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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】超音波探傷システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
G01N29/265
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019204821
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076526
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 絢子
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雅彦
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032434(JP,A)
【文献】特開平06-308103(JP,A)
【文献】特開2017-203787(JP,A)
【文献】特開2007-271375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0275671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象と対向する状態で超音波探傷により前記計測対象の状態を計測するプローブと、
前記プローブに設けられ、前記プローブの存在を示す情報を光学的に読み取り可能な状態で記録した第1マーカと、
前記計測対象において材質及び厚さを示す仕様が連続して同一となる領域に各々設けられ、設けられた領域の範囲を示すと共に該設けられた領域の仕様の情報を光学的に読み取り可能な状態で記録した第2マーカと、
前記計測対象を撮像する撮像部と、
前記撮像部が取得した画像データから各々検出した前記第1マーカと前記第2マーカとの位置関係に基づいて選択した1つの前記第2マーカが示す領域の仕様の情報に基づいて前記プローブによる超音波探傷の条件を設定する制御部と、
を含む超音波探傷システム。
【請求項2】
前記撮像部は1台以上であることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷システム。
【請求項3】
前記第1マーカは、さらにプローブの仕様に関する情報が記録されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項4】
前記撮像部は、前記プローブに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項5】
さらに、基準マーカとしての第3マーカを有し、該第3マーカと第1マーカとの位置関係の変化から、前記プローブの進行方向を推定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波探傷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波探傷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、計測対象に関する情報源を取得する手段を持ち、取得した情報源から識別した計測対象に対応する合否の判定基準を決定して計測対象の内部に存在する欠陥を超音波探傷する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-271375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波探傷において正確な計測結果を得るには、計測対象の仕様(材質及び厚さ)に合わせた超音波の送信及び受信の条件の調整が必要となる。例えば、計測箇所によって計測対象の厚さ又は材質が一様でない場合、計測箇所に応じた計測条件の変更が必要となる。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、計測対象の仕様の変化に応じた計測条件の変更を考慮しておらず、作業者が計測箇所ごとに計測条件を把握しておくか、PC等に格納された計測条件の情報を参照しながら探傷器の設定を変更する必要があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、計測対象の仕様の変化に対応可能な超音波探傷システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る超音波探傷システムは、計測対象と対向する状態で超音波探傷により前記計測対象の状態を計測するプローブと、前記プローブに設けられ、前記プローブの存在を示す情報を光学的に読み取り可能な状態で記録した第1マーカと、前記計測対象において材質及び厚さを示す仕様が連続して同一となる領域に各々設けられ、設けられた領域の範囲を示すと共に該設けられた領域の仕様の情報を光学的に読み取り可能な状態で記録した第2マーカと、前記計測対象を撮像する撮像部と、前記撮像部が取得した画像データから各々検出した前記第1マーカと前記第2マーカとの位置関係に基づいて選択した1つの前記第2マーカが示す領域の仕様の情報に基づいて前記プローブによる超音波探傷の条件を設定する制御部と、を含んでいる。
【0008】
請求項1記載の発明では、計測対象を撮像して取得した画像データに写り込んだ第2マーカから抽出した計測対象の材質及び厚さを示す仕様に基づいて超音波探傷の条件を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、計測対象の仕様の変化に対応可能な超音波探傷システムを得ることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷システムによる超音波探傷の一態様を示した説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置における処理の一例を示したフローチャートである。
図4】計測対象用マーカの選択方法を示した説明図である。
図5】(A)は計測対象用マーカの端部の延長線をエリアの境界とする場合、(B)は計測対象用マーカにエリアの範囲の情報を記録した場合を各々示した説明図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置における処理の一例を示したフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置における処理の一例を示したフローチャートである。
