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特許7253151樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230330BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230330BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230330BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20230330BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20230330BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230330BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230330BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230330BHJP
   C08G 14/12 20060101ALI20230330BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L23/30 R
C08K5/357
C08L61/04
C08K3/013
C08K3/36
C08L33/04
C08G14/12
B32B27/42
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020515505
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017329
(87)【国際公開番号】W WO2019208604
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018085680
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東口 鉱平
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 武紀
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 正志
(72)【発明者】
【氏名】木田 剛
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165922(JP,A)
【文献】特開2016-196548(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209044(WO,A1)
【文献】特開2011-157529(JP,A)
【文献】特開2009-167252(JP,A)
【文献】特開2006-016576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/28-23/31
H01L 21/52
C09J 163/00
C08K 5/357
C08L 61/04
C08K 3/013
C08K 3/36
C08L 33/04
C08G 14/12
B32B 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾオキサジン化合物(A)と、
フラックス機能を有する有機化合物(B)と
硬化性成分(C)と、を含有し、
前記熱硬化性成分(C)が、下記式(9)で表されるマレイミド化合物と、
2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(10)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有し、
【化1】
(式(9)中、n 5 は、1以上30以下の整数を示す。)。
【化2】
(式(8)中、R 11 は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n 4 は、1以上10以下の整数を示す。)。
【化3】
(式(10)中、R 12 は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R 13 は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)。
前記ベンゾオキサジン化合物(A)と熱硬化性成分(C)との質量比((A)/(C))が、20/80~90/10である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、400以上の分子量を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、及び下記式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(1)中、R1は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R2は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1~4価の有機基を示し、n1は、1~4の整数を示す。)。
【化5】
(式(2)中、R3は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R4は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(o)で表される1~4価の有機基を示し、n2は、1~4の整数を示す。)。
【化6】
(式(3)中、R5は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化7】
(式(4)中、R6は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(式(a)~(t)中、Raは、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rbは、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【請求項4】
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(5)及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化15】
(式(5)中、R7は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R8は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X1は、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化16】
(式(6)中、R9は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R10は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X2は、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化17】
(式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n3は、0以上5以下の整数を示す。)。
【請求項5】
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(5-1)で表される化合物、下記式(5-2)で表される化合物、下記式(5-3)で表される化合物、下記式(6-1)で表される化合物、下記式(6-2)で表される化合物、及び下記式(6-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化18】
【化19】
【化20】
(式(5-3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)。
【化21】
【化22】
【化23】
【請求項6】
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の酸解離定数pKaが、3.8以上15.0以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)が、200以上8,000以下の分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)が、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン酸変性樹脂、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びフェノールフタリンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性成分(C)が、下記式(11)で表されるマレイミド化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化24】
(式(11)中、R14は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n6は、1以上10以下の整数を示す。)。
【化25】
(式(12)中、R15及びR17は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示し、R16は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示し、n7は、1以上10以下の数を示す。)。
【化26】
(式(13)中、R18は、各々独立に、アルキレン基を示し、R19は、各々独立に、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、下記式(14)で表される基、酸素原子、又は単結合を示し、n8は、1以上10以下の数を示す。)。
【化27】
(式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n3は、0以上5以下の整数を示す。)。
【化28】
【請求項10】
前記樹脂組成物において、前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
ラジカル重合開始剤(D)を更に含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度が、100℃以上である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記ラジカル重合開始剤(D)が、有機過酸化物である、請求項11又は12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記ラジカル重合開始剤(D)が、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、又はハイドロパーオキサイド骨格を有する、請求項1113のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記ラジカル重合開始剤(D)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1114のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂組成物中における前記ラジカル重合開始剤(D)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下である、請求項1115のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
無機充填材(E)を更に含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記無機充填材(E)の平均粒子径が、3μm以下である、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記無機充填材(E)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項17又は18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
前記無機充填材(E)が、シリカである、請求項1719のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
前記樹脂組成物中における前記無機充填材(E)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、請求項1720のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
可撓性付与成分(F)を更に含有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項23】
前記可撓性付与成分(F)が、熱可塑性の高分子化合物を含有し、
前記高分子化合物の質量平均分子量が1,000以上1,000,000以下である、
請求項22に記載の樹脂組成物。
【請求項24】
前記可撓性付与成分(F)が、(メタ)アクリルオリゴマー及び/又は(メタ)アクリルポリマーである、請求項22又は23に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
前記樹脂組成物中における前記熱硬化性成分(C)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び前記可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下である、請求項2224のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項26】
前記樹脂組成物中における前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び前記可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下である、請求項2225のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項27】
撓性付与成分(F)を更に含有し、
前記樹脂組成物中における前記無機充填材(E)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び前記可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、請求項17~20のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項28】
プリアプライドアンダーフィル材用である、請求項1~27のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項29】
支持基材と、
前記支持基材上に積層された請求項1~28のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有する層と、
を備える積層体。
【請求項30】
半導体ウェハと、
前記半導体ウェハに積層された請求項29に記載の積層体と、を備え、
前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、
樹脂組成物層付き半導体ウェハ。
【請求項31】
半導体搭載用基板と、
前記半導体搭載用基板に積層された請求項29に記載の積層体と、を備え、
前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、
樹脂組成物層付き半導体搭載用基板。
【請求項32】
