(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダー
(51)【国際特許分類】
G01S 13/26 20060101AFI20230410BHJP
G01S 7/32 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01S13/26
G01S7/32 230
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018198838
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(73)【特許権者】
【識別番号】501411651
【氏名又は名称】エイチアールエル ラボラトリーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HRL LABORATORIES, LLC
【住所又は居所原語表記】3011 Malibu Canyon Road, Malibu, CA 90265-4799, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ジェーソン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラオ, シャンカール
(72)【発明者】
【氏名】ペトレ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテンベルク, ピーター エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハックストン, シモン エル.
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075558(JP,A)
【文献】米国特許第09749007(US,B1)
【文献】米国特許第05402520(US,A)
【文献】特開2014-096145(JP,A)
【文献】小林 泰介,リザーバコンピューティングによる目的切替可能な強化学習,ロボティクスメカトロニクス講演会 2017 講演会論文集,日本,一般社団法人 日本機械学会 ,2017年05月09日,2P1-H03(1)~2P1-H03(4)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーシステム(100)であって、
高周波(RF)信号(112)またはレーダー信号を送信するための送信アンテナ(110)と、
前記RF信号(112)またはレーダー信号を反射する複数のターゲット(118a-118n)によって作り出された複数の反射信号(116a-116n)を受信するための受信アンテナ(114)であって、前記反射信号がノイズを含む、受信アンテナ(114)と、
前記複数の反射信号をデジタル化またはサンプリングして、デジタル化またはサンプリングされたノイズ入り入力信号(124)を提供する、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)(122)と、
前記ノイズ入り入力信号(124)を受信するリザーバコンピュータ(126)であって、時変リザーバ(128)を含み、前記ノイズ入り
入力信号(124)をノイズ除去して前記複数のターゲット(118a-118n)のそれぞれに対する距離の測定値(130)を提供するように構成されて
おり、前記時変リザーバ(128)が、信号のノイズ除去に最適化された所定のブロック対角構造(146)を含む状態遷移行列(144)を含む、リザーバコンピュータ(126)と、を備えるレーダーシステム(100)。
【請求項2】
前記RF信号または前記レーダー信号が、チャープ波形またはステップチャープ波形(104a)を含む、請求項1に記載のレーダーシステム。
【請求項3】
前記リザーバコンピュータ(126)が認知レーダープロセッサ(132)を備え、前記認知レーダープロセッサ(132)が前記時変リザーバ(128)を備え、前記時変リザーバ(128)が複数の時変リザーバ状態(140a-140n)を備え、且つ、前記時変リザーバ(128)が
、前記ノイズ入り入力信号(124)を各リザーバ状態(140a-140n)に対して線形的にマッピングするように構成されている、請求項1または2に記載のレーダーシステム。
【請求項4】
前記認知レーダープロセッサ(132)が、
遅延埋め込みモジュール(136)であって、各時変リザーバ状態(140a-140n)に対応するリザーバ状態信号(148a-148n)を受信するように、且つ前記遅延埋め込みモジュール(136)の所定の時間遅延(154)に基づいて、ある短時間にわたる時変リザーバ状態の履歴(151)、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態(140a-140n)に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号(150a-150n)を生成するように、構成された遅延埋め込みモジュール(136)と、
前記遅延埋め込み済みリザーバ状態信号(150a-150n)を受信する重み適応モジュール(138)であって、各時変リザーバ状態(140a-140n)またはリザーバ状態信号(148a-148n)に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)を生成するように構成されており、前記ノイズ除去されたリザーバ状態信号が、ノイズ除去された入力信号(158)をもたらすためにノイズ除去中である、前記ノイズ入り入力信号(124)に対応している、重み適応モジュール(138)と、をさらに備える、請求項3に記載のレーダーシステム。
【請求項5】
前記重み
適応モジュール(138)が、前記遅延埋め込み済みのリザーバ状態信号(150a-150n)から、所定の未来の時点におけるノイズ入り入力信号の予測(156)を生成するように、且つ前記ノイズ入り入力信号(124)の前記予測(156)を、勾配降下学習アルゴリズム(160)を用いた各リザーバ状態信号(148a-148n)のノイズ除去に使用するように構成されているレーダーシステムであって、前記重み適応モジュール(138)の重み(162a-162n)は、前記勾配降下学習アルゴリズム(160)を用いて決定される、請求項4に記載のレーダーシステム。
【請求項6】
前記認知レーダープロセッサ(132)が、前記重み適応モジュール(138)から、前記ノイズ除去された入力信号(158)に対応する前記ノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)を受信し、且つ、前記複数のターゲット(118a-118n)からの前記反射信号(116a-116n)を表す前記ノイズ除去された入力信号(158)の、リアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラム(168)を生成する、チャープレット変換モジュール(164)であって、前記ノイズ除去されたリザーバ状態(170a-170n)またはノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)のそれぞれを、前記複数のターゲット(118a-118n)のそれぞれの前記距離の測定値(130a-130n)に対してマッピングするように構成されている、チャープレット変換モジュール(164)をさらに備える、請求項5に記載のレーダーシステム。
【請求項7】
前記時変リザーバ(128)が、複数のノード(402)を含む再帰ニューラルネットワーク(402)を含み、各ノード(402)が前記時変リザーバ状態(140a-140n)のうちの1つに対応している、請求項5または6に記載のレーダーシステム。
【請求項8】
時変リザーバ(128)であって、複数の時変リザーバ状態(140a-140n)を含み、ノイズ入り入力信号(124)を各リザーバ状態(140a-140n)に対して線形的にマッピングす
るように構成されている、時変リザーバ(128)と、
遅延埋め込みモジュール(136)であって、各時変リザーバ状態(140a-140n)に対応するリザーバ状態信号(148a-148n)を受信するように、且つ前記遅延埋め込みモジュール(136)の所定の時間遅延(154)に基づいて、ある短時間にわたる前記時変リザーバ状態の履歴(151)、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態(140a-140n)に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号(150a-150n)を生成するように、構成された遅延埋め込みモジュール(136)と、
前記遅延埋め込み済みリザーバ状態信号(150a-150n)を受信する重み適応モジュール(138)であって、各時変リザーバ状態(140a-140n)またはリザーバ状態信号(148a-148n)に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)を生成するように構成されており、前記ノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)が、ノイズ除去された入力信号(158)をもたらすためにノイズ除去中である、前記ノイズ入り入力信号(124)に対応している、重み適応モジュール(138)と、をさらに備える、認知レーダープロセッサ(132)。
【請求項9】
機能(1000)を実行するように構成された認知レーダープロセッサであって、前
記機能(1000)が、
前記ノイズ入り入力信号(124)を受信すること(1002)であって、前記ノイズ入り入力信号が、約30GHzを超える帯域幅から
の複数の反射信号(116a-116n)からサンプリングされた時系列のデータ点である、ノイズ入り入力信号(124)を受信すること(1002)と、
前記ノイズ入り入力信号(124)を前記時変リザーバ(128)に対して線形的にマッピングすること(1004)であって、前記時変リザーバ(128)が複数の時変リザーバ状態(140a-140n)を含む、ノイズ入り入力信号(124)を線形的にマッピングすること(1004)と、
前記ノイズ入り入力信号を前記時変リザーバの前記時変リザーバ状態と結合することによって前記反射信号
の状態空間表現を作り出すこと(1006)と、
リザーバ動態の有限時間レコードまたは前記時変リザーバ状態の履歴(151)を与える各時変リザーバ状態(140a-140n)から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号(150a-150n)を生成すること(1008)と、
ノイズが取り除かれてノイズなしの前記反射信号(116a-116n)に相当する信号が残るように、前記ノイズ入り入力信号(124)のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態(140a-140n)のノイズ除去を行うこと(1010)と、
前記ノイズ除去されたリザーバ状態(170a-170n)またはノイズ除去されたリザーバ状態信号(152a-152n)から、前記ノイズ入り入力信号(124)の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム(168)を生成すること(1012)と、
前記認知レーダープロセッサ(132)の出力層(134)で、前記ノイズ除去された時変スペクトログラム(168)を積分すること(1014)と、
前記積分されたノイズ除去された時変スペクトログラム(168)を
、複数のターゲット(118a-118n)のそれぞれ
の距離の測定値(130a-130n)に対してマッピングすること(1016)と、
を含む、請求項8に記載の認知レーダープロセッサ。
【請求項10】
複数のターゲット(118a-118n)のそれぞれまでの距離(130a-130n)を測定する方法(900)であって、
