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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ガスメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20230331BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20230331BHJP
   G01F 15/06 20220101ALI20230331BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20230331BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
G01F3/22 D
G01F1/00 Y
G01F15/06
G01F1/66 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019231062
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099260
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白澤 忠徳
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】横畑 光男
(72)【発明者】
【氏名】松田 正誉
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-145120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス容器の下流に接続されるガスメータにおいて、
ガスが流れる計測流路と、
前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、
前記一対の超音波送受信器間の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間に基づき前記ガスの流量を演算する流量演算部と、
前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間が所定時間の間に所定値以上変化した場合に前記ガス容器が交換されたと検知するガス容器交換検知部と、
を備えたガスメータ。
【請求項2】
前記ガス容器交換検知部は、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間に基づきガスが停止したと判断された時の伝搬時間と、その後ガスが流れてから所定時間後に前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間とを比較し、所定値以上変化した場合に前記ガス容器が交換されたと検知することを特徴とする請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記ガスの温度を検知する温度検知部を有し、
前記ガス容器交換検知部は、前記温度検知部で検知された温度に基づいて前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間を補正することを特徴とする請求項1または2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記ガスの温度を検知する温度検知部を有し、
前記ガス容器交換検知部は、前記温度検知部で検知された温度に基づいて前記所定値を補正することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項5】
前記ガスの温度を検知する温度検知部を有し、
前記ガス容器交換検知部は、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間と前記温度検知部で検知された温度に基づいてガス容器内圧力を算出し、前記伝搬時間が前記所定時間の間に前記所定値以上変化し、かつ、前記ガス容器内圧力が所定値以上変化した場合に、前記ガス容器が交換されたと検知することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項6】
前記流量演算部で演算された流量を前記ガス容器の切換え時から積算するガス残量監視部を有し、
前記ガス容器交換検知部で前記ガス容器が切換えられたと検知した場合に、前記ガス残量監視部の積算値をリセットすることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項7】
センター装置と通信する外部通信部を備え、
