成することができる。
【0047】
さらに、本発明は、前述の形態による分子真空ポンプと、特に試験ガス用の検出装置とを有する漏れ検知器に関する。本発明による利点は、漏れ検知器において特に有効に利用することができる。漏れ検知器は、好適には、カウンタフローリークディレクタとして構成することができる。試験ガスとして、ヘリウム又は水素を用いることができ、特に水素の場合には例えば試験ガス又は水素を含有する混合ガスの形態で用いることができる。検出装置は、例えば、質量分析計として構成することができる。
【0048】
漏れ検知器の分子真空ポンプは、有利な一形態によれば、第1の入口と中間入口とを有し、第1の入口は、検出装置に接続されていて、中間入口は、漏れが検査されるべき真空システムに接続されている又は接続可能である。
【0049】
ブロック要素は、好適には、中間入口の下流側に設けることができ、有利には、少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす要素を、ポンピング方向で、中間入口とブロック要素との間に設けることができる。ゆえに、ブロック要素は、特に中間入口の領域の外側に配置されている、かつ/又は中間入口の領域から離間している。
【0050】
本発明は、さらに、真空システム内の漏れを検知するための、前述の形態の分子真空ポンプの使用に関する。
【0051】
通過断面は、ポンピング方向に又は流路に沿った選択された位置において横断面で測定された、ポンプ段内の開いた面である。ゆえに、通過断面は、特に、圧送されるべきガス成分が通過することができる、関係する横断面における開口の合計によって形成されている。ロータ駆動される分子真空ポンプでは、通過断面は、特に、ロータ軸に沿って選択された位置における横断面に関し、この場合、断面は、特に、ロータ軸に対して直交方向に延在する。
【0052】
ポンプ段の通過断面は、特に、1つ又は複数のステータ要素、ターボ分子ポンプ段の場合には特にステータディスクによって、つまり特にポンピング方向でブロック要素に前置された又は後置された1つ又は複数のステータ要素によって規定されている。ポンプ段は、基本的にその軸方向の延在長さに沿って、可変の通過断面を有することができる。ブロック要素による局所的な減少が重要である。
【0053】
本発明によれば、通過断面は、ブロック要素によって減少されるだけであり、完全には遮断されない。要するに、ブロック要素は、例えば通過断面の一部を覆うことができる。したがって、ブロック要素の傍でポンプ段を通って、例えば次のポンプ段へ向かうガスの圧送は可能なままである。
【0054】
したがって、通過断面は、特に、ポンプ段の領域においてポンプのロータを通る横断面の開いた領域によって形成されている。ターボ分子ポンプ又はターボ分子ポンプ段では、ターボステータディスクの通過断面は、例えば、半径方向外側で、ターボステータブレードの半径方向外側の境界によって画定されている。この場合、内側では、通過断面は、ターボステータブレードの半径方向内側の境界によって、つまりいわゆるブレード基部によって画定されている。通過断面は、周方向に、ブレードによって分離された開いた部分を有する。ターボロータ又はターボロータディスクについても同様である。ホルベックポンプ段では、通過断面は、例えば外側で又は内側で、複数のホルベック溝のそれぞれの基部によって画定されている。反対向きに、つまり内側で又は外側で、通過断面は、特にホルベックロータによって画定されている。通過断面は、周方向で、ホルベックウェブによって分離された開いた部分、つまりホルベック溝を有する。一般に、ホルベックポンプ段では、通過断面は、特に、ホルベック溝の横断面の合計にほぼ一致する。半径方向で見てジークバーンポンプ段についても同様である。
【0055】
特に、ブロック要素を通る通過断面は、特にブロック要素の前及び/又は後におけるポンプ段の通過断面の横断面積に関して、少なくとも25%、特に少なくとも50%、より好適は少なくとも75%減少することができる。
【0056】
多段分子真空ポンプの中間入口は、例えば「段間ポート」とも称され、そのような中間入口を有する分子真空ポンプは、「スプリットフローポンプ」とも称される。
【0057】
特に、ブロック要素を通る通過断面は、特にポンプ段のロータ軸に対して局所的に非対称であってよい。例えば、ブロック要素は、ポンプ段のロータシャフトの、中間入口の方の側で、このブロック要素が、ロータの、中間入口から離れた側よりも大きな通過断面の割合を遮断する、又はその逆も然りであるように、配置することができる。一般に、ブロック要素は、ロータシャフトの、中間入口の方の側に又は中間入口から離れた側に配置することができる。例えば、ブロック要素は、ロータ軸に対する部分角度領域に配置することしかできず、部分角度領域は、特に中間入口に対応付けられてよい又は対応付けられなくてよい。ブロック要素は、通過断面を、例えば半径方向でロータ軸と中間入口との間に位置する領域で遮断することができる。
【0058】
例えば、遮断要素が、少なくとも中間入口に割り当てられた又は割り当てられていない周部分に、特に実質的にこの周部分だけに非透過性に構成されていることが想定され得る。半径方向で中間入口とは反対の側の領域又は半径方向で中間入口の方の側の領域は、特に、透過性にかつ/又はポンピング作用を有して構成することができる。半径方向で中間入口とは反対の側又は中間入口の方の側の領域において、ステータは、特に、透過性に構成することができ、一般に「標準的な」ステータのように構成することができる。
【0059】
ブロック要素の幾何学形状は、例えば、可変であってよい。ゆえに、選択された幾何学形状に応じて、排気速度に関して様々な性能を設定することができる。
【0060】
