(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】抗IL12/IL23抗体組成物を産生するための製造方法におけるクロマトグラフィカラムの品質評価
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20230425BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230425BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20230425BHJP
G01N 30/50 20060101ALI20230425BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230425BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230425BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20230425BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20230425BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
C07K1/16
G01N30/88 J
G01N30/86 B
G01N30/50
B01J20/281 R
G01N30/02 B
B01J20/285 N
C07K16/24 ZNA
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020557993
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 US2019028332
(87)【国際公開番号】W WO2019204734
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ,ポール
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502575(JP,A)
【文献】特表2016-532881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0100336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0271556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052159(US,A1)
【文献】国際公開第2018/024770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/16
G01N 30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗IL-12/IL-23p40抗体、前記抗体の特異的医薬組成物、及びその抗原結合フラグメントを産生するための製造方法におけるクロマトグラフィカラムの操作方法であって、前記抗IL-12/IL-23p40抗体が、(i)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)、(ii)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列、並びに(iii)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記操作方法が、
カラム充填を含む前記クロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、
前記少なくとも1つの移動相遷移フロントについての前記収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程であって、式Ia又は式Ibは、
【数1】
であり、各式中、Cは所与のVの
前記カラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びViは
、それぞれ曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットのパラメータである、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、
式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びViを使用して、前記少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程であって、式IIは、
【数2】
式中、
【数3】
である、理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程と、
前記計算されたHETP値に基づいて、前記クロマトグラフィカラム充填の
前記品質を評価する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記評価に基づいて、前記クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換、又は再充填を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロマトグラフィカラム充填について前記1つ又は複数の後続の使用中に、対応する移動相遷移フロントについて、2つ以上の間隔で、カラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程と、
前記クロマトグラフィカラム充填について1つ又は複数の後続の各使用中に、前記収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、前記決定及び前記計算を実行する工程と、
前記実行に基づいて、前記1つ又は複数の後続の各使用中に、前記クロマトグラフィカラム充填のHETP値を決定する工程と、
1つ以上の後続の使用の前記クロマトグラフィカラム充填の前記決定されたHETP値の傾向を収集する工程と、
前記収集された傾向に基づいて、前記クロマトグラフィカラム充填の品質の変化を特定する工程と、を更に含み、前記クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換又は再充填は、前記特定に基づくものとなる、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記カラム充填の前記1つ又は複数の後続の使用における前記クロマトグラフィカラム充填の前記HETP値の増加が、前記カラム充填の1つ又は複数の以前の使用における前記クロマトグラフィカラム充填の前記HETP値と比較して、前記クロマトグラフィカラム充填の
前記品質の低下を特定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カラム充填の前記第1の操作中に、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集し、前記方法が、
前記2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについて収集された前記カラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、前記決定及び計算を実行する工程であって、
前記2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについてHETP値を独立して計算する、前記決定及び計算を実行する工程と、
2つ以上の計算されたHETP値に基づいて、前記クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程とを更に含み、それにより、前記クロマトグラフィカラムの前記コンディショニング、交換又は再充填が、前記評価に基づくものとなる、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィカラムが、プロテインA親和性クロマトグラフィカラム、陽イオン交換クロマトグラフィカラム、及び陰イオン交換クロマトグラフィカラムからなる群から選択される、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロテインA親和性クロマトグラフィカラムが、
MABSELECT(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを含み、前記陽イオン交換クロマトグラフィカラムが、
UNOSPHERE(商標)S陽イオン交換クロマトグラフィカラム又はSP
SEPHAROSE XL陽イオン交換クロマトグラフィカラムを含み、前記陰イオン交換クロマトグラフィカラムが、
Q SEPHAROSE XL陰イオン交換クマトグラフィカラムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロテインA親和性クロマトグラフィカラムの前記移動相遷移フロントが、抗IL-12/IL-23p40抗体の精製中に生成される洗浄フロント、抗IL-12/IL-23p40抗体の溶出中に生成されるフロント、グアニジンHClでのカラムの消毒中に生成されるフロント、消毒後の0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.5でのリンス中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記陽イオン交換クロマトグラフィカラム内の前記移動相遷移フロントが、抗IL-12/IL-23p40抗体を含む溶媒/洗剤(S/D)処理物質の充填中に生成されるフロント、抗IL-12/IL-23p40抗体の溶出中に生成されるフロント、及びカラムストリップ中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記陰イオン交換クロマトグラフィカラムの前記移動相遷移フロントが、水酸化ナトリウムでのカラムの洗浄中に生成されるフロント及びカラムストリップ中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年4月20日に出願された米国特許仮出願第62/660,340号に対する優先権を主張するものであり、特許仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、抗IL-12/IL-23p40抗体、例えば抗IL-12/IL-23p40抗体STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)、抗体の特定の医薬組成物、及びその抗原結合フラグメントを産生するための製造方法におけるクロマトグラフィカラムの品質評価方法に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、2019年4月17日付で作成された「JBI6082USNP1 Sequences」というファイル名のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、14kbのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
カラムクロマトグラフィは、治療用タンパク質を産生するための精製プロセスにおいて使用される重要な技術である。カラムの性能は、プロセスがベンチトップから製造プラントまでスケールアップされるまで、及びカラム寿命にわたって維持されなければならない。プロセスをスケールアップするために、カラム径、装置、及びバッファ消費量が増加すると、カラム評価手順の困難さ、充填されたベッドの完全性に対する潜在的な変化、及びロジスティックスが発生する可能性がある。
【0005】
クロマトグラフィカラムの品質評価のための現在の方法は、ピークの最大値から平均値を推定し、半分の高さにおけるピークの幅からの標準偏差を推定することによって、パルス注入後の分散の測定値である理論段相当高さ(HETP)を計算する。この方法の主な制限は、ピーク形状がガウス分布から逸脱している場合、分散(すなわち、HETP)の正確な測定値を提供しないことである。感度の不足を補うために、第2の測定値である非対称性を利用して、ピーク歪度を評価する。この測定値は、最大ピーク高さの10%でのリーディングピーク幅とテーリングピーク幅とを比較している。この手法の限界は、カラム性能の変化に対する感度の欠如をもたらし、カラム性能は実際には許容可能であるが、カラムの再充填又はコンディショニングをもたらすことが多い。カラムの品質評価のための他の方策が報告されている。これらの方策としては、プロセス遷移をモデル化するためにガウス分布又は非ガウス分布を使用することが含まれる(例えば、Larsonら、「Use of Process Data to Assess Chromatographic Performance in Production-Scale Protein Purification Columns」、Biotechnol.Prog.19:485-492(2003年)及びBelousovらの米国特許第9,047,438号及びGangulyの米国特許第8,410,928号を参照)。ガウス法は、注入方法に関して上述したように感度に同じ制限を有し、報告された非ガウス法は複雑な計算を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繰り返し操作中のクロマトグラフィカラム性能の変化を監視し、カラムがその寿命にわたって実行する有効性を評価するために、より感度が高く、より合理的に定義された限界を有する改善された品質評価手順が必要とされる。本発明は、技術分野におけるこの欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単にするために、参照により本明細書に組み込まれる、本明細書に添付の独立及び従属請求項によって、本発明の実施形態がそれぞれ定義される。本発明の様々な態様の他の実施形態、特徴、及び長所は、添付の図面に関連付けられる以下の発明を実施するための形態から明らかになる。
【0008】
特定の実施形態では、本発明は、抗IL-12/IL-23p40抗体、抗体の特定の医薬組成物、及びその抗原結合フラグメントを産生するための製造方法におけるクロマトグラフィカラムの操作方法を提供し、抗IL-12/IL-23p40抗体が、(i)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)、(ii)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列、並びに(iii)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。この方法は、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することを含む。この方法は、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定することを更に含み、式Ia又は式Ibは、
【0009】
【数1】
であり、各式中、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットのパラメータである。理論段相当高さ(HETP)値は、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについて計算され、
【0010】
【0011】
クロマトグラフィカラム充填の品質は、計算されたHETP値に基づいて評価される。この評価に基づいて、クロマトグラフィカラムは再利用、コンディショニング、交換、又は再充填される。
【0012】
本明細書でガンマ分布遷移分析(GDTA)と称される、カラム完全性を評価するための新たな方法が開発された。新しい方法は、カラム操作の規則的なプロセス工程の間に生成される移動相遷移フロントデータを介して曲線に適合するための数学的モデルを使用する。次いで、モデル曲線パラメータを利用して、カラム品質の尺度としてカラムベッド全体の分散を計算する。移動相遷移フロントは、導電率、pH、及び/又はバッファ成分などの異なる特性を有するプロセスバッファ/洗浄液が使用されるクロマトグラフィ精製プロセス内の別個の工程から生じる。方法は、一般に、通常のカラム処理中に生成される任意の1つ又は複数の移動相遷移フロントに適用することができる。
【0013】
GDTA法の主要な利点は、ガウスHETP推定法よりもカラムベッド全体の分散をより敏感に測定できることである。GDTAを使用することにより、GDTAモデルが曲線適合からの分散を正確に測定するため、非対称性を測定する必要はない。加えて、ガンマ分布関数を使用することで、以前に報告された代替の非ガウス法と比較して、フロント遷移の解析が容易になる。クロマトグラフィプロセス中に既に存在する移動相遷移を使用することで、余分なオフラインプロセス工程の必要性を回避する。更に、多くの場合、過去のデータにより、実施前にカラム効率の過去の範囲を確立することができる。最後に、GDTA法を自動化して、一貫した適用を確実にすることができる。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、抗IL-12/IL-23p40抗体、抗体の特定の医薬組成物、及びその抗原結合フラグメントを産生するための製造方法におけるクロマトグラフィカラムの操作方法を提供し、抗IL-12/IL-23p40抗体が、(i)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)、(ii)配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列、並びに(iii)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、当該操作方法が、
カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、
少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程であって、式Ia又は式Ibは、
【0015】
【数3】
