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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】情報処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20230417BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G01C21/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019167061
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043852
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草柳 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓良
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124791(JP,A)
【文献】特開平07-061257(JP,A)
【文献】特開2005-055367(JP,A)
【文献】特開平06-044491(JP,A)
【文献】特開2017-167046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0239509(US,A1)
【文献】特開2017-204252(JP,A)
【文献】特開2013-186728(JP,A)
【文献】特開2019-114118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザとのコミュニケーションを、エージェント機能を用いて行う情報処理装置において、
前記エージェント機能によりコミュニケーション情報を出力する出力部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する出力頻度制御部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知する検知部と、を備え、
前記出力頻度制御部は、前記検知部により検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理装置において、
前記出力部は、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報を表示部から視覚的に出力し、
前記検知部は、前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられた状態を検知するとともに、前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間及び/又は視線が向けられた回数を検知し、
前記出力頻度制御部は、
前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間が短い場合に、前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間が長い場合に比べて、前記出力頻度を小さく制御し、
前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられた回数が多い場合に、前記表示部に対して前記ユーザの視線が向けられた回数が少ない場合に比べて、前記出力頻度を小さく制御する情報処理装置。
【請求項2】
ユーザとのコミュニケーションを、エージェント機能を用いて行う情報処理装置において、
前記エージェント機能によりコミュニケーション情報を出力する出力部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する出力頻度制御部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知する検知部と、を備え、
前記出力頻度制御部は、前記検知部により検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理装置において、
前記検知部は、前記ユーザによる音声コマンドの入力が所定時間内に行われたか否かを検知する情報処理装置。
【請求項3】
前記出力頻度制御部は、
前記ユーザによる音声コマンドの入力が所定時間内に行われた場合に、前記ユーザによる音声コマンドの入力が所定時間を超えて行われた場合に比べて、前記出力頻度を小さく制御する請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
ユーザとのコミュニケーションを、エージェント機能を用いて行う情報処理装置において、
前記エージェント機能によりコミュニケーション情報を出力する出力部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する出力頻度制御部と、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知する検知部と、
前記ユーザが当該情報処理装置を利用した実績を検知する利用実績検知部と、を備え、
前記出力頻度制御部は、前記検知部により検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理装置において、
前記出力頻度制御部は、前記ユーザの利用実績値に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理装置。
【請求項5】
前記出力頻度制御部は、前記ユーザの利用実績値が小さい場合に、利用実績値が大きい場合に比べて、前記出力頻度を大きく制御する請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報は、音声、画像又は発光パターンのいずれかを媒体とする情報であり、