一形態によれば、ブロック要素が、壁としてかつ/又は連続する面要素として構成されている、かつ/又はポンピング方向に対して横向きに延在することが想定されている。これは、本発明による利点を達成する構造的に簡単な手段を形成する。ブロック要素は、特に、ポンピング方向及び/又はロータ軸に対して直交方向にかつ/又は横向きに延在することができる。面要素又は壁は、例えば中間入口の境界に対して平行にかつ/又はロータ軸に対して斜めに又は直交方向に配置することができる。
【0061】
いくつかの形態では、ブロック要素が、局所的な減少の手前で又は後方で、特に、隣り合う、特に前置されたかつ/又は後置された通過断面に関して、半径方向に、ポンプ段の通過断面の一部にわたってのみ延在する。特に、ブロック要素は、半径方向内側部分を覆うことができるかつ/又は半径方向外側部分を覆うことができない。例えば、半径方向の全幅にわたって延在する他の周方向領域においてブロック要素又は同一のブロック要素の部分との組合せも可能である。
【0062】
一形態によれば、ブロック要素がターボステータディスクの一部として構成されていることが想定されている。原則として、ブロック要素は、例えばステータディスク、特に部分ステータディスクに直接に結合するかつ/又はそのようなディスクに軸方向に対応付けられてよい。軸方向に対応付けられるとは、ブロック要素が、ステータディスク又は部分ステータディスクと少なくとも部分的に同一の軸方向領域に配置されていることを意味する。特に、ブロック要素は、ターボステータディスクの、中間入口の方の側又は中間入口から離れる側の部分と置換することができる。断面で見て、ブロック要素の軸方向の高さに、例えばロータシャフトの、特に中間入口の方の側に又は中間入口から離れる側に、ステータブレードを設けることができる一方、ロータシャフトの、他の中間入口の方の側に、ブロック要素又はブロック要素の閉じた領域を設けることができ、特にステータブレードは設けられていない。
【0063】
ブロック要素は、構造的に簡単な実施例によれば、金属薄板として構成することができる。ターボステータディスクは、同様に金属薄板として構成されることが多く、ブロック要素は、通常、ターボステータディスクと同様に製造する又は構成することができ、しかしこの場合、特にブロック要素の閉じた領域には、別個のブレードが設けられない。
【0064】
一発展形態では、ブロック要素が、1つ又は複数のステータブレードに対する特に半径方向内側のブレード基部を規定することが想定されている。特に、ブロック要素によって規定されるブレード基部直径は、前置された又は後置されたロータディスク及び/又はステータディスクのブレード基部直径よりも、特に少なくとも20%大きくすることができる。
【0065】
好適には、ブロック要素は、少なくとも大体において、少なくともブロック要素の閉じた領域で平らに構成されている。しかもブロック要素は、例えばシェル状及び/又はホッパ状に構成することができ、特に部分リング状、部分シェル状及び/又は部分ホッパ状に構成することができ、この場合、用語「部分」とは、特にロータシャフトを中心とする角度範囲に関する。
【0066】
一般に、ポンプは、例えばポンピング方向に関して中間入口に前置されたポンピング作用を及ぼすロータ部分と、ポンピング方向に関して後置されたポンピング作用を及ぼすロータ部分とを有することができ、この場合、特に両ロータ部分は、同一のロータシャフトに結合するかつ/又は直列に接続することができる。一般に、分子真空ポンプは、例えばロータシャフトを1つだけ有することができ、この場合、特に全てのポンプ段及びポンプ段部分を、このロータシャフトによって駆動するかつ/又は直列に接続することができる。
【0067】
概して、中間入口は、好適には、特にポンプハウジングにおける軸方向領域に開口し、この軸方向領域を介して、中間ポートに前置されたポンプ段又はポンプ段部分が、中間入口に後置されたポンプ段又はポンプ段部分に直列に結合されている。この軸方向領域は、例えば、中間段領域又はポンプ段内の軸方向領域、例えばターボロータディスクの軸方向領域であってよい。一般に、ガスの圧送は、特に、中間入口が開口する軸方向領域及び/又は中間段領域を介して行うことができる。
【0068】
当然のこととして、ここに記載の方法は、装置に関して述べられた形態及び個々の特徴に応じて発展させることもでき、その逆も然りである。
【0069】
以下、本発明を、例示的に、有利な実施形態に基づいて、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図を示す。
図2図1のターボ分子ポンプの下面図を示す。
図3図2に示された切断線A-Aに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図4図2に示された切断線B-Bに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図5図2に示された切断線C-Cに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図6】分子真空ポンプの内部の排気速度経過のプロットを示す。
図7】分子真空ポンプを示す。
図8】ブロック要素を有する分子真空ポンプの内部の排気速度経過のプロットを示す。
図9】ブロック要素を有する分子真空ポンプを示す。
図10】ブロック要素を示す。
図11】別のブロック要素を示す。
図12】ブロック要素を有する分子真空ポンプの内部の排気速度経過のプロットを示す。
図13】漏れ検知器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、入口フランジ113によって包囲されたポンプ入口115を有し、ポンプ入口115に、それ自体周知のように、図示されていないレシピエントを接続することができる。レシピエントからのガスは、ポンプ入口115を介してレシピエントから吸い込まれ、ポンプを経てポンプ出口117へ圧送することができ、このポンプ出口には、例えば回転ベーンポンプのような予備真空ポンプを接続することができる。
