(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】電池積層体
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20230331BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/521 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20230331BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20230331BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230331BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230331BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230331BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230331BHJP
H01M 10/6553 20140101ALI20230331BHJP
H01M 10/659 20140101ALI20230331BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/209
H01M50/284
H01M50/505
H01M50/519
H01M50/521
H01M50/569
H01M50/588
H01M50/591
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/6553
H01M10/659
(21)【出願番号】P 2019530959
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2018025521
(87)【国際公開番号】W WO2019017211
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017139210
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟朗
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-087761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0015519(US,A1)
【文献】特開2015-185373(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0018326(KR,A)
【文献】特開2012-084319(JP,A)
【文献】特開2011-034883(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102598361(CN,A)
【文献】中国実用新案第206313023(CN,U)
【文献】特開2012-138239(JP,A)
【文献】特開2008-091183(JP,A)
【文献】特開2017-016856(JP,A)
【文献】特開平10-125301(JP,A)
【文献】特開2016-129125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 10/60-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される複数の電池と、
前記複数の電池を電気的に接続するバスバーと、を備える電池積層体であって、
前記バスバーは、
前記複数の電池のうち第1電池の出力端子に接合される第1吸熱部と、
前記第1電池と隣り合う第2電池の出力端子に接合される第2吸熱部と、
前記第1吸熱部及び前記第2吸熱部を電気的に接続する本体部と、を有し、
前記第1吸熱部及び前記第2吸熱部は、前記本体部よりも熱容量が大きく、
前記本体部は、前記第1吸熱部に接合される第1接続部と、前記第2吸熱部に接合される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置され、前記第1電池及び前記第2電池の相対的な変位に応じて変形する変位吸収部と、を有し、
前記電池積層体は、
前記第1吸熱部と前記第1電池との間に配置される第1絶縁部と、
前記第2吸熱部と前記第2電池との間に配置される第2絶縁部と、をさらに備え、
前記第1絶縁部は、前記第1吸熱部より熱伝導率が低く、
前記第2絶縁部は、前記第2吸熱部より熱伝導率が低
く、
前記第1絶縁部は、前記第1吸熱部側の面に配置される凹部と、当該凹部の底に配置される開口部と、を有し、
前記第1吸熱部は、前記凹部に嵌められ、
前記第1電池の出力端子は、前記開口部に挿通されることを特徴とする電池積層体。
