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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230407BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019097329
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191032
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 壮
(72)【発明者】
【氏名】平松 真知子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】青木 元伸
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052865(WO,A1)
【文献】特開2018-144695(JP,A)
【文献】特開2009-78735(JP,A)
【文献】特開2016-203745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車線から隣接車線に自車を車線変更する車線変更制御を行うコントローラを備える走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記隣接車線への車線変更意思を有する自車が前記自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止し、
前記先行車との車間距離を通常より開けて停止すると、前記隣接車線を走行する他車のうち前記自車線に向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出し、
前記車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車より後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車とし、
前記対象車が特定されると、自車の車線変更に先行し、自車の前進移動によって前記対象車を自車の後方へ誘導することで前記対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記対象車が特定されると、前記隣接車線を走行する前記対象車までの車間距離が、前記対象車が減速を開始してから自車の後方位置に停止することが可能な車間距離設定値に到達したか否かを判断し、
前記対象車が前記車間距離設定値に到達したことが判断されると、停止している自車の前進移動による前記車線変更譲歩制御を開始する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記対象車までの車間距離を判断するとき、前記車間距離設定値、前記対象車が減速を開始した後に車速低下勾配が緩やかな角度で減速すると想定したときの想定減速度に基づいて、前記対象車の車速が高いほど長くなる車間距離に設定する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行するとき、前記車線変更譲歩制御、前記先行車との車間距離を通常より開けて停止している自車の前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車の前端を前記隣接車線に向けながら前進移動し、前進移動した位置で待機する制御とする
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記車線変更譲歩制御が終了すると、前記自車の前進移動に伴って自車の後方に作られる車間スペースに向かって接近してきた前記対象車が、自車の後方へ入るように減速しているか否かを判断し、
前記対象車が自車の後方へ入るように減速していると判断されると、自車の車線変更を開始する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記隣接車線への車線変更意思を有する自車が前記自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離として、通常の停止車間距離より長い設定停止車間距離を確保できたか否かを判断し、
前記設定停止車間距離を確保できなかった場合、前記先行車が前方へ移動しても自車の停止を維持したままとする
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記隣接車線への車線変更意思を有する自車が、自車と先行車との車間距離を通常の停止車間距離より長い距離を確保して停止すると、自車の直後の後続車が停止しているか否かを判断し、
前記後続車の停止が判断されると自車のウィンカーを作動させる
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載された走行支援方法において、
前記コントローラは、
前記隣接車線への車線変更意思を自車が有すると判断された場合、前記隣接車線を走行する他車のうち、自車より後方を走行する後続車との車間距離及び相対速度を監視し、
前記後続車との車間距離及び相対速度に基づいて、自車が前記隣接車線に車線変更できると判断されると、自車の前記隣接車線への単独車線変更を開始する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項9】
自車線から隣接車線に自車を車線変更する車線変更制御を行うコントローラを備える走行支援装置であって、
前記コントローラは、
前記隣接車線への車線変更意思を有する自車が前記自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止する停止車間距離確保処理部と、
前記先行車との車間距離を通常より開けて停止すると、前記隣接車線を走行する他車のうち、前記自車線に向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出する他車車線変更意思検出処理部と、
前記車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車より後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車とする対象車特定処理部と、
前記対象車が特定されると、自車の車線変更に先行し、自車の前進移動によって前記対象車を自車の後方へ誘導することで前記対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する車線変更譲歩処理部と、を有する
ことを特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力装置から入力された指令信号は、走行支援信号生成部に入力される。走行支援信号生成部は、入力された指令信号を元に、運転動作生成手段格納部に格納されている運動作成手段にどのような運転動作を選択するか処理させ、その決定に基づいて運転動作モデル格納部から、車両が従うべき運転動作のモデルが呼び出される。走行支援信号生成部は、センシング装置によりリアルタイムで取得されるデータを使用して、運転動作モデル格納部から、随時、適切な運転動作モデルを選択する。そして、走行支援信号を出力装置に出力する。これにより、出力装置により、運転者に推奨動作が表示されると共に、制御装置及び、駆動部を介して、車両の制御が行われる走行支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-20898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置にあっては、車両の移動(車線変更)を行う場合に、移動先の物体(車両或いは障害物)との距離及び相対速度を使用して、移動(車線変更)が可能か否かを判断するようにしている。つまり、自車と他車の相対速度等に基づいて車線変更判断を行っているため、他車が車線変更したい場合においても、他車が自ら減速するのを確認するまで、自車の車線変更判断を行うことができない。そのため、他車が自車より前で車線変更してしまうと、自車は車線変更できなくなってしまうという、という課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、自車が渋滞車線から流れている隣接車線に車線変更を要求するシーンにおいて、自車が車線変更する機会を失うことがある場面であっても、自車が隣接車線へ車線変更する機会を作るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、自車線から隣接車線に自車を車線変更する車線変更制御を行うコントローラを備え、該コントローラが行う以下の手順による走行支援方法としている。