前記ガス容器交換検知部で前記ガス容器が切換えられたと検知した場合に、前記外部通信部で報知することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波を利用してガスの流量を計測するガスメータに関し、特に、ガス容器の交換を検知する機能を有するガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガス残量監視機能の積算値をリセットするガス計量装置を開示する。このガス計量装置は、ガス容器交換時の切換操作に応じて切換信号を発生する切換信号発生手段を有する自動切換機能付き圧力調整器と、該圧力調整器から供給されるガスを消費するガス燃焼器のガス使用量を計量する計量器と、該圧力調整器からの信号でガス残量監視機能の積算値をリセットする構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-174308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、切換機能付き圧力調整器等からガス容器の切換信号を受けることなく、ガス容器の交換を検知することが可能なガスメータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のガスメータは、ガス容器の下流に接続されるガスメータにおいて、ガスが流れる計測流路と、前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、前記一対の超音波送受信間の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間に基づき前記ガスの流量を演算する流量演算部と、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間が所定時間の間に所定値以上変化した場合に前記ガス容器が交換されたと検知するガス容器交換検知部と、を備えたもので、このような構成によって、ほぼ空のガス容器から満タンのガス容器に交換されたことを検知する。
【発明の効果】
【0006】
本開示のガスメータは、ほぼ空のガス容器から満タンのガス容器に交換されたことによるガスの組成変化を伝搬時間の変化として検知することで、ガス容器の交換を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施の形態1におけるガスメータを含むシステム図
図1B】実施の形態1におけるガスメータを含む他のシステム図
図2】実施の形態1におけるガスメータのブロック図
図3】(a)ガス容器の交換に伴う伝搬時間の変化を示すグラフ、(b)実施の形態1における伝搬時間の計測タイミングを示す図
図4】ガスが停止する場合のガス容器の交換とガスの停止に伴う伝搬時間の変化を示すグラフ
図5】ガス容器の交換後に、ガスが停止する場合の伝搬時間の変化を示すグラフ
図6】実施の形態1におけるガスメータの処理を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
ガス容器、所謂LPガスボンベからガスを供給する場合、使用できるガスの容量は有限である為、ガス切れを起こさないようにする為にガス容器の定期定な交換は必須であり、ガス管理業者は効率的にガス容器の交換を行う必要がある。
【0009】
そして、ガス容器の交換を効率的に行う為に、ガス容器のガスの残量を監視する機能(以降、ガス残量監視機能という)を有するガスメータがあり、このようなガスメータでは、ガス容器を交換してからのガスの使用量を積算することでガス容器の残量を推定し、残量が少なくなるとガス容器の管理業者(以降、ガス事業者という)に通信することで、ガス切れの前にガス容器の交換が行えるようにしていた。また、ガス残量監視機能を搭載したガスメータには、ガス残量監視機能用の積算値をリセットする手動スイッチが設けられており、ガス容器交換時には、残量監視の積算値をリセットする為に作業者がスイッチ操作を行う必要があった。
【0010】
また、ガスの残量が0になってから交換する方が配送の面からは効率的であることから、2つのガス容器を設置し、一方のガス容器の残量がほぼ0になったら、自動的に満タンのガス容器に切り替える切換弁を備えることで、交換までの猶予期間を設けることで対応することも行われていた。但し、この場合も、ガス事業者がガス容器の交換時期を管理する為にガス残量監視機能を有するガスメータが使用されており、ガス容器交換時には、残量監視の積算値をリセットする為に作業者がスイッチ操作を行う必要がった。
【0011】
上記のように、ガス残量監視機能を有効に利用するには、作業者がガス容器の交換時に手動で使用量のリセットを行う必要があり、ガス容器の交換時にリセットを行わない、或いは、リセットを忘れると正しい残量監視は行えなかった。
【0012】
そこで、ガス容器の切換時に信号を発する機能を有する切換機能付きの圧力調整器を用い、圧力調整器からの信号でガスメータのガス残量監視機能の積算値をリセットする方法が提案されていた。
【0013】
