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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】EL表示パネルの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/20 20230101AFI20230424BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230424BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230424BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H10K71/20
H10K59/10
G09F9/00 338
G09F9/30 365
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022020013
(22)【出願日】2022-02-11
(62)【分割の表示】P 2018059299の分割
【原出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2022065074
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2017069113
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017096359
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017152128
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017209417
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】高原 博司
(72)【発明者】
【氏名】永田 有紀
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071267(JP,A)
【文献】特開2016-134236(JP,A)
【文献】特開2003-279326(JP,A)
【文献】特開2009-063711(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164598(WO,A1)
【文献】特開2007-239098(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の表示部と、第2の色の表示部とを有するEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の表示部と前記第2の色の表示部に、第1の発光層を形成する発光層形成手段と、
前記第2の色の表示部の前記第1の発光層に、第1の光を照射して前記第1の発光層を改質する光発生手段と、
前記第1の光を照射することにより発生する第2の光を検出する光検出手段と、
前記第1の発光層上に、第2の発光層を形成する発光層形成手段を具備することを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項2】
第1の色の表示部と第2の色の表示部とを有するEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の表示部と前記第2の色の表示部に、第1の発光層を形成する発光層形成手段と、
保持容器と、
前記第2の色の表示部の前記第1の発光層に、第1の光を照射して前記第1の発光層を改質する光発生手段と、
前記第1の発光層が発生する第2の光を検出する光検出手段と、
前記第1の発光層上に、第2の発光層を形成する発光層形成手段と、
前記保持容器に配置された前記第1の光を透過する光透過窓を具備し、
前記保持容器内に、前記EL表示パネルが配置され、
前記第1の光は、前記光透過窓を透過して、前記第1の発光層に照射されることを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項3】
第1の色の表示部と第2の色の表示部とを有するEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の表示部と前記第2の色の表示部に、第1の発光層を形成する発光層形成手段と、
第1の光を前記EL表示パネルの第1の面から、前記第2の色の表示部の前記第1の発光層に照射して前記第1の発光層を改質する光発生手段と、
前記EL表示パネルの第2の面から、前記第1の発光層が発生する第2の光を検出する光検出手段と、
前記第1の発光層上に、第2の発光層を形成する発光層形成手段を具備することを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項4】
前記第1の光は、紫外線領域の波長のレーザ光であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項5】
前記光発生手段は紫外線領域の波長のLEDを有し、
前記LEDは、EL表示パネルの前記色の表示部に対応して配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項6】
前記色の表示部に対応してマスクを位置決めする位置決め手段を更に具備し、
前記第1の光は、前記マスクを介して、前記第1の発光層に照射されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項7】
前記第1の光は、レーザ光であり、
前記第1の光は、ガルバノミラーにより、前記第1の発光層に照射されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項8】
前記第1の光と前記第2の光を分離する光分離手段を更に具備することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項9】
前記光検出手段は前記第2の光を受光する受光部を有し、前記受光部は角度を可変できることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項10】
前記光検出手段の出力により、前記第1の光の強弱と、前記第1の光の移動速度のうち少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL表示パネルに関し、特に、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence。以下、有機ELと呼ぶことがある。)素子などを有し、カラー画像表示に適するEL表示パネルとEL表示装置、EL表示パネルの製造方法およびEL表示パネルの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マトリックス状に有機EL素子が配置されたEL表示パネルが、スマートフォン、テレビの表示パネルとして商品化されている。
【0003】
図38は、従来のEL表示パネルの構造図である。画素電極15の周辺部には土手(バンク)95が形成されている。土手95は、ファイン蒸着マスク251が画素電極15等に接触することを防止する。
【0004】
EL表示パネルは、EL素子22が表示画面36(図2参照)にマトリックス状に配置されている。EL素子22は、正孔輸送層(HTL : hole transport layer)16、発光層(EML : emitter layer)17、電子輸送層(ETL : electron transport layer)18などの有機材料の積層構造を有し、この積層構造を挟持する画素電極15(15R、15G、15B)と、光透過性を有するカソード電極19で構成される。EL表示パネルにソースドライバ回路32(図2参照)、ゲートドライバ回路31(図2参照)を実装してEL表示パネルが構成される。
【0005】
図39は、従来のEL表示パネルの製造方法の説明図である。蒸着の際、赤(R)色、緑(G)色、青(B)色のEL材料を、対応する画素に蒸着させるために、ファイン蒸着マスク251が使用される。ファイン蒸着マスク251(251R、251G、251B)は、対応する画素形状にあわせた穴が開口された金属または樹脂からなるマスクである。
【0006】
図39(a)に図示するように、画素電極15には、正孔輸送層16が形成される。次に、図39(b)に示すように、赤色のファイン蒸着マスク251Rが配置される。赤色のファイン蒸着マスク251Rは、赤色の画素電極15Rに対応する箇所が、開口されている。赤色のファイン蒸着マスク251Rは、他の色の画素電極(緑色の画素電極15G、青色の画素電極15B)に対応する箇所は開口されていない。
【0007】
以上のように、ファイン蒸着マスク251Rが配置された状態で、蒸発源から赤色の発光層材料172Rが蒸発され、マスク251Rの開口部から、赤色の画素37Rに、赤色の発光層材料172Rが蒸着される。蒸着された赤色の発光層材料は、赤色の発光層17Rとなる。
【0008】
緑色画素も赤色画素と同様に、図39(c)に図示するように、緑色のファイン蒸着マスク251Gが配置され、マスク251Gの開口部を介して、緑色画素37Gに緑色の発光層17Gが形成される。
【0009】
青色画素も赤色画素と同様に、図39(d)に図示するように、青色のファイン蒸着マスク251Bが配置され、ファイン蒸着マスク251Bの開口部を介して、青色画素37Bに青色の発光層17Bが形成される。
【0010】
図39(e)は図39(d)の次の工程を示す説明図である。赤、緑、青の発光層17の上方に、電子輸送層18が蒸着される。また、電子輸送層18上にマグネシウム・銀(MgAg)などからなるカソード電極(陰極)19が形成される。図39(f)に図示するように、カソード電極19上には、封止層20が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-235138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のEL表示パネルでは、赤色、緑色、青色のEL素子の発光層17の形成時に、赤色、緑色、青色のファイン蒸着マスク251を使用する。
【0013】
しかし、ファイン蒸着マスク251の位置ずれが発生すると、画素37に混色が発生する。また、蒸着マスクの位置決め機構および装置の価格が高いという課題があった。また、蒸着マスクの位置決めに長時間を必要とするため製造タクトが長くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、EL表示パネルの製造において、赤色、緑色、青色等の少なくとも1つの色の発光層の形成工程において、複数の色の画素37(図2参照)と共通に、連続した一色の発光層17を形成する。発光層は主として、ゲスト(ドーパント)材料とホスト材料の共蒸着により形成される。形成した発光層17に、発光層17を「改質」させるレーザ光を照射する。
【0015】
「改質」とは、発光層17等が消光するか、非発光となるか、もしくは、ほとんど発光しなくなることである。あるいは、発光層17等が、蒸発し除去されることである。
【0016】
また、「改質」とは、ゲスト材料のバンドギャップはホスト材料のバンドギャップよりも大きく、ゲスト材料とホスト材料のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の相対的な配置は、HOMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも低く、LUMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも高い、のうち少なくとも1つ以上の関係が発生することである。
【0017】
また、「改質」とは、ゲスト材料に紫外線等の光を吸収させ、ゲスト材料のバンドギャップを、可視光を発光するエネルギーギャップ領域よりも大きくすることである。
【0018】
また、「改質」とは、EL素子22を構成する膜層、または発光層17を構成する成分の少なくとも一部、例えばゲスト材料あるいはホスト材料が、分解または重合を生じるか、または分子構造に変化を生じ、物理的性質が変化することである。
【0019】
また、「改質」とは、EL素子22を構成する膜層、例えば発光層17のゲスト材料あるいはホスト材料が蒸発等し、蒸着された箇所から除去することである。あるいは、EL素子を構成する膜層が、変質すること、蒸発することにより除去することである。
【0020】
発光層17が、ゲスト材料あるいはホスト材料の共蒸着で形成されない単一の材料で構成される場合の「改質」とは、EL素子22または発光層17を構成する成分の少なくとも一部が、分解または重合を生じるか、または分子構造に変化を生じ、物理的性質が変化することである。また、EL素子22を構成する膜層、または発光層材料が蒸発等し、蒸着された箇所から除去されることである。あるいは、EL素子22を構成する膜層が、分解すること、または変質すること、または蒸発することにより除去されることである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ファイン蒸着マスク251を使用せずに発光層17を形成する。発光層17は、複数の色の画素に連続して共通に形成する。画素電極15位置の対応した発光層17にレーザ光59等を照射し、発光層17を改質して、画素37の発光層17の発光色を変化させる。
【0022】
ファイン蒸着マスク251を使用しないため、ファイン蒸着マスク251の位置ずれ課題が発生しないため、画素37に混色の発生がない。また、ファイン蒸着マスク251の位置決め機構および装置が不要であるため、製造装置のコストを削減できる。また、ファイン蒸着マスク251の位置決め時間がなく、製造タクトを短くできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図2】本発明のEL表示パネルのブロックおよび画素の等価回路図である。
図3】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図4】本発明のEL表示パネルの製造における蒸着装置とレーザ装置の説明図である。
図5】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
図6】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
図7】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図8】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図9】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図10】本発明の第1の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図11】本発明のEL表示パネルの製造装置の説明図である。
図12】本発明のEL表示パネルの製造装置の光照射器の説明図である。
図13】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図14】本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図15】本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図16】本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図17】本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図18】本発明のEL表示パネルの製造装置の転写装置の説明図である。
図19】本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図20】本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造方法の説明図である。
図21】本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図22】本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図23】本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図24】本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図25】本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図26】本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図27】本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図28】本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図29】本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図30】本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図31】本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
図32】本発明の他の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
図33】本発明のEL表示パネルの製造装置の説明図である。
図34】本発明のEL表示パネルの製造装置の動作の説明図である。
図35】本発明のEL表示パネルの製造装置の動作の説明図である。
図36】本発明のEL表示パネルの製造装置の動作の説明図である。
図37】本発明のEL表示パネルを用いた表示機器の説明図である。
図38】従来のEL表示パネルの断面構造図である。
図39】従来のEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書、図面において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には、同一あるいは類似の参照符号を付加する。また、各実施例で重複する説明は省略する場合がある。
【0025】
本明細書の実施例の説明では、他の実施例との差異事項あるいは異なる個所を中心として説明をする。本発明の実施例で記載された事項は、本明細書で記載する他の実施例に適用することができる。また、本明細書で記載する他の実施例と組み合わせることができる。
【0026】
本発明のEL表示パネルおよび表示装置は、表示画面36に、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bがマトリックス状に配置されている。しかし、本発明のEL表示パネルおよびEL表示装置は、マトリックス状に画素が配置されたものに限定するものではない。表示画面36に、複数の色の部分を有していれば本発明の技術的範疇である。たとえば、黄色画素37Y、青色画素37Bがマトリックス状に形成された表示パネルでもよい。また、画素がマトリックス状に配置された表示パネルに限定されるものではなく、所定の文字、形状を表示するEL表示パネルであっても良い。第1の色の表示部と、第2の色の第1の表示部とを有するEL表示パネルであればよい。
【0027】
また、本発明は、表示領域の一部にレーザ光等を照射して発光層材料等を改質するものであるから、発光する領域と改質され発光しない領域を有するEL表示パネル等も本発明の技術的範疇である。
【0028】
本発明のEL表示パネルの製造装置または製造方法において、「改質」は、形成したEL素子22、発光層17の一部に光を照射し、光を照射した箇所を「改質」するものであれば、どんなパネル構造、形態あっても、本発明の技術的思想は適用できる。たとえば、単色のキャラクタ表示のEL表示パネルにも適用できることは言うまでもない。
【0029】
本発明は、蒸着等の工程により発光層17を形成した後に、レーザ光などを発光層17に照射し、発光層17を「改質」するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、蒸着等の工程で、EL素子22、発光層17を形成しつつ、レーザ光などを発光層17に照射して、発光層17を「改質」してもよい。
【0030】
発光層17等へのレーザ光59の照射は、真空中で実施する。なお、20ppm以上200ppm以下の酸素を含む窒素あるいはアルゴン雰囲気中で実施してもよい。20以上200ppm以下の酸素中で改質を実施することにより、改質時間が短時間になる。
【0031】
図2は、本発明のEL表示パネルの構造図、および画素の等価回路図である。表示画面36には、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bがマトリックス状に配置されている。
【0032】
赤色画素37Rには画素電極15R、反射膜12Rが形成または配置されている。緑色画素37Gには画素電極15G、反射膜12Gが形成または配置されている。青色画素37Bには画素電極15B、反射膜12Bが形成または配置されている。
【0033】
トランジスタ21は、高温ポリシリコン(HTPS : High-temperature polycrystalline silicon)、低温ポリシリコン(LTPS : Low-temrature poly silicon)、連続粒界シリコン(CGS : Continuous grain silicon)、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS : Transparent Amorphous Oxide Semiconductors)、アモルファスシリコン(AS : amorphous silicon)、赤外線RTA(RTA : rapid thermal annealing)で形成したもののうち、いずれでもよい。
【0034】
図2(a)は、本発明のEL表示パネルの構造図であり、図2(b1)(b2)は、画素37の等価回路図である。図2(b1)は、画素37を構成するトランジスタ21をPチャンネルトランジスタで構成した場合の等価回路図である。図2(b2)は、画素37を構成するトランジスタ21をNチャンネルトランジスタで構成した場合の等価回路図である。画素37は、NチャンネルのトランジスタとPチャンネルのトランジスタの両方を用いて構成してもよい。
【0035】
画素37には、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)21a、薄膜トランジスタ21b、コンデンサ23、EL素子22が形成されている。スイッチ用トランジスタ21aはソースドライバ回路32が出力する映像信号を、駆動用トランジスタ21bのゲート端子に供給するスイッチ素子として機能する。駆動用トランジスタ21bはEL素子22に電流を供給する駆動用トランジスタとして機能する。
【0036】
各画素37のスイッチ用トランジスタ21aのゲート端子はゲート信号線34に接続され、スイッチ用トランジスタ21aのソース端子またはドレイン端子は、ソース信号線35、または駆動用トランジスタ21bのゲート端子と接続されている。
【0037】