【0072】
入口フランジ113は、図1による真空ポンプの整向では、真空ポンプ111のハウジング119の上端を構成する。ハウジング119は、下部121を有し、この下部の横に、電子機器ハウジング123が配置されている。電子機器ハウジング123内に、例えば真空ポンプ内に配置された電気モータ125を作動させるために、真空ポンプ111の電気及び/又は電子部品が収納されている(図3参照)。電子機器ハウジング123には、アクセサリ用の複数のポート127が設けられている。加えて、例えばRS485規格に準拠するデータインタフェース129及び電力供給ポート131が、電子機器ハウジング123に配置されている。このように取り付けられた電子機器ハウジングを有さず、外部の駆動電子機器に接続されるターボ分子ポンプも存在する。
【0073】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、特に通気弁の形態の通気入口133が設けられていて、この通気入口133を介して、真空ポンプ111に通気を行うことができる。さらにまた、下部121の領域には、パージガスポートとも称されるシールガスポート135が配置されていて、シールガスポート135を介して、パージガスが、ポンプによって圧送されるガスから電気モータ125(例えば図3参照)を保護するために、モータスペース137(このモータスペース内で、電気モータ125は真空ポンプ111内に収納されている)へ導入することができる。さらにまた、下部121内には、さらに2つの冷却剤ポート139が配置されていて、これらの冷却剤ポートのうちの一方は、冷却剤用の入口として設けられていて、他方の冷却剤ポートは、冷却剤用の出口として設けられていて、この冷却剤は、冷却のために真空ポンプ内に導入することができる。存在する他のターボ分子ポンプ(図示しない)は、専ら冷却空気を用いて運転される。
【0074】
真空ポンプの下面141は、スタンド面として使用することができるので、真空ポンプ111は、下面141を基準に縦置きで運転することができる。しかしながら、真空ポンプ111は、入口フランジ113を介してレシピエントに固定され、これにより、ある程度吊り下がった状態で運転されてもよい。加えて、真空ポンプ111は、図1に示されたものとは違うように整向されているときでも運転できるように構成することができる。下面141が下を向くのではなく、横に向くか、上を向くように整向して配置することができる真空ポンプの実施形態を実現することもできる。この場合、原則として、任意の角度で実現可能である。ここで図示されるポンプよりも特に大きな、存在する他のターボ分子ポンプ(図示しない)は、縦置きでは運転することができない。
【0075】
図2に図示された下面141には、さらに、種々のボルト143が配置されていて、これらのボルトによって、ここではそれ以上は特定されていない真空ポンプの構成部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が、下面141に固定されている。
【0076】
加えて、下面141には、固定孔147が配置されていて、これらの固定孔147を介して、ポンプ111は、例えば載置面に固定することができる。これは、ここで図示されるポンプよりも特に大きな、存在する他のターボ分子ポンプ(図示しない)では、不可能である。
【0077】
図2図5には、冷却剤ライン148が図示されていて、この冷却ライン148内を、冷却剤ポート139を介して導入及び導出される冷却剤が循環することができる。
【0078】
図3図5の断面図が示すように、真空ポンプは、ポンプ入口115に存在するプロセスガスをポンプ出口117へ圧送するために複数のプロセスガスポンプ段を有する。
【0079】
ハウジング119内に、ロータ149が配置されていて、ロータ149は、回転軸151を中心として回転可能なロータシャフト153を有する。
【0080】
ターボ分子ポンプ111は、ロータシャフト153に固定された複数の半径方向のロータディスク155と、ロータディスク155の間に配置されかつハウジング119に固定された複数のステータディスク157とを有する、ポンピング作用を及ぼす互いに直列に介装された複数のターボ分子ポンプ段を具備する。この場合、ロータディスク155とこれに隣り合うステータディスク157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を構成する。ステータディスク157は、スペーサリング159によって互いに所望の軸方向の間隔を置いて保持されている。
【0081】
加えて、真空ポンプは、半径方向に互いに内外に配置され、ポンピング作用を及ぼす互いに直列に介装されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段を有しない他のターボ分子真空ポンプ(図示しない)が存在する。
【0082】
ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置された1つのロータハブ161と、ロータハブ161に固定されかつこのロータハブ161によって支持された2つの円筒側面状のホルベックロータスリーブ163、165を有し、これらのホルベックロータスリーブ163、165は、回転軸151に対して同軸に整向されていて、半径方向に互いに内外に介装されている。さらに、2つの円筒側面状のホルベックステータスリーブ167、169が設けられていて、これらのホルベックステータスリーブ167、169も同様に回転軸151に対して同軸に整向されていて、半径方向に見て互いに内外に介装されている。
【0083】
