(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
A61M16/10 B
(21)【出願番号】P 2018240007
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 由典
(72)【発明者】
【氏名】斎木 猛彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 匡太
(72)【発明者】
【氏名】肥田 恭典
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特許第6081760(JP,B2)
【文献】特開2000-281315(JP,A)
【文献】特表2010-537779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の外部から取り込んだ空気を、シリンダを備えたコンプレッサで圧縮し、該圧縮された空気から窒素を吸着して除去することによって酸素濃縮ガスを生成する酸素濃縮装置において、
前記筐体の内部に、前記空気の流路を有するとともに、
前記流路に沿って、上方より、前記コンプレッサを冷却するファンと、前記コンプレッサを支持する支持部材と、前記コンプレッサと、を備えており、
前記ファンは、前記支持部材側に風を送るように設置され、
前記支持部材は、自身を貫通して前記流路に沿って前記空気が流れる内部流路と、前記ファンによって送られた風を前記内部流路側に案内するガイド部と、を備え、
前記コンプレッサのうち少なくとも前記シリンダの一部は、前記空気の流れる間隙を空けて前記内部流路に配置されている、
酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記シリンダの先端側は、前記支持部材から上方に突出している、
請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記支持部材は、水平に配置された板状の部材である、
請求項1又は2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記コンプレッサは、引張スプリングによって吊された状態で、前記支持部材に支持されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記筐体に設けられた嵌合部に嵌められて保持されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
前記筐体は、防音及び防振の機能を有する発泡樹脂からなる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンプレッサを用いて空気を圧縮し、空気中の酸素を分離して酸素濃縮ガスを生成する酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、呼吸器系疾患の最も効果的な治療法の一つとして、酸素吸入療法が知られている。この酸素吸入療法とは、酸素ガス或いは酸素濃縮ガスを患者に供給する方法であり、その供給源として、空気中から酸素を直接分離して酸素濃縮ガスを生成する酸素濃縮装置が開発されている。
【0003】
この酸素濃縮装置は、通常、一対の窒素吸着容器(即ち窒素の吸着剤を充填した容器)を備えており、空気圧縮装置(即ちコンプレッサ)によって圧縮された空気が、各窒素吸着容器に切り替えて送られることによって、窒素が吸着剤に吸着されて、酸素濃縮ガスが生成される。
【0004】
上述した酸素濃縮装置では、コンプレッサで空気を圧縮するので、コンプレッサの温度が上昇し、それによって、コンプレッサの部品が劣化する恐れがある。具体的には、コンプレッサには、空気を圧縮するために、シリンダとシリンダ内を摺動するピストンを備えているが、温度が上昇すると、ピストンに取り付けられた樹脂製のパッキンが変形・摩耗して、コンプレッサの性能が低下する恐れがある。
【0005】
このように、コンプレッサの冷却(特にシリンダの冷却)は、コンプレッサの寿命の確保と酸素濃縮装置の安全性を確保する上で重要な事項である。
この対策として、コンプレッサに風を送る冷却ファンを設けた各種の技術が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0006】
