(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、めっき方法及び金属パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20230425BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230425BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230425BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20230425BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/004 502
G03F7/004 507
G03F7/20 521
G03F7/40 521
H05K3/18 D
(21)【出願番号】P 2020533521
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029588
(87)【国際公開番号】W WO2020027024
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-10-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018146184
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018171510
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018209917
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】中村 優子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】里村 利光
【審判官】石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/128369(WO,A1)
【文献】特開2017-167395(JP,A)
【文献】特開2012-220837(JP,A)
【文献】特開2013-92693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)アクリレートモノマーを含有し、
(C)アクリレートモノマーに対して、(D)メタクリレートモノマーの含有率が0~5質量%であり、
(C)アクリレートモノマーとして、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)を含有し、
(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)の含有率が
40~
60質量%であり、
(C)アクリレートモノマーとして、(C2)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4~8である化合物)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C2)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4~8である化合物)の含有率が
40~60質量%である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
該感光性樹脂組成物が(E)重合禁止剤を含有し、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)アクリレートモノマー及び(E)重合禁止剤の総量に対して、(E)重合禁止剤の含有率が400~1000ppmである請求項1又は請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
該感光性樹脂組成物が(F)光発色剤を含有し、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)アクリレートモノマー及び(F)光発色剤の総量に対して、(F)光発色剤の含有率が0.15~1.5質量%である請求項1又は請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を基材上に形成し、次にパターン露光を実施して露光部を硬化させ、次いでアルカリ現像を実施して非露光部の感光性樹脂層を除去して、硬化した感光性樹脂層を含むレジストパターンを形成した後、露出している基材にめっきを施すことを特徴とするめっき方法。
【請求項6】
請求項5に記載のめっき方法を用いて基材上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、並びに、該感光性樹脂組成物を用いためっき方法及び金属パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線板、メタルマスク等におけるパターンの微細化が進められている。そのため、プリント配線板の導体回路作製又はメタルマスクの作製において、感光性樹脂組成物と電解めっきを利用したアディティブ法による金属層の作製が行われている。
【0003】
例えば、プリント配線板における(セミ)アディティブ法は、まずガラスエポキシ樹脂等の絶縁樹脂の表面に無電解めっきにより薄い無電解めっき層を形成し、次に銅層表面に感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を形成し、次に露光、現像を行ってレジストパターンを形成し、次に電解めっきにより電解めっき層を厚く積層した後、レジストパターンを剥離し、剥離後に現れた無電解めっき層をエッチングする方法である(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、例えば、メタルマスクの作製方法として、基板上に所定の厚さの感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を形成する第1工程と、感光性樹脂層の上にメタルマスクの開口に合わせてパターン露光する第2工程と、現像して感光性樹脂層の非露光部分だけ除去してレジストパターンを形成し、基板を露出させる第3工程と、この第3工程によって得た基板の露出部分に電解めっきによりメタルマスク材層を形成する第4工程を行った後、残余の感光性樹脂層を除去する第5工程と、メタルマスク材層を基板から分離する第6工程を行って作製する方法がある(例えば、特許文献2)。
