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特許7265303テリパラチドを含む経口用薬学組成物及びその製造方法
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  • 特許-テリパラチドを含む経口用薬学組成物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】テリパラチドを含む経口用薬学組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/29 20060101AFI20230419BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230419BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230419BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/113 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230419BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230419BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/575 20060101ALN20230419BHJP
   A61K 31/355 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
A61K38/29
A61P19/10
A61K47/28
A61K47/22
A61K47/10
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/44
A61K9/107
A61K9/113
A61K47/34
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/12
A61K31/575
A61K31/355
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022514966
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2020006255
(87)【国際公開番号】W WO2021045345
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110078
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520162802
【氏名又は名称】アイキュア ビーエヌピー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン クォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、クァン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェ ボム
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ユソン
(72)【発明者】
【氏名】ネ、ヘリム
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/165208(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1796604(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0070653(KR,A)
【文献】Journal of Controlled Release,2022年,349 , pp.502-519
【文献】European Journal of Pharmaceutical Sciences,2013年,49,pp.175-186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テリパラチド(teriparatide)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)からなるイオン結合複合体を含む経口用薬学組成物。
【請求項2】
前記Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)は、テリパラチド1モルに対して0.1~10モルに含まれることを特徴とする請求項1に記載の経口用薬学組成物。
【請求項3】
前記デオキシコール酸は、テリパラチド1モルに対して1~20モルに含まれることを特徴とする請求項1に記載の経口用薬学組成物。
【請求項4】
前記経口用薬学組成物は、ポロキサマーを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の経口用薬学組成物。
【請求項5】
テリパラチド(teriparatide)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)を含む溶液にデオキシコール酸(deoxycholic acid)及びNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)の水溶液を添加してイオン結合複合体を形成する第1段階と、
前記第1段階で製造されたイオン結合複合体に結合剤、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤を混合して顆粒を製造する第2段階と、
前記第2段階で製造された顆粒を錠剤の形に圧搾する第3段階と、
を含む経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第3段階で製造された錠剤を腸溶性物質でコーティングする段階を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項7】
前記腸溶性物質は、オイドラギット(Eudragit;メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アセチルコハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース及びシェラックで構成される群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項8】
テリパラチド(teriparatide)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)を含む溶液にデオキシコール酸(deoxycholic acid)及びNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)の水溶液を添加してイオン結合複合体を形成する第1段階と、