請求項30に記載の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は、請求項31に記載の樹脂組成物層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物を用いた積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置に関する。詳しくは、本発明は、アンダーフィル材として有用な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、及び高性能化に伴い、半導体チップ(以下、「チップ」と略す場合がある。)を半導体搭載用基板(以下、「基板」と略す場合がある。)に搭載する方法として、フリップチップ実装が注目されている。フリップチップ実装においては、チップと基板を接合した後、チップと基板の間隙にアンダーフィル材を充填し、硬化させる工法が一般的である。しかし、半導体装置の小型化や高性能化に伴い、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化が進み、アンダーフィル材の充填の長時間化による作業性の悪化や未充填等の充填不良の発生が問題となっている。これに対し、チップ又は基板にプリアプライドアンダーフィル材を供給した後、チップと基板との接合と、アンダーフィル材の充填とを同時に行う工法が検討されている。
【0003】
アンダーフィル材は、チップ、及び基板と直接接触する部材であることから、アンダーフィル材に求められる重要な特性の一つとして、半導体装置が使用される環境において長期的な使用にも耐え得るチップ、及び基板との接着性(以下、「チップ接着性」と略す場合がある。)が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、主樹脂にラジカル重合性モノマーを使用したプリアプライドアンダーフィル材が記載されている。この特許文献1には、チップとの接着性向上を目的にしたシランカップリング剤の配合についての記載がある。
【0005】
特許文献2には、エポキシ樹脂、イミダゾール化合物、マレイミド化合物を含むアンダーフィル材が記載されている。
【0006】
特許文献3には、エポキシ化合物、カルボキシル基含有フラックス成分を使用するプリアプライドアンダーフィル材が記載されており、接着について言及されている。
【0007】
特許文献4には、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤を必須成分とする樹脂組成物が記載されており、熱硬化後の樹脂組成物において高い密着性が得られたと記載されている。
【0008】
特許文献5には、プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、特定の構造を有するマレイミド化合物と、ベンゾオキサジン化合物と、無機充填材(C)とを含有するプリント配線基板用樹脂組成物についての記載がある。
【0009】
特許文献6には、脂肪族エポキシ化合物と、ベンゾオキサジン化合物と、を硬化主剤として含有し、かつ、フェノール系硬化剤を含有する電子部品用接着剤についての記載がある。
【0010】
特許文献7には、熱硬化性化合物と、前記熱硬化性化合物と反応可能な官能基を有するポリマーと、熱硬化剤とを含有し、ボンディング温度での溶融粘度が10Pa・s以上15000Pa・s以下であり、ボンディング温度でのゲルタイムが10秒以上であり、かつ、240℃でのゲルタイムが1秒以上10秒以下である接着剤組成物についての記載がある。
【0011】
特許文献8には、シート状熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法の記載がある。
【0012】
また、チップと基板とを、酸化されやすい金属、例えば、はんだや銅を介して接合する場合、接合の阻害要因となる金属酸化膜を接合部から除去し、良好な金属接合を得ることを目的として、プリアプライドアンダーフィル材にカルボン酸などに由来するフラックス成分を添加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2015-503220号公報
【文献】特表2014-521754号公報
【文献】特開2013-112730号公報
【文献】特開2003-221443号公報
【文献】特開2016-196548号公報
【文献】特開2013-008800号公報
【文献】特開2011-157529号公報
【文献】特開2006-245242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、一般的にラジカル重合性モノマーは硬化が速く、配合したシランカップリング剤の接着部位の運動性がチップ表面のシラノール基と、十分な数の結合を形成する前に重合が進んだ主樹脂により律速されてしまう。その結果、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、チップ、及びプリント配線板などの基板との十分な接着性が得られない。また、ラジカル重合性モノマーは硬化が速いため、樹脂組成物がチップ表面に存在する凹凸に埋まる前に硬化するので、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、接着性向上の上で有用となるアンカー効果が十分に得られないという問題がある。
【0015】
特許文献2に記載の材料は、ポリイミドパッシベーション膜にしか作用しないことから、適用範囲が狭いという問題がある。
【0016】
特許文献3に記載の技術において、室温であってもカルボキシル基含有化合物はエポキシ化合物とわずかに反応が進行し、保管中にフラックス活性が経時的に低下する。そのため、特許文献3に記載のプリアプライドアンダーフィル材は、接合安定性が低く、量産性に乏しいという問題がある。
【0017】
特許文献4に記載の技術においては、マレイミド樹脂の吸水率が高いため、吸湿処理後のチップ接着性が大幅に低下するという問題がある。接着性が不十分であると、剥離界面から水が浸入し、絶縁信頼性が大きく低下する。なお、マレイミド樹脂のみでも、チップとの接着性、及びプリント配線基板との接着性の両立は困難である。
【0018】
特許文献5では、フラックス活性に関する記載はなく、また、フラックス成分についても記載がない。そのため、特許文献5に記載の樹脂組成物では、良好な金属接合は得られないとの問題がある。
【0019】
特許文献6では、エポキシ化合物の接着性は高いが、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題がある。
【0020】
特許文献7の接着剤組成物では、フラックス性を有する熱硬化剤を含むが、実施例において、エポキシ化合物、及びエポキシ基を含有するポリマーが使用されており、ボンディング温度より低温で両者が反応してしまうため十分なフラックス活性を得ることが難しい。
【0021】
特許文献8においても、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が好適であることが記載されているが、前記のとおり、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題もある。
【0022】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、チップ、及び基板との優れた接着性、及び優れたフラックス活性を有する、アンダーフィル材に好適な樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を提供することにある。好ましくは、チップとの優れた接着性、及びプリント配線板などの基板との優れた接着性を有し、優れたフラックス活性を有する、アンダーフィル材に好適な樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、前記問題点を解決のため鋭意検討した結果、ベンゾオキサジン化合物(A)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)と、フェノール樹脂及びラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂より選択される少なくとも1種の熱硬化性成分(C)と、を含有し、前記ベンゾオキサジン化合物(A)と、前記熱硬化性成分(C)との質量比が特定の範囲にある、アンダーフィル材に好適な樹脂組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0024】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
【0025】
[1]
ベンゾオキサジン化合物(A)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)と、フェノール樹脂及びラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂より選択される少なくとも1種の熱硬化性成分(C)と、を含有し、前記ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂が、アルケニル基、マレイミド基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1以上の官能基を有する樹脂又は化合物であり、前記ベンゾオキサジン化合物(A)と熱硬化性成分(C)との質量比((A)/(C))が、20/80~90/10である、樹脂組成物。
【0026】
[2]
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、400以上の分子量を有する、[1]に記載の樹脂組成物。
【0027】
[3]
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、及び下記式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0028】
【化1】
【0029】
(式(1)中、R1は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R2は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(t)で表される1~4価の有機基を示し、n1は、1~4の整数を示す。)。
【0030】
【化2】
【0031】
(式(2)中、R3は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R4は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(o)で表される1~4価の有機基を示し、n2は、1~4の整数を示す。)。
【0032】
【化3】
【0033】
(式(3)中、R5は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【0034】
【化4】
【0035】
(式(4)中、R6は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
(式(a)~(t)中、Raは、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rbは、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【0044】
[4]
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(5)及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0045】
【化12】
【0046】
(式(5)中、R7は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R8は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X1は、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【0047】
【化13】
【0048】
(式(6)中、R9は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R10は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X2は、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【0049】
【化14】
【0050】
(式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n3は、0以上5以下の整数を示す。)。
【0051】
[5]
前記ベンゾオキサジン化合物(A)が、下記式(5-1)で表される化合物、下記式(5-2)で表される化合物、下記式(5-3)で表される化合物、下記式(6-1)で表される化合物、下記式(6-2)で表される化合物、及び下記式(6-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
【化17】
【0055】
(式(5-3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)。
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
【化20】
【0059】
[6]
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の酸解離定数pKaが、3.8以上15.0以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0060】
[7]
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)が、200以上8,000以下の分子量を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0061】
[8]
前記フラックス機能を有する有機化合物(B)が、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びフェノールフタリンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0062】
[9]
前記熱硬化性成分(C)が、マレイミド化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0063】
[10]
前記熱硬化性成分(C)が、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、下記式(9)で表されるマレイミド化合物、下記式(10)で表されるマレイミド化合物、下記式(11)で表されるマレイミド化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0064】
【化21】
【0065】
(式(8)中、R11は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n4は、1以上10以下の整数を示す。)。
【0066】
【化22】
【0067】
(式(9)中、n5は、1以上30以下の整数を示す。)。
【0068】
【化23】
【0069】
(式(10)中、R12は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R13は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)。
【0070】
【化24】
【0071】
(式(11)中、R14は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n6は、1以上10以下の整数を示す。)。
【0072】
【化25】
【0073】
(式(12)中、R15及びR17は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示し、R16は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示し、n7は、1以上10以下の数を示す。)。