駆動用トランジスタ21bのソース端子またはドレイン端子は、アノード電圧Vddが印加されている電極、またはEL素子22のアノード端子と接続されている。
【0038】
EL素子22のアノード端子は、駆動用トランジスタ21bのドレイン端子またはソース端子と接続され、EL素子22のカソード端子はカソード電圧Vssが印加されたカソード電極19と接続されている。
【0039】
本明細書では、駆動用トランジスタ21b、スイッチ用トランジスタ21aは、薄膜トランジスタとして説明するが、薄膜トランジスタに限定するものではなく、シリコンウエハに形成したトランジスタでもよい。トランジスタ21は、FET、MOS-FET、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタでもよい。
【0040】
TFT基板52の画素電極15の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去する。具体的には、TFT基板52を所定温度、例えば70~184℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0041】
図1で図示するように、EL素子22を構成するアノード電極(画素電極)15は、透明電極であるITOで形成される。画素電極15の下層には反射膜12が形成されている。反射膜12と画素電極15を電極として、コンデンサ23を形成してもよい。反射膜12は電極である必要はなく、光を反射する膜であればよい。たとえば、ダイクロイックミラーのように、多層膜からなる反射膜が例示される。
赤、緑、青色画素37で絶縁膜14の膜厚を異ならせることにより、赤、緑、青色画素37で保持容量Cを異ならせることができる。
【0042】
膜厚の測定には、真空下で使用でき、オングストロームオーダーの膜厚計測が可能な水晶振動子式膜厚計を用いる。水晶振動子の固有振動数は非常に安定している。このような性質を持つ水晶振動子に交流電場を印加すると、水晶振動子の固有振動数と交流電場の振動数が等しくなったところで共振現象が起こる。
【0043】
この水晶振動子表面に物質が蒸着されると、水晶振動子の固有振動数は低い振動数の方向に変化する。この変化量は蒸着物質の質量に比例する。つまり、共振周波数の変化を精度よく検出すれば、蒸着物の付着質量を膜厚に換算して膜厚が測定できることになる。
【0044】
水晶振動式膜厚モニターは、蒸着物の密度を入力し、z-ratioと呼ばれる水晶振動子と蒸着物質の音響インピーダンスの補正を行うパラメーターを入力、さらに、触針式の膜厚計やエリプソメーターによって膜厚を実測し、水晶振動子式膜厚計のモニター値のズレを補正(Tooling Factor)する必要がある。
【0045】
実際に水晶振動子に付着した蒸着物の質量を、オングストロームオーダーの膜厚として検出できる水晶振動子式膜厚計は、水晶振動子に入射する蒸着材料の量に非常に敏感になるため、膜厚補正した水晶振動子検出器の位置や角度の固定には十分に注意を払い、定期的にTooling Factorの再補正を行う必要がある。
【0046】
なお、画素電極15は、透明電極に限定するものでなく、アルミニウム、銀などの金属材料で形成しても良い。この場合、画素電極15が反射膜となる。また、反射膜12と画素電極15は積層して形成してもよい。
【0047】
本明細書では、絶縁膜14を、画素電極15と反射膜12間に形成するとしたがこれに限定するものではない。14は光透過性を機能として有すれば、いずれの材料であってもよい。たとえば、導電性を有していてもよい。
【0048】
絶縁膜14は、一例として平坦化膜(HRC)である。TFT基板52には、SiN膜が20nm~80nm、その上に、SiO膜が500nm~1000nm、SiN膜が300nm~500nm形成され、その上に、平坦化膜(HRC)が1000nm~5000nmの厚みで形成される。これらの膜を絶縁膜14としてもよい。
画素電極15Rは、図2の画素37Rが対応し、画素電極15Gは画素37Gが対応し、画素電極15Bは画素37Bが対応する。
【0049】
本発明の製造装置、製造方法、EL表示パネル等の技術的思想は、反射膜12がなく、陰極19を反射膜とし、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型のEL素子22にも適用可能である。
【0050】
TFT基板52は、トランジスタ21、画素電極15等が形成されたガラス基板である。なお、ガラス基板の代わりに樹脂からなる基板の場合もある。たとえば、ポリイミド樹脂で形成された基板であってもよい。また、ワニスを平面上に塗布し、硬化させた基板であってもよい。また、金属材料、セラミック材料からなる基板であってもよい。
【0051】
なお、本明細書では、TFT基板52に発光層17などを形成する例を例示して説明するが、本発明は、TFT基板52を用いたEL表示パネルに限定するものではない。たとえば、TFTが形成されていない単純マトリックス型EL表示パネルであっても良いし、固定の文字を表示するキャラクタ表示のEL表示パネルであっても良い。
【0052】
図1は、本発明のEL表示パネルの断面構成図である。TFT基板52の上にトランジスタ21などからなる画素37を形成し、その上に、一例として感光性樹脂よりなる平坦化膜28を設ける。反射膜12は、平坦化膜28の下層に形成しても良いし、平坦化膜28の上方に形成してもよい。
【0053】
平坦化膜28の上に、ITOまたはIZOからなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、赤色の画素電極15R、緑色の画素電極15G、青色の画素電極15Bを形成する。画素電極15は、平坦化膜28のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動用トランジスタ21bの一端子と導通させる。
【0054】
各画素電極15の下層に形成される絶縁膜14の膜厚は、EL素子の光学的距離Lを調整するための膜厚を有する。本発明は、複数色の画素電極15の下層の絶縁膜15において、いずれかの絶縁膜15の膜厚を異ならせた構成である。
【0055】
光学的距離(Optical Path Length)とは、光路長とも呼ぶ。実際に光が進む距離(物理的距離)に屈折率をかけたものである。なお、各色のEL素子を構成する各層の物質の屈折率は大きくは差がないため、各色のEL素子の光学的距離Lと物理的距離は相対的に比例する。したがって、光学的距離Lを物理的距離に置き換え、あるいは読み替えても良い。
【0056】
本発明は、複数色を発光するEL表示パネルにおいて、少なくも1つの色のEL素子に、複数の発光層を形成し、他の色のEL素子の発光層17と異ならせ、光学的距離Lを異ならせた構成である。また、本発明は、複数色を発光するEL表示パネルにおいて、少なくも1つの色のEL素子の光学的距離Lを、他の色のEL素子の光学的距離Lと異ならせた構成である。
【0057】
発光層17R(第1の発光層)が放出する光の主波長λ1nmは、発光層17G(第2の発光層)が放出する光の主波長λ2nmに比較してより長い。この主波長λ2は、発光層17B(第3の発光層)が放出する光の主波長λ3nmに比較してより長い。一例として、発光層17Rの発光色は赤色であり、発光層17Gの発光色は緑色であり、発光層17Bの発光色は青色であるとする。
【0058】
図1に図示する実施例では、赤の画素電極15R上には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。反射膜12Rとカソード電極19Rとの間の距離L1が赤色のEL素子22の光学的距離である。緑の画素電極15G上には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。反射膜12Gとカソード電極19Gとの間の距離L2が緑色のEL素子22の光学的距離である。青の画素電極15B上には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。反射膜12Bとカソード電極19との間の距離L3が青色のEL素子22の光学的距離である。
【0059】
赤の画素電極15R、緑の画素電極15G、青の画素電極15Bの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが共通に形成されている。発光層17Rは、複数の色の画素(赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37B)に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。同様に、発光層17Gは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成され、発光層17Bは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。発光層17R、発光層17G、発光層17Bは、ラフ蒸着マスクを使用して、表示画面36の全体に形成されている。なお、ラフ蒸着マスクは、表示画面36に開口部を有し、画素単位の開口部を有さないマスクである。
【0060】
赤色の波長は波長が最も長く、青色の波長は波長が最も短く、緑色の波長は、赤色と青色の波長の中間である。したがって、各色で最適な光学的距離Lは、赤色の光学的距離L1 > 緑色の光学的距離L2 > 青色の光学的距離L3となる。ただし、干渉次数は、赤色、緑色、青色で同一次数としている。
【0061】
本発明のEL表示パネルは、光取り出し側の電極には、透過性の金属膜(MgAg19)を形成し、光取り出し側と逆側には反射膜12を形成する。反射膜として高反射金属である銀(Ag)を用いる。また、光学的距離Lに関して、L=(2m-(φ/π))×(λ/4)を満たすことで、取り出したい波長λの光を正面方向に集光させている。φは反射膜における反射時の位相シフト[rad]、干渉次数mは0又は正の整数であり、m=0の時に光学的距離Lは式を満足する正の最小値をとる。λは発光波長である。
【0062】
干渉次数mは、0又は1を選択する。干渉次数0の場合は、EL素子を構成する膜厚が薄く、使用する有機材料量を削減できるため、低コスト化を実現できる。また、視角方向による色変わりが発生しにくい。
【0063】
画素電極15上には、正孔輸送層16が形成されている。画素電極15と正孔輸送層16間に正孔注入層(HIL:Hole injection layer、図示せず)を形成してもよい。
正孔注入層は、正孔輸送層16のHOMO準位と陽極の仕事関数との間にHOMO準位を有し、陽極から有機層への掘る注入障壁を下げる働きをする。
【0064】
このような正孔注入層を構成する材料としては、例えば、ベンジジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0065】
画素電極15の正孔輸送層16の膜厚は、赤色、緑色、青色の画素37で異ならせてもよい。たとえば、画素電極15R上に正孔輸送層16Rを形成し、画素電極15G上に正孔輸送層16Gを形成し、画素電極15B上に正孔輸送層16Bを形成し、それぞれの正孔輸送層16の膜厚を異ならせる。
【0066】
本発明の第1の実施例のEL表示パネルは、図1に図示するように、画素電極15の上方には、赤色の発光層17R、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bが形成されている。
【0067】
「改質」する発光層17、たとえば、発光層17R、発光層17Gは、ホスト材料とゲスト材料との混合物を含んでいる。発光層17R、発光層17Gは、少なくとも、ホスト材料またはゲスト材料のいずれかが異なっており、発光色が互いに異なっている。
【0068】
発光層17Rが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Gの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。発光層17Gが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
図1において、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは改質されている。また、画素電極15Bの上方の発光層17Gも改質されている。
【0069】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rは、赤色で発光する。画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは発光しない。画素電極15Gの上方の発光層17Gは、緑色で発光する。画素電極15Bの上方の発光層17Gは発光しない。
【0070】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rと比較して、発光するゲスト材料をより高い濃度で含有している。
【0071】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料のほとんどは消光するか、または励起されない。または、画素電極15Rの上方の発光層17Rは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方が小さい。
【0072】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、発光するゲスト材料を、より高い濃度で含有している。画素電極15Bの上方の発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するかまたは励起されない。
【0073】
または、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと電気的特性が異なっている。画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方がより小さい。
【0074】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Bの上方の発光層17Gが含んでいる発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するか、または励起されない。
【0075】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは、画素電極15Rの上方の発光層17Rと比較して、発光層17Rの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。画素電極15Bの上方の発光層17Gは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gと比較して、発光層17Gの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。
【0076】
本明細書では、画素電極15の上方に正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18を形成し、共通電極としてのカソード電極19形成された構造のEL素子22を有するEL表示パネルを例示して説明するが、これに限定するものではない。画素電極15の上方に電子輸送層18、発光層17、正孔輸送層16を形成し、共通電極としてのカソード電極19が形成された逆構造のEL素子22を有するEL表示パネルでもよい。
【0077】
逆構造のEL素子22の場合は、本発明の図面および本明細書とその説明において、正孔輸送層を電子輸送層と置き換える必要がある。また、正孔注入層を電子注入層と置き換える必要がある。
【0078】
逆構造のEL素子22の場合は、図1図14図16図22図24図26図28図30などの本発明のEL表示パネルの構造断面図、製造方法の説明図において、正孔輸送層16は電子輸送層18に、電子輸送層18は正孔輸送層16に図を変更する必要がある。
【0079】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは、本発明の製造方法により、紫外線光領域または紫色光領域または青色光領域のレーザ光59が照射される。レーザ光59は、主として、発光層17Rのゲスト材料が吸収する。紫外線とは、波長が10nm以上400nm以下、すなわち、可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。赤外線は、可視光線の赤色より波長が長く(周波数が低い)、電波より波長の短い電磁波のことである。
【0080】
発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59の吸収によって共有結合鎖が切断される。酸素の無い蒸着室56で共有結合鎖が切断されると、共有結合鎖のラジカルは二重結合を生成する。または、他の共有結合鎖の原子を引き抜き結合する。あるいは、他の共有結合鎖と架橋構造を生成し、構造に変化が生じる。また、共有結合鎖が切断されることで他の物質へも変化する。したがって、発光層17Rのゲスト材料のHOMO、LUMO電位が変化し、レーザ光59を照射された発光層17Rのゲスト材料は発光しなくなる。
【0081】
レーザ光59は、狭指向性があり直進性がよい。そのため、所定の画素37の発光層17を選択してレーザ光59を照射することができる。本発明等のEL表示パネルは、図7等に図示するように同一色の画素37が縦方向(画面の上から下方向)に配列されている。隣接した画素電極15間にも、発光層17の材料が蒸着されているが、隣接した画素電極15間には、ソース信号線35などが形成されている。また、隣接画素37間には所定の間隔がある。したがって、レーザ光59のレーザスポット91のサイズが大きくとも、横方向に隣接した画素の発光層17に照射されることはない。
【0082】
レーザ光59の走査方向は、ガルバノミラー62を制御することにより、高速かつ精度よく制御できる。また、レーザ装置58は、蒸着室56外に配置しているため、メンテナンスが容易である。レーザ光59は蒸着室56外で発生させ、発生したレーザ光59は、レーザ窓63を介して、蒸着室56内の真空中に導光させる。したがって、蒸着室56内の真空状態を良好に維持できる。なお、レーザ装置58またはレーザヘッド部は、蒸着室56内に配置してもよい。
【0083】
レーザ光59の照射は、画素行あるいは画素列に一致させて順番を行っていっても良いが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、表示画面36内の画素37にランダムあるいは分散して(順番でなく)、レーザ光59を照射してもよい。レーザ光59の強弱変化がある場合、表示画面36内の画素37にランダムあるいは分散して照射することにより、レーザ光59の強弱による改質ムラが発生しても、表示ムラとして視覚されにくくなる。
【0084】
照射する光の波長が短いと材料への光吸収率が高まる。光の波長が短い紫外線領域のレーザ光59は回折限界近くまでスポット径を絞ることができるので、加工したときに周囲への熱影響を小さくでき、微細加工に適し、超高精細のEL表示パネルを加工することができる。
【0085】
また、1つの画素電極15領域内を、レーザ光59で走査することにより、画素電極15の形状に一致させて、良好に発光層17などを改質させることができる。
【0086】
レーザ装置58は、連続発振モードの装置を使用することが好ましい。しかし、パルス発振方式のレーザ装置58は、レーザ光パルスのエネルギーが強い。マトリックス状に画素が配置されたEL表示パネルのように、レーザ光59を照射する画素が離散的に配置されている場合は、パルス発振方式のレーザ装置58を用いることが好ましい。
【0087】
パルス発振方式のレーザ装置58が出力するレーザ光59は、Qスイッチでオンオフ制御されるため、パルス強度のバラツキが発生しやすい。そのため、改質させる箇所に、複数のレーザパルスを照射して発光層17等を改質させることが望ましい。
【0088】
パルス発振レーザの場合は、同一箇所に複数のパルスを照射する。同一箇所に複数のパルスを照射することにより、同一箇所に照射されるレーザ光59のエネルギーが平均化され、改質状態が均一になる。なお、レーザパルスの照射間隔は、50nsec以上5μsec以下にすることが好ましい。また、レーザパルスの照射間隔は、第1番目のレーザパルスにより、発光層17を半溶解状態にし、次のレーザパルスは発光層17が固体状態になる前にレーザパルスを照射することが好ましい。
【0089】
連続発振レーザの場合は、同一箇所に複数回のレーザ光を照射する。同一箇所に複数回のレーザ光59を照射することにより、同一箇所に照射されるレーザ光のエネルギーが平均化され、改質状態が均一になる。なお、レーザ光59の照射間隔は、50nsec以上5μsec以下にすることが好ましい。また、レーザ光59の照射間隔は、第1番目のレーザ光59のスキャンにより、発光層17を半溶解状態にし、次のレーザ光59のスキャンは発光層17が固体状態になる前に実施することが好ましい。
【0090】
レーザ装置58としては、一例として、オプトピア株式会社が製品化しているレーザ・リフト・オフ(LLO)装置のレーザ装置を使用することができる。レーザ・リフト・オフ装置のレーザ装置のレーザ波長は343nm、ラインビーム長は750mmである。ライン幅は30μm、エネルギー密度は250mJ/cm2、パルス幅は15nsである。したがって、大型のEL表示パネルであっても、1画素列(画面の上端から下端)に、一つのレーザスポット91で、1画素列にレーザ光59を照射することができる。レーザ光59のパルス幅は10nsec以上80nsec以下が適正である。
その他、レーザ装置58として、波長355nmの固体レーザを用いたもの、308nmのエキシマレーザを用いたものも例示される。
【0091】
本発明のEL表示装置の製造方法は、レーザ装置58を用いることにより、レーザ光59を走査し、精度よく画素37を選択して、所定の発光層17を改質することができる。また、レーザ光59は単位面積あたりの光強度が大きい。したがって、発光層17等を短時間で改質することができる。
【0092】
本発明は、少なくとも、一つの色の発光層17を形成する工程では、従来の製造方法のように、ファイン蒸着マスク251は使用しない。そのため、ファイン蒸着マスク251の位置ずれによる発光色の混色問題は発生しない。また、蒸着製造装置のコストを低減できる。ファイン蒸着マスク251を使用しないため、ファイン蒸着マスク251の位置決めも不要であるから、製造タクトを短縮することができる。
【0093】
本発明は、レーザ光59の照射により、発光層17のゲスト材料とホスト材料の組み合わせ状態に変化を発生させる。レーザ光59は紫外線領域の波長の光を使用する。ゲスト材料に紫外線領域の光を吸収させる。
本発明の製造方法・製造装置は、EL素子22を構成する膜層、発光層17等にレーザ光等を照射し、改質させる。
したがって、レーザ光59を照射された発光層17は消光するか、非発光となるか、もしくはほとんど発光しなくなる。
【0094】
電子と正孔との再結合は、画素37Rでは、主に発光層17Rにおいて生じさせる。画素37Gでは電子と正孔との再結合は、主に発光層17Gにおいて生じさせる。画素37Bでは主に発光層17Bにおいて生じさせる。
【0095】
本発明の第一の実施例におけるEL表示パネルでは、画素37Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rにおいて生じるが、再結合は発光層17Gおよび17Bにおいても発生する可能性がある。すなわち、画素電極15Rでは、発光層17R、17G、17Bの各々が発光する可能性がある。
