(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】揺動加工装置、揺動加工方法、ハブユニット軸受の製造方法および自動車の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21J 9/02 20060101AFI20230404BHJP
B21K 1/05 20060101ALI20230404BHJP
B21J 5/12 20060101ALI20230404BHJP
F16C 43/04 20060101ALI20230404BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230404BHJP
F16C 33/64 20060101ALI20230404BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B21J9/02 A
B21K1/05
B21J5/12 Z
F16C43/04
F16C33/58
F16C33/64
F16C19/18
(21)【出願番号】P 2020068710
(22)【出願日】2020-04-07
(62)【分割の表示】P 2019214470の分割
【原出願日】2019-02-25
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018032487
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018054018
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019018458
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 徳将
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 9/02
B21K 1/05
B21J 5/12
F16C 43/04
F16C 33/58
F16C 33/64
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸と交差する面を有し、ワークピースを支持する支持体と、
前記支持体の前記面に対向して配され、前記ワークピースに対して揺動運動する揺動体であり、前記揺動体の軸が前記基準軸に対して傾いて配されかつ前記基準軸周りに動く、前記揺動体と、
前記ワークピースを覆うカバーであり、周方向の位置によって壁の高さが異なる周壁を有
する、前記カバーと、
前記ワークピースの周囲に配置されたガイドリングであり、軸受を介して前記カバーを前記基準軸周りに回転可能に支持する、前記ガイドリングと、
を備える、
揺動加工装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記揺動運動における前記揺動体の姿勢変化に伴って変化するターゲット領域をカバーするように配される、請求項
1に記載の揺動加工装置。
【請求項3】
前記基準軸に対する前記揺動体の中心軸の傾斜角度が、15度以上である、請求項
1又は2に記載の揺動加工装置。
【請求項4】
基準軸と、
被加工物を、前記基準軸と同軸になるように支持するための支持治具と、
前記基準軸に対して傾斜した中心軸を有し、かつ、軸方向片端部に形成された加工部と、軸方向中間部に形成され、軸方向他端側を向いた部分球面状の凸球面部とを有するシャフト付球面座と、
前記シャフト付球面座の軸方向他端側部分を挿通した挿通孔と、前記凸球面部と球面係合した凹球面部とを有する凹球面座と、
前記凸球面部と前記凹球面部との球面係合部を潤滑する潤滑油が、前記被加工物の周辺環境に悪影響を及ぼすのを防止するカバーと、
前記被加工物の周囲に配置されたガイドリングと、
を備え、
前記カバーが、前記ガイドリングと前記シャフト付球面座の軸方向片側部分との間に配置され、
前記ガイドリングの上面と、前記カバーの軸方向片端部との相対回転が自在であり、
前記ガイドリングは、軸受を介して前記カバーを回転可能に支持し、
前記カバーは、前記シャフト付球面座の揺動運動に伴って前記シャフト付球面座に対して相対的に前記基準軸周りに回転するように配され、
前記カバーは、前記基準軸周りに非対称な周壁を有し、
前記周壁は、周方向の位置によって壁の高さが異なる、
揺動加工装置。
【請求項5】
基準軸と交差する面を有し、ワークピースを支持する支持体と、
前記支持体の前記面に対向して配され、前記ワークピースに対して揺動運動する揺動体と、
前記ワークピースの周囲に配置されたガイドリングと、
前記基準軸周りに回転自在に配され、前記揺動体の揺動運動が前記ワークピースの周辺環境に影響するのを軽減するためのカバーであり、前記揺動体の揺動運動に伴って前記揺動体に対して相対的に前記
基準軸周りに回転する前記カバーと、
を備え、
前記カバーは、
カバー本体と、
前記基準軸周りに非対称な周壁と、
前記カバー本体の少なくとも1箇所に設けられ、前記揺動体の揺動運動に伴って前記揺動体に押される第1部材と、
を有し、
前記周壁は、周方向の位置によって壁の高さが異なり、
前記ガイドリングは、
軸受を介して前記カバーを回転可能に支持し、
前記カバーは、前記揺動体の揺動運動において前記第1部材を介して前記揺動体から受けた力によって回転するように構成される、
揺動加工装置。
【請求項6】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、転動自在に配置された転動体とを備え、
前記ハブは、内輪と、ハブ本体とを備え、
前記内輪は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側の内輪軌道を有し、
前記ハブ本体は、軸方向中間部外周面に直接または他の部材を介して設けられた、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向外側の内輪軌道と、前記軸方向外側の内輪軌道よりも軸方向内側に存在し、かつ、前記内輪を外嵌した円筒部と、前記円筒部の軸方向内端部から径方向外方に折れ曲がり、かつ、前記内輪の軸方向内端面を抑え付けるかしめ部とを有する、ハブユニット軸受の製造方法であって、
請求項
1~5のいずれか1項に記載の揺動加工装置を使用して、前記かしめ部を形成する以前の前記ハブ本体の軸方向内端部に設けられた円筒部を、径方向外方に塑性変形させることで前記かしめ部を形成する、ハブユニット軸受の製造方法。
【請求項7】
基準軸と交差する面を有する支持体によってワークピースを支持することと、
前記支持体の前記面に対向して配される揺動体を、前記揺動体の軸が前記基準軸に対して傾いて配されかつ前記基準軸周りに動くように、前記ワークピースに対して揺動運動させることと、
周方向の位置によって壁の高さが異なる周壁を有しかつ前記ワークピースを覆うカバーを、
軸受を介して回転可能に支持しかつ前記基準軸周りに回転させることと、
を含む、
揺動加工方法。
【請求項8】
ハブユニット軸受を備える自動車の製造方法であって、
前記ハブユニット軸受を、請求項
6に記載したハブユニット軸受の製造方法又は請求項
7に記載した揺動加工方法により製造する、自動車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、軸部材の軸方向端部に設けられた円筒部を径方向外方に塑性変形
させてなるかしめ部を形成するために使用可能な、揺動加工装置に関する。
本願は、2018年2月26日に出願された特願2018-032487号、2018
年3月22日に出願された特願2018-054018号、及び2019年2月5日に出
願された特願2019-018458号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用
する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪は、たとえば
図13に示すようなハブユニット軸受100により、懸架装
置に対して回転自在に支持されている。
【0003】
ハブユニット軸受100は、使用時に懸架装置を構成するナックル101に結合固定さ
れて回転しない外輪102と、使用時に車輪を構成するホイール103、およびディスク
、ドラムなどの制動用回転体104が支持固定され、これらホイール103および制動用
回転体104とともに回転するハブ105と、複数個の転動体106とを備えている。
【0004】
外輪102は、複列の外輪軌道107a、107bと、静止フランジ108とを備える
。複列の外輪軌道107a、107bは、外輪102の軸方向中間部内周面にそれぞれ形
