IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東和薬品株式会社の特許一覧

特許7264711レベチラセタム含有医薬組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】レベチラセタム含有医薬組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20230418BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P25/08
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019086101
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180101
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】中川 純
(72)【発明者】
【氏名】中西 正哉
(72)【発明者】
【氏名】塩田 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】片山 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康伸
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-534522(JP,A)
【文献】特表2016-514680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0044780(US,A1)
【文献】特表2009-502835(JP,A)
【文献】特開2017-206467(JP,A)
【文献】特開2018-070534(JP,A)
【文献】特開2015-168645(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065427(WO,A1)
【文献】特開2007-211005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベチラセタムを含む組成物を、この組成物中の水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件下で造粒する工程を含み、
前記水分量は、前記組成物を80℃の温度条件下で、前記組成物の重量の30秒間の変化量が0.05%以下となるまで乾燥させた際の乾燥減量を、電子式水分計を用いて測定した値であり、測定前の前記組成物の質量を100%として算出した値(質量%)である、レベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法。
【請求項2】
前記レベチラセタムを含む組成物が賦形剤を含有している、請求項1に記載のレベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法。
【請求項3】
前記賦形剤が、糖、糖アルコール、及び結晶セルロースからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載のレベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法。
【請求項4】
得られるレベチラセタムを含む医薬組成物において、
40℃、75%RHの条件で2週間保存後、日本薬局方記載の溶出試験のパドル法に従い10分間溶出させた時のレベチラセタムの溶出率が90%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のレベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた溶出性を備えたレベチラセタム含有医薬組成物の製造方法、並びに、当該組成物を含む医薬固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レベチラセタムは、化学名(-)-(S)-エチル-(2-オキソ-1-ピロリジン)アセトアミドであり(分子式C14、分子量170.21)、下記化学式(1)で表される化合物である。
【0003】
【化1】
【0004】
レベチラセタムは白色から淡灰白色の結晶性の粉末で、極めて高い水溶性を示す。
【0005】
レベチラセタムは、てんかんの治療・予防薬として用いられており、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対して効能を有する。また、他の抗てんかん薬と併用して使用されることもある。
【0006】
レベチラセタムを含む医薬製剤(錠剤、顆粒等)の製造方法としては、レベチラセタムを含む組成物に、結合剤を添加して造粒する工程(以下、「造粒工程」とも称す)を含む製造方法が知られている(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2009-502835号公報
【文献】特表2011-513372号公報
【文献】特開2017-206454号公報
【文献】特開2017-206467号公報
【文献】特開2018-70534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レベチラセタムを含む医薬製剤においては、時間の経過に伴って生じるレベチラセタムの溶出遅延が問題となることがある。
【0009】
このような課題への解決策として、これまでに、レベチラセタムを含む医薬製剤にポリビニルポリピロリドン及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される崩壊剤等を所定の割合で配合する方法(例えば、特許文献1)、遅延防止剤としてヒドロキシプロピルセルロースを配合する方法(例えば、特許文献4)、フマル酸ステアリルナトリウムを配合する方法(例えば、特許文献5)などが報告されている。
【0010】