【請求項2】
前記第1吸熱部及び前記第2吸熱部は、前記本体部よりも厚い厚肉部を有する請求項1に記載の電池積層体。
【請求項3】
前記変位吸収部の少なくとも一部は、前記第1電池と前記第2電池の積層方向と交わる方向に延在する請求項1又は2に記載の電池積層体。
【請求項4】
前記第1電池と前記第2電池の積層方向から見て、前記変位吸収部は少なくとも一部が前記第1吸熱部及び前記第2吸熱部と重なる請求項3に記載の電池積層体。
【請求項5】
前記電池積層体は、複数の電圧検出線を有し前記複数の電池の電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、
前記複数の電圧検出線はそれぞれ、前記バスバーの前記変位吸収部に当接する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池積層体。
【請求項6】
前記電圧検出部は、前記複数の電圧検出線が敷設される基板を有し、
前記基板は、幹部と、当該幹部から各バスバーの前記変位吸収部に向かって延在する複数の枝部と、を有する請求項5に記載の電池積層体。
【請求項7】
前記枝部は、電池の積層方向に変位可能な第1部分、前記積層方向と直交する第2方向に変位可能な第2部分、並びに、前記積層方向及び前記第2方向と直交する第3方向に変位可能な第3部分の少なくとも1つを有する請求項6に記載の電池積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー及び電池積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源に用いられる電池として、複数個の電池が直列接続されてなる電池積層体が知られている。従来、このような電池積層体では、隣り合う電池の出力端子同士がバスバーで接続されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明者は、従来の電池積層体について鋭意検討を重ねた結果、以下の課題を認識するに至った。すなわち、バスバーで接続された2つの電池は、電池の膨張等に起因して相対的に変位する可能性がある。2つの電池間の安定的な電気的接続を維持するためには、このような変位への対策が望まれる。また、電池は、温度が上昇すると発電性能が低下する傾向にある。このため、電池の温度上昇への対策も望まれる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池間の安定的な電気的接続の維持と、電池の発電性能の低下抑制とを図るための技術を提供することにある。
【0006】
本発明のある態様は、バスバーである。当該バスバーは、第1電池の出力端子に接合される第1吸熱部と、第1電池と隣り合う第2電池の出力端子に接合される第2吸熱部と、第1吸熱部及び第2吸熱部を電気的に接続する本体部と、を備える。第1吸熱部及び第2吸熱部は、本体部よりも熱容量が大きい。本体部は、第1吸熱部に電気的に接続される第1接続部と、第2吸熱部に電気的に接続される第2接続部と、第1接続部と第2接続部との間に配置され、第1電池及び第2電池の相対的な変位に応じて変形する変位吸収部と、を有する。
【0007】
本発明の他の態様は、電池積層体である。当該電池積層体は、上記態様のバスバーと、バスバーにより互いに電気的に接続された複数の電池とを備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0009】
本発明によれば、電池間の安定的な電気的接続の維持と、電池の発電性能の低下抑制とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るバスバーを含む電池積層体の概略構造を示す斜視図である。
【
図3】電池積層体のバスバーを含む領域を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、第1吸熱部及び第2吸熱部の概略構造を示す斜視図である。
図4(B)は、第1絶縁部及び第2絶縁部の概略構造を示す斜視図である。
図4(C)は、本体部の概略構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0012】
図1は、実施の形態に係るバスバーを含む電池積層体の概略構造を示す斜視図である。
図2は、電池積層体の分解斜視図である。なお、
図1及び
図2では、セパレータの図示を省略している。電池積層体1は、バスバー2と、バスバー2により互いに電気的に接続された複数の電池4と、電圧検出部40とを備える。本実施の形態では、一例として6個の電池4がバスバー2により直列に接続されて、電池積層体1が形成されている。
【0013】
各電池4は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。電池4は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶6を有する。外装缶6の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶6に電極体や電解液等が収容される。外装缶6の開口には、外装缶6を封止する封口板8が設けられる。
