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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】塊状金属物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20230410BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20230410BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20230410BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20230410BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G21F9/30 551D
G21F9/00 Z
G21F9/00 A
G01T1/16 A
G01T1/167 C
B22D21/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019148102
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028615
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 賢作
(72)【発明者】
【氏名】山本 範人
(72)【発明者】
【氏名】立石 雅孝
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040841(JP,A)
【文献】特開2004-099959(JP,A)
【文献】特開2004-294252(JP,A)
【文献】特開平11-002696(JP,A)
【文献】特開2006-329853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/00
G01T 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設内の金属を溶融して塊状の金属物品を製造する方法であって、
開口に配置されているリングフードと上記開口を覆う蓋とを有する炉で上記金属を溶融して溶湯を得る溶融工程と、
上記溶融工程で得られた溶湯から1又は複数のサンプルを採取する採取工程と、
上記溶融工程で得られた溶湯の残部を凝固する凝固工程と
記採取工程で得られた1又は複数のサンプルの外部放射線を測定するサンプル測定工程と、
上記溶湯への空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する抑制工程と
を備
上記凝固工程が、
上記溶湯を上記炉から取鍋に出湯する出湯工程と、
上記取鍋の溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と
を有し、
上記出湯工程が、
予熱した上記取鍋を蓋が閉じられている上記炉まで移動する第一の移動手順と、
移動した上記取鍋に上記炉の傾動によって上記溶湯を出湯する出湯手順と、
上記溶湯が出湯された上記取鍋を鋳型注湯場所の鋳型に移動する第二の移動手順と
を含み、
上記注湯工程が、
上記鋳型に、移動した上記取鍋の傾動によって上記溶湯を注湯する注湯手順を含み、
上記抑制工程が、
上記第一の移動手順の前に上記取鍋の取鍋蓋を閉じる取鍋閉口手順と、
上記出湯手順の前に上記炉の蓋及び上記取鍋の取鍋蓋を開ける開口手順と、
上記第二の移動手順の前に上記炉の蓋及び上記取鍋の取鍋蓋を閉じる閉口手順と、
上記鋳型の開口をシートで被覆し、このシートを上記注湯手順の前に取り外すシート脱着手順と、
上記注湯手順で、集塵機又は集塵機の局所フードを上記鋳型に近接させて注湯する集塵機配置手順と、
上記注湯手順後に上記鋳型の鋳型蓋を閉じる鋳型閉口手順と
を含む塊状金属物品の製造方法。
【請求項2】
上記注湯手順で、上記取鍋蓋を閉じた状態で上記鋳型に注湯する請求項1に記載の塊状金属物品の製造方法。
【請求項3】
上記抑制工程が、
上記溶融工程及び凝固工程を行う室を常時換気する室内換気工程と、
上記室内の空間中の放射能濃度を測定する室内測定工程と
を有する請求項1又は請求項2に記載の塊状金属物品の製造方法。
【請求項4】