成されている。静止フランジ108は、外輪102の軸方向中間部に、径方向外側に向け
て突出するように形成されており、円周方向複数箇所に、ねじ孔である支持孔109を有
する。外輪102は、ナックル101に形成された通孔110を挿通したボルト111を
、静止フランジ108の支持孔109に軸方向内側から螺合しさらに締め付けることで、
ナックル101に結合固定されている。
【0005】
ハブ105は、外輪102の径方向内側に外輪102と同軸に配置されており、複列の
内輪軌道112a、112bと、回転フランジ113とを備える。複列の内輪軌道112
a、112bは、ハブ105の外周面のうち、複列の外輪軌道107a、107bに対向
する部分に形成されている。回転フランジ113は、ハブ105のうち、外輪102の軸
方向外端部よりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に向けて突出するように形成
されており、円周方向複数箇所に取付孔114を有する。スタッド115の基端寄り部分
に形成されたセレーション部を、回転フランジ113の取付孔114に圧入するとともに
、スタッド115の中間部を、制動用回転体104に形成された通孔116に圧入するこ
とにより、ハブ105の回転フランジ113に制動用回転体104を結合固定している。
さらに、スタッド115の先端部に形成された雄ねじ部を、ホイール103に形成された
通孔117を挿通した状態で、雄ねじ部にナット118を螺合しさらに締め付けることに
より、回転フランジ113に車輪を結合固定している。
【0006】
転動体106は、複列の外輪軌道107a、107bと複列の内輪軌道112a、11
2bとの間に、列ごとに複数個ずつ、それぞれ保持器119に保持された状態で、転動自
在に配置されている。
【0007】
図示の例では、ハブ105を、軸方向外側(
図13の左側)の内輪軌道112aを有す
るハブ本体120と、軸方向内側(
図13の右側)の内輪軌道112bを有する内輪12
1とを、互いに結合固定することにより構成している。具体的には、ハブ本体120の軸
方向内端寄り部分に内輪121を外嵌した状態で、ハブ本体120の軸方向内端部に設け
られた円筒部122の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部123に
より、内輪121の軸方向内端面を抑え付けることで、ハブ本体120と内輪121とを
結合固定している。
【0008】
ハブ本体120の円筒部122の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させて(かしめ
拡げて)、かしめ部123を形成する場合には、たとえば、揺動加工装置(揺動鍛造装置
)の一種である揺動かしめ装置を使用することができる。
図14は、特開2001-24
1450号公報に記載されている、揺動かしめ装置124を示している。
【0009】
揺動かしめ装置124は、先端部(
図14の下端部)に加工部125を有する押型12
6と、ハブ本体120を、このハブ本体120の中心軸を上下方向に向くように支持する
ためのホルダ127とを備える。円筒部122の軸方向内端部をかしめ拡げて、かしめ部
123を形成する際には、ホルダ127を介してハブ本体120を上方に押圧しつつ、押
型126をアクチュエータにより揺動回転させる。すなわち、押型126の中心軸を、ハ
ブ本体120の中心軸に対して所定角度θだけ傾斜させた状態で、押型126を、ハブ本
体120の中心軸を中心として回転させる。換言すれば、押型126の中心軸を、ハブ本
体120の中心軸の回りで歳差運動による中心軸の軌跡の如く振れ回り運動させる。
【0010】
揺動かしめ装置124を使用して行う揺動かしめ加工によりかしめ部123を形成する
際には、押型126の円周方向の一部が円筒部9の軸方向内端部を押圧することになり、
かしめ部123への加工作業は部分的にかつ円周方向に連続して進行する。したがって、
揺動かしめ加工によれば、一般的な鍛造プレスによりかしめ部123を形成する場合に比
べて、加工に要する荷重を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-241450号公報
【文献】特開2013-91067号公報
【文献】国際公開第2004/001247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ただし、上述のような揺動かしめ装置124では、かしめ部123の加工中に、押型1
26に対して軸方向に大きな加工反力が加わる。これに対し、特開2013-13267
8号公報には、ハブユニット軸受のハブ本体の軸方向内端部にかしめ部を形成するための
ものではないが、部分凸球面状の凸球面部(半球状部)と部分凹球面状の凹球面部(受け
面)とを球面係合させることにより、揺動鍛造時に、押型(上型)に加わる加工反力を支
承可能な、揺動鍛造装置の構造が開示されている。
【0013】
特開2013-132678号公報に記載の揺動鍛造装置では、押型の中心軸が、凹球
面部の中心軸に対し所定角度だけ傾斜しているため、凹球面部の一部が、凸球面部から露
出する。このため、球面係合部を強制潤滑し、この球面係合部から径方向外方に流出した
(染み出した)潤滑油が、凹球面部から垂れ落ちて、被加工物の周辺環境に悪影響を及ぼ
す可能性がある。
【0014】
なお、国際公開第2004/001247号には、かしめ部の加工中に、外輪を回転さ
せて、転動体を自転および公転させることにより、内輪軌道および外輪軌道に圧痕が形成
されることを防止できる、揺動かしめ装置が記載されている。
【0015】
本発明は、例えば凸球面部と凹球面部との球面係合部から流出した潤滑油が、被加工物
の周辺環境に悪影響を及ぼすことを防止できるなど、周辺環境の影響を軽減でき、揺動運
動に対する適切な環境保護に有利な揺動加工装置の構造を実現することを目的としている
。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様において、揺動加工装置は、基準軸と、支持治具と、シャフト付球面座
と、凹球面座と、カバーとを備える。前記支持治具は、被加工物を、前記基準軸と同軸に
なるように支持するためのものである。前記シャフト付球面座は、前記基準軸に対して傾
斜した中心軸を有し、かつ、軸方向片端部に形成された加工部と、軸方向中間部に形成さ
れ、軸方向他端側を向いた部分球面状の凸球面部とを有する。前記凹球面座は、前記シャ
フト付球面座の軸方向他端側部分(前記シャフト付球面座のうち、前記凸球面部よりも軸
方向他端側に位置する部分)を挿通した挿通孔と、前記凸球面部と球面係合した凹球面部
とを有する。前記カバーは、前記凸球面部と前記凹球面部との球面係合部を潤滑する潤滑
油が、前記被加工物の周辺環境に悪影響を及ぼすのを防止する。
【0017】
本発明の一態様において、揺動加工装置は、所定軸と交差する面を有し、ワークピース
を支持する支持体と、前記支持体の前記面に対向して配され、前記ワークピースに対して
揺動運動する揺動体と、前記所定軸周りに回転自在に配されるカバーであり、前記揺動体
の揺動運動に伴って前記揺動体に対して相対的に前記所定軸周りに回転する前記カバーと
、を備える。例えば、揺動加工装置において、基準軸に対して揺動体の軸が傾いて配され
るとともに、その傾斜軸が基準軸周りに移動する。カバーの相対回転は、揺動運動に対す
る適切な環境保護に有利である。例えば、揺動運動における揺動体の姿勢変化に伴ってカ
バーターゲット領域の位置及び/又は面積が変化する。この場合でも、揺動体に対して相
対回転するカバーによって、変化するターゲット領域が適切にカバーされる。例えば、カ
バーが前記所定軸周りに非対称な周壁を有することにより、揺動体の揺動運動に対して所
定エリアが適切に保護される。追加的及び/又は代替的に、カバーは、カバー本体と、カ
バー本体の少なくとも1箇所に設けられ、揺動体の揺動運動に伴って揺動体に押される第
1部材と、を有する、ことができる。この場合、揺動体の運動に基づき第1部材を介して
カバーに力が付与される。一例において、この揺動体から受けた力によってカバーを回転
させることができる。
【0018】
本発明の一態様において、ハブユニット軸受の製造方法の対象となるハブユニット軸受
は、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、転
動自在に配置された転動体とを備える。前記ハブは、内輪と、ハブ本体とを備える。前記
内輪は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側の内輪軌道を有する。前記ハ