【0096】
画素37Rでは、発光層17Rが含んでいるゲスト材料は、発光層17Gおよび発光層17Bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。発光層17Gが含んでいるゲスト材料は、発光層17Bが放出する光を吸収して励起するが、発光層17Rが放出する光を吸収して励起することはほとんどない。また、発光層17Bが含んでいるゲスト材料は、発光層17Rまたは17Gが励起されるエネルギーを吸収して発光することはほとんどない。
【0097】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0098】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Rおよび17Bにおいても発生する可能性がある。画素電極15Gの上方の発光層17Rは、レーザ光59の照射により、発光するゲスト材料を含有していない。
【0099】
画素37Gの発光層17Rは発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Rにおいて、色変換は生じない。発光層17Bでは、上記の色変換を生じる。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
【0100】
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じるが、再結合は発光層17Rおよび17Gにおいても発生する可能性がある。しかし、画素電極15Bの上方の発光層17Rおよび17Gは、レーザ光59の照射により、発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Bのみが発光する。
【0101】
画素37Bの発光層17Rおよび発光層17Gは、発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Rおよび17Gにおいて色変換は生じない。したがって、画素37Bの発光色は、発光層17Bの発光色とほぼ等しく、画素電極15Bは、青色光を放出する。
【0102】
図3(a)に図示するように、ホスト材料は、レーザ光59を吸収しにくく、ゲスト材料は、レーザ光59を吸収しやすい材料を選定する。もしくは、レーザ光59の波長は、ホスト材料が吸収しにくく、ゲスト(ドーパント)材料が吸収しやすい波長を選定する。
【0103】
好ましくは、図3(a)に図示するように、ゲスト材料の吸収率が75%以上の時、ホスト材料の吸収率が25%以下の関係となるようなホスト材料、ゲスト材料を選定する。なお、図3において、ゲスト材料およびホスト材料の光吸収率(%)は、光吸収率の最大時を100%として規格化して図示している。
【0104】
図3(a)において、ゲスト材料Aは、波長400nm以下で吸収率(%)が増加する特性を有し、レーザ光59の波長で、75%以上の吸収率を有する材料の例である。ゲスト材料Bは、レーザ光59の波長近傍で良好な吸収率を有する材料の例である。
【0105】
レーザ光59の波長で、ゲスト材料の光吸収率と、ホスト材料の光吸収率は3倍以上の関係となるように、好ましくは4倍以上の関係となるように、レーザ光波長、ゲスト材料、ホスト材料を選定する。
【0106】
たとえば、レーザ光59でのゲスト材料の光吸収率75%、ホスト材料の光吸収率25%とすれば、75%/25%=3倍である。レーザ光59でのゲスト材料の光吸収率50%、ホスト材料の光吸収率10%とすれば、50%/10%=5倍である。
【0107】
レーザ光59の波長は、正孔輸送層の光吸収率(%)も考慮する必要がある。正孔輸送層16の上方に発光層17が形成され、発光層17にレーザ光59を照射する。その際、発光層17を透過したレーザ光59が正孔輸送層16に照射される場合がある。正孔輸送層16がレーザ光59を吸収すると正孔輸送層16が特性変化する可能性がある。
【0108】
したがって、図3(b)に図示するように、正孔輸送層16材料は、ホスト材料と同様に、ゲスト材料のレーザ光59の吸収率が、75%以上の時、ホスト材料のレーザ光59の吸収率が25%以下の関係となるような正孔輸送層16材料を選定することが好ましい。
【0109】
本発明は、発光層17がゲスト材料とホスト材料から形成される構成に限定するものではない。発光層17は、単一の材料で形成される場合もある。発光層17が単一の材料で形成される場合は、前記単一の材料を改質させる。
【0110】
本発明は、レーザ光59などを、EL素子22を形成する有機膜に照射し、発光層17などを改質させることを技術的思想とするものである。この場合、発光層17と正孔輸送層材料のレーザ光59の吸収率の関係が必要になる。つまり、図3(b)に図示するように、レーザ光59の波長は、正孔輸送層の光吸収率(%)と発光層17の光吸収率(%)の関係が必要である。
【0111】
したがって、図3(b)に図示するように、発光層17材料のレーザ光59の吸収率が75%以上の時、正孔輸送層材料のレーザ光59の吸収率が25%以下の関係となるような正孔輸送層材料を選定することが好ましい。
【0112】
図3(b)において、発光層材料Aは、波長400nm以下で吸収率(%)が増加する特性を有し、レーザ光59の波長で、75%以上の吸収率を有する材料の例である。発光層材料Bは、レーザ光59の波長近傍で良好な吸収率を有する材料の例である。正孔輸送層材料は、レーザ光59の波長で、光吸収率25%以下となる。
【0113】
以上のように、発光層17を構成する材料と、正孔輸送層を構成する材料は、改質させる光(レーザ光59等)の波長において、75%/25%=3倍以上の光吸収率差とする。好ましくは、4倍以上の光吸収率差とすることが好ましい。
【0114】
レーザ光59の波長で、発光層17の光吸収率と、正孔輸送層の光吸収率は3倍以上関係となるように、レーザ光波長、発光層材料、正孔輸送層材料を選定する。
【0115】
たとえば、レーザ光59での発光層17の光吸収率75%、正孔輸送層材料の光吸収率25%とすれば、75%/25%=3倍である。レーザ光59での発光層17の光吸収率50%、正孔輸送層の光吸収率10%とすれば、50%/10%=5倍である。
図3で説明する事項は、本発明の他の実施例においても適用されることは言うまでもない。
【0116】
図1の実施例において、画素電極15Rの上方の発光層は、赤色の発光層17Rが赤色で発光する。緑色の発光層17G、青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“発光”、緑色の発光層17Gは“消光”、青色の発光層17Bは“消光”となっている。
【0117】
画素電極15Gの上方の発光層は、緑色の発光層17Gが緑色で発光する。赤色の発光層17Rおよび青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“消光”、緑色の発光層17Gは“発光”、青色の発光層17Bは“消光”となっている。
【0118】
画素電極15Bの上方の発光層は、青色の発光層17Bが青色で発光する。赤色の発光層17Rおよび青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“消光”、緑色の発光層17Gは“消光”、青色の発光層17Bは“発光”となっている。
【0119】
正孔輸送層16は、発光層17へ正孔を輸送する働きをし、発光層と接するため発光層17から励起エネルギーが移動せず、さらには他の層と相互作用してエキサイプレックスを形成しないように、発光層17よりもエネルギーバンドギャップが大きな材料が用いられる。たとえば、TPD、α―NPD、NBP、TCTAが例示される。
正孔注入層は、正孔輸送層16のHOMO準位と陽極の仕事関数との間にHOMO準位を有し、陽極から有機層への掘る注入障壁を下げる働きをする。
【0120】
発光層17の上方には、電子輸送層18を形成されている。電子輸送層18とカソード電極19との間に電子注入層(EIL:Electron injection layer 図示せず)を形成してもよい。電子輸送層18の種類は、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bで異ならせてもよい。
【0121】
カソード電極(陰極)19は、例えば金属材料を用いて構成されたものであり、光透過性を有している。例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この金属陰極層は、さらにアルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。さらに第3の層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0122】
一実施例としてMgAgを例示してカソード電極(陰極)を形成している。カソード電極(陰極)19は、蒸着により形成する。カソード電極(陰極)19を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、封止層20を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる封止層20を形成する場合には、CVD法によって1μm以上5μm以下の膜厚に形成する。この際、有機層の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、封止層の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0123】
また、SiONなどをCVDで形成した後、有機材料などを形成して、封止層20としてもよい。封止層20には、封止フィルム27を貼り付け、防湿対策をすることが好ましい。また、光出射側には、表示コントラストを良好なものとするため、円偏光板(円偏光フィルム)29を貼り付けることが望ましい。
【0124】
電子注入層は、電子注入層として用いられるものであり、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物および複合酸化物の混合物を用いることができる。
【0125】
電子注入層は、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物および複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物および複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0126】
電子輸送層18は、カソード電極(陰極)19から電子を注入し輸送する機能を持つ。正孔輸送層16と同様に、バンドギャップが広い材料が好ましい。また、発光層17内で生成した励起子の移動を阻止する働きもあるため、励起子阻止層や、BCPはホールの移動を阻止する作用があるため、ホールブロッキング層として使われることもある。
【0127】
電子輸送層18の材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、スチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0128】
具体的には、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10-フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。このような電子輸送層(ETL)18は積層構造であっても良い。
【0129】
発光層17は、画素電極(陽極)15とカソード電極(陰極)19とに対する電圧印加時に、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが再結合する領域である。
【0130】
このような発光材料としては、例えば、多環縮合芳香族化合物、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキサノイド化合物、ジスチリルベンゼン系化合物などの薄膜形成性の良い化合物を用いることができる。
【0131】
多環縮合芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン骨格を含む縮合環発光物質や、約8個の縮合環を含む他の縮合環発光物質などを挙げることができる。
【0132】
具体的には、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3-ブタジエン、4,4'-(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニルなどを用いることができる。この発光層は、これらの発光材料の1種または2種以上からなる層で構成されてもよいし、あるいは該発光層とは別種の化合物からなる発光層を積層したものであってもよい。
【0133】
発光層17は、燐光(燐光)発光材料とホスト材料とを含有する層とすることが好ましい。燐光発光材料を用いて発光層17を構成した場合、正孔輸送層16は、炭素より重い第14族元素の有機化合物基を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0134】
ホスト材料は、発光材料の濃度消光が激しいときや、発光材料のキャリア移動度が遅く単層膜として挿入できない場合など、バイポーラー性のホスト材料中に発光色素(ゲスト材料)をドーピングする。ホスト材料は、ゲスト材料よりも大きなバンドギャップを有している必要がある。
【0135】
また、燐光発光材料をドーピングするときは、ホスト材料の三重項のバンドギャップも燐光発光材料よりも大きい必要がある。小さい場合はエネルギー移動し、エネルギーを閉じ込められなくなったり、ホスト材料の三重項から熱失活してしまったりするので、材料の選択には注意を要する。
【0136】
燐光材料には、禁制である三重項からの発光をえるため、重原子効果を利用する。そのため、中心金属に白金やイリジウムを有する材料が例示される。これらの金属錯体は、配位子のπ電子の広がりを制御することによって、青(B)色~赤(R)色の発光色が得られている。
【0137】
ホスト材料としては、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)biphenyl 、4,4'-Bis(2,2-diphenylvinyl)biphenyl、9,9'-Bianthracene、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)biphenyl (purified by sublimation)、2,6-Bis[3-(9H-carbazol-9-yl)phenyl]pyridine、Bis[2-(2-pyridinyl)phenolato]beryllium(II) 、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)-2,2'-dimethylbiphenyl 、2,8-Bis(9H-carbazol-9-yl)dibenzothiophene 、2,6-Bis(9H-carbazol-9-yl)pyridine 、2,2''-Bi-9,9'-spirobi[9H-fluorene] (This product is only available in Japan.) 、9,9-Bis[4-(1-pyrenyl)phenyl]fluorene 、9,10-Bis(4-methoxyphenyl)anthracene 、4,4'-Bis(2,2-diphenylvinyl)biphenyl (purified by sublimation) 、Bis[2-[(oxo)diphenylphosphino]phenyl] Ether 、3,7-Bis[4-(9H-carbazol-9-yl)phenyl]-2,6-diphenylbenzo[1,2-b:4,5-b’]difuran 、9,10-Diphenylanthracene 、9,10-Di(1-naphthyl)anthracene 、1,3-Di-9-carbazolylbenzene (purified by sublimation) 、9,10-Di(2-naphthyl)anthracene 、9,10-Diphenylanthracene (purified by sublimation) 、3,3'-Di(9H-carbazol-9-yl)-1,1'-biphenyl 、9,9'-Diphenyl-9H,9'H-3,3'-bicarbazole 、3,3''-Di(9H-carbazol-9-yl)-1,1':3',1''-terphenyl 、9-[3-(Dibenzofuran-2-yl)phenyl]-9H-carbazole 、Diphenyl[9,9'-spirobi[9H-fluoren]-2-yl]phosphine Oxide (This product is only available in Japan.) 、1,4-Di(1-pyrenyl)benzene 、2,7-Di(1-pyrenyl)-9,9'-spirobi[9H-fluorene] 、9,10-Di(1-naphthayl)anthracene (purified by sublimation) 、9,10-Di(2-naphthayl)anthracene (purified by sublimation) 、2-Methyl-9,10-di(2-naphthyl)anthracene 、Poly(N-vinylcarbazole) 、Tris(8-quinolinolato)aluminum 、1,3,5-Tri(9H-carbazol-9-yl)benzene (purified by sublimation) 、Tris(8-quinolinolato)aluminum (purified by sublimation) 、4,4',4''-Tri-9-carbazolyltriphenylamine (purified by sublimation) 、4,4',4''-Tri-9-carbazolyltriphenylamine 、1,3,5-Tri(1-naphthyl)benzene 、9,9',10,10'-Tetraphenyl-2,2'-bianthracene等が例示される。
【0138】
赤(R)色ドーパント(ゲスト材料)としては、4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-(4-dimethylaminostyryl)-4H-pyran 、4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-[2-(2,3,6,7-tetrahydro-1H,5H-benzo[ij]quinolizin-9-yl)vinyl]-4H-pyran 、DCJTB 、(1,10-Phenanthroline)tris[4,4,4-trifluoro-1-(2-thienyl)-1,3-butanedionato]europium(III) 、5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene 、Tris(1,3-diphenyl-1,3-propanedionato)(1,10-phenanthroline)europium(III) 、5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene (purified by sublimation) 、Tris[1-phenylisoquinoline-C2,N]iridium(III) (purified by sublimation) 、Tris(acetylacetonato)(1,10-phenanthroline)europium(III) 、Tris(1,10-phenanthroline)ruthenium(II) Bis(hexafluorophosphate) が例示される。
【0139】
緑(G)色ドーパント(ゲスト材料)としては、Bis(8-quinolinolato)zinc(II) Hydrate 、Bis[2-(2-benzothiazolyl)phenolato]zinc(II) 、Bis[2-(2-benzoxazolyl)phenolato]zinc(II) 、3-(2-Benzothiazolyl)-7-(diethylamino)coumarin 、3-(2-Benzimidazolyl)-7-(diethylamino)coumarin 、Coumarin 545T 、(2,2'-Bipyridine)bis(2-phenylpyridinato)iridium(III) Hexafluorophosphate 、(2,2'-Bipyridine)bis[2-(2,4-difluorophenyl)pyridine]iridium(III)Hexafluorophosphate、9,10-Bis[N-(m-tolyl)anilino]anthracene 、9,10-Bis[N,N-di(p-tolyl)amino]anthracene 、2,6-Bis(diphenylamino)anthraquinone 、B5149 9,10-Bis[N-(p-tolyl)anilino]anthracene 、7-(Diethylamino)-3-(1-methyl-2-benzimidazolyl)coumarin 、Coumarin 153 、Coumarin 545 、N,N'-Dimethylquinacridone 、N,N'-Dimethylquinacridone (purified by sublimation) 、7-(Dimethylamino)-4-(trifluoromethyl)coumarin 、7-(Diethylamino)-4-(trifluoromethyl)coumarin 、5,12-Dibutyl-1,3,8,10-tetramethylquinacridone 、N,N'-Dibutylquinacridone 、(4,4'-Di-tert-butyl-2,2'-bipyridine)bis[(2-pyridinyl)phenyl]iridium(III) Hexafluorophosphate 、Quinacridone 、Quinacridone (purified by sublimation) 、Tris(2-phenylpyridinato)iridium(III) (purified by sublimation) 、Tris(acetylacetonato)(1,10-phenanthroline)terbium(III) が例示される。
【0140】
青ドーパント(ゲスト材料)としては、1,4-Bis[4-(di-p-tolylamino)styryl]benzene 、4,4'-Bis[4-(di-p-tolylamino)styryl]biphenyl 、1,4-Bis[2-(9-ethylcarbazol-3-yl)vinyl]benzene 、3-(Diphenylamino)dibenzo[g,p]chrysene 、Perylene 、Perylene (purified by sublimation) 、4-Styryltriphenylamine 、1,3,6,8-Tetraphenylpyrene 、2,5,8,11-Tetra-tert-butylperylene が例示される。
