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特許7260144デジタル-アナログ変換器及び人工ニューロン回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】デジタル-アナログ変換器及び人工ニューロン回路
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/063 20230101AFI20230411BHJP
   H03M 1/66 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
G06N3/063
H03M1/66 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019016024
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123250
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上ノ原 誠二
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-314286(JP,A)
【文献】特開2006-311624(JP,A)
【文献】特開2013-118639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
H03M 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をトリガとして、複数のビットのいずれかに対応するサンプリング信号を出力するサンプリング回路と、
前記サンプリング信号が出力される度に、前記複数のビットのいずれかと、当該ビットに対応する前記サンプリング信号との論理積に従って、単調に時間変化する電流を遮断又は出力する電流源と、
を備えるデジタル-アナログ変換器。
【請求項2】
前記電流源は、前記複数のビットの最上位ビットに基づいて、単調減少する電流を遮断若しくは出力するか又は単調増加する電流を遮断若しくは出力する、
請求項1に記載のデジタル-アナログ変換器。
【請求項3】
前記電流の時定数は、前記複数のビットの数に応じて定められている、
請求項2に記載のデジタル-アナログ変換器。
【請求項4】
前記電流の最大値又は最小値が可変である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル-アナログ変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル-アナログ変換器及び人工ニューロン回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル-アナログ変換器が用いられている。例えば、下記非特許文献1には、電流源スイッチ型のデジタル-アナログ変換器が記載されている。電流源スイッチ型のデジタル-アナログ変換器は、動作が比較的高速であり、映像信号処理や通信に用いられることがあるが、消費電力が比較的大きく、分解能を増やす毎に回路規模が指数関数的に増大してしまう。
【0003】
また、下記非特許文献2には、抵抗ストリング型のデジタル-アナログ変換器が記載されている。抵抗ストリング型のデジタル-アナログ変換器は、動作の線形性が保証されているという特徴があるが、分解能を増やす毎に回路規模が指数関数的に増大してしまう。
【0004】
さらに、下記特許文献1には、抵抗ラダー型のデジタル-アナログ変換器が記載されている。抵抗ラダー型のデジタル-アナログ変換器は、高速動作には適さないものの、回路規模を比較的小さくできるため、サーボモータ制御等において広く用いられている。なお、高精度化には、レーザトリミングが必要となる。
【0005】
また、下記特許文献2には、容量アレイ型のデジタル-アナログ変換器が記載されている。容量アレイ型のデジタル-アナログ変換器は、抵抗ラダー型の抵抗を容量に置き換えた構成であり、消費電力が比較的小さく、回路規模を比較的小さくできる。
【0006】
また、下記非特許文献3には、デルタ-シグマ型のデジタル-アナログ変換器が記載されている。デルタ-シグマ型のデジタル-アナログ変換器は、分解能が比較的高く、回路規模を小さくできるため、オーディオ機器等に用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3890610号明細書
【文献】米国特許第5889468号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】T. Miki, 外5名, "An 80-MHz 8-bit CMOS D/A converter", IEEE Journal of Solid-State Circuits, Volume 21, Issue 6 , 1986
【文献】H.-U. Post and K. Schoppe, "A 14-bit monotonic NMOS D/A converter", IEEE Journal of Solid-State Circuits, Volume 18, Issue 3 , 1983