しかしながら、圧力調整器に切替え時の信号発生機能と通信機能を付加し、かつ、ガスメータと通信する必要があり、圧力調整器のコストアップとなる。あるいは、ガスメータに専用の入力端子を設ける必要が生じると言う課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
以下、図1A図6を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態におけるガスメータの設置状態を示す図で、図に示す様に2つのガス容器2と、ガス容器2を切換える切換弁3と、ガスメータ1と、ガス器具4とからなり、ガスは切換弁3で切換えられ、2つのガス容器2の内の選択されたガス容器2から上流管5、ガスメータ、下流管6を経由してガス器具4に供給される。切換弁3としては、圧力を検知して自動的に切換えるものや、作業者が手動により切換えるものがある。
【0016】
図1Bは、本発明の第1の実施の形態におけるガスメータの他の設置状態を示す図で、図1Aと異なるのは、ガス容器の交換を切換弁3ではなく、作業者がガス容器2を入れ換える点であり、ガスメータは同じ機能を有する。
【0017】
なお、以降の説明では、2つのガス容器2の内、ガスの残量がほぼ0のガス容器2を空容器2a、ガスが満タンのガス容器2を満容器2bと区別して説明する。
【0018】
また、図1A図1Bの違いは、ガス容器2の交換が切換弁3で自動若しくは手動で行なわれるか、或いは、作業者が交換作業を行うかの違いであり、以降のガスメータの説明は、共通である。
【0019】
図2は、本実施の形態のガスメータの構成を示すブロック図で、ガスメータ1は、被計測流体の流れる計測流路101と、計測流路101に設置した第1超音波送受信器102および第2超音波送受信器103と、第1超音波送受信器102、第2超音波送受信器103の送受信を切り換える切換部104と、第1超音波送受信器102及び第2超音波送受信器103を駆動する送信部105と、受信側の超音波送受信器で受信し切換部104を通過した受信信号を受信する受信部106と、受信した信号を所定の振幅まで増幅する増幅部107と、増幅部107で増幅された受信信号の電圧と基準電圧とを比較する基準比較部108とを備えている。
【0020】
また、基準比較部108で比較される基準電圧を設定する基準電圧設定部109、基準比較部108の比較結果に基づき、時間計測の基準点を判定する判定部110、判定部110の結果に基づき、超音波の伝搬時間を計時する伝搬時間計測部111、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間に基づき被計測流体の流量を算出する流量演算部112、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間に基づきガス容器2の交換を検知するガス容器交換検知部114、流量演算部112で求められた流量を積算することでガス容器2の残量を監視するガス残量監視部115、ガスの温度を検知する温度検知部116、ガス事業者等が運営するセンター装置7などの外部装置との通信を行う外部通信部117、及び、全体の制御を行う、マイクロコンピューター等で構成された制御手段113を備えている。
【0021】
[1-2.動作]
次に、本実施の形態におけるガス容器交換検知部114の動作を説明する。
【0022】
[1-2-1.ガスが継続して流れている場合の動作]
図3(a)は、一定流量のガスが流れている状態におけるガス容器2の交換に伴う超音波の伝搬時間の変化、図3(b)は、伝搬時間の計測タイミングを示す図である。
【0023】
図3(a)において、点線で示すTdは第1超音波送受信器102から第2超音波送受信器103までの伝搬時間(以降、下流側伝搬時間Tdと称す。)の変化、一点鎖線で示すTuは第2超音波送受信器103から第1超音波送受信器102までの伝搬時間(以降、上流側伝搬時間Tuと称す)の変化、及び、実線で示すTduは下流側伝搬時間Tdと上流側伝搬時間Tuの平均値(以降、平均伝搬時間Tduと称す。)を示している。
【0024】
また、図3(a)において、空容器2aから満容器2bへのガス容器交換前の下流側伝搬時間Td1、上流側伝搬時間Tu1に対し、ガス容器の交換タイミングA以降ではガス容器交換前の下流側伝搬時間Td2、上流側伝搬時間Tu2でそれぞれの伝搬時間差ΔT1、ΔT2だけ短くなっているが、これはガスの流速に依存している。従って、流量演算部112は、伝搬時間差ΔT1、ΔT2によりガスの流速を求め、求めた流速に流路断面積及び流量係数を乗算することで流量を求めることができる。
【0025】
また、空容器2aから満容器2bに切換えると超音波の伝搬時間が変化時間t(t=Tu1-Tu2=Td1-Td2=Tdu1-Tdu2)だけ短くなっている。これは、ガス容器2に充填されたガスの組成と音速に起因するものである。ガス容器2に充填されているLPガスは、プロパン、ブタン、プロピレンなどの多成分混合ガスであり、プロピレン→プロパン→ブタンの順でガス容器から排出される。
