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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20230410BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20230410BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20230410BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20230410BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20230410BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W10/04
B60W10/18
B60W10/00 132
B62D6/00
B60T7/12 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019125756
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021011168
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三品 陽平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健文
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-036856(JP,A)
【文献】特開2016-071566(JP,A)
【文献】特開2009-051430(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145555(WO,A1)
【文献】特開平07-009969(JP,A)
【文献】特開2018-203108(JP,A)
【文献】特開2018-103645(JP,A)
【文献】特開2019-119237(JP,A)
【文献】特開2019-043344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0107682(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00
B62D 6/00
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、プロセッサとを備えた運転制御装置において使用される、自車両の運転を制御する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記センサの検知情報に基づいて前記自車両が回避すべき障害物を検知した場合には、
前記自車両の運転の制御において、操舵制御による横位置の移動を開始することが可能な、予め定義された前記自車両の前方の基準位置に、前記障害物を回避するための回避制御を開始する横位置変更開始位置を設定し、
予め規定された回避条件に従い、前記横位置変更開始位置から前記障害物を回避して前記回避制御が完了する完了位置を算出し、
前記完了位置が、前記障害物の位置に基づいて定義された所定の目標位置に属さないと判断された場合には、前記操舵制御の開始前に前記自車両を減速させる減速制御を含む運転計画を算出する運転制御方法。
【請求項2】
前記完了位置が、前記障害物の位置に基づいて定義された所定の目標位置に属すると判断された場合には、前記操舵制御の開始前に前記自車両を減速させる減速制御を含まない運転計画を算出する請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記基準位置は、前記障害物を回避するための前記回避制御における制御指令値が設定される制御目標位置である請求項1又は2に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記制御目標位置は、
前記自車両の位置を基準として設定され、前記自車両の車速が高いほど、前記自車両の位置に対する相対距離が大きい位置に設定される請求項3に記載の運転制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記障害物よりも前記自車両に近い位置に仮想停止目標地点を設定し、
前記仮想停止目標地点で前記自車両を停止させる場合の減速度で前記自車両を減速させる請求項1~4の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記回避条件において定義された制動減速度以下の減速度により前記自車両を減速させる請求項1~5の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記完了位置が前記目標位置に属さないと判断された場合には、前記自車両の横移動速度を高く設定する運転計画を算出する請求項1~6の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記予め規定された回避条件に従い、前記横位置変更開始位置からの所定の回避軌跡を算出し、前記回避軌跡に基づいて前記完了位置を算出する請求項1~7のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記自車両の目標速度を第1目標速度に減速させた場合の第1補正回避軌跡を算出し、
前記第1補正回避軌跡の完了位置が、前記目標位置に属すると判断された場合には、前記第1補正回避軌跡に従って前記自車両を走行させる運転計画を算出し、
前記第1補正回避軌跡の完了位置が、前記目標位置に属さないと判断された場合には、前記自車両を前記第1目標速度よりも低い第2の目標速度に減速させる運転計画を算出する請求項8に記載の運転制御方法。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記自車両を減速させた場合に算出される前記回避軌跡の長さが、前記自車両を減速させる前に算出される前記回避軌跡の長さよりも短くなるように前記回避軌跡を補正し、
前記補正された前記回避軌跡に基づいて前記運転計画を算出する請求項8又は9に記載の運転制御方法。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記自車両の走行経路の進行方向に沿う前記目標位置の第1位置を、前記走行経路の進行方向に沿う前記障害物の位置に基づいて設定する請求項1~10の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記自車両が走行する走行経路の進行方向に沿う前記目標位置の第1位置を、
前記走行経路の進行方向に沿って上流側に位置する前記障害物の後端部から前記上流側に第1閾値以下の距離にある位置として設定する請求項1~10の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記予め規定された回避条件に従い、前記横位置変更開始位置からの所定の回避軌跡を算出し、
前記障害物の外縁のうち前記回避軌跡と最も接近する位置と、前記回避軌跡を走行する前記自車両の位置との距離に基づいて前記第1位置を設定する請求項11又は12に記載の運転制御方法。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記自車両の横移動速度、前記自車両が走行するレーンの車線幅、及び前記障害物と前記自車両が走行する走行経路の車線との距離のうちの何れか一つ以上の情報に基づいて前記第1位置を設定する請求項11~13の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記予め規定された回避条件に従い、前記横位置変更開始位置からの所定の回避軌跡を算出し、
前記自車両が走行する走行経路の路幅に沿う前記目標位置の第2位置を、
前記回避軌跡の側の前記障害物の側面から第2閾値以上離隔した位置として設定する請求項1~14の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記障害物の外縁のうち前記回避軌跡と最も接近する位置と、前記回避軌跡を走行する前記自車両の位置との距離に基づいて前記第2位置を設定する請求項15に記載の運転制御方法。
【請求項17】
前記プロセッサは、
前記自車両を減速させる減速制御を含む運転計画を算出する場合に、前記自車両が走行する車線の中に存在するときに減速するように運転計画を算出する請求項1~16の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項18】
前記プロセッサは、
前記減速制御において、前記自車両が走行する車線と隣接する他の車線の存在する方向に向くように前記自車両の姿勢を制御する姿勢制御を含む運転計画を算出する請求項1~17の何れか一項に記載の運転制御方法。
【請求項19】
自車両の周囲の障害物に関する情報を検知するセンサと、
前記自車両の運転を制御するプロセッサと、を備え、前記自車両の運転を制御する運転制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記センサの検知情報に基づいて前記自車両が回避すべき障害物を検知した場合には、
前記自車両の運転の制御において、操舵制御による横位置の移動を開始することが可能な、予め定義された前記自車両の前方の基準位置に、前記障害物を回避するための回避制御を開始する横位置変更開始位置を設定し、
予め規定された回避条件に従い、前記横位置変更開始位置から前記障害物を回避して前記回避制御が完了する完了位置を算出し、
