(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20230418BHJP
【FI】
F01N13/08 D
(21)【出願番号】P 2019057965
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 智博
(72)【発明者】
【氏名】清水 章弘
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104655(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078011(WO,A1)
【文献】特開2016-200038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(4)と、前記エンジン(4)を覆うボンネット(15)を備え、前記ボンネット(15)の側方にテールパイプ(18)の垂直パイプ部(20)を上下方向に立設し前記ボンネット(15)上方に排気する作業車両において、前記テールパイプ(18)の前記垂直パイプ部(20)を支持するテールパイプ支持部材(S2)を前記エンジン(4)の後部
に取り付けた支持部材(28)に固定し、前記テールパイプ支持部材(S2)は前記支持部材(28)との取付位置よりも上方で前記垂直パイプ部(20)を連結支持し
、
前記テールパイプ(18)は、マフラ本体(16)に接続する基端側パイプ部(19)、前記基端側パイプ部(19)に連結される前記垂直パイプ部(20)とからなり、
車体フレーム(23)に固定支持される車体側支持アーム(24)と、前記エンジン(4)の側面にプレートを介して連結支持された支持ロッド(26)と、前記車体側支持アーム(24)と前記支持ロッド(26)とを連結する中継支持プレート(25)で構成されるテールパイプ支持部材(S1)によって前記基端側パイプ部(19)を支持する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記基端側パイプ部(19)は下方延出部(19a)と起立部(19b)とで略U型形状に成形される請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に関し、特にマフラのテールパイプ支持構成に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンマフラに接続したテールパイプを、縦に長く構成してボンネットの側方に配置し、排気をボンネットの上方で大気中に放出する作業車両において、車両前側に取り付ける作業機を支持するためにボンネットの側方に架設されたブレースにテールパイプを固定して振動を抑制した作業車両が公知である。(先行文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボンネット側方にブレースのような支持固定部材を有しない作業車両においては、ボンネットの上方で排気するための長さを備えたテールパイプを取り付ける場合に、振動の抑制に課題がある。
【0005】
本発明は、ボンネットの側方に縦長のテールパイプを安定して取り付け得る作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
第1の本発明は、エンジン(4)と、前記エンジン(4)を覆うボンネット(15)を備え、前記ボンネット(15)の側方にテールパイプ(18)の垂直パイプ部(20)を上下方向に立設し前記ボンネット(15)上方に排気する作業車両において、前記テールパイプ(18)の前記垂直パイプ部(20)を支持するテールパイプ支持部材(S2)を前記エンジン(4)の後部に取り付けた支持部材(28)に固定し、前記テールパイプ支持部材(S2)は前記支持部材(28)との取付位置よりも上方で前記垂直パイプ部(20)を連結支持し、
前記テールパイプ(18)は、マフラ本体(16)に接続する基端側パイプ部(19)、前記基端側パイプ部(19)に連結される前記垂直パイプ部(20)とからなり、
