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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20230427BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G01N5/02 Z
G01N27/12 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019156913
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032844
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩行
(72)【発明者】
【氏名】木村 一平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071906(JP,A)
【文献】特開2000-131122(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121155(WO,A1)
【文献】特開2001-013055(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101603956(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
G01N 27/12
G01N 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、
前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該合計占有率の極大を与える対数領域面積率Aが、-4.1以上である、センサー:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
【請求項2】
前記対数領域面積率Aが、-3.5以上である、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、
前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該対数領域面積率が小さい方からの当該合計占有率の累積が60%になる対数領域面積率Bが、-4.1以上である、センサー:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
【請求項4】
前記対数領域面積率Bが、-3.5以上である、請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
前記受容体が、有機無機ハイブリッドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
前記有機無機ハイブリッドが、RSiO3/2で表され、ここで、前記Rは少なくとも1種類の有機官能基を含む、請求項5に記載のセンサー。
【請求項7】
前記有機官能基が、少なくとも1つの芳香環を含む、請求項6に記載のセンサー。
【請求項8】
前記受容体が、フィラーをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項9】
前記受容体の最大厚みが、30μm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項10】
前記センサーが、表面応力センサーである、請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
センサーには対象となる検知対象物質を高感度かつ高選択的な検出を可能とする検知部(受容体)を有するものがある。受容体として自己組織化膜、単分子膜、DNA/RNA、タンパク質、抗原/抗体、ポリマーなど多岐に渡る物質が用いられている。このときに受容体には各種検知対象物質を好感度でセンシングすることが求められている。
【0003】
特許文献1では、多孔質材料または粒状材料をセンサー本体上に被覆し、検体分子を前記多孔質材料または粒状材料が吸着することによる物理パラメータの変化により前記検体分子を検出するセンサーが記載されている。
特許文献2では、ガス感応部を有し、前記ガス感応部の電気抵抗変化に基づき、被検知ガスを検知するガス検知素子であって、前記ガス感応部が酸化セリウムであり、前記被検知ガスは含酸素有機化合物及び含硫黄化合物のうちの少なくともいずれかのガスであるガス検知素子が記載されている。
特許文献3には、水に不溶で、フレキシブルな高分子材料に湿度への応答性を有する可溶性ポリマーが混合された感応材からなる感応部を有し、前記感応部の導電性の変化を測定することにより湿度又は結露を検出することを特徴とする感湿センサーが記載されている。
特許文献4には、圧電素子上に感湿膜を、薄膜電極を介して形成してなる湿度センサーであって、感湿膜が多孔質ガラス薄膜であることを特徴とする湿度センサーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/121155号
【文献】特開2010-002335号公報
【文献】特開平11-101766号公報
【文献】特開昭62-291541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、乾燥雰囲気下以外では電気シグナルが大きく減衰し、使用できる環境が大きく制限されている。
特許文献2に記載の技術では、検知対象物質が上記記載のガスのみに限られている。
特許文献3、4に記載の技術では、検知対象物質は湿度(水)のみに限定されている。
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、検知対象物質を高感度で測定可能であり、特に、高湿度下においても、エタノール、アルデヒドなどの親水性の高いガスを高感度で測定可能であり、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化が少ないセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本願発明者らは鋭意検討し、実験を重ねた結果、予想外に前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、
前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該合計占有率の極大を与える対数領域面積率Aが、-4.1以上である、センサー:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
[2]
前記対数領域面積率Aが、-3.5以上である、[1]に記載のセンサー。
[3]
検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、
前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該対数領域面積率が小さい方からの当該合計占有率の累積が60%になる対数領域面積率Bが、-4.1以上である、センサー:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
[4]
前記対数領域面積率Bが、-3.5以上である、[3]に記載のセンサー。
[5]
前記受容体が、有機無機ハイブリッドを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のセンサー。
[6]
前記有機無機ハイブリッドが、RSiO3/2で表され、ここで、前記Rは少なくとも1種類の有機官能基を含む、[5]に記載のセンサー。
[7]
前記有機官能基が、少なくとも1つの芳香環を含む、[7]に記載のセンサー。
[8]
前記受容体が、フィラーをさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載のセンサー。
[9]
前記受容体の最大厚みが、30μm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のセンサー。
[10]
前記センサーが、表面応力センサーである、[1]~[9]のいずれかに記載のセンサー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検知対象物質を高感度で測定可能であり、特に、高湿度下においても、エタノール、アルデヒド等の親水性の高いガスを高感度で測定可能であり、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化が少ないセンサーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】受容体を塗布したセンサーの光学顕微鏡写真の例を示す。