認知レーダープロセッサ(132)によってノイズ入り入力信号(124)を受信することであって、前記ノイズ入り入力信号(124)が、複数のターゲット(118a-118n)から反射された複数のRF信号(116a-116n)またはレーダー信号を含む、ノイズ入り入力信号を受信すること(902)と、
時変リザーバ(128)を含む予測フィルタリングを用いて(904)、前記ノイズ入り入力信号(124)を分析すること(904)と、
前記ノイズ入り入力信号を分析(906)して予測信号パターンと予測不能なノイズパターンとを分離すること(906)と、
前記ノイズ入り入力信号(124)に対して、前記予測不能なノイズパターンに対応している逆相ノイズ信号を適用して(908)、前記予測不能なノイズパターンを相殺することと、
前記予測信号パターンに対する前記予測不能なノイズパターンの相殺に応答して、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を生成すること(910)と、
前記増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を、前記複数のターゲット(118a-118n)のそれぞれの距離の測定値(130a-130n)に対してマッピングすること(912)と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダーに関し、具体的には、ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダー信号といった、ビロウノイズの高周波(RF)信号を検知することは、RF信号またはレーダー信号に対してノイズ除去を行い、所望の情報を抽出するためにプロセスすることができる、使用可能な信号またはレーダーリターンを得ることを伴う。ターゲットまたはある土地までの距離を測定するための、長距離からの超広帯域幅(高解像度を可能にする約30ギガヘルツ(GHz)超)による最新技術のシステムは、高速のアナログ-デジタルコンバータ(ADC)と、高出力送信機または大型開口アンテナの組み合わせを必要とする。こうした高速ADCは高価であり、かなりの量の電力を消費する。さらに、根本的な物理的限界のせいで、上記のような超広帯域幅を捕捉するのに必要なサンプリングレートを実現することは、不可能である。この問題を軽減するために、現行の広帯域レーダーシステムは、受信後にデチャープされるチャープ波形またはステップチャープ波形を使用して、送信パルスの必要な長さを増大し、ターゲットを探知するための動作距離を特定の距離窓に制限する。加えて、現行のレーダーシステムの検知アルゴリズムは、典型的には、高度の計算複雑性及び必要メモリを伴う高速フーリエ変換に基づいているが、それによって、こうしたシステムによるリアルタイムの超広帯域での稼働が困難になっている。十分な信号対ノイズ比(SNR)で長距離にあるターゲットを検知するのに必要な高出力送信器は、かなりの量の瞬時電力を必要とする。この問題は、より大きなアンテナを用いることで軽減されるが、送信電力を削減するために開口サイズを増大することによって重量が増加し、それによって、サイズ、重量、及び電力の要件がかなり低く抑えられている用途にとっては、この手法は実行不可能になってしまう。
【0003】
ノイズ除去のための従来型の方法は、2つのカテゴリーに入る。フィルタベースの方法と、トレーニングベースの手法である。フィルタベースの方法では、信号からノイズを除去するためにフィルタリングが用いられるが、フィルタリングは、高周波の突然遷移に適応する一方で、同時に信号の低周波の長期傾向を維持するためには、単純すぎるものである。トレーニングベースの方法は、対象の信号をモデリングする「辞書」に依存する。こうした辞書は、オフライン処理でトレーニングしなければならず、トレーニングデータを必要とするが、そのデータは入手可能でないかもしれない。加えて、辞書が大容量のメモリと、保存されプラットフォーム上で活用されるべき大量の計算とを必要とすることはよくあり、それによって、小サイズ、低重量、及び高速性能が重要な特質である用途にとっては、こうした方法は実現困難なものになっている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によると、レーダーシステムは、高周波(RF)信号またはレーダー信号を送信するための送信アンテナと、RF信号またはレーダー信号を反射する複数のターゲットによって作り出された複数の反射信号を受信するための受信アンテナとを含む。反射信号は、ノイズと共に受信される。レーダーシステムは、反射信号をデジタル化またはサンプリングして、デジタル化またはサンプリングされたノイズ入り(noisy)入力信号を提供する、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)もまた含む。レーダーシステムは、ノイズ入り入力信号を受信するリザーバコンピュータもまた含む。リザーバコンピュータは、時変リザーバ(time-varying reservoir)を含んでおり、ノイズ入り信号をノイズ除去して複数のターゲットのそれぞれに対する距離の測定値を提供するように構成されている。
【0005】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、リザーバコンピュータは、認知レーダープロセッサを含む。認知レーダープロセッサは、時変リザーバを含む。時変リザーバは、複数の時変リザーバ状態を含み、ノイズ入り入力信号を各リザーバ状態に対して線形的にマッピングして、ノイズ入り入力信号の、高次元の状態空間表現を作り出すように構成されている。
【0006】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、認知レーダープロセッサは、遅延埋め込みモジュールを含む。遅延埋め込みモジュールは、各時変リザーバ状態に対応するリザーバ状態信号を受信するように、且つ遅延埋め込みモジュールの所定の時間遅延に基づいて、ある期間にわたる時変リザーバ状態の履歴、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成するように、構成されている。遅延埋め込みモジュールは、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を受信する重み適応モジュールもまた含む。重み適応モジュールは、各時変リザーバ状態またはリザーバ状態信号に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号を生成するように構成されている。ノイズ除去されたリザーバ状態信号は、ノイズ除去された入力信号をもたらすためにノイズ除去中である、ノイズ入り入力信号に対応している。
【0007】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、重みづけ適応モジュールは、遅延埋め込み済みのリザーバ状態信号から、所定の未来の時点におけるノイズ入り入力信号の予測を生成するように、且つこのノイズ入り入力信号の予測を、勾配降下学習アルゴリズムを用いた各リザーバ状態信号のノイズ除去に使用するように、構成されている。重み適応モジュールの重みは、勾配降下学習アルゴリズムを用いて決定される。
【0008】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、認知レーダープロセッサは、時変リザーバを含む。時変リザーバは、複数の時変リザーバ状態を含み、ノイズ入り入力信号を各リザーバ状態に対して線形的にマッピングして、ノイズ入り入力信号の、高次元の状態空間表現を作り出すように構成されている。認知レーダープロセッサは、遅延埋め込みモジュールもまた含む。遅延埋め込みモジュールは、各時変リザーバ状態に対応するリザーバ状態信号を受信するように、且つ遅延埋め込みモジュールの所定の時間遅延に基づいて、ある期間にわたる時変リザーバ状態の履歴、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成するように、構成されている。認知レーダープロセッサは、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を受信する重み適応モジュールもさらに含む。重み適応モジュールは、各リザーバ状態またはリザーバ状態信号に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号を生成するように構成されている。ノイズ除去されたリザーバ状態信号は、ノイズ除去された入力信号をもたらすためにノイズ除去中である、ノイズ入り入力信号に対応している。
【0009】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、認知レーダープロセッサは、重み適応モジュールから、ノイズ除去されたリザーバ状態、またはノイズ除去された入力信号に対応するノイズ除去されたリザーバ状態信号を受信し、且つ、複数のターゲットからの反射信号を表す、ノイズ除去された入力信号のリアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを生成する、チャープレット変換モジュールをさらに含む。チャープレット変換モジュールは、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号のそれぞれを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングするように構成されている。
【0010】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、ノイズ除去されたリザーバ状態は、RF信号またはレーダー信号の送信チャープによってセットされたチャープ率における、時変フィルタのバンクを規定する。種々の時点で受信したチャープに対する時変フィルタの応答は、種々の周波数に対する、単極無限インパルス応答(IIR)フィルタのバンクの応答と同等である。
【0011】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、このレーダーシステムは、ノイズ除去された入力信号の、リアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを積分して、積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを作成するため、及び積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを距離の測定値に対してマッピングするための、積分モジュールをさらに含む。積分モジュールは、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の出力を積分または合計することによるパルス圧縮によって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の信号対ノイズ比を増大するように構成されている。
【0012】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちの任意のものによると、時変リザーバは、複数のノードを含む再帰型ニューラルネットワークを含む。各ノードは、時変リザーバ状態のうちの1つに対応している。
【0013】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、時変リザーバは、信号のノイズ除去とハードウェア内での効率的な実装のために最適化された所定のブロック対角構造を有する、状態遷移行列を含む。
【0014】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、遅延埋め込みモジュールは、時変の動態を可能にするために異なる状態遷移行列を有している、遅延埋め込み済みリザーバ状態ベクトルを含む。
