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  • 特許-骨盤底筋支持補助具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】骨盤底筋支持補助具
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A41C1/00 D
A41C1/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019545551
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035624
(87)【国際公開番号】W WO2019065708
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017185488
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507186551
【氏名又は名称】株式会社 女性医療研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115544(JP,A)
【文献】特開2010-144307(JP,A)
【文献】特開2008-019547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部と、
前記環状部に連結され、前記環状部を、膣口に対して前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、前記環状部における膣口の左右に位置する左右の側部の相互間の間隔を狭める引っ張り部と
を有し、
前身頃、後身頃及び股部を有するパンツ型であり、
前記環状部が、前記股部を含む範囲に設けられ、
前記引っ張り部が、前記前身頃の範囲に設けられる前側引っ張り部と、前記後身頃の範囲に設けられる後側引っ張り部とを有し、
前記前側引っ張り部は、前記環状部の前部から前記前身頃の上部に向かって広がるように略V字状に2本設けられ、
前記後側引っ張り部は、一端が、前記環状部の後部の中央部付近に接続され、他端が、前記後身頃の上部に向かって、前記後身頃の幅方向の中央部付近に沿って1本設けられていることを特徴とする骨盤底筋支持補助具。
【請求項2】
前記環状部における前記左右の側部間に、前記引っ張り部により引っ張られる中央押さえ部をさらに有する請求項1記載の骨盤底筋支持補助具。
【請求項3】
前記環状部の少なくとも一部は、厚み方向に隆起した形状である請求項1又は2記載の骨盤底筋支持補助具。
【請求項4】
前記中央押さえ部の少なくとも一部は、厚み方向に隆起した形状である請求項2記載の骨盤底筋支持補助具。
【請求項5】
前記前身頃及び後身頃が、切断端縁からのほつれの生じない布地から形成されている請求項1~4のいずれか1に記載の骨盤底筋支持補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股間に装着され、骨盤底筋を下方から支える補助機能を果たす骨盤底筋支持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤底筋(肛門挙筋(骨盤隔膜)、肛尾靭帯、深会陰横筋、尿道括約筋、肛門挙筋等の総称で骨盤底筋群とも呼ばれる)は、骨盤の下部に位置し、主に内臓を支える働きをするが、出産、加齢等によりその機能に衰えが生じる場合がある。骨盤底筋の機能の衰えは、尿漏れ、姿勢の崩れ、運動機能の低下等の要因になる場合があり、さらには骨盤臓器が正常の位置から下垂する骨盤臓器脱につながる場合もある。そのため、骨盤底筋の収縮法の習得等を目的とした運動が推奨されている。特許文献1は、そのような運動を正しく行わせて効果を高めるためのガードルを開示している。このガードルは、該ガードルの脚部の内側部分を作用領域とし、この作用領域から前身頃側へ延びる前面引き上げ構造と、後身頃側へ延びる後面引き上げ構造とからなる伸張性帯状構造を備え、それらの弾性により引っ張り力が相互に伝達するようになっていると共に、脚部の作用領域とその近傍に、弾性変形し難い難伸長性構造を形成したものである。脚部の作用領域に弾性力が作用することで、骨盤底筋の収縮に寄与できるとしている。
【0003】
また、特許文献2は、略平板状の股間装着物を股間に当て、それを牽引紐で上方に牽引するサポーターに関するもので、骨盤底筋を上方に持ち上げて支え、骨盤底筋の機能低下を防ぐものである。特許文献3は、伸長性シートと低伸長性シートを組合せ、特に、骨盤臓器脱を抑制又は防止を目的とした女性用下着を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5661405号公報
