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特許7265993織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機フィラメントのトウを伸ばすための方法
<図1-1a>
  • 特許-織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機フィラメントのトウを伸ばすための方法 図1-1a
  • 特許-織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機フィラメントのトウを伸ばすための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機フィラメントのトウを伸ばすための方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 5/06 20060101AFI20230420BHJP
   B29B 15/14 20060101ALI20230420BHJP
   D06B 3/06 20060101ALI20230420BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20230420BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
D06B5/06
B29B15/14
D06B3/06
D06M15/55
B29K105:08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019552854
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2018052070
(87)【国際公開番号】W WO2018178857
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102017000035017
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516312752
【氏名又は名称】エンメ.ア.エ. ソチエタ ペル アツィオニ
【氏名又は名称原語表記】M.A.E. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Alessandro Bolzoni 51/53,29122 Piacenza,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ロヴェッリーニ,マルコ
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-227053(JP,A)
【文献】特開2010-270420(JP,A)
【文献】特開昭62-184172(JP,A)
【文献】特公昭48-28969(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H51/005
B29B11/16
15/08-15/14
C08J5/04-5/10
5/24
D01F9/08-9/32
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D03D1/00-27/18
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の非編組フィラメントのトウの幅を増大させる方法であって、前記方法は、
それ自体の主方向(A)に沿って延在し、少なくとも1cmの所定の幅(W1、W2、W3)および所定の厚さ(s1、s2、s3)を有する前記主方向を横断する断面を有する繊維製品の非編組フィラメントのトウ(F)を提供するステップであって、前記繊維製品の非編組フィラメントは並んで配置され、互いに機械的/構造的に結合していないステップと、
移動経路(P)に沿って前記トウ(F)を供給するステップと、
前記所定の幅(W1、W2、W3)を増加させ且つ前記所定の厚さ(s1、s2、s3)を減少させるために前記トウ(F)の幅を増大させて展延トウ(ST1、ST2)を画定するステップと、を含み、
前記トウ(F)の幅を増大させる前記ステップは、
繊維製品の非編組フィラメントの前記トウ(F)をバス(6)に浸すことと、
個々のフィラメントを並進させ並んで配置するために前記トウ(F)を前記主方向(A)に対して横方向に横切る一連の横波(8a、8b)を前記バス(6)内に生成し、それによって前記トウ(F)の幅を恒久的に増大させることと、
前記バス(6)から前記展延トウ(ST1、ST2)を抽出することと、を含み、
前記バス(6)に入る前記トウ(F)および/または前記バス(6)から抽出された前記展延トウ(ST1、ST2)はサイジングされておらず、
前記一連の横波(8a、8b)を生成することが、
複数の貫通孔(11)を備えた支持体(10)上の前記移動経路(P)に沿って前記トウ(F)を供給することと、
