(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】温度監視装置を備えたコネクタ部材
(51)【国際特許分類】
H01R 13/66 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
H01R13/66
(21)【出願番号】P 2021532944
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2019083578
(87)【国際公開番号】W WO2020120239
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】102018131558.9
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516018245
【氏名又は名称】フェニックス コンタクト イー-モビリティ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHOENIX CONTACT E-Mobility GmbH
【住所又は居所原語表記】Hainbergstrasse 2,32816 Schieder-Schwalenberg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フューラー
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・バベツキー
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026288(JP,A)
【文献】特表2016-520245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0097316(US,A1)
【文献】特許第4031026(JP,B1)
【文献】特開2002-352635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0013597(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013016550(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015104170(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配設された相手側コネクタ部材(30、31)とプラグイン接続するためのコネクタ部材(4)であって、前記相手側コネクタ部材(30、31)とプラグイン接続されるべき電気的な接触要素(42)と、前記接触要素(42)における加熱を検出するためのセンサ装置(51)を備えた温度監視装置(5)とを有しているコネクタ部材(4)において、
前記温度監視装置(5)は、電気的絶縁材料から製造された、前記接触要素(42)に接して配置された熱伝導要素(52)を有しており、前記電気的絶縁材料は、プラスチックマトリックスと、前記プラスチックマトリックス内に埋め込まれた熱伝導性粒子とを有しており、
前記熱伝導要素(52)は、中空シリンダ形のシャフト部分(521)を有しており、
前記接触要素(42)は、前記シャフト部分(521)により包囲され
、
前記センサ装置(51)が、前記熱伝導要素(52)に接続されたサポート要素(50)に配置されている
ことを特徴とするコネクタ部材(4)。
【請求項2】
前記熱伝導要素(52)が受容チャンバ(524)を有しており、前記受容チャンバは、前記熱伝導要素(52)内に形成されたチャンバ内壁(524A)によって画定されており、前記センサ装置(51)を少なくとも部分的に包囲していることを特徴とする、請求項1に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項3】
前記センサ装置(51)が、少なくとも前記チャンバ内壁(524A)の部分から離間していることを特徴とする、請求項2に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項4】
前記熱伝導要素(52)が、本体(520)を有しており、前記受容チャンバ(524)が、前記本体(520)の面部分(524B)に窪みとして形成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項5】
前記受容チャンバ(524)が、前記面部分(524B)の延在面に平行な方向
において全周にわたって閉じられた窪みとして、又は、
前記面部分(524B)の延在面に平行な方向における少なくとも1つ
の方向において開かれた溝として形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項6】
