(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】吐出製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/38 20060101AFI20230406BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20230406BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B65D83/38 200
B65D83/38 BRH
B65D1/02 111
A45D34/04 550
(21)【出願番号】P 2018137822
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 紀宏
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-321028(JP,A)
【文献】特開2010-222019(JP,A)
【文献】特開2002-308358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/38
B65D 1/02
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部容器と、前記外部容器に収容された内部容器とからなる合成樹脂製の二重ボトルと、
前記二重ボトルを封止するためのバルブとを備え、
前記内部容器は、原液および加圧剤が充填され、
前記外部容器は、装飾用液体が
液密充填されている、吐出製品。
【請求項2】
前記内部容器および前記外部容器の胴部の厚みは、0.2~0.7mmである、請求項1記載の吐出製品。
【請求項3】
前記装飾用液体の充填量は、前記外部容器の満注量の5~30容量%である、請求項1または2記載の吐出製品。
【請求項4】
前記装飾用液体は、透光性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の吐出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出製品に関する。より詳細には、本発明は、容器の原料が少なくても、合成樹脂製の容器本体を、肉厚感があり、高級感のある外観に見せることのできる吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部容器と内部容器とを備え、外部容器と内部容器との間の空間に原液を充填し、内部容器内に加圧剤と装飾品を充填した吐出製品が開示されている。特許文献1の吐出製品は、原液を吐出し空間内の原液が少なくなると、内部容器内の装飾品が見えるようになる。
【0003】
ところで、従来、化粧品等の容器は、肉厚なガラス製の容器が使用されている。肉厚なガラス製容器は、消費者に対して高級感を与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吐出製品は、使用し続けることにより、外部容器と内部容器との間の原液が減り、徐々に内部の装飾品が視認できるよう構成されている。そのため、特許文献1に記載の吐出製品は、肉厚感のある外観ではなく、かつ、使用し続けることにより外観が徐々に変化する。また、従来のガラス製容器は、肉厚にするために、多くの原料(ガラス)を要する。
【0006】
本発明は、このような従来技術とは異なり、容器の原料が少なくても、肉厚感があり、高級感のある外観に見せることのできる吐出製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)外部容器と、前記外部容器に収容された内部容器とからなる合成樹脂製の二重ボトルと、前記二重ボトルを封止するためのバルブとを備え、前記内部容器は、原液および加圧剤が充填され、前記外部容器は、装飾用液体が充填されている、吐出製品。
【0009】
このような構成によれば、外部容器は、装飾用液体が充填されている。これにより、二重ボトルは、肉厚感があり、高級感のある外観になる。また、装飾用液体の充填量を調整することにより、吐出製品は、肉厚さを調整し、外観を容易に調整することができる。さらに、二重ボトルは、いずれも合成樹脂製であり、使用原料である樹脂の量が少ない。そのため、原料の使用量を節約することができる。さらに、また、内部容器には、原液のほか、加圧剤が充填されている。そのため、吐出製品は、原液が少なくなっても、内部容器の形状が加圧剤の圧力によって維持されやすく、外観が変化しにくい。