ブ本体は、軸方向中間部外周面に直接または他の部材を介して設けられた、前記複列の内
輪軌道のうちの軸方向外側の内輪軌道と、前記軸方向外側の内輪軌道よりも軸方向内側に
存在し、かつ、前記内輪を外嵌した円筒部と、前記円筒部の軸方向内端部から径方向外方
に折れ曲がり、かつ、前記内輪の軸方向内端面を抑え付けるかしめ部とを有する。
【0019】
本発明の一態様におけるハブユニット軸受の製造方法では、上述のような揺動加工装置
を使用して、前記かしめ部を形成する以前の前記ハブ本体の軸方向内端部に設けられた円
筒部を、径方向外方に塑性変形させることで前記かしめ部を形成する。
【0020】
本発明の一態様において、自動車の製造方法の対象となる自動車は、ハブユニット軸受
を備える。この自動車の製造方法では、前記ハブユニット軸受を、上述のようなハブユニ
ット軸受の製造方法により製造する。
【発明の効果】
【0021】
上述のような本発明の揺動加工装置によれば、例えば凸球面部と凹球面部との球面係合
部から流出した潤滑油が、被加工物の周辺環境に悪影響を及ぼすことが防止されるなど、
周辺環境の影響を軽減することができる。また、本発明の揺動加工装置は、揺動運動に対
する適切な環境保護に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例にかかる揺動加工装置(揺動鍛造装置)を示す略断面図である。
【
図3】
図3は、カバーの製造方法を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の効果を確認するために行ったシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】
図5は、ベース板と押型との結合構造の別例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の第2例にかかる揺動加工装置(揺動鍛造装置)を示す、要部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、カバーを取り出して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の第3例にかかる揺動加工装置(揺動鍛造装置)を示す、
図2と同様の図である。
【
図9】
図9は、シャフト付球面座と、カバーおよび変換機構と、ガイドリングとを取り出して、かつ、変換機構の蓋部を取り外して示す、側面図である。
【
図10】
図10は、カバーおよび変換機構と、ベース板とを取り出して示す、斜視図である。
【
図13】
図13は、従来から知られている車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、揺動加工装置(揺動鍛造装置)の従来構造の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
図1~
図5は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の揺動加工装置15は
、揺動鍛造装置であり、ハブ本体7の円筒部9の軸方向内端部を、軸方向外方に押し潰し
つつ径方向外方に押し拡げるように塑性変形させて(かしめ拡げて)、かしめ部10を形
成する揺動かしめ加工に使用されるものである。
【0024】
なお、本例では、被加工物であるハブユニット軸受1のハブ3は、ハブ本体7の軸方向
中間部外周面に、1対の内輪8a、8bを外嵌し、かつ、ハブ本体7の軸方向内端部に設
けられた円筒部9の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部10により
、軸方向内側の内輪8bの軸方向内端面を抑え付けることにより構成されている。ただし
、本例の対象となるハブユニット軸受1を、
図13に示したハブユニット軸受100のよ
うに、軸方向中間部外周面に軸方向外側の外輪軌道を有するハブ本体と、1個の内輪とに
より構成することもできる。
【0025】
また、ハブユニット軸受1では、転動体6として、円すいころを使用しているが、
図1
3に示したハブユニット軸受100のように、玉を使用することもできる。
【0026】
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向内側とは、ハブユニット軸受1を懸架装置
に組みつけた状態での車両の幅方向中央側をいい、反対に、ハブユニット軸受1を懸架装
置に組みつけた状態での車両の幅方向外側を、軸方向外側という。
【0027】
本例の揺動鍛造装置15は、工場などの床面に載置され、揺動鍛造装置15の運転中に
も変位しないフレーム16と、支持治具(支持体)17と、シャフト付球面座(揺動体)
18と、凹球面座19と、駆動機構38と、外輪回転機構43と、油受け20と、カバー
21とを備える。また、揺動鍛造装置15は、加工の基準となる基準軸Cを有する。本例
では、基準軸Cは、上下方向を向いており、揺動鍛造装置15の中央部に配置されている
。
【0028】
支持治具17は、ハブユニット軸受(ワークピース、被加工物)1を、このハブユニッ
ト軸受1の中心軸と基準軸Cとが同軸となるように、かつ、ハブユニット軸受1の軸方向
外端部が下方を、同じく軸方向内端部が上方を、それぞれ向くように支持する。すなわち
、支持治具17は、上面に、ハブ本体7の軸方向外端部と、径方向のがたつきなく係合(
嵌合)可能な支持凹部22を有する。このような支持治具17は、フレーム16内の下部
に、基準軸Cに沿った昇降を可能に設置された昇降台23の上端部に支持されている。
【0029】
シャフト付球面座18は、基準軸Cに対して傾斜した中心軸O
18を有し、かつ、軸方
向片端部(
図1および
図2の下端部)に形成された加工部12と、軸方向中間部に形成さ
れ、軸方向他端側(
図1および
図2の上側)を向いた部分球面状の凸球面部24とを有す
る。シャフト付球面座(揺動体)18は、所定軸と交差する、支持治具17の面に対向し
て配され、ワークピース(被加工物)1に対して揺動運動する。所定軸は、例えば、基準
軸C、及び/又はカバー21の中心軸(回転軸)である。
【0030】
なお、シャフト付球面座18、並びに、シャフト付球面座18を構成するシャフト本体
25、凸球面座、ベース板27および押型13に関して、軸方向片端側とは、加工部12
が形成された先端部の側であって、
図1および
図2の斜め左下側をいい、軸方向他端側と
は、加工部12が形成された先端部と反対側であって、
図1および
図2の斜め右上側をい
う。
【0031】
基準軸Cに対するシャフト付球面座18の中心軸O18の傾斜角度θは、15度以上4
5度以下であることが好ましく、15度以上30度以下であることがより好ましく、15
度以上18度以下であることがさらに好ましい。例えば、傾斜角度θは、5、10、12
、14、16、18、20、25、30、35、40、又は45度にできる。本例では、
傾斜角度θを、15度としている。傾斜角度θを15度以上とすることにより、円筒部9
を軸方向外方に押し潰す方向の力、および、円筒部9を径方向外方に押し拡げる方向の力
を適切な大きさに調整することができるとともに、円筒部9の外周面のうち、内輪8bの
内周面と当接(嵌合)している部分の表面粗さを良好にできて、ハブユニット軸受1の耐
久性の向上を図ることができる。また、傾斜角度θを30度以下にすれば、かしめ部10
を揺動かしめ加工により形成する際に、このかしめ部10の摩耗量を少なく抑えることが
できて、ハブユニット軸受1の耐久性の向上を図ることができる。傾斜角度θを15度未
満としたり、45度より大きくしたりすることもできる。本発明の揺動鍛造装置を用いて
ハブユニット軸受1を製造する場合には、傾斜角度θを、15度以上18度以下とするこ
とが、構造上好ましい。
【0032】
本例では、シャフト付球面座(揺動体)18は、シャフト本体25と、凸球面座26と
、ベース板27と、押型(加工具)13とを組み合わせることにより構成されている。
【0033】
シャフト本体25は、軸部28と、軸部28の軸方向片端部外周面から径方向外方に突
出したフランジ部29と、軸方向片端面の中央部に形成された第1の位置決め凹部30と
を備える。
【0034】
凸球面座26は、軸方向他端側の側面に形成された凸球面部24と、軸方向片端側の側
面に形成された嵌合凹部31と、貫通孔32とを備える。嵌合凹部31は、シャフト本体
25のフランジ部29を、径方向のがたつきなく内嵌可能となっている。貫通孔32は、
凸球面座26の中心部を軸方向に貫通するように形成されており、シャフト本体25の軸
