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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20230417BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20230417BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230417BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F25B43/00 C
F04B39/12 101Z
F04B39/00 A
F04C29/12 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018094998
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199997
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】知念 武士
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-034775(JP,U)
【文献】特開平06-257896(JP,A)
【文献】特開2004-360476(JP,A)
【文献】特開2017-110669(JP,A)
【文献】特開2012-057476(JP,A)
【文献】特開平03-088974(JP,A)
【文献】実開昭59-146579(JP,U)
【文献】特開平10-238487(JP,A)
【文献】特開平04-159482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F04B 39/12
F04B 39/00
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に圧縮機構部を備える圧縮機本体と、
前記圧縮機本体の側方に配置され、鋼板からなり、それぞれ側面が円筒面である2つのカップ状部材を組み合わせて構成され、2つの前記円筒面で形成される円筒部を有するアキュムレータと、
前記アキュムレータと前記圧縮機構部の吸入孔とを繋ぐ吸入管と、
前記アキュムレータの前記円筒部の外周面を覆う筒状の補強部材と、
を備え、
前記圧縮機本体と前記アキュムレータの前記円筒部とは鉄製のバンドを介して固定され、
前記補強部材の素材は、引張強度が前記鋼板と同等以上である高強度・高弾性率繊維素材であって、全周に亘り一体に形成されており、前記バンドと前記補強部材とが、それぞれ異なる前記カップ状部材の前記円筒面であって、互いに重ならない位置に配置されている密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記補強部材の素材は樹脂素材である請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記樹脂素材はアラミド繊維である請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
一方の前記カップ状部材のうち、前記アキュムレータの前記円筒部を形成する前記カップ状部材の円筒部の外周面に前記圧縮機本体のアキュムレータホルダに固定された前記バンドが設けられ、
他方の前記カップ状部材には、前記補強部材が設けられた、請求項1乃至請求項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の密閉型圧縮機と、前記密閉型圧縮機に接続された放熱器と、前記放熱器に接続された膨張装置と、前記膨張装置と前記密閉型圧縮機との間に接続された吸熱器と、を備えた冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置等の冷凍サイクル装置に設けられる圧縮機として、圧縮機本体とアキュムレータとが吸入管で繋がれたものが知られている。従来、CO2(R744)等の圧力の高い冷媒を使用する場合、アキュムレータの耐圧強度を確保するためにアキュムレータの密閉ケースの板厚を厚くする必要があった。また、アキュムレータの外周面に補強部材を取り付けて、耐圧強度を図るものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-280651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、密閉ケースの板厚を厚くすると、近年の素材の価格高騰に伴ってコストが高くなってしまう。