前記完了位置が、前記障害物の位置に基づいて定義された所定の目標位置に属さないと判断された場合には、前記操舵制御の開始前に前記自車両を減速させる減速制御を含む運転計画を算出する運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の両側にリスクがある場面を想定し、自車両の左に存在する第1危険度と自車両の右に存在する第2危険度を算出し、第1危険度に基づいて自車両の左に第1制御閾値を設定し、第2危険度に基づいて自車両の右に第2制御閾値を設定し、第1危険度と第2危険度に基づいて、第1制御閾値又は第2制御閾値を変更する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-70069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、障害物を回避するために十分な余裕領域が確保できない状況において、検出結果に基づいて回避軌跡を補正すると、補正後の回避軌跡の変化量が大きくなるという不都合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、障害物を回避するために十分な余裕領域が確保できない状況であっても、緩やかな回避軌跡で障害物を回避することができる運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、操舵制御による横位置の移動が開始可能な、自車両の前方の基準位置に横位置変更開始位置を設定し、所定の回避条件に従い、障害物の回避制御が完了する完了位置を算出し、算出された完了位置が障害物に対して定義された所定の目標位置に属さないと判断された場合には、操舵制御が開始される前に、自車両の目標速度を減速させる減速制御を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、算出された回避制御の完了位置が目標位置に属さないと判断された場合には、操舵制御の開始前に自車両を減速させることにより、回避制御の完了位置を算出できるので、十分な余裕領域が確保できない状況であっても、緩やかな動きで自車両に障害物を回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る運転制御システムのブロック構成図である。
図2】本実施形態に係る運転制御システムの処理手順を説明するためのフローチャートである。
図3】本実施形態に係る運転制御装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図4】回避制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5(A)(B)は、完了位置の設定手法を説明するための図である。
図6図6(A)(B)は、回避軌跡の再算出の処理を説明するための図である。
図7】基準位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の実施形態に係る車両の運転制御装置を、車両に搭載された運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。本実施形態の運転制御装置の実施の形態は限定されず、車両コントローラと情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。運転制御装置、運転制御システム及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行する運転制御用のコンピュータである。
【0010】
図1は、運転制御システム1000のブロック構成を示す図である。本実施形態の運転制御システム1000は、運転制御装置100と車両コントローラ200とを備える。本実施形態の運転制御装置100は通信装置111を有し、車両コントローラ200も図外の通信装置を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。
【0011】
運転制御システム1000は、センサ1と、ナビゲーション装置2と、読み込み可能な記録媒体に記録された地図情報3と、自車情報検出装置4と、環境認識装置5と、物体認識装置6と、運転制御装置100と、車両コントローラ200とを備える。各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0012】
センサ1は、自車両の周囲(前方、側方、後方の全周囲)の障害物の存在を含む走行環境に関する情報を検知する。センサ1は、カメラを含む。本実施形態のカメラは、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラである。本実施形態のカメラは自車両に設置され、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する対象車両を含む画像データを取得する。カメラは、自車両周囲の環境情報を認識するための装置であり、イメージセンサのみならず、超音波カメラ、赤外線カメラなどを含む。センサ1は、測距センサを含む。測距センサは、自車両と対象物との相対距離および相対速度を演算する。測距センサにより検出された対象物の情報は、プロセッサ10に向けて出力される。測距センサとしては、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。センサ1は、一又は複数のカメラ、測距センサを採用することができる。本実施形態のセンサ1は、カメラの検知情報と測距センサの検知情報など複数の異なるセンサ情報を統合し、もしくは合成することにより補完し、自車両周囲の環境情報とするセンサフュージョン機能を備える。このセンサフュージョン機能は、環境認識装置5や物体認識装置6やその他のコントローラやロジックに組み込まれるようにしてもよい。
【0013】
対象物は、車線境界線、センターライン、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限を含む。対象物は、自車両以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、歩行者を含む。対象物は、障害物を含む。障害物は、自車両の走行に影響を与える対象物である。センサ1は、少なくとも障害物に関する情報を検知する。
【0014】
ナビゲーション装置2は、地図情報3を参照し、自車情報検出装置4により検出された現在位置から目的地までの走行レーン/経路を算出する。
【0015】
地図情報3は、運転制御装置100、車載装置、又はサーバ装置に設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記録される。地図情報3は、経路算出及び/又は運転制御に用いられる。地図情報3は、道路情報、施設情報、それらの属性情報を含む。道路情報及び道路の属性情報には、道路幅、曲率半径、路肩構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)、道路の合流地点、分岐地点、車線数の増加・減少位置等の情報が含まれている。本実施形態の地図情報3は、いわゆる高精細地図情報である。高精細地図情報によれば、レーンごとの移動の軌跡(走行経路)を把握できる。高精細地図情報は、各地図座標における二次元位置情報及び/又は三次元位置情報、各地図座標における道路・レーンの境界情報、道路属性情報、レーンの上り・下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報を含む。
【0016】
自車情報検出装置4は、自車両の状態に関する検知情報を取得する。自車両の状態とは、自車両の現在位置、速度、加速度、姿勢、車両性能を含む。これらは、自車両の車両コントローラ200から取得してもよいし、自車両の各センサから取得してもよい。自車情報検出装置4は、自車両のGPS(Global Positioning System)ユニット、ジャイロセンサ、オドメトリから取得した情報に基づいて自車両の現在位置を取得する。自車情報検出装置4は、自車両の車速センサから自車両の速度・加速度を取得する。自車情報検出装置4は、自車両の慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)から自車両の姿勢データを取得する。
【0017】
環境認識装置5は、センサ1が取得した位置情報、自車両周囲の画像情報及び測距情報から得られた物体認識情報、及び地図情報に基づいて構築された環境に関する情報を認識する。環境認識装置5は、複数の情報を統合することにより、自車両の周囲の環境情報を生成する。物体認識装置6も、地図情報3を用いて、センサ1が取得した自車両周囲の画像情報及び測距情報を用いて、自車両周囲の物体の認識や動きを予測する。
【0018】
車両コントローラ200は、電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の運転を律する駆動機構210を電子的に制御する。車両コントローラ200は、駆動機構に含まれる駆動装置、制動装置、および操舵装置を制御して、自車両を目標経路に従って走行させる。
駆動機構には、走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、動力伝達装置を制御する駆動装置、及び車輪を制動する制動装置などが含まれる。車両コントローラ200は、アクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ200又は運転制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転制御を実行させる。駆動機構210に制御情報を送出することにより、車両の加減速を含む運転制御を自律的に行うことができる。
【0019】
車両コントローラ200は、地図情報3が記憶するレーン情報、環境認識装置5が認識した情報、及び物体認識装置6で取得した情報の内の何れか一つ以上を用いて、自車両が走行経路(軌跡)に対して所定の横位置を維持しながら走行するように操舵装置の制御を行う。本明細書における走行経路は、自車両の走行する軌跡に対応する経路であり、道路、道路の上り/下り、道路の車線ごとに識別可能である。操舵装置は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置は、車両コントローラ200から取得した制御信号、又は運転者のステアリング操作により入力信号に基づいて車両の操舵制御を実行する。
【0020】
以下、本実施形態の運転制御装置100について説明する。運転制御装置100は、自車両の運転を制御することにより、自車両の走行を支援する制御を実行する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の運転制御装置100は、プロセッサ10を備える。
