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特許7270364操作された微生物標的化分子およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】操作された微生物標的化分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20230428BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230428BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230428BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230428BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C12Q1/04
C07K14/47
C07K16/00
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018207102
(22)【出願日】2018-11-02
(62)【分割の表示】P 2014521733の分割
【原出願日】2012-07-18
(65)【公開番号】P2019077687
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2018-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】61/508,957
(32)【優先日】2011-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/605,052
(32)【優先日】2012-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/605,081
(32)【優先日】2012-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】イングバー ドナルド イー.
(72)【発明者】
【氏名】スーパー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウェー ジェフリー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カートライト マーク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウォッタース アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バーセット ジュリア ビー.
(72)【発明者】
【氏名】スーパー ダイナ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ロットマン マーティン エム.
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】高堀 栄二
【審判官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-500548(JP,A)
【文献】特開2002-165591(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123347(WO,A1)
【文献】特開平4-130274(JP,A)
【文献】国際公開第2009/126346(WO,A2)
【文献】特表2011-502520(JP,A)
【文献】特表2008-535872(JP,A)
【文献】特表2002-517513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/02-1/04
C07K14/47-19/00
CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、感染を検出するためのアッセイ方法:
患者試料を、緩衝液においてマンノース結合レクチン(MBL)の糖質認識ドメイン(CRD)の少なくとも一部と連結されたFc領域を含む標識されていない操作された微生物標的化分子を含む捕捉物質でコートされた磁性マイクロビーズと混合する工程;
該磁性マイクロビーズを、磁石を用いて捕捉された病原体で収集する工程;
血液生成物を除去するために前記ビーズを洗浄する工程;および
検出可能な標識にコンジュゲートされた微生物特異的標的化剤を供給することにより、捕捉された病原体を検出する工程。
【請求項2】
感染のレベル、または、前記コートされた磁性マイクロビーズ上に捕捉された微生物の量を定量化する工程をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記緩衝液が、カルシウムイオンおよび界面活性剤を含むトリス緩衝生理食塩水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
検出可能な標識にコンジュゲートされた前記微生物特異的標的化剤が以下を含む、請求項1記載の方法:
レクチンの糖質認識ドメイン;
抗体のFc部分;および
酵素。
【請求項5】
検出可能な標識にコンジュゲートされた前記微生物特異的標的化剤が、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識化FcMBLを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記検出する工程が、試料へ、TMBを供給する工程をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記微生物特異的標的化剤が、細菌と結合する抗体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、抗LTA抗体、抗LPS抗体、または、抗カンジダ抗体を含む、請求項記載の方法。
【請求項9】
以下を含む組成物:
マンノース結合レクチン(MBL)の糖質認識ドメイン(CRD)の少なくとも一部と連結されたFc領域を含む標識されていない操作された微生物標的化分子を含む第一の分子であって、ここで、該操作された微生物標的化分子は、磁性ビーズを含む基質と連結された、第一の分子;および
微生物へ特異的な標的化剤にコンジュゲートされた検出可能な標識を含む第二の分子。
【請求項10】
前記標識されていない操作された微生物標的化分子が、Fc領域の部分と連結されたマンノース結合レクチンの前記糖質認識ドメインの少なくとも一部を含む、請求項記載の組成物。
【請求項11】
前記操作された微生物標的化分子が、ヒトIgG1のFc断片のC末端と融合したマンノース結合レクチンの糖質認識ドメインおよびネック領域を含む、請求項9または10記載の組成物。
【請求項12】
前記Fc領域の部分が、前記糖質認識ドメインのN末端と連結された、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記レクチンが、SEQ ID NO:4の配列を有する糖質認識ドメインまたはその断片を含む、請求項12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記レクチンが、SEQ ID NO:4の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を有する糖質認識ドメインを含む、請求項12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記検出可能な標識が酵素を含む、請求項14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
前記酵素がセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
酵素のための基質をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
前記基質が3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンである、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記微生物に特異的な標的化剤が、操作された微生物標的化分子または抗体を含む、請求項18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
前記微生物に特異的な標的化剤がMBLを含む、請求項19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
前記標識されていない操作された微生物標的化分子が、補体活性化ドメインを含まない、請求項1~20のいずれか一項記載の方法または組成物。
【請求項22】
前記標識されていない操作された微生物標的化分子が、MBLのCRDを磁気ビーズから離して配向させるように適合された基質結合ドメインをさらに含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法または組成物。
【請求項23】
前記基質結合ドメインがAKTトリペプチドを含む、請求項22記載の方法または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)(35 U.S.C §119(e))の下で、2011年7月18日に提出された米国仮出願第61/508,957号;2012年2月29日に提出された第61/605,081号;および2012年2月29日に提出された第61/605,052号の恩典を主張し、それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府の援助
本発明は、DARPAによって授与された助成金番号N66001-11-1-4180の下で、米国政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書に記載されるものは、全体として、対象の血液および組織などの体液、食品、水ならびに環境表面を含む、試料または標的領域における微生物を検出および/または除去するための分子、製品、キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
敗血症(sepsis)は、ヒトおよび他の動物における病的状態および死亡の主な原因である。米国では、敗血症は、非外傷性疾病の患者における集中治療室での死亡原因の第2位である。これはまた、若齢家畜の死亡原因の第1位であり、新生仔ウシの7.5~29%が罹患するほか、新生仔ウマにおいて頻度の高い医学的問題でもある。ここ数十年で重篤な感染症の治療は大きく進歩したにもかかわらず、敗血症の発生率およびそれに起因する死亡率は上昇し続けている。
【0005】
敗血症は血液中への微小生物の全身性侵襲が原因で起こり、2つの別個の問題を生じ得る。第1に、微小生物の増殖は、組織、臓器および血管機能に直接的に損傷を及ぼす恐れがある。第2に、微小生物の有毒成分が急速な全身性炎症反応を招く恐れがあり、それは重要臓器に急速に損傷を及ぼして、循環虚脱(すなわち、敗血症性ショック)を、そして多くの場合は死亡につながる恐れがある。
【0006】
敗血症は、米国胸部専門医学会(American College of Chest Physicians)および米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine)により、立証された感染プロセスに応答しての全身性炎症反応(SIRS)によって定義されている全身性反応である。SIRSは、以下のうち2つまたはそれ以上の存在によって定義される:体温変化(36℃未満または38℃を上回る)、頻脈(心拍数が90/分を上回る)、頻呼吸(呼吸数が20/分を上回る)または低炭酸症(PaCO2が4.3kPa未満)、白血球減少(白血球(WBC)4000個/mm3未満、または白血球増加(WBCが12000個/mm3を上回る)、または桿状核球が10%を上回る。感染プロセスの確定は、微生物学的手段(染色、培養、抗原血症または抗原尿、核酸検出)によって、または画像法もしくは診察によって得られる感染症の疾病特有徴候によって確かめられる。感染はいずれかの臓器系を冒すこともあれば、より重症の症例では、敗血症(septicemia)(すなわち、血流中の微生物、それらの代謝最終産物または毒素)、菌血症(すなわち、血液中の細菌)、毒血症(すなわち、血液中の毒素)、内毒素血症(すなわち、血液中の内毒素)として現れることもある。また、敗血症が、真菌血症(すなわち、血液中の真菌)、ウイルス血症(すなわち、血液中のウイルスまたはウイルス粒子)および寄生虫血症(すなわち、血液中の寄生性蠕虫または原虫)が原因で起こることもある。このように、敗血症および敗血症性ショック(敗血症が原因で起こる急性循環不全、多くの場合は多臓器不全および高い死亡率を伴う)は、様々な微小生物によって引き起こされる可能性がある。
【0007】
敗血症には、感染性微生物のタイプによって特徴づけられる3つの主要なタイプがある。例えば、グラム陰性敗血症は、特定されている中で最も頻度が高い(症例の致死率は約35%である)。これらの感染症の大半は、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる。ブドウ球菌(Staphylococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)などのグラム陽性病原体は、敗血症の第2の主要な原因である。第3の主要な群には真菌が含まれ、真菌感染症が原因となるのは敗血症症例の比較的少ない割合ではあるものの、死亡率は高い;これらのタイプの感染症は、免疫低下患者における発生率も相対的に高い。
【0008】
これらの感染症のいくつかは院内環境で獲得されることがあり、ある種の外科手術(例えば、腹部手術)、癌または移植療法に起因する免疫抑制、免疫不全症、および静脈内カテーテルを介した曝露が原因で起こることがある。また、敗血症はよく、外傷、新生児難産、および腸捻転(特にイヌおよびウマにおいて)によっても引き起こされる。肺(肺炎)、膀胱および腎臓(尿路感染症)、皮膚(蜂巣炎)、腹部(虫垂炎など)、骨(骨髄炎(osteomyeltitis))および関節(関節炎)ならびに他の部位(髄膜炎)における感染症が拡散して、敗血症を招くこともある。状況によっては、微生物で汚染された水、飲み物もしくは食べ物の摂取、または微生物で覆われた環境表面との接触が、敗血症を招く感染症を引き起こすこともあれば、食物および飲料水によって媒介される病原体、例えばシゲラ属(Shigella spp)または大腸菌の特定の血清型(O157 H7など)、チフス菌(Salmonella enterica serovar typhi)またはリステリア菌(Listeria monocytogenes)を含むサルモネラ属(Salmonella spp)による感染が敗血症を招くこともある。
【0009】
敗血症であるか、または敗血症の疑いのある患者の多くは、24~48時間のうちに急速な衰えを示す。敗血症性ショックの患者が抗菌療法による恩恵を受けるためには、適した治療を6時間未満に受ける必要があることが報告されている。このため、有効な患者管理のためには迅速かつ確実な診断法および治療法が必須である。残念ながら、感染症のタイプ、例えば敗血症などに関する従来の確定診断は、血液培養物を接種し、18~24時間のインキュベーションを行い、原因微小生物を固形培地にプレーティングし、さらなるインキュベーション期間を経た上で、1~2日後に最終確認を行うことを伴う微生物学的分析を必要とする。たとえ即座に積極的な治療を行っても、患者の中には多臓器機能不全症候群を発症して最終的に死亡する者もいる。それ故に、感染性疾患、血液媒介感染症、敗血症または全身性炎症反応症候群の患者の診断および治療のための改良された手法に対しては、依然として強い需要がある。食品、水および/または環境表面における感染性病原体を迅速に検出することができれば、集団における感染症および敗血症を予防する上でも大きな価値があると考えられる。
【発明の概要】
【0010】
概要
本明細書に記載の態様は、少なくとも一部には、微生物標的化分子または微生物結合性分子を操作すること(engineering)に基づく。例えば、1つの態様において、微生物標的化分子は、糖質結合タンパク質(例えば、マンノース結合レクチン)の糖質認識ドメインおよびネック領域を、ヒトIgG1のFc断片のC末端と融合させることによって操作される。そのような微生物標的化分子を、野生型マンノース結合レクチンに存在していて結合および検出を困難にする、補体活性化および凝固という副作用を軽減するために改変することもできる。さらに、本明細書に記載の微生物標的化分子を、例えば、部位特異的ビオチン化のためにFc断片のN末端にトリペプチドAKTを挿入し、その結果、それらの糖質認識ドメインをそれに付加される基質から離して配向させ、それによって微生物結合能力が高まるようにすることによって操作することもできる。微生物標的化分子を、様々な基質、例えば磁性マイクロビーズに多価配向様式で付加して、微生物標的化基質を形成させることもできる。「マイクロビーズ」という用語は、本明細書で用いる場合、一般に、約0.001μm~約1000μmまたは約0.001μm~約100μmまたは約0.01μm~約10μmのサイズを有する、任意の材料のビーズまたは粒子のことを指す。1つの態様において、マイクロビーズはナノビーズである。「ナノビーズ」という用語は、本明細書で用いる場合、一般に、約1nm~約1000nm、約10nm~約500nm、約25nm~約300nm、約40nm~約250nm、または約50nm~約200nmの範囲にわたるサイズを有するビーズまたは粒子のことを指す。
【0011】
いくつかの態様においては、微生物標的化分子を、例えば、基質に対する微生物標的化分子の付加を容易にするために改変することができる。例えば、1つの態様においては、例えば、アビジンまたはアビジン類似物でコートされた基質に対する付加のために、微生物標的化分子をビオチン化することができる。このようにして、本明細書に記載の操作された微生物標的化分子は、例えば、微生物または病原体によって引き起こされる疾患の診断および/または治療、対象の体液および組織、食品、水または環境表面を含む試料からの微生物または病原体の除去;ならびに標的化された薬物送達デバイスの開発といった様々な用途のための有益な構成単位となる。
【0012】
したがって、本明細書に提供されるものは、以下のものを含む、操作された微生物標的化分子を対象とする:(a)少なくとも1つの微生物表面結合ドメイン;(b)微生物表面結合ドメインを基質から離して配向させるように適合された基質結合ドメイン;および(c)微生物表面結合ドメインと基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカー。
【0013】
いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片を含み得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質結合タンパク質由来の糖質非認識ドメインまたはその断片、例えば、糖質結合タンパク質のネック領域をさらに含み得る。本明細書で用いる場合、「糖質非認識ドメイン」とは、微生物表面に直接的には結合しない糖質結合タンパク質の部分または断片のことを指す。
【0014】
いくつかの態様において、CRDまたは糖質結合タンパク質は、例えば、マンノース結合レクチンに由来し得る。それ故に、本明細書で提供されるもう1つの局面は、以下のものを含む操作されたマンノース結合レクチン分子を対象とする:(a)少なくとも1つの糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片;(b)CRDを基質から離して配向させるように適合された基質結合ドメイン;および(c)CRDと基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカー。
【0015】
いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質結合タンパク質の全アミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、糖質結合タンパク質のアミノ酸配列は補体領域を含まない。いくつかの態様において、糖質結合タンパク質のアミノ酸配列は凝固活性化領域を含まない。