前記本体(520)が、開口部(526)を有しており、前記開口部を通って前記接触要素(42)が延在していることを特徴とする、請求項4又は5に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項7】
前記本体(520)が、少なくとも部分的に前記開口部(526)の周囲を取り巻いて延在する前記シャフト部分(521)と、前記シャフト部分(521)に対して径方向に突出した環状フランジ(522)と、を有していることを特徴とする、請求項6に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項8】
前記受容チャンバ(524)が、前記環状フランジ(522)の部分(523)に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項9】
前記熱伝導要素(52)が、熱橋部分(529)を有しており、前記熱橋部分は、前記シャフト部分(521)と前記環状フランジ(522)とを、前記受容チャンバ(524)が前記環状フランジ(522)に配置されている周方向位置において互いに接続していることを特徴とする、請求項7又は8に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項10】
前記熱橋部分(529)が、前記シャフト部分(521)と前記環状フランジ(522)との間で斜めに延在していることを特徴とする、請求項9に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項11】
前記熱伝導要素(52)が、固定要素(53)を通じて、回転しないように、前記サポート要素(50)に接続されていることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項12】
前記受容チャンバ(524)が、前記熱伝導要素(52)の、前記サポート要素(50)に対向する面部分(524B)に形成されていることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項13】
前記熱伝導要素(52)が、絶縁部分(525)を有しており、前記絶縁部分は、前記サポート要素(50)と前記接触要素(42)との間に配置されており、これによって、前記サポート要素(50)を前記接触要素(42)から電気的に絶縁していることを特徴とする、
請求項1から12のいずれか一項に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項14】
前記絶縁部分(525)が、前記サポート要素(50)の、前記センサ装置(51)に背向する側まで延在しており、前記サポート要素(50)を、前記センサ装置(51)に背向する側において包囲していることを特徴とする、
請求項13に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項15】
ハウジング部材(40)と接触サポート(44)とが設けられており、前記熱伝導要素(52)は、前記接触サポート(44)に配置されており、前記接触要素(42)は、前記接触サポート(44)を通じて、前記ハウジング部材(40)に固定されていることを特徴とする、
請求項1から14のいずれか一項に記載のコネクタ部材(4)。
【請求項16】
前記熱伝導要素(52)が、前記接触サポート(44)の開口部(441)に挿入されることを特徴とする、
請求項15に記載のコネクタ部材(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、相手側コネクタ部材とプラグイン接続するためのコネクタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコネクタ部材は、相手側コネクタ部材とプラグイン接続されるべき電気的な接触要素と、接触要素における加熱を検出するためのセンサ装置を備えた温度監視装置とを含んでいる。
【0003】
このようなコネクタ部材は、プラグ又はソケットでもあり得る。このようなコネクタ部材は、特に、充電装置において、充電電流の伝達のために使用され得る。当該コネクタ部材は、特に、充電プラグ又は充電ソケットとして、電動機駆動の自動車(電気自動車とも呼ばれる)を充電するように構成されていてよく、充電ステーションの側では、例えば充電ケーブルの充電プラグとして、又は、車両の側では、いわゆるインレットとして使用され得る。
【0004】
電気自動車を充電するための充電プラグ又は充電ソケットは、大きな充電電流が伝達され得るように設計されるべきである。熱散逸は、充電電流の2乗で増大し、加えて、コネクタ部材における温度上昇は50Kを超えてはならないと規定されているので、このような充電プラグ又は充電ソケットの場合、充電プラグ又は充電ソケットの部材における過熱を早期に認識し、必要に応じて、充電電流を変更する、又は、充電装置のスイッチを切るために、温度監視を設けることが必要となる。