【0014】
封口板8には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子10が設けられ、他端寄りに負極の出力端子10が設けられる。以下では適宜、正極の出力端子10を正極端子10aと称し、負極の出力端子10を負極端子10bと称する。また、出力端子10の極性を区別する必要がない場合、正極端子10aと負極端子10bとをまとめて出力端子10と称する。出力端子10は、封口板8の開口部から突出する。
【0015】
出力端子10の周縁部と封口板8の開口部との間には、シール部材としてのガスケット11が設けられる。ガスケット11により、封口板8と出力端子10との境界部が気密に閉塞される。また、封口板8と出力端子10との間の短絡が防止される。外装缶6、封口板8及び出力端子10は導電体であり、例えば金属製である。ガスケット11は絶縁体であり、例えば樹脂製である。
【0016】
本実施の形態では、封口板8が設けられる側を電池4の上面、反対側を電池4の底面とする。また、電池4は、上面及び底面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池4が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。上面、底面及び2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池4の側面とする。また、電池4の上面側を電池積層体1の上面とし、電池4の底面側を電池積層体1の底面とする。また便宜上、電池積層体1の上面側を鉛直方向上方とし、電池積層体1の底面側を鉛直方向下方とする。
【0017】
封口板8には、一対の出力端子10の間に安全弁12が設けられる。安全弁12は、外装缶6の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。各電池4の安全弁12は図示しないガスダクトに接続され、安全弁12から排出される排出ガスはガスダクトに排出される。
【0018】
複数の電池4は、隣り合う電池4の主表面同士が対向するにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池4の積層には、複数の電池4を水平に並べることも含まれる。また、各電池4は、出力端子10が同じ方向(ここでは便宜上、鉛直方向上方とする)を向くように配置される。隣接する2つの電池4は、一方の正極端子10aと他方の負極端子10bとが隣り合うように積層される。正極端子10aと負極端子10bとは、バスバー2を介して電気的に接続される。なお、隣接する2つの電池4の同極性の出力端子10同士をバスバー2で接続する場合もあり得る。
【0019】
バスバー2は、主な構成として第1吸熱部14と、第2吸熱部16と、本体部18とを備える。バスバー2は、一端側が一方の電池4の正極端子10aに、他端側が他方の電池4の負極端子10bに、それぞれ電気的に接続される。電圧検出部40は、複数の電池4の電圧を検出する部材である。電圧検出部40は、基板42と、複数の電圧検出線44とを有する。バスバー2及び電圧検出部40の構造は、後に詳細に説明する。
【0020】
電池積層体1は、図示しない複数のセパレータを有する。セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。セパレータは、各電池4の間、及び電池4と後述するエンドプレートとの間に配置される。これにより、隣り合う電池4の外装缶6同士が絶縁される。また、電池4の外装缶6とエンドプレートとが絶縁される。
【0021】
電池積層体1は、図示しない一対のエンドプレートで挟まれる。各エンドプレートは、最外側の電池4と隣り合うように配置される。エンドプレートは、例えば金属板からなる。エンドプレートには、図示しない外部接続端子が絶縁部材を介して取り付けられる。また、最外側の電池4とエンドプレートの外部接続端子とは、バスバー2により電気的に接続される。例えば、バスバー2の一端側は、電池4の直列接続の終端となる出力端子10に電気的に接続される。バスバー2の他端側は、エンドプレートの外部接続端子に電気的に接続される。外部接続端子は、電池積層体1の外部に引き回される配線を介して外部負荷に接続される。
【0022】
電池積層体1と一対のエンドプレートとは、図示しない一対の拘束部材によって拘束される。一対の拘束部材は、バインドバーとも呼ばれる。一対の拘束部材は、複数の電池4の積層方向Xに対して直交する水平方向Yに配列される。拘束部材は、電池4の積層方向Xに延在する第1部分と、第1部分の両端部から電池積層体1側に突出する2つの第2部分とを有する。2つの第2部分は、積層方向Xにおいて対向する。拘束部材は、例えば金属板の端部に折り曲げ加工を施すことで形成することができる。