前記イオン結合複合体の溶液に1次界面活性剤としてカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドと1次補助界面活性剤としてTween 80を添加して混合物を製造する第2段階と、
前記第2段階の混合物を1次油相に分散させて油中水型(water-in-oil、w/o)の1次ナノエマルジョンを製造する第3段階と、
前記第3段階の1次油中水型ナノエマルジョンに2次界面活性剤としてクレモフォール又はTween 80と2次補助界面活性剤としてポリエチレングリコール400の混合物を添加して水中油中水型(water-in-oil-in-water、w/o/w)の2次ナノエマルジョンを製造する第4段階と、
を含むことを特徴とする経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項9】
前記1次油相はシリコンオイル、エステル油、炭化水素油、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールジカプリロカプレート、オレオイルマクロゴール-6グリセリド、ラウロイルマクロゴール-6グリセリド、リノレオイルマクロゴール-6グリセリド、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、ステアリン酸、グリセリルベヘネイト、グリセロールモノステアレート及びひまし油で構成される群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項10】
前記w/o/wの2次ナノエマルジョン内の1次油相は、組成物の総重量に対して、0.1~40重量%で含まれることを特徴とする請求項8に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項11】
前記1次界面活性剤と1次補助界面活性剤の混合物及び2次界面活性剤と2次補助界面活性剤の混合物は、組成物の総重量に対して、0.1~40重量%で含まれることを特徴とする請求項8に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項12】
前記1次及び2次補助界面活性剤は、それぞれ1次及び2次界面活性剤に対して、互いに独立して1:0.1~1:10の重量比で混合されることを特徴とする請求項8に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【請求項13】
前記ジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸は、テリパラチド1重量部に対して、0.1~100重量部で含まれることを特徴とする請求項8に記載の経口用薬学組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テリパラチド(teriparatide)を含む経口用薬学組成物及びその製造方法に関し、テリパラチド(teriparatide)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)からなるイオン結合複合体を含む経口用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)は、副甲状腺から分泌される84個のアミノ酸からなるポリペプチドであって、血液中のカルシウムイオンの濃度を調節する主なホルモンの1つである。これは、骨で同化作用(骨の形成)と異化作用の機能を行い、このような作用は、PTHに露出される期間及びパターンによって異なる。また、同化作用は、間欠的なPTHの露出によって促進され、骨芽細胞の分化と増殖又は細胞死の減少を引き起こす。異化作用は、持続的なPTHの露出によって促進され、RANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)の発現増加及びオステオプロテゲリン(osteoprotegerin)の発現減少と関連している。
【0003】
PTHのN-末端から34個のアミノ酸残基、即ちテリパラチド(PTH(1-34);teriparatide)は、骨と腎臓に多く発現しているPTH1型受容体の活性化に必須である。PTH(1-34)がPTH1型受容体に結合すると、Gタンパク質-依存的cAMP/タンパク質リン酸化酵素A経路(G protein-dependent cAMP/protein kinase A pathway)を含む一連の信号伝達体系が活性化され、血漿のカルシウム濃度が調節される。テリパラチドは、遺伝子組換えPTH(1-34)(rhPTH(1-34);遺伝子組換えヒトPTH(1-34)(recombinant human PTH(1-34))であって、臨床的に閉経後の女性の骨粗鬆症と生殖腺抑制性男性の骨粗鬆症の治療に用いられる。間欠的なテリパラチドの投与は、破骨細胞よりも骨芽細胞をより活性化させることによって新たな骨の形成を刺激し、骨粗鬆症における骨折のリスクを減少させる。他の多くの骨粗鬆症の治療法は、異化作用の性質を持たず、単に破骨細胞の活性を抑制する予防的な性格の治療法である。このような骨吸収抑制薬(antiresorptives)には、ビスフォスフォネート(bisphosphonate)、エストロゲン受容体調節薬(estrogen receptor modulator)、カルシトニン(calcitonin)が含まれる。反面、テリパラチドは骨折の危険があり、他の骨吸収抑制薬に反応しない患者の骨粗鬆症の治療に利用できる。
【0004】
現在、テリパラチドは、太股や腹部に2年間、1日1回皮下注射する方式で投与されている。しかし、このような皮下注射方式は、患者に痛みを誘発し、患者らが正しい注射方法を習得しなければならないという煩雑さを伴う。従って、患者の服薬順応度を向上させるために、PTHペプチドに対する経口投与、経皮投与、鼻腔投与などの代替の薬物伝達システムの開発が試みられている。経口投与の長所は、患者の利便性とテリパラチドの濃度がTmaxに達するまでにかかる時間が増加するという点である。しかし、PTH経口伝達の最も大きな問題は、ペプチド自体の経口生体利用率が低いという点である。このような問題の原因としては、ペプチドの短い半減期、胃酸と消化管のタンパク質分解酵素による分解、大きな分子量(約4117.72Da)に起因する低い胃腸管細胞膜透過性がある。従って、患者の服薬順応度を向上させるために、テリパラチドの新たな投与伝達システムの開発が急務となっている。
【0005】
前記のような問題を改善するための技術がPCT/DK2004/000482に開示されている。PCT/DK2004/000482では、通常の腸溶性コーティングなどで経口投与後の2時間以降にPTHが放出されるようにして胃腸内の薬物の分解を最小化して吸収率を向上させようとした。しかし、PTHの低い経口生体利用率は、胃腸管内の薬物の分解だけでなく、薬物分子の低い脂質親和性と大きな分子量により腸管膜透過性自体が低いことに主に起因する。従って、一般的な腸溶性経口投与剤形では、PTHの治療学的効果を発揮できる十分な経口生体利用率を示すには不十分である。また、PCT/CZ2012/000025にも、テリパラチドをベータ-グルカン、アルギン酸、キトサンのような水溶性多糖類と非共有結合による複合体を製造して薬物の酵素に対する分解を最小化し、経口生体利用率を向上させようとしたが、薬物自体の腸管膜透過性を向上させるための方策は提示していない。
