(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】評価システム、評価方法、プログラム、サーバ装置、及び端末装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/40 20120101AFI20230331BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20230331BHJP
【FI】
G06Q20/40 320
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2021536896
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2020027232
(87)【国際公開番号】W WO2021020090
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019142552
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤司 陽介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 賢吾
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190319(JP,A)
【文献】特開2002-157535(JP,A)
【文献】特開2009-157592(JP,A)
【文献】特開2017-059040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する情報取得部と、
前記対象者の認知機能を評価する評価部と、
前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する判断部と、
を備える、
評価システム。
【請求項2】
前記評価部で得られた前記対象者の認知機能の評価結果を、前記支払い情報と対応付けて記録する評価結果記録部を更に備える、
請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
通知部を更に備え、
前記評価部は、前記対象者の認知機能を、前記対象者の認知機能の低下の度合いを示す数値で表し、
前記通知部は、前記評価部により評価された前記認知機能の低下の度合いが、所定の閾値よりも高い場合、前記対象者本人、前記対象者の家族、及び前記対象者の保護者のうちの少なくとも一人に対して、前記支払いをキャンセルするためのキャンセル情報を通知する、
請求項1又は2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記支払い情報は、前記対価としての金額の情報を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の評価システム。
【請求項5】
前記サービスの享受は、複数の商品の取得を含み、
前記支払い情報は、取得される前記複数の商品の組み合わせに関する情報を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の評価システム。
【請求項6】
前記支払い情報は、取得される前記複数の商品の数の情報を含む、
請求項5に記載の評価システム。
【請求項7】
前記判断部は、所定期間内における前記支払い情報の履歴に基づいて、前記評価部による評価の要否を判断する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の評価システム。
【請求項8】
前記判断部は、一度の前記支払いにおける前記支払い情報に基づいて、前記評価部による評価の要否を判断する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の評価システム。
【請求項9】
前記評価部は、前記対象者の生体情報に基づいて、前記対象者の認知機能を評価する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の評価システム。
【請求項10】
前記対象者の生体情報は、前記対象者が発した音声の情報である音声データを含む、
請求項9に記載の評価システム。
【請求項11】
音声データ取得部を更に備え、
前記音声データ取得部は、前記判断部が前記評価部による評価が必要であると判断した場合に、前記対象者の前記音声データを取得する、
請求項10に記載の評価システム。
【請求項12】
対象者特定部を更に備え、
前記対象者特定部は、前記音声データと、予め取得された前記対象者の声紋の情報である声紋情報とに基づいて、前記対象者を特定する、
請求項10又は11に記載の評価システム。
【請求項13】
サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する情報取得処理と、
前記対象者の認知機能を評価する評価処理と、
前記支払い情報の取得をトリガとして、前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する判断処理と、
を備え
、
1以上のプロセッサにより実行される、
評価方法。
【請求項14】
1以上のプロセッサに、請求項13に記載の評価方法を実行させるためのプログラム。
【請求項15】
サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する情報取得部と、
前記対象者の認知機能を評価する評価部と、
前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する判断部と、
を備える、
サーバ装置。
【請求項16】
サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する情報取得部と、
前記対象者の認知機能を評価する評価部と、
前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する判断部と、
を備える、
端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に評価システム、評価方法、プログラム、サーバ装置、及び端末装置に関し、より詳細には、対象者の認知機能を評価する評価システム、評価方法、プログラム、サーバ装置、及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、見守りの対象者の店舗での商品購入状況を保護者に通知して、対象者が不要な商品を購入する乱買を行っているのか否かを保護者が把握できるようにするための、高齢者見守りシステムが開示されている。
【0003】
このシステムは、見守りの対象者の状況を管理するための管理装置と、保護者が所持する保護者端末装置と、を備えている。
【0004】
管理装置は、通信部と、制御部とを備えている。通信部は、店舗で商品を購入する人物を検知する人物検知装置及び保護者端末装置と、通信を行う。制御部は、人物検知装置から検知情報を通信部で受信すると、受信した検知情報に基づいて、店舗で商品を購入する人物が、予め登録された対象者である場合には、当該対象者の商品購入状況に関する購入通知を、通信部から保護者端末装置に送信する。
【0005】