【0015】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、リザーバコンピュータは認知レーダープロセッサを含み、認知レーダープロセッサは、一式の機能を実行するように構成されており、この一式の機能は、ノイズ入り入力信号を受信することであって、ノイズ入り入力信号が、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた複数の反射信号からの時系列のデータ点である、ノイズ入り入力信号を受信することと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることであって、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含む、ノイズ入り入力信号を線形的にマッピングすることと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すことと、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することと、ノイズが取り除かれて、ノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことと、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号のリアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することと、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む。
【0016】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、RF信号またはレーダー信号は、チャープ波形またはステップチャープ波形を含む。
【0017】
別の実施形態によると、RF信号またはレーダー信号を増強するための方法は、時変リザーバコンピュータを含む予測フィルタリングを使用することを含む。方法は、RF信号またはリターンレーダー信号を分析することもまた含む。RF信号またはリターンレーダー信号は、情報信号並びに、受信器ノイズ及びバックグラウンドノイズを含む。この方法は、予測信号パターンを予測不能なノイズパターンから分離することを、さらに含む。予測不能なノイズパターンは、分離されることに応答して特定可能になる。この方法は、RF信号またはリターンレーダー信号に対して逆相ノイズ信号(inverse noise signal)を適用して、予測不能なノイズパターンを相殺することも、また含む。逆相ノイズ信号は、予測不能なノイズパターンに対応している。方法は、予測不能なノイズパターンの相殺に応答して、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を生成することをさらに含む。
【0018】
別の実施形態によると、RF信号またはレーダー信号を増強するためのシステムは、非常に大きい(>30GHz)帯域幅を超える波長の混合を含む入力信号をノイズ除去することが可能な、「認知」レーダープロセッサ(CRP)を含む。認知レーダープロセッサは、入力信号を、リザーバとして知られる高次元の力学系に対してマッピングする、リザーバコンピュータ(RC)を含む。認知レーダープロセッサは、リザーバ状態の値の有限時間レコードを作り出す、遅延埋め込みモジュールをさらに含む。認知レーダープロセッサは、勾配降下を介してリザーバコンピュータの出力を適応させ、将来において小さな時間ステップで入力信号の予測を作り出すための、重み適応モジュールをさらに含む。入力信号の中のノイズは本質的にランダムで予測不能なものであるから、予測された入力信号には、ノイズが含まれないであろう。予測された入力信号と実際の入力信号との間の誤差は、反復処理の中でリザーバの出力重みをさらに調整するために、重み適応モジュールによって使用される。
【0019】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、静的リザーバコンピュータは、チャープ信号といった非静的信号を検知してノイズ除去することが可能な、時変リザーバを含む。
【0020】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、RF信号またはレーダー信号を増強するための方法は、時間依存のリザーバコンピュータまたは時変リザーバコンピュータを用いて逆相ノイズ信号を提供することによって、受信した信号からノイズを相殺することを含む。
【0021】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法は、認知レーダープロセッサによってノイズ入り入力信号を受信することを含む。ノイズ入り入力信号は、複数のターゲットから反射された、複数のRF信号またはレーダー信号を含む。方法は、ノイズ入り入力信号を分析するために、時変リザーバを含む予測フィルタリングを使用することも、また含む。この方法は、予測信号パターンを予測不能なノイズパターンから分離するために、ノイズ入り入力信号を分析することを、さらに含む。この方法は、ノイズ入り入力信号に対して逆相ノイズ信号を適用して、予測不能なノイズパターンを相殺することも、また含む。逆相ノイズ信号は、予測不能なノイズパターンに対応している。方法は、予測信号パターンからの予測不能なノイズパターンの相殺に応答して、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を生成することも、また含む。方法は、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を、ターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることをさらに含む。
【0022】
一実施形態、及び既出の実施形態のうちのいずれかによると、複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法は、認知レーダープロセッサによってノイズ入り入力信号を受信することを含む。ノイズ入り入力信号は、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた複数のターゲットからの複数の反射信号からサンプリングされた、時系列のデータ点を含む。方法は、ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることもまた含む。時変リザーバは、複数の時変リザーバ状態を含む。方法は、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって、反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すこともまた含む。方法は、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することをさらに含む。方法は、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことをさらに含む。方法は、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号のリアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することもまた含む。方法は、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることをさらに含む。
【0023】
上記で検討されてきた特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において独立して実現可能であるか、または、さらに別の実施形態において組み合わされ得るが、これらの実施形態のさらなる詳細は、下記の説明及び図面を参照することによって理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態による、レーダーシステムの一実施例の概略ブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、時変リザーバ、遅延埋め込みモジュール、及び重み適応モジュールの一実施例の概略ブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、チャープレット変換モジュール及び積分モジュールの一実施例の概略ブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、時変リザーバコンピュータの一実施例の図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、動的リザーバの一実施例の概略図である。
【
図6A】本開示の一実施形態による、サンプリング周期Δtによる均一サンプリングを用いた、入力信号u(t)の近似の一例である。
【
図6B】本開示の一実施形態による、入力信号u(t)の近似のための線形基底関数の使用例である。
【
図7】本開示の一実施形態による、認知レーダープロセッサの一実施例の概略図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、ノイズ除去された信号のスペクトログラムの一例である。
【
図9】本開示の一実施形態による、ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダーを用いて複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法の一実施例のフロー図である。
【
図10】本開示の別の実施形態による、BATチャープレーダーを用いて複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法の一実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施形態の詳細な説明では、添付の図面が参照される。これらの図面は、本開示の具体的な実施形態を示すものである。異なる構造及び工程を含む他の実施形態も、本開示の範囲から逸脱するものではない。類似の参照番号は、異なる図面における同一の要素または構成要素を表している。
【0026】
本開示は、システム、方法、及び/またはコンピュータプログラム製品であってよい。コンピュータプログラム製品は、本開示の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を有する、コンピュータ可読記憶媒体(複数可)を含んでいてよい。
【0027】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行装置によって使用される命令を保持及び記憶することが可能な、有形の装置であることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、限定するものではないが、電子記憶装置、磁気記憶装置、光記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、またはこれらの任意の好適な組み合わせであってよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストには、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリースティック、フロッピーディスク、パンチカードまたは記録された命令を有する溝内の隆起構造などの機械的にエンコードされた装置、及びこれらの任意の適切な組み合わせ、が含まれる。コンピュータ可読記憶媒体は、本書で使用する場合、それ自体が、電波もしくは他の自由に伝播する電磁波、導波管もしくは他の伝送媒体を通って伝播する電磁波(例えば光ファイバケーブルを通過する光パルスなど)、または、ワイヤを通って伝送される電気信号といった、一時的信号であると解釈すべきではない。
【0028】
