(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ガス生成方法およびエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230331BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2018186613
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】大参 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】安武 潔
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伊都子
(72)【発明者】
【氏名】林 久貴
(72)【発明者】
【氏名】福原 成太
(72)【発明者】
【氏名】大内 淳子
(72)【発明者】
【氏名】金高 秀海
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049283(JP,A)
【文献】特開平10-261498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングガスを生成する第1チャンバと、前記エッチングガスを用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備えたエッチング装置におけるガス生成方法であって、
前記第1チャンバへ炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスを供給し、前記第1チャンバ内の圧力をエッチング処理時における前記第2チャンバ内の圧力よりも高くし、 前記第1チャンバ内において、前記第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成し、
前記第2ガスをエッチングガスとして前記第2チャンバへ供給することを具備し、
前記第1ガスは、CmFn(m、nは正整数)を主に含み、
前記第2ガスは、CxFy(x、yは正整数)を主に含み、
少なくともx>mである、ガス生成方法。
【請求項2】
エッチングガスを生成する第1チャンバと、前記エッチングガスを用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備えたエッチング装置におけるガス生成方法であって、
前記第1チャンバへ炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスを供給し、前記第1チャンバ内の圧力をエッチング処理時における前記第2チャンバ内の圧力よりも高くし、 前記第1チャンバ内において、前記第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成し、
前記第2ガスをエッチングガスとして前記第2チャンバへ供給することを具備し、
前記第1ガスは、CmFn(m、nは正整数)を主に含み、
前記第2ガスは、CxFy(x、yは正整数)を主に含み、
x/y>m/nである、ガス生成方法。
【請求項3】
エッチングガスを生成する第1チャンバと、前記エッチングガスを用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備えたエッチング装置におけるガス生成方法であって、
前記第1チャンバへ炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスを供給し、前記第1チャンバ内の圧力をエッチング処理時における前記第2チャンバ内の圧力よりも高くし、 前記第1チャンバ内において、前記第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成し、
前記第2ガスをエッチングガスとして前記第2チャンバへ供給することを具備し、
前記第1ガスは、CF
4を主に含み、
前記第2ガスは、C
2F
2、C
2F
4、C
2F
6、C
3F
5、C
3F
6、C
4F
6、C
4F
8の少なくとも1つを主に含む、ガス生成方法。
【請求項4】
前記第1チャンバは、基板を搭載可能な第1電極と、前記第1ガスに電界を印加する第2電極とを備えており、
前記第1電極と前記第2電極の間を約0.5kW/cm
3以上の高周波電極密度に設定可能である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガス生成方法。
【請求項5】
エッチングガスを生成する第1チャンバと、前記エッチングガスを用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備えたエッチング装置におけるガス生成方法であって、
