IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許7268346積層ポリフェニレンサルファイドフィルム、フィルムロールおよび包装材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】積層ポリフェニレンサルファイドフィルム、フィルムロールおよび包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230426BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20230426BHJP
   C08G 75/0209 20160101ALI20230426BHJP
【FI】
B32B27/00 A
B29C55/14
C08G75/0209
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018238084
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2019116092
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2017248899
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沢見 亮
(72)【発明者】
【氏名】奥村 友輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祥平
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081741(JP,A)
【文献】特開2011-213109(JP,A)
【文献】特開2010-110898(JP,A)
【文献】特開2009-274411(JP,A)
【文献】特開2014-189718(JP,A)
【文献】特開2007-326362(JP,A)
【文献】特開2010-242066(JP,A)
【文献】特開平04-319436(JP,A)
【文献】国際公開第2007/060929(WO,A1)
【文献】特開2016-069650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 55/00-55/30
61/00-61/10
C08G 75/00-75/32
79/00-79/14
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド層(A層)と共重合ポリフェニレンサルファイド層(B層)とが直接積層された積層体であって、該積層体は二軸延伸されてなり、該積層体の示差走査熱量測定(DSC)の1stランにおいて210℃以上235℃未満の第1微小吸熱ピーク温度(Ta)と240℃以上260℃以下の第2微小吸熱ピーク温度(Tb)を有し、10cm四方に切り出して水平な台に置いたときの室温での角の浮き上がりが10mm以下であり、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体の厚みに対するB層の厚みの割合が1%以上20%以下であり、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの3次元表面粗さ計により求められるB層の表面粗さ(SRa)が110nm以上200nm以下であり、前記A層はポリパラフェニレンサルファイド樹脂からなる、積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
【請求項2】
前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体の厚みが16μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
【請求項3】
前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのB層の総重量を100重量%としたときのB層の粒子含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下である請求項1または2に記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
【請求項4】
前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの共重合ポリフェニレンサルファイドがポリ-m-フェニレンサルファイド単位を6モル%以上12モル%以下で共重合されている請求項1~3のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを巻き取ってなるフィルムロール。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士を対にB層を介して積層されてなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムに関し、耐薬品性を必要とする包装材に用いるに好適な積層ポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルムは、優れた耐熱性、難燃性、電気絶縁性、低吸湿性および耐薬品性などの性質を有しており、従来は、電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されてきた。
【0003】
近年では、その耐薬品性の高さを活かし、包装材への適用が進められているが、二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルムは、耐薬品性、耐熱性が優れていることからも明らかなように、表面が不活性なため接着性が乏しく、そのため、包装材などの用途に用いるためには、接着性、特にヒートシール性を付与する必要があった。
【0004】
二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルムにヒートシール性を付与する手段として、例えば、ポリ-p-フェニレンサルファイド単位以外の共重合単位を導入した層が積層されたフィルムが開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-326362号公報
【文献】特開2011-213109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のいずれも、共重合単位を導入した層の表面粗さが平滑であるため易滑性が失われ、ヒートシール時にシワが入ってしまう欠点があった。また、特許文献2は2層積層フィルムのカールが大きく、ヒートシールしたフィルムの平面性が低下する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、耐薬品性およびヒートシール性、平面性に優れた積層ポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を用いるものである。