本発明のEL表示パネルの発光層17は、ホスト材料とドーパンド材料(ゲスト材料)を共蒸着して形成することが好ましい。
【0141】
EL素子22が、共振器構造となっている場合、半透過、半反射性を有して構成された陰極19の光反射面と、反射膜12の光反射面との間で多重干渉させた発光が陰極19側から取り出される。反射膜12の光反射面と陰極19側の光反射面との間の光学的距離Lは、取り出したい光の波長によって規定され、この光学的距離Lを満たすように各層の膜厚および干渉条件が設定される。
光学的距離Lは、反射膜と光出射膜間の距離と、反射膜と光出射膜間の構成材料で規定される。
【0142】
このような上面発光型のEL素子22においては、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。
【0143】
図1の実施例では、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bの絶縁膜14を調整して、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bの光学的距離Lをキャビティ効果が最大に発揮されるように形成したものであった。しかし、本発明は、これに限定するものではない。
図32(a)は、赤(R)画素、緑(G)画素の干渉次数を0次、青(B)画素の干渉次数を1次に形成した実施例である。
【0144】
絶縁膜14の膜厚を、赤(R)画素、緑(G)画素で異ならせて形成している。また、青(B)画素の正孔輸送層(HTL)を厚く形成している。正孔輸送層は、1回の蒸着による形成ではなく、複数回の蒸着により形成している。また、複数回の蒸着で形成する正孔輸送層は、異なる正孔輸送層の材料で形成してもよい。
【0145】
キャビティ効果を発揮する光学的距離Lは()、発光波長に比例させる。赤の波長は緑の波長より長く、緑の波長は青の波長より長い。したがって、干渉次数が同一の場合、赤の光学的距離L1は緑の光学的距離L2より長く、緑の光学的距離L2は青の光学的距離L3より長い。
【0146】
EL素子22の膜厚は、100nm程度である。干渉次数が0次の場合、青の画素37Bの膜厚が最も薄くなる。光学的距離Lが薄いと製造時のダストなどによる欠陥が発生しやすい。したがって、赤の画素37Rに比較して、青の画素37Bの欠陥の発生が多く、青の画素37Bの欠陥でEL表示パネルの歩留まりを低下させる。
【0147】
図30(a)の実施例のように、青の画素37Bの干渉次数を1次とし、他の色の画素(0次)よりもEL素子22の膜厚を厚くすることにより、EL表示パネルの歩留まりを向上できる。また、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で、発光する波長に対応して最適な光学的距離Lを実現できるので、キャビティ効果を発揮し、良好な色再現性を実現できる。
【0148】
なお、図30(a)では、3色のうち、青(B)の画素の干渉次数を1次としたが、本発明はこれに限定するものではなく、図28(b)のように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素のすべての干渉次数を1次してもよい。また、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素の膜厚を異ならせる構成は、共通の膜層に限定するものではなく、たとえば、赤(R)画素は、正孔輸送層(HTL)とし、緑(G)画素は発光層(EML)とし、青(B)画素は絶縁膜14Bとしてもよい。
【0149】
また、図30(c)に図示するように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で干渉次数を同一とし、共通の膜層で光学的距離を調整してもよい。図30(c)は、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素の干渉次数を0次と共通にし、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で絶縁膜を異ならせることにより、最適なキャビティ効果を実現し、良好な色再現性を実現した実施例である。青(B)画素では絶縁膜が無くとも良い。反射膜12Bと画素電極15Bとを積層させる。
【0150】
また、図30(d)に図示するように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で干渉次数を異ならせ、複数の色で、干渉次数を1次としてよいことは言うまでもない。赤(R)画素は干渉次数を0次とし、緑(G)画素および青(B)画素で干渉次数を1次としている。緑(G)画素では発光層17Gを厚く形成し、青(B)画素では、絶縁膜14Bを厚く形成している。
【0151】
画素電極15の周囲には土手(バンク)95が形成されている。土手95は、主として、ファイン蒸着マスク251を配置する際、ファイン蒸着マスク251が画素電極15などと接触することを防止すること、発光層17が隣接した画素間に混入することを防止することを目的として形成される。
【0152】
本発明のように、ファイン蒸着マスク251を使用しない場合、レーザ光59などの狭指向性の光を照射して、発光層17を改質する場合、また、画素間に混色が発生しない場合、また、画素間の混色を防止または抑制できる場合等は、図30図31に図示するように、土手95は形成しなくともよいことは言うまでもない。
【0153】
なお、本発明の製造装置、製造方法、EL表示パネル等は、反射膜12を形成し、透明なカソード電極19側から、発光層17で発生した光を取り出す上面発光型のELパネルを例示して説明する。しかし、本発明はこれに限定するものではなく、陰極19を反射膜として、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型のEL表示パネルにも適用できる。
【0154】
図4は、本発明のEL表示パネルの製造装置の蒸着装置の構成図および説明図である。本発明のEL表示パネルの蒸着装置は、金属蒸発源65、有機蒸発源66を備えた蒸着室56を有する。蒸着室56には、TFT基板52を保持するための移動ステージ51と、TFT基板52を所定温度に保持あるいは調整する温度調整板53、真空ポンプ(真空排気装置)54、真空ポンプ54と蒸着室56とを結ぶ排気ダクト55を備えている。
【0155】
真空ポンプ54は、オイルミストや熱分解したオイル成分が、きわめてわずかであるが真空チャンバー内へ混入して不純物として振る舞うために、水分を効果的に除去できるクライオポンプや、メンテナンスがほぼ必要のないターボ分子ポンプと液体窒素トラップを組み合わせたドライな排気系を採用している。
【0156】
本発明の有機ELパネルの製造装置は、真空一貫で作製したEL表示パネルを、大気に曝すことなく酸素や水分濃度が0.1ppm以下のグローブボックスへ取り出し、ガラスやアルミ缶などのガスバリア性の高い封止缶とUV硬化樹脂を用いて封止まで行うように製造する。
【0157】
チャンバー室111(図11参照)の蒸着室56、転写装置室117およびレーザ装置室118の真空度は、1×10-3Pa以上の真空度に保つことが好ましい。さらに好ましくは1×10-4Pa以上の真空度に保つことが好ましい。
【0158】
有機分子は酸素存在下で加熱すると、酸化反応が進み炭化してしまうことが多い。しかし、高真空下では沸点降下現象により沸点(昇華点)は低下するが、有機分子を構成するC-C結合などの化学結合を解離・分解するエネルギーは影響を受けない。そのため、大気中で分解することなく昇華(蒸発)することができない有機材料も、酸素も取り除かれた高真空状態で加熱することによって、容易に昇華させ基板上へ薄膜を製膜することが可能となる。
【0159】
また、蒸着された有機材料にレーザ光を照射しても、酸素も取り除かれた高真空状態であるため、有機材料は必要な化学的変化が促進される。したがって、レーザ光を照射しても、酸化反応が進み炭化してしまうことがない。
2種類の有機材料を共蒸着法により製膜できるように、複数の蒸着用電源および膜厚計がホスト材料用とゲスト材料用に設置されている。
【0160】
蒸着源が複数設置される場合には、蒸着源を基板直下に集中することができないため、膜厚のムラが危惧される。本発明の製造装置および製造方法では10~12rpmの速度でTFT基板52を回転させることにより対策している。
【0161】
容器(るつぼ等)を蒸着室56内に複数設け、この容器の一方にはホスト材料を、他方にはゲスト材料を充填し、このホスト材料とゲスト材料とを同時に蒸発させて、ホスト材料とゲスト材料とを共蒸着させる。
【0162】
図4に図示するように、レーザ装置58が発生したレーザ光59は、光量調整フィルタ60でレーザ光59の強度が調整される。発光層17を改質させるレーザ光59は、主として紫外線波長領域のレーザ光59を採用する。
図4等で説明するレーザ装置58に関する事項は、図20で説明する付着物201の除去装置、あるいは付着物201の改質装置として適用できる。
【0163】
なお、図4では、図示を容易にするためにレーザ装置58は1台として図示しているがこれに限定するものではない。複数のレーザ装置58を使用してもよい。また、レーザ装置58は、ライン状のレーザ光59を発生するものであってもよいし、面状にレーザ光59を発生するレーザ装置58を使用してもよい。
【0164】
光量調整フィルタ60として、偏光ビームスプリッターを用いたバリアブルアッテネータが例示される。偏光ビームスプリッターの手前でλ/2波長板を回転させる事により、透過率(反射率)を変化させる。キューブタイプの偏光ビームスプリッターを使用する為、光軸のシフトも最小限に抑えることができる。
【0165】
レーザ装置58が発生したレーザ光59は必要に応じて、シリンドリカルレンズ61で矩形あるいは楕円形に整形する。また、スリットマスクで画素形状に略一致させるように略矩形あるいは円形状に整形する。
【0166】
光量調整フィルタ60で強度が調整されたレーザ光59は、ガルバノミラー62に入射する。ガルバノミラー62は、XYの2次元エリア(TFT基板52あるいはドナーフィルム197)にレーザ光59を走査させる。ガルバノミラー62ではXおよびY軸方向にレーザ光59を走査させる2つのモーター(ロータリーエンコーダー)を使用している。
【0167】
レーザ光59は、蒸着室56に配置されたレーザ窓63を介して、蒸着室56に入射する。レーザ光59は、高真空状態でTFT基板52を照射される。レーザ窓63は石英ガラスで形成されている。
【0168】
レーザ装置58は蒸着室56外部の大気中に配置され、レーザ光59がレーザ窓63から、蒸着室56の真空中に入射させる。したがって、レーザ装置58の操作、保守が容易である。
【0169】
レーザ光59をTFT基板52に結像するためのレンズとして、fθ(エフシータ)レンズ64を具備している。fθレンズ64は、レンズのレンズ面の曲率をかえることにより、レンズ周辺部と中心部で走査速度が一定になるように設計されている。
【0170】
レーザ装置58が発生したレーザ光59は、ガルバノミラー62でレーザ光の方向を変化させられ、fθレンズ64により、TFT基板52あるいはドナーフィルム197の表面に照射される。
【0171】
図5に図示するように、必要に応じて、fθレンズ64の位置を、fθレンズ64aからfθレンズ64b間で変化させる。fθレンズ64の位置を変化させることにより、レーザ光59のフォーカス位置を変更できる。
【0172】
fθレンズ64は、材質にベリリウムを使用したベリリウムミラーを用いている。ベリリウムはアルミニウムより軽く、鉄より丈夫な金属で研磨すると紫外光から赤外線を非常によく反射するのでレーザの波長にもマッチしている。
【0173】
また、移動ステージ51の位置を、移動ステージ51aから移動ステージ51b間で変化させる。移動ステージ51の位置を変化させることにより、レーザ光59のフォーカス位置を変更できる。フォーカス位置を変化させると、レーザ光59の照射範囲、レーザスポット91の大きさを変更できる。
【0174】
図5図6は、レーザ装置58による発光層17等の改質方法を説明する説明図である。図6に図示するように、改質を実施する装置は、光検出装置77と光制御装置78を有する。
【0175】
レーザ装置58はレーザ光59を発生する。レーザ光59は光分離ミラー72bに入射する。光分離ミラー72bは、レーザ装置58が発生したレーザ光59の強度をモニターするため、ハーフミラー的な機能を有する。光分離ミラー72bは、レーザ光59の所定割合のレーザ光を反射する。
光分離ミラー72bで反射したレーザ光59bは、ミラー73bで反射し、レンズ74cで集光されて光増幅回路76bに入射する。
【0176】
図6(b)は、光増幅回路76の回路図である。光増幅回路76は、ホトダイオード(PD)、オペアンプ81、抵抗R、コンデンサCなどで構成する。光増幅回路76は、ホトダイオード(PD)で、レーザ光59bを光-電気変換する。光-電気変換されたレーザ光は、増幅され、アナログ信号電圧V2となる。アナログ信号電圧V2はA/D変換回路80bでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0177】
レーザ制御回路79は、レーザ光59の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内となるように、レーザ装置58をフィードバック制御する。フィードバック制御により、レーザ光59の強度は所定値範囲内に設定される。
【0178】
レーザ装置58からのレーザ光59aは光分離ミラー72b、光分離ミラー72aを透過し、蒸着室56のレーザ窓63から、蒸着室56に導光され、改質対象の発光層17に入射する。
【0179】
光分離ミラー72aは、波長分離ミラーとして機能する。光分離ミラー72aは表面に光学的多層膜が形成され、特定の帯域の波長を透過し、特定の帯域の波長を反射する機能を有する。光分離ミラー72aはレーザ光59aを透過し、発光層17で励起された蛍光・燐光波長の光71を反射する。
【0180】
蛍光・燐光波長の光71はレンズ74aで集光され、ミラー73aで方向を曲げられ、レンズ74bで集光される。光フィルタ75は、集光された光71のうち、一定の範囲内の波長のみを透過させる。光フィルタ75は、励起され、発生した所定帯域範囲内の波長の光強度を検出するために使用される。
【0181】
光フィルタ75を透過した蛍光・燐光波長の光71は、光増幅回路76aに入射する。光増幅回路76aは、ホトダイオード(PD)で、光71を光-電気変換する。光-電気変換された光71は、増幅され、アナログ信号電圧V1となる。アナログ信号電圧V1はA/D変換回路80aでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0182】
図6の実施例で、光検出素子はホトダイオード(PD)としたが、これに限定するものではない。たとえば、光電子増幅管、光電管、太陽電池なども使用することができることは言うまでもない。
【0183】
また、ホトダイオード(PD)を、CCDあるいはビデオカメラに置き換えてもよい。CCD等で蛍光・燐光の発生分布を2次元状に観察し、蛍光・燐光の強度、分布をリアルタイムで測定する。測定結果で、改質状態を判断する。2次元状に観察できるように構成することにより、多数の画素を同時に改質し、同時に改質状態を測定できるようになる。
【0184】
レーザ制御回路79は、蛍光・燐光(蛍光または燐光)波長の光71の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内かを検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内である場合、レーザ装置58が照射するレーザ光59aの照射位置を変化あるいは移動させる。また、レーザ光59aの強度を変化させる。
【0185】
レーザ光59bが蒸着された発光層17に照射され、発光層17は励起されて蛍光・燐光71を発光する。レーザ光59aは照射された発光層17を改質させる。発光層17が改質されると、発光層17が発生する蛍光・燐光71の強度は低下する。
【0186】
したがって、レーザ光59aは、発光層17を励起する機能と、発光層17を改質する機能の2つを併せ持つ。特に、レーザ光59aは、紫外線領域の光であるため、発光層17を励起しやすい。
【0187】
レーザ光59aは波長が固定波長のため、発生する蛍光・燐光71の波長と分離しやすい。したがって、蛍光・燐光71の光の検出が容易である。また、図6で示すように、光検出装置77は、蛍光・燐光71を分離する光フィルタ75、光分離ミラー72aを具備するため、検出は容易である。
【0188】
光フィルタ75の透過波長は、発光層17が発生する蛍光・燐光71の波長に対応させて切り替える。光増幅回路76aの増幅率は、発光層17が発光する蛍光・燐光71の波長・強度で異なるからである。
【0189】
発光層、発光層17Rが発光する蛍光・燐光71の波長・強度と、発光層17Gが発光する蛍光・燐光71の波長・強度と、発光層17Bが発光する蛍光・燐光71の波長・強度とは異なるので、それぞれの発光層17の蛍光・燐光71に対応して最適値に制御する。
【0190】
蛍光・燐光71の強度を測定あるいは検出することにより、発光層17の改質状態を把握できる。改質状態が所定の設定値を越えた場合、レーザ光59aの照射対象の画素37の改質が完了したと判断し、改質させる次の画素にレーザ光59aを位置決め動作させる。
【0191】
光検出装置77と光制御装置78は、同一の部材に取り付けられている。したがって、レーザ光59の照射位置の移動にともない、光検出装置77も、同時に移動する。なお、光検出装置77を蒸着室56内に設置し、光制御装置78は蒸着室56外に設置してもよいことは言うまでもない。
【0192】
光増幅回路76はTFT基板52の裏面に配置してもよい。レーザ光59cをTFT基板52の裏面に配置した光増幅回路76cなどで検出する。また、蛍光・燐光71aをTFT基板52の裏面に配置した光増幅回路76cなどで検出する。
【0193】
光検出装置77は、図6(c)に図示するように、蛍光・燐光71を検出するレンズ74の角度θを可変できるように構成する。角度θの変更あるいは設定は、蒸着室56外に設置した制御装置で行う。角度θは、蛍光・燐光71が最も強く検出できる角度に自動調整される。
蛍光・燐光71の強度を最も強く検出できるように、レンズ74a、レンズ74b、光検出装置77a、光検出装置77bの位置を変更あるいは設定する。
【0194】
光検出装置77は、蛍光・燐光71の強度だけでなく、波長も判別できるように構成しておくことが好ましい。たとえば、赤色の発光波長が、緑色の発光波長に変化した割合、あるいは変化量を検出する。緑色の発光波長に変化すれば、結果的に、赤色の発光波長は「消光」状態となり、非発光になったと検出できる。
【0195】
なお、発光層17に照射するレーザ光59aとは別に、発光層17を励起させる光を別途発生させ、前記光を発光層17Gに照射させてもよい。たとえば、蛍光・燐光発光用のレーザ光59の発生装置を別途設置し、前記レーザ光59を改質する発光層17に照射する構成が例示される。
【0196】
発生する蛍光・燐光71の強度が所定値以下となれば、発光層17が消光状態となる。消光状態になると、発光層17Gの改質が完了したと判断し、レーザ光59aの照射位置を、次の画素に移動させる。また、改質に要する時間を計測し、レーザ光59aの強度を制御する。
なお、蛍光・燐光71の強度だけでなく、蛍光・燐光71の強度の変化速度も検出あるいは測定できるように構成することが好ましい。
【0197】
蛍光・燐光71の強度・波長を、光検出装置77でモニターすることにより、改質対象の画素の発光層17を精度よく消光状態にすることができる。また、光制御装置78でレーザ装置58が出力するレーザ光59の強度をモニターすることにより、発光層17に照射するレーザ光強度を、安定した一定値にすることができるため、改質対象の画素の発光層17を精度よく消光状態にすることができる。
【0198】
レーザ装置58は、A紫外線(UV-A)近傍の310nm以上400nm以下の波長の光を発生し、発生した光を所定の画素電極15上に照射する機能を有する。
【0199】
紫外線を発生するレーザ装置は、光子の持つエネルギーが大きいため、結合の弱い部分を持つ材料(主に有機物)に照射すると分子結合を直接解離する光分解加工が行える。光分解加工はワークに当たったエネルギーが加熱ではなく、分解に主に使われるので加工面が極めてシャープとなる。紫外線領域の波長の光を発生するレーザ装置として、紫外線レーザ(YAGレーザの3倍波、4倍波)、固体紫外線レーザ、エキシマレーザなどが例示される。
【0200】
レーザ光59を集光させて加工位置に照射することができるため、加工位置の有機材料などを容易に改質または蒸発させることができる。有機材料などを蒸発させる際は、真空中で行うため、有機材料は炭化することがなく、レーザ光を照射した位置の周辺部に影響を与えない。
【0201】
紫外線領域の波長のレーザ光59は波長が短いため、レーザ光59のスポット径を小さくできる。また、加工に用いるエネルギー量を、高精細の画素に集光できるため、超高精細のEL表示パネルの画素の上方の有機材料の加工(光分解加工等)を行うことができる。
【0202】
なお、本明細書において、理解を容易にするため、レーザ光59は主として410nm以下の紫外線領域の波長の光を使用するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、410nm以上490nm以下の青(B)色領域の波長の光もレーザ光59として使用できる。
【0203】
レーザ光59は、TFT基板52の上方から照射できるように構成することが好ましい。レーザ光59によりゲスト材料が加熱され、加熱されたゲスト材料が昇華しても、周辺部に付着することを抑制することができる。
【0204】
レーザ装置58はフェムト秒レーザ装置を用いてもよい。フェムト秒レーザ装置はパルスレーザで、そのパルス幅がフェムト秒レベルのレーザ装置である。
レーザ強度はI = E / St で表される。Eはパルスエネルギー、Sはビームスポットの面積、t はレーザパルスの時間幅である。
【0205】
フェムト秒レーザ装置は、通常の加工に用いられるCO2レーザ装置やYAGレーザ装置などと違い、非熱加工であることに特徴がある。加工対象物にCO2レーザ光やYAGレーザ光を当てると、分子が光エネルギーを吸収して振動し、熱エネルギーに変換されて溶融・蒸発することで加工される。フェムト秒レーザの場合は光エネルギーで分子結合を切断し、周辺部分に熱拡散せずに分子を除去する「アブレーション」という現象で加工することができる。したがって、レーザ光59を照射した箇所のみを改質し、周辺部には熱的影響などを与えない。
【0206】
レーザ光59のレーザスポットのサイズは、図7のレーザスポット91aに図示するように、画素電極15より小さくとも良い。レーザスポット91aを画素電極15内で移動させることにより、画素電極15の全領域にレーザ光59aを照射することができるからである。
【0207】
レーザ光59aがTFT基板52に順次照射できるように、移動ステージ51を動作させてTFT基板52の位置を変化させる。もしくは、ガルバノミラー62などを用いて、レーザ光59aをTFT基板52上に走査する。
【0208】
TFT基板52の画素37にレーザ光59aを照射する際は、図33に図示するように、TFT基板52は移動ステージ51に配置される。移動ステージ51は、矢印Bの方向にレーザ光59aの照射と同期して滑らかに移動する。移動は一例として、リニアモータにより行われる。
【0209】