【0016】
本明細書に記載の任意の局面のいくつかの態様において、リンカーは、免疫グロブリン、例えばIgG1のFc領域の一部分を含み得る。そのような態様において、Fc領域の一部分は、糖質認識ドメインのN末端に直接的にまたは間接的に付加することができる。いくつかの態様において、Fc領域の一部分は、例えば、操作された分子の半減期を延長させるため、または免疫応答(例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用および補体依存性細胞傷害作用)をモジュレートするために、遺伝的に改変することができる。
【0017】
本明細書に記載の任意の局面のいくつかの態様において、基質結合ドメインは、アミノ酸配列AKTを含む少なくとも1つのオリゴペプチドを含み得る。他の態様において、基質結合ドメインはビオチン分子を含み得る。例えば薬学的組成物中の可溶性タンパク質として用いるためといった様々な用途に応じて、操作された微生物標的化分子のいくつかの態様において、基質結合ドメインが非必須となる可能性もある。また別の場合には、操作された微生物標的化分子を、多種多様な用途のために様々な基質をコートするために用いることもできる。いくつかの態様において、基質は磁性マイクロビーズであり、これはその結果、微生物標的化の磁性マイクロビーズまたはオプソニンの形成をもたらす。いくつかの態様において、微生物標的化の磁性マイクロビーズまたはオプソニンは、微生物標的化ナノビーズを範囲に含み得る。
【0018】
微生物標的化磁性マイクロビーズは、試料、例えば、血液および組織における微生物または病原体を除去するために用い得るだけでなく、それらはまた、種々の微生物または病原体の有無を検出するため、および/またはそれらを識別するためのアッセイを開発するために用いることもできる。したがって、被験試料における微生物の有無を検出するため、および/または異なる微生物または病原体を識別するためのキットおよびアッセイも本明細書において提供される。いくつかの態様において、キットは、微生物標的化基質(例えば、複数の操作された微生物標的化分子でコートされた磁性マイクロビーズの集団をそれぞれが含有する1つまたは複数の容器を非限定的に含む);および少なくとも1つの試薬を含む。いくつかの態様において、キットは、検出可能な標識の集団をそれぞれが含有する1つまたは複数の容器をさらに含むことができ、ここで検出可能な標識のそれぞれは、微生物または病原体と結合する分子にコンジュゲートされている。そのようなキットは、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)、免疫蛍光法、顕微鏡検査、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、または他の任意の放射線学的、化学的、酵素的もしくは光学的な検出アッセイによる分析のために用いることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載のキットおよびアッセイは、例えば、微生物の実体が判明しているか否かにかかわらず、1つまたは複数の抗生物質に対する被験試料における微生物の感受性を判定するための抗生物質感受性試験に対して適合することができる。
【0019】
限定的ではないが、いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、様々な用途、例えば創傷被覆材などに、単独で、または銀ナノ粒子および他の創傷治療などの他の創傷被覆材プロトコルと組み合わせて用いるための抗生物質または消毒薬として製剤化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1A~1Cは、本明細書に記載の操作された微生物標的化または微生物結合性分子および微生物標的化基質の1つまたは複数の態様を操作する一般的なスキームを示している。図1Aは、ネイティブ(野生型)マンノース結合レクチン(MBL)の概略図である。図1Bは、操作された微生物標的化分子または操作された結合性分子、例えば操作されたMBL分子の1つまたは複数の態様を示している。図1Cは、微生物標的化基質を形成させるために、基質、例えば磁性マイクロビーズまたはナノビーズに対してコンジュゲートされた微生物標的化または微生物結合性分子の1つまたは複数の態様を示している。
図2】「ネック、および糖質認識ドメイン(CRD)頭部」である、野生型MBLの一部分の結晶構造を示している。この結晶構造は、3つのMBL頭部およびカルシウム結合部位を描写している(Chang et al. (1994) J Mol Biol. 241:125-7)。
図3】本明細書に記載の操作された微生物標的化または微生物結合性分子の1つまたは複数の態様に関する例示的なFc-Xベクター構築物を示している模式図である。
図4】精製された野生型MBL(MBL WT)タンパク質、および本明細書に記載の操作された微生物標的化または微生物結合性分子の1つまたは複数の態様(FcMBL.81:SEQ ID NO.6)の発現を示しているウエスタンブロット画像を示している。
図5】カルシウムイオンの存在下または非存在下における、本明細書に記載の操作された微生物標的化または微生物結合性分子の様々な態様のマンナン結合の結果を示している。カルシウムイオンを除去するために、キレート剤(例えば、EDTA)を試料に添加することができる。
図6図6A~6Bは、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様(例えば、AKT-FcMBL.81を、約1μmのサイズを有する磁性マイクロビーズに対してコンジュゲートさせたもの)による、様々な微生物密度での、微生物、例えばカンジダ・アルビカンス(C. albicans)の捕捉の結果を示している棒グラフである。図6Aは、低い微生物密度(例えば、C.アルビカンス細胞が1500個)で、微生物標的化基質および対照と結合した微生物の割合を示している。図6Bは、微生物がはるかに高い微生物密度(例えば、108個を上回る)で存在する場合に、種々の磁性マイクロビーズ(操作された微生物標的化磁性マイクロビーズを含む)による処理後に微生物試料の中に保たれた非結合型微生物の量を示している。
図7】微生物または病原体、例えばカンジダなどを捕捉する効率に及ぼす、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様(例えばマイクロビーズのサイズが直径約100nm~約1000nmで様々であったAKT-FcMBL.81磁性マイクロビーズなどの微生物標的化磁性マイクロビーズ)のサイズ効果を示している。
図8】微生物(例えば、カンジダ)の増殖が対数期にある場合と飽和期にある場合を対比した、種々の磁性マイクロビーズ(操作された微生物標的化磁性マイクロビーズを含む)による処理後に微生物試料の中に保たれた非結合型微生物の量を示している。
図9】FcMBL ELISAを用いて測定した、ヒトドナーからの血液試料由来の微生物/微生物物質の枯渇を示している。図中の「投入物(input)」は、黄色ブドウ球菌または大腸菌によるスパイク投与(spike)を行って、Ca2+(最終[Ca2+]=5mM)およびヘパリン(4mg/ml)を加え、その後にいずれかのFcMBLマイクロビーズを添加した非希釈EDTAドナー血液に対応する。「1回目の実行(1st run)」は、微生物捕捉のために20μl/mLのMYONE(商標)FcMBLマイクロビーズとともにインキュベートし(HULAMIXER(商標)で20分間混合しながら)、その後にFcMBLベースのELISA分析を行った「投入」血液試料に対応する。「2回目の実行(2nd run)」は、微生物捕捉のために20μl/mlのMYONE(商標)FcMBLマイクロビーズとともにインキュベートし(振盪機で10分間混合しながら)、その後にFcMBLベースのELISA分析を行った「投入」血液試料に対応する。
図10】1つまたは複数の態様による操作された微生物標的化磁性マイクロビーズを含む例示的なELISAアッセイの模式図である。ELISAアッセイは、例えば敗血症検査のような、任意の診断用途のために用いることができる。
図11】血液中のC.アルビカンスの検出の結果を示しているグラフである。C.アルビカンスの系列希釈物を血液中にスパイク投与し、AKT-FcMBL磁性マイクロビーズ(1μm)によって捕捉して、HRP標識FcMBLを用いるELISA法によって検出した。
図12】FcMBLベースのELISAアッセイの1つまたは複数の態様の細菌検出感度を示しているグラフである。大腸菌の系列希釈物を緩衝液中にスパイク投与し、AKT-FcMBL磁性マイクロビーズ(サイズ約128nm)によって捕捉して、HRP標識FcMBLを用いるELISA法によって検出した。いくつかの態様において、FcMBLベースのELISA比色アッセイの検出限界(LOD)は、大腸菌の菌数約160個またはそれ未満である。
図13】微生物検出のためのディップスティックアッセイの1つまたは複数の態様を示している模式図である。FcMBLを膜(例えば、Biodyne膜)に付加することができる。膜を被験試料(例えば、血液試料)と混合し、洗浄し、所望の検出用タンパク質(例えば、AP標識FcMBL、またはある特定の微生物、例えば細菌もしくは真菌に対する特異的抗体)とともにインキュベートして、洗浄し、比色法による発色のための読み取り試薬を添加する。ディップスティックアッセイは手作業で行ってもよく、または自動化用に改変してもよい。
図14】微生物検出のためのELISAに基づく検査の1つまたは複数の態様を示している模式図である。被験試料(例えば、血液試料)を、凍結乾燥したFcMBL磁性マイクロビーズまたはFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを含有する単一のチューブ(例えば、EDTA VACUTAINER(登録商標)などの採血容器)に添加する。微生物の捕捉および検出のための例示的なプロトコルは実施例10に記載されている。ELISAに基づく検査は手作業で行ってもよく、または自動化用に改変してもよい。いくつかの態様において、単一のチューブベースのELISAアッセイは、黄色ブドウ球菌および大腸菌などの微生物または病原体を検出するために用いることができる。
図15】AP標識FcMBLによる膜上の細菌の直接検出を示している画像である。大腸菌および黄色ブドウ球菌の系列希釈物(10-1~10-6)をBiodyne膜上に直接的にスポッティングし、1%カゼイン中で約30分間ブロックし、Ca2+(5mM)を含むTBST中で2回洗浄し、Ca2+を含む3% BSA 1X TBST中でAP標識FcMBL(1:10,000に希釈)とともにインキュベートして(約20分間)、Ca2+(5mM)を含むTBST中で2回、Ca2+(5mM)を含むTBS中で1回洗浄した上で、比色法における読み取り値を発色させるためにBCIP/NBTと約20分間反応させた。この例では、30分間の発色後に検出が可能であった最大希釈度はいずれの種でも10-4であった(大腸菌細胞130個および黄色ブドウ球菌細胞343個の検出に対応する)。
図16】FcMBLをカップリングさせた膜を用いるドットブロット法による黄色ブドウ球菌の捕捉および検出を示している画像である。黄色ブドウ球菌の希釈物(10-2および10-4)を、Biodyne膜上に固定化したFcMBLによって捕捉した。例えば、表記した2通りの濃度のFcMBL 5μLをBiodyne膜上にスポッティングし、乾燥させて、1%カゼイン中でブロックし、Ca2+(5mM)を含むTBST中で2回洗浄した。各FcMBL濃度を黄色ブドウ球菌の系列希釈の捕捉に関して評価し(およそ10分間)、洗浄した上で、Ca2+(およそ20分間)を含む3% BSA 1X TBST中にあるAP標識FcMBLの1:10,000希釈物によって検出した。過剰なAP標識FcMBLは洗浄によって除去した(例えば、Ca2+(5mM)を含むTBSTで3回、およびCa2+(5mM)を含むTBSで1回の洗浄)。比色検出はBCIP/NBTによるおよそ20分間の発色によって行った。
図17】例示的な微生物検出過程または診断過程の略図である。
図18図18A~18Bは、2種類のFcMBLマイクロビーズ形式上での大腸菌のELISAを示している折れ線グラフである。図18Aは、MYONE(商標)Tosyl活性化ビーズに直接カップリングさせたFcMBLに対応し、図18Bは、ストレプトアビジンMYONE(商標)T1マイクロビーズ(直径およそ1000nm)にカップリングさせたビオチン化AKT-FcMBLに対応する。一晩培養した大腸菌の3種類の希釈物をFcMBLマイクロビーズ上に捕捉させ、4種の溶出緩衝液のうち1つで洗浄した後に、本明細書に記載のELISAプロトコルの1つまたは複数の態様を実施した。シグナルの減少は、ELISA検出の前にマイクロビーズに結合していた大腸菌がより少ないことに対応する。
図19】FcMBLマイクロビーズと混合するか、またはFcMBLマイクロビーズを伴わない対照のいずれかである黄色ブドウ球菌を等力価でプレーティングしたものを示している画像である。
図20図20A~20Bは、種々の微生物種の臨床分離物における操作された微生物標的化または微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の捕捉効率を示しているグラフである。図20Aは、黄色ブドウ球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の臨床分離物におけるFcMBLの捕捉効率に関するデータを示している。図20Bは、黄色ブドウ球菌、MRSA、髄膜炎菌(N. meningitidis)および緑膿菌(P. aeroginosa)の臨床分離物におけるFcMBLの捕捉効率に関するデータを示している。
図21A】様々な種類の流体から得られた臨床分離物における操作された微生物標的化または微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の捕捉効率を示している折れ線グラフである。図21Aは、他の体液、例えば、尿、脳脊髄液(CSF)および痰から得られた、黄色ブドウ球菌の臨床分離物におけるFcMBLの捕捉効率に関するデータを示している。
図21B】様々な種類の流体から得られた臨床分離物における操作された微生物標的化または微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の捕捉効率を示している折れ線グラフである。図21Bは、他の体液、例えば、尿、脳脊髄液(CSF)および痰から得られた、大腸菌の臨床分離物におけるFcMBLの捕捉効率に関するデータを示している。
図22】黄色ブドウ球菌がオプソニン化貪食作用を回避する機序を示している模式図である。さらなる詳細については、Fraser T., Nature Reviews Microbiology 2OO5: 3(12):948-58を参照されたい。
図23】AKT-FcMBL 1μM磁性マイクロビーズによって捕捉され、FcMBL-HRP ELISAによって検出された、様々な濃度の黄色ブドウ球菌の検出シグナルを示している棒グラフである。アッセイのこの態様の感度は約149 CFU/mLであった。
図24】キレート化、pHおよび塩洗浄を含む種々の処理による、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)上に結合した黄色ブドウ球菌および大腸菌細菌の溶出を示している棒グラフである。
図25図25A~25Bは、キレート剤を用いた、大腸菌および黄色ブドウ球菌off FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)の溶出を示している棒グラフである。図25AはOD450に関する結果を示しており、図25Bは、FcMBLでコートされた基質上に処理後に保たれた結合型細菌の割合としての結果を示している。
図26図26A~26Bは、キレート剤(例えば、EDTA)の存在下における、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)に結合した黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する、チューブベースのELISAの結果を示している。図26Aは、キレート剤(例えば、EDTA)の存在下または非存在下における、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)に結合した黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する、チューブベースのELISAの比色成績を示している画像である。図26Bは、図26Aで発色した色の定量的測定を示している棒グラフである。
図27】キレート剤(例えば、EDTA)および様々なCa2+濃度の存在下または非存在下における、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)上に捕捉された種々の微生物種または病原体種を比較している棒グラフである。
図28】キレート剤(例えば、EDTA)および/または低pH緩衝液の存在下または非存在下における、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ)に結合した黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する、チューブベースのELISAアッセイの比色成績を示している画像である。
図29】EDTAを伴うかまたは伴わない、捕捉用および/または洗浄緩衝液における、大腸菌および黄色ブドウ球菌のドットブロット判定を示している画像である。
図30A】生きた微生物および/または微生物に由来する断片もしくは物質を含む微生物物質に対する、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様の結合を示している画像である。図30Aは、1つまたは複数の微生物標的化基質(例えば、FcMBLでコートされた蛍光性マイクロビーズ)が少なくとも1つの生きた微生物、例えば大腸菌と結合すると、微生物増生が観察されることを示している。
図30B】生きた微生物および/または微生物に由来する断片もしくは物質を含む微生物物質に対する、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様の結合を示している画像である。図30Bは、FcMBLでコートされた蛍光性マイクロビーズが、生きた微生物(中央のパネルによって示されている)および微生物に由来する断片または物質を含む微生物物質(左のパネル)と結合することを示している、一組の蛍光画像である。右のパネルは、最初の2つの蛍光画像を明視野画像と重ね合わせたものである。
図31A】流体試料から、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様上に微生物またはその断片を捕捉して、その後に抗体特徴づけを行ったことを示している画像である。図31Aは、ヘパリン添加血液から、FcMBLでコートされたマイクロビーズ(例えば、磁性または蛍光性マイクロビーズ)上へ大腸菌またはその断片を捕捉し、その後に大腸菌リポ多糖リピドAに対する抗体(抗LPSリピドA抗体)とのインキュベーションを行ったことを示している。図31A~31Bはいずれも、抗LPSリピドA抗体が、大腸菌またはその断片の非存在下ではFcMBLでコートされたマイクロビーズと結合しないことを示している。
図31B】流体試料から、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様上に微生物またはその断片を捕捉して、その後に抗体特徴づけを行ったことを示している画像である。図31Bは、EDTA抗凝固剤を含む血液から、FcMBLでコートされたマイクロビーズ(例えば、磁性または蛍光性マイクロビーズ)上に大腸菌またはその断片を捕捉し、その後に大腸菌リポ多糖リピドAに対する抗体(抗LPSリピドA抗体)とのインキュベーションを行ったことを示している。図31A~31Bはいずれも、抗LPSリピドA抗体が、大腸菌またはその断片の非存在下ではFcMBLでコートされたマイクロビーズと結合しないことを示している。
図32A】ラット敗血症モデルの試料から、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様上に微生物を捕捉し、その後に抗体特徴づけを行ったことを示している画像である。図32Aは、24時間の感染後のラット血液(上のパネル)または胸水(下のパネル)から、FcMBLでコートされたマイクロビーズ(例えば、磁性または蛍光性マイクロビーズ)上に微生物またはその断片を捕捉して、その後に抗LPSリピドA抗体とのインキュベーションを行ったことを示している。