部28の軸方向中間部(フランジ部29が形成された部分の軸方向他端側に隣接する部分
)を径方向のがたつきなく挿通可能となっている。
【0035】
ベース板27は、軸方向他端側の側面に形成され、かつ、シャフト本体25の第1の位
置決め凹部30と径方向のがたつきなく嵌合可能な第1の位置決め凸部33と、軸方向片
端側の側面に形成された第2の位置決め凸部34とを有する。
【0036】
押型(加工具、揺動体)13は、軸方向片端部に形成された加工部12と、軸方向他端
側の側面に形成され、かつ、ベース板27の第2の位置決め凸部34と径方向のがたつき
なく嵌合可能な第2の位置決め凹部66とを有する。すなわち、押型13の軸方向片端側
の側面の中央部に、円すい状の突出部57を形成し、この突出部57の周囲に断面円弧状
の凹溝58を、突出部57の全周を囲むように形成することにより、加工部12を構成し
ている。押型(加工具、揺動体)13は、所定軸と交差する、支持治具17の面に対向し
て配され、ワークピース(被加工物)1に対して揺動運動する。
【0037】
シャフト本体25と凸球面座26とは、軸部28の軸方向中間部を貫通孔32に径方向
のがたつきなく挿通または圧入し、かつ、フランジ部29を嵌合凹部31に径方向のがた
つきなく内嵌することにより組み合わされる。また、ベース板27と押型(加工具)13
とは、押型13の第2の位置決め凹部66にベース板27の第2の位置決め凸部34を径
方向のがたつきなく内嵌し、押型13に形成された円孔を挿通したボルトを、ベース板2
7に形成したねじ孔に螺合するなどして結合固定される。本例では、本体部であるシャフ
ト本体25と凸球面座26との組立体と、ベース板27と押型13との組立体とを、第1
の位置決め凹部30と第1の位置決め凸部33とを凹凸係合し、かつ、ボルトなどの結合
部材により結合することにより、シャフト付球面座18を構成している。
【0038】
ただし、
図5に示すように、ベース板27aと押型(加工具)13aとは、押型13a
の基端部(軸方向他端部。
図5の上端部)を、ベース板27aの軸方向片端側の側面に形
成された保持凹部67にがたつきなく内嵌し、押型13aに形成された円孔を挿通したボ
ルトを、ベース板27aに形成したねじ孔に螺合するなどして結合固定しても良い。また
、シャフト本体25、凸球面座26、ベース板27、27aおよび押型13、13aを結
合固定する方法については、ボルトによる方法に限らず、たとえば、圧入や止め輪などに
より結合固定することもできる。また、シャフト本体25、凸球面座26、ベース板27
および押型13のうちの一部を一体に形成したり、シャフト付球面座18全体を一体に形
成したりすることもできる。
【0039】
凹球面座19は、シャフト付球面座18の軸方向中間部(シャフト本体25の軸部28
のうち、凸球面座26の凸球面部24から軸方向他端側に突出した部分)を挿通するため
の挿通孔35と、シャフト付球面座18の凸球面部24と球面係合する、部分球面状の凹
球面部36とを備える。本例では、凹球面座19は、フレーム16内の上下方向中間部に
支持固定されている。
【0040】
本例では、シャフト付球面座18の凸球面部24と、凹球面座19の凹球面部36とを
球面係合することにより、シャフト付球面座18が基準軸Cを中心として揺動運動(揺動
回転、公転)すること、および、シャフト付球面座18が自身の中心軸O18を中心とし
て姿勢変化(回転運動、自転)することを許容し、かつ、揺動鍛造を行う際に、シャフト
付球面座18に加わる加工反力を支承可能としている。なお、揺動鍛造装置15の運転中
、すなわち、後述する駆動機構38により、シャフト付球面座18が基準軸Cを中心とし
て揺動運動している間、凸球面部24と凹球面部36との球面係合部は、凹球面部36に
形成された複数の吐出口から吐出される潤滑油により、強制潤滑される。
【0041】
本例では、凹球面座19の挿通孔35は、上方に向かうほど内径寸法が大きくなるテー
パ孔となっている。また、フレーム16のうち、凹球面座19の挿通孔35の上側に隣接
する部分であって、シャフト付球面座18の軸方向中間部が挿通した部分は、上方に向か
うほど内径寸法が段階的に大きくなる段付孔37となっている。挿通孔35および段付孔
37の内径寸法は、シャフト付球面座18が基準軸Cを中心として揺動運動する際に、挿
通孔35および段付孔37の内周面と、シャフト付球面座18の外周面とが干渉しないよ
うに規制されている。
【0042】
なお、本例において、フレーム16のうち、凹球面座19の挿通孔35の上側に隣接す
る部分を段付孔37としている理由は、加工を容易にするためである。本発明を実施する
場合、フレーム16のうち、凹球面座19の挿通孔35の上側に隣接する部分を、上方に
向かうほど内径寸法が大きくなるテーパ孔とすることもできる。
【0043】
駆動機構38は、シャフト付球面座18の軸方向他端部に対し、このシャフト付球面座
18が基準軸Cを中心として揺動回転するための駆動力を付与するためのものである。駆
動機構38は、フレーム16内の上端部に支持固定されており、かつ、シャフト付球面座
18のシャフト本体25の軸部28のうち、段付孔37から上方に突出した軸方向他端部
に、駆動力を付与可能に連結している。
【0044】
駆動機構38は、回転体39と、軸受40とを備える。回転体39は、フレーム16内
の上端部に、軸受装置41を介して、基準軸Cを中心とする回転のみを可能に支持されて
いる。また、回転体39は、径方向中間部の円周方向1箇所位置に、上方に向かうほど径
方向外方に向かう方向に傾斜した保持孔42を有する。基準軸Cに対する保持孔42の中
心軸の傾斜角度は、基準軸Cに対するシャフト付球面座18の中心軸O18の傾斜角度θ
と同じである。また、回転体39には、この回転体39を、基準軸Cを中心に回転駆動す
るためのモータ(図示省略)の出力部が、直接または減速機を介して接続されている。
【0045】
軸受40は、保持孔42の内周面と、シャフト付球面座18の軸方向他端部外周面との
間に設けられており、保持孔42に対してシャフト付球面座18の軸方向他端部を回転可
能に支持している。なお、本例では、軸受40として、自動調心ころ軸受を使用している
。代替的に、ラジアル荷重およびアキシアル荷重を支承可能であれば、深溝玉軸受やアン
ギュラ玉軸受などの転がり軸受を使用することもできる。
【0046】
外輪回転機構43は、ハブユニット軸受1の外輪2を回転駆動することにより、転動体
6を自転および公転させ、かしめ部10を形成することに伴って、外輪2に備えられた外
輪軌道4a、4bおよびハブ3に備えられた内輪軌道5a、5bに圧痕が形成されること
を防止するためのものである。外輪回転機構43は、図示しない電動モータと、この電動
モータにより回転駆動される駆動環44と、この駆動環44に対し若干の昇降を可能に、
かつ、駆動環44と同期した回転を可能に支持された駆動治具45とを備える。具体的に
は、図示の例では、駆動環44と駆動治具45とを、ボールスプライン48を介して組み
合わせている。駆動環44の上端部には、径方向内方に突出した内向フランジ部68が設
けられており、この内向フランジ部68の下側面と駆動治具45の上端面との間には、捩
りコイルばね69が挟持されている。このような構成により、駆動治具45を、駆動環4
4に対する上下方向変位を可能に支持することで、駆動治具45の下端部を、外輪2の結
合フランジ46に結合可能としている。外輪回転機構43は、外輪2の結合フランジ46
に係合した駆動治具45を、駆動環44を介して、電動モータにより回転駆動することで
、外輪2を回転駆動可能に構成されている。なお、駆動環44は、駆動環44の周囲に、
径方向内側から順に、ラジアル軸受47と、断面L字形で全体が円環状のガイドリング4
9と、油受け20とを介して、フレーム16に対し回転可能に支持されている。ただし、
外輪回転機構43は、上述の構成に限らず、外輪2を回転駆動することにより、転動体6
を自転および公転させることができる限り、各種の構成を採用できる。
【0047】
油受け20は、断面略L字形に構成されており、凹球面座19の軸方向片端部(下端部
)の周囲に支持固定された円筒部50と、この円筒部50の下端部から径方向内方に折れ
曲がった円輪部51とを備える。円輪部51は、上面に、凹球面座19の凹球面部36の
外周縁に全周にわたり対向する環状凹部52を有する。したがって、シャフト付球面座1
8の凸球面部24と、凹球面座19の凹球面部36とを球面係合部を潤滑し、この球面係
合部の外周縁部から流出した(染み出した)潤滑油の大部分は、凹球面部36に沿って下
方に移動し、この凹球面部36の外周縁部から環状凹部52内に垂れ落ちる。環状凹部5
