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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】光放出デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20230411BHJP
   H01L 33/46 20100101ALI20230411BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230411BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01L33/22
H01L33/46
G02B5/26
G02B5/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020521915
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2018056024
(87)【国際公開番号】W WO2019079257
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】62/573,383
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18158917.7
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/683,410
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/160,738
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】タンマ,ヴェンカタ,アナンス
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,トニー
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216555(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0896594(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0314606(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103219442(CN,A)
【文献】特表2012-516569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213485(US,A1)
【文献】特表2012-528434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179334(US,A1)
【文献】特開2011-159956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0285128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出デバイスであって:
多重量子井戸を有する光放出半導体構造;及び
a)前記多重量子井戸からの近接場放射をハイパボリック・メタマテリアル格子構造の表面波に結合し、前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造の前記表面波からの放射をアウトカップルし、前記光放出デバイスからの光出力を形成するように構成されたハイパボリック・メタマテリアル格子構造;又は
b)前記多重量子井戸からの近接場放射を表面波に結合するように構成された反射性の金属層と、前記金属層及び前記多重量子井戸の間に配置され、前記表面波からの放射をアウトカップルし、前記光放出デバイスからの光出力を提供するように構成された格子構造とを有するプラズモニック構造であって、前記格子構造は:
前記光放出半導体構造の中に配置され、1つ以上の誘電体材料から形成されている;又は
前記光放出半導体構造の外に配置され、誘電体材料に組み込まれ、前記誘電体材料により前記金属層から隔てられている、プラズモニック構造;
を有する光放出デバイス。
【請求項2】
前記多重量子井戸からの近接場放射をハイパボリック・メタマテリアル格子構造の表面波に結合し、前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造の前記表面波からの放射をアウトカップルし、前記光放出デバイスからの光出力を形成するように構成されたハイパボリック・メタマテリアル格子構造を有する、請求項1に記載の光放出デバイス。
【請求項3】
前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造は前記光放出半導体構造に配置されている、請求項2に記載の光放出デバイス。
【請求項4】