【0006】
一方、PCT/IL2017/050920では、NAC(8-N-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノカプリル酸)、NAD(10-N-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノデカン酸)、5-CNAC(8-N-(5-クロロサリチロイル)アミノカプリル酸)、4-MOAC(8-N-(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾイル)アミノカプリル酸)、4-CNAB(4-N-(2-ヒドロキシ-4-クロロベンゾイル)アミノブタン酸)及びこれらの塩のような吸収強化剤を含むPTH(1-34)の経口剤形を示す。前記発明で用いた吸収強化剤は、合成界面活性剤として非特異的に薬物の胃腸管内の吸収率を増加させる。従って、小動物の場合、少量の使用でも十分な薬物の吸収促進効果を発揮できるが、霊長類及びヒトのように胃腸管液の体積が大きい場合、腸内に存在する消化液及び水により単位剤形内に含まれている吸収強化剤が希釈されて十分な吸収促進効果を発揮し難いという短所がある。また、小動物と同等レベルの胃腸管吸収促進作用を発揮するためには、過量の吸収強化剤を服用しなければならないという短所があり、これにより新規の合成界面活性剤によって思わぬ胃腸管内の副作用を引き起こす恐れがあるという短所がある。
従って、本発明者らは、前記従来技術の問題を克服すべく、鋭意研究努力を重ねた結果、薬物と分子水準にイオン結合のような非共有結合により複合体を形成すると同時に、腸管細胞膜に存在する胆汁酸輸送体に特異的、かつ選択的に結合して薬物の吸収効率を増加させることができるデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体を吸収促進剤として用い、溶解剤としてTPGSを用いる場合、経口用薬物の吸収効率が増加することを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、テリパラチドの腸管膜透過性及び経口投与の生体利用率を増加させ、患者の順応度を改善させることができるテリパラチドを含む経口用薬学組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記テリパラチドを含む経口用薬学組成物を製造するための製造方法を提供することにある。
[本発明を支援する大韓民国の国家研究開発事業]
[課題固有番号]10215797
[部処名]大韓民国中小処企業部
[研究管理専門機関]財団法人韓国炭素融合技術院
[研究事業名]創業跳躍パッケージ
[研究課題名]経口メトロノミック抗がん剤を用いた免疫抑制剤の活性促進薬物の開発
[主管機関]株式会社アイキュアBNP
【0009】
[本発明を支援した大韓民国の国家研究開発事業]
[課題固有番号]P0010215
[部処名]大韓民国産業通商資源部
[研究管理専門機関]韓国産業技術振興院
[研究事業名]基礎研究再発見支援
[研究課題名]経口用剤形の変更による抗がん剤プラットフォーム技術の開発
[主管機関]株式会社アイキュアBNP
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によると、本発明は、テリパラチド(teriparatide)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)からなるイオン結合複合体を含む経口用薬学組成物を提供する。
【0011】
テリパラチドは、骨粗鬆症の治療に用いられる薬物であって、一般的に太股や腹部に2年間、1日1回皮下注射する方式で投与されている。しかし、このような皮下注射方式は、患者に痛みを誘発し、患者らが正しい注射方法を習得しなければならないという煩雑さを伴う。そこで、本発明者らは、テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸からなるイオン結合複合体を含む経口用薬学組成物の場合、薬物の腸管膜透過性及び経口投与の生体利用率を増加させ、患者の服薬順応度を改善できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の経口用薬学組成物において、前記テリパラチド(teriparatide)は、副甲状腺ホルモンの断片(PTH(1-34))であって、前記PTH(1-34)以外にもPTH(1-28)、PTH(1-31)、PTH(1-38)及びPTH(1-41)からなる群より選択される1つ以上のテリパラチドを含むことができる。
【0013】
テリパラチドのペプチドを構成するアミノ酸配列のうち正電荷を呈するデオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)と結合できるアミノ酸であるAspartic acid(Asp)及びGlutamic acid(Glu)が計4個存在し、負電荷を呈するデオキシコール酸と結合できる正電荷を呈するアミノ酸であるArginine(Arg)、Histidine(His)及びLysineが計8個存在するため、テリパラチド1分子当たり最大12個のデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体をイオン結合させることができる。
【0014】
即ち、デオキシコール酸分子の結合のために使用可能なテリパラチド分子の全ての部位の活用が可能であるため、テリパラチドに結合されているデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体の分子が増加し、これによってデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体が腸管膜細胞に存在する胆汁酸輸送体と結合できる可能性も増加する。結論として、本発明のように、デオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体を含むイオン結合複合体を経口用薬学組成物として用いる場合、テリパラチドの腸管膜透過性、生体利用率を著しく向上させることができる。
【0015】
本発明の経口用薬学組成物において、前記デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)は、テリパラチド1モルに対して0.1~10モルに含まれることができ、好ましくは2~8モルに含まれることを特徴する。前記デオキシコール酸誘導体が10モルを超える場合、デオキシコール酸誘導体を添加した量に比べて薬物の吸収促進効果が急激に増加せず、相当量の非結合デオキシコール酸誘導体が界面活性剤としての役割を果たすことにより、むしろ腸粘膜の刺激などの副作用を引き起こす恐れがある。
【0016】