特許文献1のシステムでは、対象者が商品を購入する際に、対象者の認知機能の程度にかかわらず、保護者に対して通知が行われる。そのため、通知を受け取る保護者の負担が大きくなり得る。そのため、特許文献1のシステムには利便性に向上の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、利便性を向上させた評価システム、評価方法、プログラム、サーバ装置、及び端末装置を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の一態様に係る評価システムは、情報取得部と、評価部と、判断部と、を備える。前記情報取得部は、サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する。前記評価部は、前記対象者の認知機能を評価する。前記判断部は、前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する。
【0009】
本開示の一態様に係る評価方法は、情報取得処理と、評価処理と、判断処理と、を備える。前記情報取得処理は、サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得することを含む。前記評価処理は、前記対象者の認知機能を評価することを含む。前記判断処理は、前記支払い情報の取得をトリガとして、前記対象者の認知機能の評価の要否を判断することを含む。前記評価方法は、1以上のプロセッサにより実行される。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記の評価方法を実行させるためのプログラムである。
【0011】
本開示の一態様に係るサーバ装置は、情報取得部と、評価部と、判断部と、を備える。前記情報取得部は、サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する。前記評価部は、前記対象者の認知機能を評価する。前記判断部は、前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する。
【0012】
本開示の一態様に係る端末装置は、情報取得部と、評価部と、判断部と、を備える。前記情報取得部は、サービスの享受に対して対象者が支払う対価に関する支払い情報を取得する。前記評価部は、前記対象者の認知機能を評価する。前記判断部は、前記支払い情報の取得をトリガとして、前記評価部による前記対象者の認知機能の評価の要否を判断する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態の評価システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の評価システムを模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、同上の評価システムに用いられる店舗装置が設けられた店舗を示す概略図である。
【
図4】
図4は、同上の評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例1の評価システムに用いられるサーバ装置のブロック図である。
【
図6】
図6は、変形例3の評価システムに用いられる端末装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)概要
近年、高齢化社会の到来に伴い、認知症患者の増加に関心が集まっている。また、認知症は症状が進行性であるため、その予防等の観点から、認知症の前段階である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)にも注目が集まっている。
【0015】
MCIは、正常な状態(健常)と認知症との中間の状態である。認知症とMCIとの主な違いは、日常生活において、患者が独立して生活できるか否かという点にある。認知症の患者では、食事、入浴、トイレ等の日常生活上必要な動作(基本的ADL:Activities of Daily Living)に障害があるのに対し、MCIの患者では、基本的ADLには大きな障害はない。その一方、基本的ADLよりも複雑な、買い物、家事、金銭管理等の手段的ADLについては、認知症患者だけでなくMCI患者にも障害が見られる。
【0016】
ところで、一口にMCIと言っても、その症状(認知機能の低下の程度)は千差万別である。例えば、人によっては、日によって認知機能(判断力)の程度にばらつきがあるMCI患者もいる。そのような人の場合には、例えば、たまたま認知機能が低下している日に不必要な買い物を行ってしまう場合もある。
【0017】
そのため、本実施形態の評価システム100は、不自然な買い物が行われた際に、購入者の認知機能の評価を行う構成を採用している。そして、不自然な買い物が行われた際に購入者の認知機能が低下していれば、その旨を通知する構成を採用している。
【0018】
すなわち、本実施形態の評価システム100は、
図1に示すように、情報取得部F11と、評価部F14と、判断部F12と、を備えている。情報取得部F11は、サービスの享受に対して対象者H1(購入者)(
図3参照)が支払う対価に関する支払い情報を取得する。評価部F14は、対象者H1の認知機能を評価する。判断部F12は、支払い情報の取得をトリガとして、評価部F14による対象者H1の認知機能の評価の要否を判断する。判断部F12は、対象者H1の認知機能の評価が必要と判断した場合、評価部F14に、対象者H1の認知機能の評価を行わせる。
【0019】
また、
図1に示すように、本実施形態の評価システム100は、通知部F16を更に備えている。評価部F14は、対象者H1の認知機能を、対象者H1の認知機能の低下の度合いを示す数値で表す。通知部F16は、評価部F14により評価された認知機能の低下の度合いが、所定の閾値よりも高い場合、対象者H1本人、対象者H1の家族、及び対象者H1の保護者のうちの少なくとも一人に対して、支払いをキャンセルするためのキャンセル情報を通知する。
【0020】
本実施形態の評価システム100によれば、不自然な買い物が行われた場合に、その購入の判断が、購入者の認知機能の低下に起因するものであるか否かの判定を行うことが可能となる。これにより、例えば、買い物時に認知機能が低下していたことを前提として、その後の対処を行うことが可能となり、利便性が向上する。
【0021】
さらに、本実施形態の評価システム100によれば、支払い情報の取得をトリガとして、必要に応じて対象者H1の認知機能の判定を行い、更に、必要に応じて通知部F16から通知が行われる。そのため、例えば通知の頻度を下げることが可能となり、利便性が向上する。
【0022】
また、本実施形態の評価システム100によれば、例えば、MCI又は認知症の自覚がない対象者H1についても、支払い情報の取得をトリガとして、評価部F14による認知機能の評価の要否を判断することが可能となる。そのため、MCI又は認知症の患者の早期発見にも寄与し得る。
【0023】
(2)詳細
以下、本実施形態の評価システム100の詳細について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0024】
(2.1)全体構成
図1、
図2に、本実施形態の評価システム100の構成を示す。
【0025】
図1に示すように、評価システム100は、店舗装置10と、サーバ装置20と、端末装置30と、を備えている。なお、店舗装置10及び端末装置30は、評価システム100の構成要素に含まれなくてもよい。