図2】実施例1の受容体表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図3】実施例1の受容体の任意の3点(上段~下段)の断面画像(左列)、断面画像を2値化した画像(中央列)、及び四分木空間分割した画像(右列)である。
図4】実施例1の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率をプロットしたグラフである。
図5】実施例1の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率累積をプロットしたグラフである。
図6】実施例2の受容体表面のSEM画像である。
図7】実施例2の受容体の任意の5点(上段~下段)の断面画像(左列)、断面画像を2値化した画像(中央列)、及び四分木空間分割した画像(右列)である。
図8】実施例2の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率をプロットしたグラフである。
図9】実施例2の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率累積をプロットしたグラフである。
図10】実施例3の受容体表面のSEM画像である。
図11】実施例3の受容体の任意の3点(上段~下段)の断面画像(左列)、断面画像を2値化した画像(中央列)、及び四分木空間分割した画像(右列)である。
図12】実施例3の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率をプロットしたグラフである。
図13】実施例3の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率累積をプロットしたグラフである。
図14】比較例1の受容体表面のSEM画像である。
図15】比較例1の受容体表面の任意の3点(上段~下段)の断面画像(左列)、断面画像を2値化した画像(中央列)、及び四分木空間分割した画像(右列)である。
図16】比較例1の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率をプロットしたグラフである。
図17】比較例1の受容体の対数領域面積率に対して合計占有率累積をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
本実施形態の第1の態様に係るセンサー(以下、「第1のセンサー」ともいう。)は、検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該合計占有率の極大を与える対数領域面積率Aが、-4.1以上である:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
第1のセンサーは、上記のように構成されているため、エタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを湿度のある状態下であっても高感度に測定することができ、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化がなく継続して測定することができる。
また、本実施形態の第2の態様に係るセンサー(以下、「第2のセンサー」ともいう。)は、検知対象物質が付着する受容体を有するセンサーであって、前記受容体を以下の測定に供して算出される、対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該対数領域面積率が小さい方からの当該合計占有率の累積が60%になる対数領域面積率Bが、-4.1以上である:
[測定]
前記受容体の任意の位置における表面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像において、当該表面又は断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。前記4分木空間分割により得られる、前記緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出する。
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とする。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とする。
第2のセンサーも、エタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを湿度のある状態下であっても高感度に測定することができ、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化がなく継続して測定することができる。
以下、特に断りがない限り、「本実施形態のセンサー」と称するときは、第1のセンサー及び第2のセンサーを包含するものとし、「本実施形態における受容体」と称するときは、第1のセンサーにおける受容体及び第2のセンサーにおける受容体を包含するものとする。
【0013】
本実施形態のセンサーは、特に限定されないが、例えば、物理パラメータを検出するタイプのセンサー本体を含む。物理パラメータとしては、特に限定されないが、例えば、表面応力、応力、力、表面張力、圧力、質量、弾性、ヤング率、ポアソン比、共振周波数、周波数、体積、厚み、粘度、密度、磁力、磁気量、磁場、磁束、磁束密度、電気抵抗、電気量、誘電率、電力、電界、電荷、電流、電圧、電位、移動度、静電エネルギー、キャパシタンス、インダクタンス、リアクタンス、サセプタンス、アドミッタンス、インピーダンス、コンダクタンス、プラズモン、屈折率、光度および温度やその他の様々な物理パラメータが挙げられる。本実施形態のセンサーは、例えば、センサー本体上に直接、受容体を設けたセンサーである。すなわち、本実施形態のセンサーは、当該受容体が検体分子を吸着、内部拡散することで、そこに引き起こされる物理パラメータの変化を、センサー本体により検出するものとすることができる。上記のとおり、本実施形態において使用可能なセンサー本体は、その表面上に配された受容体が検知対象物質を吸着、内部拡散することによって当該受容体に引き起こされる変化を検知するものであれば、特に限定されない。
【0014】
また、別の種類のセンサー本体として、例えば、QCM装置を適用しうる。QCM装置は、交流電場を印加した水晶振動子の電極表面に物質が吸着すると、その吸着質の質量や粘弾性等に応じて共振周波数が減少する性質を利用して微量な質量変化を計測する質量センサーであり、in-situでの測定が可能である。本実施形態のセンサーをQCM装置として適用する場合、例えば、電極の表面に本実施形態における受容体を形成することにより、当該受容体が検知対象物質を吸着することで起こる質量変化をセンサー本体で検出してシグナルを出力する。また、QCMの電極としては、様々な導電性材料を適用しうるが、本実施形態における受容体に導電性を持たせる場合、当該受容体をQCMの電極として用いることもできる。
【0015】
なお、本明細書において、吸着という用語は、ある物体の界面において、(吸着質となる)他の物質の濃度が周囲よりも増加する現象を含む意味で用いており、物理吸着だけではなく、化学結合や生化学的な作用による化学吸着も含むものである。
【0016】
[受容体]
本実施形態のセンサーにおける受容体は、例えば、匂い分子やガス分子等の吸着質が吸着、内部拡散することによりシグナルの変化を誘起することができる。特に膜形状の受容体については「感応膜」とも称される。
本実施形態において、受容体の構成成分は特に限定されないが、高湿度下においても、エタノール、アルデヒド等の親水性の高いガスを高感度でセンシングする観点、更にリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の性能を維持する観点から、後述する有機無機ハイブリッド及び/又はフィラーが含まれていることが好ましい。
【0017】
第1のセンサーにおける受容体は、前述の測定に供したとき、対数領域面積率Aが、-4.1以上となる。対数領域面積率Aが、-4.1以上であることにより、第1のセンサーは、エタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを湿度のある状態下であっても高感度に測定することができ、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化がなく継続して測定することができる。本実施形態において、膜安定性の面から、対数領域面積率Aは、好ましくは-3.5以上であり、感度の点から-3.3以上であることがより好ましく、耐湿度性の点から-3.2以上であることがさらに好ましい。第1のセンサーは、受容体の任意の位置における表面又は断面の少なくとも1つにおいて、対数領域面積率Aが上記数値範囲を満たせばよいが、上述した効果をより高める観点から、受容体の任意の3点以上における表面又は断面(3視野以上)中の対数領域面積率Aの最大値が上記数値範囲を満たすことが好ましく、5視野以上の中の対数領域面積率Aの最大値が上記数値範囲を満たすことがより好ましい。対数領域面積率Aは、例えば、後述するフィラーとRSiO3/2で表される構造の比や有機官能基の量を調節すること等により上記範囲に調整することができる。