であり、各式中、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットのパラメータであり、
式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程であって、式IIは、
【0016】
【数4】
当該計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程とを含む、方法。
【0017】
特定の実施形態では、本発明は、以下の工程を更に含む方法を提供する:
当該評価に基づいてクロマトグラフィカラムをコンディショニング、交換、又は再充填する工程。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、以下の工程を更に含む方法を提供する:
クロマトグラフィカラム充填について1つ又は複数の後続の使用中に、対応する移動相遷移フロントについて2つ以上の間隔でカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程と、
クロマトグラフィカラム充填について1つ又は複数の後続の各使用中に、収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、当該決定及び当該計算を実行する工程と、
当該実行に基づいて、当該1つ又は複数の後続の各使用中に、クロマトグラフィカラム充填のHETP値を決定する工程と、
2つ以上の後続の使用のクロマトグラフィカラム充填の決定されたHETP値の傾向を収集する工程と、及び
当該収集された傾向に基づいて、当該クロマトグラフィカラム充填の品質の変化を特定する工程であって、当該クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換又は再充填は、当該特定に基づく。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、当該カラム充填の1つ又は複数の後続の使用におけるクロマトグラフィカラム充填のHETP値の増加が、当該カラム充填の1つ又は複数の以前の使用におけるクロマトグラフィカラム充填のHETP値と比較して、クロマトグラフィカラム充填の品質の低下を特定する方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、カラム充填の当該第1の操作中に、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含む:
2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについて収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、当該決定及び計算を実行し、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについてHETP値を独立して計算する工程と、
2つ以上の計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価し、それにより、クロマトグラフィカラムの当該コンディショニング、交換又は再充填が、当該評価に基づくものとなる。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、クロマトグラフィカラムが、プロテインA親和性クロマトグラフィカラム、陽イオン交換クロマトグラフィカラム、及び陰イオン交換クロマトグラフィカラムからなる群から選択される方法を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、プロテインA親和性クロマトグラフィカラムがMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを含み、陽イオン交換クロマトグラフィカラムがUNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラム又はSP Sepharose XL陽イオン交換クロマトグラフィカラムを含み、陰イオン交換クロマトグラフィカラムがQ Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムを含む方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、プロテインA親和性クロマトグラフィカラムの移動相遷移フロントが、抗IL-12/IL-23p40抗体の精製中に生成される洗浄フロント、抗IL-12/IL-23p40抗体の溶出中に生成されるフロント、グアニジンHClでのカラムの消毒中に生成されるフロント、消毒後の0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.5でのリンス中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、陽イオン交換クロマトグラフィカラムの移動相遷移フロントが、抗IL-12/IL-23p40抗体を含む溶媒/洗剤(S/D)処理物質の充填中に生成されるフロント、抗IL-12/IL-23p40抗体の溶出中に生成されるフロント、及びカラムストリップ中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される方法を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィカラムの移動相遷移フロントが、水酸化ナトリウムでのカラムの洗浄中に生成されるフロント及びカラムストリップ中に生成されるフロントからなる群から選択される1つ又は複数のフロントから生成される方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合のグラフを示す。
図1Aは、移動相遷移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
図1Bは、カラム効率の尺度としての理論段相当高さ(HETP)を計算するために使用される、その曲線からのパラメータを有する、移動相転移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
【
図1B】例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合のグラフを示す。
図1Aは、移動相遷移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
図1Bは、カラム効率の尺度としての理論段相当高さ(HETP)を計算するために使用される、その曲線からのパラメータを有する、移動相転移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
【
図2】本明細書に記載されるクロマトグラフィカラムの品質評価システムを示す図である。
【
図3】プロテインAカラム平衡化フロントの変換なしのHETPの確率プロットである。
【
図4】プロテインAカラム平衡化フロントの変換なしの平方和(SS)の確率プロットである。
【
図5】プロテインAカラム洗浄フロントの変換なしのHETPの確率プロットである。
【
図6】プロテインAカラム洗浄フロントの変換なしのSSの確率プロットである。
【
図7】プロテインAカラム平衡化フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの確率プロットである。
【
図8】プロテインAカラム平衡化フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの確率プロットである。
【
図9】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの確率プロットである。
【
図10】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの確率プロットである。
【
図11】プロテインAカラム平衡化の平均値(V
m)の確率プロットである。
【
図12】プロテインAカラム洗浄フロントの平均値(V
m)の確率プロットである。
【
図13】プロテインAカラム平衡化のフロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの管理図である。UCL=上方管理限界;LCL=下方管理限界である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図14】プロテインAカラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。UCLは、
図13の変換データから導出される。
【
図15】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図16】プロテインAカラム平衡化フロントのSSの時系列プロットである。UCLは、
図15の変換データから導出される。
【
図17】プロテインAカラム平衡化の平均値(V
m)の管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図18】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図19】プロテインAカラム洗浄フロントのHETPの時系列プロットである。UCLは、
図18の変換データから導出される。
【
図20】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図21】プロテインAカラム洗浄フロントのSSの時系列プロットである。UCLは、
図20の変換データから導出される。
【
図22】プロテインAカラム洗浄フロントの平均値(V
m)の管理図である。グラフ上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図23】カラム充填によってグループ化された直接生成物捕獲(DPC)プロテインAカラム平衡化フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図24】カラム充填によってグループ化されたDPCプロテインAカラム洗浄フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図25】スキッドによってグループ化されたDPCプロテインAカラム平衡化フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図26】スキッドによってグループ化されたDPCプロテインAカラム洗浄フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図27】DPCプロテインAカラム平衡化の平均流量を示すチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図28】平衡化中の平均プレカラム圧力のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール則1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図29】DPCプロテインAカラム洗浄フロントの平均洗浄流量のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図30】DPCプロテインAカラム洗浄フロントの平均洗浄圧力のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図31】洗浄流量を変更する前及び後のHETPを示すチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図32】45バッチのREMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)の平衡化フロントで評価した2つの異なるプロテインAカラム充填のHETPの時系列プロットである。
【
図33】SP-セファロース高性能(SPHP)カラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図34】SPHPカラムWFIフラッシュフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図35】SPHPカラムストレージフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図36】Q2カラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図37】Q2カラムストリップ平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図38】Q2カラムストレージフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box-Cox変換データから導出される。
【
図39】ウステキヌマブ製造プロセスの10段階の概要を示す。
【
図40】STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)の精製中に生成される洗浄2フロントの段階3のMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムのHETP結果を示すチャートである。
【
図41】STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)の溶出中に生成されるフロントの段階3のMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムのHETP結果を示すチャートである。
【
図42】SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の溶出中に生成されるフロントの段階3のMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムのHETP結果を示すチャートである。DPCは、MabSelect(商標)プロテインAカラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の直接生成物捕獲を指す。
【
図43】グアニジンHClでの消毒中に生成されるフロントの段階3のMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムのHETP結果を示すチャートである。DPCは、MabSelect(商標)プロテインAカラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の直接生成物捕獲を指す。
【
図44】消毒後の0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.5でのリンス中に生成されるフロントの段階3のMabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムのHETP結果を示すチャートである。DPCは、MabSelect(商標)プロテインAカラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の直接生成物捕獲を指す。
【
図45】SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)を含む溶媒/洗剤(S/D)処理物質の充填中に生成される段階6のUNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラムフロントのHETP結果を示すチャートである。PS1は、UNOsphere S(商標)カラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の研磨工程1を指す。
【
図46】SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の溶出中に生成される段階6のUNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラムフロントのHETP結果を示すチャートである。PS1は、UNOsphere S(商標)カラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の研磨工程1を指す。
【
図47】カラムストリップの間に生成される段階6のUNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラムフロントのHETP結果を示すチャートである。PS1は、UNOsphere S(商標)カラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の研磨工程1を指す。
【
図48】水酸化ナトリウムでの洗浄の間に生成される段階7のQ Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムフロントのHETP結果を示すチャートである。PS2は、Q Sepharose(商標)XLカラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の研磨工程2を指す。
【
図49】カラムストリップ中に生成される段階7のQ Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムフロントのHETP結果を示すチャートである。PS2は、Q Sepharose(商標)XLカラム上のSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の研磨工程2を指す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、抗IL-12/IL-23p40抗体、例えば抗IL-12/IL-23p40抗体STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)、及び抗体の特定の医薬組成物を産生するための製造方法における、クロマトグラフィカラムの繰り返し操作中の充填されたクロマトグラフィカラムベッドの変化をモニタリングするための改良された品質評価手順に関する。この方法は、スケールとは無関係に、カラムの寿命を通してカラムが性能を発揮する有効性を評価する実用的な手段を提供する。
