(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20230427BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230427BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20230427BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230427BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230427BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08L63/00 Z
C08K3/00
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
H05K1/03 610T
H05K1/03 610Q
H05K3/46 T
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2020046745
(22)【出願日】2020-03-17
(62)【分割の表示】P 2019540012の分割
【原出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2017250350
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】濱嶌 知樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 環
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝史
(72)【発明者】
【氏名】森下 智絵
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193614(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187783(WO,A1)
【文献】特開2013-129827(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124158(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/04-5/10、5/24
B29B11/16、15/08-15/14
B32B1/00-43/00
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、有機樹脂を少なくとも含む樹脂組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグであって、
当該プリプレグを200~230℃ の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件にて熱硬化させて得られる硬化物が下記式(i)、(ii)、(iii)及び(x)で表される関係を満たし、
前記有機樹脂が、エポキシ化合物と、シアン酸エステル化合物、フェノール化合物、及びマレイミド化合物からなる群より選択される1種類以上と、を含むプリプレグ。
0.80≦b/a≦0.95…(i)
0.40≦c/a≦0.65…(ii)
13≦a≦25…(iii)
175≦Tg≦215…(x)
(上記式中、a、b、及びcは、それぞれ、前記硬化物の40℃、170℃、及び230℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示し、Tgは、前記硬化物のガラス転移温度(単位:℃)を示す。前記貯蔵弾性率及び前記ガラス転移温度は、JIS C6481に準拠して測定される。)
【請求項2】
下記式(iv)で表される関係をさらに満たす、請求項1に記載のプリプレグ。
0.40≦d/a≦0.65…(iv)
(上記式中、dは、前記硬化物の260℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示し、aは、前記と同義である。前記貯蔵弾性率は、JIS C6481に準拠して測定される。)
【請求項3】
前記基材が、ガラス基材である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記ガラス基材が、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、
NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上のガラスの繊維で構成されている、請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記有機樹脂が、シアン酸エステル化合物、フェノール化合物、及びマレイミド化合物からなる群より選択される2種類以上を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記有機樹脂が、前記シアン酸エステル化合物及び前記フェノール化合物からなる群より選択される1種類以上と、前記マレイミド化合物とを含む、請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記有機樹脂が、前記フェノール化合物の1種類以上と、前記マレイミド化合物とを含む、請求項5又は6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
充填材をさらに含有し、前記充填材の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、100質量部以上700質量部以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記充填材が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上の無機充填材を含む、請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記充填材が、無機充填材と有機充填材とを含む、請求項
8又は
9に記載のプリプレグ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプリプレグを有する、積層板。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプリプレグと、該プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔と、を有する金属箔張積層板。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有するプリント配線板。
【請求項14】
第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、請求項1~10のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物を有する、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに伴い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。これに伴い、半導体パッケージ用のプリント配線板に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。このようなプリント配線板に求められる特性としては、例えば、低吸水性、吸湿耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張率、耐熱性、耐薬品性、高めっきピール強度等が挙げられる。また、これらに加えて、プリント配線板の反りを抑制する(低反りを達成する)ことが近時、重要な課題となっており、様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低温硬化した際においても、低熱膨張性、高いガラス転移温度、難燃性、及び高い硬化度を同時に満たすことを目的として、特定の構造を有するイミダゾール化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物及びマレイミド化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。この文献の実施例では、Eガラス織布に、上記の樹脂組成物を含浸塗工して得られたプリプレグを用いて形成した銅箔積層板が、優れた低熱膨張率、高いガラス転移温度、難燃性、高い硬化度、高い吸湿耐熱性、及び高いピール強度を有することが開示されている。一方、この文献では、プリント配線板の反りを抑制する(低反りを達成する)ことについて検討されていない。
【0004】
特許文献2には、ハロゲン化合物やリン化合物を使用することなく、優れた難燃性を維持しつつ、優れた耐熱性、耐リフロー性、及びドリル加工性、及び低吸水性を同時に満たすことを目的として、非ハロゲン系エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、マレイミド化合物、及び無機充填材を含有する樹脂組成物が開示されている。この文献の実施例では、Eガラス織布に、上記の樹脂組成物を含浸塗工して得られたプリプレグを用いて形成した銅張り積層板が、優れた難燃性、吸水率、耐熱性、耐リフロー性、ドリル加工性を有することが開示されている。一方、この文献もまた、プリント配線板の反りを抑制する(低反りを達成する)ことについて検討されていない。
【0005】
特許文献3には、フィラー含有量の高い樹脂組成物を用いて加熱加圧成形した際に発生する外観異常(成形スジ)を抑制することを目的として、繊維基材と、充填材を所定の割合で含有する熱硬化性樹脂組成物とを含み、所定の測定条件にて測定した表面の光沢度が特定値以上であるプリプレグが開示されている。この文献には、所定条件下で硬化させた後の25℃の貯蔵弾性率E’が13~50GPa以下であり、260℃の貯蔵弾性率E’が5~20GPaであることにより、成形スジの発生を抑制できることが開示されている。一方、この文献もまた、プリント配線板の反りを抑制する(低反りを達成する)ことについて検討されていない。
【0006】
特許文献4には、プリント配線板の厚みが薄くても、温度変化による半導体パッケージの反り量を低減することを目的として、所定のエポキシ樹脂と、所定のフェノール樹脂と、低弾性成分と、無機充填材とを所定の割合で含有するプリプレグであって、硬化後のガラス転移温度(Tg)が220℃であり、かつ260℃における弾性率が10GPa以下であるプリプレグが開示されている。しかしながら、この文献もまた、プリント配線板の反りを抑制する(低反りを達成する)ことについて検討されていない。
【0007】
特許文献5には、多層プリント配線板の製造工程、及び半導体装置の製造工程における反りの低減を目的として、基材と熱硬化性樹脂組成物とから構成される積層板において、熱硬化性樹脂組成物が、芳香環骨格含有エポキシ樹脂を含み、積層板の所定温度における線膨張係数が所定範囲内であり、30℃における貯蔵弾性率が22~40GPaであり、180℃における貯蔵弾性率が10~18GPaである積層板が開示されている。この文献には、線膨張係数、及び所定温度における貯蔵弾性率が上記範囲内にあることにより、多層プリント配線板の反りが低減し、多層プリント配線板を用いた半導体装置の製造工程において、多層プリント配線板部の反りが小さくなることが開示されている。この文献の実施例1~6では、上記の構成を有する積層板(両面銅張積層板)のリフロー処理前及びリフロー処理後の低反り性が良好であることが開示されている。尚、この文献の実施例1~6での30℃における貯蔵弾性率E’(30)に対する180℃における貯蔵弾性率E’(180)の比(E’(180)/E’(30))は、0.44~0.67程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-37485号公報
【文献】特開2016-40391号公報
【文献】特開2013-129827号公報
【文献】特開2017-193614号公報
【文献】特許第5056787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らの詳細な検討によれば、上記従来の技術をもってしても、プリント配線板、特に、多層コアレス基板の反りをいまだ十分に低減できない。特に多層コアレス基板等の薄型基板において反りの発生が一層顕著となる。このため、反りの低減に関し、さらなる改良が望まれている。
【0010】
これに対し、本発明者らが鋭意検討したところ、プリント配線板の反りを低減するためには、プリント配線板に用いる樹脂組成物(樹脂材料)を含むプリプレグの硬化物の弾性率を低下させ、粘性挙動を発現させることが有効であるという知見を得た。そこで、本発明者らは、低い弾性率を有し、且つ塑性変形し易い(粘性挙動を示す)樹脂材料を用いることを検討した。しかしながら、このような樹脂材料を用いると、剛性が低いことに起因して、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程におけるハンドリング性(取り扱い性)が十分ではないという別の問題が生じる。また、このような樹脂材料は、吸水率が高く、耐熱性及び耐薬品性が十分でない傾向にあるため、品質の観点からさらなる問題が生じうる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減(低反りを達成)できるとともに、優れた剛性及び耐熱性を発現可能な樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、プリプレグを硬化させた硬化物の形態において、所定温度の貯蔵弾性率により規定された物性パラメータ及びガラス転移温度が所定範囲内を満たす樹脂組成物は、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能であり、優れた剛性及び耐熱性を発現可能であること見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち、本発明は次のとおりである。
(1)
有機樹脂を少なくとも含む樹脂組成物であって、下記式(i)、(ii)、(iii)及び(x)で表される関係を満たす、樹脂組成物。
0.80≦b/a≦0.95…(i)
0.40≦c/a≦0.65…(ii)
