(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】マルチカソード堆積システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
C23C14/24 G
(21)【出願番号】P 2021505955
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 US2019045917
(87)【国際公開番号】W WO2020033836
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バート, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, ビブー
(72)【発明者】
【氏名】マノハラン, カマチゴビナート
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0090464(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0137970(US,A1)
【文献】国際公開第2014/002328(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/140193(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0186426(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0146085(US,A1)
【文献】特表2007-503118(JP,A)
【文献】特開2000-003902(JP,A)
【文献】特開2011-149091(JP,A)
【文献】特開2011-128067(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカソードアセンブリ;
複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する、複数のカソードアセンブリの下方の上部シールド;ならびに
上部シールドの下方の下部シールドであって、上部シールドに接する上端と、上端の反対側の下端と、
下端から
上端までの高さ「H」および下部シールド壁内面を有する下部シールド壁と、を有する下部シールド
を備える物理的気相堆積(PVD)チャンバであって、
下部シールド壁内面が、
下端から
高さ0.2H
の位置から上端まで
の直線領域であって、0.1度から120度の範囲の角度を有する屈曲を含まない直線領域;および
下端と
下端から高さ0.2Hの位置の間にあり、210度から360度の範囲の角度を有する屈曲を含まない移行部
を含
む、
PVDチャンバ。
【請求項2】
下部シールドが、少なくとも2つの本体部分を含むモジュール式チャンバ本体によって取り囲まれている、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項3】
少なくとも2つの本体部分が、中間チャンバ本体および下部チャンバ本体を含み、中間チャンバ本体は、下部チャンバ本体の上に配置される、請求項2に記載のPVDチャンバ。
【請求項4】
中間チャンバ本体の上方に配置され、上部シールドを取り囲む上部アダプタと、a)中間チャンバ本体および下部チャンバ本体の1つまたは複数とb)下部シールドとの間に配置される下部シールドライナーとをさらに備える、請求項3に記載のPVDチャンバ。
【請求項5】
下部シールドに隣接する1つまたは複数の加熱要素をさらに備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項6】
下部シールドの下方に配置されたカバーリングであって、上部シールドの方を向かない側壁を画定する周囲リップを含むカバーリングをさらに備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項7】
粒子を捕捉するように構成された、下部シールドに隣接する電圧粒子トラップをさらに備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項8】
上部シールドの上方に配置された温度センサをさらに備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項9】
温度センサが赤外線センサおよびシールドを含む、請求項8に記載のPVDチャンバ。
【請求項10】
1つまたは複数の加熱要素が、(a)下部シールドの周りに周方向に配置された複数のランプ、または(b)下端に隣接して配置されたリングヒータの1つまたは複数を含む、請求項5に記載のPVDチャンバ。
【請求項11】
下部シールド上の粒子を捕捉するように構成された、下部シールドに隣接する電圧粒子トラップをさらに備える、請求項5に記載のPVDチャンバ。
【請求項12】
赤外線センサおよびシールドを含む、上部シールドの上方に配置された温度センサをさらに備える、請求項5に記載のPVDチャンバ。
【請求項13】
PVDチャンバ内に基板を配置することであって、PVDチャンバが、複数のカソードアセンブリ、複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する、複数のカソードアセンブリの下方の上部シールド、ならびに上部シールドの下方の下部シールドを備え、下部シールドが、上部シールドに接する上端と、上端の反対側の下端と、
下端から
上端までの高さ「H」および下部シールド壁内面を有する下部シールド壁と、を含み、下部シールド壁内面は、
下端から高さ