【0010】
(2)前記内部容器および前記外部容器の胴部の厚みは、0.2~0.7mmである、(1)記載の吐出製品。
【0011】
このような構成によれば、吐出製品は、薄肉の容器を用いているにもかかわらず、肉厚感があり、高級感のある外観になる。そのため、吐出製品は、容器に使用する原料の量を減らすことができる。
【0012】
(3)前記装飾用液体の充填量は、前記外部容器の満注量の5~30容量%である、(1)または(2)記載の吐出製品。
【0013】
このような構成によれば、内部容器が装飾用液体により塑性変形しにくい。そのため、吐出製品は、外観が優れる。
【0014】
(4)前記装飾用液体は、透光性を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の吐出製品。
【0015】
このような構成によれば、吐出製品は、原液の色と重なることでより高級感のある外観が得られやすい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器の原料が少なくても、肉厚感があり、高級感のある外観に見せることのできる吐出製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の吐出製品の模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の吐出製品の拡大された断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の吐出製品の拡大された断面図である。
【
図4】
図4は、装飾用液体を充填する前の吐出製品の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の変形例の吐出製品の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<吐出製品>
本発明の一実施形態の吐出製品について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の吐出製品1の模式的な断面図である。
図2は、本実施形態の吐出製品1の拡大された断面図である。
図1および
図2に示される吐出製品1は、吐出動作が行われている状態(吐出状態)である。本実施形態の吐出製品1は、外部容器5と、外部容器5に収容された内部容器6とからなる合成樹脂製の二重ボトル(容器本体2)と、二重ボトルを封止するためのバルブ3とを備える。バルブ3のステム7には、吐出部材4が取り付けられている。内部容器6は、原液Cおよび加圧剤が充填されている。外部容器5は、装飾用液体Iが充填されている。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(容器本体2)
容器本体2は、外部容器5と、外部容器5に収容された内部容器6とからなる合成樹脂製の二重ボトルである。
【0020】
・外部容器5
外部容器5は、合成樹脂製の容器である。外部容器5は、耐圧性を有する有底筒状であり、半球状の底部と、円筒状の胴部51と、胴部の上端からテーパー状に縮径する肩部52と、その上端から延びる円筒状の首部53とから構成されている。首部53の外周には、後述するカバーキャップ31aを取り付けるためのネジが形成されている。
【0021】
胴部51の厚みは特に限定されない。本実施形態の吐出製品1は、後述する装飾用液体Iが充填されていることにより、肉厚で高級感のある外観を示し得る。そのため、本実施形態の吐出製品1は、胴部51の厚みが小さい場合において、優れた効果を発揮する。一例を挙げると、胴部51の厚みは、0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。また、胴部51の厚みは、0.7mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがより好ましい。胴部51の厚みが0.2mm未満である場合、吐出製品1は、耐圧強度が低下し過ぎる場合がある、一方、胴部51の厚みが0.7mmを超える場合、吐出製品1は、容器を構成する材料の量が多くなり、コストが大きくなりやすい。
【0022】