前記出力部は、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が音声を媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、音声出力部から聴覚的に出力し、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が画像を媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、表示部から視覚的に出力し、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が発光パターンを媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、発光部から視覚的に出力する請求項1~のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、エージェント機能を用いてユーザに対するコミュニケーションを行う情報処理方法であって
前記コンピュータは、
前記エージェント機能により前記コミュニケーション情報を出力し、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知し、
前記検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理方法において、
前記コンピュータは、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報を視覚的に出力し、
前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられた状態を検知するとともに、前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間及び/又は視線が向けられた回数を検知し、
前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間が短い場合に、前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられるまでの時間が長い場合に比べて、前記出力頻度を小さく制御し、
前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられた回数が多い場合に、前記視覚的な出力に対して前記ユーザの視線が向けられた回数が少ない場合に比べて、前記出力頻度を小さく制御する情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータが、エージェント機能を用いてユーザに対するコミュニケーションを行う情報処理方法であって、
前記コンピュータは、
前記エージェント機能により前記コミュニケーション情報を出力し、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知し、
前記検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理方法において、
前記ユーザによる音声コマンドの入力が所定時間内に行われたか否かを検知する情報処理方法
【請求項9】
コンピュータが、エージェント機能を用いてユーザに対するコミュニケーションを行う情報処理方法であって、
前記コンピュータは、
前記エージェント機能により前記コミュニケーション情報を出力し、
前記エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態を検知し、
前記ユーザが当該情報処理方法を利用した実績を検知し、
前記検知された前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理方法において、
前記ユーザの利用実績値に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する情報処理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーション装置において、自車両が右左折などの案内点に近づくと、音声案内を出力して案内点を報知することが行われている。特許文献1には、たとえば、案内点の700m手前では「ポン」、400m手前では「ポンポン」、案内点では「ポーン」と出力するなど、案内点までの距離に応じて効果音の回数を変え、運転手に分かり易くする報知制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-315630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いわゆるエージェント機能として、ユーザに対して、経路や周辺スポット等の各種情報の案内や通知を行う場合、上記従来技術では、ユーザに案内点を画一的な方法で報知するのみであり、ユーザによっては、しつこい、くどい、煩わしいと感じることもある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ユーザに対して適切な頻度でコミュニケーションを行う情報処理装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザとのコミュニケーションを、エージェント機能を用いて行う情報処理装置において、エージェント機能によるコミュニケーション情報が出力された後の、前記ユーザの所定の状態に応じて、前記エージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エージェント機能によるコミュニケーション情報に対するユーザの状態をその後の出力頻度にフィードバックするので、ユーザに対して適切な頻度でコミュニケーションを行うことができる。さらには、ユーザがエージェントに好印象や親近感を抱き易くなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る車両用情報処理装置の実施形態を示すブロック図である。