0.2H
の位置から上端まで
の直線領域であって、0.1度から120度の範囲の角度を有する屈曲を含まない直線領域、および下端と
下端から高さ0.2Hの位置の間にあり、210度から360度の範囲の角度を有する屈曲を含まない移行部を含
む、PVDチャンバ内に基板を配置することと、
下部シールドに隣接して配置された1つまたは複数の加熱要素で下部シールドを加熱することと
を含む、材料層を堆積させる方法。
【請求項14】
下部シールドに隣接して取り付けられた粒子トラップを利用して、下部シールド上の粒子を捕捉することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して基板処理システムに関し、具体的には、処理中に粒子を低減しかつ温度を制御するための1つまたは複数の特徴を有する複数のカソードアセンブリ(マルチカソード)を有する堆積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物理的気相堆積(PVD)と代替的に呼ばれるスパッタリングは、半導体集積回路の製造において金属および関連材料の堆積のために使用される。スパッタリングの使用は、ビアまたは他の垂直相互接続構造といった高アスペクト比の孔の側壁上に金属層を堆積するため、並びに極紫外(EUV)マスクブランクの製造において拡大した。EUVマスクブランクスの製造においては、粒子が最終製品の性質に悪影響を与えるため、粒子発生の最小化が望ましい。
【0003】
プラズマスパッタリングは、DCスパッタリングまたはRFスパッタリングを使用して達成することができる。プラズマスパッタリングは通常、磁気ヨークを通して背後で磁気的に結合された2つの反対の極の磁石を含む、スパッタリングターゲットの裏側に位置決めされたマグネトロンを含み、処理空間の中に磁場を投射し、プラズマ密度を高め、ターゲットの前面からのスパッタリング速度を上昇させる。マグネトロンに使用される磁石は、典型的には、DCスパッタリングのための閉ループおよびRFスパッタリングのための開ループである。
【0004】
物理的気相堆積(PVD)チャンバなどのプラズマ強化基板処理システムでは、高磁場および高DC電力を用いる高出力密度PVDスパッタリングが、スパッタリングターゲットに高エネルギーを生成し、スパッタリングターゲットの表面温度の大きな上昇を引き起こすことができる。スパッタリングターゲットは、ターゲットのバッキング板を冷却流体に接触させることによって冷却される。通常、商業的に実施されるプラズマスパッタリングでは、スパッタ堆積される材料のターゲットは、コーティングされるウエハを含む真空チャンバに密封される。アルゴンがチャンバに導入される。チャンバの壁またはシールドを接地させたままターゲットに数百ボルトの負のDCバイアスを印加すると、アルゴンが励起されてプラズマが形成される。正に帯電したアルゴンイオンは、高エネルギーで負にバイアスされたターゲットに引き付けられ、ターゲットからターゲット原子をスパッタする。
【0005】
PVDチャンバ設計は進歩したが、粒子などの欠陥源を低減し、PVDチャンバ、特に下部シールドの温度制御を改善し、チャンバ内において望ましくない粒子を捕捉する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
複数のカソードアセンブリと、複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する複数のカソードアセンブリの下方の上部シールドと、上部シールドの下方の下部シールドとを含む物理的気相堆積(PVD)チャンバが提供される。下部シールドは、上部シールドに接触する上端と、上端の反対側の下端と、上端から下端に延びる高さ「H」および下部シールド壁内面を備える下部シールド壁とを有する。下部シールド壁内面は、上端から約0.8Hに延びる直線領域を有し、直線領域は、下部シールド壁内面上に、約0.1度から約120度の範囲、および約210度から約360度の範囲の角度を有する屈曲を有さない。
【0007】
第2の態様によれば、複数のカソードアセンブリと、複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する複数のカソードアセンブリの下方の上部シールドと、上部シールドの下方の下部シールドであって、上部シールドと接触する上端、上端と反対側の下端、および上端から下端に延びる高さ「H」を備える下部シールド壁を有する下部シールドと、下部シールドに隣接する1つまたは複数の加熱要素とを含むPVDチャンバが提供される。
【0008】
第3の態様によれば、材料層を堆積させる方法が提供される。この方法は、複数のカソードアセンブリ、複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する複数のカソードアセンブリの下方の上部シールド、ならびに上部シールドの下方の下部シールドであって、上部シールドに接する上端と、上端の反対側の下端と、上端から下端に延びる高さ「H」および上端から約0.8Hに延びる直線領域を有する下部シールド壁内面を備える下部シールドとを含むPVDチャンバ内に基板を配置することを含み、ここで、直線領域は、下部シールド壁内面上に、約0.1度から約120度の範囲、および約210度から約360度の範囲の角度を有する屈曲を有さない。方法は、下部シールドに隣接して配置された1つまたは複数の加熱要素で下部シールドを加熱することも含む。