しかし、レベチラセタムを含む医薬製剤では、上述したような各種添加剤を配合しても、その医薬製剤の製法方法によっては、溶出遅延の抑制効果が十分に発揮されず、製造後、時間の経過に伴って十分な溶出性が得られなくなってしまうおそれがある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、溶出遅延が十分に抑制されており、優れた溶出性を備えたレベチラセタム含有医薬組成物を製造する方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る、レベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法は、レベチラセタムを含む組成物を、この組成物中の水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件下で造粒する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
前記製造方法において、前記レベチラセタムを含む組成物が賦形剤を含有していることが好ましい。
【0014】
さらに、前記賦形剤が、糖、糖アルコール、及び結晶セルロースからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0015】
また、前記製造方法は、得られるレベチラセタムを含む医薬組成物において、40℃、75%RHの条件で2週間保存後、日本薬局方記載の溶出試験のパドル法に従い10分間溶出させた時のレベチラセタムの溶出率が90%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた溶出性を備える、レベチラセタム含有医薬組成物を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態のレベチラセタムを含む医薬組成物の製造方法は、レベチラセタムを含む組成物を、この組成物中の水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件下で造粒する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
本実施形態の医薬組成物の製造方法は、前記造粒工程を含んでいれば、その他の工程については特に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態の造粒工程に供するレベチラセタムを含む組成物には、有効成分であるレベチラセタムが含まれている。レベチラセタムとは、下記式(1)で表される(-)-(S)-エチル-(2-オキソ-1-ピロリジン)アセトアミドの化学名を有する化合物である。
【0021】
【化2】
【0022】
このレベチラセタムは、製品名を「イーケプラ(登録商標)ドライシップ50%」又は「イーケプラ(登録商標)錠250mg/イーケプラ(登録商標)錠500mg」とし、抗てんかん剤として、日本で販売されている。
【0023】
本実施形態の製造方法で製造する医薬組成物におけるレベチラセタムの配合量は、ヒト患者に対するレベチラセタムの日用量が、通常、1日300~3000mg(1回に又は分割して)程度となるような配合量にすることが好ましい。
【0024】
よって、剤型などによっても異なるが、本実施形態の医薬組成物には、通常150~1500mg、好ましくは150~1000mgのレベチラセタムが含まれる。なお、各患者にとって適切な実際の用量は、その患者の年齢、体重及び症状などによって適宜設定することが可能である。
【0025】
本実施形態で使用するレベチラセタムの粒度は、特に限定されず、例えば、粒子径(D50)が100~300μmのレベチラセタムを使用可能である。上記の粒子径(D50)の測定方法としては、レーザー回折式粒度分布測定法が挙げられ、具体例としてはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製 マスターサイザー3000)を用いる方法などが挙げられる。
【0026】
本実施形態の造粒工程に供するレベチラセタムを含む組成物には、前記レベチラセタム以外に、造粒に使用する各種添加剤(賦形剤など)が含まれていてもよい。
【0027】
賦形剤としては、通常、ドライシロップや錠剤等に使用される賦形剤であれば特に限定はされず、例えば、糖、糖アルコール、結晶セルロース、デキストリン、トウモロコシデンプン、無水リン酸水素カルシウム等を使用することができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0028】
特に、前記賦形剤が、糖、糖アルコール、及び結晶セルロースからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、マンニトール、乳糖水和物、及び結晶セルロースからなる群から選択される少なくとも1つを本実施形態の賦形剤として使用することが好ましい。
【0029】
本実施形態の医薬組成物中における賦形剤の含有量は、剤型によって異なるが、例えば、ドライシロップ製剤の場合、原薬(レベチラセタム)と賦形剤の合計量を100質量%とすると、5~90質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましい。また、錠剤の場合には、錠剤用顆粒において、原薬(レベチラセタム)と賦形剤の合計量を100質量%とすると、5~90質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の医薬組成物には、有効成分である前記レベチラセタムおよび前記賦形剤以外に、薬学的に許容される添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて適宜配合することができる。
【0031】