【0018】
受容体断面を観察する場合を例とすると、対数領域面積率と合計占有率は以下のとおりに求めた値である。まず、受容体を厚み方向又は幅方向に切断し、得られた断面を、例えば倍率10万倍でSEMにより観察する。得られたSEM画像において、当該断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を行う。4分木空間分割の前処理として、SEM画像の小領域ごとに閾値を定め、適応的閾値処理によって明部と暗部への二値化処理を行う。続いて二値化画像に対して3×3の空間フィルタリング処理を行い、暗部(空隙部分)を明確にする。その後、4分木空間分割を実施し、分割の各領域に含まれる黒ピクセル(空隙ピクセル)の数が1つになるまで分割を実施し、空隙ピクセルを含まない緻密部分の数と面積を求める。このようにして、緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、対数領域面積率と合計占有率とを算出する。対数領域面積率と合計占有率との算出方法は前述したとおりであり、より具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0019】
また、第2のセンサーにおける受容体は、前述の測定に供したとき、対数領域面積率Bが、-4.1以上となる。対数領域面積率Bが、-4.1以上であることにより、第2のセンサーは、エタノールやアルデヒド等の高親水性のガスを湿度のある状態下であっても高感度に測定することができ、更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化がなく継続して測定することができる。また、センサー本体との接着性も良好となる。本実施形態において、対数領域面積率Bは、感度の面から-3.5以上であることが好ましく、耐湿度性の観点から-3.3以上であることがより好ましい。第2のセンサーは、受容体の任意の位置における表面又は断面の少なくとも1つにおいて、対数領域面積率Bが上記数値範囲を満たせばよいが、上述した効果をより高める観点から、受容体の任意の3点以上における表面又は断面(3視野以上)中の対数領域面積率Bの最大値が上記数値範囲を満たすことが好ましく、5視野以上の中の対数領域面積率Bの最大値が上記数値範囲を満たすことがより好ましい。対数領域面積率Bは、例えば、後述するフィラーとRSiO3/2で表される構造の比や有機官能基の量を調節すること等により上記範囲に調整することができる。
【0020】
合計占有率の極大値大きいこと、合計占有率累積が高対数領域面積率側にあることは、より空隙が少ない構造であること、あるいは空隙が密集し連続した緻密領域が広い構造であることを意味し、低対数領域面積率側にあることはより空隙が多く、空隙が均一に分布している構造であることを意味する。
また対数領域面積率に対する合計占有率の分布が大きいことは空隙分布の斑が大きいことを意味する。本実施形態においては空隙が少ないほうが、感度、接着性、湿度耐性の面で好ましい。
上記観点から、本実施形態のセンサーは、受容体を前述の測定に供して得られる対数領域面積率A及び対数領域面積率Bの少なくとも一方が上記した各範囲を満たすものであり、対数領域面積率A及び対数領域面積率Bの双方が上記した各範囲を満たすことが好ましい。
【0021】
本実施形態における受容体は、有機無機ハイブリッドを含むことが好ましい。本実施形態における有機無機ハイブリッドは、湿度のある環境下での感度及び安定性の観点から、RSiO3/2で表される構造が好ましく、ここで、前記Rは有機官能基を表す。本実施形態において、受容体中の有機無機ハイブリッドの含有量は特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、有機官能基が1種類以上の芳香環を含むことが好ましい。芳香環を含む場合、感度及び耐湿度性がより向上する傾向にある。芳香環としては、センサーの用途等を考慮して適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-アミノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換芳香族炭化水素基、3-フリル基、3-チエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等の複素環炭化水素基、フェロセニル基等のメタロセン等が挙げられる。本実施形態における有機官能基は、上述した芳香環を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0023】
有機無機ハイブリッドにおいて、有機官能基とケイ素原子との間には、アルキル基(炭素数が1から18までのもの)やエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、ウレタン結合、尿素結合、イミド基、イミン基等のスペーサーとなる構造を挟んでもよいが、応答性感度の観点から、これらのスペーサーは挟まず、有機官能基が、前記有機無機ハイブリッドにおけるSi原子に直接結合していることが好ましい。
耐湿度性と様々なガス分子への選択性とを両立する観点から、本実施形態における有機官能基は、芳香環と非芳香環構造との共重合構造を含むことが好ましい。また、極性の高いガス・ニオイ分子への応答性の観点から、本実施形態における有機官能基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ホウ素原子、及びリン原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する官能基を含むことが好ましい。これらの中でも、安定性の観点から、有機官能基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びフッ素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する官能基を含むことが好ましい。
【0024】
本実施形態における有機官能基の具体例としては、以下に限定されないが、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状炭化水素基(例えば、3-クロロプロピル基、オクチル基等の直鎖状若しくは分岐状C1-8アルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい脂環炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のC5-6シクロアルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシC1-3アルキル基)、エポキシ基、グリシジルオキシアルキル基(例えば、3-グリシジルオキシプロピル基等のグリシジルオキシC1-3アルキル基)、(エポキシシクロアルキル)アルキル基(例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)、ヒドロキシ基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、メルカプト基、メルカプトアルキル基(例えば、メルカプトプロピル基等のメルカプトC1-3アルキル基)、スルフィド基、アミノ基(例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、アミノアルキル基(例えば、アミノプロピル基等のアミノC1-3アルキル基)、(アミノアルキルアミノ)アルキル基(例えば、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基)、イミダゾリル基、イミダゾリルアルキル基(例えば、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピル基)、アルキルアミノアルキル基(例えば、3-(ジメチルアミノ)プロピル基)、アミド基、複素環芳香族基、オキシム基、イミド基、イミン基、ハロゲン基、ニトリル基、ホスホン基、リン酸基等があげられる。これらの中でも、有機官能基は、入手性の観点から、置換基を有してもよい直鎖状又は分岐状炭化水素基、置換基を有してもよい脂環炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、(エポキシシクロアルキル)アルキル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基、(アミノアルキルアミノ)アルキル基、イミダゾリルアルキル基、及びアルキルアミノアルキル基、ヒドロキシ基からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの官能基は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0025】