【0005】
これらの方法においては、狭ピッチのレジストパターンを形成し、その狭いスペース間に電解めっきを施し、電解めっき層又はメタルマスク材層となる金属層を厚く形成する。しかしながら、この後に続く、レジストパターンを剥離する又は残余の感光性樹脂層を除去する工程であるレジスト剥離の工程において、レジストパターンが正常に剥離されず、プリント配線板やメタルマスク上にレジスト剥離片が残留してしまう問題があった。
【0006】
このようなレジスト剥離の問題を解決すべく、基材への密着性が高く、かつレジスト剥離液に溶解する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3~6参照)。レジスト剥離液への溶解性が良ければ、狭いスペース間にレジスト剥離片が残存する問題を無くすことができる。
【0007】
特許文献3~6では、感光性樹脂組成物のレジスト剥離液への溶解性を高めるために、架橋性モノマーとして、メタクリレートモノマーの含有量を減らし、アクリレートモノマーの含有量を増やした感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、アクリレートモノマーの含有量を増やした場合、感光性樹脂組成物の親水性が高いため、アルカリ現像時に感光性樹脂層が膨潤して、その結果、レジスト厚が50μm以上と厚い場合に、50μm以下といった狭いレジストスペースを解像することが困難である問題、レジストパターン形成及びめっきの工程で、微細なラインやドットが基材上から剥がれ易くなる問題等が存在する。
【0008】
そのため、レジスト剥離液に溶解する特性を有し、微細なラインやドットを有するレジストパターンにおいても、パターン形成やめっき工程において基材上に安定して保持され、かつ高い解像性を有する感光性樹脂組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-101617号公報
【文献】特開平4-166844号公報
【文献】特開平9-265180号公報
【文献】特開2010-113349号公報
【文献】特開2011-081031号公報
【文献】特開2013-037272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、狭ピッチのレジストパターンにおいてもレジスト剥離が容易であり、かつパターン形成やめっき工程において微細なラインやドットが基材上に安定して保持され、かつ高い解像性を有する感光性樹脂組成物、並びに、該感光性樹脂組成物を用いためっき方法及び金属パターンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記手段を見出した。
【0012】
<1>
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)アクリレートモノマーを含有し、
(C)アクリレートモノマーに対して、(D)メタクリレートモノマーの含有率が0~5質量%であり、
(C)アクリレートモノマーとして、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)を含有し、
(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)の含有率が30~70質量%であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0013】
【0014】
<2>
該感光性樹脂組成物が、(C)アクリレートモノマーとして、(C2)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4~8である化合物)を含有し、(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C2)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4~8である化合物)の含有率が30~70質量%である<1>記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
<3>
該感光性樹脂組成物が(E)重合禁止剤を含有し、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)アクリレートモノマー及び(E)重合禁止剤の総量に対して、(E)重合禁止剤の含有率が400~1000ppmである<1>記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
<4>
該感光性樹脂組成物が(F)光発色剤を含有し、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)アクリレートモノマー及び(F)光発色剤の総量に対して(F)光発色剤の含有率が0.15~1.5質量%である<1>記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
<5>
<1>ないし<4>の何れかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を基材上に形成し、次にパターン露光を実施して露光部を硬化させ、次いでアルカリ現像を実施して非露光部の感光性樹脂層を除去して、硬化した感光性樹脂層を含むレジストパターンを形成した後、露出している基材にめっきを施すことを特徴とするめっき方法。
【0018】
<6>
<5>に記載のめっき方法を用いて基材上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、狭ピッチのレジストパターンにおいてもレジスト剥離が容易であり、かつ、パターン形成やめっき工程において微細なラインやドットが基材上に安定して保持され、かつ高い解像性を有する感光性樹脂組成物、及び、該感光性樹脂組成物を用いためっき方法を提供することができる。
