(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 35/00 20060101AFI20230406BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20230406BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20230406BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20230406BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230406BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230406BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230406BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C08L35/00
C08L71/00 B
C08K5/3415
C08K5/29
C08K5/14
C08K3/013
B32B27/18 Z
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2020515512
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017364
(87)【国際公開番号】W WO2019208615
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018084967
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 正志
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 武紀
(72)【発明者】
【氏名】東口 鉱平
(72)【発明者】
【氏名】木田 剛
【審査官】長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032639(JP,A)
【文献】特表2005-501725(JP,A)
【文献】特表2015-503220(JP,A)
【文献】特開2014-194013(JP,A)
【文献】特開2016-023256(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 5/59
C08F 6/00-246/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレートフラックス剤(A)と、
熱ラジカル重合開始剤(B)と、
ラジカル重合性化合物(C)と、を含有
し、
前記キレートフラックス剤(A)が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表されるイミン化合物を含有し、
前記キレートフラックス剤(A)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下であり、
前記ラジカル重合性化合物(C)が、下記式(4)で表されるマレイミド化合物と、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(5)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも一種のマレイミド化合物と、を含有する、樹脂組成物。
【化1】
(式中、Qは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、又はヘテロアリーレン基であり、R
1
及びR
2
は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R
3
及びR
4
は、2-ヒドロキシフェニル基であり、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、及びヘテロアリーレン基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていていてもよい。)
【化2】
(式中、R
5
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R
6
及びR
7
は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロサイクリル基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロサイクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。)
【化3】
(式(3)中、R
8
は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n
1
は1以上の整数を示す。)
【化4】
(式(4)中、n
2
の平均値は、1以上30以下である。)
【化5】
(式(5)中、R
9
及びR
10
は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
11
は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項2】
前記キレートフラックス剤(A)の融点が、235℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記キレートフラックス剤(A)の分子量が、150以上500以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記キレートフラックス剤(A)を用いて、下記のはんだ濡れ性試験において得られる、はんだボールの接触角が、1.20ラジアン未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(はんだ濡れ性試験)
厚さ12μmの銅箔の光沢面に前記キレートフラックス剤を塗布し、前記キレートフラックス剤上に直径0.5mmのはんだボールを置く。その後、235℃に保たれたホットプレート上で1分間加熱し、はんだを溶融させた後、室温にて冷却する。冷却後において、前記銅箔上に広がる、はんだボールの半径(a)及びはんだボールの高さ(b)を測定し、下記式より接触角を算出した。
はんだボールの接触角=2arctan{(b)/(a)}
【請求項5】
前記キレートフラックス剤(A)が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記キレートフラックス剤(A)が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン及び/又はN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンを含有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、有機過酸化物である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)の10時間半減期温度が、100℃以上である、請求項
7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジアルキルパーオキサイド及び/又はハイドロパーオキサイドである、請求項
7又は
8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシ
イソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチ
ルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチ
ルパーオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、tert-アミルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及びp-メンタンパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシ
イソプロピル)ベンゼン、及びp-メンタンパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物中における前記熱ラジカル重合開始剤(B)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、0.005質量部以上5質量部以下である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
無機充填材(D)を更に含有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記無機充填材(D)が、電気絶縁性を有する、請求項
13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記無機充填材(D)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも
一種を含有する、請求項
13又は
14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記無機充填材(D)の平均粒子径が、3μm以下である、請求項
13~
15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記樹脂組成物中における前記無機充填材(D)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、300質量部以下である、請求項
13~
16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
可撓性付与成分(E)を更に含有する、請求項1~
17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記可撓性付与成分(E)が、熱可塑性の高分子化合物を含有し、
前記高分子化合物の重量平均分子量が、1,000以上1,000,000以下である、
請求項
18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
前記可撓性付与成分(E)が、(メタ)アクリルオリゴマー及び/又は(メタ)アクリルポリマーである、請求項
18又は
19に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
プリアプライドアンダーフィル材用である、請求項1~
20のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
支持基材と、
前記支持基材上に積層された請求項1~
21のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有する層と、
を備える、積層体。
【請求項23】
半導体ウェハと、
前記半導体ウェハに積層された請求項
22に記載の積層体と、を備え、
前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、
樹脂組成物層付き半導体ウェハ。
【請求項24】
半導体搭載用基板と、
前記半導体搭載用基板に積層された請求項
22に記載の積層体と、を備え、
前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、
樹脂組成物層付き半導体搭載用基板。
【請求項25】
請求項
23に記載の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は、請求項