上記溶融工程で用いられる炉が高周波誘導炉である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の塊状金属物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塊状金属物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設で使用された金属で、放射能濃度が高いものは廃棄物として処分されるが、放射能濃度が低いものの中には有効利用が可能なものがある。原子力施設で使用された金属であっても、これを溶融すれば利用可能な塊状の物品を製造することができ、放射能濃度が高いものであれば、塊状の廃棄物になる。利用可能な塊状の物品を製造する方法として、上部炉体と下部炉体とに分割可能な高周波溶融炉によってルツボ内の金属を溶融させ、上記上部炉体を取り外して溶融物が冷却固化した後、吊り具によってルツボと共に固化物を上記下部炉体から取り出して所定位置に移動させることにより処理作業の容易化を図る方法が発案されている(特開昭60-172300号公報)。
【0003】
上記のような方法により得られる塊状の金属物品で、放射能濃度が低いものは有効利用できる可能性があり、有効利用量を増やすことができれば、相対的に廃棄物量を減らすことができる。したがって、塊状の金属物品の放射能濃度を測定し、有効利用の可否を判定することは重要である。そこで、放射線測定器を用いて溶融前の金属から外部に放出される放射線を測定し、その測定結果から上記塊状の金属物品の放射能濃度を評価する方法を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-172300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、原子力発電所が廃炉される等の場合には処理される金属が大量に発生するため、個々の金属の放射線を測定する上記方法では上記塊状の金属物品の放射能濃度を効率よく評価できないおそれがある。より効率的な方法として、上記金属を溶融させ、この溶融物から採取したサンプルについて放射線測定器を用いて外部に放出される放射線を測定することで、上記溶融物を塊状にした金属物品の放射能濃度を評価する方法を採用することも考えられる。この方法によれば測定対象物の数は低減できるが、上記サンプルを採取した後に、空間に浮遊する放射性物質が上記溶融物中に混入した場合、上記サンプルから外部放射線を測定することで評価した放射能濃度と、上記溶融物を塊状にした金属物品の放射能濃度との差が大きくなるという問題がある。
【0006】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、溶融した金属から得られるサンプルの放射能濃度と、上記溶融した金属から得られる塊状金属物品の放射能濃度との差をなくし又は抑制することにより、塊状金属物品の有効利用の可否の判定が容易かつ確実で、有効利用できる塊状金属物品を効率的に得ることができる塊状金属物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、原子力施設内の金属を溶融して塊状の金属物品を製造する方法であって、上記金属を溶融する工程と、上記溶湯の1又は複数のサンプルを採取する工程と、上記溶融工程で得られた溶湯を凝固する工程とを備えており、上記採取工程で得られた1又は複数のサンプルの外部放射線を測定する工程と、上記溶湯への空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する工程とをさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
当該塊状金属物品の製造方法は、溶融した金属から得られるサンプルの放射能濃度と、上記溶融した金属を固化して得られる塊状金属物品の放射能濃度との差をなくし又は抑制することができるため、塊状金属物品の有効利用の可否の判定が容易かつ確実にでき、有効利用できる塊状金属物品を効率的に得ることができる。なお、物体に含まれる放射能の大きさはベクレル(Bq)で表示される。ここでいう放射能濃度とは、単位質量の金属廃棄物中における放射性同位元素の放射能量であり、一例として単位を示すと[Bq/g]となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様である塊状金属の製造方法を示すフローチャートである。
図2図1の溶融工程の状態を示す概念的側面図である。