図2A図1のエージェントの動作を示す正面図である。
図2B図1のエージェントの設置場所の一例を示す車室内の図である。
図3A図1の車両用情報処理装置にて実行される情報処理手順を示すフローチャート(その1)である。
図3B図1の車両用情報処理装置にて実行される情報処理手順を示すフローチャート(その2)である。
図3C図1の車両用情報処理装置にて実行される情報処理手順を示すフローチャート(その3)である。
図4A図1の車両用情報処理装置にて実行される他の情報処理手順を示すフローチャート(その1)である。
図4B図1の車両用情報処理装置にて実行される他の情報処理手順を示すフローチャート(その2)である。
図4C図1の車両用情報処理装置にて実行される他の情報処理手順を示すフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る車両用情報処理装置1の実施形態を示すブロック図、図2Aは、エージェント6の動作を示す正面図、図2Bは、エージェント6の設置場所の一例を示す車室内の図である。本実施形態の車両用情報処理装置1は、運転者及び同乗者(以下、これら運転者及び同乗者を車両の乗員又は単に乗員とも称する。)に対し、擬人化されたエージェント(以下、単にエージェント6ともいう。)によるエージェント機能、具体的にはエージェント6の動作・姿勢,エージェント6から出力される音声,エージェント6に表示される画像,エージェント6から出力される発光パターンといった媒体を介して、情報を提供し、又は乗員との間で会話する装置である。なお、ここではエージェント6が車両に備えられる例を示すが、これに限られない。エージェント6は、エージェント機能を搭載した電子機器であればよく、例えば、持ち運び可能なスピーカ型電子機器やディスプレイ付電子機器であってもよい。また、以下に説明するエージェント6の音声出力及び映像出力に関する機能をスマートフォン等の携帯電話に搭載してもよい。また、擬人化されたエージェントは一例であり、人間を模さずとも、所定のキャラクター、アバターやアイコンを表示させたエージェントであってもよい。エージェントは、物理的な個体として設けられてもよく、あるいは、エージェントとしての人間やキャラクター等の形を画像としてディスプレイ上に表示させてもよい。
【0010】
エージェント6は、図1図2A及び図2Bに示すように、人間の顔を模した頭部61が、基台62に対して、図示しないアクチュエータにより出没可能に設けられている。エージェント6は、出力部11からの制御指令を受けたエージェント機能により、コミュニケーション情報を出力する場合には、図2Aの左図に示すように、頭部61が基台62から出現し、コミュニケーション情報の出力を終了すると、図2Aの右図に示すように、頭部61が基台62に没入する。頭部61を上昇させて基台62から出現させることを「登場」と称し、頭部61を下降させて基第62に没入させることを「退場」とも称する。
【0011】
本実施形態では、図2Bに示すように、三次元物体であるエージェント6を、車室内のダッシュボードの上面に設置され、回転軸Gの周りに頭部61が回転可能とされている。これにより、エージェント6は、頭部61の顔を乗員に向けた状態でコミュニケーション情報を出力したり、頭部61の顔を話題の対象となるオブジェクトに向けた状態でコミュニケーション情報を出力したりすることで、コミュニケーション情報による意思疎通を円滑にする。
【0012】
エージェント6は、音声や効果音を出力するためのスピーカその他の音声出力部や、文字を含む画像を表示するディスプレイその他の表示部を含み、頭部61の動作とともに、音声、効果音、文字その他の画像を乗員に提供することでコミュニケーション情報を出力する。なお、顔の目などに発光体を設け、発光パターンによりコミュニケーション情報を出力するようにしてもよい。
【0013】
なお、本実施形態では、エージェント6をロボットのような三次元物体に構成したが、本発明のエージェントはこれにのみ限定されず、ディスプレイに表示する二次元画像としてもよい。また、基第62に対して頭部61を出没させることでエージェント6の登場及び退場を表現したが、エージェントが登場する場合は目を開き、エージェントが退場する場合は目を閉じるようにしてもよい。
【0014】
図1に戻り、本実施形態の車両用情報処理装置1は、各種処理を実行するためのプログラムが格納されたROMと、このROMに格納されたプログラムを実行することで、車両用情報処理装置1として機能する動作回路としてのCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとを備えたコンピュータで構成されている。そして、車両用情報処理装置1は、情報処理プログラムの実行により発揮される機能構成から見ると、図1に示すように、出力部11と、出力頻度制御部12と、検知部13と、利用実績検知部14と、識別データ入力部15と、車両情報取得部16と、を備える。
【0015】
出力部11は、エージェント6のスピーカその他の音声出力部、ディスプレイ、発光体その他の表示部に制御信号を出力し、エージェント6のエージェント機能により、コミュニケーション情報を出力する。出力部11は、出力すべきコミュニケーション情報を車両情報取得部16から入力する。たとえば、車室内の温度環境に関し、現在のエアコンの設定温度が25℃で、その乗員が定常的に設定するエアコンの設定温度が20℃である場合に、「エアコンの設定温度を下げますか?」といった提案を乗員に発話する。この場合、現在のエアコンの設定温度は、車両センサ類2に含まれるエアコンの設定温度センサにより検出し、その乗員が定常的に設定するエアコンの設定温度は、その乗員の利用実績が蓄積された外部サーバ4から抽出する。
【0016】