また、本発明によれば、パターン形成後のレジスト剥離が容易で、かつ、レジストパターンが基材上に安定して保持されるので、めっき工程において微細なラインやドットが基材上に形成され、高い解像性を有する金属パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の感光性樹脂組成物及びめっき方法について詳細に説明する。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)アクリレートモノマーを含有し、(C)アクリレートモノマーに対して、(D)メタクリレートモノマーの含有率が0~5質量%であり、(C)アクリレートモノマーとして(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)を含有し、(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)の含有率が30~70質量%であることを特徴とする。
【0022】
【0023】
一般式(i)におけるlとmとnとoは、何れも一般式(i)における繰り返し単位数であり、何れも自然数である。
【0024】
本発明における(A)アルカリ可溶性樹脂において、「アルカリ可溶性」とは、対象となる樹脂を皮膜にし、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液に25℃で10分間浸漬したとき、膜厚0.01μm以上が溶解する性質を言う。
(A)アルカリ可溶性樹脂とは、具体的には、酸性基を含む樹脂であり、酸価が40mgKOH/g以上である樹脂が挙げられる。該酸性基としては、具体的にはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0025】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等の有機高分子が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
その中でも、(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。該(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレートを主とし、これにエチレン性不飽和カルボン酸を共重合させてなる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。また、これには、その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを共重合させたものでもよい。
【0027】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル系」、「(メタ)アクリレート」等と記載したときは、それぞれ、「アクリル系若しくはメタクリル系」、「アクリレート若しくはメタクリレート」等を意味する。
【0028】
上記エチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0029】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0030】
(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像速度、レジスト剥離速度、露光感度、感光性樹脂層の柔らかさ、感光性樹脂層と基材の密着性等に影響する。(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、40~500mgKOH/gであることが好ましく、100~300mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価が40mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる場合があり、一方、500mgKOH/gを超えると、感光性樹脂層と基材との密着性が悪くなる場合がある。上記酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定した値である。
【0031】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、5,000~150,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が5,000未満では、硬化前の感光性樹脂組成物をフィルム状態に形成することが困難になる場合がある。一方、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が150,000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が悪化する場合や、レジスト剥離液に溶解する速度が遅くなる場合がある。
【0032】
(B)光重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0033】
上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。なかでも、イミダゾール二量体が、高感度であり好適に使用でき、さらに、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が有用に使用できる。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)アクリレートモノマーとして、(C1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=24~48である化合物)を含有する。(C1)を含有することによって、レジスト剥離の際にレジスト片が溶解するという特性を保持しつつ、アルカリ現像の際に硬化した感光性樹脂層の膨潤が少なく、基材との密着性に優れ、パターン形成やめっき工程において微細なラインやドットが安定して保持されるという効果が達成できる。
【0035】