【0028】
クロマトグラフィカラム分離効率は、クロマトグラフィの理論プレートモデルを使用して特徴付けられることが多い。この手法を使用して、クロマトグラフィカラムは、多数の段階又は理論プレートからなるものとして認識される。各プレートは、試料成分が移動相と固定相との間の平衡を達成する距離である(Van Deemter、Zuiderweg及びKlinkenberg、「Longitudinal Diffusion and Resistance to Mass Transfer as Causes of Nonideality in Chromatography」、Chem.Engng.Sci.、5:271~289(1956年)を参照し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。カラム効率は、カラム内の理論プレート数Npで測定され、カラム内のプレート数が多いほど平衡化が進み、クロマトグラフィバンドの分散が少なくなり、ピークが狭くなり、分離の質が向上することを意味する。所与のカラムのプレートの数が多いほど、プレートの高さは低くなる。したがって、カラム効率は、プレートの高さを計算することによっても測定することができ、これは、「理論段相当高さ」又はHETPと呼ばれる。この手法を使用して、HETP値が小さいほど、カラム分離の効率が高くなる。
【0029】
HETPは、クロマトグラフィカラムの長さLを、理論的なプレートの数Npで割ることによって計算される。
HETP=L/Np
【0030】
カラムが保有する理論プレートの数は、過去にはパルス注入後のクロマトグラフのピークを以下の式で調査することによって決定されてきた:
【0031】
【数5】
式中、t
Rは保持時間であり、w
1/2は半分の高さにおけるピーク幅である。しかし、この手法は、N
pを計算するために使用されるピーク形状がガウス分布から逸脱している場合、カラム効率の正確な測定値を提供しない。この感度の不足を補うために、第2の測定値である非対称性を利用して、ピーク歪度を評価する。この測定値は、最大ピーク高さの10%でのリーディングピーク幅とテーリングピーク幅とを比較している。上述のように、このモデルは、カラム性能の変化を検出する感度を欠いている。
【0032】
本明細書に記載される方法は、ルーチンのクロマトグラフィカラム操作中に生じる1つ又は複数の移動相遷移フロント上のガンマ分布に基づく、代替的でより正確なHETPの測定を提供する。したがって、本開示は、クロマトグラフィカラムの操作方法を目的とする。この方法は、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することを含む。この方法は、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定することを更に含む。
【0033】
【0034】
式Ia及び式Ibを参照すると、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びViは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットのパラメータである。理論段相当高さ(HETP)値は、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びViを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについて計算され、
【0035】
【0036】
クロマトグラフィカラム充填の品質は、計算されたHETP値に基づいて評価される。カラム品質の評価に基づいて、クロマトグラフィカラムは、後続の使用が許容可能であると判定されるか、そうでなければ、コンディショニング、交換、又は再充填されなければならない。
【0037】
本明細書に開示されるカラムの品質評価の方法は、任意のクロマトグラフィカラムに適用することができる。例示的なクロマトグラフィカラムとしては、液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、分子排除、超臨界流体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、二次元クロマトグラフィ、高速タンパク質(FPLC)クロマトグラフィ、向流クロマトグラフィ、キラルクロマトグラフィ、水性順相(ANP)、混合モードクロマトグラフィ、及び偽親和性クロマトグラフィに使用されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的なカラム充填剤は、親和性クロマトグラフィ充填剤(例えば、プロテインA又はプロテインG親和性クロマトグラフィ充填剤)、イオン交換クロマトグラフィ充填剤(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、及び混合モード交換クロマトグラフィ充填剤)、吸着クロマトグラフィ充填剤(例えば、シリカゲル又はアルミナ充填剤)、疎水性相互作用クロマトグラフィ充填剤(例えば、フェニル-セファロース、アザ-アレノフィリン樹脂、又はm-アミノフェニルボロン酸充填剤)、金属キレート親和性クロマトグラフィ充填剤(例えば、Ni(II)-及びCu(II)-親和性クロマトグラフィ充填剤)、サイズ排除クロマトグラフィ充填剤(例えば、ゲル電気泳動又はキャピラリ電気泳動充填剤)、又は分子排除クロマトグラフィ充填剤(例えば、ポリスチレン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書に記載される方法は、ルーチンのクロマトグラフィカラム操作中、例えば、試料中の化学物質又は生物学的物質の単離、精製、又は特定の間に適用することができる。このような化合物としては、例えば、タンパク質(例えば、抗体及びそのフラグメント)、核酸、炭水化物、脂質、有機低分子、無機低分子、ウイルス、リポソーム、及び任意のそのような化合物のハイブリッド又は変異型を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
試験のためにカラムをオフラインにする必要がある、以前のクロマトグラフィカラムの品質評価方法、例えば、パルス注入法とは対照的に、本明細書に記載される法は、ルーチンのカラム操作中に実施される。本方法は、ルーチンのカラム精製プロセス中に生じる、プロセスバッファ及び異なる特性を有する溶液を含む移動相プロセス遷移の利点を有する。
【0040】
本発明の方法によれば、「移動相」とは、カラムクロマトグラフィにおける液相であって、クロマトグラフィカラム充填の固定クロマトグラフィ材料を取り囲み、移動するものである。クロマトグラフィカラム操作中、移動相の組成及び特性は、各プロセス工程、例えば、平衡化、洗浄などで変化することが多い。移動相の特性の変化は、溶出液、すなわち、固定相を通過した後にカラムから溶出する移動相で検出及び測定することができる。本明細書で使用するとき、「カラム出口信号」は、溶出液がカラムから溶出する際に検出される移動相からの溶出液の物理的又は化学的特性の信号である。カラム出口信号を提供する物理的又は化学的特性は、任意の典型的なクロマトグラフィ検出器を使用して測定することができる、pH、導電率、光吸収、蛍光、電荷、塩濃度、偏光測定、屈折率、電気化学反応、質量電荷比などの任意の特性であり得る。カラム出口信号を測定するのに好適なクロマトグラフィ検出器としては、質量分析計、赤外分光計、可視分光計、紫外分光計、フーリエ変換赤外分光計、炎イオン化検出器、低角度レーザ光散乱検出器、ダイオードアレイ検出器、蛍光分光計、pH検出器、導電率検出器、電気化学検出器、及び屈折率検出器などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
カラム出口信号は、溶出液から収集される。更に、カラム出口信号を収集するために、「累積流量」も収集される。「累積流量」は、カラムから経時的に溶出される流体の総体積である。この値をカラム体積で割った値を、カラム体積単位で表す。
【0042】
遷移フロントは、累積流量に対するカラム出口信号の変化によって生成される。遷移フロントは、1つ又は複数の異なる特性(例えば、導電率、pHなど)を有する異なる移動相の、カラムへの連続的な適用から生じる。本明細書に記載される方法によれば、遷移フロントに対するカラム出口信号は、最大値1及び最小値0を有するように正規化され得る。本明細書で言及されるように、「下降遷移フロント」とは、開始移動相が、順次導入された移動相のカラム出口信号よりも高いカラム出口信号、例えば、導電率を有する移動相遷移のことである。
【0043】
本明細書で使用されるように、「上昇遷移フロント」とは、開始移動相が、順次導入される移動相のカラム出口信号よりも低いカラム出口信号、例えば、導電率を有する移動相遷移のことである。
【0044】
遷移フロントは、カラム操作の過程で認定されるカラム充填を含むクロマトグラフィカラムに第1の移動相を添加することによって作成される。第1の移動相の添加の一部の時点で、例えば、第1の移動相が溶出を開始すると、第1の移動相とは異なる検出可能なカラム出口信号を有する第2の移動相が、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムに添加される。第1の移動相と第2の移動相との間で遷移する際に、移動相の2つ以上の間隔でカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集することにより、遷移フロントを検出する。
【0045】
一実施形態では、第1及び第2の移動相のカラム出口信号は、信号ノイズを超える量で信号が異なる。一実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの5%以上である。別の実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの少なくとも10%以上である。別の実施形態では、別の実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの少なくとも15%以上である。
【0046】
一実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は導電率である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも1μS/cm、少なくとも10μS/cm、少なくとも100μS/cm、少なくとも1mS/cm、又は1mS/cm超異なる。
【0047】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、pHである。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも0.05のpH単位、少なくとも0.1のpH単位、少なくとも1のpH単位、少なくとも2のpH単位、又は2を超えるpH単位で異なる。
【0048】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、UV-Vis吸光度である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは少なくとも0.01の吸光度単位、少なくとも0.1の吸光度単位、少なくとも0.5の吸光度単位、少なくとも0.8の吸光度単位、又は0.8を超える吸光度単位で異なる。
【0049】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、赤外吸光度である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも1パーセントの透過率、少なくとも10パーセントの透過率、少なくとも20パーセントの透過率、少なくとも30パーセントの透過率、又は30パーセントを超える透過率で異なる。
【0050】
一実施形態では、移動相遷移フロントは、変性剤を含む移動相から非変性剤を含む移動相への変化によって生成される。別の実施形態では、移動相遷移フロントは、非変性剤を含む移動相から変性剤を含む移動相への変化によって生成される。
【0051】
別の実施形態では、移動相遷移フロントは、アルカリ性移動相状態から中性又はより酸性の移動相状態への変化によって生成される。あるいは、移動相遷移フロントは、酸性移動相状態から中性又はよりアルカリ性の移動相状態への変化によって生成される。
【0052】
別の実施形態では、移動相遷移フロントは、有機溶媒を含む移動相から水性移動相への変化によって生成される。あるいは、移動相遷移フロントは、水性移動相から有機溶媒を含む移動相への変化によって生成される。
【0053】
カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの過程で様々な間隔で収集される。好ましくは、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、最小カラム出口信号から最大カラム出口信号まで、又はその逆に、移動遷移フロントの全体の過程で収集される。一実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、不規則な間隔で収集され、例えば、カラム出口信号の変化が検出されると収集される。別の実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの全体の過程で一定の時間間隔で収集される。例えば、一実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの全体の過程で1秒間隔で収集される。別の実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フェーズの過程で5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60秒間隔で収集される。
【0054】
一実施形態では、カラム出口信号データは、分析期間にわたって最大値を1に設定し、最小値を0に設定することによって、上述のように正規化される。流量はまた、カラム体積に変換され、異なるカラム充填間のデータの比較のために標準化される。このデータを使用して、ガンマ累積分布関数(「CDF」を使用して、収集されたデータポイントに最も適合する曲線を生成する。ガンマCDFは、3つの値:形状パラメータk;スケールパラメータθ(シータ);及びオフセットのパラメータViにより決定され、以下の式Iを使用する:
C=f(V,k,θ,Vi)式I
【0055】
式Iを参照すると、Cは、所与のVのカラム出口信号であり、Vは、累積流量をカラム体積で除算したものである。式Iaは、式Iに由来し、上昇遷移フロントに沿ってガンマ分布関数値を決定するために使用される。
【0056】
【数8】
式中、
Γは、第2種不完全ガンマ関数であり、
γは、第1種不完全ガンマ関数である。
【0057】
あるいは、式Ibはまた、式Iに由来し、下降遷移フロントに沿ってガンマ分布関数値を決定するために使用される。
【0058】
【0059】
図1Aは、カラム遷移フロントにわたって収集された例示的な正規化カラム出口信号及びカラム体積データをプロットするグラフである。式Iaを使用して、データに対する曲線適合を生成した。
【0060】
最良適合ガンマCDFパラメータは、k、θ、及びViの値を操作して、データからの平方和の偏差が最小となるモデル曲線を生成するパラメータを見出すことによって決定される。この曲線は、最適な適合モデルを生成するために、遷移フロント全体からのデータポイントを介して適合される。この曲線からのk、θ、及びViパラメータを利用して、カラム効率の指標として、カラム内のプレート数Np又はプレートの高さ、すなわち、HETPを計算する。
【0061】
プレートの数Npは、モデル曲線の平均μ及び分散σ2に基づいて計算される。平均及び分散は、以下のように曲線から導出される:
平均、μ=kθ+Vi
分散、σ2=kθ2
【0062】
プレートの数は、以下の平均及び分散に基づいて計算される:
プレートの数、Np=μ2/σ2
【0063】
HETPは、以下のように、センチメートルのカラムの長さLをプレートの数Npで割ったものに基づいて、上述のように計算される。
【0064】
【0065】
図1Bは、定義された平均μ及び分散σ2パラメータを有する、
図1Aに示されるものと同じグラフを示す。
【0066】
本明細書に記載されるように計算されたデータに対するモデル適合を評価するために、平均(Vm)、平方和(SS)、及びモードも決定することができる。SSは、導出されるプロセスデータからのモデル曲線の偏差の直接測定である。Vm値は、カラム体積単位における遷移の中心点の尺度である。バッファ遷移には典型的には1カラム体積が必要なため、この値は1に近い値にする必要がある。平均は、典型的には、フロントの形状によって影響されない。平均値を使用して、誤差の自動計算をチェックする。例えば、値が低い場合は、データ収集エラーを示している可能性があり、結果を確認するために更なる調査を必要とする可能性がある。モードは、変化率が最大である体積に対応する。これは、遷移曲線が対称である場合に平均と等しい。典型的には、遷移に歪みがあり、モードは平均よりも低い。
【0067】
HETPに加えて、k(形状)パラメータから計算することができる他の要因としては、非対称性に関連する尺度である歪度(γ1)、及びピーク鮮鋭度の尺度である尖度(γ2)が挙げられる。これらの要因を使用して、カラム性能の変化を特定することができる。
【0068】
【0069】