【0074】
【化26】
【0075】
(式(13)中、R18は、各々独立に、アルキレン基を示し、R19は、各々独立に、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、下記式(14)で表される基、酸素原子、又は単結合を示し、n8は、1以上10以下の数を示す。)。
【0076】
【化27】
【0077】
(式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n3は、0以上5以下の整数を示す。)。
【0078】
【化28】
【0079】
[11]
前記樹脂組成物において、前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0080】
[12]
ラジカル重合開始剤(D)を更に含有する、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0081】
[13]
前記ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度が、100℃以上である、[12]に記載の樹脂組成物。
【0082】
[14]
前記ラジカル重合開始剤(D)が、有機過酸化物である、[12]又は[13]に記載の樹脂組成物。
【0083】
[15]
前記ラジカル重合開始剤(D)が、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、又はハイドロパーオキサイド骨格を有する、[12]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0084】
[16]
前記ラジカル重合開始剤(D)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[12]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0085】
[17]
前記樹脂組成物中における前記ラジカル重合開始剤(D)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下である、[12]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0086】
[18]
無機充填材(E)を更に含有する、[1]~[17]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0087】
[19]
前記無機充填材(E)の平均粒子径が、3μm以下である、[18]に記載の樹脂組成物。
【0088】
[20]
前記無機充填材(E)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[18]又は[19]に記載の樹脂組成物。
【0089】
[21]
前記無機充填材(E)が、シリカである、[18]~[20]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0090】
[22]
前記樹脂組成物中における前記無機充填材(E)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び前記熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、[18]~[21]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0091】
[23]
可撓性付与成分(F)を更に含有する、[1]~[22]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0092】
[24]
前記可撓性付与成分(F)が、熱可塑性の高分子化合物を含有し、前記高分子化合物の質量平均分子量が、1,000以上1,000,000以下である、[23]に記載の樹脂組成物。
【0093】
[25]
前記可撓性付与成分(F)が、(メタ)アクリルオリゴマー及び/又は(メタ)アクリルポリマーである、[23]又は[24]に記載の樹脂組成物。
【0094】
[26]
前記樹脂組成物中における前記熱硬化性成分(C)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下である、[23]~[25]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0095】
[27]
前記樹脂組成物中にける前記フラックス機能を有する有機化合物(B)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下である、[23]~[26]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0096】
[28]
前記樹脂組成物中における前記無機充填材(E)の含有量が、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、前記熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、500質量部以下である、[23]~[27]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0097】
[29]
プリアプライドアンダーフィル材用である、[1]~[28]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0098】
[30]
支持基材と、前記支持基材上に積層された[1]~[29]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する層と、を備える積層体。
【0099】
[31]
半導体ウェハと、前記半導体ウェハに積層された[30]に記載の積層体と、を備え、前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、樹脂組成物層付き半導体ウェハ。
【0100】
[32]
半導体搭載用基板と、前記半導体搭載用基板に積層された[30]に記載の積層体と、を備え、前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板。
【0101】
[33]
[31]に記載の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は、[32]に記載の樹脂組成物層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0102】
本発明によれば、チップ及びプリント配線板などの基板との優れた接着性、及び優れたフラックス活性を有する、アンダーフィル材に用いるのに好適な樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0104】
本実施形態の一態様によれば、樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物(A)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)と、フェノール樹脂及びラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂より選択される少なくとも1種の熱硬化性成分(C)と、を含有し、前記ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂が、アルケニル基、マレイミド基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1以上の官能基を有する樹脂又は化合物であり、前記ベンゾオキサジン化合物(A)と熱硬化性成分(C)との質量比((A)/(C))が、20/80~90/10である。前記樹脂組成物は、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、アンダーフィル材用であることが好ましく、プリアプライドアンダーフィル材用であることがより好ましい。
【0105】
本実施形態の別の態様は、前記樹脂組成物成分に加え、ラジカル重合開始剤(D)を含有する樹脂組成物である。
【0106】
本実施形態の別の態様は、前記樹脂組成物成分に加え、無機充填材(E)を含有する樹脂組成物である。
【0107】
本実施形態の別の態様は、前記樹脂組成物成分に加え、可撓性付与成分(F)を含有する樹脂組成物である。
【0108】
本実施形態の別の態様においては、本実施形態による樹脂組成物を使用して得られる積層体(以下、「樹脂積層体」ともいう)、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び本発明の樹脂組成物を使用して作製した半導体装置も提供される。
【0109】
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の両方を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味し、「(メタ)アリル」とは「アリル」及びそれに対応する「メタアリル」の両方を意味する。
【0110】
〔I.樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、好適にはチップのフリップチップ実装に使用されるアンダーフィル材として用いられる樹脂組成物であって、ベンゾオキサジン化合物(A)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)と、フェノール樹脂及びラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂より選択される少なくとも1種の熱硬化性成分(C)と、を含有する。
【0111】
ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂としては、ラジカルにより重合する官能基を有する熱硬化性樹脂であり、アルケニル基、マレイミド基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1以上の官能基を有する樹脂又は化合物である。
【0112】
本実施形態の樹脂組成物において、ベンゾオキサジン化合物(A)と熱硬化性成分(C)との質量比((A)/(C))は、チップ及びプリント配線板などの基板との優れた接着性、及び優れたフラックス活性を有する、アンダーフィル材に好適な樹脂組成物が得られる観点から、20/80~90/10であり、25/75~85/15が好ましく、25/75~80/20がより好ましく、25/75~75/25が更に好ましい。ベンゾオキサジン化合物(A)の含有割合が、前記範囲の下限より小さいと、基板との接着性が十分に得られない。また、上限より大きいと、ベンゾオキサジン化合物とフラックス成分の反応が顕在化し、フラックス活性が十分に得られない。
【0113】
本実施形態の樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤(D)、無機充填材(E)、及び可撓性付与成分(F)の少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0114】
本発明において、チップ及びプリント配線板などの基板との優れた接着性、及び優れたフラックス活性を有する、アンダーフィル材に用いるのに好適な樹脂組成物が得られる理由について定かではないが、本発明者らは次のように推定している。ベンゾオキサジン化合物は、開環重合後に接着性に寄与する極性基としてフェノール性水酸基、及び第3級アミノ基を生成する。その結果、被接着体表面に存在する極性基と、水素結合のような化学的相互作用とが効果的に発現するため、強い接着性が得られると推定される。また、ベンゾオキサジン化合物はエポキシ化合物と比較し、保管時や加熱処理によるフラックス成分との反応が進行しにくく、フラックスの失活が発生しないと推定される。
【0115】
〔I-1.ベンゾオキサジン化合物(A)〕
本実施形態の樹脂組成物におけるベンゾオキサジン化合物(A)は、基本骨格としてオキサジン環を有していれば、特に限定されない。本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物(A)には、ナフトオキサジン化合物などの多環オキサジン骨格を有する化合物も含まれる。
【0116】
ベンゾオキサジン化合物(A)は、加熱により揮発性の副生成物を発生することはなく、ベンゾオキサジン環が開環重合して好適に硬化する。硬化物は、耐熱性、耐水性、及び難燃性に優れる。また、ベンゾオキサジン化合物(A)は、開環重合時に極性基であるフェノール性水酸基、及び第3級アミノ基が生成されるため、高いチップ接着性及び基板接着性が期待できる。
【0117】
ベンゾオキサジン化合物(A)は、前記ベンゾオキサジン化合物(A)の有する接着性を損なわない範囲で、下記のベンゾオキサジン化合物(A)以外の熱硬化性成分(C)と併用してもよい。熱硬化性成分(C)としては、ベンゾオキサジン化合物(A)と反応性を示し、かつ、フラックス成分とは反応性を示さない化合物が好ましい。
【0118】
ベンゾオキサジン化合物(A)は、フリップチップ実装中において、ベンゾオキサジン化合物(A)の揮発によるボイドを防ぐ観点から、ベンゾオキサジン化合物(A)の分子量は、本実施形態の効果を奏する限り特に限定されないが、400以上であることが好ましい。一方、より十分なフラックス活性を得る観点から、ベンゾオキサジン化合物(A)の分子量は、500以下であると好ましい。
【0119】
ベンゾオキサジン化合物(A)としては、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、及び下記式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。なお、本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物(A)中には、モノマーが重合して生成したオリゴマーなどを含んでいてもよい。
【0120】
【化29】
【0121】
式(1)中、R1は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。R2は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基又は一般式(a)~(t)で表される1~4価の有機基を示す。n1は1~4の整数を示す。
【0122】
1及びR2共に、アリール基は、好ましくは、炭素原子数6~18のアリール基であり、このようなアリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、アントリル基などを挙げることができる。中でも、フェニル基がより好ましい。これらのアリール基は、炭素原子数1から4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1~3個の範囲で有していてもよい。そのような低級アルキル基を有するアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、及びメチルナフチル基などを挙げることができる。
【0123】
1及びR2共に、アラルキル基は、好ましくは、ベンジル基又はフェネチル基であり、これらは、そのフェニル基上に炭素原子数1から4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1~3個の範囲で有していてもよい。
【0124】
1及びR2共に、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、プロペニル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基が好ましく、アリル基がより好ましい。
【0125】
1及びR2共に、アルキル基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基である。炭素原子数3以上のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0126】