プロセッサ10は、自車両の運転制御を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、運転制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記録装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。本実施形態のプロセッサ10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。プロセッサ10は、通信装置111を備える出力装置110を備え、各種の出力又は入力の指令、情報の読み込み許可又は情報提供の指令を車両コントローラ200、各構成2-6へ送出する。プロセッサ10は、センサ1、上述した各構成2-6、及び車両コントローラ200と相互に情報の授受を行う。
【0022】
プロセッサ10は、目的地設定機能120と、経路プランニング機能130と、運転計画機能140と、運転可能ゾーン算出機能150と、経路算出機能160と、運転行動制御機能170と備える。本実施形態のプロセッサ10は、上記各機能を実現する又は各処理を実行するためのソフトウェアと、上述したハードウェアとの協働により各機能を実行する。
【0023】
プロセッサ10の各機能の実現による制御手順の内容を図2に基づいて説明する。
図2のステップ1において、プロセッサ10の目的地設定機能120は、自車情報検出装置4の検出結果に基づいて自車両の現在位置を取得する処理を実行させ、ステップS2において、自車両の目的地を設定する処理を実行させる。目的地はユーザが入力したものであってもよいし、予測されたものであってもよい。ステップ3において、経路プランニング機能は地図情報3を含む各種検出情報を取得する。ステップS4において、経路プランニング機能130は、目的地設定機能120が設定した目的地に対する走行経路を設定する。経路プランニング機能130は地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて、走行経路を設定する。この経路プランニング機能130は走行する道路を設定するが、道路に限らず、道路内において自車両が走行する車線を設定する。ステップS5において、運転計画機能140は、経路上の各地点における自車両の運転行動を計画する処理を実行させる。運転計画は、各地点における進行(GO)、停止(No-GO)といった運転行動が規定される。例えば、交差点を右折する場合では、停止線の位置で停止するのか否かの判定や、対向車線の車両に対する進行判定を実行する。ステップ6において、ステップ5で計画した運転行動を実行するために、運転可能ゾーン算出機能150は、地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて、自車両の周囲で走行可能な領域を算出する処理を実行する。ステップ7において、運転行動制御機能170は、自車両が走行する走行軌跡を算出する処理を実行させる。それに加えて、運転行動制御機能170は、走行軌跡に沿って走行する時の目標速度/減速度、目標加減速度、それらのプロファイルを決定する。なお、決定した目標速度/減速度、目標加減速度を、走行軌跡の算出処理にフィードバックして、車両の挙動及び車両の乗員が感じる動き(挙動)を抑制するように、走行軌跡を生成するようにしてもよい。決定した走行軌跡を目標速度/減速度、目標加減速度を算出する処理にフィードバックして、車両の挙動及び車両の乗員が感じる動き(挙動)を抑制するように、目標速度/減速度、目標加減速度を算出するようにしてもよい。ステップ8において、算出された走行軌跡を自車両に走行させる運転計画を立案する処理を実行させる。そして、ステップ9において、プロセッサ10の出力装置110は、通信装置111を介して運転計画に基づく制御指令、制御指令値を車両コントローラ200に出力し、各種アクチュエータである駆動機構210を動作させる。
【0024】
図3は、制御指令を取得した車両コントローラ200が実行する処理手順の概要を示す。本実施形態の運転制御システム1000は、自律走行制御を実行する自律走行モードと、自律走行制御を実行しないでドライバの運転操作による手動走行モードとが選択可能とされている。たとえば、自律走行モードを選択することで自律走行制御の実行が開始され、自律走行モードの終了を選択することで自律走行制御が終了して手動走行モードに遷移する。また、自律走行制御の実行中に、ハンドル操作、ブレーキ操作又はアクセル操作といったドライバによる操作介入がされると、こうした手動操作を自律走行制御に対して優先する。
そのため、車両コントローラ200には、自律運転階層からの指令値が入力される(ステップS11)とともに、ドライバのマニュアル操作に基づく指令値も、並行して入力される(ステップS12)。自律運転階層からの指令値としては、上述したプロセッサ10からの指令値である。車両コントローラ200は、プロセッサ10からの指令値と、手動操作に基づく指令値とを調整し(ステップS13)、縦力Fx及び横力Fyを入力する(ステップS14)。ステップS13の調整は、たとえば手動操作を自律走行制御に対して優先するといった内容が定義される。そして、縦力Fx及び横力Fyに基づいて、自車両が目標とする走行経路に追従して自律的に走行するように、車体の挙動が制御されるとともに(ステップS15)、車輪の挙動が制御される(ステップS16)。その結果、これらの制御に基づいて、車体の駆動機構210の駆動アクチュエータ、制動アクチュエータの少なくとも一方、必要に応じてステアリングアクチュエータが自律的に動作する(ステップS17)。
【0025】
本実施形態の運転制御装置100は、操舵制御による横位置の移動の開始が可能な位置であり、自車両V1の前方の基準位置に横位置変更開始位置を設定し、横位置変更開始位置から障害物VPを回避して、回避制御が完了する完了位置を算出する。
基準位置は、自車両V1の前端VS1から前方の距離D1に応じて設定される。本実施形態では、基準位置V01に横位置変更開始位置が設定される。特に限定されないが、自車両V1の前端VS1からの距離D1を前方注視点距離に対応させ、基準位置V01を前方注視点に対応させてもよい。また、横位置変更開始位置は、位置座標値によって定義される絶対位置として定義してもよいし、自車両V1を基準として設定された制御位置、例えば、自車両V1から所定距離だけ離隔した位置などの自車両V1の位置を基準として設定された相対的な位置として定義してもよい。この点については後述する。
【0026】
完了位置は、横位置変更開始位置よりも、自車両V1が走行する走行経路(以下、単に「走行経路」ともいう。)の進行方向の前方に位置する。算出された回避制御の完了位置が所定の目標位置に属さないと判断された場合には、操舵制御(横位置の移動又は変更)が開始される前に、自車両V1の目標速度を減速させる運転計画を算出する処理を行う。完了位置は、横位置変更開始位置から障害物VPを回避する回避軌跡を算出し、回避軌跡上に求めることができる。プロセッサ10は、算出した回避軌跡において、障害物VPの回避が完了したと判断できる位置を完了位置として求めることができる。障害物VPの回避が完了したか否かの判断は、障害物VPの占有領域よりも前方(図中+X方向)に自車両V1が存在する、又は車線変更などにより障害物VPの占有領域よりも側方(図中-Y方向)に自車両V1が存在するという判断を用いることができる。
【0027】
本実施形態の運転制御装置100のプロセッサ10は、センサ1から自車両V1の前方に存在する障害物に関する検知情報を取得し、その障害物を回避させるための回避制御を自車両V1に実行させる。本実施形態における回避制御においては、自車両V1に回避軌跡を走行させることで、障害物との間に所定のマージンを保持した状態(所定の距離だけ離隔した状態)で障害物を追い越して前進する。本実施形態における「前進」「前方」「前」は、自車両V1が走行する走行経路の進行方向を示す。回避軌跡は、運転制御における走行経路の一部を構成する。走行経路は、自車両V1の目的地に至る経路である。走行経路は、回避軌跡の前又は後に、これに連なる自車両V1を右左折させる転舵軌跡を含む経路であってもよいし、回避経路の後に、別の回避経路を含む経路であってもよい。
【0028】
図4は、プロセッサ10により実行される回避制御の制御手順を示すフローチャートである。本制御手順は、図2のステップS6に続けて実行される。プロセッサ10は、障害物VPの情報を取得する(ステップS101)。ここで取得する障害物VPの情報は、自車両V1の走行に影響を与える障害物VPの情報である。プロセッサ10は、自車両V1の進行方向の前方(図中X方向)に存在し、回避対象となる障害物VPを特定する(ステップS102)。プロセッサ10は、特定された障害物VPに関する検知情報を取得する。
【0029】
プロセッサ10は、センサ1の検知情報に基づいて自車両V1が回避すべき障害物VPを検知した場合に、ステップS103以降の処理を行う。ステップS103において、プロセッサ10は、予め定義された自車両V1の前方の基準位置よりも自車両Vの進行方向に沿って下流側(図中X方向)に、横位置を変更することにより障害物VPを回避するための横位置変更(車線変更)に関する回避制御を開始する横位置変更開始位置を設定する。
【0030】
図5(A)に基準位置、横位置変更開始位置、完了位置の設定手法の一例を示す。同図に示すように、プロセッサ10は、自車両V1の現在位置VS1よりも距離D1だけ前方の位置に基準位置V01を設定する。特に限定されないが、プロセッサ10は、自車両V1の車速に基づいて基準位置V01を算出する。プロセッサ10は、自車情報検出装置4から自車両V1の車速を取得し、自車両V1の車速に基づいて基準距離D1を算出し、自車両V1から進行方向の下流側に向かって、つまり、図中X方向に沿って基準距離D1の基準位置V01を設定する。基準位置V01は、図中X軸の値が共通する位置群である(X=V01)。基準位置V01は、自車両V1の位置から自車両V1のドライバが注視する位置(前方注視点)までの距離(いわゆる前方注視点距離)に対応する。また、基準位置V01は、自車両V1が緩やかな回避軌跡で障害物VPを回避できる自車両V1と障害物VPとの距離ともいえる。ここで、緩やかな回避軌跡とは、回避軌跡の曲線部分について、最大曲率半径が所定値以下、その平均値が所定値以下、曲率半径の変化率が所定値以上など、線形としての回避軌跡の変化量が大きいことを意味する。
【0031】