【0026】
従って、ガス容器2内に残ったガスが少なくなると、ガスの組成が変化しブタンの割合が大きくなり、プロピレンやプロパンよりも分子量の大きなブタンの割合が大きくなることでガスの平均分子量は大きくなる。一方、音速は、ガスの平均分子量が大きくなると遅くなる。
【0027】
従って、ガスが流れている状態で空容器2aから満容器2bに切り替わると、ガス容器2の交換のタイミングでガスの平均分子量は小さなガスに切り替わる為に音速は早くなり、図3(a)に示したように超音波の伝搬時間は短くなる。
【0028】
なお、ガス容器2の交換タイミングAからガスメータ1の伝搬時間計測部111で計測される伝搬時間が変化するまでの時間T1は、ガスの流量とガス容器2とガスメータ1間の上流管5の長さで決まるが、ガス容器交換検知部114における変化時間tによるガス容器交換検知には影響しない。また、伝搬時間の変化が終了する時間T2はガスの流量で決定される。
【0029】
そして、ガス容器交換検知部114は、平均伝搬時間Tduの変化時間tを監視し、予め決定された所定値tc以上であれば、ガス容器2が交換されたことを検知することができる。
【0030】
具体的には、伝搬時間計測部111は、図3(b)に示す様に、所定のサンプリング周期Ts(例えば、2秒)の間隔で伝搬時間(下流側伝搬時間Td及び上流側伝搬時間Tu)を計測(S1~S10)して平均伝搬時間(TduS1~TduS10)を求めており、ガス容器交換検知部114は、所定時間Ta(例えば、10秒)の間隔で計測S1とS6、計測S2とS7、・・・のそれぞれの平均伝搬時間TduS1とTduS6、平均伝搬時間TduS2とTduS7、・・・の差である変化時間tを監視しながら、例えば、計測S1とS6の平均伝搬時間TduS1とTduS6の差である変化時間t’が、所定値tc以上であった場合に、ガス容器2が交換されたと検知することができる。
【0031】
また、複数の計測で得られた平均伝搬時間Tduの平均値を所定時間Ta毎に逐次比較する方法でも良い。例えば、図3の計測S1~S3で得られた3つの平均伝搬時間(TduS1、TduS2、TduS3)の平均値Tnと所定時間Ta離れた計測S6~S8の計測で得られた3つの平均伝搬時間(TduS6、TduS7、TduS8)の平均値Tmの差分が所定値tc以上である場合に、ガス容器2が交換されたと検知しても良く、この場合ノイズ等により伝搬時間の計測誤差が生じた場合でも誤判定を防止できる。
【0032】
また、比較する伝搬時間は、平均伝搬時間Tduに限らず、それぞれの計測で得られた下流側伝搬時間Td同士、或いは、上流側伝搬時間Tu同士でも良い。更に、所定時間Ta毎の比較を行う複数回連続で変化時間tが所定値tc以上であった場合にガス容器2が交換されたと検知しても良い。
【0033】
なお、所定時間Ta,所定値tcは、ガス容器2に充填されるLPガスの組成、時間T2により適宜設定することができる。 また、伝搬時間差ΔT1、ΔT2もガスの組成変化の影響を受けるが、伝搬時間(下流側伝搬時間Td、上流側伝搬時間Tu)に対して十
分小さい場合は、ΔT1=ΔT2となり、計測される流量は変化しない。
【0034】
[1-2-2.ガス容器の交換え後、ガスが短時間停止した場合の動作]
次に、作業者又は切換弁3によるガス容器2の交換後にガスが停止した場合のガス容器交換検知部114による検知方法について説明する。
【0035】
図4は、ガス容器2の交換が行われた後、直後にガスが停止した、或いは、ガスの停止中にガス容器2の交換が行われた後に、停止前に比べて大きな流量で再度ガスが流れた場合の超音波の伝搬時間の変化を示したものであり、ガスの停止期間では、下流側伝搬時間Td、上流側伝搬時間Tuは同じとなっている。なお、図4において、図3と同じ符号は図3と同様であり説明は省略する。
【0036】
図4に示す様に、ガスの停止前のガス容器2の交換タイミングBでガス容器2が交換され、満容器2bのガスがまだガスメータに達していない場合、再度ガスが流れて時間T4後に前述のようにガスの組成変化に伴う伝搬時間の変化をガスメータ1が検知する。なお、停止前の伝搬時間差ΔT1に対し、再開後の伝搬時間差ΔT2は流量に応じて大きくなっている。
【0037】
また、図4は、停止期間が短く、空容器2aのガスと満容器2bのガスが混ざらない状態における伝搬時間の変化であり、この場合、ガス容器交換検知部114は、図3を用いて説明した方法でガス容器2の交換を検知することができる。
【0038】
また、下流側伝搬時間Td或いは上流側伝搬時間Tuを用いる場合は、流量を考慮する必要があるが、平均伝搬時間Tduを用いると、ガスの流量変化を受けることがない。従って、平均伝搬時間Tduを用いることで所定時間Ta間にガスの流量が変化してもガス容器2の交換を検知することができる。
【0039】
[1-2-3.ガス容器の交換え後、ガスが長時間に停止した場合の動作]