有機官能基は、シランカップリング剤由来の有機官能基であることが好ましい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン、アセトキシシランもしくはクロロシラン等の加水分解性金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、加水分解性金属酸化物は、取り扱い性、官能基の汎用性からアルコキシシランが好ましく、反応性の観点から3官能性のアルコキシシランがより好ましい。
3官能性のアルコキシシランは1、2,4官能性のアルコキシシラン等と共重合されてもよいが、有機無機ハイブリッドのヤング率を上げ高感度化させる観点から4官能性のものとの共重合が好ましい。
【0026】
3官能性のアルコキシシランとしては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができる。
市販の芳香族系シランカップリング剤としてはフェニルトリアルコキシシラン、ニトロベンゼンアミドトリアルコキシシラン、ベンジルトリアルコキシシラン、4-クロロフェニルトリアルコキシシラン、フェニルアミノプロピルトリアルコキシシラン、4-アミノフェニルトリアルコキシシラン、ナフチルトリアルコキシシラン、4-メトキシトリアルコキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリアルコキシシラン、フェロセニルトリアルコキシシラン、ビフェニルトリアルコキシシラン、3―フリルトリアルコキシシラン、3-チエニルトリアルコキシシラン、2-ピリジルトリアルコキシシラン、3-ピリジルトリアルコキシシラン、4-ピリジルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0027】
市販の非芳香族系シランカップリング剤としては、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルトリアルコキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3-(ジメチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(アクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ブチルアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、デシルトリアルコキシシラン、ドデシルトリアルコキシシラン、オクタデシルトリアルコキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ヘキサフルオロフェニルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、3-ブロモプロピルトリアルコキシシラン、3-ピペラジノプロピルトリアルコキシシラン、3-モルフォリノプロピルトリアルコキシシラン、3-アリルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ノルボルニルトリアルコキシシラン、ピペリジノプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0028】
2種類以上のシランカップリング剤を共重合する場合、芳香族シランカップリング剤と非芳香族シランカップリング剤の比率として、モル比で1:10から1:5であることが好ましく、耐熱性の点から1:5から1:1であることが好ましく、湿度下におけるシグナル強度低減の抑制の点から1:1から10:1であることが好ましい。
【0029】
本実施形態のセンサーにおける有機官能基については、センサー本体上の受容体をSEM-EDXやXPS、ATR等の表面元素解析に供することにより、同定することができる。
本実施形態の有機無機ハイブリッドでは有機官能基量が75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
[フィラー]
本実施形態における受容体は、さらにフィラーを含むことが好ましい。フィラーを用いると、有機無機ハイブリッドのヤング率を向上させ、感度を高めることができる。本実施形態におけるフィラーとしては、特に限定されず、種々公知のものから選択することができる。その具体例としては、以下に限定されないが、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド等のポリマービーズやアクリルラテックス等の球状粒子、窒化シリコン等の金属窒化物、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化スズ等の金属酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ITO等の複合金属化合物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラー、カーボンナノチューブやグラフェン、カーボンブラック等のカーボン材料から選ばれる1種以上を含むことができる。本実施形態におけるフィラーの形状は特に限定されず、球状や数珠状、鎖状、ホロー状、楕円球状、繊維状、棒状、筒状、針状、板等の固有の組織構造・構造体を形成していてもよい。
【0031】
本実施形態におけるフィラーとしては、分散性、塗布性の観点から、無機フィラーであることが好ましい。上記同様の観点から、本実施形態においては、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ等の金属酸化物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラーが好ましく、湿度下での水分によるシグナル減衰の影響が小さい点からシリカ、ジルコニア等の金属酸化物がより好ましく、経済性の観点からシリカであることがさらに好ましく、球状又は鎖状シリカがよりさらに好ましい。本発明者らは、特にシリカを用いる場合、湿度のある状態でもエタノール、アセトアルデヒド等の一般的な親水性ガスの応答の減衰がより顕著に改良されることを見出した。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。すなわち、シリカの骨格及びケイ素原子に結合した状態で存在する水酸基が、特許文献1のチタニア骨格もしくはチタン原子に結合した水酸基に比べて比較的疎水的であるため、疎水性相互作用により、水分由来の吸着阻害が抑制されるものと推定する。
【0032】
フィラーの形状としては、特に限定されないが、好ましくは、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種類以上が合体した形状であり、より好ましくは球状、鎖状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体、卵形等も含む略球状を意味する。
【0033】
球状のフィラーのサイズとしては、特に限定するものではないが、インクの分散性を維持し、つまり等インクジェットでの塗布性を向上できる観点から、平均一次粒子径として、100μm以下が好ましく、感度を向上できる観点から500nm以下がさらに好ましく、より空隙を低減する観点から200nm以下であることがさらに好ましい。ここで、平均一次粒子径とは数平均での値を意味する。上記平均一次粒子径は、本明細書の実施例の項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される粒子50個の数平均値である。
鎖状のフィラーとしては、連続鎖状構造を有することが好ましく、例えば、球状の粒子が連続的に真直につながった構造、分岐してつながった構造、屈曲してつながった構造、環状につながった構造(「パールネックレス状」につながった構造ともいう。)、又は個々には連続した球状には観察されず糸状の構造が多数絡まりあった構造(「ネットワーク状」につながった構造ともいう。)が好ましい例として挙げられる。
連続鎖状構造を構成するフィラーは、一概に球状を仮定して、一次粒子径で規定することは容易でないが、透過型又は走査型の電子顕微鏡観察により鎖幅を観察することができる。鎖幅としては、1nm~200nmであり、被表面積を大きくする観点から1nm~100nmであることが好ましく、ガス応答性の感度の観点から1nm~85nmであることがさらに好ましい。上記平均一次粒子径は、本明細書の実施例の項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される粒子50個の数平均値であり、鎖幅として定義する。
【0034】