なお、基準位置V01は、車両制御の制御遅れや制御応答性を考慮して、自車両V1が将来のタイミングにおいて存在する位置(前進走行中は自車両の前方の位置)における制御量を設定するための制御目標位置である。この制御目標位置は、指令値を出力して実際に制御が実行され始める(制御が働き始める)までの時間に自車両V1が進む距離に依存するため、自車両V1の車速が高いほど、自車両V1に対する相対位置(相対距離)が大きくなり、自車両V1から離隔させた位置に設定される。例えば、予め決定された設定位置(絶対位置/座標定義位置)から制御を働かせるとした場合には、自車両V1の車速が高いほど、その決められた設定位置から手前に離隔させた位置から指令値を出力する必要があり、また車速が低いほど、決められた設定位置に近い位置で指令値を出力することができる。情報の伝達には時間を要するからである。一般的に、この基準位置V01は、車速により変化する前方注視点を用いるが、本実施形態に関する基準位置V01は必ずしも前方注視点に限られない。
【0032】
一般に、車速が高いほど乗員は遠くを注視し、車速が低いほど乗員は近くを注視するという傾向がある。乗員の視点/注意力に応じて、回避制御が行われることが好ましいという観点から、プロセッサ10は、自車両V1の車速が高いほど、長い基準距離D1(前方注視点距離)を設定し、自車両V1の車速が低いほど、短い基準距離D1(前方注視点距離)を設定する。
自車両V1から基準距離D1にある領域は、自車両V1の乗員にとって運転環境を認知しやすい領域である。特に限定されないが、基準距離D1は、自車両V1の車速(V[km/s])が高いほど高くなるように設定することができる。この関係は比例関係により定義されてもよいし、その他の増加関数により定義されてもよい。プロセッサ10のROM12は、車速Vと基準距離D1との関係を定義するマップを記録する。プロセッサ10は、自車情報検出装置4から車速Vの情報を取得し、マップを参照して車速Vに応じた基準距離D1を算出する。
【0033】
また、基準距離D1は、自車両V1の指令に対する応答必要時間を考慮して決定されることが好ましい。応答必要時間とは運転操作による指令の入力から動作までの時間である。例えば、反応必要時間は、操舵指令の入力から車両の横位置が変化するまでの時間である。反応必要時間は、駆動制御に要する時間、通信に要する時間、指令が実行されるまでの時間などを加算した時間である。これにより、車両性能を考慮した基準距離D1を設定することができる。
上述したように、自車両V1から基準距離D1にある領域は、自車両V1の乗員にとって運転環境を認知しやすい領域であるため、運転制御装置100は、基準距離D1だけ先の地点における運転の制御指令を、現時点で出力することがある。このように、離隔した位置における運転の制御指令を先んじて出力することにより、回避軌跡の変化量を低減することができる。
【0034】
基準位置V01を決定した後、同ステップS103において、プロセッサ10は、基準位置V01よりも自車両V1の進行方向に沿って下流側(図中X方向)に、障害物VPを回避するための回避制御を開始する横位置変更開始位置StP1を設定する。回避軌跡RT11は、回避制御の実行が開始される、横位置変更開始位置StP1から、障害物VPを回避する経路(障害物VPの側方の経路)を辿り、完了位置EdP2に至る経路である。回避軌跡RT11は、自車両V1の目的地に至る走行経路RT1の一部を構成する。
【0035】
ステップS104において、プロセッサ10は、予め記録されている回避条件を取得する。回避条件は、予め定義され、少なくとも一時的に記録できる記録媒体に格納される。特に限定されないが、回避条件は、回避軌跡と障害物VPとの位置関係(マージン)、回避軌跡の最小曲率半径の下限/最大曲率の上限、目標速度、目標加速度、目標横移動速度、及び/又は目標横移動加速度などの目標とする移動速度又はその範囲、移動速度の制限値を含む。
上記回避条件における速度、加速度、横移動速度、横移動加速度は、自車両V1と障害物VPとの距離、道路の曲率、道路幅、現在の速度、運転制御の対象となる自車両V1の車種(運転性能)に応じて設定される。
【0036】
ステップS105において、プロセッサ10は、予め規定された回避条件に従い、回避制御における横位置変更開始位置StP1から、障害物VPを回避して完了位置に至る回避軌跡RT11を算出する。プロセッサ10は、横位置変更開始位置StP1から横位置の変更を開始して、回避条件において予め設定されている最小曲率半径(最小回転半径)、自車両V1に発生する許容横加速度の上限値に基づいて自車両V1が障害物VPの側方(隣接する車線)へ移動する回避軌跡の算出を試みる。回避軌跡は、自車両V1が走行中のレーンLN01の横位置変更開始位置StP1から、隣接するレーンLN02へ横位置を-Y方向に移動させることにより車線変更し、障害物VPの側方へ移動する軌跡である。回避軌跡の算出手法は特に限定されず、出願時において知られた車両の移動軌跡(運転軌道)の算出手法を適宜に用いることができる。
【0037】
ステップS106において、プロセッサ10は、回避軌跡における完了位置を算出する。完了位置は、自車両V1が障害物VPの回避が完了したと判断できる位置である。障害物VPの回避は、自車両V1の車幅方向/レーン幅方向の横位置が、障害物VPの存在する横位置と異なる状態を経て実現される。このため、完了位置は、自車両V1と障害物VPとの車幅方向/レーン幅方向(横方向:図中Y方向)の距離が所定値以上である位置と定義できる。自車両V1と障害物VPとの車幅方向の距離(横位置:図中Y方向の距離)が所定値以上であれば、自車両V1は障害物VPを回避した状態であると判断できる。
【0038】
ステップS107において、プロセッサ10は、完了位置を評価するための目標位置を設定する。目標位置は、一の座標点(X,Y)によって特定された地点であってもよいし、X方向における範囲(座標値域)が限定された領域であってもよいし、Y方向における範囲(座標値域)が限定された領域であってもよいし、X方向の領域及びY方向の領域が定義された領域であってもよい。
【0039】
目標位置の設定手法は特に限定されないが、図5(A)に示すように、自車両V1が隣接するレーンを通過することにより、前方の障害物VPを回避する場合には、完了位置は障害物VPが存在するレーンLN01に隣接するレーンLN02との位置関係、例えば自車両V1の全部又は所定の部位がレーンLN02に属した状態であると判断してもよい。自車両V1の基準位置が隣接レーンLN02の略中央に属した場合として定義してもよい。自車両V1と障害物VPの存在するレーンLN01に隣接するレーンLN02に中央に移動していれば、自車両V1と障害物VPとの横位置は重複せず、自車両V1は障害物VPを回避した状態であると言える。図5(A)に示す例では、自車両V1は完了地点EdP1において障害物VPを回避した状態と判断できる。図5(B)に示す例では、自車両V1は完了地点EdP2において障害物VPを回避した状態と判断できる。
【0040】
本実施形態のプロセッサ10は、完了位置の横位置(Y座標)のみではなく、完了位置の縦位置(X座標)の位置も取得する。完了位置の縦位置は、自車両V1の進行方向に沿う位置である。完了位置の横位置は、自車両V1が障害物VPを回避したか否かの判断において参照され、完了位置の縦位置は、自車両V1が障害物VPを回避したタイミングの判断において参照される。
【0041】
本実施形態の目標位置の自車両V1の進行方向に沿う第1位置は、障害物VPの進行方向に沿う2つの位置(縦位置:図中X座標値)に基づいて特定される領域(範囲)である。目標位置の縦位置の領域(範囲)を障害物VPの縦位置に基づいて設定することにより、自車両V1が回避対象とする障害物VPの位置に応じて目標位置を設定し、この目標位置に応じて完了位置を設定できる。その結果、自車両V1が障害物VPの回避を完了するタイミングを適切に設定することができる。これにより、自車両V1に対する障害物VPの位置に応じた完了位置を有する回避軌跡を算出できる。
【0042】
特に限定されないが、目標位置の第1位置は、進行方向に沿う障害物VPの位置よりも上流側であることが好ましい。プロセッサ10は、目標位置の第1位置を、進行方向に沿う障害物VPの位置よりも下流側に設定しないようにしてもよい。目標位置の第1位置を、進行方向に沿う障害物VPの位置よりも上流側に設定することにより、障害物VPの手前で自車両V1は横位置の変更(車線変更)を完了することができる。回避制御を早いタイミングで完了させることができる。また、回避制御を早めに実行することにより、緩やかな(曲率変化量の小さい)回避軌跡で障害物VPを回避することができる。目標位置の第1位置は、進行方向に沿う障害物VPの側方に設定されてもよい。
【0043】
領域として設定された目標位置Kの一例を図5(A)に示す。本実施形態のプロセッサ10は、目標位置Kの進行方向に沿う第1位置を、進行方向に沿って上流側に位置する障害物VPの後端部VPrを基準とし、そこから、進行方向の上流側(進行方向の逆側、自車両V1側)に第1閾値DX以下の距離にある位置(領域)として設定する。目標位置Kを障害物VPの後端部VPrから所定距離DXの範囲に設定することにより、自車両V1は、障害物VPよりも上流側で回避制御(横位置の変更)を完了させることができる。また、障害物VPよりも上流側で回避しつつ、自車両V1からの距離を最大に確保できるので、自車両V1は緩やかな(変化量の小さい)回避軌跡に従って移動できる。回避制御における自車両V1の車両姿勢の変化量も抑制できるので、安定した走行で障害物VPを回避できる。
【0044】
また、プロセッサ10は、自車両V1の横移動速度、自車両V1が走行するレーンの車線幅、及び障害物VPと自車両V1が走行する車線との距離のうちの何れか一つ以上の情報に基づいて第1位置を設定することができる。上述したように、障害物VPの上流側で横位置の変更処理(回避制御)を完了しておくことが好ましいものの、障害物VPに対して路幅が広く自車両V1の横移動速度が小さくて済む場合、自車両V1が走行するレーンの車線幅が広い場合、又は路肩に寄った状態で障害物VPが停止しているため障害物VPと自車両V1が走行する車線との距離が大きい場合などは、目標位置が障害物VPに接近しても問題が無い場合がある。このような場合は、図5(B)に示すように、自車両V1の進行方向に沿って下流側に拡大された目標位置K2を設定してもよい。図5(B)に示す例では、障害物VPの後端部VPrから下流側に距離DXdの長さを有し、後端部VPrから上流側に距離DXuの長さを有する目標位置Kを設定してもよい。この処理は、まず図5(A)に示す目標位置Kを設定してから、車両V1の横移動速度、自車両V1が走行するレーンの車線幅、及び障害物VPと自車両V1が走行する車線との距離のうちの何れか一つ以上の情報に基づいて目標位置K補正して、目標位置K2を算出してもよい。
【0045】
図5(B)に示すように、横移動速度RXを考慮して、障害物VPから距離Thだけ離隔させた位置となるように目標位置K2を設定してもよい。これにより、自車両V1と障害物VPが干渉する可能性を低減させることができる。