【0005】
特許文献1から知られた充電プラグの場合、温度センサが、接触プラグの接触要素の間の略中央において、絶縁体に配置されている。必要な場合には充電プロセスを遮断するために、温度センサによって、接触要素のどこかで過熱が生じていないかを認識することが可能である。
【0006】
特許文献2から知られた充電プラグの場合、複数の温度センサが設けられており、これらの温度センサは、導線を通じて温度データを伝達する。温度センサが記録した温度がどの温度領域にあるかに依存して、充電プロセスの制御が行われる。
【0007】
特許文献3からは、複数の温度センサが単線の導線を通じて互いに直列に結合されたコネクタ部材が知られている。これらの温度センサは、絶縁体に配置されており、所定の温度において、重大な抵抗の変化を有しており、当該変化は、導線に接続された制御回路が、当該変化を検出し、充電プラグを通る電流フローを調整し、必要な場合には遮断することができる程度に大きい。
【0008】
特許文献4から知られているプラグの場合、各接点にはサーミスタが配設されており、当該サーミスタは、互いに対して平行に接続されており、境界温度を超えた場合には、接点を通る電流フローを遮断するために、サイリスタを導電接続する。
【0009】
先行技術から知られた充電プラグの場合、温度センサは、例えば絶縁体に埋め込まれている。これは、温度センサを、加熱が生じ得る接触要素から電気的に絶縁するために必要である。しかしこれは同時に、接触要素の内の1つにおける温度変化が、絶縁体によって時間的に遅れて伝達され、従って、時間的に遅れて温度センサで認識されるという欠点をもたらす。従って、特に、エラーが生じた際の負荷回路の高速遮断を可能にすべきであるいうコンセプトの場合、このような温度センサの配置は、状況によっては適切ではない。
【0010】
容易かつ安価に構築可能であり、例えば充電電流の高速遮断等の迅速な対策の導入に関する高速の応答挙動を伴う、接触要素における温度監視を可能にする温度監視装置の需要が存在する。
【0011】
特許文献5から知られたコネクタ部材の場合、接触要素は、プリント基板の開口部内に配置されている。プリント基板上には、1つ又は複数のセンサ装置が設けられており、当該センサ装置は、1つ又は複数の接触要素における加熱を検出するために用いられる。
【0012】
しかしながら、熱伝導の際に注意すべきことに、特にコネクタ部材で充電システムの範囲内で使用する際、大きな電流の強さだけではなく、例えば1000Vまでの大きな電圧が生じ得る。従って、導電性を有する要素が熱伝導に用いられる場合、これによって、温度監視装置の電気的な接触要素からの電気的絶縁が確実化されており、特に所定の空隙又は沿面距離が維持されるということが保証されていなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第2605339号明細書
【文献】英国特許出願公開第2489988号明細書
【文献】米国特許第6210036号明細書
【文献】米国特許第8325454号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015106251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、容易かつ安価な方法で、温度監視装置が配設された接触要素から良好に電気的に絶縁されている場合に、高速の応答挙動と単純な構造とを有する温度監視を可能にするコネクタ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本課題は、請求項1の特徴を有する物体によって解決される。
【0016】
これによると、温度監視装置は、電気的絶縁材料から製造された、接触要素上に配置された熱伝導要素を有しており、当該電気的絶縁材料は、プラスチックマトリックスと、プラスチックマトリックス内に埋め込まれた熱伝導性粒子とを有している。
【0017】
これは、電気的絶縁材料、特にプラスチック材料及び/又はセラミック材料から製造された熱伝導要素を用いることを前提としている。熱伝導要素は、熱に関して優れた伝導性を有するが、非導電である。それに加えて、例えばエンジニアリングプラスチックを用いることが可能であり、当該プラスチックには、例えば結晶性炭素から成るグラファイト(例えば修飾黒鉛)ベースの鉱物性添加剤等の添加剤が加えられている。例えば金属微粒子又はセラミック微粒子(例えば窒化ホウ素微粒子)等の粒子形状の他の添加剤も、プラスチックマトリックス内に埋め込まれていてよく、充填度は、混合にも関わらずプラスチックが非導電に作用し、十分な耐電圧を有するように定められている。この際、添加材で修飾されたプラスチックの基本マトリックスは、例えばポリマー、例えば熱可塑性プラスチック、例えばポリカーボネートであってよい。
【0018】
