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特許7260523ポリカチオン性高分子を使用した一時的結合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ポリカチオン性高分子を使用した一時的結合
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20230411BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20230411BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20230411BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C03C27/10 D
B32B17/06
C08F226/10
C08F226/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020509056
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018047056
(87)【国際公開番号】W WO2019036710
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】62/547,284
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アディブ,カーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】バタチャリヤ,インドラーニ
(72)【発明者】
【氏名】チアン,ペイ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン-グ
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジェン-ジエ
(72)【発明者】
【氏名】マズンダー,プランティック
(72)【発明者】
【氏名】ツォン,ペイ-リエン
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019597(JP,A)
【文献】特開2009-298916(JP,A)
【文献】特開2000-096488(JP,A)
【文献】特開2017-078170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087745(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/163035(WO,A1)
【文献】特開2016-064862(JP,A)
【文献】谷崎義治,高分子界面活性剤,油化学,第34巻第11号,日本,1985年11月,74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/10
B32B 17/06
C08F 226/10
C08F 226/06
C11D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品において、
第1のガラスシート結合面を有する第1のガラスシート、
第2のガラスシート結合面を有する第2のガラスシート、および
前記第1のガラスシート結合面上に堆積された1種類以上の親水性カチオン性高分子から作られた改質層であって、前記第1と第2のガラスシートの中間にあり、親水性の乾燥改質層結合面を有する改質層、を備え、
前記改質層が前記第1のガラスシートを前記第2のガラスシートに結合している、物品。
【請求項2】
前記カチオン性高分子が水溶性である、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記カチオン性高分子がポリアルキル骨格を含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記カチオン性高分子の繰り返し単位が、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素または炭素の1つ以上を含む、請求項1からいずれか1項記載の物品。
【請求項5】
前記繰り返し単位が、正電荷を持つ窒素を含む、請求項4記載の物品。
【請求項6】
前記繰り返し単位が、2:1から20:1の炭素:窒素比を有する、請求項記載の物品。
【請求項7】
前記正電荷を持つ窒素が、アンモニウムカチオンである、請求項からいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記繰り返し単位が、
【化1】
またはその組合せを含む、請求項からいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
前記正電荷を持つ窒素が、イミダゾリウムカチオンである、請求項からいずれか1項記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2017年8月18日に出願された米国仮特許出願第62/547284号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、担体上に薄いシートを備えた物品および担体上に薄いシートを製造する方法に関し、より詳しくは、ガラス担体上に制御可能に結合した薄いガラスシートを備えた物品およびガラス担体上に制御可能に結合した薄いガラスシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
可撓性基板は、ロール・ツー・ロール加工を使用したより安価なデバイスの展望、並びにより薄く、より軽く、より可撓性の耐久性ディスプレイを製造する可能性を提示する。しかしながら、高品質ディスプレイのロール・ツー・ロール加工のための技術、設備、および工程は、まだ完全には開発されていない。パネル製造業者は、大型のガラスシートを加工するための工具装置にかなりの資本を既に投じているので、シート・ツー・シート加工によって、担体上に可撓性基板を積層し、その可撓性基板上にディスプレイ装置を製造することは、より薄く、より軽く、より可撓性のディスプレイの価値命題を進展させるためのより短期的な解決策を提示する。ディスプレイは、高分子シート、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)上で実証されており、ここで、そのデバイス製造は、ガラス担体上にPENが積層された、シート・ツー・シートであった。このPENの温度上限により、デバイス品質および使用できる過程が限定される。その上、高分子基板の高い透過性は、ほぼ密閉包装が有益な有機発光ダイオード(OLED)デバイスの環境劣化をもたらす。薄膜被包は、この限定を克服するための潜在的な解決策を提示するが、大量で許容できる収率を提示するものはまだ実証されていない。
【0004】
似たやり方で、1つ以上の薄いガラス基板に積層されたガラス担体を使用して、ディスプレイ装置を製造することができる。この薄いガラスの低い透過性および改善された耐温度性と耐化学性によって、より高性能でより長い寿命の可撓性ディスプレイが可能になると予測される。
【0005】
あるデバイスは、非晶質シリコン薄膜トランジスタ(a-Si TFT)を利用しており、これは、典型的に、350℃辺りの温度で製造される。しかしながら、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZOまたは酸化物TFT)および低温ポリシリコン(LTPS)デバイスも重要である。酸化物TFT加工は、典型的に、400から450℃の温度で行われる。LTPSデバイス製造過程において、温度は、典型的に、600℃以上に到達する。これらの加工技術の各々において、真空環境およびウェットエッチング環境も使用されることがある。これらの条件は、使用できる材料を限定し、担体および/または薄いシートに高い要求をつきつける。したがって、望まれていることは、製造業者の既存の資本基幹設備を利用し、より高い加工温度で薄いシートと担体の間の結合強度を損なわずに、ガラスシート、例えば、0.3ミリメートル(mm)厚以下の厚さを有する薄いシートの加工を可能にする担体手法であって、工程の終わりに、薄いシートが担体から容易に剥離する、手法である。この手法は以下を可能にすべきである:a)十分な結合、または100~500mJ/m程度の付着エネルギーを提供するための、好ましくは積層の必要のない、室温での担体と薄いシートとの間の自発的結合;b)薄いシートが担体から剥離しない、その後の湿式および乾式加工工程;c)製造の熱的、化学的、真空の、および湿式加工工程に耐える結合対の能力;d)熱加工中の最小のガス放出;およびe)加工の終了時での薄いシートの担体からの分離の容易さ。
【0006】
商業上の利点の1つは、製造業者は、加工設備において既存の資本投資を利用しつつ、例えば、太陽電池(PV)、OLED、液晶ディスプレイ(LCD)およびパターン化薄膜トランジスタ(TFT)電子機器のための、薄いシート、例えば、薄いガラスシートの利点を得ることである。それに加え、そのような手法により、結合を促進させるための薄いシートと担体の洗浄および表面処理のための過程を含むプロセス柔軟性が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、高温加工(それが使用される半導体またはディスプレイ製造過程に不適合であろうガス放出がない)を含む、TFTおよびフラットパネルディスプレイ(FPD)加工の厳しさに耐えられるが、それでも、別の薄いシートを加工するために担体の再利用を可能にするように、薄いシートの全域を担体から取り外せる(一度に揃って、または部分ずつのいずれか)薄いシートと担体の物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書には、TFTおよびFPD加工(約300℃、約400℃、約500℃、および約600℃までの温度での加工を含む)に耐えるのに十分に強力であるが、高温加工後でさえ、シートの担体からの剥離を可能にするのに十分に弱い一時的結合を作るために、担体と薄いシートとの間の付着を制御する方法が記載されている。そのような制御された結合を利用して、再利用できる担体を有する物品を作ることができる。より詳しくは、本開示は、薄いシートと担体との間の、室温でのファンデルワールス力、および/または水素結合および/または静電結合および高温での共有結合の両方を制御するために、薄いシート、担体、またはその両方に上に設けられる表面改質層(様々な材料および関連する表面熱処理を含む)を提供する。さらにより詳しくは、本開示は、薄いシートを担体に結合させる働きをするコーティング、または改質層を堆積させる方法、結合のためにコーティング層を調製する方法、およびコーティング層の薄いシートと担体の両方への結合を記載する。これらの方法は、結合エネルギーが高すぎないように(高すぎると、電子デバイスの加工後に構成要素が分離できなくなる虞がある)、また結合エネルギーが低すぎないように(低すぎると、結合品質が損なわれ、それゆえ、電子デバイスの加工中の薄いシートと担体との間の潜在的な剥離または流体侵入をもたらす虞がある)、構成要素の間の結合を生じる。これらの方法は、低いガス放出を示し、高温加工、例えば、カラーフィルタ(CF)加工、非晶質シリコン(a-Si)TFT加工、Ox-TFT加工、およびLTPS加工、並びに追加の加工工程、例えば、湿式洗浄および乾式エッチングに耐える物品も製造する。
【0009】
第1の態様において、第1のガラスシート結合面を有する第1のガラスシート、第2のガラスシート結合面を有する第2のガラスシート、および改質層結合面を有する改質層を備えた物品であって、その改質層が第1のガラスシートを第2のガラスシートに結合している、物品がある。その改質層は、1種類以上のカチオン性高分子から作られた。
【0010】
第1の態様の一例において、カチオン性高分子は水溶性である。
【0011】
第1の態様の別の例において、カチオン性高分子は親水性である。
【0012】
第1の態様のさらに別の例において、カチオン性高分子はポリアルキル骨格を含む。
【0013】
第1の態様の別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素または炭素の1つ以上を含む。
【0014】
第1の態様の別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、正電荷を持つ窒素を含む。
【0015】
第1の態様のさらに別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、2:1から20:1の炭素:窒素比を有する。
【0016】
第1の態様の別の例において、正電荷を持つ窒素は、アンモニウムカチオンである。
【0017】
第1の態様の別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、
【0018】
【化1】
【0019】
またはその組合せを含む。
【0020】
第1の態様の別の例において、正電荷を持つ窒素は、イミダゾリウムカチオンである。
【0021】
第1の態様の別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、
【0022】
【化2】
【0023】
またはその組合せを含む。
【0024】
第1の態様の別の例において、正電荷を持つリンは、ホスホニウムイオンである。
【0025】
第1の態様の別の例において、正電荷を持つ硫黄は、スルホニウムイオンである。
【0026】
第1の態様の別の例において、高分子は、酸素を実質的に含まない。
【0027】
第2の態様において、第1のシート結合面を有する第1のシート、および第2のシート結合面を有する第2のシートを備えた物品がある。第1と第2のシートの中間にあり、改質層結合面を有する改質層が、第1のシートを第2のシートに結合する。改質層は、
【0028】
【化3】
【0029】
およびその組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む1種類以上のカチオン性高分子から作られた。
【0030】
第1および/または第2の態様のいずれかまたは両方の一例において、改質層は、実質的に単分子層である。
【0031】
第1または第2の態様の一方または両方の別の例において、改質層は、約0.1ナノメートル(nm)から約100nmの平均厚さを有する。