【文献】H. Inose, Y. Yasuda and J. Murakami, "A Telemetering System by Code Modulation - Δ-Σ Modulation", IRE Transactions on Space Electronics and Telemetry, Volume SET-8, Issue 3 1962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2並びに非特許文献1、2及び3に記載されたデジタル-アナログ変換器は、抵抗又は容量を構成要素とするものである。しかしながら、抵抗や容量は、実装面積が比較的大きく、チップ上に数百~数千単位で集積することが困難である。そのため、例えば、重み係数をデジタル値としてメモリに長期記憶し、アナログ回路で入力信号と重み係数の積和演算を行う人工ニューロンを数万単位で集積した人工ニューロン回路を作成するためには、より高密度で集積可能なデジタル-アナログ変換器が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は、実装面積がより小さく、より高密度で集積可能なデジタル-アナログ変換器及び人工ニューロン回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るデジタル-アナログ変換器は、入力信号をトリガとして、複数のビットのいずれかに対応するサンプリング信号を出力するサンプリング回路と、サンプリング信号が出力される度に、複数のビットのいずれかと、当該ビットに対応するサンプリング信号との論理積に従って、単調に時間変化する電流を遮断又は出力する電流源と、を備える。
【0012】
この態様によれば、複数のビットの値に応じて電流を遮断又は出力することとして、時間変化する波形によってデジタル信号をアナログ信号に変換することで、複数のビットの数が多くなっても、電流源の数を増やす必要がなくなり、実装面積がより小さくなり、より高密度で集積可能となる。
【0013】
上記態様において、電流源は、複数のビットの最上位ビットに基づいて、単調減少する電流を遮断若しくは出力するか又は単調増加する電流を遮断若しくは出力してもよい。
【0014】
この態様によれば、正負両方の範囲のアナログ信号を利用して、デジタル信号をアナログ信号に変換することができる。
【0015】
上記態様において、電流の時定数は、複数のビットの数に応じて定められてもよい。
【0016】
この態様によれば、電流の変化幅を効率良く用いてデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。
【0017】
上記態様において、電流の最大値又は最小値が可変であってもよい。
【0018】
この態様によれば、デジタル信号に対応するアナログ信号の範囲を調整可能とすることができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る人工ニューロン回路は、上記態様に記載のデジタル-アナログ変換器から出力される電流により充電又は放電されるコンデンサと、コンデンサの電圧に基づいて、発火信号の出力を制御する出力回路と、発火信号を出力した場合にコンデンサの電圧をリセットするリセット回路と、を備えてもよい。
【0020】
この態様によれば、入力信号と重み係数の積和演算をアナログ信号で行うことで、比較的少ない電力でニューロンの出力を演算することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、実装面積がより小さく、より高密度で集積可能なデジタル-アナログ変換器及び人工ニューロン回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るデジタル-アナログ変換器の概要を示す図である。
図2】本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器のデジタル信号読出回路の回路図である。
図3】本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器のアナログ信号出力回路の回路図である。
図4】本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器によるデジタル-アナログ変換の第1例を示すタイミングチャートである。
図5】本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器によるデジタル-アナログ変換の第2例を示すタイミングチャートである。
図6】本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器によるデジタル-アナログ変換の例を示すグラフである。
図7】本実施形態に係る人工ニューロン回路の概要を示す図である。
図8】本実施形態に係る人工ニューロン回路の回路図である。
図9】本実施形態に係る人工ニューロン回路による発火信号の生成を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタル-アナログ変換器10の概要を示す図である。デジタル-アナログ変換器10は、デジタル信号である複数のビットB1~B8を読み出して、複数のビットの値を時間波形として出力するデジタル信号読出回路11と、デジタル信号読出回路11の出力を受け付けて、アナログ信号である電流Iout(t)を出力するアナログ信号出力回路12とを備える。なお、本実施形態では、ビット数が8の場合について説明するが、デジタル-アナログ変換器10により変換されるデジタル信号のビット数は任意である。
【0025】