従って、熱伝導要素は、一方では熱伝導性に優れ、他方では非導電である。これによって、温度監視装置のセンサ装置を、空間的に接触要素から離れて配置し、熱を接触要素から、熱伝導要素を通じてセンサ装置に伝導することが可能になり、これによって、温度監視装置は、接触要素において加熱が生じた場合に、高速の応答挙動を有し得る。この際、センサ装置の、配設された接触要素からの空間的な分離と、熱伝導要素による電気的絶縁とに基づいて、空隙及び沿面距離が、接触要素上に大きい電圧が存在する場合でも維持される。
【0019】
熱伝導要素は、好ましくは、配設された接触要素と直接接触している。従って、熱伝導要素を通じて、熱が、接触要素に吸収され、温度監視装置のセンサ装置まで伝達される。
【0020】
一態様において、熱伝導要素は受容チャンバを有しており、当該受容チャンバは、熱伝導要素内に形成されたチャンバ内壁によって画定されており、センサ装置を少なくとも部分的に包囲している。この際、センサ装置は、少なくともチャンバ内壁の部分から離間していてよく、しかしまた、場合によっては、チャンバ内壁に接触していてもよい。
【0021】
センサ装置が、熱伝導要素と間隔を置いて、受容チャンバ内に配置されていることによって、センサ装置は、熱伝導要素から、機械的かつ電気的に切り離されている。この際、センサ装置が受容チャンバ内に含まれていることによって、センサ装置は、熱伝導要素に生じた温度を迅速に(大きく時間的に遅れることなく)記録し、例えば上位の制御装置に、評価のために供給することが可能である。
【0022】
しかしまた、センサ装置が熱伝導要素に接触することも可能である。熱伝導要素は非導電なので、センサ装置は、熱伝導要素によって、配設された接触要素から電気的に分離している。
【0023】
従って、熱伝導要素を通じた熱伝導と、受容チャンバ内でのセンサ装置の配置とに基づいて、コネクタ部材における確実な温度監視を提供するために、高速の応答挙動が得られる。
【0024】
熱伝導要素は、例えば受容チャンバが形成されている面部分を構成する本体を有し得る。受容チャンバ内には、センサ装置が含まれており、少なくとも部分的に、熱伝導要素によって包囲されているので、熱伝導要素の温度は、効率的に、センサ装置によって記録され得る。
【0025】
本体は、例えば開口部を有していてよく、当該開口部を通って、接触要素が延在している。従って、本体は、配設された接触要素を周囲で取り囲んでいる。この際、熱伝導要素は、接触要素に密着しており、接触要素における加熱を直に吸収し、センサ装置に供給し得る。
【0026】
受容チャンバは、例えば、面部分の延在面に沿って見て、全ての空間方向において閉じられた窪みとして、又は、少なくとも1つの空間方向において開かれた溝として形成されていてよい。受容チャンバが面部分の面で閉じられている場合、熱伝導要素は、センサ装置を、面部分の面において周囲で取り囲んでおり、従って、センサ装置は、周囲を熱伝導要素によって囲まれている。受容チャンバが、1つの側又は2つの側が開かれた溝として形成されている場合、受容チャンバは、面部分の延在面において、1つ又は2つの側に向かって開かれており、これによって、場合によっては、熱伝導要素へのセンサ装置の取り付けが容易になり得る。
【0027】
一態様において、本体は、少なくとも部分的に開口部の周りに延在するシャフト部分と、シャフト部分に対して径方向に突出した環状フランジと、を有している。従って、本体は、長手方向に延在するシャフト部分を有するソケットのように構成されており、当該シャフト部分は、例えばシリンダ形部分において接触要素を周囲で包囲しているか、又は、横断面において円弧として構成されており、従って、接触要素のシリンダ形部分を周囲で部分的に囲んでいる。本体のシャフト部分は、例えば、中空シリンダの形状を有し得る。シャフト部分を通じて、熱伝導要素は、接触要素に接しており、従って、効率的に、接触要素における熱を吸収することが可能である。
【0028】
一態様において、内部にセンサ装置が配置されている受容チャンバは、環状フランジの部分に形成されている。環状フランジは、シャフト部分に対して軸方向に、外側に向かって突出しており、受容チャンバは、環状フランジの径方向外側の部分に形成されていてよい。受容チャンバ、従って、センサ装置が配置された場所は、接触要素からは空間的に分離している。
【0029】
一態様において、熱伝導要素は、熱橋部分を有しており、熱橋部分は、シャフト部分と環状フランジとを、受容チャンバが環状フランジに配置されている周方向位置において互いに接続している。熱橋部分は、熱を、シャフト部分から、環状フランジと、特にセンサ装置が配置された位置とに向けて伝達するために用いられる。このために、熱橋部分は、中実に構成されており、例えばシャフト部分と、熱伝導要素の本体の環状フランジとの間を斜めに延在し得る。
【0030】