【文献】特開2016-94690号公報
【文献】特許第5492339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、骨盤臓器脱は、上記のように骨盤臓器が正常位置から下垂する現象で、重力により、膣口を開口させてその外部に脱出しようとする力が作用する。従って、単に女性器に対して骨盤底筋を上方に押圧する方向への力を加えただけでは、膣口の開口を防ぐことが難しく、骨盤底筋の機能回復の点でも高い効果は期待できない。しかるに、特許文献1及び2は、膣乃至外陰部が直接接する股部分に接している部分を上方に押し上げて骨盤底筋を上方に押し上げるだけであり、骨盤底筋の機能回復、骨盤臓器脱の予防効果はあまり期待できない。特許文献3は、骨盤臓器脱の予防効果がある旨を述べているが、その機能は、特許文献1及び2とほぼ同様であり、股部分を上方に押し上げる力しか作用せず、骨盤底筋の機能回復や骨盤臓器脱の予防効果の点で高い効果は期待できないと考えられる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、骨盤底筋を支持して、骨盤底筋の機能回復に寄与でき、もって尿漏れ等の予防を図ることができ、これに合わせて骨盤臓器脱の予防効果も高い骨盤底筋支持補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
装着時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部と、
前記環状部に連結され、前記環状部を、膣口に対して前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、前記環状部における膣口の左右に位置する左右の側部の相互間の間隔を狭める引っ張り部と
を有することを特徴とする。
【0008】
前記環状部における前記左右の側部間に、前記引っ張り部により引っ張られる中央押さえ部をさらに有することが好ましい。
【0009】
また、前身頃、後身頃及び股部を有するパンツ型であり、
前記環状部が、前記股部を含む範囲に設けられ、
前記引っ張り部が、前記前身頃の範囲に設けられる前側引っ張り部と、前記後身頃の範囲に設けられる後側引っ張り部とを有することが好ましい。
【0010】
前記前側引っ張り部は、前記環状部の前部から前記前身頃の上部に向かって広がるように複数形成され、前記後側引っ張り部は、一端が、前記環状部の後部の中央部付近に接続され、他端が、前記後身頃の上部に向かって形成されていることが好ましい。
この場合、前記前側引っ張り部は略V字状に2本設けられ、前記後側引っ張り部が、前記後身頃の幅方向の中央部付近に沿って1本設けられていることが好ましい。
前記環状部の少なくとも一部は、厚み方向に隆起した形状であることが好ましい。また、前記中央押さえ部の少なくとも一部は、厚み方向に隆起した形状であることが好ましい。
また、前記前身頃及び後身頃として、切断端縁からのほつれの生じない布地から形成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部が、引っ張り部により引っ張られることにより、膣口の左右に位置する左右の側部の相互間の間隔が狭まる。このため、骨盤底筋を下方から上方に向かって押圧する力に加えて、膣口を狭めることになる。骨盤底筋に対して上方に向かう力で支持するため、骨盤底筋の弛み、損傷を抑制でき、尿漏れ等の予防に効果的である。また、膣にかかる上方からの圧力に対し、下方から支持するため、膣の拡張を抑制できると共に、骨盤臓器が離脱しにくくなる。すなわち、本発明の骨盤底筋支持補助具によれば、骨盤底筋の支持をしつつ尿漏れ等の予防を図ることができると共に、骨盤臓器脱の予防を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は、本発明の一の実施形態に係る骨盤底筋支持補助具の前方から見た斜視図であり、図1(b)は後方から見た斜視図である。
図2図2は、図1の骨盤底筋支持補助具の展開図である。
図3図3は、図1の骨盤底筋支持補助具の作用を説明するための図であり、該環状部を平面的に見た図である。