このようなフィラーとしての金属酸化物は、ゾルゲル法を用いてアルコキシ、クロロ等の4官能性加水分解基を有する金属酸化物前駆体のゾルゲル法によって製造することができるし、市販品を用いることもできる。4官能性の加水分解基を有する金属酸化物前駆体としてはテトラアルコキシシラン、テトラクロロシラン、テトラアルコキシチタン、テトラアセトキシジルコニウム等が挙げられる。これらの4官能性の加水分解性金属無機酸化物は3官能性の加水分解性金属酸化物と共重合してもよく、反応系の濃度、温度、pH、水分量等を調整することにより形状の制御を行うことができる。なお、例えばエマルジョン重合によりフィラーが製造された場合等、フィラー側にRSiO3/2で表される構造が得られることも考えられるが、受容体中でこのような構造を持つフィラーについては本実施形態における有機無機ハイブリッドと扱うものとする。
【0035】
使用し得るフィラーの市販品としては、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等、IPA-ST, IPA-ST-L, IPA-ST-ZL, ST-XS,ST-S, ST-30,ST-50T, ST-30L,ST-YL, ST-ZL,MP-1040, MP-2040, MP-4540M,ST-OXS, ST-OS, ST-O, ST-O-40, ST-OL, ST-OYL, ST-NXS, ST-NS, ST-N, ST-N-40,ST-CXS,ST-C, ST-CM, ST-AK, ST-AK-L, ST-AK-YL,OZ-S30K,SZ-S30K-AC, OZ-S30M、セルナックス CX-S505M、IPA―ST-UP、MEK―ST―UP、ST―UP、ST-PS-S、ST-PS-M、ST-OUP、ST-PS―SO、ST-PS-MO、ST-AK-PS-S等(日産化学(株)製),SRD-K, SRD-M, SXR-CM, SZR-K, SZR-M(堺化学(株)製)があげられる。粉体状のフィラーとして、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0036】
使用し得るフィラーの市販品としては、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等、IPA-ST, IPA-ST-L, IPA-ST-ZL, ST-XS,ST-S, ST-30,ST-50T, ST-30L,ST-YL, ST-ZL,MP-1040, MP-2040, MP-4540M,ST-OXS, ST-OS, ST-O, ST-O-40, ST-OL, ST-OYL, ST-NXS, ST-NS, ST-N, ST-N-40,ST-CXS,ST-C, ST-CM, ST-AK, ST-AK-L, ST-AK-YL,OZ-S30K,SZ-S30K-AC, OZ-S30M、セルナックス CX-S505M、IPA―ST-UP、MEK―ST―UP、ST―UP、ST-PS-S、ST-PS-M、ST-OUP、ST-PS―SO、ST-PS-MO、ST-AK-PS-S等(日産化学(株)製),SRD-K, SRD-M, SXR-CM, SZR-K, SZR-M(堺化学(株)製)があげられる。粉体状のフィラーとして、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0037】
[有機無機ハイブリッドの製造方法]
有機無機ハイブリッドの製造方法としては、特に限定されないが、主にゾルゲル法を用いて製造される。具体的には、加水分解性シラン化合物(シランカップリング剤を含む)を水存在下で酸、塩基性条件下でゾルゲル法により処理することにより、シランカップリング剤の縮合体、すなわち、RSiO3/2で表される構造を含む有機無機ハイブリッドを得ることができる。
【0038】
加水分解及び縮合の反応速度を調節できる観点から、触媒の存在下で、シランカップリング剤を加水分解及び縮合、表面修飾することがより好ましい。
【0039】
触媒の種類としては、酸触媒及び塩基触媒が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。有機塩基としては、以下に限定されないが、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の炭素数1~4のN,N-ジアルキルアニリン誘導体;ピリジン、2,6-ルチジン等の、炭素数1~4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;等が挙げられる。これらの触媒は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
反応系のpHを0.01~6.0の範囲、若しくはpH8~14になる量の触媒を加えることが、反応効率の点で好ましく、より効率を高めるためにはpH8~14の塩基性条件下でゾルゲル反応を行うことがより好ましい。
有機無機ハイブリッドを製造するための加水分解及び縮合は、有機溶媒中で行うこともできる。縮合反応に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
【0041】
上記アルコールとしては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのなどの多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0042】
上記エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテルとしては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール等が挙げられる。
【0043】
上記脂肪族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0044】
上記芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0045】
上記アミド化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0046】
以上の溶媒の中でも、アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトンとしてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等;エーテルとしてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;及びアミド化合物としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が水と混合しやすい点で好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
有機無機ハイブリッドにフィラーを配合する場合は、有機無機ハイブリッドはフィラーの存在下で製造してもよいし、有機無機ハイブリッドにフィラーを配合してもよい。市販の分散フィラーにシランカップリング剤の縮合物を溶解させてもよいし、フィラーとシランカップリング剤をボールミル、ジェットミル等で分散処理してもよいし、アルコキシシランとフィラーを同時に縮合反応することで製造することができるが、フィラーの溶剤分散性を高め、インクジェット塗布性を高める点でアルコキシシランとフィラーを同時に縮合する製造方法がより好ましい。コロイダルフィラーをシランカップリング剤存在下でゾルゲル法により処理した場合は、シランカップリング剤の縮合体がフィラーの表面を変性しながら隙間を埋めるように縮合体が配されることになりアルコキシシランの量を任意に調整することで細孔量を調整することができる。フィラー表面に水酸基が存在する場合、その表面水酸基とアルコキシシランの加水分解により生成される水酸基が相互作用、縮合反応によりエーテル結合を形成するため、フィラーと縮合体の相溶性を高めることができるため、より安定な受容体を得ることができる。
【0048】
フィラーに有機官能基を表面変性させることは、分散媒に分散させた状態で表面修飾することにより行われる。具体的には、例えば、アルコール及び水を含む金属酸化物の均一分散液に、触媒存在下で上記シランカップリング剤を添加する工程により有機無機ハイブリッドが製造される。
【0049】
有機無機ハイブリッドは沈殿物、ゲル化物を遠心分離、ろ過により濾別することにより回収してもよいし、エバポレーター等で揮発性溶剤を除去することにより単離される。
