(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】穀粒乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20230330BHJP
F26B 25/02 20060101ALI20230330BHJP
B65G 69/04 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F26B17/14 Z
F26B25/02
B65G69/04
(21)【出願番号】P 2018123177
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-079577(JP,A)
【文献】特開昭59-100385(JP,A)
【文献】実開昭51-088553(JP,U)
【文献】特開2017-211146(JP,A)
【文献】特公昭63-018112(JP,B2)
【文献】特開2017-146051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/14
F26B 25/02
B65G 69/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留する貯留部と、前記貯留部から流下する穀粒に熱風を吹き当て当該穀粒を乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部を通過した穀粒を集穀する集穀部を備え、
前記貯留部から前記乾燥部、前記集穀部を経た穀粒を前記貯留部にリサイクルして循環乾燥する穀粒乾燥機において、
前記貯留部の上部に穀粒を搬送する上部螺旋から穀粒を受けて、前記貯留部内に供給する穀粒拡散装置を設け、
前記穀粒拡散装置は、前記上部螺旋の長手方向に沿ってスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材と連結され、前記スライド部材とともに前記上部螺旋の長手方向に沿って移動し、前記上部螺旋から受けた穀粒を貯留部内に落下供給する穀粒供給部材を備え、
前記スライド部材は、所定の可動範囲で前記スライド部材を前後にスライド往復移動させる駆動機構を備えたことを特徴とし、さらに、
前記スライド部材と前記穀粒供給部材の間に介装され、前記穀粒供給部材を上下動可能とする上下動部材と、前記上下動部材を上下に回動動作させる上下首振り機構と、前記駆動装置及び前記上下首振り機構を駆動制御する制御装置とを備え、
前記穀粒供給部材は、前記上下首振り機構が前記制御装置により駆動制御されることで、前記上下動部材が上下に回動動作すると、これに応じて、水平状態から下方に所定の傾斜角度の範囲で上下に首振り動作するように構成され、かつ、
前記穀粒供給部材は、上部螺旋から受けた穀粒を貯留部に案内して落下供給する穀粒案内板と、前記穀粒案内板を左右に所定の回動角度で首振り可能とする左右首振り機構とを備え、前記制御装置は、前記左右首振り機構を駆動制御可能に構成され、
前記上下首振り機構及び左右首振り機構が、前記制御装置により駆動制御されることで、穀粒の落下供給時における、前記穀粒供給部材の前記所定の傾斜角度と、前記穀粒案内板の前記所定の回動角度とを、それぞれ変更調節可能に構成され
ており、
前記制御装置は、穀粒の乾燥運転中、穀粒一循環分の水分値に関する情報を取得し、穀粒一循環分の水分値の平均値と、水分値の目標値である所定の設定値との差を算出し、
その差が、第1の閾値以上のとき、前記穀粒供給部材を前後にスライド往復移動及び左右に首振り動作させ、
前記第1の閾値未満であって、前記第1の閾値よりも小なる第2の閾値よりも大きいとき、前記穀粒供給部材の前後のスライド往復移動を停止し、左右に首振り動作させ、
前記第2の閾値未満となると、前記穀粒供給部材の前後のスライド往復移動及び左右の首振り動作を停止させるよう、前記駆動機構及び前記左右首振り機構を駆動制御することを特徴とす
る穀粒乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒循環型の穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の穀粒循環型の穀粒乾燥機は、豆、麦、籾等の穀粒の乾燥に使用するものであり、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