図4図4は、本発明の他の実施形態にかかる骨盤底筋支持補助具の環状部の構成を説明するための図であり、該環状部を平面的に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1図3は、本実施形態の骨盤底筋支持補助具10を示した図である。これらの図に示したように、本実施形態の骨盤底筋支持補助具10は、パンツ型であり、前面に位置する前身頃11、後面に位置する後身頃12、並びに、前身頃11及び後身頃12間の股間に対応する位置の股部13を有している。股部13の内側には、必要に応じて股部13の範囲を二重にするため股布が設けられる。なお、ここでいうパンツ型には、脚部の短いショーツのほか、脚部が長いタイプ、あるいは、サニタリー用、ガードル状のものなど、一般的に肌着、補正着として用いられるタイプのものを全て含む意味である。また、前身頃11、後身頃12、及び股部13は、装着位置を示しており、これらの部位が別々の生地で構成され、それらを縫製により一体化したもののほか、複数部位が一体の生地からなるもの、さらには、継ぎ目のないシームレスのもの等も含む意味である。
【0014】
骨盤底筋支持補助具10は、環状部20及び引っ張り部30を有している。環状部20は、股部13の内面を中心として設けられ、その大きさによっては、前身頃11及び後身頃12の隣接する範囲も含む。環状部20は、この股部13を中心とした範囲に、骨盤底筋支持補助部10を装着した時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられている。「膣口の外周部」とは、膣口の周囲に直に隣接した部位のみならず、小陰唇の外周部や大陰唇の外周部等を含む意味である。要は、膣口の外側を取り囲み、膣口を閉じさせる方向に付勢できる位置であればよい。
【0015】
環状部20は、図2及び図3に示したように、平面視で例えば楕円状に形成され、その長径方向が、股部13の幅方向に直交する方向となる向きで設けられている。環状部20のうち、装着時に膣口を挟む位置であって、2つの脚口15,15との間に位置する部位が、左右の側部21,22となり、左右の側部21,22を構成する略直線状となっている辺のうち、前身頃11寄りの端部21a,22a間を接続する部位が前部23となり、後身頃12寄りの端部21b,22b間を接続する部位が後部24となっている。
【0016】
なお、環状部20は、本実施形態では、側部21,22、前部23及び後部24が全て一体となっているが、それぞれの境界において隙間を有していてもよいし、また、側部21,22、前部23及び後部24のいずれかの部位が途切れていてもよい。また、側部21,22は、若干湾曲していてもよく、さらに、前部23及び後部24は、図面に示すように若干湾曲した形状であってもよいし、略直線状でもよいし、中央付近が外方に突出する山型形状等であってもよい。
【0017】
引っ張り部30は、環状部20を、前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、環状部20の左右の側部21,22の相互間の間隔を狭める機能を有している。本実施形態では、前身頃11の範囲に設けられる前側引っ張り部31と、後身頃12の範囲に設けられる後側引っ張り部32とを有する。
【0018】
前側引っ張り部31は、本実施形態では、2本形成されており、それぞれの一端31aは、環状部20の前部23に接続されており、他端31bは、前身頃11の上部に向かって相互に間隔をおくように、略V字状に設けられている。これは、前側引っ張り部31が、尿道口等を圧迫しないようにするためである。
【0019】
後側引っ張り部32は、後部24の中央部24a付近に一端32aが連結され、他端32が後身頃32bの上部に向かって設けられている。すなわち、後身頃12の幅方向(骨盤の幅方向)の中央部24a付近に沿って1本設けられている。なお、環状部20と引っ張り部30(前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32)は、本実施形態のように同じ材料で一体に設けられていてもよいが、別々に形成して、上記の部位で両者を接続して形成してもよい。
【0020】
図3に示したように、環状部20の前部23は、略V字状の2本の前側引っ張り部31によって若干左右に広がる方向(矢印A方向及びB方向)に引っ張られる。このため、前部23は、中央部付近だけでなく、前部23の範囲全体が当該方向(矢印C方向)へ引っ張られる。これに対し、後部24は、1本の後側引っ張り部32が中央部24a付近に接続されているため、中央部24a付近を中心として後身頃12の上部方向(矢印D方向)に引っ張られる。中央部24a付近が引っ張られると、後部24の両端に位置する側部21,22の端部21b,22b同士が相互の間隔を狭める方向(矢印E方向及びF方向)に変位する。これにより、左右の側部21,22の相互間の間隔は、図3の想像線で示したように、側部21,22全体が相互間の間隔を狭める方向に変位する。すなわち、環状部20は、その内孔20aがより長細くなるように変形する。このように、側部21,22が相互間の間隔を狭めるように変位すると、その内側に位置する女性器の膣口を狭めようとする力が作用する。