本明細書に記載される方法によれば、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、ガンマCDFからHETPを計算するために、カラムプロセスがカラム上で実行されるたびに、同じ移動遷移相について収集される。同じプロセス工程及び同じスケールで使用されるカラムにより生成される過去のデータはまた、HETPを計算するために取得し、利用することができる。HETPデータを収集して、過去又は現在の操作中に対応する遷移のHETP値の傾向を特定し、HETP値の上限及び下限の管理限界を特定する。管理限界は、許容可能なHETP値の範囲、すなわち、許容可能なカラム効率に対応するHETP値を定義するHETPの高値及び低値である。これらの上限及び下限の管理限界は、統計的評価に基づいて設定することができる。例えば、一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、平均+/-2、3、又は4標準偏差を計算することによって設定される。一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、本明細書の実施例に記載される平均+/-3標準偏差を計算することによって設定される。別の実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから信頼区間を計算することによって設定することができる。一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから95%、96%、97%、又は98%信頼区間を計算することによって設定される。別の実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから99%信頼区間を計算することによって設定される。
【0070】
上限及び下限の管理限界を利用して、カラムの時間及び使用に対するカラム効率の変化を特定する。典型的には、上限管理限界を超えるHETPの任意の増加は、カラム効率の低下を示し得る。ルーチンのカラムモニタリング中に、HETPの有害な傾向が観察されるか、又は管理限界を超えた場合、溶出液の製品品質、カラムプロセス性能、及び/又は不純物除去データを評価して、特定されたバッチの製品品質を確保する必要がある。製品品質又はカラム性能のいずれかが設定された基準に適合しない場合は、カラムのコンディショニング、再充填又は交換などの適切な是正処置を行い、更なる使用のためにリリースする前に品質評価を行う必要がある。充填されたベッドを再分配するためにクロマトグラフィカラムをコンディショニングする方法は、使用されるカラムに応じて異なるが、当業者にはよく理解される。
【0071】
カラム操作中のカラム性能のモニタリングは、精製プロトコルにルーチンに含まれる1つ又は2つ以上の遷移相に基づくことができる。好ましくは、モニタリングは、精製プロトコル中の2つ又は3つ以上の遷移相についてガンマCDFに基づいて計算されたHETP値に基づく。
【0072】
以下に記載されるように、カラム性能を決定するために本明細書に記載されるGDTA法を使用してHETPを計算することは、同じプロセス工程及び同じスケールで使用されるカラムから収集された過去のデータに基づくことができる。プロセス工程の適格縮尺モデルモデルから生成されるデータを評価に使用することもできる。これにより、品質評価データと比較して、カラムの性能の品質を評価することができる。
【0073】
流量(Van Deemter効果)、潜在的なバッファ相互作用、及び余分なカラム体積などの要因は、本明細書に記載されるGDTA法の結果に影響を与える可能性があり、GDTAの管理限界を設定する際に評価する必要がある。GDTAに含まれる遷移フロントは、両方の移動相カラム出口信号測定値がスケール上にあり、移動相間のカラム出口信号測定値の差がバックグラウンド信号ノイズを上回っており、移動相と樹脂との間の相互作用が一貫しており、再現性があるなどの特定の基準を満たすことが好ましい。
【0074】
使用中のリリース及びモニタリングに使用される一般的なカラム評価基準は、装置及び樹脂の種類に固有の過去のデータを評価することによって決定されるものとする。カラムの品質評価結果と性能との間の関係を評価するために使用することができる、ルーチンの製品品質及びプロセス性能の測定の例を表1に列挙する。評価に使用されるルーチンの品質及びプロセス性能の測定は、表1に列挙されるものに限定されるものではなく、リストはガイドラインであることを意味し、評価されるプロジェクト及びプロセス工程の特定の要件に基づいている必要がある。製品品質及びプロセス性能に関する仕様及び許容基準は、プロジェクト固有であり、プロセス要件に基づいて決定される。
【0075】
【0076】
本明細書に記載されるガンマ分布遷移分析法は、カラム操作中にリアルタイムで実行することができる。この方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することと、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定することとを含む。
【0077】
【0078】
式Ia及び式Ibを参照すると、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vは、カラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びViは、曲線を画定するために使用される形状、スケール及びオフセットのパラメータである。この方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びViを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算することを更に含む。
【0079】
【0080】
本方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスを使用して、当該計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価することを更に含む。この評価に基づいて、クロマトグラフィカラムの操作者は、クロマトグラフィカラムを再使用できるか、又は次のカラム操作の前に交換、再充填、又はコンディショニングする必要があるかを判断することができる。
【0081】
図2は、クロマトグラフィカラムを操作し、本明細書に記載されるようなカラム効率をリアルタイムで評価する方法及びシステムの概要を提供する図である。
図2及び上述のように、システム10は、複雑な混合物としてカラムに導入された生体分子を分離するために使用されるクロマトグラフィカラム12、すなわち、溶出液14、クロマトグラフィカラムから溶出する際に溶出液中のカラム出力信号を検出する検出器20、検出器20からの信号/データを送信する通信インタフェース22、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24、及びサーバ26を含む。
【0082】
クロマトグラフィカラム12は、透過性、半透過性、又は不透過性の固相カラム充填材料で充填される。好適なクロマトグラフィカラム及びカラム充填材料は、上述のように記載されている。対象となる生体分子を含む溶出液14をクロマトグラフィカラム12に導入する。移動相16もまた、クロマトグラフィカラム12に導入する。移動相16は、クロマトグラフィカラム12の固定相を通じた生体分子の分離、及びクロマトグラフィカラムの出力18を通じた溶出液中の生体分子の溶出を促進する。本明細書に記載される方法によって、移動相16は、以下に記載されるように、1つ又は複数の物理的又は化学的特性、例えば、pH、導電率、塩濃度が互いに異なる、連続的に導入されたカラムバッファ及び/又は洗浄試薬を含む。1つ又は複数の物理的又は化学的特性におけるこれらの差違は、検出器20によって溶出液中で検出される。
【0083】
検出器20は、クロマトグラフィカラム12の出力18に結合される。したがって、検出器20は、クロマトグラフィカラム12の溶出液を介してカラム出力信号をモニタリング及び収集する。好適な検出器及び溶出液の特性、すなわち、検出されるカラム出力信号は、上述のように記載されている。検出器は、検出器20によって収集されたデータ(例えば、カラム出力信号及び累積流量パラメータ)を、データ処理用のカラムの品質評価コンピューティングデバイス24及び/又はストレージのためのサーバ26に送信する通信インタフェースユニット22に結合されている。
【0084】
本明細書に記載されるシステムのカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、バス36又は他のリンクによって一緒に結合される、中央処理ユニット(CPU)又はプロセッサ32、メモリ30、ネットワークインタフェース28、及びユーザインタフェース34を含む、任意のコンピューティングデバイス、例えばコンピュータ、パーソナルコンピューティング装置、スマートフォンなどであってもよい。カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、他のタイプ及び/又は数の他の構成の構成要素及び要素を含んでもよい。
【0085】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のプロセッサ32は、本明細書の実施例によって説明及び例示されるガンマ分布遷移分析の1つ又は複数の態様の記憶された命令のプログラムを実行するが、他のタイプ及び/又は数の処理装置を使用することができ、プロセッサ32は、他のタイプ及び/又は数のプログラムされた命令を実行することができる。一実施形態では、プロセッサ32は、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24にのみ配置される。別の実施形態では、プロセッサは、検出器20とカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24との間に分散される。例えば、一実施形態では、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24のプロセッサ32は、検出器に連結されたマイクロコントローラを含む。この実施形態では、マイクロコントローラは、検出器20によって収集されたデータを、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24に送信されるデジタル信号にマッピング又は変換することができるオンボードプロセッサとして機能する。1つ又は複数の検出器に連結されたマイクロコントローラは、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24の1つ又は複数の処理機能を実行することができる。
【0086】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のメモリ30は、本明細書に記載されるように、GDTAの1つ又は複数の態様のためのこれらのプログラムされた命令を記憶している。メモリ30には、タイミングプロセッサ装置内のランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)、又はカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のプロセッサ32に結合された磁気的、光学的、又は他の読み書きシステムによって読み書きされるフロッピーディスク、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、又は他のコンピュータ読み取り可能な媒体など、様々な種類のメモリ記憶装置を使用することができる。
【0087】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24のネットワークインタフェース28は、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24と検出器20との間の通信を操作的に結合し、通信を容易にするが、他のタイプ及び/又は数の接続及び構成を有する他のタイプ及び/又は数の通信ネットワーク又はシステムを使用することができる。
【0088】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、例えば、グラフィカルユーザインタフェース、タッチユーザインタフェース、又はウェブベースのユーザインタフェースなどのユーザインタフェース34を更に含んでもよい。ユーザインタフェースは、クロマトグラフィカラムの品質評価パラメータに関する情報をユーザに表示するように構成される。ユーザインタフェースはまた、クロマトグラフィカラムパラメータに関するユーザからの入力を受信するように構成される。
【0089】
図2に示すサーバ26は、それぞれがCPU又はプロセッサ、メモリ、及びネットワークインタフェースを含む1つ又は複数のコンピューティングデバイスであってもよく、これらは、カラムの品質評価のコンピューティング装置24に関して記載されたものと同様のバス又は他のリンクによって一緒に結合される。サーバ26は、他のタイプ及び/又は数の他の構成の構成要素及び要素を含んでもよい。
【0090】
本明細書に記載されるシステムの通信インタフェース22は、1つ又は複数のローカルエリアネットワーク(LAN)及び/又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができる。例示としてのみ、通信インタフェース22は、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)及び/又はセキュアHTTP(HTTPS)を含む、イーサネット上のTCP/IP及び業界標準プロトコルを使用することができるが、他のタイプ及び/又は数の通信ネットワークが利用されてもよい。
【0091】
本開示の別の態様は、ガンマ分布遷移分析を使用してクロマトグラフィカラムの品質評価のための命令を記憶している、一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。これらの命令は、プロセッサによって実行されると、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては上述のような式Ia又は下降遷移フロントについては上述のような式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、上述のように式II及び本明細書に記載されるモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びViを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算し、当該計算されたHETP値に基づいてクロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程とを含む工程をプロセッサに実行させる、実行可能なコードを含む。
【0092】
本開示の別の態様は、クロマトグラフィカラムの品質評価の装置に関する。この装置は、プロセッサ及びプロセッサに連結されたメモリを含む。メモリは、メモリに記憶されたプログラム命令を実行するように構成される。これらの命令は以下を含む:カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、上述のように、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、上述のように式II及び本明細書に記載されるモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びViを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算し、当該計算されたHETP値に基づいてクロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程。
【実施例】
【0093】
実施例1-レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
治療抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布遷移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間に2つ又は3つの遷移に適用した。この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造中に使用されるプロテインAカラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つの遷移フロント、すなわち、平衡化及び中間洗浄を含む。
【0094】
69バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の連続精製から、60の平衡化及び69の洗浄フロントを含む129のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0095】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された285バッチの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、253の平衡化のフロント及び285の洗浄フロントを含み、合計538の過去のフロントが含まれていた。使用前消毒が行われた32バッチについては、平衡化のフロントは生成されなかった。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、11のカラム充填を表す。
【0096】
GDTAプロトコル:
プロテインAカラム精製の各遷移フロント、すなわち、洗浄及び平衡化について、導電率及び累積流量を記録した。カラムがインラインに置かれた時点を特定するために、プレカラム導電率及び圧力の傾向を評価することによって、開始点の決定を行った。フロントの持続時間について、スプレッドシートを作成し、計算された10秒の間隔を使用して、サーバから流量及び導電率のデータを取得するように設定した。
【0097】
導電率データは、最大値を1及び最小値を0とし、他の点を比例的にスケーリングすることで正規化した。加えて、流量をカラム体積に変換した。
【0098】
開始ガンマCDFを、PIモジュールと同じ開始k、θ、Viパラメータを使用して計算した。Viは、ガンマ分布関数のx項の各体積値から減算した。精製中に増加していた導電率を正規化するために、Vi未満の体積では導電率の値を0に設定し、最大値を1に設定した。
【0099】
各導電率値と各体積点に対するモデル適合との差(誤差)を計算した。加えて、0.5~1.8CVの誤差に対する平方和を計算した。次の式を使用して平方和の最小値を有するモデル曲線を生成するk、θ、及びViパラメータを見つけるために、Excelソルバーを使用して最良適合ガンマCDFパラメータを計算した:
【0100】
【0101】
ソルバーは、最も近い適合に達することを確実にするために、k≧0.0001及びVi≧0の制約を有するGRG非線形法を使用して、10,000回の反復を行った。
【0102】