2内に垂れ落ちた潤滑油は、油受け20に形成された図示しない通油孔から回収され、潤
滑油流路を介して、再びノズルから凸球面部24と凹球面部36との球面係合部に供給さ
れる。
【0048】
カバー21は、例えば、ゴム、合成樹脂、アルミニウム合金などの軽合金、炭素鋼など
の鉄系金属、又は他の材料から形成できる。カバー21は、円筒を斜めに切断した斜切円
筒状(竹割形状)の覆い部(カバー本体)53と、この覆い部53の上端部から径方向内
方に折れ曲がった内向フランジ部54とを備える。覆い部(カバー本体)53は、所定軸
周りに非対称な周壁を有する。例えば、周壁は、所定軸周りの周方向の位置によって軸長
さ(壁の高さ)が異なる。追加的及び/又は代替的に、覆い部(カバー本体)53は、所
定軸に垂直な第1仮想面に平行に配される軸端面と、所定軸に対して傾いた第2仮想面に
平行に配される軸端面とを有する周壁を有する。このようなカバー21を造る際には、ま
ず、
図3(B)に示すような、円筒部61と、この円筒部61の上端部から径方向内方に
折れ曲がった内向フランジ部54とを備えた筒状部材62を造る。次いで、筒状部材62
の中心軸O
62に直交する第1の仮想平面αに対し傾斜する第2の仮想平面βに沿って円
筒部61を切断することにより、カバー21を得る。第1の仮想平面αに対する第2の仮
想平面βの傾斜角度φは、基準軸Cに対するシャフト付球面座18の中心軸O
18の傾斜
角度θ(
図1参照)と同じにする。なお、揺動鍛造装置15への取付状態においては、筒
状部材62の中心軸O
62(カバー21の中心軸O
21)は、シャフト付球面座18の中
心軸O
18と同軸に配置される。したがって、揺動鍛造装置15への取付状態においては
、内向フランジ部54の軸方向他側面が、シャフト付球面座18の中心軸O
18に直交す
る第1の仮想平面α
1上に存在するとともに、覆い部53の下側面が、基準軸Cに直交す
る第2の仮想平面β
1上に存在する。
【0049】
カバー21は、内向フランジ部54の径方向内端部を、シャフト付球面座18のベース
板27の外周面に、4点接触型の玉軸受などのラジアル転がり軸受である、転がり軸受5
5を介して回転自在に支持している。また、カバー21の覆い部53の下端面を、複数個
のラジアル転がり軸受60を介して、被加工物であるハブユニット軸受1の周囲に配置さ
れ、かつ、フレーム16に支持されたガイドリング49の上面に載置している。すなわち
、ガイドリング49の上端部に、複数個のラジアル転がり軸受60の内輪を、それぞれの
中心軸を、基準軸Cを中心とする放射方向に配置した状態で、基準軸Cを中心とする円周
方向に関して等間隔に支持している。そして、カバー21の覆い部53の下端面を、複数
個のラジアル転がり軸受60の外輪の上面(外輪の外周面のうちの上側部分)に載置して
いる。これにより、かしめ部10の加工中に、ガイドリング49の上面と、カバー21の
軸方向片端部との相対回転が自在となっている。
【0050】
本例の揺動鍛造装置15により、ハブ本体7の軸方向内端部にかしめ部10を形成する
際には、まず、かしめ部10を形成する前のハブ本体7と、ハブユニット軸受1を構成す
る他の部品とを組み立てた状態で、ハブ本体7の中心軸と基準軸Cとが同軸となるように
、かつ、ハブユニット軸受1の軸方向外端部が下方を、同じく軸方向内端部が上方を向く
ように、支持治具17によりハブ本体7を径方向のがたつきなく支持する。
【0051】
次いで、昇降台23を上昇させることにより、シャフト付球面座18の加工部12のう
ち、凹溝58の円周方向一部を、ハブ本体7の軸方向内端部に設けられた円筒部9の軸方
向内端部の円周方向一部に押し付ける。これとともに、外輪2の結合フランジ46に駆動
治具45を係合させる。
【0052】
次に、基準軸Cを中心として回転体39を回転させることに基づき、シャフト付球面座
18を、基準軸Cを中心として揺動回転させる。この際、シャフト付球面座18は、加工
部12aの凹溝58と円筒部9の軸方向内端部との接触部に作用する摩擦力に基づいて、
自身の中心軸O18を中心として回転(自転)する。また、この際、凸球面部24と凹球
面部36との球面係合部を、凹球面部36に形成された複数の吐出口から吐出した潤滑油
により、強制的に潤滑させている。シャフト付球面座18を揺動回転させることにより、
円筒部9の円周方向一部分に、軸方向外側かつ径方向外側に向いた荷重を加えつつ、この
荷重を加える部分を円周方向に関して連続的に変化させることで、円筒部9の軸方向内端
部を徐々に塑性変形させてかしめ部10を形成する。特に、動鍛造によってかしめ部10
を形成する際のシャフト付球面座18の揺動角度(傾斜角度θ)を15度以上30度以下
に設定すれば、この揺動鍛造を行う際の最大加工荷重を低く抑えられる。
【0053】
本例の揺動鍛造装置15では、かしめ部10の加工中に、ハブユニット軸受1の軸方向
内端部や、このハブユニット軸受1の周囲に存在する、外輪回転機構43、ラジアル軸受
47およびガイドリング49の上端部が、カバー21により覆われている。したがって、
凸球面部24と凹球面部36との球面係合部を強制潤滑し、この球面係合部の外周縁部か
ら流出した(染み出した)潤滑油の一部が垂れ落ちた場合でも、この潤滑油が、ハブユニ
ット軸受1の軸方向内端部や、外輪回転機構43、ラジアル軸受47およびガイドリング
49の上端部に付着することを、カバー21により防止することができる。すなわち、潤
滑油によって、ハブユニット軸受1の周辺環境に悪影響が及ぶことを防止することができ
る。
【0054】
なお、凹球面部36から垂れ落ちた潤滑油は、カバー21の外周面により、油受け20
の環状凹部52内に案内され、通油孔から回収される。揺動鍛造装置15において、基準
軸に対して揺動体(シャフト付球面座18、押型13(13a))の軸が傾いて配される
とともに、その傾斜軸が基準軸周りに移動する。カバー21の相対回転は、揺動運動に対
する適切な環境保護に有利である。例えば、揺動運動におけるシャフト付球面座(揺動体
)18の姿勢変化に伴ってカバーターゲット領域の位置及び/又は面積が変化する。この
場合でも、シャフト付球面座(揺動体)18に対して相対回転するカバー21によって、
変化するターゲット領域が適切にカバーされる。カバー21が所定軸周りに非対称な周壁
53を有することにより、シャフト付球面座(揺動体)18の揺動運動に対して所定エリ
アが適切に保護される。
【0055】
また、本例では、カバー21の内向フランジ部54の径方向内端部を、シャフト付球面
座18のベース板27の外周面に、転がり軸受55を介して回転自在に支持し、かつ、カ
バー21の軸方向片端部を、ガイドリング49の上面に、複数個のラジアル転がり軸受6
0を介して回転自在に載置している。このため、シャフト付球面座18の揺動回転に伴っ
て、カバー21を円滑に回転させることができる。すなわち、かしめ部10の加工中、常
に、シャフト付球面座18のベース板27の外周面とガイドリング49の上面との距離が
近い部分に、カバー21の覆い部53のうち、軸方向寸法が短い部分を位置させることが
できる。
【0056】
すなわち、本例のように、カバー21を、シャフト付球面座18およびガイドリング4
9に対し回転自在とした場合を想定し、カバー21と、シャフト付球面座18およびガイ
ドリング49とのそれぞれの間の摩擦係数を0として、シャフト付球面座18を、基準軸
Cを中心として揺動回転させた場合をシミュレーションした結果、
図4(A)(a)→図
4(A)(b)に示すように、カバー21は、破損することなく円滑に回転する。
【0057】
一方、カバー21とシャフト付球面座18とを潤滑油により潤滑し、かつ、カバー21
の軸方向片端部をガイドリング49の上面に直接摺接させた場合を想定し、カバー21と
シャフト付球面座18との間の摩擦係数を0.2とし、カバー21とガイドリング49と
の間の摩擦係数を0.4として、シャフト付球面座18を、基準軸Cを中心として揺動回
転させるシミュレーションを行うと、
図4(B)(a)→
図4(B)(b)に示すように
、カバー21が変形あるいは破損してしまう。
【0058】
本例では、揺動鍛造装置15により、ハブユニット軸受1のハブ本体7の軸方向内端部
を、径方向外方に塑性変形させて、かしめ部10を形成する場合について説明したが、本
発明の揺動加工装置は、これに限らず、ハブの軸方向内端部にフェイススプラインを有す
るハブユニット軸受やかさ歯車(ベベルギヤ)、軸方向端部にフランジ部を有するリング
状部材など、種々の被加工物の揺動鍛造加工に使用することができる。本発明の揺動加工
装置は、鍛造以外の加工を行う装置にも適用できる。