ホルベックポンプ段のポンピング作用を及ぼす表面は、ホルベックロータスリーブ163、165及びホルベックステータスリーブ167、169の側面によって、即ち半径方向内側面及び/又は外側面によって構成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向の内側面は、半径方向のホルベックギャップ171を形成しつつ外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向外側面に対向し、この半径方向外側面とともに、ターボ分子ポンプの後に続く第1のホルベックポンプ段を構成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベックギャップ173を形成しつつ内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向外側面に対向し、この半径方向外側面とともに第2のホルベックポンプ段を構成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベックギャップ175を形成しつつ内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向外側面に対向し、この半径方向外側面とともに第3のホルベックポンプ段を構成する。
【0084】
ホルベックロータスリーブ163の下端に、その介在により半径方向外側に位置するホルベックギャップ171を中央のホルベックギャップ173に接続する、半径方向に延在する通路を設けることができる。加えて、内側のホルベックステータスリーブ169の上端に、その介在により中央のホルベックギャップ173を半径方向内側に位置するホルベックギャップ175に接続する、半径方向に延在する通路を設けることができる。これにより、互いに内外に介装されたホルベックポンプ段は、互いに直列に介装される。さらに、半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下端に、出口117に通じる接続通路179を設けることができる。
【0085】
ホルベックステータスリーブ167、169の前述のポンピング作用を及ぼす表面は、それぞれ、回転軸151を中心として螺旋状に軸方向に延在する複数のホルベック溝を備えるが、ホルベックロータスリーブ163、165の対向する側面は、平滑に形成されていて、ホルベック溝内の真空ポンプ111を作動させるためのガスを送る。
【0086】
ロータシャフト153を回転可能に軸支するために、転がり軸受181がポンプ出口117の領域に設けられていて、永久磁石磁気軸受183が、ポンプ入口115の領域に設けられている。
【0087】
転がり軸受181の領域で、ロータシャフト153に、転がり軸受181に向かって増大する外径を有する円錐形のスプレーナット185が設けられている。スプレーナット185は、作動媒体蓄積器の少なくとも1つの掻落とし部材と滑り接触している。存在する他のターボ分子真空ポンプ(図示しない)では、スプレーナットの代わりに、スプレーボルトを設けることができる。したがって種々の実施形態が実現可能であるので、この関連において、用語「スプレートップ」も用いられる。作動媒体蓄積器は、上下に重ねられた複数の吸収性のディスク187を有し、これらのディスク187には、転がり軸受181用の作動媒体、例えば潤滑剤が含浸されている。
【0088】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛管現象によって作動媒体蓄積器から掻落とし部材を介して、回転するスプレーナット185へ伝達され、遠心力によって、スプレーナット185に沿って、スプレーナット185の外径が大きくなる方向に転がり軸受181に向かって移送され、そこで、作動媒体は、例えば潤滑機能を満たす。転がり軸受181及び作動媒体蓄積器は、真空ポンプ内で槽状のインサート189と軸受カバー145とによって包囲されている。
【0089】
永久磁石磁気軸受183は、ロータ側の軸受半体191とステータ側の軸受半体193とを有し、これらの軸受半体191、193は、軸方向に上下に積み重ねられた複数の永久磁石リング195、197から成るそれぞれ1つのリングスタックを有する。リング磁石195、197は、互いに半径方向の軸受ギャップ199を形成しつつ対向し、この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に配置されていて、ステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受ギャップ199内に存在する磁場は、リング磁石195、197の間に、ロータシャフト153の半径方向の軸支をもたらす磁気的反発力を惹起する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153のキャリヤ部分201によって支持され、このキャリヤ部分201は、リング磁石195を半径方向外側で包囲する。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側のキャリヤ部分203によって支持され、このキャリヤ部分203は、リング磁石197を通って延在し、ハウジング119の半径方向の補強材205に懸架されている。回転軸151に対して平行に、ロータ側のリング磁石195は、キャリヤ部分201と連結されたカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸151に対して平行に、1つの方向に、キャリヤ部分203と結合された固定リング209とキャリヤ部分203と結合された固定リング211とによって固定されている。加えて、固定リング211とリング磁石197の間に、皿ばね213を設けることができる。
【0090】