隣接車線への車線変更意思を有する自車が前記自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止する。
先行車との車間距離を通常より開けて停止すると、隣接車線を走行する他車のうち自車線に向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出する。
車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車より後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車とする。
対象車が特定されると、自車の車線変更に先行し、自車の前進移動によって対象車を自車の後方へ誘導することで対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
上記解決手段を採用したため、自車が渋滞車線から流れている隣接車線に車線変更を要求するシーンにおいて、自車が車線変更する機会を失うことがある場面であっても、自車が隣接車線へ車線変更する機会を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の走行支援方法及び走行支援装置が適用された自動運転制御システムを示す全体システム図である。
図2】自動運転制御ユニットに備える車線変更コントローラを示す制御ブロック図である。
図3】自動運転制御ユニットに有する車線変更コントローラにて実行される車線変更制御処理の流れを示すフローチャートである。
図4】停止している自車が前進移動を開始する車間距離設定値の計算説明を示す計算説明図である。
図5】入れ替え車線変更の対象車が自車に向かって減速してくるときの減速挙動(位置・速度・加速度・ジャーク)の想定例を示す特性図である。
図6】背景技術において渋滞車線を走行している自車が流れている隣接車線への車線変更の意思があっても車線変更が難しい状況であることを示す作用説明図である。
図7】背景技術において隣接車線に車線変更の意思がある他車があっても入れ替え車線変更の機会を失う状況を示す作用説明図である。
図8】渋滞している自車線から流れている隣接車線に自車を車線変更する本開示発明における入れ替え車線変更作用を示す作用説明図である。
図9】渋滞している自車線から流れている隣接車線に自車を車線変更する実施例1における入れ替え車線変更作用を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による走行支援方法及び走行支援装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における走行支援方法及び走行支援装置は、自動運転モードを選択すると、目標走行軌跡にしたがって駆動/制動/舵角の操作支援制御を行い、自動運転にて走行する自動運転車両(走行支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「車線変更コントローラの制御ブロック構成」、「車線変更制御処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の走行支援方法及び走行支援装置が適用された自動運転制御システムを示す。以下、図1に基づいて全体システム構成を説明する。
【0012】
自動運転制御システムADは、図1に示すように、車載センサ1と、地図データ記憶部2と、外部データ通信器3と、自動運転制御ユニット4と、アクチュエータ5と、表示デバイス6と、を備えている。
【0013】
車載センサ1は、カメラ11と、レーダー12と、GPS13と、車載データ通信器14と、を有する。車載センサ1により取得したセンサ情報は、自動運転制御ユニット4へ出力される。
【0014】
カメラ11は、自動運転で求められる機能として、自車線や隣接車線や自車周囲車両や自車周囲歩行者等の自車の周囲情報を画像データにより取得する機能を実現する周囲認識センサである。このカメラ11は、例えば、自車の前方認識カメラ、後方認識カメラ、右方認識カメラ、左方認識カメラ等を組み合わせることにより構成される。
【0015】
このカメラ11では、自車走行路上物体・車線・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道)・道路標識(制限速度)等が検知される。
【0016】
レーダー12は、自動運転で求められる機能として、自車周囲の物体の存在を検知する機能と共に、自車周囲の物体までの距離を検知する機能を実現する測距センサである。ここで、「レーダー12」とは、電波を用いたレーダーと、光を用いたライダーと、超音波を用いたソナーと、を含む総称をいう。レーダー12としては、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダー等を用いることができる。このレーダー12は、例えば、自車の前方レーダー、後方レーダー、右方レーダー、左方レーダー等を組み合わせることにより構成される。
【0017】
このレーダー12では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)等の位置が検知されると共に、各物体までの距離が検知される。
【0018】
GPS13は、GNSSアンテナ13aを有し、衛星通信を利用することで停車中/走行中の自車位置(緯度・経度)を検知する自車位置センサである。なお、「GNSS」は「Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム」の略称であり、「GPS」は「Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム」の略称である。
【0019】
車載データ通信器14は、外部データ通信器3との間で送受信アンテナ3a,14aを介して無線通信を行うことで、自車の車載センサ1や地図データで取得することができない情報を外部から取得する外部データセンサである。
【0020】
ここで、「外部データ通信器3」が、例えば、自車の周辺を走行する他車に搭載されたデータ通信器の場合、自車と他車の間で車車間通信を行う。この車車間通信により、他車が保有する様々な情報のうち、自車で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。
【0021】
また、「外部データ通信器3」が、例えば、インフラストラクチャ設備に設けられたデータ通信器の場合、自車とインフラストラクチャ設備の間でインフラ通信を行う。このインフラ通信により、インフラストラクチャ設備が保有する様々な情報のうち、自車で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。例えば、地図データ記憶部2に保存されている地図データでは不足する情報や地図データから変更された情報がある場合、不足情報/変更情報を補うことができる。また、自車が走行を予定している目標走行軌跡上での渋滞情報や走行規制情報等の交通情報を取得することもできる。
【0022】
地図データ記憶部2は、緯度経度と地図情報が対応づけられた、いわゆる電子地図データが格納された車載メモリにより構成される。地図データ記憶部2に格納された地図データは、少なくとも複数車線を有する道路で各車線の認識ができるレベルの精度を持つ高精度地図データである。この高精度地図データを用いることにより、自動運転において複数車線の中で自車がどの車線を走るかという目標走行軌跡を引くことができる。そして、GPS13にて検知される自車位置を、自動運転制御ユニット4にて自車位置情報として認識すると、自車位置を中心とする高精度地図データが地図データ記憶部2から自動運転制御ユニット4へと送られる。
【0023】
ここで、「高精度地図データ」には、各地点に対応づけられた道路情報を有し、道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。道路情報は、道路の位置/領域により道路を特定する情報と、道路ごとの道路種別、道路毎の車線幅、道路の形状情報とを含む。道路情報は、各道路リンクの識別情報毎に、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶されている。また、道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、車線幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接レーンへの進入の可否)、制限速度、標識、その他の道路に関する情報を対応づけて記憶されている。