図5は、作業者または切換弁3によりガス容器2の交換が行われた後にガスが長時間停止した後、停止前の流量よりも大きな流量で再度ガスが流れた場合の超音波の伝搬時間の変化を示したものであり、図5(a)は、ガスの停止期間が長時間となり、空容器2aのガスと満容器2bのガスが徐々に混ざることで伝搬時間が変化する状態、図5(b)は、ガス容器2の交換に伴うガス組成の変化の途中にガスが停止した後、ガスが徐々に混ざることで伝搬時間が変化する状態を示している。なお、図5において、図4と同じ符号は図4と同様であり説明は省略する。なお、停止後も停止前と同じ流量が流れた場合や少ない流量が流れた場合でも、以下の説明は適用できる。
【0040】
図5(a)に示す様に、ガスの停止前のガス容器の交換タイミングBでガス容器2が交換された場合、ガスの停止直後は、満容器2bのガスがまだガスメータ1に達していない状態であるが、ガス停止期間が長時間となる場合、ガスメータ1内のガスの組成も変化し、徐々に伝搬時間計測部111で計時される伝搬時間も変化し、短くなる。
【0041】
従って、前述の所定時間Ta(例えば、10秒)による検出ではガスの流れが再開した直後に計測された伝搬時間では変化時間t’を求めることになり、ガス容器2が交換えされているにも関わらず所定値tc以上の変化を検知できなくなる可能性がある。なお、図5(b)に示すような変化の場合は、置換される途中で計測される変化時間t’’が所定値tc以上を検知できればガス容器2の交換が検知できることになる。
【0042】
そこで、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間計測部111でサンプリング周期Ts毎に計測される下流側伝搬時間Tdと上流側伝搬時間Tuが一致した場合にガスが停止し
たと判断し、停止を判定した時点よりも時間Tb前の計測で得られた平均伝搬時間Tdu1を記憶する。
【0043】
その後、ガス容器交換検知部114は、サンプリング周期Ts毎に得られる下流側伝搬時間Tdと上流側伝搬時間Tuを監視し、伝搬時間差ΔTが所定流量以上のガス流量に対応した値になった場合にガスの流れが再開したと判断し、変化時間tを求める。なお、流量演算部112で演算された流量でガスの流れの停止、再開を判定しても良い。
【0044】
この際、時間T4が短くてサンプリング周期Tsでの計測が行えない、或いは、計測できない可能性があるが、流れの再開から所定時間Taが経過するまでは停止時点で記憶した平均伝搬時間Tdu1と新たな計測で得られた平均伝搬時間Tdu2とを比較することで、ガスの組成変化に伴う伝搬時間の変化完了後に変化時間tが所定値tc以上となった時点で、ガス容器2が交換されたと検知することができる。
【0045】
なお、所定時間Taが経過するまでに変化時間tが所定値tc以上とならなければ、ガスの停止前や停止中にガス容器2の交換は無かったとして図3を用いて説明した検知方法を実行する。
【0046】
また、ガスの停止後のガス容器の交換タイミングCでガス容器2の交換が発生した場合でも、同様に判断することができる。更に、この方法は、図4で説明したガスの停止においても適用可能である。
【0047】
また、ガスの音速は、温度の影響を受ける為、ガス容器交換検知部114は、温度検知部116で検知されたガスの温度を用いて伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間を補正するようにすることもできる。特に長時間ガスが停止した場合には停止中にガスの温度が変化する可能性があるので、停止時に記憶する平均伝搬時間Tdu1をその時のガスの温度に基づき基準温度の伝搬時間に補正して記憶し、ガスの流れが再開した後に計測された平均伝搬時間Tdu2も計測時のガスの温度に基づき基準温度の伝搬時間に補正して、伝搬時間差を求めて、基準温度での所定値tcと比較しても良い。
【0048】
更に、所定値tcは、ガスの温度の影響を受ける為、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間の変化時間の判定値である所定値tcをガスの温度で補正することで、ガス容器交換の検知精度を向上することができる。
【0049】
また、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間と温度検知部116で検知された温度を用い既知の式によりガス容器内圧力を算出してガス容器内圧力が所定値以上変化した場合に前記ガス容器が交換されたと検知することもできる。
【0050】
例えば、伝搬時間と温度から既知の式に基づきガスのブタン濃度を算出し、更に、ブタン濃度とガス容器2内の圧力の相関関係からガス容器内の圧力を算出できる。従って、ガス容器2を空容器2aから満容器2bに交換した際の圧力変化(圧力上昇)をすることでガス容器2の交換を検知することができる。
【0051】