(C1)のl+m+n+oの値が24よりも小さいと、アンダーカット(レジスト底部の画線幅の細り)が大きくなる場合があり、また、l+m+n+oの値が48よりも大きいと、アルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤し易くなり、ファインパターンが形成できない場合がある。よって、(C1)のl+m+n+oの値は、24~48であり、より好ましくは30~40である。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)アクリレートモノマーとして、(C2)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4~8である化合物)を含有することが好ましい。(C2)を含有することによって、レジスト剥離の際にレジスト剥離片が溶解するという特性を保持しつつ、アルカリ現像の際に感光性樹脂層の膨潤が少なく、基材との密着性に優れるという効果がより高まる。
【0037】
(C2)のl+m+n+oの値が4よりも小さいと、アンダーカットが大きくなる場合があり、また、l+m+n+oの値が8よりも大きいと、アルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤し易くなり、ファインパターンが形成できない場合がある。よって、(C2)のl+m+n+oの値は4~8であり、より好ましくは4である。
【0038】
(C)アクリレートモノマーとしては、「(C3)(C1)及び(C2)以外のアクリレートモノマー」を含有してもよい。(C3)としては、1以上のアクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
【0039】
1つのアクリロイル基を有した(C3)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(エトキシ基が1以上)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、グリセリンモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エトキシ基数が2~30)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(エトキシ基数が2~30)、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート(プロポキシ基数が2~30)、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート(プロポキシ基数が2~30)、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート等が挙げられる。
「エトキシ基」とは、「-CH2CH2O-」である。「プロポキシ基」とは、「-C3H6O-」であり、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0040】
また、2つのアクリロイル基を有した(C3)としては、例えば、多価のアルコールに2つのアクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エトキシ基数が2~30)、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロポキシ基数が2~30)、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート(エトキシ基数が2~30)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート(エトキシ基及びプロポキシ基の和が2~40)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエステル)フェニル]フルオレイン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。
【0041】
また、3つ以上のアクリロイル基を有した(C3)としては、例えば、多価のアルコールにアクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリアクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+oが4未満、8超24未満、48超である化合物)等が挙げられる。
【0042】
(D)メタクリレートモノマーとしては、上記(C)アクリレートモノマーのアクリロイル基をメタクリロイル基に置き換えた化合物が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)メタクリレートモノマーを含有してもよく、その含有率は、(C)アクリレートモノマーに対して0~5質量%である。(D)メタクリレートモノマーの含有率が5質量%超の場合、レジスト剥離の際に、硬化した感光性樹脂層の剥離片が大きくなり、溶解しなくなる。
【0043】
本発明における(C1)の含有率は、(C)アクリレートモノマー全量に対して30~70質量%であり、より好ましくは35~65質量%であり、さらに好ましくは40~60質量%である。
含有率が30質量%よりも小さいと、又は、含有率が小さすぎると、アンダーカットが大きくなる場合があり、含有率が70質量%よりも大きいと、又は、含有率が大きすぎると、アルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤し易くなり、密着性が悪化する場合や現像によって微細なラインやドットが剥がれる場合がある。
【0044】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(C2)を含有していることが好ましい。(C2)の含有率は、(C)アクリレートモノマー全量に対して30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。含有率が30質量%よりも小さいと、アルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤し易くなり、密着性が悪化する場合があり、含有率が70質量%よりも大きいと、硬化皮膜が硬くなって脆くなるため、搬送ローラー等の接触によってレジストに欠けが発生する場合がある。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物において、(A)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して30~75質量%であることが好ましく、35~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。(A)の含有率が30質量%未満では、皮膜性が悪くなる場合や、アルカリ現像性が低下する場合がある。(A)の含有率が70質量%を超えると、レジストパターンの解像性が低下する場合がある。