【0059】
[実施の形態の第2例]
図6および
図7は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例では、カバー21
aは、それぞれが円環状である1対のリム部64a、64bと、リム部64a、64b同
士の間に全周にわたってかけ渡された蛇腹状の蛇腹部である、筒状部65とを備える。筒
状部65は、ゴムや布などの可撓性を有する材料製である。ただし、筒状部65は、軸方
向寸法を伸縮させる際に、弛みが生じないか、生じた場合でもシャフト付球面座18(図
1および
図2参照)の基準軸Cを中心とする揺動回転の邪魔にならない程度に抑えること
ができるのであれば、蛇腹状とする必要はなく、単なる円筒状または円すい筒状としても
良い。
【0060】
本例では、カバー21aのうち、上側のリム部64aを、シャフト本体25aのフラン
ジ部29aの軸方向片端部(下端部)外周面に支持固定するとともに、下側のリム部64
bを、スラスト転がり軸受63を介して、ガイドリング49の上面に回転自在に載置して
いる。ただし、下側のリム部64bは、実施の形態の第1例の構造のように、中心軸を、
基準軸Cを中心とする放射方向に配置した複数個のラジアル転がり軸受の外輪の上面に載
置することもできる。
【0061】
このような本例の場合も、かしめ部10(
図1および
図2参照)の加工中に、ハブユニ
ット軸受1の軸方向内端部や、このハブユニット軸受1の周囲に存在する、外輪回転機構
43、ラジアル軸受47(
図1参照)およびガイドリング49の上端部を、カバー21a
により覆うことができる。したがって、凸球面部24と凹球面部36との球面係合部から
流出した潤滑油により、ハブユニット軸受1の周辺環境に悪影響が及ぶことを防止するこ
とができる。
【0062】
また、本例では、蛇腹状に構成された筒状部65のうち、円周方向に関する位相が、フ
ランジ部29aの外周面とガイドリング49の上面との距離が近い部分と一致する部分(
図6の鎖線Aで囲んだ部分)が、軸方向寸法を縮めつつ、少したるんで、環状凹部52内
に入り込むように変形する。これにより、シャフト付球面座18(
図1および
図2参照)
とガイドリング49との間にカバー21aを設置した場合であっても、シャフト付球面座
18の揺動回転を可能としている。
【0063】
本例では、カバー21aの下端部を、ガイドリング49に対し回転自在に支持している
が、これに代えて、あるいは、これに加えて、カバー21aの上端部を、シャフト付球面
座18(のシャフト本体)に対し回転自在に支持するように構成することもできる。その
他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0064】
[実施の形態の第3例]
図8~
図11は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例のカバー21bは、
実施の形態の第1例のカバー21と同様に、斜切円筒状の覆い部53aと、この覆い部5
3aの上端部から径方向内方に折れ曲がった内向フランジ部54とを備える。カバー21
は、覆い部53aの下端面を、実施の形態の第1例の場合と同様に、複数個のラジアル転
がり軸受60を介して、ガイドリング49の上面に載置している。これに対し、内向フラ
ンジ部54の径方向内端部は、実施の形態の第1例の場合と異なり、シャフト付球面座1
8に対して支持されておらず、ベース板27の外周面に、全周にわたり隙間を介して対向
している。シャフト付球面座(揺動体)18は、所定軸と交差する、支持治具17の面に
対向して配され、ワークピース(被加工物)1に対して揺動運動する。所定軸は、例えば
、基準軸C、及び/又はカバー21の中心軸(回転軸)である。
【0065】
本例の揺動鍛造装置15は、変換機構70を備える。変換機構70は、シャフト付球面
座18とカバー21bとの間に配置され、シャフト付球面座18が基準軸Cを中心に揺動
回転(公転)することに伴って入力される力を、カバー21bが基準軸Cを中心に回転す
るための力に変換する。変換機構70は、カバー21bの覆い部53aのうちで軸方向寸
法が最も長い部分(
図9の鎖線γで囲んだ部分)および最も短い部分(
図9の鎖線δで囲
んだ部分)から外れた部分と、シャフト付球面座18の凸球面座26の軸方向片端面(図
9の斜め右下を向いた、鎖線矢印εが指す面)との間に配置されている。本例では、カバ
ー21bの覆い部53aのうちで軸方向寸法が最も短い部分から、基準軸Cを中心とする
円周方向に少し外れた部分に、覆い部53aの外周面と軸方向他端面(
図9の斜め左上を
向いた、鎖線矢印ζが指す面)とに開口する切り欠き部71を形成し、切り欠き部71の
内側に、変換機構70を配置している。変換機構70は、ケーシング72と、入力部材(
第1部材、ローラ)73と、出力機構74とを備える。一例において、変換機構70は、
カバー21bに設けられ、カバー21bが変換機構70を含む。カバー21bは、覆い部
(カバー本体)53aと、覆い部53aの少なくとも1箇所に設けられ、シャフト付球面
座(揺動体)18の揺動運動に伴ってシャフト付球面座(揺動体)18に押される入力部
材(第1部材)73を有する。
【0066】
ケーシング72は、側面視略台形状に構成されており、上面に開口し、かつ、基準軸C
の軸方向に凹んだ収容凹部75を備える。ケーシング72は、カバー21bの切り欠き部
71の内側に、支持固定されている。本例では、ケーシング72は、第1ケーシング素子
76と、第2ケーシング素子77とを備える。
【0067】
第1ケーシング素子76は、略台形板状の側板部78と、側板部78の内側面の両端部
(
図9の左右両端部)から突出した1対の壁部79a、79bと、側板部78の内側面の
下端部から突出し、かつ、1対の壁部79a、79bの下端部同士を連結する底部80と
を備える。第1ケーシング素子76は、1対の壁部79a、79bのうち、一方(
図9~
図11の右方)の壁部79aの下端寄り部分に、一方の壁部79aの両側面(
図9の左右
両側面)と先端面とに開口する凹孔81を有する。
【0068】
第2ケーシング素子77は、略台形板状で、第1ケーシング素子76の側板部78と同
一の輪郭形状を有する。
【0069】
ケーシング72は、第1ケーシング素子76の1対の壁部79a、79bおよび底部8
0の先端面に、第2ケーシング素子77の内側面を突き当てた状態で、第1ケーシング素
子76と第2ケーシング素子77とを、ねじ止めなどにより結合固定してなる。
【0070】
入力部材73は、円筒状に構成されており、中心軸を、カバー21bの中心軸と覆い部
53aのうちで軸方向寸法が最も長い部分および最も短い部分とを含む仮想平面(
図9の
紙面に平行な面)に直交する方向に配置している。具体的には、本例では、入力部材73
として、ラジアル玉軸受を使用している。ただし、入力部材73は、円筒状で、外周面が
、摩耗や塑性変形を防止できる程度の硬さ(たとえばHRC40以上の硬さ)を有してい
れば、ラジアル玉軸受に限らず、円筒状の滑り軸受や円柱状のローラを使用することもで
きる。入力部材73は、外周面の一部を、収容凹部75の開口部から突出させた状態で、
収容凹部75の内側に、1対の壁部79a、79bのうちの他方(
図9~
図11の左方)
の壁部79bの内側面に沿って、基準軸Cの軸方向、すなわち上下方向に関する変位を可
能に配置されている。なお、本例では、カバー21bの中心軸と、覆い部53aのうちで
軸方向寸法が最も長い部分および最も短い部分とを含む仮想平面に直交する方向に、入力
部材73の中心軸を配置している。入力部材73の外周面のうち、収容凹部75の開口部
から突出した部分は、変換機構70を、シャフト付球面座18とカバー21bとの間に組
み付けた状態で、シャフト付球面座18の凸球面座26の軸方向片端面と当接する。
【0071】
出力機構74は、中間部材(第2部材)82と弾性部材(第3部材)83とを備える。
【0072】
中間部材82は、円筒状に構成されており、中心軸を、入力部材73の中心軸と平行な
方向に配置している。具体的には、本例では、入力部材73と同様に、中間部材82とし
て、ラジアル玉軸受を使用している。ただし、入力部材73は、外周面が摩耗や塑性変形
を防止できる程度の硬さ(たとえばHRC40以上の硬さ)を有していれば、ラジアル玉
軸受に限らず、円筒状の滑り軸受や円柱状のローラを使用することもできる。中間部材8
2は、収容凹部75の内側に、収容凹部75の底面(底部80の上面)に沿って、基準軸
Cと中間部材82の中心軸とに直交する方向、すなわち水平方向(
図9の左右方向)に変
位可能に配置されている。
【0073】