【0024】
自動運転制御ユニット4は、自動運転制御を統合するユニットであり、目標走行軌跡演算コントローラ40と、アクチュエータ駆動コントローラ41と、表示コントローラ42と、車線変更コントローラ43(コントローラ)と、を有する。
【0025】
目標走行軌跡演算コントローラ40は、車載センサ1や地図データ記憶部2からの入力情報を統合処理し、目標走行軌跡と目標車速プロファイル(加速/減速プロファイルを含む。)等を生成する機能を有する。即ち、現在地から目的地までの走行車線レベルによる目標走行軌跡を、地図データ記憶部2からの高精度地図データや所定のルート検索手法等に基づいて生成すると共に、目標走行軌跡に沿った目標車速プロファイル等を生成する。更に、目標走行軌跡に沿う自車の停車中/走行中、車載センサ1による自車周囲のセンシング結果により自動運転を維持できないと判断されると、自車周囲のセンシング結果に基づいて、目標走行軌跡や目標車速プロファイル等を逐次修正する。
【0026】
アクチュエータ駆動コントローラ41は、目標走行軌跡演算コントローラ40によって目標走行軌跡が生成されると、目標走行軌跡に沿って走行するように駆動指令値/制動指令値/舵角指令値を演算し、演算した指令値を各アクチュエータに出力する。即ち、駆動指令値の演算結果を駆動アクチュエータ51へ出力し、制動指令値の演算結果を制動アクチュエータ52へ出力し、舵角指令値の演算結果を舵角アクチュエータ53へ出力する。なお、アクチュエータ5としては、駆動輪へ出力する駆動力を制御する駆動アクチュエータ51と、駆動輪や従動輪に加える制動力を制御する制動アクチュエータ52と、操向輪の転舵角を制御する舵角アクチュエータ53と、を有する。
【0027】
表示コントローラ42は、目標走行軌跡演算コントローラ40により生成された目標走行軌跡情報や自車位置情報や目的地情報等を入力し、表示デバイス6の表示画面に、地図と道路と目標走行軌跡と自車位置と目的地等を視認しやすく表示する指令を出力する。ここで、「表示デバイス6」とは、自動運転による停車中/走行中、自車が地図上で何処を移動しているか等を画面表示し、ドライバーや乗員に自車位置視覚情報を提供するデバイスをいう。
【0028】
車線変更コントローラ43は、自車線から隣接車線に自車を車線変更する際、所定の制御則に基づいて車線変更制御を行う。ここで、「所定の制御則」とは、隣接車線への車線変更意思を有する自車が自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止する。先行車との車間距離を通常より開けて停止すると、隣接車線を走行する他車のうち自車線に向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出する。車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車より後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車とする。対象車が特定されると、自車の車線変更に先行し、自車の前進移動によって対象車を自車の後方へ誘導することで対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する車線変更制御則をいう。
【0029】
[車線変更コントローラの制御ブロック構成]
図2は、自動運転制御ユニット4に有する車線変更コントローラ43を示す。以下、図2に基づいて車線変更コントローラ43の制御ブロック構成を説明する。
【0030】
車線変更コントローラ43は、図2に示すように、自車車線変更意思検出処理部43aと、停止車間距離確保処理部43bと、周囲状況認識部43cと、他車車線変更意思検出処理部43dと、対象車特定処理部43eと、を備えている。そして、車線変更譲歩開始判断部43fと、車線変更譲歩処理部43gと、車線変更開始決定処理部43hと、車線変更処理部43iと、を備えている。
【0031】
自車車線変更意思検出処理部43aは、自車が隣接車線への車線変更意思を有するか、車線変更意思を有さないかを検出する。
【0032】
ここで、自車の隣接車線への車線変更意思の検出は、例えば、下記の(a)、(b)等の検出手法を用いて行う。
(a) ドライバー要求に基づく車線変更意思の検出
ドライバーが手動により車両運転に介入するマニュアル介入情報が取得され、隣接車線へ自車を車線変更することなったことにより検出する。例えば、ドライバーによるウィンカー点灯操作により自車の車線変更意思を検出しても良いし、また、隣接車線へ近づくドライバーによる横移動操作により自車の車線変更意思を検出しても良い。
(b) システム要求に基づく車線変更意思の検出
目標走行軌跡演算コントローラ40から車線変更指令情報が取得され、自動運転により隣接車線へ自車を車線変更することなったことにより検出する。例えば、車線変更の判断がなされたときに出力されるフラグ信号により自車の車線変更意思を検出しても良いし、また、目標走行軌跡演算コントローラ40により演算された目標走行軌跡より隣接車線への車線変更意思を検出するようにしても良い。
【0033】
停止車間距離確保処理部43bは、隣接車線への車線変更意思を有する自車が自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止する。ここで、「通常時」とは、車線変更コントローラ43による車線変更制御を行わず、先行車との車間距離を維持して走行する車間維持制御による運転における走行状況の時をいう。「通常時の停止車間距離より長い距離」とは、通常時に自車と先行車との間に確保される停止車間距離に、例えば、1台の車両が入り込むことができる程度の追加距離を加算した車間距離(=設定停止車間距離)をいう。なお、通常時の停止車間距離は、一般道路や高速道路等の道路種により異なるが、徐行や停止を繰り返す渋滞路における先行車の徐行や停止に対し、自車が先行車に干渉することなく余裕距離を持って追従できる距離に設定される。
【0034】
この停止車間距離確保処理部43bでは、隣接車線への車線変更意思を有する自車が自車線に停止する際、自車の直前の先行車との車間距離として、設定停止車間距離を確保できたか否かを判断する。そして、設定停止車間距離を確保できなかった場合、先行車が前方へ移動しても自車の停止を維持したままとする。さらに、隣接車線への車線変更意思を有する自車が、自車と先行車との車間距離として設定車間距離を確保して停止すると、自車の直後の後続車が停止しているか否かを判断する。そして、後続車の停止が判断されると自車のウィンカーを作動させる。
【0035】
周囲状況認識部43cは、自車に搭載しているカメラ11やレーダー12等から取得される情報に基づき、自車の周囲状況を認識し、自車周囲認識情報を他車車線変更意思検出処理部43dへ出力する。例えば、自車の周囲に存在する複数台の他車が走行している状況を、カメラ11からの画像情報とレーダー12から信号情報を用いて把握する。
【0036】
他車車線変更意思検出処理部43dは、周囲状況認識部43cからの自車周囲認識情報を入力し、隣接車線を走行する複数台の他車のうち自車線に向けた車線変更意思がある他車が存在するか否かを検出する。
【0037】
ここで、車線変更意思がある他車の検出は、例えば、下記の(a)~(d)等の検出手法を用いて行う。
(a) 他車がウィンカーを点灯したことにより検出する。
(b) 他車が自車線側に向かう挙動を検出し、車線変更の準備を開始していることを検出する。
(c) 他車が自車線の車間スペースに向かって加減速する場合に検出する。
(d) 自車と他車との間での車車間通信により他車が自車線への車線変更を予定している情報を入力することにより検出する。
【0038】
対象車特定処理部43eは、他車車線変更意思検出処理部43dにより自車線に向けた車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車の後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車として特定する。
【0039】
車線変更譲歩開始判断部43fは、対象車特定処理部43eにより入れ替え車線変更の対象車を特定すると、隣接車線を走行する対象車までの車間距離が、対象車が減速を開始してから自車の後方位置に停止することが可能な車間距離設定値に到達したか否かを判断する。そして、対象車が車間距離設定値に到達したことが判断されると、停止している自車の前進移動による車線変更譲歩制御を開始する。