(1).ポリフェニレンサルファイド層(A層)と共重合ポリフェニレンサルファイド層(B層)とが直接積層された積層体であって、該積層体は二軸延伸されてなり、該積層体の示差走査熱量測定(DSC)の1stランにおいて210℃以上235℃未満の第1微小吸熱ピーク温度(Ta)と240℃以上260℃以下の第2微小吸熱ピーク温度(Tb)を有し、10cm四方に切り出して水平な台に置いたときの室温での角の浮き上がりが10mm以下であり、前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体の厚みに対するB層の厚みの割合が1%以上20%以下であり、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの3次元表面粗さ計により求められるB層の表面粗さ(SRa)が110nm以上200nm以下であり、前記A層はポリパラフェニレンサルファイド樹脂からなる、積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
(2).前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体の厚みが16μm以上100μm以下であることを特徴とする(1)に記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
).前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのB層の総重量を100重量%としたときのB層の粒子含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下である(1)または(2)に記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
).前記積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの共重合ポリフェニレンサルファイドがポリ-m-フェニレンサルファイド単位を6モル%以上12モル%以下で共重合されている(1)~(3)のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム。
).(1)~()のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを巻き取ってなるフィルムロール。
).(1)~()のいずれかに記載の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士を対にB層を介して積層されてなる包装材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシール性および平面性に優れた積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを得ることができ、耐薬品性を必要とする包装材で好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムは、二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルム(A層)と二軸配向共重合ポリフェニレンサルファイドフィルム(B層)が直接積層された構造を有している。
【0011】
本発明で用いる二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルム(A層)は、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理してなるフィルムである。ここで、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物とは、ポリマーの主要繰り返し単位として下記化学式1で示されるポリ-p-フェニレンサルファイド単位を85モル%以上含む高分子をいい、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは98モル%以上がポリ-p-フェニレンサルファイド単位である。かかる成分が85モル%未満ではポリマーの結晶性、軟化点などが低下し、耐熱性、寸法安定性、機械特性などが損なわれる場合がある。
【0012】
【化1】
【0013】
本発明で用いる二軸配向共重合ポリフェニレンサルファイドフィルム(B層)は、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理してなるフィルムである。ここで、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物とは、繰り返し単位の88モル%以上94モル%以下が主成分としてポリ-p-フェニレンサルファイド単位で構成されていることが好ましい。かかる主成分が88モル%未満では、フィルムの耐熱性が低下する場合があり、94モル%を超えるとヒートシール性を十分高められない場合がある。ポリ-p-フェニレンサルファイド単位以外の構造単位として、具体的には、ビフェニレンサルファイド単位、ビフェニレンエーテルサルファイド単位、ビフェニレンスルホンサルファイド単位、ビフェニレンカルボニルサルファイド単位、ナフタレンサルファイド単位等が挙げられるが、特に下記化学式2で示されるポリ-m-フェニレンサルファイド単位が共重合されていることが好ましい。また、ポリ-m-フェニレンサルファイド単位の共重合量は6モル%以上12モル%以下が好ましい。なお、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の上記主成分と共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ブロックコポリマーであってもランダムコポリマーであっても構わない。
【0014】
【化2】
【0015】
A層およびB層においては、それぞれ、前で説明したポリ-p-フェニレンサルファイドあるいはポリ-m-フェニレンサルファイドにより構成されていることが望ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲で各層の全質量の10質量%未満の範囲で、他の成分、例えばポリフェニレンサルファイド以外のポリマーや粒子(無機、有機、滑剤または着色剤など)、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を含むことができる。ポリフェニレンサルファイド以外のポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどの各種ポリマーおよびこれらのポリマーの少なくとも1種を含むブレンド物を挙げられる。また、無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機フィラー、有機粒子としては、300℃で溶融しない有機の高分子化合物(例えば、架橋ポリスチレン等)の粒子等を挙げることができる。
【0016】
A層とB層を積層する方法は、特に限定されないが、共押出による方法が好ましく用いられる。
【0017】
本発明におけるA層およびB層のポリフェニレンサルファイドフィルムは二軸配向フィルムであることが機械強度の向上、熱安定性の向上、耐薬品性の向上など、フィルムの機能として必要な主要特性が発現されるため好ましい。ここで言う「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルムは、一般に、未延伸状態のポリフェニレンサルファイドシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了させることにより得ることができる。なお、長手方向と幅方向の延伸は、それぞれ個別に順次実施するいわゆる逐次二軸延伸法であることが好ましい。