図8】本発明の第4実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置における処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1には第1実施形態に係る超音波探傷システム10が示されている。本実施形態に係る超音波探傷システム10は、演算装置14の演算に必要なデータ及び演算装置14による演算結果を記憶する記憶装置18と、計測対象を撮影するカメラ20と、計測対象の表面に載置された状態で計測対象の超音波探傷を行う超音波プローブ24と、カメラ20で取得した画像データ及び超音波プローブ24による測定データが入力される入力装置12と、入力装置12から入力された入力データ及び記憶装置18に記憶されたデータに基づいた演算処理で計測対象の欠陥を含む計測対象の状態を推定するコンピュータ等で構成された演算装置14と、演算装置14で推定された計測対象の状態を表示するCRT又はLCD等で構成された表示装置16と、で構成されている。入力装置12は、マウス、キーボード又はタッチパネル等のデバイスを備え、カメラ20で取得した画像データ及び超音波プローブ24による測定データの他に、作業者の当該デバイスの操作によって情報を演算装置14に入力することが可能に構成されている。カメラ20は1台でもよいが、計測対象が広範の場合には、複数台のカメラ20を用いてもよい。
【0013】
超音波プローブ24は、概略形状が扁平な矩形状とされており、計測対象の表面に接触させた状態で、周波数が0.1MHz~25MHz程度の超音波のパルス信号(以下、「超音波パルス」と略記)を計測対象の表面及び内部に伝播させると共に、当該超音波パルスの反射信号、反射強度及び伝播時間を検出する。計測対象の内部に何らかの欠陥が存在する場合、当該欠陥は音響的な不連続性を有するので、欠陥を有しない部分に対して超音波プローブ24から伝播された超音波パルスの反射信号、反射強度及び伝播時間に差異が生じ得る。本実施形態では、演算装置14は、超音波プローブ24が検出した反射信号、反射強度及び伝播時間に基づいて、欠陥を含む計測対象の内部の状態を推定する。超音波プローブ24は、作業者によって計測対象の表面を移動させてもよいし、アクチュエータ類で計測対象の表面を移動させてもよい。
【0014】
図2は、本実施形態に係る超音波探傷システム10による超音波探傷の一態様を示した説明図である。図2に示したように、計測対象50は、第1エリア52、第2エリア54、第3エリア56及び第4エリア58を有する。第1エリア52は厚さd1で材質Aで構成され、第2エリア54は厚さd2で材質Aで構成され、第3エリア56は厚さd3で材質Bで構成され、そして第4エリア58は厚さd4で材質Bで構成されている。以後、本実施形態では、計測対象50において、材質及び厚さ等の仕様が連続して同一の領域を「エリア」として定義する。
【0015】
第1エリア52の表面には超音波プローブ24が載置されている。図2に示した例では、超音波プローブ24は、第1エリア52から第2エリア54、第3エリア56及び第4エリア58に移動され、第1エリア52、第2エリア54、第3エリア56及び第4エリア58の超音波探傷を行う。超音波プローブ24の上面には、超音波プローブ24が存在することを示すためのプローブ用マーカ24Mが設けられている。プローブ用マーカ24Mは、超音波プローブ24が存在することを示す情報をバーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の光学的に読み取り可能な型式で記録するが、さらに超音波プローブ24の仕様に関する情報を記録していてもよい。
【0016】
第1エリア52の表面には計測対象用マーカ52Mが、第2エリア54の表面には計測対象用マーカ54Mが、第3エリア56の表面には計測対象用マーカ56Mが及び第4エリア58の表面には計測対象用マーカ58Mが各々設置されている。上述するように、計測対象用マーカ52Mは第1エリア52に存在し第1エリア52が厚さd1の材質Aで構成され、計測対象用マーカ54Mは第2エリア54に存在し第2エリア54が厚さd2の材質Aで構成され、計測対象用マーカ56Mは第3エリア56に存在し第3エリア56が厚さd3の材質Bで構成され、計測対象用マーカ58Mは第4エリアに存在し第4エリア58が厚さd4の材質Bで構成されていることを各々示す情報が記録されている。計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mはエリアごとに1つ以上設置される。
【0017】
計測対象用マーカ52M、54M、56M、58M及び前述のプローブ用マーカ24Mの各々は、バーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の光学的に読み取り可能な型式で情報が記録されている。計測対象用マーカ52M、54M、56M、58M及びプローブ用マーカ24Mの各々は、図2において計測対象50の上方に設けられたカメラ20によって撮影される。そして、超音波探傷システム10の演算装置14は、カメラ20によって取得した画像データから計測対象用マーカ52M、54M、56M、58M及びプローブ用マーカ24Mの各々に記録された情報を取得する。又は、カメラ20を超音波プローブ24に設け、超音波プローブ24に設けたカメラ20で計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに記録された情報を取得してもよい。
【0018】
図3は、本実施形態に係る超音波探傷システム10の演算装置14における処理の一例を示したフローチャートである。ステップ300では、計測対象50の表面に存在するプローブ用マーカ24M及び計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mを撮影する。ステップ300で撮影する計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mは、後述するステップ302で選択される計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mが含まれていることを要する。カメラ20のレンズが広画角であり、カメラ20が高画質な画像データを取得可能であれば、計測対象50上に存在する計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mをすべて撮影してもよい。又は、カメラ20のアングルを変えて複数枚の画像データを取得することにより、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mのすべてを撮影してもよい。
【0019】
ステップ302では、情報を読み取る計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mを選択する。情報を読み取る計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mは、図4に示したように、例えば、超音波プローブ24の進行方向において超音波プローブ24の最も近くに存在する計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mのいずれかから選択する。図4において、超音波プローブ24が第1エリア52から第2エリア54に移動する場合、超音波プローブ24の進行方向に存在する計測対象用マーカ54Mを、情報を読み取る計測対象用マーカとして選択する。超音波プローブ24の進行方向は、計測対象50を撮像して得た画像上での基準マーカ50Rとプローブ用マーカ24Mとの位置関係の変化から推定する。一例として、基準マーカ50Rは、超音波プローブ24が前回情報を取得した計測対象用マーカである。又は、プローブ用マーカ24Mと同じエリア内に存在する計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mのいずれかから選択してもよい。