【0046】
このように、自車両V1の横移動速度、自車両V1が走行するレーンの車線幅、及び障害物VPと自車両V1が走行する車線との距離などの実際の交通状況において、回避軌跡の完了位置(目標位置)を進行方向の下流側にシフトすることが可能である場合には、完了位置(目標位置)を進行方向の下流側(進行方向側)にシフトさせることにより、回避軌跡の距離を確保することができる。これにより、自車両V1は緩やかな(変化量の小さい)回避軌跡に従って移動できる。回避制御における自車両V1の車両姿勢の変化量も抑制できるので、安定した走行で障害物VPを回避できる。
【0047】
本実施形態の目標位置は、自車両V1の走行するレーンの路幅に沿う第2位置(横位置:図中Y座標値)によって定義される。上述したように、障害物VPの回避が完了したと判断するためには、自車両V1の横位置(横方向の占有領域)が障害物VPの横位置(横方向の占有領域)と重複しないことが必要である。つまり、共通するX座標において、自車両V1の横位置(横方向の占有領域)のY座標が、障害物VPの横位置(横方向の占有領域)のY座標と共通する値を持たないことが必要である。プロセッサ10は、自車両V1が走行する路幅に沿う目標位置の第2位置(横位置:図中Y座標値)を、回避軌跡側の障害物VPの側面から第2閾値以上離隔した第2範囲に存在する位置と定義する。障害物VPが他車両である場合には障害物VPの側面はサイドドアの位置となる。図5(A)(B)に示すように、目標位置K及び目標位置K2は、障害物VPの側方からY方向に沿ってDYだけ離隔している。
目標領域K及びK2を障害物VPから所定距離DYだけ離隔させることにより、自車両V1に障害物VPを回避させることができる。
【0048】
プロセッサ10は、障害物VPの外縁のうち回避軌跡と最も接近する位置と、回避軌跡を走行する自車両V1の位置との距離に基づいて第1位置及び/又は第2位置を設定する。プロセッサ10は、障害物VPの外縁(外形)のうち回避軌跡と最も接近する位置と、回避軌跡を走行する自車両V1の位置との距離に基づいて第1位置又は第2位置を定義する。完了位置に至る自車両V1と障害物VPとの干渉を防止する観点から、障害物VPのうち自車両V1と最も接近する部分(位置)に着目して第1位置又は第2位置を定義する。障害物VPが駐車車両である場合には、車両の後端のセンターライン側の位置(図5(A)(B)に示す例では車両の後端の右端部)が、最も自車両V1に接近する可能性がある。この点を基準として障害物VPに対して目標位置を定義する領域K、K2との離隔距離(マージン)を設定し、目標位置の第1位置を設定する。これにより、設定された目的位置K、K2に基づいて回避軌跡の完了位置をコントロールしつつも、完了位置に至る自車両V1と障害物VPとの干渉を防止することができる。この結果、障害物VPを確実に回避しつつ、回避を完了させるタイミングをコントロールすることができる。最も自車両V1に接近する点を基準として障害物VPに対して目標位置を定義する領域K、K2との離隔距離(マージン)を設定して、目標位置の第2位置を設定することにより、自車両V1と障害物VPとの干渉を防止するという上記効果を奏する。
【0049】
ステップS107において目標位置が設定されたら、ステップS108に進む。ステップS108において、回避軌跡の完了位置が、障害物VPの位置に基づいて定義された所定の目標位置に属するか否かを判断する。完了位置が目標位置に属するとは、完了位置が目標位置に一致する場合のみならず、目標位置として定義された範囲(値域)に含まれる場合をも含む。完了位置が面(領域)で定義される場合には、完了位置が目標位置に属する場合とは、完了位置が目標位置に含まれる場合、完了位置と目標位置に重複部分がある場合である。目標位置は、回避制御のタイミングを制御するために設定された位置であり、目標位置に回避軌跡の完了位置が属する場合には、適切なタイミングで回避制御が実行されることが期待できる。ステップS108において、完了位置が障害物PVの位置に基づいて定義された所定の目標位置Kに属すると判断された場合には、ステップS121へ進み、プロセッサ10は、ステップS105において算出された回避軌跡に従う運転計画を生成する。プロセッサ10は、完了位置が、障害物VPの位置に基づいて定義された所定の目標位置に属すると判断された場合には、操舵制御の開始前に自車両を減速させる減速制御を含まない運転計画を算出する。回避制御の完了位置が目標位置に属すると判断された場合においては、操舵制御の開始前に減速制御を行わずに、算出された回避軌跡に従い、車両位置及び車両姿勢の変化が小さく緩やかな動きで、自車両V1に障害物VPを回避させることができる。
【0050】
他方、ステップS108において、完了位置が障害物PVの位置に基づいて定義された所定の目標位置Kに属さないと判断された場合には、ステップS109へ進む。ステップS109において、プロセッサ10は、自車両V1を減速させるための減速値を算出する。減速値を算出した後、ステップS121へ進み、プロセッサは、ステップS109において算出された減速値に基づく減速を伴う運転計画を生成してもよい。減速制御は、操舵制御(横位置の変更開始)の前に実行される。
【0051】
ステップS109において減速値を算出した後、ステップS121又はステップS110に進むことができる。ステップS109からステップS121に進む処理例を先に説明する。ステップS121においては、ステップS109において算出された減速値に基づいて、回避軌跡を算出し、回避軌跡に従う運転計画を生成する。生成された運転計画において、プロセッサ10は、車両コントローラ200に自車両V1を減速させる制御を実行させる。
【0052】
ここで、減速制御について説明する。
図6(A)は、自車両V1の前方に障害物VPが検出され、自車両V1が回避軌跡RT11に沿って移動することにより、障害物VPを回避する場合を示す。プロセッサ10は、回避制御が実行される際に、自車両V1の現在位置の前方に基準位置V01に横位置変更開始位置StP1を設定する。プロセッサ10は、回避条件に従うことを条件に、横位置変更開始位置StP1から障害物VPを回避する(障害物VPから所定距離だけ離隔した位置を通る)回避軌跡RT11を算出する。回避軌跡RT11上の完了位置EdP1を算出する。本例の完了位置EdP1は、回避軌跡RT11上の点であって、隣接するレーンLN02の略中央に位置する。自車両V1の車幅方向の位置が障害物V1から所定距離以上となった位置であり、障害物V1が自車両V1の前方には存在しない状態である。図6(A)に示す回避経路RT1における完了位置EdP1は、設定された目標位置K(領域K)に属さない。このため、プロセッサ10は自車両V1の減速制御を行うため、減速値を算出する。減速値は、ある地点における目標速度であってもよいし、ある地点において停止させるための減速度であってもよいし、指定された一又は複数の所定の減速度であってもよい。
【0053】
本実施形態において、減速するタイミング、つまり、減速指令を実行するタイミングは、少なくとも操舵制御の開始前である。操舵制御の開始前に一度でも減速制御が実行されればよい。操舵制御の開始前における減速制御は、自車両V1の現在位置から横位置変更開始位置StP1に至る区間の何れかの地点、自車両V1の現在位置VS1から所定距離の区間において減速してもよいし、自車両V1の現在位置から横位置変更開始位置StP1に至る区間に含まれる一又は複数の副区間のうちの何れか一つ以上の副区間(サブセクション)において行うことができる。
【0054】
もちろん、操舵制御の開始前における減速制御が実行された後、つまり、操舵制御の開始後に減速制御を実行してもよい。再度の減速制御は、横位置変更開始位置StP1から完了位置EdP1に至る区間の何れかの地点又は、回避軌跡RT11上の何れか一つ又は二つ以上の地点、回避軌跡RT11上の一の区間、又は回避軌跡RT11上の複数の区間、又は横位置変更開始位置StP1から所定距離の区間において減速してもよい。各区間は、距離によって定義してもよいし、位置によって定義してもよいし、タイミング(通過時刻)によって定義してもよい。
【0055】
「減速をする」という制御の内容/手法は限定されることなく、プロセッサ10は、各地点又は各区間における目標速度を低い値に変更する、又は各地点において設定した減速度に応じて自車両V1を減速させてもよい。プロセッサ10は、図6(B)に示す減速後の回避軌跡RT21に含まれる各地点における目標速度(又は走行速度)の積分値が、図6(A)に示す減速前の回避軌跡RT11における各地点における目標速度の積分値よりも低い値となるように、減速制御を行ってもよい。図6(B)に示す減速後の回避軌跡RT21の各区間(L1S,L1e)に含まれる各地点における目標速度(又は走行速度)の積分値が、図6(A)に示す減速前の回避軌跡RT11の各区間(L0S,L0e)における各地点における目標速度の積分値よりも低い値となるように、減速制御を行ってもよい。積分対象となる区間は任意に設定できる。
操舵制御が開始されるタイミングよりも前、横位置変更開始位置StP1よりも自車両V1の走行経路の進行方向側の位置において、減速制御が一度でも行われればよい。横位置変更開始位置StP1から自車両V1が完了位置EdP1に到達するまでの間に一回又は複数回の減速制御を行うことができる。減速制御は、所定周期で行ってもよいし、ランダムに行ってもよいし、連続して行ってもよいし、又は不連続に行ってもよい。
【0056】
減速制御には、一時的な停止、つまり速度がゼロの状態を含む。例えば、自車両が走行する走行経路の車線幅が狭く、減速の程度が大きく、速度がゼロに漸近する状態を含む。
プロセッサ10は、減速制御において、自車両V1が走行する車線と隣接する他の車線の存在する方向に向くように、自車両V1の姿勢を制御する姿勢制御を含む運転計画を算出する。
運転計画は、減速制御とともに姿勢制御を含む。姿勢制御は、操舵量により制御することができる。減速時において自車両V1が隣接する他の車線の方向に向く姿勢であることにより、減速から加速に転じた場合に、障害物VPの側方を走行する経路を早期に開始できる。
特に、減速制御における速度がゼロから所定値の低速又は一時停止(速度がゼロ)をする場合には、自車両V1の姿勢が、障害物VPを回避するために向かう隣接する他の車線の方向に向かせる姿勢制御を運転計画に含ませることが好ましい。
【0057】