TFT基板52は、図33に図示するように移動ステージ51上で、かつ所定の角度θで配置される。レーザ光59aは画素37に結像される。レーザ光59aは、ガルバノミラー62で、画素列方向に走査される。EL表示パネルは画素列方向の画素は、同一の色に設定されている。つまり、画素列1が赤(R)色の画素であれば、画素列1に隣接した画素列2は、緑(G)色の画素であり、画素列2に隣接した画素列3は、青(B)色の画素である。画素列は、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)と繰り返されて形成されている。
【0210】
図33に図示するように、レーザスポット91(レーザ光59が照射されている箇所または場所)は位置「1」の画素37位置に照射され、レーザ光59は、A方向に移動する。レーザ光59の移動と同時にあるいは同期を取って、移動ステージ51が移動する。
【0211】
レーザ光59は紙面の上下方向(A方向)であるが、移動ステージ51も移動するため、レーザスポット91は、画素列方向の画素37に順次、照射される。したがって、画素列の位置「1」の画素37から位置「2」の画素37までレーザ光59aが照射される。
【0212】
位置「2」までレーザ光59が照射されると、図34に図示するように、位置「3」の画素37にレーザ光59が照射される。以上のように、順次、画素列単位でレーザ光59aが照射されていく。つまり、図35に図示するように、(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)→(8)→と、レーザ光59aが照射される。
【0213】
レーザ光59aのレーザスポットのサイズは、図7のレーザスポット91aに図示するように、画素電極15より小さくとも良い。レーザスポット91aを画素電極15内に移動させることにより、画素電極15の全領域にレーザ光59aを照射することができるからである。
【0214】
レーザ光59aの強度分布はガウス分布となる。改質する箇所の全体にレーザ光59aを照射する場合、図7(b)に図示するように、レーザ光59aのガウス分布の強度63%の範囲W1を改質させる発光層17の幅にすることが好ましい。さらに好ましくは、レーザ光59aのガウス分布の強度80%の範囲W2を改質させる発光層17の幅に設定することが好ましい。
【0215】
発光層17のゲスト材料を改質させるか、蒸発させるかはレーザ装置58が発生し、TFT基板52に照射するレーザ光59aの強度を制御することにより容易に実現できる。レーザ光59aの強度の可変は光量調整フィルタ60で行う。なお、光量調整フィルタ60は、レーザ光59のパルス単位でレーザ光59の強度を変更できるように構成することが好ましい。
【0216】
図7のレーザスポット91b、91cのように、画素電極15の全体を囲うように楕円形あるいは矩形としてもよい。レーザ光59aを楕円形あるいは矩形にするは、シリンドルカルレンズ61を使用することにより容易に実現できる。レーザスポット91bは1つの画素電極15に全範囲に照射する形状である。レーザスポット91cは複数の画素電極15を同時に照射する形状である。
図7のレーザスポット91dのように、ストライプ状のレーザスポットとし、TFT基板52に、ライン状のレーザ光59aを照射してもよい。
【0217】
レーザ光59のレーザスポット91は、改質させる画素37に照射され、レーザスポット91位置を移動させて、画素37の発光層のゲスト材料、あるいはホスト材料を改質させる。もしくは、発光層17を形成するホスト材料とゲスト材料を蒸発させる。
【0218】
画素37の横幅が30μm以下と狭く、レーザ光59のレーザスポット91を画素37に照射すると、隣接した画素37列にレーザ光59が照射される場合がある。この場合は、図8に図示するように、スリットマスク92を使用して、隣接した画素列にレーザ光59が照射されないようにする。
【0219】
図8(a1)(a2)の平面図および断面図に図示するように、レーザスポット91aは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。レーザスポット91aはA方向に走査され、画素列方向の画素が順次、改質される。
【0220】
図8(b1)(b2)の平面図および断面図に図示するように、レーザスポット91bは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。レーザスポット91aはB方向に走査され、画素列方向の画素が順次、改質される。
【0221】
図8(c1)(c2)の平面図および断面図に図示するように、矩形状のレーザスポット91cは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。矩形状のレーザスポット91cは、表示画面36の1画素列に同時に照明する。レーザ光59が照射された画素例の発光層17は、1画素列の発光層17が同時に改質される。
【0222】
スリットマスク92は、レーザスポット91の移動に合わせて、移動し、表示画面36の所定の色の画素の発光層17を改質させる。もしくは、レーザスポット91は、スリットマスクの穴位置に合わせて移動し、表示画面36の所定の色の画素の発光層17を改質させる。
【0223】
スリットマスク92は、薄い金属膜あるいは樹脂膜で形成させる。そのため、画素37位置に対応させて配置するため、スリットマスク92は張力をかけて平面状に保持する必要がある。
【0224】
図9に図示するように、透明基板94に金属材料などでスリットパターン93を形成したものを使用してもよい。透明基板94は、レーザ光59などの紫外線領域の波長の光を、透過する基板を使用する。透明基板94として、石英ガラス、ソーダライムガラスなどが例示される。
【0225】
図9(a)(b)の平面図および断面図に図示するように、レーザ光59は、スリットパターン93のスリット穴から、発光層17に照射される。スリット穴を透過したレーザ光59は、矩形状であり、表示画面36の1画素列に同時に照明する。レーザ光59が照射された画素例の発光層17は、1画素列の発光層17が同時に改質される。
【0226】
スリットマスク92をEL表示パネルの全体にわたり、スリットマスク92のスリット(溝)を画素列位置に位置合わせすることは困難を伴う場合がある。特に、EL表示パネルが大画面でかつ、高精細画素の場合である。
この場合は、図36に図示するように、複数のスリットマスク92を使用する。図36はスリットマスク92a、スリットマスク92bを使用した一例である。
【0227】
スリットマスク92a、92bは、画素列の倍数幅のスリット(溝)が形成されている。たとえば、1画素列幅のスリット、2画素列幅のスリットが形成されている。また、スリットマスク92には複数の画素列に対応するスリットが形成されている。
【0228】
スリットマスク92a、92bは独立に移動(位置合わせ)することができる。スリット位置にあわせて、レーザ光59が照射される。スリットマスク92はスリット位置をTFT基板52の画素列位置に位置合わせを行う。
【0229】
図36(a)は、TFT基板52の中央部にスリットマスク92a、92bが位置合わせされている。説明を容易にするために、1つのスリットマスク92は、TFT基板52の1/4の面積に作製されているとする。
【0230】
図36(a)において、レーザ光59は、スリットマスク92aのスリット(画素列位置に対応)に、順次、照射する。次に、図36(b)に図示するように、レーザ光59は、スリットマスク92bのスリット(画素列位置に対応)に、順次、照射する。
【0231】
次に、図36(c)に図示するように、スリットマスク92bにレーザ光59が照射されている期間内に、スリットマスク92aは、TFT基板52の左端の表示画面36の位置に移動し、位置決めされる。
【0232】
次に、図36(d)に図示するように、スリットマスク92aにレーザ光59が照射されている期間内に、スリットマスク92bは、TFT基板52の右端の画面位置に移動し、位置決めされる。最後に、スリットマスク92bにレーザ光59が照射される。
【0233】
以上にように、複数のスリットマスク92を使用し、レーザ光59が照射されていないスリットマスク92を移動させて先行的に位置決めすることにより、レーザ装置58は連続してレーザ光59を照射することができる。したがって、レーザ光59の照射工程での作業時間を短縮することができる。
【0234】
また、1つのスリットマスク92は、TFT基板52の一部の画面に配置される。したがって、スリットマスク92が担当するTFT基板52の面積は、TFT基板52の1/n(nは、2以上の実数)でよいため、スリットの位置決め精度は比較的ラフでもよい。
【0235】
第1の実施例における本発明のEL表示パネルの製造方法について説明をする。図10は、第1の実施例における本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。また、図11は、本発明のEL表示パネルの製造装置の説明図である。図4に図示するように、本発明の製造方法は、蒸着室56のような真空状態中にTFT基板52を配置する。EL素子22を構成する各有機膜は、蒸着により形成する。
【0236】
なお、図11のチャンバー室111の配置、構成等にこれに限定するものでない。また、複数の成膜装置116を設けてもよいことは言うまでもない。また、レーザ装置室118を成膜装置116から独立させて設けてもよいことは言うまでもない。
【0237】
図11において、TFT基板52は搬入室113から成膜装置116に搬入される。成膜装置116内は、超真空状態に維持されている。成膜装置116の中央部には中央室115があり、中央室115内には、各チャンバー室111にTFTを搬入、あるいは、各チャンバー室111から搬出する搬送ロボット(図示せず)が設置されている。搬送ロボットは、チャンバー室111から移動ステージ51等を搬出し、方向を変更して、次の工程のチャンバー室111に搬入する。
【0238】
発光層17などを改質させるレーザ装置58は、レーザ装置室118内に設置されており、TFT基板52はロードロック室(LL:load lock chamber)を経由してレーザ装置室118に搬入される。TFT基板52は、カソード電極19を形成後、あるいは、封止膜20、封止フィルム27による封止後、搬出室114から搬出される。
【0239】
搬入室113からTFT基板52は搬入され、正孔輸送層16を蒸着するチャンバー(HTL)111cに搬入される。チャンバー室111cで、図10(a)、図11(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0240】
次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。図10(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0241】
発光層17Rの形成工程では、従来の製造方法のように、画素37Rに対応した位置に開口が設けられたファイン蒸着マスク251Rは使用しない。発光層17Rは、表示画面36全体に、蒸着工法を使用して、連続膜として形成される。つまり、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bに共通に、かつ連続して発光層17Rが形成される。発光層17Rの形成には、発光層17Rが表示画面36内に蒸着されるように、表示画面36に開口部を有するラフ蒸着マスク(図示せず)を使用する。
【0242】
図10などの本発明の実施例において、EL表示パネルに、土手95を図示しているが、土手95は必ずしも必要な構成物ではない。土手95は、ソース信号線35上、ゲート信号線34上、画素電極15の周辺部に形成され、電界の遮蔽効果を発揮する。土手は可視光を吸収する色素、染料を添加した材料で形成する。
TFT基板52は、中央室115で搬送ロボットにより方向転換され、ロードロック室112を経由して、レーザ装置室118に搬入される。
【0243】
レーザ装置室118では、図10(b)に図示するように、TFT基板52の発光層17にレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。レーザ光59aは、画素電極15Rの上方の発光層17Rには照射されない。レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質部96aとなる。
【0244】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59aを吸収し、共有結合鎖が切断される。酸素の無い蒸着室56で共有結合鎖が切断されると、共有結合鎖のラジカルは二重結合を生成したり、他の共有結合鎖の原子を引き抜き結合したり、他の共有結合鎖と架橋構造を生成したりと構造に変化が生じる。
画素電極15Rに対応した発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59aが照射されていない。したがって、発光するゲスト材料としての性能を維持する。
【0245】
本発明の実施例では、EL素子22を形成する各有機膜は、蒸着工法で形成するとして説明するが、これに限定するものではない。インクジェット方式あるいは印刷方式により、電子輸送層18、正孔輸送層16、発光層17などを形成してもよいことは言うまでもない。たとえば、発光層17はホスト材料とゲスト材料とが溶剤に溶解されて、インクジェット方式で画素電極15の上方に発光層17として形成される。インクジェット方式で発光層17Rを形成し、発光層17Rにレーザ光59を照射して改質させる方式あるいはEL表示パネル(装置)の構成も本発明の技術的範疇である。
【0246】
また、本発明は、理解を容易にするため、主としてゲスト材料が光を吸収し、発光層17が改質するとしたが、これに限定するものではない。たとえば、発光層17が、Alq3のような単一の有機膜で形成されている場合、この単一の有機膜に光を照射し、単一の有機膜を改質させる方式あるいはEL表示パネル(装置)の構成も本発明の技術的範疇である。また、正孔輸送層などにレーザ光59を照射し、改質させる方式あるいはEL表示パネル(装置)も本発明の技術的範疇である。
【0247】
レーザ光59は、波長λが300nm以上420nm以下の紫外光である。さらに好ましくは、レーザ光59は、波長λが310nm以上400nm以下の紫外光である。
【0248】
次に、TFT基板52は、ロードロック室112を経由して中央室115に搬入され、チャンバー室(EML(G))111bに搬入される。チャンバー室111bでは、図10(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層17Gを蒸着工法により積層させる。
【0249】
発光層17Gの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Gはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Gが形成される。
TFT基板52は、中央室115で搬送ロボットにより、方向転換され、ロードロック室112を経由して、レーザ装置室118に搬入される。
【0250】
レーザ装置室118では、図10(d)に図示するように、TFT基板52の発光層17Gにレーザ光59bの照射を行う。レーザ光59bは、画素電極15Bの上方の発光層17Gに照射する。レーザ光59bは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gには照射されない。レーザ光59bの照射部で、発光層17Gは改質され、改質部96bとなる。
【0251】
発光層17Gのゲスト材料は、発光層17Rのゲスト材料に比較して励起エネルギーが大きい場合が多い。励起エネルギーが大きいゲスト材料は、吸収する波長が短波長になる場合がある。その場合は、レーザ光59bの波長は、レーザ光59aより波長が短いレーザ光を選定する。たとえば、レーザ光59bは、波長λが300nm以上約380nm以下の紫外光である。レーザ光59aは、波長λが310nm以上400nm以下の紫外光である。または、レーザ光59aとレーザ光59bの波長を同一とし、レーザ光59aとレーザ光59bとの単位面積あたりの強度を異ならせる。
【0252】
画素37B(画素電極15B)の上方の発光層17Gは、レーザ光59bを吸収し、改質する。画素37B(画素電極15B)の上方の発光層17Gは改質部96bとなる。したがって、前記発光層17Gのゲスト材料は改質されて励起できない。発光層17Gはホスト材料として機能する。
【0253】
画素電極15Gの上方の発光層17Rは改質部96aとし、画素電極15Bの上方の発光層17Gは改質部96bと記載している。改質部96aと改質部96bはゲスト材料などが異なり、物理的あるいは物性的性質が異なることが多い。しかし、改質部96aと改質部96bは物性的性質が同一である、あるいは類似することも多い。したがって、改質部96aと改質部96bは、同一だとして改質部96としてもよい。
【0254】
図11(a)に図示するように、TFT基板52は、中央室115を経由して、チャンバー室(EML(B) ETL)111eに搬入される。図10(e)に図示するように、発光層17Bを、発光層17Gの上方に積層させる。発光層17B材料の蒸着は、ホスト材料と青色発光のゲスト材料を真空中で、真空蒸着により発光層17G上に共蒸着させて積層させる。
【0255】
発光層17Bの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Bはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36の全体に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Bが形成される。
【0256】
次に、図10(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層としてのLiFあるいはLiqなどを形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。カソード電極19には、アルミニウム、銀、銀・マグネシウム(MgAg)合金、カルシウムなどを用いる。
【0257】
カソード電極19は、例えば真空蒸着により発光層17Bの上方に積層させる。この真空蒸着では、EL表示パネルの表示領域にカソード電極材料が蒸着されるように、ラフ蒸着マスクを使用する。これにより、カソード電極19は、表示領域全体に連続膜として形成される。
【0258】
次に図10(f)に図示するように、カソード電極(陰極)19を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、封止層20を形成する。
【0259】
例えば、アモルファス窒化シリコンからなる封止層20を形成する場合には、CVD法によって2~3μmの膜厚に形成する。この際、有機層の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に近い、摂氏15℃以上25℃の範囲に設定する。
【0260】
また、SiONなどをCVDで形成した後、アクリル系、エポキシ系の有機材料などを形成して、封止層20としてもよい。封止層20上には、封止フィルム27を貼り付け、防湿対策をすることが好ましい。次に、EL表示素子がTFT基板52と封止基板とシール層とによって取り囲まれるように、TFT基板52と封止基板とをシール層を介して貼り合わせる。
【0261】
または、TFT基板52は薄膜封止技術で封止する。薄膜封止技術は、TFT基板52上に極めて薄い無機膜と有機膜を多層に積層して形成する。無機膜(通常厚さ1μm未満)と有機膜(通常厚さ6μm以上)が交互に重なったマルチレイヤー構造を持つ。無機膜は主に酸素や水分の侵入を防いでEL素子22を保護する。
【0262】
TFT基板25は搬出室114を経由して、成膜装置116から搬出される。なお、EL表示パネルの光出射側には、表示コントラストを良好なものとするため、円偏光板(円偏光フィルム)29を貼り付け、あるいは配置する。
【0263】
図10の実施例では、レーザ光59aを発生するレーザ装置、レーザ光59bを発生するレーザ装置58を設置すると説明したが、本発明はこれに限定するものではない。可変波長の光を発生させる1台のレーザ装置58で、レーザ光59aとレーザ光59bを発生させてもよい。また、レーザ光59aまたはレーザ光59bのいずれかのレーザ光を発生する複数台のレーザ装置58を設置してもよいことは言うまでもない。レーザ光59aとレーザ光59bとは波長を異ならせても良い。
【0264】
以上の実施例では、発光層17を形成後、レーザ光59を照射して発光層17を改質するとして説明したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、蒸着により発光層17を形成しつつ、レーザ光59を照射して、前記発光層17を改質または除去してもよい。
【0265】
本発明のEL表示パネルは、複数色の画素37がマトリックス状に配置されている。EL表示パネルは、少なくも一色の画素に、第1の色の発光層17aが成膜され、その上に第2の色の発光層17bが成膜されている。第1の色の発光層17aの発光波長は、第2の色の発光層17bの発光波長よりも長い。前記第1の色の発光層17aのゲスト材料は、前記第2の色の発光層17bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
【0266】
また、本発明のEL表示パネルは、少なくも一色の画素に、第1の色の発光層17aが成膜され、その上に第2の色の発光層17bが成膜されている。前記第1の色の発光層17aに、レーザ光59などの狭指向性の光を照射し、前記第1の色の発光層17aを改質させて非発光層にする。前記第2の色の発光層17bが発光する。
【0267】
本発明は、複数色の画素37がマトリックス状に配置されたEL表示パネルに限定されるものではない。本発明の表示パネルは、表示部あるいは表示画面36に複数個所の発光する部分が形成されており、前記発光する部分に複数の発光層17が積層されている。前記複数の発光層17のうち、長波長の発光層17に、ファイン蒸着マスク251などを使用せず、レーザ光59などの狭指向性の光が照射され、前記長波長の発光層17が改質されていることを特徴とするものである。
【0268】
たとえば、画素電極15の上方に赤色の発光層17Rと緑色の発光層17Gの2層の発光層が積層されている場合、赤色の発光層17Rを改質することにより、赤色の発光層17Rは発光せず、緑色の発光層17Gのみが発光し、前記画素電極15を有する画素37は緑色で発光する。
【0269】
本発明の製造方法、製造装置では、発光層17R、発光層17G、発光層17Bを形成するために、少なくともいずれかの発光層17の形成時に、ファイン蒸着アスク251を使用しない。本発明では、発光する発光層17R、発光層17G、発光層17Bを形成するために、少なくともいずれかの発光層17にレーザ光59などの狭指向性の紫外線波長の光を照射する。
【0270】
レーザ光59の照射位置の制御は、ガルバノミラー62あるいは、移動ステージ(リニアステージなど)により高精度に位置決めを行うことができる。また、位置決めは、TFT基板52の画素37位置に対応させて容易に設定することができる。したがって、画素37形状、画素37配置、画素37数が異なるEL表示パネルを、容易に品種変更して製造することができる。また、製造装置の設備コストも非常に安価である。
【0271】