外部容器5は、合成樹脂製であればよい。一例を挙げると、合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等である。これらの中でも、外部容器5を構成する合成樹脂は、透明性が優れており、内部に装飾用液体を充填することで肉厚感があるように見えやすい点から、ポリエステルであることが好ましい。
【0023】
・内部容器6
内部容器6は、合成樹脂製の容器であり、外部容器5に収容される。本実施形態の吐出製品1は、内部容器6と外部容器5との間の空間(第1収容空間S1)に装飾用液体が充填され、内部容器6内の空間(第2収容空間S2)に原液および加圧剤が充填される。
【0024】
内部容器6は、半球状の底部と、円筒状の胴部61と、胴部61の上端からテーパー状に縮径する肩部と、その上端から延びる円筒状の首部と、首部の上端から径方向の外側に延びるフランジ部62とから構成されている。また、内部容器6には、フランジ部62の下面から、首部と肩部の境界にかけて、第1収容空間S1と外部とを連通するための溝63が形成されている。溝63は、周方向に複数本形成されており、吐出製品1を使用し終えた後に、装飾用液体を外部に吐出するための吐出経路を構成する。内部容器6の首部の上端には、後述するバルブ3が取り付けられる。
【0025】
内部容器6は、合成樹脂製であればよい。一例を挙げると、合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等である。これらの中でも、内部容器6を構成する合成樹脂は、外部容器5と同時にブロー成型しやすいという点から、外部容器5と同じ材質であることが好ましい。また、外部容器5と内部容器6とは異なる材質であってもよく、その場合は樹脂の熱収縮率の違いからブロー成型後に内部容器6を外部容器5から剥離しやすく、第1収容空間S1を形成しやすい。また、外部容器5と内部容器6は、先にブロー成型した外部容器5に内部容器6のプリフォームを挿入し、内部容器5を外部容器6内でブロー成形してもよい。
【0026】
・原液C
原液Cは、内部容器6の空間(第2収容空間S2)に充填される内容物である。原液Cは、流体であれば特に限定されない。原液Cは、透明であっても不透明であってもよく、後述する装飾用液体Iと組み合わせることで、高級感のある外観を演出することができる。たとえば、原液Cを不透明とし、装飾用液体Iを透明にすることで、外部容器5の表面から内部容器6の表面までの肉厚感が得られやすい。また、原液Cを着色し、装飾用液体Iを半透明にすることで曇りガラスのような外観が得られやすい。また、原液Cは、低粘度の液体であってもよく、クリームやゲルなどの高粘度流体であってもよい。一例を挙げると、原液Cは、リンクルケア、保湿剤、化粧水、洗顔料、制汗剤、収斂剤、日焼け止め等のスキンケア、ヘアクリーム、ヘアオイルなどのヘアケア、消炎鎮痛剤などの薬液、芳香剤、消臭剤、除虫剤などの空間噴霧用液体、シャンプー、リンス、シェービングなどの日用剤、オリーブオイル等の食用品等である。
【0027】
・加圧剤
加圧剤は、内部容器6の空間(第2収容空間S2)に、原液Cとともに充填される。加圧剤は、多くが内部容器6の気相部分に存在し、吐出時に原液Cの液面を加圧し、バルブが解放された際に原液Cを外部に吐出するために配合される。
【0028】
加圧剤は、窒素、空気、二酸化炭素、亜酸化窒素等の圧縮ガスが例示される。
【0029】
加圧剤の圧力は、内部容器6に充填された原液Cを押圧して外部に吐出することができる程度であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、加圧剤の圧力は、内部容器6内の20℃における圧力が0.2MPa以上となるよう充填することが好ましく、0.3MPa以上となるよう充填することがより好ましい。また、加圧剤の圧力は、内部容器6内の20℃における圧力が0.8MPa以下となるように充填することが好ましく、0.6MPa以下となるように充填することがより好ましい。加圧剤の圧力が上記範囲内となるよう第2収容空間S2に充填されることにより、吐出製品1は、バルブ3が開放された際に、内部容器6内の原液Cを適度に押圧し、バルブ3のハウジング35に取り込ませる。その後、原液Cは、第2ステム内通路72bを通過し、吐出部材4に送られ、吐出される。また、後述する装飾用液体Iは、原液Cが全量吐出された後の残圧により、排出され得る。
【0030】
・装飾用液体I