また、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間が所定値以上変化し、かつ、ガス容器内圧力が所定値以上変化した場合に、ガス容器2が交換されたと検知することで、更に検知精度が向上する。
【0052】
また、ガス容器交換検知部114でガス容器2の交換を検知した場合に、ガス残量監視部115の積算値をリセットするようにすると、手動によりリセットを行う必要がなくな
り、ガス容器の残量管理を確実に行うことができる。
【0053】
さらに、ガス容器交換検知部114でガス容器2の交換を検知した場合に、外部通信部117で、センター装置7等への通知を行うことで、ガス事業者はガス容器2の配送などのスケジュールを組む際に優先順位等を決める参考とすることができる。更に、ガス容器2の交換前で未だガスの残量があるにも関わらず見込みで交換を行う必要がなくなり、配送効率が向上する。
【0054】
[1-2-5.フローチャートによる一連の動作説明]
次に、図6に示すフローチャートを用いて、上記で説明したガス容器交換検知部114の動作を説明する。
【0055】
先ず、伝搬時間計測部111は、サンプリング周期かどうかを判断(S100)し、サンプリング周期である場合(処理100でYes)、伝搬時間を計測し(S101)、平均伝搬時間Tduを求め時系列で保存する(S102)。サンプリング周期でない(処理100でNo)と判断されれば処理を抜ける。
【0056】
次にガスが停止したかどうかを判定し(S103)、初回の停止判定の場合(処理S103でYes)、時間Tb前に保存した平均伝搬時間TduをTdu1’として記憶する(S104)。初回の停止判定でない場合(処理S103でNo)、ガスの停止中かどうかを判定し(S105)、ガスの停止が継続している場合(処理S105でYes)、処理を抜け、停止中でない場合(処理105でNo)、ガスの流れが再開したかどうかを判定し(S106)、再開の場合(処理S106でYes)、再開からTa経過したかどうかを判定し(S108)、所定時間Taが経過していない場合(処理S108でNo)、変化時間の演算に用いる前回の平均伝搬時間Tdu1として停止判定時に記憶したTdu1’を代入する(S109)。
【0057】
ガスの流れが再開でない場合(処理S106でNo)、変化時間の演算に用いる前回の平均伝搬時間Tdu1として所定時間Ta前に保存したTdu(Ta)を代入する(S107)。
【0058】
そして、変化時間tを求め(S110)、所定値tc以上かどうかを判定し(S111)、所定値以上である場合(処理S111でYes)、ガス容器交換と判定する(S112)。
【0059】
更に、ガス容器交換とされた場合には、ガス残量監視部115の積算値をリセット(S113)し、外部通信部117で、センター装置7等へガス交換検知を通知しガス事業者への報知を行う(S114)。
【0060】
なお、処理S113(ガス残量監視部115の積算値をリセット)や処理S114(センター装置7等への通知)は、設置状況に応じて適宜選択できるようにしても良い。
【0061】
[1-3.効果等]
以上の様に、本実施の形態において、ガスメータ1は、ガスが流れる計測流路101と、計測流路101の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器(第1超音波送受信器102、第2超音波送受信器103)と、一対の超音波送受信間の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部111と、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間に基づきガスの流量を演算する流量演算部112と、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間が所定時間の間に所定値以上変化した場合にガス容器2が交換れたと検知するガス容器交換検知部114と、を備える。
【0062】
これにより、ガス容器交換検知部114は、所定時間Ta間で伝搬時間(下流側伝搬時間Td、上流側伝搬時間Tu、平均伝搬時間Tdu)の変化時間tが所定値tc以上変化した場合にガス容器2が交換されたと検知することができる。
【0063】
なお、伝搬時間の変化時間tではなく、伝搬時間で求めた音速の差分を用いてもガス容器2が交換されたことを検知できることは言うまでもない。
【0064】
本実施の形態のように、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間に基づきガスが停止したと判断された時の伝搬時間と、その後ガスが流れてから所定時間後に伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間とを比較し、所定値以上変化した場合にガス容器2が交換られたと検知する。
【0065】
これにより、ガス容器交換検知部114では、ガス容器2の交換後にガスが停止した場合でも、伝搬時間の変化で、ガス容器2の交換を検知することができる。