【0046】
(B)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましい。(B)の含有率が0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる場合がある。一方、10質量%を超えると、露光の際に感光性樹脂層の表面で吸収が増大して、感光性樹脂層内部の光架橋が不十分となる場合がある。
【0047】
(C)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して15~60質量%であることが好ましく、17~55質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることがさらに好ましい。(C)の含有率が15質量%未満では、架橋性が低下する場合があり、また、光感度が不十分となる場合がある。一方、55質量%を超えると、膜表面の粘着性が増加する場合にある。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)重合禁止剤を含有することが好ましく、(A)、(B)、(C)及び(E)の総量に対して、(E)重合禁止剤の含有率が400~1000ppmであることがより好ましい。
【0049】
(E)重合禁止剤は、感光性樹脂組成物の光硬化能を抑制する作用を有する。
(E)重合禁止剤は、ラジカルを補足して感光性樹脂組成物の光化学反応を停止することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、tert-ブチル-p-ベンゾキノン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、3-メトキシカテコール、ピロガロール、ピクリン酸等のハイドロキノン類が挙げられる。
また、フェノキサジン、3,7-ビス(ジエチルアミノ)フェノキサジン-5-イウム・ペルクロラート、5-アミノ-9-(ジメチルアミノ)-10-メチルベンゾ[a]フェノキサジン-7-イウム・クロリド等のフェノキサジン誘導体が挙げられる。
また、塩化銅、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
【0050】
(E)重合禁止剤は、感光性樹脂組成物の保存性を向上させるだけではなく、レジストパターンの解像性を向上させる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、4-メトキシフェノールが、保存安定性、溶剤への溶解性等から好適に使用できる。
【0051】
(E)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(E)の総量に対して400~1000ppmであることが好ましく、500~900ppmであることがより好ましい。(E)の含有率が400ppm未満では、解像性及び密着性が低下する場合がある。一方、1000ppmを超えると、感度が不十分となる場合がある。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、(F)光発色剤を含有することが好ましく、(A)、(B)、(C)及び(F)の総量に対して、(F)光発色剤の含有率が0.15~1.5質量%であることがより好ましい。
【0053】
(F)光発色剤としては、特に限定されないが、例えば、ロイコクリスタルバイオレット、ロイコビクトリアブルーBH、ロイコビクトリアピュアブルーBOH、ロイコダイヤモンドグリーン、ロイコアシッドバイオレット5B、ロイコソーラーシアニン6B、ロイコブリリアントグリーン、3,6-ビスジエチルアミノ-9-フェニルキサンテン等のロイコ色素が挙げられる。これらの中でも、発色性、変色、色調等の観点から、ロイコクリスタルバイオレットが好適に用いられる。
【0054】
(F)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(F)の総量に対して、0.15~1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.0質量%である。光発色剤の含有率が0.15質量%未満の場合、感光性樹脂層を露光した際に、露光部と未露光部とのコントラストが低下する場合がある。一方、(F)の含有率が1.5質量%を超える場合、(F)が完全に溶解せず、感光性樹脂層の内部で結晶として析出する場合や、感光性樹脂組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、上記(A)~(F)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、溶剤、可塑剤、着色剤(色素、染料、顔料)、光減色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤、撥油剤等が挙げられ、各々、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)の総量に対して、0.01~20質量%程度含有することができる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物は、支持体、感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層、及び、カバーフィルムが積層されたドライフィルムレジストの構成としてもよい。以下、「ドライフィルムレジスト」を、単に「DFR」と略記することがある。
支持体は、未硬化又は硬化した感光性樹脂層から剥離できればよく、活性光線を透過させる透明フィルムが好ましい。該支持体の厚みは薄い方が、光の屈折が少ないので好ましく、厚い方が、塗工安定性に優れるため好ましいが、5~50μmが特に好ましい。このようなフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。
【0057】