前記特許文献1、2の技術は、酸素濃縮装置内において、支持部材上にコンプレッサを固定するとともに、コンプレッサの周囲を覆うように風を案内するカバー等を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5350994号公報
【文献】特許第6081760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、下記のような問題があり、一層の改善が求められている。
具体的には、従来は、支持部材上にコンプレッサを配置するとともに、コンプレッサの周囲を覆うように、支持部材とは別に風を案内するカバーを設けているので、装置を簡易化してコンパクトにすることが容易でないという問題があった。
【0009】
また、単に、コンプレッサを覆うようにカバーを設けるだけでは、コンプレッサ(特に温度が高くなるシリンダ)を効率よく冷却することが難しいという問題もあった。
本開示は、装置を簡易化してコンパクトにできるとともに、コンプレッサを効率良く冷却できる酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示の第1局面は、筐体の外部から取り込んだ空気を、シリンダを備えたコンプレッサで圧縮し、圧縮された空気から窒素を吸着して除去することによって酸素濃縮ガスを生成する酸素濃縮装置に関するものである。
【0011】
この酸素圧縮装置は、筐体の内部に空気の流路を有するとともに、その流路に沿って、上方より、コンプレッサを冷却するファンと、コンプレッサを支持する支持部材と、コンプレッサと、を備えている。
【0012】
前記ファンは、支持部材側に風を送るように設置されている。この支持部材は、自身を貫通して前記流路に沿って空気が流れる内部流路と、ファンによって送られた風を内部流路側に案内するガイド部と、を備えている。さらに、コンプレッサのうち少なくともシリンダの一部は、空気の流れる間隙を空けて内部流路に配置されている。
【0013】
本第1局面では、ファンによって支持部材側に風が送られると、その風は、支持部材のガイド部に案内されて、内部流路に導入される。しかも、シリンダの一部は、空気の流れる間隙を空けて内部流路に配置されているので、内部流路に導入された空気は、シリンダの周囲を流れることにより、効率良くシリンダを冷却できる。
【0014】
さらに、上述した構成の支持部材によって、コンプレッサを支持するだけでなく、ガイド部や内部流路によってシリンダの周囲に風を案内することができるので、つまり、従来のカバー等を省略できるので、装置構成を簡易化でき、よって、装置をコンパクトにできるという効果がある。
【0015】
このように、本第1局面では、酸素濃縮装置の構成を簡易化できるので、酸素濃縮装置をコンパクトにできるとともに、効率良くコンプレッサを冷却できるという顕著な効果を奏する。
【0016】
(2)本開示の第2局面では、シリンダの先端側は、支持部材から上方に突出していてもよい。
この構成により、シリンダの周囲に一層風が当たりやすくなるので、シリンダを一層効率良く冷却できる。
【0017】
(3)本開示の第3局面では、支持部材は、水平に配置された板状の部材であってもよい。
この構成により、効率良く空気(従って風)を、シリンダ側に案内できる。
【0018】
(4)本開示の第4局面では、コンプレッサは、引張スプリングによって吊された状態で、支持部材に支持されていてもよい。
この構成により、コンプレッサを安定して支持できる。つまり、引張スプリングによってコンプレッサを宙吊りにすることにより、コンプレッサをその重心付近(重量のあるモータ等が配置された部分)で支持することが可能となるので、コンプレッサが振動した場合でも、安定してコンプレッサを支持することができる。
【0019】
しかも、引張スプリングによってコンプレッサを宙吊りにすることにより、コンプレッサの防振性が向上するという利点もある。
(5)本開示の第5局面では、支持部材は、筐体に設けられた嵌合部に嵌められて保持されていてもよい。
【0020】
この構成により、支持部材を容易に保持できる。つまり、ファスナー等の別体の固定部材を用いなくとも、支持部材を筐体に固定できるので、装置の組み立てが容易であり、しかも、部品点数を削減できるという利点がある。
【0021】
(6)本開示の第6局面では、筐体は、防音及び防振の機能を有する発泡樹脂からなっていてもよい。