1及びR2共に、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基が挙げられる。好ましくは、シクロヘキシル基である。
【0127】
【化30】
【0128】
式(2)中、R3は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。R4は、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(a)~(o)で表される1~4価の有機基を示す。n2は1~4の整数を示す。
【0129】
3及びR4共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0130】
【化31】
【0131】
式(3)中、R5は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0132】
5における、アルキル基及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0133】
置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4-メチルフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、及び4-メトキシフェニル基の一置換フェニル基;3,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、及び3,5-ジメトキシフェニル基の二置換フェニル基;3,4,5-トリメチルフェニル基の三置換フェニル基;2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、及び4-メチル-2-ナフチル基の置換基を有していてもよい2-ナフチル基が挙げられる。
【0134】
【化32】
【0135】
式(4)中、R6は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0136】
6における、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基については、前記のとおりである。
【0137】
【化33】
【0138】
【化34】
【0139】
【化35】
【0140】
【化36】
【0141】
【化37】
【0142】
【化38】
【0143】
【化39】
【0144】
一般式(a)~(t)中、Raは、各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。Rbは、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。
【0145】
a及びRb共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0146】
ベンゾオキサジン化合物(A)としては、下記式(5)及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが、溶剤溶解性の観点から、好ましい。
【0147】
【化40】
【0148】
式(5)中、R7は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。R8は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。X1はアルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0149】
7及びR8共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については、前記のとおりである。
【0150】
アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、及びヘキサメチレン基が挙げられる。分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、-C(CH32-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、及び-C(CH2CH32-のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH32CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-C(CH2CH32-CH2-のアルキルエチレン基が挙げられる。
【0151】
【化41】
【0152】
式(6)中、R9は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。R10は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。X2はアルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0153】
9及びR10共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については前記のとおりである。X2におけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0154】
【化42】
【0155】
式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基である。n3は、0以上5以下の整数を示す。n3は、1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0156】
Yにおけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0157】
芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、及びフェナレンの芳香族性を有する化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
【0158】
ベンゾオキサジン化合物(A)としては、下記式(5-1)で表される化合物、下記式(5-2)で表される化合物、下記式(5-3)で表される化合物、下記式(6-1)で表される化合物、下記式(6-2)で表される化合物、及び下記式(6-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが、優れた溶剤溶解性が得られ、高いチップ接着性及び基板接着性が得られる観点から、好ましい。
【0159】
【化43】
【0160】
【化44】
【0161】
【化45】
【0162】
(式(5-3)中、Rは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)。
【0163】
【化46】
【0164】
【化47】
【0165】
【化48】
【0166】
これらのベンゾオキサジン化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0167】
ベンゾオキサジン化合物(A)の製造方法は、特に限定されず公知の方法で製造できる。製造方法としては、例えば、1級アミン類、アルデヒド類、及びフェノール類を溶媒中で反応させて、生成物であるベンゾオキサジン化合物が溶解又は一部懸濁した反応液を調製する第1の工程と、前記反応液にアルコール系溶剤を添加して、ベンゾオキサジン化合物を析出させる第2の工程とを含有する方法が挙げられる。
【0168】
第1の工程においては、主生成物としてベンゾオキサジン化合物のモノマーを含有する反応液が得られるが、このベンゾオキサジン化合物のモノマーは、1級アミン類、アルデヒド類、及びフェノール類が脱水縮合することにより生成する。
【0169】
ベンゾオキサジン化合物(A)は、市販のものを使用してもよく、例えば、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製)、及びF-a型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製)が挙げられる。
【0170】
〔I-2.フラックス機能を有する有機化合物(B)〕
本実施形態の樹脂組成物は、フリップチップ実装中においてフラックス活性を発現させるため、フラックス機能を有する有機化合物(B)を含有する。フラックス機能を有する有機化合物(B)は、分子中に1個以上の酸性部位を有する有機化合物であれば、特に限定されない。酸性部位としては、例えば、リン酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、及びスルホン酸基が好ましく、本実施形態の樹脂組成物をアンダーフィル材、好ましくはプリアプライドアンダーフィル材として用いた半導体装置において、接合部を構成するはんだや銅等の金属のマイグレーション、及び腐食をより有効に防止する観点から、フェノール性水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。
【0171】
フラックス機能を有する有機化合物(B)は、接合部の酸化膜の除去を十分行うために、酸解離定数pKaが、3.8以上15.0以下であることが好ましく、ワニス及び樹脂積層体の保存安定性とフラックス活性の両立の観点から、4.0以上14.0以下であることがより好ましい。
【0172】
また、本実施形態の樹脂組成物におけるフラックス機能を有する有機化合物(B)は、フリップチップ実装中においてフラックス活性が発現する前に揮発してしまうこと、すなわち接合部の酸化膜を除去する前にフラックス機能を有する有機化合物(B)が揮発してしまうことを防ぐ観点から、分子量が200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。酸としての運動性を有し、十分なフラックス活性を得るためには、分子量8000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
【0173】
フラックス機能を有する有機化合物(B)としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びフェノールフタリンからなる群より選択される少なくとも1種であることが、溶剤溶解性及び保存安定性の観点から好ましい。
【0174】
これらの化合物(B)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0175】
これの中でも、前記のベンゾオキサジン化合物(A)又は下記の熱硬化性成分(C)による失活を防ぐ観点からは、デヒドロアビエチン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンがより好ましい。デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンは、比較的反応性が低いことから、前記のベンゾオキサジン化合物(A)、及び下記の熱硬化性成分(C)との反応がほとんど起こらず、酸化膜の除去に必要となる十分なフラックス活性が維持される観点から更に好ましい。
【0176】
本実施形態の樹脂組成物におけるフラックス機能を有する有機化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物のフラックス活性と、積層体を形成して使用する際に重要な特性の一つとなる可撓性を両立する観点から、前記ベンゾオキサジン化合物(A)、下記の熱硬化性成分(C)、及び下記の可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、有機化合物(B)の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)、及び熱硬化性樹脂(C)の合計100質量部に対する前記量とする。
【0177】
〔I-3.熱硬化性成分(C)〕
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物(A)以外の熱硬化性成分を含有する。熱硬化性成分(C)としては、ベンゾオキサジン化合物(A)と反応性を示し、かつ、フラックス成分とは反応性を示さない化合物が挙げられ、フェノール樹脂及び/又はラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂が好ましい。
【0178】
フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0179】
フェノール樹脂としては、例えば、9,9-Bis-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、ビスフェノールフルオレン、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、ヘスペリジン、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、及びフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマーが挙げられる。
これらのフェノール樹脂は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0180】
ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂としては、ラジカルにより重合する官能基を有する熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。このような熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、アルケニル基、マレイミド基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1以上の官能基を有する樹脂又は化合物であることが好ましい。
これらのラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0181】
アルケニル基を有する熱硬化性樹脂としては、分子中に1個以上の炭素-炭素二重結合を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されず、例えば、ビニル基を有する熱硬化性樹脂、(メタ)アリル基を有する熱硬化性樹脂、及びプロペニル基を有する熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0182】
ビニル基を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、スチレン、及びスチレン化合物などが挙げられる。
【0183】
(メタ)アリル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に1個以上の(メタ)アリル基を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されず、例えば、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルトリメリテート、テトラ(メタ)アリルピロメリテート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテルが挙げられる。
【0184】
プロペニル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に1個以上のプロペニル基を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されず、例えば、プロペニルフェノキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0185】
ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂としては、ベンゾオキサジン化合物(A)との反応性の観点から、マレイミド化合物が好ましい。