有機官能基の導入は、FT-IRや元素分析により確認することができる。また、熱重量減少測定により確認することができる。吸着水の影響を除去するため150℃から1000℃までの、無機フィラー(i)と有機官能基(ii)を合わせた有機分の熱重量減少率が、感度の観点から、3%~75%であることが好ましく、湿度耐性の観点から5%~65%であることがより好ましく、更に熱安定性の観点から5%~60%であることが更に好ましい。すなわち、本実施形態における有機無機ハイブリッド中の有機官能基量としては、特に限定されないが、検知対象物質への応答性と受容体の安定性とのバランスの観点から、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態における受容体は膜形状を有すると測定精度が安定するために好ましい膜厚は、有機無機ハイブリッドが均質な膜厚分布を有する形状でもよいし、端部の膜厚が厚くなるように分布するコーヒーリング状の形状を有していてもよい。コーヒーリング状の形態を有する膜は、高濃度のVOCの蒸気にさらされた場合であっても形状劣化がなく、構造安定性に優れ、また平坦構造からなる膜構造にくらべて高い感度を有するため好ましい。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。センサーが表面応力センサーの場合、表面応力センサー上にコーヒーリング型の膜を配した場合、ピエゾ近くにより多くの膜体積を配するためその変形による応力をより効率よくピエゾ素子に伝播するため、より高い感度が実現できると考えられる。コーヒーリング型として、円形状に形成された膜の直径上における2点間の断面プロファイルを取得し、断面プロファイルから中心部の膜厚が最大部の膜厚に対して80%以下であることが感度再現性の観点から好ましく、60%以下であることが感度の観点からより好ましく、40%以下であることが応答感度の最大化の観点からより好ましい。コーヒーリング状の形状となる場合は、膜の中心部分における最も薄い部分、及び端部分における最も厚い部分の膜厚は、それぞれ通常10nm以上50μm以下であることが好ましい。上記膜厚は、製造時における乾燥に要する時間を短縮し、生産性を高める観点から、好ましくは10nm以上30μm以下であり、感度を高める観点から、より好ましくは10nm以上20μm以下である。
また、本実施形態における受容体の最大厚みは、30μm以下であることが好ましい。上記膜厚や最大厚みは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
[表面応力センサー]
本実施形態のセンサーは、例えば、表面応力センサーに適用することができ、より具体的には膜型表面応力(MSS:Membrane-type Surface stress)センサーとして用いることができる。その場合には、センサー本体の表面の少なくとも一部を被覆した受容体が検知対象物質を吸着することで当該受容体中に引き起こされた応力変化を検出して本体がシグナルを出力する。表面応力センサーは、4点固定のピエゾ素子型表面応力センサーであることが好ましい。
【0052】
[センサーの製造方法]
本実施形態のセンサーの製造方法としては、特に限定されないが、センサー本体上に受容体を形成するための種々の方法により製造することができる。本実施形態における受容体は、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をセンサー本体上に塗布することにより製造される。塗布液をセンサーのチップ上に塗布する際には、インクジェット装置を好適に用いることができる。インクジェット装置を用いて製造することにより、生産性に優れ、得られた膜を備えるセンサーの再現性に優れる。インクジェット装置によれば、塗布液の液滴を射出し、液滴がセンサー上に塗布され、膜形状の受容体、すなわち感応膜が成膜される。チップ上に感応膜を形成した例を図1に示す。センサー1は、センサー本体に対応するチップ3と、その表面上に形成された感応膜2を有するものとして構成されており、図1に示す例において、このような構成を4箇所において備えている。
【0053】
有機無機ハイブリッドをセンサー本体(例えば、MSSセンサー本体)の表面に被覆するための手法は、特に限定されないが、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、インクジェットスポッティング、キャスティング、ドクターブレードなどを用いた被覆方法が挙げられる。
【0054】
300μmφのMSSセンサーのメンブレンに塗布するためには、インクジェット、マイクロジェット方式が好ましく、生産性の観点からマイクロジェット方式の塗布がより好ましい。
受容体は、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させ、その分散液をMSSチップ上に塗布することにより製造できる。有機無機ハイブリッドは、有機溶剤中に0.1g/L~50g/Lの濃度で分散されて塗布液となる。生産性の観点から、濃度は、0.5~50g/Lであることが好ましく、ノズルつまりを抑制する観点から、0.5~15g/Lであることがより好ましい。
【0055】
有機無機ハイブリッドを分散する有機溶媒としては、分散可能な溶媒であればよく、沸点としては80℃~250℃のものが好ましく、ノズルのつまりによる生産性の低下を抑制するためには100℃~250℃のものが好ましく、乾燥にかかる時間を早め、生産性を高めるために100℃~200℃であることがより好ましい。
【0056】
有機溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アミド溶媒等が挙げられる。
【0057】
アルコール溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0058】
エステル溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0059】
ケトン溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0060】
エーテル溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
【0061】
脂肪族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0062】
芳香族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0063】
アミド溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
これらの有機溶媒の中でも、安全性及び溶解性に優れることから、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0066】
本実施形態における受容体は、有機無機ハイブリッド以外に、任意の粒子、イオン性化合物、樹脂、及び低分子化合物等の添加物を含んでもよい。上記添加物は、例えば、塗布液に配合し、センサー本体の表面に塗布することにより、上記添加物を含む受容体を有するセンサーを得ることができる。
【実施例
【0067】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0068】
各実施例及び比較例のMSS嗅覚センサーの各種物性を以下の(1)~(8)に従って評価した。
【0069】
(1)受容体の空隙パラメータの測定
ダイシングにより、センサー本体上の受容体の厚み方向の断面を形成した。これを試料として加工台に固定した後、下記の条件でFIB Millingで加工を行い、SEM観察を行った。SEM観察条件は下記のとおりとした。
(加工条件FIB Milling)
装置 Helios 650
粗加工 Wによる保護膜形成後実施
加速電圧 30kV
電流値 9.4nA、2.4nA、0.7nAの順に変更
(仕上げ加工)
加速電圧 30 kV
電流値 0.24nA
(SEM観察条件)
装置 Helios 650 (ThermoFisher SCIENTIFIC製)
加速電圧 2kV, 0.1又は0.2nA
観察像 反射電子像(組成像)
傾斜 52°
倍率 10万倍
【0070】
断面SEM観察で取得した像から受容体層を切り出し、さらに受容体断面中に存在する空隙を抽出した。抽出については、取得像において空隙周辺がエッジ効果により明コントラストを有すること、また空隙自体は暗コントラストを有することを利用し、まず近傍10ピクセルを用いた中央値フィルタによって画像のノイズを除去したのち、画像の小領域ごとに閾値を定め、画像内での光源環境変化に強い二値化が可能な方法である適応的閾値処理により、緻密部位を白色に、空隙を黒色とする2値化処理を行った。この際の閾値をグレースケールで131とした。得られた空隙の抽出像にて、1ピクセルの空隙を逃さないようにするために3×3フィルタをかけ、空隙を膨張させたのち、当該断面の空隙部分と緻密部分とを区別するべく、4分木空間分割を実施した。分割の各領域に含まれる空隙ピクセル(黒ピクセル)の数が1つになるまで4分木空間分割を実施し、空隙ピクセルを含まない緻密部分に対応する四角形群を、面積毎に分類し、以下のとおりに対数領域面積率と合計占有率とを算出した。
【0071】
(対数領域面積率)
前記四角形群の各面積を当該画像の面積で除した値を領域面積率とし、その常用対数をとって対数領域面積率とした。
(合計占有率)
前記四角形群において同一面積を有する四角形の合計面積値を、前記画像の面積を1としたときの比率として表した値を合計占有率とした。
【0072】
(対数領域面積率A及び対数領域面積率B)
上記対数領域面積率を横軸とし、上記合計占有率を縦軸とし、プロットした。また、上記対数領域面積率を横軸とし、上記合計占有率の累積を縦軸とし、プロットした。上記のようにして得られる対数領域面積率に対する合計占有率の分布において、当該合計占有率の極大を与える対数領域面積率Aと、当該対数領域面積率が小さい方からの当該合計占有率の累積が60%になる対数領域面積率Bとを求めた。なお、各受容体について最低3点、空隙に分布が見られた場合は最低5点について、上記測定を実施し、最大値として対数領域面積率A及び対数領域面積率Bを決定した。