【0021】
本実施形態は、骨盤底筋支持補助具10がパンツ型であり、前身頃11及び後身頃12の上部のウエスト部14は、着用者の腰回りにフィットさせるため、ゴムが配置されるなどしている。ゴムを配置せずに、弾性糸を密に配置したり、合成樹脂をコーティングしたりするなどしてウエスト部14のみを、前身頃11及び後身頃12の他の部位よりも伸縮性が高くなるようにすることもできる。また、ウエスト部14を分断して、分断部同士をボタン、ホック等で係合して腰回りにフィットさせる構成とすることもできる。さらに、前身頃11及び後身頃12自体が、少なくとも一部に弾性糸が用いられ、あるいは、合成樹脂がコーティングされるなどして所定の伸縮性を有し、その伸縮性により着用者にフィットする場合には、ウエスト部14にゴム等を設けなくてもよい。前側引っ張り部31は、上記のようにその他端31bが前身頃11の上部に向かって延びている。好ましくは、他端31bはウエスト部14に接続されている。後側引っ張り部32の他端32bも同様であり、後身頃12の上部に延びており、好ましくはウエスト部14に接続されている。骨盤底筋支持具10の装着時において、ウエスト部14が腰回りで保持されることになるため、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32には、それぞれ上部方向(股部13からウエスト部14に向かう方向)に張力が作用する。その結果、前側引っ張り部31の一端31a及び後側引っ張り部32の一端32aに接続された環状部20の前部23及び後部24が上記のように引っ張られ、環状部20の内孔20aが長細くなるように変形する。
【0022】
ここで、本実施形態の骨盤底筋支持具10はパンツ型であるため、前身頃11、後身頃12及び股部13は、通常の肌着、補正着等に用いられている素材、一般的には所定の伸縮性を有する素材が用いられる。但し、前身頃11、後身頃12及び股部13のうち、上記の環状部20及び引っ張り部30に相当する部位は、ウエスト部14を起点として、装着時に上方へ引っ張る力が作用するようになっている。そのため、例えば、環状部20及び引っ張り部30に相当する部位が他の部位よりも面方向(引っ張り方向)に沿った伸縮性が低い構成としたり、あるいは、環状部20及び引っ張り部30に相当する部位の面方向(引っ張り方向)に沿った弾性復元力が高い構成としたりすることができる。具体的には、例えば、環状部20及び引っ張り部30に相当する部位に樹脂コーティングを施して当該部位の伸縮性を低くしたり、当該部位のみを相対的に伸縮性の低い別の素材あるいは弾性復元力の高い別の素材で形成して他の部位と縫い継いだりあるいは隣接部位の一部を重ね合わせて溶着等により貼り合わせたり、当該部位に伸縮性の低い別の素材あるいは弾性復元力の高い別の素材を重ね合わせて縫製や溶着等により接合したりすること等の手段を採用できる。なお、前身頃11、後身頃12及び股部13とは別の素材を縫製等により用いる場合、その素材としては、布帛、紙、合成樹脂等のいずれでもよいが、女性器や肌に当接しても違和感が少なくなるような柔軟な素材が好ましい。
【0023】
また、環状部20は、少なくとも一部が、好ましくは少なくとも側部21,22が厚み方向に隆起した立体的な形状とすることが好ましい。これにより、膣口の外周部に当接しやすくなり、環状部20によって膣口を閉じさせる方向に付勢する力が作用しやすくなる。隆起方向は外方であってもよいが、女性器に接触する方向である内方に向かって隆起していることが好ましい。環状部20をこのように隆起させる手段としては、例えば、環状部20に対応する部位に、上記のように他の部位よりも相対的に伸縮性の低い別の素材等を積層したりすることができる。この別の素材は柔軟な素材であれば、布帛、紙、合成樹脂等、種類が限定されるものではないことは上記のとおりである。また、股部13を中心とする環状部20を形成する部位の素材自体を立体的に若干隆起させるように加工することも可能である。なお、環状部20の少なくとも一部を隆起させる場合、その高さは限定されるものではなく、また、素材の柔軟性、さらには、股部13の素材自体を隆起させるか、他の素材を積層させるかといった隆起させる方法によっても異なるが、着用者の異物感を軽減するため、0.5mm~20mm程度の範囲とすることが好ましく、1mm~5mmの範囲とすることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の骨盤底筋支持補助具10の作用を説明する。