13≦a≦25…(iii)
175≦Tg≦215…(x)
(上記式中、a、b、及びcは、それぞれ、基材に前記樹脂組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物の40℃、170℃、及び230℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示し、Tgは、前記硬化物のガラス転移温度(単位:℃)を示す。)
(2)
下記式(iv)で表される関係をさらに満たす、(1)の樹脂組成物。
0.40≦d/a≦0.65…(iv)
(上記式中、dは、基材に前記樹脂組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物の260℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示し、aは、前記と同義である。)
(3)
前記有機樹脂が、シアン酸エステル化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、及びマレイミド化合物からなる群より選択される2種類以上を含む、(1)又は(2)の樹脂組成物。
(4)
前記有機樹脂が、前記シアン酸エステル化合物及び前記フェノール化合物からなる群より選択される1種類以上と、前記エポキシ化合物及び前記マレイミド化合物からなる群より選択される1種類以上とを含む、(3)の樹脂組成物。
(5)
前記有機樹脂が、前記フェノール化合物の1種類以上と、前記エポキシ化合物及び前記マレイミド化合物からなる群より選択される1種以上とを含む、(3)又は(4)の樹脂組成物。
(6)
前記有機樹脂が、前記エポキシ化合物の2種類以上を含有し、前記2種類以上のエポキシ化合物が、ナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂及び/又はアラルキル型エポキシ樹脂を含む、(3)~(5)のいずれかの樹脂組成物。
(7)
充填材をさらに含有し、
前記充填材の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、100質量部以上700質量部以下である、(1)~(6)のいずれかの樹脂組成物。
(8)
前記充填材が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上の無機充填材を含む、(7)の樹脂組成物。
(9)
充填材が、無機充填材と有機充填材とを含む(7)又は(8)の樹脂組成物。
(10)
金属箔張積層板用である、(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物。
(11)
プリント配線板用である、(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物。
(12)
多層プリント配線板用である、(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物。
(13)
基材と、該基材に含浸又は塗布された(1)~(12)のいずれかの樹脂組成物とを含む、プリプレグ。
(14)
前記基材が、ガラス基材である、(13)のプリプレグ。
(15)
前記ガラス基材が、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上のガラスの繊維で構成されている、(14)のプリプレグ
(16)
(13)~(15)のいずれかのプリプレグを有する、積層板。
(17)
(13)~(15)のいずれかのプリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔と、
を有する金属箔張積層板。
(18)
(13)~(15)のいずれかのプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有するプリント配線板。
(19)
第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、
前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、(13)~(15)のいずれかのプリプレグの硬化物を有する、多層プリント配線板。
(20)
(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物の金属箔張積層板への使用。
(21)
(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物のプリント配線板への使用。
(22)
(1)~(9)のいずれかの樹脂組成物の多層プリント配線板への使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減(低反りを達成)可能であり、優れた剛性及び耐熱性を発現可能な樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である(但し、多層コアレス基板の製造方法はこれに限定されない。以下の
図2~
図8においても同様である。)。
【
図2】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図3】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図4】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図5】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図6】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図7】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図8】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図9】多層コアレス基板のパネルの一例の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0017】
本明細書にいう「樹脂固形分」とは、特段の記載がない限り、本実施形態の樹脂組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、樹脂固形分100質量部とは、樹脂組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0018】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、有機樹脂を少なくとも含み、下記式(i)、(ii)、(iii)及び(x)で表される関係を満たす。
0.80≦b/a≦0.95…(i)
0.40≦c/a≦0.65…(ii)
13≦a≦25…(iii)
175≦Tg≦215…(x)
【0019】
各式中、a、b、及びcは、それぞれ、基材に本実施形態の樹脂組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物の40℃、170℃、及び230℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示し、Tgは、硬化物のガラス転移温度(単位:℃)を示す。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、上記の構成を備えることにより、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能であり、優れた剛性及び耐熱性を発現可能である。この要因は、以下のように考えられる。尚、以下の記述に考察が含まれるが、この考察により本発明は何ら限定されない。
【0021】
すなわち、プリント配線板の反りを低減するためには、プリント配線板に用いる樹脂組成物(樹脂材料)を含むプリプレグの硬化物の弾性率を低下させ、粘性挙動を発現させることが重要である。そこで、低い弾性率を有し、且つ塑性変形し易い(粘性挙動を示す)樹脂材料を用いることが考えられる。しかしながら、このような樹脂材料を用いると、剛性が低いことに起因して、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程におけるハンドリング性(取り扱い性)が十分ではない。また、このような樹脂材料は、吸水率が高く、耐熱性及び耐薬品性が十分でない傾向にあり、品質の観点から問題が生じる。
【0022】
これに対し、本実施形態の樹脂組成物は、まず、プリプレグを硬化させた硬化物の形態(「プリプレグの硬化形態」ともいう。)において、40℃での貯蔵弾性率を所定範囲内とすること(上記関係(iii)を満たすこと)に主に起因して、剛性を十分に確保できるとともに、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを低減できる。また、プリプレグの硬化形態において、40℃での貯蔵弾性率に対する170℃での貯蔵弾性率の割合を所定範囲内とすること(上記関係(i)を満たすこと)に主に起因して、170℃まで加熱しても、剛性が十分に維持されており、その結果、本実施形態の樹脂組成物は、例えば、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程におけるハンドリング性(取り扱い性)を付与できる。また、40℃での貯蔵弾性率に対する230℃での貯蔵弾性率の割合を所定範囲内とすること(上記関係(ii)を満たすこと)に起因して、加熱処理を含む工程(例えば、プレス成形工程、アニール工程等)時に粘性挙動を発現でき、その結果、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを低減できる。また、40℃での貯蔵弾性率を所定範囲内とすること(上記関係(iii)を満たすこと)と、ガラス転移温度を所定範囲内とすること(上記関係(x)を満たすこと)に主に起因して、金属箔張積層体、プリント配線板及び多層プリント配線体に優れた耐熱性を付与できる。
【0023】
[樹脂組成物の特性]
本実施形態の樹脂組成物は、上述の通り、基材に含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物(以下、単に「硬化物」又は「プリプレグの硬化物」ともいう。)において、所定温度の貯蔵弾性率により規定された物性パラメータ及びガラス転移温度(Tg)が所定範囲内を満たす。
【0024】
0.80≦b/a≦0.95…(i)
0.40≦c/a≦0.65…(ii)
13≦a≦25…(iii)
175≦Tg≦215…(x)
【0025】
式中、a、b、及びcは、それぞれ、硬化物の40℃、170℃、及び230℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示す。
【0026】
上記プリプレグは、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよい。具体的には、上記プリプレグは、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥して半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。ここでいう基材は、各種プリント配線板の材料に用いられる公知の基材であればよく、含浸又は塗布方法もまた公知の方法を用いればよい。
【0027】
上記硬化物は、上記プリプレグを200~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件にて熱硬化させて得られる硬化物をいう。なお、硬化するための圧力条件は、本発明の作用効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、通常プリプレグを硬化するための好適な条件を用いることができ、プリプレグを硬化させるための加熱手段もまた本発明の作用効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、通常の加熱手段(例えば、乾燥機等)を用いればよい。
【0028】
硬化物の貯蔵弾性率及びガラス転移温度は、JIS C6481に準拠してDMA法(Dynamic Mechanical Analysis法)により測定することができる。より詳細な測定方法としては、まず、プリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業株式会社製品、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、所定の厚さを有する銅箔張積層板を得る。次いで、得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルの貯蔵弾性率及びガラス転移温度を、動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製品)を用いて測定する。測定値は、例えば、3回の測定値の相加平均値で求められる。
【0029】
式(iii)において、a(40℃での貯蔵弾性率)が13GPa以上であることに起因して、剛性を十分に確保できる。同様の観点から、aは、15GPa以上であることが好ましく、16Gpa以上であることがより好ましい。一方、aが25GPa以下であることに起因して、金属箔張積層板、プリント配線板(及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを低減できる。同様の観点から、aは、23GPa以下であることが好ましく、20GPa以下であることがより好ましい。
【0030】
式(i)において、b/a(40℃での貯蔵弾性率に対する170℃での貯蔵弾性率の割合)が0.80以上であることに起因して、170℃まで加熱しても、剛性が十分に維持されており、その結果、本実施形態の樹脂組成物は、例えば、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程においてハンドリング性(取り扱い性)に優れる。同様の観点から、b/aは、0.81以上であることが好ましく、0.82以上であることがより好ましい。一方、b/aは、0.92以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましい。
【0031】