装飾用液体Iは、内部容器6と外部容器5との間の空間(第1収容空間S1)に充填される。装飾用液体Iは、内部容器6の胴部と外部容器の胴部の間の容積を調整し、肉厚感を調整するために配合される。装飾用液体Iは第1収容空間S1内に液密状態に充填されている。
【0031】
装飾用液体Iは特に限定されない。一例を挙げると、装飾用液体Iは、水、グリセリンなどのアルコール類、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ミネラルオイルなどの炭化水素油、オリーブオイルなどの油脂、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油など、透光性を有する液体があげられる。これらの中でも、装飾用液体Iは、外部容器や内部容器を白化やクラックなどを発生させることがなく長期間安定である点から、水、シリコーンオイル、炭化水素油であることがより好ましい。また、装飾用液体Iは着色してもよく、その場合は外部容器や内部容器を染色することなく外観を演出できるため、外部容器や内部容器をリサイクルしやすい。さらに、装飾用液体Iとして水溶性液体と油溶性液体など、溶解しない液体を複数充填し、多層にすることもできる。このような装飾用液体Iが充填されることにより、吐出製品1は、優れた外観が得られやすい。さらに装飾用液体Iは、ナイロンなどの樹脂パウダー、マイカなどの鉱物パウダー、シリコンパウダーなどの、装飾用液体Iに溶解しないパウダーが含まれてもよい。これにより、吐出製品1は、これら不溶性のパウダーを装飾用液体I中で移動させる演出が可能である。
【0032】
装飾用液体Iの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、充填量は、外部容器5の満注量の5容量%以上であることが好ましく、7容量%以上であることがより好ましい。また、充填量は、外部容器5の満注量の30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましい。充填量が上記範囲内であることにより、吐出製品1は、装飾用液体Iが充填された状態において、内部容器6の塑性変形を防止して不規則な折れ目や凹みによる外観への影響が少ない。そのため、吐出製品1は、外観が優れる。なお、本実施形態において、外部容器5の満注量は、バルブを取り付けたときの第1収容空間S1と第2収容空間S2の合計容積である。
【0033】
(バルブ3)
バルブ3は、外部容器5および内部容器6の開口を閉止して、外部容器5および内部容器6を密封すると共に、第2収容空間S2と外部の連通/遮断するための部材である。バルブ3は、ステム7を収容し、内部容器6の開口に装着されるバルブ本体部32と、バルブ本体部32を覆い、外部容器5および内部容器6の開口を閉止するよう固着されるカバーキャップ31aとを主に備える。
【0034】
カバーキャップ31aは、バルブ3を外部容器5および内部容器6に取り付けるための部材である。カバーキャップ31aは、バルブ本体部32を覆うキャップ本体33と、キャップ本体33の外周縁において下方に延設された略円筒状の縁部34とを有する。キャップ本体33は、中心に後述するステム7が挿通される挿通孔が形成されている。縁部34の内面には、外部容器5の首部53の外周面に形成されたネジと螺合するネジが形成されている。
【0035】
バルブ本体部32は、ハウジング35と、外部容器5内の第1収容空間S1と外部を連通する第1ステム孔71aおよび内部容器6内の第2収容空間S2と外部を連通する第2ステム孔71bが形成されたステム7と、第1ステム孔71aの周囲に取り付けられ、第1ステム孔71aを閉止するための第1ステムラバー36aと、第2ステム孔71bの周囲に取り付けられ、第2ステム孔71bを閉止するための第2ステムラバー36bとを主に備える。
【0036】
ハウジング35は、ステム7が収容される部材である。ハウジング35は、上部が開口した略円筒状の筒部351と、筒部351の上端から径方向の外側に延設されたフランジ部352を主に備える。筒部351の内底面には、ステム7を上方向へ付勢する樹脂製の弾性部材37が形成されている。フランジ部352は、円盤状の天面部と、天面部の上面から上方に延設された上面側延設部353と、下面から下方に延設された下面側延設部354とを備える。フランジ部352の天面部には、第1収容空間S1から上面側延設部353内に連通するための通路(排出通路38)が形成されている。排出通路38は、使用を終えた吐出製品1から加圧剤および装飾用液体Iを排出するための通路である。下面側延設部354は、略円筒状の部位である。下面側延設部354の外周面にはOリングを保持する環状の保持溝が形成されており、Oリングは保持溝と内部容器6の内周面との間で圧縮されてシールしている。ハウジング35の底面には、円筒状のチューブ取付部355が設けられている。チューブ取付部355は、チューブ39を取り付けるための部位である。チューブ39は、内部容器6内の原液Cを取り込むための、略円筒状の長尺の部材である。チューブ39は、原液Cに浸漬される下側開口部が形成された下端部と、チューブ取付部355に挿入され、取り込まれた原液Cが排出される上側開口部が形成された上端部とを有する。