第1の方向(D1)に沿って前記複数の貫通孔(11)を出る液体を送り込むことにより第1の波(8a)を生成することと、
第1の方向(D1)とは反対の第2の方向に沿って前記複数の貫通孔(11)に入る液体を吸い上げることにより第2の波(8b)を生成することとを含む、方法。
【請求項2】
前記一連の横波(8a、8b)を生成することが、前記トウ(F)の近傍で前記バス(6)を攪拌することによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一連の横波(8a、8b)を生成することが、交互に、前記トウ(F)を前記第1の方向(D1)に横切る一連の前記第1の波(8a)と、前記第2の方向(D2)に前記トウ(F)を横切る一連の前記第2の波(8b)とを生成することを含み、前記第1および第2の方向(D2)は両方とも、前記トウ(F)の前記主方向(A)および前記所定の幅(W1、W2、W3)に対して横方向である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一連の横波(8a、8b)を生成することは、回転ドラム(12)上に部分的に巻き付けることによって前記移動経路(P)に沿って前記トウ(F)を供給することを含み、前記ドラムはその外面に複数の貫通孔(11)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の波(8a)および第2の波(8b)の前記生成が、前記ドラム(12)の内側で前記ドラム(12)とは異なる回転速度でローブ付きローラ(14)を回転させることによって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
連続して実行される複数の前記トウ(F)の幅を増大させるステップを含み、各トウ(F)の幅を増大させるステップは、バス(6)中への浸漬と一連の横波(8a、8b)の生成とを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
巻き軸の周りに巻き付けられた繊維製品の非編組フィラメントの前記トウによって構成されるコイル(2)を提供するステップを含み、前記トウ(F)を供給する前記ステップは、前記コイル(2)をほどくことによって行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記トウ(F)の幅を増大させるステップの後に、前記展延トウ(ST1、ST2)を乾燥するステップを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記展延トウ(ST1、ST2)を巻きつけて展延コイル(C)を提供するステップを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記巻きつけるステップの前に動作可能に行われる、前記展延トウ(ST1、ST2)をシートまたはフィルム(16)の材料と結合するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バス(6)に入る前記トウ(F)がサイジングされておらず、前記方法は、前記トウ(F)の幅を増大させるステップと同時に又はそれに続いて行われる前記トウ(F)をサイジングするステップを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バス(6)が、前記トウ(F)の幅を増大させるステップと同時に前記トウ(F)のサイジングする前記ステップを実行するために、サイジング剤を含有する水性液体によって規定される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機フィラメント、より好ましくは炭素繊維フィラメントのトウを伸ばすための方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、好ましくは、織物の非編組フィラメントのトウを巻きつける前にそのトウを伸ばしてコイルを形成する方法、またはトウの幅の増大から利益を得るプロセスにおけるその直接的な使用、例えば単糸シートの予備含浸システム(「プリプレグ」)に関する。
【0003】
したがって、本発明は、複合材料を強化するための織物繊維の製造および加工においてその主な用途を見出す。
【背景技術】
【0004】
実際、複合材料中に強化繊維のトウを使用することは、典型的にはシート中にそれらの均質で配向された分布を生じさせ、次いでその後硬化される樹脂を含浸させることを含む。この均一な分布は、典型的には、所定の方向に従って次いで連続する層にわたって異なる配向で交差した1から24Kのトウ織り、またはそのような繊維トウの並列配置のいずれかからなる。
【0005】
Kはトウを構成する何千もの繊維の量を意味する。
【0006】
1-、3-、6-、12-、または24-kトウでさえも「スモールトウ」として定義され、一方、例えば、織物の前駆体繊維によって製造される炭素繊維に典型的な48-から1000-kトウなどのより大きなトウは 「ラージトウ」として定義される。
【0007】