【0066】
本実施の形態のように、ガスの温度を検知する温度検知部116を有し、ガス容器交換検知部114は、温度検知部116で検知された温度に基づいて伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間を補正する。
【0067】
これにより、ガスの音速は、温度の影響を受ける為、温度検知部116で検知されたガスの温度で伝搬時間を補正することができ、検知精度が向上する。
【0068】
本実施の形態のように、ガスの温度を検知する温度検知部116を有し、ガス容器交換検知部114は、温度検知部116で検知された温度に基づいて所定値tcを補正する。
【0069】
これにより、所定値tcは、温度の影響を受ける為、温度検知部116で検知されたガスの温度で補正することができ、更に検知精度が向上する。
【0070】
本実施の形態のように、ガスの温度を検知する温度検知部116を有し、ガス容器交換検知部114は、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間と温度検知部116で検知された温度に基づいてガス容器内圧力を算出し、所定時間の間に伝搬時間が所定値以上変化し、かつ、ガス容器内圧力が所定値以上変化した場合にガス容器2が交換されたと検知する。
【0071】
これにより、伝搬時間の変化とガス容器内圧力の変化の両方でガス容器2の交換を検知することで、検知精度が向上する。
【0072】
本実施の形態のように、ガスメータ1は、ガスが流れる計測流路101と、計測流路101の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器(第1超音波送受信器102、第2超音波送受信器103)と、一対の超音波送受信間の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部111と、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間に基づきガスの流量を演算する流量演算部112と、ガスの温度を検知する温度検知部116と、伝搬時間計測部111で計測された伝搬時間と温度検知部116で検知された温度に基づいてガス容器内圧力を算出し、ガス容器内圧力が所定値以上変化した場合にガス容器2が交換されたと検知する前記ガス容器交換検知部114と、を備える。
【0073】
これにより、前述のように、ガス容器2の交換に伴う圧力変化のみでも、ガス容器2の交換を検知することできる。
【0074】
本実施の形態のように、流量演算部112で演算された流量をガス容器2の切換え時から積算するガス残量監視部115を有し、ガス容器交換検知部114でガス容器2が切換えられたと検知した場合に、ガス残量監視部115の積算値をリセットする。
【0075】
これにより、ガス容器交換検知部114でガス容器2の交換を検知した場合に、ガス残量監視部115の積算値をリセットするようにすると、手動によりリセットを行う必要がなくなり、ガス容器の残量管理を確実に行うことができる。
【0076】
本実施の形態のように、センター装置7と通信する外部通信部117を備え、ガス容器交換検知部114でガス容器2が交換されたと検知した場合に、外部通信部117で報知する。
【0077】
これにより、ガス容器交換検知部114でガス容器2の交換を検知した場合に、外部通信部117で、センター装置7等への通知を行うことで、ガス事業者はガス容器2の配送などのスケジュールを組む際に優先順位等を決める参考とすることができる。更に、ガス容器2の交換前で未だガスの残量があるにも関わらず見込みで交換を行う必要がなくなり、配送効率が向上する。
【0078】
また、ガス事業者が、作業者に対してガス容器2の交換(切換弁3の操作、若しくは、交換作業)の後にガス残量監視部115の積算値のリセットを行ったかどうかを確認した上で、ガス容器2を交換したのにリセットを忘れていた場合には、センター装置7からガスメータ1に対してリセットの指示を行うようにすることで、ガス残量監視部115の誤検知に対応することもできる。
【0079】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかるガスメータによるとガス容器の交換を検知できるので、ガス容器交換、回収等の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ガスメータ
2 ガス容器
7 センター装置
101 計測流路
102 第1超音波送受信器(超音波送受信器)
103 第2超音波送受信器(超音波送受信器)
111 伝搬時間計測部
112 流量演算部
114 ガス容器交換検知部
115 ガス残量監視部
116 温度検知部
117 外部通信部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6