前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造に隣接して配置される、前記多重量子井戸とは反対側にある反射表面を有する、請求項3に記載の光放出デバイス。
【請求項5】
前記反射表面は反射金属表面である、請求項4に記載の光放出デバイス。
【請求項6】
前記反射金属表面と前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造との間に配置される透明な導電性の金属酸化物の層を有する請求項5に記載の光放出デバイス。
【請求項7】
前記透明な導電性の金属酸化物の層と前記反射金属表面との間に配置される誘電体材料の層を有する請求項6に記載の光放出デバイス。
【請求項8】
反射金属表面;
前記反射金属表面と半導体ダイオード構造との間に配置される透明な導電性の金属酸化物の層;
前記透明な導電性の金属酸化物の層と前記反射金属表面との間に配置される誘電体層;
を有し、前記ハイパボリック・メタマテリアル格子構造は前記誘電体層に配置されている、請求項2に記載の光放出デバイス。
【請求項9】
前記多重量子井戸からの近接場放射を表面波に結合するように構成された反射性の金属層を有するプラズモニック構造;及び
1つ以上の誘電体材料から形成され、前記光放出半導体構造の中で前記金属層と前記多重量子井戸との間に配置され、前記表面波からの放射をアウトカップルし、前記光放出デバイスからの光出力を提供するように構成された格子構造;
を有する請求項1に記載の光放出デバイス。
【請求項10】
前記格子構造と反射金属表面との間に透明な導電性の金属酸化物の層を有する、請求項9に記載の光放出デバイス。
【請求項11】
前記透明な導電性の金属酸化物の層と前記反射金属表面との間に誘電体層を有する、請求項10に記載の光放出デバイス。
【請求項12】
前記多重量子井戸からの近接場放射を表面波に結合するように構成された反射性の金属層を有するプラズモニック構造;及び
前記金属層と前記多重量子井戸との間で前記光放出半導体構造の外に配置され、誘電体材料に組み込まれ、前記誘電体材料により前記金属層から隔てられ、前記表面波からの放射をアウトカップルし、前記光放出デバイスからの光出力を提供するように構成された格子構造;
を有する請求項1に記載の光放出デバイス。
【請求項13】
前記格子構造は、前記格子構造が組み込まれている前記誘電体材料とは異なる1つ以上の誘電体材料から形成されている、請求項12に記載の光放出デバイス。
【請求項14】
前記格子構造は1つ以上の金属から形成されている、請求項12に記載の光放出デバイス。
【請求項15】
前記格子構造が組み込まれている前記誘電体材料と前記光放出半導体構造との間に配置される導電性の金属酸化物の層を有する、請求項12-14のうちの何れか1項に記載の光放出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本願は2018年6月11日付で出願された米国仮出願番号第62/683,410号、2017年10月17日付で出願された第62/573,383号、及び“LED EMITTERS WITH INTEGRATED NANO-PHOTONIC STRUCTURES TO ENHANCE EQE”と題する2018年10月15日付で出願された米国非仮出願第16/160,738号、並びに2018年2月27日付で出願された欧州特許出願第18158917.7号による優先権を主張しており、これら全てはあたかも完全に記載されているかのように本願に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は発光ダイオード(LED)エミッタに関し、特に、外部量子効率(EQE)を高めるために一体化されたナノ・フォトニック構造を有するLEDエミッタに関する。
【0003】
背景技術
多重量子井戸(MQW)発光ダイオード(LED)における内部量子効率(IQE)は、ドループ関連メカニズムによって制限される。従って、高い電流密度及び高い温度では、ポンプIQEは、高い発光効率に対する主な制限要因の1つである。更に、活性領域によって放射されるエネルギーは、表面波の形でトラップされることが多く、最終的にはオーミック損失に起因して散逸する。これらのメカニズムは何れも、より低いEQEを招く。従って、これらの問題に対処し、統合されたソリューションをLEDエミッタ・キャビティに提供する、改良されたLEDエミッタを求めるニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
改善された外部量子効率(EQE)LED放出を行うデバイス、システム、及び方法が開示される。デバイス、システム、及び方法は、表面モードを指向性放射に変換するように構成されたパターニング層と、放射を生成するために、III/Vダイレクト・バンドギャップ半導体として形成される半導体層と、入射する放射を反射するように構成された金属バック・リフレクタ層とを含む。パターニング層は1次元的、2次元的、又は3次元的であってもよい。パターニング層は半導体層に埋没していてもよい。半導体層はp型ガリウム・ナイトライド(GaN)である。パターニング層は、ハイパボリック・メタマテリアル(HMM)層であってもよいし、フォトニック・ハイパークリスタル(PhHc)を含んでいてもよいし、あるいは、低い又は高い屈折率の材料、金属ナノ・アンテナ/散乱体のアレイ、誘電体ナノ・アンテナ/散乱体のアレイ、金属-誘電体散乱体のアレイ、金属又は誘電体回折格子構造であってもよい。