図8に示されるように、特許文献1に記載された穀粒乾燥機1には、その機内に上から順に貯留部2、乾燥部3、集穀部4が形成されており、貯留部2に張り込んだ穀粒を、乾燥部3、集穀部4の順に流下させながら、乾燥部3に設けられた燃焼バーナ5と排風ファン6とにより生成される熱風を吹き当てて乾燥するように構成されている。
また、機体の外周部には、穀粒を機体下部から上部へと揚上搬送する昇穀機7が設けられており、集穀部4の穀粒が昇穀機7に送られて、機体下部から上部へと揚上搬送される。昇穀機7によって機体上部に揚上搬送された穀粒は、機体上部に設けられたスクリューコンベア式の上部螺旋8によって搬送され、貯留部2へと還流される。このとき、貯留部2内に穀粒を均一に張り込むため、貯留部2上部に設けられた回転駆動式の拡散盤9が上部螺旋8から穀粒を受け、穀粒を貯留部2に拡散供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の穀粒乾燥機1においては、拡散盤9によって拡散された穀粒が、貯留室2内壁に衝突し、騒音の原因となっていた。加えて、衝突の衝撃によって穀粒にかかる負荷が増大するという問題があった。
【0005】
また、回転駆動式の拡散盤9は、穀粒の種類や性状(藁屑混入の割合、水分含有量の割合等)によって、穀粒に働く摩擦力が変化し、これにより穀粒が拡散する距離に変化が生じる。例えば、穀物が麦である場合は、拡散盤9上を穀粒が滑りにくいため、穀粒の拡散する距離は大きくなり、
図8中の実線Aで示されるように、貯留部2内に堆積貯留した穀粒の上面形状は深い椀形となるが、穀物が豆である場合は、拡散盤9上を転がりやすいため、拡散する距離は小さくなり、
図8中の実線Bで示されるように、堆積貯留した穀粒の上面形状は浅い皿形となる。このように、従来の穀粒乾燥機は、穀物の種類や性状によって、貯留部2内に堆積貯留する穀粒の上面形状に変化が生じるものとなっており、その結果、貯留部2内に堆積した穀粒の高さをセンサで検出することによって張込量を検出する場合に、正確な張込量を把握することが困難となっていた。これにより、例えば、穀粒の張込量に応じて燃焼バーナの燃焼量を制御して乾燥運転する場合には、穀粒の乾燥精度が低下する問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、騒音を低減し、穀粒への負荷を抑えるとともに、穀物の種類や性状によらず貯留部へ均一な張り込みを可能とする穀粒乾燥機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のかかる目的は、
穀粒を貯留する貯留部と、前記貯留部から流下する穀粒に熱風を吹き当て当該穀粒を乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部を通過した穀粒を集穀する集穀部を備え、
前記貯留部から前記乾燥部、前記集穀部を経た穀粒を前記貯留部にリサイクルして循環乾燥する穀粒乾燥機において、
前記貯留部の上部に穀粒を搬送する上部螺旋から穀粒を受けて、前記貯留部内に供給する穀粒拡散装置を設け、
前記穀粒拡散装置は、前記上部螺旋の長手方向に沿ってスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材と連結され、前記スライド部材とともに前記上部螺旋の長手方向に沿って移動し、前記上部螺旋から受けた穀粒を貯留部内に落下供給する穀粒供給部材を備え、
さらに、前記スライド部材は、所定の可動範囲で前記スライド部材を前後にスライド往復移動させる駆動機構を備えたことを特徴とする穀粒乾燥機によって達成される。
【0008】
本発明によれば、穀粒拡散装置の穀粒供給部材の往復移動によって、穀粒を拡散しながら貯留部内に落下供給可能となり、その結果、貯留部への穀粒の衝突を防止して、騒音を低減し、穀粒への負荷を抑えるとともに、穀物の種類や性状によらず貯留部へ均一な張り込みが可能となる。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、穀物の種類の設定手段を備え、