24に記載の樹脂組成物層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物を用いた積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置に関する。詳しくは、本発明は、接着剤用として有用な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化及び高性能化に伴い、半導体チップ(以下、「チップ」と略す場合がある。)を半導体搭載用基板(以下、「基板」と略す場合がある。)に搭載する方法として、フリップチップ実装が注目されている。フリップチップ実装においては、チップと基板を接合した後、チップと基板の間隙にアンダーフィル材を充填し、硬化させる工法が一般的である。しかし、半導体装置の小型化や高性能化に伴い、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化が進み、アンダーフィル材の充填の長時間化による作業性の悪化や未充填等の充填不良の発生が問題となっている。これに対し、チップ又は基板にプリアプライドアンダーフィル材を供給した後、チップと基板の接合とアンダーフィル材の充填を同時に行う工法が検討されている。
【0003】
チップと基板の接合を酸化されやすい金属、例えば、はんだや銅を介して行う場合、接合の阻害要因となる酸化膜を接合部から除去し、良好な金属接合を得ることを目的として、プリアプライドアンダーフィル材にカルボン酸等に由来するフラックス成分を添加することがある。
【0004】
カルボン酸等に由来するフラックス成分は、半導体パッケージの実装後も存在し、硬化したアンダーフィル材料中のはんだや銅の相互接続を腐食して劣化させたり、はんだや銅のイオン化を促し、そのマイグレーションによる接合部間のショート不良を引き起こす懸念がある。
【0005】
特許文献1には、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂を含むフィルム状接着剤が記載されている。トリアジンは、銅イオンやはんだから生じる錫イオン等の金属イオンと錯形成するため、同骨格を有する樹脂を接着剤に組み込むことで、金属イオンのマイグレーションに起因する電気的不具合を抑制できるという利点がある。
【0006】
特許文献2には、熱硬化性樹脂とキレートフラックス剤とを含有する樹脂組成物が記載されている。キレートフラックス剤を用いることにより、キレートフラックス剤が、硬化物中の金属イオンを捕捉することで、金属イオンのマイグレーションに起因する電気的不具合を抑制し、信頼性のある接合を形成することができる。
【0007】
特許文献3には、ラジカル重合性モノマーと熱ラジカル開始剤とを用いて得られるプリアプライドアンダーフィル材が記載されている。熱ラジカル開始剤を用いることにより、樹脂組成物の硬化時間を長時間要することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-052109号公報
【文献】特表2005-501725号公報
【文献】特表2015-503220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1では、接着剤中にフラックス成分を含有しないため、接合時に接合部の酸化膜を除去できず、良好な金属接合を得ることができない。
また、特許文献2では、キレートフラックス剤とエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物が記載されており、フリップチップ実装における接合温度よりも低温にて、エポキシ樹脂と、キレートフラックス剤が有するフェノール性水酸基との反応が進行し、良好な接合を得ることができないという欠点がある。
特許文献3では、フラックス成分を含有しないため、接合部の酸化膜を除去できず、良好な金属接合を得ることができない。よって、アンダーフィル材を使用する前に、予め接合部の金属酸化膜を除去する工程が必要となるため、作業工程が複雑化する。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、酸化膜を除去して金属接合を得るための十分な優れたフラックス活性と、高い絶縁信頼性とを両立し、良好な保存安定性を備え、更に積層体として使用する際に作業性の良い可撓性を有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記問題点を解決のため鋭意検討した結果、キレートフラックス剤(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、を含有する樹脂組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1]キレートフラックス剤(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、を含有する、樹脂組成物。
[2]前記キレートフラックス剤(A)の融点が、235℃以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記キレートフラックス剤(A)の分子量が、150以上500以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0013】
[4]前記キレートフラックス剤(A)を用いて、下記のはんだ濡れ性試験において得られる、はんだボールの接触角が、1.20ラジアン未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
(はんだ濡れ性試験)
厚さ12μmの銅箔の光沢面に前記キレートフラックス剤を塗布し、前記キレートフラックス剤上に直径0.5mmのはんだボールを置く。その後、235℃に保たれたホットプレート上で1分間加熱し、はんだを溶融させた後、室温にて冷却する。冷却後において、前記銅箔上に広がる、はんだボールの半径(a)及びはんだボールの高さ(b)を測定し、下記式より接触角を算出した。
はんだボールの接触角=2arctan{(b)/(a)}
【0014】
[5]前記キレートフラックス剤(A)が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表されるイミン化合物を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
【0016】
(式中、Qは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、又はヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R3及びR4は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロサイクリル基である。アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。)
【0017】
【0018】
(式中、R5は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R6及びR7は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロサイクリル基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロサイクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。)
【0019】
[6]前記式(1)で表されるイミン化合物におけるR3及びR4が、2-ヒドロキシフェニル基である、[5]に記載の樹脂組成物。
[7]前記キレートフラックス剤(A)が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記キレートフラックス剤(A)が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン及び/又はN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンを含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、有機過酸化物である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0020】
[10]前記熱ラジカル重合開始剤(B)の10時間半減期温度が、100℃以上である、[9]に記載の樹脂組成物。
[11]前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジアルキルパーオキサイド及び/又はハイドロパーオキサイドである、[9]又は[10]に記載の樹脂組成物。
[12]前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、tert-アミルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及びp-メンタンパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[9]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]前記熱ラジカル重合開始剤(B)が、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン、及びp-メンタンハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[9]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14]前記ラジカル重合性化合物(C)が、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含有する化合物である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0021】
[15]前記ラジカル重合性化合物(C)が、マレイミド基を含有する化合物である、[14]に記載の樹脂組成物。
[16]
前記ラジカル重合性化合物(C)が、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(5)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[14]又は[15]に記載の樹脂組成物。
【0022】
【0023】
(式中、R8は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、n1は1以上の整数を示す。)
【0024】
【0025】
(式中、n2の平均値は、1以上30以下である。)
【0026】
【0027】
(式中、R9及びR10は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R11は各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
【0028】
[17]前記ラジカル重合性化合物(C)が、前記2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、前記式(3)で表されるマレイミド化合物、前記式(4)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(5)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも一種のマレイミド化合物を含有する、[14]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[18]前記樹脂組成物中における前記キレートフラックス剤(A)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、[1]~[17]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[19]前記樹脂組成物中における前記熱ラジカル重合開始剤(B)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、0.005質量部以上5質量部以下である、[1]~[18]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0029】
[20]無機充填材(D)を更に含有する、[1]~[19]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[21]前記無機充填材(D)が、電気絶縁性を有する、[20]に記載の樹脂組成物。