本明細書に記載のコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体から、各コンピューティング装置/処理装置に、または、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、及び/または無線ネットワークといったネットワーク経由で外部コンピュータもしくは外部記憶装置に、ダウンロードすることができる。ネットワークは、銅の伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ及び/またはエッジサーバを含み得る。各コンピューティング装置/処理装置内のネットワークアダプタカードまたはネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、このコンピュータ可読プログラム命令を、それぞれのコンピューティング装置/処理装置の中のコンピュータ可読記憶媒体内に記憶するために転送する。
【0029】
本開示の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、または、スモールトーク、C++などといったオブジェクト指向型プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語もしくは類似のプログラミング言語といった従来的な手続き型プログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれた、ソースコードもしくはオブジェクトコードであってよい。コンピュータ可読プログラム命令は、完全にユーザのコンピュータ上でか、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして部分的にユーザのコンピュータ上でか、部分的にユーザのコンピュータ上且つ部分的にリモートコンピュータ上でか、または完全にリモートのコンピュータもしくはサーバー上で、実行され得る。最後のケースでは、リモートコンピュータがローカルエリアネットワーク(LAN)もしくはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通じてユーザのコンピュータに接続されていてよいか、または、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて)外部コンピュータへの接続がなされていてよい。ある実施形態では、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはプログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、本開示の諸態様を実行するように電子回路をカスタマイズするためのコンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用することによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行してよい。
【0030】
本開示の態様は、本明細書中で、本開示の実施態様による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフロー図及び/またはブロック図を参照して説明されている。フロー図及び/またはブロック図中の各ブロック、並びにフロー図及び/またはブロック図中の複数のブロックの組み合わせが、コンピュータ可読プログラム命令によって実行可能であることは、理解されよう。
【0031】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、機械を生産するために、コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに与えられてよく、その結果、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されるこれらの命令によって、フロー図及び/またはブロック図中のブロック(複数可)内に特定されている機能/作用を実行するための手段が作り出される。これらのコンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、及び/または特定の方法で機能するその他の装置に命令を下すことが可能なコンピュータ可読記憶媒体内に記憶されていてもよく、その結果、命令を記憶しているこのコンピュータ可読記憶媒体に、フロー図及び/またはブロック図中のブロック(複数可)で特定されている機能/作用の態様を実行する命令を含む製品が含まれることになる。
【0032】
コンピュータ可読プログラム命令はまた、一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブル装置、またはコンピュータ実装プロセスを生成する他のデバイス上で実行させるために、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、または他のデバイスにロードされてもよく、その結果、コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイスで実行される命令によって、フロー図及び/またはブロック図中のブロック(複数可)が特定している機能/作用が実装される。
【0033】
本明細書に記載されているこれらの実施形態は、超高帯域を超える信号のリアルタイムの処理を実行することが可能な、レーダー受信器またはレーダーシステムに適用可能である。例示の実施形態は、RF環境に基づくリアルタイムのリソース配分を可能にする、約30GHzの瞬時帯域幅を超える超低遅延信号の検知及び分析に必要なコア機能を提供する、拡張状況認識を提供する。この機能は、サイズ、重量、電力がけた違いに小さいコンピュータプラットフォーム上で達成され得る。記載の時変リザーバコンピュータは、広範なプラットフォーム上でレーダーシステムにおいて広く使用されているチャープといった非静的信号の、迅速なノイズ除去及び検知を可能にするものである。
【0034】
本明細書に記載の認知レーダープロセッサは、航空機搭載または宇宙空間におけるランデヴー操作といった航空宇宙用途に加えて、低信号対ノイズ比(SNR)条件におけるマルチスタティックレーダー及び認知無線を可能にする、他の用途も有する。時変リザーバコンピュータは、広範な自力推進用レーダーシステムで使用される周波数変調連続波(FMCW)信号またはチャープパルスを検知し追尾するのに、特に有用である。
【0035】
CRPまたはリザーバコンピュータのさらなる性能は、有人の空中プラットフォームもしくはビークル、無人航空ビークル(UAV)、または、自動もしくは有人の宇宙プラットフォームに関する状況認識をさらに容易にする、リアルタイムの時変スペクトログラムを生成することをさらに含む。
【0036】
図1は、本開示の一実施形態による、レーダーシステム100の一実施例の概略ブロック図である。本明細書に記載の一実施例によると、レーダーシステム100は、ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダーである。レーダーシステム100は、RF信号またはレーダー信号を生成するための高周波(RF)信号生成器102を含む。一実施形態によると、RF信号生成器102は、所定のチャープ率106またはユーザによって選択可能なチャープ率でチャープパルス104を生成するのに適合可能な、チャープパルス生成器である。したがって、一実施形態によると、RF信号は、チャープ波形またはステップチャープ波形104aを含んでいる。増幅器108が、チャープパルス104を増幅する。
【0037】
レーダーシステム100は、送信アンテナ110、または増幅器108によって増幅されたRF信号112もしくはレーダー信号を送信するためのアンテナもまた含む。レーダーシステム100は、受信アンテナ114または、複数のターゲット118a-118nがRF信号112もしくはレーダー信号を反射することによって作り出された、複数の反射信号116a-116nを受信するためのアンテナをさらに含む。反射信号116a-116nは、バックグラウンドノイズを含む。受信用増幅器120は、受信した反射信号116a-116nを増幅し、受信器ノイズを追加する。
【0038】
アナログ-デジタルコンバータ(ADC)122は、複数の反射信号116a-116nをデジタル化またはサンプリングして、デジタル化またはサンプリングされたノイズ入り入力信号124を提供する。リザーバコンピュータ126が、ADC122からノイズ入り入力信号124を受信する。リザーバコンピュータ126は、時変リザーバ128を含む。リザーバコンピュータ126は、本明細書でより詳細に記載されるように、ノイズ入り入力信号124をノイズ除去して、複数のターゲット118a-118nのそれぞれの距離の測定値130を提供するように構成されている。リザーバコンピュータ126及びリザーバコンピュータ126の構成要素の一実施例は、
図2-
図4を参照して、より詳細に説明されよう。リザーバコンピュータ126は、認知レーダープロセッサ132を含むか、または認知レーダープロセッサ132と呼ばれてもよい。
【0039】
リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、時変リザーバ128を含む。リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、リザーバコンピュータの出力層134もまた含む。リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、遅延埋め込みモジュール136及び重み適応モジュール138をさらに含む。一実施形態によると、遅延埋め込みモジュール136及び重み適応モジュール138は、リザーバコンピュータの出力層134の構成要素である。
【0040】
同様に
図2も参照すると、
図2は、本開示の一実施形態による、時変リザーバ128、遅延埋め込みモジュール136、及び重み適応モジュール138の一実施例の概略ブロック図である。本明細書でより詳細に記載されるように、時変リザーバ128、遅延埋め込みモジュール136、及び重み適応モジュール138を含むリザーバコンピュータ126は、
図9のブロック904で、予測フィルタリングを用いてノイズ入り入力信号124を分析し、その結果、
図9のブロック906で予測信号パターンと予測不能なノイズパターンを分離する。時変リザーバ128は、複数の時変リザーバ状態140a-140nを含む。時変リザーバ128は、ノイズ入り入力信号124を各リザーバ状態140a-140nに対して線形的にマッピングして、ノイズ入り入力信号124の高次元の状態空間表現142または多次元の状態空間表現を作り出すように構成されている。本明細書でさらに詳細に記載されるように、時変リザーバ128は、信号のノイズ除去とハードウェア内での効率的な実装のために最適化された所定のブロック対角構造146を含む、状態遷移行列144を含む。
【0041】
一実施形態によると、時変リザーバ128は、複数のリザーバノード404を含む再帰型ニューラルネットワーク402(
図4)を含む。各リザーバノード404は、時変リザーバ状態104a-140nのうちの1つに対応している。
【0042】
遅延埋め込みモジュール136は、各時変リザーバ状態140a-140nに対応するリザーバ状態信号148a-148nを受信するように、且つ遅延埋め込みモジュール136の所定の時間遅延154に基づいて、ある短期間にわたる時変リザーバ状態140a-140nの履歴151、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態140a-140nに対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号150a-150nを生成するように、構成されている。短期間または所定の期間であるこの期間は、受信した信号の周波数に基づいており、レーダーの動作周波数に基づく所定の時間であるだろう。遅延埋め込みモジュール136は、時変の動態を可能にするため、時変リザーバ128の状態遷移行列144と比べて異なる状態遷移行列159を有している、遅延埋め込み済みリザーバ状態ベクトル157を含む。
【0043】