図3図2とは異なる溶融工程の状態を示す概念的側面図である。
図4図2,3とは異なる溶融工程の状態を示す概念的側面図である。
図5図2,3,4とは異なる溶融工程の状態を示す概念的側面図である。
図6図1の凝固工程の状態を示す概念的側面図である。
図7図6とは異なる凝固工程の状態を示す概念的側面図である。
図8図6,7とは異なる凝固工程の状態を示す概念的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一態様である塊状の金属物品の製造方法について詳説する。
【0011】
[塊状の金属物品の製造方法]
本発明の一態様である塊状の金属物品の製造方法は、図1に示すように、原子力施設内の金属を溶融して塊状の金属物品を製造する方法であって、上記金属を溶融する工程と、上記溶湯の1又は複数のサンプルを採取する工程と、上記溶融工程で得られた溶湯を凝固する工程とを備えており、上記採取工程で得られた1又は複数のサンプルの外部放射線を測定する工程と、上記溶湯への空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する工程とをさらに備える。当該塊状の金属物品は、上記原子力施設内で製造され、上記原子力施設外で有効利用される。
【0012】
(金属)
当該塊状金属物品の製造方法で用いられる金属は、原子力施設内で使用された金属であって、放射性物質が付着する等により汚染されている可能性がある金属である。例としては、機器、配管、弁、配線、支持構造物、鉄筋、鉄骨等が挙げられる。付着する放射性物質としては、例えば、放射性コバルト、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性核種が挙げられる。
【0013】
<溶融工程>
溶融工程は、金属を炉で溶融する。溶融工程は、図2に示すように、金属1を溶融する準備として、所定の場所に集積した原子力施設内の金属を分別及び切断して保管エリアPに保管する工程と、図3に示すように、保管されていた金属1を溶融して塊状の金属物品を製造する処理エリアRに搬送し、炉3に投入する工程とを含む。
【0014】
(保管工程)
保管工程は、所定の場所に集積した金属を金属の種類毎に分別及び切断して保管エリアに保管する。分別された金属1は、炉3に投入可能な大きさに切断し容器2に収納する。容器2は保管エリアPへフォークリフトL等で搬送される。
【0015】
(投入工程)
投入工程は、保管されていた金属を、処理エリアRに搬送し、炉3に投入する。具体的には、保管エリアPに保管されていた容器2を、炉3が設置されている処理エリアRに搬送し、容器2を開封して天井クレーン4で金属1を吊り上げる等して炉3に投入する。
【0016】
炉3に金属1を投入しつつ、金属1を溶融する。金属1の投入が所定の量に達すると投入を停止し、溶融を継続しながら、後述する採取工程で溶湯Hのサンプルを採取する。溶融は、図4に示すように、その状態を適宜確認しながら行うことが好ましい。具体的には、溶融温度の測定、投入物の溶解状況等を確認しつつ溶融することが好ましい。
【0017】
(炉)
溶融工程で用いられる炉は、電気炉等とすることもできるが、高周波誘導炉であることが好ましい。高周波誘導炉は電気炉等と比して、炉3内の溶湯Hを撹拌する能力に優れるため、溶湯Hの均質化を図ることができる。溶湯Hの均質化が図れると、後述する測定工程において測定されるサンプルの代表性を高くすることができる。
【0018】
炉3は、開口を覆う蓋5を有する。蓋5を有することにより、空間中の放射性物質が炉3内に進入することを抑制することができる。蓋5は、放射性物質の進入を効果的に抑制するため、金属1の投入、上記溶融状態の確認等、必要時にのみ開けられ、それ以外では、図5に示すように、閉じていることが好ましい。
【0019】
また、炉3は、リングフード7をさらに備えることが好ましい。炉3に金属1を投入する時に、投入中の金属1が溶湯Hに接して急激に加熱されて、金属1に付着した放射性物質が空間に移行しやすい状態になる。この時、蓋5は開いた状態なので、空間に移行した放射性物質は、周囲の機器や床、天井、壁の表面までさらに移行し、付着するおそれがある。これらの付着物が、後に剥離し、再び空間を経由して溶湯Hに混入すると、溶湯Hの放射能濃度を上昇させるおそれがある。また、上記付着物の侵入が溶湯Hのサンプルを採取した後であれば、サンプルから外部放射線を測定することで評価した放射能濃度と、溶湯Hから得た塊状金属物品の放射能濃度との差が大きくなるおそれがある。このため、リングフード7を炉3の口に配置することにより、炉3から空間に移行する放射性物質を回収して周囲への放射性物質の移行、付着を防止し、その結果として、周囲の放射性物質が炉3内の溶湯Hに混入することを抑制できる。