磁気軸受内に、非常用軸受又は安全軸受215が設けられていて、この非常用軸受又は安全軸受215は、真空ポンプ111の標準的な作動中に、接触することなく空転し、ステータに対して相対的にロータ149が過度に半径方向に変位したときになってから、ロータ149用の半径方向ストッパを構成するために作用する。これにより、ステータ側の構造物とロータ側の構造物の衝突が防止される。安全軸受215は、無潤滑の転がり軸受として形成されていて、ロータ149及び/又はステータとともに、安全軸受215が標準的なポンプ作動中に作用しないようにする半径方向のギャップを構成する。安全軸受215が作用する半径方向の変位は、安全軸受215が真空ポンプの標準的な作動中には作用しないように十分大きく、同時に、ステータ側の構造物とロータ側の構造物との衝突が全ての状況下で阻止されるように十分小さく、寸法設定されている。
【0091】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動するための電気モータ125を有する。電気モータ125の電機子は、ロータ149によって構成され、このロータ149のロータシャフト153は、モータステータ217を通って延在する。モータステータ217を通って延在するロータシャフト153の部分には、半径方向外側に又は埋設されて、永久磁石装置を配置することができる。モータステータ217とモータステータ217を通って延在するロータ149の部分との間には、中間スペース219が配置されていて、この中間スペース219は、半径方向のモータギャップを有し、このモータギャップを介して、モータステータ217と永久磁石装置とに、駆動モーメントを伝達するために磁気作用を及ぼすことができる。
【0092】
モータステータ217は、ハウジング内で、電気モータ125のために設けられたモータスペース137内に固定されている。シールガスポート135を介して、パージガスとも称されかつ例えば空気又は窒素であってよいシールガスがモータスペース137内へ達し得る。シールガスを介して、電気モータ125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食作用成分から防護することができる。モータスペース137は、ポンプ出口117を介して真空引きすることもでき、即ちモータスペース137内は、少なくともほぼ、ポンプ出口117に接続された予備真空ポンプによって生じさせられた真空圧力が支配する。
【0093】
加えて、ロータハブ161とモータスペース137を画成する壁221との間には、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモータスペース217の良好なシールを達成するために、それ自体周知のいわゆるラビリンスシール223を設けることができる。
【0094】
以下に説明するポンプ及システムは、部分的に著しく概略的に簡素化して図示されている。それらは、実用的な実施のために、有利には前述のポンプの個々の又は複数の特徴を有して実施可能である。同様に、前述のポンプには、有利には、ブロック要素を、特に図示のステータディスクの代わりに備え付けることができる。
【0095】
図6は、図7に示された例示的な分子真空ポンプ250内の異なるガスに対する2つの部分的な排気速度のプロットが示されている。分子真空ポンプ250は、ターボポンプ段252と、ホルベックポンプ段254とを有する。
【0096】
図6のプロットの縦座標は、L/sの排気速度Sに対応付けられている。横座標は、分子真空ポンプ250の流路に沿って見た位置iに対応付けられている。ターボポンプ段250は、16枚のディスクを有し、ディスクの各々が、図6のプロットの観点で「位置」を成している。ホルベックポンプ段254は、全体として、図6のプロットの観点で1つの位置を成している。全ての位置iは、分子真空ポンプ250の、ここには図示されていないハウジング内に配置されている。プロットは、異なるガスの内部の部分的な排気速度の経過を示す。
【0097】
流路の位置のナンバリングは、ここではポンピング方向とは逆に行われる。位置17におけるターボロータディスクは、分子真空ポンプ250の高真空側の端部を形成する一方、位置1におけるホルベックポンプ段254は、分子真空ポンプ250の吐出側の端部を形成する。つまり、ポンピング方向は、図6及び図7において、右から左へ延びる。ターボステータディスクは、偶数の位置番号を有する一方、ターボロータディスクは、奇数の番号を有し、この場合、後者は、分かりやすくするために別個には記載されていない。ただし、図7では、理解を容易にするために、位置1及び位置17が示されている。
【0098】
一般に、図6の右側にある分子ポンプ250の高真空側の端部における排気速度Sは、極めて大きく、図6の左側にある分子真空ポンプ250の吐出側の端部に向けて低下する。
【0099】
図6に示された排気速度曲線は、ヘリウムや窒素の部分的な排気速度に関する。これに対応して、排気速度曲線にはSN2又はSHeが付されている。これらの排気速度曲線は、後述する排気速度曲線と同様に、シミュレーションによって求められた。
【0100】
分子真空ポンプ250は、ポンピング方向に見て第1の入口256を有し、第1の入口256は、位置17で又は高真空側のターボロータディスクの付近で開口する。さらに、分子真空ポンプ250は、中間入口258を有し、中間入口258は、位置11の付近で又は対応するターボロータディスクの付近で開口する。
【0101】
入口256及び258は、図6及び図7の両方に示唆されている。さらに、図6には、中間接続部258付近での又は位置11でのヘリウムの部分的な排気速度と窒素の部分的な排気速度との間の差260が示唆されている。したがって、差260は、ΔS11=SN2;11-SHe;11に相当する。
【0102】
図8及び図9は、図6及び図7に類似した描画を示し、したがって、図8及び図9については独自性についてのみ言及する。考慮される分子真空ポンプ250は、基本的に、図7の分子真空ポンプのように構成されている。ただし、位置6には、慣用のターボステータディスクが設けられずに、静的なブロック要素262が設けられている。ブロック要素262は、図8及び図9の両方に示唆されている。