k、θ、及びViの最終値から以下のパラメータを計算した:
【0103】
【0104】
平均流量及びプレカラム圧力を、各フロントについて0.5~1.8CVの期間にわたって計算した。
【0105】
受入基準の分析及び評価:
正規性
平衡化及び洗浄フロントの両方についてのHETP及びSSの結果を、確率プロットを作成することによって正規性について評価した。確率プロット(
図3~
図12)では、データポイント(HETP又はSSの結果)は、試料で観察された実際の累積分布を表している。線は、試料から推定されるパラメータを使用した正規分布に基づいて、適合された累積分布並びに信頼区間の上限値及び下限値を表している。パーセンタイルスケールを変換することにより、適合された分布が直線を形成する。HETP及びSSデータセットはそれぞれ、下端で0に拘束されているが、正規分布モデルは負の値を示唆している。得られた確率プロットは、曲線形状を示す。
図3~
図6を参照されたい。したがって、結果は、自然対数変換を用いて良好に適合する。自然対数変換データの確率プロットについては、
図7~
図10を参照されたい。
【0106】
平均(V
m)のデータもまた、正規性について評価した。
図11及び
図12は、データが正規分布に適合することを示し、わずかな孤立値のみを示す。したがって、変換は必要なかった。このパラメータは、プロトコルにおいて指定されなかったが、曲線適合が有効であることを保証した。このパラメータの管理限界もまた、この分析から生成される。
【0107】
孤立値の特定及び変動の原因。
孤立値を特定し、結果の変動性を評価するために、各パラメータについての管理図を作成した。
図13~
図22を参照されたい。管理図は、HETP及びSSの変換されたデータを使用し、自然対数変換が適用された。データはまた、これらのパラメータのそれぞれについて、変換された上限の管理限界を有する時系列プロットでプロットされる。
【0108】
HETP:平衡化及び洗浄フロントの両方について、多くの孤立値及び傾向が、HETP結果において明らかである。加えて、
図13及び
図18は、図中の四角で表され、以下に番号を付したシューハートルール1、2及び3に基づくデータの傾向を示している。
【0109】
【0110】
これらの変位に関連するバッチは、許容可能なプロセスを代表するので、分析から除外されなかった。
【0111】
管理図(
図13及び
図18)の両方は、管理限界を更に超える、多くのシューハートルール1の違反の数を示しており、これも管理限界を超えている。各場合において、問題は、カラムを再コンディショニングすることによって特定及び修正された。
【0112】
予想されるように、カラム充填の変動に起因して、いくつかの実行は、ルール2及び3の基準を満たしていた。傾向を更に評価するために、カラム充填(
図23~
図24)及びスキッド(
図25~
図26)によりグループ化されたデータを使用して時系列プロットを作成した。これらのチャートは、特別な原因による変動の多くが、カラムの劣化及びいくつかの孤立した変位に起因することを示している。平衡化フロントの各カラムについて、HETPの増加傾向が明らかである(
図23)。洗浄フロントで観察された変位は、異なる時間で一方のスキッド又は他方のスキッドに分離されているように見え(
図26)、これは、スキッドにおけるカラム性能の変動の原因がある可能性を示唆している。
【0113】
平方和(SS):平方和は、ガンマ分布がプロセスデータにどのくらい良好に適合するかの尺度である。この測定は、HETP結果が有効であることを確認にするためのチェックを提供する。変換されたデータの管理図は、それぞれ平衡化及び洗浄について
図15及び
図20に示される。この測定値は、上限の管理限界のみを有する。
図15は、上限の管理限界を超えた6点を示す。これらのうちの4つは、より高いHETPと関連付けられる。バッチ880572Mは、フロントの間に流れが乱れてSSが高くなったが、HETPには影響しなかった。
【0114】
流量及び圧力の評価。
データセットの平均流量及びプレカラム圧力を評価して、任意の孤立値を特定した。特定された差違と結果との間の関係を評価した。
【0115】
流量及びプレカラム圧力は、
図27~
図30の傾向がある。チャートは、各工程の流量制御に優れていることを示している。この評価の間、洗浄流量を変化させた。プレカラム圧力は、スキッド及びカラムに関連する変動を示しているが、一般的には、範囲内で安定である。
図31は、HETP値が洗浄流量変化によって有意な影響を受けていないことを示している。
【0116】
プロテインAカラムの管理限界
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、平衡化についての
図13及び洗浄フロントについての
図18に示すように、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最適に決定される。管理図は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算された変換されたデータの管理限界を示す(以下の表2も参照されたい)。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0117】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図14及び
図19に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0118】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値がプロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、平衡化についての
図15及び洗浄フロントについての
図20に示すように、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最適に決定される。管理図は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算された変換されたデータの管理限界を示す。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。管理図は、平衡化及び洗浄フロントについてそれぞれ0.050及び0.989を与えるように逆変換した、変換されたデータの上限の管理限界を示している(表2を参照されたい)。各フロントのSS結果及び管理限界の時系列プロットを
図16及び
図20に示す。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0119】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化及び洗浄フロントの両方の平均値は、ほぼ正規分布しており、変換を必要とせず、
図11及び
図12を参照されたい。平衡化フロントの平均は、1.07CV付近に密に分布しており、いくつかの孤立値がいずれかの側に存在し、高い側では1.2に接近しており、
図17を参照されたい。洗浄フロントは、わずかに多くの変動を示し、0.8に接近したいくつかの低い孤立値が存在する0.99CVの中心にあり、
図22を参照されたい。両フロントの平均値については、0.80~1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表2を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。より厳しい管理限界は、このチェックのために不必要な感度になってしまう。
【0120】
【0121】
実施例2-レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムの最適以下の性能の検出のためのガンマ分布遷移分析の適用
治療抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布遷移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間に2つ又は3つの遷移に適用した。この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用されるプロテインAカラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つの遷移フロント、すなわち、平衡化及び中間洗浄を含む。
【0122】
カラム充填883333M001で処理された23バッチ及びカラム充填885473M001で処理された22バッチを含む、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の45バッチの連続した精製から、45の平衡化フロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0123】
45バッチの平衡化HETP結果の傾向は、
図32を参照して、カラム充填間の有意差を示した。カラム評価のための現在の対照では、2つのカラム充填間の差は確認されなかった。バッチ収率の評価は、2つのカラム充填で処理されたバッチ間の有意な差(p=0.001)を示し、より高いHETP値を有するカラム充填の方が4.3%低いと推定された。他の潜在的要因を評価し、収率差に対する相関は示さなかった。したがって、この分析からの結論は、カラム性能差がより低い収率を引き起こしたことである。この発見に基づいて、より低い収率のカラムをコンディショニングして、使用を連続する前にカラム充填を改善した。この実施例は、クロマトグラフィカラム品質を評価する際のGDTA法の感度を示す。
【0124】
実施例3-レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、SP-セファロース高性能クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
上述のように、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用されるSP-セファロース高性能(SPHP)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。SPHPカラムは陽イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つの遷移フロント、すなわち、平衡化、WFIフラッシュ、及びストレージフロントを含む。
【0125】
23バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の精製から、23の平衡化、WFIフラッシュ、及びストレージフロントを含む69のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0126】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された189の遷移フロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、64の平衡化フロント、63のWFIフラッシュフロント、及び62のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、6のカラム充填を表す。
【0127】
SPHPカラムフロントのGDTAは、上記実施例1に記載されるように行われた。この分析は、HETP、SSの測定値、及び各フロントの平均値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれに導出された管理限界を以下の表3に列挙する。
【0128】
SPHPカラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、25の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図33(平衡化フロント)、
図34(WFIフラッシュフロント)、及び
図35(ストレージフロント)に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0129】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値が、プロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。変換されたデータの上限の管理限界を逆変換して、平衡化フロントについて0.110、WFIフラッシュフロントについて0.027、及びストレージフロントについて0.073を得た(表3を参照されたい)。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0130】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化、WFIフラッシュ及びストレージフロントの平均値は、不規則な分布を有し、変換から恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80~1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表3を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するために十分であると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックのための不必要な感度になってしまい、これは各カラム充填で変化すると見られる。
【0131】
【0132】
実施例4-レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、Q2クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用される二次陰イオン交換(Q2)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。Q2カラムは、陰イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つの遷移フロント、すなわち、平衡化、ストリップ、及びストレージフロントを含む。
【0133】
23の平衡化及びストリップフロント、及び22のストレージフロントを含む68のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0134】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された324の遷移フロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、121の平衡化フロント、124のストリップフロント、及び79のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、10のカラム充填を表す。
【0135】
Q2カラムフロントのGDTAは、上記実施例1に記載されるように行われた。この分析は、HETP、SSの測定値、及び各フロントの平均値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれに導出された管理限界を以下の表4に列挙する。
【0136】
Q2カラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(ex)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0137】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図36(平衡化フロント)、
図37(ストリップフロント)、及び
図38(ストレージフロント)に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0138】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値が、プロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、自然対数Box-Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/-3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。移動範囲法ではより高い標準偏差を出していたため、ストレージフロントの集計データから標準偏差を決定した。管理限界を下の表4に報告する。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0139】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化、ストリップ、及びストレージフロントの平均値は、不規則な分布を有し、変換から恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80~1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表4を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するために十分であると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックのための不必要な感度になってしまい、これは各カラム充填で変化すると見られる。
【0140】
【0141】
実施例5-STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)の製造プロセス
背景
STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)は、ヒトインターロイキン(IL)-12及びIL-23サイトカインの共有p40サブユニットに対して高親和性及び特異性で結合する完全ヒトG1κモノクローナル抗体である。ウステキヌマブは、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号7の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む。IL-12/IL-23p40サブユニットへのウステキヌマブの結合は、天然キラー及びCD4+T細胞の表面におけるIL-12又はIL-23のIL-12Rβ1受容体への結合をブロックし、IL-12及びIL-23特異的細胞内シグナル伝達及びその後の活性化及びサイトカイン産生を阻害する。IL-12及びIL-23の異常な調節は、複数の免疫介在性疾患に関連している。