従来技術では、前駆体繊維トウが大きいほど、その製造は安価である。しかし、ラージトウ、例えば320kトウの最終用途は、過度の厚さを有するであろう強化シートの製織に確実に拡張することはできず、最終用途に適合しない材料の無駄が生じる。その結果、これらの繊維トウの製造は、強化繊維が次に非常に短い片に切断(細断)され、粉砕され、または厚いフェルトを製造するために使用されるという限定された最終用途を意図している。
【0008】
従来技術では、経済的理由および最終製品の安定性の理由から、多数のトウを製造する際の製造業者の便利さと、製造コストがより高くなる、少数のトウ(3~24K)を並べた配置や製織から得ることができるシートの均一性および軽さとを兼ね備えることは、したがって、困難である。
【0009】
このため、実際には、複合材料の特定の重量を軽くして上記の要件を満たすことを可能にするために、製造業者によって(おそらくインラインでも)製造される単一の繊維トウを伸ばす/広げることができる繊維加工システムが長年にわたって開発されてきた。
【0010】
既知の解決策は、繊維展延作用の根底にある「物理的」原理に従って様々なカテゴリに分類され、そのいくつかの例を以下に示す。
【0011】
第1の例は、米国文書US2014/0115848から知られており、個々の繊維を互いから離すために個々のエアジェットが通過するようにトウに対して横方向に加圧空気を送る複数のノズルの作用によってトウが伸ばされる。
【0012】
この方法は、機能的ではあるが、個々の繊維フィラメント間に望ましくないインターレースおよびねじれを生じさせることなく展延効果を最適化するためにパワーおよびその結果として完全に避けられないエアジェットの乱流を調整することはしばしば非常に難しいので繊維にとって非常に侵襲的である。
【0013】
別の解決策は文書US7536761から知られており、トウの展延は、かなり制限され、炭素繊維の導電性を利用することによって得られる。繊維と接触している電極に印加される電圧は電流を発生させ、それは繊維を非常に急速に加熱する抵抗として作用させ、それに適用されるサイジング(sizing)の「接着」効果を減少させ、それは熱に敏感である。
【0014】
加熱されたトウは、熱サイジングによって引き起こされる繊維間のより低い凝集効果のために、より容易に伸びる。
【0015】
この方法は、トウの非常に限られた展延を可能にすることに加えて、実施するのが複雑であり、そして明らかに繊維に侵襲的である。
【0016】
その代わりに、中国文献CN203729003は、繊維を伸ばすための超音波を使用するシステム、その効果が制限され時には制御するのが難しい解決策を示している。
【0017】
さらに、中国文献CN104674485には、代わりに、カレンダー加工によって繊維に機械的に作用する束展延システムが示されている。これは、公知のように、機械的作用およびカレンダーと繊維自体との間に生じる摩擦による繊維の品質および性能に大きく影響し得る。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を除去することができる、織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機繊維フィラメントのトウを伸ばすための方法を提供することである。
【0019】
特に、本発明の目的は、非常に効果的で繊維/フィラメントに対してそれほど侵襲的ではない、織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機繊維フィラメントのトウを伸ばすための方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、容易に実施することができそして減少したエネルギー消費を可能にする、織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機繊維フィラメントのトウを伸ばすための方法を提供することである。
【0021】
前記目的は、一つ以上の請求項の技術的特徴を有する、織物の非編組フィラメント、好ましくは化学または無機繊維フィラメントのトウを伸ばすための方法によって達成される。
【0022】
特に、この方法は、それ自体の主方向に沿って延びる織物の非編組フィラメントのトウを提供することを含む。
【0023】
「織物の非編組フィラメント」という表現は、トウが「織られていない」、すなわち、フィラメントは並んで配置され、機械的/構造的に結合していない(以下に説明するように、それらは方法の実行中に除去すべきサイジング剤を用いて化学的に結合され得る)ことを意味することを意図していることに留意すべきである。
【0024】
このトウの主方向を横切る断面は、所定の厚さおよび所定の幅(すなわち初期の厚さおよび幅)を有する。
【0025】
好ましくは、所定の幅または初期の幅は少なくとも1cmに等しい。
【0026】
トウは移動経路に沿って供給され、次いでその幅を増大させ、かつその厚さを減少させるために伸ばされ、かくして展延トウを画定し、続いてバスから引き出される。
【0027】