【0040】
ここで、「車間距離設定値」とは、先行車に向かって自車の前進移動を開始する譲歩制御開始閾値として設定される自車と対象車との車間距離である。「車間距離設定値」は、対象車が減速を開始すると、車速低下勾配が緩やかな角度で減速すると想定したときの想定減速度を決めておき、想定減速度に基づいて対象車の車速が高いほど長くなる車間距離に設定する。ここで、「緩やか」とは、マニュアル運転時に自車の後方に空きスペースが形成された場合、自車の後方を走行する対象車が空きスペースに向かって車線変更を開始するときの車速低下勾配角度(減速度)に比べて勾配角度が小さなことをいう。
【0041】
車線変更譲歩処理部43gは、車線変更譲歩開始判断部43fにより譲歩制御の開始が判断されると、自車の車線変更に先行し、自車の前進移動によって対象車を自車の後方へ誘導することで対象車の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する。
【0042】
ここで、「車線変更譲歩制御」とは、先行車との車間距離を通常より開けて停止している自車の前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車の前端を隣接車線に向けながら前進移動し、前進移動した位置で待機する制御をいう。即ち、自車線空きエリア内で、自車の微速前進により移動を開始し、自車の後続車との車間を徐々に開けると共に、前進移動した終端位置で自車の前端を隣接車線に向けて待機する制御をいう。なお、「通常」とは、車線変更コントローラ43による車線変更制御を行わず、先行車との車間距離を維持して走行する車間維持制御による運転における走行状況をいい、「通常時」と同様の意味で用いる。
【0043】
車線変更開始決定処理部43hは、車線変更譲歩制御での自車の前進移動に伴って自車の後方に作られる車間スペースに向かって対象車が接近し、対象車が自車の後方へ入るように減速しているか否かを判断する。つまり、対象車が自車の後方へ入るように減速していることを、自車の車線変更の開始条件とする。
【0044】
車線変更処理部43iは、車線変更開始決定処理部43hにより対象車が自車の後方へ入るように減速していると判断、つまり、対象車が自車線へ車線変更を意図していることが確認されると、対象車と入れ替えるように、流れている隣接車線への自車の車線変更を開始する。なお、自車は、自車線空きエリア内で自車の前端を隣接車線に向けて待機した状態から車線変更を開始する。
【0045】
ここで、車線変更コントローラ43では、渋滞している自車線から流れている隣接車線への車線変更意思を自車が有すると判断された場合、隣接車線を走行する他車のうち、自車より後方を走行する後続車との車間距離及び相対速度を監視する。そして、後続車との車間距離及び相対速度に基づいて、自車が隣接車線に車線変更できると判断されると、自車の隣接車線への単独車線変更を開始する。なお、「単独車線変更」とは、対象車を特定する「入れ替え車線変更」とは異なり、対象車を特定することなく、自車が単独で流れている隣接車線へ車線変更することをいう。
【0046】
[車線変更制御処理構成]
図3は、自動運転制御ユニット4に備える車線変更コントローラ43にて実行される車線変更制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3の各ステップでの処理構成を説明する。なお、自車線を走行している自車を「自車V」といい、隣接車線を走行している他車で自車Vとの入れ替え車線変更の対象車を「車両A」という。そして、自車線を走行している他車で自車Vの直後の後続車を「車両B」といい、自車線を走行している他車で自車Vの前方を走行する先行車を「車両C」という。
【0047】
ステップS1では、スタート、或いは、S11での車線変更の意思のある車両Aを検出していないとの判断に続いて、自車Vが自車線から隣接車線への車線変更意思有りか否かを判断する。YES(自車Vの車線変更意思有り)の場合はステップS2へ進み、NO(自車Vの車線変更意思無し)の場合はエンドへ進む。
【0048】
ステップS2では、S1での自車Vの車線変更意思有りとの判断に続き、自車Vが隣接車線へ車線変更することが可能な条件を検出したか否かを判断する。YES(車線変更可能条件の検出)の場合はステップS3へ進み、NO(車線変更可能条件の非検出)の場合はステップS5へ進む。ここで、「車線変更可能条件」は、隣接車線を走行する他車のうち自車より後方位置を走行する後続車との車間距離及び相対速度を監視する。そして、後続車が、自車が隣接車線への車線変更を終了するまでの所要時間より自車に到達するまでの所要時間が長くなる車線変更可能領域に存在することが検知されると、車線変更可能条件が成立と判断する。
【0049】
ステップS3では、S2での車線変更可能条件の検出であるとの判断に続き、隣接車線の車間スペースに向かって自車Vの単独車線変更を実行し、ステップS4へ進む。即ち、停止している自車Vが流れている隣接車線に車線変更する際、後続車との相対関係により自車Vが車線変更しても余裕がある状況のときは、通常の単独車線変更が実行される。
【0050】
ステップS4では、S3での自車Vの車線変更実行に続き、自車Vが隣接車線への車線変更を終了したか否かを判断する。YES(車線変更終了)の場合はエンドへ進み、NO(車線変更未終了)の場合はステップS4の判断を繰り返す。なお、「車線変更終了」は、例えば、自車Vの自己位置を監視し、自車Vが隣接車線に向かって横移動し、隣接車線における車線変更の目標位置に到達を確認することにより判断する。
【0051】
ステップS5では、S2での車線変更可能条件の非検出であるとの判断に続き、自車Vと車両Cとの車間距離として、設定停止車間距離が確保されているか否かを判断する。YES(設定停止車間距離が確保されている)の場合はステップS11へ進み、NO(設定停止車間距離が確保されていない)の場合はステップS6へ進む。
【0052】
ステップS6では、S5での設定停止車間距離が確保されていないとの判断に続き、隣接車線への車線変更意思を有する自車Vが停止するとき、自車Vの直前の先行車である車両Cとの車間距離を通常より開けて停止し、ステップS7へ進む。
【0053】
ステップS7では、S6での車間距離を通常より開けての停止、或いは、S8での自車Vの停止維持に続き、自車Vと車両Cとの停止車間距離測定値が、設定停止車間距離以上であるか否かを判断する。YES(停止車間距離測定値≧設定停止車間距離)の場合はステップS9へ進み、NO(停止車間距離測定値<設定停止車間距離)の場合はステップS8へ進む。
【0054】
ステップS8では、S7での停止車間距離測定値<設定停止車間距離であるとの判断に続き、渋滞車線において車両Cが徐行により前方へ移動しても、車両Cを追うことなく自車Vの停止を維持し、ステップS7へ進む。
【0055】
ステップS9では、S7での停止車間距離測定値≧設定停止車間距離であるとの判断に続き、自車Vの直後の後続車である車両Bが停止しているか否かを判断する。YES(車両Bが停止している)の場合はステップS10へ進み、NO(車両Bが停止していない)の場合はステップS9の判断を繰り返す。
【0056】
ステップS10では、S9での車両Bが停止しているとの判断に続き、自車Vのウィンカーを出し、エンドへ進む。ここで、車両Bの停止するのを確認して自車Vのウィンカーを作動させるのは、自車Vが隣接車線への車線変更意思を有していることを、車両Bに対して認識してもらうためである。なお、車両Bの停止判断前、既に自車Vのウィンカーを作動させている場合は、ウィンカー作動を継続する。
【0057】
ステップS11では、S5での設定停止車間距離が確保されているとの判断に続き、流れている隣接車線を走行する後続車のうち、自車線への車線変更意思がある車両Aを検出したか否かを判断する。YES(車両Aの検出)の場合はステップS12へ進み、NO(車両Aの非検出)の場合はステップS1へ戻る。
【0058】
ステップS12では、S11での車両Aの検出であるとの判断、或いは、S13での車両Aが設定値による車間距離に到達していないとの判断に続き、自車Vと、入れ替え車線変更の対象車である車両Aとの車間距離設定値の計算を実行し、ステップS13へ進む。
【0059】
ここで、自車Vと車両Aとの車間距離設定値Dの計算例を、図4及び図5に基づいて説明する。自車Vの後端と車両Bの前端までの距離をD、車両Bの全長をL、車両Bの後方余裕代をX、車両Aの車速をV(A)、減速ジャークをJ、最大減速度をαmax(想定減速度)とする。そして、車両Aは、図5の減速挙動の想定例に示すように、急ブレーキを作動させないで、車速V(A)が緩やかな低下勾配にて低下してゆき、許容できる減速上昇区間t1と一定減速区間t2と減速低下区間t3により自車Vに接近するシーンを想定したものとする。