【0018】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)の1stランにおける210℃以上235℃未満の第1微小吸熱ピーク温度(Ta)を有することが必要であり、好ましくは220℃以上235℃未満である。Taが210℃未満の場合、フィルムの結晶化が進まず平面性が低下する場合があり、Taが235℃以上となると、B層の共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂が溶けてB層の表面が平滑となり、易滑性が著しく悪化する。
【0019】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)の1stランにおける240℃以上260℃以下の第2微小吸熱ピーク温度(Tb)を有することが必要であり、好ましくは250℃以上260℃以下である。Tbが240℃未満の場合、フィルムの耐久性が低下する場合があり、Tbが260℃を超えると、ヒートシール性を十分高めることができない。
【0020】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを巻き取ったロールから、10cm四方にフィルムを切り出し、水平な台に置いたときの室温での角の浮き上がりが10mm以下であることが必要である。角の浮き上がりが10mmを超えると、ヒートシールし製袋加工した包装材がカールし平面性が悪化する。
【0021】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体厚みは、16μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以上75μm以下であり、さらに好ましくは25μm以上50μm以下である。厚みが16μm未満の場合、フィルムのコシが十分ではなく、厚みが100μmを超えるとヒートシールの際に熱が伝わりにくく密着性が低下する場合がある。
【0022】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの全体厚みに対するB層の厚みの割合は、1%以上20%以下が好ましく、より好ましくは1%以上15%以下であり、さらに好ましくは5%以上15%以下である。B層厚みの割合が20%を超えると、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのカールが大きくなり平面性が低下する場合がある。
【0023】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの3次元表面粗さ計により求められるB層の表面粗さ(SRa)は100nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上150nm以下である。表面粗さが100nm未満の場合、易滑性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのB層においては、B層の総重量を100重量%としたときの前述した粒子の含有量は0.2重量%以上1.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.3重量%以上1.0重量%以下である。粒子含有量が0.2重量%未満の場合、B層の表面粗さが平滑となり易滑性が低下し、粒子含有量が1.0重量%を超えると、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂の流動性が阻害され、ヒートシール性が不十分となる。
【0025】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのB層の共重合ポリフェニレンサルファイドは、ポリ-m-フェニレンサルファイド単位が6モル%以上12モル%以下で共重合されていることが好ましく、より好ましくは6モル%以上10モル%以下である。ポリ-m-フェニレンサルファイド単位を6モル%以上用いることによって、高い界面接着性を得ることができる。なお、ポリ-m-フェニレンサルファイド単位の共重合量を6モル%以上12モル%以下にすることにより、前述の第2微小吸熱ピーク温度(Tb)が得られる。
【0026】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムは、保管や運搬の容易さからロール状に巻き取ることが好ましく用いられる。
【0027】
本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士を対にB層が向かい合いように積層し、接着剤を介することなく接合させ包装材用に製袋加工するが、接合の具体的方法は、熱融着法が好ましく用いられる。熱融着の方法は特に限定されないが、プロセス性の点から加熱プレスが好ましい。
【0028】
次に、本発明の積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを製造する方法について、以下に具体例を挙げて詳細を説明する。
【0029】
ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンを、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略称することがある)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230~280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30~100℃の温度で10~60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30~80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマーを得る。得られた粒状ポリマーを、酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30~80℃の温度のイオン交換水で数回洗浄し、副生塩、重合助剤および未反応モノマー等を分離する。上記に得られたポリマーに必要に応じて、無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、PPS樹脂を得る。
【0030】
共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法としては、上記ポリパラフェニレンサルファイド樹脂の製造方法において、p-ジクロロベンゼンに代えてm-ジクロロベンゼンなどのフェニレンサルファイド単位を与えるモノマーを配合し、同様の重合反応を実施する方法がある。フェニレンサルファイド単位以外の単位を導入する場合も同様である。
【0031】
次いで、得られた樹脂を押出機、好ましくは1段以上のベント孔を有する押出機に供給し、290~360℃の温度で溶融混練して適当な口金から押し出し、ガット状に溶融成形して、長さ2~10mm程度にカットし、ペレット状としてもよい。得られた樹脂は、真空下の加熱式ドライヤーで、温度100~180℃、時間1~5時間程度の条件で乾燥される。
【0032】
得られる樹脂に、必要に応じて、他の樹脂や粒子(無機、有機、滑剤または着色剤など)、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を添加する場合、前記方法で得られた樹脂と共にヘンシェルミキサー等で混合し、前記と同様に押し出し成形または溶融成形し、樹脂組成物として使用することができる。
【0033】
後述する製膜工程においては、樹脂ペレットを複数種用いることは差し支えない。例えば、粒子が添加されたペレットと無添加のペレットを併用するような態様である。