[22]前記無機充填材(D)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[20]又は[21]に記載の樹脂組成物。
[23]前記無機充填材(D)の平均粒子径が、3μm以下である、[20]~[22]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[24]前記樹脂組成物中における前記無機充填材(D)の含有量が、前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、300質量部以下である、[20]~[23]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0030】
[25]可撓性付与成分(E)を更に含有する、[1]~[24]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[26]前記可撓性付与成分(E)が、熱可塑性の高分子化合物を含有し、前記高分子化合物の重量平均分子量が、1,000以上1,000,000以下である、[25]に記載の樹脂組成物。
[27]前記可撓性付与成分(E)が、(メタ)アクリルオリゴマー及び/又は(メタ)アクリルポリマーである、[25]又は[26]に記載の樹脂組成物。
[28]プリアプライドアンダーフィル材用である、[1]~[27]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0031】
[29]
支持基材と、前記支持基材上に積層された[1]~[28]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する層と、を備える、積層体。
[30]
半導体ウェハと、前記半導体ウェハに積層された[29]に記載の積層体と、を備え、前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、樹脂組成物層付き半導体ウェハ。
[31]
半導体搭載用基板と、前記半導体搭載用基板に積層された[29]に記載の積層体と、を備え、前記樹脂組成物を含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、樹脂組成物層付き半導体搭載用基板。
[32][30]に記載の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は、[31]に記載の樹脂組成物層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、優れたフラックス活性と高い絶縁信頼性とを両立し、良好な保存安定性を備え、更に積層体として使用する際に作業性の良い可撓性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、樹脂組成物を支持基材上に塗布することにより、フラックス活性、絶縁信頼性、及び保存安定性に優れる樹脂組成物層を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
本明細書における「(メタ)アクリロ」とは「アクリロ」及びそれに対応する「メタクリロ」の両方を意味する。「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」の両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味する。
【0034】
本実施形態の一態様の樹脂組成物は、キレートフラックス剤(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、を含有する。本実施形態の樹脂組成物は、プリアプライドアンダーフィル材として有用である。
【0035】
本実施形態の別の態様の樹脂組成物は、前記各成分に加えて、無機充填材(D)を含有する。
【0036】
本実施形態の別の態様の樹脂組成物は、前記各成分に加えて、可撓性付与成分(E)を含有する。
【0037】
本実施形態の別の態様は、本実施形態による樹脂組成物を用いて得られる積層体(以下、「樹脂積層体」ともいう。)、積層体を用いて作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を用いて作製される樹脂組成物層付き半導体搭載用基板、及び本実施形態の樹脂組成物を用いて作製した半導体装置も提供される。
【0038】
〔I.樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、キレートフラックス剤(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、ラジカル重合性化合物(C)とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、チップのフリップチップ実装に使用される接着剤として有用である。本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材(D)及び/又は可撓性付与成分(E)を更に含んでいてもよい。
【0039】
〔I-1.キレートフラックス剤(A)〕
本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)を用いることにより、従来のカルボン酸系のフラックス成分と比較して弱酸化が達成され、絶縁信頼性の向上が期待される。
【0040】
本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)は、フリップチップ実装中において、はんだの融点以下でフラックス剤の運動性を高めて金属酸化膜を十分に除去するためのフラックス活性を発現させる観点から、例えば、はんだ種が錫-銀合金となる場合、キレートフラックス剤は単体の状態での融点が235℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。下限は、特に限定されないが、-50℃である。
【0041】
また、本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)は、フリップチップ実装においてフラックス活性が発現する前に揮発してしまうこと、即ち接合部の酸化膜を除去する前にキレートフラックス剤(A)が揮発してしまうことを防ぐ必要から、分子量が150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)は、樹脂組成物中でも高い運動性を有することで、十分なフラックス活性が得られることから、分子量500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)は、フリップチップ実装における接続端子間の良好な接合が可能となる観点から、キレートフラックス剤単体を用いて、下記のはんだ濡れ性試験において得られる、はんだボールの接触角が1.20ラジアン未満であることが好ましく、1.10ラジアン未満であることがより好ましい。なお、具体的な試験方法については、実施例に記載のとおりである。
【0043】
(はんだ濡れ性試験)
厚さ12μmの銅箔の光沢面に前記キレートフラックス剤を塗布し、前記キレートフラックス剤上に直径0.5mmのはんだボールを置く。その後、235℃に保たれたホットプレート上で1分間加熱し、はんだを溶融させた後、室温にて冷却する。冷却後において、前記銅箔上に広がる、はんだボールの半径(a)及びはんだボールの高さ(b)を測定し、下記式より接触角を算出した。
はんだボールの接触角=2arctan{(b)/(a)}
【0044】
本実施形態に係るキレートフラックス剤(A)は、金属イオン捕捉剤として機能するフラックス剤であれば、特に限定されないが、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表されるイミン化合物であることが好ましい。このようなイミン化合物を用いることにより、銅イオン等の金属イオンを効率的に捕捉することができ、マイグレーションの誘発によるショート不良等の抑止効果が期待される。
【0045】
【0046】
【0047】
式(1)で表されるイミン化合物においてQは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、又はヘテロアリーレン基であり、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R3及びR4は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロサイクリル基である。アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロサイクリレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。
【0048】
アリーレン基としては、特に限定されないが、例えば、フェニレン(o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン)、ビフェニレン、ナフチレン、ビナフチレン、アントラセニレン、及びフェナントリレン基が挙げられる。
【0049】
アルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、及びヘキサデカメチレン基の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン、メチルプロピレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、1-エチルプロピレン、2-エチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン、1-プロピルプロピレン、2-プロピルプロピレン、1-メチル-1-エチルプロピレン、1-メチル-2-エチル-プロピレン、1-エチル-2-メチル-プロピレン、2-メチル-2-エチル-プロピレン、1-メチルブチレン、2-メチルブチレン、3-メチルブチレン、2-エチルブチレン、メチルペンチレン、エチルペンチレン、メチルヘキシレン、メチルヘプチレン、メチルオクチレン、メチルノニレン、メチルデシレン、メチルウンデシレン、メチルドデシレン、メチルテトラデシレン、及びメチルオクタデシレン基の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0050】
アルケニレン基としては、特に限定されないが、例えば、ビニレン、1-メチルビニレン、プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、1-ペンテニレン、及び2-ペンテニレン基が挙げられる。
【0051】
シクロアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン、1,2-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、及び1,4-シクロヘキシレンビスが挙げられる。
【0052】
シクロアルケニレン基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、及びシクロオクテニレン基が挙げられる。
【0053】
ヘテロサイクリレン基としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル、モルホリン-2,3-ジイル、ピラン-2,4-ジイル、1,4-ジオキサン-2,3-ジイル、1,3-ジオキサン-2,4-ジイル、ピペリジン-2,4-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル、ピロリジン-1,3-ジイル、モルホリン-2,4-ジイル、及びピペラジン-1,4-ジイルが挙げられる。
【0054】