本実施形態の骨盤底筋支持補助具10は、パンツ型であるため、着用者は脚口15,15に脚を通し、通常のパンツと同様に着用する。この際、本実施形態の骨盤底筋支持補助具10を、肌に直接接触する最も内側の被服として着用してもよいし、通常の肌着を着用した後、その上に着用するようにしてもよい。いずれにしても、本実施形態の骨盤提起支持補助具10を着用すると、環状部20の側部21,22が着用者の膣口の外側部に位置すると共に、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32がウエスト部14方向に引っ張られる。それにより、環状部20の前部23及び後部24が相互に反対方向(図3の矢印C方向及びD方向)に引っ張られる。その結果、まず、環状部20が膣口外周部を上方に押し上げようとする力が働き、骨盤底筋を支持する。それにより、膣にかかる上方からの圧力に対抗でき、圧力による膣の拡径を予防できる。
【0025】
また、後側引っ張り部32は、後部24の中央部24aのみに接続されているため、環状部20の前部23及び後部24が相互に反対方向(図3の矢印C方向及びD方向)に引っ張られると、環状部20の内孔20aを挟んだ2つの側部21,22が相互に接近する方向(図3の矢印E方向及びF方向)に変位しようとする。その結果、側部21,22に対応する着用者の膣口をその外側部から閉じさせる方向に力が作用する。
【0026】
すなわち、本実施形態によれば、環状部20により、着用者の膣口の外周部を上方に押し上げることによる骨盤底筋を支持する力と共に、膣口を閉じさせる方向への力が同時に作用する。膣口を閉じさせる力は、膣口から脱出していない骨盤臓器を膣内に押しとどめるように作用する。従って、本実施形態の骨盤底筋支持補助具10は、骨盤底筋を支えて正常に戻すように作用しつつ、骨盤臓器脱の予防用として高い効果が期待できる。また、膣口を閉じながら上方へ押圧することで、骨盤底筋体操と同様の効果が得られ、さらには、骨盤底筋体操の運動効果の向上に寄与でき、尿漏れ、尿失禁等の予防、治療効果も高い。また、環状部20の後部24が会陰部に相当する位置となるため、会陰部に生じるリンパ浮腫、静脈瘤の予防、治療にも有効である。また、上記の特許文献2のような略平板状の股間装着物を用いるものではないため、それらが異物となって股ずれが生じるようなこともない。
【0027】
図4は、本発明の他の実施形態にかかる骨盤底筋支持補助具10で採用した環状部20の構成を平面的に示した図である。この実施形態では、環状部20の側部21,22間に跨がるように該環状部20の表面及び裏面のいずれか少なくとも一方側に積層された、外周が略楕円形の布等からなる中央押さえ部25が想像線で示したように設けられている。中央押さえ部25は、環状部20の側部21,22間に設けられていればよく、その幅が側部21,22間の間隔よりも狭く、前部23付近及び後部24付近のみに接合され、側部21,22との間に隙間を有する程度の大きさでもよい。但し、幅が広い方が女性器への当たり感がやわらぐことから好ましい。この中央押さえ部25は、環状部20の他の部位(側部21,22等)と同様に、例えば、前身頃11及び後身頃12の他の部位よりも相対的に伸縮性の低い素材で形成されている。
【0028】
従って、装着によって、環状部20の前部23及び後部24が相互に反対方向(図3の矢印C方向及びD方向)に引っ張られると、中央押さえ部25は、上方に変位しようとしてそれが女性器を押圧する。すなわち、中央押さえ部25は、環状部20の中央付近に位置するため、膣口に接する方向ないしは膣口を押圧する方向に力を作用させることになり、その力が、側部21,22と共に骨盤底筋を上方に押圧する力として作用し、さらに、膣口付近に下垂した骨盤臓器を上方に押し上げ、あるいは、膣口から脱出している骨盤臓器を押し込む方向に押圧する力として作用する。よって、本実施形態によれば、骨盤底筋の支持に加え、環状部20の側部21,22によって膣口を閉じさせようとすると共に、さらに、中央押さえ部25により下垂した骨盤臓器を押圧する力をより強く作用させることができる。
【0029】