また、補強部材を用いた場合には、特許文献1のように補強部材が分割できるものであり、耐圧強度の改善効果は限定的であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、圧力の高い冷媒を使用した冷凍サイクルにおいて、低コストで、耐圧強度を大きくした圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、実施形態の密閉型圧縮機は、内部に圧縮機構部を備える圧縮機本体と、前記圧縮機本体の側方に配置され、鋼板からなり、それぞれ側面が円筒面である2つのカップ状部材を組み合わせて構成され、2つの前記円筒面で形成される円筒部を有するアキュムレータと、前記アキュムレータと前記圧縮機構部の吸入孔とを繋ぐ吸入管と、前記アキュムレータの円筒部の外周面を覆う筒状の補強部材と、前記圧縮機本体と前記アキュムレータの前記円筒部とは鉄製のバンドを介して固定され、を備え、前記補強部材の素材の引張強度が前記鋼板と同等以上である高強度・高弾性率繊維素材であって、全周に亘り一体に形成されており、前記バンドと前記補強部材とが、それぞれ異なる前記カップ状部材の前記円筒面であって、互いに重ならない位置に配置されている。


【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態による密閉型圧縮機の内部構造を示す図及び冷凍サイクル構成図である。
図2】同実施形態による圧縮機構部の構成を説明するための平面図である。
図3】同実施形態による密閉型圧縮機の正面図である。
図4】同実施形態による図3のA-A断面図である。
図5】同実施形態による要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
本実施形態の密閉型圧縮機1について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、密閉型圧縮機1の内部構造及び冷凍サイクルを示している。
【0009】
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、密閉型圧縮機3(以下、圧縮機という。)と、放熱器である凝縮器4と、膨張装置5と、吸熱器である蒸発器6が冷媒配管2で順に接続される。圧縮機3はガス冷媒を圧縮し、凝縮器4は圧縮機3から吐出される高温高圧のガス冷媒を凝縮して液冷媒にする。膨張装置5は冷媒を減圧する減圧器である。蒸発器6は液冷媒を蒸発してガス冷媒にする。
【0010】
圧縮機3は、圧縮機本体30とアキュムレータ10を備えている。圧縮機本体30は、密閉ケース31と、密閉ケース31の上部側に設けられた電動機部32と、下部側に設けられた圧縮機構部33を備え、電動機部32と圧縮機構部33とは回転軸36を介して繋がれている。密閉ケース31内部には圧縮機構部33を潤滑させるための潤滑油58が貯留されている。
以下の説明では、回転軸36の延在方向を軸方向といい、回転軸36に直交する方向を径方向という。
【0011】
電動機部32は、密閉ケース31内に固定されるステータ(固定子)34と、回転軸36に固定されるロータ(回転子)35を有する。回転軸36には、圧縮機構部33側に偏心部37が設けられる。
【0012】
圧縮機構部33は、密閉ケース31に固定されるシリンダ40を有する。シリンダ40は、筒状であり、上部側の端面に主軸受41が設けられ、下部側の端面に副軸受42が設けられ、それぞれシリンダ40に固定されている。
【0013】
シリンダ40と主軸受41と副軸受42によりシリンダ室43が形成されている。シリンダ40には、シリンダ室43に連通する吸入孔44が形成されている。シリンダ40の吸入孔44には、吸入管20が接続されている。冷媒は後述するアキュムレータ10から吸入管20及び吸入孔44を通ってシリンダ室43内に取り込まれる。
【0014】
回転軸36は、シリンダ室43を貫通して設けられるとともに、主軸受41及び副軸受42に回転可能に支持されている。回転軸36のうちシリンダ室43内に位置する部分には、偏心部37が形成されている。偏心部37には、ローラ45が嵌合されている。ローラ45は、回転軸36の回転に伴い、ローラ45の外周面がシリンダ40の内周面に油膜を介して線接触しながら偏心回転するように配置されている。
【0015】