重み適応モジュール138は、遅延埋め込みモジュール136から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号150a-150nを受信する。重み適応モジュール138は、各時変リザーバ状態140a-140nまたはリザーバ状態信号148a-148nに関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nを生成するように構成されている。ノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nは、ノイズ除去された入力信号158をもたらすためにノイズ除去中である、ノイズ入り入力信号124に対応している。重み適応モジュール138は、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号150a-150nから所定の将来時点におけるノイズ入り入力信号124(ノイズを含む入力信号)の予測156を生成するように、且つ勾配降下学習アルゴリズム160を用いてノイズをノイズ入り入力リザーバ状態信号148a-148nから分離する(ノイズ除去する)ために、ノイズ入り入力信号124の予測156を使用するように構成されている。重み適応モジュール138の重み162a-162nは、勾配降下学習アルゴリズム160を用いて決定される。その結果、重み適応モジュール138は、予測フィルタリングを用いて予測信号パターンを予測不能なノイズパターンから分離するように構成されている(
図9のブロック904及び906)。勾配降下学習アルゴリズム160は、ノイズ入り入力信号124の予測可能な部分の次のサンプルを予測して、サンプル間の差分を予測不能なノイズパターンとして決定する。予測不能なノイズパターンを相殺するため、予測不能なノイズパターンに対応する逆相ノイズ信号が、ノイズ入り入力信号124の予測156に適用され(
図9のブロック908)、ノイズ除去された入力信号158、または相殺されたノイズを含まない増強RF信号もしくはリターンレーダー信号が提供される(
図9のブロック9)。
【0044】
図1及び
図3を参照すると、リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、チャープレット変換モジュール164及び積分モジュール166をさらに含む。
図3は、本開示の一実施形態による、チャープレット変換モジュール164及び積分モジュール166の一実施例の概略ブロック図である。チャープレット変換モジュール164は、重み適応モジュール138から、ノイズ除去された入力信号158に対応する、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nを受信する。チャープレット変換モジュール164は、複数のターゲット118a-118nからの反射信号116a-116nを表す、ノイズ除去された入力信号158のリアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168を生成する。リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168は、数学的変換を介してチャープレットスペクトログラムとして表されてもよい。チャープレット変換モジュール164は、ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nまたはノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nのそれぞれを、複数のターゲット118a-118nのそれぞれの距離の測定値130に対してマッピングするように構成されている。ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nは、送信されたRF信号112またはレーダー信号の送信チャープパルス104によってセットされたチャープ率106における、時変フィルタ172のバンクを規定する。種々の時点で受信したチャープに対する時変フィルタ172の応答は、種々の周波数に対する、単極無限インパルス応答(IIR)フィルタのバンクの応答と同等である。
【0045】
積分モジュール166は、ノイズ除去された入力信号158の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168を積分して、積分されたノイズ除去されたスペクトログラム174を作成するように、及び、積分されたノイズ除去されたスペクトログラム174を距離の測定値130a-130nに対してマッピングするように、構成されている。積分モジュール166は、各ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nまたはノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nの出力178a-178nを積分または合計することを含むパルス圧縮によって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nの信号対ノイズ比を増大させるように構成されている。一実施形態によると、積分モジュール166は、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168内に示されているノイズ除去された入力信号158のそれぞれを積分するための、複数の加算ノード176a-176nを含む。
【0046】
図4もまた参照すると、
図4は、本開示の一実施形態による、時変リザーバコンピュータ126の一実施例の図である。リザーバコンピュータ126は、リザーバコンピューティングとして知られる、神経形態学的(脳から着想を得た)信号処理の一形態に基づく、認知信号ノイズ除去アーキテクチャ400を含む。リザーバコンピューティングは、入力信号ベクトルまたは入力信号142を高次元のリザーバ状態空間表現内142(
図2)内に射影することによって動作する、再帰型ニューラルネットワーク402(フィードバック接続付きのニューラルネットワーク)の一特殊形態である。この高次元のリザーバ状態空間表現は、入力信号124に関する利用可能且つ動作可能な情報の全てをキャプチャする信号生成処理の等価動的モデルを含む。リザーバコンピュータ126は、状態機能を利用した所望の出力の学習のために、オフラインまたはオンラインのどちらででもトレーニングすることが可能な、読み出し層406を有する。その結果、リザーバコンピュータ126は、非静的な(時変の)処理及び現象をモデリングするための再帰ニューラルネットワーク402の力を有しているが、単純な読み出し層406と、精密且つ効率的なトレーニングアルゴリズムを伴っている。
【0047】
リザーバコンピュータ126は、適応状態空間フィルタまたは時変フィルタ172を実装するように構成されている(
図3)。線形リザーバコンピュータは、以下の状態空間表現を有している。
式中、__Aは、フィルタの極位置を決定するリザーバ連結性行列であり、_Bは入力をリザーバに対してマッピングするベクトルであり、_C(t)は、リザーバ状態140a-140nを出力即ちノイズ除去されたリザーバ状態信号152a-152nに対してマッピングし、フィルタの零点位置を決定する調整可能な出力層の重みの一式162a-162nであり、D(t)は(ほとんど使用されない)入力から出力への直接マッピングである。同様に、出力層の重み(_C)が、フィルタの零点位置を決定する。
図4は、状態空間表現142のパラメータとリザーバコンピュータ126内の構成要素との間の、直接の対応を示す。調整可能な出力層の重み162a-162nは適応可能であるので、極が固定されている場合、リザーバコンピュータ126には適応状態空間フィルタが実装される。しかし、入力信号124に基づいてリアルタイムで適応されるのは、ゼロである。リザーバコンピュータ126は、入力信号ベクトルまたは入力信号124を、根底にある信号生成処理の時変の動態をモデリングする高次元の状態空間表現142に対して、マッピングする。リザーバ状態140a-140nは、トレーニング可能な線形読み出し層406を用いて、ノイズ除去された入力、信号クラス、分離信号、及び異常値(anomalies)を含む、有用な出力408に対してマッピングされ得る。状態空間表現構成要素とリザーバコンピュータ126内のパラメータとの間には、直接の対応が存在する。
【0048】
従来型のリザーバコンピュータでは、リザーバ接続行列(__A)、及び入力からリザーバへのマッピングベクトル(_B)の重みは、どちらも、通常ランダムに選択される。(例えば、(__A)及び_Bの入力は、ゼロ平均単位分散ガウス分布からの、独立同分布のサンプルであることができる。)リザーバ状態の更新は、リザーバノード404の数の2乗に比例する計算を必要とする。このため、リザーバノード404の数が増加するのにつれて、低出力のハードウェアのインスタンス化にとっては、実行が不可能になる。
【0049】
リザーバコンピュータ126が線形力学系であるため、新しい状態ベクトル
を得るために、線形変換__Tを適用することができ、以下の等価力学系が与えられる。
式中、
であり、
である。この力学系は、元の系と全く同一の入力/出力挙動を有しているが、__Tを適切に選択することによって、リザーバ遷移行列
が対角構造またはブロック対角構造を有するように設計することができる。これによって、リザーバ状態の更新の計算が、リザーバノード404の数に対して線形的に拡縮することが可能になり、したがって低出力のハードウェアでの効率的な実装が可能になる。
【0050】
一実施形態によると、リザーバ状態遷移行列__Aは、2×2のブロック対角形式であるように構築されている。状態行列__A中の各2×2ブロックは、単極無限インパルス応答(IIR)フィルタに対応している。各2×2ブロックに関する極の配置は、標準IIRフィルタの設計技法を用いて、リザーバ状態行列が全体としてIIRフィルタのバンクまたは時変フィルタ172のバンクをモデリングするようにして、選択することができる。例えば、実パッシブIIRフィルタに関しては、行列__Aは、純粋に減衰された(purely damped)モードに相当する純粋に実かつ負の固有値か、または固有値であって、この固有値に対する負の実数部との複素共益対である、固有値を持たなければならない。したがって、ブロック対角行列__Aは、以下の形式を有する。
式中、pは複素共役極の数であり、
は__Aの(常に負である)固有値の実数成分に相当する。また、
は、__Aの固有値の虚数成分である。
【0051】
遅延埋め込みモジュール136に用いられている位相遅延埋め込みは、観察結果u_0(t)からのカオス系の動態のモデリングを、観察結果の遅延バージョンを新たな入力ベクトル_u(t)として用いて行うために、力学系理論で開発された技法である。位相遅延埋め込み理論を用いるために、未知の(潜在的にカオス的である)力学系が、m次元のアトラクタを有するN次元の状態空間内に、埋め込まれているとみなされる。つまり、状態空間はN個のパラメータを有しているが、この力学系からの信号は、全て、この状態空間のm次元の部分多様体M上に存在する軌道を形成しているのであり、(実際的にはそうではないが)理論的には、わずかm個のパラメータで特定され得るのである。この観察結果(受信信号)
は、状態空間の射影である。位相遅延埋め込みは、連結された観察信号
u_0(t)のn個の遅延バージョンから、新たな入力ベクトル_u(t)を生み出す。ターケンスの定理によると、部分多様体Mの曲率及び射影h[・]の非縮退性に関してかなり広範な前提が与えられたと仮定すると、遅延座標の次元数がn>2m+1のとき、位相遅延埋め込み_u(t)は、力学系の位相構造(即ち形状)を保持し、したがって、観察結果から力学系を再構築するのに用いられ得るのである。
【0052】
図5もまた参照すると、
図5は、本開示の一実施形態による、動的リザーバ500の一実施例の概略図である。
図5に示すとおり、遅延埋め込みは、リザーバ状態の動態の短時間の履歴または時変リザーバ状態140a-140bの履歴151を得るために、リザーバ状態140a-140nのそれぞれに適用される(