【0009】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された本開示のより詳細な説明が、実施態様を参照することによって得られ、それらの実施態様の一部は添付図面に示されている。しかし、添付の図面は本開示の典型的な実施態様のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なすべきではなく、本開示は他の等しく有効な実施態様も許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】先行技術による堆積システムの側面図である。
【
図2】1つまたは複数の実施態様によるPVDチャンバの側面図である。
【
図3】
図2に示されるPVDチャンバの一部分の拡大側面図である。
【
図4】1つまたは複数の実施態様による下部シールドライナーに隣接する加熱要素を備えたPVDチャンバの代替的実施態様である。
【
図6】1つまたは複数の実施態様による下部シールドに隣接する電圧粒子トラップを示している。
【
図7】1つまたは複数の実施態様による下部チャンバ本体とセラミックスペーサの部分等角図を示している。
【
図8】1つまたは複数の実施態様による、上部シールド上方に配置された温度センサを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のいくつかの例示的な実施態様を記載する前に、本開示が、以下の説明で提示される構成または処理ステップの詳細に限定されないということを理解されたい。本開示は、他の実施態様が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「基板」は、プロセスが作用する表面または表面の一部分を指す。これも当業者であれば理解するように、基板に対して言及がなされるとき、文脈上明らかに矛盾しない限り、基板の一部分のみを指すこともありうる。加えて、基板上への堆積に対して言及がなされるとき、それは、ベア基板と、1つまたは複数の膜またはフィーチャが上部に堆積または形成された基板との両方を意味しうる。
【0013】
ここで使用される「基板」は、製造プロセスの間にその上で膜処理が実施される、任意の基板または基板上に形成された材料の表面を指す。例えば、その上で処理を実施することのできる基板表面は、用途に応じて、シリコン、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、金属、金属窒化物、金属合金、およびその他の導電材料などの他の任意の材料を含む。基板には、限定されないが、半導体ウエハが含まれる。基板は、基板表面を研磨し、エッチングし、還元し、酸化し、ヒドロキシル化し、アニールし、UV硬化させ、電子ビーム硬化させ、かつ/またはベークするために、前処理プロセスに曝すことができる。基板自体の表面上で直接膜処理することに加えて、本開示では、開示される膜処理工程のいずれかが、以下でより詳細に開示される基板上に形成される下層にも実施することができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、このような下層を含むことが意図されている。ゆえに、例えば、膜/層または部分的な膜/層が基板表面上に堆積されている場合、新たに堆積される膜/層の露出表面が基板表面となる。
【0014】
ここで使用される「水平」という用語は、その配向に関係なく、マスクブランクの平面または表面に平行な平面と定義される。「垂直」という語は、前文で定義された水平に対して直角の方向を指す。例えば「上方」、「下方」、「底部)」、「上部」、「側(方)(「側壁」等における)」、「高い」、「低い」、「上部」、「上」、「下)」といった用語は、図に示される水平面に対して定義される。
【0015】
「の上(on)」という語は、要素間に直接の接触があることを示す。「直接~に(directly on)」という表現は、介在する要素がない要素間の直接の接触を示す。
【0016】
当業者であれば、処理領域を説明するための「第1」および「第2」といった序数の使用が、処理チャンバ内部での具体的な場所、または処理チャンバ内部での露出の順序を示唆するものではないことを理解するであろう。
【0017】
本開示の実施態様は、堆積システム、例えば、少なくとも1つのカソードアセンブリを備える物理的気相堆積(「PVD」)チャンバに関し、特定の実施態様では、複数のカソードアセンブリを備えるPVDチャンバ(ここでは「マルチカソードチャンバ」と呼ぶ)のための磁石設計に関する。
【0018】
図1は、従来技術の堆積システムを示し、PVDチャンバ100の形態の堆積システムの一部分の側面図が示されている。PVDチャンバの形態の堆積システムは、複数のカソードアセンブリ102を含むマルチカソードPVDチャンバ100として示されている。図示のマルチカソードPVDチャンバ100は、MRAM(磁気抵抗ランダムアクセスメモリ)を製造するように構成されたマルチターゲットPVD源、または極紫外(EUV)マスクブランクを製造するように構成されたマルチターゲットPVD源を含んでいる。
【0019】
マルチカソードPVDチャンバは、チャンバ本体101を備え、複数のカソードアセンブリ102を離間した関係で適所に保持するように構成されたアダプタ(図示せず)を備える。いくつかの実施態様において、マルチカソードPVDチャンバ100は、PVDおよびスパッタリングのための複数のカソードアセンブリ102を含む。カソードアセンブリ102の各々は、直流電流(DC)または高周波(RF)を含む電源112に接続される。
【0020】
この断面図は、基板またはキャリヤが処理される内部容積121を画定するチャンバ本体101を含む、PVDチャンバ100の一実施例を示す。
【0021】