シリンダ40には、ブレード溝46が形成されている。ブレード溝46内には、ブレード47が設けられている。ブレード47は、図示しない付勢手段によりシリンダ室43に向けて付勢されるとともに、ブレード47の先端部をシリンダ室43内においてローラ45の外周壁に当接している。これによりブレード47はローラ45の回転動作に応じてシリンダ室43内に往復可能に構成されている。シリンダ室43はローラ45及びブレード47によって圧縮室43a側と吸込室43b側とに区画されている。ローラ45の回転動作及びブレード47の往復動作により、シリンダ室43内で圧縮動作が行われる。
【0016】
シリンダ40の内周面において、ローラ45の回転方向に沿うブレード溝46の手前側に位置する部分には、吐出溝48が形成されている。吐出溝48は、主軸受41に形成された吐出孔49に連通する。
主軸受41には、ガス冷媒が吐出孔49から吐出されるマフラ50が主軸受41を覆うように設けられている。マフラ50には、マフラ50内と密閉ケース31内を連通させる連通孔51が形成されている。圧縮機本体30の上部には軸方向に貫通して、冷媒配管2に連通する吐出管38が設けられている。連通孔51を通った密閉ケース31内のガス冷媒は、吐出管38から冷媒配管2へ吐出される。
【0017】
圧縮機本体30の横に配置されるアキュムレータ10は、熱間圧延鋼板(SPHE。以下、鋼板という)からなる円筒状の密閉ケース11を備える。一般的にアキュムレータ10がφ60程度のものであれば、その板厚は2mm程度である。本実施形態の圧縮機3においてもアキュムレータ10の密閉ケース11を構成する鋼板の板厚を2mmとする。鋼板の耐圧強度を表す引張強度は、0.4GPaである。なお、鋼板はSPHEに限らず、他の鉄素材を用いても良い。
【0018】
密閉ケース11は、2つのカップ状部材11a,11bのそれぞれの開口部分13a、13bを嵌め合わせて形成される。図1に示すように、それぞれのカップ状部材11a,11bの開口部分13a,13bとは反対側、つまり密閉ケース11の上端側と下端側は略球面形状である。それぞれのカップ状部材11a,11bの側面は、円筒面であり、アキュムレータ10の円筒部12を形成する円筒部12a,12bを備える。
【0019】
上側のカップ状部材11aには、アキュムレータ10の上端にアキュムレータ10の内外を連通させる入口管14が上下方向に貫通して設けられ、入口管14が冷媒配管2に接続される。下側のカップ状部材11bには、下端に貫通孔15が設けられる。
【0020】
図3は圧縮機3の正面図である。図3及び図5に示すように、上側のカップ状部材11aには、円筒部12aに外接する鉄製のバンド16が巻かれている。バンド16は圧縮機本体30の外周面に設けられたアキュムレータホルダ39に溶接固定されている。したがって、アキュムレータ10はこのバンド16を介して圧縮機本体30に固定されている。
【0021】
下側のカップ状部材11bには、円筒部12bに外接する筒状の補強部材17が設けられる。図4に示すように、補強部材17は、アキュムレータ10の円筒部12に全周にわたって外接している。補強部材17は、厚さが約2mmであり、ほぼアキュムレータ10の密閉ケース11を構成する鋼板と同じ厚さである。補強部材17は、高強度・高弾性率繊維であるアラミド繊維からなる。本実施形態で使用されるアラミド繊維の引張強度は2.9Gpaである。なお、補強部材17は、アキュムレータ10に必要な耐圧強度を確保できれば良く、その厚さは鋼板よりも薄くても良い。
【0022】
補強部材17の取付け方法について説明する。アラミド繊維は樹脂素材である。筒状に開いた補強部材17は、その内径がアキュムレータ10の外径よりも若干大きく形成されている。補強部材17をアキュムレータ10の上端側から被せ、アキュムレータ10の円筒部12まで下げる。この状態で、補強部材17とアキュムレータ10との間には若干の隙間が生じる。冷凍サイクル装置1の運転が始まると、冷媒配管2を循環した冷媒がアキュムレータ10に吸い込まれ、アキュムレータ10内の圧力が高くなり、アキュムレータ10が膨らむ。これによりアキュムレータ10に補強部材17が圧着される。アキュムレータ10の上端側と下端側は略球面形状であり、側面は円筒面である。アキュムレータ10内の圧力が高くなると、円筒面である側面は膨らみやすい。この位置に補強部材10を設けることでよりアキュムレータ10の破損を防ぐことができる。
【0023】
圧縮機本体30の側部には、径方向に貫通して、吸入管20を取付ける取付管29が固定されている。吸入管20は略L字状をなし、内部管21と、連結管23と、接続管22とを備えている。