【0073】
(2)有機無機ハイブリッドにおける有機官能基種の同定
下記の条件に基づき、センサー本体上の受容体を顕微ATR法で測定することにより、有機無機ハイブリッドにおける有機官能基を同定した。
(測定条件)
使用装置;Cary620(Agilent社製)
測定方法;顕微ATR法(結晶:Ge) スライド・オン型ATRアタッチメントを使用
検出器;MCT(HgCeTe)赤外線検出素子
アパーチャサイズ;約100um
ATR結晶へのIR入射角 30°
分解能;4cm-1
積算回数;64scans
【0074】
(3)熱重量減少率(有機官能基量の定量)
センサーから削りとった受容体の粉末試料を、大気中100℃で乾燥し、次いで室温に戻してから正確に秤量した。その後、TGAを用いて大気中で1000℃まで10℃/分で昇温加熱することで有機成分を除去し、熱重量減少率とした。有機官能基のみ加熱で分解せず、SiO3/2の部分はシリカとして残るため、熱重量減少率を有機官能基量(質量%)とした。
【0075】
(4)受容体の最大厚み
共焦点レーザー顕微鏡(VK09700 Violet Laser(キーエンス製))を用いてセンサーにおける受容体未塗布部分と受容体の最大膜厚部分を観察することにより、受容体の膜厚を測定した。すなわち、略円形状に形成された受容体の直径上における2点間の断面プロファイルを取得し、断面プロファイルから未塗布部分と最大膜厚部分を特定し、これらの差をとり最大厚みとした。
(観察条件)
対物レンズ:標準レンズ 20.0倍
測定エリア:面
測定モード:表面形状
RPD:精度優先
測定品質:高精細
測定ピッチ:0.5μm
Z測定距離:37.92μm
ワイドダイナミックレンジ:OFF
明るさ1:648
減光フィルタ:100%
光学ズーム:1倍
平均回数:1回
フィルタ:OFF
ホワイトバランスモード:ワンプッシュ
ホワイトバランスR:131
ホワイトバランスB:138
受光光量補正モード:γ補正
γ補正値:0.45
γオフセット:0
白黒反転:OFF
ヘッド種別:VK-9700
光量偏心補正:ON
像面湾曲補正:ON
XYキャリブレーション:688nm/pixel
Zキャリブレーション:1nm/digit
鮮やかさ:5
コントラスト:5
明るさ:0
【0076】
(5)耐湿度影響性
25℃、エタノール100ppmを10分/窒素のみのパージを10分ずつ3度繰り返し、3度目のシグナルを採用した。100×(「乾燥下で測定された3度目のシグナルの強度」-「30RT%下で測定された3度目のシグナルの強度」)/(「乾燥下で測定された3度目のシグナルの強度」を減衰率(%)とし、その値が20%以下のものを◎、21%から40%以下のものを〇、41%以上60%未満のものを△、61%以上のものを×とした。
【0077】
(6)物理・化学安定性
25℃にて水飽和蒸気、エタノール、トルエン、(流量30sccm)10分/パージパージ(乾燥窒素下)10分を順次3回ずつ測定後、光学顕微鏡による観察で膜形状についてエタノールまでに変形がみられたものを×、トルエンで変形がみられたものを△、いずれの後でも変形が見られなかったものを〇とした。
【0078】
(7)耐熱性(リフロー耐性)
250℃、30秒のリフロー後に受容体に剥離、変形、クラック等がみられたものを×、見られなかったものを〇とした。
【0079】
(8)フィラー粒径(直径)
上記(1)に記載の走査型電子顕微鏡を用い、フィラー粒子50個の数平均値とした。球状粒子の場合は、最大径を粒径とし、鎖状粒子の場合は、鎖幅を粒子径とし、各々50個分の数平均値を算出した。
【0080】
<実施例1>
セパラブルフラスコに鎖状コロイダルシリカの2-プロパノール分散液IPA-ST-UP(日産化学製品)50g、水90g、28%アンモニア水10g、2-プロパノール300gに、フェニルトリメトキシシラン27.1gを加え80℃で4時間反応させた。反応液を空冷後、6000rpm、10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄したのち、N,Nジメチルホルムアミドで10g/mLになるように溶解し、塗布液を得た。サンプルを一部80℃真空下で乾燥させて、熱重量減少率を測定した。塗布液を、インクジェット装置を用いて1滴当たり300pLの量にて30滴を、80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
次いで、実施例1における受容体の表面をSEM観察した結果を図2に示す。また、当該受容体の任意の3点の断面SEM画像を、上記(1)の方法により取得し、2値化後、4分木空間分割を実施した(図3)。4分木空間分割後の合計占有率と合計占有率累積を対数面積占有率に対してプロットしたところ、3断面で最大の対数面積占有率A及び対数面積占有率Bは、それぞれ-0.60及び-1.10であった(図4,5)。このように、実施例1における受容体には、ほとんど空隙がみられなかった。
また、実施例1に係るMSSセンサーの最大厚みを上記(4)の方法に基づいて測定した。
さらに、上記(5)の方法に基づいて耐湿度の影響を検討し、湿度0%(乾燥下)では最大振幅550μVで湿度30%では360μVの最大振幅が得られた。前述の方法にて算出された減衰率は40%であったため〇とした。上記(6)、(7)の試験により、変形、剥離、クラック等は観察されなかったため〇とした。
上述した方法と同様の要領にて、以降の実施例及び比較例についてもMSSセンサーの評価を行うこととした。
【0081】
<実施例2>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを13.5gにした以外は実施例1に準じた。
実施例2における受容体の表面をSEM観察した結果を図6に示す。また、当該受容体の任意の5点の断面SEM画像を、上記(1)の方法により取得し、2値化後、4分木空間分割を実施した(図7)。なお、実施例2ではほとんど空隙が存在しない領域と空隙が存在する領域が見られたため、任意の5点の断面をとることとした。4分木空間分割後の合計占有率と合計占有率累積を対数面積占有率に対してプロットしたところ、5断面で最大の対数面積占有率A及び対数面積占有率Bは、それぞれ-3.00及び-3.00であった(図8,9)。このように、実施例2における受容体においては、実施例1よりも空隙が多くみられ、5点のばらつきも大きいことから、空隙にも分布があることが示された。
【0082】
<実施例3>
鎖状コロイダルシリカの2-プロパノール分散液IPA-ST-UP(日産化学製品)をDMFで10mg/mLになるように希釈し、インクジェット装置を用いて1滴当たり300pLの量にて30滴を、80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
実施例3における受容体の表面をSEM観察した結果を図10に示す。また、当該受容体の任意の3点の断面SEM画像を、上記(1)の方法により取得し、2値化後、4分木空間分割を実施した(図11)。4分木空間分割後の合計占有率と合計占有率累積を対数面積占有率に対してプロットしたところ、3断面で最大の対数面積占有率A及び対数面積占有率Bは、それぞれ-3.60及び-3.70であった(図12,13)。このように、実施例3における受容体においては、実施例2よりも空隙が多くなったが、空隙分布は小さいことが示された。
【0083】
<実施例4>
IPA-ST-UP(日産化学製品)50gをIPA-ST(12nm球状シリカ)25gに変えた以外は実施例1に準じた。
【0084】
<実施例5>
IPA-ST-UP(日産化学製品)50gをIPA-ST―L(45nm球状シリカ)25gに変えた以外は実施例1に準じた。
【0085】
<実施例6>
IPA-ST-UP(日産化学製品)50gをMP-4540M(450nm球状シリカ)20gに変えた以外は実施例1に準じた。
【0086】
<実施例7>
IPA-ST-UP(日産化学製品)50gをZR-40BL20g(90nmジルコニア)に変えた以外は実施例1に準じた。
【0087】
<実施例8>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを4-クロロフェニルトリエトキシシラン37.6gにした以外は実施例1に準じた。
【0088】
<実施例9>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを4-メトキシフェニルトリメトキシシラン30.4gにした以外は実施例1に準じた。
【0089】
<実施例10>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを3-フリルトリエトキシシラン31.5gにした以外は実施例1に準じた。
【0090】
<実施例11>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを3-チエニルトリエトキシシラン33.9gにした以外は実施例1に準じた。