なお、中央押さえ部25は、その前部及び後部が前側引っ張り部31,31及び後側引っ張り部32に接する程度の大きさを有し、前側引っ張り部31,31及び後側引っ張り部32に一部重なる程度の大きさであることが好ましい。前側引っ張り部31,31及び後側引っ張り部32の引っ張り力が直接作用し、確実に引っ張ることができる。また、中央押さえ部25のうちの少なくとも一部は隆起していることが好ましい。この場合、好ましくはその内面及び外面の少なくとも一方が、より好ましくは少なくとも内面が膣口方向に突出するように隆起していることが好ましい。これにより、骨盤臓器への押圧力をさらに高めることができる。この隆起部位を形成する方法は任意であり、中央押さえ部25に布製、合成樹脂や紙製等の柔軟な板状あるいは半球状等の素材を積層して厚みを増したり、又は、中央押さえ部25に予めスリットを形成しておき、半球状等に形成された部材の端部をそのスリットに差し込んだりして着脱自在に取り付けたりすることで達成できる。また、股部13を中心として形成さえる環状部20を、樹脂コーティングを施すなどして、股部13(あるいは内側に設けられる股布)と一体に形成した場合、環状部20に取り囲まれた範囲をそのまま中央押さえ部25とすることができる。この場合、環状部20が引っ張られることで、側部21,22同士が近接するように変位しつつ、中央押さえ部25にも引張力が作用して、女性器を押圧するように、環状部20、中央押さえ部25、引っ張り部30、前身頃11及び後身頃12等の伸縮性や弾性復元力が異なるように調整される。
【0030】
上記した実施形態では、引っ張り部30を構成する前側引っ張り部31を略V字状に2本形成しているが、環状部20の前部23を引っ張ることができる限り、その本数、配置形状等は限定されるものではない。後側引っ張り部32は、環状部20の後部24の中央部24a付近を引っ張ることができればよく、典型的には上記実施形態のように1本設けた構成であるが、中央部24a付近を引っ張ることができれば2本以上であってもよく、例えば中央部24a付近に一端を接続して後身頃12の上部方向に略V字状に広がるように設けたりすることができる。また、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32共に、直線状ではなく、屈曲部を有していたり、曲線状等であったりしてもよい。さらに、環状部20は、膣口を左右外方から閉口方向に押し寄せることができる形状であれば、上記の形状に限定されるものではない。
【0031】
また、上記した実施形態は、いずれも、パンツ型の骨盤底筋支持補助具10を示しているが、前身頃11及び後身頃12を備えたパンツ型ではなく、環状部20と引っ張り部30に加えて、該引っ張り部30を着用者の腰回りで支持するウエスト支持部材(図示せず)のみを備えた構造とすることもできる。但し、上記のようにパンツ型とした場合には、着用が容易である。
【0032】
また、骨盤底筋支持補助具10の前身頃11及び後身頃12を構成する素材として、いずれの部位で切っても切断端縁からのほつれの生じない布地を用いることもできる。これにより、前身頃11及び後身頃12の上部の位置を、例えば臍回り付近となるような高い位置にして提供し、着用者が自らの好みの位置で切って使用するようにすることもできる。同様に、脚口15側に、膝付近や足首付近まで伸びた脚入れ部分を延長形成し、その長さを着用者が好みの位置で切ることにより調整可能とすることもできる。さらに、ボディスーツ型に形成して提供し、着用者が好みの形状に切断加工できるようにしてもよい。形状、デザインの自由度を高めることで、骨盤底筋支持補助具10の履き心地ないし着心地を着用者の好みに合わせて向上させることができる。また、例えば、予め数mm~数cm間隔で切り取り線(ミシン目)を設けておき、着用者が好みの位置の切り取り線に沿って切り取って長さ調整するようにしてもよい。なお、切断してもほつれにくい布地としては、従来公知の種々のものを用いることができ、例えば、特開2003-147618公報に開示のように、非弾性糸と弾性糸とを同行させた編み組織において、いずれか少なくとも一方を閉じ目により編成して切断端縁からのほつれを防止するようにしたもの、特開2009-215676号公報に開示の切断端縁がほつれない編み組織を有する伸縮布地、あるいは、実用新案登録第3123137号公報に開示されている弾性糸で編成した布地にシリコーン樹脂を塗布し、切断端縁でのほつれを防止するようにしたもの等を用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 骨盤底筋支持補助具
11 前身頃
12 後身頃
13 股部
14 ウエスト部
20 環状部
21,22 側部
23 前部
24 後部
25 中央押さえ部
30 引っ張り部
31 前側引っ張り部
32 後側引っ張り部
図1
図2
図3
図4