【0034】
また、本発明においては、積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの取り扱い性および加工性を向上させるために、各層に不活性粒子を添加することができる。ここで言う不活性粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機フィラーおよび300℃で溶融しない有機の高分子化合物(例えば、架橋ポリスチレン等)の粒子等を挙げることができる。該不活性粒子は、ポリフェニレンサルファイド層(A層)に添加してもよいが、共重合ポリフェニレンサルファイド層(B層)に添加することがヒートシール性の観点から好ましい。
【0035】
次に、本発明の二軸配向ポリフェニレンサルファイドフィルム(A層)と二軸配向共重合ポリフェニレンサルファイドフィルム(B層)が直接積層された積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法を説明する。
【0036】
上記のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を別々の溶融押出装置に供給し、個々の原料の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置で溶融状態で2層に積層され、スリット状の口金出口から押し出される。かかる溶融積層体を冷却ドラム上でPPS樹脂のガラス転移点以下に冷却し、実質的に非晶状態の2層積層シートを得る。溶融押出装置は周知の装置が適用可能であるが、1軸または2軸のエクストルーダが簡便であり好ましく用いられる。
【0037】
次いで、このようにして得られた非晶状態の2層積層シートを、PPS樹脂のガラス転移点以上冷結晶化温度以下の範囲で、従来公知の逐次二軸延伸機や同時二軸延伸機により二軸延伸した後、212~237℃の範囲の温度で熱処理を行い二軸配向2層積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを得る。
【0038】
延伸は、長手方向に90℃~120℃で3.0~4.0倍の範囲で行うことが好ましい。本発明の場合、より好ましい延伸倍率は、3.0~3.6であり、さらに好ましくは、3.0~3.5倍である。本発明において、延伸倍率が3.0倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを得られない場合があり、延伸倍率が4.0倍を超えると本発明のヒートシール性を得られない場合がある。
【0039】
次いで、幅方向に90℃~120℃で2.8~4.0倍に延伸することが好ましい。より好ましくは、2.8~3.3倍であり、さらに好ましくは、2.8~3.0倍である。本発明において、延伸倍率が2.8倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向フィルムを得られない場合があり、延伸倍率が4.0倍を超えると本発明のヒートシール性を得られない場合がある。
【0040】
本発明においては、面積延伸倍率が10倍以上13倍以下であることが、本発明のヒートシール性および平面性を得るために好ましく、より好ましくは10倍以上12倍以下、さらに好ましくは10倍以上11倍以下である。面積延伸倍率が10倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向フィルムを得られない場合があり、13倍を超えるとヒートシール性が低下する場合がある。
【0041】
熱処理温度は212℃以上237℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以上237℃以下であり、さらに好ましくは、230℃以上237℃以下である。本発明において、熱処理温度が212℃未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向フィルムを得られない場合があり、熱処理温度が237℃を超えるとB層の易滑性を得られない場合がある。この温度条件で熱処理を行うことにより、前述の第1微小吸熱ピーク温度(Ta)が得られることで十分な易滑性を維持でき、また、前述のB層厚み割合であっても十分な平面性を得ることができる。
【0042】
さらに、長手方向および/または幅方向に各々1~20%の範囲で制限収縮処理(リラックス)させることにより、共重合ポリフェニレンサルファイド層の配向緩和が促進できヒートシール性を向上させることができるため好ましい。より好ましくは3~15%であり、さらに好ましくは3~10%である。
【0043】
本発明で用いられる積層ポリフェニレンサルファイドフィルムはより強固なヒートシール性を付与するために、共重合ポリフェニレンサルファイド層にコロナ放電処理やプラズマ処理を施すことも本発明の好ましい態様に含まれる。また本発明においては、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて他のシート層を積層することができる。
【0044】
次いで、得られた二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルムをロール状に巻き取る。巻き長さは好ましくは50m以上3000m以下が好ましい。
【0045】
次いで、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士を対に、B層を向かい合うようにして接合する。接合する方法としては熱融着法が簡便である。熱融着の方法としては、例えば加熱プレスにより熱融着(熱圧着)する方法が好ましい。
【実施例
【0046】
[物性の測定法]
なお、以下、実施例5は参考例5と読み替えるものとする。以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各種物性の測定方法を記載する。
【0047】
(1)第1微小吸熱ピーク温度(Ta)
積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを示差走査熱量計DSC Q100(TA Instruments社製)により、20℃/分の昇温速度にて30℃~300℃の範囲で測定を実施した。この測定により得られた示差走査熱量測定チャートの1stランにおける210℃以上235℃未満に現れるピーク温度を第1微小吸熱ピーク温度Taとした。なお、210℃以上235℃未満の範囲で複数のピークが観測される場合は、その平均をTaとする。
【0048】
(2)第2微小吸熱ピーク温度(Tb)
積層ポリフェニレンサルファイドフィルムを示差走査熱量計DSC Q100(TA Instruments社製)により、20℃/分の昇温速度にて30℃~300℃の範囲で測定を実施した。この測定により得られた示差走査熱量測定チャートの1stランにおける240℃以上260℃以下に現れるピーク温度を第2微小吸熱ピーク温度Tbとした。なお、240℃以上260℃以下の範囲で複数のピークが観測される場合は、その平均をTbとする。
【0049】
(3)カール量(平面性)
ロールから巻き出した積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの中央と両端の3箇所から10cm角のサンプルに切り出し、水平な台に置いたときの室温23℃での角の浮き上がりを測定する。これを5回繰り返し、得られた角の浮き上がりの値の平均を平面性評価におけるカール量とした。
【0050】
(4)積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの厚さ