この場合、自車Vと車両Aとの車間距離設定値Dは、
=D+L+X+V(A)t1+(1/2)V(A)t2 …(1)
=D+L+X+V(A)[(αmax/J)+{(V(A)-αmax2/J)/(2αmax)}] …(2)
となる。但し、(1)式において、{V(A)t1+(1/2)V(A)t2}は減速距離である。そして、最大減速度αmaxを想定減速度とする(2)式を用い、車速V(A)が高いほど長くなる車間距離設定値Dが計算される。例えば、7m後方にいる車両Bが乗用車の場合、車両Aが時速40km/hであると、車間距離設定値Dは、(2)式により約67.3mと計算される。
【0060】
ステップS13では、S12での車間距離設定値の計算に続き、車両Aが車間距離設定値Dによる車間距離に到達したか否かを判断する。YES(車両Aが設定値による車間距離に到達した)の場合はステップS13へ進み、NO(車両Aが設定値による車間距離に到達していない)の場合はステップS12へ戻る。
【0061】
ステップS14では、S13での車両Aが設定値による車間距離に到達したとの判断に続き、自車Vと車両Aとの間の自車線エリア内で、自車Vの頭(車両前端)を隣接車線の方向に振りながら前進し、ステップS15へ進む。
【0062】
ステップS15では、S13での自車Vの前進走行による車線変更譲歩動作に続き、車両Aが自車Vより後方に入るように減速したか否かを判断する。YES(車両Aの車線変更減速を検出)の場合はステップS16へ進み、NO(車両Aの車線変更減速を非検出)の場合はステップS15の判断を繰り返す。
【0063】
ステップS16では、S15での車両Aの車線変更減速を検出との判断に続き、隣接車線のうち自車Vの斜め前方位置を車線変更の目標位置とし、目標位置へ向かう自車Vの車線変更を開始し、ステップS17へ進む。
【0064】
ステップS17では、S16での自車Vの車線変更開始に続き、自車Vが隣接車線への車線変更を終了したか否かを判断する。YES(車線変更終了)の場合はエンドへ進み、NO(車線変更未終了)の場合はステップS17の判断を繰り返す。
【0065】
次に、「背景技術と課題解決対策」を説明する。そして、実施例1の作用を、「車線変更制御処理作用」、「停止車間距離確保作用」、「自車の車線変更譲歩制御及び車線変更制御作用」、「自車と車両の入れ替え車線変更作用」に分けて説明する。
【0066】
[背景技術と課題解決対策]
自車Vが渋滞している自車線に存在するとき、自車線を維持したままであると目的地までの到着時刻が予定時刻より遅くなってしまうため、渋滞している自車線から流れている隣接車線への車線変更要求は高い。しかし、図6に示すように、渋滞している自車線SLから流れている隣接車線NLに自車Vを車線変更するシーンでは、停止状態又は徐行状態の自車Vを発進させて隣接車線NLへ車線変更する必要がある。このため、流れている自車線から隣接車線に車線変更する場合に比べ、自車Vが車線変更を開始してから終了するまでに要する時間が長くなる。これに対し、自車Vの車線変更先である流れている隣接車線では、所定の車間距離を保ちながら複数台の車両が次々と減速することなく走行し、自車Vの横を通過してゆく。このため、隣接車線へ車線変更したい意思が自車Vにあっても、隣接車線側において自車Vの必要車線変更時間を確保できる状況を見出すことが困難であり、流れている隣接車線へ自車を車線変更する機会が殆どないといえる。
【0067】
これに対し、特許文献1に記載された背景技術にあっては、車両の車線変更を行う場合に、移動先の物体(車両或いは障害物)との距離及び相対速度を使用して、車線変更が可能か否かを判断するようにしている。つまり、自車と他車の相対速度等に基づいて車線変更判断を行っているため、自車が車線変更したい場合においても、他車が自ら減速するのを確認するまで、自車の車線変更判断を行うことができない。
【0068】
よって、例えば、他車が自車線へ車線変更する意思があり、他車が自ら減速する場合に限っては自車が隣接車線へ車線変更できる可能性が残る。しかしながら、図7に示すように、自車線SLへの車線変更意思を有する車両Aが、自車Vより前方に車線変更してしまうと、自車Vが隣接車線NLへ車線変更しようと思っても、車両Aが車線変更進路を妨害して車線変更ができない。このため、自車線SLへの車線変更を意図する車両Aを見つけても、自車Vは隣接車線NLへ車線変更する機会を失ってしまう、という課題があった。
【0069】
本開示は、上記課題に対し、自車Vを流れている隣接車線NLへ車線変更したい場合、逆に隣接車線NLから自車線SLに車線変更する他車を見つけることが、車線変更ができない状況の打開策になる。さらに、隣接車線NLから自車線SLへ車線変更する他車を見つけると、他車を自車Vの後方へ誘導し他車が車線変更するのを促す状況を作ることが、車線変更の機会を失ってしまわないために必要な方策である点に着目した。
【0070】
上記着目点に基づいて本開示は、自車線SLから隣接車線NLに自車Vを車線変更する車線変更制御を行う車線変更コントローラ43を備え、以下の手順による走行支援方法とした。隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止する。先行車(車両C)との車間距離を通常より開けて停止すると、隣接車線NLを走行する他車のうち自車線SLに向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出する。車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車Vより後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車(車両A)とする。対象車(車両A)が特定されると、自車Vの車線変更に先行し、自車Vの前進移動によって対象車(車両A)を自車Vの後方へ誘導することで対象車(車両A)の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する手段を採用した。
【0071】
上記本開示の概要を、図8に基づいて説明すると、渋滞している自車線SLから流れている隣接車線NLに自車Vを車線変更する際に、後続車があり進入先の隣接車線NLから渋滞している自車線SLに車線変更したい対象車(車両A)があるとする。この場合に、対象車(車両A)を自車Vの後方に車線変更しやすいように誘導することで、自車Vが車線変更しやすい状況を作るための動作を規定している。
【0072】
このように、車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車Vより後方位置を走行する他車が、入れ替え車線変更の対象車(車両A)とされる。このため、自車Vを流れている隣接車線NLへ車線変更したい場合、逆に隣接車線NLから自車線SLに車線変更する他車を見つけると、これを入れ替え車線変更の対象車(車両A)とすることで、車線変更ができない状況が打開される。
【0073】
さらに、対象車(車両A)が特定されると、自車Vの車線変更に先行し、自車Vの前進移動によって対象車(車両A)を自車Vの後方位置へ誘導することで対象車(車両A)の車線変更を促す車線変更譲歩制御が実行される。このため、対象車(車両A)を自車Vの後方へ誘導し対象車(車両A)が車線変更するのを促す状況が作られることで、自車Vが車線変更する機会を失ってしまうことも解消される。
【0074】
この結果、自車Vが渋滞車線から流れている隣接車線NLに車線変更を要求するシーンにおいて、自車Vが車線変更する機会を失うことがある場面であっても、自車Vが隣接車線NLへ車線変更する機会を作ることができる。
【0075】
[車線変更制御処理作用]
以下、車線変更コントローラ43にて実行される車線変更制御処理作用を、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0076】
まず、自車Vの車線変更意思有り、かつ、自車Vが車線変更を予定している隣接車線NLに車線変更可能な条件が検出される場合、S1→S2→S3へと進む。S3では、隣接車線NLに向かっての自車Vの単独車線変更が実行され、単独車線変更が終了すると、S4からエンドへ進む。
【0077】
次に、自車Vの車線変更意思有り、かつ、自車Vが車線変更を予定している隣接車線NLに車線変更可能な条件が検出されない場合、S1→S2→S5へと進む。S5では、自車Vと車両Cとの車間距離として、設定停止車間距離Dsが確保されているか否かが判断される。そして、S5にて設定停止車間距離Dsが確保されていないと判断されると、S5からS6→S7へ進む。S7では、自車Vと車両Cとの停止車間距離測定値が、設定停止車間距離以上であるか否かが判断される。そして、S7にて停止車間距離測定値<設定停止車間距離であると判断されている間は、S7→S8へ進む流れが繰り返される。S8では、車両Cが前方へ移動しても自車Vの停止が維持される。