従来のファイン蒸着マスク251を使用する製造方式では、画素37が高精細の場合は、ファイン蒸着マスク251の蒸着穴(マスク開口部)が小さくなるためファイン蒸着マスク251の蒸着穴の加工が困難である。また、ファイン蒸着マスク251を、EL表示パネルの画素37位置に合わせて位置決めすることが困難であるという課題があった。また、テレビ用の大型EL表示パネルの製造に使用するファイン蒸着マスク251は、大面積となり、重量が重い。したがって、ファイン蒸着マスク251を位置決めする搬送ロボットも大型になるという課題があった。
【0272】
本発明の製造方式、製造装置では、レーザ光59を画素37に照射することにより、発光層17の発光色を決定する。紫外線波長のレーザ光59のスポットサイズは、直径10μ以下が実現可能である。また、レーザ光59は、ガルバノミラー62の制御により、高速に位置決めできる。また、EL表示パネルサイズが広面積であっても、レーザ光59は、ガルバノミラー62の制御により、また、移動ステージ51などを移動させることにより、EL表示パネルの周辺部から中央部のいずれの位置にでも、高速に位置決めできる。また、ファイン蒸着マスク251の位置決めが不要であり、レーザ光59の制御だけであるので、製造設備は安価であり、製造タクトも短くすることができる。
【0273】
以上の事項から、本発明の製造方式では、画素37が高精細であっても、EL表示パネルサイズが広面積であっても、EL表示パネルを低コストで製造することができる。また、優れた表示品位と高い製造歩留まりとを実現できる。
【0274】
以上の実施例では、発光層17を改質には、レーザ装置58を使用するとして説明をした。しかし、本発明は、これに限定するものではない。たとえば、改質させる光として、紫外線光を発生するLED(light‐emitting diode)を使用してもよい。LEDは、発光素子が小さいため狭指向性の光を発生することができる。
図12は、LED122を用いた光発生器の説明図である。また、図13は、図12の光発生器を用いた発光層17の改質方法の説明図である。
【0275】
光発生器の基板123は、LED122が発生する熱を放熱するため、金属板またはセラミック板を基材として使用されている。基板の裏面には、放熱板(図示せず)を取り付ける。
【0276】
基板123には、紫外線光を発生するLED122が取り付けられている。LED122の発光部のサイズ(縦長さC、横長さB)は、画素37の改質させる領域のサイズと略一致させている。あるいは、発光部のサイズ(縦長さC、横長さB)は、画素37の改質させる領域のサイズよりも小さくしている。
【0277】
また、LED122の発光部の前にレンズ(図示せず)などを配置し、LED122が発生した紫外線光を画素37の略全体に照射できるように構成してもよい。LED122が発光すると、画素37の所定色の画素電極15の上方に形成された発光層17を改質できる。
【0278】
LED122の縦方向の実装位置Eは、画素37のピッチと一致させている。LED122の横方向の実装位置Dは、画素37の列ピッチと略一致させている。あるいは、LED122の縦方向の実装位置E、LEDの横方向の実装位置Dは、画素ピッチのN倍(Nは1以上の正数)としている。
【0279】
LEDの実装されている長さFは、EL表示パネルの第1行目から最終画素行目の長さである。したがって、長さFに実装させているLED個数は、EL表示パネルの画素行数と一致する。あるいは、長さFは、EL表示パネルの第1行目から最終画素行目の長さの1/N(Nは1以上の正数)にしている。
【0280】
図12では、図示を容易にするため、LED122の実装列は2列としたが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、LED122の実装列を3列以上にしてもよい。また、LED122の実装列または実装行数は、表示パネルの画素列または画素行数としてもよい。この場合は、図13に図示するように、光発生器はA方向に移動させる必要はない。EL表示パネルに光発生器を位置決めして、LED122を発光させればよい。
【0281】
図12に図示するように、LED122aとLED122bが発生する光の波長を異ならせてもよい。たとえば、LED122aが図10で説明したレーザ光59aの主波長の光を発生させ、LED122bがレーザ光59bの主波長の光を発生させるように構成してもよい。
【0282】
図12(b)は、図12(a)のAA’線での断面図である。LED122の周囲には、LED122が発生した紫外線光を吸収する光吸収材121が形成されている。LED122aは、紫外線光141aを発生させ、LED122bは、紫外線光141bを発生させる。光吸収材121として、アクリル樹脂あるいはエポキシ樹脂にカーボンを添加したものが例示される。
【0283】
図13(a)(b)に図示するように、光発生器はTFT基板52の画素電極15位置に一致させて配置される。また、光発生器は、画素列または画素行ピッチで移動し、移動した位置で、LED122が発光し、画素37の発光層17を改質させる。
【0284】
2画素列または2画素行を同時に改質させる場合は、LED122aとLED122bの両方が発光する。1画素列または1画素行を改質させる場合は、LED122aまたはLED122bの一方が発光する。
【0285】
LED122は、連続的に発光させてもよいし、パルス状に発光させてもよい。また、LED122aとLED122bは、対象の発光層17材料などに適合させて、発光波長を異ならせてもよい。
【0286】
以上のように、本発明は、紫外線光59を発生する光発生手段は、レーザ装置58に限定するものではない。ファイン蒸着マスク251を介さず、画素37位置に対応させて、紫外線光等の光を照射できる光発生手段であればいずれの手段であってもよい。また、光発生手段を、赤外光を発生する手段とすることにより、図18等の熱転写装置の光発生源58としても適用できることは言うまでもない。
【0287】
光発生器のLED122を赤外発光のLEDとすることにより、図18図19図21で図示する熱転写装置の光発生源として使用できることは言うまでもない。図13と同様に、TFT基板52と光発生器間にドナーフィルム197を配置し、光発生器の赤外発光のLED122が発生する光で、ドナーフィルム197の転写有機膜195を過熱して、発光層17を形成すればよい。
【0288】
図12(a)に図示する光発生器のLED122aを赤外発光のLEDとし、LED122bを紫外線発光のLEDとすれば、光発生器は発光層17の構成材料の改質と熱転写用とを兼用した装置として構成できる。また、図20で説明する付着物201を除去する光発生器として使用することができる。
【0289】
LED122が発生する光は、レーザ光のように単一波長ではなく一定の波長帯域を有している。したがって、LED122が発生する光は、主波長が310nm以上400nm以下の紫外線光を発生するものを採用する。
【0290】
以下、図面を参照しながら、本発明の第2の実施例について説明をする。図14図15は本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0291】
図14において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層(EML(R))17Rおよび発光層(EML(GB))17GBが形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層(EML(R))17Rおよび発光層(EML(GB))17GBが形成されている。
【0292】
発光層(EML(GB))17GBは、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料を含有している。青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とは、吸収する光の波長が異なる。
【0293】
緑色の画素電極15G上方には、発光層(EML(R))17Rは、レーザ光59aが照射されて改質されている。また、発光層(EML(GB))17GBにレーザ光59bが照射されて、発光層(EML(GB))17GBの青色のゲスト材料が改質されている。
【0294】
青色の画素電極15B上方には、発光層(EML(R))17Rは、レーザ光59aが照射されて改質されている。また、発光層(EML(GB))17GBにレーザ光59cが照射されて、発光層(EML(GB))17GBの緑色のゲスト材料が改質されている。
【0295】
以下、図面を参照しながら、本発明の第2の実施例の製造方法について説明をする。図11(a)の搬入室113からTFT基板52は搬入され、チャンバー(HTL)111cに搬入される。図15(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0296】
次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。図10(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。発光層17Rは、表示画面36全体に、連続膜として形成される。
【0297】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入される。レーザ装置室118では、図15(b)に図示するように、TFT基板52の発光層17Rにレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。レーザ光59aは、画素電極15Rの上方の発光層17Rには照射しない。レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質部96aとなる。画素電極15Rの上方の発光層17Rは、レーザ光59aが照射されていないため、発光するゲスト材料としての性能を維持する。
【0298】
次に、TFT基板52は、ロードロック室112を経由して中央室115に搬入され、チャンバー室(EML(G))111bに搬入される。チャンバー室111bでは、図15(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層(EML(GB))17GBを積層させる。
【0299】
発光層(EML(GB))17GBは、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とを含有している。青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とは、吸収するレーザ光59の波長が異なる。発光層(EML(GB))17GBに照射するレーザ光59の波長を変更することにより、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料を選択して改質することができる。
【0300】
図3(c)に図示するように、ホスト材料は、レーザ光59a、レーザ光59b、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。あるいは、レーザ光59を透過する材料を選択する。
【0301】
当該材料がレーザ光などの光を「吸収しにくい」という概念は、当該材料が前記光を吸収しないことの他、前記レーザ光などの光を反射すること、あるいは前記レーザ光などの光を透過することをも含む。また、レーザ光などの光を吸収しても、当該材料あるいはその構成物が変化しないことをも含む。
【0302】
ゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収しやすい材料を選定する。ゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収しやすく、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。ゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収しやすく、レーザ光59bを吸収しにくい材料を選定する。
【0303】
好ましくは、図3(c)に図示するように、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Bの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Gの吸収率が25%以下となるゲスト材料Gの材料を選定する。また、レーザ光59cの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Bの吸収率が100%とした時、ホスト材料の吸収率が25%以下となるホスト材料を選定する。
吸収率が100%は透過率0%、吸収率が0%は透過率100%、吸収率75%は透過率25%、吸収率25%は透過率75%と読み替えてもよい。
【0304】
図15(d)に図示するように、緑色の画素電極15G上方には、発光層(EML(GB))17が形成されている。発光層(EML(GB))17には、青色の発光に寄与するゲスト材料Bと、緑色の発光に寄与するゲスト材料Gを含有している。図3(c)に図示するように、レーザ光59bの波長は、レーザ光59cの波長よりも短波長である。ゲスト材料Bは、ゲスト材料Gよりも短波長の光をよく吸収する。
【0305】
緑色の画素電極15G上方の発光層(EML(GB))17に、レーザ光59bを照射すると、発光層(EML(GB))17のゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収し改質される。発光層(EML(GB))17のゲスト材料Gはレーザ光59bを吸収しない。発光層(EML(GB))17は、ゲスト材料Gが発光可能な状態を維持されるため、発光層(EML(GB))17は、緑発光する発光層17Gとなる。
【0306】
図15(e)に図示するように、青色の画素電極15B上方には、発光層(EML(GB))17が形成されている。発光層(EML(GB))17に、レーザ光59cを照射すると、発光層(EML(GB))17のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収し改質される。ゲスト材料Bはレーザ光59bを吸収しない。発光層(EML(GB))17は、ゲスト材料Bが発光可能な状態を維持されるため、発光層(EML(GB))17は、青発光する発光層17Bとなる。
【0307】
次に、図15(f)に図示するように、発光層17GBの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層としてのLiFまたはLiqを形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。また、電子輸送層18上にカソード電極19を形成する。
【0308】
図14の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層17GBの緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層17GBの緑ゲスト材料の発光スペクトルは、青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0309】
画素電極15RのR上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能である。画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rはほとんど消光するか、または励起されない。
【0310】
画素電極15Gの上方の発光層17GBが含んでいる青ゲスト材料Bは、レーザ光59bの照射により、ほとんど消光するか、または励起されない。画素電極15Bの上方の発光層17GBが含んでいる緑ゲスト材料Gは、レーザ光59cの照射により、ほとんど消光するか、または励起されない。
【0311】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層17GBの緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0312】
すなわち、画素電極15Rの上方の発光層17GBでは、緑ゲスト材料G、青ゲスト材料Bも励起することが可能である。発光層17GBの緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
【0313】
画素電極15Gの上方の発光層17Rでは、含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されているため励起しない。また、発光層17GBの青ゲスト材料Bはレーザ光59bが照射されているため励起しない。そのため、発光層17GBは、緑で発光する。したがって、画素電極15Gの画素37は、緑で発光する。
【0314】
なお、画素電極15Gの上方の発光層17GBでは、発光層17GBの緑ゲスト材料Gが、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを良好に吸収する材料あるいはEL素子22の構成では、画素電極15Gの上方の発光層17GBが含んでいる緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。したがって、発光層17GBは、緑で発光する。この場合は、図15(d)において、画素電極15Gの上方の発光層17GBにレーザ光59bを照射する工程を削除することができる。
【0315】
画素電極15Bの上方の発光層17Rでは、含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されているため励起しない。また、発光層17GBの緑ゲスト材料Gはレーザ光59cが照射されているため励起しない。そのため、発光層17GBは、青で発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青で発光する。
【0316】
以下、図面を参照しながら、本発明の第3の実施例について説明をする。図16図17は本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0317】
図16において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Gおよび発光層17Bが形成されている。
青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gには、光が照射されて、発光層17Gの緑色のゲスト材料が改質されている。
【0318】
以下、図面を参照しながら、本発明の第3の実施例の製造方法について説明をする。図17(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。
【0319】
図17(b)に図示するように、TFT基板52に、赤色の発光層17Rを形成するために、ファイン蒸着マスク251Rを配置する。ファイン蒸着マスク251Rは、赤の画素位置に開口部を有するマスクである。
【0320】
赤色の発光層材料172Rを蒸発させ、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。共蒸着は真空工程で実施される。
【0321】
ファイン蒸着マスク251の開口部以外の部分(蒸着材料の遮蔽部分)を、樹脂フィルム、ガラス材料などのように光透過性を有する部材で形成してもよい。特にレーザ光59を透過するような部材で形成することが好ましい。光透過性を有するように構成することにより、図17(d)のレーザ光59を照射する際、ファイン蒸着マスク251をTFT基板52等の上に配置したまま、発光層17等の改質工程を実施することができる。
【0322】
また、ファイン蒸着マスク251は、発光層17等を蒸着する際に仕様するとして説明するが、蒸着材料の蒸着で使用することに限定されるものではない。たとえば、インクジェット方式により発光層17を形成する場合にも使用することができる。インクジェット工程で、インクをファイン蒸着マスク251の開口部を介して、画素15に滴下させる。
【0323】
ファイン蒸着マスク251は、画素15形状あるいは表示領域(たとえば、文字、パターン)単位に一致させて色を塗り分けする開口部を有するマスクである。したがって、TFT基板52のみに対応するものでないことは言うまでもない。
【0324】
次に、TFT基板52は、チャンバー室111bに搬入される。チャンバー室111bでは、図17(c)に図示するように、発光層17Gを積層させる。発光層17Gには、緑色のゲスト材料が含有されている。
【0325】
次に、TFT基板52は、図11(a)で示すレーザ装置室118に搬入される。図17(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59が照射される。レーザ光59を照射すると、発光層17Gのゲスト材料Gは、レーザ光59を吸収し改質される。
緑色の画素電極15Gの上方の発光層17Gにはレーザ光59が照射されていないため、発光層17Gのゲスト材料Gが発光可能な状態が維持されている。
【0326】
次に、図17(e)に図示するように、発光層17Bが形成される。発光層17Bは、ゲスト材料Bが発光可能な状態を維持されるため、発光層17Bは、青発光する発光層となる。
【0327】
次に、図17(f)に図示するように、発光層17GBの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0328】
図16の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層17Gの緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層17Gの緑ゲスト材料の発光スペクトルは、発光層17Bの青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0329】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層17Gの緑ゲスト材料Gおよび発光層17Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0330】
発光層17Gの緑ゲスト材料Gは、発光層17Bの青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。図16の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17は、赤色で発光する。
【0331】
画素電極15Gの上方の発光層17Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bの青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0332】
発光層17Gの緑ゲスト材料Gは、発光層17Bの青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。図16の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層17は、緑色で発光する。
【0333】
画素電極15Bの上方の発光層17Gでは、含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59が照射されて励起しない。発光層17Bは、青で発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青で発光する。
【0334】