【0037】
ステム7は、略円筒状の部位であり、中央近傍から上部は二重円筒状である。ステム7は、排出される装飾用液体Iが通過する第1ステム内通路72aと、吐出時にハウジング35内に取り込まれた原液Cが通過する第2ステム内通路72bとが形成されている。ステム7の上端は、二重円筒状であり、ステム内筒部73aと、ステム内筒部73aを囲むステム外筒部73bとからなる。ステム内筒部73aの上端は、ステム外筒部73bと比較して、外部に突出している。ステム内筒部73aの突出した上端は、原液Cを吐出するための吐出部材4が取り付けられる。
【0038】
第2ステム内通路72bの下端近傍には、ハウジング35内の空間と第2ステム内通路72bとを連通する第2ステム孔71bが形成されている。第1ステム内通路72aの下端近傍には、上記排出通路38の一端が開口する空間と第1ステム内通路72aとを連通する第1ステム孔71aが形成されている。第1ステム孔71aは、非排出時には、第1ステムラバー36aの内周面により閉止される。第2ステム孔71bは、非吐出時には、第2ステムラバー36bの内周面により閉止される。
【0039】
第1ステム孔71aの断面積は特に限定されない。一例を挙げると、第1ステム孔71aの断面積は、0.03mm2以上であり、0.05mm2以上であることがより好ましい。また、第1ステム孔71aの断面積は、1mm2以下であり、0.8mm2以下であることがより好ましい。第1ステム孔71aの断面積が上記範囲内であることにより、装飾用液体Iを排出しやすい。
【0040】
第2ステム孔71bの断面積は特に限定されない。一例を挙げると、第2ステム孔71bの断面積は、0.1mm2以上であり、0.15mm2以上であることがより好ましい。また、第2ステム孔71bの断面積は、2mm2以下であり、1.5mm2以下であることがより好ましい。第2ステム孔71bの断面積が上記範囲内であることにより、原液Cは、詰まりを生じにくく、吐出されやすい。
【0041】
第1ステムラバー36aは、第1ステム孔71aの周囲に取り付けられ、排出通路38の一端が開口する空間と外部とを適宜遮断するための部材である。また、第1ステムラバー36aは、中心にステム7が挿通される挿通孔が形成された円盤状の部材である。第1ステムラバー36aの内径は、ステム7のうち、第1ステム孔71aが形成されている箇所の外径よりもわずかに小さく、非排出時において、内周面をステム7の第1ステム孔71aが形成された外周面と密着させて、第1ステム孔71aを閉止する。
【0042】
第2ステムラバー36bは、第2ステム孔71bの周囲に取り付けられ、ハウジング35の内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。また、第2ステムラバー36bは、中心にステム7が挿通される挿通孔が形成された円盤状の部材である。第2ステムラバー36bの内径は、ステム7のうち、第2ステム孔71bが形成されている箇所の外径よりもわずかに小さく、非吐出時において、内周面をステム7の第2ステム孔71bが形成された外周面と密着させて、第2ステム孔71bを閉止する。
【0043】
弾性部材37は、ハウジング35内に圧縮状態で保持され、ステム7を上方に付勢するスプリングの作用をする合成樹脂製の板状部材である。弾性部材37は、筒部351の内底面から上方へ延設された4つの突片から構成される。それぞれの突片の上端は、ステム7の底面と当接している。弾性部材37は、非吐出時において、ステム7を上方向へ付勢する。また、弾性部材37を構成するそれぞれの突片は樹脂製であり、ステム7が押し下げられることにより、容易に変形し得る。なお、弾性部材37は合成樹脂製の板状部材の代わりに、バルブ3において一般的に使用される金属製のスプリングであってもよい。
【0044】
