(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20230426BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230426BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20230426BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/22 E
F15B11/028 G
F15B11/08 A
(21)【出願番号】P 2019176104
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008501(JP,A)
【文献】特開2019-056247(JP,A)
【文献】特開2019-052472(JP,A)
【文献】特開2018-080510(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/22
F15B 11/028
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と,
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと,
前記複数の油圧アクチュエー
タの動作を指示する複数の操作パイロット圧を生成する複数の操作装置と,
前記複数の操作パイロット圧よって駆動され,前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と,
前記複数の操作装置とは独立して複数の制御パイロット圧を生成する複数の比例電磁弁と,
前記複数の操作装置によって生成される前記複数の操作パイロット圧を検出する複数の操作圧力センサと,
前記作業装置の姿勢を検出する作業装置姿勢検出装置と,
前記複数の操作圧力センサと前記作業装置姿勢検出装置からの信号に基づいて前記複数の比例電磁弁を制御するコントローラとを備え,
前記複数の操作装置は,前記複数の油圧アクチュエータのうちの第1油圧アクチュエータの動作を指示する第1操作装置を含み,
前記複数の流量制御弁は,前記第1操作装置によって生成される操作パイロット圧
によって駆動され,前記第1油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する第1流量制御弁を含み,
前記第1操作装置は,前記第1油圧アクチュエータの第1方向の動作を指示する第1操作パイロット圧を出力する第1出力ポートと,前記第1油圧アクチュエータの第2方向の動作を指示する第2操作パイロット圧を出力する第2出力ポートとを有し,
前記複数の操作圧力センサは,前記第1操作パイロット圧を検出する第1操作圧力センサと,前記第2操作パイロット圧を検出する第2操作圧力センサとを有する作業機械において,
前記複数の比例電磁弁は,前記第1油圧アクチュエータの前記第1方向の動作を指示する第1制御パイロット圧を生成する第1比例電磁弁と,前記第1油圧アクチュエータの前記第2方向の動作を指示する第2制御パイロット圧を生成する第2比例電磁弁とを有し,
前記複数の比例電磁弁によって生成される前記複数の制御パイロット圧を検出する複数の制御圧力センサであって,前記第1比例電磁弁によって生成される前記第1制御パイロット圧を検出する第1制御圧力センサと,前記第2比例電磁弁によって生成される前記第2制御パイロット圧を検出する第2制御圧力センサとを含む複数の制御圧力センサと,
前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁との間でかつ前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁との間に設けられた第1切換弁と,
前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁との間でかつ前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁との間に設けられた第2切換弁とを更に備え,
前記第1切換弁は,前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁とを接続する第1位置,及び前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁とを接続する第2位置を有し,
前記第2切換弁は,前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁とを接続する第1位置,及び前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁とを接続する第2位置を有し,
前記コントローラは,前記第1及び第2操作圧力センサと前記第1及び第2制御圧力センサからの信号と,前記第1及び第2切換弁の予め設定された目標動作に基づいて,前記第1及び第2切換弁を前記第1位置と前記第2位置のいずれか一方に切り換えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において,
前記コントローラは,前記第1及び第2切換弁の前記予め設定された目標動作として,前記第1位置に保持する第1目標動作と,前記第2位置に保持する第2目標動作と,前記第1操作パイロット圧と前記第1制御パイロット圧の高圧側及び前記第2操作パイロット圧と前記第2制御パイロット圧の高圧側を前記第1流量制御弁に導くように前記第1位置及び前記第2位置の一方に切り換える第3目標動作の1つを設定し,この設定した目標動作に基づいて前記第1及び第2切換弁の目標位置を設定し,前記第1及び第2切換弁を前記第1位置と前記第2位置のいずれか一方に切り換えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において,
前記コントローラは,前記第1及び第2比例電磁弁の目標動作として,前記第1及び第2切換弁が前記第1位置にあるときは,前記第1及び第2制御圧力センサによって検出された前記第1及び第2制御パイロット圧をそれぞれ前記第1及び第2操作圧力センサによって検出された前記第1及び第2操作パイロット圧に等しくする第1目標動作を設定し,前記第1及び第2切換弁が前記第2位置にあるときは,自動制御による第2目標動作を予め設定し,この設定した目標動作に基づいて前記第1及び第2比例電磁弁の目標パイロット圧を設定し,前記第1及び第2比例電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において,
前記コントローラは,
前記作業装置姿勢検出装置からの信号に基づいて前記作業装置の制御点と掘削目標面との距離を演算し,前記制御点と前記掘削目標面との距離が予め設定された第1距離よりも大きいときは前記第2切換弁を前記第1位置に保持し,前記制御点と前記掘削目標面との距離が前記第1距離以下になると前記第2切換弁を前記第2位置に切り換え,かつ
前記第2比例電磁弁の目標動作として,前記第2切換弁が前記第1位置にあるときは,前記第2制御圧力センサによって検出された前記第2制御パイロット圧を前記第2操作圧力センサによって検出された前記第2操作パイロット圧に等しくする第1目標動作を設定し,前記第2切換弁が前記第2位置にあるときには、自動制御による第2目標動作を設定し、この設定した目標動作に基づいて前記第2比例電磁弁の目標パイロット圧を設定し,前記第2比例電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において,
前記複数の操作装置のそれぞれに対して,前記第1及び第2操作圧力センサ,前記第1及び第2比例電磁弁,前記第1及び第2制御圧力センサ,前記第1及び第2切換弁が設けられ,
前記コントローラは,前記第1及び第2操作圧力センサと前記第1及び第2制御圧力センサからの信号と,前記第1及び第2切換弁の予め設定された目標動作に基づいて,前記第1及び第2切換弁を前記第1位置と前記第2位置のいずれか一方に切り換えることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において,
前記コントローラは,前記複数の操作装置のそれぞれに対して,前記第1及び第2切換弁の前記予め設定された目標動作として,前記第1位置に保持する第1目標動作と,前記第2位置に保持する第2目標動作と,前記第1操作パイロット圧と前記第1制御パイロット圧の高圧側及び前記第2操作パイロット圧と前記第2制御パイロット圧の高圧側を前記複数の流量制御弁のそれぞれに導くように前記第1位置及び前記第2位置の一方に切り換える第3目標動作の1つを設定し,この設定した目標動作に基づいて前記第1及び第2切換弁の目標位置を設定し,前記第1及び第2切換弁を前記第1位置と前記第2位置のいずれか一方に切り換えることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において,
前記コントローラの制御の有効・無効を切り換える信号を出力する切換装置を更に備え,
前記コントローラは,前記切換装置から前記コントローラの制御を無効にする信号を入力したとき,前記第1及び第2切換弁の目標位置を前記第1位置に書き換えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば領域制限掘削制御などのフロント制御を行う作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータで駆動される作業装置(例えばフロント作業機)を備える作業機械(例えば油圧ショベル)の作業効率を向上する技術としてマシンコントロール(Machine Control:以下MCという)がある。MCは,操作装置がオペレータに操作された場合に,予め定めた条件に従って作業装置を動作させる半自動制御を実行することでオペレータの操作支援を行う技術である。
【0003】
MCが働くと,掘削目標面の下側を掘削しないように作業装置(例えばフロント作業機)の動作が制限される。
【0004】
特許文献1では,操作装置の操作信号ラインに比例電磁弁を設け,作業装置の速度が制限値を超えないように操作装置から出力された操作パイロット圧を比例電磁弁で減圧することで,作業装置の動作を制限している。
【0005】
特許文献2では,MCを行わないときは切換弁を第1位置に切り換えて,操作装置の操作信号ラインと比例電磁弁を備えた減圧ラインとの接続を遮断し,操作信号ラインを対応する流量制御弁の信号入力ラインに直接接続することで,操作装置から出力された操作パイロット圧が比例電磁弁を通らないようにし,MCを行うときは切換弁を第2位置に切り換えて,操作信号ラインを流量制御弁の信号入力ラインに減圧ラインを介して接続し,操作装置から出力された操作パイロット圧を比例電磁弁で減圧することで,作業装置の動作を制限している。
【0006】
また,特許文献1及び特許文献2では,操作装置のブーム上げの操作信号ラインと比例電磁弁によって生成した制御パイロット圧を導く制御信号ラインをシャトル弁を介して接続し,操作装置から出力されたブーム上げの操作パイロット圧と比例電磁弁から出力された制御パイロット圧の高圧側を流量制御弁のブーム上げ側の信号入力ラインに導くことで,自動ブーム上げとオペレータの操作装置の操作によるブーム上げを行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3091667号公報