【0005】
デバイス、システム、及び方法は、半導体層と金属バック・リフレクタ層との間に配置されたインジウムスズ酸化物(ITO)層を含み、金属リフレクタ近傍のキャリアの運動エネルギーを増進するフィールド閉じ込めを減らす一方で、高いパーセル因子(PF)及び電気伝導率を提供することができる。
【0006】
デバイス、システム、及び方法は、金属バック・リフレクタ層に隣接して配置された低屈折率層を含み、金属層との組み合わせで動作し、損失層近傍のフィールド閉じ込めを損なうオーミック損失を低減させ、放射を放射エミッションに結び付ける。パターニング層は、低屈折率層内に埋め込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面と共に例示として与えられる以下の説明から、より詳細な理解を得ることができる。
【0008】
図1】ハイパボリック・メタマテリアル(HMM)の層及び金属バック・リフレクタを組み込むパターニングされたp型ガリウム・ナイトライド(pGaN)層を有する発光ダイオード(LED)キャビティを示す。
【0009】
図2】低い又は高い屈折率(等方性)材料及び金属バック・リフレクタを組み込むパターニングされたpGaN層を有するLEDキャビティを示す。
【0010】
図3】金属バック・リフレクタとともに複合インジウム錫酸化物(ITO)層とHMMとを組み込むパターニングされたpGaN層を有するLEDキャビティを示す。
【0011】
図4】金属バック・リフレクタとともに複合ITOと低い又は高い屈折率(等方性)材料とを組み込むパターニングされたpGaN層を有するLEDキャビティを示す。
【0012】
図5】ITO層及び金属バック・リフレクタとともに複合誘電体層とHMM層とを組み込むパターニングされたpGaN層を有するLEDキャビティを示す。
【0013】
図6】ITO層及び金属バック・リフレクタとともに複合誘電体層と低い又は高い屈折率(等方性)材料を組み込むパターニングされたpGaN層を有するLEDキャビティを示す。
【0014】
図7】複合誘電体層とITO層と金属バック・リフレクタとを有するLEDキャビティを示す(誘電体層は、パターニングされたHMM層を組み込む)。
【0015】
図8】複合誘電体層とITO層と金属バック・リフレクタとを有するLEDキャビティを示す(誘電体層は、ITO層の表面近傍に位置する金属ナノ・アンテナを組み込む)。
【0016】
図9】複合誘電体層とITO層と金属バック・リフレクタとを有するLEDキャビティを示す(誘電体層は、ITO層の表面近傍に誘電体ナノ・アンテナ・アレイを組み込む)。
【0017】
図10】複合誘電体層とITO層と金属バック・リフレクタとを有するLEDキャビティを示す(誘電体層は、ITO層の表面において誘電体又は金属ナノ・アンテナ・アレイを組み込む)。
【0018】
図11】複合誘電体層とITO層と金属バック・リフレクタとを有するLEDキャビティを示す(誘電体層は、ITO層とのインターフェースとなる位相変化HMMを組み込む)。
【0019】
図12】改良された外部量子効率(EQE)LED放出を行うための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、本件実施形態の完全な理解をもたらすために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理工程、及び技術のような多数の特定の詳細が説明される。しかしながら、実施形態はこれらの特定の詳細なしに実施され得ることは当業者によって理解されるであろう。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造又は処理ステップは詳細には説明されていない。層、領域、又は基板のような要素が他の要素の「上(on)」又は「上(over)」にあると言及される場合、それは、他の要素に直接的に接触している可能性があり、又は介在する要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、ある要素が他の要素に「直接的に接している」又は「直接的に覆っている」と言及される場合、介在する要素は存在しない。また、ある要素が他の要素の「下(beneath)」、「下(below)」、又は「下(under)」にあると言及される場合、それは、他の要素の直下又は下にある可能性があり、又は介在する要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素が他の要素の「直下」又は「直接的に下方」にあると言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0021】