【0026】
図2に示すように、店舗装置10は、店舗1に設置されている。サーバ装置20は、本実施形態の評価システム100の主体を構成し、例えば本実施形態の評価システム100によるサービスを提供する団体の施設に設置されている。端末装置30は、例えば、対象者H1又はその家族或いは保護者(以下、「ユーザ」ともいう)によって保持される情報端末である。
【0027】
上述のように、店舗装置10は、店舗1に設置されている。店舗1は、ここでは、顧客に対してサービスを提供し、サービスの提供に対する対価を顧客が支払う対象を意味する。
【0028】
本実施形態において、サービスの提供は、例えば、商品(物品:有形の財)の販売を含む。
【0029】
商品の販売を行う店舗1の例としては、顧客に対して商品を直接販売する小売店が挙げられる。小売店の例としては、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店、ドラッグストア、衣料品店、家電量販店及びホームセンター等が挙げられる。
【0030】
また、商品の販売を行う店舗1の例としては、顧客に対して商品を間接的に販売する仮想店舗が挙げられる。仮想店舗は、例えば、インターネット及び電話回線等の電気通信回線NT1を介して顧客から商品の注文を受け付け、注文に対して顧客に商品を送達し、電子決済、現金書留又は代引き等により顧客から対価(代金)を受け取るよう構成されている。仮想店舗の例としては、例えば、通信販売が挙げられる。通信販売の形態としては、例えば、オンラインショッピング、テレビショッピング及びカタログ販売等が挙げられる。
【0031】
本実施形態において、サービスの提供は、無形の財の提供を含んでもよい。無形の財の提供としては、例えば、顧客に効用又は満足等を与え得るサービスの提供が挙げられる。無形の財を提供する店舗1(仮想店舗を含む)の例としては、飲食店、娯楽施設、旅行代理店、医療施設、保険代理店、動画視聴サービス(オンラインを含む)等が挙げられる。
【0032】
本実施形態において、サービスの提供に対して支払われる対価の形態は、特に限定されない。対価の支払い方法の例としては、クレジットカード、プリペイドカード、電子マネー、ポイントカード、暗号資産(いわゆる電子マネー)又は現金による決済処理が挙げられる。
【0033】
なお、説明の便宜上、以下では、店舗装置10が、店舗1としての小売店(例えば家電量販店)に設置されている場合を想定して説明する。
【0034】
店舗1においては、例えば、複数種類の商品が店内に陳列された状態で、複数種類の商品の販売が行われている。顧客は、店内に陳列されている複数種類の商品の中から所望の商品を選択し、選択した商品について精算を行うことで、所望の商品を購入する。商品の「精算」は、売主(店舗1)から買主(顧客)に商品の所有権を移転し、これに対する対価(代金)を買主が売主に支払う行為(売買)に必要な、買主側の決済処理を意味する。
【0035】
店舗装置10は、ここでは、POS(Point Of Sales)端末である。本実施形態では特に、店舗装置10は、ID-POSデータを取り扱うことが可能な、いわゆる「ID-POS」である。ここでいう「ID-POSデータ」は、POSデータに顧客の識別情報(ID:identification)としての「顧客ID」が付加されたデータである。この種のPOS端末(ID-POS)は、顧客が買物を行う際に顧客の認証を行うことで、顧客の識別情報(顧客ID)を取得する。顧客の認証は、一例として、会員カード、ポイントカード又はクレジットカード等の各種カード等で実現されてもよいし、顧客の携帯情報端末との通信、又は生体認証(顔認証を含む)等によって実現されてもよい。
【0036】
このような店舗装置10によれば、例えば、店舗1における商品の購入に対する支払い情報をデータとして、ネットワークNT1経由で、サーバ装置20に送信することが可能である。特に、本実施形態では、店舗装置10は、ID-POSデータを取り扱うことが可能であるため、例えば、会計が行われる前或いは会計が行われる度に、購入される商品の情報(支払い情報)を、顧客の識別情報(顧客ID)と対応付けた状態で出力できる。
【0037】
より詳細には、店舗装置10は、
図1に示すように、通信部11と、処理部12と、を備えている。また、本実施形態の店舗装置10は、音声取得部13を更に備えている。
【0038】
通信部11は、通信インタフェースである。通信部11は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する(
図2参照)。これにより、店舗装置10は、電気通信回線NT1を通じて、サーバ装置20と通信可能である。電気通信回線NT1は、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成され得る。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
図2では簡略化されているが、電気通信回線NT1は、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0039】
音声取得部13は、マイクロホンを備えている。マイクロホンは、顧客が発した音声を含む音を、音声データ(音声信号)へと変換し、通信部11を介して外部へ出力する。ここでは、音声取得部13は、電気通信回線NT1を介して、通信部11からサーバ装置20へ音声データを送信させる。
【0040】
処理部12は、店舗装置10の全体的な制御、すなわち、通信部11及び音声取得部13の動作を制御するように構成される。処理部12は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部12として機能する。プログラムは、ここでは処理部12のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0041】
図1に示すように、処理部12は、情報生成部F1と、開始指令部F2と、を備えている。なお、情報生成部F1及び開始指令部F2は、実体のある構成を示しているわけではなく、処理部12によって実現される機能を示している。
【0042】
情報生成部F1は、サービスの享受に対して顧客(対象者H1)が支払う対価に関する支払い情報を生成する。ここでは、店舗1が小売店であるので、サービスの享受は、商品(物品)の取得(購入)を含む。情報生成部F1が生成する支払い情報は、購入に係る個別の商品の価格(単価)の情報、購入に係る商品の総額の情報、購入に係る商品の数(個数)の情報、及び購入に係る商品のカテゴリの情報等を含み得る。
【0043】
商品の価格の情報は、店頭価格、定価、及び希望小売価格のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0044】
商品の数の情報は、購入に係る個別の商品の数の情報、及び購入に係る商品の総数の情報を含み得る。
【0045】
商品のカテゴリは、商品を用途、機能又は客層等で分類するためのラベルである。商品のカテゴリの情報は、その商品が属する大カテゴリ、中カテゴリ、小カテゴリの情報を含みうる。大カテゴリは、例えば、食品、衣類、医薬品、美容関連商品、電化製品又は日用品等のように、比較的大きな分類であってもよい。中カテゴリは、大カテゴリを更に複数に分類したカテゴリであってもよい。中カテゴリの具体例として、電化製品の中には、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、映像機器、照明機器、情報端末、空調機器等の中カテゴリがあり得る。小カテゴリは、中カテゴリを更に複数に分類したカテゴリであってもよい。小カテゴリの具体例として、洗濯機の中には、洗濯機の容量、洗濯機の製造メーカ等の小カテゴリがあり得る。