【文献】特開2018-080762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術では,MCによる作業装置の動作制限とMCによる自動ブーム上げを行うことができる。しかし,操作信号ライン上に比例電磁弁が存在するため,MCを行わないとき,操作装置から出力された操作パイロット圧が比例電磁弁を通ることで圧力損失を発生する。このため,オペレータの操作装置の操作に対する油圧アクチュエータの応答性が低下し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を得ることができないという問題がある。
【0009】
また,特許文献1においては,ブーム下げ側の操作パイロット圧回路に比例電磁弁が設けられていないため,MCによる自動ブーム下げを行うことができない。
【0010】
特許文献2に記載の技術では,MCを行わないときは切換弁を第1位置に切り換えて,操作信号ラインを対応する流量制御弁の信号入力ラインに直接接続し,操作装置から出力された操作パイロット圧が比例電磁弁を通らない。このため圧力損失が発生せず,オペレータの操作装置の操作に対する油圧アクチュエータの応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性が得られる。
【0011】
しかし,特許文献2においても,ブーム下げ側の操作パイロット圧回路に比例電磁弁が設けられていないため,MCによる自動ブーム下げを行うことができない。
【0012】
ここでMCによる水平掘削を例にとり,ブーム下げ動作について説明する。
【0013】
MCによる水平掘削では,アームの操作装置を操作することでアームをクラウド側に動作させる。その際,アームの動作に合わせてバケット爪先が予め設定しておいた掘削目標面に沿うように自動的にブーム上げ動作が行われる。アームが掘削目標面に対して垂直な姿勢となって以降はアームクラウド動作によってバケット爪先は掘削目標面から離れる方向に動作するため,ブーム上げ動作は必要なくなる。しかし,バケット爪先を目標面に沿って動作させるためにはブーム下げ動作を行う必要がある。
【0014】
特許文献1及び2では,オペレータが操作装置をブームの下げ方向に操作し,出力された操作パイロット圧を比例電磁弁で減圧することで,掘削目標面の下側にバケット爪先が侵入しないようにブーム下げ動作を制限し,水平掘削を実現している。
【0015】
しかし,将来的にはMCにおける水平掘削をアームの操作装置のみで行えるように,ブーム下げ動作を自動化することが望まれている。その場合にはブームの操作装置が操作されていない状態で,自動でブーム下げ動作が行える必要がある。特許文献1及び2では,ブームの操作装置を下げ方向に操作することで発生した操作パイロット圧を比例電磁弁への入力としているため,ブームの操作装置を下げ方向に操作していない状態でブーム下げ動作をさせることはできない。
【0016】
また,仮に操作装置を操作することなく動作を行うことが可能なブーム上げの回路構成をブーム下げ側にも適用した場合には,ブームの操作装置を下げ方向に操作していない状態でブーム下げ動作をさせることは可能になる。しかし,比例電磁弁から出力される制御パイロット圧と操作装置のブーム下げの操作パイロット圧の高圧側が流量制御弁のブーム下げの信号入力ラインに導かれるため,比例電磁弁に作業装置の動作を制限するための信号を出力しても,操作装置のブーム下げの操作パイロット圧は比例電磁弁で減圧されずにそのまま流量制御弁の信号入力ラインに導かれてしまい,作業装置の動作を制限することができなくなってしまうという問題がある。
【0017】
本発明の目的は,MCにより作業装置の動作を制限可能であり,かつオペレータの操作装置の操作に対する油圧アクチュエータの応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保し,かつ操作装置が操作されていない油圧アクチュエータをその動作方向のいずれの方向にも自動で動作可能とする作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を解決するため,本発明は,作業装置と,前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと,前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する複数の操作パイロット圧を生成する複数の操作装置と,前記複数の操作パイロット圧よって駆動され,前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と,前記複数の操作装置とは独立して複数の制御パイロット圧を生成する複数の比例電磁弁と,前記複数の操作装置によって生成される前記複数の操作パイロット圧を検出する複数の操作圧力センサと,前記作業装置の姿勢を検出する作業装置姿勢検出装置と,前記複数の操作圧力センサと前記作業装置姿勢検出装置からの信号に基づいて前記複数の比例電磁弁を制御するコントローラとを備え,前記複数の操作装置は,前記複数の油圧アクチュエータのうちの第1油圧アクチュエータの動作を指示する第1操作装置を含み,前記複数の流量制御弁は,前記第1操作装置によって生成される操作パイロット圧によって駆動され,前記第1油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する第1流量制御弁を含み,前記第1操作装置は,前記第1油圧アクチュエータの第1方向の動作を指示する第1操作パイロット圧を出力する第1出力ポートと,前記第1油圧アクチュエータの第2方向の動作を指示する第2操作パイロット圧を出力する第2出力ポートとを有し,前記複数の操作圧力センサは,前記第1操作パイロット圧を検出する第1操作圧力センサと,前記第2操作パイロット圧を検出する第2操作圧力センサとを有する作業機械において,前記複数の比例電磁弁は,前記第1油圧アクチュエータの前記第1方向の動作を指示する第1制御パイロット圧を生成する第1比例電磁弁と,前記第1油圧アクチュエータの前記第2方向の動作を指示する第2制御パイロット圧を生成する第2比例電磁弁とを有し,前記複数の比例電磁弁によって生成される前記複数の制御パイロット圧を検出する複数の制御圧力センサであって,前記第1比例電磁弁によって生成される前記第1制御パイロット圧を検出する第1制御圧力センサと,前記第2比例電磁弁によって生成される前記第2制御パイロット圧を検出する第2制御圧力センサとを含む複数の制御圧力センサと,前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁との間でかつ前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁との間に設けられた第1切換弁と,前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁との間でかつ前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁との間に設けられた第2切換弁とを更に備え,前記第1切換弁は,前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁とを接続する第1位置,及び前記第1操作装置の前記第1出力ポートと前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1比例電磁弁と前記第1流量制御弁とを接続する第2位置を有し,前記第2切換弁は,前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁とを接続する第1位置,及び前記第1操作装置の前記第2出力ポートと前記第1流量制御弁との接続を遮断して前記第2比例電磁弁と前記第1流量制御弁とを接続する第2位置を有し,前記コントローラは,前記第1及び第2操作圧力センサと前記第1及び第2制御圧力センサからの信号と,前記第1及び第2切換弁の予め設定された目標動作に基づいて,前記第1及び第2切換弁を前記第1位置と前記第2位置のいずれか一方に切り換えるものとする。
【0019】
このように第1切換弁と第2切換弁を設け,第1及び第2切換弁を第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換える構成とすることにより,MCにより作業装置の動作を制限可能であり,オペレータの操作装置の操作に対する油圧アクチュエータの応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保し,かつ操作装置が操作されていない油圧アクチュエータをその動作方向のいずれにも自動で動作可能となる。
【0020】
すなわち,例えば第1切換弁を第2位置に切り換え,第1操作圧力センサによって検出した第1操作パイロット圧を減圧した第1制御パイロット圧を生成するよう第1比例電磁弁を制御することにより,第1油圧アクチュエータの第1方向の動作を制限することができ,MCにより作業装置の動作が制限可能となる。第2切換弁を第2位置に切り換えた場合も同様である。
【0021】
また,例えばMC中にオペレータが第1操作装置を操作したとき,或いはMCを行わないとき,第1切換弁が第1位置に切り換わるようにすることにより,第1操作装置の第1出力ポートから出力された操作パイロット圧は第1比例電磁弁を経由せず,第1流量制御弁に導かれる。これにより操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,オペレータの第1操作装置の操作に対する第1油圧アクチュエータの応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。第2切換弁を第1位置に切り換えるようにした場合も同様である。
【0022】
更に,第1切換弁を第2位置に切り換え,MCによる第1制御パイロット圧を生成するよう第1比例電磁弁を制御することにより,第1油圧アクチュエータを自動で第1方向に動作させることができる。同様に,第2切換弁を第2位置に切り換え,MCによる第2制御パイロット圧を生成するよう第2比例電磁弁を制御することにより,第1油圧アクチュエータを自動で第2方向に動作させることができる。これにより操作装置が操作されていない油圧アクチュエータをその動作方向のいずれの方向にも自動で動作させることが可能となる
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,MCにより作業装置の動作を制限可能であり,かつオペレータの操作装置の操作に対する油圧アクチュエータの応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保し,かつ操作装置が操作されていない油圧アクチュエータをその動作方向のいずれの方向にも自動で動作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態における作業機械である油圧ショベルの構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の作業機械(油圧ショベル)に備えられた駆動システムのフロント制御部分を示す図である。
【
図3】ブーム用の操作装置とアーム用の操作装置とバケット用の操作装置の配置と操作態様を示す図である。
【
図5】
図4に示されるMC制御部の機能ブロック図である。