【0023】
2つの第2部分と一対のエンドプレートとがねじ止め等により固定されることで、複数の電池4と複数のセパレータとが一対のエンドプレートと一対の拘束部材によって締結される。セパレータ、エンドプレート及び拘束部材は、公知の構造を有するため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0024】
続いて、本実施の形態に係るバスバー2について詳細に説明する。
図3は、電池積層体のバスバーを含む領域を拡大して示す斜視図である。
図4(A)は、第1吸熱部及び第2吸熱部の概略構造を示す斜視図である。
図4(B)は、第1絶縁部及び第2絶縁部の概略構造を示す斜視図である。
図4(C)は、本体部の概略構造を示す斜視図である。なお、
図3では、電池積層体1のうち隣接する第1電池4aと第2電池4bとがバスバー2で接続された部分が図示されている。また、セパレータの図示を省略している。
【0025】
バスバー2は、第1吸熱部14と、第2吸熱部16と、本体部18とを備える。また、本実施の形態のバスバー2は、さらに第1絶縁部20と、第2絶縁部22とを備える。第1吸熱部14、第2吸熱部16、本体部18、第1絶縁部20及び第2絶縁部22は、それぞれ別部材で構成されている。第1吸熱部14及び第2吸熱部16の構造は実質的に同一であり、第1絶縁部20及び第2絶縁部22の構造は実質的に同一である。
【0026】
第1吸熱部14は、第1電池4aの出力端子10に接合される。第2吸熱部16は、第1電池4aと隣り合う第2電池4bの出力端子10に接合される。第1吸熱部14及び第2吸熱部16は導電体であり、例えば金属製である。また、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は扁平な略直方体状であり、それぞれ貫通孔14a,16aを有する。貫通孔14aは、第1吸熱部14の一方の主表面から他方の主表面にかけて延在している。同様に、貫通孔16aは、第2吸熱部16の一方の主表面から他方の主表面にかけて延在している。
【0027】
第1吸熱部14は、貫通孔14aに第1電池4aの出力端子10が挿入された状態で、例えば溶接により出力端子10に接合される。第2吸熱部16は、貫通孔16aに第2電池4bの出力端子10が挿入された状態で、例えば溶接により出力端子10に接合される。したがって、第1吸熱部14の一方の主表面、言い換えれば底面は、第1電池4aの封口板8と対向する。また、第2吸熱部16の一方の主表面、言い換えれば底面は、第2電池4bの封口板8と対向する。
【0028】
第1吸熱部14の底面側には、第1絶縁部20が配置される。第1絶縁部20は絶縁体であり、例えば樹脂製である。また、第1絶縁部20は平板状であり、第1吸熱部14の主表面に対応する形状の凹部20aを一方の主表面に有する。さらに、凹部20aの略中央部に、出力端子10に対応する形状の開口部20bを有する。第1絶縁部20は、開口部20bに出力端子10が挿通されて、第1電池4aの封口板8に載置される。第1吸熱部14は、貫通孔14aに出力端子10が挿入されるとともに、底面側が凹部20aに納められる。したがって、第1吸熱部14と第1電池4aの封口板8との間には、第1絶縁部20が介在する。これにより、第1吸熱部14と封口板8とが絶縁される。
【0029】
同様に、第2吸熱部16の底面側には、第2絶縁部22が配置される。第2絶縁部22は絶縁体であり、例えば樹脂製である。また、第2絶縁部22は矩形の平板状であり、第2吸熱部16の主表面に対応する形状の凹部22aを一方の主表面に有する。さらに、凹部20aの略中央部に、出力端子10に対応する形状の開口部22bを有する。第2絶縁部22は、開口部22bに出力端子10が挿通されて、第2電池4bの封口板8に載置される。第2吸熱部16は、貫通孔16aに出力端子10が挿入されるとともに、底面側が凹部22aに納められる。したがって、第2吸熱部16と第2電池4bの封口板8との間には、第2絶縁部22が介在する。これにより、第2吸熱部16と封口板8とが絶縁される。
【0030】
好ましくは、第1絶縁部20及び第2絶縁部22の熱伝導率は、第1吸熱部14及び第2吸熱部16の熱伝導率よりも低い。これにより、第1吸熱部14及び第2吸熱部16から電池4への伝熱を抑制することができる。
【0031】
本体部18は、第1吸熱部14及び第2吸熱部16を電気的に接続する略帯状の部材である。本体部18は、導電体であり、例えば金属製である。本体部18は、第1接続部24と、第2接続部26と、変位吸収部28とを有する。第1接続部24は、本体部18の一端側に位置し、第1吸熱部14に電気的に接続される。第2接続部26は、本体部18の他端側に位置し、第2吸熱部16に電気的に接続される。第1接続部24は、第1吸熱部14に対して例えば溶接により接合される。同様に、第2接続部26は、第2吸熱部16に対して例えば溶接により接合される。これにより、第1接続部24と第1吸熱部14との電気的な接続状態、及び第2接続部26と第2吸熱部16との電気的な接続状態が得られる。第1接続部24及び第2接続部26は、バスバー2に求められる許容電流が得られるだけの断面積を有するが、溶接が困難になることを回避すべく肉厚が過度に厚くならないように設計される。