減速の手法は特に限定されないが、プロセッサ10は、障害物VPよりも自車両V1に近い位置に仮想停止目標地点P1を設定し、仮想停止目標地点P1で自車両V1を停止させる場合の減速度で自車両V1を減速させる。仮想停止目標地点P1は、障害物VPの後端部VPrよりも上流側に設定されることが好ましい。これにより、障害物VPに接近する前に自車両V1の速度を低減させ、異なる回避軌跡RT11を算出することができる。
【0058】
プロセッサ10は、回避条件において定義された制動減速度以下の減速度により自車両V1を減速させることができる。上限値として定義された制動減速度は、回避条件としてプロセッサ10のROM12又はRAM13が記録してもよいし、自律運転用のプロファイルとともに車両コントローラ200に記録させてもよい。制動減速度以下の減速度により、自車両V1を減速させるので、車両挙動が大きく変動することを防止できる。
【0059】
図6(A)に示すように、完了位置EdP1が目標位置Kに属さないと判断された場合において、自車両V1を減速させると、図6(A)に示す回避軌跡RT11は、図6(B)に示す回避軌跡RT2が算出される。
一例ではあるが、図6(A)に示すように、自車両V1の現在位置VS1から横位置変更開始位置StP1に至る区間LOSの目標車速はV0であり、区間LOSの通過所要時間がTαであり、横位置変更開始位置StP1から完了位置EdP1に至る区間LOeの目標車速がV0であり、区間LOeの通過所要時間がTβであったとする。目標速度V0をこれよりも低い目標速度V1に変更して回避軌跡の算出処理を再度行う。再度の算出処理により、図6(B)に示す回避軌跡RT21を得る。図6(B)に示すとおり、速度を減じて算出された回避軌跡RT21は、自車両V1の現在位置VS1から横位置変更開始位置StP2に至る区間L1Sの目標車速はV1となり、区間L1Sの通過所要時間はTα´となり、横位置変更開始位置StP2から完了位置EdP2に至る区間L1eの目標車速はV1となり、区間L1eの通過所要時間はTβ´となる。
【0060】
つまり、減速後の回避軌跡に関し、図6(B)に示された自車両V1の現在位置VS2から横位置変更開始位置StP2に至る区間の長さL1S、横位置変更開始位置StP2から完了位置EdP2に至る区間の長さL1e、これらを含む回避軌跡RT21の長さL1は、いずれにおいても、図6(A)に示す自車両V1の現在位置VS1から横位置変更開始位置StP1に至る区間の長さL0S、横位置変更開始位置StP1から完了位置EdP1に至る区間の長さL0e、これらを含む回避軌跡RT11の長さL0よりも短い。
【0061】
図6(A)(B)に示すように、操舵制御の開始前に減速制御を実行することにより、現在位置VS2から横位置変更開始位置StP2に至る区間の長さL1S、横位置変更開始位置StP2から完了位置EdP2に至る区間の長さL1e、これらを含む回避軌跡RT21の進行方向に沿う長さL1のいずれも短縮することができる。
【0062】
これにより、横位置の変更が完了する完了位置EdP2が、自車両V1の進行方向に沿う上流側に位置する回避軌跡を算出することができる。つまり、横位置の変更(車線変更)を伴う回避制御の完了タイミングを早めることができる。
また、横位置の変更を開始する横位置変更開始位置StP2が、自車両V1の進行方向に沿う上流側に位置する回避軌跡を算出することができる。つまり、回避制御において重要な横位置の変更(車線変更)の開始の完了タイミングを早めることができる。
【0063】
本実施形態のプロセッサ10は、回避軌跡を算出するにあたり、自車両V1を減速させた場合に算出される回避軌跡RT21の長さが、自車両V1を減速させる前に算出される回避軌跡RT11の長さよりも短くなるように回避軌跡RT11を補正し、補正後の相対的に距離が短い回避軌跡RT21を得る。これにより、回避軌跡RT21の長さを短縮することができ、上記効果を得られる。プロセッサ10は、算出された回避軌跡RT21に基づいて運転計画を算出する。
【0064】
ところで、自車両V1が走行中のレーン前方に存在する障害物PVを回避して前進するためには、一度、横位置を変更して、障害物PVを回避する必要がある。障害物PVを基準とする距離やリスク領域の外側を走行する回避制御を行う際に、適用される車線変更の曲率の上限が低い、つまりカーブの緩やかな軌跡で障害物VPを回避することを前提とすることがある。実際の走行環境においては、カーブの緩やかな軌跡で障害物VPを回避できる余裕が無いことがある。このような場合に、回避軌跡が算出できなかったことをトリガとして、回避軌跡を再度求めるという処理が行われることがある。回避軌跡が算出できなかったという状況に遭遇してから回避軌跡を求める場合には、その回避軌跡のカーブの曲率は大きなものとなり、曲率の変化量も大きいものとなる。運転を許可する条件を充足しないことを理由として、結局は、停止制御をせざるを得ないという結果になることがある。この場合には、自車両V1は、障害物VPを回避するというタスクを実行することができず、その後に続く右左折の運転計画も一時的ではあるが断念せざるを得ない。
【0065】
自律運転の制御指令は、現在位置から所定距離だけ離隔した位置に対して出力される。このため、障害物VPを回避するための回避制御は、障害物VPの位置よりも上流側で出力される。自車両V1と障害物VPとの間に十分な距離がとれない状態において、現在位置から所定距離だけ離隔した位置(例えば、前方注視点)に対する指令値が出力されることを前提とすると、横位置の変化量の大きい(緩やかではない)回避軌跡が算出される。
【0066】
これに対し、本実施形態の運転制御装置100は、横位置の変更処理/車線変更処理を早めのタイミングで実行するために、基準位置よりも前方の横位置変更開始位置から回避条件を充足する回避軌跡を算出し、障害物VPの回避が完了した完了位置が目標位置であるか否かの評価に基づいて、操舵制御の開始前に自車両V1の速度を減じるので、早いタイミングで回避制御の可否を判断し、さらに、回避制御における横位置変更のタイミングを早めることができる。結果として、回避制御の完了のタイミングも早めることができる。現実の運転環境においては、他車両の動き、センサ1の検知環境などにより、障害物VPの検知情報を早期かつ正確に取得できないこともある。そのような場合であっても、回避制御の完了のタイミングも早めることができ、運転計画を着実に実行することができる。
また、自車両V1の速度を減じる(停止を含む)ので、十分な余裕領域が確保できない状況においても、緩やかな回避軌跡で障害物VPを回避できる。障害物VPとの間に十分な距離がとれない状態で、前方注視点(現在位置から所定距離だけ離隔した位置)に対する指令値が出力される場合であっても、横位置の変化量を大きくすることなく、緩やかな回避軌跡で障害物VPを回避できる。
【0067】
ここで「横位置変更開始位置」に関する説明をする。
本実施形態では、自車両V1の現在位置を基準とする「基準位置V01」に「横位置変更開始位置」を設定する。図7は、自車両V1の前端V1Sから前方の距離D1に応じて設定される基準位置V01の一例を示す。図7に示す基準位置V01までの距離は距離D1である。前述したように、本例では、距離D1を前方注視点距離に対応させ、基準位置V01を前方注視点に対応させてもよい。
【0068】
上述したように、障害物VPを回避するための横位置制御を開始する横位置変更開始位置は、位置座標値によって定義される絶対位置として定義されてもよいが、自車両V1を基準として設定された制御位置、例えば、自車両V1から所定距離だけ離隔した位置などの自車両V1の位置を基準として設定された相対的な位置として定義してもよい。
本実施形態では、障害物VPの回避制御を開始する横位置変更開始位置は、回避制御における制御指令値が設定される制御目標位置とすることができる。制御目標位置は、走行する自車両V1の制御上の時空間座標に基づいて設定できる。回避制御においては、自車両V1の走行位置を現在位置から実行される制御指令によって追跡することができる。つまり、ある制御目標位置における自車両V1の存在/通過タイミング及び存在位置が特定され、その制御目標位置において新たな制御指令が実行される。
【0069】
図7には、基準位置V01に設定された横位置変更開始位置Strを示す。横位置変更開始位置Strは、車両制御の制御遅れや制御応答性を考慮して、自車両V1が将来のタイミングにおいて存在する位置(前進走行中又は自車両の前方の位置)における制御量を設定するための制御目標位置(の一つ)である。自車両V1の位置に対する制御目標位置は、指令値を出力して実際に制御が実行され始める(制御が働き始める)までに自車両V1が進む距離に依存するため、自車両V1の車速が高いほど、自車両V1に対する相対位置(相対距離)が大きくなり、自車両V1から離隔させた位置に設定される。例えば、予め決定された設定位置(絶対位置/座標定義位置)から制御を働かせるとした場合には、自車両V1の車速が高いほど、その決められた設定位置から手前に離隔させた位置から指令値を出力する必要があり、また車速が低いほど、決められた設定位置に近い位置で指令値を出力することができる。指令の伝達及び実行には時間を要するからである。一般的に、この第2位置P2は、車速により変化する前方注視点を用いるが、本実施形態に関する第2位置P2は必ずしも前方注視点に限らない。
【0070】
図7に示す例において、自車両V1の位置を基準として、制御位置としての制御目標位置CT0~CT6(n)を設定することができる。各制御目標位置CTnには、回避制御における制御指令値が対応づけて設定される。回避制御を一つの制御群とすれば、制御目標位置CTnのうち、横位置の制御が開始される制御目標位置CT0が横位置変更開始位置Stpである。
本実施形態のように、横位置変更開始位置Stpを、自車両V1の位置の変化に応じて相対的に決定される制御目標位置CTnとして設定することにより、運転制御指令の出力、受信、又は実行の遅れを抑制することができ、運転制御指令の連続性を担保することができる。これにより、実行される回避制御を適時に開始し、滑らかな(適切に連続した)運転動作を実行することができる。
【0071】
本実施形態の運転制御方法においては、基準位置V01を、回避制御における制御指令値が設定される制御目標位置CTnとすることができる。基準位置V01に設定される横位置変更開始位置Stpは、自車両V1の運転制御の観点から設定される。これにより、実際に回避制御を実行した場合に、制御が完了できる位置を正確に算出(予測)することができ、自車両V1が障害物VPを回避して回避制御が完了できるかどうかを正確に判断できる。
【0072】