(吐出部材4)
吐出部材4は、原液Cを吐出するための部材であり、ステム7の上端に取り付けられる。吐出部材4は、ステム7が取り付けられた状態において、ステム7のステム内筒部73aおよびステム外筒部73bがほぼ隙間なく嵌め込まれるための第1凹部41が形成されている。吐出部材4は、第1凹部41と連通する断面形状が略L字状の吐出通路42と、噴射治具43が嵌め込まれる第2凹部44とが形成されている。噴射治具43は、外周縁上に複数の溝431が設けられた略円筒状の治具本体43aと、治具本体43aに取り付けられる噴射ノズル43bとからなる。噴射ノズル43bは、溝431を通過した原液Cが吐出孔432aに向かって流れるノズル通路432bと、ノズル通路432bの端部に形成された空間であって、原液Cを旋回させるための旋回室432cが形成されている。
【0045】
吐出孔432aの断面積は、0.03mm2以上であることが好ましく、0.05mm2以上であることがより好ましい。また、吐出孔432aの断面積は、2mm2以下であることが好ましく、1mm2以下であることがより好ましい。吐出孔432aの断面積が上記範囲内であることにより、原液Cは、詰まりを生じにくく、霧状で吐出されやすい。
【0046】
なお、本実施形態において、吐出孔432aの数および形状は特に限定されない。吐出孔432aは、複数であってもよい。また、吐出孔432aの形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0047】
図1および
図2に示されるように、吐出部材4がステム7に取り付けられると、第1凹部41には、ステム内筒部73aおよびステム外筒部73bがほぼ隙間なく嵌め込まれる。そのため、この状態で吐出部材4が押し下げられると、第2ステムラバー36bが撓み、第2ステム孔71bが開放される。その結果、原液Cは、内部容器6からハウジング35内に取り込まれ、第2ステム孔71bを通過し、さらに、第2ステム内通路72bを通過し、吐出部材4に取り込まれ、その後、吐出孔432aから吐出される。この際、吐出部材4が押し下げられると、第1ステムラバー36aも同様に撓み、第1ステム孔71aが開放される。しかしながら、第1凹部41には、ステム内筒部73aおよびステム外筒部73bがほぼ隙間なく嵌め込まれている。そのため、排出通路38の一端が開口する空間と外部とは、連通しない。その結果、
図1に示される態様では、原液Cのみが吐出され、第1収容空間S1内の装飾用液体Iは漏洩しにくい。原液Cの吐出に伴い内部容器6内の原液Cは少なくなる。しかしながら、内部容器6内には加圧剤が充填されているため、装飾用液体Iの充填状態は変化せず、肉厚感のある外観は変化しない。
【0048】
また、吐出部材4は、第1凹部41が設けられている面の反対側の面に、装飾用液体Iを排出する際にステム内筒部73aを挿し込むための第3凹部45が設けられている。
【0049】
図3は、使用し終わった後に、装飾用液体Iを排出している状態(排出状態)を説明するための拡大された断面図である。吐出部材4は、上下が反転され、第3凹部45にステム内筒部73aが挿し込まれている。第3凹部45の深さは、ステム内筒部73aがステム外筒部73bに対して突出している長さよりも短い。そのため、
図3に示されるように、ステム内筒部73aが第3凹部45に挿し込まれた状態において、吐出部材4が押し下げられると、第1ステムラバー36aが撓み、第1ステム孔71aが開放される。この際、加圧剤が充填されている内部容器6は、いくらか膨らむ。その結果、装飾用液体Iは、膨張する内部容器6によって押し出されるように流動し、排出通路38を通過し、次いで、第1ステム孔71aを通過し、さらに、ステム内筒部73aとステム外筒部73bとの間隙を通過して、外部に排出される。そのため、容器本体2をリサイクルしやすい。
【0050】
この際、第2ステムラバー36bも撓み、第2ステム孔71bが開放される。しかしながら、原液Cが通過するステム内筒部73aの上端は、第3凹部45によって閉止されている。そのため、吐出製品1は、使用後に、仮にわずかに原液Cが内部容器6内に残存している場合であっても、原液Cは吐出されない。
【0051】
本実施形態の吐出製品1の製造方法は特に限定されない。
図4は、装飾用液体Iを充填する前の吐出製品1の模式的な断面図である。
