(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法及び積層造形物
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20230410BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230410BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230410BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B33Y10/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2019186097
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】黄 碩
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182989(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108480821(CN,A)
【文献】特表2007-531641(JP,A)
【文献】特表2014-501177(JP,A)
【文献】特開2021-59772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記空洞部の外周部を造形する外周部造形工程と、
前記外周部を除く他の部分である中実部を造形する中実部造形工程と、
を含み、
前記外周部造形工程では、前記中実部造形工程における前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードによって前記外周部を造形
した後に、造形した前記外周部の上部に前記小断面溶着ビードを積層させて補強層を形成し、
前記中実部造形工程では、前記外周部及び前記補強層を除く他の前記中実部に前記小断面溶着ビードよりも大きな断面積を有する溶着ビードを積層させる、
積層造形物の製造方法。
【請求項2】
前記外周部造形工程及び前記中実部造形工程によって、水平方向に沿う前記溶着ビードを上下方向に積層させ、前記空洞部の少なくとも上部が閉塞された前記造形物を造形する、
請求項
1に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項3】
溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードが積層されて造形され、内部に空洞部が形成された積層造形物であって、
前記空洞部の外周部と、
前記外周部を除く他の部分である中実部と、
を有し、
前記外周部は、前記中実部を形成する前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードから形成され
、前記外周部の上部には前記小断面溶着ビードで覆われた補強層が形成されており、
前記補強層には、さらに前記中実部を形成する前記溶着ビードが積層されている、
積層造形物。
【請求項4】
水平方向に沿う前記溶着ビードが上下方向に積層され、前記空洞部の少なくとも上部が閉塞されている、
請求項
3に記載の積層造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法及び積層造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段としての3Dプリンタのニーズが高まっており、特に金属材料への適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料を用いた3Dプリンタは、レーザやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
例えば、チャンバ内の所定のターゲットにホッパから粉体を供給し、ターゲット内において特定された範囲に熱源であるビームを照射して粉体を溶融および凝固させて層を積層させることにより、流路を有するインペラを成形する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の電極のアレイを備えた電極ヘッドを移動させ、アレイによって材料を層毎に順次溶着させて3次元部品を形成する積層造形システムによって、第1の溶着速度で輪郭線部分を形成し、複数の電極のアレイのうちの可変の数の電極を使用し、第1の溶着速度よりも速い第2の溶着速度で充填部分を形成することも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-180177号公報
【文献】特開2018-187679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、チャンバ内にホッパから粉体を供給し、ターゲットにビームを照射する特許文献1の技術、及び複数の電極のアレイを備えた電極ヘッドを繰り返し移動させる特許文献2の技術では、いずれも装置が大掛かりとなる。しかも、造形できる造形物の大きさがチャンバや電極ヘッドのアレイの数によって制限され、また、複雑形状の造形物の造形が困難である。
【0007】
これに対して、溶接ワイヤを溶融及び凝固させて溶着ビードを積層させて造形物を造形する積層造形技術によれば、大掛かりな設備を必要とせずに、冷却流路などの空洞部を有する複雑形状の積層造形物を、大きさの制限を受けることなく造形することができる。
【0008】