【0103】
ブロック要素262は、分子真空ポンプ250の通過断面の局所的な減少をもたらす。これは、図9において、ロータシャフト264からの一方の側の実線によって又はロータシャフト264からの他方の側の破線によって示唆されたように、例えば、ブロック要素262が、部分的に閉じたディスクとして、かつ一部で少なくとも部分的に開いたディスクとして構成されていることによってもたらされる。
【0104】
図8から分かるように、部分的な排気速度SN2及びSHeは、位置6の付近で又はブロック要素262の付近で大きく低下している。これは、当業者の予想と一致する。というのも、ブロック要素262が、ターボポンプ段252の通過断面を局所的に減少させるからである。さらに、これにより、流路に沿った他の位置、特にブロック要素262から離間した位置でも排気速度SN2及びSHeに影響が及ぼされることが明らかである。これは、図6図8との比較から得られる。さらに、部分的な排気速度SN2及びSHeに、同一にではなくそれぞれ異なって影響が及ぼされることが明らかである。一般に、排気速度に的確に影響を及ぼすために、1つのブロック要素262を、ブロック要素262の位置とは異なる位置で使用することができ、そして特に、部分的な排気速度の間の差及び/比に的確に影響を及ぼすために、異なるガスの部分的な排気速度に対するそれぞれ異なる影響を利用することができることが認められた。
【0105】
特に、ブロック要素262によって、部分的な排気速度SN2;11及びSHe;11に影響が及ぼされ、これらの2つの部分的な排気速度の間の差260が、図6と比較して又は図7によるブロック要素を有しない分子真空ポンプ250と比較して増大した。つまり、中間入口258では、最終的に、窒素の部分的な排気速度は、ヘリウムの部分的な排気速度に対して相対的に増加した。
【0106】
図10には、例示的なブロック要素262が示されている。観察者の観察方向は、ここではロータシャフトに対して平行である。ブロック要素262は、ロータシャフトを基準とする角度領域にわたって閉じて形成されたディスクとして構成されている。閉じた角度領域264は、ここでは約270°にわたって延在する。残りの角度領域266では、ブロック要素262は、真っ直ぐに開いている。つまり、領域266は、透過性の領域である。ここに示されたブロック要素262は、特に簡単な実施形態を形成する。図8による排気速度曲線は、特にそのようなブロック要素262に基づいている。
【0107】
その中央で、ブロック要素262は、図10では開放された中央領域268を有し、中央領域268を通って、組み立てられた状態で、ロータシャフトが延在する。したがって、中央領域268は、開いた通過断面を形成しない。これに対して、そのような開いた通過断面は、角度領域266によってのみ形成される。それにもかかわらず、開いた中央領域は、例えばロータシャフトよりも大きくてもよいので、ブロック要素とロータシャフトとの間の半径方向領域は、開いている又は通過性を有する。これは、ブロック要素の内周に当てはまる。もちろん、これは、相応にその外周にも当てはまり、つまり外周にも開いた半径方向領域を設けることができる。
【0108】
図11には、ブロック要素262の別の実施形態が、斜視図で示されている。図11のブロック要素262は、ここでは300°より大きい閉じた角度領域264を有する。領域270では、ブロック要素262は、通過性に構成されているが、ただし図10の領域266とは異なり、ポンピング作用を及ぼす構造を有する。ポンピング作用を及ぼす構造は、ここではターボステータブレード272によって形成されている。
【0109】
具体的には、ポンピング作用を及ぼす構造又は領域270は、2つの貫通部274が介在する複数のターボステータブレード272を有する。ターボステータブレード272.2は、ある程度「通常の」ターボステータブレードとして構成されていて、特に、ターボステータブレード272.2は、完全なターボステータブレードを形成する。これに対して、ターボステータブレード272.1及び272.3は、単に、部分的な又は「半分の」ターボステータブレードとして構成されている。したがって、ブロック要素262の、ポンピング作用を及ぼす構造は、効果的に2つのターボステータブレードを有し、これは、ターボステータブレード272間の貫通部274の数に対応する。
【0110】
ブロック要素262のポンピング作用を及ぼす構造は、ブロック要素262の領域における異なるガスの部分的な排気速度の相対的な均等化をもたらす。
【0111】
図12は、図9によるポンプにおける窒素の部分的な排気速度とヘリウムの部分的な排気速度とのプロットを示し、その際、ブロック要素262は、図11に従って構成されていて、同様に位置6に設けられている。位置6における図8のプロットと図12のプロットとの比較は、図11によるブロック要素262では、ブロック要素262の位置、つまりここでは位置6における部分的な排気速度SN2及びSHeは、図10による、又はポンプ作用を有する構造を有しないブロック要素262のときと類似していて、特に少なくとも実質的に同一であることを示す。
【0112】
さらに、位置11又は中間入口258における図8のプロットと図12のプロットとの比較は、図12における部分的な排気速度の間の差260が、図8の場合よりも大きいことを示す。つまりここでは、ポンピング作用を及ぼす構造は、部分的な排気速度の差260のさらなる増大をもたらす、又は部分的な排気速度SH2;11に対して相対的な部分的な排気速度SN2;11のさらなる増大をもたらす。
【0113】
図13には、漏れ検知器280が示されている。漏れ検知器280は、分子真空ポンプ282と、質量分析計として構成された検出装置284と、ここには図示されていない、漏れがチェックされるべき真空システムに対する接続部286とを有する。
【0114】