【0142】
現在までに、ウステキヌマブは、慢性中程度から重度のプラーク乾癬及び/又は活動性乾癬性関節炎、及びクローン病(CD)を含む成人患者の治療のために、北米、ヨーロッパ、南米、及びアジア太平洋地域の国々を含む世界中で販売承認を受けている。ウステキヌマブはまた、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)の治療のための第3相試験においても評価される。
【0143】
配列
例示的な抗IL-12/IL-23p40抗体配列-STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域重鎖1(CDRH1)のアミノ酸配列:(配列番号1)
TYWLG
【0144】
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域重鎖2(CDRH2)のアミノ酸配列:(配列番号2)
IMSPVDSDIRYSPSFQG
【0145】
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域重鎖3(CDRH3)のアミノ酸配列:(配列番号3)
RRPGQGYFDF
【0146】
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域軽鎖1(CDRL1)のアミノ酸配列:(配列番号4)
RASQGISSWLA
【0147】
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域軽鎖2(CDRL2)のアミノ酸配列:(配列番号5)
AASSLQS
【0148】
抗IL-12/IL-23p40抗体相補性決定領域軽鎖3(CDRL3)のアミノ酸配列:(配列番号6)
QQYNIYPYT
【0149】
抗IL-12/IL-23p40抗体可変重鎖領域のアミノ酸配列(CDRの下線部):(配列番号7)
【0150】
【0151】
抗IL-12/IL-23p40抗体可変軽鎖領域のアミノ酸配列(CDRの下線部):(配列番号8)
【0152】
【0153】
抗IL-12/IL-23p40抗体重鎖のアミノ酸配列(CDRの下線部):(配列番号10)
【0154】
【0155】
抗IL-12/IL-23p40抗体軽鎖のアミノ酸配列(CDRの下線部):(配列番号11)
【0156】
【0157】
アミノ酸配列IL-12
α及びβサブユニットを有するヒトインターロイキン(IL)-12のアミノ酸配列:(配列番号9)
【0158】
【0159】
組換え発現カセット
本発明は核酸を含む組換え発現カセットを使用する。核酸配列、例えば本発明の方法に使用される抗体をコード化するcDNA又はゲノム配列を使用して、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入することができる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に操作可能に連結される、ポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモーターの両方を利用して、核酸の発現を導くことができる。
【0160】
一部の実施形態では、プロモーター、エンハンサー、又は他の要素として機能する単離された核酸を、ポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、in vivo又はin vitroで、突然変異、欠失及び/又は置換により、内因性プロモーターを変えることができる。
【0161】
ベクター及び宿主細胞
本発明は、単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子工学処理される宿主細胞、及び技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗IL-23抗体の産生にも関する。
【0162】
ポリヌクレオチドは、任意選択的に、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに結合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてin vitroでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0163】
DNA挿入物は、適切なプロモーターに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。構築により発現する成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳類又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0164】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含むが、これは任意である。かかるマーカーは、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(methotrexate、MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase、DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸又はグルタミンシンセターゼ(GS)(米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びに大腸菌及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において既知である。適切なベクターは、当事者にとって容易に明白となるであろう。宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の既知の方法により影響を受け得る。このような方法は技術分野において既知であり、多く記述されている。
【0165】
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含み得る。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。このような方法は、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されており、この方法は技術分野において既知であり、多く記述されている。
【0166】
当業者であれば、本発明の方法に使用されるタンパク質をコード化する核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。あるいは、核酸は、抗体をコード化する内因性DNAを含有する宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、例えば、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、技術分野において既知である。
【0167】
抗体、その特定された部分又は変異体の産生にとって有用な細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳類細胞系は、細胞の単層の形態で培養されることが多いが、細胞はまた、例えば、振盪フラスコ又はバイオリアクター内の懸濁液中で増殖するように適合させることもできる。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能な多くの好適な宿主細胞株が技術分野において開発されており、これにはCOS-1(例えばATCC(登録商標)CRL1650)、COS-7(例えばATCC(登録商標)CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC(登録商標)CCL-10)、BSC-1(例えばATCC(登録商標)CCL-26)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeP G2、P3X63Ag8.653、Sp2/0-Ag14、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va(www.atcc.org)から容易に入手できる。特定の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、並びに骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系起源の細胞、例えば、CHO-K1細胞、P3X63Ag8.653細胞(ATCC(登録商標)CRL-1580)及びSp2/0-Ag14細胞(ATCC(登録商標)CRL-1581)が挙げられる。
【0168】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター(例えば、後期又は初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセラートキナーゼ)プロモーター、EF-1αプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーター;エンハンサー、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるがこれらに限定されない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含み得る。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用な他の細胞は既知であり、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又は他の既知の若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0169】
真核宿主細胞が利用されるとき、典型的には、ベクター内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の例は、SV40からのVP1イントロンである(Spragueら、「Expression of a recombinant DNA gene coding for the vesicular stomatitis virus nucleocapsid protein」J.Virol45:773-781(1983年))。加えて、技術分野において既知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクター内に組み込むことができる。
【0170】
CHO細胞株
いくつかの他の哺乳類細胞株の利用可能性にもかかわらず、現在生産されている組換え治療タンパク質の大部分は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で作成されている(Jayapal KPら、Recombinant protein therapeutics from CHO cells-20 years and counting.Chem.Eng.Prog.2007年;103:40-47;Kunert R、Reinhart D.Advances in recombinant antibody manufacturing.Appl Microbiol Biotechnol.2016年;100(8):3451-61)。それらの強みは、例えば、付着細胞又は懸濁液中での堅牢な増殖、無血清及び化学的に定義された培地への適応性、高い生産性、及び治療用組換えタンパク質産生に対する法的な承認の確立された歴史が挙げられる。これらはまた、遺伝子改変が非常に受入容易であり、細胞トランスフェクション、組換えタンパク質発現、クローン選択の方法は十分に特徴付けられる。CHO細胞はまた、ヒトに適合する翻訳後修飾を提供することができる。本明細書で使用するとき、「CHO細胞」としては、例えば、CHO-DG44、CHO-Kl、CHO-M、CHO-S、CHO GSノックアウト、並びにこれらの改変及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
CHO細胞におけるクローニング及び発現。
CHO細胞における発現に一般的に使用される1つのベクターは、pC4である。プラスミドpC4は、プラスミドpSV2-dhfr(ATCC(登録商標)37146)の誘導体である。このプラスミドは、SV40初期プロモーターの制御下でマウスDHFR遺伝子を含有する。これらのプラスミドでトランスフェクトされる、ジヒドロ葉酸活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣細胞又はその他の細胞は、化学療法剤メトトレキサートを補充した選択的培地(例えば、α-MEM、Life Technologies、Gaithersburg、MD)中で細胞を増殖させることによって選択することができる。メトトレキサート(MTX)に対して耐性を有する細胞におけるDHFR遺伝子の増幅は、十分に文書化されている(例えば、F.W.Altら、「Selective multiplication of dihydrofolate reductase genes in methotrexate-resistant variants of cultured murine cells.」J.Biol.Chem.253:1357-1370(1978年);並びにM.J.Page及びM.A.Sydenham、「High level expression of the humanized monoclonal antibody Campath-1H in Chinese hamster ovary cells.」Biotechnology 9:64-68(1991年))。増大したMTX濃度において成長した細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として、標的酵素であるDHFRの過剰生成により、薬物に対する耐性を発達させる。第2の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、通常、共増幅され、過剰発現される。このアプローチを使用して、増幅遺伝子(複数可)の1,000を超えるコピーを有する細胞株を開発することができることが、技術分野において知られている。続いて、メトトレキサートを回収する際、宿主細胞の1つ以上の染色体(複数可)に組み込まれた増幅遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0172】
対象遺伝子を発現させるために、プラスミドpC4は、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復(LTR)の強力なプロモーター(Cullenら、「Functional analysis of the transcription region located within the avian retroviral long terminal repeat.」Mol.Cell.Biol.5:438-447(1985年))と、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の最初期遺伝子のエンハンサーから単離されたフラグメント(Boshartら、「A very strong enhancer is located upstream of an immediate early gene of human cytomegalovirus.」Cell 41:521-530(1985年))を含む。プロモーターの下流は、遺伝子の組み込みを可能にするBamHI、XbaI及びAsp718制限酵素切断部位である。これらのクローニング部位の後に、プラスミドは、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン及びポリアデニル化部位を含有する。他の高効率のプロモーター、例えば、ヒトβアクチンプロモーター、SV40初期若しくは後期プロモーター、又は他のレトロウイルス、例えばHIV及びHTLVIからの長末端反復も発現のために使用することができる。クロンテックのTet-Off及びTet-On遺伝子発現系並びに同様の系を使用して、哺乳動物細胞において調節された方法でタンパク質を発現することもできる(M.Gossen、及びH.Bujard、「Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline-responsive promoters.」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551(1992年))。mRNAのポリアデニル化のために、例えば、ヒト成長ホルモン又はグロビン遺伝子からの他のシグナルも使用することができる。染色体に組み込まれた目的の遺伝子を有する安定した細胞株は、gpt、G418又はハイグロマイシンなどの選択マーカーとの共トランスフェクションの際に選択することもできる。最初に1つを超える選択マーカー、例えばG418、に加えてメトトレキサートを使用するのが有利である。
【0173】
一般的な精製方法
抗IL-12/IL-23p40又はIL-23抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ及びレクチンクロマトグラフィが挙げられるがこれらに限定されない既知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)を精製に利用することもできる。