図2)。一実施例によると、信号のノイズ除去に、短期間の予測手法が用いられる。遅延埋め込み済みの観察結果が力学系の挙動を効果的にモデリングし得ると仮定すると、これらのリザーバ状態140a-140nの履歴151は、観察結果の短期予測を実施するために活用または使用されるのである。リザーバコンピュータ126は、予測関数F(以下)を学習するために使用される。
【0053】
一実施形態によると、認知レーダープロセッサ132は、動的リザーバ500に対して入力を提供する、広帯域(30GHzまで)のフロントエンドを含む。広帯域のフロントエンドは、リザーバコンピュータ126の前の、所望の広帯域幅を扱うかまたはサポートするように構成されている、アンテナ、増幅器、ADCなどを指す。出力層134の重み162a-162nは、以下に示す勾配降下学習アルゴリズム160を介して適応させる。勾配降下学習アルゴリズム160は、出力を履歴であるリザーバ状態の線形結合として表そうとする、入力信号124の短時間予測に基づいている。ノイズとはランダムで予測不能なものであるため、予測された信号
には、ノイズが含まれないであろう。
【0054】
図5の動的リザーバ500は、以下のセットの結合常微分方程式(ODE)を満足する。
式中、
である。
【0055】
入力信号124の短時間予測を実施するため、勾配降下学習アルゴリズム160が用いられる。遅延埋め込みモジュール136で使用されている現在時点の正確な予測を実行するという意図である。時点(t+τ)における予測された入力値は、出力重み(_c
k(t),_d(t))162a-162nの現在値、並びに状態(_x)及び入力(u)の現在及び過去の値から計算される。最小化されるべき二次誤差関数は、以下によって与えられる。
式中、λ
c及びλ
dは、出力重み
及び_d、の重要性を重み付するパラメータであり、
である。
【0056】
が、_x及びuの遅延値、並びに出力重み
及び_dの現在値によって表される遅延出力であることと、したがって一般的に
であることは、留意されたい。しかし、この近似は論証可能であり、システムが出力重みの時間履歴を保存を必要としないことを可能にし、より効率的なハードウェア実装を容易にしている。
【0057】
二次的誤差を最小化するため、E[_c
1, ..._c
k+1,d]、E[_c
1, ..._c
k+1,d]、の勾配が、
及び_dに関して計算される。これらの勾配に基づいて、
及び_d(t)への重みの更新は、以下の常微分方程式(ODE)を満足する。
式中、g
c=2λ
dであり、g
d=2λ
dは、
及び_dに関する「忘却」率であり、μ
c及びμ
dは
及び_dに関する学習率であり、
は誤差信号である。
【0058】
動的リザーバ500及び重み適応モジュール138に関するODEは、アナログハードウェアにおいて直接実装され得る。ソフトウェアまたは効率的なデジタルハードウェア(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはカスタムのデジタル特定用途向け集積回路(ASIC))内に上記のODEを実装するためには、更新方程式が離散化されなければならない。
【0059】
ソフトウェアまたはデジタルハードウェアにおける実装に関しては、ODEは、遅延微分方程式(DDE)に変換される。状態空間表現を持つ線形力学系に関しては、
であり、離散の時間ステップの大きさをτと仮定すると、全く同一のフィルタの動態を表す等価のDDEは、
であり、これは、現在のリザーバ状態_x(t)が、前の時間ステップ_x(t-τ)におけるリザーバ状態と、区間[t-τ,t]にわたる入力信号との関数であることを示している。ソフトウェアまたはデジタルハードウェアにおいては連続区間全体が利用可能ではないので、デジタルの認知レーダープロセッサにおいては、u(t)は、線形基底関数を使ってその区間上で近似される。
【0060】
図6A及び
図6Bも参照すると、
図6Aは、本開示の一実施形態による、サンプリング周期Δtによる均一サンプリングを用いた、入力信号u(t)600の近似の一例である。
図6Bは、本開示の別の実施形態による、入力信号u(t)600の近似のための線形基底関数の使用例である。これらの例では、入力信号u(t)600は、入力信号124に相当する。サンプリング周期をΔtとすると、u(t)に関して、
のとおり一式のサンプルがまとめられる(collected)。
式中、n
e=τ/Δtはτによって規定される時間窓内のサンプリング間隔の数である(
図6A参照)。
図6Bに示すように、入力信号は、
としてサンプルから近似される。
式中、Ni(t)=T(t-(i-t)Δt)は、三角形関数T(t)
のシフトバージョンである。
線形基底による近似に基づくと、リザーバ状態_x(t)のDDEは、
となる。
一般性を失わずに、t=τとすると、2つの補助行列
及び
は以下のように定義される。
次に、_x(τ)は以下のとおり計算される。
これに基づいて、状態(_x)、出力(y)、及び重量に関する反復的な更新
が導かれる。これは、以下に記載するアルゴリズム1の中に存在する。必要な各更新ステップは、後続のステップが開始し得るより前に計算ステップが完了するのを待つ必要なしに、1クロック周期内で達成される。これによって、ノイズ除去アルゴリズムの並列実装が可能になる。
【0061】
図7もまた参照すると、
図7は、本開示の一実施形態による、認知レーダープロセッサ700の一実施例の概略図である。
図7に示す認知レーダープロセッサ700は、FPGAまたはカスタムのデジタルASIC上で実装されることができる。
【0062】
アルゴリズム1は、認知信号ノイズ除去反復アルゴリズムであり、以下の演算を含む。
初期設定:
_X[k]=_0, _c
k[K+1]=_0,k=1,2,...,(K+1)
反復(n=K+2より開始):
【0063】
一実施形態によると、時変リザーバ128に関する離散化された状態空間表現142は、Δt=τと仮定することによって導かれ、結果的に、n
e=1である。アルゴリズム1から、遅延埋め込み済み状態の動的リザーバに関する離散化された状態の更新方程式は、以下によって与えられることが想起される。
【0064】
現在状態ベクトルと過去のK個の遅延状態ベクトルとを以下のようにグループ化すると、
位相遅延埋め込みは、動的リザーバの状態空間表現内に組み込まれ得る。
【0065】
これは、大きさKの位相遅延埋め込みと組み合わされたN個のノードを有する線形リザーバが、(K+1)N個のノードを有する線形リザーバであることを示しており、このとき状態遷移行列
及び入力からリザーバへの写像
が、上記の構造を持つ形式を有することを示している。これらの単位行列は、静的リザーバ状態遷移行列
をリザーバ状態140a-140bの履歴151に適用するのに関して、計算上効率の良いメカニズムである。時変リザーバ128は、以下のとおり、各遅延状態_x[n-1]に関して異なる状態遷移行列A
iを適用することによって得られる。
式中、
及び
は、離散化された入力からリザーバへの写像
の、第1列及び第2列である。各遅延状態_x[n-(i+1)]に対して異なる状態遷移行列A
iが適用されているため、この時変リザーバ128は、非静的信号を検知してノイズ除去するために使用することができる。
【0066】
線形チャープ信号を最適にノイズ除去するための時変リザーバ128をどのように設計するかの一例として、状態遷移行列A
0が、チェビシェフのローパスフィルタのプロトタイプによって、第1のサブリザーバが対象の帯域内(例えば10MHzと500MHzの間)に均等に分布しているN=2Pの極を持つようにして、構成される。A
0によって特定されるサブリザーバは、f
1...f
pの周波数の共振を有するであろう。次に、行列A
1...A
Kは、A
0の行が周期的にシフトしたバージョンの行を有する。A
iの状態遷移行列のj番目の行は、以下によって与えられる。
【0067】
A
1...A
Kによって特定されるサブリザーバは、全て、A
0と同一の共振周波数を有しているが、状態ベクトルの別々の要素に対して適用される。したがって、掃引速度がTである線形チャープ信号
に関しては、この信号が周波数f
1からf
pまで掃引する際に、時変リザーバ128の同一の状態が、この信号を検知し追尾するであろう。チャープ最適化されたリザーバに関しては、各A
iがA
0の順序変更されたバージョンであることから、リザーバ状態の更新の計算が静的リザーバと比べて著しく増大しないということは、留意されたい。
【0068】
リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168は、上記のように、ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nを使って与えられる。ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nが時変リザーバ128に関するものであるため、これらのリザーバ状態は、時変フィルタ172のバンクへの応答として解釈され得る。したがって、上記のチャープ最適化されたリザーバに関しては、一式のノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nが、チャープレットのスペクトログラムまたはリアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168を形成しているのである。このチャープレットのスペクトログラムまたはリアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラム168は、入力された広帯域の混合信号内における信号の検知、分離、及び個別のレーダーパルスの追尾といった、様々なリアルタイムの信号分析タスクに使用することができる。
【0069】
リザーバコンピュータ126の出力を、チャープレット変換モジュール164を介して距離の測定値130に対して直接マッピングすることによって、認知レーダープロセッサ132が単体で、現行技術によるチャープされたレーダーの実装における、デチャープ及び検知用機能ブロックの役割を果たすことが可能になる。上記のように、ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nは、送信チャープパルス104によってセットされたチャープ率106における、時変フィルタ172のバンクとして解釈される。種々の時点で受信したチャープに対する時変フィルタ172の応答は、種々の周波数に対する、狭帯域の単極IIRフィルタのバンクの応答と同等である。これが、まさに従来型のレーダー受信機のデチャープ機能ブロックの機能である。したがって、ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nの種々の応答は、送信されたチャープパルス104を反射しているターゲット118a-118nまでの、種々の距離の測定値130a-130nを表す。
【0070】
ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nは、レーダーリターン受信窓の中の、または受信器がオンであって信号を受信可能である時間の中の、相対的な距離の測定値r
iを表す。絶対距離の測定値は、送信時点T
Txと受信時点T
Rxとの間の遅延から計算することができる。
【0071】
信号の信号対ノイズ比(SNR)は、上記の積分モジュール166を用いて、単一のリザーバ状態(時変フィルタ172のバンク内の単一のフィルタ)の出力を積分する(合計する)ことによる、(実効的な)「パルス圧縮」を通じて、さらに増大させることができる。これが、リザーバコンピュータのノイズ除去によるSNRの増大が、従来型のレーダーの用途におけるパルス圧縮によって得られる実効的なゲインの増大に加えてのものであることを示すものであることは、留意されたい。
【0072】
図8を参照すると、
図8は、本開示の一実施形態による、ノイズ除去された入力信号のチャープレットのスペクトログラム800の一例である。
図8は、ノイズ除去されたリザーバ状態170a-170nからのチャープレット変換の読み取り値を示す。チャープレットのスペクトログラムにおける垂直の線、または標準スペクトログラム802における対角の線は、fsをADCのサンプリングレートとしたときの、31.831*10