ミクロトームで切り出した積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの断面を光学顕微鏡(100倍)または走査型電子顕微鏡(1000倍)で観察、写真を撮影し、その断面写真の寸法から積層体の全体厚さおよび各層の厚さを実測した。同様の測定を積層体の任意の5箇所で実施し、平均値を積層体の全体厚さおよび各層の厚さとした。
【0051】
(5)積層ポリフェニレンサルファイドフィルムにおけるB層厚さの割合
(4)で測定した厚さから、下記式(A)よりB層厚さの割合を求めた。
B層厚さの割合(%)=((B層厚さ)/(全体厚さ))×100・・・式(A)。
【0052】
(6)積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの表面粗さ(SRa)
積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのB層表面を3次元表面粗さ計ET4000AK(小坂研究所社製)を用い、次の条件で触針法により測定を行った。なお、表面粗さ(SRa)は、粗さ曲面の高さと粗さ曲面の中心面の高さの差をとり、その絶対値の平均値を表したものである。
針径 2μmR
針圧 10mg
測定長 500μm
縦倍率 20000倍
CUT OFF 250μm
測定速度 100μm/s
測定間隔 5μm
記録本数 80本
ヒステリシス幅 ±6.25nm
基準面積 0.1mm
【0053】
(7)袋の密着性
幅70mm長さ210mmの大きさに切り出した積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士をB層が向かい合うように配置させ、袋状のサンプルを作製した。サンプルの短辺1辺と長辺2辺の端部5mmを270℃5kg/cmにて加熱プレスによりヒートシールする。その後、得られた袋状サンプルに全長にわたるように両面テープを貼り、両面テープの不粘着紙を剥がし、机に袋状サンプルを固定する。袋状サンプルの両面テープを貼っていない面の開口部にフォースゲージDS2-200N(イマダ社製)をセットし、フォースゲージをセットした部分が袋状サンプルと180°反り返る方向に引っ張る。これを5回繰り返し、得られた180°剥離強度の値の平均を袋の密着性として、以下基準で評価した。なお、Sは非常に良好、Aは良好、Bは実用範囲であり、S、A、Bは合格、Cは不合格である。
S:180°剥離強度が25N/15mm以上
A:180°剥離強度が15N/15mm以上25N/15mm未満
B:180°剥離強度が5N/15mm以上15N/15mm未満
C:180°剥離強度が5N/15mm未満。
【0054】
(8)袋の外観(シワ)
幅70mm長さ210mmの大きさに切り出した積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士をB層が向かい合うように配置させ、袋状のサンプルを作製した。サンプルの短辺1辺と長辺2辺の端部5mmを270℃5kg/cmにて加熱プレスによりヒートシールする。その後、サンプルの表面に発生した5mm以上のシワの本数を目視確認し、袋の外観として、以下基準で評価した。なお、Sは非常に良好、Aは良好、Bは実用範囲であり、S、A、Bは合格、Cは不合格である。
S:シワの本数が0本
A:シワの本数が1本
B:シワの本数が2本
C:シワの本数が3本以上。
【0055】
(9)袋の平面性(カール量)
幅70mm長さ210mmの大きさに切り出した積層ポリフェニレンサルファイドフィルム同士をB層が向かい合うように配置させ、袋状のサンプルを作製した。サンプルの短辺1辺と長辺2辺の端部5mmを270℃5kg/cmにて加熱プレスによりヒートシールする。その後、サンプルを水平な台に置いたときの室温での角の浮き上がりを測定し、その平均値を袋の平面性評価におけるカール量として、以下基準で評価した。なお、Sは非常に良好、Aは良好、Bは実用範囲であり、S、A、Bは合格、Cは不合格である。
S:カール量が0mm
A:カール量が0mmを超え5mm以下
B:カール量が5mmを超え10mm以下
C:カール量が10mmを超える。
【0056】
[参考例1]ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット1の調製
オートクレーブに100モル部の硫化ナトリウム9水塩、45モル部の酢酸ナトリウムおよび259モル部のN-メチル-2-ピロリドンを仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマーとして101モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分として0.2モル部の1,2,4-トリクロロベンゼンを52モル部のNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cm2で加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃の温度にて乾燥して、融点が280℃、ガラス転移温度が91℃の樹脂を得た。次いで、該樹脂に体積平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粉末0.7重量%を添加し均一に分散配合して、320℃の温度にて30mmφ2軸押出機によりガット状に押出し、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を得た。
【0057】
[参考例2]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット1の調製
主成分モノマーとして91モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして10モル部のm-ジクロロベンゼン、および0.2モル部の1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て参考例1のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を製造した。なお、樹脂組成物の融点は250℃であった。
【0058】
[参考例3]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット2の調製
主成分モノマーとして95モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして6モル部のm-ジクロロベンゼン、および0.2部モルの1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て参考例1のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2を製造した。なお、樹脂組成物の融点は260℃であった。
【0059】
[参考例4]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット3の調製
主成分モノマーとして89モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして12モル部のm-ジクロロベンゼン、および0.2部モルの1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て参考例1のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3を製造した。なお、樹脂組成物の融点は240℃であった。