式(ii)において、c/a(40℃での貯蔵弾性率に対する230℃での貯蔵弾性率の割合)が上記範囲内であることに起因して、加熱処理を含む工程(例えば、プレス成形工程、アニール工程等)時に粘性挙動を発現でき、その結果、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを低減できる。c/aの下限値は、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程においてハンドリング性(取り扱い性)に一層優れる観点から、0.42であることが好ましく、0.44であることがより好ましく、c/aの上限値は、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる観点から、0.63であることが好ましく、0.61であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物は、硬化物のガラス転移温度が式(x)を満たすことに起因して、耐熱性を向上させることができる。同様の観点から、ガラス転移温度は、178℃以上であることが好ましく、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物は、式(iv)で表される関係をさらに満たすことが好ましい。
0.40≦d/a≦0.65…(iv)
【0034】
上記式中、dは、基材に本実施形態の樹脂組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物の260℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示す。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、式(iv)で表される関係を満たすことにより、得られる硬化物の耐熱性に一層優れ、例えば、300℃の高温に曝されても十分な耐熱性を示す傾向にあり、更にはプリント配線板(特に多層コアレス基板)に半導体チップを実装するための実装工程においてハンドリング性に一層優れる傾向にある。同様の観点から、d/aの下限値は0.41以上であることが好ましく、0.42以上であることがより好ましい。
【0036】
[構成成分]
本実施形態の樹脂組成物は、構成成分として、有機樹脂を少なくとも含み、無機充填材、シランカップリング剤、湿潤分散剤、及び硬化促進剤を更に含んでもよい。
【0037】
(有機樹脂)
有機樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、シアン酸エステル化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。これらの有機樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、有機樹脂は、得られる硬化物のガラス転移温度、耐薬品性及びピール強度が一層向上する観点から、シアン酸エステル化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、アリル基含有化合物、及びマレイミド化合物からなる群より選択される2種類以上(好ましくは3種類以上)を含むことが好ましい。同様の観点から、有機樹脂は、シアン酸エステル化合物及びフェノール化合物からなる群より選択される1種類以上と、エポキシ化合物、アリル基含有化合物、及びマレイミド化合物からなる群より選択される1種類以上とを含むことが好ましく、フェノール化合物の1種類以上と、エポキシ樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選択される1種類以上とを含むことがより好ましい。
【0038】
(シアン酸エステル化合物)
本実施形態の有機樹脂は、シアン酸エステル化合物を含有してもよい。本明細書において、「シアン酸エステル化合物」とは、1分子中に2つ以上のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物をいい、「化合物」は、樹脂を包含する概念をいう。シアン酸エステル化合物としては、1分子中に2つ以上のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中に2つ以上のシアナト基を含有する芳香族炭化水素化合物、2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物、ノボラック型シアン酸エステル、ビスフェノール型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノール型シアン酸エステル(例えば、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールE型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールF型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールS型シアン酸エステル等)、アラルキル型シアン酸エステル、これらのシアン酸エステルのプレポリマーが挙げられる。シアン酸エステル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
1分子中に2つ以上のシアナト基を有する芳香族炭化水素化合物としては、例えば、式(I):Ar-(OCN)p(式中、Arは、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環のいずれかを表し、pは、2以上の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。式(I)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシナトナフタレン、4,4’-ジシアナトビフェニル等が挙げられる。
【0040】
2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0041】
ノボラック型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【0043】
式(1)中、R1aは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R1bは、各々独立して、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、nは、1~10の整数(好ましくは1~7の整数)を表す。
【0044】
式(1)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(3,5-ジメチル4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シナアトフェニル)メタン、2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0045】
これらのシアン酸エステル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シアン酸エステル化合物は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、ビスフェノール型シアン酸エステル及び/又はアラルキル型シアン酸エステルであることが好ましい。
【0046】
(ビスフェノール型シアン酸エステル)
ビスフェノール型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型シアン酸エステル、ビスフェノールE型シアン酸エステル、ビスフェノールF型シアン酸エステル、ビスフェノールS型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0047】
ビスフェノール型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ビスフェノール型シアン酸エステルの市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製品の「CA210」等が挙げられる。
【0048】
(アラルキル型シアン酸エステル)
アラルキル型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0049】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1a)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【0051】
式(1a)中、R1dは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n1は、1~10の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。
【0052】
ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【0054】
式(1b)中、R1eは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R1fは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n2は、1~10の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。
【0055】
アラルキル型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成した製品を用いてもよい。アラルキル型シアン酸エステルの合成方法としては、例えば、目的とするアラルキル型シアン酸エステルに対応するフェノール樹脂(以下、「対応するフェノール樹脂」ともいう。)と、ハロゲン化シアンと、塩基性化合物とを不活性有機溶媒中で反応させる方法、対応するフェノール樹脂と塩基性化合物とを水溶液中で反応させることにより形成した塩と、ハロゲン化シアンとを2相系界面反応さえる方法等が挙げられる。いずれの方法においても、対応するフェノール樹脂のフェノール性水酸基の水素原子をシアネート化させることによりアラルキル型シアン酸エステルを得ることができる。より詳細には、例えば、実施例に記載の方法等が用いられる。
【0056】
シアン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上45質量部以下である。含有量が上記範囲内にあることにより、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にあり、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は、好ましくは10質量部であり、より好ましくは15質量部であり、更に好ましくは20質量部であり、含有量の上限値は、好ましくは45質量部であり、より好ましくは40質量部であり、更に好ましくは35質量部である。
【0057】
シアン酸エステル化合物のシアネート当量は、好ましくは100~500g/eqであり、より好ましくは400g/eq以下であり、更に好ましくは300g/eq以下である。シアネート当量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性に一層優れるとともに、ガラス転移温度、及び加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にある。
【0058】
(フェノール化合物)
本実施形態の有機樹脂は、フェノール化合物を含有してもよい。本明細書において、「フェノール化合物」とは、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物をいい、「化合物」は、樹脂を包含する概念をいう。フェノール化合物としては、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有するフェノール類、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)、ジアリルビスフェノール類(例えば、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールE、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールS等)、ビスフェノール型フェノール樹脂(例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールE型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等)、フェノール類ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等)、グリシジルエステル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、フェノール化合物は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、アラルキル型フェノール樹脂及び/又はフェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂であることが好ましい。
【0059】
(アラルキル型フェノール樹脂)
アラルキル型フェノール樹脂としては、例えば、下記式(2a)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【0061】
式(2a)中、Ar1は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar2は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R2aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、mは、1~50の整数を表し、各環は、水酸基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基等)を有してもよい。
【0062】
式(2a)で表される化合物は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、式(2a)中、Ar1がナフタレン環であり、Ar2がベンゼン環である化合物(「ナフトールアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)、及び式(2a)中、Ar1がベンゼン環であり、Ar2がビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