図32B】ラット敗血症モデルの試料から、微生物標的化基質の1つまたは複数の態様上に微生物を捕捉し、その後に抗体特徴づけを行ったことを示している画像である。図32Bは、72時間の感染後のラット血液(上のパネル)または胸水(下のパネル)から、FcMBLでコートされたマイクロビーズ(例えば、磁性または蛍光性マイクロビーズ)上に微生物またはその断片を捕捉して、その後に抗LPSリピドA抗体とのインキュベーションを行ったことを示している。
図33】微生物標的化基質の1つまたは複数の態様を用いて陽性シグナルを示す、試料のさらなる鑑別または同定を可能にするための、微生物に対する特異的抗体の使用を示している一組の画像である。非特定化された臨床血液試料を、本明細書に記載のFcMBL ELISAによってスクリーニングして、FcMBLでコートされたマイクロビーズ上に捕捉された微生物物質(無傷細胞およびその断片を含む)を、抗LPSリピドA抗体を用いてさらにスクリーニングした。上のパネルは、FcMBL ELISAによるシグナルが実質的に陰性または無視し得る程度であった臨床試料では抗LPSリピドA抗体シグナルが全く検出されなかったことを示しており、このことは臨床試料において微生物感染が検出されなかったことを示している。中央のパネルは、FcMBL ELISAにおいて陽性シグナル(OD=およそ1.69)を生じた微生物物質が抗LPSリピドA抗体と結合したことを示しており、このことは微生物物質が大腸菌に由来する可能性があること、および対応する臨床試料がグラム陰性感染(例えば、大腸菌感染)を有したことを示している。対照的に、下のパネルは陽性シグナル(OD>3.9)を生じた微生物物質が抗LPSリピドA抗体と結合しなかったことを示しており、このことは、例えば臨床試料がグラム陽性微生物に感染している場合のように、微生物物質が大腸菌以外の微生物に由来する可能性があることを示している。
図34A】FcMBL磁性マイクロビーズの使用が、従来の血液培養よりも、血液媒介病原体(生きた病原体、ならびに死滅した病原体および内毒素のように生きていないものを含む)の高感度かつ信頼性の高い尺度であることを示しているデータグラフである。図34Aは、腹腔内膿瘍を発症した5匹のラットから収集した血液の第4日時点の嫌気的培養の結果を示している棒グラフである。
図34B】FcMBL磁性マイクロビーズの使用が、従来の血液培養よりも、血液媒介病原体(生きた病原体、ならびに死滅した病原体および内毒素のように生きていないものを含む)の高感度かつ信頼性の高い尺度であることを示しているデータグラフである。図34Bは、FcMBL磁性マイクロビーズを用いた比色ELISAおよび従来の血液培養に基づく微生物検出の結果、ならびにそれらとラットの病的状態との相関を比較しているプロットである。
図34C】FcMBL磁性マイクロビーズの使用が、従来の血液培養よりも、血液媒介病原体(生きた病原体、ならびに死滅した病原体および内毒素のように生きていないものを含む)の高感度かつ信頼性の高い尺度であることを示しているデータグラフである。図34Cは、FcMBL磁性マイクロビーズを用いるELISAによって判定した病原体負荷量と病的状態ランクとの相関を示している折れ線グラフである。
図34D】FcMBL磁性マイクロビーズの使用が、従来の血液培養よりも、血液媒介病原体(生きた病原体、ならびに死滅した病原体および内毒素のように生きていないものを含む)の高感度かつ信頼性の高い尺度であることを示しているデータグラフである。図34Dは、別の実験における、比色FcMBL磁性マイクロビーズを用いるELISAおよび従来の血液培養に基づく微生物検出の結果を比較している棒グラフである。
図35】微生物標的化磁性マイクロビーズの1つまたは複数の態様による微生物枯渇のパーセンテージを示している棒グラフである。FcMBLでコートされた種々のサイズ(およそ1μm、およそ128nm、およびおよそ50nm)の磁性マイクロビーズを、緩衝液中にまずスパイク投与した大腸菌および黄色ブドウ球菌を捕捉するために用いた。微生物が結合したFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを、続いて緩衝液から除去した。磁性マイクロビーズの除去後に、この緩衝液を、FcMBLでコートされた種々のサイズの磁性マイクロビーズによる微生物枯渇のレベルを判定するためのLBプレート上への接種に用いた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬等に限定されず、それらは変更され得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の態様を説明することを目的としたものにすぎず、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は専ら特許請求の範囲によって定義されるものである。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り複数の参照を包含し、その逆もまたしかりである。実施例を実施する以外では、またはそうでないことが示されていない限り、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表すすべての数値は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されるべきことを理解されたい。
【0023】
特定されているすべての特許およびその他の刊行物は、説明および開示の目的で、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載の方法論を説明および開示する目的で、明示的に、参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日より前にそれらが開示されていたことを示すために提供されるにすぎない。これに関するいかなる事情も、本発明者らが、先行発明であるためにまたは任意のその他の理由で、そのような開示よりも先の日付を主張する資格を有さないことの承認とみなされるべきではない。日付に関する言及またはこれらの書類の内容に関する表示はすべて、出願人が入手し得た情報に基づいており、これらの書類の日付または内容の正確性に関する承認となるものではない。
【0024】
それ以外のことが定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術・科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験には任意の公知の方法、装置および材料が使用され得るが、これらの方法、装置および材料は、この観点で、本明細書に記載されている。
【0025】
本明細書には、インビボ、インサイチューもしくはインビトロで被験試料から微生物を分離するおよび/または被験試料における微生物の存在もしくは非存在を検出するための、操作された微生物標的化または微生物結合性分子、同分子を含む組成物、プロセスまたはアッセイ、ならびにキットが記載されている。操作された微生物標的化または微生物結合性分子は、少なくとも1つの微生物、例えば、無傷の微生物、および/または「微生物物質」に結合するまたはこれらを捕捉することができる。本明細書で使用される「微生物物質」という用語は、微生物から得られる、微生物を起源とするまたは微生物から分泌される任意の物質または成分を表す。例えば、操作された微生物標的化または微生物結合性分子に結合することができる微生物から得られるまたは分泌される微生物物質または成分は、細胞壁成分、外膜、細胞膜、リボソーム、微生物莢膜、線毛または鞭毛、上記の微生物成分の任意の断片、微生物から得られる任意の核酸(例えば、16SリボソームDNAを含むDNA、およびRNA)、ならびに微生物内毒素(例えば、リポ多糖類)を含み得るがこれらに限定されない。加えて、微生物物質は、宿主または環境に対して有害な作用(例えば、毒性)をもたらし得る非生存性の微生物物質を包含し得る。
【0026】
本明細書に記載される様々な態様にしたがい、操作された微生物標的化分子また微生物結合性分子は、リンカー(例えば、Fc断片)に直接的または間接的にコンジュゲートされた微生物表面結合ドメイン(例えば、糖質認識ドメイン)を含み、さらに、固定化のために基質結合ドメインを含み得る。したがって、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または微生物結合性分子は、可溶化タンパク質として、例えば治療用組成物中の可溶化タンパク質として使用することも、微生物感染または疾患の診断および/または処置から微生物浄化組成物または装置や薬物送達に及ぶ様々な用途のために、基質に固定化することもできる。
【0027】
1つの局面において、本明細書には、少なくとも1つの微生物表面結合ドメイン、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメイン、および微生物表面結合ドメインと基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカーを含む、操作された微生物標的化分子(または操作された微生物結合性分子)が提供される。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質認識ドメインまたはその断片を含み得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインはさらに、マンノース結合レクチン(MBL)の少なくとも一部分を含み得る。したがって、本明細書に提供される別の局面は、MBLから得られる糖質認識ドメインの少なくとも断片;糖質ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメイン;およびMBL糖質認識ドメインの断片と基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカーを含む、操作されたMBL分子である。「微生物結合性分子」および「微生物標的化分子」という用語は、本明細書において言い換え可能に使用される。
【0028】
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様において、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメインは、常に必要なものではなく、したがって、特定の環境下では、例えば、可溶化形態の、例えば治療目的で可溶化形態の操作された微生物標的化分子を使用する場合は、除外することができる。さらに、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメインを除外した操作された微生物結合性分子は、必ずしも、その操作された微生物結合性分子が基質表面に結合できないことを意味するものではないことに留意されたい。いくつかの態様において、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメインを除外した操作された微生物結合性分子は、依然として基質表面に結合することができるが、基質表面に対する糖質認識ドメインの配向は無秩序であり得る。
【0029】
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様において、操作された微生物標的化分子はさらに、例えば微生物および/または微生物物質の存在または非存在の検出を容易にするために、検出可能な標識を含み得る。操作された微生物標的化分子のいくつかの態様とのコンジュゲートに適した検出可能な標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、磁気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物、ならびに本明細書に記載される検出可能な標識の任意の例およびそれらの任意の等価物を含み得る。いくつかの態様において、検出可能な標識はまた、例えば感染の診断のために、対象における組織または臓器の画像化または可視化を容易にすることができる任意の画像化剤(例えば、泡状体、リポソーム、球体、造影剤、または本明細書に記載される任意の検出可能な標識であるがこれらに限定されない)も包含する。
【0030】
いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子にコンジュゲートされる検出可能な標識は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)といった酵素またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。任意のタンパク質および抗体への検出可能な標識(例えば、HRPまたはAP)のコンジュゲートは、当技術分野で公知である。1つの態様において、FcMBL-HRPまたはFcMBL-AP構築物は、HRPまたはAPをFcMBLに直接カップリングする任意の当技術分野で知られている方法を用いて作製される。
【0031】
いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子にコンジュゲートされる検出可能な標識は、検出可能な物質にコンジュゲートされた微生物酵素基質を含み得る。例えば、検出可能な物質は、微生物によって保持または分泌される酵素によって微生物酵素基質から切断されたときに検出可能な部分(例えば、光発生シグナル)を形成するが、そのコンジュゲートされている状態では検出可能ではない任意の部分であり得る。微生物酵素基質は、検出したい微生物の1つまたは複数のタイプに特異的な基質であり、それはその微生物がどのような酵素を保持または分泌するかに依存して選択され得る。例えば、微生物の検出におけるそのような検出可能な標識の使用に関して、その内容が参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願:WO2011/103144を参照のこと。
【0032】
操作された微生物標的化分子の任意の態様を調製する一般的方法は、当技術分野で公知である(Ashkenazi, A. and S.M. Chamow (1997), "Immunoadhesins as research tools and therapeutic agents," Curr. Opin. Immunol. 9(2): 195-200, Chamow, S.M. and A. Ashkenazi (1996), "Immunoadhesins: principles and applications," Trends Biotechnol. 14(2): 52-60)。1つの例において、操作された微生物標的化分子は、発現ベクター、例えば、Lo et al. (1998) 11: 495および実施例1で議論されているFc-Xベクターにクローニングすることによって作製され得る。
【0033】
操作された微生物標的化分子は、同一種由来または異なる種由来の配列を含み得る。例えば、種間ハイブリッド微生物標的化分子は、許容できないレベルの有害な効果をもたらさない限り、マウス種由来のリンカー、例えばペプチドリンカー、およびヒトの糖質認識ドメインタンパク質由来配列を含み得る。本明細書に記載される操作された微生物標的化分子は、全体的にマウス由来の配列から作製されたものまたは完全にヒトから作製されたものも含み得る。
【0034】
微生物表面結合ドメインおよび糖質認識ドメイン
本明細書に開示されるように、操作された微生物標的化分子は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10またはそれ以上の微生物表面結合ドメインを含む、少なくとも1つの微生物表面結合ドメインを含み得る。本明細書で使用される「微生物表面結合ドメイン」という用語は、微生物もしくは病原体の表面、例えば、微生物もしくは病原体の表面上に存在する任意の成分、および/または任意の微生物物質、例えば、微生物から得られる、微生物を起源とするまたは微生物から分泌される任意の物質もしくは成分/断片に特異的に結合することができる任意の分子またはその断片を表す。微生物表面結合ドメインにおいて使用することができる分子は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合断片)、糖質結合タンパク質、例えば、レクチン、糖タンパク質、糖タンパク質結合分子、アミノ酸、糖質(単糖類、二糖類、三糖類および多糖類を含む)、脂質、ステロイド、ホルモン、脂質結合分子、補因子、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸(例えば、DNAもしくはRNA、核酸のアナログおよび誘導体、またはアプタマー)、ペプチドグリカン、リポ多糖類、小分子ならびにそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質認識ドメインまたはその断片を含み得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、微生物もしくは病原体の表面および/または任意の微生物物質に特異的に結合することができる任意の分子またはその断片を模倣するペプチド模倣体を含み得る。例えば、微生物表面結合ドメインは、任意の糖質認識ドメインもしくはその断片、例えば、MBLの糖質認識ドメインもしくはその断片;または当技術分野で公知の任意の糖質認識ドメインもしくはその断片、を模倣するペプチド模倣体を含み得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質結合タンパク質の完全アミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、約10~約300アミノ酸残基または約50~約150アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100アミノ酸残基またはそれ以上のアミノ酸配列を有し得る。微生物表面結合分子のあらゆる公知の配列に関して、当業者は、微生物表面結合ドメインとして最適なアミノ酸配列の長さを決定することができる。
【0036】
いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、オプソニンまたはその断片を含み得る。本明細書で使用される「オプソニン」という用語は、微生物または病原体の表面に結合または付加することができ、貪食作用のプロセスの結合エンハンサーとして作用することができる、天然に存在するおよび合成の分子を表す。本明細書に記載される操作された分子において使用することができるオプソニンの例は、ビトロネクチン、フィブロネクチン、補体成分、例えばC1q(その成分ポリペプチド鎖A、BおよびCのいずれかを含む)、補体断片、例えばC3d、C3bおよびC4b、マンノース結合タンパク質、コングルチニン、サーファクタントタンパク質AおよびD、C反応性タンパク質(CRP)、アルファ2-マクログロブリンならびに免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンのFc部分を含むがこれらに限定されない。
【0037】
いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、糖質認識ドメインを含み得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインはさらに、糖質結合タンパク質またはその一部分の、少なくとも一部分を含み得る。いくつかの態様において、糖質結合タンパク質の当該一部分は、補体系を活性化することができる。代替の態様において、糖質結合タンパク質の当該一部分は、補体系を活性化することができない。いくつかの態様において、糖質結合タンパク質の当該一部分は、例えば修飾を通じて、補体系を活性化することができないように選択または構成され得る。糖質結合タンパク質の例は、レクチン、コレクチン、フィコリン、マンノース結合レクチン(MBL)、マルトース結合タンパク質、アラビノース結合タンパク質およびグルコース結合タンパク質を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載される微生物表面結合ドメインに含まれ得る追加の糖質結合タンパク質は、植物から得られるレクチンまたは凝集素、例えばガランサス(スノードロップ)植物由来のガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)凝集素(GNA)、およびピーナツレクチンを含み得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、ペントラキシンファミリーのメンバー、例えば、C反応性タンパク質、もまた、糖質結合タンパク質として使用され得る。ペントラキシンファミリーのメンバーは、一般に、莢膜に覆われた微生物に結合することができる。糖質結合タンパク質は、野生型、組み換えまたは融合タンパク質であり得る。そのような糖質結合タンパク質の各々の糖質認識ドメインは当技術分野で公知であり、そしてこれらは本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の様々な態様において改変され得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメイン(例えば、糖質認識ドメインまたはその断片)を模倣し、微生物表面に結合することができるペプチド模倣体または任意の構造模倣体もまた、本明細書に記載される微生物表面結合ドメインとして使用され得る。
【0038】
本明細書で使用される「レクチン」という用語は、糖類(例えば、糖質)と特異的に相互作用する、天然または遺伝子修飾された(例えば、組み換え)タンパク質を含む任意の分子を表す。本明細書で使用される「レクチン」という用語はまた、所望の糖質結合特異性を有する、植物、動物、昆虫および微小生物を含むがこれらに限定されない任意の種から得られるレクチンを表し得る。植物レクチンの例は、マメ科(Leguminosae)レクチンファミリー、例えば、ConA、ダイズ凝集素、ピーナツレクチン、レンチルレクチンおよびガランサス(スノードロップ)植物由来のガランサス・ニバリス凝集素(GNA)を含むがこれらに限定されない。植物レクチンの他の例は、イネ科(Gramineae)およびナス科(Solanaceae)ファミリーのレクチンである。動物レクチンの例は、S型レクチン、C型レクチン、P型レクチンおよびI型レクチンの主要グループの任意の公知のレクチン、ならびにガレクチンを含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、糖質認識ドメインは、C型レクチンまたはその断片から得ることができる。C型レクチンは、結合のためにカルシウムを必要とする任意の糖質結合タンパク質を含み得る。いくつかの態様において、C型レクチンは、コレクチン、DC-SIGNおよびそれらの断片を含み得るがこれらに限定されない。理論に拘束されることを望まないが、DC-SIGNは、一般に、様々な微生物に対して、それらのエンベロープ上の高マンノース含有糖タンパク質を認識することによって結合することができ、ならびに/またはいくつかのウイルス、例えばHIVおよびC型肝炎の受容体として機能することができる。
【0039】
コレクチンは、コラーゲン含有C型レクチンのスーパーファミリーに属する可溶性のパターン認識受容体(PRR)である。例示的なコレクチンは、マンノース結合レクチン(MBL)(マンナン結合レクチン、マンナン結合タンパク質またはマンノース結合タンパク質としても公知)、サーファクタントタンパク質A(SP-A)、サーファクタントタンパク質D(SP-D)、肝臓コレクチン1(CL-L1)、胎盤コレクチン1(CL-P1)、コングルチニン、43 kDaコレクチン(CL-43)、46 kDaコレクチン(CL-46)およびそれらの断片を含むがこれらに限定されない。
【0040】
マンノース結合レクチン(MBL)は、マンノース結合タンパク質(MBP)またはマンナン結合レクチンもしくはマンナン結合タンパク質としても公知である、広範囲の微生物または病原体(ウイルス、細菌、真菌、原虫)の表面上の糖質に結合することによって自然免疫応答において役割を果たすことができ、補体系を活性化することができる、カルシウム依存性血清タンパク質である。MBLはまた、直接的オプソニンとして作用し、貪食細胞による認識および消化を容易にするよう病原体の表面をタグ付けすることによって、病原体との結合およびその取り込みを媒介することができる。
【0041】
MBLは、コレクチンファミリータンパク質のメンバーである。ネイティブのMBLは、各々が3つの同一のポリペプチド鎖を含むサブユニットから構成される多量体構造(例えば、約650 kDa)である(図1A)。各々のMBLポリペプチド鎖(シグナル配列を含めて248アミノ酸残基長を含む:SEQ ID NO.1)は、N末端システインリッチ領域、コラーゲン様領域、ネック領域および糖質認識ドメイン(CRD)を含む。各領域の配列は同定されており、当技術分野で周知である。SEQ ID NO.2は、シグナル配列を含まないMBLの全長アミノ酸配列を示す。
【0042】
ネイティブMBLの表面または糖質認識機能は、a-ヘリックスのコイルドコイルによってひとまとめにして保持されている3つのC型糖質認識ドメイン(CRD)のクラスターによって媒介される。N末端部分のコラーゲン様ドメインは、Gly-X-Yトリプレットから構成される。短いN末端ドメインは、鎖間ジスルフィド結合を形成するいくつかのシステイン残基を含んでいる。血清MBLは、げっ歯類では2~4つの3量体サブユニット、ヒトではそれより多く6つのサブユニットを含むより大きな形態に集合する。ラットの血清MBPの3つのオリゴマー形態はすべてMBPAと呼ばれ、補体と結合(fix)することができるが、大きなオリゴマーほど高い特異的活性を有する。多くの種は、第2の形態のMBPを発現する。ラットでは、第2の形態であるMBP-Cが肝臓において見出されている。MBP-Cは、3つのポリペプチドを含む単純なサブユニットを超えるより高次のオリゴマーを形成しない。
【0043】
ネイティブMBLは、微生物または病原体の表面上の糖質と相互作用することで、例えば、糖質であるマンノース、N-アセチルグルコサミンおよび/またはフコースに対してカルシウム依存的に結合することで、補体活性化のレクチン経路の病原体認識成分を形成することができる。MBLは、マンノースまたはN-アセチルグルコサミン残基の繰り返しを含む表面アレイに結合する。これは、1つまたは複数のMBP関連血清プロテアーゼ(MASP)との複合体として循環し、このプロテアーゼはこの複合体が適当な表面に結合したときに自己活性化する。MBLおよび関連MASPタンパク質は、C2/C4コンバーターゼを活性化することができ、それによって病原体表面へのC4の堆積および貪食作用のためのオプソニン化が行われる。ネイティブMBLはまた、MASPタンパク質を通じて凝固機能を活性化することができる。
【0044】
ネイティブMBLは、微生物または病原体を検出し、貪食作用のための微生物のタグ付けのためのオプソニンとして作用することができるが、一方で、ネイティブMBLは、補体系を活性化し炎症応答を誘導し得るため、微生物により誘導される炎症疾患または感染、例えば敗血症の処置における使用には望ましくないことがある。本明細書には、少なくとも1つの糖質認識ドメインまたはその断片、例えばMBLから得られるもの、を含む、微生物または病原体に結合する操作されたMBL分子が提供される。いくつかの態様において、操作されたMBL分子は、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの糖質認識ドメインまたはその断片を含み得る。いくつかの態様において、操作されたMBL分子は、補体系を活性化しないまたはネイティブMBLに存在する凝固副作用を有さない。そのような態様は、インビボで下流応答のドミナントネガティブ阻害剤としてまたはインビトロで凝固または補体結合を誘導しない微生物結合タンパク質として使用することができる。例えば、補体結合および/または凝固ドメインを有さない操作されたMBL分子は、サイトカインおよび/または炎症カスケードの活性化に関してドミナントネガティブタンパク質として機能することができ、したがって全身性炎症症候群および/または敗血症症候を軽減することができる。
【0045】
図1Bは、本明細書に記載される操作されたMBL分子の1つまたは複数の態様にしたがう2量体の操作されたMBL分子100の略図を示している。2量体分子100は、リンカー、例えばFc領域106に直接的または間接的に接続された少なくとも2つの糖質認識ドメイン102(例えば、MBL CRD)を含む。Fc領域106のN末端はさらに、オリゴペプチド108、例えばアミノ酸配列AKTを含むオリゴペプチド108を含み得る。いくつかの態様において、糖質認識ドメイン102はさらに、微生物と相互作用するCRDの可撓性を提供するようネック領域104、例えばMBLネックを含み得る。
【0046】
MBLの糖質認識ドメイン(CRD)の全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO.4に示されている。本明細書に記載される操作されたMBLの糖質認識ドメインは、約10~約300アミノ酸残基または約50~約160アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150アミノ酸残基またはそれ以上のアミノ酸配列を有し得る。したがって、いくつかの態様において、操作されたMBL分子の糖質認識ドメインは、SEQ ID NO.4を含み得る。いくつかの態様において、操作されたMBL分子の糖質認識ドメインは、SEQ ID NO.4の断片を含み得る。そのような断片の例示的なアミノ酸配列は、ND(SEQ ID NO.10)、EZN(SEQ ID NO.11:ここで、Zは任意のアミノ酸、例えばPである)、NEGEPNNAGS(SEQ ID NO.12)またはEPNを含むその断片、GSDEDCVLL(SEQ ID NO.13)またはEを含むその断片およびLLLKNGQWNDVPCST(SEQ ID NO.14)またはNDを含むその断片を含むがこれらに限定されない。そのようなCRD断片に対する修飾、例えば保存的置換による修飾もまた、本明細書に記載される範囲に含まれる。いくつかの態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の微生物表面結合ドメインにおいて使用されるMBLまたはその断片は、野生型分子または組み換え分子であり得る。
【0047】
操作された微生物標的化分子の糖質認識ドメインに関して本明細書に提供される例示的な配列は、限定を構成するものではない。例えば、本明細書に提供される例示的な配列はヒト種から得られるものであるが、他の種、例えばマウス、ラット、ブタ、ウシ、ネコおよびイヌにおける同じ糖質認識ドメインのアミノ酸配列も当技術分野で公知でありかつ本明細書に記載される範囲に含まれる。
【0048】
いくつかの態様において、核酸は、任意の公知の糖質結合分子(例えば、マンノース結合レクチン)の少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150の連続するアミノ酸またはそれ以上の断片に対して60%超、70%超、80%超、90%超の相同性またはそれ以上を含む、50%超の相同性を有する糖質認識ドメインをコードする。
【0049】
本明細書で使用される「糖質認識ドメイン」という用語は、その少なくとも一部分が微生物または病原体の表面上の糖質に結合することができる領域を表す。例えば、図1Bに示されるように、糖質認識ドメインは、いくつかの態様において、MBL CRD 102を含み得る。しかし、いくつかの態様において、糖質認識ドメインはまた、MBL CRD 102に加えてネック領域104を含むものと解釈され得る。いくつかの態様において、糖質認識ドメインは、微生物表面の糖質に結合することができる、そのドメインの、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む少なくとも約50%を含み得る。いくつかの態様において、糖質認識ドメインの100%が、微生物または病原体への結合に使用され得る。他の態様において、糖質認識ドメインは、糖質に結合できないが他の特徴を有し得るまたは他の機能を発揮し得る、例えば微生物または病原体と相互作用する際に糖質認識ドメインに可撓性を提供する、追加の領域を含み得る。
【0050】
したがって、いくつかの態様において、糖質認識ドメインはさらに、アミノ酸配列pdgdsslaaserkalqtema rikkwltfslgkq(SEQ ID NO.15)を有するMBLのネック領域またはその断片を含み得る。理論に拘束されることを望まないが、ネック領域は、微生物表面に結合するためのCRDの可撓性および適切な配向を提供することができる。いくつかの態様において、糖質認識ドメインは、図1Bに示されるように、MBLの全長CRD(SEQ ID NO.4:「CRDヘッド」102とも称される)およびそのネック領域104を含み得る。MBLの全長CRDおよびそのネック領域をコードするアミノ酸配列は、SEQ ID NO.5に示されている。ネイティブMBLの「ネックおよびCRDヘッド」の結晶構造は、以前に、Chang et al. (1994) J Mol Biol. 241: 125-7に示されている(図2)。当業者は、同定されたCRDおよびその断片を、その配向性および微生物表面の糖質に対する結合性能を調整するために、例えば理論モデリングおよび/またはインビトロ糖質結合実験によって、容易に改変することができる。加えて、ネイティブMBLの「ネックおよびCRDヘッド」の結晶構造に基づき、CRDヘッドおよび場合によりネック領域の少なくとも断片を効果的に模倣することができるペプチド模倣体を、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子またはMBL分子の糖質認識ドメインとして使用することもできる。当業者は、当技術分野で公知の任意の方法および公知の結晶構造を用いて、過度の実験なしに、そのようなペプチド模倣構造を容易に決定することができる。
【0051】
いくつかの態様において、微生物標的化分子の糖質認識ドメインはさらに、糖質結合タンパク質の一部分を含み得る。しかし、いくつかの状況において、糖質結合タンパク質またはその断片によって誘導される補体または凝固活性化は、様々な用途、例えば、敗血症の処置のためのインビボ投与、によっては望ましくないものであり得る。そのような態様において、糖質結合タンパク質の一部分は、補体および凝固活性化領域の少なくとも1つを除外され得る。例として、糖質結合タンパク質がマンノース結合レクチンまたはその断片である場合、マンノース結合レクチンまたはその断片は、コラーゲン様領域に位置する補体および凝固活性化領域の少なくとも1つを除外され得る。そのような態様において、マンノース結合レクチンまたはその断片は、SEQ ID NO.2のアミノ酸残基K55またはL56の周囲の、少なくとも約2つのアミノ酸残基、少なくとも約3つのアミノ酸残基、少なくとも約4つのアミノ酸残基、少なくとも約5つのアミノ酸残基、少なくとも約6つのアミノ酸残基、少なくとも約7つのアミノ酸残基、少なくとも約8つのアミノ酸残基、少なくとも約9つのアミノ酸残基、少なくとも約10のアミノ酸残基またはそれ以上を含む、少なくとも約1つのアミノ酸残基を除外され得る。操作されたMBL分子から除外され得るSEQ ID NO.2のK55またはL56を含む例示的なアミノ配列は、EPGQGLRGLQGPPGKLGPPGNPGPSGS(SEQ ID NO.16)、GKLG(SEQ ID NO.17)、GPPGKLGPPGN(SEQ ID NO.18)、RGLQGPPGKL(SEQ ID NO.19)、GKLGPPGNPGPSGS(SEQ ID NO.20)、GLRGLQGPPGKLGPPGNPGP(SEQ ID NO.21)またはそれらの任意の断片を含むがこれらに限定されない。
【0052】
糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片に関してさらに、その結合特性は、結合特異性を変化させる定向進化(directed evolution)によって操作され得る。例にすぎないが、MBLは、より限定された数の糖またはその他の分子的特徴に結合するよう修飾され得、その結果、修飾されたMBLは、病原体クラス同定(例えば、ウイルス、細菌、真菌もしくは原虫の一つ)、サブクラスタイピング(例えば、グラム陰性もしくはグラム陽性細菌)または特定種決定を行う能力を提供するよう、より限定された数の微生物に結合するようになるであろう。多くの定向進化ストラテジーが当技術分野で利用可能である。
【0053】
例えば、単純な定向進化ストラテジーは、糖と複合体化したMBLの原子構造を視覚的に試験し、次いで、その独特の接触が失われるようまたは特定のタイプの立体障害が構築されるよう、糖特異的な様式の接触を行う適当なアミノ酸を変異させることである。ラットMBLの3次元構造は、高マンノースオリゴ糖類との複合体およびNアセチルグルコサミン、メチル化フコース等との複合体に関して解明されている。His189ValおよびIle207Valは、修飾により特異性が変化する置換の例である。
【0054】
別の定向進化ストラテジーにおいて、タンパク質は無作為変異誘発に供され、そして得られたタンパク質が望ましい性質に関してスクリーニングされる。これは特に、抗体の相補性決定領域(CDR)を飽和変異誘発によって変異させ、6つのCDRの有益な変種を最も高い親和性を有する抗体が形成されるようシャッフルして組み合わせる、ファージディスプレイ抗体の親和性成熟に有用な技術である。
【0055】
定向進化のパラダイムは、例えば、非限定的に、酵母、グラム陽性細菌、グラム陰性、コアグラーゼ陰性および好気性細菌に対して特異的結合を示すMBL変種を選択するために、MBLに適用することができる。しかし、これを実現する上で、これらの標的微小生物において標的となる糖または関連する表面特徴のパターンおよび性質は、クラス間または種間で異なり得る。
【0056】
MBLは、真菌、グラム陽性およびグラム陰性細菌のマンノースおよびN-アセチルグルコサミン糖に強く結合することが公知である。例えば、MBLは、カンジダ種、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびβ溶血性A群連鎖球菌に強く結合する。MBLは、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ種およびヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型に対して中程度の親和性を有する。MBLは、β溶血性B群連鎖球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対して弱く結合する。Neth et al., 68 Infect. & Immun. 688 (2000)。髄膜炎菌(Neisseria meningitides)血清群B、H.インフルエンザb型およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の莢膜多糖類は、細菌の内毒素のように、MBLの結合を低減すると考えられている。Id.; Van Emmerik et al., 97 Clin. Exp. Immunol. 411 (1994); Schelenz et al., 63 Infect. Immun. 3360 (1995)。
【0057】
MBLは酵母のオプソニン化貪食作用を促進するが、MBL結合があっても細菌のオプソニン化貪食作用は促進しないこと;酵母のオプソニン化貪食作用には補体のMBL(レクチン)経路が重要であったが、細菌のオプソニン化貪食作用には古典的補体経路が重要であったことが、他者により報告されている。Brouwer et al., 180 J. Immunol. 4124 (2008)。MBLが試験した細菌種に結合することは報告されず、MBL結合が有意な補体活性化およびオプソニン化貪食作用を亢進しないことのみが報告された。
【0058】
特定の特異性を有するMBLの誘導体は、例えば、標準的なファージディスプレイストラテジーである以下のアプローチによって単離することができる:最初に、MBL変種群をファージミドベクターから発現させ;次に、このライブラリを関心対象の標的(例えば、大腸菌)に結合させ、1または2回の選択を行い;そして次に、関連する標的(例えば、カンジダ)に対する1回の陰性選択を行い、結合しなかったファージミドを取得する。これらの陽性および陰性選択のサイクルは、全体として標的に結合するが非標的には結合しないファージ集団が生成されるまで繰り返される。この方法は、示差的な結合が望まれる任意の微生物株の対、例えば、所定の抗生物質に対して耐性の細菌と感受性の細菌、に対して適用され得る。この陽性/陰性濃縮ストラテジーは、抗体ファージディスプレイライブラリと共に使用することもでき、これはそのような特異的結合体を単離するさらにより標準的な方法である。