デジタル信号読出回路11は、複数のビットB1~B8、遅延回路の電圧Vdl及び入力信号Sin(t)を受け付ける。そして、デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(本例の場合B8)が1の場合、複数のビットB1~B7の値に応じた時間波形Spin(t)を出力する。また、デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(本例の場合B8)が0の場合、複数のビットB1~B7の値に応じた時間波形Snin(t)を出力する。その他の出力に関しては、次図を用いて詳細に説明する。
【0026】
アナログ信号出力回路12は、時間波形Spin(t)又は時間波形Snin(t)に従ったタイミングで電流をオン・オフして、アナログ信号である電流Iout(t)を出力する。また、電流Iout(t)によってコンデンサ(本例では0.5pF)が充放電され、アナログ信号である電圧Vc(t)が出力される。
【0027】
図2は、本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器10のデジタル信号読出回路11の回路図である。デジタル信号読出回路11は、入力信号Sin(t)をトリガとして、複数のビットB1~B7のいずれかに対応するサンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)を出力するサンプリング回路11aを備える。以下では、図4に示すデジタル-アナログ変換の第1例を示すタイミングチャート及び図5に示すデジタル-アナログ変換の第2例を示すタイミングチャートを参照しつつ、デジタル信号読出回路11の構成について説明する。ここで、図4に示すデジタル-アナログ変換の第1例を示すタイミングチャートは、複数のビットB1~B8の最上位ビット(B8)が1である場合の例を示しており、図5に示すデジタル-アナログ変換の第1例を示すタイミングチャートは、複数のビットB1~B8の最上位ビット(B8)が0である場合の例を示している。
【0028】
デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)を除いた複数のビットB1~B7に降順で対応する複数の遅延回路(DL)によって、サンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)を逐次出力する。具体的には、初段の遅延回路(DL)にはサンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)のパルス幅を制御する電圧Vdlが固定値で入力される。そして、入力信号Sin(t)が初段の遅延回路(DL)に入力されると、入力信号Sin(t)の立ち下がりタイミングでサンプリング信号SB,7(t)が出力される。サンプリング信号SB,7(t)は、第7ビットB7との論理積を演算する論理回路に入力されるとともに、次段の遅延回路(DL)に入力される。そして、次段の遅延回路(DL)は、サンプリング信号SB,7(t)の立ち下がりタイミングでサンプリング信号SB,6(t)を出力する。サンプリング信号SB,6(t)は、第6ビットB6との論理積を演算する論理回路に入力されるとともに、次段の遅延回路(DL)に入力される。このようにして、サンプリング回路11aは、サンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)を逐次出力する。なお、例えば、Vdl=180mVに設定してよい。
【0029】
デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が1の場合(図4に示すタイミングチャートの場合)、サンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)と、第1~7ビットB1~B7との論理積を時間の経過とともに降順で演算し、演算結果が1である場合にハイ電圧となり、演算結果が0である場合にロー電圧となる時間波形Spin(t)を出力する。本例の場合、B7=1、B6=1、B5=0、B4=1、B3=0、B2=0、B1=0であるため、時間波形Spin(t)は、入力信号Sin(t)の後、ハイ電圧、ハイ電圧、ロー電圧、ハイ電圧、ロー電圧、ロー電圧、ロー電圧と時間変化する波形となる。
【0030】
また、デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が0の場合(図5に示すタイミングチャートの場合)、サンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)と、反転した第1~7ビットB1~B7との論理積を時間の経過とともに降順で演算し、演算結果が0である場合にハイ電圧となり、演算結果が1である場合にロー電圧となる時間波形Snin(t)を出力する。本例の場合、B7=1、B6=1、B5=0、B4=1、B3=0、B2=0、B1=0であるため、時間波形Snin(t)は、入力信号Sin(t)の後、ロー電圧、ロー電圧、ハイ電圧、ロー電圧、ハイ電圧、ハイ電圧、ハイ電圧と時間変化する波形となる。
【0031】
デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が1の場合(図4に示すタイミングチャートの場合)、入力信号Sin(t)と最上位ビットの論理積を演算し、入力信号Sin(t)と同じタイミングでハイ電圧になるリセット電圧Srsp(t)と、その反転電圧Sstp(t)とを出力する。また、デジタル信号読出回路11は、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が0の場合(図5に示すタイミングチャートの場合)、入力信号Sin(t)と反転した最上位ビットの論理積を演算し、入力信号Sin(t)と同じタイミングでロー電圧になるリセット電圧Srsn(t)と、その反転電圧Sstn(t)とを出力する。
【0032】
図3は、本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器10のアナログ信号出力回路12の回路図である。アナログ信号出力回路12は、サンプリング信号SB,1(t)~SB,7(t)が出力される度に、複数のビットB1~B7のいずれかと、当該ビットに対応するサンプリング信号との論理積に従って、単調に時間変化する電流を遮断又は出力する電流源(第1電流源12a及び第2電流源12b)を備える。
【0033】
第1電流源12aは、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が1の場合(図4に示すタイミングチャートの場合)、時間波形Spin(t)を反転した電圧を、第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2のゲート電圧として受け付ける。第1トランジスタM1は、PMOSトランジスタであってよく、ゲート電圧がロー電圧の場合、すなわち時間波形Spin(t)がハイ電圧の場合にオンとなり、電源から電流源Mpのドレイン側に電流が流れる。この電流の値は、Vgp(t)によって変化する。また、第2トランジスタM2は、NMOSトランジスタであってよく、ゲート電圧がロー電圧の場合、すなわち時間波形Spin(t)がハイ電圧の場合にオフとなる。一方、第1トランジスタM1は、ゲート電圧がハイ電圧の場合、すなわち時間波形Spin(t)がロー電圧の場合にオフとなり、第2トランジスタM2は、ゲート電圧がハイ電圧の場合、すなわち時間波形Spin(t)がロー電圧の場合にオンとなり、電流源Mpのソースを接地電位とする。この時、電流源Mpのソース電圧はゲート電圧以下であるため、電流源Mpのソース-ドレイン間に電流は流れない。
【0034】
時間波形Spin(t)が入力される直前に、アナログ信号出力回路12は、リセット電圧Srsp(t)に従って、第4トランジスタM4をオンして、電流源Mpのゲート電圧Vgp(t)を0Vに近いVrspにリセットする。この際、反転電圧Sstp(t)がロー電圧にセットされることで、第4トランジスタM4及び第5トランジスタM5間を流れるリーク電流が抑えられる。その後、コンデンサとして動作する第3トランジスタM3が充電され、電流源Mpのゲート電圧Vgp(t)は、単調増加してVDDに近付いていく。ここで、電流源Mpは、PMOSであってよく、ゲート電圧Vgp(t)がVrspの場合にソース-ドレイン間に流れる電流が大きくなり、ゲート電圧Vgp(t)がVDDに近付くほどソース-ドレイン間に流れる電流が小さくなる。なお、例えば、Vlkp=140mV、VDD=700mVに設定してよい。
【0035】
第1電流源12aは、電流源Mpのゲート電圧Vgp(t)がVrspから単調増加してVDDに近付いていく過程で、時間波形Spin(t)に従って電流源Mpをオン・オフさせて、単調減少する電流Iout(t)を遮断又は出力する。本例では、第7ビット、第6ビット及び第4ビットに対応する期間で時間波形Spin(t)がハイ電圧であるため、その期間に流れる電流Iout(t)は単調減少する非零の値となり、第5ビット、第3ビット、第2ビット及び第1ビットに対応する期間で時間波形Spin(t)がロー電圧であるため、その期間に流れる電流Iout(t)はゼロとなる。
【0036】
また、電流Iout(t)によって充電されたコンデンサの電圧Vc(t)は、電流Iout(t)に応じて上昇し、最終的にデジタル信号(B8=1、B7=1、B6=1、B5=0、B4=1、B3=0、B2=0、B1=0)に対応するアナログ信号が得られる。
【0037】
第2電流源12bは、最上位ビット(MSB、本例の場合B8)が0の場合(図5に示すタイミングチャートの場合)、時間波形Snin(t)を反転した電圧を、第6トランジスタM6及び第7トランジスタM7のゲート電圧として受け付ける。第6トランジスタM6は、PMOSトランジスタであってよく、ゲート電圧がロー電圧の場合、すなわち時間波形Snin(t)がハイ電圧の場合にオンとなり、電流源Mnのソース電圧は、ハイになる。この時、電流源Mnのゲート電圧はVDD以下であるため、電流源Mnのソース-ドレイン間に電流は流れない。また、第7トランジスタM7は、NMOSトランジスタであってよく、ゲート電圧がロー電圧の場合、すなわち時間波形Snin(t)がハイ電圧の場合にオフとなる。一方、第6トランジスタM6は、ゲート電圧がハイ電圧の場合、すなわち時間波形Snin(t)がロー電圧の場合にオフとなり、第7トランジスタM7は、ゲート電圧がハイ電圧の場合、すなわち時間波形Snin(t)がロー電圧の場合にオンとなり、電流源Mnのソースを接地電位とする。この時、電流源Mnのドレイン側から接地側にかけて、電流が流れる。この電流の値は、Vgn(t)によって変化する。
【0038】