【0032】
第1および/または第2の態様の別の例において、改質層は、約10nm未満の平均厚さを有する。
【0033】
第1および/または第2の態様の別の例において、改質層は、約3nm以下の平均厚さを有する。
【0034】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約100から約600ミリジュール毎平方メートル(mJ/m)の結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0035】
第1の態様の一例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約400mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0036】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃で保持した後、250から450mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0037】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、ガラス物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、10%未満である。
【0038】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、ガラス物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、2.5%未満である。
【0039】
第2の態様の一例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約100から約600mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0040】
第2の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約400mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0041】
第2の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃で保持した後、250から450mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0042】
第1および/または第2の態様のいずれかまたは両方の別の例において、改質層の膨れ面積の変化パーセントは、ガラス物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、3%未満である。
【0043】
第1および/または第2の態様の別の例において、改質層の膨れ面積の変化パーセントは、ガラス物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、1%未満である。
【0044】
第1および/または第2の態様のさらに別の例において、改質層の膨れ面積の変化パーセントは、ガラス物品を90分間に亘り425で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃に保持した後、0.1%未満である。
【0045】
第1および/または第2の態様の別の例において、第2のガラスシートの平均厚さは、約300マイクロメートル以下である。
【0046】
第1および/または第2の態様の別の例において、第2のガラスシートの平均厚さは、第1のガラスシートの平均厚さより小さい。
【0047】
第1の態様の別の例において、第1のガラスシートの平均厚さは、約200マイクロメートル以上である。
【0048】
第1の態様の別の例において、繰り返し単位は、
【0049】
【化4】
【0050】
を含む。
【0051】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約250mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0052】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を90分間に亘り425℃で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃で保持した後、約250から約450mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0053】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、3%未満である。
【0054】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を90分間に亘り425℃に保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃に保持した後、1%未満である。
【0055】
第1の態様のさらに別の例において、繰り返し単位は、
【0056】
【化5】
【0057】
を含む。
【0058】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約400mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0059】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃で保持した後、約250から約500mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0060】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、2%未満である。
【0061】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を90分間に亘り425で保持し、その後、物品を10分間に亘り600℃に保持した後、0.1%未満である。
【0062】
第1の態様の別の例において、繰り返し単位は、
【0063】
【化6】
【0064】
を含む。
【0065】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約175から約375mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0066】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、1%未満である。
【0067】
第1の態様のさらに別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、
【0068】
【化7】
【0069】
を含む。
【0070】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約250から約450mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0071】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、2%未満である。
【0072】
第1の態様のさらに別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、
【0073】
【化8】
【0074】
を含む。
【0075】
第1の態様の別の例において、改質層結合面は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約75から約350mJ/mの結合エネルギーで、第2のガラスシート結合面と結合している。
【0076】
第1の態様の別の例において、改質層の絶対膨れ面積は、物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、1%未満である。
【0077】
第2の態様の一例において、第2のシートは、ガラス、シリコン、またはその組合せから作られている。
【0078】
第3の態様において、ガラス物品を製造する方法において、少なくとも1種類のカチオン性高分子を堆積させることによって、第1のガラスシートの結合面上に、改質層結合面を有する改質層を形成する工程を有してなる方法がある。次に、その改質層結合面は、第2のガラスシートの結合面に結合される。
【0079】
第4の態様において、物品を製造する方法において、少なくとも1種類のカチオン性高分子を堆積させることによって、第1のシートの結合面上に、改質層結合面を有する改質層を形成する工程を有してなる方法がある。そのカチオン性高分子は、
【0080】
【化9】
【0081】
およびその組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む。
【0082】
この方法は、改質層結合面を第2のシートの結合面に結合させる工程をさらに含む。
【0083】
第3または第4の態様のいずれかまたは両方の一例において、その方法は、第1のガラスシートおよび/または第2のガラスシートの結合面から改質層結合面の少なくとも一部を剥離する工程をさらに含む。
【0084】
第3の態様の一例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素または炭素の1つ以上を含む。
【0085】
第3の態様の別の例において、正電荷を持つ窒素は、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリウムカチオン、およびその組合せからなる群より選択される。
【0086】
第3の態様の別の例において、カチオン性高分子の繰り返し単位は、
【0087】
【化10】
【0088】
およびその組合せからなる群より選択される。
【0089】
第3および/または第4の態様のいずれかまたは両方の別の例において、その方法は、カチオン性高分子を堆積させる前に、第1のガラスシートおよび/または第2のガラスシートのOプラズマ処理の工程をさらに含む。
【0090】
第3および/または第4の態様の別の例において、その方法は、カチオン性高分子を堆積させる前に、第1のガラスシートおよび/または第2のガラスシートを洗浄する工程をさらに含む。
【0091】
第3および/または第4の態様の別の例において、その方法は、カチオン性高分子の堆積後に、第1のガラスシートを洗浄する工程をさらに含む。
【0092】
第3および/または第4の態様の別の例において、その方法は、乾燥工程をさらに含む。
【0093】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子は、回転塗布、浸漬被覆、または吹付け塗りにより堆積される。
【0094】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子は、水溶液として堆積される。
【0095】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子の水溶液は、0.001質量パーセントから3.0質量パーセントの高分子濃度を有する。
【0096】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子の水溶液は、0.5質量パーセント未満の高分子濃度を有する。
【0097】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子の水溶液は、0.1質量パーセント未満の高分子濃度を有する。
【0098】
第3および/または第4の態様の別の例において、カチオン性高分子の水溶液は、有機溶媒を実質的に含まない。
【0099】
第3および/または第4の態様の別の例において、改質層は、約0.1nmから約10nmの平均厚さを有する。
【0100】
第3および/または第4の態様の別の例において、改質層は、約5nm未満の平均厚さを有する。
【0101】
第3および/または第4の態様の別の例において、改質層は、約3nm未満の平均厚さを有する。
【0102】
第4の態様の一例において、第2のシートは、ガラス、シリコンまたはその組合せから作られる。
【0103】
本開示の態様または実施例の先と他の特徴、例および利点が、以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読んだときに、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】いくつかの実施の形態による、間に改質層を備えた、第2のシートに結合された第1のシートを有する物品の概略側面図
図2図1の物品の分解部分切り欠き図
図3】物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で処理することによって形成されたLUVIQUAT FC-550改質層に関する、濃度(x軸の質量%)に対する接触角(左手のy軸の度)および結合エネルギー(右手のy軸のmJ/m)のグラフ
図4a】LUVIQUAT FC-550改質層(左の枠)およびPDADMAC改質層(右の枠)に関する濃度(x軸の質量%)に対する結合エネルギー(左手のy軸のmJ/m)のグラフ。両方の改質層は、それぞれ、実験1bおよび2bに記載された第5世代のロール・ツー・シート加工にしたがって形成した。
図4b】濯ぎなし(左の枠)および濯ぎあり(右の枠)の条件下でのLUVIQUAT FC-550改質層に関する濃度に対する改質層の厚さ(y軸のnm)のグラフ。両方の改質層は、それぞれ、実験1bおよび2bに記載された第5世代のロール・ツー・シート加工にしたがって形成した。
図5】物品を10分間に亘り580℃で処理することによって形成されたPDADMAC改質層に関する、濃度(x軸の質量%)に対する接触角(左手のy軸の度)および結合エネルギー(右手のy軸のmJ/m)のグラフ
図6】物品を10分間に亘り580℃で処理することによって形成されたPVBTACl改質層(400kDa)に関する、濃度(x軸の質量%)に対する接触角(左手のy軸の度)および結合エネルギー(右手のy軸のmJ/m)のグラフ