本発明の一態様によれば、伸ばすステップは、トウをバスに浸漬することを含む。好ましくは、バスはトウが浸漬される水性バスである。
【0028】
有利には、このようにして、フィラメントは非外傷性および潤滑性の環境に保たれ、その結果、トウを伸ばす動きはフィラメントに対してそれほど侵襲的ではなく、それらを損傷しない。
【0029】
好ましくは、個々のフィラメントを並進させ並置し、それによってトウを恒久的に伸ばすために、トウを主方向に対して横方向に横切る横方向の流れを規定する一連の波がバス中に生成される。
【0030】
言い換えれば、規則正しく脈動する乱流がバス内でトウの近くに発生し、その結果、液体はトウ自体を2つの相対する方向に数回通過し、この通過によってフィラメントの移動およびトウの展延を引き起こす。
【0031】
本発明の一態様によれば、バスに入るトウおよび/またはバスから抽出された展延トウはアンサイズドである(unsized)。
【0032】
言い換えれば、トウを伸ばすステップは、アンサイズドの(または部分的にサイジングされた)トウ上で行われる。
【0033】
好ましくは、波の発生はトウの近くでバスを攪拌することによって得られる。
【0034】
有利には、トウに当たる波はトウ自体の近くで発生するので、それらは(適用に関して)非常に局在化され高出力である。
【0035】
これに関して、一連の波を生成するステップは、好ましくは、第1の方向にトウを横切る一連の第1の波と、第1の方向とは反対の第2の方向にトウを横切る一連の第2の波とを交互に生成することを含む。
【0036】
明らかに、それらの作用がトウを「伸ばす」ために、両方の(第1および第2の)方向は、トウの主方向および幅の両方に対して横方向である。
【0037】
好ましくは、トウは、複数の貫通孔を備えた支持体上で移動経路に沿って供給される。
【0038】
したがって、第1の波は、好ましくは、前記第1の方向に沿って前記孔を出る(バスの)液体を送り込むことによって(すなわち、トウに対して孔の反対側に過圧を発生させることによって)生成される。
【0039】
同様に、第2の波は、前記第2の方向に沿って前記孔に入る液体を吸い上げることによって(すなわち、トウに対して孔の反対側に負圧を発生させることによって)生成される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
さらなる特徴および関連する技術的利点は、添付の図面に示すように、織物の非編組フィラメントのトウ、好ましくは化学繊維または無機繊維のトウを伸ばすための方法および装置の、好ましいが非排他的な実施形態の、以下の例示的な、したがって、制限するものではない説明からより明らかになるであろう。
図1】本発明による方法の実施中に、織物の非編組フィラメントのトウを伸ばすための装置の概略図を示す。
図1a図1の詳細図である。
図2図1の装置の詳細の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付の図面を参照すると、数字1は、本発明による方法を実施するように適合された織物の非編組フィラメントのトウFを伸ばすための装置を示す。
【0042】
本明細書では、「織物のフィラメント」という表現は、それらの構造、長さ、強度および弾性のために、製織および/または樹脂仕上げプロセスによって、布地に変換されおよび/または複合材料を製造するために加工されるトウまたはヤーンの製造のために繊維産業で使用される粘り強く柔軟な糸を紡糸により互いに薄く結合する能力を有する繊維製品のセットを定義することを意図している。
【0043】
また、「非編組」という用語は、トウが互いに実質的に並んで/平行に配置され、織り合わせも撚り合わせも織りもされておらず、結果として構造的/機械的な観点から実質的に束ねられていないフィラメントからなることを意味することを意図していることに留意されたい。
【0044】
好ましくは、本発明による方法は、化学または無機繊維フィラメントの加工に用途を見出す。
【0045】
本明細書によれば、「化学繊維」(またはテクノファイバ)は、それらが人工または合成のいずれであっても化学的性質の全ての繊維、例えばセルロース、ポリオレフィン、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリアクリル繊維など、と見なされる。
【0046】
本明細書では、他方、「無機繊維」は、鉱物または無機物質から製造された繊維、例えばガラス繊維、金属繊維、金属化繊維および炭素繊維など、を分類することを意図している。
【0047】
特に、実際、本発明による方法は、炭素繊維の加工においてその主な好ましい用途を見出す。
【0048】
したがって、この方法は、それ自体の主方向Aに沿って延びる織物の非編組フィラメントのトウFを提供することを含む。
【0049】
前述のように、最初に提供されるトウFはアンサイズドである。
【0050】
トウFは、所定の厚さ「s1」および所定の幅W1、W2、W31を有する主方向Aを横切る断面(section)(図1に概略的に示す)を有する。
【0051】