【0020】
ステップ302において、情報を読み取る計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mを選択する際には、エリアの境界位置を検出することを要する。図5は、エリアの境界位置の検出方法を示した説明図である。図5(A)は計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mの端部の延長線をエリアの境界とする場合、図5(B)は計測対象用マーカ52M、54M、56M、58M自身にエリアの範囲の情報を記録した場合を各々示している。
【0021】
図5(A)に示したように、第1エリア52には計測対象用マーカ52M1、52M2が、第2エリア54には計測対象用マーカ54M1、54M2が、各々設けられている。演算装置14は、例えば、計測対象用マーカ52M1、52M2の端部の延長線を第1エリア52の境界60、62、64、66として検出する。
【0022】
図5(B)に示したように、第1エリア52には計測対象用マーカ52M1が、第2エリア54には計測対象用マーカ54M1が、各々設けられている。例えば、第1エリア52に設けられた計測対象用マーカ52M1には、計測対象用マーカ52M1の所定の端部から50mm離れた位置に存在する当該所定の端部と平行な線分を第1エリア52と第2エリア54との境界62とする情報が格納されている。演算装置14は、計測対象用マーカ52M1に記録された情報に基づいて、境界62を検出する。
【0023】
ステップ304では、ステップ302で選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mのいずれかから対応するエリア情報を読み取る。本実施形態では、計測対象用マーカ52Mが第1エリア52に、計測対象用マーカ54Mが第2エリア54に、計測対象用マーカ56Mが第3エリア56に、計測対象用マーカ58Mが第4エリア58に各々存在することを示す情報は、前述のようにバーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の形式で記録されているので、演算装置14は、一次元コード等又は二次元コード等の形式で記録された情報を画像から読み取る。
【0024】
ステップ306では、ステップ302で選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mが存在するエリア内に超音波プローブ24が存在するか否かを判定する。ステップ306で情報を読み取った計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mが存在するエリア内に超音波プローブ24が存在する場合は、手順をステップ308に移行し、存在しない場合は、手順をステップ300に移行する。
【0025】
ステップ308では、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mから計測対象50の厚さ及び材質等を示す仕様情報を取得する。計測対象50の仕様情報は、前述のようにバーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の形式で記録されているので、演算装置14は、一次元コード又は二次元コード等の形式で記録された情報を画像から読み取る。
【0026】
ステップ310では、ステップ308で取得した仕様情報をモニター等の表示装置16に表示する。同時に、取得した仕様情報に従って超音波プローブ24の計測条件が設定され、エリア内での超音波探傷が行われる。
【0027】
ステップ312では、入力装置12から計測終了の指示がなされたか否かを判定し、当該指示がなされた場合は処理を終了する。ステップ312で計測終了の指示がなされない場合は、超音波プローブ24を他のエリアに移動させる等を行うと共に、手順をステップ300に移行する。計測終了は、作業者からの入力に基づいて判断されてもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る超音波探傷システム10は、計測対象50の各エリアに、当該エリアの材質及び厚さ等の仕様を記録した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mを設置し、当該計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mの情報をカメラ20等で読み取ることにより、計測対象の仕様の変化に対応可能な超音波探傷システムを得ることができる。
【0029】
〔第2実施形態〕
続いて、第2実施形態について説明する。本実施形態は、予め計測対象50の各エリアの仕様に対応した探傷器の設定条件ファイルを記憶装置18等に格納しておく点で第1実施形態と相違する。本実施形態で演算装置14は、図3のステップ302で選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに記載の情報から選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに対応するエリアの仕様に係る設定条件ファイルの識別情報を取得する。そして、演算装置14は、取得した識別情報に従って記憶装置18から設定条件ファイルを読み込み、読み込んだ設定情報ファイルに従って計測対象50の各エリアの仕様を設定する。
【0030】
以上の相違点を除けば、本実施形態に係る超音波探傷システムは、第1実施形態に係る超音波探傷システム10と同一なので、相違点を有しない構成については第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
図6は、本実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置14における処理の一例を示したフローチャートである。図6のステップ300~306及びステップ312は、前述の第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態における第1実施形態と相違する手順は、図6に示したステップ500~504である。ステップ500では、ステップ302で選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mから対応するエリアの仕様に係る設定条件ファイルの識別情報を取得する。ステップ500で取得する識別情報は、バーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の形式で記録されている。演算装置14は、一次元コード又は二次元コード等の形式で記録された情報を画像から読み取ることにより当該識別情報を取得する。
【0033】