図1に示される実施態様のカソードアセンブリ102は、いくつかの実施態様では、材料層103としての異なる材料をスパッタリングするために使用される。カソードアセンブリ102は、回転ペデスタル110上の基板またはキャリヤ108の上に配置された上部シールド106のシールド孔104を通して露出している。一般に、回転ペデスタル110の上方または上にあるキャリヤ108は1つだけであってよい。
【0022】
図示の基板またはキャリヤ108は、集積回路の製造に使用される半導体材料を有する構造である。例えば、基板またはキャリヤ108は、ウエハを含む半導体構造を含む。代替的に、いくつかの実施態様の基板またはキャリヤ108は、EUVマスクブランクを形成するために使用される超低膨張ガラス基板などの別の材料である。基板またはキャリヤ108は、円形、正方形、長方形、または他のいずれかの多角形などといった任意の適切な形状とすることができる。
【0023】
上部シールド106はシールド孔104を有するように形成され、いくつかの実施態様では、カソードアセンブリ102が、シールド孔104を通して材料層103を堆積させるために使用される。電源112はカソードアセンブリ102に適用される。いくつかの実施態様における電源112は、直流電流(DC)または高周波(RF)電源を含む。
【0024】
上部シールド106は、一度にカソードアセンブリ102の1つを露出させ、他のカソードアセンブリ102を相互汚染から保護するように構成される。相互汚染は、カソードアセンブリ102の1つからカソードアセンブリ102のうちの別の1つへの堆積材料の物理的な移動または転移である。カソードアセンブリ102はターゲット114の上に配置される。いくつかの実施態様ではチャンバの設計はコンパクトである。いくつかの実施態様のターゲット114は任意の適切なサイズである。例えば、いくつかの実施態様におけるターゲット114の各々は、約4インチから約20インチ、または約4インチから約15インチ、または約4インチから約10インチ、または約4インチから約8インチ、または約4インチから約6インチの範囲の直径である。
【0025】
図1において、基板またはキャリヤ108は回転ペデスタル110上にあり、これはいくつかの実施態様では垂直に上下に移動する。基板またはキャリヤ108がチャンバの外に移動する前に、いくつかの実施態様における基板またはキャリヤ108は、下部シールド118の下に移動する。伸縮式カバーリング120は、下部シールド118に当接する。次いで、いくつかの実施態様では回転ペデスタル110が下降し、次いでキャリヤ108が、チャンバの外に移動する前にロボットアームで持ち上げられる。
【0026】
材料層103がスパッタされるとき、いくつかの実施態様では、ターゲット114からスパッタされた材料は、下部シールド118の、外側でなく内側に保持される。この従来技術の実施態様では、伸縮式カバーリング120は、上方に湾曲した、所定の厚さを有する上昇リング部分122を含む。いくつかの実施態様における伸縮式カバーリング120は、下部シールド118に対して所定の間隙124および所定の長さを含む。したがって、材料層103を形成する材料は、回転ペデスタル110の下にいくことはなく、よって汚染物質が基板またはキャリヤ108に広がることはない。
【0027】
図1は、個々のシュラウド126を示す。いくつかの実施態様におけるシュラウド126は、キャリヤ108上に堆積しないターゲット114からの材料の大部分がシュラウド126内に含まれるように設計され、よって材料の再生および保存を容易にする。これはまた、ターゲット114の各々のシュラウド126の1つを、そのターゲットに対して最適化することができ、より良好な接着および欠陥の低減を可能にする。
【0028】
いくつかの実施態様において、シュラウド126は、カソードアセンブリ102間のクロストークまたはクロスターゲット汚染を最小化し、カソードアセンブリ102の各々について捕捉される材料を最大化するように設計される。したがって、カソードアセンブリ102の各々からの材料は、上にカソードアセンブリ102が位置決めされるシュラウド126の1つによって個々にうまく捕捉されるであろう。捕捉される材料は、基板またはキャリヤ108上に堆積されなくてもよい。例えば、いくつかの実施態様の第1のカソードアセンブリおよび第2のカソードアセンブリは、極紫外マスクブランクの形成において、例えば、第1のターゲットおよびカソードアセンブリ102から堆積されたシリコンと、第2のターゲットおよびカソードアセンブリ102からのモリブデンとの交互層といった、異なる材料の交互層を適用する。
【0029】
いくつかの実施態様の基板またはキャリヤ108は、シュラウド126上のターゲット114からの金属を含む堆積材料を使用して基板またはキャリヤ108の表面上に堆積された均一な材料層103でコーティングされる。その後、シュラウド126は、回収プロセスに供される。回収プロセスは、シュラウド126を洗浄するだけでなく、シュラウド126上またはシュラウド内に残留した堆積材料の残留量を回収する。例えば、シュラウド126の1つの上にモリブデンがあってもよく、そのときシュラウド126のうちの別のものの上にケイ素があってもよい。モリブデンはケイ素よりも高価であるので、モリブデンを有するシュラウド126は、回収プロセスのために送り出される。
【0030】
図1に示されるように、下部シールド118には、小さな角度130から生じる第1の湾曲部と、大きな角度132から生じる第2の湾曲部とが設けられ、その結果下部シールド118に膝部119が生じる。この膝部119は、堆積中に粒子が蓄積しうるエリアを提供し、したがって処理の欠陥源である可能性がある。
【0031】