【0032】
変位吸収部28は、第1接続部24と第2接続部26との間に配置される。変位吸収部28は、第1電池4a及び第2電池4bの相対的な変位に応じて変形する部分である。つまり、本体部18、ひいてはバスバー2は、変位吸収部28において柔軟性を有する。変位吸収部28が弾性変形することで、第1電池4a及び第2電池4bの相対的な変位が吸収される。変位吸収部28の少なくとも一部は、水平方向Yから見て第1電池4aと第2電池4bの積層方向Xと交わる方向、言い換えれば電池4の封口板8に接近-離間する方向に延在する。これにより、積層方向Xの変位を特に吸収することができる。
【0033】
本実施の形態の変位吸収部28は、鉛直方向Zに延在する2つの第1部分28aと、2つの第1部分28aの端部同士を連結する第2部分28bとを有する。したがって、変位吸収部28は、水平方向Yから見て略U字形状を有する。変位吸収部28は、バスバー2に求められる許容電流が得られるだけの断面積を有するが、第1電池4a及び第2電池4bの相対的な変位に応じて変形できるように肉厚が過度に厚くならないように設計される。例えば、変位吸収部28は、第1接続部24及び第2接続部26と同程度の肉厚を有する。この場合、本体部18は、金属板に折り曲げ加工を施すことで形成することができる。
【0034】
第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、本体部18よりも熱容量が大きい。通電によりバスバー2で発生する熱は、主に第1吸熱部14及び第2吸熱部16に溜まり、第1吸熱部14及び第2吸熱部16から外部に放出される。本実施の形態では、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、本体部18よりも厚い厚肉部を有する。これにより、本体部18よりも大きい熱容量が実現されている。一例として、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、全体が厚肉部で構成されている。すなわち、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、電池4の積層方向Xに対して直交する鉛直方向Z、言い換えれば封口板8の法線方向における寸法が、同方向における第1接続部24及び第2接続部26の寸法よりも大きい。
【0035】
本体部18は、第1吸熱部14と第2吸熱部16との間に配置される。2つの第1部分28aは、第1吸熱部14と第2吸熱部16とで挟まれる空間内で、第1吸熱部14と第2吸熱部16とが並ぶ方向に配列される。そして、第1吸熱部14に近い側の第1部分28aは、一端が第1接続部24に接続され、他端が第2部分28bに接続される。第2吸熱部16に近い側の第1部分28aは、一端が第2接続部26に接続され、他端が第2部分28bに接続される。
【0036】
本実施の形態では、第1部分28aにおける電池4に近い側の下端部が第2部分28bに接続され、電池4から遠い側の上端部が第1接続部24又は第2接続部26に接続される。さらに、第1接続部24は、第1吸熱部14の上面、すなわち第1電池4aから遠い側の主表面に接合される。また、第2接続部26は、第2吸熱部16の上面、すなわち第2電池4bから遠い側の主表面に接合される。
【0037】
したがって、第1電池4aと第2電池4bの積層方向Xから見て、変位吸収部28は少なくとも一部が第1吸熱部14及び第2吸熱部16と重なる。つまり、変位吸収部28の少なくとも一部は、鉛直方向Zにおいて第1吸熱部14及び第2吸熱部16の延在する領域内に収まっている。また、第2部分20bの下端部は、第1絶縁部20及び第2絶縁部22の下端部よりも上方に位置する。したがって、変位吸収部28は、電池4の封口板8から離間している。つまり、変位吸収部28は、少なくとも変形していない状態で電池4に非接触である。これにより、変位吸収部28の変形自由度を高めることができる。
【0038】
続いて、電圧検出部40について詳細に説明する。
図5は、電圧検出部の概略構造を示す斜視図である。電圧検出部40は、基板42と、複数の電圧検出線44とを有する。基板42には、複数の電圧検出線44が敷設される。基板42は、例えばフレキシブルプリント基板で構成される。基板42は、幹部46と、複数の枝部48とを有する。幹部46は、電池4の積層方向Xに延在する太幅の部分である(
図1及び
図2参照)。幹部46の一端には、コネクタ50が設けられる。電圧検出部40は、コネクタ50を介して外部機器に接続される。複数の枝部48は、幹部46から各バスバー2の変位吸収部28に向かって延在する、幹部46よりも細幅の扁平な部分である。(
図1及び
図2参照)。各枝部48の先端は、対応する変位吸収部28に当接する。