【0078】
S7にて停止車間距離測定値≧設定停止車間距離であると判断されると、S7からS9へ進む。S9では、自車Vの後続車である車両Bが停止しているか否かが判断される。S9にて車両Bが停止していないと判断されている間は、S9の判断が繰り返えされる。S9にて車両Bが停止していると判断されると、S9からS10→エンドへと進む。S10では、自車Vのウィンカーが出される。
【0079】
次に、自車Vの車線変更意思有り、かつ、自車Vが車線変更を予定している隣接車線NLに車線変更可能な条件が検出されない、かつ、設定停止車間距離Dsが確保されている場合、S1→S2→S5→S11へと進む。ステップS11では、流れている隣接車線NLを走行する後続車のうち、自車線SLへの車線変更意思がある車両Aを検出したか否かが判断される。そして、S11にて車両Aを検出していないと判断されている間は、S1→S2→S5→S11へと進む流れが繰り返される。
【0080】
S11にて車両Aを検出したと判断されると、S11からS12→S13へと進む。S12では、自車Vと車両Aとの車間距離設定値Dの計算が実行される。S13では、車両Aが車間距離設定値Dによる車間距離に到達したか否かが判断される。S13にて車両Aが車間距離設定値Dによる車間距離に到達していないと判断されている間は、S12→S13へと進む流れが繰り返される。
【0081】
S13にて車両Aが車間距離設定値Dによる車間距離に到達したと判断されると、S13からS14→S15へと進む。S14では、自車Vと車両Aとの間の自車線エリア内で、自車Vの頭を隣接車線NLの方向に振りながら前進する車線変更譲歩動作が実行される。S15では、車両Aが自車Vより後方に入るように減速したか否かが判断される。S15にて車両Aが自車Vより後方に入るように減速していることが検出されない間は、S15の判断が繰り返えされる。
【0082】
S15にて車両Aが自車Vより後方に入るように減速していることが検出されると、S15からS16→S17へと進む。S16では、隣接車線NLのうち自車Vの少し前方の位置を車線変更の目標位置とし、目標位置へ向かう自車Vの車線変更が開始される。S17では、自車Vが隣接車線NLへの車線変更を終了したか否かが判断される。そして、S17にて自車Vが隣接車線NLへの車線変更を終了したと判断されると、S17からエンドへ進む。
【0083】
このように、自車Vを渋滞している自車線SLから流れている隣接車線NLへと車線変更させる車線変更制御処理では、下記の(a)~(c)の制御処理が行われる。
(a)隣接車線NLに車線変更可能な条件が検出される場合には、基本的な車線変更制御処理にしたがって、自車Vが隣接車線NLに向かう単独車線変更制御が実行される。
(b)隣接車線NLに車線変更可能な条件が検出されない場合には、車線変更意図を有する自車Vが停止するとき、先行車(車両C)との車間を通常より開けて停止する。
(c)先行車(車両C)との車間を通常より開けて停止しているとき、隣接車線NLから自車線SLへの車線変更を意図している車両A(対象車)を検出すると、車線変更譲歩制御を行い、その後、自車Vと車両Aとの入れ替え車線変更制御を実行する。
【0084】
[停止車間距離確保作用]
上記制御処理(b)が停止車間距離確保処理であり、図3のフローチャートにおけるS5~S10の各ステップに相当する。以下、図2の停止車間距離確保処理部43bにて行われる停止車間距離確保作用を説明する。
【0085】
停止車間距離確保処理部43bでは、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離を、通常時の停止車間距離Doより長い距離を確保して停止する。
【0086】
このとき、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離として、通常の停止車間距離Doより長い設定停止車間距離Dsを確保できたか否かを判断する。そして、設定停止車間距離Dsを確保できなかった場合、先行車(車両C)が前方へ移動しても自車Vの停止を維持したままとする(S5→S6→S7→S8)。
【0087】
例えば、自車線SLでの渋滞度合が高い場合、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間を、通常時の停止車間距離Doより長い距離を確保して停止しようとしてもできない場合がある。この場合、自車Vの停止状態を維持したままにしておくと、自車線SLの先行車(車両C)が停止状態から徐行により前方移動すると、自車Vと先行車(車両C)との車間距離を拡大することができる。このため、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離として、設定停止車間距離Dsが確保されていることを条件として実行される入れ替え車線変更の機会が増やされることになる。
【0088】
停止車間距離確保処理部43bでは、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが、自車Vと先行車(車両C)との車間距離を通常の停止車間距離Doより長い距離を確保して停止すると、自車Vの直後の後続車(車両B)が停止しているか否かを判断する。そして、後続車(車両B)の停止が判断されると自車Vのウィンカーを作動させる(S7→S9→S10)。
【0089】
例えば、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが、ウィンカーを作動させることなく停止する場合がある。この場合、後続車(車両B)の停止を確認して自車Vのウィンカーを作動させると、自車Vの直後位置に停止している後続車(車両B)のドライバーに対し自車Vが隣接車線NLへの車線変更意思を有することを認識させることができる。このため、自車Vの前方移動による車線変更譲歩動作に移ったとき、自車Vの後続車(車両B)が自車Vの前方移動に追従して車間を詰めるのが抑えられ、後続車(車両B)が自車Vとの車間を詰めてしまう確率が下げられることになる。言い換えると、自車Vの前方移動による車線変更譲歩動作を行うと、自車Vと後続車(車両B)との間に対象車(車両A)が入る車間スペースが作られる確率が上げられる。
【0090】
[自車の車線変更譲歩制御及び車線変更制御作用]
図3のフローチャートにおけるS11~S17の各ステップによる制御処理(c)が、自車Vの車線変更譲歩制御処理及び車線変更制御処理である。以下、図2の車線変更譲歩開始判断部43f、車線変更譲歩処理部43g、車線変更開始決定処理部43h、車線変更処理部43iで行われる自車Vの車線変更譲歩制御及び車線変更制御作用を説明する。
【0091】
車線変更譲歩開始判断部43fでは、対象車(車両A)が特定されると、隣接車線NLを走行する対象車(車両A)までの車間距離が、対象車(車両A)が減速を開始してから自車Vの後方位置に停止することが可能な車間距離設定値Dに到達したか否かを判断する。そして、対象車(車両A)が車間距離設定値Dに到達したことが判断されると、停止している自車Vの前進移動による車線変更譲歩制御を開始する。
【0092】
即ち、対象車(車両A)を自車線SLへ誘導するため、自車Vの前進移動により自車Vの後方に空きスペースを作り始めるタイミングは、例えば、対象車(車両A)を検出したタイミングとすると、タイミングが早期になる。タイミングが早期になると、対象車(車両A)が空きスペースに減速して接近する前に、自車Vの後続車である車両Bやその後方の車両により車間が埋められてしまうことがある。一方、対象車(車両A)が自車Vの後方位置に減速して接近するタイミングにすると、自車Vの後方に空きスペースを作り始めるタイミングが遅れ、対象車(車両A)を自車Vの後方に向かってスムーズに誘導する空きスペースを確保できないことがある。
【0093】
これに対し、自車Vの後方に空きスペースを作り始めるタイミングを、対象車(車両A)が車間距離設定値Dに到達したタイミングにすると、対象車(車両A)が自車Vの後方に向かって減速接近するのに応じて空きスペースが拡大することになる。このため、車線変更譲歩制御を開始する際、自車Vの後続車により空きスペースが埋められてしまったり、対象車(車両A)を自車Vの後方に誘導できなかったりすることのない適切なタイミングで自車Vの後方に空きスペースが作り始められることになる。
【0094】