この構成により、防音性及び防振性が向上する。つまり、上述した発泡樹脂を用いることにより、騒音源となるコンプレッサの防音効果や、支持部材と筐体との接触部分の防振効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の酸素濃縮装置の全体構成を示す説明図である。
【
図3】
図3Aは酸素濃縮装置の外観を示す側面図、
図3Bは
図3AをB-B断面にて破断し一部簡略化して示す斜視図である。
【
図4】コンプレッサを一部破断して模式的に示す説明図である。
【
図5】5Aは支持部材に支持されたコンプレッサを示す平面図、5Bはその正面図である。
【
図6】
図6Aは支持部材に支持されたコンプレッサを下方から示す斜視図、
図6Bは支持部材に支持されたコンプレッサを上方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本開示の酸素濃縮装置の実施形態を図面とともに説明する。
[1.実施形態]
[1-1.基本構成]
まず、本実施形態の酸素濃縮装置の全体のシステム構成について、
図1に基づいて説明する。
【0024】
本実施形態の酸素濃縮装置1は、空気中から窒素を吸着して除去することにより、酸素を濃縮して酸素濃縮気体(酸素濃縮ガス)を製造し、使用者に供給する装置である。
なお、ここでは、主として、酸素濃縮ガスを製造するために供給される空気の流路や、製造された酸素濃縮ガスの供給経路に沿って説明する。
【0025】
図1に示す様に、本実施形態の酸素濃縮装置1は、外表面を構成する本体ケース3を備えるとともに、酸素濃縮装置1の内部には、外部からの空気が内部に導入される空気の導入路5等が設けられている。
【0026】
空気の導入路5は、上流側より、空気取入口7、ゴミや埃を除去する吸気フィルタ9、吸気の際の音を低減する吸音器11、空気を圧縮する空気圧縮装置(コンプレッサ)13、圧力センサ15、三方向の流路を切り換える一対の切替弁17a、17b(17と総称する)、及び一対の窒素吸着容器(即ち吸着筒)19a、19b(19と総称する)等が設けられている。
【0027】
尚、後述するように、空気取入口7から取り入れられた空気は、空気の導入路5から分岐して、コンプレッサ13を冷却する空気の流路(即ち空気流路)20(
図2B参照)に導入される。この空気流路20には、コンプレッサ13を冷却する冷却ファン21が設けられている。
【0028】
また、一対の吸着筒19から窒素を排気する排出路23には、切替弁17から、前記と
同様な吸音器25、及び断続的な排気音を消すサイレンサ27が設けられている。尚、コンプレッサ13を冷却した後の空気は、空気流路20に沿って流れて、排出路23に合流するように構成されている。
【0029】
更に、一対の吸着筒19から、酸素濃縮ガスを供給する供給路29には、その上流側から、吸着筒19側への逆流を防止する一対の逆止弁31a、31b、酸素濃縮ガスを溜める製品タンク33、酸素の圧力を低下させるレギュレータ41、酸素濃縮ガスの流量を調整する流量調整器43、酸素濃縮ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ45、細菌等の通過を防止するバクテリアフィルタ47、吸気の際の圧力を検出する圧力センサ49、及び酸素濃縮ガスが供給される酸素出口51が設けられている。
【0030】
また、各吸着筒19a、19bの各出口の流路29a、29bの間には、両流路29a、29bを連通する連通路29cを備えている。この連通路29cには、連通路29cを開閉する開閉弁(又は絞り)53が設けられている。
【0031】
なお、酸素濃縮装置1には、酸素濃縮装置1自身の動作を制御するマイコン等を備えた電子制御装置である制御装置60が配置されている。この制御装置60には、大気圧センサ57や温度センサ59が接続されている。
【0032】
[1-2.酸素濃縮装置の内部構造]
次に、本実施形態の要部である酸素濃縮装置1の内部構造について説明する。
a)まず、本体ケース3の内部の多くを占める筐体61について説明する。
【0033】
図2Bに示すように、酸素濃縮装置1には、例えばABS(アクリルブタジエンスチレンまたはPC/ABS(ポリカABSポリマー)からなる樹脂製の本体ケース3の内部に、例えばPS(ポリスチレン)またはPP(ポリプロピレン)からなる樹脂製(詳しくは発泡樹脂製)の筐体61が格納されている。なお、発泡樹脂からなる筐体61は、内部に微小な気泡を多数含む多孔体である。この発泡樹脂は、防音及び防振の機能を有する樹脂である。
【0034】