【0046】
本実施形態では、情報生成部F1は、会計が完了する前(精算処理の完了前)に、支払い情報を生成する。すなわち、情報生成部F1は、POS端末である店舗装置10(
図3参照)により、一以上の商品の商品情報を順次光学的に読み取る際の任意の時点、好ましくは最後の商品の商品情報が読み取られた時点で、支払い情報を生成する。情報生成部F1は、生成した支払い情報を、通信部11を介してサーバ装置20へ送信する。ここで、情報生成部F1は、支払い情報を、顧客(対象者H1)の識別情報(顧客ID)と対応付けてサーバ装置20へ送信する。
【0047】
開始指令部F2は、評価部F14が認知機能の評価を行うために用いる顧客(対象者H1)の情報(生体情報)の取得の開始を指示する。より詳細には、開始指令部F2は、サーバ装置20からの取得指令(後述する)に応じて、音声取得部13のマイクロホンの動作を開始させ、顧客(対象者H1)が発した音声を含む音を音声データへ変換させる。音声取得部13は、通信部11から、サーバ装置20へ音声データを送信させる。
【0048】
一例において、音声データは、取得指令を店舗装置10が受信してマイクロホンの集音動作が開始された後に、対象者H1から自律的に発せられた任意の音声のデータであってもよい。マイクロホンが集音する対象者H1の音声の内容は、支払いに関連していてもよいし、関連していなくてもよい。別例において、音声データは、対象者H1が所定の定型文を読み上げた際に発せられた音声のデータであってもよい。
【0049】
図1に示すように、サーバ装置20は、通信部21と、処理部22と、記憶部23と、を備えている。
【0050】
通信部21は、通信インタフェースである。通信部21は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する(
図2参照)。サーバ装置20は、電気通信回線NT1を通じて店舗装置10と通信可能である。また、サーバ装置20は、電気通信回線NT1を通じて端末装置30と通信可能である。通信部21が店舗装置10と通信するための通信プロトコルは、通信部21が端末装置30と通信するための通信プロトコルと同じであってもよいし異なっていてもよい
記憶部23は、情報を記憶するための装置である。記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM等を含み得る。
【0051】
処理部22は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部22として機能する。
【0052】
処理部22は、サーバ装置20の全体的な制御、すなわち、通信部21及び記憶部23の動作を制御するように構成される。また、
図1に示すように、処理部22は、情報取得部F11と、判断部F12と、生体情報取得部F13と、評価部F14と、評価結果記録部F15と、通知部F16と、を備えている。なお、情報取得部F11、判断部F12、生体情報取得部F13、評価部F14、評価結果記録部F15及び通知部F16は、実体のある構成を示しているわけではなく、処理部22によって実現される機能を示している。要するに、サーバ装置20は、情報取得部F11と、評価部F14と、判断部F12と、を備えている。
【0053】
情報取得部F11は、店舗装置10の情報生成部F1で生成された支払い情報を、通信部21を介して取得する。情報取得部F11は、取得した支払い情報を、顧客の識別情報(顧客ID)と対応付けて、記憶部23に記録させる。すなわち、本実施形態の評価システム100は、サービスの享受に対して対象者H1(顧客)が支払う対価に関する支払い情報を取得する情報取得部F11を、備えている。
【0054】
判断部F12は、支払い情報の取得をトリガとして、対象者H1(顧客)の認知機能の評価の要否を判断する。判断部F12は、ここでは、記憶部23に記録された対象者H1の支払い情報を処理することで、対象者H1の認知機能の評価の要否を判断する。すなわち、判断部F12は、取得した支払い情報の内容に基づいて、認知機能の評価の要否を判断する。
【0055】
本実施形態では、認知機能の評価の要否を判断するのに判断部F12が用いる支払い情報は、対価としての金額の情報を含む。
【0056】
判断部F12は、例えば、金額が所定の閾値以上の場合に認知機能の評価が必要である、と判断する。金額は、商品の単価であってもよいし、複数の商品の価格の総額であってもよい。閾値は、対象者H1本人、又は対象者H1の家族或いは保護者によって、端末装置30を用いて適宜設定可能であってよい。
【0057】
また、本実施形態では、認知機能の評価の要否を判断するのに判断部F12が用いる支払い情報は、取得される複数の商品の組み合わせに関する情報を含む。また、支払い情報は、取得される商品の数の情報を含む。
【0058】
すなわち、判断部F12は、例えば、複数の商品の購入に際して、購入される商品の組み合わせに基づいて、認知機能の評価の要否を判断する。ここでいう購入される商品の組み合わせは、購入される商品の数を含み得る。
【0059】
例えば、判断部F12は、購入される商品の組み合わせが非常識(不合理)であり得る場合に、認知機能の評価が必要である、と判断する。例えば、判断部F12は、同じ中カテゴリ(或いは小カテゴリ)に属する非消耗品が一度(或いは短期間)に複数購入される場合、例えば、冷蔵庫を同時に10台購入する場合、或いは同一サイズの液晶テレビと有機ELテレビとプラズマテレビとリアプロジェクションテレビとを同時に購入する場合等に、購入される商品の組み合わせが非常識であり得ると判断する。また、例えば判断部F12は、同時に使用することが想定される複数の商品の間の関係が非常識である場合、例えば、サイズの異なる衣料品(例えばSサイズのトップスとLLサイズのボトムス)が同時に購入される場合等に、購入される商品の組み合わせが非常識であり得ると判断する。なお、非常識(不合理)であり得る商品の組み合わせの情報は、予め記憶部23に記録されている。
【0060】
対象者H1の認知機能の評価の要否を判断するのに判断部F12が用いる支払い情報は、一度の支払いにおける支払い情報であってもよい。要するに、判断部F12は、一度の支払いにおける支払い情報に基づいて、評価部F14による評価の要否を判断してもよい。
【0061】
或いは、対象者H1の認知機能の評価の要否を判断するのに判断部F12が用いる支払い情報は、所定期間(例えば、一日、二日、三日、一週間、半月、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月、半年、一年等)内における支払い情報の履歴であってもよい。要するに、判断部F12は、所定期間内における支払い情報の履歴に基づいて、評価部F14による評価の要否を判断してもよい。
【0062】
もちろん、判断部F12は、一度の支払いにおける支払い情報に基づいて、評価部F14による評価の要否の判断を行い、かつ、所定期間内における支払い情報の履歴に基づいて、評価部F14による評価の要否の判断を行ってもよい。
【0063】