有利な一態様において、センサ装置は、サポート要素、例えばプリント基板上に配置されている。サポート要素上には、さらなる機能部品、例えばさらなる電気部品又は電子部品が、例えば制御装置を構成するために配置されていてよい。サポート要素上には、特にプリント基板として構成されている場合、例えば電気的導体経路も形成されていてよく、電気的導体経路を通じて、センサ装置は、上位のアセンブリ、特に制御装置と電気的に接続されている。
【0031】
例えば、サポート要素には、複数のセンサ装置も配置されていてよい。特に、コネクタ部材の各接触要素を通じて、動作中に充電電流が伝達されるが、当該各接触要素に各自のセンサ装置を配設し、それによって、接触要素が(過度に)加熱されているかを、各接触要素において個別に監視することが可能であると有利であり得る。
【0032】
サポート要素は、好ましくは、熱伝導要素に接続されている。このような接続は、熱伝導要素がサポート要素に単純に当接することによって成立し得る。しかしまた、熱伝導要素が例えばサポート要素に対して回転しないように固定されており、これによって、熱伝導要素がその回転位置において固定されていることも考えられ、かつ、可能である。このために、例えばピンの形状の固定要素が使用可能であり、当該ピンは、例えばサポート要素の差し込み開口部に挿入され、熱伝導要素の配設された差し込み開口部に係合し、これによって、熱伝導要素は、サポート要素に対して回転しないようにロックされる。
【0033】
受容チャンバは、例えば、サポート要素の、熱伝導要素の面部分に対向する側に配置されている。当該面部分において、受容チャンバは、センサ装置が受容チャンバに含まれるが、この際に受容チャンバのチャンバ内壁に接触しないように形成されている。
【0034】
当該面部分を通じて、熱伝導要素は、サポート要素と面的に接していてよく、従って、熱伝導要素を通じて、熱もサポート要素に導入され、サポート要素は加熱されるが、このことは、温度監視装置の応答挙動を改善し、特に、サポート要素と熱伝導要素との間の温度差に基づく、応答における不活発を、少なくとも削減するために有利であり得る。
【0035】
一態様において、熱伝導要素は、絶縁部分を有しており、絶縁部分は、サポート要素と接触要素との間に配置されている。絶縁部分は、例えば、熱伝導要素の本体に、サポート要素が絶縁部分によって接触要素から分離され、従って接触要素から電気的に絶縁されているように形成されていてよい。このような方法で、接触要素からサポート要素に電圧が貫通することが防止され得る。
【0036】
この際、有利な一態様において、絶縁部分は、サポート要素のセンサ装置に背向する側に向かって延在し、サポート要素を、センサ装置に背向する側で包囲し得る。従って、絶縁部分を通じて、熱伝導要素とサポート要素との(面的な)接続も形成され、これによって、絶縁部分を通じて(も)、熱がサポート要素に導入され、サポート要素が加熱され、その結果、温度監視装置の応答挙動がさらに改善され得る。
【0037】
一態様において、コネクタ部材は、付加的に、ハウジング部材と接触サポートとを有している。この際、熱伝導要素は、接触サポートと接続されており、接触サポートを通じて、接触要素は、ハウジング部材に対して固定されている。この際、有利には、熱伝導要素は、例えば接触要素が、熱伝導要素の配設された開口部に挿入されることによって、接触要素に直接接続されている。この際、熱伝導要素は、やはり接触サポートと接続されており、接触サポートを通じて、接触要素は、コネクタ部材のハウジング部材に対して固定されている。
【0038】
例えば、接触サポートは、開口部を有することが可能であり、当該開口部には、熱伝導要素が係合している。従って、接触サポートは、接触要素に直接接続されているのではなく、熱伝導要素を通じて間接的にのみ接続されている。熱伝導要素が接触サポートの開口部に係合することによって、接触要素も、接触サポートに対して固定されており、接触サポートを通じて、コネクタ部材のハウジング部材に対して固定されている。
【0039】
この際、接触サポートには、1つ又は複数の接触要素、特に充電電流、例えば直流の形の充電電流を伝達するための1つ又は複数の接触要素が配置され、ハウジング部材に対して固定されていてよい。
【0040】
コネクタ部材は、例えば電気自動車を充電するための充電システムの充電プラグ又は充電ソケットとして使用され得る。このために、コネクタ部材は、接触要素を有しており、接触要素は、負荷接点として、例えば直流又は交流の形の充電電流を伝達するために用いられる。温度監視装置は、好ましくはこのような負荷接点に配置されており、有利な態様においては、各接触要素に、各自のセンサ装置が配設されている。センサ装置は、例えば制御装置に接続されており、それによって、温度監視装置によって記録された信号が評価され、負荷接点を通じて伝達された充電電流の制御に用いられ得る。
【0041】