前記スライド部材は、穀粒の拡散供給時に、設定された穀物の種類が大豆のとき、設定された穀物の種類が米麦のときよりも、小なる可動範囲となるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、大豆の場合には、搬送始端側に供給することで傷がつきにくく、後方に転がりやすいので、貯留部の前後方向全体に張り込みしやすい。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、前記穀粒供給部材は、上部螺旋から受けた穀粒を貯留部に案内して落下供給する穀粒案内板と、前記穀粒案内板を左右に首振り可能とする左右首振り機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、左右首振り機構によって、貯留部の左右方向に穀粒を拡散供給できるため、貯留部内へのさらに均一な張り込みが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、騒音を低減し、穀粒への負荷を抑えるとともに、張込量の検出精度を向上できる穀粒乾燥機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる穀粒乾燥機の正面図である。
【
図3】
図1の穀粒乾燥機の穀粒循環機構の分解斜視図である。
【
図4】
図1の上部搬送装置及び穀粒拡散装置の要部の断面図である。
【
図5】
図1の上部搬送装置及び穀粒拡散装置の要部の底面図である。
【
図6】穀粒乾燥機の制御装置の概略ブロック図である。
【
図7】(A)(B)
図6の制御装置による穀粒供給部材の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0016】
図1は、本発明の実施形態にかかる穀粒乾燥機101の正面図であり、
図2は、
図1の穀粒乾燥機101の内部の側面図である。
【0017】
穀粒乾燥機101は、基本構造として、
図1に示されるように、その機内に上から順に貯留部102、乾燥部103、集穀部104が形成されており、機体の外周部には、穀粒を機体下部から上部へと揚上搬送する昇穀機107が設けられている。
このように構成された穀粒乾燥機101は、機体上部の貯留部102から乾燥部103を経て、集穀部104へと穀粒を流下させながら、燃焼バーナ105の燃焼と排風ファン106とにより生成される熱風を乾燥部103で吹き当てて乾燥し、集穀部104に送られた穀粒は、貯留部102にリサイクルされて循環するように構成されている。なお、以下の説明においては、
図2における右方を前方、左方を後方とする。
【0018】
貯留部102の上方には、昇穀機107によって、機体下部から上部へと揚上搬送された穀粒を、貯留部102の上部へ搬送する上部移送装置108が設けられている。上部移送装置108は、スクリューコンベア式の上部螺旋109と、上部螺旋109を回転自在に内装した上部移送戸樋110を備えている。上部移送装置108の下部には、上部螺旋109から穀粒を受けて、貯留部102内に拡散供給する穀粒拡散装置111が設けられている。
【0019】
また、穀粒を乾燥する乾燥部103の熱風室133内には、遠赤外線放射体132が配置されている。
図2に示されるように、遠赤外線放射体132は、燃焼バーナ105と対向する位置に配置され、遠赤外線放射体132から放射される遠赤外線によっても穀粒の乾燥を促進させるよう構成されており、遠赤外線放射体132の先端部には遠赤外線放射体132内を通過した熱風を熱風室133に排出する熱風排出口132aが形成されている。
【0020】
図3は、
図1の穀粒乾燥機101の穀粒循環機構の分解斜視図である。
乾燥部103の穀粒出口には、正逆に回転しながら所定量の穀粒を集穀部104に流下させるロータリバルブ134及びロータリバルブ134を駆動するロータリバルブモータ134aが設けられている。ロータリバルブ134から繰り出された穀粒は、下部螺旋135によって昇穀機107下部へと搬送される。
【0021】
昇穀機107は、下部螺旋135によって搬送された穀粒を、機体下部から上部へと揚上搬送する。また、昇穀機107内の上部への搬送路の途中には昇穀機107のバケットから落下する穀粒を取り込んで水分値を測定する水分検出装置107aが設けられており、昇穀部107の上部には穀粒を機外に排出するための排出シャッタ107bが設けられている。
【0022】