ヘテロアリーレン基としては、特に限定されないが、前記したアリーレン基の炭素原子のうち一つ以上の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子に置換された基である。具体的には、フェナントレン、ピロール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン、インドリン、イソインドリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、カルバゾール、フェニルカルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフラン、ジフェニルジベンゾフラン、チオフェン、フェニルチオフェン、ジフェニルチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェニルベンゾチオフェン、ジフェニルベンゾチオフェン、フェニルジベンゾチオフェン、及びベンゾチアゾールを2価の基としたものが挙げられる。
【0055】
アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、及び2-メチルペンタン-3-イル基が挙げられる。
【0056】
シクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0057】
アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスレニル基、及びビフェニル基が挙げられる。
【0058】
ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、2-オキソピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、パーヒドロナフチル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びテトラヒドロナフチル基が挙げられる。
【0059】
式(2)で表されるイミン化合物においては、R5が、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R6及びR7は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロサイクリル基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロサイクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロサイクリル基については、前記と同様である。
【0060】
式(1)で表されるイミン化合物においては、優れたフラックス活性を発現させ、効率良く金属イオン捕捉させる観点から、R3及びR4が、2-ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
【0061】
式(1)で表されるイミン化合物は、フリップチップ実装中において、はんだの融点以下でフラックス剤の運動性を高めて金属酸化膜を十分に除去するためのフラックス活性を発現させる観点から、例えば、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンであることが好ましく、実装時に優れたフラックス活性を発現させることと、実装時の揮発分を抑制することを両立する観点から、例えば、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン及び/又はN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンであることがより好ましい。
これらのキレートフラックス剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
キレートフラックス剤(A)としては、市販のものを用いてもよい。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物中におけるキレートフラックス剤(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物のフラックス活性と、ワニス及び樹脂組成物の保存安定性とを両立する観点から、後述のラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、室温でのワニスの保存安定性を確保する観点から、10質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。
【0063】
〔I-2.熱ラジカル重合開始剤(B)〕
本実施形態に係る熱ラジカル重合開始剤(B)は、ラジカル重合性化合物(C)のラジカル重合反応を促進するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。その中でも、ワニス及び樹脂組成物の保存安定性、及びフリップチップ実装中の温度領域の観点から、有機過酸化物であることが好ましい。
【0064】
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、及びハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0065】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジスクシン酸パーオキサイド、ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。
【0066】
パーオキシカーボネートとしては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0067】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
【0068】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ジ(4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0069】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が挙げられる。
【0070】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-アミルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0071】
本実施形態に係る熱ラジカル重合開始剤(B)は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを乾燥した後においても、樹脂組成物中の熱ラジカル重合開始剤(B)が良好に反応性を有する観点から、10時間半減期温度が100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、例えば、250℃である。10時間半減期温度とは、溶媒(例えば、ベンゼン)に溶解したときの、熱ラジカル重合開始剤の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間(半減期)が10時間となる温度をいう。10時間半減期温度は、例えば、次のようにして測定することができる。まず、熱ラジカル重合開始剤をベンゼンに溶解して濃度0.1mol/Lの溶液を得る。この溶液を、予め内部の空気を窒素により置換したガラス管内に封入する。次いで、ガラス管を所定温度にセットした恒温槽に浸すことにより、熱ラジカル重合開始剤を熱分解させる。ここで、分解速度定数をk、時間をt、熱ラジカル重合開始剤の初期濃度を[PO]0、時間t後の熱ラジカル重合開始剤の濃度を[PO]tとすると、kt=ln[PO]0/[PO]tの関係が成り立つ。そこで、時間tとln[PO]0/[PO]tとの関係をグラフにプロットすると、その傾きから分解速度定数kを求めることができる。半減期時間t1/2では[PO]0/[PO]t=2の関係が成り立つので、t1/2=ln2/kの関係式より、ある温度での半減期時間t1/2を求めることができる。複数の温度について半減期時間t1/2を求め、lnt1/2と1/Tとの関係をグラフにプロットすることにより、10時間半減期温度を得ることができる。Tは絶対温度(単位:K)である。なお、熱ラジカル重合開始剤の製造会社が発行するカタログや技術資料に記載された10時間半減期温度のデータを利用しても良い。
【0072】
熱ラジカル重合開始剤(B)としては、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを乾燥した後においても、より良好に反応性を有する点から、ジアルキルパーオキサイド及び/又はハイドロパーオキサイドが好ましい。
その中でも、溶剤溶解性の観点から、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、tert-アミルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及びp-メンタンパーオキサイドがより好ましく、ワニスの乾燥時及び実装時における揮発分を好適に抑制できる点から、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン、及びp-メンタンハイドロパーオキサイドがさらに好ましい。
【0073】
本実施形態に係る熱ラジカル重合開始剤(B)としては、市販を使用してもよく、例えば、日本油脂(株)社製の、パーブチルH、パークミルH、パーオクタH,パークミルP、パーメンタH(以上、ハイドロパーオキサイド)、パーヘキシン25B、パーブチルD、パーブチルC、パーヘキサ25B、パーヘキシルD、パークミルD、パーブチルP(以上、ジアルキルパーオキサイド)、パーヘキサV、パーヘキサ22(以上、パーオキシケタール)、パーブチルZ、及びパーブチルA(以上、パーオキシエステル);アルケマ吉富(株)製の、ルペロックスTAH、ルペロックスTBH(以上、ハイドロパーオキサイド)、及びルペロックスDTA(以上、ジアルキルパーオキサイド)が挙げられる。
【0074】
これらの熱ラジカル重合開始剤(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
本実施形態の樹脂組成物中における熱ラジカル重合開始剤(B)の含有量は、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(C)に対して十分な硬化性を付与する観点から、ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、0.005質量部以上5質量部以下であることが好ましく、揮発分を抑制し、硬化中のボイドを抑制する観点から、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0076】
〔I-3.ラジカル重合性化合物(C)〕
本実施形態に係るラジカル重合性化合物(C)は、ラジカル重合反応により重合が進行する化合物であれば、特に限定されない。その中でも、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、及びビニル基からなる群より選択される、少なくとも一種の官能基を含有する化合物であることが好ましく、絶縁信頼性、及び耐熱性の観点からマレイミド基を含有する化合物がより好ましい。
【0077】
マレイミド基を含有する化合物としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、o-フェニレンビスシトラコンイミド、m-フェニレンビスシトラコンイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2-ビス[4-(4-シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(5)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。これらのマレイミド基を含有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、有機溶剤への溶解性の観点から、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(5)で表されるマレイミド化合物が好ましい。
なお、これらマレイミド化合物を重合して得られるプレポリマー、又はマレイミド化合物とアミン化合物等の他の化合物と重合して得られるプレポリマー等の形で配合することもでき、これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