【0186】
マレイミド化合物が好ましい理由は定かではないが、本発明者らは、次のように推定している。すなわち、ベンゾオキサジン化合物(A)とマレイミド化合物との付加反応により得られる樹脂組成物は、マレイミド化合物が有する耐熱性を付与できる一方で、マレイミド化合物の単独硬化で得られる樹脂組成物の短所であった低接着性をベンゾオキサジン化合物(A)によって改善することができると推定している。接着性の改善機構としては、前記のオキサジン環の開環重合の過程で生成されるフェノール性水酸基、及び第3級アミノ基などの極性基の導入に加え、マレイミド基同士の重合による高架橋密度を付加反応により緩和することで、被着物に対して適度な追従性が発現するためであると推定している。
【0187】
マレイミド基を有する熱硬化性樹脂としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されない。
例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、o-フェニレンビスシトラコンイミド、m-フェニレンビスシトラコンイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2-ビス[4-(4-シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、下記式(9)で表されるマレイミド化合物、下記式(10)で表されるマレイミド化合物、下記式(11)で表されるマレイミド化合物、下記式(12)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(13)で表されるマレイミド化合物などが挙げられる。
【0188】
これらの中でも、有機溶剤への溶解性の観点から、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、下記式(9)で表されるマレイミド化合物、下記式(10)で表されるマレイミド化合物、下記式(11)で表されるマレイミド化合物、下記式(12)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(13)で表されるマレイミド化合物が好ましく、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、下記式(9)で表されるマレイミド化合物、下記式(10)で表されるマレイミド化合物、下記式(11)で表されるマレイミド化合物、下記式(12)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(13)で表されるマレイミド化合物がより好ましい。下記式(10)で表されるマレイミド化合物としては、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが、好ましい。
【0189】
【化49】
【0190】
式(8)中、R11は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、本実施形態による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水素原子であることが好ましい。また、式(8)中、n4は、1以上10以下の整数を示す。n4の上限値は、有機溶剤への溶解性の観点から、上限値は7であることが好ましい。
【0191】
【化50】
【0192】
式(9)中、n5の平均的な値は1以上30以下の範囲である。本実施形態による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、n5は、平均的な値として、7以上30以下であると好ましく、7以上18以下であるとより好ましい。
【0193】
【化51】
【0194】
式(10)中、R12は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。
式(10)中、R13は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。
【0195】
【化52】
【0196】
式(11)中、R14は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n6は1以上10以下の整数を示す。
炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。
【0197】
【化53】
【0198】
式(12)中、R15及びR17は、各々独立に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を示す。R16は、各々独立に、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を示す。n7は、1以上10以下の数を示す。
15及びR17共に、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基としては、例えば、8以上の炭素原子を有する、置換又は非置換の2価の炭化水素基が挙げられる。置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、置換又は非置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の分岐状脂肪族炭化水素基、及び置換又は非置換の環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。例えば、オクチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、及びオクタデカメチレン基が挙げられる。
16において、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下である脂環基、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下である芳香族基、及び置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下である複素環基が挙げられる。なお、環を構成する原子数とは、環状に連結している原子の数であって、側鎖の置換基等の原子数は含まれない。置換又は非置換の脂環基における脂環部分の基としては、例えば、2価又は2価以上の、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、及びシクロデシル基が挙げられる。また、置換基がアルキル基である場合、アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数3~10のアルキル基がより好ましい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。アルキル基置換のアルキル基は、1つでもよく、2以上であってもよい。
【0199】
【化54】
【0200】
式(13)中、R18は、各々独立に、アルキレン基を示す。R19は、各々独立に、アルキレン基、下記式(7)で表される基、式「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、下記式(14)で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。n8は1以上10以下の数を示す。
18及びR19共に、アルキレン基は前記のとおりである。
【0201】
【化55】
【0202】
式(7)中、Yは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基である。n3は、0以上5以下の整数を示す。n3は、1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
Yにおいて、アルキレン基及び芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基については、前記のとおりである。
【0203】
【化56】
【0204】
また、マレイミド化合物としては、有機溶剤への溶解性及び可撓性の観点から、前記式(9)で表されるマレイミド化合物が好ましく、前記式(9)で表されるマレイミド化合物と共に、更に2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、前記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(10)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のマレイミド化合物を含有することがより好ましい。
【0205】
本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物を用いる場合には、特に限定されないが、有機溶剤への良好な溶解性及び良好な可撓性が得られる点から、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、式(9)で表されるマレイミド化合物を5~40質量部で含有することが好ましく、10~35質量部で含有することがより好ましい。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、マレイミド化合物の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)及び熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対する前記量とする。
【0206】
マレイミド化合物は、マレイミド化合物を重合して得られるプレポリマー、及びマレイミド化合物をアミン化合物等の他の化合物と重合して得られるプレポリマー等の形で、樹脂組成物に含有させることもできる。
【0207】
マレイミド化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、大和化成工業(株)製BMI-2300、ケイ・アイ化成(株)製BMI-70、BMI-80、BMI-1000P、Designer Molecules Inc.製BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000、及びBMI-5000が挙げられる。
【0208】
(メタ)アクリロイル基を有する熱硬化性樹脂としては、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されない。(メタ)アクリロイル基を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。必要により、例えば、ハイドロキノン、及びメチルエーテルハイドロキノン類の重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0209】
これら熱硬化性成分(C)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0210】
本実施形態の樹脂組成物における熱硬化性成分(C)の含有量は、特に限定されないが、前記ベンゾオキサジン化合物(A)の有する接着性を損なわない範囲であることから、ベンゾオキサジン化合物(A)及び熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下で含有することが好ましく、15質量部以上75質量部以下で含有することがより好ましい。
【0211】
本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)を含有する場合には、本実施形態の樹脂組成物における熱硬化性成分(C)の含有量は、特に限定されないが、前記ベンゾオキサジン化合物(A)の有する接着性を損なわない範囲であるから、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下で含有することが好ましく、15質量部以上68質量部以下で含有することがより好ましい。
【0212】
〔I-4.ラジカル重合開始剤(D)〕
本実施形態の樹脂組成物は、一般にラジカル重合に用いられる公知の開始剤として、ラジカル重合開始剤(D)含有することが好ましい。
【0213】
ラジカル重合開始剤(D)の10時間半減期温度は、特に限定されないが、100℃以上であり、製造性の観点から、110℃以上であることがより好ましい。本実施形態において、製造時の溶剤除去工程の高温化を図ることができるため、ラジカル重合開始剤(D)は、前記の範囲の10時間半減期温度を満たすことが好ましい。
【0214】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイドのケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、及び2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンのパーオキシケタール;tert―ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイドのハイドロパーオキサイド;ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及びジ-t-ブチルパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド、及びジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイドのジアシルパーオキサイド;ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、及びジイソプロピルパーオキシジカーボネートのパーオキシジカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネートのパーオキシエステル等の有機過酸化物;
2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;アルキルフェノン系光重合開始剤;アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;チタノセン系光重合開始剤などが挙げられる。本実施形態においては、有機過酸化物が好ましく、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、及びハイドロパーオキサイド骨格を有する有機過酸化物がより好ましく、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert―ブチルハイドロパーオキサイドが、製造性の観点から、更に好ましい。
【0215】
これらラジカル重合開始剤(D)は、1種又は2種以上を混合して使用することができ、公知の硬化促進剤を併用しても構わない。
【0216】
本実施形態の樹脂組成物において、ラジカル重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、前記ベンゾオキサジン化合物(A)及び熱硬化性成分(C)の合計100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0217】
〔I-4.無機充填材(E)〕
本実施形態の樹脂組成物は、耐燃性の向上、熱伝導率の向上、及び熱膨張率の低減のため、無機充填材(E)を含有することができる。無機充填材を使用することにより、樹脂組成物等の耐燃性、及び熱伝導率を向上させ、熱膨張率を低減することができる。
【0218】