図7】物品を10分間に亘り580℃で処理することによって形成されたPVMPyBr改質層に関する、濃度(x軸の質量%)に対する接触角(左手のy軸の度)および結合エネルギー(右手のy軸のmJ/m)のグラフ
図8】XPSにより測定された、物品の結合前と剥離後の炭素の原子パーセント(y軸)のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0105】
ここで、例示の実施の形態が示されている添付図面を参照して、例示の実施の形態を下記により詳しく記載する。できるときはいつでも、図面に亘り、同じまたは同様の部分を称するために、同じ参照番号が使用される。しかしながら、実施の形態は、多くの異なる形態をとってもよく、ここに具体的に述べられたものに限定されると解釈されるべきではない。これらの例示の実施の形態は、この開示が完全かつ十分であり、当業者に特許請求の範囲を完全に伝えるように与えられる。
【0106】
ここに用いられているような方向を示す用語(例えば、上、下、右、左、前、後ろ、上部、底部)は、描かれた図面に関してのみ用いられ、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0107】
ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要ないが、許容範囲、変換係数、丸め、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、要望通りに、近似および/またはより大きいかより小さいことがあることを意味する。値または範囲の端点を記載する上で、「約」という用語が使用されている場合、その開示は、言及されているその特定の値または端点を含むと理解すべきである。明細書における数値または範囲の端点に「約」が付いていようとなかろうと、その数値または範囲の端点は、以下の2つの実施の形態:「約」で修飾されているもの、および「約」で修飾されていないものを含むことが意図されている。それらの範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点に関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0108】
ここに用いられているような、「実質的」、「実質的に」などの用語、およびその変種は、記載された特徴が、ある値または記載と等しいまたはほぼ等しいことを指摘する意図がある。例えば、「実質的に平らな」表面は、平らまたはほぼ平らである表面を意味する意図がある。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいまたはほぼ等しいことを意味する意図がある。いくつかの実施の形態において、「実質的に」は、互いの約5%以内、または互いの約2%以内など、互いの約10%以内の値を意味することがある。
【0109】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量比較、値、測定、または他の表現に寄与するであろう不確実さの固有の程度を表すために、ここに使用されることがあることに留意のこと。これらの用語は、定量的表現が、問題となっている主題の基本機能を変化させずに、述べられた基準から変動するかもしれない程度を表すためにも、ここに利用される。それゆえ、例えば、「Bを含まない」または「Bを実質的に含まない」ガラスは、Bが、そのガラス中に能動的に添加されていない、またはバッチ配合されていないが、汚染物質として非常に少量(例えば、0.001モル%未満)で存在することもあるものである。Bと同様に、他の成分は、同様の様式で、「含まない」または「実質的に含まない」と特徴付けられることがある。
【0110】
第2のシートに結合された第1のシートの加工を可能にし、それによって、第2のシート、例えば、薄いシートまたは薄いガラスシートの少なくとも一部が、デバイス(例えば、TFT)が薄いシート上に加工された後、その薄いシートが第1のシート、例えば、担体から取り外せるように、非永久的に結合されたままである解決策が提供される。有利な表面形状特徴を維持するために、担体は、典型的に、Corning EAGLE XG(登録商標)無アルカリディスプレイ用ガラスなどのディスプレイ等級のガラス基板である。したがって、ある状況において、担体を一回使用した後に単に廃棄することは、無駄遣いであり、高くつくであろう。それゆえ、ディスプレイの製造費用を減少させるために、担体を再利用して、複数の薄いシートの基板を加工できることが望ましい。本開示には、高温加工が、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上、および約600℃までの温度で行われ、加工温度が、製造されているデバイスの温度に応じて変動する-例えば、LTPS加工などにおいては約600℃までの温度-、高温加工を含む、TFTまたはLTPSなどの加工ラインの苛酷な環境を通じて薄いシートを加工でき、それでも、薄いシートまたは担体に損傷(例えば、担体および薄いシートの一方が、2つ以上の破片に割れるまたは壊れる)なく、薄いシートを担体から容易に取り外せ、それによって、担体を再利用できる、物品および方法が述べられている。本開示の物品および方法は、他の高温加工、例えば、250℃から600℃の範囲の温度での加工に適用でき、それでもまだ、薄いシートに著しい損傷を与えずに、薄いシートを担体から取り外すことができる。下記の表1には、本開示の物品および方法が有用であろう、多数のフラットパネルディスプレイ(FPD)加工工程に関するピーク温度と時間周期が述べられている。
【0111】
【表1】
【0112】
図1および2に示されるように、物品2、例えば、ガラス物品は、厚さ8を有し、厚さ18を有する第1のシート10(例えば、担体)、厚さ28を有する第2のシート20(例えば、薄いガラスシート)、および厚さ38を有する改質層30を備える。薄いシート20の平均厚さ28は、以下に限られないが、例えば、約10から約50マイクロメートル、約50から約100マイクロメートル、約100から約150マイクロメートル、約150から約300マイクロメートル、約300マイクロメートル、約250マイクロメートル、約200マイクロメートル、約190マイクロメートル、約180マイクロメートル、約170マイクロメートル、約160マイクロメートル、約150マイクロメートル、約140マイクロメートル、約130マイクロメートル、約120マイクロメートル、約110マイクロメートル、約100マイクロメートル、約90マイクロメートル、約80マイクロメートル、約70マイクロメートル、約60マイクロメートル、約50マイクロメートル、約40マイクロメートル、約30マイクロメートル、約20マイクロメートル、または約10マイクロメートルを含む、約300マイクロメートル(μm)以下であることがある。
【0113】
物品2は、より厚いシート、例えば、約0.4mm以上程度、例えば、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、または約1.0mm程度の平均厚さを有するもののために設計された装置内で薄いシート20を加工できるように構成されているが、薄いシート20自体は、約300マイクロメートル以下である。物品2の厚さ8は、厚さ18、28、および38の合計であり、この厚さ8は、装置、例えば、基板シート上に電子デバイス構成要素を配置するために設計された装置がそれを加工するように設計されたより厚いシートの厚さと同等であり得る。一例において、加工装置が、700マイクロメートルのシートのために設計され、薄いシートの厚さ28が約300マイクロメートルであったら、ひいては、厚さ18は、厚さ38が取るに足らないと仮定すると、約400マイクロメートルとして選択されるであろう。すなわち、改質層30は、一定の縮尺で描かれておらず、むしろ、図解のためだけに、大幅に誇張されている。それに加え、図2において、改質層は、切り欠きで示されている。その改質層は、再利用できる担体を提供する場合、結合面14上に、均一に、または実質的に均一に配置することができる。典型的に、平均厚さ38は、ナノメートル(nm)程度、例えば、約0.1nmから約1マイクロメートル(μm)、約2nmから約250nm、または約3nmから約100nm、もしくは約2nm、約3nm、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、または約90nmであろう。別の例において、厚さ38は、約10nm未満、約8nm未満、約6nm未満、約5nm未満、約4nm未満、または約3nm未満であり得る。改質層の存在は、界面化学分析、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF SIMS)またはX線光電子分光法(XPS)により検出できる。
【0114】
第1のシート10は、例えば、担体として使用されることがあり、このシート10は、第一面12、結合面14、および周囲16を有する。第1のシート10は、ガラスを含むどの適切な材料のものであってもよい。この第1のシートは、非ガラス材料、例えば、セラミック、溶融シリカ、ガラスセラミック、シリコン、金属、またはその組合せであり得る(表面エネルギーおよび/または結合が、ガラス担体に関連して下記に記載されている様式と類似の様式で制御されるであろうから)。第1のシート10は、ガラスから製造されている場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含むどの適切な組成のものであってもよく、その最終用途に応じて、アルカリ含有または無アルカリのいずれであってもよい。さらに、ある例では、第1のシート結合面は、ガラス、ガラスセラミック、または他の材料から製造されている場合、その第1のシートの根本的なバルク材料上に配置された金属材料のコーティングまたは層から作られることもある。厚さ18は、約0.2から約3mm、またはそれより大きい、例えば、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.65mm、約0.7mm、約1.0mm、約2.0mm、または約3.0mm、またはそれより大きいことがあり、厚さ28、および厚さ38が、上述したように取るに足らないものではない場合、厚さ38に依存する。いくつかの実施の形態において、第1のシート10の平均厚さ18は、薄いシート20の厚さ28よりも大きいであろう。いくつかの実施の形態において、厚さ18は、厚さ28より小さいことがある。いくつかの実施の形態において、第1のシート10は、図示されたような、一層、または互いに結合された多層(多数の薄い層を含む)から作られることがある。さらに、第1のシートは、第1世代のサイズ以上、例えば、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第8世代以上(例えば、約100mm×100mmから約3メートル×3メートル以上のシートサイズ)のものであってよい。
【0115】
薄いシート20は、第一面22、結合面24、および周囲26を有する。周囲16(第1のシート)および26(第2のシート)は、どの適切な形状のものであってもよく、互いに同じであってもまたは互いと異なってもよい。さらに、薄いシート20は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、シリコン、金属またはその組合せを含むどの適切な材料のものであってもよい。第1のシート10について先に記載したように、薄いシート20は、ガラスから製造されている場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含むどの適切な組成のものであってもよく、その最終用途に応じて、アルカリ含有または無アルカリのいずれであってもよい。この薄いシートの熱膨張係数は、高温での加工中の物品の反りを減少させるために、第1のシートのものと実質的に同じに一致させることができる。薄いシート20の平均厚さ28は、約200マイクロメートルまたは約100マイクロメートルなど、上述したように、約300マイクロメートル以下である。さらに、その薄いシートは、第1世代のサイズ以上、例えば、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第8世代以上(例えば、約100mm×100mmから約3メートル×3メートル以上のシートサイズ)のものであってよい。
【0116】
物品2は、既存の装置による加工に対応する厚さを有し得、同様に、その加工が行われる苛酷な環境に耐えることができる。例えば、薄膜トランジスタ(TFT)加工は、高温(例えば、約200℃以上、約300℃以上、約400℃以上、および500℃未満まで)で行われることがある。低温ポリシリコン(LTPS)の加工は、600℃までの温度に到達することがある。上述したようなある過程について、温度は、任意の範囲およびそれらの間の部分的範囲を含む、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約500℃以上、および約600℃までであることがある。
【0117】
物品2が加工される苛酷な環境に耐えるために、結合面14は、薄いシート20が第1のシート10から自発的に分離しないような十分な強度で結合面24に結合されるべきである。この強度は、加工中にシート20がシート10から分離しないように、加工中ずっと維持されるべきである。さらに、シート20をシート10から取り外せるように(例えば、担体を再利用できるように)、結合面14は、最初に設計された結合力、および/または、例えば、物品が高温で、例えば、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約500℃以上、および約600℃までの温度での加工を経たときに生じるかもしれない、最初に設計された結合力の変化により生じる結合力のいずれかにより、結合面24に強すぎるほど結合されるべきではない。改質層30は、改質層30と、第1のシート10および/または第2のシート20との間のファンデルワールス力(および/または水素結合)および共有結合エネルギーの寄与を制御することによって、これらの目的の両方を達成するように、結合面14と結合面24との間の結合の強度を制御するために使用されることがある。この制御された結合は、例えば、約200℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約500℃以上、および約600℃までの温度を含む、TFTまたはLTPS加工に耐えるのに十分に強力であり、シートを分離するのに十分であるが、シート20および/またはシート10に著しい損傷を与えない力の印加によって剥離可能のままである。例えば、印加した力は、シート20またはシート10のいずれも割るべきではない。そのような剥離により、シート20およびその上で製造されたデバイスを取り外すことができ、担体としてシート10を再利用することも可能である。