昇穀機107の上部側には、上部搬送装置108内に設けられた上部螺旋109が接続されており、上部螺旋109によって、穀粒が昇穀機107の上部から貯留部102の上方へ搬送される。貯留部102の上方へ搬送された穀粒は、後述する穀粒拡散装置111に供給された後、貯留部102内に拡散供給される。また、上部螺旋109の近傍には、搬送する穀粒に混じる藁屑等を吸引排出する排塵機109aが設けられている。
【0023】
図4は、上部搬送装置108及び穀粒拡散装置111の要部の断面図であり、
図5は、上部搬送装置108及び穀粒拡散装置111の要部の底面図である。
図4に示されるように、上部搬送装置108の上部移送戸樋110の内部には、穀粒を昇穀部107から貯留部102の上方へと搬送する上部螺旋109が回転自在に内装されており、上部移送戸樋110の下部には、上部搬送装置108によって搬送された穀粒の供給を受け、これを貯留部102内に拡散供給する穀粒拡散装置111が設けられている。また、上部移送戸樋110の底面には、上部螺旋109の長手方向に沿って、所定幅の開口110aが設けられており、この開口110aから、上部螺旋109によって搬送された穀粒が流下して、穀粒拡散装置111に供給可能となっている。
【0024】
穀粒拡散装置111は上部搬送装置108から供給された穀粒を貯留部102内に落下供給する穀粒供給部材112と、上部移送戸樋110の下部に設けられ、かつ、上部螺旋109の長手方向に沿って前後にスライド可能に設けられたスライド部材114と、穀粒供給部材112を支持するとともにスライド部材114に上下回動可能に連結された上下動部材113と、スライド部材114のスライド動作にしたがって、伸縮しながらスライド部材114の後方の開口110aを覆う伸縮部材115を備えている。また、穀粒供給部材112及び上下動部材113は、スライド部材114とともにスライドするように構成されている。
【0025】
図4及び
図5に示されるように、穀粒供給部材112は、開口110aから流下した穀粒を案内しながら貯留部102へと落下供給する穀粒案内板112aと、上下動部材113に固定され、電動式リンク機構によって、穀粒案内板112aを左右に首振り動作可能とする左右首振り機構112bとを備えている。
【0026】
穀粒案内板112aは、貯留部102に穀粒を落下供給する傾斜面を有する正面視矩形の傾斜板112a1と、傾斜板112a1の左右両側から立ち上がるように設けられた左右の側板112a2を備えており、流下する穀粒を案内して穀粒案内板112aの前端から落下供給可能となっている。このように、穀粒供給部材112から、貯留部102内に穀粒を落下供給する構成によれば、従来の拡散盤による拡散供給と比べ、拡散時に穀粒に働く水平方向の力が大幅に低減されることとなり、その結果、穀粒が貯留部102の内壁に衝突し難くなるとともに、衝突時の騒音を大幅に低減することができる。また、衝突時の穀粒にかかる負荷も低減される。
【0027】
穀粒案内板112aの後端部は、左右首振り機構112bとともに上下動部材113の前端部に取り付けられており、かつ、穀粒案内板112aが軸Kを中心として左右に回動自在となるように軸支されている。これにより、
図5に示されるように、左右首振り機構112bの駆動制御によって、穀粒案内板112aは、上部螺旋109と平行な軸線に対して左右にそれぞれ所定の回動角度β(例えば、30度~45度程度)の範囲で周期的に往復回動運動させることが可能となっている。その結果、穀粒案内板112a上を側板112a2に案内されながら流下する穀粒は、穀粒案内板112aの左右首振り運動に応じて、左右に拡散されて貯留部102に落下供給される。これにより、貯留部102内の左右方向に均一な張り込みが可能となる。
【0028】
なお、
図5中の位置(c)における穀粒案内板112aは、左右首振り動作における中央位置を示しており、位置(r)は、右方に首振りした状態、位置(l)は左方に首振りした状態を示している。また、図示しないポテンショメータによって、穀粒案内板112の回動角度が検出可能となっている。なお、回動角度βを大きくするほど、左右方向への穀粒の拡散は大きくなり、回動角度βを小さくするほど、左右方向への穀粒の拡散は小さくなる。後述する制御装置Cによって、回動角度βは制御可能となっており、貯留部102の左右方向の幅や穀物の性状に合わせて変更調節することができる。これにより、貯留部102への均一な張り込みを実現するために、穀粒の左右方向の拡散の距離を最適化することができる。