生体情報取得部F13は、認知機能の評価が必要であると判断部F12が判断すると、対象者H1(顧客)の生体情報を取得する。ここでは、対象者H1の生体情報は、対象者H1が発した音声の情報である音声データである。そのため、生体情報取得部F13は、音声データを取得するための音声データ取得部F131を備える。
【0064】
音声データ取得部F131は、認知機能の評価が必要であると判断部F12が判断すると、通信部21から店舗装置10へ、取得指令を送信させる。また、音声データ取得部F131は、取得指令に応答して店舗装置10から送信される音声データを、通信部21を介して取得し、取得した音声データを対象者H1に対応付けて記憶部23に記録する。
【0065】
要するに、本実施形態の評価システム100は、音声データ取得部F131を備える。音声データ取得部F131は、判断部F12が評価部F14による評価が必要であると判断した場合に、対象者H1の音声データを取得する。
【0066】
評価部F14は、認知機能の評価が必要であると判断部F12が判断すると、対象者H1(顧客)の生体情報に基づいて、対象者H1の認知機能を評価する。評価部F14は、ここでは、音声データ取得部F131で取得されて記憶部23に記録されている音声データを処理することで、対象者H1の認知機能を評価する。
【0067】
評価部F14は、ここでは、音声データから抽出される特徴量を用いて、対象者H1の認知機能を評価する。
【0068】
対象者H1の認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者H1の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数に関する量を含み得る。ここにおいて、第一フォルマント周波数とは、人から発せられる音声に含まれる周波数ピークのうちで最も周波数が小さいピークに対応する周波数である。第二フォルマント周波数とは、人から発せられる音声に含まれる周波数ピークのうちで二番目に周波数が小さいピークに対応する周波数である。
【0069】
また、対象者H1の認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者H1の音声に含まれる開音節における子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差を含み得る。
【0070】
また、対象者H1の認知機能の評価に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者H1の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつきを含み得る。
【0071】
なお、評価部F14による対象者H1の認知機能の評価に用いられ得る対象者H1の音声の特徴量については、例えば、特許第6337362号を参照されたい。
【0072】
評価部F14は、対象者H1の認知機能の評価結果を出力する。評価結果は、例えば、対象者H1の認知機能の低下の程度を示す数値で表される。評価部F14は、例えば、得られた認知機能の評価結果を、予め決められた複数段階のうちのどの段階に属するかを示す数値(例えば5段階中の2段階目等)で表してもよい。
【0073】
評価結果記録部F15は、評価部F14で得られた対象者H1の認知機能の評価結果を、支払い情報と対応付けて、記憶部23に記録する。要するに、本実施形態の評価システム100は、評価部F14で得られた対象者H1の認知機能の評価結果を、支払い情報と対応付けて記録する評価結果記録部F15を備える。
【0074】
通知部F16は、評価部F14による評価結果に関する結果情報を、店舗装置10及び端末装置30へ通知する。例えば、通知部F16は、評価部F14により評価された認知機能の低下の度合いが所定の閾値よりも高い場合(以下では、「認知症である可能性が高い場合」ともいう)、店舗装置10及び端末装置30へ結果情報を通知する。もちろん、通知部F16は、評価結果の内容に依らずに、店舗装置10及び端末装置30へ結果情報を通知してもよい。
【0075】
通知部F16が通知する結果情報は、評価部F14で得られた評価結果(例えば数値)そのものであってもよいし、別の形態であってもよい。
【0076】
ここでは、通知部F16は、対象者H1が認知症である可能性が高い場合、店舗装置10に対して、販売注意情報を通知する。販売注意情報は、例えば、対象者H1が認知症である可能性が高いことを示す情報を含む。販売注意情報は、商品の精算処理の中止を指示する情報を含んでもよい。
【0077】
このように、店舗装置10へ販売注意情報が送信されることで、店舗1において店舗装置10を操作する店員に、商品の販売の中止(精算処理の中止)を促すことが可能となる。そのため、対象者H1による不必要な買い物を防止することが可能となる。
【0078】
また、通知部F16は、対象者H1が認知症である可能性が高い場合、端末装置30に対して、キャンセル情報を通知する。キャンセル情報は、例えば、上述の支払い情報、商品の返品可能期限の情報、商品の返品に必要な手続き情報のうち、一つ以上の情報を含む情報である。
【0079】
ここで、商品の返品に必要な手続き情報は、例えば日本国の場合、法律に基づいて、一定の契約に限り、一定期間、説明不要で無条件で申込みの撤回または契約を解除できる制度(いわゆるクーリングオフ制度)に関する情報を含んでもよい。クーリングオフ制度に関連する法律としては、例えば、特定商取引に関する法律等がある。また、商品の返品に必要な手続き情報は、消費者契約法に基づき契約の申し込み又はその承諾の意思表示を取り消すための情報を含んでいてもよい。或いは、販売者が独自に返品可能期限を設定している場合、商品の返品に必要な手続き情報は、返品可能期限に関する情報を含んでいてもよい。
【0080】
このように、端末装置30へキャンセル情報が通知されることで、店舗装置10への販売注意情報の送信にもかかわらず精算処理が完了された場合であっても、端末装置30のユーザが精算処理(支払い)をキャンセルしやすくなる。すなわち、対象者H1による不必要な買い物を、キャンセルすることが可能となる。
【0081】
なお、サーバ装置20から端末装置30へのキャンセル情報の通知は、精算処理が完了した旨の通知を店舗装置10から受け取った後(すなわち、店舗1にて、精算処理が完了して支払いが行われた後)に、行われてもよい。
【0082】
要するに、本実施形態の評価システム100は、通知部F16を備える。通知部F16は、評価部F14により評価された認知機能の低下の度合いが、所定の閾値よりも高い場合、対象者H1本人、対象者H1の家族、及び対象者H1の保護者のうちの少なくとも一人に対して、支払いをキャンセルするためのキャンセル情報を通知する。
【0083】
なお、通知部F16は、店舗装置10と端末装置30との両方に結果情報を通知しなくてもよく、いずれか一方のみに結果情報を通知してもよい。なお、通知部F16は、少なくとも端末装置30に対して結果情報を通知することが好ましい。
【0084】
上述のように、端末装置30は情報端末である。一例として、端末装置30は、携帯端末、携帯電話又はパーソナルコンピュータである。携帯端末は、一例として、スマートフォン、タブレット端末等である。端末装置30は、サーバ装置20から送信されるキャンセル情報を提示する。本実施形態では、端末装置30はタブレット端末(
図2参照)であることを想定する。
【0085】