-6fs
2の送信チャープ率106における、(シミュレートされた)受信レーダーリターンに相当する。Y軸は、レーダーリターン受信窓内の相対的な距離の測定値r
iを表す。絶対距離の測定値は、送信時点T
Txと受信時点T
Rxとの間の遅延から、上記のR
0及びR
iに関する方程式を用いて計算することができる。上記のとおり、信号のSNR比は、(実効的な)パルス圧縮(x軸に沿った積分)を通じてさらに増大させることができる。これが、リザーバコンピュータのノイズ除去によるSNRの増大が、パルス圧縮によって得られる実効的なゲインの増大に加えてのものであることを示すものであることは、留意されたい。
【0073】
図9は、本開示の一実施形態による、ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダーを用いて複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法900の一実施例のフロー図である。一実施例によると、方法900は、
図1のリザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132内に実装されていてよいか、またはこれらによって実行されてよい。その結果、リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、方法900によって規定される一式の機能を実行するように構成されている。
【0074】
ブロック902で、ノイズ入り入力信号が、認知レーダープロセッサによって受信される。ノイズ入り入力信号は、複数のターゲットから反射された複数のRF信号またはレーダー信号、及びノイズを含む。
【0075】
ブロック904で、ノイズ入り入力信号を分析するために、時変リザーバを含む予測フィルタリングが使用される。ブロック906で、予測信号パターンと予測不能なノイズパターンとを分離して予測不能なノイズパターンを特定するために、ノイズ入り入力信号が分析される。
【0076】
ブロック908で、予測不能なノイズパターンを相殺するため、ノイズ入り入力信号に対して逆相ノイズ信号が適用される。逆相ノイズ信号は、予測不能なノイズパターンに対応している。
【0077】
ブロック910で、予測信号パターンからの予測不能なノイズパターンの相殺に応答して、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号が生成される。
【0078】
ブロック912で、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号が、ターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングされる。
【0079】
図10は、本開示の一実施形態による、ビロウノイズ送信後(BAT)チャープレーダーを用いて複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法1000の一実施例のフロー図である。一実施例によると、方法1000は、
図1のリザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132内に実装され、これらによって実行される。その結果、リザーバコンピュータ126または認知レーダープロセッサ132は、方法1000によって規定される一式の機能を実行するように構成されている。
【0080】
ブロック1002で、ノイズ入り入力信号が受信される。
図1の例示的な実施形態によると、ノイズ入り入力信号124は、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた複数の反射信号116a-116nからの、時系列のデータ点である。しかし、他の周波数帯域もまた、サンプリングされ得る。
【0081】
ブロック1004で、ノイズ入り入力信号は、時変リザーバに対して、線形的にマッピングされる。時変リザーバは、複数の時変リザーバ状態を含む。ブロック1006で、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって、反射信号の高次元の状態空間表現または多次元の状態空間表現が作り出される。
【0082】
ブロック1008で、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号が生成される。
【0083】
ブロック1010で、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去が行われる。ブロック1012で、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムが生成される。
【0084】
ブロック1014で、ノイズ除去された時変スペクトログラムが、認知レーダープロセッサの出力層内で積分される。ブロック1016で、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムが、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングされる。
【0085】
さらに、本発明は、以下の条項による実施形態を含む。
【0086】
条項1:レーダーシステムであって、高周波(RF)信号またはレーダー信号を送信するための送信アンテナと、RF信号またはレーダー信号を反射する複数のターゲットによって作り出された複数の反射信号を受信するための受信アンテナであって、反射信号がノイズを含む、受信アンテナと、反射信号をデジタル化またはサンプリングして、デジタル化またはサンプリングされたノイズ入り入力信号を提供する、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)と、ノイズ入り入力信号を受信するリザーバコンピュータであって、時変リザーバを含み、ノイズ入り信号をノイズ除去して複数のターゲットのそれぞれに対する距離の測定値を提供するように構成されている、リザーバコンピュータと、を備えるレーダーシステム。
【0087】
条項2:RF信号またはレーダー信号が、チャープ波形またはステップチャープ波形を含む、条項1のレーダーシステム。
【0088】
条項3:リザーバコンピュータが認知レーダープロセッサを備え、認知レーダープロセッサが時変リザーバを備え、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含み、且つ、時変リザーバが、ノイズ入り入力信号の高次元の状態空間表現を作り出すために、ノイズ入り入力信号を各リザーバ状態に対して線形的にマッピングするように構成されている、条項1のレーダーシステム。
【0089】
条項4:認知レーダープロセッサが、遅延埋め込みモジュールであって、各時変リザーバ状態に対応するリザーバ状態信号を受信するように、且つ遅延埋め込みモジュールの所定の時間遅延に基づいて、ある短期間にわたる時変リザーバ状態の履歴、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成するように、構成された遅延埋め込みモジュールと、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を受信する重み適応モジュールであって、各時変リザーバ状態またはリザーバ状態信号に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号を生成するように構成されており、ノイズ除去されたリザーバ状態信号が、ノイズ除去された入力信号をもたらすためにノイズ除去中である、ノイズ入り入力信号に対応している、重み適応モジュールと、をさらに備える、条項3のレーダーシステム。
【0090】
条項5:重みづけ適応モジュールが、遅延埋め込み済みのリザーバ状態信号から、所定の未来の時点におけるノイズ入り入力信号の予測を生成するように、且つこのノイズ入り入力信号の予測を、勾配降下学習アルゴリズムを用いた各リザーバ状態信号のノイズ除去に使用するように構成されているレーダーシステムであって、重み適応モジュールの重みは、勾配降下学習アルゴリズムを用いて決定される、条項4のレーダーシステム。
【0091】
条項6.認知レーダープロセッサが、重み適応モジュールから、ノイズ除去されたリザーバ状態、またはノイズ除去された入力信号に対応するノイズ除去されたリザーバ状態信号を受信し、且つ、複数のターゲットからの反射信号を表す、ノイズ除去された入力信号のリアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを生成する、チャープレット変換モジュールであって、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号のそれぞれを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングするように構成されている、チャープレット変換モジュールをさらに備える、条項5のレーダーシステム。
【0092】
条項7.ノイズ除去されたリザーバ状態が、RF信号またはレーダー信号の送信チャープによってセットされたチャープ率における、時変フィルタのバンクを規定し、種々の時点で受信したチャープに対する時変フィルタの応答が、種々の周波数に対する、単極無限インパルス応答(IIR)フィルタのバンクの応答と同等である、条項6のレーダーシステム。
【0093】
条項8.ノイズ除去された入力信号の、リアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを積分して、積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを作成するため、及び積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを距離の測定値に対してマッピングするための、積分モジュールであって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の出力を積分または合計することを含むパルス圧縮によって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の信号対ノイズ比を増大するように構成されている、積分モジュールをさらに備える、条項6に記載のレーダーシステム。
【0094】
条項9.時変リザーバが、複数のノードを含む再帰ニューラルネットワークを含み、各ノードが時変リザーバ状態のうちの1つに対応している、条項5のレーダーシステム。
【0095】
条項10.時変リザーバが、信号のノイズ除去とハードウェア内での効率的な実装のために最適化された所定のブロック対角構造を含む、状態遷移行列を含む、条項9のレーダーシステム。
【0096】
条項11.遅延埋め込みモジュールが、時変の動態を可能にするための異なる状態遷移行列を有している、遅延埋め込み済みリザーバ状態ベクトルを含む、条項10のレーダーシステム。
【0097】
条項12.リザーバコンピュータが認知レーダープロセッサを含み、認知レーダープロセッサは、一式の機能を実行するように構成されており、この一式の機能は、ノイズ入り入力信号を受信することであって、ノイズ入り入力信号が、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた反射信号からの時系列のデータ点である、ノイズ入り入力信号を受信することと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることであって、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含む、ノイズ入り入力信号を線形的にマッピングすることと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すことと、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することと、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことと、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することと、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む、条項1のレーダーシステム。