【0029】
上下動部材113は、スライド部材114に対して、穀粒供給部材112を上下動可能とするために、穀粒供給部材112とスライド部材114との間に設けられた部材である。
【0030】
上下動部材113は、図示しない蝶番機構によりスライド部材114に対して上下に回動動作可能に連結され、かつ、断面略凹状に形成された上下動板113aと、スライド部材114の前端部に取り付けられ、電動式のクランク機構によって、上下動板113aを上下に回動して首振り動作可能とする上下首振り機構113bを備えている。これにより、上下動部材113は、これにより、上下動板113aは、スライド部材114との連結部分を支点として回動し、上部移送戸樋110の下部から離反するようにして水平状態から下方へと首振り動作が可能となっている。
【0031】
また、上下動板113aの前端部には穀粒供給部材112が支持されているため、上下動部材113の回動動作に応じて、穀粒供給部材112も上下に回動して首振り動作可能に構成されている。これにより、上下動部材113は、上下首振り機構112bの駆動制御により、穀粒供給部材112を、水平状態から下方に所定の傾斜角度α(例えば、45度)の範囲で上下に首振り動作可能となっており、かつ、穀粒供給部材112の傾斜角度αの範囲は、後述する制御装置Cの制御によって、任意に変更調節可能となっている。これにより、穀粒拡散装置111は、穀物の種類や性状に応じて、傾斜板112a1の傾斜角度を変更し、貯留部102の前後方向における穀粒の拡散の距離を調節することができる。その結果、貯留部102への穀粒の衝突を好適に防止しながら、貯留部102の前後方向に均一な拡散供給が可能となっている。なお、図示しないポテンショメータによって、穀粒供給部材112の傾斜角度は検出可能となっている。なお、上下動板113aが傾斜時しているとき、穀粒は、上下動板113a上を通過して、穀粒供給部材112の穀粒案内板112aに供給されるように構成されている。
【0032】
スライド部材114は、上部移送戸樋110の底面にスライド可能に取り付けられた矩形板状部材であるスライド板114aと、スライド板114aに連結され、貯留部102の天井面に固定されたアクチュエータ114bとを備えている。このアクチュエータ114bは、後述する制御装置Cの駆動制御可能に構成されており、アクチュエータ114bの駆動によって、スライド部材114を、上部移送戸樋110の下部において、上部螺旋109の長手方向に沿って、前後にスライドすることが可能となっている。なお、スライド部材114の上面は、開口110aを覆い、スライド部材114の上方から穀粒が流下することがないように構成されている。
【0033】
また、これにより、スライド部材114のスライド板114aの前端部と連結された上下動部材113及び上下動部材113に取り付けられた穀粒供給部材112は、スライド部材114のスライドとともに、上部螺旋109の長手方向に沿って、前後にスライド可能に構成されている。また、アクチュエータ114bの駆動によるスライド板114の移動位置は、図示しないポテンショメータによって、検出可能となっている。このような構成により、穀粒拡散装置111は、前後に穀粒供給部材112を移動し、これにより、穀粒の貯留部102への落下供給位置を前後に移動して、穀粒を前後に拡散供給可能に構成されており、穀粒供給部材112の前後移動は、後述する制御装置Cの制御可能に構成されている。
【0034】
スライド部材114の後部には、スライド部材114のスライド動作にしたがって伸縮し、スライド部材114の後方の開口109aを覆う伸縮部材115が連結されている。この伸縮部材115は、上面が開放された断面略凹状の板材を入れ子状に重ね合わせて伸縮自在に構成されたテレスコカバー構造を有しており、スライド部材114の後端と連結されて、スライド部材114の後方の開口110aを覆い、スライド部材111cの後方から穀粒が流下することを防止する。なお、この伸縮部材115は、弾性部材を断面略凹状に形成した蛇腹によって構成することもできる。
【0035】
図6は、穀粒乾燥機101の制御装置Cの概略ブロック図である。