ここに記載された種類のセンサ装置は、例えば温度依存性抵抗の形において、温度センサとして構成されていてよい。このような温度センサは、例えば正の温度係数を有する抵抗(いわゆるPTC抵抗)であってよく、その抵抗値は、温度の上昇と共に増大する(低い温度で優れた導電性を有し、比較的高い温度で導電性が減少する冷導体とも呼ばれる)。このような温度センサは、例えば非線形温度特性も有することが可能であり、例えばセラミック材料から製造されていてもよい(いわゆるセラミック冷導体)。
【0042】
しかしまた、例えば負の温度係数を有する電気抵抗(いわゆるNTC抵抗)を、温度センサとして用いることも可能であり、当該電気抵抗の抵抗値は、温度の上昇と共に減少する。
【0043】
代替的又は付加的に、半導体部材によって形成された温度センサを用いることも可能である。
【0044】
以下において、本発明の基となる思想を、図面に示された実施例を用いて詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】充電のための充電ケーブル及び充電ステーションと共に、電気自動車を概略的に示す図である。
【
図2】車両の側における、インレットの形状のコネクタ部材を示す図である。
【
図3】接触サポート及び温度監視装置と共に、コネクタ部材の2つの接触要素を示す図である。
【
図6】
図5に係る配置を部分的に拡大した図である。
【
図7】温度監視装置の熱伝導要素を別個に示す図である。
【
図10】コネクタ部材の接触要素を、温度監視装置の別の実施例に係る接触サポートと共に示す図である。
【
図16】
図10に係る実施例の熱伝導要素を別個に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、電動機駆動の自動車(電気自動車とも呼ばれる)の形状の車両1を概略的に示している。電気自動車1は、電気的に充電可能なバッテリを有しており、バッテリによって、車両1を動かすために、電動機に電力が供給され得る。
【0047】
車両1のバッテリを充電するために、車両1は、充電ケーブル3を通じて、充電ステーション2に接続され得る。このために、充電ケーブル3は、一方の端部では、充電プラグ30で、車両1の充電ソケットの形状の配設された相手側コネクタ部材4に差し込まれ、他方の端部では、別の充電プラグ31を通じて、充電ステーション2における充電ソケットの形状のコネクタ部材4と電気的に接続されている。充電ケーブル3を通じて、充電電流が、比較的大きな電流の強さで、車両1まで伝達される。
【0048】
車両1の側のコネクタ部材4と、充電ステーション2の側のコネクタ部材4とは、異なっていてよい。充電ケーブル3を、充電ステーション2上に(コネクタ部材4を用いずに)固定して配置することも可能である。
【0049】
図2は、例えば車両の側の充電ソケットの形状(車両インレットとも呼ばれる)におけるコネクタ部材4の実施例を示しており、コネクタ部材4は、差し込みによって、充電ケーブル3の充電プラグの形状における配設された相手側コネクタ部材30と接続可能であり、これによって、電気自動車1は、充電システムの充電ステーション2と接続される。コネクタ部材4は、ハウジング部材40を有しており、ハウジング部材40には、差し込み部分400、401が形成されており、当該差し込み部分には、コネクタ部材30が、差し込み方向Eに沿って差し込まれることによって接続され得る。差し込み部分400、401には、差し込み開口部が形成されており、当該差し込み開口部内には、接触要素41、42が配置されており、当該接触要素を通じて、プラグイン接続の際に、配設された相手側コネクタ部材30との電気的接続が形成され得る。
【0050】
図示された実施例では、第1の上側の差し込み部分400に、接触要素41が配置されており、当該接触要素を通じて、例えば交流の形の充電電流が伝達され得る。付加的に、接触要素が存在していてもよく、当該接触要素を通じて、制御信号が伝達され得る。
【0051】
これに対して、第2の下側の差し込み部分401には、2つの接触要素42が配置されており、当該接触要素を通じて、直流の形の充電電流が伝達され得る。接触要素42は、負荷導線43と接続されており、当該負荷導線を通じて、充電電流が伝達される。
【0052】
動作中には、充電電流の伝達の際に、接触要素41、42での加熱が生じる。特に、接触要素42を通じては、直流の形での充電電流の伝達のために、例えば500Aまでの大きな電流の強さの電流が流れる可能性がある。コネクタ部材4での過熱を排除し、必要に応じて、過熱に抵抗する措置を導入するために、接触要素42における温度上昇が監視されるべきであり、このために、コネクタ部材4には、以下において
図3~
図9及び
図10~
図19に係る実施例を用いて説明するように、温度センサの形状のセンサ装置51を有する温度監視装置5が設けられている。
【0053】
図3~