図4に示されるように、吐出製品1は、外部容器5と内部容器6とが密着するよう同時に成形されている。原液Cが内部容器6に充填され、次いで、バルブ3が固着される。その後、装飾用液体Iは、第1ステム内通路72a、第1ステム孔71aを介して、外部容器5と内部容器6との間の第1収容空間S1(
図1、
図2参照)に加圧充填される。次いで、加圧剤は、第2ステム内通路72b、第2ステム孔71b(
図1、
図2参照)を介して、内部容器6内に加圧充填される。この充填方法により、第1収容空間S1内に装飾用液体Iを液密状態に充填することができる。なお、内部容器6に用いている原料のガラス転移点以上に加温した原液Cを充填して内部容器6を熱収縮させ、外部容器5との隙間を大きくしてから装飾用液体Iを充填してもよい。この場合、吐出製品1は、内部容器6に不規則な折れ目や凹みなどができにくく、優れた外観が得られやすい。
【0052】
以上、本実施形態の吐出製品1によれば、外部容器は、装飾用液体Iが充填されている。これにより、吐出製品1は、肉厚感があり、高級感のある外観になる。また、装飾用液体Iの充填量を調整することにより、吐出製品1は、肉厚さを調整することができる。さらに、容器本体2は、いずれも合成樹脂製であり、使用原料である樹脂の量が少ない。そのため、原料の使用量を節約することができる。さらに、また、内部容器6には、原液Cのほか、加圧剤が充填されている。そのため、吐出製品1は、原液Cが少なくなっても、内部容器6の形状が加圧剤の圧力によって維持されやすく、外観が変化しにくい。
【0053】
なお、本実施形態では、第3凹部45が第1凹部41の反対側に形成されている場合について例示した。しかしながら、第3凹部45は、省略されてもよい。この場合、装飾用液体Iは、吐出部材の平坦な面をステム内筒部73aの上端に押し当てることにより、排出され得る。また、第3凹部45の位置は特に限定されない。第3凹部45は、たとえば、吐出孔432aの形成されている面の反対側の面に設けられていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、装飾用液体Iが第1収容空間S1に液密状態で充填されている場合について例示した(
図1参照)。この場合、装飾用液体Iが無色である場合、使用者は、誤って、第1収容空間S1に何も充填されていないと誤認する可能性がある。そうすると、使用者は、内部容器6に加圧剤が充填された状態でバルブ3を開放することによって、第1収容空間S1に充填された装飾用液体Iを、誤って噴出させるおそれがある。そこで、このような上記実施形態に代えて、本発明の吐出製品は、第1収容空間S1に、装飾用液体Iと圧縮ガスとが充填されてもよい。
図5は、本発明の変形例の吐出製品1aの模式的な断面図である。
図5に示されるように、第1収容空間S1には、装飾用液体Iと、圧縮ガスが充填されている。このような吐出製品1aによれば、装飾用液体Iの液面が把握されやすい。そのため、使用者は、第1収容空間S1に装飾用液体Iが充填されていることを認識しやすい。その結果、使用者は、装飾用液体Iを排出する前に誤ってバルブ3を開放することが予防され得る。
【0055】
なお、本変形例において、外部容器5aの形状は、略円筒形状であり、底部の中心部分がいくらか容器内側に凹んでいる。このような形状は、吐出製品1aを自立させたり、外部容器5aの内圧を分散させるために有用である。本変形例の外部容器5aの形状は、上記実施形態と同様に、半球状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、1a 吐出製品
2 容器本体
3 バルブ
31a カバーキャップ
31b 筒部
32 バルブ本体部
33 キャップ本体
34 縁部
35 ハウジング
351 筒部
352 フランジ部
353 上面側延設部
354 下面側延設部
355 チューブ取付部
36a 第1ステムラバー
36b 第2ステムラバー
37 弾性部材
38 排出通路
39 チューブ
4 吐出部材
41 第1凹部
42吐出通路
43 噴射治具
431 溝
432a 吐出孔
432b ノズル通路
432c 旋回室
43a 治具本体
43b 噴射ノズル
44 第2凹部
45 第3凹部
5、5a 外部容器
51 胴部
52 肩部
53 首部
6 内部容器
61 胴部
62 フランジ部
63 溝
7 ステム
71a 第1ステム孔
71b 第2ステム孔
72a 第1ステム内通路
72b 第2ステム内通路
73a ステム内筒部
73b ステム外筒部
C 原液
I 装飾用液体
S1 第1収容空間
S2 第2収容空間