【0063】
ナフトールアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(2b)で表される化合物であることが好ましい。
【0064】
【0065】
式(2b)中、R2aは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、mは、1~10の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。
【0066】
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(2c)で表される化合物であることが好ましい。
【0067】
【0068】
式(2c)中、R2bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基(好ましくは水素原子)を表し、m1は、1~20の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。
【0069】
アラルキル型フェノール樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成した製品を用いてもよい。アラルキル型フェノール樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製品の「KAYAHARD GPH-65」、「KAYAHARD GPH-78」、「KAYAHARD GPH-103」(いずれも式(2c)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)、新日鐵化学株式会社製品の「SN-495」(式(2b)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂)が挙げられる。
【0070】
(フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)
本明細書において、「フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂」とは、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、フェノール類とを酸性触媒(例えば、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等)の存在下で加熱し、縮合反応(変性縮合反応)させることにより得られる樹脂をいう。
【0071】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としては特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素化合物(例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、炭素数が10以上の単環芳香族炭化水素化合物、メチルナフタレン等の多環芳香族炭化水素化合物等)と、ホルムアルデヒドとを縮合反応させることにより得られる化合物が挙げられる。これらの中でも、キシレンとホルムアルデヒドとを縮合反応させることにより得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂であることが好ましい。
【0072】
フェノール類としては特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール類、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラーターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラーフェニルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0073】
フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、キシレンホルムアルデヒド樹脂と、上記のフェノール類とを上記の酸性触媒の存在下で加熱し、縮合反応させることにより得られるフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂であることが好ましい。
【0074】
フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の市販品としては、例えば、フドー株式会社製品の「HP-120」、「HP-100」、「HP-210」、「HP-70」、「NP-100」、「GP-212」、「P-100」、「GP-100」、「GP-200」、「HP-30」等が挙げられる。公知の方法としては、例えば、特開2015-174874号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0075】
フェノール化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上60質量部以下である。含有量が上記範囲内にあることにより、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にあり、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限は、好ましくは10質量部であり、より好ましくは20質量部であり、更に好ましくは30質量部であり、含有量の上限値は、好ましくは60質量部であり、より好ましくは55質量部であり、更に好ましくは50質量部であり、特に好ましくは40質量部である。
【0076】
フェノール化合物のフェノール当量(フェノール性水酸基の水酸基当量)は、好ましくは500g/eq以下(例えば、100~500g/eq)であり、より好ましくは400g/eq以下であり、更に好ましくは350g/eq以下であり、特に好ましくは300g/eq以下である。フェノール当量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性に一層優れるとともに、ガラス転移温度、及び加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にある。
【0077】
(エポキシ化合物)
本実施形態の有機樹脂は、エポキシ化合物を含有してもよい。本明細書において、「エポキシ化合物」とは、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物をいい、「化合物」は、樹脂を包含する概念をいう。エポキシ化合物としては、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、ジアリルビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールE型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールS型エポキシ樹脂等)、フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するアントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂、これらのハロゲン化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。本実施形態の有機樹脂は、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に一層好適な値となる観点から、エポキシ化合物の2種類以上を含有し、2種類以上のエポキシ化合物が、ナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂及び/又はアラルキル型エポキシ樹脂(特にビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)を含有することが好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂(特にビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)を含有することがより好ましい。
【0078】
(アラルキル型エポキシ樹脂)
アラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3a)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【0080】
式(3a)中、Ar3は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar4は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R3aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、kは1~50の整数を表し、各環は、グリシジルオキシ基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基)を有してもよい。
【0081】
式(3a)で表される化合物は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、式(3a)中、Ar3は、ナフタレン環であり、Ar4は、ベンゼン環である化合物(「ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)、及びAr3は、ベンゼン環であり、Ar4は、ビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)であることが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0082】
アラルキル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学株式会社製品の「エポトート(登録商標)ESN-155」、「エポトート(登録商標)ESN-355」、「エポトート(登録商標)ESN-375」、「エポトート(登録商標)ESN-475V」、「エポトート(登録商標)ESN-485」、「エポトート(登録商標)ESN-175」、日本化薬株式会社製品の「NC-7000」、「NC-7300」、「NC-7300L」、DIC株式会社製品の「HP-5000」、「HP-9900」、「HP-9540」、「HP-9500」等が挙げられる。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製品の「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3000FH」等が挙げられる。
【0083】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、下記式(3b)で表される化合物であることが好ましい。
【0084】
【0085】
式(3b)中、kaは、1以上の整数を表し、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。
【0086】
また、アラルキル型エポキシ樹脂は、下記式(3-a)で表される化合物であってもよい。
【0087】
【0088】
式(3-a)中、kyは、1~10の整数を表す。
【0089】
(ナフタレン型エポキシ樹脂)
ナフタレン型エポキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、上記のナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂を除くエポキシ樹脂であって、下記式(3-1)で表されるナフタレン骨格を有するナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、下記式(3c-1)で表されるエポキシ樹脂)が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられ、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0090】
【0091】
式(3-1)中、Ar31は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar41は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R31aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、pは、0~2の整数(好ましくは0又は1の整数)を表し、kzは1~50の整数を表し、各環は、グリシジルオキシ基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基又はフェニル基)を有してもよく、Ar31及びAr41の少なくとも一方はナフタレン環を表す。
【0092】
式(3-1)で表される化合物としては、式(3b)で表される化合物が挙げられる。
【0093】
【0094】
(式(3b)中、kzは、前記式(3-1)中のkzと同義である。)
【0095】
ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-9540」、「HP-9500」等が挙げられる。
【0096】
【0097】
上記式(3c-1)で表されるエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。市販品としては、DIC株式会社製品の「HP-4710」等が挙げられる。
【0098】
(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3c)で表される化合物が挙げられる。
【0099】
【0100】
式(3c)中、R3bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、ナフチル基又はグリシジルオキシ基を含有するナフチル基を表し、k1は、1~10の整数を表す。
【0101】
式(3c)で表される化合物において、分子中のエポキシ基を含有するグリシジルオキシ基の数は、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0102】