具体的な添加剤としては、例えば、アルファー化デンプン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、メチルセルロース等の結合剤等;軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム等の流動化剤;デンプン、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン等の崩壊剤;アステルパーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、スクラロース、ステビア、白糖等の甘味料;I-メントール、ヨーグルトミクロン、パイナップルミクロン、ペパーミントミクロン、レモンミクロン、オレンジミクロン等の香料;酸化チタン、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、黒酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキ等の着色剤・遮光剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ベヘン酸グリセリル及びタルクのような滑沢剤;ショ糖、ゼラチン等の顆粒化結合剤等を配合することができる。
【0032】
本実施形態の医薬組成物の製造方法は、上述の通り、前記造粒工程を含んでいる限り、その他の工程については特に限定されるものではないが、以下に、錠剤とドライシロップ製剤を具体例として挙げて説明する。
【0033】
まず、本実施形態の医薬組成物が錠剤である場合について説明する。錠剤は、例えば、レベチラセタムを、賦形剤及び必要に応じてその他添加剤等を用いて、造粒し、乾燥させ、整粒することによって、整粒末(顆粒)を得る。なお、造粒方法としては、例えば、流動層造粒法、撹拌造粒法等を挙げることができ、好ましくは、流動層造粒法が挙げられる。
【0034】
この造粒工程において、レベチラセタムを含む組成物の水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件下で造粒することが重要であり、このような造粒工程を経ることによって、製造後、時間の経過に伴って生じうる溶出遅延が十分に抑制された(特に、加湿保存後も十分な溶出性も備えた)レベチラセタム含有医薬組成物を得ることができる。
【0035】
なお、本実施形態において、前記「水分量」は、造粒物を80℃の温度条件下で30秒間乾燥した際の乾燥減量を、電子式水分計を用いて測定した値であり、測定前の造粒物質量を100%として算出した値(質量%)である。
【0036】
前記水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件については、特に限定はされず、使用する造粒装置等の各パラメーターを適宜設定し、前記水分量を調整する。例えば、流動層造粒法で造粒する場合は、流動層造粒装置における送液速度を遅くしたり、給気温度を上げたりすることによって、水分量を調節することができる。送液速度や給気温度の調節は、組成物の製造量や造粒に使用する設備によって、適宜設定する。よって、造粒工程中における、レベチラセタムを含む組成物の水分量は定期的に測定し、その測定数値によって送液速度や給気温度を調整する。なお、使用する造粒装置において、前記水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件(送液速度、給気温度など)を見出した後は、その条件を適用して、水分量の定期的な測定を実施することなく、造粒工程を実施することも可能であり、本発明において、「水分量を実質的に0.5%以下に維持する条件下で造粒する」ことは、造粒中に水分量測定を実施することに限定されない。
【0037】
錠剤は、上記のようにして得られた顆粒に外添剤を混合し、打錠することによって製造することができる。また、打錠して得られた錠剤(素錠)に、フィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠としてもよい。
【0038】
打錠は圧縮成形によって行うことが好ましく、例えば、錠剤の成形に使用する打錠用臼、打錠用上杵及び下杵を用い、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機又はロータリー式打錠機等を利用することができる。打錠圧力は、製造する錠剤としての錠剤重量に応じて、適宜設定することができる。
【0039】
前記では錠剤について説明したが、本実施形態の製造方法によって得られる医薬組成物の剤型は特に限定されず、ドライシロップ製剤、散剤、顆粒、錠剤、カプセル剤等であってもよい。好ましくは、錠剤またはドライシロップ製剤である。
【0040】
また、上記造粒中の水分量を調節する必要はあるが、本実施形態の製造方法によって最終的に得られる医薬組成物中における水分量は特に限定されず、例えば、3.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態の製造方法で得られるレベチラセタム含有医薬組成物は、40℃、75%RHの条件で2週間保存後、日本薬局方記載の溶出試験のパドル法に従い10分間溶出させた時のレベチラセタムの溶出率が90%以上であることが好ましく、本発明には、当該組成物を含む医薬固形製剤も包含される。
【0042】
すなわち、本実施形態の医薬固形製剤は、レベチラセタムを含む組成物の造粒工程における水分量が0.5%以下である組成物を含む、医薬固形製剤である。
【0043】
本実施形態のレベチラセタム含有医薬組成物は、抗てんかん剤として、有効に用いることができる。また、本実施形態のレベチラセタム含有医薬組成物は、製造後、時間が経過しても(具体的には、40℃、75%RHの条件での2週間保存後も)十分な溶出性が得られるため、長期保存が可能である。
【0044】
本実施形態の錠剤の形状は、特に限定されないが、円盤状、ドーナツ状、多角形板状、球状、楕円状等の形状とすることが可能である。
【0045】
また、錠剤の硬度は、特に限定されないが、素錠の場合は、例えば、70N~200N程度であることが好ましく、フィルムコーティング錠の場合は、例えば、120N~300N程度であることが好ましい。
【0046】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0047】