出力部11により制御されるエージェント6は、音声、画像又は発光パターンのいずれかを媒体とするコミュニケーション情報を出力する。コミュニケーション情報は、例えば、(1)エージェントの存在を示す情報、(2)エージェント機能が所定状態にあることを知らせる情報、または、(3)ユーザが所望する情報を通知するための情報を含む。例えば、(1)エージェントの存在を示す情報は、エージェント自体が表現された画像や所定の動きを伴うエージェントが表現された画像などを含む。例えば、(2)エージェント機能が所定状態にあることを知らせる情報は、エージェントがユーザからの命令または質問を受付可能な状態にあることを示す画像、音声または発光パターンである。例えば、(3)ユーザが所望する情報を通知するための情報は、ユーザが所望すると推測されるPOIの情報や、ユーザが所望すると推測される車載機器に対する制御の実行可否を問合わせる情報などを含む。具体的には、コミュニケーション情報が音声を媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、エージェント6に設けられたスピーカその他の音声出力部から聴覚的に出力し、コミュニケーション情報が画像を媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、エージェント6に設けられたディスプレイその他の表示部から視覚的に出力し、コミュニケーション情報が発光パターンを媒体とする場合には、当該コミュニケーション情報を、エージェント6に設けられた目その他の発光部から視覚的に出力する。
【0017】
出力頻度制御部12は、エージェント6のエージェント機能によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する。出力頻度とは、所定時間あたりにコミュニケーション情報を出力する回数であってもよく、コミュニケーション単位あたりにコミュニケーション情報を出力する回数であってもよい。たとえば、コミュニケーション情報が、ユーザが所望すると推測される車載機器に対する制御の実行可否を問合わせる情報の場合に、出力頻度が1のときは、「エアコンの設定温度を下げますか?」というコミュニケーション情報を1回だけ出力し、出力頻度が3のときは、この「エアコンの設定温度を下げますか?」というコミュニケーション情報を、間隔をおいて3回繰り返して出力することを意味する。本実施形態のエージェント6は、コミュニケーション情報を出力する際に基台62から頭部61を出現させ、コミュニケーション情報の出力を終了すると基第62に頭部61を没入させるので、出力頻度制御部12は、基台62に対する頭部61の出没回数を制御する。
【0018】
コミュニケーション情報の出力頻度は、乗員に対するコミュニケーション情報の伝達を確実に行うという観点からみると繰り返し行うことが望ましいが、乗員の個性によっては、繰り返し行われること、すなわち出力頻度が大きいことが却って煩わしく感じることもある。そのため、本実施形態の出力頻度制御部12においては、後述する検知部13により検知された乗員の所定の状態に応じて、エージェント6によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御する。この制御の詳細は後述する。
【0019】
検知部13は、エージェント6のエージェント機能により、1つのコミュニケーション情報が出力された後の、乗員の所定の状態を検知し、これを出力頻度制御部12に出力する。たとえば、コミュニケーション情報がディスプレイなどの表示部に表示される視覚的な画像による場合、検知部13は、コミュニケーション情報が表示された表示部に対して、乗員の視線が向けられた状態を検知する。具体的には、検知部13は、コミュニケーション情報が表示された表示部に対して、乗員の視線が向けられるまでの時間を検知する。またはこれに代えて若しくはこれに加えて、検知部13は、コミュニケーション情報が表示された表示部に対して、視線が向けられた回数を検知する。
【0020】
たとえば、エージェント6の頭部61が基台62から出現し、図示しないディスプレイに「エアコンの設定温度を下げますか?」といったコミュニケーション情報を表示した場合に、車両センサ類2に含まれる車内カメラにより乗員の視線を監視し、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向かうまでの時間を計測する。または、同様に車両センサ類2に含まれる車内カメラにより乗員の視線を監視し、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向けられた回数、すなわちチラッと見た回数を計測する。
【0021】
エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向かうまでの時間が短いということは、その乗員はエージェント6を強く意識していると判断でき、逆にエージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向かうまでの時間が長いということは、その乗員はエージェント6をあまり意識していないと判断できる。同様に、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向けられた回数が多いということは、その乗員はエージェント6を強く意識していると判断でき、逆にエージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向けられた回数が少ないということは、その乗員はエージェント6をあまり意識していないと判断できる。
【0022】
乗員がエージェント6をあまり意識していないと判断できる場合は、その乗員にエージェント6の存在を気付かせる必要がある。このような状況では、出力頻度を大きくしても、乗員にとって、しつこい、煩わしいといった感覚より、むしろ気付かせてくれたことに感謝する方が、可能性が高いと推察される。逆に、乗員がエージェント6を強く意識していると判断できる場合は、その乗員はコミュニケーション情報を十分に知得しているものと推察されるので、出力頻度が大きいと、その乗員にとっては、しつこい、くどい、煩わしいといった感覚を覚える可能性が高い。