図1に示すように、端末装置30は、通信部31、表示部32、操作部33及び処理部34を備えている。本実施形態の端末装置30は、通話部35を更に備えている。
【0086】
通信部31は、通信インタフェースである。通信部31は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インタフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。これにより、端末装置30は、電気通信回線NT1を通じてサーバ装置20と通信可能である。
【0087】
表示部32は、通信部31で受信されたデータ等を用いて表示を行う。表示部32は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイを含んでいる。表示部32には、例えば、サーバ装置20から送信された結果情報(キャンセル情報)が表示される。
【0088】
操作部33は、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を出力する。本実施形態では、端末装置30は汎用のタブレット端末であるので、例えばタッチパネルディスプレイのように、表示部32と操作部33とが一体化されている。タッチパネルディスプレイにおいては、端末装置30は、表示部32に表示される各画面上でのボタン等のオブジェクトの操作(タップ、スワイプ、ドラッグ等)が操作部33で検出されることをもって、ボタン等のオブジェクトが操作されたことと判断する。つまり、表示部32及び操作部33は、各種の表示に加えて、ユーザからの操作入力を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。
【0089】
通話部35は、スピーカとマイクロホンとを備えている。マイクロホンは、ユーザが発した音声を含む音を、音声データ(音声信号)へと変換し、通信部31を介して外部へ出力する。スピーカは、外部から通信部31を介して入力された音声データ(音声信号)を、音声(音)に変換して出力する。
【0090】
処理部34は、端末装置30の全体的な制御、すなわち、通信部31、表示部32、操作部33及び通話部35の動作を制御するように構成される。処理部34は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部34として機能する。プログラムは、ここでは処理部34のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0091】
(2.2)動作
次に、
図4を参照して、本実施形態の評価システム100の動作の一例について簡単に説明する。
【0092】
顧客が、店舗1に陳列されている商品を適宜ピックアップし、店舗1の精算場所(
図3参照)にて店員に精算処理を依頼すると、店員は、店舗装置10を用いて商品情報の読み取りを行う。店舗装置10は、読み取った商品情報に基づいて、支払い情報を生成する。店舗装置10は、生成した支払い情報をサーバ装置20へ送信し、これによりサーバ装置20は支払い情報を取得する(情報取得処理S1)。サーバ装置20は、支払い情報を取得すると、取得した支払い情報に基づいて、認知機能の評価の要否を判断する(判断処理S2)。
【0093】
認知機能の評価の要否の判断(S3)において、評価が不要と判断すると(S3:No)、サーバ装置20は、必要であればその判断結果を店舗装置10及び/又は端末装置30へ送信して、動作を終了する。一方、評価が必要と判断すると(S3:Yes)、サーバ装置20は、通信部21から店舗装置10へ取得指令を送信する。店舗装置10は、取得指令を受けて対象者H1の音声を録音することで、対象者H1の生体情報(対象者の音声データ)を取得し(生体情報取得処理S4)、取得した生体情報をサーバ装置20へ送信する。
【0094】
サーバ装置20は、生体情報を受け取ると、受け取った生体情報を処理することで、対象者H1の認知機能の評価を行う(評価処理S5)。
【0095】
認知機能の評価(S6)において、対象者H1の認知機能が高いこと(認知症又はMCIである可能性が低いこと)を示す結果が得られた場合(S6:No)、サーバ装置20は、必要であればその評価結果を店舗装置10及び/又は端末装置30へ送信して、動作を終了する。一方、対象者H1の認知機能が低下していること(認知症又はMCIである可能性が高いこと)を示す結果が得られた場合(S6:Yes)、サーバ装置20は、その旨を示す結果情報を店舗装置10及び/又は端末装置30へ通知する(通知処理S7)。ここで、上述のように、サーバ装置20から端末装置30へ通知される結果情報には、キャンセル情報が含まれ得る。
【0096】
結果情報を店舗装置10及び/又は端末装置30が受信すると、店員又は端末装置30のユーザは、その結果情報に基づいて、適切な対処を行い得る。
【0097】
このように、本実施形態の評価システム100によれば、支払い情報の取得をトリガとして、必要に応じて対象者H1の認知機能の判定を行い、必要に応じて、通知部F16から通知が行われる。そのため、通知の頻度を下げることが可能となり、利便性が向上する。また、買い物時において対象者H1の認知機能が低下していると評価部F14が判断した場合には、キャンセル情報が通知されるため、通知を受け取った人が買い物のキャンセルを行いやすくなり、利便性が向上する。
【0098】
(3)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る評価システム100と同様の機能は、評価方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0099】
一態様に係る評価方法は、情報取得処理と、評価処理と、判断処理と、を備える。情報取得処理は、サービスの享受に対して対象者H1が支払う対価に関する支払い情報を取得することを含む。評価処理は、対象者H1の認知機能を評価することを含む。判断処理は、支払い情報の取得をトリガとして、対象者H1の認知機能の評価の要否を判断することを含む。
【0100】
一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、上述の評価方法を実行させるためのプログラムである。
【0101】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0102】
本開示における認知機能の評価システム100は、例えば、サーバ装置20等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、サーバ装置20としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0103】
また、評価システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは評価システム100に必須の構成ではなく、評価システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、評価システム100の少なくとも一部の機能、例えば、サーバ装置20の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0104】