式(3c)中、k1は、0~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0~6の整数を表すことが好ましく、0~4の整数を表すことがより好ましく、2~3であることが更に好ましい。
【0103】
式(3c)中、R3bは、各々独立して、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、及びナフチル基を表すことが好ましい。
【0104】
なお、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、式(3c)で表される化合物を含む場合、k1が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、k1が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、k1が異なる複数種類の化合物を含む場合、式(3c)中、k1が0~4である化合物を含むことが好ましく、2~3である化合物を含むことがより好ましい。
【0105】
式(3c)で表される化合物としては、例えば、式(3c-2)で表される化合物が挙げられる。
【0106】
【0107】
上記式(3c-2)で表されるエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。市販品としては、DIC株式会社製品の「HP-4032」等が挙げられる。
【0108】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-4032」、「HP-6000」、「EXA-7300」、「EXA-7310」、「EXA-7311」、「EXA-7311L」、「EXA7311-G3」等が挙げられる。
【0109】
(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3d)で表される化合物が挙げられる。
【0110】
【0111】
式(3d)中、R3cは、各々独立し、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、k2は、0~10の整数を表す。
【0112】
式(3d)中、k2は、0~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0~6の整数を表すことが好ましく、0~2の整数(好ましくは0又は1)を表すことが好ましい。
【0113】
なお、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、式(3d)で表される化合物を含む場合、k2が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、k2が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、k2が異なる複数種類の化合物を含む場合、式(3d)中、k2が0~2である化合物を含むことが好ましい。
【0114】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製品の「EPICRON HP-7200L」、「EPICRON HP-7200」、「EPICRON HP-7200H」、「EPICRON HP-7000HH」等が挙げられる。
【0115】
(ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂)
ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂(「特定のエポキシ樹脂」ともいう。)は、分子中に、1つ以上のビスフェノールA型構造単位と、1つ以上の炭化水素系構造単位を有する。上記の特定のエポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3e)で表される化合物が挙げられる。
【0116】
【0117】
式(3e)中、R1x及びR2xは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3x~R6xは、各々独立して、水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を示し、Xは、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、又は炭素数2~15のアルキレン基を示し、k3は、自然数を表す。
【0118】
式(3e)中、k3は、自然数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~10の自然数であることが好ましく、1~6の自然数であることがより好ましく、1~2の自然数であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0119】
式(3e)中、Xは、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、エチレン基であることが好ましい。
【0120】
特定のエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。特定のエポキシ樹脂の市販品としては、DIC株式会社製品の「EPICLON EXA-4850-150」、「EPICLON EXA-4816」等が挙げられる。
【0121】
エポキシ化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上80質量部以下である。含有量が上記範囲内にあることにより、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にあり、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる傾向にある。また、含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性、耐熱性及び低吸水性が一層向上する傾向にある。同様の観点から、含有量の下限は、好ましくは10質量部であり、より好ましくは20質量部であり、更に好ましくは30質量部であり、特に好ましくは40質量部であり、含有量の上限は、好ましくは80質量部であり、より好ましくは75質量部であり、更に好ましくは70質量部である。
【0122】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100~500g/eq以下であり、より好ましくは400g/eq以下であり、更に好ましくは350g/eq以下である。エポキシ当量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性に一層優れるとともに、ガラス転移温度、及び加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にある。
【0123】
樹脂組成物が、フェノール化合物及び/又はシアン酸エステル化合物と、エポキシ化合物とを含有する場合、樹脂組成物中のエポキシ基量(含有質量部/エポキシ当量)に対する樹脂組成物中のフェノール基量(含有質量部/フェノール当量)及び/又はシアン酸エステル基量(含有質量部/シアン酸エステル当量)の割合は、0.5~1.5であることが好ましい。なお、樹脂組成物が、フェノール化合物及びシアン酸エステル化合物の両方を含有する場合には、上記の割合は、上記エポキシ基量に対する上記フェノール基量及び上記シアネート基量の合計量の割合となる。割合が上記範囲内にあることにより、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にある。同様の観点から、割合の下限値は、0.5であることが好ましく、0.6であることがより好ましく、0.7であることが更に好ましく、0.9であることが特に好ましく、割合の上限値は、1.5であることが好ましく、1.4であることがより好ましく、1.3であることが更に好ましく、1.2であることが特に好ましい。なお、フェノール化合物の種類が複数の場合には、上記のフェノール基量とは、各フェノール化合物のフェノール基量の合計値をいい、シアン酸エステル化合物の種類が複数の場合には、上記のシアネート基量とは、各シアン酸エステル化合物のシアネート基量の合計値をいい、エポキシ化合物の種類が複数の場合には、上記のエポキシ基量とは、各エポキシ化合物のエポキシ基量の合計値をいう。
【0124】
(マレイミド化合物)
本実施形態の有機樹脂は、マレイミド化合物を含有してもよい。本明細書において、「マレイミド化合物」とは、1分子中に1つ以上のマレイミド基を有する化合物をいい、「化合物」は、樹脂を包含する概念をいう。マレイミド化合物としては、1分子中に1つ以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中にマレイミド基を1つ有するモノマレイミド化合物(例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等)、1分子中にマレイミド基を2つ以上有するポリマレイミド化合物(例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン)、これらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、マレイミド化合物は、得られる硬化物の耐熱性及びガラス転移温度が一層向上する観点から、ポリマレイミド化合物であることが好ましい。
【0125】
ポリマレイミド化合物としては、例えば、ベンゼン環にマレイミド基が複数結合した化合物(例えば、m-フェニレンビスマレイミド等のフェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド等)、直鎖状又は分岐状アルキル鎖の両末端にマレイミド基が結合した化合物(例えば、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等)、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、下記式(4a)で表される化合物が挙げられる。
【0126】
【0127】
式中、R4a及びR5aは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、好ましくは水素原子を表す。R4bは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、好ましくは水素原子を表す。sは、1以上の整数を表し、好ましくは10以下の整数であり、より好ましくは7以下の整数である。
【0128】
式(4a)で表される化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。マレイミド化合物が、式(4a)で表されるマレイミド化合物を含むことにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性、ガラス転移温度(Tg)がより向上する傾向にある。マレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0129】
マレイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。マレイミド化合物の市販品としては、ケイ・アイ化成株式会社製品の、「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業株式会社製品の「BMI-2300」、「BMI-1000P」、「BMI-3000」、「BMI-4000」、「BMI-5100」、「BMI-7000」等が挙げられる。
【0130】
マレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上45質量部以下である。含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の低吸水性に一層優れたり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりできる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は、好ましくは1質量部であり、より好ましくは4質量部であり、更に好ましくは10質量部であり、含有量の上限値は、好ましくは45質量部であり、より好ましくは40質量部であり、更に好ましくは30質量部であり、特に好ましくは20質量部である。
【0131】
本実施形態の有機樹脂は、所定の温度において硬化物の弾性率を低下させるために、エラストマー(例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、コアシェルゴム等)を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0132】
エラストマーの含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、例えば、30質量部未満であり、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは15質量部以下であり、特に10質量部以下(好ましくは5質量部以下、より好ましくは0質量部)である。含有量が上記した値以下(未満)であることにより、得られる硬化物の耐熱性及び吸水性を一層向上できる傾向にある。なお、ここでいう「樹脂固形分」とは、溶剤、充填材及びエラストマーを除いた成分をいい、樹脂固形分100質量部とは、樹脂組成物における溶剤、充填材及びエラストマーを除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0133】
(その他の樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、その他の樹脂をさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、アルケニル置換ナジイミド化合物、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0134】
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