弾性部材83は、凹孔81の内側で、かつ、中間部材82の外周面と切り欠き部71の
内側面との間に配置されている。本例では、弾性部材83として、捩りコイルばねを使用
しているが、これに限らず、ゴムなどを使用することもできる。
【0074】
変換機構70を組み立てる際には、まず、弾性部材83を、第1ケーシング素子76に
備えられた凹孔81の内側に配置する。次いで、中間部材82を、中間部材82の外周面
を弾性部材83の他端面(
図9の左端面)と底部80の上面とに当接させるように配置す
るとともに、入力部材73を、入力部材73の外周面を、他方の壁部79bの内側面と中
間部材82の外周面とに当接させるように配置する。そして、第2ケーシング素子77の
内側面を、第1ケーシング素子76の1対の壁部79a、79bおよび底部80の先端面
に突き当て、第1ケーシング素子76と第2ケーシング素子77とを、ねじ止めなどによ
り結合固定する。次いで、変換機構70をカバー21bの切り欠き部71の内側に支持固
定する。上述の組立手順は、矛盾を生じない限り、入れ換えることもできる。具体的には
、たとえば、第1ケーシング素子76と第2ケーシング素子77とを結合した後で、入力
部材73および中間部材82を収容凹部75の内側に配置するとともに、弾性部材83を
凹孔81の内側に配置することもできる。
【0075】
さらに、本例の揺動鍛造装置15は、カバー21bの中心軸と、覆い部53aのうちで
軸方向寸法が最も長い部分および最も短い部分とを含む仮想平面に関して、変換機構70
が配置された部分と対称な部分に、変換機構70と同一の構成を有する緩衝機構をさらに
備える。
【0076】
本例の揺動鍛造装置15により、ハブ本体7の軸方向内端部にかしめ部10を形成すべ
く、シャフト付球面座18を、基準軸Cを中心として揺動回転させると、シャフト付球面
座18の凸球面座26の軸方向片端面により、変換機構70の入力部材73が、シャフト
付球面座18の基準軸Cを中心とする回転方向前側(
図9の右側)に向かうほど下方に向
かう方向に向けて押される。これにより、入力部材73が、他方の壁部79bの内側面に
沿って下方に変位する。入力部材73が下方に変位すると、入力部材73により、中間部
材82が押され、中間部材82が収容凹部75の底面に沿って水平方向に変位する。中間
部材82が水平方向に変位すると、弾性部材83を介して、中間部材82により、カバー
21bの切り欠き部71の内側面が押され、カバー21bが、基準軸Cを中心に、シャフ
ト付球面座18の揺動回転の方向と同一の方向に回転させられる。揺動鍛造装置15にお
いて、基準軸に対して揺動体(シャフト付球面座18、押型13)の軸が傾いて配される
とともに、その傾斜軸が基準軸周りに移動する。カバー21bの相対回転は、揺動運動に
対する適切な環境保護に有利である。例えば、揺動運動におけるシャフト付球面座(揺動
体)18の姿勢変化に伴ってカバーターゲット領域の位置及び/又は面積が変化する。こ
の場合でも、シャフト付球面座(揺動体)18に対して相対回転するカバー21bによっ
て、変化するターゲット領域が適切にカバーされる。例えば、シャフト付球面座(揺動体
)18の運動に基づき、カバー21bに設けられた入力部材(第1部材)73がシャフト
付球面座(揺動体)18に押され、シャフト付球面座(揺動体)18から受けた力によっ
てカバー21bが回転する。カバー21bが所定軸周りに非対称な周壁53aを有するこ
とにより、シャフト付球面座(揺動体)18の揺動運動に対して所定エリアが適切に保護
される。
【0077】
上述のように、本例の揺動鍛造装置15によれば、変換機構70により、シャフト付球
面座18が基準軸Cを中心に揺動回転(公転)することに伴って入力される力を、カバー
21bが基準軸Cを中心に回転するための力に変換することができる。このため、ハブ本
体7の軸方向内端部にかしめ部10を形成する加工開始時に、カバー21bをスムーズに
回転させ始めることができる。すなわち、揺動鍛造装置15による加工開始時の初期トル
クを小さく抑えることができる。
【0078】
また、本例の揺動鍛造装置15は、カバー21bの中心軸と、覆い部53aのうちで軸
方向寸法が最も長い部分および最も短い部分とを含む仮想平面に関して、変換機構70が
配置された部分と対称な部分に、変換機構70と同一の構造の緩衝機構を備える。このた
め、かしめ部10の加工完了後に、シャフト付球面座18の基準軸Cを中心とする揺動回
転を停止した場合にも、カバー21bの内向フランジ部54の軸方向他側面が、凸球面座
26の軸方向片端面に勢いよく衝突して、カバー21bが変形するのを防止することがで
きる。
【0079】
なお、シャフト付球面座18の揺動回転を停止した際に、カバー21bの内向フランジ
部54の軸方向他側面が、凸球面座26の軸方向片端面に、カバー21bが変形するほど
、勢いよく衝突することを防止できれば、緩衝機構の配置位置や構造は特に限定されない
。具体的には、たとえば、緩衝機構は、カバーと一体的に、あるいは、カバーとは別体に
形成され、内向フランジ部54の軸方向他側面よりも軸方向他方に突出した突部とするこ
ともできる。
【0080】
また、本例では、変換機構70を構成する出力機構74の中間部材82として、円筒状
の外周面を有するものを使用したが、円筒状の外周面を有する入力部材73が下方に変位
することに伴って、収容凹部75の底面に沿って水平方向に変位できれば、これに限らず
、たとえば、
図12に示すように、くさび状の中間部材82aを使用することもできる。
その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0081】
一実施形態において、揺動加工装置(15)は、基準軸と、支持治具(17)と、シャ
フト付球面座(18)と、凹球面座(19)と、カバー(21、21a、21b)とを備
える。前記支持治具(17)は、被加工物(1)を、前記基準軸と同軸になるように支持
するためのものである。前記シャフト付球面座(18)は、前記基準軸に対して傾斜した
中心軸を有し、かつ、軸方向片端部に形成された加工部(12)と、軸方向中間部に形成
され、軸方向他端側を向いた部分球面状の凸球面部(24)とを有する。前記凹球面座(
19)は、前記シャフト付球面座(18)の軸方向他端側部分(前記シャフト付球面座(
18)のうち、前記凸球面部(24)よりも軸方向他端側に位置する部分)を挿通した挿
通孔(35)と、前記凸球面部(24)と球面係合した凹球面部(36)とを有する。前
記カバー(21、21a、21b)は、前記凸球面部(24)と前記凹球面部(36)と
の球面係合部を潤滑する潤滑油が、前記被加工物(1)の周辺環境に悪影響を及ぼすのを
防止する。
【0082】
前記被加工物(1)の周囲に配置されたガイドリング(49)をさらに備えることがで
きる。この場合、前記カバー(21、21a、21b)を、前記ガイドリング(49)と
前記シャフト付球面座(18)の軸方向片側部分との間に配置する。
【0083】
前記カバー(21、21a、21b)を、軸方向片端面を前記ガイドリング(49)に
、前記基準軸を中心とする回転を自在に支持または載置した、斜切円筒状の覆い部(53
、53a)と、前記覆い部(53、53a)の軸方向他端部から径方向内方に折れ曲がっ
た内向フランジ部(54)とを備えるものとすることができる。
【0084】
前記覆い部(53、53a)の軸方向片端面を、それぞれの中心軸を、前記基準軸を中
心とする放射方向に配置した状態で、前記基準軸を中心とする円周方向に関して等間隔に
配置された複数個のラジアル転がり軸受(60)を介して、前記ガイドリング(49)に
載置することができる。
【0085】
前記内向フランジ部(54)の軸方向他側面を、前記シャフト付球面座(18)の前記
中心軸に直交する第1の仮想平面上に存在させるとともに、前記覆い部(53、53a)
の軸方向片端面を、前記基準軸に直交する第2の仮想平面上に存在させることができる。
【0086】
前記内向フランジ部(54)の径方向内端部を、転がり軸受(55)により、前記シャ
フト付球面座(18)の軸方向片端側部分に回転自在に支持することができる。
【0087】
あるいは、前記シャフト付球面座(18)と前記カバー(21、21a、21b)との
間に、前記シャフト付球面座(18)が前記基準軸を中心に揺動回転することに伴って入
力される力を、前記カバー(21、21a、21b)が、前記基準軸を中心に回転するた
めの力に変換する、変換機構(70)を備えるものとすることができる。この場合、前記
変換機構(70)を、収容凹部(75)と、入力部材(73)と、出力機構(74)とを
備えるものとすることができる。前記収容凹部(75)は、前記カバー(21、21a、