以下の詳細な説明における実施形態の説明を不明瞭にしないために、当技術分野で知られている幾つかの構造、構成要素、材料、寸法、処理工程、及び技術は、提示及び説明の目的で一緒に組み合わされる可能性があり、ある例では詳細に説明されないであろう。他の例では、当技術分野で知られている幾つかの構造、構成要素、材料、寸法、処理工程、及び技術は全く説明されていないであろう。以下の説明は、本明細書に記載される種々の実施形態の特徴的な特徴又は要素に焦点を当てていることが理解されるべきである。
【0022】
多重量子井戸(MQW)発光ダイオード(LED)における内部量子効率(IQE)は、ドループ関連メカニズムによって制限される。ドループは、電気から光へのパワー変換効率が、より高い入力電流と共に劇的に低下する場合に生じる。従って、高い電流密度及び高い温度において、ポンプIQEは高い発光効率に対する主な制限要因の1つである。外部量子効率(EQE)を高めるために一体化されたナノ・フォトニック構造を有するLEDエミッタは、プラズモニック構造及び/又はハイパボリック・メタマテリアル(HMM)によってサポートされる高運動量を担うモードに、MQWからの近接場放射を結合することによって、この問題に対処する。これらの構造及び/又はメタマテリアルは、高いパーセル因子(PF)を生じ得るが、活性領域によって放射されるエネルギーは、表面波の形態でトラップされ、最終的には、オーミック損失に起因して散逸される可能性がある。外部量子効率(EQE)を高めるように設計された一体化ナノ・フォトニック構造を有するLEDエミッタは、LEDエミッタ・キャビティに一体化ソリューションを提供する一方、表面波を発光にカップリングすることによって、この問題に更に対処する。
【0023】
図1は、ハイパボリック・メタマテリアル(HMM)層130と金属バック・リフレクタ120とを埋め込んだパターニングされたp型窒化ガリウム(pGaN)層110を有する発光ダイオード(LED)100キャビティを示す。パターニングされたpGaN層110は、図1の半導体層110として示されている。pGaN層110は、約100nmの厚さを有する可能性がある。HMM層130は、半導体層110内に埋め込まれた層内に示される正方形として示されている。金属バック・リフレクタ120は、半導体層110の末端にあるHMM層130に隣接する可能性がある。図1に見られるように、金属バック・リフレクタ120は、HMM層130が出ていない領域で半導体層110に隣接していてもよく、又は、HMM層130が金属バック・リフレクタ120から間隔をあけて配置されてもよい(即ち、HMM層130は半導体層110の中に完全に埋め込まれる)。HMM層130は、1次元パターン、例えば図中の縞のようなパターン、2次元パターン、例えばチェックボード・パターン、及び、3次元パターン、例えばあるパターンを別のパターン上に組み込むパターン(即ち、積み重ねられたパターン)としてパターニングされてもよい。
【0024】
半導体層110又はキャビティは、pGaNの層の形態をとることが可能である。当業者には理解されるように、GaNは、発光ダイオードに一般的に使用されるバイナリーIII/Vダイレクト・バンドギャップ半導体である。GaNは、3.4eVという広いバンド・ギャップを有する結晶構造を有しており、オプトエレクトロニクス、高電力及び高周波数デバイスへの応用に最適な材料となっている。GaNは、n型GaNを生成するためにシリコン(Si)又は酸素でドーピングされることが可能であり、本実施例で使用されているようなp型GaNを生成するためにマグネシウム(Mg)でドーピングされることが可能である。
【0025】
HMM層130は、埋め込まれたパターニングされたメタ材料であってもよい。パターンが上述されているが、メタマテリアルは、フォトニック・ハイパークリスタル(PhHc)であってもよく、そのような材料に関する更なる情報は例えばGalfsky, PNAS 1702683114に見受けられる。メタマテリアル構造は、局所的にフォトニック状態密度を増加させる高次モード(即ち、高運動量の表面状態)をサポートするハイパボリック挙動を特徴付ける。高運動量のこれらの表面状態は、放射されるエミッションを増強する双極子放出の減衰チャネルを提供する(即ち、パーセル効果によりIQEが増加する)。パーセル効果は、環境による蛍光分子の自然放出率の増強である。
【0026】
双極子放出の近接場は表面状態に結合され、横方向周期格子の作用により放射の形態でアウトカップリングされる。横方向周期格子は、最初に誘起された表面波を放射に変換する。表面波が放射に変換されると、放射は高度に指向性を有するようになる。この指向性は、半導体層からの光抽出を改善し、輝度を増強することもできる。HMM層130は、多数の様々な方法で形成される可能性があり、例えばサブ波長厚さの金属/誘電体の層を交互にすることによって形成されてもよい。HMM層130を作成する他の方法は、Evgenii E. Narimanov(Phys.Rev X4,041014(2014))による“Photonic Hypercrystals”と題する論文に見出すことができる。HMM層130の存在は、説明されるような指向性放射に変換されることが可能な表面モードを生成する。HMM層130は、半導体層110内の金属層120に隣接して配置されてもよい。