【0174】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」又は「複数の抗体」は、2009年のバイオロジクス価格競争・イノベーション法(BPCI Act)並びに同様の世界的な法律及び規則で承認されたバイオシミラー抗体分子を含む。BPCI Actの下で、抗体は、臨床的に不活性な成分のわずかな違いにもかかわらず、基準品と「非常に類似」しており、安全性、純度、効力の点で基準品と同等の臨床結果が得られると「期待される」ことをデータが示す場合、バイオシミラーであることが実証され得る(R.Dolinar、F.Lavernia、及びS.Edelman.「A GUIDE TO FOLLOW-ON BIOLOGICS AND BIOSIMILARS WITH A FOCUS ON INSULIN.」Endocrine Practice:2018年2月、24巻、No.2、195-204ページ)。これらのバイオシミラー抗体分子は、短縮された承認経路を提供し、それにより、出願人は、法的な承認を確保するために、イノベーターの基準品の臨床データに依存している。臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベーター基準抗体と比較して、バイオシミラー抗体分子は、本明細書では、「フォローオン生物学的」と呼ばれる。本明細書に提示されるように、STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)は、臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベーター基準抗IL-12/IL-23p40抗体である。ウステキヌマブは、2009年から米国で販売されている。
【0175】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ又は2つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片などの抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片が結合する同じ抗原に結合することができる。特定の実施形態によると、抗原結合断片は、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、及びFdセグメント(すなわち、Fab断片に含まれる重鎖の部分)を含む。他の特定の実施形態によると、抗原結合断片は、Fab及びF(ab’)を含む。
【0176】
製造プロセスの概要
STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)は、連続的な灌流細胞培養、続いて精製を含む10段階プロセスで製造される。製造工程の概要は、
図39に示されている。
【0177】
本明細書で使用するとき、用語「培養」、「培養する」、「培養された」、及び「細胞培養物」は、細胞集団の生存及び/又は増殖に好適な条件下で培地中に懸濁される細胞集団を指す。技術分野には文脈から明らかであるように、本明細書で使用されるこれらの用語はまた、細胞集団及び集団が懸濁される培地を含む組み合わせを指す。細胞培養物は、例えば、バッチ、フェドバッチ又は灌流細胞培養法などによって増殖させた細胞を含む。特定の実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞培養物である。
【0178】
本発明で使用するための細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト胚性腎細胞(HEK細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK細胞、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞及びSp2/0細胞)、及びヒト網膜細胞(例えば、PER.C6細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
本明細書で使用するとき、用語「化学的に定義された培地」、「化学的に定義された複数の培地」、「化学的に定義されたハイブリドーマ培地」、又は「化学的に定義された複数のハイブリドーマ培地」は、全ての成分の同一性及び濃度が既知である合成増殖培地を指す。化学的に定義された培地は、細菌、酵母、動物、又は植物抽出物、動物血清又は血漿を含まないが、個々の植物又は動物由来の構成成分(例えば、タンパク質、ポリペプチドなど)を含んでも含まなくてもよい。化学的に定義された培地は、増殖を支援するために必要なリン酸塩、硫酸塩などの無機塩を含んでもよい。炭素源が定義されており、通常、グルコース、ラクトース、ガラクトースなどの糖、又はグリセロール、乳酸、アセタートなどの他の化合物である。特定の化学的に定義された培地はまた、バッファとしてリン酸塩を使用するが、クエン酸塩、トリエタノールアミンなどの他のバッファを使用してもよい。市販の化学的に定義された培地の例としては、サーモフィッシャーのCDハイブリドーマ培地及びCDハイブリドーマAGT(商標)培地、様々なダルベッコ改変イーグル(DME)培地(シグマアルドリッチ社;SAFC Bioscienses,Inc)、ハムの栄養混合液(シグマアルドリッチ社;SAFC Bioscienses,Inc)、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。化学的に定義された培地を調製する方法は、技術分野において既知であり、例えば、米国特許第6,171,825号及び同第6,936,441号、国際公開第2007/077217号、並びに米国特許出願公開第2008/0009040号及び同第2007/0212770号に既知である。
【0180】
本明細書で使用するとき、用語「バイオリアクター」は、細胞培養物の増殖に有用な任意の容器を指す。バイオリアクターは、細胞の培養に有用である限り、任意の大きさであってもよい。特定の実施形態では、このような細胞は哺乳動物細胞である。典型的には、バイオリアクターは、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。培養期間中、pH及び温度を含むがこれらに限定されないバイオリアクターの内部条件を任意に制御することができる。バイオリアクターは、ガラス、プラスチック、又は金属を含む、本発明の培養条件下で培地中に懸濁された哺乳動物細胞培養物を保持するのに好適な任意の材料から構成することができる。本明細書で使用するとき、用語「産生バイオリアクター」は、対象とするポリペプチド又は糖タンパク質の産生に使用される最終バイオリアクターを指す。産生バイオリアクターの体積は、典型的には少なくとも500リットルであり、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。当業者であれば、本発明を実施する際に使用するのに好適なバイオリアクターを選択することができるであろう。
【0181】
ウステキヌマブの前培養、増殖、及び産生は、段階1及び段階2で実施される。段階1では、ウステキヌマブのHC及びLC配列を発現しているトランスフェクトされたSp2/0細胞の単一のワーキングセルバンクバイアルから前培養を開始し、培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び100L播種バイオリアクターで細胞を増殖させる。500Lの産生バイオリアクターの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。段階2では、細胞培養物を、交互接線方向流(ATF)中空糸フィルタ細胞保持システムを使用して500Lの産生バイオリアクター内で灌流する。細胞培養透過液(回収物)をATFシステムから回収し、細胞をバイオリアクター内に保持し、培養物に新鮮な培地を補充する。1つ又は複数の500Lの産生バイオリアクターからの回収物を、段階3で組み合わせることができる。回収物は、MabSelectプロテインA樹脂親和性クロマトグラフィを使用して精製される。得られた直接生成物捕獲(DPC)溶出液は、更なる処理まで凍結される。
【0182】
DCPからのウステキヌマブの精製は、段階4~8において、イオン交換クロマトグラフィ工程並びに潜在的なウイルス汚染を不活化又は除去する工程(溶媒/洗剤処理及びウイルス除去濾過)を組み合わせて行われる。段階4でDPC溶出液を解凍、プール及び濾過し、段階5でトリ-n-ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルバート80/D処理と共にインキュベートして、潜在的に存在する任意の脂質エンベロープウイルスを不活性化する。段階6では、SPXL(登録商標)セファロース陽イオン交換樹脂クロマトグラフィを使用して、TNBP及びポリソルバート80試薬、凝集体、及び不純物をウステキヌマブから除去する。段階7では、QXL(登録商標)セファロース陰イオン交換樹脂クロマトグラフィを使用して、ウステキヌマブを更に精製して、DNA、ウイルス、及び不純物を除去する。段階8では、精製ウステキヌマブ生成物を希釈し、ウイルス保持性フィルタ(NFP(登録商標))を通して濾過する。
【0183】
ウステキヌマブの事前製剤化されたバルク(PFB)及び製剤化されたバルク(FB)の調製は、段階9及び10においてそれぞれ実施される。段階9では、限外濾過工程はウステキヌマブ生成物を濃縮し、透析濾過工程により、製剤賦形剤が添加され、プロセス中のバッファ塩が除去される。段階10では、ポリソルバート80をウステキヌマブPFBに添加して、FBを得る。凍結保存するために、FBをポリカルボナート容器に濾過する。凍結したFBは、医療品製造現場への輸送のためにドライアイスを備えた断熱容器内に包装される。
【0184】
大規模製造プロセスの詳細な説明
段階1-前培養及び増殖
ウステキヌマブの産生における第1の段階は、ウステキヌマブのHC及びLC配列を発現するトランスフェクトされたSp2/0細胞のワーキングセルバンク(WCB)バイアルからの前培養の開始並びに培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び100L播種バイオリアクターにおける増殖である。500Lの産生バイオリアクターの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。
【0185】
製造手順
WCBの1つ又は複数の凍結保存バイアルを解凍し、6mMのL-グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lキサンチンを補充したCD(化学的に定義された)ハイブリドーマ培地(CDH-A)で希釈する。培養物生存率は≧45%でなければならない。細胞を培養フラスコ内でCDH-Aで更に希釈して、0.2~0.5×106生存細胞(VC)/mLの播種密度まで更に希釈する。前培養物は、バッチ記録に定義される範囲内で温度、CO2濃度、及び撹拌を制御した加湿CO2インキュベーターに維持される。≧0.6×106の最小細胞密度及び≧50%の培養物生存率が得られるまで、前培養物を≦3日間インキュベートする。100Lの播種バイオリアクターへの接種のためのスケールアップ機構として、前培養物を一連の培養フラスコ内で連続的に増殖させ、次いで、培養バッグで培養する。培養増殖期中、各インキュベーション工程は、継代条件を達成するために≦3日行われ、≧0.6×106VC/mLの細胞密度及び≧80%の培養物生存率を必要とする。各継代の播種密度は、培養フラスコ中で0.2~0.5×106VC/mL、及び培養バッグ中で0.2~0.6×106VC/mLである。各継代を、生存細胞密度(VSD)、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためにサンプリングする。100Lの播種バイオリアクターの接種前に、前培養物をバイオバーデンのためにサンプリングする。
【0186】
前培養は、解凍後最大30日間維持され得る。30日以内に使用されない前培養物を廃棄する。上述のように増殖させ、一次前培養物と同じインプロセスモニタリング、制御試験、及びプロセスパラメータの対象となるバックアップ前培養物は、必要に応じて、別の100Lの播種バイオリアクターに接種するために維持及び使用することができる。
【0187】
前培養物が接種基準を満たす際、培養バッグの内容物を、CDH-Aを含む100Lの播種バイオリアクターに移し、≧0.3×106VC/mLの播種密度を目標とする。播種バイオリアクターの培養物のpH、温度、及び溶存酸素濃度は、バッチ記録内に定義される範囲内で制御される。≧1.5×106VC/mLの細胞密度及び≧80%の培養物生存率が得られるまで、培養物を増殖させる。培養物を、播種バイオリアクタープロセス全体を通して、VCD、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためにサンプリングする。500Lの産生バイオリアクターの接種前に、前培養物をバイオバーデンのためにサンプリングする。
【0188】
播種バイオリアクター培養物のVCDが≧1.5×106VC/mLに達すると、培養物を使用して、500Lの産生バイオリアクターに接種してもよい。あるいは、培養物の一部を100Lの播種バイオリアクターから取り出し、残りの培養物を新鮮な培地で希釈することができる。この「取り出し及び充填」プロセスに続いて、培養物を十分な細胞密度まで増殖させて、500Lの産生バイオリアクターに接種する。100Lの播種バイオリアクター培養物の最大持続時間は、接種から9日後である。
【0189】
段階2-バイオリアクターの製造
段階2では、細胞培養物を、交互接線方向流(ATF)中空糸フィルタ細胞保持システムを使用して500Lの産生バイオリアクター内で連続的に灌流する。細胞培養透過液(回収物)をATFシステムから回収し、細胞をバイオリアクターに戻し、培養物に新鮮培地を補充する。
【0190】
製造手順
500Lの産生バイオリアクターの接種は、100Lの播種バイオリアクターの内容物を、6mMのL-グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lのキサンチンを補充したCD(化学的に定義された)ハイブリドーマ培地(CDH-A)を含む500Lの産生バイオリアクターに移すことによって行われる。移される体積は、≧0.3×106生存細胞(VC)/mLの播種密度をもたらすのに十分でなければならない。培養物を34.0~38.0℃の温度、6.8~7.6のpH及び1~100%の溶存酸素濃度で維持する。
【0191】
連続灌流が開始され、500LのバイオリアクターからATFシステムに培養物を取り出し、透過液から細胞を分離する。透過液を0.2μmのATFフィルタを通して濾過し、バイオプロセス容器(BPC)で回収物として回収する。細胞をバイオリアクターに戻し、新鮮なCDH-Aを供給して一定の培養体積を維持する。生存細胞(VCD)、培養物生存率、pH、DO、温度及び免疫グロブリンG(IgG)含有量は、産生運転中にモニタリングされる。灌流速度は、1日当たり約1バイオリアクター体積の目標速度に達するまで、VCDに比例して徐々に増加する。灌流速度は、1日当たり1.20バイオリアクター体積を超えないように制御される。ATFシステムの保持をモニタリングして、フィルタ全体のIgG保持が50%を超える前に、ATFフィルタのシャットダウンを容易にする。
【0192】
500Lのバイオリアクター内のVCDが、8.0×106VC/mLに達するか、又は10日目のいずれか早い方で、pHの目標は7.2から7.1まで低下する。バイオマス除去は、20日目、又は12.0×106VC/mLのVCDに到達したときのいずれか早い方で、開始される。バイオマスを、500Lの産生バイオリアクターから、1日当たり最大20%のバイオリアクター体積の速度でBPCに除去する。各回収物をバイオバーデンのためにサンプリングする。
【0193】
500Lの産生バイオリアクターにおける灌流細胞培養操作は、接種後最大46日間継続する。産生の終わりに、培養物をマイコプラズマ及び外膜ウイルス試験のためにサンプリングする。回収物は、バイオリアクターから切り離した後、2~8℃で≦30日間保存することができる。
【0194】
段階3-直接生成物捕獲(DPC)
段階3では、1つ又は複数の500Lの産生バイオリアクターからの回収物を、自動クロマトグラフィスキッドを用いたMabSelect(商標)(GE Health care Bio-Sciences、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを使用して精製する。ウステキヌマブは、回収物から捕捉され、宿主細胞不純物を含む細胞培養不純物が除去される。得られたDPC溶出液は、更なる処理まで凍結される。
【0195】
プロテインAカラム調製及び再生
回収物充填の前に、充填MabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを、50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、0.1%のポリソルバート80、pH7.3(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが完全に平衡化されることを確認するために、導電率及びpHをモニタリングする。カラム溶出液のサンプルを採取し、微生物制御を確認するためにモニタリングする。使用後、カラムを消毒し、次いで、洗浄し、該当する場合は適切な保存条件で保存する。
【0196】
製造手順
回収物を、バイオバーデン、エンドトキシン、及び免疫グロブリンG含有量のためにサンプリングする。0.1Mのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、pH8.0バッファを回収物にラインで添加して、最終濃度5~30mMのEDTAを達成する。回収物を0.2μmで濾過し、14~41g/Lの充填速度及び300~500cm/hの流量でプロテインAカラムに充填する。280nm(A280)での紫外線吸光度が≦100mAU/mmに戻るまで300~500cm/hの流量で平衡化バッファでカラムを洗浄し、次いで、少なくとも2つの追加のカラム体積(CV)の平衡化バッファで洗浄する。結合したウステキヌマブを、300~500cm/hの流量で、少なくとも4.5CVの0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH5.0バッファで洗浄する。
【0197】
ウステキヌマブを、0.1Mのクエン酸、pH3.5を使用して、300~500cm/hの流量で溶出する。溶出生成物の回収は、≧50mAU/mm経路長の上昇A280-シグナルで開始し、≧50mAU/mm経路長の下降A280-シグナルで停止する。
【0198】