また、本実施形態の運転制御方法において、制御目標位置CTnは、自車両V1の位置を基準として設定され、自車両V1の車速が高いほど、自車両V1の位置に対する相対距離が大きくなるように設定する。自車両V1の位置に対する制御目標位置は、指令値を出力して実際に制御が実行され始める(制御が働き始める)までに自車両V1が進む距離に依存する。そのため、自車両V1の車速が高いほど、自車両V1に対する相対位置の差(距離)を大きく設定し、自車両V1から離隔させた位置に制御目標位置を設定する。このため、自車両V1の車速を考慮したうえで、回避制御が完了できるか否かを正確に判断できる。
【0073】
以上において、ステップS108からステップS121へ遷移する処理を説明した。以下において、ステップS109からステップS109以降へ遷移する処理を説明する。
本実施形態のプロセッサ10は、ステップS109において減速値を算出し、その減速値を用いて運転制御をすることも可能であるが、減速値が適切であるか否か、つまり、その減速値によって自車両V1を減速させることにより、回避軌跡の完了位置が目標位置に属するのか否かを確認し、確認された減速値を用いて運転制御を実行することもできる。
【0074】
本実施形態のプロセッサ10は、自車両V1の目標速度を第1目標速度に減速させた場合の第1補正回避軌跡を算出し、第1補正回避軌跡の完了位置が、目標位置に属すると判断された場合には、第1補正回避軌跡に従って自車両V1を走行させる運転計画を算出する。他方、第1補正回避軌跡の完了位置が、目標位置に属さないと判断された場合には、自車両V1を第1目標速度よりも低い第2の目標速度に減速させる運転計画を算出する。
本実施形態のプロセッサ10は、減速後の目標速度に基づいて補正された回避軌跡の完了位置が目標位置に属するまで適切な減速度を探求し、完了位置が目標位置に属する目標速度における回避軌跡が得られたとき、目標速度への減速度、新たな第2目標速度、回避軌跡を用いて運転計画を算出する。
【0075】
具体的に、ステップS110において、プロセッサ10は、ステップS109において算出された減速後の第1目標速度に応じた回避条件を取得する。ステップS111において、プロセッサ10は、取得した回避条件に従い、現在位置VS2の前方の横位置変更開始位置StP2から障害物VPを回避して完了位置EdP2に至る第1補正回避軌跡RT21を算出する。ステップS112において、第1補正回避軌跡RT21の完了位置EdP2が目標位置であるか否かを判断する。第1補正回避軌跡RT21の完了位置EdP2が目標位置に属すると判断された場合には、ステップS113に進み、第1目標速度への減速値に基づく減速指令を生成する。一方、ステップS112において、第1補正回避軌跡RT21の完了位置EdP2が目標位置に属さないと判断された場合には、ステップS109に戻り、第1目標速度よりも低い第2目標速度への減速値を算出する。そして、第2目標速度を前提に算出された回避軌跡の完了位置EdP2が目標位置に属するまで、ステップS109からS113を繰り返してもよい。
【0076】
本処理によれば、回避制御における操舵制御の開始前に行われる減速制御により、完了位置EdP2が目標位置に属するように自車両V1に障害物VPを回避させることができる。操舵制御の開始前に行われる減速制御後の回避軌跡によれば、現在位置VS2から横位置変更開始位置StP2に至る区間の長さL1S、横位置変更開始位置StP2から完了位置EdP2に至る区間の長さL1e、これらを含む回避軌跡RT21の長さL2のいずれも短縮することができる。
これにより、横位置の変更が完了する完了位置EdP2が、自車両V1の進行方向に沿う上流側に位置する回避軌跡を算出することができる。つまり、横位置の変更(車線変更)を伴う回避制御の完了タイミングを早めることができる。
【0077】
回避軌跡の完了位置EdP2を目標位置、例えば障害物VPの後端部VPrよりも上流側に位置させることができるので、障害物VPを回避するときに回避のための余裕(マージン)が狭い状況においても、早いタイミングで横位置の変更制御が完了する回避制御を実行できる。回避のための余裕(マージン)が狭い状況においても、緩やかな(変化量の低い)回避軌跡に従って自車両V1を移動させることができ、車両の横Gの変化量を低減させ、安定した車両挙動を保った状態で回避制御を実行することができる。
【0078】
本実施形態では、回避軌跡の完了位置を目標位置とさせる観点から、少なくとも操舵制御前において自車両を減速させるが、これに加えて、車両の横移動速度を加速し、目標横移動速度を高く変更することもできる。
【0079】
ステップS114において、プロセッサは、横移動速度の加速値を算出する。加速値は、回避条件に含ませて記録してもよい。ステップS115において、加速後の横移動速度に応じた回避条件を取得する。ステップS116において、加速後の横移動速度が適用され補正回避軌跡を算出する。補正回避軌跡においては横方向の移動速度が速い、つまり操舵量の変化が速くなることが許容されるので、軌跡の曲率の変化量が高い回避軌跡が算出される。ステップS117において、算出された回避軌跡の完了位置が目標位置に属するか否かを判断する。回避軌跡の完了位置が目標位置に属すると判断された場合には、ステップS118に進み、横移動速度の加速指令を生成する。他方、回避軌跡の完了位置が目標位置に属さないと判断された場合には、ステップS119に進む。
【0080】
ステップS119において、自車両V1の減速及び横移動速度の加速によっても、完了位置が目標位置に属さず、しかも完了位置が障害物VPよりも下流側(走行経路の進行方向側)に位置する場合には、ステップS120に進み回避制御を中止する。ステップS119においては、完了位置が、障害物VPの後端部VPrより下流側(走行経路の進行方向とは逆方向側)であるか否かを判断してもよい。ステップS119において、自車両V1の減速及び横移動速度の加速によって、完了位置が目標位置に属さないものの、完了位置が障害物VPよりも上流側に位置する場合には、再度の速度調整を行うためにステップS109に戻る。ステップS119の処理を行うことなく、所定回数の判断を経てステップS117において完了位置が目標位置に属さないと判断された場合にステップS120へ進んで回避制御を中止することも可能である。
【0081】
自車両V1の横移動速度を加速することにより、回避軌跡の曲率の変化量が高くなるものの、完了位置が目標位置に属する回避軌跡を算出することができる。これにより、自車両V1が障害物VPに到達する前(障害物VPの上流側)の早いタイミングで回避制御を完了させることができる。
【0082】
ステップS114~ステップS116までの処理は、ステップS108及び/又はステップS112において完了位置が障害目標位置に属さないと判断された場合に実行される。自車両V1の減速制御と並行して行ってもよいし、自車両V1の減速制御の後に行ってもよい。
【0083】
なお、障害物VPを回避するときに、交通量が少なくレーン幅が広い状態であれば回避のためのマージン(余裕領域)を十分にとることができ、理想的な回避軌跡を算出することができる。しかしながら、実際の交通において自律的な運転で障害物VPを回避しようとする場合に、常に十分なマージンが確保されているとは限らない。このような場合においても、本実施形態の運転制御方法によれば、障害物VPを基準に設定された目標位置に回避軌跡の完了位置が属するか否かという判断結果に基づいて自車両V1を減速させるという減速制御を含む運転計画を実行させることにより、自車両V1と障害物VPとの経時的な位置関係を変化させ、新たな関係の下で、適切な完了位置を算出することができる。これに伴い適切な完了位置に至る適切な回避軌跡を算出できる。本実施形態において補正される回避軌跡は、現在位置から横位置変更開始位置までの距離が短く、横位置変更開始位置から完了位置までの距離が短く、しかも、自車両V1が障害物VPを避ける移動の軌跡が緩やかである。
【0084】
本発明の実施形態の運転制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0085】
[1]本実施形態の運転制御方法は、操舵制御による横位置の移動が開始可能である自車両V1の前方の基準位置に、障害物VPを回避するための回避制御を開始する横位置変更開始位置を設定し、所定の回避条件に従い、横位置変更開始位置から障害物VPを回避して、障害物VPの回避が完了する完了位置を算出し、完了位置が障害物VPに対して定義された所定の目標位置に属さないと判断された場合には、操舵制御の開始前に自車両V1の目標速度を減速させることを特徴とする。
本発明によれば、算出された完了位置が目標位置に属さないと判断された場合において、操舵制御の実行開始前に自車両V1を減速させることにより、回避制御の完了位置を変更することができるので、十分な余裕領域が確保できない状況においても、車両位置及び車両姿勢の変化が小さく緩やかな動きで自車両V1に障害物VPを回避させることができる。障害物VPとの間に十分な距離がとれない状態で、前方注視点(現在位置から所定距離だけ離隔した位置)に対する指令値が出力される場合であっても、横位置の変化量を大きくすることなく、緩やかな動きで障害物VPを回避できる。
自車両V1の減速制御を操舵制御の開始前に実行することにより、現在位置VS2から横位置変更開始位置StP2に至る区間の長さL1S、これを含む回避のための回避軌跡RT21の長さL2を短縮することができる。加えて、減速制御を操舵制御の開始後にも実行することができるが、これにより、横位置変更開始位置StP2から完了位置EdP2に至る区間の長さL1e、これを含む回避軌跡RT21の長さL2を短縮することができる。これにより、横位置の変更が完了する完了位置EdP2が、自車両V1の走行経路における進行方向の上流側(自車両側)に位置するように障害物VPの回避制御を実行することができる。つまり、回避制御の完了タイミングを早めることができる。
回避制御における完了位置EdP2を目標位置、例えば障害物VPの後端部VPrよりも自車両V1側(走行経路の進行方向に対して上流側)に位置させることができるので、障害物VPを回避するときに回避のための余裕(マージン)が狭い状況においても、早いタイミングで横位置の変更制御が完了する回避制御を実行できる。
回避のための余裕(マージン)が狭い状況においても、変化が相対的に少ない移動軌跡上を、緩やかな(車両位置及び車両姿勢の変化量が小さい)動きで自車両V1を移動させることができ、車両の横Gの変化量を低減させ、安定した車両挙動を保った状態で回避制御を実行することができる。
【0086】