この筐体61はブロック状の塊であり、複数(ここでは2個)のブロック状の塊である第1筐体部61aと第2筐体部61bとから構成されている。つまり、筐体61は、酸素濃縮装置の前方側に配置された第1筐体部61aと、後方側に配置された第2筐体部61bと、から構成されている。
【0035】
筐体61の内部には、上述した空気流路20を構成する空間63が設けられているとともに、
図3Bに示すように、吸着筒19が配置される空間65や、その他の部材が配置される空間67などが設けられている。
【0036】
また、第1筐体部61aと第2筐体部61bとは、それらを組み合わせて筐体61を構成した場合に、空気流路20や吸着筒19が配置される空間65等が形成されるような構成となっている。
【0037】
つまり、第1筐体部61aと第2筐体部61bとは、それぞれ、空気流路20や吸着筒19が配置される空間65等の一部を構成する凹部が設けられており、その凹部を向かい合わせて、第1筐体部61aと第2筐体部61bとを組み合わせることにより、空気流路20や吸着筒19が配置される空間65等が形成される構成となっている。
【0038】
なお、筐体61の空気流路20に面した内周面のうち、例えばコンプレッサ13の側方等には、コンプレッサ13に起因する騒音や振動を抑制するために、発泡体状の防音・防
振用のシート部材62が貼り付けられている。
【0039】
b)次に、空気流路20に設けられた各構成について説明する。
図2B及び
図3Bに示すように、空気流路20は、空気取入口7(
図2B参照)から、酸素濃縮装置1内の上部に到り、その上部から下方に到るように設けられている。
【0040】
この空気流路20には、上方(従って上流側)から下方(従って下流側)に沿って、冷却ファン21、支持部材71、コンプレッサ13等が配置されている。以下、各構成ついて説明する。
【0041】
<冷却ファン>
冷却ファン21は、その径方向における周囲(即ち外周部分)が空気流路20の壁面の嵌合部69に嵌めこまれることにより、筐体61に一体に固定されている。
【0042】
この冷却ファン21は、周知のように、軸中心によって配置されたモータ21aによって駆動されるファンであり、空気を自身の上方から下方のコンプレッサ13側に向かって供給する。
【0043】
なお、冷却ファン21は、第1筐体部61aと第2筐体部61bとの間に配置されている。よって、第1筐体部61aと第2筐体部61bとを組み合わせる際に、冷却ファン21を凹状の嵌合部69(詳しくは、第1筐体部61aの嵌合部69aと第2筐体部61bの嵌合部69b:
図2B参照)に嵌め込むことにより、冷却ファン21を筐体61に固定できる。
【0044】
<コンプレッサ>
冷却ファン21の下方には、支持部材71に支持されたコンプレッサ13が配置されている。
【0045】
コンプレッサ13は、外部から取り入れた空気を圧縮し、圧縮した空気を吸着筒19側に供給する周知の装置である。
このコンプレッサ13は、
図4に模式的に示すように、回転軸73を備えたモータ75と、モータ75の回転軸73の軸方向(
図4の左右方向)の両側に配置された一対のハウジング77と、各ハウジング77の上部(
図4の上方)にそれぞれ配置された各シリンダ79とを備えている。なお、各シリンダ79は円筒形状であり、各シリンダ79の上部を覆うように円盤形状のヘッド79aが設けられている。
【0046】
また、各シリンダ79内には、それぞれピストン85が配置され、各ピストン85の径方向の外周には、それぞれパッキン87が嵌められている。
なお、コンプレッサ13のうち、モータ75等が配置された重量のある部分(即ち
図4の左右方向に延びる略円柱形状の部分)を、本体部89と称する。従って、各シリンダ79は、本体部89の左右方向において、本体部89の上部から垂直に上方に延びている。
【0047】
なお、シリンダ79やハウジング77等の部材は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属から構成されている。
<支持部材>
支持部材71は、例えばABS、PC、PC/ABS、およびPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂のいずれかからなる平板形状の部材である。この支持部材71は、
図5Aに示すように、平面視(
図1の上下方向:地面に対する垂直方向から見た場合)で、略長方形の部材である。なお、支持部材71の外周の一部に外側に突出する凸部71bがあるが、無くてもよい。