好ましくは、前記所定の幅(または初期の幅)は少なくとも1cmに等しい。この値は、48KカウントトウF(48K-count tow)に対応することが好ましく、下限を下回ると、本発明による方法は(それを排除することはないが)その効果を減少させる。
【0052】
「トウ」という用語は、オペレータが取り扱うことができる単一の要素を確定するように並置された/一緒にグループ化されて配置された個々のフィラメント(または繊維)のセットを定義することを意図していることに留意すべきである。したがって、個々のフィラメント(または個々の繊維)の断面分布は、上述の断面の厚さs1、s2、s3および幅W1、W2、W3を規定する。
【0053】
トウFを提供するステップは、好ましくは、適切な支持体3上の巻き軸の周りに巻き付けられたトウF自体からなるコイル2を提供することを含むことに留意されたい。
【0054】
したがって、コイル2は、支持体3に対して前述の巻き軸を中心に回転可能であり、その結果、コイル2は「ほどける」ことができる。
【0055】
一旦配置されると、トウFは次に所定の移動経路Pに沿って供給される。
【0056】
供給は、好ましくは40~500kgの重量を有するコイル2をほどき、トウFをそれを前進させるためにそれを牽引状態に保つ一連の戻しローラおよびテンション手段4に通すことにより行われることが好ましい。
【0057】
代わりに、第2の供給方法は、容器が一杯になるまでトウFが規則正しくジグザグに配置されている当該容器の使用を含む。容器は、トウが24Kを超え、大きな寸法(例えば、約1m×1m×1,5m)を有する場合に一般に使用される。
【0058】
本発明の一態様によれば、トウFは、特別な展延ステーション5を介して移動経路Mに沿って展延または拡幅作用を受ける。
【0059】
前述の伸ばすステップは、幅W2および厚さs2を有する展延トウを得るように、その厚さs1を減少させながら、トウFの幅W1を増大させるという目的を有する。
【0060】
好ましくは、この方法で実行される伸ばすステップは連続して2以上である。好ましい実施形態では、伸ばすステップ(したがって展延ステーション5)は連続して配置された少なくとも2つである。
【0061】
したがって、この実施形態では、第1の展延ステーション5は、トウFを幅W1から(より大きい)幅W2に、そして厚さs1から(より小さい)厚さs2に持って行き、展延トウST1を提供する。
【0062】
第2の展延ステーション5は、トウFを幅W2から幅W3(W2より大きい)に、そして厚さs2から厚さs3(s2より小さい)に持って行き、展延トウST2を提供する。
【0063】
しかしながら、他の実施形態では、伸ばすステップは2以上でもあってもよい。
【0064】
定量的には、好ましくは、各伸ばす工程は少なくとも初期幅の50%以上の幅の拡大をもたらす。
【0065】
より正確には、(第1/第2ステップにおける)拡幅は初期幅の3~20倍の範囲であり、後続のステップは同じ全幅であってもトウの厚さを均一に再分布させるのにより効果的であり得る。
【0066】
伸ばすステップは、好ましくは「直接」連続で、すなわち戻り工程以外の他の工程がトウFに対して行わることなく、実行されることに留意されたい。
【0067】
この観点から、展延ステーション5は互いに直接に隣接していることが好ましい。
【0068】
言い換えれば、第1の展延ステーション5は第2の展延ステーション5のすぐ上流に配置されている。
【0069】
したがって、2つの展延ステーション5の間に(任意に)存在する唯一の装置は、戻りローラまたは供給部材であるが、好ましくは、1つの展延と次の展延との間に機械的、化学的または熱的工程は行われない。
【0070】
トウの幅をよりよく制御するために、複数の電動ローラに基づくテンション制御を導入することも可能であることに留意されたい。
【0071】
伸ばすステップに関して、本発明の一態様によれば、まず第一に、トウFをバス6、好ましくは水性(すなわち、水、好ましくは脱塩水ベース)バス6に浸漬すること、および展延トウST1、ST2を得るために、主方向Aに対して横方向にトウFを横切る一連の横波8a、8bを生成することを含む。
【0072】
続いて、展延トウST1、ST2がバス6から抽出される。
【0073】
本発明の一態様によれば、バス6に入る(または浸漬される)トウFおよび/またはバス6から抽出された展延トウST1、ST2はアンサイズドである。
【0074】
「アンサイズド(unsized)」という用語は、いわゆるアンサイズド、すなわち、トウFの樹脂仕上げの後続ステップを容易にするために織物および炭素繊維加工産業において使用されるサイジング(またはサイジング剤または接着剤)を欠いたフィラメントまたはトウの状態を指す。
【0075】
したがって、バス中のトウFは、サイジングされたトウであってそこからバス6がサイジングを除去するトウ、バス6がサイジングを適用しないアンサイズドのトウ、またはサイジングを欠いたバスにおけるアンサイズドのトウの結果であり得る。
【0076】
したがって、重要なことは、バスの間にトウが十分にサイジングされていないことである。
【0077】