【0039】
図3及び
図5に示すように、各枝部48は、第1部分48a、第2部分48b及び第3部分48cを有する。第1部分48aは、電池4の積層方向Xに変位可能な部分である。具体的には、第1部分48aは、背向する2つの主表面が概ね積層方向Xを向くように延在する部分である。第2部分48bは、積層方向Xと直交する第2方向に変位可能な部分である。ここでは、第2方向を水平方向Yとする。具体的には、第2部分48bは、背向する2つの主表面が概ね水平方向Yを向くように延在する部分である。第3部分48cは、積層方向X及び第2方向と直交する第3方向に変位可能な部分である。ここでは、第3方向を鉛直方向Zとする。具体的には、第3部分48cは、背向する2つの主表面が概ね鉛直方向Zを向くように延在する部分である。
【0040】
各枝部48は、幹部46から水平方向Yに突出し、途中の部分が鉛直方向Zに凸状に湾曲する。本実施の形態では、下方、すなわち電池4に向かって突出している。この鉛直方向Zに延びる部分が第2部分48bを構成する。また、水平方向Yに突出した先端部は、積層方向Xに延びた後に鉛直方向Zに延びる。本実施の形態では下方に延びる。この鉛直方向Zに延びる部分が第1部分48aを構成する。また、枝部48は、第1部分48aの下端から積層方向Xに延びる部分を有する。この積層方向Xに延びる部分が第3部分48cを構成する。枝部48は、第3部分48cにおいて変位吸収部28に当接する。第1部分48a~第3部分48cは、鉛直方向Zについて、幹部46から電池4の封口板8までの範囲内に収まる。より好ましくは、枝部48は、鉛直方向Zについて、バスバー2の延在範囲内に収まる。
【0041】
複数の電圧検出線44はそれぞれ、バスバー2の変位吸収部28に当接する。具体的には、各電圧検出線44は、一端がコネクタ50に接続される。また、各電圧検出線44は、コネクタ50から幹部46を介して各枝部48に延びる。各電圧検出線44の他端は、枝部48の第3部分48cまで延び、変位吸収部28に当接する。これにより、各バスバー2は、電圧検出線44を介してコネクタ50に電気的に接続される。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るバスバー2は、第1電池4aの出力端子10に接合される第1吸熱部14と、第2電池4bの出力端子10に接合される第2吸熱部16と、第1吸熱部14及び第2吸熱部16を電気的に接続する本体部18とを備える。本体部18は、第1吸熱部14に電気的に接続される第1接続部24と、第2吸熱部16に電気的に接続される第2接続部26と、第1接続部24と第2接続部26との間に配置される変位吸収部28とを有する。変位吸収部28は、第1電池4aと第2電池4bとの相対的な変位に応じて変形する。したがって、変位吸収部28により、当該変位を吸収することができる。このため、本体部18と第1吸熱部14及び/又は第2吸熱部16との接続が外れることによるバスバー2の接続不良が発生するおそれを低減することができる。
【0043】
また、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、本体部18よりも熱容量が大きい。したがって、通電によりバスバー2に発生する熱は、主に第1吸熱部14及び第2吸熱部16に留まる。これにより、バスバー2で発生する熱が電池4に伝わることを抑制することができる。この結果、バスバー2の熱により電池4の温度が上昇して発電性能が低下することを抑制することができる。また、比較的熱に弱いガスケット11が溶融して、封口板8の開口部と出力端子10との間の気密性が低下することを抑制することができる。
【0044】
特に、変位吸収部28は、肉厚に起因する電気抵抗の観点から、バスバー2の他の部位よりも肉厚を薄くすることが望ましい。したがって、バスバー2は、変位吸収部28において特に発熱しやすい。これに対し、変位吸収部28と第1電池4aの出力端子10との間には第1吸熱部14が介在し、変位吸収部28と第2電池4bの出力端子10との間には第2吸熱部16が介在する。このため、バスバー2の発熱に起因する電池4の温度上昇をより抑制することができる。
【0045】
したがって、本実施の形態のバスバー2によれば、電池4間の安定的な電気的接続の維持と、電池4の発電性能の低下抑制とを図ることができる。また、このようなバスバー2を電池積層体1に設けることで、電池積層体1の性能を向上させることができる。
【0046】