まず、本実施例で使用した各試薬について示す。
・結晶セルロース:旭化成株式会社製のセオラス(登録商標)
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製
・ボビドン:BASFジャパン株式会社製のコリドン30
・ステアリン酸マグネシウム:日東化成工業株式会社製
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学工業株式会社製
・ヒプロメロース:信越化学工業株式会社製
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社製
・タルク:林化成株式会社製のタルカンハヤシ(登録商標)
・青色2号アルミニウムレーキ:癸巳化成株式会社製
・黄色三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製
・三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製
【0048】
<フィルムコーティング(FC)錠の製造>
(実施例1:FC錠 500mg錠)
レベチラセタム500.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース31.0gを流動層造粒装置((株)パウレック製のMP-01)に投入し、混合した。次に、ポビドン5.0gを含む1.0質量%水溶液を結合剤液として別途調製し、この結合剤液505.0gを混合物に噴霧しながら造粒した(造粒条件:給気温度75℃、送液速度4.5~5.5g/分)。なお、この造粒工程では、造粒末の水分量(後述する水分量測定方法で得た乾燥減量値)が造粒工程中0.5質量%以下となるように造粒条件を上記の通り調整した。また、造粒合計時間100分に対し、造粒開始から10分毎に、造粒末(造粒される組成物)の水分量を測定したところ、最大の水分量は0.35%であった。
【0049】
次いで、造粒後、排気温度が50℃以上となるように流動層造粒装置にて乾燥した(乾燥条件:給気温度70℃、給気風量約1.0m3/分)。乾燥時間は3分を要した。
【0050】
得られた造粒物を目開き500μmの篩にて篩過することで整粒した。得られた造粒物に、この造粒物に対して0.37質量%の量のステアリン酸マグネシウムを添加して袋混合した。
【0051】
得られた混合物をロータリー打錠機((株)菊水製作所製のVIRGO)において、打錠圧18kNにて打錠して、1錠あたり538.0mgの素錠を製造した。
【0052】
そして、得られた素錠を、錠剤コーティング機(フロイント産業(株)製のHCT-LABO)に投入し、ヒプメロース112.01g、ヒドロキシプロピルセルロース14.0010g、タルク14.0008g、黄色三二酸化鉄0.3000g、三二酸化鉄0.0150g及び精製水1200.08gを含むフィルムコーティング液121.8gを噴霧し、1錠あたり552mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0053】
(実施例2:FC錠 500mg)
工程1
レベチラセタム25.00kg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース1270g、結晶セルロース270.0gを流動層造粒装置((株)フロイント社製のFLO-30)に投入し、混合した。次に、ポビドン250.0gを含む1.0質量%水溶液を結合剤液として別途調製し、この結合剤液25.25kgを混合物に噴霧しながら造粒した(給気温度:73℃、送液速度:60.0~70.0g/分)。なお、この造粒工程では、造粒末の水分含量(後述する水分量測定方法で得た乾燥減量値)が造粒工程中0.5質量%以下となるように造粒条件を上記の通り調整した。また、造粒合計時間390分に対し、造粒開始から60分毎に、造粒末(造粒される組成物)の水分量を測定したところ、最大の水分量は0.16%であった。
【0054】
次いで、造粒後、排気温度が50℃以上となるように流動層造粒装置にて乾燥した(乾燥条件:給気温度75℃、給気風量約8.1Nm3/分)。乾燥時間は4分を要した。上記工程1の操作を2回行い、合わせて造粒物とした。
【0055】
得られた造粒物を整粒機((株)パウレック社製のQC-197S)にて整粒した。得られた造粒物に、この造粒物に対して0.37質量%の量のステアリン酸マグネシウムを拡散式混合機((株)キット社製のCB-200)に投入し混合した。
【0056】
得られた混合物をステアリン酸マグネシウムとともにロータリー打錠機((株)菊水製作所製のVIRGO)において、打錠圧20kNにて打錠して、1錠あたり538.0mgの素錠を製造した。
【0057】
得られた素錠を、錠剤コーティング機(フロイント産業(株)製のFZ-100)に投入し、ヒプメロース2240.03g、ヒドロキシプロピルセルロース280.05g、タルク280.09g、黄色三二酸化鉄6.000g、三二酸化鉄0.301g及び精製水32.00kgを含むフィルムコーティング液16.64kgを噴霧し、1錠あたり552mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0058】
(実施例3:FC錠 250mg)
レベチラセタム25.00kg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース1270g、結晶セルロース270.0gを流動層造粒装置((株)フロイント社製のFLO-30)に投入し、混合した。次に、ポビドン250.0gを含む1.0質量%水溶液を結合剤液として別途調製し、この結合剤液25.25kgを混合物に噴霧しながら造粒した(造粒条件:給気温度73℃、送液速度60.0~70.0g/分)。なお、この造粒工程では、造粒末の水分含量(後述する水分量測定方法で得た乾燥減量値)が造粒工程中0.5質量%以下となるように造粒条件を上記の通り調整した。また、造粒合計時間390分に対し、造粒開始から60分毎に、造粒末(造粒される組成物)の水分量を測定したところ、最大の水分量は0.39%であった。
【0059】