【0020】
<採取工程>
採取工程は、溶湯Hの1又は複数のサンプルを採取する。具体的には、炉3に投入された金属1の全部が溶融し、その溶融状態が略均一となった溶湯Hの一部をサンプルとして採取する。
【0021】
<凝固工程>
凝固工程では、溶湯Hを凝固する。本実施例では、当該凝固工程が、図6~8に示すように、炉3の溶湯Hを一旦取鍋8に出湯する工程と、この取鍋8から鋳型10に注湯する工程とを有する工程として説明する。
【0022】
(出湯工程)
出湯工程は、溶湯Hを炉3から取鍋8に出湯する。具体的には、以下のとおりである。準備した取鍋8の内部をガスバーナ等で予熱する。予熱した取鍋8の開口を取鍋蓋9で閉じて、炉3まで移動する(図6)。炉3の蓋5及び取鍋8の取鍋蓋9を開け、炉3を傾動して溶湯Hを取鍋8に出湯する(図7)。炉3の蓋5及び取鍋8の取鍋蓋9を閉じて、取鍋8を鋳型注湯場所に移動する。炉3は、次の溶融工程を開始、又は次の溶融工程を開始するための準備をする。
【0023】
(注湯工程)
注湯工程は、取鍋8に出湯された溶湯Hを鋳型10に注湯する(図8)。具体的には、以下のとおりである。鋳型注湯場所に移動した取鍋8を傾動し、準備した鋳型10に溶湯Hを注湯する。準備した鋳型10は、注湯直前までシート11等で少なくとも開口が覆われていることが好ましい。鋳型10の少なくとも開口がシート11等で覆われることで、注湯前の鋳型10内に空間中の放射性物質が進入することを抑制することができる。
【0024】
取鍋8は、取鍋蓋9を閉じたまま注湯できるものであることが好ましい。取鍋蓋9を閉じたまま注湯できることにより、取鍋8内に空間中の放射性物質が混入することを抑制することができる。
【0025】
鋳型10への注湯は、集塵機(不図示)を配置して行うことが好ましい。この集塵機が局所フード12を有し、この局所フード12を取鍋8及び鋳型10に近接させて配置し、鋳型10への注湯を行うことがより好ましい。このようにすることで、鋳型10内に空間中の放射性物質が混入することを抑制することができる。
【0026】
鋳型10への注湯完了後、速やかに鋳型10の開口を鋳型蓋13で閉じると共に、溶湯Hの凝固が完了するまで上記開口を閉じたままとすることが好ましい。このようにすることで、凝固する溶湯H中に空間中の放射性物質が混入することを抑制することができる。また、集塵機又はその局所フード12を鋳型10に近接して配置し、凝固させることが好ましい。このようにすることで、凝固する溶湯H中に空間中の放射性物質が混入及び付着することをより抑制することができる。
【0027】
注湯された鋳型10を所定の時間冷却することで、鋳型10内の溶湯Hが凝固する。上記所定時間経過後、凝固した溶湯Hをインゴットとして鋳型10から取り出し、塊状金属物品を得る。この塊状金属物品の放射能濃度は、後述する測定工程におけるサンプルの外部放射線の測定から得た放射能濃度と略同一であるため、上記塊状金属物品金属について放射能濃度測定することを要しない。
【0028】
<サンプル測定工程>
サンプル測定工程は、上記採取工程で得られた1又は複数のサンプルの外部放射線を測定する。サンプル測定は、上記サンプルの採取後であれば随時行うことができ、例えば、上記サンプルの採取直後、溶湯Hが凝固した後に測定してもよい。サンプル測定工程は、具体的には、上記採取工程で溶湯Hから採取したサンプルの外部放射線を測定し、その結果からサンプルの放射能濃度を推定する。この推定値は、上記サンプルを得た後に、溶湯Hに放射性物質が混入等しない限り、溶湯Hから得られる塊状金属物品の放射能濃度と略同一となり得る。つまり、サンプル採取後から塊状金属物品を得るまで、空間中の放射性物質を管理し、その放射性物質が溶湯H等に混入することを抑制することで、サンプルの代表制を担保することができる。
【0029】
上記サンプルを放射線測定器で測定した測定値、又はその測定値から推定されるサンプルの放射能濃度に基づいて塊状金属物品の有効利用の可否を判定する。
【0030】
<抑制工程>