【0079】
式(3)中、R8は各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。また、式(3)中、n1は1以上の整数を示し、n1の上限値は、通常は10であり、有機溶剤への溶解性の観点から、7であることが好ましい。
なお、式(3)は、n1が異なる化合物の混合物であってもよい。
【0080】
【0081】
式(4)中、n2の平均的な値は7以上30以下の範囲である。
なお、式(4)は、n2が異なる化合物の混合物であってもよい。
【0082】
【0083】
式(5)中、R9、及びR10は各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。
式(5)中、R11は各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。
【0084】
また、本実施形態におけるラジカル重合性化合物(C)としては、有機溶剤への溶解性、及び可撓性を確保する観点から、前記式(4)で表されるマレイミド化合物を含み、それと共に、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、前記式(3)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(5)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のマレイミド化合物を併用することがより好ましい。
【0085】
マレイミド基を含有する化合物は市販のものを用いてもよく、例えば、大和化成工業(株)製BMI-2300(前記式(3)における、R8がすべて水素原子であり、n1が1以上3以下であるマレイミド化合物);ケイ・アイ化成(株)製BMI-70(前記式(5)における、R9がメチル基であり、R10がエチル基であり、R11が水素原子であるマレイミド化合物、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン)、BMI-80(2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン)、BMI-1000P(前記式(4)における、n2が14(平均値)であるマレイミド化合物)、BMI-650P(前記式(4)における、n2が9(平均値)であるマレイミド化合物)が挙げられる。
【0086】
(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、及びウレタン(メタ)アクリレートが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが、可能である。
【0087】
プロペニル基を含有する化合物としては、分子中に1個以上のプロペニル基を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、プロペニルベンゼン、プロペニルナフタレン、プロペニルアントラセン、プロペニルフェノール、o-プロペニルフェノキシベンゼンの一官能プロペニル化合物;ビスプロペニルフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4'-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン、2,2-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]ノナン、2,2-ビス[3-ターシャリーブチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-セカンダリーブチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]デカン、1,1-ビス[2-メチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)-5-ターシャリーブチルフェニル]-2-メチルプロパン、4,4'-シクロヘキシリデン-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-2-(1,1-ジメチルエチル)ベンゼン]、4,4'-メチレン-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)ベンゼン]、4,4'-メチレン-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-2,6-ジ-セカンダリーブチルベンゼン]、4,4'-シクロヘキシリデン-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-2-シクロヘキシルベンゼン]、4,4'-メチレン-ビス[1-(o-プノペニルフェノキシ)-2-ノニルベンゼン]、4,4'-(1-メチルエチリデン)-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)ベンゼン、4,4'-(2-エチルヘキシリデン)-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-ベンゼン]、4,4'-(1-メチルヘプチリデン)-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-ベンゼン]、4,4'-シクロヘキシリデン-ビス[1-(o-プロペニルフェノキシ)-3-メチルベンゼン]、2,2-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-プロパン、2,2-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-メチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-プロパン、2,2-ビス[3-メチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-エチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-プロパン、2,2-ビス[3-エチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-ヘキサフルオロプロパン、ビス[3-メチル-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メタン、ビス[3,5-ジメチル-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メタン、ビス[3-エチル-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メタン、3,8-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-トリシクロ-[5,2,1,02・6]デカン、4,8-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-トリシクロ-[5,2,1,02・6]デカン、3,9-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-トリシクロ-[5,2,1,02・6]デカン、4,9-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-トリシクロ-[5,2,1,02・6]デカン、1,8-ビス[4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メンタン、1,8-ビス[3-メチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メンタン、1,8-ビス[3,5-ジメチル-4-(o-プロペニルフェノキシ)フェニル]-メンタンが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが、可能である。
【0088】
ビニル基を含有する化合物としては、分子中に1個以上のビニル基を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ビニル基を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーのビニルエーテル類が挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが、可能である。
【0089】
本実施形態における樹脂組成物は、特に限定されないが、良好なフラックス活性、及びフィルムの強度を確保する観点から、ラジカル重合性化合物(C)の合計量を、キレートフラックス剤(A)20質量部に対して、50質量部以上200質量部以下であることが好ましく、良好なフィルム形成性を得る観点から、80質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
その中でも、マレイミド基を含有する化合物は、ラジカル重合性化合物(C)のうち50~100%含有することが好ましい。
マレイミド基を含有する化合物は、優れたフラックス活性、優れた可撓性、及び低い熱膨張率をバランスよく有する観点から、ラジカル重合性化合物(C)の全体量100質量部に対して、前記式(3)で表されるマレイミド基化合物を5質量部以上50質量部以下含有することが好ましく、前記式(4)で表されるマレイミド基化合物を5質量部以上70質量部以下含有することが好ましく、前記式(5)で表されるマレイミド化合物を5質量部以上50質量部以下含有することが好ましく、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパンを5質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0090】
〔I-4.無機充填材(D)〕
本実施形態においては、耐燃性の向上、熱伝導率の向上、及び熱膨張率の低減のため、無機充填材(D)を含有することができる。無機充填材(D)の種類としては、特に限定されないが、例えば、溶融シリカ等のシリカ;ベーマイト、水酸化アルミニウム、及びアルミナ等のアルミニウム化合物;酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物;炭酸カルシウム等のカルシウム化合物;酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;天然タルク、及び焼成タルク等のタルク;マイカ;短繊維状ガラス、球状ガラス、及び微粉末ガラス(例えば、Eガラス、Tガラス、Dガラス)等のガラスが挙げられる。これらの無機充填材(D)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
これらの中でも、樹脂組成物の耐燃性の向上、及び熱膨張率の低減の観点から、無機充填材(D)としては、シリカが好ましく、その中でも、溶融シリカが更に好ましい。溶融シリカとしては、例えば、デンカ(株)製のSFP-120MC、(株)アドマテックス製のSC1050、SC2050、SE1030、SE1050、SE2050が挙げられる。また、アンダーフィル材用途で用いる場合は、低α線グレードのシリカの使用が好ましく、例えば、(株)アドマテックス製のSV-EM1、SX-EM1が挙げられる。
【0092】
無機充填材(D)の平均粒子径は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物を、プリアプライドアンダーフィル材として使用する場合、チップに配列される電極の狭ピッチ化や、電極間の狭ギャップ化に対応する観点から、3μm以下が好ましく、電極間のピッチが60μm以下となるような場合は、1μm以下がより好ましい。