前記第1チャンバへ炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスを供給し、前記第1チャンバ内の圧力をエッチング処理時における前記第2チャンバ内の圧力よりも高くし、 前記第1チャンバ内において、前記第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成し、
前記第2ガスをエッチングガスとして前記第2チャンバへ供給することを具備し、
前記第1チャンバは、前記第1ガスに電界を印加する第1および第2電極を備え、
前記第2ガスの生成において、前記第1電極と前記第2電極との間にある前記第1ガスを電離させることによって前記第2ガスを生成し、
前記第1ガスは、CmFn(m、nは正整数)を主に含み、
前記第2ガスは、CxFy(x、yは正整数)を主に含み、
少なくともx≦mである、ガス生成方法。
【請求項6】
前記第1電極と前記第2電極の間を約5kW/cm
3以上の高周波電極密度に設定可能である、請求項5に記載のガス生成方法。
【請求項7】
炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成する第1チャンバと、
前記第2ガスをエッチングガスとして用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備え、
前記第2ガスの生成時における前記第1チャンバ内の圧力は、エッチング処理時における前記第2チャンバ内の圧力よりも高く、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に設けられ、前記第2ガスから不要なガスを取り除く、もしくは不要なガスも含む第2ガスから必要となるガス群を吸着・脱離して抽出する精製部をさらに備える、エッチング装置。
【請求項8】
前記第1チャンバは、基板を搭載可能な第1電極と、前記第1ガスに電界を印加する第2電極とを備えている、請求項7に記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記第1電極と対向する前記第2電極の対向面は略円形であり、
前記第2電極の前記対向面の直径は約10mmであり、
前記第1電極と前記第2電極との間の距離は約5mm以下である、請求項8に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ガス生成方法およびエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超大規模集積回路(ULSI)は、スケーリング則に基づいた微細化・高集積化を推し進めることでその性能を向上させてきた。ULSIの製造プロセスにはフォトリソグラフィー・成膜・化学機械研磨・エッチング等の工程があるが、特にエッチングプロセスにおいては非常に高精度な加工形状制御が求められており、プラズマによるRIE(Reactive Ion Etching)が重要な役割を担っている。近年の高集積化を実現するためには微細化(ウェハの平面方向の縮小)に加えて3次元化(厚さ方向の増大)が進んでおり、その結果として、エッチング形状の縦横比率、つまりアスペクト比の増大に対する対応が求められている。エッチング装置においては、エッチング処理に最適なエッチングガスを得るために、様々な種類のエッチングガスを所望の比率で混合して導入する必要がある。1980年代にはエッチングガスとしてCF4/CHF3混合ガスなどが用いられていたが、1990年代になるとc(cyclo)-C4F8やC4F6およびc-C5F8といった分子量が大きく、C/F比の大きなガスが開発され使用される傾向が強くなった。しかし、これらの有効なエッチングガスの中には、高価なガスもあり、あるいは、入手が困難なガスもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K. Fujita et al, Journal of Vacuum Science and Technology B, 17 (1999) 957.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アスペクト比の高いパターンを容易かつ低コストで形成可能とするガスの生成方法およびエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によるガス生成方法は、エッチングガスを生成する第1チャンバと、エッチングガスを用いてエッチング処理を行う第2チャンバとを備えたエッチング装置におけるガス生成方法である。第1チャンバへ炭素(C)およびフッ素(F)を含む第1ガスを供給し、第1チャンバ内の圧力をエッチング処理時における第2チャンバ内の圧力よりも高くする。第1チャンバ内において、第1ガスに高周波電力を印加して該第1ガスから炭素(C)およびフッ素(F)を含む第2ガスを生成する。第2ガスをエッチングガスとして第2チャンバへ供給する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態によるエッチング装置の構成例を示す概略断面図。