【0059】
上記の定向進化および選択アプローチはまた、潜在的に、上記のクラス、サブクラスおよび種特異性を提供するヒト抗体断片またはペプチドを生成するために使用することもできる。
【0060】
いくつかの態様において、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10またはそれ以上の微生物表面結合ドメインを含む、少なくとも2つの微生物表面結合ドメイン(例えば、糖質認識ドメイン)が、多量体性の微生物表面結合ドメインまたは糖質認識ドメインを形成するよう、ひとつに連結され得る。そのような態様において、微生物表面結合ドメイン(例えば、糖質認識ドメイン)間の距離は、標的微生物の表面上の結合部位間の距離と適合するよう操作され得る。
【0061】
多量体性の微生物表面結合ドメインでは、個々の微生物表面結合ドメインの各々が同一であり得る。あるいは、多量体性の微生物表面結合ドメインでは、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つの微生物表面結合ドメインが残りのものと異なり得る。そのような態様においては、微生物表面上の糖質に対して共通の結合特異性を共有する微生物表面結合ドメインが使用され得る。例にすぎないが、いくつかのレクチンのフィブリノゲン様ドメインは、MBLを含むC型レクチンのCRDと同様の機能を有し、病原体を自己から区別するパターン認識受容体として機能する。フィブリノゲン様ドメインを含むそのようなレクチンの一つは、血清フィコリンである。
【0062】
血清フィコリンは、GlcNAc(N-アセチル-グルコサミン)、エラスチンまたはGalNAc(N-アセチル-ガラクトサミン)に対する共通の結合特異性を有する。そのフィブリノゲン様ドメインは、糖質への結合を担っている。ヒトの血清においては、L-フィコリン(P35、フィコリンL、フィコリン2またはヒューコリン(hucolin)とも呼ばれる)およびH-フィコリン(博多抗原、フィコリン3または熱不安定性b2巨大糖タンパク質(thermolabile b2-macroglycoprotein)とも呼ばれる)として公知の2つのタイプのフィコリンが同定されており、その両方ともレクチン活性を有している。L-フィコリンはGlcNAcを認識し、H-フィコリンはGalNAcを認識する。M-フィコリン(P35関連タンパク質、フィコリン1またはフィコリンAとも呼ばれる)として公知の別のフィコリンは、血清タンパク質とみなされず、これは白血球および肺において見出されている。L-フィコリンおよびH-フィコリンは、MASPと協力してレクチン補体経路を活性化する。M-フィコリン、L-フィコリンおよびH-フィコリンは、カルシウム非依存的なレクチン活性を有する。したがって、いくつかの態様において、操作された微生物標的化、例えば操作されたMBL分子は、MBLおよびL-フィコリン糖質認識ドメイン、MBLおよびH-フィコリン糖質認識ドメイン、またはその組み合わせを含み得る。
【0063】
任意の当技術分野で知られている組み換え糖質結合タンパク質または糖質認識ドメインもまた、操作された微生物標的化分子において使用することができる。例えば、本明細書に記載される操作されたMBL分子を構築する上で、組み換えマンノース結合レクチン、例えば、非限定的に、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,270,199号;同第6,846,649号;および米国特許出願第US 2004/0229212号に開示されるもの、を使用することができる。
【0064】
1つの態様において、微生物結合性分子は、MBL、MBLの糖質認識ドメイン、またはその内容が参照により本明細書に組み入れられる2011年1月19日出願の国際特許出願第WO2011/090954号に記載される遺伝子操作版のMBL(FcMBL)を含む。MBLおよび操作されたMBLのアミノ酸配列は、
(i)MBL全長(SEQ ID NO.1):
(ii)シグナル配列を有さないMBL(SEQ ID NO.2):
(iii)短縮型MBL(SEQ ID NO.3):
(iv)MBLの糖質認識ドメイン(CRD)(SEQ ID NO.4):
(v)MBLのネック+糖質認識ドメイン(SEQ ID NO.5):
(vi)FcMBL.81(SEQ ID NO.6):
(vii)AKT-FcMBL(SEQ ID NO.7):
(viii)FcMBL.111(SEQ ID NO.8):
を含むがこれらに限定されない。
【0065】
いくつかの態様において、微生物結合性分子は、SEQ ID NO.1~SEQ ID NO.8から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0066】
理論に拘束されることを望まないが、レクチンまたはその修飾版を含む微生物結合性分子は、多種病原体結合分子として機能し得る。したがって、被験試料中に存在する微生物および/または微生物物質は、レクチンベースの微生物結合性分子を用いることで、微生物を同定することなく捕捉することができる。
【0067】
リンカー
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、概ね、組成物の2つの部分、例えば、少なくとも1つの微生物表面結合ドメインと少なくとも1つの基質結合ドメイン、を直接的または間接的に接続することができる分子体を表す。いくつかの態様において、リンカーは、1つまたは複数の微生物表面結合ドメインに直接的または間接的に接続することができる。非限定的に、いくつかの態様において、リンカーはまた、1つもしくは複数の微生物および/または微生物物質に対する結合部位を提供することができる。そのような態様において、リンカー上の微生物結合部位は、微生物表面結合ドメインに結合する微生物と同じタイプおよび/または種の微生物に結合することができる。あるいはまたは加えて、リンカー上の微生物結合部位は、本明細書に記載される微生物表面結合ドメインに結合するのと異なるタイプおよび/または種の微生物を捕捉することができる。
【0068】
リンカーは、個々の要求に応じて、例えば、以下の特徴の少なくとも1つに基づき、構成され得る。例にすぎないが、いくつかの態様において、リンカーは、微生物表面結合ドメインを微生物表面上の少なくとも1つの糖質の方に配向させることができる十分な長さおよび可撓性を有するよう構成され得る。いくつかの態様において、リンカーは、生物学的活性(例えば、微生物結合活性)を保持しつつ少なくとも2つの操作された微生物標的化分子の(例えば、2、3、4、5またはそれより高次の多量複合体を形成する)多量体化をなし得るよう構成され得る。いくつかの態様において、リンカーは、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の発現および精製を容易にするよう構成され得る。いくつかの態様において、リンカーは、プロテアーゼまたはヌクレアーゼに対する少なくとも1つの認識部位を提供するよう構成され得る。加えて、リンカーは、好ましくは、本明細書に記載される操作された分子の機能的成分と非反応性である(例えば、機能的なタンパク質ドメイン、例えば微生物表面結合ドメインまたは基質結合ドメインと反応する疎水性または荷電特性が最小限である)。
【0069】
いくつかの態様において、リンカーは、ペプチド、ペプチド模倣体、アプタマー、タンパク質、核酸(例えば、DNAもしくはRNA)またはそれらの任意の組み合わせの形態で任意の長さを有するよう構成され得る。いくつかの態様において、ペプチジルまたは核酸リンカーは、約1~約1000アミノ酸長、約10~約500アミノ酸長、約30~約300アミノ酸長または約50~約150アミノ酸長まで様々であり得る。それより長いまたはそれより短いリンカー配列もまた、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子において使用することができる。1つの態様において、ペプチジルリンカーは、約200~300アミノ酸長のアミノ酸配列を有する。
【0070】
いくつかの態様において、ペプチドまたは核酸リンカーは、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、スレオニン(Thr)、メチオニン(Met)もしくはアラニン(Ala)からなる群より選択されるアミノ酸の少なくとも1つ、または上記アミノ酸(すなわち、Gly、Ser、Asn、Thr、MetもしくはAla)をコードするコドン配列の少なくとも1つを含む配列を有するよう構成され得る。そのようなアミノ酸および対応する核酸配列は、一般に、リンカーの可撓性を提供するために使用される。しかし、いくつかの態様において、他の非荷電極性アミノ酸(例えば、Gln、CysもしくはTyr)、非極性アミノ酸(例えば、Val、Leu、Ile、Pro、PheおよびTrp)またはそれらのアミノ酸をコードする核酸配列もまた、リンカー配列に含められ得る。代替の態様において、極性アミノ酸またはその核酸配列が、リンカーの可撓性を調整するために追加され得る。当業者は、リンカー内の残基のタイプおよび数を変更することによってリンカーの可撓性を制御することができる。例えば、Perham, 30 Biochem. 8501 (1991);Wriggers et al., 80 Biopolymers 736 (2005)を参照のこと。
【0071】
代替の態様において、リンカーは、任意の長さの化学リンカーであり得る。いくつかの態様において、化学リンカーは、直接結合、または原子、例えば酸素もしくは硫黄、原子団、例えばNH、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NH、または原子鎖、例えば置換もしくは未置換C1~C6アルキル、置換もしくは未置換C2~C6アルケニル、置換もしくは未置換C2~C6アルキニル、置換もしくは未置換C6~C12アリール、置換もしくは未置換C5~C12ヘテロアリール、置換もしくは未置換C5~C12ヘテロシクリル、置換もしくは未置換C3~C12シクロアルキルを含み得、ここで、1つまたは複数のメチレンはO、S、S(O)、SO2、NHまたはC(O)によって分断されているまたはこれらで終結していることがある。いくつかの態様において、化学リンカーは、ポリマー鎖(分枝または直鎖)であり得る。
【0072】
リンカーがペプチドであるいくつかの態様において、そのようなペプチジルリンカーは、免疫グロブリン、例えば、それらのサブクラス(例えば、IgG1)を含むIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれらの修飾分子もしくは組み換え体、の少なくとも一部分を含み得る。いくつかの態様において、ペプチドリンカーは、免疫グロブリンまたはその修飾体の結晶性断片(Fc)領域の一部分を含み得る。そのような態様において、リンカーとして使用することができるFc領域の一部分は、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの領域を含み得る。例として、いくつかの態様において、CH2領域は、リンカーとしてのFc領域の一部分から除外され得る。1つの態様において、Fcリンカーは、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、例えば図1Bおよび図3に示されるFc IgG 106、を含む。そのようなFcリンカーは、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の発現および精製を容易にするために使用され得る。N末端側のFcは、その融合パートナーの発現レベル、タンパク質フォールディングおよび分泌を改善することが示されている。加えて、Fcは、ブドウ球菌プロテインA結合部位を有しており、これは一工程精製プロテインA親和性クロマトグラフィーで使用することができる。Lo KM et al. (1998) Protein Eng. 11: 495-500を参照のこと。さらに、プロテインA結合部位は、カルシウムイオンの非存在下でのプロテインA発現またはプロテインG発現微生物の結合を容易にするために使用することができる。そのような結合能は、プロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)を被験試料中に存在する非プロテインA発現または非プロテインG発現微生物(例えば、大腸菌)から識別する方法を構築するために使用することができ、そのような方法の様々な態様については以下で詳細に説明されている。さらに、そのようなFcリンカーは、腎臓の閾値である約45 kDaを超える分子量を有し、それによって操作された微生物標的化分子が糸球体濾過によって除去される可能性を低下させる。加えて、Fcリンカーは、2つの操作された微生物標的化分子を2量体化させて2量体、例えば、図1Bに示される2量体の操作されたMBL分子100を形成することができる。
【0073】
リンカーがFc領域またはその断片を含むいくつかの態様において、当該Fc領域またはその断片は、例えば操作された微生物標的化分子の性能を変化させるために、少なくとも1つの変異を含み得る。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の半減期は、例えばSEQ ID NO.9の残基232のアミノ酸リジン(K)をアラニン(A)に変異させることによって、増加させることができる。他の変異、例えば、Hinton et al (2004) J Biol Chem. 279: 6213-6216およびVaccaro C. et al. (2005) Nat Biotechnol. 23: 1283-1288に示されるCH2およびCH3ドメイン間の境界における変異もまた、IgG1の、したがって操作された微生物標的化分子の半減期を増加させるために使用することができる。
【0074】
いくつかの態様において、リンカーは、アルブミン、トランスフェリンまたはそれらの断片であり得る。そのようなリンカーは、操作された微生物標的化分子の血漿中半減期を延長するために使用することができ、したがってインビボ投与する場合にふさわしい。Schmidt SR (2009) Curr Opin Drug Discov Devel. 12: 284を参照のこと。
【0075】
操作された微生物標的化分子がインビボで治療剤として使用される場合、リンカーは、エフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)をモジュレートするようさらに修飾され得る。例にすぎないが、リンカーとして使用されるFc領域は、ADCCおよびCDCを媒介し得る。ADCCにおいて、Fc領域は、通常、免疫エフェクター細胞、例えばナチュラルキラーおよびマクロファージの表面上のFc受容体に結合し、標的化された細胞の貪食作用または溶解をもたらすことができる。CDCにおいて、Fc領域は、通常、その細胞表面上で補体カスケードを誘発し、標的化された細胞を殺傷することができる。したがって、エフェクター機能の調整は、免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体または補体因子へのそれら結合が増加または減少するようFc領域を操作することによって達成され得る。例えば、ADCCおよびCDCを調整するFc領域内の多くの変異が当業者に周知である。例えば、Armour KL. et al. (1999) Eur J Immmunol 29: 2613-2624; Shields RL. et al. (2001) J Biol Chem. 276: 6591-6604; Idusogie EE. et al. (2001) J Immunol. 166: 2571-2575; Idusogie EE. et al. (2000) J Immunol. 155: 1165-1174; およびSteurer W. et al. (1995) J Immunol. 155: 1165-1674を参照のこと。1つの態様において、SEQ ID NO.6の残基82のアミノ酸アスパラギン(N)を、例えば、Fcのグリコシル化を除去し、それによってADCCおよびCDC機能を低下させるために、アスパラギン酸(D)に変異させることができる。
【0076】
様々な態様において、リンカー、例えばFc領域の一部分、のN末端またはC末端は、修飾され得る。例にすぎないが、リンカーのN末端またはC末端は、例えばさらなる可撓性を提供するよう、または追加の分子に付着するよう、少なくとも1つの追加の本明細書に記載されるリンカーによって延長され得る。いくつかの態様において、リンカーのN末端は、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメインと直接的にまたは間接的に(追加のリンカーを通じて)連結され得る。
【0077】
いくつかの態様において、リンカーは、微生物表面結合ドメインの一部分または糖質結合タンパク質(例えば、MBLおよび/もしくはそのネック領域)の一部分として具現化され得る。
【0078】
いくつかの態様において、リンカーは、複数の微生物表面結合ドメイン(糖質認識ドメインを含む)が結合できる物理的な基質、例えば微粒子または磁気微生物であり得るが、ただし、微生物表面結合ドメインが微生物と効果的に相互作用するのに十分な少なくとも一定の距離が微生物表面結合ドメインと基質表面との間に必要である。いくつかの態様において、微生物表面結合ドメインと基質との間の距離は、約50オングストローム~約5000オングストローム、約100オングストローム~約2500オングストロームまたは約200オングストローム~約1000オングストロームの範囲であり得る。
【0079】
リンカーは、任意の形状であり得る。いくつかの態様において、リンカーは直鎖状であり得る。いくつかの態様において、リンカーはフォールディングされたものであり得る。いくつかの態様において、リンカーは分枝状であり得る。分枝リンカーにおいて、微生物表面結合ドメインの枝は各々、少なくとも1つの微生物表面結合ドメインを含み得る。他の態様において、リンカーは、物理的な基質の形状をしている。
【0080】
本明細書に提供されるいくつかの態様において、リンカーはさらに、検出可能な標識を含み得る。いくつかの態様において、検出可能な標識は、操作された微生物標的化分子に微生物が結合したときに、微生物の放出する酵素が検出可能な標識と相互作用し色変化を誘導することができるような、比色性または発蛍光性の微生物酵素基質であり得る。そのような微生物酵素基質の例は、インドキシルブチレート(indoxyl butyrate)、インドキシルグルコシド、エスクリン、マゼンタグルコシド(magneta glucoside)、赤色β-グルクロニド、2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-グルコピラノシド、2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-アセトアミド(cetamindo)-2-デオキシグルコピラノシドおよび任意のその他の当技術分野で知られている微生物酵素基質を含み得るがこれらに限定されない。そのような態様は、微生物または病原体の存在の指標として機能し得る。
【0081】
操作された微生物標的化分子の基質へのコンジュゲート
操作された微生物標的化分子は、様々な用途および/または目的のために、任意の基質に固定化することができる。例えば、標的分子に対する個々の微生物表面結合ドメイン(例えば、糖/糖質分子に対する糖質認識ドメイン)の親和性が比較的低く、そのような結合が概ね結合力(avidity)と価数(multivalency)によって決まる場合、そのような操作された微生物標的化分子の価数は、固体基質(例えば、ナノメートルまたはマイクロメートルサイズのビーズ)に複数の操作された微生物標的化分子(例えば、各々1つもしくは2つまたはそれ以上の糖質認識ドメインを有するもの)を高密度で付加することによって効果的に増加させることができ、その密度は最適な官能性を提供するために変化させることができる。あるいは、操作された微生物標的化分子は、使用時の取り扱いを容易にするために、例えば、単離、観察または顕微鏡画像化のために、固体基質に固定化され得る。