【0027】
金属バック・リフレクタ120は、平坦な金属ミラー、分布ブラッグ・リフレクタ、及び/又はその他の既知のLEDリフレクタ(フォトニック結晶及び反射メタサーフェスを含む)を含むプラズモニック層の形態を取ることが可能である。
【0028】
図2は、低い又は高い屈折率(等方性)材料240及び金属バック・リフレクタ220を埋め込むパターニングされたpGaN層210を有するLEDキャビティ200を示す。図2のLEDキャビティ200は、図1に関して上述した半導体層110のような半導体層210と、図1に関して上述した金属バック・リフレクタ層120のような金属バック・リフレクタ層220とを含む。図1のHMM層130の代わりに、図2のLEDキャビティ200は、低い又は高い屈折率の材料の層240を含む。低い又は高い屈折率のこの層240は、図1のHMM層130に関して上述したようにパターニングされてもよい。低い又は高い屈折率の層240は、減衰レート増強を達成するために、金属バック・リフレクタ層220と共に組み合わせられる可能性がある。pGaN層210に一体化されたブラッグ回折格子は、表面波を、有用な放射に変換することができる。ブラッグ回折格子は、半導体に対して高いコントラストを提供するために、SiO2のような低屈折率材料で実現されることが可能である。
【0029】
図3は、金属バック・リフレクタ320とともにHMM層330と複合インジウム錫酸化物(ITO)層350とを組み込むパターニングされたpGaN層310を有するLEDキャビティ300を示す。図3のLEDキャビティ300は、ITO層350を含めることによって、図1の実施例に追加している。ITO層350は、以下に記載されるように配置されることが可能である。図3のLEDキャビティ300は、図1に関して上述した半導体層110のような半導体層310と、図1に関して上述した金属バック・リフレクタ層120のような金属バック・リフレクタ層320と、図1に関して上述したHMM層130のようなHMM層330とを含む。
【0030】
更に、図3のLEDキャビティ300は、HMM層330と金属バック・リフレクタ層320との間にあるものとして示されるITO層350を含む。ITO層350は、その電気伝導率及び光透過性に基づいて使用されることが可能である。このITO層350は、金属バック・リフレクタ層320付近のキャリアの運動エネルギーを改善する一方で、依然として高いPF及び電気伝導率を提供することによって、フィールド閉じ込めを低減することができる。ITOと言及されるITO層350は、例えばIZO/Al/GZO/ZnOにより、インジウム酸化亜鉛(IZO)層として形成されることも可能である。
【0031】
図4は、金属バック・リフレクタ420とともに複合ITO層450と低い又は高い屈折率(等方性)材料440とを組み込むパターニングされたpGaN層410を有するLEDキャビティ400を示す。図4のLEDキャビティ400は、ITO層450を含めることによって、図2の実施例に追加している。図4のLEDキャビティ400は、図2に関して上述した半導体層210のような半導体層410と、図2に関して上述した金属バック・リフレクタ層220のような金属バック・リフレクタ層420と、図2に関して上述した低い又は高い屈折率の材料層240のような低い又は高い屈折率の材料層440とを含む。このようなITO層450は、金属バック・リフレクタにおけるオーミック損失を低減し、低い又は高い屈折率の材料層440のようなパターニングされた層の有効性を改善する可能性がある。例えば、ナノ・アンテナ・アレイの場合、そこに含まれるITO層450は、個々のナノ・アンテナの共振動作に影響を及ぼすことが可能である。
【0032】
更に、図4のLEDキャビティ400は、低い又は高い屈折率の材料層440と金属バック・リフレクタ層420との間にあるように示されるITO層450を含む。ITO層450は、図3に関して上述したITO層350と同様であるとすることが可能である。
【0033】
図5は、ITO層550及び金属バック・リフレクタ520とともにHMM層530と複合誘電体層560とを組み込むパターニングされたpGaN層510を有するLEDキャビティ500を示す。図5のLEDキャビティ500は、ITO層550と金属層520との間に低屈折率層560を含めることによって、図3の実施例に追加している。図5のLEDキャビティ500は、図1に関して上述した半導体層110のような半導体層510と、図3に関して上述したITO層350などのようなITO層550と、図1に関して上述した金属バック・リフレクタ層120のような金属バック・リフレクタ層520と、図1に関して上述したHMM層130のようなHMM層530とを含む。このITO層550は、横方向電流が電気ビア内に広がることを許容する。このような電気ビアを分離する距離は、フォトニック・フィーチャの分離よりもはるかに大きい。例えば、ナノ・アンテナは数ナノ・メートル又は数十ナノ・メートルだけ隔てられ、電気ビアは10分の1マイクロメートルだけ隔てられる可能性がある。