なお、図17の本発明の製造方法では、ファイン蒸着マスク251で、発光層17Rを形成することを例示して説明したが、これに限定するものではない。たとえば、発光層17をレーザ熱転写方式、インクジェット方式あるいは印刷方式で形成してもよい。
【0335】
また、発光層17G、発光層17Bなどの他の発光層をファイン蒸着マスクで形成することも、本発明の技術的範疇である。また、発光層17に限定されるものでなく、たとえば、正孔輸送層16を形成してもよい。ファイン蒸着マスク251を使用して正孔輸送層16を形成することにより、たとえば、図1に図示するように、正孔輸送層16R、正孔輸送層16G、正孔輸送層16Bの膜厚を容易に変更して形成できる。
【0336】
以下、図面を参照しながら、本発明の第4の実施例について説明をする。まず、本発明のEL表示パネルの製造装置の1つであるレーザ熱転写装置について説明する。
【0337】
図18は、本発明のEL表示パネルの製造装置の1つであるレーザ熱転写装置の説明図である。レーザ熱転写装置のレーザ装置58の関連部材、制御装置、制御方法、動作等などに関する事項は、図4図5図6などを用いて説明しているので説明を省略する。
【0338】
レーザ装置58が発生するレーザ光59は、発光層17などを改質させる場合は、紫外線領域の光であるのに対して、レーザ熱転写の場合は、赤外線領域の光であることが異なる。
【0339】
図11(b)は、本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造装置の説明図である。レーザ熱転写装置は、図11(b)の転写装置室117に配置されている。TFT基板52は、ロードロック室112aを介して、転写装置室117に搬入される。なお、図11(a)と図11(b)の差異は、チャンバー室111dが、ロードロック室112aおよび転写装置117となっている点である。
【0340】
転写有機膜195の転写装置は、図18に図示するように、ドナーフィルム197に照射するレーザ光59dを発生させるレーザ装置58を具備する。図19は転写工程において、レーザ装置58により、ドナーフィルム197にレーザ光59dを照射する動作を説明する説明図である。
【0341】
レーザ熱転写装置は、TFT基板52が置かれる移動ステージ182と制御機構185を具備する。制御機構185の支持機構183は、TFT基板52上に配置されるドナーフィルム197を保持する。支持機構183は、TFT基板52とドナーフィルム197との間隔を調節できるように、昇降機構184を具備する。また、移動ステージ182には、TFT基板52とドナーフィルム197間に存在するガスを外部に排出させる排気口181を有する。
【0342】
制御機構185aはドナーフィルム197の一端部を支持する支持機構183aと昇降機構184aを備える。制御機構185bはドナーフィルム197の他端部を支持する支持機構183bと昇降機構184bを備える。支持機構183aと支持機構183bとは、独立して、移動ステージ182上で、ドナーフィルム197を昇降させることができる。
【0343】
昇降機構184aは、移動ステージ182上で上下に移動させる。支持機構183bは、ドナーフィルム197の他端部を固定する。昇降機構184bは、移動ステージ182上でドナーフィルム197を上下に移動させる。
【0344】
支持機構183は、ドナーフィルム197がTFT基板52上に配置されるようにドナーフィルム197を支持する。支持機構183、昇降機構184は、ドナーフィルム197の両端部を支持してドナーフィルム197をTFT基板52に対して上下に移動させることができる。
【0345】
移動ステージ182は、2つの排気口181a、排気口181bをさらに備える。排気口181は、転写装置室117内部と外部とを連結する通路である。排気口181を通じて移動ステージ182上に置かれるTFT基板52と、TFT基板52上に配されるドナーフィルム197との間に存在するガスが、転写装置室117の外部に排出される。
【0346】
移動ステージ182は、移動するための駆動手段(図示せず)をさらに備えている。例えば、レーザ59がTFT基板52の法線方向に照射される場合、横方向に移動ステージ182を移動させる駆動手段(機構)を有する。
【0347】
支持機構183は昇降機構184により、TFT基板52の法線方向に、上昇または下降できる。制御機構185aと制御機構185bは、独立して動作制御することができ、また、独立して上昇、降下の制御をすることができる。
【0348】
加圧ローラー186は、ドナーフィルム197上に配置され、TFT基板52に向かってドナーフィルム197上に圧力を加えることができる。加圧ローラー186は、ドナーフィルム197とTFT基板52との接着工程時、ドナーフィルム197にTFT基板52に向かって圧力を加えて、ドナーフィルム197とTFT基板52とを密着させる。加圧ローラー186は、ドナーフィルム197とTFT基板52との剥離工程時、TFT基板52に転写された転写有機膜195がはがれることを防止できる。
【0349】
支持機構183は、TFT基板52とドナーフィルム197との接着工程前に、TFT基板52と離隔されるようにドナーフィルム197を移動させる。排気口181は、TFT基板52とドナーフィルム197との空間に存在するガスを外部に排出させる。
【0350】
支持機構183は、ドナーフィルム197の一端部および他端部から外部に延びる方向に引っ張る。ドナーフィルム197を引っ張ることにより、支持機構183は、ドナーフィルム197がTFT基板52に向かって垂れ下がることを防止する。
【0351】
図18に図示するように、剥離工程時には、まず、支持機構183aがドナーフィルム197の一端部を持ち上げることによって、加圧ローラー186は、ドナーフィルム197の一端部から一端部に対向する他端部に沿って移動する。加圧ローラー186によりドナーフィルム197に圧力を加えることによって、TFT基板52に転写された転写有機膜195が剥離工程中にはがれることを防止できる。
【0352】
ドナーフィルム197とTFT基板52との剥離工程時は、支持機構183bが停止した状態で、支持機構183aが上昇する。ドナーフィルム197は支持機構183aに近い側からドナーフィルム197の一端部からTFT基板52が分離される。
【0353】
支持機構183aの上昇が完了すると、支持機構183bが上昇を開始する。ドナーフィルム197は支持機構183bに近い側のドナーフィルム197が上昇し、ドナーフィルム197とTFT基板52とが分離される。
【0354】
本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造方法は、レーザ熱転写法を利用する。レーザ熱転写法は、移動ステージ182上にTFT基板52を配置する工程と、TFT基板52とドナーフィルム197との間に存在するガスを除去する工程と、ドナーフィルム197とTFT基板52とを接着する工程と、ドナーフィルム197の転写有機膜195をTFT基板52に転写する工程と、ドナーフィルム197とTFT基板52とを剥離する工程とを実施する。
図19は、本発明の第4の実施例で使用するドナーフィルム197の構成、およびドナーフィルム197を用いた製造方法を説明するための説明図である。
【0355】
ドナーフィルム197のベースフィルム191は透明性高分子から構成されている。透明性高分子としては、ポリエチレンテレフタルレートのような、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリスチレンなどが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタルレートフィルムを用いることが好ましい。
【0356】
ドナーフィルム197のベースフィルム191は、支持フィルムとしての光学的性質と機械的安全性を有しなければならない。ベースフィルム191の厚さは10μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0357】
ベースフィルム191に光学変換膜192が形成される。光学変換膜192は、赤外線-可視光線領域のレーザ光59d等を吸収して光の一部を熱に変換させる層である。光学変換膜192は、光吸収性物質を含む。
【0358】
光学変換膜192として、例えば、アルミニウム酸化物またはアルミニウム硫化物を光吸収性物質に含む金属膜、カーボンブラック、黒鉛や赤外線染料を光吸収性物質に含む高分子有機膜がある。金属膜の場合は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法またはスパッタリングを用いて100Å以上5000Å以下の厚さに形成することが好ましく、有機膜の場合は、一般のフィルムコーティング方法であるロ-ルコーティング(roll coating)、グラビア(gravure)、圧出(extrusion)、スピン(spin)、およびナイフ(knife)コーティング方法を用いて0.1μm以上10μm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0359】
また、光学変換膜192として、鉄・コバルト・ニッケルなどの金属磁性体を用いることもできる。その他、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石の材料物質も用いることができる。
【0360】
なお、ドナーフィルム197を構成するベースフィルム191は、樹脂材料からなるフィルムとして説明するが、本発明はこれに限定するものではない。ベースフィルム191は、ガラスのように無機材料の板で構成してもよいことは言うまでもない。したがって、ドナーフィルムは、フィルムに限定されるものではなく、光学変換膜192、転写有機膜195が形成されたシート状のものであれば、いずれの構成物であってもよい。
【0361】
ベースフィルム191に光学変換膜192が形成される。光学変換膜192は、赤外線-可視光線領域のレーザ光59dを吸収して光の一部を熱に変換させる層である。光学変換膜192として、例えば、アルミニウム酸化物、アルミニウム硫化物を光吸収性物質に含む金属膜、カーボンブラック、黒鉛がある。
【0362】
光学変換膜192上に中間膜193を形成することができる。中間膜193は、光学変換膜192に含まれた光吸収性物質、例えば、カーボンブラックが、後続の工程で形成される転写有機膜195を汚染することを防止する役割をする。
【0363】
中間膜193はアクリル樹脂またはアルキド樹脂で形成することができる。光学変換膜192上に中間膜193を形成する場合は、中間膜193上にさらにバッファ膜194を形成することが好ましい。
【0364】
バッファ膜194は、転写有機膜195に形成される有機膜などの損傷を防止し、中間膜193と転写有機膜195との接着力を効果的に調節するために形成される。バッファ膜194は、レーザビーム透過率が20%以下の金属または金属酸化物を用いており、また、バッファ膜194の厚さは0.05μm以上1μm以下に形成する。
【0365】
バッファ膜194上に転写有機膜195が形成される。転写有機膜195は、発光層17、正孔注入層、正孔輸送層16、電子注入層、電子輸送層18などを形成するための有機材料である。
【0366】
一実施態様として、転写有機膜195は、有機薄膜形成用物質をコーティングして製造する。転写有機膜195としては、1つの有機層ではなく2つ以上の有機層を、必要に応じて積層することができる。
【0367】
図19に図示するように、TFT基板52と所定間隔分に離隔された位置にドナーフィルム197を配置した後、ドナーフィルム197に赤外波長あるいは可視波長のレーザ光59dを照射する。
【0368】
本発明の実施例において、画素37Rの発光層17Rを熱転写により形成することを例示して説明をするが、本発明はこれに限定するものではない。他の色の画素37の発光層17を形成してもよいことは言うまでもない。また、熱転写で形成するのは、発光層17に限定されるものではなく、たとえば、正孔輸送層16などの他の有機膜を形成してもよいことは言うまでもない。
【0369】
図19に図示するように、TFT基板52にドナーフィルム197を配置する。TFT基板52とドナーフィルム197との位置合わせは、図18に図示するように、制御機構185等により実施する。
【0370】
レーザ光59dは、ベースフィルム191を通過して光学変換膜192を加熱する。レーザ光59dにより光学変換膜192は、熱を放出する。光学変換膜192は膨張し、転写有機膜195がドナーフィルム197から剥離する。剥離した転写有機膜195aは、TFT基板52の画素電極15の上方に、発光層17Rとして積層される。
【0371】
積層した発光層17の厚みは、転写有機膜195の厚みに比例する。したがって、転写有機膜195の厚みを規定することにより、発光層17の膜厚を規定することができる。
【0372】
また、複数のドナーフィルム197を使用し、転写有機膜195を複数回、正孔輸送層16上に転写してもよい。複数回の転写により、発光層17の膜厚を規定の膜厚に精度よく形成できる。
【0373】
レーザ光59dは、固体、ガス、半導体、染料などのすべての汎用のレーザ光を使用することができる。中でも、波長が800nm以上の赤外線領域の波長のレーザ光を用いることが好ましい。たとえば、YAGレーザ、ガラスレーザ、炭酸ガスレーザが例示される。ヘリウムネオン(He-Ne)レーザも採用することができる。
【0374】
図11(b)、図21は、第4の実施例におけるEL表示パネルの製造方法および製造装置の説明図である。図11(b)において、TFT基板52は搬入室113から成膜装置116に搬入される。
【0375】
発光層17を熱転写する熱転写装置は、転写装置室117内に設置されている。TFT基板52はロードロック室112aを経由して転写装置室117に搬入される。 TFT基板52は正孔輸送層16を蒸着するチャンバー(HTL)室111cに搬入される。チャンバー室111cで、図21(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0376】
次に、TFT基板52は、発光層Rを転写する転写装置室117に搬入される。図21(b)に図示するように、TFT基板52と離隔された位置にドナーフィルム197を配置した後、ドナーフィルム197に赤外領域あるいは可視光領域の波長のレーザ光59dを照射する。レーザ光59dは、ベースフィルム191を通過して光学変換膜192を加熱する。
【0377】
放出された熱によって、ドナーフィルム197の光学変換膜192が膨張され、転写有機膜195aがドナーフィルム197から剥離する。剥離した転写有機膜195がTFT基板52の正孔輸送層16上に、発光層17Rとして所望するパターンと厚さに転写される。転写有機膜195aが発光層17Rとなる。
【0378】
図21(b)に図示するように、転写有機膜195が発光層17Rとして、TFT基板52に熱転写される。しかし、図20に図示するように、転写有機膜195は、赤色の画素電極15Rの上方だけでなく、土手95上に付着物201bとして付着することがある。また、赤色の画素電極15Rだけでなく、緑色の画素電極15Gの上方、青色の画素電極15Bの上方に付着物201aとして付着する場合がある。
【0379】
土手95上に付着した付着物201bは剥離し、画素電極15上に付着して不良原因になる場合がある。また、緑色の画素電極15Gの上方、青色の画素電極15Bの上方に付着した付着物201aは発光し、混色問題となる場合がある。
図20は、本発明のEL表示パネルの製造工程で発生する付着物201を改質あるいは除去する方法の説明図である。
【0380】
図20では、TFT基板52の上側からレーザ光59aを照射している。有機材料を改質させる方式では、TFT基板52の上側からでも下側からでもいずれでもよい。
【0381】
レーザ光59aで有機材料を除去させる場合は、TFT基板52の上側からレーザ光59aを照射することが好ましい。除去した有機材料は上方向に蒸発する。TFT基板52の下側からレーザ光59aを照射すると、除去した有機材料がTFT基板52に付着する場合がある。
【0382】
熱転写により、不要な箇所に付着した付着物201には、レーザ光59aを照射して改質させる。付着物201に紫外線帯域のレーザ光59aを照射する。紫外線波長のレーザ光59aの照射により付着物201のゲスト材料は改質される。改質により、付着物201は発光しなくなるか、除去される。
【0383】
レーザ光59aは、図4のレーザ光59と同様のものを使用できる。また、レーザ装置58も同様のものを使用できる。レーザ光59aの波長は紫外線領域の波長を使用する。
【0384】
レーザ光59aの照射により、付着物201は改質される。あるいは、レーザ光59aの照射により、付着物201は加熱され、蒸発し、画素電極15の上方から除去される。
【0385】
次に、TFT基板52は、チャンバー室(EML(G))111bに搬入される。チャンバー室111bでは、図21(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層17Gを蒸着工法により積層させる。
【0386】
発光層17Gの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Gはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36の全体に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Gが形成される。
【0387】
TFT基板52は、ロードロック室112bを経由して、レーザ装置室118に搬入される。レーザ装置室118では、図21(d)に図示するように、TFT基板52の発光層17Gにレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Bの上方の発光層17Gに照射する。レーザ光59aは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gには照射されない。レーザ光59aの照射部で、発光層17Gは改質され、改質部96bとなる。
画素電極15Rおよび画素電極17Gに対応した発光層17Gは、レーザ光59aが照射されていないため、発光層としての性能を維持している。
【0388】
次に、TFT基板52は、チャンバー室(EML(B) ETL)111eに搬入される。チャンバー室111eでは、図21(e)に図示するように、発光層17Gの上方に、発光層17Bを蒸着工法により積層させる。
【0389】
発光層17Bの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Bはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36の全体に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Bが形成される。
【0390】
次に、図21(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0391】
図21で説明したEL表示パネルの製造方法で製造されたパネル構造は、図16と同様である。図16のEL表示パネルの構造、動作については、説明しているので説明を省略する。第4の実施例では、図16の発光層17が、熱転写方法で形成されている点が異なる。
【0392】
図21の本発明の製造方法では、ドナーフィルム197等を用いて、発光層17Rを形成することを例示して説明したが、これに限定するものではない。たとえば、発光層17G、発光層17Bなどの他の発光層をドナーフィルム197等で形成することも本発明の技術的範疇である。また、発光層17に限定されるものでなく、たとえば、絶縁膜14を形成してもよい。ドナーフィルム197等を使用して絶縁膜14を形成することにより、たとえば、図1に図示するように、絶縁膜14R、絶縁膜14G、絶縁膜14Bの膜厚を容易に設定できる。
図22図23は本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0393】
図22において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層EML(GB)が形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層EML(GB)が形成されている。
発光層EML(GB)は、ホスト材料と、緑発光のゲスト材料と青色発光のゲスト材料とが共蒸着されて形成される。
【0394】
以下、図面を参照しながら、本発明の第5の実施例の製造方法について説明をする。図23(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、図23(b)に図示するように、TFT基板52に、赤色の発光層17Rを形成するために、ファイン蒸着マスク251Rを配置する。赤色の発光層材料172Rを蒸発させ、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0395】
次に、図23(c)に図示するように、発光層EML(GB)を積層させる。発光層EML(GB)は緑色発光のゲスト材料と青色発光のゲスト材料とを含有している。発光層EML(GB)は、ホスト材料、緑色発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料を共蒸着して形成する。
【0396】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、図23(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)に、レーザ光59cが照射される。レーザ光59cを照射すると、発光層EML(GB)の緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収し、改質部96となる。
【0397】
図3(c)に図示するように、ホスト材料および緑色のゲスト材料Bは、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収しやすい材料を選定する。
【0398】
好ましくは、図3(c)に図示するように、レーザ光59cの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、ゲスト材料Gの吸収率とゲスト材料Bの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。
緑色の画素電極15Gの上方の発光層17Gにはレーザ光59cが照射されていないため、発光層17Gのゲスト材料Gが発光可能な状態が維持されている。
【0399】
次に、図23(e)に図示するように、発光層EML(GB)の上方に電子輸送層18を形成し、図23(f)に図示するように、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0400】
図22の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層EML(GB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層EML(GB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルは、発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0401】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0402】