抑制工程は、上記溶湯への空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する。すなわち、抑制工程は、炉3における溶融、炉3から取鍋8への溶湯Hの出湯、取鍋8から鋳型10への溶湯Hの注入、鋳型10における溶湯Hの凝固、及び鋳型10から凝固した溶湯Hの取り出しまでの間は、処理エリアR内における空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する。
【0031】
空間中の放射性物質の混入及び付着を抑制する手段としては、具体的には、炉3、取鍋8、鋳型10のそれぞれに蓋を備えること、炉3がリングフード7を備えること、注湯前の鋳型10がシート11で覆われていること、集塵機又はその局所フード12を適宜配置すること等である。
【0032】
上記抑制手段に加えて、抑制工程が、上記溶融工程及び凝固工程を行う室を常時換気する工程と、上記室内の空間中の放射能濃度を測定する工程とを有することが好ましい。すなわち、進行している各工程に関わらず、処理エリアR内を常時換気し、処理エリアR内の空間における空気中の放射能の滞留を抑制し、上記空気中の放射能濃度を測定して、上記空気中の放射能濃度を低く管理することが好ましい。
【0033】
(換気工程)
換気工程は、溶融工程及び凝固工程を行う室を常時換気する。すなわち、処理エリアR内の空気中に存在する放射性物質が、溶湯Hに移行し、或いは炉3内、取鍋8内、鋳型10内、塊状金属物品等に付着することを抑制するために、処理エリアR内を常時換気することが好ましい。
【0034】
処理エリアR内を換気する方法としては、例えば、処理エリアRに、吸入口及び排出口を設置し、吸入口から清浄な空気を処理エリアR内に取り入れ、処理エリアR内を通った空気を排出口から取り出す方法を採用することができる。このような方法により、処理エリアR内の空気を清浄な空気と置換して、上記空気中の放射性物質濃度を低減することができる。
【0035】
(室内測定工程)
室内測定工程は、室内の空間中の放射能濃度を測定する。すなわち、処理エリアR内の空間における空気中放射能濃度を測定する。上記空気中の放射能濃度を管理する方法としては、特に限定されるものではないが、処理エリアR内に設置された放射能測定装置等を常時モニタリングする方法を採用することができる。
【0036】
[利点]
当該塊状金属物品の製造方法では、当該塊状金属物品を生産する室の空間中における放射性物質が溶湯等に混入及び付着することを抑制するように管理がされている。よって、上記溶湯から採取したサンプルの外部放射線の測定から得た放射能濃度と、当該塊状金属物品の放射能濃度とを略同一とすることができ、有効利用できる塊状金属物品を効率よく得ることができる。
【0037】
すなわち、炉3が蓋5とリングフード7とを、取鍋8が取鍋蓋9を、及び鋳型10が鋳型蓋13をそれぞれ有し、注湯前の鋳型10はシート11で覆うことで、炉3、取鍋8、鋳型10、注湯前の鋳型10、及びこれらが有する溶湯Hに空間中の放射性物質が混入及び付着することを抑制できるように管理する。また、集塵機又はその局所フード12により、溶湯Hから空間中へ移行し、又は空間から溶湯H等に混入する放射性物質を集塵するため、上記室内の放射性物質が増加することと、放射性物質が混入及び付着することとを抑制できるように管理する。さらに、当該塊状金属物品の製造方法は、室内を常時換気して上記室内の空間中の放射性物質を低減し、上記室内の放射線物質濃度を測定して、上記室内の空間における放射性物質の状態を管理する。よって、溶湯H等に空間中の放射性物質が混入及び付着することを効果的に抑制でき、溶湯H中から採取したサンプルの外部放射線の測定から得た放射能濃度は、当該塊状金属物品の放射能濃度となり得、サンプルの代表性が担保される。
【0038】
また、溶湯の撹拌力に優れた高周波誘導路を用いることにより、炉3内の溶湯Hの均質性を図ることができるため、溶湯H中から採取したサンプルの外部放射線の測定から得た放射能濃度と、当該状金属物品の放射能濃度との同一性をより向上することができ、サンプルの代表性をより担保することができる。
【0039】
[その他の実施形態]
上記開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1 金属
2 容器
3 炉
4 天井クレーン
5 蓋
7 リングフード
8 取鍋
9 取鍋蓋
10 鋳型
11 シート
12 局所フード
13 鋳型蓋
H 溶湯
L フォークリフト
P 保管エリア
R 処理エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8