【0034】
金属層520と組み合わされる低屈折率層560は複合ミラー・アーキテクチャを形成することが可能であり、ラジエーションを、放射エミッションに結び付けるのを支援することによって、損失層近傍のフィールド閉じ込めを損なうオーミック損失を低減する。
【0035】
図6は、ITO層650及び金属バック・リフレクタ620とともに複合誘電体層660と低い又は高い屈折率(等方性)材料640とを組み込むパターニングされたpGaN層610を有するLEDキャビティ600を示す。図6のLEDキャビティ600は、ITO層650と金属層620との間に、図5に関して上述した低屈折率層560のような低屈折率層660を含めることによって、図4の例に追加している。この低屈折率層660は、図5の低屈折率層560として機能することが可能である。図6のLEDキャビティ600は、図2に関して上述した半導体層210のような半導体層610と、図2に関して上述した金属バック・リフレクタ層220のような金属バック・リフレクタ層620と、図2に関して上述した低い又は高い屈折率の材料層240のような低い又は高い屈折率の材料層640とを含む。
【0036】
図7は、複合誘電体層760とITO層750と金属バック・リフレクタ760とを有するLEDキャビティ700を示し、誘電体層760は、パターニングされたHMM層730を組み込む。図7のLEDキャビティ700は、図5の例とは異なり、低屈折率(誘電体)層760内に埋め込まれるパターニングされたHMM層730を含めることによって、図5の実施例に追加しており、図5の実施例では、HMM層530は、上述のように半導体層510内に又はITO層550内に埋め込まれる。低屈折率層760内に埋め込まれたHMM層730は、光学性能を損なうことを犠牲にして、LEDキャビティ700の実装を単純化することができる。図7のLEDキャビティ700は、図1に関して上述した半導体層110のような半導体層710と、図3に関して上述したITO層350のようなITO層750と、図5の低屈折率層560のような、ITO層と金属層との間の低屈折率層760と、図1に関して上述した金属バック・リフレクタ層120のような金属バック・リフレクタ層720と、図1に関して上述したHMM層130のようなHMM層730とを含む。
【0037】
図8は、複合誘電体層860とITO層850と金属バック・リフレクタ層820とを有するLEDキャビティ800を示し、誘電体層860は、ITO層850の表面近傍に位置する金属ナノ・アンテナ・アレイ870を組み込んでいる。ITO層850は、同じ目的の薄いAZO層であってもよい。ITO層850の表面近傍における金属ナノ・アンテナ・アレイ870の配置は、金属ナノ・アンテナ層870を、誘電体層860内に維持しつつ、半導体層810の活性領域に可能な限り近接して配置する。金属ナノ・アンテナ・アレイ870は、ナノ・アンテナ周辺の他の材料と比較して、放射減衰レートの強い増幅を生成することが可能である。当業者に理解されるように、アレイ870内の金属ナノ粒子は、概して、高い光学吸収を有し、これは光抽出効率を損なう可能性がある。金属と誘電体との間の選択は、LEDの用途におけるIQEとExEとの間のトレード・オフに基づいて行われてもよい。例えば、高い電流密度の動作を必要とするアプリケーションは、固有のドループに関連する低いIQEによって支配される可能性がある。そのようなアプリケーションでは、ExEを犠牲にしてIQEを増加させることは、正味のフラックス利得を得る結果になるかもしれない。
【0038】
図9は、複合誘電体層960とITO層950と金属バック・リフレクタ920とを有するLEDキャビティ900を示し、誘電体層960は、ITO層950の表面近傍に誘電体ナノ・アンテナ・アレイ980を組み込む。図9は、図8の金属ナノ構造870の代わりに誘電体ナノ・アンテナ980を用いた場合の図8と同様の構造を示す。ITO層950は、同じ目的の薄いAZO層であってもよい。ITO層950の表面近傍における誘電体ナノ・アンテナ・アレイ980の配置は、誘電体ナノ・アンテナ・アレイ980を、誘電体層960内に維持しつつ、半導体層910の活性領域に可能な限り近接して配置する。このような構成では、パーセル因子を増加させることに加えて、量子井戸によって放射される放射パターンが、構造全体の放射パターンを修正するために修正されるように、放射は成形される可能性がある。金属と誘電体との間の選択は、LEDの用途におけるIQEとExEとの間のトレード・オフに基づいて行われてもよい。加えて、トレード・オフは、全体的な放射パターンとEXEとの間の妥協を含む可能性がある。例えば、高い電流密度の動作を必要とするアプリケーションは、固有のドループに関連する低いIQEによって支配される可能性がある。そのようなアプリケーションでは、ExEを犠牲にしてIQEを増加させることは、正味のフラックス利得を得る結果になるかもしれない。
【0039】