図2は、本開示の第1の実施態様によるPVDチャンバ200を示す。PVDチャンバ200は、複数のカソードアセンブリ202を含む。上部シールド206は、複数のカソードアセンブリ202の下に設けられ、カソードアセンブリをチャンバの内部空間221に露出させるための1つまたは複数のシールド孔204を有する(明確にするために、1つのシールド孔204のみが
図2に示されている)。下部シールド218は、上部シールド206の下方に同シールドに隣接して設けられている。
【0032】
図2にはモジュール式チャンバ本体が開示されており、図では、中間チャンバ本体225が、下部チャンバ本体227の上方に同チャンバ本体に隣接して配置されている。中間チャンバ本体225は、下部チャンバ本体227に固定されて、下部シールド218を取り囲むモジュール式チャンバ本体を形成する。下部シールドライナー223は、下部シールド218と同じ全体の輪郭を維持し、中間チャンバ本体225および下部チャンバ本体227(すなわち、モジュール式チャンバ本体)と下部シールド218との間に配置されて、下部シールド218も取り囲んでいる。上部アダプタ273(
図8に示される)は、中間チャンバ本体225の上方に配置されて、上部シールド206を取り囲んでいる。
【0033】
PVDチャンバ200にも、
図1の回転ペデスタル110と同様の回転ペデスタル210が設けられている。当業者であれば、PVDチャンバの他の構成要素、例えば、
図1で上述したが明瞭性のために
図2では省略したものが、1つまたは複数の実施態様によるPVDチャンバ200内に設けられていることを容易に理解するであろう。
【0034】
PVDチャンバ200において、カバーリング220は、上部シールド206の方を向かない側壁247を画定する周囲リップを備えているが、
図1のカバーリング120は、隆起したリング部分122を備え、したがって上方に向いた側壁(すなわち、上部シールド106に向かう側壁)を有する。さらに、
図2に示されるように、PVDチャンバ200には、底部ライナー231および堆積リング229が設けられている。堆積リング229は、カバーリング220と回転ペデスタル210との間の間隙を架橋して、堆積材料がその間に入ることを防ぐ。
【0035】
下部シールド218は、上部シールド206に接触する上端239と、上端239の反対側の下端241とを備えている。下部シールド218の下部シールド壁243は、
図2に示すように、上端239から下端241に延び、高さHを有する。下部シールド壁243は、屈曲または湾曲をまったく有さない直線領域244を有する下部シールド壁内面245を含み、これは粒子の収集を最小化する。したがって、下部シールド壁内面245は、シールド上への粒子の蓄積を最小化する実質的に直線である輪郭を有する。この直線領域244は、これも
図2に示されるように、図示の実施態様では、上端239から0.8Hまで延びている。したがって、いくつかの実施態様では、下部シールド218は、下部シールドの高さの約50%から約90%の範囲(0.5Hから0.9H)、高さの約60%から約90%の範囲(0.6Hから0.9H)、高さの約70%から約90%の範囲(0.7Hから0.9H)、高さの約75%から約90%の範囲(0.75Hから0.9H)で、高さの約80%から約90%の範囲(0.8Hから0.9H)、または高さの約85%から約90%の範囲(0.85Hから0.9H)に延びる下部シールド内壁面245を含む。下部シールド壁内面245のこの直線領域244は、一部の実施態様では、約0.1度から約120度の範囲、および約210度から約360度の範囲の角度を有する屈曲を有さない。例えば、いくつかの実施態様では、角度233は、約150度から約175度の範囲、例えば約160度から約170度の範囲である。
【0036】
限定ではなく例示の目的で、1つまたは複数の実施態様による下部シールド壁内面245は、約91度から約120度の範囲、例えば約100度から約110度の範囲の角度235を提供する移行部を有する。マスクブランクの平面または表面に平行な基準線と、下部シールドライナー223の外面とによって形成される角度237は、約89度から約65度の範囲、例えば約85度から約73度の範囲である。これらの例示的な範囲外の角度233、235、および237が得られる他の寸法を提供してもよいが、
図1の膝部119のような膝部を形成する下部シールド壁内面245の直線領域244に屈曲または鋭い湾曲はない。直線領域に屈曲または鋭い湾曲を有さない1つまたは複数の実施態様による設計は、粒子の収集を回避し、それによりチャンバ内での物品の製造における欠陥源を最小化する。
【0037】
1つまたは複数の実施態様は、PVDチャンバの温度制御を提供する。
図3に示されるように、下部チャンバ本体227には冷却剤チャンネル249が設けられており、熱電対251(例えば、1つまたは複数のK型熱電対)の形態の温度測定装置が中間チャンバ本体225から下部シールドライナー223に向かって延びて、下部シールドライナー223に接触するか、またはそうでないとしても下部シールドライナー223の温度を正確に測定するように位置決めされる。熱電対251は、コントローラ260と電子通信する。冷却剤チャネル249は、冷却剤供給部およびバルブ250と流体連結しており、バルブ250は、熱電対251から得られた温度読み取り値および自動温度制御スキーム(例えば、フィードバック温度制御ループ)に基づいてバルブを開閉するための制御信号を送信するコントローラ260と通信している。1つまたは複数の実施態様では、冷却剤は、流体、例えば水などの液体冷却剤である。
【0038】
図3は、
図2に示されるチャンバ200の右側の部分側面図を示す。この特定の実施態様では、いくつかの実施態様では加熱ランプ253である加熱要素は、中間チャンバ本体225内部に収納される。他の実施態様では、加熱要素は、抵抗加熱要素のような他のタイプの加熱要素である。下部シールド218(