【0118】
改質層30は、シート20とシート10との間の固体層として示されているが、その必要はない。例えば、層30は、約0.1nmから約1マイクロメートル厚程度(例えば、約1nmから約10nm、約10nmから約50nm、約50nmから約100nm、約250nm、約500nmから約1マイクロメートル)であることがあり、結合面14の全ての部分を完全に覆わなくてもよい。例えば、結合面14上の被覆率は、任意の範囲およびそれらの間の部分的範囲を含む、結合面14の約100%以下、約1%から約100%、約10%から約100%、約20%から約90%、または約50%から約90%であることがある。いくつかの実施の形態において、改質層30は単分子層であり、他の実施の形態において、改質層30は実質的に単分子層である。他の実施の形態において、層30は、約3nm厚、または他の実施の形態において、5nm、10nm、またさらには、約100nmから約250nm厚までであることがある。改質層30は、シート10およびシート20の一方または他方と接触しないことがあるけれども、シート10とシート20との間に配置されると考えられるであろう。他の実施の形態において、改質層30は、結合面24と結合する結合面14の能力を変更し、それによって、シート10とシート20との間の結合の強度を制御する。改質層30の材料と厚さ、並びに結合前の結合面14、24の処理を使用して、シート10とシート20との間の結合の強度(付着エネルギー)を制御することができる。
【0119】
改質層の堆積
本開示にしたがって使用されるポリカチオン性、またはカチオン性高分子の利点の内の1つは、そのような高分子は、可能ならいつでも、室温で担体と薄いシートとの間の自発的結合を可能にする簡単な一段階過程によって施せることである。ここに記載されたイオン性高分子は、高分子鎖に沿った電荷と水分子の双極子との間の強力な相互作用のために、高度に親水性である。したがって、これらのポリカチオンなどのイオン性高分子で被覆されたガラス面は、高度に親水性のままであり、裸のガラスの表面エネルギー(約75mJ/m)と一致する、またはほぼ一致する高い表面エネルギーを有する。これにより、有機高分子に大抵要求されるような、改質層の表面エネルギーを増加させるためのエネルギー増強プラズマ処理、または表面を結合させるための加圧積層の必要性がなくなる。
【0120】
それらの高度な親水性および水溶性のために、イオン性高分子は、第1および/または第2のシート上への簡単な施用が可能である。その高分子の水溶液を製造することができ、次に、第1および/または第2のシートを、回転被覆、浸漬塗布、吹付け塗り、およびその組合せなどの、様々な簡単な分配方法によって処理することができる。水性加工も、有機溶媒の必要性を都合よく回避し、それによって、費用と環境影響が減少する。
【0121】
改質層の表面エネルギー
ここに述べられるように、改質層の表面エネルギーは、担体上または薄いシート上に存在するときの、改質層の表面エネルギーの尺度である。一般に、改質層30の表面エネルギーは、堆積された際、および/または、例えば、窒素による活性化によりさらに処理された際に、測定することができる。この固体表面の表面エネルギーは、空気中の固体表面上に個別に堆積された3つの液体-水、ジヨードメタンおよびヘキサデカン-の静的接触角を測定することによって、間接的に測定される。ここに開示された表面エネルギーは、下記に述べられるように、Wuモデル(S.Wu, J.Polym. Sci. C, 34, 19, 1971参照)にしたがって決定した。Wuモデルにおいて、全成分、極性成分、および分散成分を含む表面エネルギーは、3つの試験液体:水、ジヨードメタンおよびヘキサデカンの3つの接触角に理論モデルを合わせることによって測定される。3つの液体の接触角値から、回帰分析を行って、固体表面エネルギーの極性成分と分散成分を計算する。表面エネルギー値を計算するために使用される理論モデルは、3つの液体の3つの接触角値および固体表面並びに3つの試験液体の表面エネルギーの分散成分と極性成分を関連付ける以下の3つの独立した式を含む:
【0122】
【数1】
【0123】
【数2】
【0124】
【数3】
【0125】
式中、下付文字「W」、「D」および「H」は、それぞれ、水、ジヨードメタンおよびヘキサデカンを表し、上付き文字「d」および「p」は、それぞれ、表面エネルギーの分散成分と極性成分を表す。ジヨードメタンおよびヘキサデカンは、実質的に非極性液体であるので、先の一連の式は、以下に変換される:
【0126】
【数4】
【0127】
【数5】
【0128】
【数6】
【0129】
先の一連の3つの式(4~6)から、回帰分析によって、固体表面の2つの未知のパラメータである分散と極性の表面エネルギー成分
【0130】
を計算することができる。しかしながら、この手法では、固体表面の表面エネルギーを測定できる限界最大値がある。この限界最大値は水の表面張力であり、それは約73mJ/mである。固体表面の表面エネルギーが水の表面張力よりもかなり大きい場合、その表面は、水で十分に濡れ、それによって、接触角が0に近づく。したがって、表面エネルギーのこの値を超えると、全ての計算された表面エネルギー値は、実際の表面エネルギー値にかかわらず、約73~75mJ/mに相当するであろう。例えば、2つの固体表面の実際の表面エネルギーが75mJ/mおよび150mJ/mである場合、液体の接触角を使用して計算された値は、両方の表面について、約75mJ/mとなる。
【0131】
したがって、ここに開示された全ての接触角は、空気中の固体表面上に液滴を配置し、固体表面と、接触線での液体空気界面との間の角度を測定することによって測定される。それゆえ、表面エネルギー値が55mJ/mから75mJ/mであると主張された場合、これらの値は、実際の表面エネルギー値ではなく、上述した方法に基づく計算された表面エネルギー値に対応することを理解すべきである(計算値が実際の表面エネルギーの値に近づくと、75mJ/mより大きくなり得る)。
【0132】
改質層に対する第2のまたは薄いシートの結合エネルギー
ここに述べられるように、改質層の結合エネルギーは、薄いシートおよび担体を結合する力の尺度である。一般に、2つの表面間の付着エネルギー(すなわち、結合エネルギー)は、ダブルカンチレバービーム法またはウェッジ試験によって測定することができる。これらの試験は、改質層30と第2のシート20との界面での接着ボンドジョイント上での力および影響を質的様式でシミュレートする。ウェッジ試験は、一般に、結合エネルギーを測定するために使用される。例えば、ASTM D5041、Standard Test Method for Fracture Strength in Cleavage of Adhesives in Bonded Joints、およびASTM D3762、Standard Test Method for Adhesive-Bonded Surface Durability of Aluminumは、楔で2枚の基板の結合を測定するための標準試験方法である。
【0133】
上述したASTM法に基づく、ここに開示されたような結合エネルギーを決定するための試験方法の要約は、試験が行われる温度と相対湿度、例えば、研究室内での温度と相対湿度の記録を含む。第2のシートは、第1のシートと第2のシートとの間の結合を壊すために、ガラス物品の角で穏やかに予亀裂が形成されられるか、分離される。第1のシートからの第2のシートの予亀裂を形成するために、鋭いカミソリの刃、例えば、厚さが約95マイクロメートルのGEMブランドのカミソリの刃が使用される。予亀裂の形成の際に、結合を疲労させるために、瞬間的な持続圧力が使用されることがある。その亀裂および分離が増加するように亀裂前縁が伝播するのを観察できるまで、アルミニウムタブが取り外された平らなカミソリの刃をゆっくりと挿入する。平らなカミソリの刃は、亀裂を誘発するために、著しく挿入する必要がない。亀裂が一旦形成されたら、ガラス物品は、亀裂が安定化するように少なくとも5分間に亘り静置される。高湿度の環境、例えば、相対湿度が50%を超える環境では、より長い静置時間が使用されることがある。
【0134】
亀裂が生じたガラス物品を顕微鏡で評価して、亀裂長さを記録する。亀裂長さは、第1のシートからの第2のシートの端部分離点から、カミソリの刃の最も近い非先細部分まで測定される。亀裂長さは、記録され、結合エネルギーを計算するために以下の式に用いられる。
【0135】
【数7】
【0136】
式中、γは結合エネルギーを表し、tは刃物、カミソリの刃または楔の厚さを表し、Eは第1のシート10(例えば、ガラス担体)のヤング率を表し、tw1は第1のシートの厚さを表し、Eは第2のシート20(例えば、薄いガラスシート)のヤング率を表し、tw2は第2のシート20の厚さを表し、Lは、上述したような刃物、カミソリの刃、または楔の挿入の際の、第1のシート10と第2のシート20との間の亀裂長さを表す。
【0137】
その結合エネルギーは、シリコンウエハー結合におけるように挙動すると理解され、その場合、最初に水素結合されたウエハーの対が加熱されて、シラノール-シラノール水素結合の多くまたは全てをSi-O-Si共有結合に転化させる。最初の室温での水素結合により、約100~200mJ/m程度の結合エネルギーが生じ、これにより結合した表面の分離は可能であるが、約300から約800℃程度の加工中に達成されるような完全に共有結合したウエハー対は、約2000から約3000mJ/mの付着エネルギーを有し、これでは、結合した表面の分離はできない;その代わりに、2つのウエハーはモノリスとして機能する。他方で、両方の表面が、下にある基板の影響を遮蔽するのに十分に大きい厚さの低表面エネルギー材料、例えば、フルオロポリマーで完全に被覆されると、その付着エネルギーは、その被覆材料のものとなるであろうし、非常に低くなり、結合面14、24の間の付着が低くなるか、なくなるであろう。それにより、薄いシート20は、結合を破損させずに、また薄いシート20に潜在的な損傷を与えずに、シート10(例えば、担体)上で加工できないであろう。2つの極端な例を考える:(a)シラノール基で飽和した2つの標準洗浄1(当該技術分野で公知のSC1)で洗浄したガラス面を、水素結合により(それにより、付着エネルギーは約100から約200mJ/mである)室温で互いに結合した、その後、シラノール基を共有Si-O-Si結合(それにより、付着エネルギーは約2000から約3000mJ/mになる)に転化させる温度に加熱した。この後者の付着エネルギーは高すぎて、ガラス面の対を取り外せない;および(b)低い表面付着エネルギー(表面当たり約12から約20mJ/m)を有するフルオロポリマーで完全に被覆された2つのガラス面を室温で結合させ、高温に加熱した。この後者の場合(b)では、ガラス面は低温では結合しないだけでなく(ガラス面が合わされときの、約24から約40mJ/mの全付着エネルギーは低すぎるので)、極性反応基が少なすぎるので、それらは、高温でも結合しない。これら2つの極端な例の間、例えば、約50から約1000mJ/mの間に、所望の程度の制御された結合を生じることのできる、ある範囲の付着エネルギーが存在する。したがって、本願の発明者等は、これらの2つの極端な例の間の結合エネルギーをもたらし、よって、苛酷なTFTまたはLTPS加工を通じて互いに結合された一対の基板(例えば、ガラス担体またはシート10および薄いガラスシート20)を維持するのに十分であるだけでなく、加工が完了した後にシート20をシート10から取り外せる程度(例えば、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上、そして約600℃までの高温加工の後でさえも)の制御された結合を生じることができる、改質層30を提供する様々な方法を発見した。さらに、シート20のシート10からの取外しは、機械力により、少なくともシート20に著しい損傷を与えない様式で、好ましくはシート10にも著しい損傷を与えないように、行うことができる。
【0138】
選り抜きの表面改質剤、すなわち、改質層30、および/または結合前の表面の熱処理を使用することによって、適切な結合エネルギーを達成することができる。この適切な結合エネルギーは、結合面14および結合面24のいずれか一方または両方の化学修飾剤の選択により達成されることがあり、その化学修飾剤は、ファンデルワールス力(および/または水素結合、これらの用語は、明細書を通じて交換可能に使用される)付着エネルギー、並びに高温加工(例えば、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上、そして約600℃までの程度)により生じる、起こり得る共有結合付着エネルギーの両方を制御する。
【0139】
物品の製造
物品、例えば、ガラス物品を製造するために、改質層30が、シートの内の1つ、好ましくは第1のシート10(例えば、担体)上に形成される。所望であれば、改質層30に、ここに記載されたように、表面エネルギーを増加させ、加工中のガス放出を減少させ、改質層30の結合性能を改善するために、表面活性化およびアニール処理などの工程を施しても差し支えない。他方のシート、例えば、薄いシート20を結合するために、他方のシートを改質層30に接触させる。改質層30が十分に高い表面エネルギーを有する場合、他方のシートを改質層30に案内すると、その他方のシートが自己伝播結合により改質層30に結合される。自己伝播結合は、組立時間および/または費用を減少させる上で都合よい。しかしながら、自己伝播結合が生じない場合、その他方のシートは、例えば、複数のシートを互いにローラでプレスすることによって、または結合のために2片の材料を一緒にするための、積層の技術分野で公知の他の技術によって、積層などの追加の技術を使用して、改質層30に結合することができる。
【0140】