【
図6】
図5に示される切換弁動作演算部における切換弁の制御フローを示す図である。
【
図7】
図5に示されるアクチュエータ制御部(ブーム制御部,アーム制御部及びバケット制御部)における比例電磁弁の制御フローを示す図である。
【
図8】油圧ショベルにおけるMC時の水平掘削の動作と,ブームとアームとの動作による速度ベクトルの合成のイメージを示す図である。
【
図9】油圧ショベルにおけるMC時の目標面に対するバケットの爪先位置合わせの動作を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における
図5と同様なMC制御部の機能ブロック図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態における切換弁動作演算部における切換弁の制御フローを示す,
図6と同様な図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態におけるコントローラの機能ブロック図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態における切換弁動作演算部における切換弁の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,本発明の実施の形態を図面に従い説明する。なお,以下の説明では,作業装置の先端の作業具(アタッチメント)としてバケット10を備える油圧ショベルを例示するが,バケット以外のアタッチメントを備える作業機械に本発明を適用しても構わない。さらに,複数のリンク部材(アタッチメント,アーム,ブーム等)を連結して構成される多関節型の作業装置を有するものであれば油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【0026】
<第1実施形態>
<作業機械>
図1は,本発明の第1の実施形態における作業機械である油圧ショベルの構成図である。
【0027】
図1において,油圧ショベル1は,多関節型のフロント作業装置(以下単に作業装置ということがある)1Aと,車体1Bとで構成されている。車体1Bは,左右の走行油圧モータ3a,3bにより走行する下部走行体11と,下部走行体11上に取り付けられ,旋回油圧モータ4により旋回する上部旋回体12とを有している。フロント作業装置1Aは,垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8,アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており,アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8は油圧シリンダ5(以下ブームシリンダという)によって駆動され,アーム9は油圧シリンダ6(以下アームシリンダという)によって駆動され,バケット10は油圧シリンダ7(以下バケットシリンダという)によって駆動される。
【0028】
ブーム8,アーム9,バケット10の回動角度を測定可能なように,ブームピンにブーム角度センサ30,アームピンにアーム角度センサ31,バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ,上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の傾斜角を検出する車体傾斜角センサ33が取付けられている。なお,角度センサ30,31,32はそれぞれ基準面(例えば水平面)に対する角度センサに代替可能である。
【0029】
<駆動システム>
図2は,本発明の第1の実施形態の作業機械(油圧ショベル)に備えられた駆動システムのフロント制御部分を示す図である。
【0030】
図2において,駆動システムは,ブーム用の操作装置45a,アーム用の操作装置46a,バケット用の操作装置45bを備えている。ブーム用の操作装置45aとバケット用の操作装置45bは,
図1に示す運転席24の右側に設けられた1本の操作レバー1aによって操作される操作装置であり,アーム用の操作装置46aは,旋回用の操作装置46b(
図3参照)とともに,
図1に示す運転席24の左側に設けられた1本の操作レバー1bによって操作される操作装置である。
【0031】
図3は,ブーム用の操作装置45aとアーム用の操作装置46aとバケット用の操作装置45bの配置と操作態様を示す図である。
【0032】
操作装置45a,
45bは,
図1に示す油圧ショベルの運転室(キャビン)23内の運転席24の前部右側に設置され,操作装置46aは運転席24の前部左側に設置されている。操作装置45a,45bは操作レバー1aを備えた1つの操作レバーユニット45として構成され,操作装置46aは旋回用の操作装置46bとともに,操作レバー1bを備えた1つの操作レバーユニット46として構成されている。オペレータは右手で右側の操作レバー1aを,左手で左側の操作レバー1bを操作する。
【0033】
操作レバーユニット45,46は,それぞれ,1つの操作レバー1a,1bで2つの油圧アクチュエータの動作を指示することができる。操作レバー1a,1bはそれぞれ十字の4方向を基準にして任意の方向に操作可能であり,操作レバー1aの図示上下方向の操作はブームシリンダ5の動作指示に対応し,操作レバー1aの図示左右方向の操作はバケットシリンダ7の動作指示に対応し,操作レバー1bの図示左右方向の操作はアームシリンダ6の動作指示に対応し,操作レバー1bの図示上下方向の操作は旋回油圧モータ4(
図1参照)の動作指示に対応する。また,操作レバー1aの図示下方向の操作はブームシリンダ5の伸長方向(ブーム上げ)の動作指示に対応し,操作レバー1aの図示上方向の操作はブームシリンダ5の収縮方向(ブーム下げ)の動作指示に対応し,操作レバー1aの図示左方向の操作はバケットシリンダ7の伸長方向(バケットクラウド)の動作指示に対応し,操作レバー1aの図示右方向の操作はバケットシリンダ7の収縮方向(バケットダンプ)の動作指示に対応し,操作レバー1bの図示右方向の操作はアームシリンダ6の伸長方向(アームクラウド)の動作指示に対応し,操作レバー1bの図示左方向の操作はアームシリンダ6の収縮方向(アームダンプ)の動作指示に対応する。
【0034】
図2に戻り,駆動システムは,ブーム用の流量制御弁15a,アーム用の流量制御弁15b,バケット用の流量制御弁15cを備え,流量制御弁15a,流量制御弁15b,流量制御弁15cによって図示しないメインポンプからブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7に供給される圧油の流量と供給方向が制御される。
【0035】
ブーム用の操作装置45a,アーム用の操作装置46a及びバケット用の操作装置45bは,それぞれ,一次ポート(入力ポート)124,125,126をパイロットポンプ48のポンプライン48aに接続され,ポンプライン48aの圧力を1次圧として操作レバー1a,1bの操作量に応じた操作パイロット圧(2次圧)を生成し,生成した操作パイロット圧を二次ポート(出力ポート)134a,134b,135a,135b,136a,136bから操作パイロットライン144a,144b,145a,145b,146a,146bに出力する。
【0036】
ブーム用の操作装置45aは,操作レバー1aを
図2右方向(
図3下方向)に操作したときブーム8を上げ方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン144aに出力する。また,操作レバー1aを
図2左方向(
図3上方向)に操作したときブーム8を下げ方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン144bに出力する。アーム用の操作装置46aは,操作レバー1bを
図2右方向(
図3右方向)に操作したときアーム9をクラウド方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン145aに出力する。また,操作レバー1bを
図2左方向(
図3左方向)に操作したときアーム9をダンプ方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン145bに出力する。バケット用の操作装置45bは,操作レバー1aを
図2右方向(
図3左方向)に操作したとき,バケット10をクラウド方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン146aに出力する。また,操作レバー1aを
図2左方向(
図3右方向)に操作したとき,バケット10をダンプ方向に駆動する操作パイロット圧を生成し,その操作パイロット圧を操作パイロットライン146bに出力する。
【0037】
また,駆動システムは,ブーム用の操作装置45aの操作パイロットライン144a,144bに設けられ,操作装置45aによって生成された操作パイロット圧を検出する圧力センサ(操作圧力センサ)70a,70bと,1次ポート側が制御パイロットライン154a,154bを介してポンプライン48aに接続され,ポンプライン48aからのパイロット圧を減圧して制御パイロット圧を生成する比例電磁弁54a,54bと,比例電磁弁54a,54bの2次ポート側の制御パイロットライン154c,154dに接続され、比例電磁弁54a,54bによって生成された制御パイロット圧を検出する圧力センサ(制御圧力センサ)200a,200bと,ブーム用の操作装置45aの2次ポート側の操作パイロットライン144a,144bと比例電磁弁54a,54bの2次ポート側の制御パイロットライン154c,154dに接続された切換弁203a,203bとを備えている。
【0038】
ブーム用の流量制御弁15aの油圧駆動部150a,150bには駆動パイロット圧入力ライン164a,164bが接続され,切換弁203a,203bは,コントローラ40からの制御信号を基に,駆動パイロット圧入力ライン164a,164bを操作パイロットライン144a,144bと制御パイロットライン154c,154dのいずれに接続するかの切り換えを行う。
【0039】
また,駆動システムは,アーム用の操作装置46aに対しても,同様に,圧力センサ71a,71b,制御パイロットライン155a,155b,比例電磁弁55a,55b,制御パイロットライン155c,155d,圧力センサ201a,201b,駆動パイロット圧入力ライン165a,165b,切換弁204a,204bを備え,バケット用の操作装置45bに対しても,同様に,圧力センサ72a,72b,制御パイロットライン156a,156b,比例電磁弁56a,56b,制御パイロットライン156c,156d,圧力センサ202a,202b,駆動パイロット圧入力ライン166a,166b,切換弁205a,205bを備えている。
【0040】
なお,
図2では,圧力センサ70a~72b及び圧力センサ200a~202bとコントローラ40との接続線は図示の簡略化のため省略している。
【0041】
比例電磁弁54a~56bは,非通電時には開度はゼロで,通電時に所定開度を有し,コントローラ40からの電流(制御信号)を増大させるほど開度は大きくなる。このように比例電磁弁54a~56bの開度はコントローラ40からの制御信号に応じたものとなり,その開度に応じてポンプライン48aからのパイロット圧を減圧し,制御パイロット圧を生成する。
【0042】