穀粒乾燥機101の運転を制御する制御装置Cの入力側には、外気温度センサ121、熱風温度センサ122、水分検出装置107a、張込量検出センサ123、燃焼バーナ5の着失火検出を行う炎検出装置124、張り込みスイッチ125、通風スイッチ126、乾燥スイッチ127、停止スイッチ128、設定スイッチ129、ポテンショメータ130が接続され、各種情報を取得可能となっている。出力側には、燃焼バーナ105、排風ファン131、昇穀機モータ107c、ロータリバルブモータ134a、下部螺旋モータ135a、上下動機構113b、左右首振り機構112b、アクチュエータ114bが制御可能に接続されている。
【0036】
このような構成により、制御装置Cは、入力側から各種情報を取得し、これに基づき、上下動機構113b、左右首振り機構112b、アクチュエータ114bの制御によって、穀粒拡散装置111の駆動を制御し、穀粒供給部材112の左右方向の回動角度β及び左右往復回動運動の周期、上下動部材111aの回動角度α及び上下回動運動の周期、スライド部材114の移動距離及び前後移動の周期等を制御可能となっている。これにより、制御装置Cは、穀粒供給部材112の左右首振り運動及び上下首振り運動を制御することによって、貯留部102内へ供給する穀粒の前後左右の拡散の距離を調節し、貯留部102の大きさや穀粒の性状に合わせて、好適な拡散の距離を実現し、騒音の防止、穀粒への負荷の低減、貯留部102内への均一な張り込みが可能となっている。なお、これらの制御量は、設定スイッチ129により制御装置Cに設定可能となっている。
【0037】
図7(A)及び
図7(B)は、制御装置Cによる穀粒供給部材112の動作を説明するための図である。上記のように構成された穀粒乾燥機101の穀粒拡散装置111は、制御装置Cの制御によって、以下のように動作する。
【0038】
なお、
図7(A)及び
図7(B)における位置(s)は、制御装置Cの制御による穀粒供給部材112の移動範囲の始端位置を表す。位置(m)は、貯留部102の前壁102aと後壁102bの略中央位置を表す。位置(e)は、制御装置Cの制御による穀粒供給部材112の移動範囲の終端位置を表す。
図7(A)においては、穀粒供給部材112は、始端位置(位置(s))に移動した状態が示されており、
図7(B)においては、終端位置(位置(e))に移動した状態が示されている。
【0039】
(穀粒の初期張込時)
穀粒を最初に貯留部102に張り込むとき、穀粒供給部材112は、制御装置Cは、張込量検出センサ123から、貯留部102内の張込量に関する情報を取得し、穀粒の張込量に応じて、穀粒供給部材112を前方から後方(位置(s)から位置(e))に移動させながら張り込むように構成されている。これにより、貯留部102内の前後に均一に穀粒を張り込むことができる。
【0040】
(穀粒の乾燥運転時)
穀粒の乾燥運転時、制御装置Cは、穀粒供給部材112を、始端位置(位置(s))から終端位置(位置(e))まで周期的に前後往復移動し、同時に、穀粒供給部材112の穀粒案内板112aを左右方向に首振り動作を行い、貯留部102内に穀粒を拡散供給するよう制御する。なお、穀粒の乾燥運転において、設定スイッチ129の操作により、穀物の種類が選択可能となっており、穀粒供給部材112の前後移動範囲となる距離D1(位置(s)~位置(e)までの距離)は、選択された穀物の種類に応じて、変更されるように構成されている。具体的には、穀物の種類が、大豆のとき、貯留部102の前後幅の距離D2に対して、穀粒供給部材112の前後移動範囲となる距離D1は、約4分の1となり、穀物種類が、米麦のとき、前後移動範囲の距離D1は、約2分の1となるように構成されている。このように穀粒供給部材112を動作することによって、穀物の種類や性状によらず前後左右に穀粒を均一に拡散しながら貯留部102に張り込むことができる。その結果、穀物の種類や性状によらず、貯留部102内に堆積貯留する穀粒の上面形状が安定するため、貯留部2内に堆積した穀粒の高さをセンサで検出することによって張込量を検出する場合に、より正確な張込量を把握することが可能である。加えて、穀粒供給部材112の前後移動範囲D1の設定によって、穀粒の貯留部102の内壁への衝突を好適に防止して、騒音を低減し、穀粒への負荷を抑えることができる。このとき、上下動部材111aは、所定の傾斜角度で固定されるように制御されてもよく、また、穀粒を前後に拡散するために傾斜角度αの範囲で上下に回動運動するように制御されてもよい。
【0041】