反対に、上述の実施形態において、複数の装置に分散されている評価システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、サーバ装置20と店舗装置10とに分散されている評価システム100の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0105】
(3.1)変形例1
上述の実施形態では、判断部F12は、全ての顧客に対して、評価部F14による評価の要否の判断を行っている。しかしながら、評価システム100の判断部F12は、予め登録された対象者H1についてのみ、評価部F14による評価の要否の判断を行ってもよい。この場合、サーバ装置20は、
図5に示すように、対象者特定部F17を備えていてもよい。
【0106】
本変形例では、例えば、サーバ装置20の記憶部23に、予め登録された対象者H1に関する情報(例えば、氏名、年齢、性別等)と、予め取得された対象者H1の声紋の情報である声紋情報とが、対応付けて記録されている。この対象者H1に関する情報、及び対象者H1の声紋の情報の登録は、例えば、ユーザ(対象者H1本人、又はその家族或いは保護者)が端末装置30を用いて情報を入力し、入力された情報を端末装置30がサーバ装置20へ送信することで、行われ得る。すなわち、本変形例の評価システム100(サーバ装置20の処理部22)は、対象者H1を登録するための登録部を備えている。
【0107】
本変形例において、店舗装置10は、例えば、支払い情報をサーバ装置20へ送信する際に、音声取得部13で取得した顧客の音声データを、合わせて送信する。サーバ装置20は、店舗装置10から支払い情報及び音声データを受け取ると、記憶部23に記録されている声紋情報と音声データとを対象者特定部F17にて対比することで、顧客が対象者H1であるか否かを判定し、対象者H1を特定する。これにより、サーバ装置20は、顧客が予め登録された対象者H1である場合にのみ、評価部F14による評価の要否の判断を行うことが可能となる。
【0108】
要するに、本変形例の評価システム100は、対象者特定部F17を備える。対象者特定部F17は、対象者H1が発した音声の情報である音声データと、予め取得された対象者H1の声紋の情報である声紋情報とに基づいて、対象者H1を特定する。
【0109】
なお、これに限らず、サーバ装置20は、ID-POSデータに付加された顧客IDに基づいて、顧客が登録された対象者H1であるか否かを判定してもよい。
【0110】
(3.2)変形例2
上述の実施形態では、音声取得部13は店舗装置10に設けられている。しかしながら、音声取得部13は、店舗装置10以外の装置、例えば対象者H1が所持する情報端末(携帯端末、携帯電話、パーソナルコンピュータ等)に設けられていてもよい。
【0111】
この場合、変形例1と同様、サーバ装置20には、対象者H1に関する情報(氏名、年齢、性別等)が予め登録されている。また本変形例では、対象者H1に関する情報は、対象者H1が所持する情報端末の識別情報を更に含んでいる。
【0112】
そして、サーバ装置20の生体情報取得部F13は、判断部F12が評価部F14による評価が必要と判断すると、情報端末に対して取得指令を送信し、情報端末から音声データを取得する。評価部F14は、取得した音声データを処理することで、対象者H1の認知機能を評価する。
【0113】
なお、情報端末は、上述の実施形態の端末装置30であってもよい。
【0114】
(3.3)変形例3
本変形例では、
図6に示すように、評価システム100の機能が端末装置30に集約されている。すなわち、本変形例では、端末装置30の処理部34は、情報取得部F11、判断部F12、生体情報取得部F13、評価部F14、評価結果記録部F15の機能を有している。要するに、本変形例では、サーバ装置20を介さず端末装置30単体で、対象者H1の認知機能の評価を行う。
【0115】
なお、端末装置30が音声取得部13を備えていてもよく、端末装置30の処理部34が、情報生成部F1及び開始指令部F2の機能を有していてもよい。
【0116】
或いは、端末装置30は店舗装置10であってもよい。
【0117】
(3.4)その他の変形例
一変形例において、店舗装置10は、サーバ装置20への支払い情報の送信の要否を受け付ける受け付け部を備えていてもよい。店舗装置10は、例えば、店舗1の店員が受け付け部を操作した場合にのみ、サーバ装置20へ支払い情報を送信してもよい。
【0118】
一変形例において、店舗1は、小売店に限られず、仮想店舗であってもよい。この場合、例えば、顧客(対象者H1)が操作する電話機又はパーソナルコンピュータ等が、サーバ装置20からの取得指令に応じて、対象者H1の音声データをサーバ装置20へ送信してもよい。
【0119】
一変形例において、判断部F12は、支払い情報の内容にかかわらず、評価部F14に対象者H1の認知機能の評価を行わせてもよい。すなわち、判断部F12は、単に支払い情報の取得をトリガとして、評価部F14による対象者H1の認知機能の評価の要否を判断すればよい。
【0120】
一変形例において、評価部F14が認知機能の評価に用いる生体情報は、対象者H1の音声に関する情報に限られない。評価部F14が認知機能の評価に用いる生体情報は、例えば、対象者H1の眼球運動に関する情報、又は対象者H1の歩容に関する情報であってもよい。対象者H1の眼球運動に関する情報、又は対象者H1の歩容に関する情報は、例えば、店舗装置10又は対象者H1が所持する情報端末に設けられている撮像部(カメラ)によって、取得可能である。
【0121】
一変形例において、情報取得部F11は、店舗装置10での精算処理が完了した後に、支払い情報を受信してもよい。この場合、判断部F12は、精算処理の完了後の適宜の時点で評価部F14による評価の要否を判断し、評価が必要と判断すると、生体情報取得部F13は、対象者H1が所持する情報端末に対象者H1の生体情報を取得させる。評価部F14は、情報端末で取得された生体情報を用いて、対象者H1の認知機能を評価する。この場合、不必要な買い物を防止することはできないが、キャンセルすることは可能となり得る。
【0122】
(4)まとめ
以上述べたように、第1の態様の評価システム(100)は、情報取得部(F11)と、評価部(F14)と、判断部(F12)と、を備える。情報取得部(F11)は、サービスの享受に対して対象者(H1)が支払う対価に関する支払い情報を取得する。評価部(F14)は、対象者(H1)の認知機能を評価する。判断部(F12)は、支払い情報の取得をトリガとして、評価部(F14)による対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断する。
【0123】
この態様によれば、支払い情報の取得をトリガとして対象者(H1)の認知機能の判定を行うので、利便性が向上する。
【0124】
第2の態様の評価システム(100)は、第1の態様において、評価結果記録部(F15)を更に備える。評価結果記録部(F15)は、評価部(F14)で得られた対象者(H1)の認知機能の評価結果を、支払い情報と対応付けて記録する。
【0125】
この態様によれば、利便性が向上する。
【0126】
第3の態様の評価システム(100)は、第1又は第2の態様において、通知部(F16)を更に備える。評価部(F14)は、対象者(H1)の認知機能を、対象者(H1)の認知機能の低下の度合いを示す数値で表す。通知部(F16)は、評価部(F14)により評価された認知機能の低下の度合いが、所定の閾値よりも高い場合、対象者(H1)本人、対象者(H1)の家族、及び対象者(H1)の保護者のうちの少なくとも一人に対して、支払いをキャンセルするためのキャンセル情報を通知する。