切換弁203a~205bは,操作装置45a,45b,46aの2次ポート側と流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bとを接続する回路を形成する第1位置と,比例電磁弁54a~56bの2次ポート側と流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bとを接続する回路を形成する第2位置とを有し,コントローラ40からの制御信号に応じて第1位置と第2位置のいずれかの位置に切り換わり,回路の切り換えを行う。切換弁203a~205bは,MCを行わない非通電時には第1位置,MCを行う通電時には第2位置に切り換わる。
【0043】
以上のように構成される駆動システムにおいて,コントローラ40から制御信号を出力して比例電磁弁54a~56bと切換弁203a~205bを駆動すると,操作装置45a,45b,46aに対してオペレータ操作が無い場合にも比例電磁弁54a~56bによって制御パイロット圧を発生し,その制御パイロット圧を流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bに導くことで,ブーム上げ動作,ブーム下げ動作,アームクラウド動作,アームダンプ動作,バケットクラウド動作,バケットダンプ動作を強制的に発生させることができる。また,これと同様に、操作装置45a,45b,46aをオペレータが操作しているときに、比例電磁弁54a~56bによって制御パイロット圧を発生し,その制御パイロット圧を流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bに導くことで、ブーム上げ動作,ブーム下げ動作,アームクラウド動作,アームダンプ動作,バケットクラウド動作,バケットダンプ動作の速度をオペレータ操作の値から強制的に低減することができる。さらに切換弁203a~205bが,第1位置にあるときは,操作装置45a,45b,46aで生成された操作パイロット圧は比例電磁弁54a~56bを通過せずに,流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bに導かれるため、操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生しない。このため操作装置45a,46a,45bの操作に対する油圧アクチュエータ5,6,7の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0044】
ここで,作業機械のMC機能として水平掘削への適用がある。この場合,操作装置45b,46aを介して掘削操作信号(具体的には,アームクラウド,バケットクラウド及びバケットダンプの少なくとも1つの指示)が入力された場合,目標面60(
図8参照)と作業装置1Aの制御点,例えばバケット10の先端(本実施形態ではバケット10の爪先)の位置関係に基づいて,作業装置1Aの
制御点の位置が目標面60上及びその上方の領域内に保持されるように油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つを強制的に動作させる制御信号(例えば,ブームシリンダ5を伸ばして強制的にブーム上げ動作を行う)を該当する流量制御弁15a,15b,15cに出力する。このMC機能によりバケット10の爪先が目標面60の下方に侵入することが防止されるので,オペレータの技量の程度に関わらず目標面60に沿った掘削が可能となる。なお,本実施形態では,MC時のフロント作業装置1Aの制御点を,油圧ショベルのバケット10の爪先(作業装置1Aの先端)に設定しているが,制御点は作業装置1Aの先端部分の点であればバケット爪先以外にも変更可能である。例えば,バケット10の底面や,バケットリンク13の最外部も選択可能である。
【0045】
<コントローラ40>
図4は,コントローラ40の機能ブロック図である。
【0046】
コントローラ40は,MC制御部43と,比例電磁弁制御部44と,切換弁制御部213と,表示制御部374とを有している。
【0047】
MC制御部43は,作業装置姿勢検出装置50,目標面設定装置51,操作装置2次圧検出装置52a,比例電磁弁2次圧検出装置210から信号を入力し,それらの信号に基づいて所定の演算を行い,比例電磁弁制御部44,切換弁制御部213,表示制御部374に演算情報を送る。比例電磁弁制御部44,切換弁制御部213,表示制御部374は,その演算情報に基づいて比例電磁弁54a~56b,切換弁203a~205b及び表示装置53に制御信号と表示情報を出力する。
【0048】
作業装置姿勢検出装置50は,ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32,車体傾斜角センサ33から構成される。これらのセンサ30,31,32,33は作業装置1Aの姿勢センサとして機能している。
【0049】
目標面設定装置51は,目標面60(
図8参照)に関する情報(各目標面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインターフェースである。目標面設定装置51は,グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標面の3次元データを格納した外部端末(図示せず)と接続されている。なお,目標面設定装置51を介した目標面の入力は,オペレータが手動で行ってもよい。
【0050】
操作装置2次圧検出装置52aは,操作レバー1a,1b(操作装置45a,45b,46a)の操作によって操作パイロットライン144a,144b,145a,145b,146a,146bに生じる操作パイロット圧を検出する圧力センサ70a~72bから構成されている。
【0051】
比例電磁弁2次圧検出装置210は,比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の制御パイロットライン154c,154d,155c,155d,156c,156dに生じる制御パイロット圧を検出する圧力センサ200a~202bから構成されている。
【0052】
図5は,
図4に示されるMC制御部43の機能ブロック図である。
【0053】
MC制御部43は,操作装置2次圧演算部43aと,姿勢演算部43bと,目標面演算部43cと,ブーム制御部81a,アーム制御部81b及びバケット制御部81cを含むアクチュエータ制御部81と,比例電磁弁2次圧演算部211と,切換弁動作演算部212とを有している。
【0054】
操作装置2次圧演算部43aは,操作装置2次圧検出装置52a(圧力センサ70a~72b)の検出値から操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力である操作パイロット圧を算出する。
【0055】
姿勢演算部43bは,作業装置姿勢検出装置50(ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32,車体傾斜角センサ33)からの検出値に基づいて,ローカル座標系(例えば
図1の車体1Bに設定した車体座標系)におけるフロント作業装置1Aの姿勢と,バケット10の爪先の位置を演算する。
【0056】
目標面演算部43cは,目標面設定装置51からの情報に基づいて目標面60(
図8参照)の位置情報を演算する。
【0057】
比例電磁弁2次圧演算部211は,比例電磁弁2次圧検出装置210(圧力センサ200a~202b)からの検出値に基づいて比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力である制御パイロット圧を算出する。
【0058】
アクチュエータ制御部81(ブーム制御部81a,アーム制御部81b及びバケット制御部81c)は,操作装置2次圧演算部43a,姿勢演算部43b,目標面演算部43c,比例電磁弁2次圧演算部211,切換弁動作演算部212のそれぞれの出力に基づいて,操作装置45a,45b,46aの操作時に,予め定めた条件(例えばオペレータにより入力されたフロント操作の作業モード)に従って油圧アクチュエータ5,6,7に対する流量制御弁15a,15b,15cの目標パイロット圧を演算し,その演算した目標パイロット圧を比例電磁弁制御部44に出力する。
【0059】
ここで,ブーム制御部81aは,操作装置45a,45b,46aの操作時に,MCによるブーム8の動作制御を実行するための部分である。例えばコントローラ40に作業モードとして水平掘削及びバケット10の爪先位置合わせ(後述)が設定されているとき,ブーム制御部81aは,操作装置45a,45b,46aの操作時に,目標面60(
図8参照)の位置と,フロント作業装置1Aの姿勢及びバケット10の爪先の位置と,操作装置45a,45b,46aの操作量と,比例電磁弁54a,54bの2次ポート側の圧力と,切換弁203a,203bの切り換え位置とに基づいて,目標面60上またはその上方にバケット10の爪先(制御点)が位置するようにブームシリンダ5(ブーム8)の動作を制御するMCを実行する。ブーム制御部81aは,そのMCを実行するためのブームシリンダ5に係わる流量制御弁15aの目標パイロット圧(制御パイロット圧の目標値)を演算する。
【0060】
アーム制御部81bは,操作装置45a,45b,46aの操作時に,MCによるアーム9の動作制御を実行するための部分である。アーム制御部81bは,そのMCを実行するためのアームシリンダ6に係わる流量制御弁15bの目標パイロット圧(制御パイロット圧の目標値)を演算する。
【0061】
バケット制御部81cは,操作装置45a,45b,46aの操作時に,MCによるバケット角度制御を実行するための部分である。バケット制御部81cは,そのMCを実行するためのバケットシリンダ7に係わる流量制御弁15cの目標パイロット圧(制御パイロット圧の目標値)を演算する。
【0062】
比例電磁弁制御部44は,アクチュエータ制御部81から出力される各流量制御弁15a,15b,15cの目標パイロット圧に基づいて比例電磁弁54a~56bに対する指令値を演算する。
【0063】
切換弁動作演算部212は,操作装置2次圧演算部43aの出力と比例電磁弁2次圧演算部211の出力とに基づいて,操作装置45a,45b,46aの操作時に,予め定めた条件(例えばフロント操作の作業モード)に従って切換弁203a~205bの目標切り換え位置を演算する。
【0064】
切換弁制御部213は,切換弁動作演算部212から出力される切換弁203a~205bの目標切り換え位置に基づいて,切換弁203a~205bに対する指令値を演算する。
【0065】
表示制御部374は,姿勢演算部43b及び目標面演算部43cから出力される作業装置姿勢及び目標面に基づいて表示装置53を制御する。表示制御部374には,作業装置1Aの画像及びアイコンを含む表示関連データが多数格納されている表示ROMが備えられており,表示制御部374が,入力情報に含まれるフラグに基づいて所定のプログラムを読み出すとともに,表示装置53における表示制御をする。
【0066】
<切換弁動作演算部212の切換弁制御フロー>
図6は,
図5に示される切換弁動作演算部212における切換弁203a~205bの制御フローを示す図である。コントローラ40には,切換弁203a~205bに対して,予め定めた条件(例えばフロント操作の作業モード)に従って目標位置を設定するための目標動作が予め設定されている。
【0067】