【0024】
内部管21は、アキュムレータ10内に配置されている。内部管21は、鉛直に配置された状態で下端の連通部21aが貫通孔15に嵌合し、この嵌合状態で、内部管21が下側のカップ状部材11bに固定されている。
【0025】
接続管22は、連結部22aが圧縮機本体30の径方向の外側に配置された状態で、密閉ケース31に設けられた貫通孔25内に挿入されている。
【0026】
連結管23は、一端が内部管21の連結部21aに嵌合され、他端が接続管22の連結部22aに嵌合され、連結管23が内部管21と接続管22とを接続している。よって、これら内部管21、連結管23及び接続管22で構成される吸入管20が、アキュムレータ10と圧縮機構部33の吸入孔44とを繋ぐ。吸入孔44が形成されたシリンダ40が密閉ケース31に固定されていることから、密閉ケース31と吸入管20とアキュムレータ10とが一体化される。吸入管20の一端がアキュムレータ10の内部の上部位置に開口し、吸入管20の他端が圧縮機構部33の吸入孔44に連通する。
【0027】
このように構成された圧縮機3にCO2冷媒(R744)を封入する。電動機部32のステータ34に電力が供給されることで、回転軸36がロータ35とともに回転する。この回転軸36の回転に伴い、偏心部37及びローラ45がシリンダ室43内で偏心回転する。これにより、シリンダ室43内にガス冷媒が取り込まれるとともに、シリンダ室43内に取り込まれたガス冷媒が圧縮される。
【0028】
詳細には、まずシリンダ室43の、吸入孔44側に位置する吸込室43内にガス冷媒が吸入孔44から吸い込まれる。その際に、吐出溝48側に位置する圧縮室43で先に吸入孔44から取り込まれたガス冷媒が圧縮される。
【0029】
圧縮されたガス冷媒は、吐出溝48と吐出孔49を通ってマフラ50内へ吐出される。マフラ50内と密閉ケース31内とが連通孔51を介して連通されており、シリンダ室43から吐出孔49及び連通孔51を介して密閉ケース31内に向けてガス冷媒が吐出される。密閉ケース31内に吐出されたガス冷媒は、吐出管38から配管を通って上述したように凝縮器4に送り込まれる。
【0030】
冷媒配管2を通ってアキュムレータ10内に入る冷媒は、蒸発器6で気化されたガス冷媒と、気化されなかった液冷媒が含まれている。アキュムレータ10は、ガス冷媒のみが内部管21に入り、接続管22、連結管23を通って、圧縮機本体30に送られる。吸入管20から圧縮機構部33の吸入孔44を通って吸込室43bに入り、上記の動作が繰り返し行われる。
【0031】
CO2冷媒は、圧力が高いため、HFC冷媒を使用した冷凍サイクル装置と比べて、各部品の耐圧強度を高くする必要がある。本実施形態のアキュムレータ10は、アキュムレータ10の変形しやすい円筒部12にアラミド繊維の補強部材17を設けた。アキュムレータ10の密閉ケース11を構成する鋼板の引張強度が0.4GPaであるのに対し、アラミド繊維の引張強度は2.9GPaであり、アラミド繊維は強度に優れた素材である。
【0032】
振動や騒音を低減させるためにゴム部材(CRゴム)がアキュムレータ10の円筒部12に全周にわたって取り付けられることがある。通常このゴム部材の引張強度は0.01GPa程度であり、アキュムレータ10を構成する鋼板よりも非常に小さい値で、ゴム部材は補強部材としての役割を果たしていない。
【0033】
本実施形態では、補強部材17の素材の引張強度が鋼板の引張強度と同等以上とすることにより、補強部材17の厚さが鋼板の厚さより薄いものであっても、アキュムレータ10に必要な耐圧強度を確保できるものとした。例えば、鋼板の板厚が4mmのアキュムレータ10と同じ耐圧強度を得るためには、鋼板の板厚を2mmとしても、補強部材17を2mm以下にすることができる。特にアラミド繊維は強度に優れた素材であるため、より補強部材を薄くすることができる。耐圧強度を確保するために鋼板の板厚を厚くするのと比べ、薄い補強部材17を使用することで、低コストで高い耐圧強度を持つアキュムレータ10とすることができる。
【0034】
逆に、補強部材17の素材の引張強度が鋼板の引張強度より小さく、鋼板を2mmとしたとき、鋼板の厚さが4mmのアキュムレータと同じ耐圧強度を得るためには、補強部材17の厚さを厚くする必要がある。アキュムレータ10に補強部材17を取付けにくくなり、厚さによっては圧縮機本体30とアキュムレータ10との隙間を広げる必要がある。これにより、アキュムレータホルダ39やアキュムレータ10と圧縮機構部33を繋ぐ吸入管20を径方向に長く形成しなければならない。