本発明の経口用薬学組成物において、前記デオキシコール酸は、テリパラチド1モルに対して1~20モルに含まれることができ、好ましくは4~16モルに含まれることを特徴する。前記デオキシコール酸が20モルを超える場合、デオキシコール酸を添加した量に比べて薬物の吸収促進効果が更に大きく増加せず、相当量の非結合デオキシコール酸が界面活性剤としての役割を果たすことにより、むしろ腸粘膜の刺激のような副作用を引き起こす恐れがある。
【0017】
本発明の一実施例によると、本発明に係るテリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸からなるイオン結合複合体(実施例1)の腸管膜透過性を確認した結果、溶解剤を含まない比較例1及び比較例2に比べて顕著な腸管膜透過性を示しただけでなく、溶解剤としてTPGSではなく、ポロキサマー、ラブラゾール又はクレモフォールを用いた比較例3、5及び6よりも顕著な腸管膜透過性を示した。それだけでなく、溶解剤としてTPGSとポロキサマーを併用した比較例4よりもTPGS単独で用いた実施例の腸管膜透過性がより向上したことを確認した。更に、腸管膜透過促進剤であるデオキシコール酸誘導体Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)のみ含む場合(比較例7)よりもNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)とデオキシコール酸を何れも含む本願発明の実施例の腸管膜透過性がより向上したことを確認した。
【0018】
このような結果からみると、本発明に係るイオン結合複合体は、他の溶解剤よりもTPGSを用いる場合、腸管膜透過性を著しく向上させることができ、デオキシコール酸誘導体だけでなく、デオキシコール酸を共に含む場合、テリパラチドとより多くのイオン結合が行われるため、腸管膜透過性を著しく向上させることができるので、テリパラチドを含む経口用薬学組成物においてテリパラチドの腸管膜透過性を増加させるためには、デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)とデオキシコール酸を共に含むことが適しており、溶解剤としてはTPGSが最も適していることを示唆する。
【0019】
本発明の経口用薬学組成物において、前記経口用薬学組成物は、溶解剤としてTPGS以外にポロキサマー(poloxamer)を更に含むことができ、ポロキサマー以外にもカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(caprylocaproyl macrogol-8 glycerides;商品名:Labrasol)又はクレモフォール(Cremophor)を更に含むことができる。
【0020】
本発明の他の態様によると、本発明は、テリパラチド(teriparatide)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)を含む溶液にデオキシコール酸(deoxycholic acid)及びNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)の水溶液を添加してイオン結合複合体を形成する第1段階、前記第1段階で製造されたイオン結合複合体に結合剤、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤を混合して顆粒を製造する第2段階、及び前記第2段階で製造された顆粒を錠剤の形に圧搾する第3段階を含む経口用薬学組成物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の経口用薬学組成物の製造方法において、前記イオン結合複合体を錠剤に製造するために、第2段階のように、結合剤、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤を更に含むことができる。前記結合剤としては、従来、錠剤を製造するために用いられた如何なる結合剤も利用可能であり、例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、ゼラチン(gelatin)、澱粉(starch)、スクロース(sucrose)、メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose)、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース(hydroxypropylalkylcellulose)で構成される群より選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。また、前記崩壊剤としては、従来、錠剤を製造するために用いられた如何なる崩壊剤も利用可能であり、例えば、架橋されたポリビニルピロリドン(Polyvinyl pyrlidone)、架橋されたナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose)、架橋されたカルシウムカルボキシメチルセルロース(calcium carboxymethyl cellulose)、架橋されたカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、澱粉グリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、カルボキシメチル澱粉(carboxymethyl starch)、カルボキシメチル澱粉ナトリウム(sodium carboxymethyl starch)、カリウムメタクリレート-ジビニルベンゼン共重合体(potassium methacrylatedivinyl benene copolymer)、アミロース、架橋されたアミロース(amylose)、澱粉誘導体(starch derivative)、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose)、セルロース誘導体(cellulose derivative)、シクロデキストリン(cyclodextrin)及びデキストリン誘導体(cyclodextrin derivative)で構成される群より選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。前記希釈剤としては、従来、錠剤を製造するために用いられた如何なる希釈剤も利用可能であり、例えば、ラクトース(lactose)、デキストリン(dextrin)、澱粉(starch)、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose)、リン酸水素カルシウム(calcium Hydrogen Phosphate)、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、糖類(saccharide)で構成される群より選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。前記滑沢剤は、従来、錠剤を製造するために用いられた如何なる滑沢剤も利用可能であり、例えば、ステアリン酸(stearic acid)、ステアリン酸亜鉛(stearic acid zinc)、ステアリン酸マグネシウム(stearic acid magnesium)、ステアリン酸カルシウム(Stearic acid calcium)、滑石(talc)で構成される群より選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0022】