【0023】
そのため、出力頻度制御部12は、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向かうまでの時間が短かったり、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向けられた回数が多かったりして、乗員がエージェント6を強く意識していると判断できる場合は、それまでの出力頻度を相対的に小さく制御する。逆に、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向かうまでの時間が長かったり、エージェント6の頭部61が基台62から出現してから乗員の視線がディスプレイに向けられた回数が少なかったりして、乗員がエージェント6をあまり意識していないと判断できる場合は、それまでの出力頻度を相対的に大きく制御する。
【0024】
検知部13は、エージェント6の頭部61が基台62から出現してコミュニケーション情報がスピーカなどの音声出力部から発せられる聴覚的な音声による場合、乗員による音声コマンドの入力が、コミュニケーション情報が出力されてから所定時間内に行われたか否かを検知する。たとえば、「エアコンの設定温度を下げますか?」というコミュニケーション情報を出力した場合に、この出力から所定時間(たとえば10秒)以内に、乗員が「はい、下げてください」といった音声コマンドが入力された場合には、その乗員はエージェント6を強く意識していると判断できる。これに対して、所定時間(10秒)を過ぎてから、乗員が「はい、下げてください」といった音声コマンドが入力された場合には、その乗員は、エアコンの設定温度を下げることには賛成するものの、エージェント6をあまり意識していなかったと判断できる。
【0025】
そのため、出力頻度制御部12は、エージェント6の頭部61が基台62から出現して音声によるコミュニケーション情報が出力されてから、所定時間以内に、乗員が音声コマンドを入力した場合のように、乗員がエージェント6を強く意識していると判断できるときは、それまでの出力頻度を相対的に小さく制御する。逆に、エージェント6の頭部61が基台62から出現して音声によるコミュニケーション情報が出力されてから、所定時間を経過した後に、乗員が音声コマンドを入力した場合のように、乗員がエージェント6をあまり意識していないと判断できるときは、それまでの出力頻度を相対的に大きく制御する。
【0026】
利用実績検知部14は、乗員が当該車両用情報処理装置1を利用した実績を検知するものである。利用実績検知部14で検知されるものとしては、特に限定はされないが、識別データ入力部15に入力された識別データに基づいて乗員を特定し、その乗員が当該車両用情報処理装置1を利用した時間及び/又は頻度に応じた利用実績値を演算する。利用実績検知部14で演算された利用実績値は、出力頻度制御部12へ出力され、利用実績値の大小に応じて、コミュニケーション情報の出力頻度が制御される。具体的には、乗員の利用実績値が小さい場合には、利用実績値が大きい場合に比べて、その乗員の特性が充分に把握できていないことから、コミュニケーション情報の出力頻度を大きく制御する。この詳細は後述する。なお、必要に応じて利用実績検知部14を省略してもよい。
【0027】
識別データ入力部15は、本例の車両用情報処理装置1が適用される車両の乗員を識別するための識別データを入力するインターフェースである。そして、その乗員が、自分の識別データを記憶した端末装置(スマートフォンなどの携帯型コンピュータ)を携帯してその車両に乗ると、その乗員の識別データが、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信網を介して自動的又は半自動的に読み取られたり、あるいは識別データ入力部15として設定された入力ボタン(不図示)を用いて乗員がマニュアル入力したりすることで、その乗員の識別データが入力される。また、その車両の無線キーにその乗員の識別データを記憶させ、その無線キーを用いて車両を解錠または始動した際に、その乗員の識別データを識別データ入力部15に、短距離無線通信網を介して自動的又は半自動的に読み取ってもよい。
【0028】
車両センサ類2は、上述したエアコンなどの車載電装品の各種センサや車両の室内を撮像する室内カメラのほか、車両の周辺を撮像する車載撮像装置、車両の周辺の障害物を検出するレーダ装置、GPS受信機を含む自車位置検出装置、車両の操舵角を検出する舵角センサ、車両の加速・減速を検出する加減速センサなどが含まれる。車両センサ類2で検出した検出信号は、車両情報取得部16へ出力される。
【0029】
地図データベース3は、たとえば各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、車両情報取得部16からアクセス可能とされたメモリである。地図データベース3に格納された三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報であり、地図情報とともに、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア/パーキングエリアなどの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。
【0030】
車両情報取得部16は、エージェント6の機能を用いて乗員に出力すべきコミュニケーション情報を取得するものである。車両情報取得部16は、車両センサ類2及び地図データベース3のほか、外部のWEBサイトその他の外部サーバ4からの各種の情報を、インターネットなどの電気通信回線網5を介して収集し、コミュニケーション情報に供する。
【0031】