図2に示される)に隣接する中間チャンバ本体225で収容される加熱ランプ253は、チャンバ200、特に下部シールド218に隣接する領域に、温度制御を提供するためのものである。いくつかの実施態様では、チャンバを加熱するために下部シールドに隣接して複数の加熱要素が存在するように、複数の加熱要素が中間チャンバ本体225の周囲に設けられる。いくつかの実施態様における複数の加熱要素は、任意の適切な数の加熱要素を含む。例えば、いくつかの実施態様では、加熱ランプ253のような4つの加熱要素が、下部シールド218の均一な加熱を提供するために、中間チャンバ本体225の周囲に約90度毎に提供される。いくつかの実施態様における複数の加熱要素は、いくつかの実施態様によれば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個の加熱要素を含む。1つまたは複数の実施態様では、中間チャンバ本体225は、加熱ランプからの熱が下部シールドライナー223上に導かれるための直接経路を提供するように適合されている。いくつかの実施態様におけるコントローラ260は、熱電対251から受け取られた信号と、加熱ランプからの信号とを受け取りかつ加熱ランプに信号を送る自動温度制御スキームとに基づいて、加熱ランプをオンおよびオフにする。
【0039】
いくつかの実施態様では、ランプ253の代替として、またはそれに対する補足として、加熱コイル257または他の抵抗ヒータといった加熱要素を備えるリングヒータ255が、
図4に示すように、下部シールド218に隣接して、例えば下部シールドライナー223の底部周辺に沿って配置される。
図5に示すように、リングヒータ255は加熱コイル257を介して加熱されるが、他の加熱要素を使用してもよい。いくつかの実施態様における加熱コイル257は、熱電対251から得られる出力に基づいて、加熱コイルをオンにするか、または加熱コイルへの電力を増加させるために、コントローラ260によって同様に制御される。
【0040】
1つまたは複数の実施態様では、
図6に示されるように、チャンバ200は、中間チャンバ本体225内部に収納された電圧トラップ259を含む。電圧源(図示せず)は、導管261を介し、リード265に沿ってヘッド263に印加される。リード265は、下部シールドライナー223に直接、または1つまたは複数の裸線(図示せず)を介して接続され、下部シールドライナー223に電圧を供給し、これにより下部シールドライナー223は印加された電荷により粒子を捕捉する。リード265は、中間チャンバ本体225または下部チャンバ本体227に接触しない。
図6にさらに示されるように、下部チャンバ本体227は、下部チャンバ本体227が下部シールドライナーと係合する位置にセラミックスペーサ270を備え、下部チャンバ本体227と中間チャンバ本体225とを下部シールドライナー223に印加される電荷から絶縁する。
【0041】
いくつかの実施態様における電圧トラップは、例えば約50Vから約1000Vの間の、正および/または負の電位を印加して、基板に向かって移動する正または負に荷電した自由流動粒子を引きつける。
【0042】
図7は、下部チャンバ本体227とセラミックスペーサ270の部分等角図を示す。いくつかの実施態様では、セラミックスペーサ270または他の非導電性スペーサが、必要に応じて下側チャンバ本体227および/または中間チャンバ本体225に設けられ、下部シールドライナー223に印加された電荷をこれらのモジュール式チャンバ構成要素から絶縁する役割を果たす。
【0043】
図8は、上部シールド106の上方に、上部アダプタ273を通して配置された温度センサ267の形態の第2の温度測定装置を含むチャンバ200の一部分を示す。温度センサ267は、吸収体シールド271の上方に位置決めされた赤外線センサ269を採用している。1つまたは複数の実施態様による赤外線センサは、温度を測定する赤外線カメラを備える。
【0044】
いくつかの実施態様では、1つのコントローラ260を利用して、基板の装填、堆積条件、カソードアセンブリへの電力、ならびにここに記載される温度制御および電圧トラップを含むチャンバ200の動作を制御する。他の実施態様では、2つ以上のコントローラが提供される。例えば、いくつかの実施態様では、第1のコントローラが、堆積条件およびカソードアセンブリへの電力を別々に制御し、第2のコントローラが、温度および電圧トラップを制御する。他の実施態様では、第3のコントローラが、電圧トラップの機能を個別に制御する。2つ以上のコントローラが存在するとき、コントローラの各々は、チャンバ200の全体的な機能を制御するために、他のコントローラの各々と通信する。例えば、複数のコントローラが利用されるとき、一次制御プロセッサは、システムを制御するために、他のコントローラの各々に結合され、それらと通信する。コントローラは、任意の形態の汎用コンピュータプロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサなどの1つであり、いくつかの実施態様では、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するために工業環境で使用される。ここで使用される「通信」するとは、いくつかの実施態様では、コントローラが、ハードワイヤード通信線を介してまたは無線で、信号を送受信することを意味する。
【0045】