【
図2】第1実施形態によるガス生成方法の一例を示すフロー図。
【
図3】ソースガスCmFnのガス成分およびエッチングガスCxFyのガス成分のそれぞれの組成比を示すグラフ。
【
図4】高周波電力密度とソースガスの利用効率の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるエッチング装置1の構成例を示す概略断面図である。エッチング装置1は、ガス生成チャンバ10と、エッチングチャンバ20と、精製装置30とを備えている。
【0010】
第1チャンバとしてのガス生成チャンバ10は、第1電極としての接地電極11と、第2電極としてのカーボン電極12とを備えている。接地電極11は、基板W0を搭載可能なステージとして設けられている。基板W0は、例えばシリコン等を含む半導体基板であるが特に限定されない。
【0011】
カーボン電極12は、インピーダンスマッチング回路(図示せず)を介して高周波電源50に接続されており、接地電極11との間に高周波電力による電界を印加する。カーボン電極12は、高い印加電力による温度上昇に耐え、ガスと反応しても好ましくない半導体デバイスの汚染源となるような金属化合物などの副生成物を排出しない、高純度のカーボン製である。接地電極11に対向するカーボン電極12の対向面は、例えば、略円形であり、その直径は、例えば、約10mmである。接地電極11とカーボン電極12との間の間隙は、約5mm以下であり、好ましくは約1mm以下である。
【0012】
ガス生成チャンバ10には、ソースガス供給部40が配管P1を介して配管接続されている。ガス生成チャンバ10を真空排気系(図示せず)にて排気した後、ソースガス供給部40よりソースガスを導入して所望の圧力に保つ。ソースガス供給部40は、ガス生成チャンバ10へ導入されるソースガスCmFn(m、nは正整数)を主に格納するボンベである。第1実施形態では、ソースガス(第1ガス)は、炭素(C)およびフッ素(F)を含むCmFnであり、m値および比率m/nの比較的低い低次のPFCガスである。ソースガスCmFnは、例えば、主にCF4である。
【0013】
高周波電源50は、例えば、約200W以上の高周波電力を約13.56MHz~300MHzでカーボン電極12に印加する。またチャンバ10内の圧力を、1Torr以上、望ましくは10Torr以上として粒子の平均自由行程を短くすることで、電極12の先端近傍に局在プラズマを生成する。これにより、接地電極11とカーボン電極12との間の高周波電力密度を、約0.5kW/cm3以上にすることができ、好ましくは約3kW/cm3以上にすることができる。尚、高周波電源50の出力(電力)は、接地電極11とカーボン電極12との対向面積やそれらの間の距離に応じて変更し、高周波電力密度を約0.5kW/cm3以上にすることができ、好ましくは約3kW/cm3以上にすればよい。
【0014】
高圧力の接地電極11とカーボン電極12との間で放電状態を維持し、それらの間にあるガスを電離させる。即ち、ガス生成チャンバ10は、その内部のガスに高周波電力を印加することによって電離させ、プラズマ状態にする。これにより、ガス生成チャンバ10は、エッチングガスを生成する。
【0015】
ここで、ガス生成チャンバ10は、エッチング処理時におけるエッチングチャンバ20内の圧力よりも高い圧力のもとでソースガスCmFnを電離させ、プラズマ状態Dにする。例えば、エッチング処理時におけるエッチングチャンバ20内の圧力が10mTorr~100mTorrであるとすると、ガス生成チャンバ10内のソースガスCmFnの圧力は、20Torr~400Torrである。即ち、ガス生成チャンバ10内の圧力は、エッチングチャンバ20内の圧力よりも桁違いに高い。また、高周波電源50は、接地電極11とカーボン電極12との間の高周波電力密度を約0.5kW/cm3以上とする。このように高い圧力および高い電力密度のもとで、CF4のような低次のPFCガスを電離すると、解離反応だけでなく、合成反応も生じる。
【0016】
例えば、比較的低圧力のもとで誘導結合プラズマ(ICP(Inductively Coupled Plasma))、あるいは容量結合プラズマ(CCP(Capacitively Coupled Plasma))を用いてPFCガスを電離させた場合、CF4→CF3+F→CF2+2F→CF+3F→C+4Fのような解離反応が主に生じる。
【0017】