加えて、対象車(車両A)が車間距離設定値Dに到達してから、対象車(車両A)が自車Vの後方へ車線変更を開始するまでの区間は、対象車(車両A)が減速状態になる。よって、自車Vが車線変更を予定している隣接車線NLの対象車(車両A)より後方での交通流が減速状態の対象車(車両A)により遮られる。このため、自車Vを横移動させて隣接車線NLへ車線変更する際、自車Vの後方から隣接車線NLを走行する他車が接近することが回避され、対象車(車両A)の前方に確保される空きスペースに向かってスムーズな車線変更が行われることになる。
【0095】
ここで、車間距離設定値Dは、対象車(車両A)が減速を開始した後に車速低下勾配が緩やかな角度で減速すると想定したときの想定減速度に基づいて、対象車(車両A)の車速V(A)が高いほど長くなる車間距離に設定される。
【0096】
例えば、車間距離設定値Dを対象車(車両A)の平均車速による固定値で与えると、対象車(車両A)が平均車速より高車速であると、自車Vの後方で停止するには急ブレーキ等を要し、隣接車線NLの交通流を急変させる。一方、対象車(車両A)が平均車速より低車速であると、自車Vの後方で停止するまでに時間を要し、自車Vの後方に作られた空きスペースが後続車により埋められてしまう。
【0097】
これに対し、車間距離設定値Dを、対象車(車両A)が想定減速度になるように、対象車(車両A)の車速V(A)が高いほど長くなる車間距離に設定している。このため、対象車(車両A)が自車Vの後方に向かって減速接近する際、減速開始時の車速V(A)の高さにかかわらず、隣接車線NLの交通流を急変させたり空きスペースが埋められたりしない適切な対象車(車両A)の減速度が確保されることになる。
【0098】
車線変更譲歩処理部43gでは、先行車(車両C)との車間距離を通常より開けて停止している自車Vの前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車Vの前端を隣接車線NLに向けながら前進移動し、前進移動した位置で待機する制御が行われる。
【0099】
即ち、自車Vの前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車Vが前進移動すると、自車Vの前進移動距離によるスペース相当分の空きスペースが自車Vの後方に作られることになる。そして、自車Vの前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、予め自車Vの前端を隣接車線NLに向けておくと、自車Vが隣接車線NLへ車線変更を開始するときに自車Vの前端を隣接車線NLに向ける動作を省略できる。このため、車線変更譲歩制御により対象車(車両A)が入る車間スペースを自車Vの後方に作る際、自車Vが隣接車線NLへ車線変更を開始するときに応答良く車線変更を終了する姿勢が整えられることになる。
【0100】
車線変更開始決定処理部43hでは、車線変更譲歩制御が終了すると、自車Vの前進移動に伴って自車Vの後方に作られる車間スペースに向かって接近してきた対象車(車両A)が、自車Vの後方へ入るように減速しているか否かを判断する。そして、車線変更処理部43iでは、対象車(車両A)が自車Vの後方へ入るように減速していると判断されると、自車Vの車線変更を開始する。
【0101】
即ち、対象車(車両A)が自車Vの後方へ入るように減速しているということは、少なくとも対象車(車両A)が自車線SLへ車線変更する態勢が整えられていることである。よって、このタイミングにて自車Vを隣接車線NLへ車線変更を開始すると、自車Vが自車線SLから抜ける途中、或いは、自車Vが自車線SLから抜けた直後に、対象車(車両A)が自車線SLへ入るという入れ替え車線変更になる。このため、自車Vを流れている隣接車線NLへ車線変更する際、自車Vの車線変更開始タイミングを適切な設定にすることで、自車Vと対象車(車両A)との入れ替え車線変更がスムーズに応答良く達成されることになる。
【0102】
[自車と車両の入れ替え車線変更作用]
自車Vと対象車である車両Aの入れ替え車線変更作用を、図9に示す作用説明図に基づいて説明する。
【0103】
図9の[Step1]では、先行車である車両Cとの車間距離を、通常より開けて停止する。即ち、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離として、通常時の停止車間距離Doより長い設定停止車間距離Dsを確保して停止する。そして、車両Cとの車間距離を通常より開けて停止すると、後続車である車両Bが停止するのを確認し、ウィンカーを出す。
【0104】
図9の[Step2]では、自車Vの車線変更先の隣接車線NLから車線変更したい車両Aを見つける。車線変更したい車両Aを見つけると、車両Aが車両Bの後方に入るための減速ができる範囲にいるかどうかを確認する。そして、車両Aが車両Bの後方に入るための減速ができる限界位置(車間距離設定値D)に到達したタイミングで図9の[Step3]へ移行する。
【0105】
図9の[Step3]では、自車線SL内で変更先車線側に頭を振りながら自車Vを前進させて待機する。その後、車両Aが自車Vの後方へ入るように減速しているか否かを判断し、車両Aの減速が判断されたら自車Vの隣接車線NLへの車線変更を開始する。ここで、車両Aの自車線SLへの車線変更については、下記の(1),(2)のパターンがある。
【0106】
(1) 自車Vを前進移動させたとき車両Bが追ってこないパターン
このパターン(1)では、自車Vと車両Bとの間に車間スペースが作られるため、車両Aは自車線SLに作られる自車Vと車両Bとの間の車間スペースに向かって車線変更を行う。
【0107】
(2) 自車Vを前進移動させたとき車両Bが追ってくるパターン
このパターン(2)では、車両Bの後方に車間スペースが作られるため、車両Aは自車線SLに作られる車両Bの後方の車間スペースに向かって車線変更を行う。
【0108】
このように、渋滞している自車線SLから流れている隣接車線NLに自車Vを車線変更する際、自車Vと車両Aの入れ替え車線変更が行われる。このとき、入れ替え車線変更パターンとして、自車Vを前進移動させたとき車両Bが追ってこないパターン(1)と、自車Vを前進移動させたとき車両Bが追ってくるパターン(2)がある。そして、(1),(2)の何れのパターンによる入れ替え車線変更であっても、車両Aを自車Vの後方に誘導する動作を行うことで、自車Vが隣接車線NLへ車線変更する機会が作られることになる。
【0109】
以上説明したように、実施例1の走行支援方法及び走行支援装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0110】
(1) 自車線SLから隣接車線NLに自車Vを車線変更する車線変更制御を行うコントローラ(車線変更コントローラ43)を備える走行支援方法であって、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離を、通常時の停止車間距離より長い距離を確保して停止し、先行車(車両C)との車間距離を通常より開けて停止すると、隣接車線NLを走行する他車のうち自車線SLに向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出し、車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車Vより後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車(車両A)とし、対象車(車両A)が特定されると、自車Vの車線変更に先行し、自車Vの前進移動によって対象車(車両A)を自車Vの後方へ誘導することで対象車(車両A)の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する(図3)。このため、自車Vが渋滞車線から流れている隣接車線NLに車線変更を要求するシーンにおいて、自車Vが車線変更する機会を失うことがある場面であっても、自車Vが隣接車線NLへ車線変更する機会を作る走行支援方法を提供することができる。
【0111】
(2) 対象車(車両A)が特定されると、隣接車線NLを走行する対象車(車両A)までの車間距離が、対象車(車両A)が減速を開始してから自車Vの後方位置に停止することが可能な車間距離設定値Dに到達したか否かを判断し、対象車(車両A)が車間距離設定値Dに到達したことが判断されると、停止している自車Vの前進移動による車線変更譲歩制御を開始する(図3のS13→S14)。このため、車線変更譲歩制御を開始する際、適切なタイミングで自車Vの後方に対象車(車両A)を誘導する空きスペースを作り始めることができる。加えて、自車Vを横移動させて隣接車線NLへ車線変更する際、減速により接近してくる対象車(車両A)の前方に確保される空きスペースに向かってスムーズな車線変更を行うことができる。