なお、本明細書において無機充填材(D)の「平均粒子径」とは、無機充填材(D)のメジアン径を意味するものとする。ここでメジアン径とは、ある粒子径を基準として、粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒子径が大きい側の粒子の個数、又は質量と、より粒子径が小さい側の個数、又は質量とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒子径を意味する。無機充填材(D)の平均粒子径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0093】
本実施形態において、無機充填材(D)を使用する場合の含有量は、樹脂組成物の耐燃性の向上、及び熱膨張率の低減をしつつ、プリアプライドアンダーフィル材の接合時の流動性を確保する観点からは、樹脂組成物中におけるラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対し、300質量部以下とすることが好ましく、200質量部以下とすることがより好ましい。また、無機充填材(D)の含有量は、前記含有量100質量部に対し、10質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることが更に好ましい。なお、2種以上の無機充填材(D)を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0094】
〔I-5.可撓性付与成分(E)〕
本実施形態における可撓性付与成分(E)は、特に制限されないが、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ポリプロピレン、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、シリコーン樹脂、及びフェノキシ樹脂のような熱可塑性の高分子化合物が挙げられる。これらの可撓性付与成分(E)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
これらの中でも、樹脂組成物を製造する際に用いる有機溶剤への溶解性、マレイミド化合物との相溶性、樹脂組成物の溶融粘度の制御性、及び可撓性付与の観点から、可撓性付与成分(E)としては、(メタ)アクリルオリゴマー、及び(メタ)アクリルポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。(メタ)アクリルオリゴマー、及び(メタ)アクリルポリマーとしては、例えば、東亞合成(株)の「ARUFON」シリーズ、綜研化学(株)の「アクトフロー」シリーズ、根上工業(株)の「PARACRON」シリーズ、(株)クラレの「KURARITY」シリーズが挙げられる。
【0096】
可撓性付与成分(E)の分子量は、限定されないが、樹脂組成物に可撓性付与するという観点からは、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、硬化物における柔軟性、及び良好な靭性を付与する観点から、2,000以上であることがより好ましい。また、プリアプライドアンダーフィル材として使用する場合、金属接合部内に樹脂組成物の噛み込みがなく、より良好かつ安定した形状の接合を得るためには、樹脂組成物の溶融粘度を低く制御し、接合時の樹脂組成物の流動性を確保することが好ましい。そのような観点から、可撓性付与成分(E)の重量平均分子量が、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましく、溶剤溶解性の観点から、10,000以下がさらにより好ましい。この好ましい範囲の重量平均分子量を有する可撓性付与成分(E)を使用することにより、樹脂組成物の可撓性と、プリアプライドアンダーフィル材として使用する場合の接合性を両立することができる。
【0097】
本実施形態において、可撓性付与成分(E)を使用する場合の含有量は、溶融粘度の制御性の観点から、樹脂組成物中における前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対し、100質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、30質量部以下とすることが更に好ましい。また、可撓性付与成分(E)の樹脂組成物における含有量は、可撓性付与成分(E)を用いることによる作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、樹脂組成物中における前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、5質量部以上とすることがより好ましい。なお、2種以上の可撓性付与成分(E)を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲内であることが好ましい。
【0098】
〔I-6.その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物は、キレートフラックス剤(A)、熱ラジカル重合開始剤(B)、ラジカル重合性化合物(C)、無機充填材(D)、及び可撓性付与成分(E)の他に、その他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0099】
例えば、本実施形態の樹脂組成物は、吸湿耐熱性の向上、及びチップと樹脂組成物との接着性の向上の目的で、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているもので、かつキレートフラックス剤(A)との反応性が低いシランカップリング剤であれば、限定されない。例えば、ビニルシラン系シランカップリング剤(例えばγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、フェニルアミノシラン系シランカップリング剤(例えばN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、フェニルシラン系シランカップリング剤、イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
シランカップリング剤を使用する場合、その添加量は限定されない。ただし、吸湿耐熱性向上、及びフリップチップ実装時の揮発量低減の観点から、その含有量は、樹脂組成物中における前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲内であることが好ましい。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物は、積層体の製造性向上等の目的で、湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、限定されない。例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk-110、同-111、同-180、同-161、BYK-W996、同-W9010、同-W903が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
湿潤分散剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は限定されないが、積層体の製造性向上の観点からは、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、湿潤分散剤の比率を0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲内であることが好ましい。
【0103】
本実施形態の樹脂組成物は、接着性付与等の目的で、ベンゾオキサジン化合物を含有してもよい。ベンゾオキサジン化合物としては、熱により開環重合が進行する化合物として公知であり、一般に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、下記式(6)、下記式(7)、及び下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【0105】
式(6)で表される化合物中、R11は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、R12は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、X1はアルキレン基、下記式(9)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子又は単結合を示す。
【0106】
アリール基として、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスレニル基、及びビフェニル基が挙げられる。
【0107】
アラルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、及びフェネチル基が挙げられる。
【0108】
アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、及び2-メチルペンタン-3-イル基が挙げられる。
【0109】
シクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0110】
アルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、及びヘキサデカメチレン基の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン、メチルプロピレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、1-エチルプロピレン、2-エチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン、1-プロピルプロピレン、2-プロピルプロピレン、1-メチル-1-エチルプロピレン、1-メチル-2-エチル-プロピレン、1-エチル-2-メチル-プロピレン、2-メチル-2-エチル-プロピレン、1-メチルブチレン、2-メチルブチレン、3-メチルブチレン、2-エチルブチレン、メチルペンチレン、エチルペンチレン、メチルヘキシレン、メチルヘプチレン、メチルオクチレン、メチルノニレン、メチルデシレン、メチルウンデシレン、メチルドデシレン、メチルテトラデシレン、及びメチルオクタデシレン基の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0111】
【0112】
式(7)で表される化合物中、R13は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、R14は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、X2はアルキレン基、下記式(9)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子又は単結合を示す。
【0113】
アリール基、アラルキル基、アルキル基、シクロアルキル基、及びアルキレン基については、前記のとおりである。
【0114】
【0115】
式(8)で表される化合物中、R15は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、R16は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アリル基、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、X3はアルキレン基、下記式(9)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子又は単結合を示す。
【0116】
アリール基、アラルキル基、アルキル基、シクロアルキル基、及びアルキレン基については、前記のとおりである。
【0117】
【0118】
式(9)で表される化合物中、Yはアルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n3は1以上の整数を示す。
【0119】
アルキレン基については、前記のとおりである。
【0120】
芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、フェナレンの芳香族性を有する化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