無機充填材(E)の平均粒径は、限定されないが、本実施形態の樹脂組成物をアンダーフィル材として、好ましくはプリアプライドアンダーフィル材として用いる場合、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化に対応する観点からは、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。その平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、10nmである。なお、本明細書において無機充填材(E)の「平均粒径」とは、無機充填材(E)のメジアン径を意味するものとする。ここでメジアン径とは、ある粒径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の体積と、より粒径が小さい側の粒子の体積とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒径を意味する。無機充填材(E)の平均粒径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0219】
無機充填材(E)の種類としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等のシリカ;ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、及び窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物;酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物;炭酸カルシウム、及び硫酸カルシウム等のカルシウム化合物;酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;窒化ホウ素;硫酸バリウム;天然タルク、及び焼成タルク等のタルク;マイカ;短繊維状ガラス、球状ガラス、及び微粉末ガラス(例えば、Eガラス、Tガラス、Dガラス)等のガラスが挙げられる。また、樹脂組成物に導電性又は異方導電性を付与したい場合には、無機充填材(E)として、例えば、金、銀、ニッケル、銅、錫合金、及びパラジウムの金属粒子を使用してもよい。
【0220】
これらの中でも、樹脂組成物の耐燃性の向上及び熱膨張率の低減の観点から、無機充填材(E)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムが好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましく、その中でも溶融シリカが更に好ましい。溶融シリカとしては、例えば、デンカ(株)製のSFP-120MC、及びSFP-130MC、(株)アドマテックス製の0.3μmSX-CM1、0.3μmSX-EM1、0.3μmSV-EM1、SC1050-MLQ、SC2050-MNU、SC2050-MTX、2.2μmSC6103-SQ、SE2053-SQ、YA050C-MJF、及びYA050C-MJAが挙げられる。
【0221】
これらの無機充填材(E)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0222】
無機充填材(E)は、シランカップリング剤で表面処理されたものを用いてもよい。
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0223】
無機充填材(E)を使用する場合の樹脂組成物における含有量は、樹脂組成物の耐燃性の向上、及び熱膨張率の低減をしつつ、アンダーフィル材の、好適にはプリアプライドアンダーフィル材の接合時の流動性を確保する観点からは、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、500質量部以下とすることが好ましく、300質量部以下とすることがより好ましい。また、その含有量は、10質量部以上とすることが好ましく、20質量部以上とすることがより好ましく、50質量部以上とすることが更に好ましい。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、無機充填剤(E)の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)、及び熱硬化性樹脂(C)の合計100質量部に対する前記量とする。なお、2種以上の無機充填材(E)を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0224】
〔I-5.可撓性付与成分(F)〕
本実施形態の樹脂組成物では、可撓性付与成分(F)を含有することが好ましい。可撓性付与成分(F)は、樹脂組成物を含有する層に対して可撓性を付与できるような成分であれば、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、(メタ)アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ポリプロピレン、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、及びシリコーン樹脂等の熱可塑性の高分子化合物が挙げられる。
これらの可撓性付与成分(F)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0225】
これらの中でも、樹脂組成物を製造する際に用いる有機溶剤への溶解性、マレイミド化合物との相溶性、樹脂組成物の溶融粘度の制御性、及び可撓性付与の観点から、(メタ)アクリルオリゴマー又は(メタ)アクリルポリマーが好ましい。(メタ)アクリルオリゴマー又は(メタ)アクリルポリマーとしては、例えば、東亞合成(株)の「ARUFON(登録商標)」シリーズ、綜研化学(株)の「アクトフロー(登録商標)」シリーズ、根上工業(株)の「PARACRON(登録商標)」シリーズ、及び(株)クラレの「KURARITY(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0226】
可撓性付与成分(F)の分子量は、特に限定されないが、樹脂組成物に可撓性を付与するという観点からは、質量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。また、樹脂組成物をアンダーフィル材として、好適にはプリアプライドアンダーフィル材として使用する場合、金属接合部内に樹脂組成物の噛み込みがなく、良好かつ安定した形状の接合を得るためには、樹脂組成物の溶融粘度を低く制御し、接合時の樹脂組成物の流動性を確保する必要がある。そのような観点から、可撓性付与成分(E)の質量平均分子量が1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましく、10,000以下が更により好ましい。前記範囲の質量平均分子量を有する可撓性付与成分(E)を使用することにより、樹脂組成物の可撓性と、アンダーフィル材として、好適にはプリアプライドアンダーフィル材として使用する場合の接合性をより良好なバランスで両立することができる。なお、本明細書において可撓性付与成分(E)の「質量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による、ポリスチレンスタンダード換算の質量平均分子量を意味する。
【0227】
可撓性付与成分(F)を使用する場合、その樹脂組成物における含有量は、溶融粘度の制御性の観点から、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、87.5質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、30質量部以下とすることがより好ましい。また、可撓性付与成分(F)の樹脂組成物における含有量は、1質量部以上とすることが好ましく、5質量部以上とすることがより好ましい。なお、2種以上の可撓性付与成分(F)を併用する場合には、これらの合計量が前記比率を満たすことが好ましい。
【0228】
〔I-6.その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物(A)、フラックス機能を有する有機化合物(B)、熱硬化性成分(C)、ラジカル重合性開始剤(D)、無機充填材(E)、及び可撓性付与成分(F)の他に、その他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0229】
例えば、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂とフィラーの界面の接着性の向上、及び吸湿耐熱性の向上の目的で、カップリング剤を含んでいてもよい。例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0230】
カップリング剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性の向上、及びフリップチップ実装時の揮発量の低減観点から、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、カップリング剤の含有量は、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、カップリング剤の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)、及び熱硬化性樹脂(C)の合計100質量部に対する前記量とする。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲内であることが好ましい。
【0231】
本実施形態の樹脂組成物は、積層体の製造性向上及び充填材の分散性等の目的で、湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、特に限定されない。例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk(登録商標)-110、同-111、同-180、同-161、BYK-W996、同-W9010、及び同-W903が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0232】
湿潤分散剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は特に限定されないが、積層体の製造性向上の観点からは、無機充填材(E)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下とすることがより好ましい。
なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が前記比率を満たすことが好ましい。
【0233】
本実施形態の樹脂組成物は、硬化速度の調整等の目的で、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂の硬化促進剤として公知であり、一般に使用されるものであれば、特に限定されない。硬化促進剤として、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、及び2,4,5-トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類、及びその誘導体;トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミンが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0234】
硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は特に限定されないが、硬化速度の調整の観点から、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、硬化促進剤の含有量は、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることが更に好ましい。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、硬化促進剤の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)、及び熱硬化性樹脂(C)の合計100質量部に対する前記量とする。なお、2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計量が前記比率を満たすことが好ましい。
【0235】
本実施形態の樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、難燃剤、及びイオントラップ剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態の樹脂組成物において、その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、通常、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の合計100質量部に対して、それぞれ0.01~10質量部である。ただし、本実施形態の樹脂組成物に可撓性付与成分(F)が含まれない場合には、その他の添加剤の含有量は、ベンゾオキサジン化合物(A)、及び熱硬化性樹脂(C)の合計100質量部に対する前記量に対する前記量とする。
【0236】
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物(A)、フラックス機能を有する有機化合物(B)、熱硬化性成分(C)、ラジカル重合性開始剤(D)、無機充填材(E)、可撓性付与成分(F)、及びその他の成分を適宜混合することにより調製される。必要に応じて、これらの成分を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスの形態としてもよい。本実施形態の樹脂組成物のワニスは、下記のとおり、本実施形態の積層体を作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。有機溶剤は、前記の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、かつ、本実施形態の樹脂組成物の所期の効果を損なわないものであれば特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す場合がある。)、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0237】
本実施形態の樹脂組成物は、チップとの接着性、基板との接着性、及びフラックス活性に優れる。また、樹脂組成物を支持基材上に塗布することにより、チップとの接着性に優れた樹脂層を有する積層体を提供することができる。本実施形態の樹脂組成物を、積層体の形態で使用するプリアプライドアンダーフィル材として用いた場合、チップ接着性、基板との接着性、及びフラックス活性に優れ、加えて、接合性及び絶縁信頼性にも優れる等、その他の好適な効果も発揮し得る。このように、本実施形態の樹脂組成物は、各種の優れた特徴を有し、特にチップとの接着性、基板との接着性、及びフラックス活性を高い水準で満足させることができることから、アンダーフィル材に有用であり、プリアプライドアンダーフィル材としてより有用である。
【0238】
〔II.積層体、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き基板、及び半導体装置〕
本実施形態の積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板などの樹脂組成物層付き基板、及び半導体装置は、いずれも前記した本発明の樹脂組成物を用いて形成される。
【0239】
〔II-1.積層体〕
本実施形態の積層体は、支持基材と、支持基材上に積層された本実施形態の樹脂組成物を含有する層と、を備える。このような積層体は、前記した本実施形態の樹脂組成物が、支持基材に添着される。支持基材としては、特に限定されないが、高分子フィルムを使用することができる。高分子フィルムの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン-酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド、及びポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含有するフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアミドが好ましく、その中でもポリエステルの一種である、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0240】