本明細書において、「アルケニル置換ナジイミド化合物」とは、分子中に1個以上のアルケニル置換ナジイミド基を有する化合物をいう。アルケニル置換ナジイミド化合物は、例えば、下記式(5a)で表される化合物が挙げられる。
【0135】
【0136】
式(5a)中、R6aは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R6bは、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(5b)又は(5c)で表される基を示す。
【0137】
【0138】
式(5b)中、R6cは、メチレン基、イソプロピリデン基、又は、CO、O、S、又はSO2で表される置換基を示す。
【0139】
【0140】
式(5c)中、R6dは、各々独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を示す。
【0141】
また、アルケニル置換ナジイミド化合物は、下記式(12)及び/又は(13)で表される化合物も挙げられる。
【0142】
【0143】
【0144】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、丸善石油化学株式会社製品の「BANI-M」「BANI-X」等が挙げられる。
【0145】
(オキセタン樹脂)
オキセタン樹脂としては、例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3’-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、東亜合成株式会社製品の「OXT-101」、「OXT-121」等が挙げられる。
【0146】
(ベンゾオキサジン化合物)
本明細書にいう「ベンゾオキサジン化合物」とは、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物をいう。ベンゾオキサジン化合物としては、小西化学株式会社製品の「ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ」「ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ」等が挙げられる。
【0147】
(重合可能な不飽和基を有する化合物)
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。
【0148】
[充填材]
本実施形態の樹脂組成物は、充填材を更に含有してもよい。充填材としては、無機充填材及び/又は有機充填材が挙げられる。
【0149】
無機充填材としては、特に限定されず、例えば、シリカ類、ケイ素化合物(例えば、ホワイトカーボン等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等)、金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等)、金属硫酸化物(例えば、硫酸バリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(例えば、水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等)、モリブデン化合物(例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、亜鉛化合物(例えば、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等)、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、充填材は、得られる硬化物の剛性に一層優れたり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりする観点から、シリカ、金属水酸化物、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、シリカであることが更に好ましい。
【0150】
シリカ類としては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の剛性に一層優れたり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりする観点から、溶融シリカであることが好ましい。
【0151】
有機充填材としては、特に限定されず、例えば、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、アクリル型パウダー等のゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーン型パウダー等が挙げられる。これらの有機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、得られる硬化物の剛性に一層優れた、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりする観点から、シリコーン型パウダーであることが好ましい。
【0152】
シリコーン型パウダーとしては、例えば、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の剛性に一層優れた、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりする観点から、シリコーン複合パウダーであることが好ましい。
【0153】
本実施形態の充填材は、無機充填材と有機充填材とを含むことが好ましい。これにより、得られる硬化物の剛性に一層優れたり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りを一層低減したりできる傾向にある。
【0154】
無機充填材の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、90質量部以上700質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りが一層低減したりできる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は90質量部であることが好ましく、120質量部であることがより好ましく、140質量部であってもよく、含有量の上限値は700質量部であることが好ましく、600質量部であることがより好ましく、500質量部であることが更に好ましく、250質量部であることが特に好ましい。
【0155】
樹脂組成物が有機充填材を含む場合、有機充填材の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りが一層低減したりできる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は1質量部であることが好ましく、5質量部であることがより好ましく、10質量部であってもよく、含有量の上限値は50質量部であることが好ましく、40質量部であることがより好ましく、30質量部(未満)であることが更に好ましく、25質量部以下であることが特に好ましい。
【0156】
充填材の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、100質量部以上700質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の反りが一層低減したりできる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は100質量部であることが好ましく、130質量部であることがより好ましく、150質量部であってもよく、含有量の上限値は700質量部であることが好ましく、600質量部であることがより好ましく、500質量部であることが更に好ましく、250質量部であることが特に好ましい。
【0157】
[シランカップリング剤]
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤を更に含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することにより、充填材の分散性が一層向上したり、本実施形態の樹脂組成物の成分と、後述する基材との接着強度が一層向上したりできる傾向にある。
【0158】
シランカップリング剤としては特に限定されず、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤が挙げられ、アミノシラン系化合物(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系化合物(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン系化合物(例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン系化合物(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系化合物等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シランカップリング剤は、エポキシシラン系化合物であることが好ましい。エポキシシラン系化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製品の「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-403」等が挙げられる。
【0159】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であってよい。
【0160】
[湿潤分散剤]
本実施形態の樹脂組成物は、湿潤分散剤を更に含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、湿潤分散剤を含有することにより、充填材の分散性が一層向上したり、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りが一層低減したりできる傾向にある。
【0161】
湿潤分散剤としては、充填材を分散させるために用いられる公知の分散剤(分散安定剤)であればよく、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPER BYK-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0162】
湿潤分散剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、1.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、充填材の分散性が一層向上したり、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りが一層低減したりできる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は、1.0質量部であることが好ましく、1.5質量部であることがより好ましく、2.0質量部であることが更に好ましい。
【0163】
[硬化促進剤]
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール類(例えば、トリフェニルイミダゾール等)、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレート等)、アゾ化合物(例えば、アゾビスニトリル等)、第3級アミン類(例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジメチルピリジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジン等)、フェノール類(例えば、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール等)、有機金属塩(例えば、ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄等)、これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノール等の水酸基含有化合物に溶解してなるもの、無機金属塩(例えば、塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)有機錫化合物(例えば、ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイド等)が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、硬化促進剤は、硬化反応を促進し、得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)が一層向上する観点から、トリフェニルイミダゾールであることが好ましい。
【0164】
[溶剤]
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を更に含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を含むことにより、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性(取り扱い性)が一層向上したり、基材への含浸性が一層向上したりする傾向にある。
【0165】
溶剤としては、樹脂組成物中の有機樹脂の一部又は全部を溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアルデヒド等)、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0166】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、各成分を一括的に又は逐次的に溶剤に配合し、撹拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解又は分散せるために、撹拌、混合、混練処理等の公知の処理が用いられる。
【0167】
[用途]