【0082】
基質表面(例えば、膜表面、ガラス表面、チューブ表面)への操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の付加は、多数のアプローチによって、例えば、操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)を基質表面に直接架橋することによって;検出感度を増大させる配向および濃縮のために核酸マトリックス(例えば、DNAマトリックスもしくはDNA/オリゴヌクレオチド折り紙構造)を介して操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)を基質表面に架橋することによって;検出感度を増大させるためにデンドリマー様構造(例えば、PEG/キチン構造)を介してFcMBLを基質表面に架橋することによって;収束磁場勾配を基質表面に適用しつつ、FcMBLコート磁気マイクロビーズを基質表面に付加することによって、ビオチン・アビジンもしくはビオチン・アビジン様相互作用を介して操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)を基質に付加することによって、または任意のその他の当技術分野で知られている方法によって、行うことができる。
【0083】
操作された微生物標的化分子またはマンノース結合レクチン分子を基質に固定化またはコンジュゲートする場合、本明細書に記載される操作された分子はさらに、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上)の基質結合ドメイン、例えば、糖質認識ドメインを基質から離して配向させるよう適合された基質結合ドメイン、を含み得る。非限定的に、例示的な基質のタイプは、核酸スキャフォールド、生物学的分子(例えば、生細胞)または固体表面であり得る。いくつかの態様において、固体表面は、その固体表面への操作された微生物表面結合ドメインのコンジュゲートを容易にするよう、カップリング分子、例えばアミノ基によって官能化され得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「基質結合ドメイン」という用語は、基質または官能化された基質への本明細書に記載される操作された分子のコンジュゲートを容易にする任意の分子を表す。いくつかの態様において、基質結合ドメインは、基質の表面上の官能基と非共有結合的または共有結合的にカップリングすることができる少なくとも1つのアミノ基を含み得る。例えば、操作された微生物表面結合ドメイン(例えば、操作されたマンノース結合レクチン)のN末端またはN末端近辺のアミノ酸残基(例えば、リジンまたはシステイン残基)の1級アミンを、基質表面上の官能基とのカップリングに使用することができる。
【0085】
いくつかの態様において、基質結合ドメインは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたはそれ以上のオリゴペプチドを含み得る。オリゴヌクレオチドの長さは、約2アミノ酸残基~約10アミノ酸残基または約2アミノ酸残基~約5アミノ酸残基まで様々であり得る。異なる基質との結合に適したオリゴヌクレオチドのアミノ酸配列を決定することは、十分に当業者の能力の範囲である。例えば、図1Bに示されるように、1つまたは複数の態様にしたがい、基質結合ドメイン108は、その後のストレプトアビジンコート基質、例えば磁気マイクロビーズ110への結合のために単一のビオチニル化部位を提供するアミノ酸配列AKTを含むオリゴペプチドを含み得る。そのような単一のビオチニル化部位はまた、操作された微生物表面結合ドメインの糖質認識ドメインを基質から離して配向させ、したがって微生物または病原体に対するアクセスを向上させることが可能であり得る。例えば、Witus et al. (2010) JACS 132: 16812を参照のこと。
【0086】
いくつかの態様において、基質結合ドメインは、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含み得る。オリゴヌクレオチドの配列および長さは、基質のタイプ、結合密度および/または望ましい結合強度にしたがい構成され得る。例えば、基質が核酸スキャフォールド、例えばDNAスキャフォールドである場合、基質結合ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、その基質結合ドメインをハイブリダイズさせたい核酸スキャフォールドの部分配列に対して相補的となるように設計され得る。
【0087】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、アプタマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「アプタマー」という用語は、ワトソン・クリック塩基対またはトリプレックス形成以外のメカニズムによって選択された非オリゴヌクレオチド分子または分子群を特異的に認識することができる、1本鎖、部分的に1本鎖、部分的に2本鎖、または2本鎖のヌクレオチド配列を意味する。アプタマーは、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチドならびに骨格修飾、分枝点および非ヌクレオチド残基、基または架橋を含むヌクレオチドを含む定義された配列セグメントおよび配列を含み得るがこれらに限定されない。分子との結合のためにアプタマーを選択する方法は、当技術分野で周知であり、当業者が容易に入手することができる。アプタマーを含むオリゴヌクレオチドは、任意の長さ、例えば、約1ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約5ヌクレオチド~約50ヌクレオチドまたは約10ヌクレオチド~約25ヌクレオチドであり得る。一般に、核酸スキャフォールドとのハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチドは、より長いほど、操作された微生物表面結合ドメインと基質との間でより強力な結合強度を生じ得る。
【0088】
あるいはまたは加えて、基質の表面は、本明細書に記載されるカップリング分子を含むよう官能化され得る。本明細書で使用される場合、「カップリング分子」という用語は、本明細書に記載される操作された微生物表面結合ドメインと選択的に結合することができる任意の分子または任意の官能基を表す。カップリング分子の代表例は、抗体、抗原、レクチン、タンパク質、ペプチド、核酸(DNA、RNA、PNAおよびそれらの混合物であるかまたはヌクレオチド誘導体もしくはアナログを含む核酸);受容体分子、例えばインスリン受容体;受容体に対するリガンド(例えば、インスリン受容体に対するインスリン);ならびに別の分子に対する親和性を有する生物学的、化学的またはその他の分子、例えばビオチンおよびアビジン、を含むがこれらに限定されない。カップリング分子は、天然に存在する分子をそのまま含んでいる必要はなく、天然に存在するまたは天然に存在しない分子の一部分、断片またはサブユニット、例えば、抗体のFab断片、のみからなるものであり得る。カップリング分子はさらに、検出可能な標識を含み得る。カップリング分子はまた、基質を操作された微生物表面結合ドメインにカップリングさせることができる様々な官能基を含み得る。そのような官能基の例は、アミノ基、カルボン酸基、エポキシ基およびトシル基を含むがこれらに限定されない。
【0089】
いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、共有結合的または非共有結合的な相互作用を通じて基質表面にコンジュゲートされ得る。操作された微生物標的化分子および/またはカップリング分子は、当業者に公知の任意の方法を用いて、共有結合的または非共有結合的に固体基質の表面にコンジュゲートされ得る。例えば、共有結合的な固定化は、例えばシランカップリングを通じて達成され得る。例えば、Weetall, 15 Adv. Mol. Cell Bio. 161 (2008); Weetall, 44 Meths. Enzymol. 134 (1976)を参照のこと。操作された微生物標的化分子および/またはカップリング分子と表面との間の共有結合的な相互作用はまた、その他の当技術分野で知られている化学反応、例えば、NHS反応またはコンジュゲート剤によって媒介され得る。操作された微生物標的化分子および/またはカップリング分子と表面との間の非共有結合的な相互作用は、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子間相互作用、水素結合、静電気相互作用および/または形状認識相互作用に基づき形成され得る。
【0090】
非限定的に、コンジュゲートは、安定または不安定(例えば、切断可能)のいずれかの結合またはコンジュゲート剤を含み得る。例示的なコンジュゲートは、共有結合、アミド結合、炭素・炭素多重結合への付加、アジド・アルキン・ヒュスゲン環化付加、ディールス・アルダー反応、ジスルフィド連結、エステル結合、マイケル付加、シラン結合、ウレタン、求核開環反応;エポキシド、非アルドールカルボニル化学、環化付加反応;1,3-双極子環化付加、温度依存性、照射(IR、近IR、UV)感受性結合またはコンジュゲート剤、pH感受性結合またはコンジュゲート剤、非共有結合(例えば、イオン性電荷錯体形成、水素結合、pi-pi相互作用、シクロデキストリン/絶対ホスト・ゲスト(adamantly host guest)相互作用)等を含むがこれらに限定されない。
【0091】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート剤」という用語は、化合物の2つの部分を接続する有機部分を意味する。リンカーは、典型的に、直接結合、または原子、例えば酸素もしくは硫黄、原子団、例えばNR1、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NH、または原子鎖、例えば置換もしくは未置換アルキル、置換もしくは未置換アルケニル、置換もしくは未置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリールを含み、ここで、1つまたは複数のメチレンはO、S、S(O)、SO2、NH、C(O)N(R1)2、C(O)、切断可能な連結基、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロアリール、置換または未置換複素環によって分断されているまたはこれらで終結していてもよく;ここで、R1は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である。
【0092】
非限定的に、2つの分子または組成物の異なる部分をひとつにコンジュゲートするための当技術分野で公知の任意のコンジュゲート化学が、少なくとも1つの操作された微生物標的化分子を基質に連結するために使用され得る。少なくとも1つの操作された微生物標的化分子を基質にコンジュゲートするための例示的なカップリング分子および/または官能基は、ポリエチレングリコール(PEG、1<X<100の様々な長さXのPEGスペーサーアームを有し得るNH2-PEGx-COOH、例えば、PEG-2K、PEG-5K、PEG-10K、PEG-12K、PEG-15K、PEG-20K、PEG-40K等)、マレイミドコンジュゲート剤、PAS化、HES化、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)コンジュゲート剤、DNAコンジュゲート剤、ペプチドコンジュゲート剤、シランコンジュゲート剤、多糖類コンジュゲート剤、加水分解性コンジュゲート剤およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0093】
代替の態様において、操作された微生物表面結合ドメインまたは操作された微生物標的化分子は、カップリング分子対により固体基質の表面にコンジュゲートされ得る。「カップリング分子対」および「カップリング対」という用語は、本明細書で言い換え可能に使用され、相互に特異的に結合する第1および第2の分子を表す。結合対の一方のメンバーは固体基質にコンジュゲートされ、第2のメンバーは操作された微生物表面結合ドメインの基質結合ドメインとコンジュゲートされる。本明細書で使用される場合、「相互に特異的に結合する第1および第2の分子」というフレーズは、カップリング対の第1のメンバーがカップリング対の第2のメンバーに対して、他の分子に対するよりも高い親和性および特異性で結合することを表す。
【0094】
例示的なカップリング分子対は、任意のハプテン性または抗原性化合物と対応する抗体またはその結合部分もしくは断片の組み合わせ(例えば、ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン)ならびに非免疫学的結合対(例えば、ビオチン・アビジン、ビオチン・ストレプトアビジン)、ホルモン(例えば、サイロキシンおよびコルチゾール・ホルモン結合タンパク質)、受容体・受容体アゴニスト、受容体・受容体アンタゴニスト(例えば、アセチルコリン受容体・アセチルコリンまたはそのアナログ)、IgG・プロテインA、レクチン・糖質、酵素・酵素補因子、酵素・酵素阻害剤、ならびに核酸2重鎖を形成することができる相補的なオリゴヌクレオチド対を含むがこれらに限定されない。カップリング分子対はまた、負に荷電した第1の分子と正に荷電した第2の分子を含み得る。
【0095】
カップリング対コンジュゲートを使用する1つの例は、ビオチン・アビジンまたはビオチン・ストレプトアビジンコンジュゲートである。このアプローチにおいて、カップリング対のメンバーの一方(例えば、操作された微生物標的化分子の一部分、例えば基質結合ドメイン、または基質)はビオチニル化され、他方(例えば、基質または操作された微生物標的化分子)はアビジンまたはストレプトアビジンとコンジュゲートされる。タンパク質等の分子のビオチニル化に関しては多くの市販のキットが入手可能である。例えば、アミノオキシ-ビオチン(AOB)は、アルデヒドまたはケトン基を有する分子にビオチンを共有結合的に付加するのに使用することができる。1つの態様において、AOBが、操作された微生物標的化分子の基質結合ドメイン(例えば、オリゴペプチドAKTを含む)に付加される。
【0096】
カップリング分子対によるコンジュゲートを使用する1つの非限定的な例は、ビオチンサンドイッチ法である。例えば、Davis et al., 103 PNAS 8155 (2006)を参照のこと。コンジュゲートによりひとつにしたい2つの分子はビオチニル化され、その後に4価のストレプトアビジンを用いてひとつにコンジュゲートされる。加えて、ペプチドは、ビオチニル化のために、アクセプターペプチド(APと称される;Chen et al., 2 Nat. Methods 99 (2005))の15アミノ酸配列にカップリングされ得る。アクセプターペプチド配列は、大腸菌酵素ビオチンリガーゼ(BirA;同文献)による部位特異的なビオチニル化を実現する。操作された微生物表面結合ドメインも同様に、固体基質とのコンジュゲートのためにビオチニル化され得る。タンパク質のビオチニル化に関しては多くの市販のキットが入手可能でもある。固体表面へのコンジュゲートの別の例は、PLPを介したバイオコンジュゲートを使用することであろう。例えば、Witus et al., 132 JACS 16812 (2010)を参照のこと。前記のように、操作された微生物標的化分子のN末端(例えば、前記のような、基質結合ドメインと糖質結合分子との間のリンカー、例えばFc領域、のN末端)の配列AKTは、基質結合ドメインを単一部位でビオチニル化させ、さらにストレプトアビジンコート固体表面にコンジュゲートさせることが可能であり得る。
【0097】
カップリング対コンジュゲートを使用するさらに別の例は、2本鎖核酸コンジュゲートである。このアプローチにおいて、カップリング対のメンバーの一方(例えば、操作された微生物標的化分子の一部分、例えば基質結合ドメイン、または基質)は2本鎖核酸の第1の鎖とコンジュゲートされ得、そして他方(例えば、基質または操作された微生物標的化分子)は2本鎖核酸の第2の鎖とコンジュゲートされる。核酸は、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチドならびに骨格修飾、分枝点および非ヌクレオチド残基、基または架橋を含むヌクレオチドを含む定義された配列セグメントおよび配列を含み得るがこれらに限定されない。
【0098】
いくつかの態様において、リンカーは、少なくとも1つの切断可能な連結基を含み得る。切断可能な連結基は、1つの条件セットの下では十分に安定であるが、異なる条件セットの下では切断され、リンカーがひとまとめにして保持している2つの部分を解放するものである。いくつかの態様において、切断可能な連結基は、第1の参照条件下(例えば、微生物感染条件、例えば微生物感染組織もしくは体液、または環境中で生じる微生物バイオフィルムを模倣または表すよう選択され得る)で、第2の参照条件下(例えば、非感染状態、例えば非感染血液もしくは血清中でまたは非感染環境中で見出される条件を模倣または表すよう選択され得る)よりも、少なくとも10倍またはそれ以上、例えば少なくとも100倍速く切断される。
【0099】
切断可能な連結基は、切断剤、例えば加水分解、pH、酸化還元電位または分解性分子の存在、に対して易反応性である。一般に、切断剤は、関心対象(例えば、微生物感染)の部位において、非感染領域よりも多く見られるまたは高レベルもしくは高活性で見出される。そのような分解剤の例は:例えば、酸化もしくは還元酵素または還元剤、例えばメルカプタンを含む、特定の基質に対して選択されたまたは基質特異性を有さない、細胞中に存在する、酸化還元切断可能な連結基を還元により切断することができる、酸化還元剤;エステラーゼ;アミダーゼ;エンドソームまたは酸性環境を形成し得る剤、例えば5またはそれ未満のpHにするもの;一般酸として機能することによって酸切断可能な連結基を加水分解または分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)およびプロテアーゼ、ならびにホスファターゼを含む。
【0100】
リンカーは、特定の酵素によって切断可能である切断可能な連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能な連結基のタイプは、標的となる細胞、臓器または組織に依存し得る。いくつかの態様において、切断可能な連結基は、第1の参照条件下(または微生物感染条件、例えば微生物感染組織もしくは体液、または環境中でもしくは作業表面上で生じる微生物バイオフィルムを模倣するよう選択されたインビトロ条件の下)で、第2の参照条件下(または非感染条件、例えば非感染血液もしくは血清中でまたは非感染環境中で見出される条件を模倣するよう選択されたインビトロ条件下)よりも少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、10、25、50または100倍速く切断される。いくつかの態様において、切断可能な連結基は、微生物感染条件、例えば微生物感染組織もしくは体液または環境中でもしくは作業表面上で生じる微生物バイオフィルムと比較して、非感染条件、例えば非感染血液もしくは血清においてまたは非感染環境中で見出される条件において、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満が切断される。
【0101】