分子真空ポンプ282は、スプリットフローポンプとして構成されている。分子真空ポンプ282は、第1の入口288と中間入口290と別の中間入口292と出口294とを有する。
【0115】
分子真空ポンプ282は、ターボポンプ段296とホルベックポンプ段298とを有する。ポンピング方向及び流路が、第1の入口288から出口294へと延在する。中間入口290は、ターボポンプ段296に開口する。中間入口292は、ホルベックポンプ段268の入口で開口する。出口294は、ホルベックポンプ段298の端部で開口する。
【0116】
漏れ検知器280は、さらに予備真空ポンプ300を有する。ラインシステムを介して、接続部286は、中間入口290及び292に接続されていて、予備真空ポンプ300は、特に出口294に接続されている。ラインシステムは、さらに、接続部286及び予備真空ポンプ300の両方が実質的に任意に中間入口290、中間入口292及び出口294に接続可能である又はこれらから分離可能であるように構成されているとともに弁302によって柔軟に制御可能である。
【0117】
漏れ検知器280は、例えば試験ガスとしてヘリウムを用いて運転される。代替的に、例えば水素又は水素を含む混合ガスを試験ガスとして使用することもできる。本明細書における図面の説明は、大体において専らヘリウムに関するが、水素についても相応に適用される。
【0118】
漏れを調べるとき、ヘリウムは、ここでは図示されていない、漏れが検査されるべき真空システムの領域に分配され、真空システムは、接続部286を介して真空排気される。真空システムに漏れがあると、周囲空気の他に、ヘリウムが、真空システム内に至り、そして接続部286へ向かう。接続部286は、特に、中間入口290に接続されているので、ヘリウムは、周囲空気のガス成分とともに、中間入口290へ向かい、分子真空ポンプ282内に至る。
【0119】
検出装置284は、ヘリウムの検出に用いられる。ゆえに、ヘリウムのある程度の部分が、中間入口290からポンピング方向とは逆向きに流れ、第1の入口288を介して検出装置284に至る。そのような理由から、ここに示された形態に基づく漏れ検知器は、カウンタフローリークディレクタとも称される。
【0120】
原則的に、空気成分のある程度の量も、ポンピング方向とは逆向きに流れ、検出装置284に至る。空気成分は、ヘリウムに関する検出精度を損なうおそれがある。空気は、その大部分が窒素からなるので、ここでは窒素が優先的に観察される。つまり、ヘリウムに関する検出装置284の検出精度を改善するために、窒素の可能な限り大きな割合がポンピング方向に出口294へ向けてポンピングされる一方、ヘリウムの可能な限り大きな割合が、ポンピング方向とは逆向きに検出装置284に至ると有利である。
【0121】
分子真空ポンプ282には、ブロック要素262が備え付けられている。ブロック要素262は、中間入口290の下流側で中間入口290に対して間隔を置いた位置に配置されている。具体的には、複数のポンピング作用を及ぼす要素が、ポンピング方向でブロック要素262と中間入口290との間に設けられている。
【0122】
ブロック要素262によって、流路に関して、中間入口290の位置で、窒素の部分的な排気速度が、ヘリウムの部分的な排気速度に対して相対的に増加させられ、特に、これらの部分的な排気速度の間の差が増大させられる。これは、図8及び図12に関して、中間入口258又は位置11についての説明と同様に行われる。
【0123】
窒素の部分的な排気速度とヘリウムの部分的な排気速度とを相対的に変化させることによって、逆流するヘリウムと逆流する窒素との比も変化する。特に、窒素の部分的な排気速度に対して相対的に大きな、中間入口290における窒素の部分的な排気速度によって、窒素の大部分がポンピング方向に搬出され、窒素のわずかな部分だけしかポンピング方向とは逆向きに流れない。その逆に、これにより、ヘリウムのわずかな部分がポンピング方向に搬出され、ヘリウムの大部分がポンピング方向とは逆向きに流れる。したがって、逆流する窒素に対する逆流するヘリウムの量比が改善され、これにより、漏れ検知器280の検出精度が改善される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.分子真空ポンプ(250、282)の排気速度、特に内部の排気速度に影響を及ぼす方法において、分子真空ポンプ(250、282)は、少なくとも1つの分子ポンプ段(252、254、296、298)を有し、分子ポンプ段(252、254、296、298)によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプ(250、282)の入口(256、258、288、290)から出口へ向けて流路に沿って圧送可能であり、ポンプ段(252、254、296、298)は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有し、分子真空ポンプ(250、282)の流路における第1の位置で排気速度に、すなわち、分子真空ポンプ(250、282)の流路における第1の位置とは異なる第2の位置にブロック要素(262)を設けることによって影響を及ぼし、ブロック要素(262)によって、通過断面が局所的に減少されている、方法。
2.第2の位置が、第1の位置から離間している、かつ/又は第2の位置が、第1の位置の下流側に配置されている、上記1に記載の方法。
3.第1の位置で第1のガスの部分的な排気速度と第2のガスの部分的な排気速度との間の差及び/又は比が増大するように、特に内部の排気速度に第1の位置で影響を及ぼす、上記1又は2に記載の方法。
4.第1のガスは、10g/mol以上、特に20g/mol以上のモル質量を有し、かつ/又は第2のガスは、10g/mol未満、特に5g/mol未満のモル質量を有し、かつ/又は第1のガスは、窒素及び/又は空気であり、かつ/又は第2のガスは、ヘリウム及び/又は水素である、上記3に記載の方法。