このように、制御装置Cは、穀物の種類や性状に応じて、上下動部材111aの傾斜角度α(例えば、45度)を調節し、傾斜板112a1の傾斜を変更することにより、穀粒の拡散距離のさらなる微調整が可能となっている。これにより、さらに好適に穀粒の貯留部102の内壁への衝突を防止して騒音を防止しながら、貯留部102内への均一な張り込みが可能となる。なお、この傾斜角度αは、設定スイッチ129により制御装置Cに設定可能となっている。
【0042】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0043】
例えば、穀粒乾燥機101の運転起動時、作動条件として、前後調節するときは、左右方向が作動範囲中央位置(穀粒供給部材112が位置(c)の状態)にしてから行うように構成してもよい。これにより、左右方向に可動させながら前後方向に可動させると、可動部への負荷が大きくなり、耐久低下・故障の原因に繋がるため、穀粒拡散装置111の耐久低下・故障を防止できる。
【0044】
また、制御装置Cは、穀粒乾燥機101の運転起動時、穀粒供給部材112を初期位置(穀粒供給部材112が位置(c)かつ位置(s))調節されるように構成してもよい。これにより、運転起動時における穀粒の供給位置を毎回同じ位置にし、安定した穀粒の拡散供給が可能となる。
【0045】
また、制御装置Cは、ポテンショメータ130によって、穀粒拡散装置111の穀粒供給部材112の作動位置を検出し、点検機能として、設定スイッチ129により、前後方向に作動させる指示をすると、前後方向に作動し、位置検出値を表示し、左右方向に移動させると左右方向に移動し、位置検出値を表示するように構成してもよい。これにより、穀粒供給部材112の位置調整の点検機能を備えることで、現場での取付調整及び動作確認が容易となる。
【0046】
また、制御装置Cは、ポテンショメータ130によって、穀粒拡散装置111の穀粒供給部材112の作動位置を検出し、穀粒乾燥機101の乾燥運転時、作動開始から作動側に作動位置検出値が変化しなければ、作動異常とし、穀粒乾燥機101の乾燥運転を停止するか、乾燥速度を下げる、熱風温度を下げるよう構成してもよい。これにより、穀粒拡散装置111の作動異常時の制御を備えることで、作業継続時の安全性が向上する。
【0047】
制御装置Cは、水分検出装置107aから穀粒の水分値に関する情報を取得し、取得した測定水分値が乾燥停止近傍(例えば、測定水分値が水分設定+1.5%以下)に到達したとき、前後及び左右方向の作動範囲中央位置(穀粒供給部材112が位置(m)かつ位置(c)の状態)へ移動するように構成してもよい。これにより、乾燥停止近傍になると、穀粒の供給位置を変え、一定領域へ穀粒を循環することで、最終段階での水分ムラ、水分バラつきの抑制を行うことができる。
【0048】
また、制御装置Cは、水分検出装置107aから穀粒の水分値に関する情報を取得し、穀粒一循環分の水分測定データから、水分ムラ値を算出し、一循環分の水分平均値と水分設定値の差(A)を算出し、これに応じて、穀粒供給部材112を前後左右に作動させるように構成してもよい。より具体的には、差(A)が5%以上のとき、前後左右に順次移動させ、差(A)が3~5%未満のとき、左右に順次移動させ、差(A)が3%未満のとき、前後左右に移動させないように構成する。これにより、ムラ取り乾燥の性能を向上し、次工程段取りへの影響を軽減できる。また、穀粒の乾燥運転中、差(A)が減少するに応じて、穀粒供給部材112の左右の首振りの回動角度βを小さくしてもよい。これにより、水分ムラが減少するにつれて、拡散供給による水分ムラの低減の必要性が軽減されるため、穀粒供給部材112の左右方向の回動を抑えることで、エネルギー効率を向上できる。
【0049】
また、制御装置Cは、水分検出装置107aから穀粒の水分値に関する情報を取得し、水分設定15.5%以下で、水分検出装置107aを自動停止し、排出されないまま乾燥運転された場合は、追い乾燥と判定し、さらに初期の水分測定値と設定水分値の所定水分差により、乾燥速度設定を自動設定するように構成してもよい。乾燥させる水分値が低い場合、乾燥温度が高いと停止した穀粒水分のばらつきは少なくならず、水分停止精度が低下する場合がある。このような状態で、追い乾燥すると、過乾燥であったり、未乾燥であったりするが、乾燥初期の水分と設定水分の差により、乾燥速度を補正し、適正な乾燥制御を行うことで、停止水分精度を向上させるとともに、乾燥性能及び作業効率を向上できる。