図9は、温度監視装置5の第1の実施例を示している。当該実施例では、プリント基板の形状のサポート要素50上に、温度センサの形状の2つのセンサ装置51が配置されており、これによって、必要に応じて、接触要素42における加熱が検出される。この際、各接触要素42には、(個別の)センサ装置51が配設されている。サポート要素50には、付加的に、電気部品又は電子部品が配置されていてよく、特に、センサ装置51のセンサ信号が供給される制御装置が、センサ信号を評価し、必要に応じて、センサ信号に依存して充電プロセスを制御するために配置されていてよい。
【0054】
温度監視装置5は、2つの熱伝導要素52を有しており、当該熱伝導要素はそれぞれ、本体520と、当該本体に形成された開口部526とを有している。各熱伝導要素52は、配設された接触要素42に接して配置されており、これによって、配設された接触要素42は、差し込み部分401内に突出したピン部分420に接続されたシリンダ形部分421で、開口部526に挿入され、従って、熱伝導要素52は、面で接触しながら、配設された接触要素42に載置される。
【0055】
例えば
図7~
図9と共に
図4を見ると明らかであるように、各熱伝導要素52は、中空シリンダ形のシャフト部分521を有しており、当該シャフト部分で、熱伝導要素52は、配設された接触要素42を包囲している。シャフト部分521から、環状フランジ522が径方向に突出しており、当該環状フランジは、図示された実施例において、外側に張り出した部分523、524を形成しており、当該部分は、一方ではサポート要素50に面で当接し、他方では接触サポート44に当接している。
【0056】
熱伝導要素52は、非導電だが、熱伝導性に優れた材料から、特にプラスチック材料から形成されており、当該材料は、例えば優れた熱伝導性をもたらすための添加剤を有している。この際、熱伝導要素52は、熱を配設された接触要素42から吸収し、サポート要素50に配設されたセンサ装置51まで伝達し、センサ装置51が高速の応答挙動で、接触要素42での加熱を検出できるようにするために用いられる。
【0057】
環状フランジ522の部分523がサポート要素50に接している面部分524Bには、受容チャンバ524が形成されており、当該受容チャンバ内には、特に
図5及び
図6を共に見ると明らかであるように、配設されたセンサ装置51が含まれている。受容チャンバ524は、窪みとして面部分524Bに形成されており、チャンバ内壁524Aによって画定され、定義される。
【0058】
センサ装置51が、熱伝導要素52によって、受容チャンバ524の領域で囲まれていることによって、センサ装置51は、熱伝導要素52を通じて伝達された熱を迅速に記録し、対応するセンサ信号を発することができる。この際、センサ装置51は、例えばチャンバ内壁524Aに対して空間的に離間しており、これによって、センサ装置51は、チャンバ内壁524Aに接触しないが、必要に応じて、チャンバ内壁524Aに接触することもできる。
【0059】
面部分524Bを通じて、部分523は、サポート要素50と接している。この際、環状フランジ522の面部分523は、シャフト部分521と部分523との間で斜めに延在する(
図9を参照)中実の熱橋部分529を通じて、シャフト部分521に接続されており、これによって、熱が効果的に、部分523と、当該部分に形成された受容チャンバ524とに伝達され得る。
【0060】
さらに、面部分524Bには、絶縁部分525が形成されており、当該絶縁部分は、面部分524Bから、シャフト部分521に背向する側に突出している。絶縁部分525は、サポート要素50と、接触要素42のシリンダ形部分421との間に配置されており、サポート要素50と接触要素42との間に絶縁を形成し、当該絶縁は、電圧が大きい(例えば1000Vまで)場合でも、十分な耐電圧を保証している。
【0061】
環状フランジ522から突出する別の部分527には、差し込み開口部528が形成されており、当該差し込み開口部は、接触サポート44の配設されたピン要素443(
図4を参照)と係合しているので、熱伝導要素52は、接触サポート44に対して回転しないように固定されている。
【0062】
接触サポート44は、接触要素42をハウジング部材40に固定し、機械的に保持するために用いられる。接触サポート44は、2つの開口部441を有しており、当該開口部にはそれぞれ、熱伝導要素52がシャフト部分521で係合しているので、各熱伝導要素52を通じて、各接触要素42は、接触サポート44に固定されている。固定位置442を通じて、接触サポート44は、ハウジング部材40に固定されており、従って、コネクタ部材4に固定され得る。
【0063】
接触要素42の後側には、接続要素422が配置されており、当該接触要素を通じて、負荷導線43が、接触要素42に接続されている。
【0064】
図10~
図19に示された実施例は、
図3~
図9を用いてすでに描写された実施例とは、主に熱伝導要素52の形状において異なっている。
【0065】
図10~