図6のステップS110において,切換弁動作演算部212は,操作装置2次圧演算部43aで演算された操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力である操作パイロット圧を取得する。
【0068】
ステップS120において,切換弁動作演算部212は,比例電磁弁2次圧演算部211で演算された比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力である制御パイロット圧を取得する。
【0069】
ステップS130において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの予め設定された目標動作が第1位置保持か否かを判定する。ステップS130で目標動作が第1位置保持と判定された場合はステップS140に進み,目標動作が第1位置保持以外の場合はステップS150に進む。
【0070】
ステップS140において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第1位置に設定する。
【0071】
ステップS150において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの予め設定された目標動作が第2位置保持か否かを判定する。ステップS150で目標動作が第2位置保持と判定された場合はステップS160に進み,目標動作が第2位置保持以外の場合はステップS170に進む。
【0072】
ステップS160において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第2位置に設定する。
【0073】
ステップS170において,切換弁動作演算部212は,ステップS110とステップS120で取得した操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力と対応する比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力とをそれぞれ比較し,操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力の方が大きいか否かを判定する。ステップS170で比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力よりも操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力の方が大きいと判定された場合はステップS180に進み,操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力が比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力以下と判定された場合はステップS190に進む。
【0074】
ステップS180において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第1位置に設定する。
【0075】
ステップS190において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第2位置に設定する。
【0076】
ステップS270において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を切換弁制御部213に出力する。
【0077】
切換弁制御部213は,切換弁203a~205bの目標位置に基づいて切換弁203a~205bに対する指令値を演算し、切換弁203a~205bの位置が目標位置となるように制御信号を出力する。
【0078】
<アクチュエータ制御部81の比例電磁弁制御フロー>
図7は,
図5に示されるアクチュエータ制御部81(ブーム制御部81a,アーム制御部81b及びバケット制御部81c)における比例電磁弁54a~56bの制御フローを示す図である。コントローラ40には,比例電磁弁54a~56bに対して,予め定めた条件(例えばフロント操作の作業モード)に従って目標パイロット圧を設定するための目標動作が予め設定されている。
【0079】
ステップS410において,アクチュエータ制御部81は,操作装置2次圧演算部43aで演算された操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力である操作パイロット圧を取得する。
【0080】
ステップS420において,アクチュエータ制御部81は,比例電磁弁2次圧演算部211で演算された比例電磁弁54a~56bの2次ポート側の圧力である制御パイロット圧を取得する。
【0081】
ステップS430において,アクチュエータ制御部81は,切換弁動作演算部212で演算された切換弁203a~205bの目標位置を取得する。
【0082】
ステップS440において,アクチュエータ制御部81は,切換弁203a~205bの位置が第2位置か否かを判定する。ステップS440で切換弁203a~205bの位置が第2位置と判定された場合はステップS450に進み,切換弁203a~205bの位置が第2位置以外すなわち第1位置と判定された場合はステップS470に進む。
【0083】
ステップS450において,アクチュエータ制御部81は,姿勢演算部43bで演算されたブーム8,アーム9,バケット10の姿勢を取得する。
【0084】
ステップS460において,アクチュエータ制御部81は,予め設定された目標動作に基づいて,比例電磁弁54a~56bが生成すべきMCによる流量制御弁15a,15b,15cの目標パイロット圧を演算し設定する。
【0085】
ステップS470において,アクチュエータ制御部81は,ステップS410で取得した操作装置45a,45b,46aの2次ポート側の圧力(操作パイロット圧)に基づいて,それらの操作パイロット圧に等しい目標パイロット圧を設定する。
【0086】
ステップS480において,アクチュエータ制御部81は,油圧アクチュエータ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cに対する目標パイロット圧を比例電磁弁制御部44に出力する。
【0087】
比例電磁弁制御部44は,油圧アクチュエータ5,6,7に係わる流量制御弁15a,15b,15cに目標パイロット圧に等しい制御パイロット圧が作用するように比例電磁弁54a~56bを制御する。これにより,例えばオペレータが操作装置45aを操作してブーム下げ動作を行っていてもバケット10の爪先が目標面60に侵入しないように制御パイロット圧を生成することで,ブーム8の動作を制限することができる。また,水平掘削などでバケット10の爪先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作を行う必要がある場合に,制御パイロット圧を生成することでオペレータが操作装置45aを操作することなく,自動でブーム下げ動作を行わせることができる。
【0088】
<切換弁及び比例電磁弁の目標動作の設定>
以下に,作業モードとして水平掘削とバケット爪先位置合わせを設定した場合を例にとり,切換弁及び比例電磁弁の目標動作の設定例を説明する。
【0089】
図8は,上記のように構成される油圧ショベルにおいて,MC時の水平掘削の動作と,ブーム8とアーム9との動作による速度ベクトルの合成のイメージを示す図である。
【0090】
水平掘削において,フロント作業装置1Aは,状態S1(
図8:掘削開始姿勢)から状態S2(
図8:アーム鉛直姿勢),状態S3(
図8:掘削終了姿勢)へと遷移する。
【0091】
図9は,MC時の目標面60に対するバケット10の爪先位置合わせの動作を示す図である。
【0092】
バケット10の爪先位置合わせにおいて,フロント作業装置1Aは,状態S4(
図9:バケット10爪先高さ高)から状態S5(
図9:バケット10爪先高さ中),状態S6(
図9:バケット10爪先高さ0)へと遷移する。
【0093】
コントローラ40は,
図8に示す水平掘削において,ブーム制御部81aによる比例電磁弁54a,54bの制御と切換弁動作演算部212による切換弁203a,
203bの制御を組み合わせることでブーム上げ制御とブーム下げ制御をMCとして実行する。
【0094】
また,コントローラ40は,
図9に示すバケット10の爪先位置合わせ動作において,ブーム制御部81aによる比例電磁弁54bの制御と切換弁動作演算部212による切換弁
203bの制御を組み合わせることでブーム下げ制御をMCとして実行する。
【0095】
ここで,MCによる水平掘削及びバケット爪先位置合わせを行うとき,コントローラ40にはオペレータの操作により水平掘削及びバケット爪先位置合わせの作業モードが設定され,コントローラ40には,その作業モードに基づいて切換弁203a~205bと比例電磁弁54a~56bの目標動作が予め設定される。
【0096】
切換弁203a~205bの予め設定した目標動作は,各切換弁を第1位置に保持する第1目標動作と,各切換弁を第2位置に保持する第2目標動作と,圧力センサ70a~72bによって検出された操作パイロット圧と圧力センサ200a~202bによって検出された制御パイロット圧の高圧側を対応する流量制御弁に導くよう各切換弁を第1位置と第2位置のいずれかに切り換える(以下「高圧選択位置への切換え」という)第3目標動作を含む。
【0097】
比例電磁弁54a~56bの予め設定した目標動作は,切換弁203a~205bが第1位置にあるときは,圧力センサ200a~202bによって検出された制御パイロット圧を圧力センサ70a~72bによって検出された操作パイロット圧に等しくする目標パイロット圧を生成する第1目標動作と,切換弁203a~205bが第2位置にあるときは,MCによる目標パイロット圧を生成する第2目標動作を含む。
【0098】
コントローラ40の切換弁動作演算部212は,上述した予め設定した目標動作に基づいて,切換弁203a~205bの目標位置を第1位置と第2位置のいずれかに設定する。
【0099】
コントローラ40のアクチュエータ制御部81は,上述した予め設定した目標動作に基づいて,比例電磁弁54a~56bの目標パイロット圧を演算し設定する。
【0100】
オペレータがコントローラ40に入力し設定した作業モードが
図8に示す水平掘削と
図9に示すバケット10の爪先位置合わせである場合,切換弁203a~205bに設定される目標動作は以下のようである。
【0101】
1.切換弁204a,204b,205a,205b
第1位置保持(第1目標動作)
2.切換弁203b
第2位置保持(第2目標動作)
3.切換弁203a
高圧選択位置への切換え(第3目標動作)
なお,コントローラ40は,
図8に示す水平掘削と
図9に示すバケット10の爪先位置合わせ以外,オペレータの操作により所望の作業モードを設定することができる。また,切換弁203a~205bには,その作業モードに応じて,上記第1目標動作,第2目標動作,第3目標動作のいずれかが設定される。
【0102】
<本実施形態の特徴の要約>
以上のように本実施形態の作業機械において,駆動システムは,操作装置45a(第1操作装置)の二次ポート134a(第1出力ポート)と流量制御弁15a(第1流量制御弁)との間でかつ比例電磁弁54a(第1比例電磁弁)と流量制御弁15aとの間に設けられた切換弁203a(第1切換弁)と,操作装置45aの二次ポート134b(第2出力ポート)と流量制御弁15aとの間でかつ比例電磁弁54b(第2比例電磁弁)と流量制御弁15aとの間に設けられた切換弁203b(第2切換弁)を備えている。