TFTまたはLTPS加工(約300℃、約400℃、約500℃、および約600℃までの温度での加工を含む)に適した、第1のシート10および第2のシート20(例えば、担体および薄いシート)を備えた物品は、第1のシート10および/または第2のシート20をポリカチオン性高分子で被覆することによって製造できることが分かった。本開示によるポリカチオン性高分子は、できるだけ熱安定性であり、液体または溶液表面処理/被覆過程に適した、どのポリカチオン系高分子を含んでも差し支えない。詳しくは、水溶性および/または親水性のポリカチオン性高分子が、特に好ましい。ポリアルキル骨格を有するポリカチオン性高分子が、特に好ましい。概して、熱安定性がより高い、芳香族基を含むポリカチオン性高分子も好ましい。ポリカチオン性繰り返し単位は、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素、または炭素の1つ以上を含み得る。詳しくは、第一級、第二級、第三級、または第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピロールカチオン、イミダゾリウムカチオン、イミニウムカチオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、またはその組合せを含むポリカチオン性繰り返し単位が好ましい。正電荷を持つ窒素を含むポリカチオン性繰り返し単位、特に、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、およびイミダゾリウムカチオンを含むポリカチオン性繰り返し単位が特に好ましい。いくつかの実施の形態において、その高分子の繰り返し単位は、2:1から20:1、または3:1から15:1、または3:1から12:1の炭素:窒素比を有する。いくつかの実施の形態において、カチオン性高分子は、酸素を含まない、または実質的に含まない。
【0141】
一例において、改質層30は、アンモニウムカチオンを含む高分子の堆積によって形成することができる。そのアンモニウムカチオンは、第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウムカチオンであっても差し支えない。第二級、第三級または第四級アンモニウムカチオンの場合、窒素は、以下に限られないが、アルキル、ビニル、アリルまたはアミノ、およびグリシジルを含む多種多様の置換基で置換することができる。各置換基は、さらに、置換されていても、置換されていなくても、保護されていても、または保護されていなくても差し支えない。アルキル置換基が選択される場合、その置換基は、分岐または非分岐、飽和または不飽和であってよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、第三ブチル、n-ヘキシル、n-デシル、テトラデシルなどが挙げられる。メチルおよびエチル置換基が特に好ましい。一例において、その高分子は、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDADMAC)(I)、または他の類似の塩またはその誘導体であり得る。別の例において、その高分子は、ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)(PVBTACl)(II)、または他の類似の塩またはその誘導体であり得る。PDADMACおよびPVBTAClの環構造は、熱安定性を与えるのに役立つと考えられる。
【0142】
【化11】
【0143】
別の例において、改質層30は、ピリジニウムカチオンを含む高分子の堆積によって形成することができる。上述したように、ピリジンまたはピロールの芳香環は、その環の炭素および/または窒素の1つ以上に共有結合したいくつの適切な数の置換もさらに含み得、H、アルキル、ビニル、アリル、アミノ、グリシジル、およびチオールから独立して選択することができる。各置換基は、さらに、置換されていても、置換されていなくても、保護されていても、または保護されていなくても差し支えない。アルキル置換基が選択される場合、その置換基は、分岐または非分岐、飽和または不飽和であってよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、第三ブチル、n-ヘキシル、n-デシル、テトラデシルなどが挙げられる。ピリジニウムカチオンを含有する高分子の好ましい例としては、ポリ(臭化4-ビニル-1-メチルピリジニウム)(PVMPyBr)(III)およびポリ(4-ビニルピリジン塩酸塩)(PVPyCl)(IV)が挙げられる。これらの高分子の両方とも、芳香環における第四級窒素の存在のために選択され、それは、熱安定性を増加させると考えられる。
【0144】
【化12】
【0145】
さらに別の例において、改質層30は、イミダゾリウムカチオンを含む高分子の堆積によって形成することができる。上述したように、イミダゾールは、環構造に共有結合した多種多様な適切な置換基で置換されていても、置換されていなくても差し支えない。イミダゾリウムカチオンを含む高分子の好ましい例に、LUVIQUAT FC 550(BASF)(V)があり、これは、1-ビニルピロリドンおよび塩化3-メチル-1ビニルイミダゾリウムの第四級共重合体である。LUVIQUATは、イミダゾリウム環とビニルピロリドンの組合せのために、本出願のために選択された。
【0146】
【化13】
【0147】
ここに開示されたポリカチオン性高分子の利点は、それらの多くが、片面について測定して(極性および分散成分を含む)、70mJ/m超の表面エネルギー(これは、上述したような自己伝播波によりガラス面と自発的に結合するのに十分に高い)を持つ結合面を有する改質層30を提供することである。裸のガラスは、接触角で測定して、75mJ/m超の表面エネルギーを有する。ある場合には、ポリカチオン性高分子は、最適より低い表面エネルギーのために、弱い結合を生じる表面を提供することがある。同様に、ガラス以外の表面が使用される場合、結合前に、結合面の表面エネルギーを増加させることが望ましいことがある。言い換えると、結合に必要な所望の表面エネルギーが、最初に堆積されたポリカチオン性高分子の改質層の表面エネルギーではないことがある。所望な場合に表面エネルギーを増加させるために、堆積層をさらに処理してもよい。最初に堆積された状態で、さらに加工されていない場合、改質層は、良好な熱安定性を示すことができるが、薄いシートに対する良好な一時的結合を促進するのには十分でないことがある。これらの表面エネルギーは、裸のガラスまたは他の所望の表面に対する一時的結合を促進するのに低いことがあるので、ガラス結合を促進するために、改質層の表面活性化が必要なことがある。必要ならば、堆積されたポリカチオン性高分子層の表面エネルギーは、N、N-H、N-O、NH、N、HN、CO、またはその混合物へのプラズマ暴露によって、ガラス結合のために、約70mJ/mまたはそれ以上に上昇させることができる。エネルギー(プラズマ処理後の)は、2つの表面が、自己伝播結合により、改質層を介して、互いに結合するのに十分に高いことがある。表2~5には、様々な濃度の高分子溶液の回転被覆から生じた、それぞれ、LUVIQUAT、PDADMAC、PVBTAClおよびPVMPyBr改質層に関する測定した接触角および結合エネルギーが報告されている。
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
必要に応じて、結合面の処理と共に、表面改質層30を使用すると、制御された結合区域、すなわち、物品2をTFTまたはLTPSタイプの過程において加工できるのに十分な室温結合をシート20とシート10の間に提供することができる結合区域であって、物品2の高温加工、例えば、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上、および約600℃までの温度での加工後に、シート20をシート10から取り外せる(これらのシートに損傷を与えずに)ように、シート20とシート10との間の共有結合を制御する(高温でさえ)結合区域を達成することができる。TFTまたはLTPS加工に適した再利用できる担体を提供するであろう、潜在的な結合面の処理、および様々な結合エネルギーを有する改質層を評価するために、一連の試験を使用して、各々の適合性を評価した。異なる用途には異なる要件があるが、現時点では、LTPSおよび酸化物TFT過程が最も厳しいようである。それゆえ、これらが物品2の所望の用途であるので、これらの過程における工程を代表する試験を選択した。LTPS過程において、約600℃でのアニーリングが使用される。したがって、以下の試験を行って、特定の結合面の処理および改質層により、LTPS加工中ずっと薄いシートを担体に結合したままにする一方で、そのような加工(例えば、約300℃、約400℃、約500℃、および約600℃までの温度での加工を含む)後にその薄いシートを担体から取り外せる(薄いシートおよび/または担体に損傷を与えずに)可能性を評価した。
【0153】
結合エネルギーの熱試験
表面改質層を使用して、室温で薄いシートを担体に結合することができる。例えば、薄いガラスは、高い表面エネルギーと調和する速い結合速度で、ポリカチオン性高分子改質層の結合面に非常によく結合することができる。ここに用いられているように、改質層の結合面は、結合後に、結合されたシート、すなわち、薄いシートと接触する改質層の表面である。
【0154】
薄いシート、例えば、薄いガラスシートに対する改質層の結合エネルギーを、特定の加熱条件後に試験した。特定の表面改質層により、薄いシートが担体に結合したままであり、それでも、加工後に薄いシートを担体から剥離できるか否かを確認するために、以下の試験を行った。
【0155】
薄いガラスウェハーについて、物品(表面改質層を介して担体に結合した薄いシート)を、毎秒4℃の速度で所望の加工試験温度に昇温された管型炉または急速熱処理(RTP)槽内に置いた。次に、物品を10分間に亘り炉(所望の加工試験温度に維持された)内に保持した。次に、炉を45分以内で約150℃に冷却し、試料を引っ張った。
【0156】
インラインまたは第5世代(R2S)試験について、インライン設備を改良する必要なく、典型的な洗浄手順を使用した。典型的な洗浄は、洗浄剤の使用、回転、濯ぎおよび乾燥を含む。いくつかの実施の形態において、洗浄剤を使用する代わりに、0.0005質量%から5質量%までの様々な濃度でポリカチオンを洗浄剤槽に入れ、ガラス面に吹き付けた。毎分25リットルの平均流量を適用して、担体のガラス面へとポリカチオン性高分子溶液を吸い出した。次に、そのガラス面を毎分25リットルの流量の水で濯いで、過剰のポリカチオン性高分子を除去した。次に、処理したガラス面を乾燥させた。乾燥後、処理した担体を、実質的に同じサイズのWILLOWガラスの薄いシートに結合させて、ガラス物品を作った。結合後、下記に記載する試験にしたがって、初期膨れ面積を測定した。次に、結合したガラスを、8℃/分の加熱速度で30分間に亘り130℃から450℃に予熱した加熱槽内で加熱した。そのガラス物品を90分間に亘り450℃に保持し、その後、6℃/分の速度で600℃に再び加熱した。10分間に亘り保持した後、ガラス物品を、さらに試験するために室温に冷却した。
【0157】
室温での結合後、次いで、物品を熱試験して、結合エネルギーの上述した熱試験を使用することによって、熱処理後の結合エネルギーを決定した。カチオン性高分子の改質層と結合した薄いガラスの結合エネルギーは、約150から約500mJ/mに及び、約300℃、約400℃、約500℃または約600℃までの温度で物品を処理した後に、その値に近いままであった。それゆえ、ポリカチオン性高分子の表面改質層は、結合エネルギーの熱試験によれば、約300℃、約400℃、約500℃または約600℃まででの加工後でさえも、例えば、約10分間に亘り、約300℃、約400℃、約500℃または約600℃までの不活性雰囲気内にガラス物品を保持した際に、約500mJ/m、約450mJ/m、約400mJ/m、約350mJ/m、約300mJ/m、約250mJ/m、または約200mJ/m未満の結合エネルギーを一貫して維持することができる。
【0158】
改質層のガス放出
典型的なウエハー結合用途に使用される高分子接着剤は、一般に、約10から約100μm厚であり、その温度限界で、またはその近くで質量の約5%を失う。厚い高分子膜から発生するそのような物質について、質量分析法により質量損失またはガス放出の量を数量化することは容易である。他方で、約2から約100nm厚以下程度の薄い表面処理、例えば、先に記載された単分子層の表面改質層からのガス放出を測定することは、より難題である。そのような物質について、質量分析法は、十分な感度がなく、ガス放出は異なる様式で測定した。
【0159】
以後、「ガス放出試験」と称する例示の試験において、少量のガス放出を測定することは、組み立てられた物品、例えば、薄いシートが、カチオン性高分子の改質層を介して担体に結合されたものに基づくことができ、ガス放出を決定するために、膨れ区域の変化パーセントを使用する。下記に記載されたガス放出試験を使用して、ここに述べられるような膨れ区域の変化パーセントを測定した。ガラス物品の加熱中、担体と薄いシートとの間に、膨れ(気泡またはピロイング(pillowing))が形成され得、これは、改質層のガス放出を示す。ガス放出は、層中の小分子の蒸発、並びに層の熱分解から生じる。薄いシートの下のガス放出は、薄いシートと担体との間の強力な接着により制限されるであろう。それでもなお、約10nm厚以下の層は、より小さい絶対質量損失にもかかわらず、熱処理中に膨れをまだ形成するであろう。そして、薄いシートと担体との間の膨れの形成により、薄いシート上でのデバイス加工中に、パターン生成、フォトリソグラフィー加工、および/またはアライメントに関する問題が生じるであろう。その上、薄いシートと担体との間の結合区域の境界での膨れにより、あるプロセスからのプロセス流体が後続プロセスを汚染するという問題が生じるであろう。約5以上の膨れ区域の変化パーセントは、重大であり、ガス放出を示し、望ましくない。他方で、約1以下の膨れ区域の変化パーセントは、取るに足らず、ガス放出がないことを示す。
【0160】