カバーフィルムは、未硬化の感光性樹脂層から剥離できればよく、離型性の高い樹脂が用いられる。例えば、ポリエチレンフィルム;ポリプロピレンフィルム;シリコーン等の離型剤が塗工されたポリアルキレンフィルム;等が挙げられる。
該感光性樹脂層は、本発明の感光性樹脂組成物からなる層である。
【0058】
ドライフィルムレジストの構成の場合には、感光性樹脂層の厚みは、10~150μmであることが好ましく、30~120μmであることがより好ましい。この感光性樹脂層の厚みが大きすぎると、解像性の低下、コスト高等の問題が発生し易くなる。逆に薄すぎると、密着性、耐酸性が低下する場合がある。
【0059】
次に本発明のめっき方法について詳細に説明する。本発明のめっき方法は、銅めっき、ニッケルめっき等のめっき加工を行う際のめっき方法として適用できる。具体的には、金属回路形成のアディティブ法、セミアディティブ法、高精細なメタルマスクを作製するアディティブ法等の用途に好ましく使用され、基材上にフォト法でレジストパターンを形成した後、レジストパターン部以外の露出した基材にめっきを施して、金属パターン・回路パターンを形成する方法である。
【0060】
例えば、プリント配線板を作製する場合のセミアディティブ法では、まず、絶縁性基板に薄い金属層を設けた基板を基材として用意する。次に、回路パターンを形成しない部分にレジストパターンを形成する。次いで、電解めっきを行って、露出している薄い金属層の表面にめっき金属層を形成する。続いて、レジスト剥離工程によってレジストパターンが除去される。その後、薄い金属層を(フラッシュ)エッチング除去することにより、金属パターン・回路パターンが形成される。
【0061】
基材としては、例えば、銅、銅系合金(チタン銅合金、銅ニッケル合金等);ニッケル;クロム;鉄;タングステン;ステンレス、42アロイ等の鉄系合金;アルミニウム;アモルファス合金;等の金属基材が使用できる。
また、プリント配線板製造等に使用される、銅張積層板、無電解めっき済基板、電解めっき済基板、無電解めっき用触媒付与基板、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルステンレス板、多段構造基板等が使用できる。
【0062】
基材上にレジストパターンを形成するためには、フォト法が使用される。フォト法では、まず、基材に感光性樹脂組成物を含む塗工液を塗工し、乾燥して、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成する。予め、支持体(キャリアーフィルム)に感光性樹脂層を形成したDFRを作製し、基材に感光性樹脂層を転写してもよい。
【0063】
次に、パターン露光を実施し、露光部を硬化させる。次いで、アルカリ現像を実施し、レジストパターンとして不要な部分である非露光部の感光性樹脂層を除去し、硬化した感光性樹脂層を含むレジストパターンを形成する。アルカリ現像に使用するアルカリ現像液としては、例えば、無機塩基性化合物の水溶液を用いることができる。無機塩基性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩、水酸化物が挙げられ、0.1~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が好ましく使用できる。
現像液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を、適宜少量混入することもできる。現像処理方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が除去速度の点からは最も適している。現像処理の温度は、15~35℃が好ましく、また、スプレー圧は、0.02~0.3MPaが好ましい。
【0064】
本発明では、アルカリ現像後のレジストパターンにベーク処理を行ってもよい。ベーク処理によって、感光性樹脂層と基材の密着を向上させる効果や耐めっき性を向上させる効果等が得られる。ベーク処理の温度は80℃以上が好ましく、時間は5分以上が好ましい。また、基材が銅等であって、酸化等により変色し易い材質であれば、80℃程度でベーク処理を実施する。基材がステンレス等であって、酸化し難い材質であれば、ベーク処理の温度は100℃以上でもよく、また、30分以上の長時間処理を実施してもよい。また、ベーク処理前に感光性樹脂層の熱による変形を防ぐことを目的として、紫外線等の活性光線照射処理を実施してもよい。
【0065】
次いで、レジストパターンが形成されていない基材の露出部分に、めっきを施して金属パターン・回路パターンを形成する。該めっき方法は、上述の通りであり、電解めっきであってもよく、置換型若しくは還元型の無電解めっきであってもよい。また、めっきする金属(合金)(めっき金属(合金))は特に限定されない。
【0066】
レジスト剥離工程では、レジスト剥離液としてアルカリ水溶液が有用に使用される。レジスト剥離液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物を挙げることができる。
【0067】
レジスト剥離工程において、硬化した感光性樹脂層に対する溶解性を制御するため、レジスト剥離液の濃度、温度、スプレー圧、超音波条件等を調整する必要がある。レジスト剥離液の温度が高いほど、硬化した感光性樹脂層が溶解する速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。レジスト剥離液における塩基性化合物の濃度としては、溶解性に適した濃度が良く、塩基性化合物が水酸化ナトリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、超音波装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【0068】
本発明において、パターン露光によって硬化され、場合によって、ベーク処理が施された後の感光性樹脂層は、レジスト剥離工程において、レジスト剥離液により除去される際に、レジスト剥離液に溶解する。本発明において、硬化した感光性樹脂層の「溶解」とは、感光性樹脂層がレジスト剥離液に溶解しているか、又は、目視で確認できないほどの大きさにまでレジスト剥離片が非常に細かくなっている状態のことを言う。レジスト剥離片が非常に細かくなっている状態としては、分子集合体レベルで分散している状態、100μm以下の微粒子として分散している状態等が含まれる。
【0069】