【0121】
具体例として、下記式(10)で表される化合物、下記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物、下記式(14)で表される化合物、下記式(15)で表される化合物、及び下記式(16)で表される化合物が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
本実施形態において、ベンゾオキサジンを使用する場合の含有量は、限定されないが、チップとの十分な接着性を確保する観点から、ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、ベンゾオキサジン化合物を5質量部以上60質量部以下含むことが好ましく、25質量部以上45質量部以下含むことがより好ましい。なお、2種以上のベンゾオキサジン化合物を併用する場合には、これらの合計量が前記含有量の範囲内であることが好ましい。
【0130】
本実施形態の樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、及び難燃剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物において、その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、通常、樹脂組成物中における前記ラジカル重合性化合物(C)の合計量100質量部に対し、それぞれ0.01質量部以上10質量部以下である。
【0131】
本実施形態の樹脂組成物は、キレートフラックス剤(A)、熱ラジカル重合開始剤(B)、ラジカル重合性化合物(C)、無機充填材(D)、可撓性付与成分(E)、及びその他の成分を混合することにより調製される。必要に応じて、これらの成分を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスの形態としてもよい。本実施形態の樹脂組成物のワニスは、下記本実施形態の積層体を作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。有機溶剤は、前記の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、かつ、本実施形態の樹脂組成物の所期の効果を損なわないものであれば限定されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミ等のアミド類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0132】
本実施形態の樹脂組成物は、フラックス活性、可撓性、及び絶縁信頼性に優れる。また、樹脂組成物を支持基材上に塗布することにより、フラックス活性に優れた樹脂層を有する積層体を提供することができる。本実施形態の樹脂組成物を積層体の形態で使用するプリアプライドアンダーフィル材として用いた場合、フラックス活性、可撓性、及び絶縁信頼性に優れ、加えて、フリップチップ実装における接合性、吸湿耐熱性及びチップとの接着性にも優れる等、その他の好適な効果も発揮し得る。このように、本実施形態の樹脂組成物は、各種の優れた特徴を有し、特にフラックス活性、可撓性及び絶縁信頼性を高い水準で両立させることができることから、アンダーフィル材として極めて有用である。
【0133】
〔II.積層体、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き基板及び半導体装置〕
本実施形態の積層体、樹脂組成物層付き半導体ウェハ、樹脂組成物層付き基板及び半導体装置は、何れも前記した本実施形態の樹脂組成物を用いて形成される。
【0134】
〔II-1.積層体〕
本実施形態の積層体は、前記した本実施形態の樹脂組成物が、支持基材に添着されたものである。支持基材は、特に限定されないが、高分子フィルムを使用することができる。高分子フィルムの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン‐酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド及びポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含有するフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられ、これらの中でも、特にポリエステル、ポリイミド、ポリアミドが好ましく、その中でもポリエステルの1種である、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0135】
本実施形態の支持基材の厚さは限定されないが、積層体の製造性、例えば支持基材に樹脂組成物を塗布する場合の塗布厚の安定性の観点から10μm以上100μm以下であることが好ましい。また、積層体の搬送性の観点からも10μm以上100μm以下であることが好ましい。また、その厚さの下限としては、積層体を製造する際の歩留り確保の観点から、更に好ましくは12μm以上、特に好ましくは25μm以上であり、30μm以上であることがとりわけ好ましい。またその厚さの上限としては、支持基材が最終的には半導体装置の構成部材として存在することなく、工程の途中で剥離されることから、積層体の製造コストの観点から、80μm以下であることが好ましく、50mm以下であることがさらに好ましい。
【0136】
前記の支持基材上に、本実施形態の樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」ともいう。)を形成して本実施形態の積層体を製造する方法は、限定されないが、例えば、本実施形態の樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを、前記の支持基材の表面に塗布し、加熱及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して本実施形態の樹脂組成物を固化させ、樹脂組成物層を形成する手法等が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層に対する有機溶剤の含有比率が樹脂組成物層の総量(100質量%)に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒の種類と配合量によっても異なるが、例えば、キレートフラックス剤(A)、熱ラジカル重合開始剤(B)及びラジカル重合性化合物(C)を含む樹脂組成物における合計量100質量部に対し30質量部以上60質量部以下のメチルエチルケトンを含むワニスの場合、1気圧下で90℃以上160℃以下の加熱条件下で1分以上10分以下程度の乾燥が目安となる。特に、加熱温度については、熱ラジカル重合開始剤(B)の酸素による失活や揮発に注意しなければならない。本実施形態のワニスを加熱すると、熱ラジカル重合開始剤(B)の分解が進行し、発生した活性ラジカルが雰囲気中の酸素により失活したり、また熱ラジカル重合開始剤やその分解物が揮発することで、ラジカル重合性化合物(C)の重合に寄与するラジカル数が減少してしまい、フリップチップ実装において樹脂組成物の硬化反応が進行しない懸念がある。よって、本実施形態の樹脂組成物は、ワニスの乾燥温度以上の温度域に10時間半減期温度を有する熱ラジカル重合開始剤(B)を用いることが好適である。本実施形態の積層体における樹脂組成物層の厚さは限定されないが、樹脂組成物層の乾燥時に溶剤等の軽揮発分をより良好に除去する観点、及び積層体としての機能をより有効かつ確実に奏する観点から、5μm以上500μm以下の範囲が好適である。
【0137】
〔II-2.積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き半導体ウェハ、積層体を使用して作製される樹脂組成物層付き基板〕
本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハは、前記した本実施形態の積層体と半導体ウェハから形成されたものであり、本実施形態の樹脂組成物層付き基板は、前記した本実施形態の積層体と基板から形成されたものである。
【0138】
本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハを作製する方法は限定されないが、例えば、半導体ウェハの電極が形成された面、すなわち基板との接合が行われる面と、本実施形態の積層体の樹脂組成物層が対向するよう貼り合わせることで得られる。また、本実施形態の樹脂組成物層付き基板を作製する方法は限定されないが、例えば、基板のチップ搭載側の面と、本実施形態の積層体の本実施形態の樹脂組成物層が対向するよう貼り合わせることで得られる。
【0139】
本実施形態の積層体を半導体ウェハ又は基板に貼り合わせる方法としては、特に限定されないが、真空加圧式ラミネータを好適に使用することができる。この場合、本実施形態の積層体に対してゴム等の弾性体を介して加圧し、貼り合わせる方法が好ましい。ラミネート条件としては、当業界で一般に使用されている条件であれば特に限定されないが、例えば10℃以上140℃以下の温度、1kgf/cm2以上11kgf/cm2以下の範囲の接触圧力、並びに20hPa以下の雰囲気減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、貼り合わされた積層体の平滑化を行ってもよい。前記ラミネート工程及び平滑化工程は、市販されている真空加圧式ラミネータによって連続的に行うことができる。半導体ウェハ又は基板に貼り付けられた積層体は、いずれの場合もチップのフリップチップ実装前までに支持基材の除去が行われる。
【0140】
〔II-3.半導体装置〕
本実施形態の半導体装置は、本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハ、及び/又は本実施形態の樹脂組成物層付き基板を備え、本実施形態の樹脂組成物、チップ及び基板等から構成される。本実施形態の半導体装置を製造する方法は、限定されるものではないが、例えば、本実施形態の樹脂組成物層付き半導体ウェハを研削の手段で薄化及びダイシングソーによる個片化を行い、樹脂組成物層付きチップとし、これを基板に搭載する手法が挙げられる。また、本実施形態の樹脂組成物層付き基板に、チップを搭載してもよい。樹脂組成物層付きチップを基板に搭載する方法及び半導体チップを樹脂組成物層付き基板に搭載する方法では、熱圧着工法に対応したフリップチップボンダを好適に使用することができる。また、本実施形態ではチップを基板にフリップチップ実装する場合を便宜的に説明しているが、チップをフリップチップ実装しつつ、本実施形態の樹脂組成物を適用する対象は基板以外とすることも可能である。例えば、本実施形態の樹脂組成物は、半導体ウェハ上へチップを搭載する際の半導体ウェハとチップの接合部や、TSV(Through Silicon Via)を経由してチップ間接続を行うチップ積層体の、各チップ間の接合部に使用することも可能であり、いずれの場合も本実施形態による優位性を得ることができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されない。
【0142】
1.キレートフラックス剤評価
(1)評価対象
キレートフラックス剤単体の諸特性を評価するために、以下4種のキレートフラックス剤を評価対象とし、結果を表1に示した。
(i)N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン(融点:45℃、分子量:282、東京化成工業(株)製)
(ii)N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(融点:126℃、分子量:268、東京化成工業(株)製)
(iii)N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン(融点:53℃、分子量:282、東京化成工業(株)製)
(iv)N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミン(融点:164℃、分子量:316、東京化成工業(株)製)
【0143】
(2)はんだ濡れ性試験