手作業結合によるクラス1000のクリーンルーム内での結合した薄いガラスの平均膨れ区域は、約1%である。結合した担体における膨れパーセントは、担体、薄いガラスシート、および表面処理の清浄度の関数である。これらの初期欠陥は、熱処理後の膨れ成長の核形成部位としての機能を果たすので、約1%未満の熱処理の際の膨れ区域のどの変化も、試料調製のばらつき内である。このガス放出試験を行うために、透過原稿ユニットを備えた市販のデスクトップ型スキャナー(Epson Expression 10000XL Photo)を使用して、結合直後の薄いシートと担体を結合する区域の第1の走査画像を作成する。508dpi(50マイクロメートル/画素)および24ビットRGBを使用し、標準Epsonソフトウェアを使用して部品を走査した。この画像処理ソフトウェアは、最初に、必要に応じて、試料の異なる区分の画像を1つの画像に一緒に綴じ、スキャナー・アーチファクトを除去する(スキャナーに試料を用いずに行った検定標準走査を使用することにより)ことによって、画像を調製する。次に、その結合区域を、閾値化、ホールフィリング、縮小処理/膨張処理、およびブロブ解析などの標準的な画像処理技術を使用して解析する。Epson Expression 11000XL Photoも同様に使用してよい。透過モードにおいて、結合区域の膨れは、走査画像で目に見え、膨れ区域の値を決定することができる。次に、膨れ区域を全結合区域(すなわち、薄いシートと担体との間の全重複区域)と比較して、全結合区域に対する結合区域内の膨れ区域の面積パーセントを計算する。次に、それらの試料を、10分間に亘り、約300℃、約400℃、または約500℃までの試験限界温度で、N/O雰囲気内で管型炉内において、または約500℃または約600℃までの試験限界温度で、N雰囲気内でMPT-RTP600s Rapid Thermal Processingシステム内で熱処理する。具体的に、使用した時間・温度サイクルは、以下を含む:物品を、室温および大気圧で加熱室に入れる工程;加熱室を毎分9℃の速度で試験限界温度に加熱する工程;約10分間に亘り加熱室を試験限界温度に維持する工程;加熱室を炉の冷める速度で約200℃に冷却する工程;加熱室から物品を取り出し、物品を室温まで冷ませる工程;および物品をオプティカルスキャナーで2回目に走査する工程。次に、第2の走査からの膨れ区域パーセントを先のように計算し、第1の走査からの膨れ区域パーセントと比較して、膨れ区域の変化パーセントを決定した。先に述べたように、5%以上の膨れ区域の変化は、重大であり、ガス放出を示す。膨れ区域の変化パーセントは、膨れ区域の元のばらつきパーセントのために、測定基準として選択した。すなわち、ほとんどの表面改質層は、薄いシートと担体を調製した後であって、それらを結合する前の、取扱いと清浄度のために、第1の走査において約2%未満の膨れ区域を有する。しかしながら、材料間でばらつきが生じることがある。
【0161】
膨れ区域パーセントは、第2のシートの結合面24と接触していない改質層の結合面の全表面積のパーセントとして特徴付けることができる。膨れ区域(ピロイング)の変化パーセントは、熱処理後の膨れ区域パーセントから減算された熱処理前の膨れ区域パーセントを表す。上述したように、第2のシートと接触していない改質層の結合面の全表面積のパーセントは、ガラス物品が、毎分約200℃から約600℃の範囲の速度で、室温から、約300℃、約400℃、約500℃、または約600℃まで加熱し、次に、10分間に亘り試験温度に保持し、その後、ガラス物品を室温まで冷ますことによる温度サイクルを施した後に、約10%未満、約8%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、そして約0.5%未満までであることが好ましい。
【0162】
改質層の剥離
ここに記載された改質層により、ガラス物品に上述した温度サイクルおよび熱試験を施した後に、第2のシートを2片以上に割らずに、第2のシートを第1のシートから分離することができる。
【0163】
さらに、ポリカチオン性高分子の改質層が担体に施された場合、剥離後に、その改質層のほとんど、実質的に全て、または全てが、担体上に残っていることが分かった。改質層の存在は、結合前の高分子処理後と、再び、熱処理後の剥離後に、担体表面上に存在する炭素の原子パーセントを測定する、界面化学分析、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF SIMS)またはX線光電子分光法(XPS)により検出できる。剥離後に、その高分子の全て、または実質的に全てが担体上に残っていることが望ましい。いくつかの実施の形態において、高分子の一部、または改質層の結合面の一部が、熱処理後に、担体から剥離される。すなわち、結合前と剥離後の担体の炭素含有量の変化パーセントが、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であることが望ましい。同様に、結合前と剥離後の薄いシートの炭素含有量の変化パーセントが、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であることが好ましい。あるいは、結合前と剥離後の担体の窒素含有量の変化パーセントも測定することができる。いくつかの実施の形態において、剥離前と剥離後の担体または薄いシートの窒素含有量の変化パーセントが、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であることが望ましい。
【実施例
【0164】
実施例1a:LUVIQUATによる表面処理-ウエハー/回転被覆
LUVIQUAT FC 550(BASF)は、1-ビニルピロリドンおよび塩化3-メチル-1-ビニルイミダゾリウムの第四級共重合体である。
【0165】
1)LUVIQUAT FC 550の貯蔵液(水中40%の活性成分)を希釈して、0.005質量%から0.02質量%に及ぶ濃度を有する溶液を製造した。
【0166】
2)EAGLE XG(登録商標)ガラス(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporatedより入手できる)ウエハー(0.5mm)および100μm厚のWillow(登録商標)ガラス基板(Corning Incorporatedより入手できる)を、最初に、5分間に亘りOプラズマで処理し、その後、10分間に亘り、過酸化水素:JTB100(アンモニア)洗浄剤(JT Baker Chemicals):HO(2:1:40)溶液を使用した濯ぎ(または洗浄)工程を行った。洗浄後、ガラスウェハーを回転濯ぎ乾燥させた。
【0167】
3)LUVIQUAT FC-550の異なる濃度の溶液(下記参照)を「EAGLE XG」ウエハー上に回転被覆(500rpmで30秒、その後、2000rpmで1.5分)し、その後、1.5分に亘り吹付け濯ぎ(2:1:40の過酸化水素:JTB100:水)を行い、ウエハー上に堆積した過剰のポリカチオン性高分子を洗い落とした。次に、ウエハーを回転乾燥させた。
【0168】
4)LUVIQUAT被覆されたウエハーおよび洗浄した「WILLOW」の両方を、乾燥工程として、2分間に亘り150℃に保持して、残留水を除去した。各「EAGLE XG」ウエハーを一片の「WILLOW」ガラスに、それを光学的に接触させ、その対の中心点に圧力を印加することによって、結合した。結合波が、「EAGLE XG」ウエハー上の親水性コーティングと「WILLOW」ガラスのヒドロキシル末端表面との間の強力な引力相互作用力のために自己伝播した。
【0169】
5)その結合対は、N環境下で急速熱処理(RTP)槽内において10分間に亘り580℃で熱処理(N/O)を受けた。
【0170】
6)結合対が室温に戻った後、その試料を、膨れの成長および新たな膨れの形成について分析した。ウエハーと「WILLOW」との間の結合エネルギーは、4つの角に金属刃を挿入し、値を平均することによって、測定した。下記の表6参照のこと。
【0171】
7)次に、スコッチテープを使用して、「WILLOW」ガラスから「EAGLE XG」ウエハーを持ち上げることによって、試料を手作業で完全に剥離した。
【0172】
8)以下の3種類の液体:水、ヘキサデカン、およびジヨードメタンによる接触角の測定のために、異なる濃度のLUVIQUATで被覆した一連の「EAGLE XG」ウエハーを使用した。先の表2および図3を参照のこと。
【0173】
【表6】
【0174】
図3は、担体上に堆積されたLUVIQUAT改質層を備え、さらに、その改質層を介して担体に結合した薄いガラスシート(厚さ100nm)をさらに有するガラス物品の結合エネルギー(右手のY軸)および接触角(左手のY軸)を示す。LUVIQUATを0.05質量%の濃度で施した場合、結果として生じた結合エネルギーは低すぎて、薄いシートを担体に一時的にさえ結合できなかった。それより低い濃度のLUVIQUATが施された試料は、自己伝播波によって容易に結合した。LUVIQUAT改質層は、堆積されたままで、10分間に亘り580℃で熱試験した後、約175~230mJ/m(表6に詳述されている)で変動する濃度依存性結合エネルギーを生じた(図3の星印参照)。
【0175】
表6に示されているように、膨れの最大絶対面積は、LUVIQUAT被覆結合対のいずれについても約2.7%であった(0.02質量%)。580℃への熱処理後の膨れの差のパーセントは、約0.5%から約1.1%に及んだ。結合エネルギーの値は、0.02質量%から0.005質量%に亘る濃度について、約175~230mJ/mに及んだ。これらの試料は、「WILLOW」ガラスをどのようにも壊さずに、試験した全ての濃度で、10分間に亘る580℃での熱処理後に、容易に剥離できた(図3の陰影部分を参照のこと)。
【0176】
実施例1b:LUVIQUATによる表面処理-第4.5世代および第5世代/インライン処理
第5世代のロール・ツー・シート(R2S)試行において、LTPS用途に拡張するために、LUVIQUAT FC 550を試験した。
【0177】
R2S加工のために、第5世代洗浄ラインにおいて、乾燥したガラスシート(予洗なし)を吹付け塗りし、平均で毎分25リットルの流量で吹き付けることによって、0.0025質量%から0.01質量%までの様々なポリカチオン性高分子の溶液を施すことによって、「EAGLE XG」担体上の「WILLOW」ガラス(WGoC)の試料を調製した。いわゆる「濯ぎあり」の実験について、ガラス担体上のポリカチオン性高分子溶液の堆積後、結合の前に、ガラスを毎分25リットルの流量で水で濯いで、過剰の高分子を除去した。「濯ぎなし」の実験について、そのような濯ぎは行わず、結合の前に、過剰な高分子は除去しなかった。処理した担体ガラスを、室温で同じくらいの大きさの「WILLOW」ガラスシートに結合し、初期膨れを測定した。周囲空気中で熱アニールを425℃で行い、90分間保持し(130℃の開始温度から、毎分8℃の速度で425℃に昇温させた)、その後、物品を10分間に亘り600℃に保持した(毎分6℃の速度で425℃から600℃に昇温させた)。第2の保持期間後、さらなる試験のために、ガラス物品を室温まで冷却した。WGoC試料は、全ての濃度について、熱アニール後に、手作業で剥離できた。結合エネルギーを、試料の全てについて、カミソリの刃を使用して、手動で測定した。
【0178】
【表7】
【0179】
表7および図4aの左の枠は、LUVIQUAT改質層を介して薄いガラスシート(100nm)を担体シートに結合したガラス物品の結合エネルギー(図4aのy軸)を示す。表7および図4aの左の枠に示されるように、改質層の結合エネルギーは、大きく濃度に依存する様式で変動した。図7は、第5世代R2S試験において、ガラス物品は、概して、良好な膨れ性能を示したことを示している。しかしながら、濯ぎなし条件下で施された0.1質量%のLUVIQUAT溶液を有するガラス物品は、熱処理の前でさえ、酷い膨れを示し、さらに試験されなかった。図4aの左の枠から分かるように、試験した残りの第5世代のLUVIQUAT試料についての結合エネルギーは、濯ぎありとなしの両方の条件下で、全ての濃度について、約250から430mJ/mで様々であった。第5世代について試験した全てのLUVIQUAT試料の平均結合エネルギーは、約325mJ/mであった。
【0180】
第5世代のR2S試験において、いくつかの試料は、速い結合速度を示したが、不十分な反りを示した。処理量のためには、速い結合速度が望ましいが、結合速度が速すぎると、ガラス物品の反りが生じ得ると判定された。この反りは、高分子電解質水溶液の濃度を減少させることにより、および/または結合前に濯ぎありの条件を用いることにより、最小にできると判定された。しかしながら、図4aに示されるように、濯ぎありの条件は、濯ぎなし条件と比べて、結合エネルギーの試料間のバラツキが大きかった。
【0181】
第5世代試験における全ての濃度について、WGoC試料は、熱処理後に、剥離装置または手動の剥離のいずれによっても剥離できた。濃度の減少および濯ぎありの条件の使用は、第5世代の場合、結合前部速度(BFS)および全シート反り(FSW)を減少させるのに役立った。
【0182】
過剰な高分子溶液を濯ぎで洗い落とせるか否かを確かめるために、第5世代試験に、LUVIQUATのより高濃度のコーティング(0.1質量%)を使用した試験も行った。濯ぎありの条件下で、0.1質量%の濃度により膨れは減少し、濯ぎが使用されない場合、酷い膨れが示された。濯ぎありの条件により、結合エネルギーはわずかに増加したが、それでもまだ、剥離可能な範囲内であった。したがって、濯ぎありの条件を使用することは、より高濃度のポリカチオン性高分子溶液を使用するのに都合よいであろうと結論付けることができる。
【0183】
濯ぎ後、0.1質量%のLUVIQUAT溶液から形成されたコーティングの厚さは、0.02質量%のLUVIQUAT溶液から形成されたコーティングとほぼ等しいことも分かった。改質層の厚さは、偏光解析法によって測定した。図4bから分かるように、0.02質量%のLUVIQUATの堆積により形成された改質層の厚さ(nm、y軸)は、濯ぎなしの条件について、約2.1~2.6nm、濯ぎありの条件について、約1.8~2.1nmと様々であった。0.1質量%のLUVIQUATの堆積により形成された改質層の厚さ(nm、y軸)は、約2.0~3.3nm(濯ぎなし)、および約1.9~2.2nm(濯ぎあり)と様々であった。LUVIQUAT高分子層の平均厚さは、濃度および濯ぎあり/なしの条件にかかわらず、約2.2nmであった。このことは、高濃度溶液の濯ぎ後に、適切なLUVIQUAT堆積がガラス上に残されたことを示唆する。
【0184】
実施例2a:PDADMACによる表面処理-ウエハー/回転被覆
ポリ塩化(ジアリルジメチルアンモニウム)(PDADMAC)の貯蔵液(MW 400~500kDa、水中20%の活性成分)を、水中で0.005質量%から0.05質量%に及ぶ異なる濃度の溶液に希釈した。高分子の堆積および得られた性質の試験を、先の実施例1aに述べられたように行った。
【0185】
【表8】
【0186】