しかし、空洞部を有する積層造形物を積層造形によって造形する場合、その空洞部の外周部を形成する溶着ビードは、他の中実部を形成する溶着ビードと比べて重力等の影響による垂れが生じるおそれがある。このため、形成する空洞部の形状が歪みやすいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、歪みのない空洞部を有する造形物を容易にかつ効率よく造形することが可能な積層造形物の製造方法及び積層造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は下記構成からなる。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記空洞部の外周部を造形する外周部造形工程と、
前記外周部を除く他の部分である中実部を造形する中実部造形工程と、
を含み、
前記外周部造形工程では、前記中実部造形工程における前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードによって前記外周部を造形する、
積層造形物の製造方法。
(2) 溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードが積層されて造形され、内部に空洞部が形成された積層造形物であって、
前記空洞部の外周部と、
前記外周部を除く他の部分である中実部と、
を有し、
前記外周部は、前記中実部を形成する前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードから形成されている、
積層造形物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歪みのない空洞部を有する造形物を容易にかつ効率よく造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【
図2A】積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図2B】積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図2C】積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図2D】積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図2E】積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図3A】他の実施形態に係る積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図3B】他の実施形態に係る積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【
図4】他の形状の空洞部を有する積層造形物を示す図であって、
図4の(a)及び
図4の(b)はそれぞれ積層造形物の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
本構成の製造システム100は、積層造形装置11と、積層造形装置11を統括制御するコントローラ15と、を備える。
【0014】
積層造形装置11は、先端軸にトーチ17を有する溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。
【0015】
コントローラ15は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。
【0016】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ17には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0017】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。本構成で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。
【0018】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、ベースプレート10に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビードBが形成される。
【0019】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。
【0020】
CAD/CAM部31は、作製しようとする積層造形物の形状データを作成した後、複数の層に分割して各層の形状を表す層形状データを生成する。軌道演算部33は、生成された層形状データに基づいてトーチ17の移動軌跡を求める。記憶部35は、生成された層形状データやトーチ17の移動軌跡等のデータを記憶する。
【0021】
制御部37は、記憶部35に記憶された層形状データやトーチ17の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19を駆動する。
【0022】
制御部37は、記憶部35に記憶された層形状データやトーチ17の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19を駆動する。つまり、溶接ロボット19は、コントローラ15からの指令により、軌道演算部33で生成したトーチ17の移動軌跡に基づき、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ17を移動する。
【0023】