[2]本実施形態の運転制御方法において、プロセッサ10は、完了位置が、障害物VPの位置に基づいて定義された所定の目標位置に属すると判断された場合には、操舵制御の開始前に自車両を減速させる減速制御を含まない運転計画を算出する。回避制御の完了位置が目標位置に属すると判断された場合においては、操舵制御の開始前には、減速制御を行わないようにするので、上述の項目[1]と同様に、車両位置及び車両姿勢の変化が小さく緩やかな動きで、自車両V1に障害物VPを回避させることができる。
【0087】
[3]本実施形態の運転制御方法においては、基準位置を、回避制御における制御指令値が設定される制御目標位置とすることができる。基準位置に設定される横位置変更開始位置は、車両の運転制御の観点から設定される。これにより、実際に回避制御を実行した場合に、制御が完了できる位置を正確に算出(予測)することができ、自車両V1が障害物VPを回避して回避制御が完了できるかどうかを正確に判断できる。
【0088】
[4]本実施形態の運転制御方法において、制御目標位置は、自車両の位置を基準として設定され、自車両V1の車速が高いほど、自車両の位置に対する相対距離が大きくなるように設定する。自車両V1の位置に対する制御目標位置は、指令値を出力して実際に制御が実行され始める(制御が働き始める)までに自車両V1が進む距離に依存する。そのため、自車両V1の車速が高いほど、自車両V1に対する相対位置の差(距離)を大きく設定し、自車両V1から離隔させた位置に制御目標位置を設定する。このため、自車両V1の車速を考慮したうえで、回避制御が完了できるか否かを正確に判断できる。
【0089】
[5]本実施形態の運転制御方法において、障害物VPよりも自車両V1に近い位置に仮想停止目標地点P1を設定し、仮想停止目標地点P1で自車両V1を停止させる場合の減速度で自車両V1を減速させる。仮想停止目標地点P1は、障害物VPの後端部VPrよりも上流側に設定されることが好ましい。これにより、障害物VPに接近する前に自車両V1の速度を低減させることができる。
【0090】
[6]本実施形態の運転制御方法において、回避条件において定義された制動減速度以下の減速度により自車両V1を減速させる。回避条件において設定された制限減速度を上限として自車両V1を減速させるので、車両挙動が大きく変動することを防止できる。
【0091】
[7]本実施形態の運転制御方法において、完了位置が目標位置の属さないと判断された場合には、自車両V1の横移動速度を高く変更する運転計画を算出する。自車両V1の横移動速度を加速することにより、回避軌跡の曲率の変化量が高くなるものの、完了位置が目標位置に属する回避軌跡を算出することができる。これにより、自車両V1が障害物VPに到達する前(障害物VPの上流側)の早いタイミングで回避制御を完了させることができる。
【0092】
[8]本実施形態の運転制御方法において、プロセッサ10は、予め規定された回避条件に従い、横位置変更開始位置からの所定の回避軌跡を算出することで完了位置を算出する。自車両V1が、横位置変更開始位置から障害物VPの回避が完了する完了位置に至る回避軌跡を算出することにより、障害物VPを回避し、回避制御が完了したと判断できる完了位置を求めることができる。
【0093】
[9]本実施形態の運転制御方法においては、自車両V1の目標速度を第1目標速度に減速させた場合の第1補正回避軌跡を算出し、第1補正回避軌跡の完了位置が目標位置に属すると判断された場合には、第1補正回避軌跡に従って自車両を走行させる運転計画を算出し、第1補正回避軌跡の完了位置が、目標位置に属さないと判断された場合には、自車両を第1目標速度よりも低い第2の目標速度に減速させる運転計画を算出する。
完了位置が目標位置に属するという条件を満たす回避軌跡を用いて運転計画を算出するので、横位置の変更(車線変更)を伴う回避制御の完了タイミングを確実に早めることができ、上記[1]に記載した効果を得ることができる。
【0094】
[10]本実施形態の運転制御方法において、自車両V1を減速させた場合に算出される回避軌跡の長さが、自車両V1を減速させる前に算出される回避軌跡の長さよりも短くなるように回避軌跡を補正し、補正された回避軌跡に基づいて運転計画を算出する。これにより、回避制御の開始から完了までの軌跡の長さを短縮することができ、上記効果を得られる。
【0095】
[11]本実施形態の運転制御方法において、目標位置の自車両V1の進行方向に沿う第1位置(縦位置:図中X座標値)は、障害物VPの進行方向に沿う位置(縦位置:図中X座標値)に基づいて設定される。目標位置を障害物VPの縦位置に基づいて設定することにより、自車両V1が回避対象とする障害物VPの位置に応じて目標位置を設定し、この目標位置に応じて完了位置を設定できる。その結果、自車両V1が障害物VPの回避を完了するタイミングを適切に設定することができる。特に限定されないが、目標位置の第1位置は、進行方向に沿う障害物VPの位置よりも上流側であることが好ましいが、これにより、自車両V1に対する障害物VPの位置に応じた完了位置を有する回避軌跡を算出できる。
【0096】
[12]本実施形態の運転制御方法において、目標位置Kの進行方向に沿う第1位置を、進行方向に沿って上流側に位置する障害物VPの後端部VPrを基準とし、そこから第1閾値DX以下の距離にある位置(領域)として設定する。目標位置Kを障害物VPの後端部VPrから所定距離DXの範囲に設定することにより、自車両V1は、障害物VPよりも上流側で回避制御(横位置の変更)を完了することができる。また、障害物VPよりも上流側で回避しつつ、自車両V1からの距離を最大に確保できるので、自車両V1は緩やかな(変化量の低い)回避軌跡に従って移動できる。回避制御における自車両V1の車両姿勢の変化量も抑制できるので、安定した走行で障害物VPを回避できる。目標位置の第1位置を、進行方向に沿う障害物VPの位置よりも上流側に設定することにより、障害物VPの手前で自車両V1は横位置の変更(車線変更)を完了することができる。回避制御を早いタイミングで完了させることができる。また、回避制御を早めに実行することにより、緩やかな(曲率変化量の小さい)回避軌跡で障害物VPを回避することができる。
【0097】
[13]本実施形態の運転制御方法において、障害物VPの外縁のうち回避軌跡と最も接近する位置と、回避軌跡を走行する自車両V1の位置との距離に基づいて第1位置を設定する。
これにより、完了位置を設定された目的位置に基づいてコントロールしつつも、完了位置に至る自車両V1と障害物VPとの干渉を、自車両V1の性能、回避時における道路環境、障害物VPのレーン上の位置に応じて防止することができる。この結果、障害物VPを確実に回避しつつ、回避を完了させるタイミングをコントロールすることができる。
【0098】
[14]本実施形態の運転制御方法において、自車両V1の横移動速度、自車両V1が走行するレーンの車線幅、及び障害物VPと自車両V1が走行する車線との距離などの実際の交通状況において、回避軌跡の完了位置(目標位置)を進行方向の下流側にシフトすることが可能である場合には、完了位置(目標位置)を進行方向の下流側にシフトさせることにより、回避軌跡の距離を確保することができる。これにより、自車両V1は緩やかな(変化量の低い)回避軌跡に従って移動できる。回避制御における自車両V1の車両姿勢の変化量も抑制できるので、安定した走行で障害物VPを回避できる。完了位置を設定された目的位置に基づいてコントロールしつつも、完了位置に至る自車両V1と障害物VPとの干渉を防止することができる。この結果、障害物VPを確実に回避しつつ、回避を完了させるタイミングをコントロールすることができる。
【0099】
[15]本実施形態の運転制御方法において、プロセッサ10は、自車両V1が走行する路幅に沿う目標位置の第2位置(横位置:図中Y座標値)を、回避軌跡側の障害物VPの側面から第2閾値以上離隔した第2範囲に存在する位置と定義する。目標領域K及びK2を障害物VPから所定距離DYだけ離隔させることにより、自車両V1に障害物VPを確実に回避させることができる。
【0100】
[16]本実施形態の運転制御方法において、障害物VPの外縁のうち回避軌跡と最も接近する位置と、回避軌跡を走行する自車両V1の位置との距離に基づいて第2位置を設定する。
これにより、完了位置を設定された目的位置に基づいてコントロールしつつも、完了位置に至る自車両V1と障害物VPとの干渉を、自車両V1の性能、回避時における道路環境、障害物VPのレーン上の位置に応じて防止することができる。この結果、障害物VPを確実に回避しつつ、回避を完了させるタイミングをコントロールすることができる。
【0101】
[17]本実施形態の運転制御方法において、プロセッサ10は、自車両V1を減速させる減速制御を含む運転計画を算出する場合に、自車両V1が走行する車線の中に存在するときに減速するように運転計画を算出する。自車両V1が走行中の車線(走行経路)の中において減速を行うので、自車両が走行中の車線に隣接する他の車線(走行経路に隣接する他の走行経路)を走行する他車両の走行に影響を与えることを抑制し、隣接する他の車線における交通流を妨げることを抑制できる。
【0102】
[18]本実施形態の運転制御方法において、プロセッサ10は、自車両V1を減速させる減速制御を含む運転計画を算出する場合に、自車両V1が走行する車線と隣接する他の車線の存在する方向に、自車両V1が向く姿勢となるように運転計画を算出する。自車両V1が走行する車線と隣接する他の車線の存在する方向に、自車両V1が向くように自車両V1の姿勢を制御する運転計画を算出するので、減速制御の後に、車線変更をする運転がスムーズに実行させるようにすることができる。
【0103】
[19]本実施形態の運転制御方法がプロセッサ10により実行されることにより、運転制御装置100は、上記運転制御方法と同様の作用を奏し、同様の効果を奏する。
【0104】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0105】
1000…運転制御システム
1…センサ
2…ナビゲーション装置
3…地図情報
4…自車情報検出装置
5…環境認識装置
6…物体認識装置
100…運転制御装置
10…プロセッサ
11…CPU
12…ROM
13…RAM
120…目的地設定機能
130…経路プランニング機能
140…運転計画機能
150…運転可能ゾーン算出機能
160…経路算出機能
170…運転行動制御機能
110…出力装置
111…通信装置
200…車両コントローラ
210…駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7