【0048】
また、平面視で、支持部材71の中央部分には、コンプレッサ13の一対のシリンダ79が貫挿される貫通孔(即ち内部流路)91が形成されている。
前記貫通孔91は、
図5Aの左右方向にて線対称に配置された一対の貫通孔91a、91b(詳しくは第1貫通孔91aと第2貫通孔91b)と、左右の貫通孔91a、91cを連通する、各貫通孔91a、91bより幅(
図5Aの上下方向の寸法)の小さな連通孔91cと、から構成されている。
【0049】
第1貫通孔91aには、一方のシリンダ(第1シリンダ)79aの一部が配置され、第2貫通孔91bには、他方のシリンダ(第1シリンダ)79bの一部が配置されている。つまり、両シリンダ79a、79bは、
図5Bに示すように、それぞれ支持部材71の下方から、支持部材71を貫いて支持部材71の上方に到るように配置されている。
【0050】
また、
図5Aに示すように、各貫通孔91a、91bの内径寸法より、各シリンダ79a、79bの外径寸法の方が小さいので、平面視で、各貫通孔91a、91bと各シリンダ79a、79bとの間には、貫通孔91の一部を構成するように、略環状の間隙92a、92bがそれぞれ形成されている。なお、各間隙92a、92bは、連通孔91cにより連通している。
【0051】
また、
図5Bに示すように、支持部材71の上面71aは、水平方向に広がっており、冷却ファン21から支持部材71側に風が送られた場合には、その風を、前記貫通孔91(従って間隙92a、92b等)に案内するガイド部となっている。
【0052】
さらに、支持部材71は、
図2B及び
図3Bに示すように、冷却ファン21と同様に、その径方向における周囲(外周部分)が空気流路20の壁面の凹状の嵌合部93に嵌めこまれることにより、筐体61に一体に固定されている。
【0053】
なお、支持部材71は、冷却ファン21と同様に、第1筐体部61aと第2筐体部61bとの間に配置されている。よって、第1筐体部61aと第2筐体部61bとを組み合わせる際に、支持部材71の外周を凹状の嵌合部93(詳しくは、第1筐体部61aの嵌合部93aと第2筐体部61bの嵌合部93b:
図2B参照)に嵌め込むことにより、支持部材71を筐体61に固定できる。
【0054】
<コンプレッサを支持する構成>
図5及び
図6に示すように、コンプレッサ13は、4本の引張スプリング95によって吊された状態で、支持部材71に支持されている。
【0055】
つまり、コンプレッサ13の本体部89には、平面視で、長方形の略四隅に該当する位置に、それぞれ引張スプリング95が固定されている(
図5A参照)。この引張スプリング95は上方に延びており(
図5B参照)、その上端は、それぞれ支持部材71にネジ97(
図6参照)により固定されている。
【0056】
詳しくは、
図5Bに示すように、各引張スプリング95は、コンプレッサ13を側面から見た場合に、各シリンダ79a、79bの上下方向に延びる中心軸より外側にて、上下方向に延びるように配置されている。
【0057】
しかも、前記側面から見た場合に、各引張スプリング95の下端は、本体部89の左右方向に延びる中心軸の位置にて固定されている。つまり、各引張スプリング95の下端は、本体部89の重心を通る水平面の位置にて、本体部89の外周面から外側に突出する凸部99(
図6A参照)に取り付けられている。
【0058】
[1-3.空気流路における空気の流れ]
次に、空気流路20において、コンプレッサ13を冷却する空気の流れについて説明する。
【0059】
図2B及び
図3Bにて矢印で示すように、空気取入口7から取り入れられた空気は、空気流路20に導入される。空気流路20に導入された空気は、冷却ファン21によって、コンプレッサ13側に供給される。
【0060】
コンプレッサ13側に供給された空気は、支持部材71の上面71aに当たって、上面71aに沿って流れて、シリンダ79の周囲に供給されて、シリンダ79を冷却する。
また、シリンダ79を冷却した空気や、支持部材71の上面71aに沿って流れた空気は、貫通孔91を通って、支持部材71の下方に供給される。詳しくは、前記空気は、各シリンダ79a、79bの周囲の間隙92a、92cや連通孔91cを通って、支持部材71の下方に供給される。従って、空気が貫通孔91を通る際にも、シリンダ79を冷却する。
【0061】
さらに、支持部材71の下方に供給された空気が、本体部89の周囲を通過した際に、本体部89を冷却する。これによって、コンプレッサ13が効果的に冷却される。