本発明は、上記しためっき方法を用いて基材上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの製造方法でもある。
金属パターンの形成には、各工程において上記した方法を使用することが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
表1~表3において、各成分は以下の通りである。
【0072】
(A-1)メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/メタクリル酸を質量比64/15/21で共重合させた共重合樹脂(質量平均分子量40,000)
【0073】
(B-1)2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
(B-2)4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0074】
(C1-1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=35である化合物)
(C2-1)エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(一般式(i)で示され、l+m+n+o=4である化合物)
【0075】
(C3-1)ペンタエリスリトールトリアクリレート
(C3-2)ポリエチレングリコール♯600ジアクリレート(エチレンオキサイドの繰り返し数が14)
【0076】
(D-1)ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート(エチレンオキサイドの繰り返し数が合計で10)
【0077】
(E-1)4-メトキシフェノール
【0078】
(F-1)ロイコクリスタルバイオレット
【0079】
実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-4
表1に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物及び塗工液を得た。なお、表1における各成分の配合量の単位は、質量部を表す。
得られた塗工液を、アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に塗工し、80℃で8分間乾燥し、溶剤をとばし、PETフィルムの片面上に、実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-4の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層(乾燥膜厚:30μm)を設けたDFRを得た。
【0080】
【0081】
表面粗さRaが0.01μm~1μmのステンレス鋼板に、アルカリ脱脂、酸処理等の表面処理を実施し、実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-4の感光性樹脂層を貼り付けた。次に、50μmライン&スペースのパターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで、PETフィルムを剥がし、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、非露光部の感光性樹脂層を除去し、レジストパターンを形成した。
【0082】
その際、(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C1)の含有率が70質量%超である比較例1-1の感光性樹脂層においては、硬化した感光性樹脂層からなるレジストパターンが膨潤して、50μmライン&スペースのパターンが脱離した。
一方、実施例1-1~1-6では、全て良好な50μmライン&スペースのパターンが作製できた。
【0083】
次に、スルファミン酸ニッケル(Ni)浴を用いた電解めっきにより、ステンレス鋼板上のレジストパターンによって被覆されていない部分の上にめっき膜を成長させて、厚みが25μmになるようにNi金属層を形成した。
【0084】
その際、(C)アクリレートモノマー全量に対して、(C1)の含有率が30質量%未満である感光性樹脂組成物を用いた比較例1-2及び1-3では、レジストパターンのライン底部にめっき液のしみこみが発生して、レジスト底部に画線細りがあることが分かった。よって、Ni金属層がレジスト底部に入り込み、良好なNiパターンを作製できなかった。
一方、実施例1-1~1-6では、全て良好なNiパターンが作製できた。
【0085】
次に、実施例1-1~1-6及び比較例1-4において、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に浸漬して、レジストパターンの剥離を実施した。
実施例1-1~1-6の感光性樹脂組成物によるレジストパターンの剥離は、良好に実施できた。
一方、(C)アクリレートモノマー全量に対して、(D)の含有率が8.8質量%であって5質量%超である感光性樹脂組成物を用いた比較例1-4では、50μmのスペース間にレジストパターンの残渣が残存するという問題が発生した。
【0086】
また、実施例1-1~1-6の感光性樹脂層の剥離片を、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に3時間浸漬した結果、剥離片が目視で確認できなくなった。これにより、次のワークを処理する際、Niパターン間へのレジスト剥離片の「からまり」の懸念が無くなった。
【0087】
実施例2-1~2-7、比較例2-1
表2に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物及び塗工液を得た。なお、表2における各成分の配合量の単位は、質量部を表す。また、(E)の含有率は、(A)、(B)、(C)及び(E)の総量に対する(E)の含有率であり、その単位は質量ppmである。
得られた塗工液を、アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に塗工し、80℃で8分間乾燥し、溶剤をとばし、PETフィルムの片面上に実施例2-1~2-7、比較例2-1の感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層(乾燥膜厚:30μm)を設けたDFRを得た。