これに対し、本実施形態のように、比較的高圧力および高電力密度のもとで、低次のPFCガスを電離すると、高密度に生成されたラジカル間の衝突頻度が高いため、CF2+CF2→C2F4、CF2+CF2→C2F2+2F、CF2+CF3→C2F4+F、CF3+CF3→C2F6、C2F2+CF3→C3F5、C2F4+C2F4→C4F6+2F、C2F4+C2F4→C4F8等の合成反応も高い確率で生じる。即ち、比較的高圧力および高電力密度のもとで、CF4のような低次PFCガスを電離すると、C2F2、C2F4、C2F6、C3F5、C3F6、C4F6、C4F8等の少なくとも1つを主に含む高次PFCガス(第2ガス)を生成することができる。
【0018】
一般化すると、本実施形態によるエッチング装置1は、比較的高圧力および高電力密度のもとで、CmFn(m、nは正整数)を主に含むソースガスを電離して、CxFy(x、yは正整数)を主に含むエッチングガスを生成する。このとき、少なくともx>mであり、並びに/あるいは、x/y>m/nである。即ち、第2ガスとしてのエッチングガスは、第1ガスとしてのソースガスよりも高次のPFCガスとなる。ここでの高次とは、x>mであり、並びに/あるいは、x/y>m/nを示し、カーボンリッチな組成を有するPFCガスを意味する。
【0019】
高次ガスは、アスペクト比の高いパターンを形成するために必要となるが、希少で高価である。例えば、C4F8ガスの単価は、CF4ガスの単価よりも数倍高い。C4F6ガスの単価は、C4F8ガスの単価よりもさらに高い。
【0020】
しかし、本実施形態によれば、安価な低次ガスを主として含むソースガスを用いて、高価な高次ガスを主として含むエッチングガスを生成することができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑制しつつ、エッチングガスとして高次ガスを用いることができる。その結果、アスペクト比の高いパターンを低コストで形成することができる。
【0021】
図1を再度参照して、エッチング装置1の構成の説明を続ける。ガス生成チャンバ10において、電離したプラズマ状態のガスは活性状態であるので、前出のカーボン電極12と同様に、接地電極11との間に高周波電力による電界を印加したときにガスと反応しても悪影響を及ぼす恐れのない材質を選定する必要がある。例えば、接地電極11上に基板W0を載置して、接地電極11を保護する。この場合、基板W0が活性状態のガスに削られ、半導体の成分を含むガスが発生する。つまり、基板W0にシリコンを用いてかつCF
4ガスを電離させた場合、SiF
4が発生する。SiF
4は汚染などの悪影響を及ぼすことなく、エッチングプロセスに利用してもよいが、不要な場合は、精製装置30において除去できる。また、別の実施形態として、SiF
4が不要な場合はAl
2O
3やCの基板W0を接地電極11上に載置してもよい。それにより、放電による基板の消耗やSiF
4の発生を抑制することができる。
【0022】
精製装置30は、ガス生成チャンバ10から得られたエッチングガスに含まれる特定のガスを選択的に吸着するように選定される薬剤、例えば、ゼオライト等からなるフィルタ31を備えている。精製装置30は、配管P2を介してガス生成チャンバ10に配管接続されており、配管P3、P4を介してエッチングチャンバ20に配管接続されている。フィルタ31は、エッチングガスを分離・精製して所望のエッチングガスのみを通過させる。例えば、フィルタ31は、エッチングガスに含まれる比較的分子量の大きなSiF4ガスを選択的に吸着・除去し、つまり、このような不要なガスを取り除き(吸着して分離し)、所望のガス、すなわちSiF4よりも分子量の小さなエッチングガスを通過させる。
【0023】
エッチングチャンバ20は、エッチング処理の対象となる半導体基板W1を収容可能であり、精製装置30を介してガス生成チャンバ10から得られたエッチングガスを用いて、半導体基板W1をエッチング処理する。エッチング処理は、特に限定せず、例えば、一般的なRIE(Reactive Ion Etching)法でよい。エッチング処理に用いられるエッチングガスは、上述のとおり、C2F2、C2F4、C2F6、C3F5、C3F6、C4F6、C4F8等の高次ガスの少なくとも1つを主として含む。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑制しつつ、エッチングガスとして高次ガスを用いることができる。
【0024】
エッチング処理に使用されたエッチングガスは、配管P5を介してエッチングチャンバ20の外部へ排気される。
【0025】
バルブV1は、配管P2とP3との間に設けられており、精製装置30においてフィルタ31およびバルブV2と並列に接続されている。バルブV2は、配管P2とP3との間にフィルタ31と直列に接続されている。バルブV3は、配管P3,P4と配管P6との間に設けられている。バルブV4は、配管P4とエッチングチャンバ20との間に接続されている。
【0026】