表8は、PDADMAC改質層を備えたガラス物品の結合エネルギー、膨れ、および剥離可能性を示している。0.05質量%のPDADMACコーティングは、熱処理後に、約16%の膨れの絶対面積、および約13.5%の膨れの変化(ピローイング)で、著しい膨れを示した。それより低濃度の試料は、N環境中の580℃への熱処理後に、より少ない膨れを示し、膨れの差のパーセントは、-0.22%から0.27%に及んだ。結合エネルギーの値は、0.02質量%から0.005質量%に亘る濃度について、約155~380mJ/mに及んだ(表8および図5の黒い星印を参照のこと)。0.05質量%および0.02質量%のPDADMACが被覆された試料は、「WILLOW」ガラスをどのようにも壊さずに、容易に剥離可能であった。しかしながら、0.005質量%の試料の結合エネルギーは、高すぎて、剥離可能ではなかった。
【0187】
実施例2b:PDADMACによる表面処理-第5世代/インライン処理
PDADMACも、実施例1bにおいて先に記載したように、第5世代(R2S)の試験において、LTPS用途に拡張するために試験した。PDADMACの試行に関して、0.01および0.005質量%のPDADMAC(400kDa)溶液を試験した。
【0188】
【表9】
【0189】
結合エネルギーは、全ての試料について手動で測定し(カミソリの刃)、約250から600mJ/m超の範囲にあると決定した(表9および図4aの右の枠)。測定した4つの試料の内、高い(>500mJ/m)結合エネルギーのために、たった1つしか剥離しなかった(濯ぎなしの条件での、0.01質量%)。PDADMACコーティングの厚さは、0.005質量%および0.01質量%について、標準的な偏光解析法により測定し、1.6nmから2.5nmの範囲内にあると判定された。
【0190】
実施例3:PVBTAClによる表面処理-ウエハー/回転被覆
ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)(PVBTACl)の貯蔵液(MW 100kDaおよび400kDa、水中30%の活性成分)を、水中で0.005質量%から0.05質量%に及ぶ異なる濃度の溶液に希釈した。高分子の堆積および試験を、先の実施例1aに述べられたように行った。
【0191】
【表10】
【0192】
表10は、PVBTACl(100kDa)改質層を備えたガラス物品の結合エネルギーを示している。表10から分かるように、0.09質量%で施した100kDaのコーティング溶液は、熱処理後に著しい膨れを有する改質層を生じた。したがって、この試料の結合エネルギーは、測定しなかった。残りの濃度は、良好な膨れプロファイルを有した(膨れ面積の差は、全結合面積の1%未満であった)。0.05質量%および0.02質量%のPVBTACl溶液から得られたコーティング溶液の結合エネルギーは、約220mJ/mであり、両方の試料は、10分間に亘るN環境中の580℃への熱処理後に、容易に剥離可能であった。
【0193】
【表11】
【0194】
表11および図5は、様々な濃度で施されたPVBTACl(400kDa)改質層を備えたガラス物品の結合エネルギーを示している。400kDaのPVBTACl溶液を使用したコーティングについて、0.05質量%溶液から得られたコーティングを除いて、膨れ面積の差は約1%であった。0.05質量%溶液から得られたコーティングは、580℃での熱処理後に25%を越える絶対膨れ面積を有した。この試料の結合エネルギーは、不満足な膨れのために、測定しなかった。それより低い濃度の溶液から製造されたコーティングは、約200から320mJ/mに及ぶ結合エネルギーを有した(図5、黒い星印)。しかしながら、0.01および0.02質量%の試料だけが、手動で剥離できた(図5の陰影部分を参照のこと)。
【0195】
実施例4:PVMPyBrによる表面処理-ウエハー/回転被覆
ポリ(臭化4-ビニル-1-メチルピリジニウム)(PVMPyBr)の貯蔵液を、水中で0.01質量%から0.05質量%に及ぶ異なる濃度の溶液に希釈した。高分子の堆積および試験を、先の実施例1aに述べられたように行った。
【0196】
【表12】
【0197】
表12および図6は、PVMPyBr改質層を備えたガラス物品の結合エネルギーを示している。結合試料の4つ角に金属刃を挿入することによって測定した結合エネルギーは、約270~415mJ/mに及び、全ての試料は、スコッチテープを使用して手動で剥離可能であった(図6、星印)。膨れの絶対面積は、0.02質量%の高分子溶液が最低であり(約3.8%)、0.05質量%のPVMPyBr溶液から製造されたコーティングが最高であった(約7%)。580℃での熱処理後の膨れの変化パーセントは、全結合面積の約1.5%から約3%まで濃度に依存しない様式で様々であった。
【0198】
実施例5:PVPyClによる表面処理-ウエハー/回転被覆
室温で濃HClをポリ(4-ビニルピリジン)の水性懸濁液に撹拌しながら添加することによって、ポリ(4-ビニルピリジン)からポリ(塩化4-ビニルピリジン)(PVPyCl)を合成した。0.005質量%から0.05質量%のPVPyClに及ぶ濃度の水溶液に調製した。試験を、先の実施例1aに述べられたように行った。
【0199】
【表13】
【0200】
表13は、様々な濃度のPVPyCl改質層を備えた様々なガラス物品の結合エネルギー、膨れ、および剥離可能性を示している。0.05質量%のPVPyCl溶液が被覆された試料は、熱処理前でさえ著しい膨れを示し、さらに試験されなかった。580℃での熱処理後、試験された残りの濃度のPVPyClコーティング試料の膨れの変化パーセントは、測定された全試料について、結合面積の1%未満であった。膨れの絶対面積は、測定された全試料について、2%未満であった。結合試料の4つ角に金属刃を挿入することによって測定した平均結合エネルギーは、約90~320mJ/mに及び、全ての試料は、スコッチテープを使用して手動で剥離可能であった。0.05質量%の試料の結合エネルギーは、上述した膨れのために、測定しなかった。
【0201】
実施例6:薄いシートからの担体の剥離
剥離の際に改質層がどのように転写されるかを理解することを目指して、X線光電子分光法(XPS)(単色Al Kα線を使用したPHI Quantum 2000)を使用して、結合の前および剥離の後の担体上に存在する原子状炭素の量、並びに剥離後の薄いシート上に存在する原子状炭素の量を測定した。そのデータは、XPS製造供給元により提供されたMultipakソフトウェアパッケージを使用して解析した。LUVIQUAT高分子の0.02質量%溶液を、先の実施例1aに記載されたように、「EAGLE XG」ガラス上に堆積した。結合前に、堆積した高分子溶液の炭素含有量は、XPSによって、9.6%であると測定された。次に、「EAGLE XG」ガラスを、先に記載されたように、「WILLOW」薄いシートに結合させた。この結合したシートを10分間に亘り580℃の熱処理に施した。室温に冷却した後、シートを手動で剥離し、薄いシートおよび担体の炭素含有量は、それぞれ、2.8%および8.7%であると測定された。表14および図8は、薄いガラスへの高分子のある程度の転写が生じるのに対し、高分子の実質的に全てが、剥離の際に薄いシートに結合したままであることを示す。このことは、薄いシートに残された改質層の残留物(したがって、その後の洗浄工程が必要である)が最小になるので都合よい。これにより、担体シートの再利用可能性も改善される。表14および図8に示されるように、担体は、ポリカチオン性高分子コーティングの90%超を保持し、これは、使用前に、再被覆を必要とせずに、担体を再利用するのに十分であると考えられる。
【0202】
【表14】
【0203】
本開示の精神および範囲から逸脱せずに、開示された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本開示は、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るような任意と全てのそのような改変および変更を包含することが意図されている。
【0204】
例えば、ここに開示された改質層は、担体を薄いシートに結合する、2つの担体を一緒に結合する、2つ以上の薄いシートを一緒に結合する、または様々な数の薄いシートおよび担体を有する積層体を一緒に結合するために、使用してよい。
【0205】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0206】
実施形態1
物品において、
第1のガラスシート結合面を有する第1のガラスシート、
第2のガラスシート結合面を有する第2のガラスシート、および
前記第1と第2のガラスシートの中間にあり、改質層結合面を有する改質層であって、1種類以上のカチオン性高分子から作られた改質層、
を備え、
前記改質層が前記第1のガラスシートを前記第2のガラスシートに結合している、物品。
【0207】
実施形態2
前記カチオン性高分子が水溶性である、実施形態1に記載の物品。
【0208】
実施形態3
前記カチオン性高分子が親水性である、実施形態1または2に記載の物品。
【0209】
実施形態4
前記カチオン性高分子がポリアルキル骨格を含む、実施形態1から3いずれか1つに記載の物品。
【0210】
実施形態5
前記カチオン性高分子の繰り返し単位が、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素または炭素の1つ以上を含む、実施形態1から4いずれか1つに記載の物品。
【0211】
実施形態6
前記繰り返し単位が、正電荷を持つ窒素を含む、実施形態5に記載の物品。
【0212】
実施形態7
前記繰り返し単位が、2:1から20:1の炭素:窒素比を有する、実施形態6に記載の物品。
【0213】
実施形態8
前記正電荷を持つ窒素が、アンモニウムカチオンである、実施形態5から7いずれか1つに記載の物品。
【0214】
実施形態9
前記繰り返し単位が、
【0215】
【化14】
【0216】
またはその組合せを含む、実施形態5から8いずれか1つに記載の物品。
【0217】
実施形態10
前記正電荷を持つ窒素が、イミダゾリウムカチオンである、実施形態5から7いずれか1つに記載の物品。
【0218】
実施形態11
前記繰り返し単位が、
【0219】
【化15】
【0220】
またはその組合せを含む、実施形態5、6または9に記載の物品。
【0221】
実施形態12
前記正電荷を持つリンが、ホスホニウムイオンである、実施形態5に記載の物品。
【0222】
実施形態13
前記正電荷を持つ硫黄が、スルホニウムイオンである、実施形態5に記載の物品。
【0223】
実施形態14
前記高分子が、酸素を実質的に含まない、実施形態1から13いずれか1つに記載の物品。
【0224】
実施形態15
前記改質層が、実質的に単分子層である、実施形態1から14いずれか1つに記載の物品。
【0225】
実施形態16
前記改質層が、約0.1nmから約100nmの平均厚さを有する、実施形態15に記載の物品。
【0226】
実施形態17
前記改質層の平均厚さが約10nm未満である、実施形態16に記載の物品。
【0227】
実施形態18
前記改質層の平均厚さが約5nm未満である、実施形態17に記載の物品。
【0228】
実施形態19
前記改質層の平均厚さが約3nm未満である、実施形態17に記載の物品。
【0229】
実施形態20
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約100から約600mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態1から19いずれか1つに記載の物品。
【0230】
実施形態21
前記結合エネルギーが約150から約400mJ/mである、実施形態20に記載の物品。
【0231】
実施形態22
前記改質層結合面が、前記物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃で保持した後、250から450mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態1から21いずれか1つに記載の物品。
【0232】
実施形態23
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、10%未満である、実施形態1から22いずれか1つに記載の物品。
【0233】
実施形態24
前記改質層の絶対膨れ面積が2.5%未満である、実施形態23に記載の物品。
【0234】
実施形態25
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、3%未満である、実施形態1から24いずれか1つに記載の物品。
【0235】
実施形態26
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが1%未満である、実施形態25に記載の物品。
【0236】
実施形態27
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが、前記物品を90分間に亘り425で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃に保持した後、0.1%未満である、実施形態1から26いずれか1つに記載の物品。
【0237】
実施形態28
前記第2のガラスシートの平均厚さが約300マイクロメートル以下である、実施形態1から27いずれか1つに記載の物品。
【0238】
実施形態29
前記第2のガラスシートの平均厚さが、前記第1のガラスシートの平均厚さより小さい、実施形態28に記載の物品。
【0239】
実施形態30
前記第1のガラスシートの平均厚さが約200マイクロメートル以上である、実施形態29に記載の物品。
【0240】
実施形態31
前記繰り返し単位が、
【0241】
【化16】
【0242】
を含む、実施形態1から30いずれか1つに記載の物品。
【0243】
実施形態32
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約250mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態31に記載の物品。
【0244】
実施形態33
前記改質層結合面が、前記物品を90分間に亘り425℃で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃で保持した後、約250から約450mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態31または32に記載の物品。