【0112】
(3) 車間距離設定値Dは、対象車(車両A)が減速を開始した後に車速低下勾配が緩やかな角度で減速すると想定したときの想定減速度に基づいて、対象車(車両A)の車速V(A)が高いほど長くなる車間距離に設定する(図3のS12)。このため、対象車(車両A)が自車Vの後方に向かって減速接近する際、減速開始時の車速V(A)の高さにかかわらず、隣接車線NLの交通流を急変させたり空きスペースが埋められたりしない適切な対象車(車両A)の減速度を確保することができる。
【0113】
(4) 車線変更譲歩制御は、先行車(車両C)との車間距離を通常より開けて停止している自車Vの前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車Vの前端を隣接車線NLに向けながら前進移動し、前進移動した位置で待機する制御とする(図3のS14)。このため、車線変更譲歩制御により対象車(車両A)が入る車間スペースを自車Vの後方に作る際、自車Vが隣接車線NLへ車線変更を開始するときに応答良く車線変更を終了する姿勢を整えることができる。
【0114】
(5) 車線変更譲歩制御が終了すると、自車Vの前進移動に伴って自車Vの後方に作られる車間スペースに向かって接近してきた対象車(車両A)が、自車Vの後方へ入るように減速しているか否かを判断し、対象車(車両A)が自車Vの後方へ入るように減速していると判断されると、自車Vの車線変更を開始する(図3のS15→S16)。このため、自車Vを流れている隣接車線NLへ車線変更する際、自車Vの車線変更開始タイミングを適切な設定にすることで、自車Vと対象車(車両A)との入れ替え車線変更がスムーズに応答良く達成することができる。
【0115】
(6) 隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離として、通常の停止車間距離Doより長い設定停止車間距離Dsを確保できたか否かを判断し、設定停止車間距離Dsを確保できなかった場合、先行車(車両C)が前方へ移動しても自車Vの停止を維持したままとする(図3のS7→S8)。このため、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離として、設定停止車間距離Dsが確保されていることを条件として実行される入れ替え車線変更の機会を増やすことができる。
【0116】
(7) 隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが、自車Vと先行車(車両C)との車間距離を通常の停止車間距離Doより長い距離(設定停止車間距離Ds)を確保して停止すると、自車Vの直後の後続車(車両B)が停止しているか否かを判断し、後続車(車両B)の停止が判断されると自車Vのウィンカーを作動させる(図3のS9→S10)。このため、自車Vの前方移動による車線変更譲歩動作に移ったとき、自車Vの後続車(車両B)が自車Vの前方移動に追従して車間を詰めるのが抑えられ、後続車(車両B)が自車Vとの車間を詰めてしまう確率を下げることができる。
【0117】
(8) 隣接車線NLへの車線変更意思を自車Vが有すると判断された場合、隣接車線NLを走行する他車のうち、自車Vより後方を走行する後続車との車間距離及び相対速度を監視し、後続車との車間距離及び相対速度に基づいて、自車Vが隣接車線NLに車線変更できると判断されると、自車Vの隣接車線NLへの単独車線変更を開始する(図3のS1→S2→S3)。このため、自車Vが渋滞車線から流れている隣接車線NLに車線変更をする際、隣接車線NLへの車線変更可能な条件を検出すると、その時点で自車Vの車線変更を開始することで、対象車(車両A)が検出されるまで待ち続けることを防止することができる。
【0118】
(9) 自車線SLから隣接車線NLに自車Vを車線変更する車線変更制御を行うコントローラ(車線変更コントローラ43)を備える走行支援装置であって、コントローラ(車線変更コントローラ43)は、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが自車線SLに停止する際、自車Vの直前の先行車(車両C)との車間距離を、通常時の停止車間距離Doより長い距離を確保して停止する停止車間距離確保処理部43bと、先行車(車両C)との車間距離を通常より開けて停止すると、隣接車線NLを走行する他車のうち、自車線SLに向けた車線変更意思を有する他車の有無を検出する他車車線変更意思検出処理部53dと、車線変更意思を有する他車が検出されると、検出された他車のうち自車Vより後方位置を走行する他車を入れ替え車線変更の対象車(車両A)とする対象車特定処理部43eと、対象車(車両A)が特定されると、自車Vの車線変更に先行し、自車Vの前進移動によって対象車(車両A)を自車Vの後方へ誘導することで対象車(車両A)の車線変更を促す車線変更譲歩制御を実行する車線変更譲歩処理部43gと、を有する(図2)。このため、自車Vが渋滞車線から流れている隣接車線NLに車線変更を要求するシーンにおいて、自車Vが車線変更する機会を失うことがある場面であっても、自車Vが隣接車線NLへ車線変更する機会を作る走行支援装置を提供することができる。
【0119】
以上、本開示の走行支援方法及び走行支援装置を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0120】
実施例1では、停止車間距離確保処理部43bとして、隣接車線NLへの車線変更意思を有する自車Vが、自車Vと車両Cとの車間距離を通常の停止車間距離Doより長い設定停止車間距離Dsを確保して停止させる例を示した。停止車間距離確保処理部としては、自車と先行車との車間距離を通常の停止車間距離より長い距離を確保して停止させるものであれば良い。つまり、対象車の車間スペースを作るだけの自車の前進移動余裕を確保できれば、設定停止車間距離Dsより短くても長くても良い。
【0121】
実施例1では、車線変更譲歩処理部43gとして、車両Cとの車間距離を通常より開けて停止している自車Vの前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車Vの前端を隣接車線NLに向けながら前進移動し、前進移動した位置で待機する例を示した。しかし、車線変更譲歩処理部としては、先行車との車間距離を通常より開けて停止している自車の前方に予め確保されている自車線空きエリア内で、自車を前進移動し、前進移動した位置で待機する制御であれば、実施例1の制御に限定されない。
【0122】
実施例1では、車線変更開始決定処理部43hとして、自車Vの前進移動に伴って自車Vの後方に作られる車間スペースに向かって接近してきた車両Aが、自車Vの後方へ入るように減速していると判断されると、自車Vの車線変更を開始する例を示した。しかし、車線変更開始決定処理部としては、これに限定されることはなく、対象車が自車線に入ってきたことを判断し、自車の車線変更を開始するような例としても良い。
【0123】
実施例1では、本開示の走行支援方法及び走行支援装置を、自動運転モードを選択すると、目標走行軌跡にしたがって駆動/制動/舵角の操作支援制御を行い、自動運転にて走行する自動運転車両に適用する例を示した。しかし、本開示の走行支援方法及び走行支援装置は、ドライバーによる駆動/制動/操舵の操作のうち一部の操作を支援して走行する走行支援車両であっても適用することができる。さらに、自車の走行軌跡や車速や走行位置についてモニター表示や音声案内をすることで、ドライバー操作による走行を視覚や聴覚に訴えて支援する走行支援車両であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
43 車線変更コントローラ(コントローラ)
43a 自車車線変更意思検出処理部
43b 停止車間距離確保処理部
43c 周囲状況認識部
43d 他車車線変更意思検出処理部
43e 対象車特定処理部
43f 車線変更譲歩開始判断部
43g 車線変更譲歩処理部
43h 車線変更車間決定処理部
43i 車線変更処理部
V 自車
SL 自車線
NL 隣接車線
車両A 隣接車線NLを走行する入れ替え車線変更の対象車
車両B 自車Vの直後位置の後続車
車両C 自車Vの直前位置の先行車
Do 通常の停止車間距離
Ds 設定停止車間距離
車間距離設定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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