本発明の経口用薬学組成物において、前記第3段階で製造された錠剤を腸溶性物質でコーティングする段階を更に含むことを特徴とする。第3段階で製造された錠剤の表面にコーティング層を形成させることで、経口服用後の胃腸内の酸性条件で薬物の放出を抑制することによって、薬物の分解を最小化できる。
【0023】
本発明の経口用薬学組成物において、前記腸溶性物質は、腸溶性製剤を製造するために、一般的に用いられる如何なる物質も利用可能であり、例えば、オイドラギット(Eudragit;メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methylcellulose Phthalate)、アセチルコハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(acetylsuccinate hydroxyl propyl methylcellulose)、セルロースアセテートフタレート(cellulose acetate phthalates)、ポリビニルアセテートフタレート(polyvinyl acetate phthalates)、カルボキシメチルエチルセルロース(carboxy methyl ethyl cellulose)及びシェラック(shellac)で構成される群より選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0024】
前記腸溶性コーティング層には、可塑剤が更に含まれることでき、その他に、色素、抗酸化剤、滑石、二酸化チタン、香味剤などが更に含まれることができる。前記可塑剤としては、ひまし油、脂肪酸、置換されたトリグリセリド(triglycerides)及びグリセリド(glycerides)、分子量が300~50、000のポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びその誘導体からなる群より選択される1つ以上の成分を用いることができる。前記腸溶性コーティング層を製造するためのコーティング液の溶媒としては、水又は有機溶媒が用いられることができ、前記有機溶媒としては、エタノール(ethanol)、イソプロパノール(isopropanol)、アセトン(acetone)、クロロホルム(chloroform)、ジクロロメタン(dichloromethane)又はその混合物を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の他の態様によると、本発明は、テリパラチド(teriparatide)及びジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate)を含む溶液にデオキシコール酸(deoxycholic acid)及びNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)の水溶液を添加してイオン結合複合体を形成する第1段階、前記イオン結合複合体の溶液に1次界面活性剤として、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(caprylocaproyl macrogol-8 glycerides;Labrasol)と1次補助界面活性剤として、Tween 80を添加して混合物を製造する第2段階、前記第2段階の混合物を1次油相に分散させて油中水型(water-in-oil、w/o)の1次ナノエマルジョンを製造する第3段階、及び前記第3段階の1次油中水型ナノエマルジョンに2次界面活性剤として、クレモフォール(Cremophor)又はTween 80と2次補助界面活性剤として、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)400の混合物を添加して水中油中水型(water-in-oil-in-water、w/o/w)の2次ナノエマルジョンを製造する第4段階を含むことを特徴とする経口用薬学組成物の製造方法を提供する。
【0026】
本発明の経口用薬学組成物の製造方法において、前記1次油相は、シリコンオイル(silicone oil)、エステル油(ester oil)、炭化水素油(hydrocarbon oil)、プロピレングリコールモノカプリレート(propylene glycol mono Caprylate)、プロピレングリコールジカプリロカプレート(propylene glycol dicaprylocaprate)、オレオイルマクロゴール-6グリセリド(oleoyl macrogol-6 glyceride)、ラウロイルマクロゴール-6グリセリド(lauroyl macrogol-6 glyceride)、リノレオイルマクロゴール-6グリセリド(linoleic oil macrogol-6 glyceride)、中鎖トリグリセリド(medium chain triglyceride)、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、グリセリルベヘネート(glyceryl behenate)、グリセロールモノステアレート(glycerol mono stearate)及びひまし油(castor oil)で構成される群より選択される1つ以上であることを特徴する。
【0027】
本発明の経口用薬学組成物の製造方法において、前記w/o/wの2次ナノエマルジョン内の1次油相は、組成物の総重量に対して、0.1~40重量%で含まれることができ、好ましくは1~20重量%で含まれることを特徴する。前記オイルが0.1重量%未満の場合、イオン結合複合体の水溶液を油相に分散させ難く、40重量%を超える場合、2次外部水相に分散されず、相分離が起こる問題が発生し得る。
【0028】
本発明の経口用薬学組成物の製造方法において、前記1次界面活性剤と1次補助界面活性剤の混合物及び2次界面活性剤と2次補助界面活性剤の混合物は、組成物の総重量に対して、0.1~40重量%で含まれることを特徴する。前記界面活性剤及び補助界面活性剤の混合物が0.1重量%未満に含まれる場合、1次内部水相を1次油相に分散させ難く、40重量%を超える場合、相対的に界面活性剤及びオイル、内部水相などの重量が減少して相分離が起こる問題が発生し得る。
【0029】
本発明に用いられる1次及び2次界面活性剤は、テリパラチド複合体が分散された水相が油相に分散され得るようにし、経口服用後にw/oナノエマルジョンが胃腸管内の胃液及び腸液でよく分散され得るようにする。
【0030】