図19に係る実施例において、熱伝導要素52は、やはりそれぞれ本体520を有しており、当該本体は、シャフト部分521と、シャフト部分521に対して径方向に突出した環状フランジ522とを構成している。熱伝導要素52の中央の開口部526内には、配設された接触要素42が、シリンダ形部分421で含まれるので、熱伝導要素52は、配設された接触要素42に載置され、シリンダ形部分421と面で接している。
【0066】
環状フランジ522に形成された部分523には、受容チャンバ524が、溝の形の窪みとして形成されており、当該受容チャンバ内には、温度監視装置5の配設されたセンサ装置51が含まれている。受容チャンバ524は、湾曲するように構成されており、配設された接触要素42の中央軸に対する径方向間隔に対応する曲率半径を有しており、片側において開かれており、これによって、センサ装置51を、配設された接触要素42の周りに熱伝導要素52を回転させることによって、受容チャンバ524内に押し込むことが可能である。取り付けられた位置では、センサ装置51は、やはり、受容チャンバ524内に含まれているが、センサ装置51は、受容チャンバ524を画定するチャンバ内壁524Aとは接触していない。
【0067】
受容チャンバ524は、部分523の面部分524B内に形成されており、当該面部分は、センサ装置51が配置されているサポート要素50に対向している。当該面部分524Bからは、絶縁部分525が軸方向に突出しており、この際、サポート要素50の面部分524Bに背向する側まで延在しており、これによって、絶縁部分525は、サポート要素50を包囲し、従って、熱伝導要素52のサポート要素50への両側での当接がもたらされる。これによって、サポート要素50の接触要素42からの良好な電気的絶縁に加えて、熱が広範囲にわたってサポート要素50に導入されることが達成されるので、サポート要素50が加熱され、従って、センサ装置51の領域におけるサポート要素50と熱伝導要素52との間の温度差は、サポート要素50におけるセンサ装置51の応答挙動の妨げとはならない。
【0068】
図10~
図19に係る実施例において、熱伝導要素52をサポート要素50に対して回転しないようにロックすることは、ピンの形状の固定要素53(
図11を参照)が、サポート要素50の差し込み開口部500を通って、熱伝導要素52の部分523の差し込み開口部528に係合し、これによって熱伝導要素52をサポート要素50に対してロックすることによって得られる。
【0069】
コネクタ部材4の組み立てのために、熱伝導要素52は、接触サポート44と共に、接触要素42に取り付けられてよく、これによって、コネクタ部材4のハウジング部材40内に取り付けられ得る接触アセンブリが形成される。熱伝導要素52と、サポート要素50及びサポート要素50に配置されたセンサ装置51との接続は、接触アセンブリをハウジング部材40に挿入した後、接触要素42に接して熱伝導要素52を回転させることで得られる。熱伝導要素52の回転によって、各センサ装置51が、配設された受容チャンバ524と係合し、これによって、絶縁部分525も、サポート要素50を取り囲む場合、熱伝導要素52は、固定要素53を通じて、サポート要素50に対して固定され、これによって、サポート要素50に対して、従ってハウジング部材40に対しても、回転しないように固定される。
【0070】
その他の点に関しては、
図10~
図19に係る実施例は、
図3~
図9に係る実施例と機能的に同じなので、先行する記載及び説明が参照されるべきである。
【0071】
本発明の基になる思想は、上述の実施例に限定されるものではなく、基本的に、全く異なる性質の方法でも実現され得る。
【0072】
本明細書に記載された種類のコネクタ部材は、有利には、電気自動車を充電するための充電システムにおいて用いられ得る。この際、当該コネクタ部材は、充電ソケット(図示された実施例のように)又は充電プラグをも実現し得る。
【0073】
しかしまた、他の利用も考えられる。基本的に、記載された種類のコネクタ部材は、接触要素での温度監視が望ましいいずれの場所においても使用される。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
2 充電ステーション
3 充電ケーブル
30、31 充電プラグ
4 コネクタ部材
40 ハウジング部材
400、401 差し込み部分
41、42 接触要素
420 ピン部分
421 シリンダ形部分
422 接続要素
43 負荷導線
44 接触サポート
440 本体
441 開口部
442 固定位置
443 ピン要素
5 温度監視装置
50 サポート要素(プリント基板)
500 差し込み開口部
51 温度センサ
52 熱伝導要素
520 本体
521 シャフト部分
522 環状フランジ
523 部分
524 受容チャンバ
524A チャンバ内壁
524B 面部分
525 絶縁部分
526 開口部
527 部分
528 差し込み開口部
529 熱橋部分
53 固定要素
A 切断面
E 差し込み方向