本実施形態の樹脂組成物は、上記の通り、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能であり、優れた剛性及び耐熱性を発現できる。このため、本実施形態の樹脂組成物は、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板に用いられる。特に多層コアレス基板においては反りの問題は顕著であることから、本実施形態の樹脂組成物は、多層コアレス基板に好適に用いられる。なお、本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、絶縁層、積層板としても好適に用いられる。
【0168】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、基材と、基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物とを含む。プリプレグは、前述の通り、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよく、具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥させることにより半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。
【0169】
本実施形態のプリプレグは、半硬化状態のプリプレグを200~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の形態も包含する。
【0170】
前記プリプレグにおける樹脂組成物の含有量は、プリプレグの総量に対して、固形分換算で、好ましくは30~90体積%であり、より好ましくは35~85体積%であり、更に好ましくは40~80体積%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。なお、ここでいう固形分は、樹脂組成物において溶剤を取り除いた成分をいい、例えば、充填材は、固形分に含まれる。
【0171】
(基材)
基材としては、特に限定されず、例えば、各種プリント配線板の材料に用いられている公知の基材が挙げられる。基材の具体例としては、ガラス基材、ガラス以外の無機基材(例えば、クォーツ等のガラス以外の無機繊維で構成された無機基材)、有機基材(例えば、全芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド等の有機繊維で構成された有機基材)等が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、剛性を一層向上させたり、加熱寸法安定性に一層優れたりする観点から、ガラス基材が好ましい。
【0172】
(ガラス基材)
ガラス基材を構成する繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、HMEガラス等が挙げられる。これらの中でも、ガラス基材を構成する繊維は、強度と低吸水性に一層優れる観点から、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上の繊維であることが好ましい。
【0173】
基材の形態としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形態が挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤等で表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.1mm程度のものが好適に用いられる。
【0174】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有する。本実施形態の積層板は、プリプレグを1つ又は複数含み、複数含む場合には、プリプレグが積層された形態を有する。本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、反りが十分に低減されており、優れた剛性及び耐熱性を有する。
【0175】
[金属箔張積層板]
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグと、プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔とを有する。本実施形態の金属箔張積層板は、プリプレグを1つ又は複数含む。プリプレグの数が1つである場合には、金属箔張積層板は、プリプレグの片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。プリプレグの数が複数である場合には、金属箔張積層板は、積層したプリプレグ(プリプレグの積層体)の片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、反りが十分に低減されており、優れた剛性及び耐熱性を有する。
【0176】
金属箔(導体層)としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられ、銅の金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、例えば、1~70μmであり、好ましくは1.5~35μmである。
【0177】
積層板及び金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、積層板又は金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を用いることができる。また、積層板又は金属箔張積層板の成形(積
層成形)において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。特に多段プレス機を用いた場合は、プリプレグの硬化を十分に促進させる観点から、温度200℃~250℃、圧力10~40kgf/cm2、加熱時間80分~130分が好ましく、温度215℃~235℃、圧力25~35kgf/cm2、加熱時間90分~120分がより好ましい。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0178】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグで形成された絶縁層と、絶縁層の表面に形成された導体層と、を有する。本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層とすることにより形成できる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、反りが十分に低減されており、優れた剛性及び耐熱性を有する。
【0179】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本実施形態の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(内層回路)を有する内層基板を作成する。次に、内層基板の導体層(内装回路)表面に、所定数のプリプレグと、外層回路用の金属箔とをこの順序で積層し、加熱加圧して一体成形(積層成形)することにより、積層体を得る。尚、積層成形の方法及びその成形条件は、上記の積層板及び金属箔張積層板における積層成形の方法及びその成形条件と同様である。次に、積層体にスルーホール、バイアホール用の穴あけ加工を施し、これにより形成された穴の壁面に導体層(内装回路)と、外層回路用の金属箔とを導通させるためのめっき金属皮膜を形成する。次に、外層回路用の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(外層回路)を有する外層基板を作成する。このようにしてプリント配線板が製造される。
【0180】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0181】
[多層プリント配線板(多層コアレス基板)]
本実施形態の多層プリント配線板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、本実施形態のプリプレグの硬化物を有する。本実施形態の多層プリント配線板の具体例を
図9に示す。
図9に示す多層プリント配線板は、第1の絶縁層(1)と、第1の絶縁層(1)の片面方向(図示下面方向)に積層された2つの第2の絶縁層(2)を含み、第1の絶縁層(1)及び2つの第2の絶縁層(2)は、それぞれ1つの本実施形態のプリプレグで形成されている。また、
図9に示す多層プリント配線板は、複数の絶縁層(1,2)の各々の間に配置された第1の導体層(3)、及び、それらの複数の絶縁層(1,2)の最外層に配置された第2の導体層(3)からなる複数の導体層を有している。
【0182】
本実施形態の多層プリント配線板は、例えば、第1の絶縁層の片面方向にのみ、第2の絶縁層を積層させる、いわゆるコアレスタイプの多層プリント配線板(多層コアレス基板)である。多層コアレス基板では、通常、プリプレグで形成された絶縁層の片面方向にのみ、別のプリプレグで形成された別の絶縁層を積層させるため、基板の反りの問題が顕著である。これに対し、本実施形態の多層プリント配線板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、反りが十分に低減されており、優れた剛性及び耐熱性を有する。このため、本実施形態の樹脂組成物は、多層コアレス基板において、反りを十分に低減(低反りを達成)できることから、半導体パッケージ用多層コアレス基板として、有効に用いることができる。
【0183】
本実施形態の多層プリント配線板は、例えば、本願実施例に記載の方法を参照できる。
【0184】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0185】
〔合成例1〕
α-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(SN495VCN)は以下の手順で合成して用いた。
α-ナフトールアラルキル樹脂(SN495V、OH基当量:236g/eq.、新日鐵化学(株)製:ナフトールアラルキルの繰り返し単位数nは1~5のものが含まれる。)0.47モル(OH基換算)を、クロロホルム500mlに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.7モルを添加した(溶液1)。温度を-10℃に保ちながら、0.93モルの塩化シアンを溶解させたクロロホルム溶液300gに、前記溶液1を1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後さらに、0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸500mlで洗浄した後、水500mlでの洗浄を4回繰り返した。これを硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の前記式(1a)で表されるα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(式中のR1dはすべて水素原子である。)を得た。得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、2264cm-1付近にシアン酸エステル基の吸収が確認された。
【0186】
[実施例1]
ビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH-103、日本化薬(株)製、水酸基当量:231g/eq.)36質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)39質量部、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂(HP-9900、エポキシ当量:274g/eq.、DIC(株)製)7質量部、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドジフェニル)メタン(BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)18質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、アドマテックス(株)製)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600、日信化学(株)製)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111、ビックケミージャパン(株)製)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学(株)製)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合(混合)し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0187】
[実施例2]
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)の配合量を39質量部に代えて19質量部とし、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(HP-6000,エポキシ当量:250g/eq.、DIC(株)製)20質量部を配合した以外は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0188】
[実施例3]
スラリーシリカ2(SC-5050MOB)及び湿潤分散剤2(DISPERBYK‐111)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0189】
[実施例4]
スラリーシリカ2(SC-5050MOB)の配合量を100質量に代えて50質量部とし、湿潤分散剤2(DISPERBYK‐111)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0190】
[実施例5]
ビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH-103)20質量部、フェノール変性キシレン化合物(ザイスターGP-100、フドー(株)、フェノール当量:194g/eq.)15質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)34質量部、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂(HP-9900)5質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP-7200L、エポキシ当量:249g/eq.、DIC(株)製)7質量部、ポリフェニルメタンマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)19質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。プリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0191】
[実施例6]
ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN-495V、新日鐵化学(株)製、水酸基当量:236g/eq.)41質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)45質量部、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂(HP-9900)9質量部、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミジフェニル)メタン(BMI-70)5質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。プリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0192】
[実施例7]
合成例1に記した方法で合成したα‐ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート当量:261g/eq)34質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)15質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(HP-6000)5質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP-7200L)26質量部、ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂(EPICLON EXA-4816、DIC(株)製、エポキシ当量:403g/eq.)15質量部、ビス(3-エチル‐5-メチル‐マレイミドフェニル)メタン(BMI-70)5質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール製)0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグの樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0193】
[実施例8]
ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(CA210、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:139g/eq.)21質量部、ビス(3-エチル‐5-メチル‐マレイミドフェニル)メタン(BMI-70)5質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)15質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(HP-6000)5質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP-7200L)54質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグの樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0194】
[比較例1]
合成例1に記した方法で合成したα‐ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート当量:261g/eq)40質量部、ポリフェニルメタンマレイミド化合物(BMI-2300)20質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(HP-6000)40質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグの樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0195】
[比較例2]
ビフェニルアラルキル型フェノール化合物(KAYAHARD GPH-103)20質量部、フェノール変性キシレン化合物(ザイスターGP-100)15質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)30質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP-7200L)20質量部、ビス(3-エチル‐5-メチル‐マレイミドフェニル)メタン(BMI-70)15質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0196】
[比較例3]
合成例1に記した方法で合成したα‐ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物5質量部、ポリフェニルメタンマレイミド化合物(BMI-2300)50質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH)10質量部、アルケニル置換ナジイミド化合物(BANI-M、丸善石油化学(株)製品)35質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm)100質量部、シリコーン複合パウダー(KMP-600)20質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物の含有量(固形分量)は、73体積%であった。
【0197】
[比較例4]
合成例1に記した方法で合成したα‐ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物30質量部、ポリフェニルメタンマレイミド化合物(BMI-2300)35質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(HP-6000)5質量部、アクリル酸エステルゴム化合物(テイサンレジンSG-P3、ナガセケムテックス(株)製)30質量部、スラリーシリカ1(SC2050-MB、平均粒径0.7μm)100質量部、スラリーシリカ2(SC5050-MOB)100質量部、湿潤分散剤1(DISPERBYK-161)1質量部、湿潤分散剤2(DISPERBYK-111)2質量部、シランカップリング剤(KBM-403)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス(ユニチカ(株)製IPC#1030)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、プリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0198】
[比較例5]
スラリーシリカ2(SC-5050MOB)及び湿潤分散剤2(DISPERBYK‐111)を使用せず、スラリーシリカ1(SC-2050MB)の配合量を100質量部に代えて75質量部とした以外は、比較例4と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0199】
〔物性測定評価〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグを用い、以下の各項目に示す手順により物性測定評価用のサンプルを作製し、機械特性(40℃、170℃、230℃、260℃における貯蔵弾性率)、ガラス転移温度(Tg)、反り量(2種類)、吸水率、剛性を測定評価した。実施例の結果をまとめて表1に示し、比較例の結果をまとめて表2に示す。
【0200】
〔機械特性〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、45μm程度であった。得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法により、機械特性(40℃、170℃、230℃、260℃における貯蔵弾性率E’)を測定した(n=3の平均値)。
【0201】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、45μm程度であった。得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ12.7mm×2.5mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法により、ガラス転移温度(Tg)を測定した(n=3の平均値)。
【0202】
〔反り量:バイメタル法〕
まず、実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化)を行い、銅箔張積層板を得た。次に、得られた銅箔張積層板から上記銅箔をエッチングにより、除去した。次いで、銅箔を除去した積層板の片面に、実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ1枚を更に配置し、その上下両面に、上記銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化)を行い、再び銅箔張積層板を得た。さらに、得られた銅箔張積層板から上記銅箔をエッチングにより、除去し、積層板を得た。そして、得られた積層板から20mm×200mmの短冊状板を切りだし、2枚目に積層したプリプレグの面を上にして、長尺方向両端の反り量の最大値を金尺にて測定し、その平均値をバイメタル法による「反り量」とした。
【0203】
〔反り量:多層コアレス基板〕
まず、
図1に示す如く、支持体(a)となるプリプレグの両面に、キャリア付極薄銅箔(b1)(MT18Ex、三井金属鉱業(株)製、厚み5μm)のキャリア銅箔面をプリプレグ側に向けて配置し、その上に実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ(c1)を更に配置し、その上に銅箔(d)(3EC-VLP、厚み12μm)を更に配置し、圧力30kgf/cm
2、温度220℃で120分間の積層成形を行って
図2に示す銅箔張積層板を得た。
【0204】
次いで、得られた
図2に示す銅箔張積層板の上記銅箔(d)を、例えば
図3に示すように所定の配線パターンにエッチングして導体層(d’)を形成した。次に、導体層(d’)が形成された
図3に示す積層板の上に、
図4に示すとおり、実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ(c2)を配置し、その上にさらに、キャリア付極薄銅箔(b2)(MT18Ex、厚み5μm)を配置し、圧力30kgf/cm
2、温度230℃で120分間の積層成形を行って
図5に示す銅箔張積層板を得た。
【0205】
次いで、
図5に示す銅箔張積層板において、支持体(a)(硬化した支持体用プリプレグ)に配置したキャリア付極薄銅箔(b1)のキャリア銅箔と極薄銅箔を剥離することにより、
図6に示すとおり、支持体(a)から2枚の積層板を剥離し、さらに、それらの各積層板における上部のキャリア付極薄銅箔(b2)からキャリア銅箔を剥離した。次に、得られた各積層板の上下の極薄銅箔上にレーザー加工機による加工を行い、
図7に示すとおり、化学銅メッキにて所定のビア(v)を形成した。それから、例えば
図8に示すように、所定の配線パターンにエッチングして導体層を形成し、多層コアレス基板のパネル(サイズ:500mm×400mm)を得た。そして、得られたパネルの4つ角及び4辺中央部分の合計8箇所における反り量を金尺にて測定し、その平均値を多層コアレス基板のパネルの「反り量」とした。
【0206】
〔耐熱性〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグを9枚重ね上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。得られた銅箔張積層板をサイズ50mm×50mmに切断し、測定用サンプルを得た。得られたサンプルの前処理として、120℃の恒温槽にて1時間放置した後に、300℃の半田槽に浮かべ、30分間放置することで、評価を行った。30分経過後にサンプルの銅箔、サンプル間、及びサンプルのプリプレグ層間のデラミネーションの発生の有無を確認した。デラミネーションが発生しなかった場合を「A」とし、発生した場合を「B」とした。
【0207】
〔吸水率〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグを9枚重ね上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。得られた銅張積層板から、銅箔をエッチングにより除去したのちに、サイズ50×50mmに切断し、測定用サンプルを得た。得られたサンプルの前処理として、120℃の恒温槽にて1時間放置した後に、秤量により重量A(g)を得た。秤量したサンプルを85℃、85%RHの恒温恒湿層に1週間放置した後に、秤量により重量B(g)を得た。下記式より吸水率を評価した。
吸水率(%)=(B-A)/A×100 式
【0208】
〔剛性〕
実施例1~8及び比較例1~5で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、所定の絶縁層厚さの銅箔張積層板を得た。得られた銅張積層板から、銅箔をエッチングにより除去したのちに、サイズ20×200mmに切断し、測定用サンプルを得た。測定用サンプルを測定台上から50mm突き出すように設置し、片持ちでの撓み量の最大値を撓み量とした。
【0209】
【0210】
【0211】
本出願は、2017年12月27日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2017-250350)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。