上記構成の製造システム100は、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、トーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、溶融した溶加材Mをベースプレート10上に供給する。これにより、例えば、水平に配置させたベースプレート10上に複数の線状の溶着ビードBが水平方向に積層された積層造形物Wが造形される。
【0024】
図1においては、水平に設置された鋼板からなるベースプレート10上に複数の溶着ビードBを積層させて複数の空洞部Cが水平方向に沿って形成された積層造形物Wを造形する様子を示している。このように、この製造システム100による造形技術によれば、大掛かりな設備を必要とせずに、空洞部Cを有する複雑形状の積層造形物Wを容易に造形することができる。この空洞部Cは、例えば、流体が通される流路等として用いられる。具体的には、この積層造形物Wを、例えば、ミキサーやポンプなどのロータとして用いる際に、空洞部Cに冷却水などの冷却媒体が流される。そして、この冷却媒体が空洞部Cへ流れることで、積層造形物Wが冷却される。
【0025】
ところで、空洞部Cを有する積層造形物Wを積層造形によって造形する場合、その空洞部Cの外周部を形成する溶着ビードBは、他の中実部を形成する溶着ビードBと比べて重力等の影響による垂れが生じるおそれがある。このため、形成する空洞部Cの形状が歪みやすいという問題がある。
【0026】
このため、本実施形態では、歪みのない空洞部Cを有する積層造形物Wを造形するために、以下のように積層造形物Wを製造する。
図2A~
図2Eは、積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
【0027】
図2Aに示すように、水平に設置したベースプレート10に対して、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、積層造形装置11のトーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、ベースプレート10上に溶着ビードBを形成する。そして、この溶着ビードBを積層させて積層部W1を造形する(中実部造形工程)。
【0028】
図2B及び
図2Cに示すように、積層部W1を空洞部Cの外周部Waの造形予定位置(
図2B及び
図2Cにおける点線部分)に達するまで造形したら、外周部Waの造形予定位置に、小断面溶着ビードBsを形成する(外周部造形工程)。この小断面溶着ビードBsは、外周部Waを除く他の部分である中実部Wbを造形する溶着ビードBよりも小さい断面積を有している。
【0029】
ここで、溶着ビードBと小断面溶着ビードBsとは、異なる施工速度で形成する。例えば、小断面溶着ビードBsに対して4倍の施工速度で中実部Wbの溶着ビードBを形成する。換言すれば、溶着ビードBに対して1/4の施工速度で小断面溶着ビードBsを形成する。これにより、中実部Wbを造形する溶着ビードBに対して小断面溶着ビードBsの断面積が相対的に小さくされる。なお、施工速度を上げて小断面溶着ビードBsよりも大きな断面の溶着ビードBを形成するには、例えば、小断面溶着ビードBsを形成する場合と比べ、溶加材Mの送給速度を速くすればよい。
【0030】
図2Dに示すように、積層部W1を外周部Waの形成予定位置の上部近傍まで造形したら、さらに外周部Waの形成予定位置に小断面溶着ビードBsを形成し、外周部Waを造形する。これにより、外周部Waが形成されて空洞部Cの上部が閉塞された積層部W1を造形する。
【0031】
図2Eに示すように、外周部Waを形成して空洞部Cを閉塞させたら、外周部Waを除く他の中実部Wbに小断面溶着ビードBsよりも大きな断面積を有する溶着ビードBを積層させる。これにより、小断面溶着ビードBsからなる外周部Waによって囲われた空洞部Cを有する積層造形物Wが得られる。
【0032】
このように、本実施形態に係る積層造形物の製造方法及び積層造形物によれば、空洞部Cの外周部Waを、この外周部Waを除く他の中実部Wbを造形する際の溶着ビードBよりも断面積の小さい小断面溶着ビードBsによって造形する。これにより、空洞部Cの外周部Waを造形する際には、その上部においても、重力等による垂れを抑制することができ、また、その他の中実部Wbを造形する際には、大きな断面積の溶着ビードBによって効率よく造形することができる。特に、精度が要求される空洞部Cの外周部Waを造形した後に、中実部Wbにおける未造形部分を小断面溶着ビードBsより大きな断面積の溶着ビードBによって造形する。これにより、歪みのない空洞部Cを有する積層造形物Wを容易にかつ効率よく迅速に造形することができる。
【0033】
次に、他の実施形態に係る積層造形物の製造方法及び積層造形物について説明する。
図3A及び
図3Bは、他の実施形態に係る積層造形物の製造手順を示す製造途中の積層造形物の概略断面図である。
図3Aに示すように、他の実施形態では、小断面溶着ビードBsで外周部Waを形成して空洞部Cを閉塞させたら、その外周部Waの一部である上部に、小断面溶着ビードBsを積層させて補強層Wcを形成する。これにより、外周部Waの上部を小断面溶着ビードBsからなる補強層Wcによって覆う。
【0034】
その後、
図3Bに示すように、外周部Wa及び補強層Wcを除く他の中実部Wbに小断面溶着ビードBsよりも大きな断面積を有する溶着ビードBを積層させる。これにより、小断面溶着ビードBsからなる外周部Waによって囲われた空洞部Cを有する積層造形物Wが得られる。
【0035】