このようにして、トウFは完全にサイジングされていないので(すなわち、アンサイズドであるので)、フィラメントは互いに対して自由に動くことができ、したがって伸ばすステップはフィラメントを並べて配置するように物理的かつ「堅固に」フィラメントを並進させることを含む。
【0078】
構造的には、バス6は、好ましくはそれぞれが所定量の液体で(好ましくは前記エマルジョンで)満たされた1つまたは複数のタンク7によって画定される。
【0079】
トウFは、牽引戻りシステム(すなわち、ローラ)によってタンク7(または複数のタンク)内に突入され、そして展延はバス6内で行われる。
【0080】
好ましくは、実際には、主方向Aに対して横方向にトウFを横切る一連の横波8a、8bがバス6内に発生する。
【0081】
言い換えれば、この方法は、個々のフィラメントを分離して並べて配置するために、バス6内でトウFを横切る(すなわちトウFを横断する)複数の液体流または流れを発生させることを含む。
【0082】
有利には、波/流れの液圧作用はフィラメントの非常に効果的で同時にあまり外傷性/侵襲性のない分離を可能にし、それにより性能を最適化し従来技術の問題を最小にすることに成功する。
【0083】
好ましくは、一連の波8a、8bを得るために、バス6はトウF(またはトウ(F)の通過領域)の近傍で攪拌される。
【0084】
言い換えれば、トウFに乱流が発生し、トウFを互いに逆方向に横切ってフィラメントを分離する前述の波8a、8bが発生する。
【0085】
波の発生が適切に制御されているので、与えられる乱流は整然としている、すなわち適切に局在化および指向され、パルス化された一連の波8a、8bによって規定され、すなわちトウFの各部分は周期的に異なる方向を向いている波の作用を受けるようになっていることに留意すべきである。
【0086】
より正確には、波8a、8bを生成するステップは、交互に、トウFを第1の方向D1に横切る一連の第1の波8aと、トウFを第2の方向D2に横切る一連の第2の波8bとを生成することを含む。
【0087】
第2の方向D2は第1のD1と実質的に反対である。両方向(第1D1および第2D2)は、トウFの主方向Aおよび幅W1、W2、W3を横切る。
【0088】
言い換えれば、トウFは、互いに対向する第1の面9aと第2の面9aとを有する。
【0089】
第1の波8aは、第1の面9aから第2の面9bまでトウFを横切る。
【0090】
第2の波8bは、第2の面9bから第1の面9aまでトウFを横切る。
【0091】
好ましくは、バス6を「攪拌する」ために、展延ステーション5は適切な攪拌装置8を含む。
【0092】
このような攪拌装置8は、トウFが供給される複数の貫通孔11を備えた少なくとも1つの支持体10を含む。
【0093】
より正確には、支持体10は少なくとも部分的にバス6内に埋め込まれており、トウFは少なくとも支持体10の1つの浸漬部分10aで支持体10に対して当接されている。
【0094】
言い換えれば、トウFの第1の面9aは、支持体10の1つの浸漬部分10aで支持体10に当接されている。
【0095】
使用時、トウFは支持体10の上方で移動経路Pに沿って供給される。好ましくは、支持体とトウFとは互いに一体的である。
【0096】
好ましい実施形態では、実際、トウFが移動経路Pに沿って進むときにそれをドラッグすることによって支持体10がトウFを移動させる。
【0097】
好ましくは、支持体10は、トウFの主方向を横切る、好ましくは直交する軸を中心に回転可能な回転ドラム12によって画定される。
【0098】
好ましい実施形態では、ドラム12の回転軸はコイル2の巻き解き軸と平行である。
【0099】
有利には、このようにして、ドラム12に巻かれたトウフィラメントをそれに対して横方向にスライドさせる傾向がある力が生じない。
【0100】
好ましくは、第1の波8aおよび第2の波8bを生成するために、方法は、それぞれ、第1の方向D1に沿って孔11を出るバス液を送り込むことと、前記第2の方向D2に沿って前記孔11に入るバス液を吸い上げることとを含む。
【0101】
したがって、液体を送り込むステップによって、第1の波8aまたは流体の流れが孔11を出て、次に第1の面9a(支持体10に当接している)から第2の面9bまでトウを通過する。
【0102】
反対に、吸引ステップは、トウFに対して支持体10の遠位側(すなわちドラム12に対して半径方向外側)に第2の波8bまたは流体の流れを生じさせ、第2の面9bから第1の面9aにトウF自体を通過させ、そして孔11へ戻る。
【0103】
言い換えれば、展延ステーション5において、支持体10は、トウFと、それぞれの孔11から第1の方向D1に流体を送り込み、さらなる孔11から第2の方向D2に沿って流体を吸い上げるように構成された攪拌部材13との間に配置される。
【0104】
好ましくは、同じ瞬間に、第1の波8aおよび第2の波8bが、支持体10と接触しているトウFの異なる部分に同時に発生する。
【0105】
したがって、好ましい実施形態では、攪拌部材13はドラム12の内側に配置される。
【0106】