次に、本実施形態の車両用情報処理装置1の情報処理手順を説明する。図3A図3Cは、図1の車両用情報処理装置1にて実行される情報処理手順を示すフローチャートである。まず、乗員が車両に乗ると、図3AのステップS1において、識別データ入力部15にその乗員の識別データが入力される。識別データ入力部15に入力されたその乗員識別データは、出力頻度制御部12と出力部11に出力される。この識別データとともに、利用実績検知部14から、その乗員の利用実績値を取得し、これを出力頻度制御部12へ出力する。
【0032】
ステップS2において、車両センサ類2に含まれる室内カメラを用いて乗員の視線を監視する。ステップS3において、出力部11の制御信号により、エージェント6の頭部61が基台62から出現し、エージェント6が登場する。ステップS4において、出力部11は、車両情報取得部16から提供されるコミュニケーション情報を、エージェント6のディスプレイに表示する。
【0033】
図3BのステップS5において、出力頻度制御部12は、ステップS2にて監視している乗員の視線の動向を読み込み、ステップS3にてエージェント6が登場してステップS4にてコミュニケーション情報がディスプレイに表示されてから、乗員の視線が当該ディスプレイに向かうまでの時間を計測する。そして、出力頻度制御部12は、この計測した時間が、予め設定された所定時間内(たとえば3秒以内)である場合は、その乗員はエージェント6を強く意識していると判断し、ステップS6へ進む。逆に、ステップS5において、コミュニケーション情報がディスプレイに表示されてから、乗員の視線が当該ディスプレイに向かうまでの時間が、予め設定された所定時間(たとえば3秒)を超えた場合は、出力頻度制御部12は、その乗員はエージェント6をあまり意識していないと判断し、ステップS7へ進む。
【0034】
ステップS6において、その乗員はエージェント6を強く意識しているので、出力頻度制御部12は、エージェントを認識している状態のカウントをアップする。具体的には、出力頻度制御部12は、出力頻度の値をそれまでの値に対して相対的に小さくする。またステップS7において、その乗員はエージェント6をあまり意識していないので、出力頻度制御部12は、エージェントを認識していない状態のカウントをアップする。具体的には、出力頻度制御部12は、出力頻度の値をそれまでの値に対して相対的に大きくする。
【0035】
ステップS8において、出力頻度制御部12は、エージェントを認識している状態の確率を演算する。エージェントを認識している状態の確率は、たとえば、エージェントを認識している状態のカウントAを、エージェントを認識している状態のカウントAとエージェントを認識していない状態のカウントBとの合計A+Bで除した率(A/(A+B))と定義する。
【0036】
たとえば、エージェントを認識している状態のカウントAの初期値を50、エージェントを認識していない状態のカウントBの初期値を50とすると、初期値におけるエージェントを認識している状態の確率Xは、X=50/(50+50)=0.5となる。そして、次のコミュニケーション情報の出力に対する乗員の反応が、エージェントを認識している状態であった場合に、初期値50を1ポイントカウントアップするものとすると、そのときのエージェントを認識している状態の確率X1は、X1=51/(51+50)=0.505となる。
【0037】
ステップS9において、出力頻度制御部12は、演算したエージェントを認識している状態の確率が、予め設定された所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合はステップS10へ進み、所定値未満である場合はステップS11へ進む。そして、ステップS10において、出力頻度制御部12は、コミュニケーション情報の出力頻度をそれまでの値に比べて相対的に小さくする。また、ステップS11において、出力頻度制御部12は、コミュニケーション情報の出力頻度をそれまでの値に比べて相対的に大きくする。
【0038】
図3CのステップS12において、出力頻度制御部12は、利用実績検知部14により検知されたその乗員の利用実績値が、予め設定された所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合はステップS13へ進み、所定値未満である場合はステップS14へ進む。そして、ステップS13において、出力頻度制御部12は、コミュニケーション情報の出力頻度をそれまでの値に比べて相対的に小さくする。また、ステップS14において、出力頻度制御部12は、コミュニケーション情報の出力頻度をそれまでの値に比べて相対的に大きくする。
【0039】
ステップS15において、出力部11は、エージェント6の頭部61を基台62に没入して退場させる。ステップS16において、エージェント6を用いたコミュニケーションの設定がOFFになったか否かを判定し、ONが継続している場合には図3AのステップS2へ戻り、OFFになった場合には、このルーチンを終了する。
【0040】
次に、本実施形態の車両用情報処理装置1の情報処理手順の他例を説明する。図4A図4Cは、図1の車両用情報処理装置1にて実行される情報処理手順を示すフローチャートである。本例は、エアコンの設定温度を変更する提案に関するコミュニケーション情報を出力する具体例を説明する。まず、乗員が車両に乗ると、図4AのステップS21において、識別データ入力部15にその乗員の識別データが入力される。識別データ入力部15に入力されたその乗員識別データは、出力頻度制御部12と出力部11に出力される。この識別データとともに、車両情報取得部16は、その乗員が以前に車両に乗った際のエアコンの設定温度の履歴情報を、外部サーバ4から取得し、これを出力頻度制御部12へ出力する。
【0041】