発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。図22の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17Rは、赤色で発光する。
【0403】
画素電極15Gの上方の発光層EML(GB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0404】
発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gは、発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。図22の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層EML(GB)は、緑色で発光する。
【0405】
画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)では、含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59cが照射されて励起しない。画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)では、青ゲスト材料Bが発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青色で発光する。
図24図25は本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0406】
図24において、赤色、緑色および青色の画素電極15の上方には、発光層EML(RGB)が形成されている。発光層EML(RGB)は、ホスト材料と、赤発光のゲスト材料、緑発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料とが共蒸着されて形成されている。
【0407】
以下、本発明の第6の実施例の製造方法について説明をする。図25(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、図25(b)に図示するように、TFT基板52に、発光層17RGBを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17RGBは、ホスト材料と、赤発光のゲスト材料、緑発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0408】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、図25(c)に図示するように、緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)に、レーザ光59aが照射される。レーザ光59aを照射すると、発光層EML(RGB)の赤色のゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収し、改質部96aとなる。
【0409】
図3(d)に図示するように、赤色のゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収しやすい材料を選定する。緑色のゲスト材料Gおよび青色のゲスト材料Bは、レーザ光59aを吸収しにくい材料を選定する。
【0410】
好ましくは、図3(d)に図示するように、レーザ光59aの波長で、ゲスト材料Rの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Gの吸収率が25%以下となるゲスト材料Gを選定する。また、ゲスト材料Rの吸収率とゲスト材料Gの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。好ましくは4倍以上となるように材料を選定する。
【0411】
赤色の画素電極15Rの上方の発光層17Rにはレーザ光59aが照射されていないため、発光層17RGBのゲスト材料R、ゲスト材料G、ゲスト材料Bが発光可能な状態が維持されている。
【0412】
次に、図25(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)に、レーザ光59bが照射される。レーザ光59bを照射すると、発光層EML(RGB)の緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59bを吸収し、改質部96bとなる。
【0413】
図3(d)に図示するように、緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59bを吸収しやすい材料を選定する。青色のゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収しにくい材料を選定する。
【0414】
好ましくは、図3(d)に図示するように、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、ゲスト材料Gの吸収率とゲスト材料Bの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。
【0415】
次に、図25(e)に図示するように、発光層EML(RGB)の上方に電子輸送層18を形成し、図25(f)に図示するように、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0416】
図24の画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)が含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルは、青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0417】
画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0418】
発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)が含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。図24の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17Rは、赤色で発光する。
【0419】
画素電極15Gの上方の発光層EML(RGB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層EML(RGB)の青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0420】
発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gは、発光層EML(RGB)の青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。図24の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層EML(RGB)は、緑色で発光する。
【0421】
画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)が含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59bが照射されて励起しない。また、発光層EML(RGB)が含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されて励起しない。画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)では、青ゲスト材料Bが発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は青色で発光する。
【0422】
以上の実施例では、画素電極15の上方の発光層17等にレーザ光59を照射し、発光層17等を改質するものであった。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
図26図27は本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0423】
図26図27の実施例は、隣接した画素37に連続した発光層17を形成し、該当の画素37の発光層17にレーザ光59を照射して、前記発光層17を除去するものである。
【0424】
図26において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Bが形成されている。
【0425】
以下、本発明の第7の実施例の製造方法について説明をする。図27(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0426】
図27(b)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として形成される。
【0427】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、図27(b)に図示するように、緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方の発光層17Rに、レーザ光59aを照射する。レーザ光59aの照射により、発光層17Rはレーザ光59aを吸収し、過熱されて蒸発する。発光層17Rは蒸発することにより除去される。
【0428】
図27(c)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Gを積層させる。発光層17Gは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として積層される。
【0429】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、図27(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59bを照射する。レーザ光59bの照射により、発光層17Gはレーザ光59bを吸収し、過熱されて蒸発する。発光層17Gは蒸発することにより正孔輸送層16上から除去される。
【0430】
図27(e)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Bを積層させる。発光層17Bは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として積層される。
次に、図27(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0431】
赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Gの3つの発光層が積層されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Gの2つの発光層が積層されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Gが積層されている。
【0432】
なお、図27(b)の工程で、発光層17Rは蒸発して除去されるが、発光層17Rの一部は残存する場合がある。しかし、残存した発光層17Rはレーザ光59aにより改質されているため、発光に寄与しない。また、図27(d)の工程で、発光層17Gは蒸発して除去されるが、発光層17Gの一部は残存する場合がある。しかし、残存した発光層17Gはレーザ光59bにより改質されているため、発光に寄与しない。
【0433】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0434】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bにおいても発光する可能性がある。発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Gが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じる。他の色の発光層17は、除去されているため、画素37Bは青色光を放出する。
したがって、レーザ光59で発光層17を除去することにより、赤色、緑色、青色の3原色を有するEL表示パネルを製造できる。
【0435】
図17の実施例では、ファイン蒸着マスク251を使用して発光層17を形成する実施例であった。本発明はこれに限定するものではない。ファイン蒸着マスク251を使用して発光層17以外の層を形成してもよい。
図28図29は本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0436】
図28図29の実施例は、図28の青色の画素37Bに図示するように、ファイン蒸着マスク251を使用して、2層の正孔輸送層16a、正孔輸送層16bを形成した実施例である。
【0437】
図28において、赤色の画素電極15Rの上方には、正孔輸送層16a、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gの上方には、正孔輸送層16a、発光層17G、発光層17Bが形成されている。青色の画素電極15Bの上方には、正孔輸送層16a、正孔輸送層16b、発光層17G、発光層17Bが形成されている。
【0438】
以下、本発明の第8の実施例の製造方法について説明をする。図29(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16aが形成される。
【0439】
次に、図29(b)に図示するように、TFT基板52にファイン蒸着マスク251Hが配置される。ファイン蒸着マスク251Hの穴を介して、正孔輸送層材料172Hが正孔輸送層16a上に積層させ、正孔輸送層16bとなる。
【0440】
次に、図29(c)に図示するように、TFT基板52にファイン蒸着マスク251Rが配置される。ファイン蒸着マスク251Rの穴を介して、発光層材料172Rが正孔輸送層16a上に積層させ、発光層17Rとなる。
【0441】
次に、図29(d)に図示するように、発光層17Gが形成される。発光層17Gは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17Gとして形成される。
【0442】
TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、図29(e)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59を照射する。レーザ光59の照射により、発光層17Gはレーザ光59を吸収し、改質される。
次に、図29(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0443】
赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Gの3つの発光層が積層されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Bの2つの発光層が積層されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17G、発光層17Bが積層されている。
【0444】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0445】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bにおいても発光する可能性がある。発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Gが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
【0446】
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じる。発光層17Gは、レーザ光59により改質されているので、発光に寄与しない。画素37Bは青色光を放出する。
【0447】
図1図10で説明した第1の実施例に、画素37にレーザ光59を照射し、照射した発光層17を改質させて、非発光層とした実施例であろ。しかし、本発明は、レーザ光59の照射は画素電極15上に限定されるものではない。
図20に図示するように、画素37間にレーザ光59を照射して、発光層17等を改質あるいは除去してもよい。
【0448】
図30図31は本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。第9の実施例は、隣接した画素間に、レーザ光59を照射し、隣接した画素間の発光層17等を改質させて、発光させなくした実施例である。
【0449】
第9の実施例では、図30に図示するように、画素電極15間の発光層17および正孔輸送層16にレーザ光59cを照射し、改質部96cにしている。断面構造は図1の実施例を例示し、図1の土手95をなくし、図1の土手95部にレーザ光59cを照射して、レーザ光59cを照射した箇所を改質部96cとした構造である。
【0450】
土手95を形成しないことにより、土手95を形成する工程が省略でき、製造コストを低減できる。また、画素37の開口率を高くでき、画素37での電流集中がなくなり、EL素子22を高寿命化できる。
【0451】
また、画素37間にレーザ光59cを照射することにより、隣接した画素37間に異なる色の発光層17が重なることによる混色がなくなり、混色発光がなくなる。
図30(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0452】
次に、図30(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。また、TFT基板52の発光層17にレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。
【0453】
図30(c)に図示するように、レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質部96aとなる。次に、図30(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層17Gを蒸着工法により積層させる。
【0454】
次に、図30(d)に図示するように、TFT基板52の発光層17Gにレーザ光59bの照射を行う。レーザ光59bは、画素電極15Bの上方の発光層17Gに照射する。レーザ光59bの照射部で、発光層17Gは改質され、改質部96bとなる。
図31(e)に図示するように、隣接した画素間に、レーザ光59cを照射することにより、画素37間の発光材料等が改質される。
【0455】
なお、図31(e)で図示するように、レーザ光59cの照射時に、スリットマスク92等を使用し、スリットマスク92cの開口部(光透過部)からレーザ光59cを照射すれば、位置精度よく画素37間を改質することができる。
次に、図31(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
以上のように、本発明は、レーザ光などを照射し、発光層17などを改質あるいは除去させて非発光状態とすることを技術思想としている。
実施の形態の各々の図で述べた内容(一部でもよい)を様々な電子機器に適用することができる。具体的には、電子機器の表示部に適用することができる。
【0456】
そのような電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが例示される。
【0457】
図37(a)は、本発明のEL表示パネル371を用いたディスプレイの斜視図である。EL表示パネル371は筐体372に取り付けられている。図37(a)に示すディスプレイは様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能を有する。
図37(b)は、本発明のEL表示パネル371を用いたスマートフォンの斜視図である。EL表示パネル371は筐体372に取り付けられている。
【0458】
本実施の形態に係るEL表示パネルを用いたEL表示装置とは、情報機器などのシステム機器を含む概念である。表示装置の概念は、情報機器などのシステム機器を含む。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0459】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0460】
本開示は、EL表示装置、EL表示パネルに有用である。特に、アクティブ型の有機ELフラットパネルディスプレイに有用である。また、本発明のEL表示パネルの製造方法、製造装置として有用である。
【符号の説明】
【0461】
12 反射膜
14 絶縁膜
15 画素電極
16 正孔輸送層(HTL)
17 発光層(EML)
18 電子輸送層(ETL)
19 カソード電極
20 封止層
21 TFT(トランジスタ)
22 EL素子
23 コンデンサ
27 封止フィルム
28 平坦化膜
29 円偏光板(円偏光フィルム)
31 ゲートドライバIC(回路)
32 ソースドライバIC(回路)
34 ゲート信号線
35 ソース信号線
36 表示画面
37 画素
51 移動ステージ
52 TFT基板
53 温度調整板
54 真空ポンプ
55 排気ダクト
56 蒸着室
58 レーザ装置
59 レーザ光
60 光量調整フィルタ
61 シリンドリカルレンズ
62 ガルバノミラー
63 レーザ窓
64 fθレンズ
65 金属蒸発源
66 有機蒸発源
71 蛍光・燐光
72 光分離ミラー
73 ミラー
74 レンズ
75 フィルタ
76 増幅回路
77 光検出装置
78 光制御装置
79 レーザ制御回路
80 ホトダイオード(光センサ)
91 レーザスポット
92 スリットマスク
94 透明基板
95 土手
111 チャンバー室
112 ロードロック室
113 搬入室
114 搬出室
115 中央室
116 成膜室
117 転写装置室
118 レーザ装置室
121 黒色樹脂
122 LED
123 ベース基板
181 排気口
182 移動ステージ
183 支持機構
184 昇降機構
185 制御機構
186 加圧ローラー
191 ベースフィルム
192 光学変換膜
193 中間膜
194 バッファ膜
195 転写有機膜
197 ドナーフィルム
371 EL表示パネル
372 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
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図20
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図22
図23
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図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
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図39