回収後、必要に応じて、1.0Mのトリスバッファ及び/又は0.1Mのクエン酸ナトリウムバッファを添加することにより、DPC溶出液のpHを5.8~6.2に調整する。pH調整中、DPC溶出液を混合して溶液の均質性を確保する。pH調整DPC溶出液を、濾過の前にバイオバーデンのためにサンプリングする。
【0199】
pH調整DPC溶出液を、0.2μmのエンドフィルタを用いて濾過する。DPC溶出液を、ポリカルボナート容器にアリコートする。濾過DPC溶出液を、モノマー含有量、バイオバーデン、エンドトキシン、及びタンパク質濃度の分析のためにサンプリングする(ここから工程収率が計算され、工程収率は≧60%であるべきである)。濾過DPC溶出液を、≦-40℃で保存する前に、室温で≦48時間及び2~8℃で≦240時間の累積時間にわたって保持することができる。DPC溶出液を凍結保存することができる。
【0200】
段階4-直接生成物捕獲(DPC)溶出物の解凍及びプール
段階4では、溶媒/洗剤のウイルス不活性化前に、DPC溶出液を解凍、プール及び濾過する。
【0201】
製造手順
凍結DPC溶出液を室温で解凍する。溶出液が氷を視覚的に含まない場合、解凍は完了しており、解凍は120時間を超えてはならない。解凍した溶出液をプールし、0.2μmで密閉容器に濾過し、2.7~5.4kgのタンパク質を得る。濾過溶出液を混合して溶液の均質性を確保する。タンパク質濃度、エンドトキシン、バイオバーデン、及びpHについてサンプルを採取する。タンパク質濃度は、4.5~59g/Lと測定される。次いで、必要に応じて、1.0Mのトリス又は1.0Mのクエン酸のいずれかを添加することにより、pHを5.5~6.5に調整する。プールしたDPC溶出液を、段階5の更なる処理の前に、室温で最大48時間保存することができる。
【0202】
段階5-プールした直接生成物捕獲(DPC)溶出液の溶媒/洗剤(S/D)処理
段階5では、プールしたDPCを、トリ-n-ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルバート80(溶媒/洗剤[S/D]処理)と共にインキュベートして、潜在的に存在する任意の脂質エンベロープウイルスを不活性化する。
【0203】
製造手順
2%のTNBP/10%のポリソルバート80(w/w)を含むS/Dストック溶液を、プールしたDPC溶出液を含む容器に0.08~0.12(v/v)の比で移して、最終濃度の0.2%のTNBP/1%のポリソルバート80(w/v)を得る。溶液を混合して溶液の均質性を確保し、不活性化容器内に移す。ウステキヌマブ及びS/D処理試薬を、連続混合しながら、≧15℃でインキュベートする。不活性化は、S/D処理されたウステキヌマブが不活性化容器に完全に移された際に開始され、段階6で陽イオン交換クロマトグラフィカラム充填段階が開始された際に完了する。全不活性化時間は、≧60分である。S/D試薬添加の開始から段階6でのカラム充填段階の終了までの合計時間は、≦36時間である。
【0204】
段階6-陽イオン交換クロマトグラフィ
段階6では、溶媒/洗剤(S/D)で処理したウステキヌマブを、自動クロマトグラフィスキッドに接続されたSP Sepharose XL(GE Healthcare Bio-Sciences、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)陽イオン交換クロマトグラフィカラムに結合する。トリ-n-ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルバート80試薬、凝集体、及び不純物を除去する。
【0205】
陽イオン交換クロマトグラフィカラムの調製及び再生
使用前に、充填SP Sepharose XL陽イオン交換クロマトグラフィカラムを、30mMのリン酸ナトリウム、pH6.5バッファ(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが完全に平衡化されることを確認するために、導電率及びpHをモニタリングする。カラム溶出液のサンプルを採取し、微生物制御を確認するためにモニタリングする。使用後、カラムは残留タンパク質を取り除き、再生及び消毒し、適切な保存溶液中に保存する。
【0206】
製造手順
S/D処理されたウステキヌマブを、2.4~3.4mS/cmの導電率を維持するために注入用水で希釈し、平衡化SP Sepharose XL陽イオン交換クロマトグラフィカラムに充填する。全ての充填、洗浄、及び溶出流量は、100~300cm/hである。生成物対樹脂の充填比は、45.5~90.9gウステキヌマブ/L樹脂である。カラムを、≧3カラム体積の平衡化バッファで洗浄する。次いで、30mMのリン酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム、pH6.5バッファを使用して、ウステキヌマブを陽イオン交換カラムから溶出する。280nm(A280)でのカラム溶出液のUV吸光度が25mAU/mmの最小値に上昇すると、生成物の回収が開始される。A280ピークをモニタリングし、溶出液が150mAU/mm以上に減少すると回収が終了する。溶出生成物をバイオバーデンの分析のためにサンプリングする。
【0207】
溶出液を0.2μmのフィルタを通して密閉容器に濾過する。次いで、陽イオン交換精製したウステキヌマブを混合し、バイオバーデン及びエンドトキシンについてサンプルを採取する。収率をモニタリングし、≧85%になると予想される。ウステキヌマブを、更なる処理の前に、室温で最大72時間、2~8℃で最大7日間保持することができる。
【0208】
段階7-陰イオン交換クロマトグラフィ
段階7では、ウステキヌマブを、自動クロマトグラフィスキッドを用いたQ Sepharose(商標)XL(GE Healthcare Bio-Sciences、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)陰イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して更に精製する。ウステキヌマブは、DNA、他の不純物、及びウイルスが保持されている間、樹脂を通って流れる。
【0209】
陰イオン交換クロマトグラフィカラム調製
再生の使用前に、充填Q Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムを、50mMのトリス、50mMの塩化ナトリウム、pH8.0(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが完全に平衡化されることを確認するために、導電率及びpHをモニタリングする。カラム溶出液のサンプルを採取し、微生物制御を確認するためにモニタリングする。使用後、カラムは残留タンパク質を取り除き、再生し、消毒し、適切な溶液に保存する。
【0210】
製造手順
充填前に、必要に応じてpHが7.5~8.0になるまで、1.0Mのトリス又は1.0Mのクエン酸を添加することにより、陽イオン交換溶出液のpHを調整する。溶出液を混合して溶液の均質性を確保する。pH調整ウステキヌマブを、50~250cm/hの流量でQ Sepharose(商標)XL陰イオン交換カラムに充填する。生成物対樹脂の充填比は、45.5~136.4gウステキヌマブ/L樹脂である。
【0211】
ウステキヌマブは、結合することなく樹脂を通って流れ、280nm(A280)でのUV吸光度が30mAU/mmの最小値に上昇すると回収される。ウステキヌマブを充填した後、カラムを50~250cm/hの流量で平衡化バッファで洗浄する。A280ピークをモニタリングし、流出液が50mAU/mm以上に減少すると回収が終了する。溶出生成物をバイオバーデンの分析のためにサンプリングする。
【0212】
ウステキヌマブを、0.2μmのフィルタを通して密閉容器に濾過し、混合し、バイオバーデン及びエンドトキシンのためにサンプリングする。収率をモニタリングし、≧85%になると予想される。陰イオン交換精製ウステキヌマブを、段階8における更なる処理の前に、室温で最大72時間、又は2~8℃で最大7日間保持することができる。
【0213】
段階8-ウイルス除去濾過
段階8では、陰イオン交換精製ウステキヌマブを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0バッファで希釈し、ウイルス保持性フィルタ(NFP(登録商標))を通して濾過して、潜在的に存在する任意のウイルスを除去する。
【0214】
NFP濾過システムの調製
使用前に、オートクレーブ処理した単回使用NFPフィルタを、消毒したNFP濾過システム上に設置し、注入用水(WFI)でフラッシュし、次いで、水透過性について試験する。フィルタを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0バッファ(平衡化バッファ)で平衡化する。システムが完全に平衡化されることを確認するために、導電率及びpHをモニタリングする。バッファフラッシュのサンプルを採取し、微生物制御を確認するためにモニタリングする。NFP濾過システムを、使用後に消毒し、適切な保存溶液中に保存する。
【0215】
製造手順
濾過前に、陰イオン交換精製ウステキヌマブを平衡化バッファで≦8.2g/Lの濃度に希釈する。次いで、希釈ウステキヌマブをNFPフィルタを通して濾過し、NFP濾液をステンレス鋼製容器に回収する。初期流量は、濾過開始の5分以内に決定され、初期流速(0%流速減衰として定義される)からの減少が85%を超えないことを確認するために、流速減衰をモニタリングする。NFP濾過が完了すると、スキッドを平衡化バッファでフラッシュし、残りの生成物をステンレス鋼容器に回収し、それを混合し、エンドトキシン、バイオバーデン、及びタンパク質濃度のためにサンプリングする。収率をモニタリングし、≧85%になると予想される。ウステキヌマブNFP濾液を、段階9における更なる処理の前に、室温で最大72時間、2~8℃で最大7日間保持することができる。
【0216】
段9-濃縮及び透析濾過
段階9では、限外濾過工程はウステキヌマブ生成物を濃縮し、透析濾過工程により、製剤賦形剤が添加され、プロセス中のバッファ塩が除去される。
【0217】
限外濾過システム調製
使用前に、システムを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0バッファで平衡化する。システムが完全に平衡化されることを確認するために、導電率及びpHをモニタリングする。バッファフラッシュのサンプルを採取し、微生物制御を確認するためにモニタリングする。使用後、限外濾過システムを消毒する。WFIをシステムを通してフラッシュし、正規化された透水性試験を実施する。必要に応じて、限外濾過システムを、適切な保存溶液中に保存する。
【0218】
製造手順
ウステキヌマブウイルスウイルス保持性濾液を、36~82g/Lに予め濃縮する。次いで、透過液のpH及び導電率がそれぞれ5.5~5.9及び400~700μs/cm以内になるまで、≧8倍量の10mMのヒスチジン、8.5%のスクロース、pH5.7バッファに対して、それぞれ透析濾過する。ウステキヌマブは、180g/L以下に更に濃縮される。プロセス全体を通して、膜差圧をモニタリングし、制御する。10mMのヒスチジン、8.5%スクロース、pH5.7バッファを使用して、バッファフラッシュで生成物を回収する。ウステキヌマブの最終濃度を、この同じバッファを用いて、86.7~95.8g/Lのタンパク質濃度に調整し、事前製剤化されたバルク(PFB)と呼ばれる。段階9の収率をモニタリングし、≧85%になると予想される。必要に応じて、ウステキヌマブを再処理して、限外濾過システムを通して濃度工程を繰り返すことによって、正しいタンパク質濃度を得ることができる。生成物を混合して溶液の均質性を確保する。ウステキヌマブPFBを、室温又は2~8℃で最大48時間保存する。
【0219】
段階10-製剤化されたバルクの調製
段階10では、ポリソルバート80を、ウステキヌマブの事前製剤化されたバルク(PFB)に添加して、製剤化されたバルク(FB)を得る。凍結保存するために、FBをポリカルボナート容器に濾過する。
【0220】
製造手順
1%のポリソルバート80を、0.003~0.005kg/Lの割合で、密閉PFB容器内のウステキヌマブPFBに添加し、混合してFB溶液を得る。この溶液の均質性を確保するために、検証されたパラメータに従ってFB溶液を混合する。FB溶液は、濾過前に、室温又は2~8℃で最大48時間保存することができる。FB溶液を、単回使用プレフィルタを使用してFB容器内に濾過し、混合する。次いで、混合したFBを、ポリカルボナート容器に0.2μmで濾過した。サンプルを放出試験のために採取する。ウステキヌマブFB容器を、≦-40℃で保存する。
【0221】
実施例6-STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)の製造に使用される、クロマトグラフィカラムのガンマ分布遷移分析(GDTA)法の適用
この実施例は、抗TNF抗体、例えば、抗TNFα抗体SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造中の精製において、例えば、製造の段階3の間に使用されるプロテインA親和性クロマトグラフィカラムへのGDTA法の適用を記載する。
【0222】
段階3-プロテインA親和性クロマトグラフィカラム
段階3では、MabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを使用して、分析された遷移フロントは、例えば、洗浄2フロント(
図40)、及び溶出中に生成されるフロント(
図41)を含む。消毒後のカラム洗浄中に生成された追加のフロント、及び保存後平衡化すすぎ工程は、現在、MabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムについて評価されている。示される結果は、STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)製造に使用される13の異なるカラム充填で処理されたバッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのずれ及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析が完了し、将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立する。
【0223】
実施例7-SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造に使用される、クロマトグラフィカラムのガンマ分布遷移分析(GDTA)法の適用
この実施例は、抗TNFα抗体SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造中の精製において、クロマトグラフィカラム、例えば、段階3でのプロテインA親和性クロマトグラフィカラム、段階6での陽イオン交換クロマトグラフィカラム、及び段階7での陰イオン交換クロマトグラフィカラムへのGDTA法の適用を記載する。SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造方法に使用されるこれらの段階及びカラムは、STELARA(登録商標)(ウステキヌマブ)を製造するために使用されるもの同等のものである。
【0224】
段階3-プロテインA親和性クロマトグラフィカラム
段階3では、MabSelect(商標)プロテインA親和性クロマトグラフィカラムを使用して、分析された遷移フロントは、例えば、溶出フロント(
図42)、グアニジンHClでの消毒中に生成されるフロント(
図43)、及び0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.5での消毒後のすすぎ中に生成されるフロント(
図44)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の160バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのずれ及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析が完了し、将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立する。
【0225】
段階6-陽イオン交換クロマトグラフィカラム
段階6では、UNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して、分析された遷移フロントは、例えば、溶媒/洗剤(S/D)処理物質の充填中に生成されるフロント(
図45)、溶出中に生成されるフロント(
図46)、及びストリップの間に生成されるフロント(
図47)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の72バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのずれ及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析が完了し、将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立する。
【0226】
段階7-陰イオン交換クロマトグラフィカラム
段階7では、Q Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して、分析された遷移フロントは、例えば、水酸化ナトリウムで洗浄する間に生成されるフロント(
図48)及びストリップの間に生成されるフロント(
図49)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の71バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのずれ及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析が完了し、将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立する。
【0227】
好ましい実施形態を本明細書で詳細に描写及び説明するが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることは、当業者には明らかであろう。
【配列表】