したがって、第1の方向D1および第2の方向D2は、それぞれ、径方向外向きの主成分と、径方向内向きの主成分とを有する。
【0107】
したがって、使用時、一連の波8a、8bを生成するステップは、
回転ドラム12に部分的に巻き付けることによって移動経路Pに沿ってトウFを供給するステップと、
ドラム12の孔11を出る液体を(前記第1の方向(D1)に沿って)送り込み、前記孔11に入る液体を(前記第2の方向(D2)に沿って)吸い上げることによって複数の第1の波8aおよび第2の波8bを生成するステップと、を含む。
【0108】
好ましくは、同じ瞬間に、この方法は、
ドラム12に沿って角度的に離間した(複数の孔11から出る)複数の第1の波8aと、
ドラム12に沿って角度的に離間し、(異なる複数の孔11から出る)第1の波8aに対して位相がずれている複数の第2の波8bと、を生成することを含むことに留意すべきである。
【0109】
好ましい実施形態では、攪拌部材13は、ドラム12の内側に配置され、それと回転可能に関連するローブ付きローラ14を備える。好ましくは、ローブ付きローラ14はドラム12と同軸である。
【0110】
「ローブ付きローラ」14は、好ましくは少なくとも部分的に丸みを帯びた、複数の溝14bおよび頂部14aを有するその周囲に沿って円周方向に延びるローラを規定することを意図している。
【0111】
第1の波8aおよび第2の波8bを発生させるために、ローブ付きローラ14はドラム12とは異なる回転速度で、好ましくは逆回転でドラム12内で回転される。
【0112】
このようにして、頂部14aが孔の隣を通過する場合に、それは流体をそこから(第1の波8a)送り込む傾向があり、同時に第2の波8bが生成される、溝14bに面する隣接する孔で負圧を生成する。
【0113】
あるいは、攪拌部材は、例えばドラムに対して偏心しているローラの形状、またはドラムの内周に配置された攪拌要素アレイのような異なる形状を有してもよいことに留意すべきである。
【0114】
有利には、これは空気圧式ブローまたはポンプシステムまたは加熱システムが必要ではなく、単に回転作動システム(ローブ付きローラのみ、ドラム14はアイドル状態であることが好ましい)を必要とするので、単純かつ非常に安価な方法でトウF付近に位置する乱流の発生を可能にする。
【0115】
好ましくは、トウFが初期にアンサイズドである第1の実施形態では、方法はまた、トウFをサイジングするステップを含む。
【0116】
このサイジングするステップは、前記伸ばすステップと同時に又は前記伸ばすステップに続いて行われる。
【0117】
より好ましくは、サイジングするステップはバス6内で行われる。
【0118】
これに関して、バス6は、サイジング剤を含有する水性液体によって規定されるのが好ましい。好ましい実施形態では、バス6は、樹脂(限られた量)、好ましくはエポキシ樹脂と(脱塩)水のエマルジョンで作られるのが好ましい。
【0119】
有利には、このようにして、バス(すなわちエマルジョン)はトウFのためのサイジング(またはベース層)を規定し、その上に樹脂が(後続プロセスにおいて)好ましくは堆積され、それは複合材料としての使用に適する。
【0120】
あるいは、トウFは、主としてその取扱い性を容易にするために、最初にサイジングされてもよい。
【0121】
この場合、バス6は、好ましくは、サイズを除去するのに適した溶媒を含み、フィラメントを広げることを可能にする。
【0122】
上述の2つの実施形態は相補的であり得る、すなわち溶媒によるサイズの除去の際にサイジングステップを含むことに留意されたい。
【0123】
展延後に、展延トウFT1、ST2を乾燥するステップをさらに設けることが好ましい。
【0124】
乾燥ステップは、図1に概略的に示されるように、好ましくは、展延ステーション5の下流に動作可能に配置された適切な乾燥ステーションまたはオーブン15内で行われる。
【0125】
最後に、製造業者によって容易に保管することができる広げられたコイルCを得るために、展延トウST2を巻きつけるステップが提供されることが好ましい。
【0126】
これに関して、展延トウST2をシートまたはフィルム16の材料と結合するステップが、前記巻きつけるステップの前に提供されて動作可能に実行されることが好ましいことに留意されたい。
【0127】
したがって、展延装置1は、好ましくは、前記工程を実行するように構成された結合ステーション17を備える。
【0128】
本発明は意図した目的を達成し重要な利点を得る。
【0129】
実際、局在化された(そして分散された)水力学的乱流によってトウの展延を行うことは、過度の応力または繊維の破損を生じることなく、トウの展延に関して優れた結果を可能にする。
実際、水中環境における波の純粋に水力学的な作用は、この種の環境における作用の典型的な減衰と併せて、大きな強さの水流を利用することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】
【文献】US2014/0115848
【文献】US7536761
【文献】CN203729003
【文献】CN104674485
図1-1a】
図2