【0035】
以上のことから、補強部材17の素材の引張強度が鋼板の引張強度と同等以上にして、薄い補強部材17を使用することにより、圧縮機本体30とアキュムレータ10との隙間を広げることなくアキュムレータ10を圧縮機本体30に固定することができる。
【0036】
補強部材17は、筒状で途中に切れ目がない。つまり、2つ以上の部品を組み合わせて筒状に固定したものではなく、筒状に一体に形成されたものであるので、局所的に強度が弱い部分がなく、強固にアキュムレータ10を補強している。また、冷凍サイクル装置1を運転させ、アキュムレータ10内が高圧となったとき、アキュムレータ10の外周面から補強部材17の内周面にかかる負荷が均等に分散されるため、長期間高い耐圧強度を保つことができる。
【0037】
アキュムレータ10の密閉ケース11を2つのカップ状部材11a、11bを組み合わせて形成し、圧縮機本体30に固定するための鉄製のバンド16を、上側のカップ状部材11aの円筒部12bに巻く構造とした。バンド16は圧縮機本体30のアキュムレータホルダ39に溶接固定される。このバンド16によりアキュムレータ10の上側のカップ状部材11aの耐圧強度を確保することができる。
【0038】
一方で、下側のカップ状部材11bは、上側のカップ状部材11aのように、鉄製のバンドを巻いて圧縮機本体30へ固定しないため、アキュムレータ10内の圧力により、強度の弱い円筒部12bが変形しやすい。したがって、円筒部12bにアラミド繊維からなる補強部材17を設けることで、下側のカップ状部材11bの耐圧強度を高めることができる。上側のカップ状部材11aをバンド16で固定する構成とするため、上側及び下側の両方のカップ状部材11a,11bに補強部材17を設ける必要がなく、コストを抑えることができる。
【0039】
なお、下側のカップ状部材11bに鉄製バンド16を巻いて、圧縮機本体30に固定させ、上側のカップ状部材11aに補強部材17を設けた構成としても、同様の効果を得ることができる。
さらに上側のカップ状部材11aと下側のカップ状部材11bの両方に補強部材17を設けても良く、アキュムレータ10の耐圧強度を高めることができる。
【0040】
アキュムレータ10は2つのカップ状部材11a、11bから構成されるものに限らず、3つ以上の部品から構成されるものであっても良い。この場合であっても、強度の弱い部分に補強部材17を設けることにより、アキュムレータ10の耐圧強度を確保できる。
【0041】
補強部材17のアラミド繊維は、軽量な樹脂素材で、アキュムレータ10に取り付けていない際には、小さく折りたたむことができるため、搬送時のコストを抑えることができる。アキュムレータ10へ補強部材17を取付けるときには、補強部材17を筒状に開いて伸ばしながらアキュムレータ10の上端側から下方へ通していくが、樹脂素材であるアラミド繊維は弾性を備えるため形状を維持することができる。また、樹脂素材は軽量であるため、圧縮機3の重量化を抑えることができる。補強部材17として、アラミド繊維のほかにも超高分子量ポリエチレン繊維やPBO繊維などの高強度・高弾性率繊維の樹脂素材を用いても良い。
【0042】
本実施形態の圧縮機3は、1つの圧縮機構部33を備えるものとしたが、複数の圧縮機構部33を備えるものであってもよい。このとき、アキュムレータ10と各圧縮機構部33の吸入孔44を繋ぐ吸入管20を複数設けても良い。
【0043】
以上説明した実施形態の密閉型圧縮機3によれば、アキュムレータ10の圧力負荷がかかりやすい円筒部12に、引張強度がアキュムレータ10の密閉ケース31を構成する鋼板と同等以上の素材でできた筒状の補強部材17を設けるので、低コストで、耐圧強度を確保することが可能となる。なお、本実施形態では、CO2冷媒を用いた密閉型圧縮機3としたが、これに限らずその他の冷媒を使用した密閉型圧縮機3に適用することができる。補強部材17を設けることにより、鋼板を薄くできるため、低コスト化と軽量化が見込まれる。
【0044】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…冷凍サイクル装置、2…冷媒配管、3…密閉型圧縮機(圧縮機)、4…凝縮器、5…膨張装置、6…蒸発器、10…アキュムレータ、11…密閉ケース、11a…上側のカップ状部材、11b…下側のカップ状部材、12…円筒部、16…バンド、17…補強部材、20…吸入管、21…内部管、22…接続管、23…連結管、30…圧縮機本体、32…電動機部、33…圧縮機構部、39…アキュムレータホルダ
図1
図2
図3
図4
図5