【0091】
<実施例12>
フェニルトリメトキシシラン27.1gを4-アミノフェニルトリメトキシシラン23.3gにした以外は実施例1に準じた。
【0092】
<実施例13>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをp-トリルトリメトキシシラン29gにした以外は実施例1に準じた。
【0093】
<実施例14>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをナフタレントリメトキシシラン27.2gにした以外は実施例1に準じた。
【0094】
<実施例15>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-(2-イミザゾリンプロピル)トリエトキシシラン37.5gにした以外は実施例1に準じた。
【0095】
<実施例16>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-(2-アミノプロピルエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン36.1gにした以外は実施例1に準じた。
【0096】
<実施例17>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+ノルボルニルトリエトキシシラン35.7gにした以外は実施例1に準じた。
【0097】
<実施例18>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-N,Nジメチルアミノプロピルトリメトキシシシラン7.08gにした以外は実施例1に準じた。
【0098】
<実施例19>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-メルカプトプロピルトリエトキシシシラン9.77gにした以外は実施例1に準じた。
【0099】
<実施例20>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン24.4g+ペンタフルオロフェニルトリメトキシシシラン3.93gにした以外は実施例1に準じた。
【0100】
<実施例21>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシシラン11.9gにした以外は実施例1に準じた。
【0101】
<実施例22>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+2-(3,4-エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン8.75gにした以外は実施例1に準じた。
【0102】
<実施例23>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+4-アミノフェニルトリメトキシシシラン8.74gにした以外は実施例1に準じた。
【0103】
<実施例24>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-ウレイドプロピルトリエトキシシシラン21.6gにした以外は実施例1に準じた。
【0104】
<実施例25>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン10.4gにした以外は実施例1に準じた。
【0105】
<実施例26>
フェニルトリメトキシシラン27.1gをフェニルトリメトキシシラン27.1g+3-[ビス[(ジフェニルホスフィノ)メチル]アミノ]プロピルトリメトキシシラン25.3gにした以外は実施例1に準じた。
【0106】
<実施例27>
フェニルトリメトキシシラン10g、水10g、エタノール30g、28%アンモニア水を混合し、80℃で2h反応させた。6000rpm、10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄したのち、N,N-ジメチルホルムアミドで1g/mLになるように溶解し、塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて300滴を80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
【0107】
<実施例28>
500mLのセパラブルフラスコにエタノール30g、テトラエトキシシラン4.7g、フェニルトリエトキシシラン4.3g、28%アンモニア水1.8gを混合、撹拌したのち室温でゲル化するまで静置した。得られたゲルをエタノールで洗浄し、アンモニアを除去したのち、DMF10mg/mLになるように溶解させ塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて30滴を80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
【0108】
<実施例29>
500mLのセパラブルフラスコにエタノール37g、テトラエトキシシラン2.6g、フェニルトリエトキシシラン9.0g、28%アンモニア水2.26gを混合、撹拌したのち室温でゲル化するまで静置した。得られたゲルをエタノールで洗浄し、アンモニアを除去したのち、DMF10mg/mLになるように溶解させ塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて30滴を80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
【0109】
<実施例30>
3-フリルトリエトキシシラン10.1gにした以外は実施例10に準じた。
【0110】
<実施例31>
3-フリルトリエトキシシラン17.3gにした以外は実施例10に準じた。
【0111】
<実施例32>
実施例1の塗布液をインクジェット装置を用いて1滴当たり700pLの量にて150滴を、80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
【0112】
<比較例1>
シリカチタニア粒子(粒状)はWO2016/121155公報に記載の方法に準じて合成した。オクタデシルアミン(ODA)が溶解したアンモニア塩基性のイソプロパノール(IPA)水溶液中における、アミノプロピルトリメトキシシランとチタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)の共加水分解、縮合重合反応により合成した。上記合成反応は、マイクロメートルサイズのY字型流路を有するテフロン(登録商標)製マイクロリアクタを用いて実施した。前駆溶液は、溶液1:アミノプロピルトリメトキシシラン/IPA、溶液2:H2O/IPA/アンモニア、溶液3:TTIP/IPA、溶液4:H2O/IPAの4つとし、溶液1から溶液4まで体積を揃えて調製した。前駆溶液はシリンジポンプにより同時に一定速度で送液した。溶液1と溶液2、溶液3と溶液4を並列したマイクロリアクタ内でそれぞれ混合し、両リアクタからの吐出液をさらに別のマイクロリアクタ内で混合することにより、1つの反応液とした。反応液は別途調製しておいた前駆溶液5:ODA/H2O/IPA中へ吐出し、吐出終了まで一定速度で撹拌した。その後、室温で静置し、ナノ粒子(NH2-STNP)分散液を得た。かかるナノ粒子にRSiO3/2で表される構造が確認されたため、これを有機無機ハイブリッドと扱った。反応液を空冷後、6000rpm, 10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄したのち、N,N-ジメチルホルムアミドで1g/mLになるように溶解し、塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて300滴を80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体(実施例1と同様)の表面上に塗布することにより、4つの受容体(感応膜)が形成されたMSSセンサーを得た。その外観としては、図1に示すものと同様であった。
比較例1における受容体の表面をSEM観察した結果を図14に示す。また、当該受容体の任意の3点の断面SEM画像を、上記(1)の方法により取得し、2値化後、4分木空間分割を実施した(図15)。4分木空間分割後の合計占有率と合計占有率累積を対数面積占有率に対してプロットしたところ、3断面で最大の対数面積占有率A及び対数面積占有率Bは、それぞれ-4.15及び-4.15であった(図16,17)。このように、比較例1における受容体においては、実施例における受容体よりも多孔質かつ小さい空隙が均一に分散していることが分かった。
【0113】
各実施例/比較例について上記測定(1)~(8)を行った結果を次の表1~3に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17