尚、バルブV1、V3は、ガス生成チャンバ10内の気体を配管P6から排気するために設けられている。バルブV2、V4は、ガス生成チャンバ10からのPFCガスをフィルタ31で精製し、精製されたPFCガスをエッチングチャンバ20へ供給するために設けられている。よって、バルブV1、V3が開状態でガス生成チャンバ10を排気しているときには、バルブV2、V4は閉状態となっている。一方、バルブV2、V4が開状態でガス生成チャンバ10からのPFCガスを精製しエッチングチャンバ20へ供給するときには、バルブV1、V3が閉状態となっている。
【0027】
次に、本実施形態によるガス生成方法を説明する。
【0028】
図2は、第1実施形態によるガス生成方法の一例を示すフロー図である。まず、バルブV1、V3を開状態にして、ガス生成チャンバ10を減圧し、ソースガス供給部40からソースガスCmFnをガス生成チャンバ10へ供給する(S10)。このとき、ソースガス供給部40は、例えば、ソースガスCmFnを約150sccmで導入する。ソースガスCmFnは、炭素(C)およびフッ素(F)を含む低次のPFCガスであり、例えば、主にCF
4を含むガスである。
【0029】
ここで、ガス生成チャンバ10内の圧力は、エッチング処理時におけるエッチングチャンバ20内の圧力よりも高くする。例えば、エッチング処理時におけるエッチングチャンバ20内の圧力10mTorr~100mTorrに対して、ガス生成チャンバ10内のソースガスCmFnの圧力は、20Torr~400Torrである。例えば、ガス生成チャンバ10内の圧力は、約80Torrに調整される。
【0030】
次に、バルブV1、V3を閉状態にして、ガス生成チャンバ10において、接地電極11とカーボン電極12との間に電界が印加され、ソースガスCmFnを電離させる(S20)。このとき、高周波電源50は、接地電極11とカーボン電極12との間の高周波電力密度を約0.5kW/cm3以上とする。このように高圧力および高電力密度のもとで、ソースガスCmFnを電離しプラズマ状態にすると、合成反応が生じ、C2F2、C2F4、C2F6、C3F5、C3F6、C4F6、C4F8等の高次PFCガスをエッチングガスCxFyとして生成することができる。このとき、少なくともx>mであり、並びに/あるいは、x/y>m/nである。
【0031】
図3は、ソースガスCmFnのガス成分およびエッチングガスCxFyのガス成分のそれぞれの組成比を示すグラフである。この実験では、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を用いて、ガス生成チャンバ10におけるプラズマ放電前後のガス成分を解析した結果である。プラズマ放電前のソースガスCmFnは、CF
4を約100%含む。一方、プラズマ放電後のエッチングガスCxFyは、約42%のCF
4、約30%のC
2F
4、約9%のC
2F
6、約19%のSiF
4を含む混合ガスとなった。また、元のソースガスCF
4の約42%が高次のPFCガスに合成されていたことがわかった。
【0032】
図2を再度参照する。バルブV2、V4を開状態にして、精製装置30がエッチングガスCxFyを精製する(S30)。ガス生成チャンバ10では、接地電極11とカーボン電極12との間に半導体基板W0が配置されている。従って、エッチングガスCxFyが生成されたとき、エッチングガスCxFyには、SiF
4等の好ましくないガスが不純物として混在する。本実施例において精製装置30は、フィルタ31によって、必要なガス、例えば、C
2F
4ガスを選択的・可逆的に吸着させ、不要な他のガスを通過廃棄後、C
2F
4を、昇温などの方法により再脱離させることにより濃縮・精製する。この場合も、フィルタ31には、目的に応じて選定されたゼオライト等を用いればよい。このように必要なガスを吸着・脱離させ、エッチングガスC
2F
4を精製する。これにより、純度の高いPFCガスが得られる。
【0033】
次に、精製装置30からのPFCガスをエッチングガスCxFyとしてエッチングチャンバ20へ供給する。エッチングチャンバ20は、CF4よりも高次のPFCガスをエッチングガスとして用いて半導体基板W1をエッチングする。(S40)。エッチングガスCxFyは、C2F4、C2F6等の高次ガスを含む。これにより、アスペクト比の高いパターンを低コストで形成することができる。また、エッチングチャンバ20には、合成ガスによるガス導入配管の他に、図示しないガス導入配管によってO2、Ar等他のガスを混合させてエッチングしてもよく、これによりパターンの加工形状などの特性を最適に制御することができる。さらに、本実施形態では、ソースガスCmFnは、安価なCF4ガスを用いている。従って、半導体装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態によるエッチング装置1は、
図1に示す構成と同様でよい。ただし、第2実施形態によれば、ソースガス供給部40がガス生成チャンバ10にソースガスとして高次ガス(例えば、C
4F