ナノエマルジョンの製造時に用いる界面活性剤は、ポロキサマー(poloxamer)、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(Labrasol)、クレモフォール(Cremophor)、グリセロールモノカプリロカプレート(Capmul MCM)、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド(Gelucire 44/14)、ソルトロール(Solutrol)、ポリソルベート(Tween)、ソルビタンモノラウレート(Span)及びこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0031】
本発明の経口用薬学組成物の製造方法において、ジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸は、テリパラチド1重量部に対して、0.1~100重量部に含まれることを特徴する。
【0032】
本発明で使用され得る1次及び2次補助界面活性剤は、活性物質であるテリパラチド複合体が分散された内部水相がこの界面活性剤によって油相に分散され得るように、表面エネルギーを減少させることができるようにし、経口服用後に油中水型(w/o)ナノエマルジョンが胃腸管内の胃液及び腸液でよく分散され得るようにする。
【0033】
ナノエマルジョンの製造時に用いる補助界面活性剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、ポリソルベート(polysorbate)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、エタノール(ethanol)、イソプロパノール(isopropanol)及びこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上であり得る。このとき、前記補助界面活性剤は、界面活性剤と混合して用いられ、界面活性剤に対する補助界面活性剤の混合比率は、重量比で1:0.1~1:10、好ましくは1:0.5~1:2に混合されることができる。また、組成物の総重量を基準として0.1~40重量%、好ましくは1~20重量%で含まれることができる。
【0034】
前記製造方法によって製造された水中油中水型(w/o/w)のナノエマルジョンは、軟質或いは硬質カプセルに充填された形に製造されることができ、得られたカプセルに腸溶性コーティング剤を含むコーティング液でコーティングする段階を更に含んで行われることができる。
【発明の効果】
【0035】
前述したように、本発明に係るテリパラチドを含む経口用薬学組成物は、骨粗鬆症の治療剤であるテリパラチドをデオキシコール酸、Nα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びTPGSを用いてイオン結合複合剤を製造し、これを錠剤の形に製造するか、水中油中水型のナノエマルジョンに担持したものであって、前記経口用薬学組成物は、腸管膜透過性及び生体利用率を向上させることができ、患者の順応度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施例1及び実施例4によるテリパラチドの生体利用率を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものとは解釈されない。
【0038】
製造例:デオキシコール酸誘導体の製造
デオキシコール酸(deoxycholic acid)誘導体は、デオキシコール酸に正電荷を呈するリシンを化学的に結合させることによって製造した。まず、26gのデオキシコール酸を800mLのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)に溶解させる。別途に20gのHLys(Boc)-OMe・HClをN-メチルモルホリン(N-methyl morpholine)7.4mL及びエチルクロロホルメート(ethyl chloroformate)6.4mLの混合溶媒に溶解させる。前記デオキシコール酸溶液にH-Lys(Boc)-OMe・HCl溶液を添加した後、30分間撹拌した後、2時間還流させる。常温で一晩撹拌して得られた反応沈殿物を濾過した後、残存溶媒を蒸発させる。乾燥した沈殿物をクロロホルム(chloroform)とメタノール(methanol)を用いてカラムクロマトグラフィによって精製した後、冷却水槽(ice batch)で塩化アセチル(acetyl chloride)とメタノール(methanol)の混合溶媒に溶解させる。溶媒を除去した後、残留物を再び水に溶解し、クロロホルム(chloroform)で3回洗浄した後、水層を取って凍結乾燥してデオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)を製造した。
【0039】
実施例1及び比較例:テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体、及び溶解剤のイオン結合複合体の製造
精製水にテリパラチドと溶解剤としてジ-アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(D-α-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate;TPGS)を溶解させた後、撹拌しながら別に製造したデオキシコール酸誘導体の水溶液を徐々に添加してイオン結合複合体を製造する。このとき、テリパラチドとデオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)のモル比が1:2又は1:4になるように、デオキシコール酸誘導体の水溶液を徐々に添加する。その後、前記複合体溶液を撹拌しながら別に製造したソジウムデオキシコール酸水溶液を徐々に添加してイオン結合複合体を製造する。このとき、テリパラチドとデオキシコール酸のモル比が1:4又は1:8になるように、デオキシコール酸水溶液を徐々に添加する。最終の混合液を遠心分離した後、凍結乾燥して下記表1の組成で粉末状態のテリパラチドとデオキシコール酸誘導体、又はデオキシコール酸、又はこれらの混合複合体を製造した。
【0040】
また、比較例としては、溶解剤としてポロキサマー(poloxamer)、カプリロカプリルマクロゴール-8グリセリド(caprylocaproylmacrogol-8glycerides;商品名:Labrasol)及びクレモフォール(Cremophor)を用いて複合体を製造し、デオキシコール酸を含まず、複合体を製造した。
【0041】
【表1】
【0042】
実験例1:テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及び溶解剤からなる複合体の人工腸管膜透過性の確認
人工腸管膜透過性評価システムであるparallel artificial membrane permeability assay(PAMPA)を用いて前記製造した実施例1、比較例1~7の人工腸管膜による有効透過性(effective permeability、Pe)を評価した。まず、前記実施例1、比較例1~7の試料をテリパラチドとして、200μg/mLの濃度になるように、リン酸塩緩衝液(PBS、pH6.8)で溶解した後、PAMPAシステムの供与部にそれぞれ200μLずつ添加し、PAMPAシステムの受容部には、リン酸塩緩衝液(PBS、pH6.8)を300μLずつ満たしてから、供与部と受容部を結合し、常温で5時間放置した。その後、受容部及び供与部の各wellの溶液を取り、孔径0.45μmのメンブレンフィルタで濾過した後、人工腸管膜を通じて透過したテリパラチドの濃度を以下のような条件でHPLCシステムを用いて分析した。