(i)~(iv)のキレートフラックス剤を、厚さ12μmの電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)の光沢面に散布し、直径0.5mmのはんだボール(エコソルダーボールM705、Sn-3.0Ag-0.5Cu合金、千住金属工業(株)製)を置いた。これを、235℃に保たれたホットプレートの上で1分間加熱し、銅箔上ではんだを溶融させた後、室温で冷却した。はんだボールの銅箔への濡れ広がりをはんだボールの接触角を測定することにより、フラックス活性を評価した。はんだボールの接触角は、デジタルマイクロスコープ(KH-7700、(株)ハイロックス製)を用いて、銅箔上に溶融して濡れ広がったはんだボールの半径(a)及びはんだボールの高さ(b)を測定し、下記式より接触角を算出した。なお、はんだボールの半径(a)は、はんだが溶融して濡れ広がった範囲における、最大直径の半分の値を用いた。また、はんだボールの高さ(b)は、溶融したはんだの頂点から銅箔面に垂直に引いた線の長さを用いた。
はんだボールの接触角=2arctan{(b)/(a)}
はんだボールの接触角が1.20ラジアン未満のものをA、1.20ラジアン以上のものをCとして記載した。
【0144】
【0145】
表1より、はんだ濡れ性試験において、(i)~(iv)はいずれも良好な結果が確認された。以下の実施例においては、キレートフラックス剤として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンを用いた。
【0146】
2.樹脂組成物及び積層体の作製
(実施例1)
キレートフラックス剤(A)として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン(東京化成工業(株)製)のメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す場合がある。)溶液(不揮発分換算で20質量部)、熱ラジカル重合開始剤(B)として、ジクミルパーオキサイド(キシダ化学(株)製、10時間半減期温度:116.4℃)0.5質量部、第1のラジカル重合性化合物(C)として、式(3)におけるR8がすべて水素原子であり、n1が1以上3以下であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で8質量部)、第2のラジカル重合性化合物(C)として、マレイミド化合物(BMI-1000P、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で25質量部)、第3のラジカル重合性化合物(C)として、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で16質量部)、第4のラジカル重合性化合物(C)として、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で16質量部)、第1の無機充填材(D)として、スラリーシリカ(SV-EM1、固形分65%、均粒子径:0.3μm、(株)アドマテックス製)75質量部、第2の無機充填材(D)として、スラリーシリカ(SX-EM1、固形分65%、均粒子径:0.3μm、(株)アドマテックス製)25質量部、可撓性付与成分(E)として、アクリルポリマー(US-6170、東亞合成(株)製)10質量部、更に密着性付与成分として、ベンゾオキサジン(Pd型ベンゾオキサジン、四国化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で25質量部)を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、本発明の樹脂組成物層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0147】
(実施例2)
キレートフラックス剤(A)として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業(株)製)のMEK溶液を不揮発分換算で20質量部用いることに変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0148】
(実施例3)
熱ラジカル重合開始剤(B)として、ジ(2-tert-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油(株)製、10時間半減期温度:119.2℃)を用い、その使用量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0149】
(実施例4)
キレートフラックス剤(A)として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業(株)製)のMEK溶液を不揮発分換算で20質量部用い、熱ラジカル重合開始剤(B)として、ジ(2-tert-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油(株)製、10時間半減期温度:119.2℃)を用い、その使用量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0150】
(実施例5)
キレートフラックス剤(A)として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン(東京化成工業(株)製)のMEK溶液を用い、その使用量を不揮発分換算で60質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0151】
(実施例6)
熱ラジカル重合開始剤(B)として、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサHC、日油(株)製、10時間半減期温度:87.1℃)を用い、その使用量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0152】
(比較例1)
キレートフラックス剤(A)を使用しなかった以外は実施例3と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0153】
(比較例2)
熱ラジカル重合開始剤(B)を使用せず、硬化促進剤として2-フェニル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で0.5質量部)に変更以外は実施例1と同様にしてワニスを調製し、積層体を得た。
【0154】
(比較例3)
ビスフェノールA型エポキシ化合物(EXA-850CRP、エポキシ基当量171g/eq.、DIC(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で62質量部)、ノボラック型フェノール化合物(フェノライトKA-1163、水酸基当量118g/eq.、DIC(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で38質量部)、キレートフラックス剤(A)として、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン(東京化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で20質量部)、硬化促進剤として2-フェニル-4-メチルイミダゾールのMEK溶液(不揮発分換算で0.1質量部)、無機充填材(D)として、スラリーシリカ(SC-1050MLQ、平均粒子径:0.3μm、不揮発分換算で100質量部)、可撓性付与成分(E)として、アクリルポリマー(US-6170、東亞合成(株)製)10質量部、更に密着性付与成分として、ベンゾオキサジン(Pd型ベンゾオキサジン、四国化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分換算で25質量部)を混合し、高速攪拌装置を用いて30分間撹拌して、ワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、積層体を得た。
【0155】
3.評価方法
(1)ワニス作製可否
実施例1~6及び比較例1~3のワニス作製過程で、ワニスのゲル化や樹脂組成物成分の沈降等が確認されなければA、ワニスのゲル化や樹脂組成物成分の沈降等が確認されればCとして記載した。結果を表2に示す。
【0156】
(2)ワニス保存安定性
実施例1~6及び比較例1~3で得られたワニスの粘度(c)を、B型粘度計(東京計器(株)製)を用いて測定し、密閉容器内で2週間室温放置後の粘度(d)を、B型粘度計を用いて再び測定した。下記式にて2週間経過後の粘度の変化率を算出して、変化率が20%未満の場合はAA、2週間経過後の粘度の変化率が20%以上40%未満の場合はA、2週間経過後の粘度の変化率が40%以上の場合はCとして記載した。結果を表2に示す。
粘度の変化率={|(d)-(c)|/(c)}×100
【0157】
(3)実装試験
実施例1~6及び比較例1~3で得られた積層体を8mm×8mmの正方形に切断し評価用基板上にラミネートした後、フリップチップボンダ(LFB-2301、(株)新川製)を用いて、ステージ温度70℃、ボンドヘッド温度300℃、荷重50N、時間8秒の条件で、半導体チップを圧着し実装試験を行った。実装試験サンプルの断面観察により、半導体チップ側のCuピラー上のはんだと、基板側の配線との間に、合金生成が確認されればA、合金生成が確認されなければCとして記載した。結果を表2に示す。
【0158】
(4)実装サンプル外観
実装試験後のサンプルを半導体チップの真上から光学顕微鏡で観察した。半導体チップの表面に実施例1~6及び比較例1~3で得られた樹脂組成物の付着が確認されないものをAA、半導体チップの表面に実施例1~6及び比較例1~3で得られた樹脂組成物の付着がわずかに確認されるが、実使用上は品質に影響を与えないと思われるものをA、半導体チップの表面に実施例1~6及び比較例1~3で得られた樹脂組成物の付着が確認され、実使用上許容されないものをCとして記載した。結果を表2に示す。
【0159】
(5)可撓性
実施例1~6及び比較例1~3で得られた樹脂積層体を5cm×10cmの短冊状に断裁した後、室温において支持基材のポリエチレンテレフタレートフィルムが内側になるように外径が3cmの金属管に巻き付け、5秒間保持した後巻き戻した。この作業を10回繰り返した後、本発明の樹脂組成物層のクラックの有無を目視で確認し、可撓性の評価を行った。クラックの発生が全く認められないものをAA、クラックの発生がわずかに認められるが、実使用上は品質に影響を与えないと思われるものをA、クラックが発生し、実使用上許容されないものをCとして記載した。結果を表2に示す。
【0160】
(6)絶縁信頼性
プリント配線基板のL/S=40μm/40μmの微細回路パターン上に、実施例1~6及び比較例1~3で得られた積層体を真空ラミネータにより貼り付け、微細配線間を埋め込んだ。オーブンを使用し、前記で作製した積層体付き微細回路パターン基板を200℃で3時間加熱し、試験サンプルを作製した。得られた試験サンプルを前処理として、温度85℃、湿度60%の条件下で168時間加湿熱処理し、処理後のサンプルを最高温度260℃に設定したリフロー工程に3回流した。前処理後の試験サンプルを温度130℃、湿度85%、印加電圧5.0Vの条件で連続湿中絶縁抵抗を測定した。評価基準は、抵抗値107Ω以下を短絡とし、短絡するまでの時間が、300時間以上のものをA、300時間未満のものをCとして記載した。結果を表2に示す。
【0161】
【0162】
本出願は、2018年4月26日出願の日本特許出願(特願2018-84967)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の樹脂組成物は、前記したように、フラックス活性、可撓性、及び低熱膨張性に優れ、各種の効果を発揮することから、樹脂組成物、特に接着剤用樹脂組成物として好適に用いることができる。また、本発明の樹脂組成物は、プリアプライドアンダーフィル材料として有用である。本発明の樹脂組成物は、フラックス活性に優れることから、半導体チップと基板との接合や、半導体チップと半導体ウェハとの接合、更には半導体チップと半導体チップとの接合を行う際、良好な接合状態が得られるため、極めて有用である。