例示的な切断可能な連結基は、加水分解可能なリンカー、酸化還元切断可能な連結基(例えば、-S-S-および-C(R)2-S-S-、ここで、RはHまたはC1~C6アルキルであり、少なくとも1つのRはC1~C6アルキル、例えばCH3またはCH2CH3である);リン酸ベースの切断可能な連結基(例えば、-O-P(O)(OR)-O-、-O-P(S)(OR)-O-、-O-P(S)(SR)-O-、-S-P(O)(OR)-O-、-O-P(O)(OR)-S-、-S-P(O)(OR)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(OR)-O-、-O-P(O)(R)-O-、-O-P(S)(R)-O-、-S-P(O)(R)-O-、-S-P(S)(R)-O-、-S-P(O)(R)-S-、-O-P(S)(R)-S-、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-および-O-P(S)(H)-S-、ここで、Rは置換されてもよい直鎖または分枝鎖のC1~C10アルキルである);酸切断可能な連結基(例えば、ヒドラゾン、エステルおよびアミノ酸のエステル、-C=NN-ならびに-OC(O)-);エステルベースの切断可能な連結基(例えば、-C(O)O-);ペプチドベースの切断可能な連結基(例えば、細胞中の酵素、例えばペプチダーゼおよびプロテアーゼによって切断される連結基、例えば、-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-、ここで、RAおよびRBは2つの隣接するアミノ酸のR基である)を含むがこれらに限定されない。ペプチドベースの切断可能な連結基は、2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、ペプチドベースの切断可能な連結基は、ペプチダーゼまたはプロテアーゼの基質であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、酸切断可能な連結基は、pHが約6.5もしくはそれ未満(例えば、約6.5、6.0、5.5、5.0もしくはそれ未満)の酸性環境下でまたは一般酸として作用し得る酵素等の剤によって切断可能である。
【0102】
活性化剤は、コンジュゲートさせてひとつにする要素(例えば、基質の表面)を活性化するために使用され得る。非限定的に、コンジュゲートにおける活性化に関する当技術分野で公知の任意のプロセスおよび/または試薬が使用され得る。例示的な表面活性化法または試薬は、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDCまたはEDAC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)--1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートメタンアミニウム(HATU)、シラン処理、プラズマ処置を通じた表面活性化等を含むがこれらに限定されない。
【0103】
ここでも、非限定的に、任意の当技術分野で公知の反応基がカップリングに使用され得る。例えば、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アミノ、ブロモまたはヨードアセチル、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、エステル、シラン、チオール等を含むがこれらに限定されない様々な表面反応基が、表面カップリングに使用され得る。
【0104】
例示的な微生物標的化基質または生成物およびそれらの使用
本明細書に記載される操作された微生物標的化分子のいくつかの態様は、様々な基質の表面に固定化またはコンジュゲートされ得る。したがって、本明細書に提供されるさらなる局面は、基質および少なくとも1つの本明細書に記載される操作された微生物標的化分子を含み、基質がその表面上に、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500またはそれ以上を含む、少なくとも1つの操作された微生物標的化分子を含んでいる、微生物を標的化または微生物に結合するための「微生物標的化基質」または生成物である。いくつかの態様において、基質は、前記のコンジュゲート法のいずれかまたは任意のその他の当技術分野で知られている方法を用いて、少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、例えば、本明細書に記載される操作されたマンノース結合レクチン、とコンジュゲートされ得るまたはそれによりコーティングされ得る。「微生物標的化基質」および「微生物結合基質」という用語は、本明細書で言い換え可能に使用される。
【0105】
固体基質は、幅広い材料からおよび様々な形式で作製され得る。例えば、固体基質は、ビーズ(ポリマーマイクロビーズ、磁気マイクロビーズ等を含む)、フィルター、繊維、スクリーン、メッシュ、チューブ、中空糸、スキャフォールド、プレート、チャネル、アッセイ形式で広く利用されているその他の基質およびそれらの任意の組み合わせの形態で利用され得る。基質の例は、核酸スキャフォールド、タンパク質スキャフォールド、脂質スキャフォールド、デンドリマー、微粒子またはマイクロビーズ、ナノチューブ、マイクロタイタープレート、医療器具(例えば、針もしくはカテーテル)またはインプラント、ディップスティックまたは試験ストリップ、マイクロチップ、濾過装置または膜、診断用ストリップ、中空糸型リアクター、マイクロ流体装置、生細胞および生物学的組織または臓器、体外装置、混合要素(例えば、スパイラルミキサー)を含むがこれらに限定されない。
【0106】
固体基質は、金属、金属合金、ポリマー、プラスチック、紙、ガラス、ファブリック、包装材、生物学的材料、例えば細胞、組織、ヒドロゲル、タンパク質、ペプチド、核酸およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の材料から作製され得る。
【0107】
固体基質の個々の形式および/または材料は、アッセイ用途、例えば、アッセイにおいて用いられる分離/検出法、に依存する。いくつかの態様において、固体基質の形式および/または材料は、シグナル・ノイズ比を最大化するよう、例えば、バックグラウンド結合を最小化するよう、ならびに/または試薬の分離を容易にするためにおよび費用の面で、選択または改良され得る。例えば、固体基質の表面は、化学的凝集および非特異的結合を最小化するために、表面化学により処置または修飾され得る。いくつかの態様において、被験試料と接触する基質表面の少なくとも一部分は、被験試料中に存在する任意の物質(存在する場合、微生物を含む)への接着性が低下するよう処置され得る。例にすぎないが、被験試料と接触する基質表面は、その基質表面が細胞またはその断片(血液細胞および血液成分を含む)、タンパク質、核酸、ペプチド、小分子、治療剤、微生物、微小生物およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない被験試料中に存在する分子に対して不活性となるようシラン処理またはポリマーコーティングされ得る。他の態様において、基質表面は、操作された微生物標的化分子による微生物の結合を許容し得るがその後に微生物と基質表面との間で疎水結合を生じさせないオムニフォビック(omniphobic)層で処置され得る。例えば、滑性基質表面を製造する方法に関する、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、Wong TS et al., "Bioinspired self-repairing slippery surfaces with pressure-stable omniphobicity." (2011) Nature 477 (7365): 443-447および国際出願第PCT/US12/21928号を参照のこと。したがって、被験試料由来の分子(微生物および/または微生物物質を含む)の基質表面への非特異的結合は軽減され、それによって微生物検出の感度が向上し得る。
【0108】
いくつかの態様において、固体基質は、生体適合性材料から製作または生体適合性材料でコーティングされ得る。本明細書で使用される場合、「生体適合性材料」という用語は、感知できる程度に劣化せず、かつ対象の生物学的組織に移植もしくはそれに接して置かれたときに時間と共に有意な免疫応答もしくは有害な組織反応、例えば毒性反応もしくは有意な刺激を誘導しない、または血液と接触させたときに凝血もしくは凝固を誘導しない、任意の材料を表す。適当な生体適合性材料は、例えば、ポリイミドの誘導体およびコポリマー、ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンおよびポリビニルアミン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートならびにポリスチレンを含む。いくつかの態様において、生体適合性材料は、金属、例えばチタンおよびステンレス鋼、または医療用インプラントで使用される任意の生体適合性金属を含み得る。いくつかの態様において、生体適合性材料は、紙基質、例えば、診断用ストリップのための基質を含み得る。いくつかの態様において、生体適合性材料は、ペプチドまたは核酸分子、例えば、核酸スキャフォールド、例えば2-D DNAシートまたは3-D DNAスキャフォールドを含み得る。
【0109】
固体基質を製作またはコーティングするために使用することができる追加の材料は、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンポリスルホン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシリコン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エチレングリコール)、スチレン・アクリロニトリル樹脂、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリビニルブチラール、ポリ2フッ化ビニリデン、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0110】
様々な態様において、基質は、前記の様々なカップリング分子で官能化され得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「コーティング」または「コート」は、概ね、基質表面の最外層または露出層に形成された分子または材料の層を意味する。基質への操作された微生物標的化分子のコーティングに関して、「コーティング」または「コート」という用語は、基質表面の最外層または露出層に形成された操作された微生物標的化分子の層を表す。いくつかの態様において、基質表面は、例えば中空構造の場合、外側基質表面および/または内側基質表面を含み得る。例えば、針またはカテーテルの内表面は、例えば、対象に流体を投与する前にその流体から任意の潜在的な汚染微生物を除去するために、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子でコーティングされ得る。
【0112】
基質表面にコンジュゲートまたはコーティングされる操作された微生物標的化分子の量は、多くの因子、例えば、基質の表面積、コンジュゲート/コーティングの密度、操作された微生物標的化分子のタイプおよび/または結合性能によって変化し得る。当業者は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、基質表面上の操作された微生物標的化分子の最適密度を決定することができる。例にすぎないが、(以下で詳細に議論される)基質としての磁気マイクロビーズ(ナノビーズを含む)に関して、磁気マイクロビーズにコンジュゲートまたは磁気マイクロビーズをコーティングするのに使用される操作された微生物標的化分子の量は、約1 wt%から約30 wt%または約5 wt%から約20 wt%まで変化し得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズにコンジュゲートまたは磁気マイクロビーズをコーティングするのに使用される操作された微生物標的化分子の量は、個別の要求に依存してそれより多いまたは少ないものであり得る。しかし、磁気マイクロビーズにコンジュゲートまたは磁気マイクロビーズをコーティングするのに使用される操作された微生物標的化分子の量が少なすぎる場合、磁気マイクロビーズが病原体/微生物に対して低い結合性能を示し得ることに留意されたい。逆に、磁気マイクロビーズにコンジュゲートまたは磁気マイクロビーズをコーティングするのに使用される操作された微生物標的化分子の量が多すぎる場合、操作された微生物標的化分子の高密度の層が磁気マイクロビーズの磁気特性に悪影響を及ぼし得、そのため磁場勾配を用いた流体からの磁気マイクロビーズの分離の効率が悪化し得る。
【0113】
微生物標的化微粒子:
本明細書に記載されるいくつかの態様は、その表面上に少なくとも1つの操作された微生物標的化分子を含む微生物標的化微粒子を提供する。本明細書で使用される「微粒子」という用語は、約0.001μm~約100μm、約0.005μm~約50μm、約0.01μm~約25μm、約0.05μm~約10μmまたは約0.05μm~約5μmの粒子サイズを有する粒子を表す。1つの態様において、微粒子は、約0.05μm~約1μmの粒子サイズを有する。1つの態様において、微粒子は、約0.09μm~約0.2μmのサイズである。微粒子は通常、示される「サイズ」付近の粒子サイズ分布を示すことが当業者に理解されるであろう。そうでないことが示されない限り、本明細書で使用される「サイズ」という用語は、微粒子のサイズ分布の最頻値、すなわち、そのサイズ分布において最も高頻度で見られる値を表す。例えば動的光散乱(例えば、光子相関分光測定(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角レーザー光散乱(LALLS)および中角レーザー光散乱(MALLS))、光遮蔽法(例えば、コールター分析法)またはその他の技術(例えば、レオロジーおよび光学または電子顕微鏡)による、微粒子のサイズを測定する方法は、当業者に公知である。
【0114】
微粒子は、任意の形状、例えば球形であり得る。いくつかの態様において、本明細書で使用される「微粒子」という用語は、マイクロ球体を包含し得る。本明細書で使用される「マイクロ球体」という用語は、実質的に球形の形状を有する微粒子を表す。実質的に球形の微粒子は、最小半径と最大半径の間の差が概ね小さい方の半径の約40%を超えず、より典型的には約30%未満または20%未満である、微粒子である。1つの態様において、本明細書で使用される「微粒子」という用語は、マイクロカプセルを包含する。本明細書で使用される「マイクロカプセル」という用語は、活性成分、例えば治療剤を含む微小のカプセルを表す。
【0115】
したがって、いくつかの態様において、それらの表面に操作された微生物標的化分子を含む微粒子は、その中に少なくとも1つの活性成分、例えば感染を処置するための治療剤をカプセル被包し得、細胞標的化薬物送達装置として使用され得る。そのような態様において、微粒子は、本明細書に記載されるような生体適合性ポリマーを含み得る。いくつかの態様において、微粒子はさらに、例えばカプセル被包された薬物を放出するために、生分解性ポリマーを含み得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、インビボで浸食されまたは分解しより小さな化学断片を形成する組成物の能力を表す。分解は、例えば、酵素的、化学的または物理的プロセスによって起こり得る。本明細書に提供される局面において使用することができる生分解性ポリマーの非限定的な例は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリシアノアクリレート、ポリウレタン、ポリアクリレート、それらのブレンドおよびコポリマーを含む。
【0117】
その他の追加の生分解性ポリマーは、生分解性ポリエーテルエステルコポリマーを含む。一般的に言うと、ポリエーテルエステルコポリマーは、親水性(例えば、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール)および疎水性のブロック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を含む両親媒性ブロックコポリマーである。例示的なブロックコポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ベースおよびポリ(ブチレンテレフタレート)ベースのブロック(PEG/PBTポリマー)であるがこれらに限定されない。PEG/PBTポリマーは、PolyActive(商標)の商品表示の下でOctoPlus Incから市販されている。生分解性コポリマーまたはマルチブロックコポリマーの非限定的な例は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,980,948号および同第5,252,701号に記載されるものを含む。
【0118】
その他の生分解性ポリマー材料は、リン含有連結を含む生分解性テレフタレートコポリマーを含む。ポリ(ホスフェート)、ポリ(ホスホネート)およびポリ(ホスファイト)と呼ばれる、ホスホエステル連結を有するポリマーは、当技術分野で公知である。例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、Penczek et al., Handbook of Polymer Synthesis, Chapter 17: "Phosphorus-Containing Polymers," 1077-1132 (Hans R. Kricheldorf ed., 1992)ならびに米国特許第6,153,212号;同第6,485,737号;同第6,322,797号;同第6,600,010号;同第6,419,709号;同第6,419,709号;同第6,485,737号;同第6,153,212号;同第6,322,797号および同第6,600,010号を参照のこと。
【0119】
生分解性の多価アルコールエステルも、基質(例えば、微粒子)の材料として使用することができる(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,592,895号を参照のこと)。いくつかの態様において、生分解性ポリマーは、架橋されたポリマー構造を有するヒドロゲルを形成する疎水性成分および親水性成分を含む3次元架橋ポリマーネットワーク、例えば、米国特許第6,583,219号に記載されるもの、であり得る。なおさらなる態様において、生分解性ポリマーは、α-アミノ酸に基づくポリマー(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,503,538号に記載されるような、弾性のコポリエステルアミドまたはコポリエステルウレタン)を含み得る。
【0120】
概ね、微粒子の製作に関して当技術分野で周知の任意の生体適合性材料が、本明細書に記載される微粒子の態様において使用され得る。したがって、脂質性の微粒子コアを含む微粒子もまた、本明細書の記載の範囲内である。例示的な脂質性微粒子コアは、リポソームであるがこれに限定されない。リポソームは、一般に、内部空間、例えば水性の内部空間、を取り囲む1つまたは複数の脂質二重層を含む粒子と定義される。1つの態様において、リポソームは、二重の脂質膜によって形成された小包であり得る。リポソームを調製する方法は、当技術分野で十分に解説されている、例えば、Szoka and Papahadjopoulos (1980) Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467, Deamer and Uster (1983) Pp. 27-51 In: Liposomes, ed. M. J. Ostro, Marcel Dekker, New York。
【0121】
微生物標的化磁気マイクロビーズ:
いくつかの特定の態様において、その表面に少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、例えば本明細書に記載される操作されたマンノース結合レクチンを含む「微生物標的化磁気マイクロビーズ」が本明細書に提供される。例にすぎないが、図1Cに示されるように、微生物標的化磁気マイクロビーズ112は、複数の微生物標的化分子、例えば2量体微生物標的化分子100でコーティングされた磁気マイクロビーズ110を含み得る。そのような微生物標的化磁気マイクロビーズは、微生物または病原体を、被験試料、例えば、非限定的に、生物学的流体、例えば血液を含む任意の流体、から分離するために使用され得る。いくつかの態様において、微生物標的化磁気マイクロビーズは、生きた微生物または病原体を除去するために使用され得る。基質としての磁気マイクロビーズの使用は、微生物に結合した磁気マイクロビーズを、磁場勾配を用いて試料流体から容易に分離することができ、微生物の存在について試験することができ、および/または回収した微生物を従来的な病原体培養および感受性試験アッセイに移行するために使用することができる点で、有利であり得る。したがって、いくつかの態様において、微生物標的化磁気マイクロビーズは、任意の供給源からまたは任意の流体、例えば生物学的流体(例えば、血液試料)、環境的流体もしくは表面(例えば、廃水、建築物もしくは機械表面)または食用物質もしくは液体(例えば、食物、水)において汚染微生物を除去するために使用され得る。流体が血液であるいくつかの態様において、微生物標的化磁気マイクロビーズを用いて対象から回収された血液から微生物/病原体が除去された後、その血液は、治療的介入として同一の対象に戻し循環され得る。いくつかの態様において、微生物標的化磁気マイクロビーズは、診断において、潜在的病原体を同定のために回収する手段として使用され得;疾患の診断だけでなく、水経由または食物経由の病原体、微粒子またはその他の汚染物の同定においても、使用され得る。あるいは、固体基質は、生物学的病原体に選択的に結合しこれを隔離する中空糸型リアクターまたは任意のその他の血液濾過膜もしくは流体装置(例えば、単純な透析チューブ、スパイラルミキサーもしくはスタティックミキサー)またはその他の樹脂、繊維もしくはシートを含み得る。