時間波形Snin(t)が入力される直前に、アナログ信号出力回路12は、リセット電圧Srsn(t)に従って、第9トランジスタM9をオンして、電流源Mnのゲート電圧Vgn(t)をVDDに近いVrsnにリセットする。この際、反転電圧Sstn(t)がハイ電圧にセットされることで、第9トランジスタM9及び第10トランジスタM10間を流れるリーク電流が抑えられる。その後、コンデンサとして動作する第8トランジスタM8が放電され、電流源Mnのゲート電圧Vgn(t)は、単調減少して0に近付いていく。ここで、電流源Mnは、NMOSであってよく、ゲート電圧Vgn(t)がVrsnの場合にソース-ドレイン間に流れる電流が大きくなり、ゲート電圧Vgn(t)が0に近付くほどソース-ドレイン間に流れる電流が小さくなる。なお、例えば、Vlkn=420mVに設定してよい。
【0039】
第2電流源12bは、電流源Mnのゲート電圧Vgn(t)がVrsnから単調減少して0に近付いていく過程で、時間波形Snin(t)に従って電流源Mnをオン・オフさせて、非正の値からゼロに向かって単調増加する電流Iout(t)を遮断又は出力する。本例では、第7ビット、第6ビット及び第4ビットに対応する期間で時間波形Snin(t)がロー電圧であるため、その期間に流れる電流Iout(t)は単調増加する非零の値となり、第5ビット、第3ビット、第2ビット及び第1ビットに対応する期間で時間波形Snin(t)がハイ電圧であるため、その期間に流れる電流Iout(t)はゼロとなる。
【0040】
また、電流Iout(t)によって放電されたコンデンサの電圧Vc(t)は、電流Iout(t)に応じて減少し、最終的にデジタル信号(B8=0、B7=1、B6=1、B5=0、B4=1、B3=0、B2=0、B1=0)に対応するアナログ信号が得られる。
【0041】
このように、本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器10によれば、複数のビットの値に応じて電流を遮断又は出力することとして、時間変化する波形によってデジタル信号をアナログ信号に変換することで、複数のビットの数が多くなっても、電流源の数を増やす必要がなくなり、実装面積がより小さくなり、より高密度で集積可能となる。
【0042】
また、以上説明したように、第1電流源12a及び第2電流源12bは、複数のビットの最上位ビットに基づいて、単調減少する電流を遮断若しくは出力するか又は単調増加する電流を遮断若しくは出力させてよい。これにより、正負両方の範囲のアナログ信号を利用して、デジタル信号をアナログ信号に変換することができる。
【0043】
また、電流の時定数は、複数のビットの数に応じて定められていてよい。より具体的には、最下位ビットに対応する時間波形Spin(t),Snin(t)の入力が終わるタイミングで電流がゼロとなるような時定数が定められていることが望ましい。これにより、電流の変化幅を効率良く用いてデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。
【0044】
図6は、本実施形態に係るデジタル-アナログ変換器10によるデジタル-アナログ変換の例を示すグラフである。同図では、横軸にデジタル信号のデジタルコード(0~255)を示し、縦軸にアナログ信号である電圧(Vc-350)の大きさをmvの単位で示している。同図では、最上位ビットが0である場合と1である場合それぞれについて、変換パラメータを4種類設定して8ビットのデジタル信号をアナログ信号である電圧に変換する例を示している。
【0045】
実線で示す第1グラフG1は、最上位ビットが0であり、リセット電圧をVrsn=650mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、丸点線で示す第2グラフG2は、最上位ビットが0であり、リセット電圧をVrsn=630mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、角点線で示す第3グラフG3は、最上位ビットが0であり、リセット電圧をVrsn=610mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、破線で示す第4グラフG4は、最上位ビットが0であり、リセット電圧をVrsn=590mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。
【0046】
さらに、一点鎖線で示す第5グラフG5は、最上位ビットが1であり、リセット電圧をVrsp=0mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、長破線で示す第6グラフG6は、最上位ビットが1であり、リセット電圧をVrsp=20mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、長鎖線で示す第7グラフG7は、最上位ビットが1であり、リセット電圧をVrsp=40mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。また、二点鎖線で示す第8グラフG8は、最上位ビットが1であり、リセット電圧をVrsp=60mVとした場合におけるデジタル-アナログ変換の例を示す。
【0047】
このように、リセット電圧Vrsp,Vnspを調整することで、電流Iout(t)の最大値又は最小値が調整され、電圧Vc(t)の最大値又は最小値が調整される。電流の最大値又は最小値が可変であることで、デジタル信号に対応するアナログ信号の範囲を調整可能とすることができる。
【0048】