ステップ502では、取得した識別情報に従って、記憶装置18から設定条件ファイルを取得する。そして、ステップ504では、取得した設定条件ファイルに従って、超音波プローブ24の計測条件が設定され、エリア内での超音波探傷が行われる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る超音波探傷システムは、計測対象50の各エリアの仕様情報に係る設定条件ファイルを計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mではなく、記憶装置18に格納している。各エリアの仕様情報に係る設定条件ファイルの情報量が計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに設けられたバーコード等の一次元コード等、又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の形式で記録可能な上限を超えるような場合、本実施形態では、設定条件ファイルの識別情報のみを計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mの一次元コード又は二次元コードに記録する。演算装置14は、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mの一次元コード又は二次元コードから読み取った識別情報に従って、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに対応するエリアの仕様情報に係る設定条件ファイルを記憶装置18から読み込むことにより、設定条件ファイルの情報量が大きな場合でも、超音波探傷の計測条件の設定を行うことができる。
【0035】
〔第3実施形態〕
続いて、第3実施形態について説明する。本実施形態は、エリアの誤判定(特に境界付近)を防ぐため、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに参照波形データを格納しておき、実際の測定波形と参照波形データと比較し、両者が一致した場合に計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに記録された仕様情報を取得する点で第1実施形態と相違する。
【0036】
以上の相違点を除けば、本実施形態に係る超音波探傷システムは、第1実施形態に係る超音波探傷システム10と同一なので、相違点を有しない構成については第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
図7は、本実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置14における処理の一例を示したフローチャートである。図7のステップ300~306及びステップ308~312は、前述の第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態における第1実施形態と相違する手順は、図7に示したステップ600~604である。ステップ600では、超音波プローブ24を作動させてエリア内の測定波形を取得する。
【0039】
ステップ602では、ステップ302で選択した計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mから参照波形を取得すると共に、取得した参照波形と、ステップ600で取得した測定波形とを照合する。
【0040】
ステップ604では、測定波形と参照波形との合致率が所定の規定値以上であるか否かを判定する。所定の規定値は、一例として70%である。ステップ604で合致率が所定の規定値以上の場合は手順をステップ308に移行する。ステップ604で合致率が所定の規定値未満の場合は手順をステップ302に移行する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る超音波探傷システムは、計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに参照波形データを格納しておき、実際の測定波形と参照波形データと比較し、両者が一致した場合に計測対象用マーカ52M、54M、56M、58Mに記録された仕様情報を取得する。その結果、計測対象50のエリアの誤判定を回避し、超音波探傷の計測条件の設定を適切に行うことができる。
【0042】
〔第4実施形態〕
続いて、第4実施形態について説明する。本実施形態は、誤測定を防ぐため、確実に設定変更が完了した後に次の測定を開始する点で第1実施形態と相違する。
【0043】
以上の相違点を除けば、本実施形態に係る超音波探傷システムは、第1実施形態に係る超音波探傷システム10と同一なので、相違点を有しない構成については第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
図8は、本実施形態に係る超音波探傷システムの演算装置14における処理の一例を示したフローチャートである。図8のステップ300~306及びステップ312は、前述の第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。また、ステップ500~504は、前述の第2実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施形態における第1実施形態及び第2実施形態と相違する手順は、図8に示したステップ700~702である。ステップ700では、記憶装置18から読み込んだ設定条件ファイルにより超音波プローブ24の計測条件の変更が終了したか否かを判定する。計測条件の変更の終了の有無は、例えば、演算装置14によって開始された記憶装置18へのアクセスが終了したか否かで判定する。演算装置14によって開始されたアクセスが終了した場合は設定変更が完了したと判定して手順をステップ312に移行する。演算装置14によって開始されたアクセスが継続中の場合は、手順をステップ702に移行する。そして、ステップ702では、所定時間Δt待機した後、手順をステップ700に移行する。所定時間Δtは、演算装置14及び記憶装置18を含む超音波探傷システムの仕様によって異なるので、設計上の理論値のみならず実機を用いた実験を通じて具体的な値を決定する。
【0046】
以上本実施形態に係る超音波探傷システムは、誤測定を防ぐため、確実に設定変更が完了した後に次の測定を開始することにより、計測対象50のエリアの誤測定を回避し、超音波探傷を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波探傷システム
12 入力装置
14 演算装置
16 表示装置
18 記憶装置
20 カメラ
24 超音波プローブ
24M プローブ用マーカ
50 計測対象
50R 基準マーカ
52 第1エリア
52M、52M1、52M2 計測対象用マーカ
54 第2エリア
54M、54M1、54M2 計測対象用マーカ
56 第3エリア
56M 計測対象用マーカ
58 第4エリア
58M 計測対象用マーカ
60、62、64、66 境界
1、d2、d3、d4 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8