【0103】
また,切換弁203a(第1切換弁)は,比例電磁弁54a(第1比例電磁弁)と流量制御弁15aとの接続を遮断して操作装置45a(第1操作装置)の二次ポート134a(第1出力ポート)と流量制御弁15aとを接続する第1位置,及び操作装置45aの二次ポート134aと流量制御弁15aとの接続を遮断して比例電磁弁54aと流量制御弁15aとを接続する第2位置を有し,切換弁203b(第2切換弁)は,比例電磁弁54b(第2比例電磁弁)と流量制御弁15aとの接続を遮断して操作装置45aの二次ポート134b(第2出力ポート)と流量制御弁15aとを接続する第1位置,及び操作装置45aの二次ポート134bと流量制御弁15aとの接続を遮断して比例電磁弁54bと流量制御弁15aとを接続する第2位置を有している。
【0104】
コントローラ40は,圧力センサ70a,70b(第1及び第2操作圧力センサ)と圧力センサ200a,200b(第1及び第2制御圧力センサ)からの信号と,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁)の予め設定された目標動作に基づいて,切換弁203a,203bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換える。
【0105】
また,コントローラ40は,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁)の予め設定された目標動作として,第1位置に保持する第1目標動作と,第2位置に保持する第2目標動作と,操作装置45a(第1操作装置)の二次ポート134a(第1出力ポート)から出力される操作パイロット圧(第1操作パイロット圧)と比例電磁弁54a(第1比例電磁弁)によって生成される制御パイロット圧(第1制御パイロット圧)の高圧側及び操作装置45aの二次ポート134b(第2出力ポート)から出力される操作パイロット圧(第2操作パイロット圧)と比例電磁弁54b(第2比例電磁弁)によって生成される制御パイロット圧(第2制御パイロット圧)の高圧側を流量制御弁15aに導くように第1位置及び第2位置の一方に切り換える第3目標動作の1つを設定し,この設定した目標動作に基づいて切換弁203a,203bの目標位置を設定し,切換弁203a,203bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換える。
【0106】
更に,コントローラ40は,比例電磁弁54a,54b(第1及び第2比例電磁弁)の目標動作として,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁)が第1位置にあるときは,圧力センサ200a,200b(第1及び第2制御圧力センサ)によって検出された制御パイロット圧(第1及び第2制御パイロット圧)をそれぞれ圧力センサ70a,70b(第1及び第2操作圧力センサ)によって検出された操作パイロット圧(第1及び第2操作パイロット圧)に等しくする第1目標動作を設定し,切換弁203a,203bが第2位置にあるときは,自動制御による第2目標動作を予め設定し,この設定した目標動作に基づいて比例電磁弁54a,54b(第1及び第2比例電磁弁)の目標パイロット圧を設定し,比例電磁弁54a,54bを制御する。
【0107】
また,本実施形態においては,操作装置45a,46a,45b(複数の操作装置)のそれぞれに対して,圧力センサ70a,70b(第1及び第2操作圧力センサ),圧力センサ71a,71b(第1及び第2操作圧力センサ),圧力センサ72a,72b(第1及び第2操作圧力センサ)と,比例電磁弁54a,54b(第1及び第2比例電磁弁),比例電磁弁55a,55b(第1及び第2比例電磁弁),比例電磁弁56a,56b(第1及び第2比例電磁弁)と,圧力センサ200a,200b(第1及び第2制御圧力センサ),圧力センサ201a,201b(第1及び第2制御圧力センサ),圧力センサ202a,202b(第1及び第2制御圧力センサ)と,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁),切換弁204a,204b(第1及び第2切換弁),切換弁205a,205b(第1及び第2切換弁)とが設けられ,コントローラ40は,圧力センサ70a,70b,圧力センサ71a,71b,圧力センサ72a,72bと圧力センサ200a,200b,圧力センサ201a,201b,圧力センサ202a,202bからの信号と,切換弁203a,203b,切換弁204a,204b,切換弁205a,205bの予め設定された目標動作に基づいて,切換弁203a,203b,切換弁204a,204b,切換弁205a,205bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換える。
【0108】
コントローラ40は,操作装置45a,46a,45b(複数の操作装置)のそれぞれに対して,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁),切換弁204a,204b(第1及び第2切換弁),切換弁205a,205b(第1及び第2切換弁)の予め設定された目標動作として,第1位置に保持する第1目標動作と,第2位置に保持する第2目標動作と,圧力センサ70a,71a, 72aによって検出された操作パイロット圧(第1操作パイロット圧)と圧力センサ200a,201a, 202aによって検出された制御パイロット圧(第1制御パイロット圧)の高圧側及び圧力センサ70b,71b, 72bによって検出された操作パイロット圧(第2操作パイロット圧)と圧力センサ200b,201b, 202bによって検出された制御パイロット圧(第2制御パイロット圧)の高圧側を流量制御弁15a,15b,15c(複数の流量制御弁)に導くように第1位置及び第2位置の一方に切り換える第3目標動作の1つを設定し,この設定した目標動作に基づいて切換弁203a,203b,切換弁204a,204b,切換弁205a,205bの目標位置を決定し,切換弁203a,203b,切換弁204a,204b,切換弁205a,205bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換える。
【0109】
<動作>
次に,
図8に示す水平掘削において,フロント作業装置1Aが状態S1(
図8:掘削開始姿勢)から状態S2(
図8:アーム鉛直姿勢),状態S3(
図8:掘削終了姿勢)に遷移する場合のオペレータ操作とコントローラ40(アクチュエータ制御部81,切換弁動作演算部212)の動作について説明する。
【0110】
図8の状態S1から状態S3の間,オペレータは操作レバー1bのみを操作し,アームクラウド動作を入力する。
【0111】
図8の状態S1において,上述した切換弁203aの予め設定した第3目標動作(高圧選択位置への切換え)に基づいて,切換弁203aは
図6のステップS130でNOと判定され,ステップS150でもNOと判定される。また,ステップS170において,オペレータが操作装置45aを操作していないため操作装置45aの2次ポート側圧力(操作パイロット圧)は0であるためNOと判定される。その結果,ステップS190で切換弁203aの目標位置が第2位置に設定され,切換弁制御部213で切換弁203aが第2位置になるように制御される。
【0112】
また,切換弁203aの位置が第2位置であるため,
図7のステップS440においてYESと判定され,ステップS460において,比例電磁弁54aの予め設定した第2目標動作(MCによる目標パイロット圧の生成)に基づいてMCによるブーム8の上げ操作の目標パイロット圧が演算され,比例電磁弁制御部44において、流量制御弁15aに対する目標パイロット圧に基づいて比例電磁弁54aに対する指令値が演算され,比例電磁弁54aが制御される。これによりバケット10の爪先が目標面60に侵入しないようにMCによって自動的にブーム8の上げ動作が行われる。
【0113】
以上の動作は
図8の状態S2に遷移するまで行われる。
【0114】
図8の状態S2において,上述した切換弁203aの予め設定した第3目標動作(高圧選択位置への切換え)に基づいて,切換弁203aは
図6のステップS130でNOと判定され,ステップS150でNOと判定され,ステップS170においてオペレータが操作装置45aを操作していないため操作装置45aの2次ポート側圧力は0であるためNOと判定される。その結果,ステップS190で切換弁203aの目標位置が第2位置に設定され,切換弁制御部213で切換弁203aが第2位置になるように制御される。
【0115】
また,切換弁203aの位置が第2位置であるため,
図7のステップS440においてYESと判定され,ステップS460において,比例電磁弁54aの予め設定した第2目標動作に基づいてMCによるブーム上げ操作の目標パイロット圧が演算され,比例電磁弁制御部44で流量制御弁15aに対する目標パイロット圧に基づいて比例電磁弁54aに対する指令値が演算され,比例電磁弁54aが制御される。ただし状態S2においては,アーム9がほぼ水平に動作するため,MCによって演算されるブーム上げ操作の目標パイロット圧はほぼ0となる。
【0116】
図8の状態S2の後,状態S3までにおいて,上述した切換弁203bの予め設定した第2目標動作(第2位置保持)に基づいて,切換弁203bは
図6の130でNOと判定され,ステップS150でYESと判定され,ステップS160で切換弁203bの目標位置が第2位置に設定され,切換弁制御部213で切換弁203bが第2位置に保持されるように制御される。また,切換弁203bの位置が第2位置であるため,
図7のステップS440でYESと判定され,ステップS460において,比例電磁弁54bの予め設定した第2目標動作に基づいてMCによるブーム下げ操作の目標パイロット圧が演算され,比例電磁弁制御部44において,流量制御弁15bに対する目標パイロット圧に基づいて比例電磁弁54bに対する指令値が演算され,比例電磁弁54bが制御される。これによってバケット10の爪先が目標面60から離れないようにMCによって自動的にブーム8の下げ動作が行われる。
【0117】
また,
図8の状態S1から状態S3の間,上述した切換弁203aの予め設定した第3目標動作(高圧選択位置への切換え)に基づいて,切換弁203aは,操作パイロット圧と制御パイロット圧の高圧側を流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くように設定されている。このため操作レバー1aを操作し,ブーム上げ動作を入力した場合は,
図6のステップS170でYESと判定され,ステップS180で切換弁203aの目標位置が第1位置に設定され,切換弁制御部213で切換弁203aが第1位置になるように制御される。切換弁203aが第1位置になることで,操作装置45aの操作パイロットライン144aと流量制御弁15aの油圧駆動部150aとが接続され,ブーム上げ動作は通常のオペレータによる操作が有効になる。これによってMC動作中であっても,掘削途中でバケット10が土砂で一杯になった場合などにはオペレータの意思でブーム8を上げ,バケット10の爪先を目標面60から離すこともできる。
【0118】