5.第1の位置は、分子真空ポンプ(250)のハウジング内で、入口(258、256、288、290)に直接に接続された領域にかつ/又は入口(258、256、288、290)、特に中間入口の軸方向領域に配置されていて、かつ/又は第2の位置は、入口領域の外側に配置されている、上記1から4のいずれか1つに記載の方法。
6.ブロック要素(262)は、第2の位置における第1のガスの部分的な排気速度と第2のガスの部分的な排気速度とが少なくとも実質的に同一であるように構成されている、上記1から5のいずれか1つに記載の方法。
7.分子真空ポンプ(250、282)、特にターボ分子真空ポンプにおいて、少なくとも1つの分子ポンプ段(252、254、296、298)を備え、分子ポンプ段(252、254、296、298)によって、ガス状の媒体を、分子真空ポンプ(250、282)の入口(256、258、288、290)から出口(294)へ向けて流路に沿って圧送可能であり、ポンプ段(252、254、296、298)は、ポンピング方向と、ポンピング方向に対して横向きに通過断面とを有し、特に静的なブロック要素(262)が設けられていて、ブロック要素(262)によって、通過断面が局所的に減少されている、分子真空ポンプ(250、282)。
8.分子真空ポンプ(250、282)は、ポンプ段(252、296)内に又は2つのポンプ段(252、296)の間に配置された中間入口(258、290)を備える、上記7に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
9.ブロック要素(262)は、ポンピング方向で入口(256、258、288、290)の後方に、特に中間入口の後方に配置されている、上記7又は8に記載の分子真空ポンプ(250、282)。
10.ブロック要素(262)は、入口領域の外側にかつ/又はポンプ段(252、254、296、298)の内側に配置されている、上記7から9のいずれか1つに記載の分子真空ポンプ(250、282)。
11.ブロック要素(262)は、ポンプロータの回転軸を基準に角度範囲(264)にわたって、特に180°より大きい、特に270°より大きい角度範囲にわたって閉じている、上記7から10のいずれか1つに記載の分子真空ポンプ(250、282)。
12.ブロック要素(262)は、ポンピング作用を及ぼす構造を有する、上記7から11のいずれか1つに記載の分子真空ポンプ(250、282)。
13.ポンピング作用を及ぼす構造は、所定数の、特に有効数のポンピング作用を及ぼす特徴(272)を有し、数は、最小で1及び/又は最大で10、特に最大で4である、上記7から12のいずれか1つに記載の分子真空ポンプ(250、282)。
14.漏れ検知器において、上記7から13のいずれか1つに記載の分子真空ポンプ(282)と試験ガスを検出する検出装置(284)とを備え、特に、分子真空ポンプ(282)は、第1の入口(288)と中間入口(290)とを有し、第1の入口(288)は、検出装置(284)、例えば質量分析計に接続されていて、中間入口(290)は、漏れが検査されるべき真空システムに接続されている又は接続可能であり、ブロック要素(262)は、中間入口(290)の下流側に設けられていて、少なくとも1つのポンピング作用を及ぼす要素が、ポンピング方向で、中間入口(290)とブロック要素(262)との間に設けられている、漏れ検知器。
15.真空システム内の漏れを調べるための上記7から13のいずれか1つに記載の分子真空ポンプの使用。
【符号の説明】
【0124】
111 ターボ分子ポンプ
113 入口フランジ
115 ポンプ入口
117 ポンプ出口
119 ハウジング
121 下部
123 電子機器ハウジング
125 電気モータ
127 アクセサリポート
129 データインタフェース
131 電力供給ポート
133 通気入口
135 シールガスポート
137 モータスペース
139 冷却剤ポート
141 下面
143 ボルト
145 軸受カバー
147 固定孔
148 冷却剤ライン
149 ロータ
151 回転軸
153 ロータシャフト
155 ロータディスク
157 ステータディスク
159 スペーサリング
161 ロータハブ
163 ホルベックロータスリーブ
165 ホルベックロータスリーブ
167 ホルベックステータスリーブ
169 ホルベックステータスリーブ
171 ホルベックギャップ
173 ホルベックギャップ
175 ホルベックギャップ
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石磁気軸受
185 スプレーナット
187 ディスク
189 インサート
191 ロータ側の軸受半体
193 ステータ側の軸受半体
195 リング磁石
197 リング磁石
199 軸受ギャップ
201 キャリヤ部分
203 キャリヤ部分
205 半径方向の補強材
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 皿ばね
215 非常用軸受又は安全軸受
217 モータステータ
219 中間スペース
221 壁部
223 ラビリンスシール
250 分子真空ポンプ
252 ターボポンプ段
254 ホルベックポンプ段
256 第1の入口
258 中間入口
260 差
262 ブロック要素
264 閉じた領域
266 通過性の領域
268 中央領域
270 通過性の領域
272 ターボステータブレード
274 貫通孔
280 漏れ検知器
282 分子真空ポンプ
284 検出装置
286 接続部
288 第1の入口
290 中間入口
292 中間入口
294 出口
296 ターボポンプ段
298 ホルベックポンプ段
300 予備真空ポンプ
302 弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13