【0043】
各試料は、50μLずつHPLCシステムに注入し、移動相として0.1%(w/v)トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid;TFA)水溶液(A)と0.1%(w/v)TFAを含むアセトニトリル(acetonitrile)(B)を1.0mL/minの流速で25分間移動相Bの組成を51%~76%に線形的に変形させて分離した。テリパラチドは、220nmで測定し、人工腸管膜による有効透過性(Pe)は、下式1で計算した。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、Peは有効透過性(cm/s)、Sは有効透過面積(0.288cm2)、VDは供与部wellの溶液体積(0.2mL)、VRは受容部wellの溶液体積(0.3mL)、tは試料採取時間(s)、CR(t)は時間tでの受容部の薬物濃度、Cequilibriumは[CD(t)×VD+CR(t)×VR]/(VD+VR)を意味し、CD(t)は、時間tでの供与部の薬物濃度を意味する。
【0046】
前記式を用いて実施例1、比較例1~7の人工腸管膜による有効透過性を計算した結果を下記表2に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
その結果、前記表2から確認できるように、テリパラチドにデオキシコール酸誘導体を1:4モル比で複合体を形成した比較例2の場合、比較例1に比べて人工腸管膜によるテリパラチドの透過性が4.05倍増加した。これは、デオキシコール酸誘導体自体がテリパラチドの脂溶性を増加させ、腸管膜に対する脂質透過性を向上させたためであると判断される。
【0049】
しかし、テリパラチドとデオキシコール酸誘導体の複合体を形成する際に、TPGS、ポロキサマー、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(ラブラゾール)及びクレモフォールのような溶解剤を添加した場合、テリパラチドとデオキシコール酸誘導体の1:4モル比の複合体の透過性に比べて、それぞれ3.84倍、3.21倍、3.50倍、2.76倍増加しており、特に実施例1のように、溶解剤としてTPGSを用いた複合体の場合、人工腸管膜透過性は、テリパラチド(比較例1)及び、テリパラチド及びデオキシコール酸誘導体の1:4モル比の複合体(比較例2)に比べて、それぞれ25.6倍及び6.31倍増加した。
【0050】
また、実施例1のように、溶解剤としてTPGSを用いた複合体の場合、溶解剤としてポロキサマー、ラブラゾール及びクレモフォールを用いた比較例3、比較例5及び比較例6よりも人工腸管膜透過性が増加した。
【0051】
更に、溶解剤としてTPGSとポロキサマーを併用した比較例4よりもTPGSを単独で用いた本願発明の実施例1の人工腸膜透過性が増加した。
【0052】
それだけでなく、デオキシコール酸を含まず、デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びTPGSを含む比較例7よりもデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体を何れも含む本願発明の実施例1の人工腸膜透過性が増加した。
【0053】
このような結果は、デオキシコール酸誘導体自体の薬物の脂質親和性の促進効果と溶解剤による腸管脂質膜の可溶化作用に起因するものと判断され、特にテリパラチドの腸管脂質膜の可溶化作用による脂質親和性の促進効果は、デオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体の組み合わせとTPGSから起因するものとみられる。
【0054】
実験例2:テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及び溶解剤からなる複合体の腸管細胞膜による透過性の確認
腸管細胞膜であるCaco-2細胞膜に対する実施例1、比較例1~7のように製造した複合体の見かけの透過率を以下のように評価した。Caco-2細胞を24-well Transwellにそれぞれ1×105cells/mLの濃度に処理した後、14~16日間細胞培養した後、Caco-2細胞膜による電気抵抗(TEER)値が>350Ω・cm2の細胞単層膜(cell monolayer)を実験に用いた。まず、Transwellから培地を除去した後、供与部と受容部をHBSSで満たし、37℃で20分間培養した後、再びTEER値を測定し直した後、HBSSを除去した。その後、HBSSにテリパラチドとして200μMで実施例1、比較例1~7の試料を溶解した薬物溶液を各Transwellの供与部に0.1mLずつ塗布し、受容部は0.6mLのHBSSで満たした後、37℃で培養しながら0.5、1、2、3、4、5時間目に受容部で100μLずつ試料を採取し、メンブレンフィルタ(孔隙0.45μm、PVDF)を用いて濾過した後、腸管細胞膜を通じて透過したテリパラチドの濃度を前記実験例1で述べた条件でHPLCで分析した。見かけの腸管細胞膜透過率(Papp)は、下式2を用いて計算し、その結果を表3に示した。
【0055】
【数2】
【0056】
ここで、dQ/dtは、供与部への薬物の透過速度(μmoL/h)を意味し、Sは透過面積(cm2)を意味する。Ciは、供与部における薬物の初期濃度(μM)を意味する。
【0057】
【表3】
【0058】
その結果、前記表3のように、テリパラチドとデオキシコール酸誘導体を1:4モルのモル比で複合体(比較例2)を形成させた結果、腸管細胞膜による透過性は、テリパラチド(比較例1)に比べて2.87倍増加した透過性を示した。このようなデオキシコール酸誘導体による薬物の腸管膜透過性の増加効果は、薬物の脂質親和性の向上のみならず、デオキシコール酸の腸管細胞膜の表面に存在する胆汁酸輸送体との選択的、かつ特異的結合による薬物の細胞膜透過性の促進に起因する。
【0059】
しかし、親水性であるテリパラチドペプチドの1分子に結合されているデオキシコール酸誘導体分子は、疎水性によって複合体分子自体が自己集合マイセルを形成してデオキシコール酸誘導体分子が分子の外部に露出されず、マイセルの内部コアに位置して、腸管細胞膜に存在する胆汁酸輸送体との特異的相互作用が低下する。従って、このような複合体の自己集合マイセルの形成を阻害するために、実施例1と比較例3~7のように、テリパラチド-デオキシコール酸誘導体のイオン結合複合体の製造過程でTPGS、ポロキサマー、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(ラブラゾール)及びクレモフォールのような溶解剤を追加した場合、デオキシコール酸誘導体の胆汁酸輸送体との特異的相互作用の増加と溶解剤自体の腸管細胞脂質膜溶解度の向上の相乗効果によりテリパラチドの腸管細胞膜透過性がテリパラチド-デオキシコール酸誘導体(比較例2)の複合体に比べて、それぞれ3.01倍、1.93倍、1.83倍、1.62倍増加した。特に、実施例1のように、溶解剤としてTPGSを用いた複合体の場合、人工腸管膜透過性は、テリパラチド(比較例1)及び、テリパラチド及びデオキシコール酸誘導体の1:4モル比の複合体(比較例2)に比べて、それぞれ13.0倍及び4.52倍増加した。