また、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、本体部18よりも厚い厚肉部を有する。これにより、簡単な構造で第1吸熱部14及び第2吸熱部16の熱容量を増大させることができる。また、変位吸収部28の少なくとも一部は、積層方向Xと交わる方向に延在する。これにより、隣り合う電池4の相対的変位のうち、積層方向Xの変位をより確実に吸収することができる。また、変位吸収部28は、積層方向Xから見て少なくとも一部が第1吸熱部14及び第2吸熱部16と重なるように配置される。つまり、第1吸熱部14及び第2吸熱部16を設けることにより拡がったバスバー2の延在空間を、変位吸収部28の配置に利用している。これにより、第1吸熱部14及び第2吸熱部16及び変位吸収部28を設けることによるバスバー2の大型化を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態の電池積層体1は、電圧検出部40を有する。電圧検出部40が備える複数の電圧検出線44は、各バスバー2の変位吸収部28に当接する。これにより、電圧検出部40とバスバー2との接点を、変位吸収部28の2つの第1部分28aで挟まれる空間に配置することができる。つまり、当該接点をバスバー2の延在範囲内に納めることができる。このため、電池積層体1をより小型化することができる。
【0048】
また、電圧検出部40が備える基板42は、フレキシブルプリント基板で構成される。このため、電圧検出部40は、電池4の変位に起因してバスバー2が変位したとしても、電圧検出線44とバスバー2との接点を、バスバー2の変位に追従させることができる。よって、電圧検出線44とバスバー2との接続信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、基板42は、幹部46と、幹部46から各バスバー2の変位吸収部28に向かって延在する複数の枝部48とを有する。各枝部48は、積層方向Xに変化可能な第1部分48a、積層方向Xと直交する第2方向に変位可能な第2部分48b、並びに積層方向X及び第2方向と直交する第3方向に変位可能な第3部分48cを有する。これにより、バスバー2の積層方向X、第2方向及び第3方向への変位に対して、電圧検出線44とバスバー2との接点の追従性を高めることができる。よって、電圧検出線44とバスバー2との接続信頼性をより向上させることができる。なお、第1部分48a~第3部分48cの少なくとも1つを有していれば、少なくとも一部の方向におけるバスバー2の変位に対して、電圧検出線44とバスバー2との接続信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、第1部分48a~第3部分48cは、鉛直方向Zについて、幹部46から電池4の封口板8までの範囲内に延在する。これにより、第1部分48a~第3部分48cを設けることによる電池積層体1の大型化を抑制することができる。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態への変形の追加によって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0052】
本実施の形態では、第1吸熱部14、第2吸熱部16及び本体部18は別部材で構成されているが、これらは一体不可分な単一の部材で構成されてもよい。この場合、第1吸熱部14と第1接続部24とが連続することで、両者の電気的な接続状態が得られる。同様に、第2吸熱部16と第2接続部26とが連続することで、両者の電気的な接続状態が得られる。
【0053】
本実施の形態では、第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、バスバー2の構成部品である。しかしながら、特にこの構成に限定されない。第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、電池4の出力端子10に接合されていればよいため、これらを電池4の構成部品とみなすこともできる。この場合、バスバー2は本体部18のみからなる。したがって、本発明には、以下の態様も含めることができる。
【0054】
積層される複数の電池4と、
複数の電池4のうち、隣接する第1電池4a及び第2電池4bの各出力端子10にそれぞれ接合される第1吸熱部14及び第2吸熱部16と、
第1吸熱部14及び第2吸熱部16を電気的に接続するバスバー2(本体部18)と、を備え、
第1吸熱部14及び第2吸熱部16は、バスバー2よりも熱容量が大きく、
バスバー2は、第1吸熱部14に電気的に接続される第1接続部24と、第2吸熱部16に電気的に接続される第2接続部26と、第1接続部24と第2接続部26との間に配置され、第1電池4a及び第2電池4bの相対的な変位に応じて変形する変位吸収部28と、を有する、電池積層体1。
【0055】
上述した実施の形態では、電池4は角形電池であるが、電池4の形状は特に限定されず、円筒状等であってもよい。また、電池積層体1が備える電池4の数も特に限定されない。また、外装缶6は、シュリンクチューブ等の絶縁シートで被覆されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 電池積層体
2 バスバー
4 電池
4a 第1電池
4b 第2電池
10 出力端子
14 第1吸熱部
16 第2吸熱部
18 本体部
24 第1接続部
26 第2接続部
28 変位吸収部
40 電圧検出部
42 基板
44 電圧検出線