車体フレーム(23)に固定支持される車体側支持アーム(24)と、前記エンジン(4)の側面にプレートを介して連結支持された支持ロッド(26)と、前記車体側支持アーム(24)と前記支持ロッド(26)とを連結する中継支持プレート(25)で構成されるテールパイプ支持部材(S1)によって前記基端側パイプ部(19)を支持する構成としたことを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、前記基端側パイプ部(19)は下方延出部(19a)と起立部(19b)とで略U型形状に成形される第1の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、エンジン4と、エンジン4を覆うボンネット15を備え、ボンネット15の側方にテールパイプ18の垂直パイプ部20を上下方向に立設しボンネット上方に排気する作業車両において、テールパイプ18の垂直パイプ部20を支持するテールパイプ支持部材S2をエンジン4の後部寄りに取り付けた支持部材28に固定し、テールパイプ支持部材S2は支持部材28との取付位置よりも上方で垂直パイプ部20を連結支持した。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、本発明に関連する第1の発明において、テールパイプ18は、マフラ本体16に接続する基端側パイプ部19、基端側パイプ部19に連結される垂直パイプ部20とからなり、基端側パイプ部19は下方延出部19aと起立部19bとで略U型形状に成形される。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、本発明に関連する第2の発明において、中継支持プレート25、及び中継支持プレート25に連結する車体側支持アーム24とエンジン4側支持ロッド26で構成されるテールパイプ支持部材S1によって基端側パイプ部19を支持する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、テールパイプを安定して取り付け得る作業車両を提供することができる。
本発明に関連する第1の発明によると、テールパイプ18の垂直パイプ部20はテールパイプ支持部材S2によって支持構成されるものであるが、高い位置で支持するものであるから安定良く支持することができる。
【0011】
本発明に関連する第2の発明によると、本発明に関連する第1の発明の効果に加え、略U型形状に成形された基端側パイプ部19に垂直パイプ部20を接続する高所排気仕様と垂直パイプ部20を取り外した低所排気仕様とに仕様変更できる。
【0012】
本発明に関連する第3の発明によると、本発明に関連する第2の発明の効果に加え、テールパイプ18の基端側パイプ部19は略U型形状に成形されるが、テールパイプ支持部材S1によって支持構成されるから安定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
作業車両としての農用トラクタは、動力によって自走しながら圃場等で作業を行う。農用トラクタは、車体1前側にあって駆動可能でかつ操舵可能な左右の前輪2L,2Rと、機体1後側に装着される左右の後輪3L,3Rと、動力源としてのエンジン4と、変速装置を内装するトランスミッションケース5を備える。なお、左右一対に設けられる部材において、図中符号Lは左側を示し、符合Rは右側を示す。
【0016】
また、車体1後部に、ロータリ等の作業機6を装着可能な連結装置7が配設されている。連結装置7は、中央上部のトップリンク7aと下部左右のロアリンク7b,7bからなる3点リンクとされ、リフトアーム8を油圧で回動することで、リフトロッド9,9を介してロアリンク7bを回動し該作業機6を昇降連動する構成である。
【0017】
農用トラクタは、車体操縦席10の前側のダッシュボード12からステアリングハンドル13が立設されると共に、操縦席10の周りにクラッチペダル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の各種操作ペダルや前後進レバー、変速レバー等の各種操作レバーが配置されている。
【0018】
前記ミッションケース5内には伝動機構を配置し、エンジン4からの動力を、公知の前後進切替機構、主変速機構、副変速機構を介して後輪3L,3R及び前輪2L,2Rに伝達すべく構成している。
【0019】
ボンネット15内において、エンジン4に連結したマフラ本体16をエンジン4の左右一側(図例では左側)に配置し、このマフラ本体16の後側下部に、エンジン4の排気部に連結した排気導入パイプ17が接続され、前側下部にはテールパイプ18が接続されている。
【0020】
テールパイプ18は、マフラ本体16に接続する基端側パイプ部19、この基端側パイプ部19に連結される垂直パイプ部20とからなる。基端側パイプ部19は、マフラ本体16の排気側接続筒16aに連結され下方に延出し更に後方向きの水平部を有するようにL型に成形された下方延出部19aと、この下方延出部19aの後端に外向きに所定角度を呈して所定水平部を接続し更にその端部を起立するよう形成した起立部19bとからなり、下方延出部19aと起立部19bとで略U型形状に成形されるものである。したがって、基端側パイプ部19は、下方延出部19aがボンネット19の側面カバー19Lの下縁を迂回し、その起立部19bはボンネット19側方に配置される構成である。