【0127】
この態様によれば、評価部(F14)による対象者(H1)の認知機能(判断力)の評価結果に基づいて、支払いのキャンセルの手続きを行うことが可能となり、利便性が向上する。
【0128】
第4の態様の評価システム(100)では、第1~第3のいずれか1つの態様において、支払い情報は、対価としての金額の情報を含む。
【0129】
この態様によれば、金額の情報に基づいて、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することが可能となり、評価の要否の判断の信頼性が向上する。
【0130】
第5の態様の評価システム(100)では、第1~第4のいずれか1つの態様において、サービスの享受は、複数の商品の取得を含む。支払い情報は、取得される複数の商品の組み合わせに関する情報を含む。
【0131】
この態様によれば、商品の組み合わせの情報に基づいて、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することが可能となり、評価の要否の判断の信頼性が向上する。
【0132】
第6の態様の評価システム(100)では、第5の態様において、支払い情報は、取得される複数の商品の数の情報を含む。
【0133】
この態様によれば、商品の数の情報に基づいて、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することが可能となり、評価の要否の判断の信頼性が向上する。
【0134】
第7の態様の評価システム(100)では、第1~第6のいずれか1つの態様において、判断部(F12)は、所定期間内における支払い情報の履歴に基づいて、評価部(F14)による評価の要否を判断する。
【0135】
この態様によれば、所定期間内における支払い情報の履歴に基づいて、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することが可能となり、評価の要否の判断の信頼性が向上する。
【0136】
第8の態様の評価システム(100)では、第1~第7のいずれか1つの態様において、判断部(F12)は、一度の支払いにおける支払い情報に基づいて、評価部(F14)による評価の要否を判断する。
【0137】
この態様によれば、一度の支払いにおける支払い情報に基づいて、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することが可能となり、支払い毎に認知機能の評価の要否を判断することが可能となる。
【0138】
第9の態様の評価システム(100)では、第1~第8のいずれか1つの態様において、評価部(F14)は、対象者(H1)の生体情報に基づいて、対象者(H1)の認知機能を評価する。
【0139】
この態様によれば、評価部(F14)による認知機能の評価結果の信頼性が向上する。
【0140】
第10の態様の評価システム(100)では、第9の態様において、対象者(H1)の生体情報は、対象者(H1)が発した音声の情報である音声データを含む。
【0141】
この態様によれば、評価部(F14)による認知機能の評価結果の信頼性が向上する。
【0142】
第11の態様の評価システム(100)は、第10の態様において、音声データ取得部(F131)を更に備える。音声データ取得部(F131)は、判断部(F12)が評価部(F14)による評価が必要であると判断した場合に、対象者(H1)の音声データを取得する。
【0143】
この態様によれば、評価部(F14)による認知機能の評価結果の信頼性が向上する。
【0144】
第12の態様の評価システム(100)は、第10又は第11の態様において、対象者特定部(F17)を更に備える。対象者特定部(F17)は、音声データと、予め取得された対象者(H1)の声紋の情報である声紋情報とに基づいて、対象者(H1)を特定する。
【0145】
この態様によれば、対象者(H1)を特定することが可能となり、利便性が向上する。
【0146】
第13の態様の評価方法は、情報取得処理と、評価処理と、判断処理と、を備える。情報取得処理は、サービスの享受に対して対象者(H1)が支払う対価に関する支払い情報を取得することを含む。評価処理は、対象者(H1)の認知機能を評価することを含む。判断処理は、支払い情報の取得をトリガとして、対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断することを含む。
【0147】
この態様によれば、支払い情報の取得をトリガとして対象者(H1)の認知機能の判定を行うので、利便性が向上する。
【0148】
第14の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第13の態様の評価方法を実行させるためのプログラムである。
【0149】
この態様によれば、利便性が向上する。
【0150】
第15の態様のサーバ装置(20)は、情報取得部(F11)と、評価部(F14)と、判断部(F12)と、を備える。情報取得部(F11)は、サービスの享受に対して対象者(H1)が支払う対価に関する支払い情報を取得する。評価部(F14)は、対象者(H1)の認知機能を評価する。判断部(F12)は、支払い情報の取得をトリガとして、評価部(F14)による対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断する。
【0151】
この態様によれば、サーバ装置(20)が、支払い情報の取得をトリガとして対象者(H1)の認知機能の判定を行うので、利便性が向上する。
【0152】
第16の態様の端末装置(30)は、情報取得部(F11)と、評価部(F14)と、判断部(F12)と、を備える。情報取得部(F11)は、サービスの享受に対して対象者(H1)が支払う対価に関する支払い情報を取得する。評価部(F14)は、対象者(H1)の認知機能を評価する。判断部(F12)は、支払い情報の取得をトリガとして、評価部(F14)による対象者(H1)の認知機能の評価の要否を判断する。
【0153】
この態様によれば、端末装置(30)が、支払い情報の取得をトリガとして対象者(H1)の認知機能の判定を行うので、利便性が向上する。
【0154】
ところで、第1の態様の評価システム(100)において、情報取得部(F11)及び判断部(F12)に代えて、第3の態様の通知部(F16)を備えていてもよい。すなわち、第17の態様の評価システム(100)は、評価部(F14)と通知部(F16)とを備える。評価部(F14)は、対象者(H1)の認知機能を評価し、対象者(H1)の認知機能を対象者(H1)の認知機能の低下の度合いを示す数値で表す。通知部(F16)は、評価部(F14)により評価された認知機能の低下の度合いが、所定の閾値よりも高い場合、対象者(H1)本人、対象者(H1)の家族、及び対象者(H1)の保護者のうちの少なくとも一人に対して、支払いをキャンセルするためのキャンセル情報を通知する。
【0155】
この態様によれば、キャンセル情報を通知された人が、支払いのキャンセルの手続きを行うことが可能となり、利便性が向上する、という利点がある。
【符号の説明】
【0156】
20 サーバ装置
30 端末装置
100 評価システム
F11 情報取得部
F12 判断部
F131 音声データ取得部
F14 評価部
F15 評価結果記録部
F16 通知部
F17 対象者特定部
H1 対象者