また,このとき,操作装置45aの2次ポート側圧力(操作パイロット圧)は比例電磁弁54aを経由せずに流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導かれる。このため,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,操作装置45aの操作に対する油圧アクチュエータ5の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0119】
更に,
図8の状態S1から状態S3の間,切換弁204a,204b,205a,205bは予め設定された第1目標動作(第1位置保持)に基づいて常に第1位置に制御されているため,オペレータが操作装置
46a,45bを操作したときも,操作パイロット圧は比例電磁弁を経由せずに流量制御弁15b,15cの油圧駆動部151a,151b,152a,152bに導かれる。このため,この場合も,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,アームクラウド動作,アームダンプ動作,バケットクラウド動作,バケットダンプ動作はMC機能を搭載していない機体と同等の操作性を確保することができる。
【0120】
次に,
図9に示す目標面60に対するバケット10の爪先位置合わせ動作において,フロント作業装置1Aが状態S4(
図9:バケット10爪先高さ高)から状態S5(
図9:バケット10爪先高さ中),状態S6(
図9:バケット10爪先高さ0)に遷移する場合のオペレータ操作とコントローラ40(アクチュエータ制御部81,切換弁動作演算部212)の動作について説明する。
【0121】
図9の状態S4から状態S6の間,オペレータは操作レバー1aのみを操作し,ブーム下げ動作を入力する。
【0122】
図9の状態S4から状態S6において,上述した切換弁203bの予め設定した第2目標動作(第2位置保持)に基づいて,切換弁203bは
図6のステップS130でNOと判定され,ステップS150でYESと判定され,ステップS160で切換弁203bの目標位置が第2位置に設定される。このため切換弁制御部213で切換弁203bが第2位置になるように制御される。また,切換弁203bの位置が第2位置であるため,
図7のステップS440でYESと判定され,ステップS460において,比例電磁弁54bの予め設定した第2目標動作に基づいてMCによるブーム8の下げ操作の目標パイロット圧が演算され,比例電磁弁制御部44で流量制御弁15aに対する目標パイロット圧に基づいて,比例電磁弁54bに対する指令値が演算され,比例電磁弁54bが制御される。
【0123】
ここで,状態S4では目標面60とバケット10の爪先との距離が離れているため,MCによるブーム下げ動作の制限は行われず,操作装置2次圧演算部43aで演算されたブーム下げ動作の操作パイロット圧に等しい制御パイロット圧が目標パイロット圧として演算され,ブーム制御部81aからその目標パイロット圧が出力される。
【0124】
以上の動作は状態S5に遷移するまで行われる。
【0125】
状態S5では目標面60とバケット10の爪先との距離が近いため,MCでは目標面60への侵入を防ぐためにブーム下げ動作の制限(減速)を開始する。ブーム制御部81aでは目標面60とバケット10の爪先との距離に応じて,操作装置2次圧演算部43aで演算されたブーム下げ動作の操作パイロット圧を減圧した値を目標パイロット圧として出力する。
【0126】
状態S6では目標面60にバケット10の爪先が達しているため,MCでは目標面60への侵入を防ぐためにブーム下げ動作の制限(停止)を行う。ブーム制御部81aでは,0を目標パイロット圧として出力する。
【0127】
これによってオペレータが操作レバー1aを操作し,ブーム下げ動作を入力し続けている場合でも自動的にバケット10の爪先を目標面60で停止することができ,位置合わせを行うことができる。
【0128】
<効果>
本実施形態によれば,以下の効果が得られる。
【0129】
1.上述した
図9に示すバケット爪先位置合わせの動作例のように,作業装置1Aが状態S5からS6にある間,切換弁203bを第2位置に切り換え,圧力センサ70bによって検出された操作パイロット圧を減圧した制御パイロット圧を生成するよう比例電磁弁54bを制御することにより,ブームシリンダ5のブーム下げ方向の動作を制限することができ,MCにより作業装置1Aの動作が制限可能となる。他の作業モードにおいて,切換弁203a,204a,204b,205a,205bを第2位置に切り換え,比例電磁弁
54a,55a,55b,56a,56bを同様に制御した場合も,同様にMCにより作業装置1Aの動作が制限可能となる。
【0130】
2.作業モードを設定せず,MCを行わない場合は,全ての比例電磁弁54a~56bは非励磁となり,第1位置に切り換わる。オペレータ操作による通常の作業を行う場合も,オペレータ操作に対する油圧アクチュエータ5,6,7の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0131】
また,上述した
図8に示す水平掘削の動作例のように,作業装置1Aが状態S1からS3にある間のMC動作中に,オペレータが第1操作装置
45aを操作したとき,切換弁203aを第1位置に切り換えることにより,操作装置45aの二次ポート134aから出力された操作パイロット圧は比例電磁弁54aを経由せず,流量制御弁15aに導かれる。このため,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,オペレータの操作装置45aの操作に対するブームシリンダ5の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。他の作業モードにおいて,オペレータが操作装置を操作したとき切換弁203b,204a,204b,205a,205bを第1位置に切り換えた場合も,同様にオペレータの操作装置45a,46a,45bの操作に対する油圧アクチュエータ5,6,7の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0132】
更に,MCによる
図8に示す水平掘削の動作例において,
図8の状態S1から状態S3の間,切換弁204a,204b,205a,205bは予め設定された第1目標動作(第1位置保持)に基づいて常に第1位置に制御される。このため,オペレータが操作装置
46a,45bを操作したときも,操作パイロット圧は比例電磁弁を経由せずに流量制御弁15b,15cの油圧駆動部151a,151b,152a,152bに導かれるため,この場合も,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,アームクラウド動作,アームダンプ動作,バケットクラウド動作,バケットダンプ動作はMC機能を搭載していない機体と同等の操作性を確保することができる。
【0133】
3.上述した
図8に示す水平掘削の動作例のように,切換弁203aを第2位置に切り換え,MCによる制御パイロット圧を生成するよう比例電磁弁54aを制御することにより,ブームシリンダ5を自動でブーム上げ方向に動作させることができるとともに,切換弁203bを第2位置に切り換え,MCによる第2制御パイロット圧を生成するよう比例電磁弁54bを制御することにより,ブームシリンダを自動でブーム下げ方向に動作させることができる。これにより操作装置45aが操作されていない油圧アクチュエータであるブームシリンダ5をブーム上げ方向,ブーム下げ方向のいずれの方向にも自動で動作させることが可能となる。他の作業モードにおいて,操作装置が操作されていない切換弁204a,204b,205a,205bを第2位置に切り換えた場合も,同様に油圧アクチュエータ5,6,7をその動作方向のいずれの方向にも動作させることができる。
【0134】
<変形例>
第1の実施形態においては,操作装置45a,46a,45bのそれぞれに対して,圧力センサ70a,70b;71a,71b;72a,72bと,比例電磁弁54a,54b;55a,55b;56a、56bと,圧力センサ200a,200b;201a,201b;202a,202bと,切換弁203a,203b;204a,204b;205a,205bとを設け,コントローラ40は,圧力センサ70a~72bと圧力センサ200a~202bからの信号と,切換弁203a,203b;204a,204b;205a,205bの予め設定された目標動作に基づいて,切換弁203a~205bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換えるようにした。
【0135】
これにより駆動システムを汎用化し,コントローラ40にどのような作業モードを設定した場合でも,MCによるフロント操作を行うことができる。
【0136】
これに対し,駆動システムを上述した
図8に示す水平掘削及びバケット10の爪先位置合わせに特化した構成とすることもできる。この場合は,操作装置45aに対してのみ,圧力センサ70a,70b,比例電磁弁54a,54b,圧力センサ200a,200b,切換弁203a,203bを設け,コントローラ40は,圧力センサ70a,70b,圧力センサ200a,200bからの信号と,切換弁203a,203bの予め設定された目標動作に基づいて,切換弁203a,203bを第1位置と第2位置のいずれか一方に切り換えるようにすればよい。
【0137】
これによっても上記1~3の切換弁203a,203bに係わる効果を得ることができる。
【0138】
<第2実施形態>
図10及び
図11を参照して,本発明の第2の実施形態を説明する。
【0139】
第2の実施形態は,
図5の切換弁動作演算部212の構成が第1の実施形態と異なっている。それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0140】
図10は,本実施形態における
図5と同様なMC制御部43の機能ブロック図である。
【0141】
図11は,本実施形態における切換弁動作演算部212における切換弁203a~205bの制御フローを示す,
図6と同様な図である。
【0142】
【0143】
<コントローラ>
図10において,コントローラ40の切換弁動作演算部212には,操作装置2次圧演算部43a及び比例電磁弁2次圧演算部211の出力に加え,姿勢演算部43b及び目標面演算部43cの出力が入力され,切換弁動作演算部212は,操作装置45a,45b,46aの操作時に,予め定めた条件(例えばフロント操作の作業モード)に従って,
図11に示すように切換弁203a~205bの目標切り換え位置を演算する。
【0144】
<切換弁動作演算部212の切換弁制御フロー>
図11において,ステップS110~S190の処理は
図6に示した第1の実施形態と同じである。本実施形態では,ステップS140,S160,S180,S190において切換弁203a~205bの目標位置を設定した後,更に以下の処理が行われる。
【0145】
まず,ステップS230において,切換弁動作演算部212は,姿勢演算部43bで演算されたブーム8,アーム9,バケット10の姿勢を取得する。
【0146】
ステップS240において,切換弁動作演算部212は,目標面演算部43cで演算された目標面の位置情報を取得する。
【0147】
ステップS250において,切換弁動作演算部212は,姿勢演算部43bの出力と目標面演算部43cの出力とから目標面60とバケット10の爪先の距離が予め設定された第1距離よりも小さいか否かを判定する。ステップS250で目標面60とバケット10の爪先の距離が予め設定された第1距離以下と判定された場合はステップS270に進み,ステップS250で目標面60とバケット10の爪先の距離が予め設定された第1距離よりも大きいと判定された場合はステップS260に進む。