ステップS22において、車両センサ類2に含まれるエアコンの設定温度センサから、現在のエアコンの設定温度を検出する。ステップS23において、出力頻度制御部12は、現在の設定温度と、その乗員が定常的に設定する固有の設定温度とを比較し、予め設定された所定値以上の差が存在する場合はステップS24へ進み、所定値以上の差が存在しない場合は、このルーチンを終了する。ステップS24において、出力頻度制御部12は、乗員が、所定時間以内に、エアコンの設定温度を変更したか否かを判定し、変更した場合にはステップS25へ進み、変更しない場合は、このルーチンを終了する。
【0042】
ステップS25において、車両センサ類2に含まれるマイクロフォンと音声認識装置を用いて乗員の発話を監視する。図4BのステップS26において、出力部11の制御信号により、エージェント6の頭部61が基台62から出現し、エージェント6が登場する。ステップS27において、出力部11は、車両情報取得部16から提供される、エアコンの設定温度に関するコミュニケーション情報、たとえば「エアコンの設定温度を下げますか?」といった音声を、エージェント6のスピーカから出力する。
【0043】
ステップS28において、出力頻度制御部12は、ステップS25にて監視している乗員の発話を解析し、「はい、下げてください」といった乗員の承諾コマンドが入力されるか否かを判断する。これとともに、乗員の承諾コマンドが入力された場合には、「エアコンの設定温度を下げますか?」というコミュニケーション情報がスピーカから出力されてから、承諾コマンドが入力されるまでの時間を計測する。そして、ステップS28において、出力頻度制御部12は、予め設定された所定時間以内に乗員の承諾コマンドが入力されたか否かを判定し、入力された場合にはステップS29へ進み、入力されない場合はステップS32へ進む。
【0044】
ステップS29において、出力頻度制御部12は、エアコンの設定温度を下げる設定を行い、ステップS30において、コミュニケーション情報の出力頻度を相対的に小さくする。ステップS31において、出力部11は、エージェント6を退場させる。ステップS32において、出力頻度制御部12は、予め設定された所定時間を超えた後に、乗員の承諾コマンドが入力されたか否かを判定し、入力された場合にはステップS33へ進み、入力されない場合は、このルーチンを終了する。ステップS33において、出力頻度制御部12は、コミュニケーション情報の出力頻度を相対的に大きくする。
【0045】
ステップS34において、エージェント6を用いたコミュニケーションの設定がOFFになったか否かを判定し、ONが継続している場合には図4AのステップS22へ戻り、OFFになった場合には、このルーチンを終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、検知部13により検知された乗員の所定の状態に応じて、エージェント6によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御するので、しつこさと丁寧さとがバランスされた出力頻度となる結果、乗員がエージェントに好印象や親近感を抱き易くなる。
【0047】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、エージェント6によるコミュニケーション情報を表示部から視覚的に出力する場合に、検知部13は、表示部に対して乗員の視線が向けられた状態を検知するので、乗員の所定の状態を検出し易くなる。
【0048】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、検知部13は、表示部に対して乗員の視線が向けられるまでの時間及び/又は視線が向けられた回数を検知するので、乗員の所定の状態を検出し易くなることに加え、定量的評価が可能となる。
【0049】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、表示部に対して乗員の視線が向けられるまでの時間が短い場合に、表示部に対して乗員の視線が向けられるまでの時間が長い場合に比べて、出力頻度を小さく制御し、表示部に対して乗員の視線が向けられた回数が多い場合に、表示部に対して乗員の視線が向けられた回数が少ない場合に比べて、出力頻度を小さく制御する。これにより、乗員のエージェントの認識程度に応じた出力頻度に設定することができる。
【0050】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、検知部13は、乗員による音声コマンドの入力が所定時間内に行われたか否かを検知するので、乗員の所定の状態を検出し易くなる。
【0051】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、乗員による音声コマンドの入力が所定時間内に行われた場合に、乗員による音声コマンドの入力が所定時間を超えて行われた場合に比べて、出力頻度を小さく制御する。これにより、乗員のエージェントの認識程度に応じた出力頻度に設定することができる。
【0052】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、乗員が当該車両用情報処理装置を利用した実績を検知する利用実績検知部14をさらに備え、乗員の利用実績値に応じて、エージェント6によるコミュニケーション情報の出力頻度を制御するので、より一層、しつこさと丁寧さとがバランスされた出力頻度となる。
【0053】
また、本実施形態の車両用情報処理装置1及び方法によれば、乗員の利用実績値が小さい場合に、利用実績値が大きい場合に比べて、出力頻度を大きく制御するので、乗員のエージェントの認識程度に応じた出力頻度に設定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両用情報処理装置
11…出力部
12…出力頻度制御部
13…検知部
14…利用実績検知部
15…識別データ入力部
16…車両情報取得部
2…車両センサ類
3…地図データベース
4…外部サーバ
5…電気通信回線網
6…エージェント
61…頭部
62…基台
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C