図7は、本実施形態に係る人工ニューロン回路20の概要を示す図である。本例では、人工ニューロン回路20は、第1デジタル-アナログ変換器10a、第2デジタル-アナログ変換器10b及び第3デジタル-アナログ変換器10cから出力された電流の総和Σi=1 3DAC,i(t)を受け付けて、発火信号Sout(t)を出力する。第1デジタル-アナログ変換器10a、第2デジタル-アナログ変換器10b、第3デジタル-アナログ変換器10c及び人工ニューロン回路20は、3つの人工ニューロンから発火信号の入力を受け付けて、1つの発火信号を出力する人工ニューロン100として動作する。
【0049】
第1デジタル-アナログ変換器10aは、第1人工ニューロン(図示せず)の発火信号を表す第1入力信号Sin,1(t)の入力を受け付けた場合に、第1人工ニューロンと人工ニューロン100の結合係数を表す8つのビット(B*,1)の値に応じたアナログ信号である電流IDAC,1(t)を出力する。また、第2デジタル-アナログ変換器10bは、第2人工ニューロン(図示せず)の発火信号を表す第2入力信号Sin,2(t)の入力を受け付けた場合に、第2人工ニューロンと人工ニューロン100の結合係数を表す8つのビット(B*,2)の値に応じたアナログ信号である電流IDAC,2(t)を出力する。また、第3デジタル-アナログ変換器10cは、第3人工ニューロン(図示せず)の発火信号を表す第3入力信号Sin,3(t)の入力を受け付けた場合に、第3人工ニューロンと人工ニューロン100の結合係数を表す8つのビット(B*,3)の値に応じたアナログ信号である電流IDAC,3(t)を出力する。
【0050】
図8は、本実施形態に係る人工ニューロン回路20の回路図である。人工ニューロン回路20は、第1デジタル-アナログ変換器10a、第2デジタル-アナログ変換器10b及び第3デジタル-アナログ変換器10cから出力される電流Σi=1 3DAC,i(t)により充電又は放電されるコンデンサMvxを備える。本例では、コンデンサMvxはトランジスタで構成される。電流Σi=1 3DAC,i(t)がゼロの場合、コンデンサMvxの電圧Vc(t)は、トランジスタMlkのソース-ドレイン間を流れる電流により放電されてVxrstまで減衰する。
【0051】
また、人工ニューロン回路20は、コンデンサMvxの電圧Vc(t)に基づいて、発火信号Sout(t)の出力を制御する出力回路21と、発火信号Sout(t)を出力した場合にコンデンサMvxの電圧Vc(t)をリセットするリセット回路22とを備える。出力回路21は、電圧Vc(t)がロー電圧(発火しきい値より低い電圧)の場合、発火信号Sout(t)としてロー電圧を出力する。一方、出力回路21は、電圧Vc(t)がハイ電圧(発火しきい値より高い電圧)の場合、発火信号Sout(t)としてハイ電圧を出力する。
【0052】
リセット回路22は、出力回路21により発火信号Sout(t)としてハイ電圧が出力されると、スイッチをオンして、コンデンサMvxの電圧Vc(t)をVxrstにリセットする。
【0053】
図9は、本実施形態に係る人工ニューロン回路20による発火信号Sout(t)の生成を示すタイミングチャートである。同図では、第1入力信号Sin,1(t)、第2入力信号Sin,2(t)、第3入力信号Sin,3(t)、コンデンサMvxの電圧Vc(t)及び発火信号Sout(t)を示している。本例では、第1入力信号Sin,1(t)が入力されて、第1人工ニューロンと人工ニューロン100の結合係数を表す8つのビット(B*,1)の値に応じた電流IDAC,1(t)によってコンデンサMvxが充電され、電圧Vc(t)がアルファ関数状に時間変化する様子を示している。一度目の第1入力信号Sin,1(t)が入力された場合、電圧Vc(t)は発火しきい値に到達せず、その後Vxrstまで減衰している。
【0054】
二度目の第1入力信号Sin,1(t)が入力された場合、電圧Vc(t)が減衰して小さくなる前に第2入力信号Sin,2(t)が入力されて、電流の総和が大きくなり、電圧Vc(t)が発火しきい値を超え、発火信号Sout(t)が出力されている。この際、電圧Vc(t)は、リセット回路22によってVxrstにリセットされている。
【0055】
その後、第3入力信号Sin,3(t)、第2入力信号Sin,2(t)の順に入力があり、電圧Vc(t)が減衰して小さくなる前に第2入力信号Sin,2(t)が入力されて、電流の総和が大きくなり、電圧Vc(t)が発火しきい値を超え、発火信号Sout(t)が出力されている。この際、電圧Vc(t)は、リセット回路22によってVxrstにリセットされた後、第1入力信号Sin,1(t)の入力によって再び上昇し、発火しきい値に到達せずにVxrstまで減衰している。
【0056】
このように、本実施形態に係る人工ニューロン回路20によれば、入力信号と重み係数の積和演算をアナログ信号で行うことで、比較的少ない電力でニューロンの出力を演算することができる。
【0057】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…デジタル-アナログ変換器、10a…第1デジタル-アナログ変換器、10b…第2デジタル-アナログ変換器、10c…第3デジタル-アナログ変換器、11…デジタル信号読出回路、11a…サンプリング回路、12…アナログ信号出力回路、12a…第1電流源、12b…第2電流源、20…人工ニューロン回路、21…出力回路、22…リセット回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9