【0098】
条項13.時変リザーバであって、複数の時変リザーバ状態を含み、ノイズ入り入力信号を各リザーバ状態に対して線形的にマッピングして、ノイズ入り入力信号の、高次元の状態空間表現を作り出すように構成されている、時変リザーバと、遅延埋め込みモジュールであって、各時変リザーバ状態に対応するリザーバ状態信号を受信するように、且つ遅延埋め込みモジュールの所定の時間遅延に基づいて、ある期間にわたる時変リザーバ状態の履歴、またはリザーバ状態の動態を表す、各時変リザーバ状態に対応する遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成するように、構成された遅延埋め込みモジュールと、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を受信する重み適応モジュールであって、各時変リザーバ状態またはリザーバ状態信号に関して、ノイズ除去されたリザーバ状態信号を生成するように構成されており、ノイズ除去されたリザーバ状態信号が、ノイズ除去された入力信号をもたらすためにノイズ除去中である、ノイズ入り入力信号に対応している、重み適応モジュールと、をさらに備える、認知レーダープロセッサ。
【0099】
条項14.重みづけ適応モジュールが、遅延埋め込み済みのリザーバ状態信号から、所定の未来の時点におけるノイズ入り入力信号の予測を生成するように、且つこのノイズ入り入力信号の予測を、勾配降下学習アルゴリズムを用いた各リザーバ状態信号のノイズ除去に使用するように構成されている認知レーダープロセッサであって、重み適応モジュールの重みは、勾配降下学習アルゴリズムを用いて決定される、条項13の認知レーダープロセッサ。
【0100】
条項15.認知レーダープロセッサが、重み適応モジュールから、ノイズ除去されたリザーバ状態、またはノイズ除去された入力信号に対応するノイズ除去されたリザーバ状態信号を受信し、且つ、複数のターゲットからの反射信号を表す、ノイズ除去された入力信号のリアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを生成する、チャープレット変換モジュールであって、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号のそれぞれを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングするように構成されている、チャープレット変換モジュールをさらに備える、条項14の認知レーダープロセッサ。
【0101】
条項16.ノイズ除去された入力信号の、リアルタイムのノイズ除去されたスペクトログラムを積分して、積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを作成するため、及び積分されたノイズ除去されたスペクトログラムを距離の測定値に対してマッピングするための、積分モジュールであって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の出力を積分または合計することを含むパルス圧縮によって、各ノイズ除去されたリザーバ状態信号の信号対ノイズ比を増大するように構成されている、積分モジュールをさらに備える、条項15に記載の認知レーダープロセッサ。
【0102】
条項17.一式の機能を実行するように構成されている認知レーダープロセッサであって、この一式の機能は、ノイズ入り入力信号を受信することであって、ノイズ入り入力信号が、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた複数の反射信号からサンプリングされた時系列のデータ点である、ノイズ入り入力信号を受信することと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることであって、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含む、ノイズ入り入力信号を線形的にマッピングすることと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すことと、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することと、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことと、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することと、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む、条項13の認知レーダープロセッサ。
【0103】
条項18.認知レーダープロセッサによってノイズ入り入力信号を受信することであって、ノイズ入り入力信号が、複数のターゲットから反射された複数のRF信号またはレーダー信号を含む、ノイズ入り入力信号を受信することと、時変リザーバを含む予測フィルタリングを用いて、ノイズ入り入力信号を分析することと、ノイズ入り入力信号を分析して、予測信号パターンと予測不能なノイズパターンとを分離することと、ノイズ入り入力信号に対して、予測不能なノイズパターンに対応している逆相ノイズ信号を適用して、予測不能なノイズパターンを相殺することと、予測不能なノイズパターンの相殺に応答して、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を生成することと、増強されたRF信号またはリターンレーダー信号を、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む、複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法。
【0104】
条項19.ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることであって、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含む、ノイズ入り入力信号を線形的にマッピングすることと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すことと、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することと、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことと、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することと、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む、条項18の方法。
【0105】
条項20.認知レーダープロセッサによってノイズ入り入力信号を受信することであって、ノイズ入り入力信号が、約30GHzを超える帯域幅からサンプリングされた複数のターゲットからの複数の反射信号からの時系列のデータ点である、ノイズ入り入力信号を受信することと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバに対して線形的にマッピングすることであって、時変リザーバが複数の時変リザーバ状態を含む、ノイズ入り入力信号を線形的にマッピングすることと、ノイズ入り入力信号を時変リザーバの時変リザーバ状態と結合することによって反射信号の高次元の状態空間表現を作り出すことと、リザーバ状態の動態の有限時間レコードまたは時変リザーバ状態の履歴を与える各時変リザーバ状態から、遅延埋め込み済みリザーバ状態信号を生成することと、ノイズが取り除かれてノイズなしの反射信号に相当する信号が残るように、ノイズ入り入力信号のノイズ除去に対応する各時変リザーバ状態のノイズ除去を行うことと、ノイズ除去されたリザーバ状態またはノイズ除去されたリザーバ状態信号から、ノイズ入り入力信号の、リアルタイムのノイズ除去された時変スペクトログラムを生成することと、認知レーダープロセッサの出力層内で、ノイズ除去された時変スペクトログラムを積分することと、積分されたノイズ除去された時変スペクトログラムを、複数のターゲットのそれぞれの距離の測定値に対してマッピングすることと、を含む、複数のターゲットのそれぞれまでの距離を測定する方法。
【0106】
図面中のフロー図及びブロック図は、本開示の様々な実施形態による、システム、方法及びコンピュータプログラム製品の、考えられる実装における、アーキテクチャ、機能性、及び操作を示すものである。この点に関して、フロー図またはブロック図中の各ブロックは、特定の1つ以上の論理機能を実装するための1つ以上の実行可能な命令を含む、命令のモジュール、セグメント、または部分を表わしていてよい。いくかの代替的な実装では、ブロックに記載された機能は、図面に記載された順序を逸脱して現われてよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、関わっている機能に応じて、ほぼ同時に実行されてよいか、または、時には逆順で実行されてよい。ブロック図及び/またはフロー図の各ブロック、並びに、ブロック図及び/またはフロー図におけるブロックの組み合わせは、特定の機能もしくは動作を実施する特定用途のハードウェアベースのシステムによって実行され得るか、または、特定用途ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実行され得ることも、留意されるであろう。
【0107】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示の実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「一つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限りは、複数形も含むことが意図されている。さらに、「備える(comprises及び/またはcomprising)」という用語は、この明細書中で使用される場合、記載されている特徴、実体、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するものであるが、それら以外の1つ以上の特徴、実体、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはこれらのグループの、存在または追加を排除するわけではないことは、理解されよう。
【0108】
以下の特許請求の範囲にある、すべての手段またはステッププラス機能要素の、該当する構造、材料、作用、及び均等物は、具体的に特許請求されている、他の特許請求されている要素と組み合わされてその機能を果たすための、いかなる構造、材料、または作用をも含むことが、意図されている。本実施形態の説明は、例示及び説明の目的で提示されているものであり、網羅的な説明であること、または本発明を開示の形態に限定することは、意図されていない。当業者には、実施態様の範囲及び主旨から逸脱することなく、多数の修正例及び変形例が明白になるだろう。
【0109】
本明細書では特定の実施形態が例示され説明されているが、例示されている特定の実施形態が、同じ目的を達成するように計算された任意の設定に置き換えられ得ること、また実施形態が他の環境において他の用途を有することは、当業者に認識されるであろう。本出願は、あらゆる改変例または変形例も対象とすることが意図されている。下記の請求項は、本開示の実施形態の範囲を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図していない。