この他の実施形態に係る積層造形物の製造方法及び積層造形物によれば、重力の影響を受けやすい外周部Waの上部を小断面溶着ビードBsで覆って補強することができる。これにより、空洞部Cの外周部Waの上部に溶着ビードBを積層させて中実部Wbを造形する際に、この溶着ビードBから受ける外力による影響を抑えることができる。また、溶着ビードBを積層する際の入熱量が大きくても外周部Waの一部が溶け落ちることを抑制できる。
【0036】
なお、製造する積層造形物Wにおける空洞部Cは、断面円形状に限らない。例えば、空洞部Cとしては、
図4の(a)に示すように、水平方向に長い断面長円形状であってもよい。また、
図4の(b)に示すように、上部がアーチ状に形成された縦長形状であってもよい。
【0037】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0038】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記空洞部の外周部を造形する外周部造形工程と、
前記外周部を除く他の部分である中実部を造形する中実部造形工程と、
を含み、
前記外周部造形工程では、前記中実部造形工程における前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードによって前記外周部を造形する、
積層造形物の製造方法。
【0039】
上記(1)の構成の積層造形物の製造方法によれば、空洞部の外周部を、この外周部を除く他の中実部を造形する際の溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードによって造形する。これにより、空洞部の外周部を造形する際には、重力等による垂れを抑制することができ、また、その他の中実部を造形する際には、大きな断面積の溶着ビードによって効率よく造形することができる。つまり、歪みのない空洞部を有する積層造形物を容易にかつ効率よく造形することができる。
【0040】
(2) 前記外周部造形工程による前記外周部の造形完了後に、前記中実部造形工程によって前記中実部における未造形部分を造形する、
(1)に記載の積層造形物の製造方法。
【0041】
上記(2)の構成の積層造形物の製造方法によれば、精度が要求される空洞部の外周部を造形した後に、中実部における未造形部分を小断面溶着ビードより大きな断面積の溶着ビードによって迅速に効率よく造形することができる。
【0042】
(3) 前記外周部造形工程において、前記外周部の少なくとも一部を前記小断面溶着ビードで覆う、
(1)または(2)に記載の積層造形物の製造方法。
【0043】
上記(3)の構成の積層造形物の製造方法によれば、例えば、重力等の外力の影響を受けやすい外周部の一部を小断面溶着ビードで覆って補強することができる。これにより、空洞部の外周部に溶着ビードを積層させて中実部を造形する際に、この溶着ビードから受ける外力による影響を抑えることができる。
【0044】
(4) 前記外周部造形工程及び前記中実部造形工程によって、水平方向に沿う前記溶着ビードを上下方向に積層させ、前記空洞部の少なくとも上部が閉塞された前記造形物を造形する、
(1)から(3)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
【0045】
上記(4)の構成の積層造形物によれば、空洞部の外周部を小断面溶着ビードによって形成するので、重力の影響が大きい空洞部の外周部における上部においても、溶着ビードの垂れ落ちによる空洞部の歪みが抑制される。これにより、歪みが抑えられた空洞部を有する積層造形物を容易にかつ効率よく造形することができる。
【0046】
(5) 溶加材を溶融及び凝固させた複数の溶着ビードが積層されて造形され、内部に空洞部が形成された積層造形物であって、
前記空洞部の外周部と、
前記外周部を除く他の部分である中実部と、
を有し、
前記外周部は、前記中実部を形成する前記溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードから形成されている、
積層造形物。
【0047】
上記(5)の構成の積層造形物によれば、空洞部の外周部が、中実部の溶着ビードよりも断面積の小さい小断面溶着ビードから形成されている。これにより、この積層造形物の空洞部の外周部を造形する際には、重力等による垂れを抑制することができ、また、その他の中実部を造形する際には、大きな断面積の溶着ビードによって効率よく造形することができる。これにより、歪みのない空洞部を有し、しかも、容易にかつ効率よく造形することが可能な積層造形物とすることができる。
【0048】
(6) 前記外周部の少なくとも一部が前記小断面溶着ビードで覆われている、
(5)に記載の積層造形物。
【0049】
上記(6)の構成の積層造形物によれば、溶着ビードを積層させて造形する際に、例えば、重力等の外力の影響を受けやすい外周部の一部を小断面溶着ビードで覆って補強し、空洞部の外周部に溶着ビードを積層させて中実部を造形する際に、この溶着ビードから受ける外力による影響を抑えることができる。
【0050】
(7) 水平方向に沿う前記溶着ビードが上下方向に積層され、前記空洞部の少なくとも上部が閉塞されている、
(5)または(6)に記載の積層造形物。
【0051】
上記(7)の構成の積層造形物によれば、空洞部の外周部が小断面溶着ビードによって形成されているので、重力の影響が大きい空洞部の外周部における上部においても、溶着ビードの垂れ落ちによる空洞部の歪みが抑制される。これにより、歪みが抑えられた空洞部を有する積層造形物とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
B 溶着ビード
Bs 小断面溶着ビード
C 空洞部
M 溶加材
W 積層造形物
Wa 外周部
Wb 中実部