8)を供給する。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。また、第2実施形態の動作も同様でよい。従って、ガス生成チャンバ10は、高い圧力および高い電力密度のもとで、C
4F
8のような高次のPFCガスを電離する。
【0035】
この場合、例えば、ソースガスがC4F8を主に含む高次PFCガスである場合、C4F8→2C2F4、C4F8→C2F2+C2F6、C4F8→CF3+C3F5、C4F8→C4F6+F2等の解離反応が生じる。勿論、解離反応により分解したPFCガスがさらに合成される場合もある。これにより、エッチングガスは、C2F2、C2F4、C2F6、C3F5、C3F6、C4F6の少なくとも1つを主に含むPFCガスとなる。このエッチングガスは、ソースガスC4F8よりも低次であるものの、C/F比は同等であるものも多く、CF4よりも高次なPFCガスである。C2F4をエッチングガスとして導入するとC4F8よりも高い対マスク選択性を示し、エッチングに有効であることが知られている。しかし、C2F4ガスは安全に取り扱うことが難しく、半導体プロセスガスとしては入手が困難である。従って、第2実施形態のようにソースガスとして高次ガスを用いても、第1実施形態と同様に、エッチングに有効な高次ガスを主として含むガスを、その場で生成し、供給することができる。
【0036】
一般化すると、第2実施形態によるエッチング装置は、比較的高圧力および高電力密度のもとで、CmFn(m、nは正整数)を主に含むソースガスを電離して、CxFy(x、yは正整数)を主に含むエッチングガスを生成する。このとき、少なくともx≦mであり、並びに/あるいは、x/y≧m/nである。即ち、第2ガスとしてのエッチングガスは、第1ガスとしてのソースガスよりも低次のPFCガスとなる。一方、エッチングガスは、CF4より高次であることが好ましい。従って、x≧2であることが好ましい。
【0037】
次に、第2実施形態によるガス生成方法を説明する。
【0038】
まず、バルブV1、V3を開状態にして、ガス生成チャンバ10を減圧し、ソースガス供給部40からソースガスCmFnをガス生成チャンバ10へ供給する(S10)。このとき、ソースガス供給部40は、例えば、ソースガスCmFnを約200sccmで導入する。ソースガスCmFnは、炭素(C)およびフッ素(F)を含む高次のPFCガスであり、例えば、主にC4F8を含むガスである。
【0039】
ここで、ガス生成チャンバ10内の圧力は、エッチング処理時におけるエッチングチャンバ20内の圧力よりも高くする。例えば、ガス生成チャンバ10内のソースガスCmFnの圧力は、20Torr~400Torrである。例えば、ガス生成チャンバ10内の圧力は、約50Torrに調整される。
【0040】
次に、バルブV1、V3を閉状態にして、ガス生成チャンバ10において、接地電極11とカーボン電極12との間に電界が印加され、ソースガスCmFnを電離させる(S20)。このとき、高周波電源50は、接地電極11とカーボン電極12との間の高周波電力密度を約0.5kW/cm3以上とする。このように高圧力および高電力密度のもとで、ソースガスCmFnを電離しプラズマ状態にすると、分解反応が生じ、C2F2、C2F4、C2F6、C3F5、C3F6、C4F6等のCF4よりも高次のPFCガスをエッチングガスCxFyとして生成する。
【0041】
第2実施形態では、接地電極11と直径6.35mmのカーボン電極12との間の0.5mmのギャップに高周波電力を印加して、ソースガスC4F8ガスを電離した。その際、プラズマ暴露時間を1Hzの周波数でON/OFF制御することにより、基板W0の表面温度が約500℃以下に維持された。
【0042】
図4に高周波電力密度とソースガスC
4F
8ガスの分解効率の関係を示す。
図4のグラフに示すように、本実施形態では、高周波電力密度を約5kW/cm
3以上とすることにより、100%に近い高効率でソースガスC
4F
8ガスを分解し改質することができた。その結果、ソースガスC
4F
8ガスから、86%のC
2F
4と、14%のC
2F
6を含有するエッチングガスが生成された。
【0043】
その後、
図2のステップS30以降を実行することによって、エッチングチャンバ20では、ソースガスC
4F
8ガスを供給したにもかかわらず、CF
4よりも高次のPFCガスをエッチングガスとして用いて半導体基板W1をエッチングすることができる。つまり、C
2F
4をエッチングガスとして導入できるようになり、これにより、第2実施形態も第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 エッチング装置、10 ガス生成チャンバ、11 接地電極、12 カーボン電極、20 エッチングチャンバ、30精製装置、31 フィルタ、40 ソースガス供給部、50 高周波電源、W0,W1 半導体基板、V1~V4 バルブ、P1~P6 配管