いくつかの実施態様における各コントローラは、プロセッサと、プロセッサに連結されたメモリと、プロセッサに連結された入力/出力デバイスと、異なる電子構成要素間の通信を提供するためのサポート回路とを備える。メモリは、一過性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ)および非一過性メモリ(例えば、ストレージ)のうちの1つまたは複数を含み、プロセッサのメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、または任意の他の形式のデジタルストレージ、ローカルまたはリモートなどの容易に利用可能なメモリの1つまたは複数とすることができる。いくつかの実施態様では、メモリは、システムのパラメータおよび構成要素を制御するためにプロセッサによって動作可能な命令セットを保持する。サポート回路は、従来の方式でプロセッサをサポートするためにプロセッサに連結される。回路は、例えば、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含むことができる。
【0046】
処理は、一般に、プロセッサによって実行されると、プロセスチャンバに本開示の処理を実施させるソフトウェアルーチンとしてメモリに記憶することができる。ソフトウェアルーチンはまた、プロセッサによって制御されるハードウェアから遠隔に位置する第2のプロセッサによって記憶および/または実行することもできる。1つまたは複数の実施態様では、本開示の方法の一部または全部が、制御されたハードウェアである。したがって、処理は、ソフトウェアによって実装され、ハードウェア内において、特定用途向け集積回路或いは他の種類のハードウェア実装として、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせとして、コンピュータシステムを使用して実行される。ソフトウェアルーチンは、プロセッサによって実行されると、汎用コンピュータを、処理が実行されるようにチャンバ動作を制御する特定用途コンピュータ(コントローラ)に変換する。
【0047】
いくつかの実施態様では、コントローラは、方法を実施するために個々のプロセスまたはサブプロセスを実行するための1つまたは複数の構成を有する。いくつかの実施態様では、コントローラは、方法の機能を実施するために中間構成要素に接続されて、同中間構成要素を動作させるように構成される。例えば、コントローラは、バルブ(例えば、冷却剤チャンネルへのバルブ)、加熱要素、アクチュエータ、モータなどの1つまたは複数に接続され、これを制御するように構成される。
【0048】
ここに記載されるチャンバ200アセンブリは、極紫外(EUV)マスクブランクの製造に特に有用でありうる。EUVマスクブランクは、マスクパターンを有する反射マスクを形成するために使用される光学的に平坦な構造である。1つまたは複数の実施態様では、EUVマスクブランクの反射面が、極紫外光などの入射光を反射させるための平坦な焦点面を形成する。EUVマスクブランクは、EUVレチクルなど極紫外線反射素子に構造的支持を提供する基板を含む。1つまたは複数の実施態様では、基板は、温度が変化する間の安定性を付与するために、低い熱膨張係数(CTE)を有する材料から作製される。1つまたは複数の実施態様による基板は、ケイ素、ガラス、酸化物、セラミック、ガラスセラミック、またはこれらの組み合わせといった材料から形成される。
【0049】
EUVマスクブランクは、極紫外光に反射性の構造である多層スタックを含む。多層スタックは、第1の反射層と第2の反射層の交互反射層を含む。第1の反射層および第2の反射層は、反射対を形成する。非限定的な実施態様では、多層スタックは、20~60個の範囲の反射ペア、合計で最大120個の反射層を含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、第1の反射層および第2の反射層は様々な材料から形成される。一実施態様では、第1の反射層と第2の反射層はそれぞれ、ケイ素およびモリブデンから形成される。多層スタックは、ブラッグリフレクタまたはミラーを形成するために異なる光学特性を有する材料の薄層を交互に有することによって、反射性構造を形成する。例えばモリブデンとケイ素の交互層は、例えばマルチカソード源チャンバ内で物理的気相堆積によって形成される。
【0051】
ここに記載されるPVDチャンバ200は、多層スタック、ならびにキャッピング層および吸収層を形成するために利用される。例えば、いくつかの実施態様における物理的気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、ルテニウムタングステン、ルテニウムモリブデン、ルテニウムニオブ、クロム、タンタル、窒化物、化合物の層、またはこれらの組み合わせの層を形成する。いくつかの化合物を酸化物として記載したが、いくつかの実施態様における化合物には、酸化物、二酸化物、酸素原子を有する原子混合物、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0052】
したがって、特定の実施態様では、ここに記載されるチャンバ200のいずれかを利用して、上部および下部シールドを備えるPVDチャンバ内に基板を配置することと、下部シールドに隣接して配置された複数の加熱要素で下部シールドを加熱することとを含む方法を実施する方法が提供される。1つまたは複数の実施態様では、基板は、EUVレチクルなどの極端紫外線反射素子に構造的支持を提供する。1つまたは複数の実施態様では、基板は、温度が変化する間の安定性を付与するために、低い熱膨張係数(CTE)を有する材料から作製される。チャンバは、ここに記載される温度センサ267および/または熱電対をさらに備えることができる。チャンバは、ここに記載されるランプおよび/またはリングヒータといった1つまたは複数の加熱要素をさらに備えることができる。チャンバはコントローラ260を備え、これは下部シールド218に隣接する温度を制御するための統合制御スキームを実装することができる。