21b)のうち、前記シャフト付球面座(18)の前記中心軸から径方向に外れた位置に
配置されて、前記カバー(21、21a、21b)の軸方向他端面に開口し、かつ、前記
基準軸の軸方向に凹んでいる。前記入力部材(73)は、前記収容凹部(75)内に、前
記基準軸の軸方向に関する変位を可能に配置されており、前記シャフト付球面座(18)
に備えられた軸方向他側を向いた面により押圧される。前記出力機構(74)は、前記入
力部材(73)が、前記基準軸の軸方向に関して前記被加工物(1)の側に向けて変位す
ることに伴い、前記カバー(21、21a、21b)を、前記基準軸を中心とする回転方
向に押圧する。追加的に、前記出力機構(74)を、前記収容凹部(75)内に、前記基
準軸の軸方向および前記入力部材(73)の中心軸に直交する方向の変位を可能に配置さ
れるとともに、外周面を前記入力部材(73)により押圧される円筒状または円柱状の中
間部材(82、82a)と、前記中間部材(82、82a)と前記収容凹部(75)の側
面との間に配置された弾性部材(83)とを備えるものとすることができる。前記シャフ
ト付球面座(18)と前記カバー(21、21a、21b)との間であって、前記シャフ
ト付球面座(18)の中心軸と前記覆い部(53、53a)のうちで軸方向寸法が最も長
い部分および短い部分を含む仮想平面に関して、前記変換機構(70)が配置された部分
の反対側となる部分に、緩衝機構(70)を備えることができる。この場合、具体的には
、前記緩衝機構(70)を、前記シャフト付球面座(18)と前記カバー(21、21a
、21b)との間であって、前記シャフト付球面座(18)の中心軸と前記覆い部(53
、53a)のうちで軸方向寸法が最も長い部分および短い部分を含む仮想平面に関して、
前記変換機構(70)が配置された部分と対称な位置に配置するとともに、前記変換機構
(70)と同一の構成を有するものとする。
【0088】
あるいは、前記カバー(21、21a、21b)を、ゴムや布などの可撓性を有する材
料により構成されているか、および/または、軸方向寸法を、円周方向に関して部分的に
伸縮可能に構成することができる。この場合、前記カバー(21、21a、21b)の軸
方向片端部を前記ガイドリング(49)に、前記基準軸を中心とする回転を自在に支持も
しくは載置するか、および/または、前記カバー(21、21a、21b)の軸方向他端
部を、前記シャフト付球面座(18)の軸方向片端側部分に、前記シャフト付球面座(1
8)の前記中心軸を中心とする回転を自在に支持する。具体的には、たとえば、前記カバ
ー(21、21a、21b)を、蛇腹部を有するものとすることができる。
【0089】
前記基準軸に対する前記シャフト付球面座(18)の中心軸の傾斜角度を、15度以上
とすることが好ましい。
【0090】
本発明の一態様における揺動加工装置(15)では、前記シャフト付球面座(18)を
、シャフト本体(25、25a)と、ベース板(27、27a)と、押型(13)とを備
えるものとすることが好ましい。前記シャフト本体(25、25a)は、前記基準軸に対
して傾斜した中心軸と、前記凸球面部(24)とを有する。前記ベース板(27、27a
)は、軸方向片端側の側面に保持凹部(67)を有し、前記シャフト本体(25、25a
)の軸方向片端側の側面に対し結合固定される。前記押型(13、13a)は、軸方向片
端部に加工部(12、12a)を有し、かつ、軸方向他端部を前記保持凹部(67)にが
たつきなく内嵌することにより、前記ベース板(27、27a)に対する径方向の位置決
めを図った状態で、前記ベース板(27、27a)に対し結合固定される。
【0091】
本発明の一態様において、揺動加工装置(15)は、所定軸と交差する面を有し、ワー
クピース(1)を支持する支持体(17)と、前記支持体(17)の前記面に対向して配
され、前記ワークピース(1)に対して揺動運動する揺動体(18)と、前記所定軸周り
に回転自在に配されるカバー(21、21b)であり、前記揺動体の揺動運動に伴って前
記揺動体に対して相対的に前記所定軸周りに回転する前記カバー(21、21b)と、を
備える。
【0092】
前記カバー(21、21b)は、前記所定軸周りに非対称な周壁(53、53a)を有
する、ことができる。
【0093】
前記カバー(21、21b)は、カバー本体(53、53a)と、前記カバー本体(5
3、53a)の少なくとも1箇所に設けられ、前記揺動体(18)の揺動運動に伴って前
記揺動体(18)に押される第1部材(73)と、を有する、ことができる。
【0094】
本発明の一態様において、ハブユニット軸受の製造方法の対象となるハブユニット軸受
(1)は、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪(2)と、外周面に複列の内輪軌道を有
するハブ(3)と、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、それぞれの列ご
とに複数個ずつ、転動自在に配置された転動体(6)とを備える。前記ハブ(3)は、内
輪(8a、8b)と、ハブ本体(7)とを備える。前記内輪(8a、8b)は、外周面に
、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側の内輪軌道を有する。前記ハブ本体(7)は、
軸方向中間部外周面に直接または他の部材を介して設けられた、前記複列の内輪軌道のう
ちの軸方向外側の内輪軌道と、前記軸方向外側の内輪軌道よりも軸方向内側に存在し、か
つ、前記内輪を外嵌した円筒部(9)と、前記円筒部(9)の軸方向内端部から径方向外
方に折れ曲がり、かつ、前記内輪(8a、8b)の軸方向内端面を抑え付けるかしめ部(
10)とを有する。
【0095】
本発明の一態様におけるハブユニット軸受の製造方法では、上述のような揺動加工装置
(15)を使用して、前記かしめ部(10)を形成する以前の前記ハブ本体(7)の軸方
向内端部に設けられた円筒部(9)を、径方向外方に塑性変形させることで前記かしめ部
(10)を形成する。
【0096】
本発明の一態様において、自動車の製造方法の対象となる自動車は、ハブユニット軸受
(1)を備える。この自動車の製造方法では、前記ハブユニット軸受(1)を、上述のよ
うなハブユニット軸受の製造方法により製造する。
【符号の説明】
【0097】
1 ハブユニット軸受(ワークピース、被加工物)
2 外輪
3 ハブ
4a、4b 外輪軌道
5a、5b 内輪軌道
6 転動体
7 ハブ本体
8a、8b 内輪
9 円筒部
10 かしめ部
12 加工部
13、13a 押型(加工具)
15 揺動加工装置(揺動鍛造装置)
16 フレーム
17 支持治具(支持体)
18 シャフト付球面座(揺動体)
19 凹球面座
20 油受け
21、21a、21b カバー
22 支持凹部
23 昇降台
24 凸球面部
25、25a シャフト本体
26 凸球面座
27、27a ベース板
28 軸部
29、29a フランジ部
30 第1の位置決め凹部
31 嵌合凹部
32 貫通孔
33 第1の位置決め凸部
34 第2の位置決め凸部
35 挿通孔
36 凹球面部
37 段付孔
38 駆動機構
39 回転体
40 軸受
41 軸受装置
42 保持孔
43 外輪回転機構
44 駆動環
45 駆動治具
46 結合フランジ
47 ラジアル軸受
48 ボールスプライン
49 ガイドリング
50 円筒部
51 円輪部
52 環状凹部
53 覆い部(カバー本体、周壁)
54 内向フランジ部
55 転がり軸受
57 突出部
58 凹溝
60 ラジアル転がり軸受
61 円筒部
62 筒状部材
64a、64b リム部
63 スラスト転がり軸受
65 筒状部
66 第2の位置決め凹部
67 保持凹部
68 内向フランジ部
69 捩りコイルばね
70 変換機構
71 切り欠き部
72 ケーシング
73 入力部材(第1部材)
74 出力機構
75 収容凹部
76 第1ケーシング素子
77 第2ケーシング素子
78 側板部
79a、79b 壁部
80 底部
81 凹孔
82、82a 中間部材
83 弾性部材
100 ハブユニット軸受
101 ナックル
102 外輪
103 ホイール
104 制動用回転体
105 ハブ
106 転動体
107a、107b 外輪軌道
108 静止フランジ
109 支持孔
110 通孔
111 ボルト
112a、112b 内輪軌道
113 回転フランジ
114 取付孔
115 スタッド
116 通孔
117 通孔
118 ナット
119 保持器
120 ハブ本体
121 内輪
122 円筒部
123 かしめ部
124 揺動かしめ装置
125 加工部
126 押型
127 ホルダ