[1-4.効果]
次に、本実施形態の酸素濃縮装置1の効果を説明する。
【0062】
(1)本実施形態では、冷却ファン21によって支持部材71側に風が送られると、その風は、支持部材71の上面71a(即ちガイド部)に案内されて、シリンダ79が配置された支持部材71の貫通孔91(即ち内部流路)に導入される。つまり、シリンダ79は、支持部材71に対して空気の流れる間隙92a、92bを空けて貫通孔91に配置されているので、貫通孔91に導入された空気は、シリンダ79の周囲を流れることにより、効率良くシリンダ79を冷却することができる。
【0063】
また、支持部材71によって、コンプレッサ13を支持するだけでなく、上面71aや貫通孔91によってシリンダ79の周囲に風を案内することができるので、従来に比べて、装置構成を簡易化でき、よって、装置をコンパクトにできるという効果がある。
【0064】
つまり、本実施形態では、このような構成によって、酸素濃縮装置1の構成を簡易化できるので、酸素濃縮装置1をコンパクトにでき、しかも、効率良くコンプレッサ13を冷却できるという顕著な効果を奏する。
【0065】
(2)本実施形態では、シリンダ79の先端側(上端側)は、支持部材71から上方に突出している。そのため、シリンダ79の周囲に一層風が当たりやすくなるので、シリンダ79を一層効率良く冷却できる。
【0066】
(3)本実施形態では、支持部材71は、水平に配置された板状の部材である。そのため、効率良く空気(従って風)を、シリンダ79側に案内できる。
(4)本実施形態では、コンプレッサ13は、引張スプリング95によって吊された状態で、支持部材71に支持されている。
【0067】
この構成により、コンプレッサ13を安定して支持できる。つまり、引張スプリング95によってコンプレッサ13を宙吊りにすることにより、コンプレッサ13をその重心付近で支持することが可能となるので、コンプレッサ13が振動した場合でも、安定してコンプレッサ13を支持することができる。
【0068】
しかも、引張スプリング95によってコンプレッサ13を宙吊りにすることにより、コンプレッサ13の防振性が向上するという利点もある。
(5)本実施形態では、支持部材71は、筐体61に設けられた嵌合部93に嵌められて保持されている。
【0069】
この構成により、支持部材71を容易に保持できる。つまり、ファスナー等の別体の固定部材を用いなくとも、支持部材71を筐体61に固定できるので、装置の組み立てが容易であり、しかも、部品点数を削減できるという利点がある。
【0070】
(6)本実施形態では、筐体61は、防音及び防振の機能を有する発泡樹脂からなっている。
この構成により、防音性及び防振性が向上する。つまり、上述した発泡樹脂を用いることにより、騒音源となるコンプレッサ13の防音効果や、支持部材71と筐体61との接触部分の防振効果が得られる。
【0071】
[1-5.特許請求の範囲との対応関係]
次に、本実施形態と特許請求の範囲との文言の対応関係について説明する。
本実施形態の、筐体61、シリンダ79、コンプレッサ13、酸素濃縮装置1、空気流路20、冷却ファン21、支持部材71、貫通孔91、上面71a、間隙92a、92b、引張スプリング95、嵌合部93は、それぞれ、本開示の、筐体、シリンダ、コンプレッサ、酸素濃縮装置1、空気の流路、ファン、支持部材、内部流路、ガイド部、間隙、引張スプリング、嵌合部の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0072】
(1)例えば、空気流路の形状は、前記実施形態に限定されず、本開示の範囲内において、冷却ファンによってコンプレッサを冷却する各種の形状が挙げられる。
(2)冷却ファンやコンプレッサについては、本開示の範囲内において、周知の各種の構成を採用できる。
【0073】
(3)引張スプリングの配置については、本開示の範囲内において、各種の構成を採用できる。
(4)なお、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記各実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0074】
1…酸素濃縮装置
13…コンプレッサ
20…空気流路
21…冷却ファン
61…筐体
71…支持部材
71a…上面
79…シリンダ
91…貫通孔
92a、92b…間隙
93…嵌合部
95…引張スプリング