【0050】
また、制御装置Cは、水分検出装置107aから穀粒の水分値に関する情報を取得し、初期の水分測定値と設定水分値の所定水分差と水分バラつき(偏差)により、穀物種類が籾、もちの場合は、乾燥速度設定を自動設定するように構成してもよい。例えば、水分バラつき(偏差)が1.5σ以下の場合は、熟成穀物と判定し、所定水分差が2~3%未満のとき、穀物乾燥速度設定「はやい」より上の場合は、「ややはやい」にし、「ややはやい」は「ふつう」にする。所定設定水分差が1~2%未満のとき、穀物乾燥速度設定「ふつう」より上の場合は、「ふつう」とする。乾燥させる水分値が低い場合、乾燥速度が高いと停止した穀物水分のバラつきは少なくならず、水分停止精度が低下する場合がある。このような状態で、追い乾燥すると、過乾燥であったり、未乾燥であったりするが、晩熟穀物の場合、稲が立ったまま乾燥が進んでいるおり、低水分ではあり、水分バラつきは少なく、貯留部102の水分ムラは多い傾向にある。したがって、水分バラつき(偏差)により、晩熟穀物を判定し、乾燥初期の水分値と設定水分の差により、乾燥速度を補正し、適正な乾燥制御を行うことで、停止水分精度を向上するとともに、乾燥性能及び作業効率を向上できる。
【0051】
また、穀粒乾燥機101の炎検出装置124の着失火検出の変動値により、燃焼の安定状態を判定し、失火した場合は、再点火工程として、燃料を多めにして、確実に着火するように構成してもよい。これにより、風量変動(炎変動)を検知し、再点火時は、燃料を多めにすることで、失火後の再点火の確実化を提供することができる。
【0052】
また、穀粒乾燥機101の炎検出装置124の着失火検出の変動値により、燃焼の安定状態を判定し、所定時間内に失火領域への移行を複数回繰り返したときは、温度調節を低めに設定するよう構成してもよい。これにより、乾燥作業の持続性及び火災の危機を回避できる。
【0053】
また、穀粒乾燥機101に、ユーザ手動設定手段を設け、穀粒供給部材112の位置をユーザが手動で設定できるようにしてもよい。これにより、穀物の種類や性状について、ユーザの多様なニーズに合わせ、穀粒供給部材112の貯留部102内への穀粒供給位置を設定できる。
【0054】
機外に排風を排出する排風ファンを備えている穀粒乾燥機101において、風量変動による排風ファン回転数調節制御を行なってもよい。排風ファン回転数検出または排風ファン負荷電流変動等による排風ファン回転数駆動調節装置を設け、風量変動を検出し、風量が低下したと判断した場合は、排風ファン回転数を増加あるいは適正回転に駆動調節するように構成してもよい。これにより、風量の変動による失火検出があったり、燃焼が安定しない場合であっても、風量変動を検知し、適正回転数に調節することで、乾燥作業持続性及び火災の危険性を回避できる。
【0055】
また、
図4及び
図5において、穀粒拡散装置111は、上部螺旋109から受けた穀粒を貯留部102内に供給する穀粒供給部材112と、上部移送戸樋110の下部に、上部螺旋109の長手方向に沿って前後にスライド可能に設けられたスライド部材114と、前端が穀粒供給部材112を支持し、後端がスライド部材114に回動可能に連結された上下動部材113と、スライド部材114のスライド動作にしたがって、伸縮しながらスライド部材114の後方の開口110aを覆う伸縮部材115を備えているように構成したが、上下動部材113を省略して、スライド部材114の前端部に、穀粒供給部材112の後端部を取り付けるように構成してもよい。これにより、穀粒供給部材112の上下首振り機能は失われるが、部品点数の削減によるコスト低減と、可動部分の減少により穀粒拡散装置111の強度を向上が図られる。
【符号の説明】
【0056】
101 穀粒乾燥機
102 貯留部
103 乾燥部
104 集穀部
106 排風ファン
107 昇穀機
107a 水分検出装置
108 上部移送装置
109 上部螺旋
109a 排塵機
110 上部移送戸樋
110a 開口
111 穀粒拡散装置
111a 上下動部材
112 穀粒吐出口
112a 穀粒案内板
112b 上下首振り機構
113 上下動部材
113a 上下動板
113b 上下首振り機構
114 スライド部材
114a スライド板
114b アクチュエータ
115 伸縮部材
134 ロータリバルブ
134a ロータリバルブモータ
135 下部螺旋