【0245】
実施形態34
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、3%未満である、実施形態31から33いずれか1つに記載の物品。
【0246】
実施形態35
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を90分間に亘り425℃に保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃に保持した後、1%未満である、実施形態31から34いずれか1つに記載の物品。
【0247】
実施形態36
前記繰り返し単位が、
【0248】
【化17】
【0249】
を含む、実施形態1から30いずれか1つに記載の物品。
【0250】
実施形態37
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約150から約400mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態36に記載の物品。
【0251】
実施形態38
前記改質層結合面が、前記物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃で保持した後、約250から約500mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態36または37に記載の物品。
【0252】
実施形態39
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、2%未満である、実施形態36から38いずれか1つに記載の物品。
【0253】
実施形態40
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を90分間に亘り425で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃に保持した後、0.1%未満である、実施形態36から39いずれか1つに記載の物品。
【0254】
実施形態41
前記繰り返し単位が、
【0255】
【化18】
【0256】
を含む、実施形態1から30いずれか1つに記載の物品。
【0257】
実施形態42
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約175から約375mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態41に記載の物品。
【0258】
実施形態43
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、1%未満である、実施形態40または41に記載の物品。
【0259】
実施形態44
前記繰り返し単位が、
【0260】
【化19】
【0261】
を含む、実施形態1から30いずれか1つに記載の物品。
【0262】
実施形態45
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約250から約450mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態44に記載の物品。
【0263】
実施形態46
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、2%未満である、実施形態44または45に記載の物品。
【0264】
実施形態47
前記前記繰り返し単位が、
【0265】
【化20】
【0266】
を含む、実施形態1から30いずれか1つに記載の物品。
【0267】
実施形態48
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約75から約350mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のガラスシート結合面と結合している、実施形態47に記載の物品。
【0268】
実施形態49
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、1%未満である、実施形態47または48に記載の物品。
【0269】
実施形態50
ガラス物品を製造する方法において、
少なくとも1種類のカチオン性高分子を堆積させることによって、第1のガラスシートの結合面上に、改質層結合面を有する改質層を形成する工程、および
前記改質層結合面を第2のガラスシートの結合面に結合させる工程、
を有してなる方法。
【0270】
実施形態51
前記第1のガラスシートおよび/または前記第2のガラスシートの結合面から前記改質層結合面の少なくとも一部を剥離する工程をさらに含む、実施形態50に記載の方法。
【0271】
実施形態52
前記カチオン性高分子の繰り返し単位が、正電荷を持つ窒素、リン、硫黄、ホウ素または炭素の1つ以上を含む、実施形態50または51に記載の方法。
【0272】
実施形態53
前記正電荷を持つ窒素が、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンおよびその組合せからなる群より選択される、実施形態52に記載の方法。
【0273】
実施形態54
前記繰り返し単位が、
【0274】
【化21】
【0275】
およびその組合せからなる群より選択される、実施形態52または53に記載の方法。
【0276】
実施形態55
前記カチオン性高分子を堆積させる前に、前記第1のガラスシートおよび/または前記第2のガラスシートのOプラズマ処理の工程をさらに含む、実施形態50から54いずれか1つに記載の方法。
【0277】
実施形態56
前記カチオン性高分子を堆積させる前に、前記第1のガラスシートおよび/または前記第2のガラスシートを洗浄する工程をさらに含む、実施形態50から55いずれか1つに記載の方法。
【0278】
実施形態57
前記カチオン性高分子の堆積後に、前記第1のガラスシートを洗浄する工程をさらに含む、実施形態50から56いずれか1つに記載の方法。
【0279】
実施形態58
乾燥工程をさらに含む、実施形態50から57いずれか1つに記載の方法。
【0280】
実施形態59
前記カチオン性高分子が、回転塗布、浸漬被覆、または吹付け塗りにより堆積される、実施形態50から58いずれか1つに記載の方法。
【0281】
実施形態60
前記カチオン性高分子が水溶液として堆積される、実施形態50から59いずれか1つに記載の方法。
【0282】
実施形態61
前記カチオン性高分子の水溶液が、0.001質量パーセントから3.0質量パーセントの高分子濃度を有する、実施形態60に記載の方法。
【0283】
実施形態62
前記高分子濃度が0.5質量パーセント未満である、実施形態61に記載の物品。
【0284】
実施形態63
前記高分子濃度が0.1質量パーセント未満である、実施形態62に記載の物品。
【0285】
実施形態64
前記カチオン性高分子の水溶液が、有機溶媒を実質的に含まない、実施形態60から63いずれか1つに記載の方法。
【0286】
実施形態65
前記改質層が、約0.1nmから約10nmの平均厚さを有する、実施形態50から64いずれか1つに記載の方法。
【0287】
実施形態66
前記改質層の平均厚さが約5nm未満である、実施形態65に記載の方法。
【0288】
実施形態67
前記改質層の平均厚さが約3nm未満である、実施形態66に記載の方法。
【0289】
実施形態68
物品において、
第1のシート結合面を有する第1のシート、
第2のシート結合面を有する第2のシート、および
前記第1と第2のシートの中間にあり、改質層結合面を有する改質層であって、
【0290】
【化22】
【0291】
およびその組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む1種類以上のカチオン性高分子から作られた改質層、
を備え、
前記改質層は、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する、物品。
【0292】
実施形態69
前記改質層が実質的に単分子層である、実施形態68に記載の物品。
【0293】
実施形態70
前記改質層が、約0.1nmから約100nmの平均厚さを有する、実施形態68または69に記載の物品。
【0294】
実施形態71
前記改質層の平均厚さが約10nm未満である、実施形態70に記載の物品。
【0295】
実施形態72
前記改質層の平均厚さが約5nm未満である、実施形態71に記載の物品。
【0296】
実施形態73
前記改質層の平均厚さが約3nm未満である、実施形態72に記載の物品。
【0297】
実施形態74
前記改質層結合面が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃で保持した後、約100から約600mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のシート結合面と結合している、実施形態68から73いずれか1つに記載の物品。
【0298】
実施形態75
前記結合エネルギーが約150から約400mJ/mである、実施形態74に記載の物品。
【0299】
実施形態76
前記改質層結合面が、前記物品を90分に亘り425℃で保持し、その後、該物品を10分間に亘り600℃で保持した後、250から450mJ/mの結合エネルギーで、前記第2のシート結合面と結合している、実施形態68から75いずれか1つに記載の物品。
【0300】
実施形態77
前記改質層の絶対膨れ面積が、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、10%未満である、実施形態68から76いずれか1つに記載の物品。
【0301】
実施形態78
前記改質層の絶対膨れ面積が2.5%未満である、実施形態77に記載の物品。
【0302】
実施形態79
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが、前記物品を窒素環境下で10分間に亘り580℃に保持した後、3%未満である、実施形態68から78いずれか1つに記載の物品。
【0303】
実施形態80
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが1%未満である、実施形態79に記載の物品。
【0304】
実施形態81
前記改質層の膨れ面積の変化パーセントが、前記物品を90分間に亘り425で保持し、その後、該物品を窒素環境下で10分間に亘り600℃に保持した後、0.1%未満である、実施形態68から80いずれか1つに記載の物品。
【0305】
実施形態82
前記第2のシートの平均厚さが約300マイクロメートル以下である、実施形態68から81いずれか1つに記載の物品。
【0306】
実施形態83
前記第2のシートの平均厚さが、前記第1のシートの平均厚さより小さい、実施形態82に記載の物品。
【0307】
実施形態84
前記第1のシートの平均厚さが約200マイクロメートル以上である、実施形態83に記載の物品。
【0308】
実施形態85
前記第2のシートが、ガラス、シリコン、またはその組合せから作られている、実施形態68から84いずれか1つに記載の物品。
【0309】
実施形態86
物品を製造する方法において、
少なくとも1種類のカチオン性高分子を堆積させることによって、第1のシートの結合面上に、改質層結合面を有する改質層を形成する工程であって、該カチオン性高分子は、
【0310】
【化23】
【0311】
およびその組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む、工程、および
前記改質層結合面を第2のシートの結合面に結合させる工程、
を有してなる方法。
【0312】
実施形態87
前記第1のシートおよび/または前記第2のシートの結合面から前記改質層結合面の少なくとも一部を剥離する工程をさらに含む、実施形態86に記載の方法。
【0313】
実施形態88
前記カチオン性高分子を堆積させる前に、前記第1のシートおよび/または前記第2のシートのOプラズマ処理の工程をさらに含む、実施形態86または87に記載の方法。
【0314】
実施形態89
前記カチオン性高分子を堆積させる前に、前記第1のシートおよび/または前記第2のシートを洗浄する工程をさらに含む、実施形態86から88いずれか1つに記載の方法。
【0315】
実施形態90
前記カチオン性高分子の堆積後に、前記第1のシートを洗浄する工程をさらに含む、実施形態86から89いずれか1つに記載の方法。
【0316】
実施形態91
乾燥工程をさらに含む、実施形態86から90いずれか1つに記載の方法。
【0317】
実施形態92
前記カチオン性高分子が、回転塗布、浸漬被覆、または吹付け塗りにより堆積される、実施形態86から91いずれか1つに記載の方法。
【0318】
実施形態93
前記カチオン性高分子が水溶液として堆積される、実施形態86から92いずれか1つに記載の方法。
【0319】
実施形態94
前記カチオン性高分子の水溶液が、0.001質量パーセントから3.0質量パーセントの高分子濃度を有する、実施形態93に記載の方法。
【0320】
実施形態95
前記高分子濃度が0.5質量パーセント未満である、実施形態94に記載の物品。
【0321】
実施形態96
前記高分子濃度が0.1質量パーセント未満である、実施形態95に記載の物品。
【0322】
実施形態97
前記カチオン性高分子の水溶液が、有機溶媒を実質的に含まない、実施形態93から96いずれか1つに記載の方法。
【0323】
実施形態98
前記改質層が、約0.1nmから約10nmの平均厚さを有する、実施形態86から97いずれか1つに記載の方法。
【0324】
実施形態99
前記改質層の平均厚さが約5nm未満である、実施形態98に記載の方法。
【0325】
実施形態100
前記改質層の平均厚さが約3nm未満である、実施形態99に記載の方法。
【0326】
実施形態101
前記第2のシートが、ガラス、シリコン、またはその組合せから作られている、実施形態86から100いずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0327】
2 物品
10 第1のシート
12 第一面
14 結合面
16 周囲
20 薄いシート
22 第一面
24 結合面
26 周囲
30 改質層
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8