【0053】
したがって、一実施態様では、温度測定デバイス(例えば、温度センサ267および/または熱電対251)、および1つまたは複数の加熱要素(例えば、リングヒータ、および/または下部シールド218に隣接する)と通信するコントローラ260を備えるPVDチャンバ200が提供される。コントローラは、温度測定装置(例えば、温度センサ267および/または熱電対251)、加熱要素(例えば、リングヒータ255および/またはランプ253)の1つと通信する。いくつかの実施態様では、コントローラ260は、冷却剤チャネル249と流体連結しているバルブ250と通信している。したがって、1つまたは複数の実施態様では、コントローラ260は、下部シールド218に隣接する温度を制御するように構成される。一実施態様では、コントローラは、1つまたは複数の温度測定装置から温度信号を受け取り、コントローラ260のメモリから通信されうる温度設定値信号に応答して加熱要素が起動されて、下部シールドに隣接する温度を上昇させ、その上に材料層を形成する基板の処理の間の、PVDチャンバ200内での温度制御を改善する。いくつかの実施態様では、加熱要素は、温度を上昇させるか、または温度を低下させる信号を受信する。1つまたは複数の実施態様では、コントローラは、冷却剤チャネル249を通して冷却剤流体を流し、下部シールドに隣接する温度を低下させるために、冷却剤チェンジ249と流体連結するバルブ250に信号を送るように構成される。
【0054】
1つまたは複数の実施態様では、コントローラ260(または別個のコントローラ)は、電圧トラップ259と通信する。したがって、1つまたは複数の実施態様において、上部シールドおよび下部シールドを含むここに記載されるPVDチャンバのいずれもが、電圧トラップ259に制御信号を送るように構成されたコントローラ260を含み、これにより、下部シールド218上に粒子が捕捉されて、欠陥を生じさせうる粒子が基板上に堆積しないように電圧トラップ259が作動される。このような実施態様は、上述のEUVマスクブランクの処理において特に有用である。
【0055】
特定の方法の実施態様では、材料層を堆積させる方法は、PVDチャンバ内に基板を配置することであって、PVDチャンバが、複数のカソードアセンブリ、複数のカソードアセンブリの1つを露出させるためのシールド孔を有する複数のカソードアセンブリの下方の上部シールド、ならびに上部シールドの下方の下部シールドであって、上部シールドに接する上端、上端の反対側の下端、上端から下端に延びる高さ「H」と上端から約0.8Hに延びる直線領域とを有する下部シールド壁内面を備える下部シールドを含み、ここで直線領域は、下部シールド壁内面上に、約0.1度から約120度の範囲、および約210度から約360度の範囲の角度を有する屈曲を有さない、PVDチャンバ内に基板を配置することと、下部シールドに隣接して配置された複数の加熱要素で下部シールドを加熱することとを含む。いくつかの実施態様における加熱することは、コントローラと通信する、ここに記載される加熱ランプおよびまたは加熱リングによって提供される。本方法は、下部シールドに隣接して取り付けられた粒子トラップを利用して、下部シールド上の粒子を捕捉することをさらに含むことができる。本方法は、いくつかの実施態様では、モリブデンを含む第1の層とケイ素を含む第2の層とを含む複数の交互材料層を堆積させることをさらに含む。この方法は、EUVマスクブランクを形成するために、キャッピング層(例えばルテニウム)、キャッピング層の上の吸収層および反射防止層を堆積させることをさらに含むことができる。
【0056】
直前に記載された1つまたは複数の方法の実施態様では、下部シールドは、少なくとも2つの本体部分を備えるモジュール式チャンバ本体によって取り囲まれる。本方法の特定の実施態様では、少なくとも2つの本体部分は、中間チャンバ本体および下部チャンバ本体を含み、中間チャンバ本体は、下部チャンバ本体の上に配置される。さらに詳細な実施態様では、この方法の実施態様に使用されるチャンバは、中間チャンバ本体の上方に配置され、上部シールドを取り囲む上部アダプタと、a)中間チャンバ本体および下部チャンバ本体の1つまたは複数とb)下部シールドとの間に配置される下部シールドライナーとをさらに備える。
【0057】
この明細書全体を通じての、「一実施態様」、「一部の実施態様」、「1つまたは複数の実施態様」、または、「実施態様」に対する言及は、実施態様に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所での「1つまたは複数の実施態様において」、「一部の実施態様において」、「一実施態様において」、または「実施態様において」といった表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施態様を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施態様において任意の適切な方式で組み合わせることができる。
【0058】
ここでの開示は具体的な実施態様を参照して記載されているが、これらの実施態様が本開示の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の本質および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な修正および変形を行いうることが、当業者には明らかであろう。ゆえに、本開示は、特許請求の範囲およびその均等物に含まれる修正例および変形例を含むことが意図されている。