【0021】
そして、前記垂直パイプ部20は、基端側パイプ部19の起立部19bに連結され上部は漸次湾曲されその上端は車体の斜め前方向きに開口させている。
【0022】
テールパイプ18を構成する前記基端側パイプ部19と垂直パイプ部20にそれぞれパイプカバー21,22を設けてある。これらはパンチングメタルをコ型に成形して構成される。
【0023】
次いで、テールパイプ18の支持構成について説明する。先ずテールパイプ18を構成する基端側パイプ部19において、アクスルブラケットを兼用する車体フレーム23に下端側をボルト締結した支持アーム24を上方に延出して設け、その上端に中継支持プレート25を溶接接続する。この中継支持プレート25は、エンジン4側面にプレート等を介して適宜に連結されたL型支持ロッド26の水平部外側端にボルト締結される構成であり、上記支持アーム24と共に第1のテールパイプ支持部材S1を構成する。上記中継支持プレート25の外面に、基端側パイプ部19の下方延出部19aを溶接接続すると共に基端側パイプ部19の前記水平部を中心に覆うパイプカバー21を締結連結する帯プレート27を重合してボルト締結している。
【0024】
次に、垂直パイプ部20の支持構成について、下方側を車体フレーム23又はエンジン4の後部に連結した支持フレーム28に中継ロッド29を介して垂直パイプ部20を支持している。詳細には、断面コ型の支持フレーム28に中継ロッド29下端のベースプレート30をボルト締結して支持フレーム28に連結する。この中継ロッド29は外方に延出する水平部29aと斜め上方に傾斜する傾斜部29bを備えて第2のテールパイプ支持部材S2を構成し、傾斜部29b上端には中継プレート31を設け、垂直パイプ部20の中途部に半周を包囲すべく溶接連結させたパイプ連結アーム32を重合させてボルト締結する構成である。なお、中継プレート31とパイプ転結アーム32との間にパイプカバー22を挟んで締結するものである。
【0025】
前記パイプカバー22は、垂直パイプ部20と基端側パイプ部19の起立部19bを覆う長尺に形成されるが、断面コ型で車体1に対向する面は開放されて構成され、上下には補強用の連結小片33を設けている。連結小片33は開放側の対向面を連結して補強すると共に垂直パイプ部20の外周に沿う切欠きを形成してパイプカバー22の垂直パイプ部20に対する位置決めの機能を備える。
【0026】
上記のように、テールパイプ18のうち、基端側パイプ部19は下方延出部19aと起立部19bとで略U型形状に成形されるが、第1のテールパイプ支持部材S1によって支持構成されるから安定する。
【0027】
また基端側パイプ部19の起立部19bと垂直パイプ部20は第2のテールパイプ支持部材S2によって支持構成されるものであるが、中継ロッド29は傾斜部29bを有して高い位置で支持するものであるから、安定良く支持することができる。特に、パイプ連結アーム32と第2テールパイプ支持部材S2としての中継ロッド29との連結高さは、支持フレーム28と中継ロッド29との連結部高さよりも高い位置に設定でき、垂直パイプ部20を安定良く支持でき振動等を抑制できる。
【0028】
なお、第2テールパイプ支持部材S2を構成する支持フレーム28の上部には燃料タンク支持ブラケット34を構成している。
【0029】
前記基端側パイプ部19の起立部19bに垂直パイプ部20を同径に形成しバンド部材35で連結する構成としているが、両者を切り離し所謂エジェクタ効果を利用して外気を導入させる構成としてもよい。また、垂直パイプ部19を設ける場合は比較的高所において排気させることとなるが、基端側パイプ部19から直接排気する仕様に変更することも容易である。
【符号の説明】
【0030】
4 エンジン
15 ボンネット
18 テールパイプ
19 基端側パイプ部
19a 下方延出部
19b 起立部
20 垂直パイプ部
24 支持アーム(第1テールパイプ支持部材)
25 中継支持プレート(第1テールパイプ支持部材)
26 L型支持ロッド(第1テールパイプ支持部材)
28 支持フレーム(支持部材)
29 中継ロッド(第2テールパイプ支持部材)
30 ベースプレート(第2テールパイプ支持部材)
S1 第1テールパイプ支持部材
S2 第2テールパイプ支持部材