【0060】
また、実施例1のように、溶解剤としてTPGSを用いた複合体の場合、溶解剤としてポロキサマー、ラブラゾール及びクレモフォールを用いた比較例3、比較例5及び比較例6よりも腸管細胞膜透過性が増加した。
【0061】
更に、溶解剤としてTPGSとポロキサマーを併用した比較例4よりもTPGSを単独で用いた本願発明の実施例1の腸管細胞膜透過性が増加した。
【0062】
それだけでなく、デオキシコール酸を含まず、デオキシコール酸誘導体であるNα-deoxycholyl-L-lysyl-methylester(DCK)及びTPGSを含む比較例7よりもデオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体を何れも含む本願発明の実施例1の腸管細胞膜透過性が増加した。
【0063】
このような結果は、デオキシコール酸誘導体自体の薬物の脂質親和性の促進効果と溶解剤による腸管脂質膜の可溶化作用に起因するものと判断され、特にテリパラチドの腸管脂質膜の可溶化作用による脂質親和性の促進効果は、デオキシコール酸及びデオキシコール酸誘導体の組み合わせとTPGSから起因するものとみられる。
【0064】
実施例2:テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及び溶解剤からなる複合体を含む経口固形製剤の製造
前記実施例1で製造したテリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体、及びTPGSで構成される複合体に下記表4に示す他の添加剤を混合して湿式顆粒過程を経た。製造された顆粒を乾燥し、ステアリン酸マグネシウムを添加して混合した後、適当な形に圧縮して錠剤を製造するか、硬質カプセルに充填した。得られたメトリックス錠剤及びカプセル内容物の組成は、下記表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例3:テリパラチド複合体を含むマトリックス錠剤のコーティング
前記実施例2で製造されたマトリックス錠剤をヒドロキシプロピルメチルセルロース2910で1次コーティングした後、直ちに色素が含まれている腸溶性コーティング剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートで2次コーティングして実施例3の錠剤を製造した。このとき、コーティング液の組成は下記表5の通りであり、コーティングはファンコータでスプレーコーティングを行った。
【0067】
【表5】
【0068】
実施例4:テリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及び溶解剤からなる複合体を含む経口水中油中水型(water-in-oil-in-water type、w/o/w)ナノエマルジョンの製造
実施例1で製造したテリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及びTPGS複合体17.76mg(0.1mgのテリパラチドに相応)を38mgの精製水に再分散させた後、1次界面活性剤と1次補助界面活性剤の1:1混合物(Labrasol:Tween 80=1:1、w/w)を112mg添加して混合した後、油相に50mgのLabrafil M1944を添加及び混合してw/oナノエマルジョンを製造する。これに630mgの2次界面活性剤と2次補助界面活性剤の混合物(Tween 80:Cremophor EL:PEG400=1:2:2、w/w/w)を添加して液相の経口ナノエマルジョンを製造した。
【0069】
実験例3:経口製剤のラット生体利用率の確認
雌のSprague-Dawleyラット(200~250g、6~7週齢)にケタミン(ketamine、45mg/kg)とキシラジン(xylazine、5mg/kg)を腹腔内に注射して麻酔させた後、ラットの腹部を切開して小腸を取り出し、前記で製造した実施例1及び実施例4と比較例1及び比較例2を精製水に分散させた後、テリパラチドとして100μg/kgに相当する量を400μLずつ近位空腸(proximal jejunum)に注入した。また、相対的生体利用率を評価するために、別に生理食塩水に溶かしたテリパラチド溶液150μLをテリパラチドとして20μg/kgに該当する量を皮下注射した。
【0070】
薬物投与後、一定時間間隔で150μLずつ血液サンプルを採取し、50μLの3.8%クエン酸ナトリウム水溶液と混合した。その後、血液試料を2、500xg、4℃の条件で15分間遠心分離した後、血漿を取り、-70℃に保管した。血漿中のテリパラチドの濃度は、human PTH(1-34)ELISA kit(ALPCO Diagnostics,USA)を用いて620nmの波長で測定した。薬物動態学的パラメータは、WinNonlin Software(ver. 5.3;Pharsight Corporation,USA)を用いてnon-compartment methodによって推定し、表6及び図1に示した。
【0071】
【表6】
【0072】
図1は、ラットに薬物を投与した後、時間による血漿中のテリパラチドの濃度を示す。比較例1の0.1mg/kgテリパラチドを空腸内(intrajejunal)に投与した後、血漿中の最大薬物濃度(Cmax)は、0.041±0.010ng/mLであり、時間-濃度曲線下の面積(AUClast)は、0.030±0.007ng・h/mLであり、皮下注射と比較した相対生体利用率は、0.810±0.1%と評価された。反面、テリパラチド-デオキシコール酸誘導体の1:4モル複合体(比較例2)をテリパラチドとして0.1mg/kgを空腸内に投与した場合、テリパラチドを単独で空腸内に投与した場合と比較したとき、Cmaxは11倍、AUClastは17.6倍、皮下注射と比較した相対生体利用率は17.8倍増加した。反面、実施例1のテリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及びTPGSの複合体を投与した場合、比較例1(テリパラチド単独)又は比較例2(テリパラチド及びデオキシコール酸誘導体の1:4モル複合体)を投与した場合に比べて、Cmaxはそれぞれ14.2倍及び1.30倍、AUClastは、それぞれ24.4倍及び1.39倍、皮下注射と比較した相対生体利用率は、それぞれ24.7倍及び1.39倍増加した。実施例1のテリパラチド、デオキシコール酸、デオキシコール酸誘導体及びTPGSの複合体を含む実施例4の経口ナノエマルジョンの場合は、比較例1(テリパラチド単独)に比べてCmax及びAUClastは、それぞれ17.3倍及び29.8倍増加し、皮下注射と比較した相対生体利用率は24.3±5.66%と評価され、30倍増加した。
図1