【0060】
[参考例5]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット4の調製
体積平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粉末0.3重量%を添加したこと以外は全て参考例2の共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4を製造した。なお、樹脂組成物の融点は250℃であった。
【0061】
[参考例6]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット5の調製
体積平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粉末0.2重量%を添加したこと以外は全て参考例2の共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5を製造した。なお、樹脂組成物の融点は250℃であった。
【0062】
[参考例7]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット6の調製
体積平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粉末1.0重量%を添加したこと以外は全て参考例2の共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物6を製造した。なお、樹脂組成物の融点は250℃であった。
【0063】
[参考例8]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット7の調製
主成分モノマーとして97モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして4モル部のm-ジクロロベンゼン、および0.2部モルの1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て参考例1のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物7を製造した。なお、樹脂組成物の融点は265℃であった。
【0064】
[参考例9]共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂ペレット8の調製
主成分モノマーとして86モル部のp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして15モル部のm-ジクロロベンゼン、および0.2部モルの1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て参考例1のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物8を製造した。なお、樹脂組成物の融点は225℃であった。
【0065】
[実施例1]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1の製造
参考例1で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および参考例2で得られた共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を、回転式真空乾燥機を用いてそれぞれ3mmHgの減圧下にて180℃の温度で4時間乾燥させた。乾燥したポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。また、乾燥した共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を別のベント式二軸混練押出機に供給し、280℃で溶融させた。溶融させた2つの樹脂組成物をそれぞれ平均目開き8μmのステンレス繊維焼結フィルターにて濾過した後、矩形複合部を備えた二層合流ブロックにて複合し、940mm幅でリップ間隙3mmのTダイ型口金から、吐出量の比がポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=84:16になるように吐出させ、シート状に押し出した。次いで、このシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚み約480μmの未延伸二層積層フィルムを作製した。
【0066】
逐次二軸延伸を用い、得られた未延伸フィルムを表面温度92℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる25℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.7倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.4倍に延伸し、続いて200℃の温度で10秒間、さらに235℃の温度で10秒間熱処理した後に、フィルム長手方向と直角方向に230℃の温度で10秒間に4.5%の制限収縮処理を行い、115℃の温度で9秒間中間冷却したのち室温まで冷却してポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1によるA層の厚みが32μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1によるB層の厚みが6μm、合計厚みが38μmのフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は4mmであった。
【0067】
[実施例2]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム2の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは260℃、カール量は2mmであった。
【0068】
[実施例3]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム3の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは240℃、カール量は5mmであった。
【0069】
[実施例4]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム4の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は4mmであった。
【0070】
[実施例5] 二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム5の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は4mmであった。
【0071】
[実施例6] 二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム6の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物6を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は4mmであった。
【0072】
[実施例7]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム7の製造