図10は、複合誘電体層1060とITO層1050と金属バック・リフレクタ1020とを有するLEDキャビティ1000を示し、誘電体層1060は、ITO層1050の表面において誘電体又は金属ナノ・アンテナ・アレイ1075を組み込む。代替的にAZO層であってもよいITO層1050は、ナノ・アンテナ・アレイ1075の位置で部分的にエッチングで除去され、その結果、ナノ・アンテナ・アレイ1075のナノ粒子が、半導体層1010の表面(pGaN層1010の表面)に近接するか、又は接触するようにする。これは、ナノ・アンテナ・アレイ1075が、半導体層1010のMQW活性領域に可能な限り近接することを許容する。この構成は、半導体pGaN層1010をパターニングすることなく、PFを最大化する意図された効果を増強することができる。
【0040】
図11は、複合誘電体層1160とITO層1150と金属バック・リフレクタ層1120とを有するLEDキャビティ1100を示し、誘電体層1160は、ITO層1150とのインターフェースとなる位相変化HMM層1190を組み込む。ここでもITO層1150は同じ目的の薄いAZO層であってもよい。位相変化HMM層1190は、上述の周期的なナノ・アンテナ・アレイ層1075の代わりに、誘電体層1160とITO層1150との間の界面に近接して配置されてもよい。位相変化HMM層1190は、勾配インピーダンス・プラズモニック又は誘電体メタサーフェスを含んでもよい。位相変化HMM層1190は、ミラーとMQWとの間の定在波フィールド・パターンを調整するために、反射されたフィールドの位相を制御することを許容することができる。干渉パターンの適切な調整により、PFは増やされ、MQWエミッションの傾斜ラジエーションは、光抽出効率を最大にするように修正される。
【0041】
図12は、改良された外部量子効率(EQE)LED放出を行うための方法を示す。方法1200は、ステップ1210において、パターニングされた層を介して表面モードを指向性放射に変換する。パターニングされた層は、1次元、2次元又は3次元であってもよい。パターニングされた層は、ハイパボリック・メタマテリアル(HMM)層であってもよいし、フォトニック・ハイパークリスタル(PhHc)を含んでもよいし、低い又は高い屈折率の材料であってもよいし、あるいは金属であってもよい。方法1200は、ステップ1220において半導体層内で放射を生成するステップを含む。半導体層はp型窒化ガリウム(GaN)である。方法1200は、ステップ1230において、金属バック・リフレクタで入射光を反射するステップを含む。パターニングされた層の配置は、例えば半導体層内又は誘電体層内にあってもよい。
【0042】
方法1200はまた、ステップ1240においてフィールド閉じ込めを低減する一方、金属リフレクタ近傍のキャリアの運動エネルギーを改善しつつ、半導体層と金属バック・リフレクタ層との間に配置されたITO層において、高いPF及び電気伝導を依然として提供するステップを含んでもよい。
【0043】
本方法1200はまた、ステップ1250においてオーミック損失を低減させ、金属層との組み合わせで動作するように、金属バック・リフレクタ層に隣接して配置された低屈折率層を使用して、ラジエーションを、放射エミッションに結び付けるために、損失層近傍のフィールド閉じ込めを損なうステップを含んでもよい。
【0044】
方法1200はまた、LEDからのエバネッセント波を、表面モード又は構造を励起する他のモードに結び付けるために、パターニングされた構造を複数の量子井戸の近くに配置するステップを含んでもよい。これは、ステップ1260において、ソースによって生成されたエネルギーのイン・カップリングを強化する。HMM層は、この内部結合エネルギーを利用することができる。
【0045】
本装置、システム及び方法は、ドループ制限エミッタ・ソリューションにおけるPF増強によりIQEを増加させ、LEDソリューションのプラズモニック及びHMM構造における光学損失を減少させ、LEDキャビティにおけるExEを増加させ、指向性放出を改善する。
【0046】
特徴及び要素は、特定の組み合わせで上述されているが、当業者は、各特徴又は要素が、単独で、又は他の特徴及び要素と共に、又は他の特徴及び要素を伴わずに、任意の組み合わせで使用され得ることを理解するであろう。更に、本明細書で説明される方法は、コンピュータ又はプロセッサによる実行のためのコンピュータ読み取り可能媒体に組み込まれたコンピュータ・プログラム、ソフトウェア、又はファームウェアで実現される可能性がある。コンピュータ読み取り可能な媒体の例は、電子信号(有線又は無線接続で伝送される)及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体の例は、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュ・メモリ、半導体メモリ・デバイス、磁気媒体(例えば、内部ハード・ディスク及びリムーバブル・ディスク)、光磁気媒体、光媒体(例えば、CD-ROMディスク)、及びデジタル多用途ディスクを含むが、これらに限定されない。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12