本実施形態の支持基材の厚さは限定されないが、積層体の製造性、例えば、支持基材に樹脂組成物を塗布する場合の塗布厚の安定性の観点から、10~100μmであることが好ましい。また、積層体の搬送性の観点からも、その厚さは10~100μmであることが好ましい。また、その厚さの下限としては、積層体を製造する際の歩留り確保の点から、より好ましくは12μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、30μm以上であることが更により好ましい。また、その厚さの上限としては、支持基材が最終的に半導体装置の構成部材として存在することなく、工程の途中で剥離されることから、積層体の製造コストの観点から、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0241】
前記の支持基材上に、本実施形態の樹脂組成物を含有する層(以下、単に「樹脂組成物層」ともいう。)を形成して本実施形態の積層体を製造する方法としては、特に限定されない。そのような製造方法として、例えば、本実施形態の樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを、前記の支持基材の表面に塗布し、加熱、及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して本実施形態の樹脂組成物を固化させ、樹脂組成物層を形成する手法が挙げられる。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層に対する有機溶剤の含有比率が、樹脂組成物層の総量(100質量部)に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。斯かる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒の種類と配合量によっても異なる。例えば、ベンゾオキサジン化合物(A)、熱硬化性成分(C)、及び可撓性付与成分(F)の樹脂組成物における合計100質量部に対して、10~120質量部のMEKを含むワニスの場合、1気圧下で90~160℃の加熱条件下で3~10分程度の乾燥が目安となる。本実施形態の積層体における樹脂組成物層の厚さは、特に限定されないが、樹脂組成物層の乾燥時に軽揮発分をより良好に除去する観点、及び積層体としての機能をより有効かつ確実に奏する観点から、5~500μmの範囲が好適であり、10~100μmの範囲がより好ましい。
【0242】
〔II-2.積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き基板〕
本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハは、半導体ウェハと、その半導体ウェハに積層された前記の積層体における樹脂組成物層とを備え、前記した本実施形態の積層体と半導体ウェハとから形成される。また、本実施形態の樹脂組成物層付き基板は、基板と、その基板に積層された前記の積層体における樹脂組成物層とを備え、前記した本実施形態の積層体と基板から形成される。
【0243】
本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハを作製する方法は、特に限定されないが、例えば、半導体ウェハの電極が形成された面、すなわち基板との接合が行われる面に、本実施形態の積層体の樹脂組成物層が対向するよう貼り合わせることで得られる。また、本実施形態の樹脂組成物層付き基板を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、基板のチップ搭載側の面に、本実施形態の積層体の樹脂組成物層が対向するよう貼り合わせることで得られる。
【0244】
本実施形態の積層体を半導体ウェハ又は基板に貼り合わせる方法としては、特に限定されないが、真空加圧式ラミネータを好適に使用することができる。この場合、本実施形態の積層体に対してゴム等の弾性体を介して加圧し、貼り合わせる方法が好ましい。ラミネート条件としては、当業界で一般に使用されている条件であれば、特に限定されないが、例えば、50~140℃の温度、1~11kgf/cm2の範囲の接触圧力、並びに20hPa以下の雰囲気減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、貼り合わされた積層体の平滑化を行ってもよい。前記ラミネート工程、及び平滑化工程は、市販されている真空加圧式ラミネータによって連続的に行うことができる。半導体ウェハ又は基板に貼り付けられた積層体は、いずれの場合もチップのフリップチップ実装前までに支持基材の除去が行われる。
【0245】
〔II-3.半導体装置〕
本実施形態の半導体装置は、本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は本実施形態の樹脂組成物層付き基板を備え、本実施形態の樹脂組成物層、チップ及び基板等から構成される。本実施形態の半導体装置を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハを研削等の手段で薄化、及びダイシングソー等による個片化を行い、樹脂組成物層付きチップとし、これを基板に搭載する手法が挙げられる。また、本実施形態の樹脂組成物層付き基板に、チップを搭載してもよい。樹脂組成物層付きチップを基板に搭載する方法、及び半導体チップを樹脂組成物層付き基板に搭載する方法では、熱圧着工法に対応したフリップチップボンダを好適に使用することができる。また、本実施形態ではチップを基板にフリップチップ実装する場合を便宜的に説明しているが、チップをフリップチップ実装しつつ、本実施形態の樹脂組成物を適用する対象は基板以外とすることも可能である。例えば、本実施形態の樹脂組成物は、半導体ウェハ上へチップを搭載する際の半導体ウェハとチップとの接合部や、TSV(Through Silicon Via)等を経由してチップ間接続を行うチップ積層体の、各チップ間の接合部に使用することも可能であり、いずれの場合も本発明による優位性を得ることができる。
【実施例
【0246】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0247】
[1.樹脂組成物及び樹脂積層体の作製]
(実施例1)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物(四国化成工業(株)社製P-d型ベンゾオキサジン)のMEK溶液(不揮発分50質量%)160質量部(不揮発分換算で80質量部)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、pKa:4~5、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)におけるR11がすべて水素原子であり、n4が1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)10質量部(不揮発分換算で5質量部)、及び前記式(9)で表されるマレイミド化合物(前記式(9)中のn5は、14(平均値)である、BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)30質量部(不揮発分換算で15質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%(株)アドマテックス社製0.3μmSX-CM1、フェニルアミノシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0248】
(実施例2)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物80質量部を不揮発分換算で20質量部に、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)のマレイミド化合物5質量部を不揮発分換算で45質量部に、前記式(9)のマレイミド化合物15質量部を不揮発分換算で25質量部に変更し、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(質量平均分子量:2900、東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0249】
(実施例3)
熱硬化性成分(C)として、前記式(8)のマレイミド化合物、及び前記式(9)のマレイミド化合物の代わりに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)社製DPHA)20質量部に、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイドの代わりに、tert―ブチルハイドロパーオキサイド(アルケマ吉富(株)社製ルペロックスTBH、10時間半減期温度:165℃)0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0250】
(実施例4)
熱硬化性成分(C)として、前記式(8)のマレイミド化合物5質量部を配合せずに、前記式(9)のマレイミド化合物15質量部を不揮発分換算で10質量部に変更し、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部を混合した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0251】
(実施例5)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物(四国化成工業(株)社製P-d型ベンゾオキサジン)のMEK溶液(不揮発分50質量%)50質量部(不揮発分換算で25質量部)と、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)におけるR11がすべて水素原子であり、n4が1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)16質量部(不揮発分換算で8質量部)、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)32質量部(不揮発分換算で16質量部)、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)32質量部(不揮発分換算で16質量部)、前記式(9)で表されるマレイミド化合物(前記式(9)中のn5は、14(平均値)である、BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)50質量部(不揮発分換算で25質量部)と、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部と、フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%(株)アドマテックス社製SC1050-MLQ、ビニルシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)と、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)2質量部と、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0252】
(実施例6)
フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸の代わりに、ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業(株)社製マルキード(登録商標)No.32)に変更した以外は、実施例5と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0253】
(実施例7)
フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸の代わりに、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン(pKa:12~13、東京化成工業(株)社製)に変更した以外は、実施例5と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0254】
(実施例8)
フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸の代わりに、N,N'-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン(pKa:12~13、東京化成工業(株)社製)に変更した以外は、実施例5と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0255】
(実施例9)
無機充填材(E)として、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製SC1050-MLQ)の代わりに、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製0.3μmSV-EM1、平均粒子径0.3μm、低α線グレード、ビニルシラン処理)に変更し、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)を配合せず、湿潤分散剤として、DISPERBYK(登録商標)-111(ビッグケミー・ジャパン(株)製)1質量部を混合した以外は、実施例6と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0256】
(実施例10)
無機充填材(E)として、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製0.3μmSV-EM1、平均粒子径0.3μm、低α線グレード、ビニルシラン処理)の代わりに、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製0.3μmSX-EM1、平均粒子径0.3μm、低α線グレード、フェニルアミノシラン処理)に変更した以外は、実施例9と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0257】
(実施例11)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物25質量部を不揮発分換算で40質量部に、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)のマレイミド化合物8質量部を不揮発分換算で5質量部に、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)16質量部を不揮発分換算で10質量部に、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)16質量部を不揮発分換算で10質量部に変更した以外は、実施例10と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0258】