次いで、造粒後、排気温度が50℃以上となるように流動層造粒装置にて乾燥した(乾燥条件:給気温度75℃、給気風量約8.1Nm3/分)。乾燥時間は4分を要した。
【0060】
得られた造粒物を整粒機((株)パウレック社製のQC-197S)にて整粒した。得られた造粒物に、この造粒物に対して0.37質量%の量のステアリン酸マグネシウムを拡散式混合機((株)広島メタル&マシナリー社製のPM-100)に投入し混合した。
【0061】
得られた混合物をステアリン酸マグネシウムとともにロータリー打錠機((株)菊水製作所製のVIRGO)において、打錠圧20kNにて打錠して、1錠あたり269.0mgの素錠を製造した。
【0062】
得られた素錠を、錠剤コーティング機(フロイント産業(株)製のHCT-80N)に投入し、ヒプメロース1280.01g、ヒドロキシプロピルセルロース160.01g、タルク160.00g、青色2号アルミニウムレーキ3.001g及び精製水18000gを含むフィルムコーティング液7940gを噴霧し、1錠あたり277mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0063】
(比較例1:FC錠 500mg錠)
造粒条件を、給気温度65℃、送液速度9.5~10.5g/分に変更し、造粒末の水分含量(後述する水分量測定方法で得た乾燥減量値)が造粒工程中0.5質量%を上回るように調整した以外は、実施例1と同様にして、1錠あたり552mgのフィルムコーティング錠を得た。なお、造粒合計時間50分に対し、造粒工程において、造粒開始から10分毎に、造粒末(造粒される組成物)の水分量を測定したところ、最大の水分量は1.12%であった。
【0064】
各実施例の処方分量(質量%)を表1にまとめる。
【0065】
【表1】
【0066】
<評価方法>
(溶出試験)
第17改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法/即放性製剤)に準じ、試験液として水900mLを用いて溶出試験を実施した。詳細は以下の通りである。
【0067】
溶出試験装置に上記試験液を入れた容器をセットした後、試験対象の錠剤1個を投入して、50rpmの回転速度で装置を作動させ、規定された時間(0分、5分、10分、15分)毎に試験液を採取した。
【0068】
採取した試験液中のレベチラセタム量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定し、表示量(表1に記載のレベチラセタム量)に対する百分率を溶出率(%)として求めた。
【0069】
なお、本溶出試験は、Initial(初期状態)及び加湿条件下(温度40℃、湿度75%RH、オープン)で2週間(2W)放置後の各錠剤に対して実施した。
【0070】
(崩壊試験)
崩壊性は、第17改正日本薬局方の崩壊試験法に準じ、補助盤なしで評価した。詳細は以下の通りである。
【0071】
試験器の6本のガラス管にそれぞれ試料1個ずつ入れ、補助盤を使用せず、試験液(水)にて、37±2℃で試験器を作動させた。そして、試料の残留物がガラス管内部から確認できなくなった時間を崩壊時間とした。試料は、加湿条件下(温度40℃、湿度75%RH、オープン)で、Initial、3日(3D)、1週間(1W)、および2週間(2W)、放置した後の錠剤をそれぞれ用いた。
【0072】
(水分量測定)
造粒末の水分含量は、造粒末約5.0gを80℃の条件下で乾燥した際の乾燥減量を、電子式水分計を用いて測定した値であり、測定前の造粒末質量を100%として算出した値(質量%)である。
【0073】
試験方法:熱重量分析法
約5gの検体を測定器の試験皿に均等に広がるように乗せた。設定温度にて熱をかけ続け、検体重量の変化率が0.05%以下になった時点で測定を終了した。重量の変化が全て水分の蒸発によるものと仮定して、水分量を算出した。
【0074】
水分測定条件:
・水分測定器:MOC-120H
・検体重量:5g±0.25g
・設定温度:80℃
・終了条件:30秒間の変化量が0.05%以下
【0075】
<結果と考察>
上記溶出試験の結果について、実施例1および比較例1については、表2(Initial)および表3(温度40℃、湿度75%RHにて2週間放置後)に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
表2および表3の結果比較により、同じ処方であっても、造粒工程中の水分量が0.5%を上回っていた比較例1のFC錠では溶出遅延傾向があり、特に加湿保存後(温度40℃、湿度75%RHにて2週間放置後)は溶出遅延が顕著に起こっていることがわかる。一方、造粒工程中の水分量が0.5%以下であった実施例1のFC錠は、比較例1のFC錠よりも溶出性に優れ、加湿保存後においても、10分以内に錠剤中のレベチラセタムが90%以上溶出する優れた溶出性を備えていることが確かめられた。
【0079】
次に、実施例2および3の溶出試験結果(10分、15分)を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4の結果から、実施例1とは異なる処方の実施例2および実施例3のFC錠においても、造粒工程中の水分量が0.5%以下であったため、加湿保存後(温度40℃、湿度75%RHにて2週間放置後)も、10分以内に錠剤中のレベチラセタムが90%以上溶出し、優れた溶出性を示すことが明らかとなった。
【0082】
次に、崩壊性について、実施例1および比較例1の試験結果を表5に、実施例2の試験結果を表6に、実施例3の試験結果を表7示す。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
表5~7の結果より、造粒工程中の水分量を0.5%以下とすることにより、FC錠の崩壊遅延も抑制(温度40℃、湿度75%RHにて2週間放置後の崩壊時間が、Initialにおける崩壊時間の±1分以内)できることも明らかとなった。
【0087】
以上より、本発明の製造方法によって、溶出遅延が十分に抑制されており、溶出性に優れたレベチラセタム含有医薬組成物が得られることが確認できた。