A層の厚み14μm、B層の厚み2μm、合計厚み16μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は5mmであった。
【0073】
[実施例8]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム8の製造
A層の厚み84m、B層の厚み16μm、合計厚み100μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は2mmであった。
【0074】
[実施例9]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム9の製造
厚さの比率をA層:B層=95:5、A層の厚み36μm、B層の厚み2μm、合計厚み38μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は0mmであった。
【0075】
[実施例10]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム10の製造
厚さの比率がA層:B層=82:18、A層の厚み31μm、B層の厚み7μm、合計厚み38μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は8mmであった。
【0076】
[実施例11]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム11の製造
二軸延伸後の熱処理を220℃の温度で10秒間、制限収縮処理を215℃の温度で10秒間とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは217℃、Tbは250℃、カール量は9mmであった。
【0077】
[実施例12]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム12の製造
二軸延伸後の熱処理を237℃の温度で10秒間、制限収縮処理を232℃の温度で10秒間とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは234℃、Tbは250℃、カール量は6mmであった。
【0078】
[実施例13]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム13の製造
厚さの比率がA層:B層=80:20、A層の厚み30.4μm、B層の厚み7.6μm、合計厚み38μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は10mmであった。
【0079】
[比較例1] 二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム13の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物7を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは265℃、カール量は0mmであった。
【0080】
[比較例2] 二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム14の製造
B層の樹脂組成物に共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物8を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは225℃、カール量は10mmであった。
【0081】
[比較例3]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム15の製造
厚さの比率をA層:B層=74:26、A層の厚み28μm、B層の厚み10μm、合計厚み38μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは233℃、Tbは250℃、カール量は20mmであった。
【0082】
[比較例4]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム16の製造
二軸延伸後の熱処理を210℃の温度で10秒間、制限収縮処理を205℃の温度で10秒間とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは206℃、Tbは250℃、カール量は13mmであった。
【0083】
[比較例5]二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム17の製造
二軸延伸後の熱処理を245℃の温度で10秒間、制限収縮処理を240℃の温度で10秒間とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのTaは240℃、Tbは250℃、カール量は11mmであった。
【0084】
[結果のまとめ]
積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの示差走査熱量測定(DSC)の1stランにおける210℃以上235℃未満の第1微小吸熱ピーク温度(Ta)および240℃以上260℃以下の第2微小吸熱ピーク温度(Tb)を有し、カール量が10mm以下、全体の厚みが16μm以上100μm以下、全体の厚みに対するB層の厚みの割合が1%以上20%以下、B層の表面粗さ(SRa)が100nm以上200nm以下である場合に、耐薬品性を損なうことなく、製袋加工したときのヒートシール部の密着性、外観、平面性が良好であることが可能となった。前記、耐薬品性および密着性、外観、平面性が並立可能となる積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの製造方法としては、B層を構成する共重合ポリフェニレンサルファイドのポリ-m-フェニレンサルファイド単位を6モル%以上12モル%以下とすることで耐薬品性と密着性を両立させ、全体の厚みに対するB層の厚み割合が1%以上20%以下のときの二軸延伸後の熱処理温度を212℃以上237℃以下とすることでシワおよびカールの抑制が可能となり、安定して達成することができた。
【0085】
B層の共重合ポリフェニレンサルファイドのポリ-m-フェニレンサルファイド単位、B層の粒子含有量、全体の厚み、B層の厚み割合および熱処理温度を可能な範囲で変更した実施例2~12でも十分な特性を得ることができた。
【0086】
一方、B層の共重合ポリフェニレンサルファイドのポリ-m-フェニレンサルファイド単位が6モル%未満の比較例1では第2微小吸熱ピーク温度が高く密着性が不十分であり、12モル%を超える比較例2では熱処理により共重合ポリフェニレンサルファイドが融解しB層の易滑性が悪化しヒートシール時にシワが多く発生した。B層の厚み割合が20%を超える比較例3は積層ポリフェニレンサルファイドフィルムのカールが大きく製袋化した後も平面性が悪化していた。Taが210℃未満の比較例4は積層ポリフェニレンサルファイドフィルムの平面性が悪く、Taが235℃以上の比較例5は共重合ポリフェニレンサルファイドが融解しB層の易滑性が著しく低下した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る積層ポリフェニレンサルファイドフィルムおよびその製造方法によれば、耐薬品性を必要とする包装材に用いるに好適なヒートシール性、平面性に優れた積層ポリフェニレンサルファイドフィルム得ることが可能となる。