【0148】
ステップS260において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第1位置に設定する。すなわち,MCが有効な状態であってもバケット10の爪先が目標面60から予め設定された第1距離以上に離れている場合は切換弁203a~205bの目標位置は第1位置に設定される。
【0149】
ステップS270において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を切換弁制御部213に出力する。
【0150】
このように本実施形態において,コントローラ40は,作業装置姿勢検出装置50(ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32,車体傾斜角センサ33)からの信号に基づいて作業装置1Aの制御点(例えばバケット10の爪先)と掘削目標面との距離を演算し,制御点と掘削目標面との距離が予め設定された第1距離よりも大きいときは切換弁203b(第2切換弁)を第1位置に保持し,制御点と掘削目標面との距離が第1距離以下になると切換弁203b(第2切換弁)を第2位置に切り換える。
【0151】
<動作>
第1の実施形態と同様に,
図9のMCによる目標面60に対するバケット10の爪先位置合わせ動作においてフロント作業装置1Aが状態S4(
図9:バケット10爪先-目標面60距離>第1距離)から状態S5(
図9:バケット10爪先-目標面60距離=第1距離),状態S6(
図9:バケット10爪先-目標面60距離<第1距離)に遷移する場合のオペレータ操作とコントローラ40(アクチュエータ制御部81,切換弁動作演算部212)の動作について説明する。
【0152】
図9の状態S4から状態S6の間,オペレータは操作レバー1aのみを操作し,ブーム下げ動作を入力する。
【0153】
図9の状態S4から状態S6において,切換弁203bの予め設定した第2目標動作(第2位置保持)に基づいて,切換弁203bは
図11のステップS130でNOと判定され,ステップS150でYESと判定され,ステップS160で切換弁203bの目標位置が第2位置に設定される。
【0154】
状態S4では,目標面60とバケット10の爪先との距離が第1距離よりも大きいため,
図11のステップS250でNOと判定され,ステップS260で切換弁203bの目標位置が第1位置に書き換えられる。これによりバケット10の爪先が目標面60に侵入する恐れのない,バケット10爪先-目標面60距離>第1距離となる状態では,切換弁203bが第1位置に制御されるため,操作装置45aの2次ポート側圧力(操作パイロット圧)は比例電磁弁54bを経由せずに流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれる。このため,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,操作装置45aの操作に対する油圧アクチュエータ5の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0155】
また,状態S4では,切換弁203bの位置は第1位置であるため,
図7のステップS440でNOと判定され,ステップS470において,予め設定した比例電磁弁54bの
第1目標動作に基づいて操作装置2次圧演算部43aで演算されたブーム下げ動作の操作パイロット圧に等しい制御パイロット圧が目標パイロット圧として演算され,ブーム制御部81aからその目標パイロット圧が出力される。これにより比例電磁弁54bの2次ポート側の圧力(制御パイロット圧)が操作装置45aの操作パイロットライン
144bの操作パイロット圧と等しくなるよう制御される。
【0156】
状態S5では,目標面60とバケット10の爪先との距離が第1距離であるため,
図11のステップS250でYESと判定され,切換弁203bの目標位置はステップS160で設定された第2位置のままとなる。そのため状態S5で切換弁203bは第1位置から第2位置に切り換わる。このとき,比例電磁弁54bの2次ポート側の圧力(制御パイロット圧)が操作装置45aの操作パイロットライン
144bの操作パイロット圧と等しくなっているため,切換弁203bが切り替わる瞬間に流量制御弁15aの油圧駆動部150bに作用する圧力の急変動が発生せず,フロント作業装置1Aへのショックを抑えることができる。
【0157】
<効果>
本実施形態によれば,バケット10の爪先が目標面60に侵入する恐れのない状態ではMC機能を搭載していない機体と同等の操作性を確保しつつ,バケット10の爪先が目標面60に侵入するおそれのある状態ではMCを行うことができ,さらにその切り換えをオペレータがスイッチ等を操作することなく自動で行うことができる。また,切換弁203a~205bが切り換わる瞬間のショックの発生を抑えることができ,フロント作業装置1Aを滑らかに動かし続けることができる。
【0158】
【0159】
<基本構成>
第3の実施形態に係る油圧ショベルはMCの有効・無効(ON・OFF)を択一的に選択するためのMC有効・無効切換装置214を備えている。
【0160】
<コントローラ40>
図12は,コントローラ40の機能ブロック図である。MC有効・無効切換装置214からの出力はコントローラ40のMC制御部43に入力される。
図13は,
図12中のMC制御部43の機能ブロック図である。
【0161】
MC制御部43は,操作装置2次圧演算部43aと,姿勢演算部43bと,目標面演算部43cと,ブーム制御部81aと,アーム制御部81b,バケット制御部81cと,比例電磁弁2次圧演算部211と,切換弁動作演算部212とに加え,MC有効・無効判定部215を備えている。切換弁動作演算部212には,操作装置2次圧演算部43a,比例電磁弁2次圧演算部211,姿勢演算部43b及び目標面演算部43cの出力に加え,MC有効・無効判定部215の出力が入力される。
【0162】
MC有効・無効判定部215は,MC有効・無効切換装置214からの入力を基にMC有効・無効切換装置214の信号が有効(ON)か無効(OFF)かを判定する。
【0163】
切換弁動作演算部212は,操作装置2次圧演算部43a,姿勢演算部43b,目標面演算部43c,比例電磁弁2次圧演算部211及びMC有効・無効判定部215の出力に基づいて,予め定めた条件(例えばフロント操作の作業モード)に従って切換弁203a~205bの目標位置を演算する。
【0164】
<切換弁動作演算部212の切換弁制御フロー>
図14は,本実施形態における切換弁動作演算部212における切換弁203a~205bの制御フローを示す図である。
【0165】
図14において,ステップS110~S190の処理は
図6に示した第1の実施形態と同じであり,ステップ
S230~ステップS270の処理は
図11に示した第2の実施形態と同じである。本実施形態では,ステップS140,S160,S180,S190において切換弁203a~205bの目標位置を設定した後,ステップ
S230~ステップS270の処理を実施する前に以下の処理が行われる。
【0166】
ステップS200において,切換弁動作演算部212は,MC有効・無効判定部215で判定されたMC有効・無効切換装置214の信号を取得する。
【0167】
ステップS210において,切換弁動作演算部212は,ステップS200で取得したMC有効・無効切換装置214の信号が有効か否かを判定する。ステップS210で有効と判定された場合はステップS230に進み,ステップS210で有効以外と判定された場合はステップS220に進む。
【0168】
ステップS220において,切換弁動作演算部212は,切換弁203a~205bの目標位置を第1位置に設定する。すなわち,MC有効・無効切換装置214の信号が有効以外の場合には予め設定された目標動作に係わらず,切換弁203a~205bの目標位置は第1位置に設定される。
【0169】
このように本実施形態の作業機械は,コントローラ40の制御の有効・無効を切り換える信号を出力するMC有効・無効切換装置214(切換装置)を更に備え,コントローラ40は,MC有効・無効切換装置214からコントローラ40の制御を無効にする信号を入力したとき,切換弁203a,203b(第1及び第2切換弁)の目標位置を第1位置に書き換える。
【0170】
<動作・効果>
上記のように構成される油圧ショベルにおいて,コントローラ40にフロント操作の作業モードが設定されている場合でも、オペレータがMC有効・無効切換装置214を無効(OFF)にすることで切換弁203a~205bの位置が第1位置となり,操作装置45a,45b,46aの2次ポート側圧力(操作パイロット圧)は比例電磁弁54a~56bを経由せずに流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a~152bに導かれる。このため,MCを行わないときは,ブーム上げ動作,ブーム下げ動作,アームクラウド動作,アームダンプ動作,バケットクラウド動作,バケットダンプ動作の全てにおいて,操作パイロット圧が比例電磁弁を通過する従来の場合のような圧力損失は発生せず,操作装置45a,45b,46aの操作に対する油圧アクチュエータ5,6,7の応答性を改善し,MC機能を持たない作業機械と同等の操作性を確保することができる。
【0171】
なお,本実施形態は、第2の実施形態に係る油圧ショベルにMCの有効・無効(ON・OFF)を択一的に選択するためのMC有効・無効切換装置214を設けたが,第1の実施形態に係わる油圧ショベルにMC有効・無効切換装置214を設けてもよく,これによっても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0172】
1A フロント作業装置(作業装置)
5 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
6 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
7 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
8 ブーム
9 アーム
10 バケット
15a,15b,15c 流量制御弁
30 ブーム角度センサ(作業装置姿勢検出装置50)
31 アーム角度センサ(作業装置姿勢検出装置50)
32 バケット角度センサ(作業装置姿勢検出装置50)
40 コントローラ
43 MC制御部
43a 操作装置2次圧演算部
43b 姿勢演算部
43c 目標面演算部
44 比例電磁弁制御部
45a ブーム用の操作装置
45b バケット用の操作装置
46a アーム用の操作装置
50 作業装置姿勢検出装置
51 目標面設定装置
52a 操作装置2次圧検出装置
54a~56b 比例電磁弁
70a~72b 圧力センサ(操作圧力センサ)
200a~202b 圧力センサ(制御圧力センサ)
81 アクチュエータ制御部
81a ブーム制御部
81b アーム制御部
81c バケット制御部
134a~136b 二次ポート(出力ポート)
203a~205b 切換弁
210 比例電磁弁2次圧検出装置
211 比例電磁弁2次圧演算部
212 切換弁動作演算部
213 切換弁制御部
214 MC有効・無効切換装置(切換装置)
215 MC有効・無効判定部
374 表示制御部