【0088】
【0089】
表面粗さRaが0.01μm~1μmのステンレス鋼板に、アルカリ脱脂、酸処理等の表面処理を実施し、実施例2-1~2-7、比較例2-1の感光性樹脂層を貼り付けた。
【0090】
次に、直径が200、150、100、80μmである円形のドットパターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで、PETフィルムを剥がし、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、非露光部の感光性樹脂層を除去し、レジストパターンを形成した。
【0091】
この際、(C)アクリレートモノマーとして(C1)を含有していない比較例2-1では、現像工程により、直径150μm以下のドットパターンが半分以上失われていた。
また、(E)の含有率が400ppm未満である実施例2-7では、現像工程により、直径100μm以上のドットパターンは基板上に残存したが、直径80μmのドットパターンは若干失われていた。
【0092】
一方、実施例2-1~2-6では、現像後も、直径が200、150、100、80μmである円形のドットパターンが全て基板上に残存し、高い密着性を示した。
【0093】
次に、スルファミン酸ニッケル(Ni)浴を用いた電解めっきにより、ステンレス鋼板上のレジストパターンによって被覆されていない部分の上にめっき膜を成長させて、厚みが25μmになるようにNi金属層を形成した。
【0094】
この際、比較例2-1では、直径が200μmである円形のドットパターンにおいて、めっき液が滲みこみ、レジスト底部に画線細りがあることが分かった。そのため、Ni金属層がレジストの下に入り込んでおり、良好なNi金属層が形成できなかった。
一方、実施例2-1~2-7では、めっき液の滲みこみは無く、良好なNi金属層が形成されていた。
【0095】
次に、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に浸漬して、レジストパターンの剥離を実施した。実施例2-1~2-7及び比較例2-1の感光性樹脂組成物によるレジストパターンは良好に剥離が実施できた。
【0096】
また、実施例2-1~2-7及び比較例2-1の感光性樹脂層の剥離片を、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に3時間浸漬した結果、剥離片が目視で確認できなくなった。それにより、次のワークを処理する際、Niパターン間へのレジスト剥離片のからまりの懸念が無くなった。
【0097】
実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-2
表3に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物及び塗工液を得た。なお、表3における各成分の配合量の単位は質量部である。得られた塗工液を、アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に塗工し、80℃で8分間乾燥し、溶剤をとばし、PETフィルムの片面上に実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-2の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層(乾燥膜厚:50μm)を設けたDFRを得た。
【0098】
【0099】
表面粗さRaが0.01μm~1μmのステンレス鋼板に、アルカリ脱脂、酸処理等の表面処理を実施し、実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-2の感光性樹脂層を貼り付けた。
【0100】
次に、直径が100、80、70、60μmである円形のドットパターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで、PFTフィルムを剥がし、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、非露光部の感光性樹脂層を除去し、レジストパターンを形成した。
【0101】
この際、(F)の含有率が0.15質量%未満である実施例3-7の感光性樹脂層は、露光に対する感度が低く、実施例3-1~3-6と同じ露光量ではレジストの硬化が十分に進行しなかった。そのため、レジスト画像を観察した結果、直径80μm以下のドットパターンが半分以上失われていたが、直径100μmのドットパターンは残存していた。
【0102】
また、(C)アクリレートモノマーとして(C1)を含有しない比較例3-1~3-2の感光性樹脂層は、基材に対する密着が弱く、現像工程により、全ての直径において、ドットパターンが半分以上失われていた。
【0103】
一方、実施例3-1~3-6では、現像後も、全ての直径において、ドットパターンが基板上に残存し、高い密着性を示した。
【0104】
次に、実施例3-1~3-7において、スルファミン酸ニッケル(Ni)浴を用いた電解めっきにより、ステンレス鋼板上のレジストパターンによって被覆されていない部分の上にめっき膜を成長させて、厚みが25μmになるようにNi金属層を形成した。
【0105】
この際、実施例3-1~3-7では、めっき液の滲みこみは無く、良好なNi金属層が形成されていた。
【0106】
次に、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に浸漬して、レジストパターン剥離を実施した。実施例3-1~3-7の感光性樹脂組成物によるレジストパターンは良好に剥離が実施できた。
【0107】
また、実施例3-1~3-7の感光性樹脂層の剥離片を、3質量%水酸化ナトリウム水溶液(液温50℃)に3時間浸漬した結果、剥離片が目視で確認できなくなった。これにより、次のワークを処理する際、Niパターン間へのレジスト剥離片のからまりの懸念が無くなった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、感光性樹脂組成物の製造や使用分野に広く利用できる。特に、プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造において、めっき加工の際に使用されるレジストパターン形成用の感光性樹脂組成物の製造・使用分野に広く利用できる。