(実施例12)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物の代わりに、前記一般式(6-1)のベンゾオキサジン化合物(四国化成工業(株)社製F-a型ベンゾオキサジン)に変更し、フラックス機能を有する有機化合物(B)として、ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業(株)社製マルキード(登録商標)No.32)の代わりに、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、pKa:4~5、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)に変更し、無機充填材(E)として、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%、(株)アドマテックス社製SC1050-MLQ、ビニルシラン処理)の代わりに、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%、(株)アドマテックス社製0.3μmSX-CM1、フェニルアミノシラン処理)に変更し、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)2質量部を配合しなかった以外は、実施例6と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0259】
(実施例13)
前記一般式(6-1)のベンゾオキサジン化合物25質量部を不揮発分換算で50質量部に、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)のマレイミド化合物8質量部を不揮発分換算で3質量部に、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)16質量部を不揮発分換算で6質量部に、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)16質量部を不揮発分換算で6質量部に変更した以外は、実施例12と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0260】
(比較例1)
熱硬化性成分として、前記式(8)におけるR11がすべて水素原子であり、n4が1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)26質量部(不揮発分換算で13質量部)、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)52質量部(不揮発分換算で26質量部)、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)52質量部(不揮発分換算で26質量部)、前記式(9)で表されるマレイミド化合物(前記式(9)中のn5は、14(平均値)である、BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)50質量部(不揮発分換算で25質量部)と、可撓性付与成分として、アクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部と、フラックス機能を有する有機化合物として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%、(株)アドマテックス社製SC1050-MLQ、ビニルシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)と、硬化促進剤として、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分10質量%)1質量部(不揮発分換算で0.1質量部)を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0261】
(比較例2)
さらに、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)5質量部と、レベリング剤として、シリコーン系表面調整剤(ビックケミー社製BYK-310)0.05質量部を混合した以外は、比較例1と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0262】
(比較例3)
さらに、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)3質量部と、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部を混合し、硬化促進剤である2-エチル-4-メチルイミダゾール0.1質量部を配合しなかった以外は、比較例1と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0263】
(比較例4)
フラックス機能を有する有機化合物として、デヒドロアビエチン酸の代わりに、ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業(株)社製マルキード(登録商標)No.32)に変更した以外は、比較例3と同様にしてワニスを調製し、樹脂積層体を得た。
【0264】
(比較例5)
熱硬化性成分として、前記式(8)におけるR11がすべて水素原子であり、n4が1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)24質量部(不揮発分換算で12質量部)、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)48質量部(不揮発分換算で24質量部)、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)48質量部(不揮発分換算で24質量部)と、可撓性付与成分として、アクリルポリマー(Mw:700,000、不揮発分20質量%、ナガセケムテックス(株)社製テイサンレジン(登録商標)SG-708-6)150質量部(不揮発分換算で30質量部)、及びアクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部と、フラックス機能を有する有機化合物として、2-(p-トルオイル)安息香酸(東京化成工業(株)社製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ(平均粒子径:0.3μm、不揮発分65質量%(株)アドマテックス社製SC1050-MLQ、ビニルシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)と、シランカップリング剤として、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)社製KBM-573)3質量部と、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0265】
(比較例6)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物(四国化成工業(株)社製P-d型ベンゾオキサジン)のMEK溶液(不揮発分50質量%)180質量部(不揮発分換算で90質量部)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、pKa:4~5、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、熱硬化性成分(C)として、前記式(9)で表されるマレイミド化合物(前記式(9)中のn5は、14(平均値)である、BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)10質量部(不揮発分換算で5質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製0.3μmSX-EM1、平均粒子径0.3μm、低α線グレード、フェニルアミノシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)5質量部、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部、湿潤分散剤として、DISPERBYK(登録商標)-111(ビッグケミー・ジャパン(株)製)1質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0266】
(比較例7)
ベンゾオキサジン化合物(A)として、前記一般式(5-1)のベンゾオキサジン化合物(四国化成工業(株)社製P-d型ベンゾオキサジン)のMEK溶液(不揮発分50質量%)30質量部(不揮発分換算で15質量部)と、フラックス機能を有する有機化合物(B)として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、pKa:4~5、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)と、熱硬化性成分(C)として、前記式(8)におけるR11がすべて水素原子であり、n4が1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)60質量部(不揮発分換算で30質量部)と、前記式(9)で表されるマレイミド化合物(前記式(9)中のn5は、14(平均値)である、BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)90質量部(不揮発分換算で45質量部)と、無機充填材(E)として、スラリーシリカ((株)アドマテックス社製0.3μmSX-EM1、平均粒子径0.3μm、低α線グレード、フェニルアミノシラン処理)153.8質量部(不揮発分換算で100質量部)、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(東亞合成(株)社製ARUFON(登録商標)US-6170)10質量部、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116.4℃、キシダ化学(株)社製)0.5質量部、湿潤分散剤として、DISPERBYK(登録商標)-111(ビッグケミー・ジャパン(株)製)1質量部を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0267】
(比較例8)
熱硬化性成分として、ビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC(株)社製EXA-850CRP)のMEK溶液(不揮発分50質量%)124質量部(不揮発分換算で62質量部)と、ノボラック型フェノール化合物(DIC(株)社製フェノライト(登録商標)KA-1163)のMEK溶液(不揮発分50質量%)76質量部(不揮発分換算で38質量部)と、フラックス機能を有する有機化合物として、デヒドロアビエチン酸(分子量:300.44、酸性部位の官能基当量:300g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)40質量部(不揮発分換算で20質量部)を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0268】
(比較例9)
熱硬化性成分として、クレゾールノボラック型エポキシ化合物(日本化薬(株)社製EOCN-1020-70)のMEK溶液(不揮発分50質量%)45質量部(不揮発分換算で22.5質量部)と、ノボラック型フェノール化合物(群栄化学工業(株)社製PS-4271)のMEK溶液(不揮発分50質量%)20質量部(不揮発分換算で10質量部)と、フラックス機能を有する有機化合物として、フェノールフタリン(分子量:320.34、酸性部位の官能基当量:320.34g/eq.、和光純薬工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)20質量部(不揮発分換算で10質量部)と、可撓性付与成分(F)として、アクリルポリマー(Mw:850,000、不揮発分15質量%、ナガセケムテックス(株)社製テイサンレジン(登録商標)SG-P3)のMEK溶液450質量部(不揮発分換算で67.5質量部)と、シリカ(平均粒子径:2.2μm(株)アドマテックス社製SC6103-SQ、SQ処理)137.5質量部と、シランカップリング剤として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製KBM-303)1.25質量部と、硬化促進剤として、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ、四国化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分10質量%)12.5質量部(不揮発分換算で1.25質量部)を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本実施形態の樹脂組成物層の厚さが30μmである樹脂積層体を得た。
【0269】
[2.樹脂組成物の評価]
(1)フラックス活性
実施例1~13、及び比較例1~9で得られた樹脂積層体を8mm×8mmにカットし、半導体搭用載基板(株)ウォルツ製WALTS-KIT
MB50-0102JYのパッド部分(15μmCu)を覆うように貼り付け、樹脂積層体付き半導体搭載用基板を得た。次に、フリップチップボンダ―を用いて、半導体チップ(株)ウォルツ製WALTS-TEG
MB50-0101JYのバンプ部分(30μmCuピラー+15μmSnAgはんだ)と樹脂積層体付き半導体搭載用基板のパッド部分が正確に重なるように位置合わせした後、はんだ溶融接合させ半導体装置を得た。得られた半導体装置を200℃のオーブンで2時間熱処理した後、接合部分の断面研磨観察を実施し、はんだ接合状態を確認した。断面観察の結果、十分なはんだ濡れ性が確認できたものをA、はんだ濡れ性が確認できなかったものをCとして記載した。結果を表1及び2に示す。
【0270】
(2)チップ接着性
チップ接着性をJIS
K5600-5-6に準じて評価を実施した。例えば、実施例1~13、及び比較例1~7で得られた樹脂積層体を4cm×4cmに個片化したチップに真空加圧式ラミネータにより貼り付けることで樹脂組成物層付きチップを得た。その樹脂組成物層付きチップを、オーブンを使用し、200℃で3時間加熱した。室温に戻した後、樹脂組成物層チップに縦、横それぞれに1mm間隔で各6本の切り込みを互いに直交するように入れ、25マスの直角格子パターンを作製した。切り込み入り樹脂組成物層付きチップに対して、プレッシャークッカー(温度:121℃、湿度:100%RH、圧力:2atm)により96時間まで加圧吸湿処理を施した後に、室温環境下にて透明付着テープによる剥離試験を行った。
剥離試験の結果、全く剥離が確認されなかったものをA、極一部のみに剥離が確認されたものをB、大きく剥離が確認されたものをCとして記載した。結果を表1及び2に示す。
【0271】
(3)HAST
プリント配線基板のL/S=40/40μmの微細回路パターン上に、実施例1~13、及び比較例1~7で得られた樹脂積層体を真空ラミネータにより貼り付け、微細配線間を埋め込んだ。オーブンを使用し、前記で作製した樹脂積層体付き微細回路パターン基板を200℃で3時間加熱し、試験サンプルを作製した。得られた試験サンプルを前処理として、温度85℃、湿度60%の条件下で168時間加湿熱処理し、処理後のサンプルを最高温度260℃に設定したリフロー工程に3回流した。前処理後の試験サンプルを温度130℃、湿度85%、印加電圧5.0Vの条件で連続湿中絶縁抵抗を測定した。
評価基準は、抵抗値107Ω以下を短絡とし、短絡するまでの時間が、300時間以上のものをA、100時間以下のものをCとして記載した。結果を表1及び2に示す。
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【0274】
本出願は、2018年4月26日出願の日本特許出願(特願2018-85680)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本実施形態の樹脂組成物は、チップ接着性、基板との接着性、フラックス活性に優れる等、各種の効果を発揮することから、アンダーフィル材として、好適にはプリアプライドアンダーフィル材料として有用である。特に本実施形態の樹脂組成物はフラックス活性に優れ、かつチップ、及び基板との接着性に優れることから、チップと基板の接合や、チップと半導体ウェハの接合、更にはチップとチップの接合によって得られる積層体においても使用される環境において長期的な使用にも耐え得る高い信頼性を付与することができ、極めて有用である。