【0122】
磁気マイクロビーズは、球形、棒形、楕円形、円柱形およびディスク形を含むがこれらに限定されない任意の形状であり得る。いくつかの態様において、実質的に球形の形状および定義された表面化学を有する磁気ビーズが、化学的凝集および非特異的結合を最小化するために使用され得る。本明細書で言い換え可能に使用される場合、「磁気マイクロビーズ」および「磁気ビーズ」という用語は、磁場勾配によって引き寄せられるもしくは弾き返されるまたは非ゼロの磁化率を有するナノまたはマイクロスケールの粒子を表し得る。磁気マイクロビーズは、強磁性、常磁性または超常磁性であり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、超常磁性であり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、その磁気特性に対する悪影響を有さない限り、微生物標的化分子を鉄に対する曝露から保護するポリマーシェルを有し得る。例えば、生体適合性ポリマーコート磁気マイクロビーズが、被験試料、例えば、生物学的流体、例えば血液から微生物/病原体を除去するために使用され得る。
【0123】
磁気マイクロビーズは、1nm~1mmのサイズ範囲であり得る。例えば、磁気マイクロビーズは、約2.5nm~約500μmまたは約5nm~約250μmのサイズであり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、約5nm~約100μmのサイズであり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、約0.01μm~約10μmのサイズであり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、約0.05μm~約5μmのサイズであり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、約0.08μm~約1μmのサイズであり得る。1つの態様において、磁気マイクロビーズは、約10nm~約10μmのサイズであり得る。いくつかの態様において、磁気マイクロビーズは、磁気ナノビーズ、例えば、約1nm~約1000nm、約10nm~約500nm、約25nm~約300nm、約40nm~約250nmまたは約50nm~約200nmの範囲のサイズを有する磁気ナノビーズであり得る。1つの態様において、磁気マイクロビーズは、約50nm~約200nmのサイズを有する磁気ナノビーズであり得る。磁気マイクロビーズは、磁場または磁場勾配を用いて操作され得る。そのような粒子は、一般に、磁性要素、例えば鉄、ニッケルおよびコバルトならびにそれらの酸化化合物からなる。磁気マイクロビーズは周知であり、それらの調製方法は当技術分野で解説されている。例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,878,445号;同第5,543,158号;同第5,578,325号;同第6,676,729号;同第6,045,925号;および同第7,462,446号;ならびに米国特許出願公開第2005/0025971号;同第2005/0200438号;同第2005/0201941号;同第2005/0271745号;同第2006/0228551号;同第2006/0233712号;同第2007/01666232号;および同第2007/0264199号を参照のこと。
【0124】
磁気マイクロビーズはまた、カップリング分子に結合できる官能基を有するものまたは有さないものを、幅広くかつ商業的に入手可能である。様々な官能基、例えば、アミノ基、カルボン酸基、エポキシ基、トシル基またはシリカ様基で官能化された磁気マイクロビーズもまた、幅広くかつ商業的に入手可能である。適当な磁気マイクロビーズは、AdemTech、Miltenyi、PerSeptive Diagnostics, Inc.(Cambridge, MA);Invitrogen Corp.(Carlsbad, CA);Cortex Biochem Inc.(San Leandro, CA);およびBangs Laboratories(Fishers, IN)等から市販されている。特定の態様において、本明細書で使用され得る磁気マイクロビーズは、基質の表面化学に依存して、各種のDYNABEADS(登録商標)磁気マイクロビーズ(Invitrogen Inc.)であり得る。
【0125】
微生物標的化細胞:
いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子が結合される基質は、生細胞または生物学的組織もしくは臓器であり得る。例えば、生細胞は、免疫応答に関連するものであり得、そのような細胞は、貪食細胞(マクロファージ、好中球および樹状細胞)、マスト細胞、好酸球、好塩基球および/またはナチュラルキラー細胞を含むがこれらに限定されない。あるいは、生細胞は、免疫系の生物学的組織または臓器、例えば脾臓、リンパ節、リンパ管、扁桃腺、胸腺、骨髄、パイエル板、結合組織、粘膜、細網内皮系等、の細胞であり得る。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子が結合される表面はまた、これらの組織または臓器の1つまたは複数の細胞外マトリックスであり得る。
【0126】
微生物結合マイクロタイタープレート:
いくつかの態様においては、マイクロタイターウェルの底面が、例えば試料中の微生物の量を検出および/または決定するために、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子でコーティングされ得る。マイクロウェル表面に結合された操作された微生物標的化分子に試料中の微生物または病原体を結合させた後、試料の残りが除去され得る。次いで、検出可能であり、また微生物または病原体に結合することができる分子(例えば、本明細書に記載される検出可能な分子にコンジュゲートされた操作された微生物標的化分子)が、微生物/病原体の検出のために、微生物/病原体を含むマイクロウェルに添加され得る。例えば酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いる、異なる検出可能な分子によりタンパク質の量を決定する様々なシグナル検出法が、当技術分野で十分に確立されており、これらのシグナル検出法もまた、操作された微生物標的化分子に結合した微生物/病原体により誘導されるシグナルの検出を容易にするために本発明で使用され得る。
【0127】
微生物結合ディップスティック/試験ストリップ:
いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、微生物または病原体を検出するためのディップスティックおよび/または試験ストリップにおける使用に適合され得る。例えば、ディップスティックおよび/または試験ストリップは、本明細書に記載される1つまたは複数の操作された微生物標的化分子を含む少なくとも1つの試験領域を含み得る。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、ディップスティックおよび/または試験ストリップの試験領域の表面にコンジュゲートまたは付加され得る。直接的な架橋、カップリング剤(例えば、官能基、ペプチド、核酸マトリックス、例えばDNAマトリックス)を介した間接的な架橋、吸着または当技術分野で公知の任意のその他の当技術分野で知られている方法を含むがこれらに限定されない、タンパク質を基質表面にコンジュゲートする方法が、当技術分野で公知である。
【0128】
1つの態様において、約1μg~約100μgの微生物結合性分子が、ディップスティックまたは膜表面にコーティングまたは付加され得る。別の態様において、約3μg~約60μgの微生物結合性分子が、ディップスティックまたは膜表面にコーティングまたは付加され得る。いくつかの態様において、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.5mg/mL~約40mg/mL、約1mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mLの微生物結合性分子が、ディップスティックまたは膜表面にコーティングまたは付加され得る。1つの態様において、約11.5mg/mLの微生物結合性分子が、ディップスティックまたは膜表面にコーティングまたは付加され得る。
【0129】
いくつかの態様において、ディップスティックおよび/または試験ストリップにコンジュゲートされた操作された微生物標的化分子はさらに、本明細書に記載されるような検出可能な標識を含み得る。1つの態様において、検出可能な標識は、検出可能な部分にコンジュゲートされた微生物酵素基質を含み得る。そのような検出可能な部分は、微生物酵素基質にコンジュゲートされているときは検出不可能であるが、微生物により保持または分泌される酵素の存在下で検出可能な実体(例えば、光発生シグナル)になる。例えば、微生物の検出におけるそのような検出可能な標識の使用に関しては、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、WO2011/103144を参照のこと。
【0130】
いくつかの態様において、ディップスティックおよび/または試験ストリップはさらに、試験領域から決定された読み取りシグナルとの比較のために、少なくとも1つの参照領域または対照領域を含み得る。参照領域は、通常、例えば任意のバックグラウンドシグナルを考慮するために、操作された微生物標的化分子を含まない。いくつかの態様において、参照領域は、試験領域の操作された微生物標的化分子が有している1つまたは複数の検出可能な標識を既知量含み得る。そのような態様において、参照領域は、被験試料中の微生物の量を概算または定量することができるよう、較正のために使用され得る。
【0131】
ディップスティックおよび/または試験ストリップは、任意の形状および/または任意の形式、例えば、平面的な形状、例えば長方形のストリップもしくは円形のディスク、または湾曲した表面、例えばスティック、であり得る。あるいは、個別の試験ストリップではなく、試験領域および場合により参照領域が連続する線または一連の点の形態で存在する連続的なロールが利用され得る。
【0132】
ディップスティックおよび/または試験ストリップは、紙、ニトロセルロース、ガラス、プラスチック、ポリマー、膜材料、ナイロンおよびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の材料から作製され得る。1つの態様において、ディップスティックおよび/または試験ストリップは、紙を含み得る。1つの態様において、ディップスティックおよび/または試験ストリップはナイロンを含み得る。
【0133】
本明細書に記載される微生物結合ディップスティックおよび/または試験ストリップは、微生物または病原体検出用のポイント・オブ・ケア診断ツールとして使用することができる。例にすぎないが、(例えば、膜材料、例えばナイロンから作製された)微生物結合ディップスティックまたは試験ストリップを、患者または対象由来の被験試料(例えば、血液試料)と接触させ、そして一定時間、例えば、少なくとも約15秒間、少なくとも約30秒間、少なくとも約1分間、少なくとも約2分間、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間またはそれ以上、インキュベートすることができる。いくつかの態様において、インキュベートしたディップスティックまたは試験ストリップを、その後、ブロッキング剤(例えば、BSA、正常血清、カゼイン、脱脂粉乳および/または非特異的結合を最小化するための任意の市販のブロッキング剤)中でインキュベートすることができる。操作された微生物標的化分子の様々な態様に依存して、いくつかの態様において、被験試料(例えば、血液試料)と接触させた後の微生物結合ディップスティックまたは試験ストリップをさらに、病原体の検出を容易にするためおよび/または病原体検出の特異性を増大させるために、少なくとも1つの追加の薬剤と接触させることができる。例えば、被験試料(例えば、血液試料)と接触させた後のディップスティックまたは試験ストリップのいくつかの態様をさらに、微生物および/または微生物物質に結合する分子にコンジュゲートされた検出可能な標識と接触させることができる。そのような分子の例には、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の1つまたは複数の態様、検出したい微生物または病原体に特異的な抗体、検出したい微生物または病原体によって認識されるタンパク質、ペプチド、糖質または核酸、およびそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0134】
いくつかの態様において、微生物結合ディップスティックおよび/または試験ストリップの読み取りは、システムまたは装置、例えば、携帯装置において行われ得る。システムまたは装置は、被験試料における微生物感染の存在もしくは非存在および/またはその微生物感染の程度を示すシグナルを表示し得る。
【0135】
一般に、感染の診断は、間接的または直接的な証拠に基づく。間接的な証拠は、病原体に対する適応的および特異的な宿主応答の検出に基づく。直接的な証拠は、感染部位からの微小生物の培養、病原体特異的な核酸の増幅および検出または血中もしくは尿中での特異的抗原の検出に基づくが;既存の技術では、生きた病原体の検出しか行えず、患者の生命に対して破壊的な効果を有し得る生き物でない微生物物質、例えば内毒素の検出は行えない。
【0136】
特異的抗原の検出は、様々な感染疾患で、最も一般的にはレジオネラ症(尿中のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型1)、マラリア(血中の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum))および成功率は低いが肺炎連鎖球菌感染(尿中)で、広く使用されている。しかし、直接的な抗原検出は、特定の病因を考慮または除外するために使用できるにとどまり、ほとんどの細菌を同定することができない。
【0137】
本明細書に記載されるように、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBL分子またはFcMBL結合磁気マイクロビーズ)は、例えば細菌、真菌、寄生生物またはウイルスであるがこれらに限定されない病原体を含む幅広い微生物の表面に結合することができる。例えば、いくつかの態様において、血液もしくは尿または任意のその他の生物学的流体が、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBL分子またはFcMBL結合磁気マイクロビーズ)および十分な対照(例えば、非関連タンパク質でコーティングされた磁気マイクロビーズによる非特異的結合対照)による微生物捕捉に供され得る。したがって、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBLまたはFcMBLコート磁気マイクロビーズ)は、診断または治療用途で、微生物、例えば細菌に結合させるために使用することができる。
【0138】
操作された微生物結合性分子または基質は微生物の細胞表面の少なくとも一部分に結合できるだけでなく、操作された微生物結合性分子または基質は微生物物質(例えば、例えば感染過程の間に、菌血症の非存在下でさえも、または環境表面、食物もしくは水、医薬品または医療装置において見出される、微生物を起源とする細胞断片または、内毒素を含む、生物学的流体中を循環する微生物から生じた物質)も捕捉することができる。そのような微生物の細胞断片または微生物から生じた物質の存在は、単独でまたは無傷の微生物の検出と組み合わせて、診断用途で使用することができる、例えば、病原体を起源とする細胞断片または病原体から生じた物質の存在は、対象における感染疾患、または環境表面、食物もしくは水、医薬品または医療装置における汚染微生物の診断指標となり得る。さらに、結合した物体(例えば、操作された微生物結合性分子または基質に結合した微生物物質または微生物)の生化学/プロテオミクス(MALDI-TOF、多段階質量分析(例えば、MSn)または特異的抗体もしくはアプタマーベースの)分析により、微生物に特徴的な要素を確認することができる。
【0139】
したがって、本明細書に提供されるものには、対象の臓器、組織および/または細胞(血液、通常無菌状態の流体または実質的な虫歯(virtual cavities)を含む)における微生物および/または微生物物質の存在または非存在を検出する方法も含まれる。例えば、微生物および/または微生物物質の存在または非存在は、対象の体液、例えば血液を循環する、他の流体、例えば尿で見出される、または任意の適当な手段(例えば、生検、穿刺、吸引および洗浄(lavage)であるがこれらに限定されない)によって試料採取された任意のその他の臓器中の微生物および/または非生存性の微生物物質もしくは粒子の捕捉によって検出され得る。
【0140】
本発明者らは、いくつかの態様において、FcMBLが濃縮および直接的な分析のために細菌全体を捕捉するだけでなく、非生存性の微生物物質をも捕捉することを発見した。そのような結合は、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBLコートマイクロビーズ)へのこの微生物物質の捕捉に基づく微生物結合アッセイによって定量することができる。この物質の検出は、酵素に連結された本明細書に記載される操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)または蛍光物質に連結された本明細書に記載される操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)を用いて行うことができる。操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)を所望の基質(例えば、磁気ビーズ)の表面上で多量体化させ、結合力を向上させた微生物結合基質を形成することができる。実施例16~17は、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)が生物学的試料(例えば、血液試料)中の生きているおよび死んでいる微生物ならびに微生物物質(微生物の断片および内毒素を含むがこれらに限定されない)を検出できること、およびその検出結果が感染の臨床症候または病的状態と相関すること、を示している。
【0141】
したがって、いくつかの態様において、操作された微生物結合性分子または基質に結合した無傷の微生物および/または微生物物質(細胞断片または微生物から生じた物質を含むがこれらに限定されない)の存在は、感染または汚染のマーカーとして使用することができる。現在の汎用の感染バイオマーカーは、分子、例えば、サイトカイン;急性期タンパク質、例えばCRP、プロカルシトニンおよびフィブリノゲン;赤血球沈降速度(ESR)ならびに白血球数の増加または減少を含む。しかし、これらの汎用バイオマーカーは、感染に特異的でないだけでなく、非感染性の炎症にも関連する。
【0142】
対照的に、操作された微生物結合性分子および/または基質への微生物またはその断片(微生物から生じた物質を含む)の結合は、試料採取された臓器または組織または細胞(血液その他)の感染に関して使用できるだけでなく、十分な微生物の破壊または異化によって血流、尿または任意のその他のアクセス容易な流体中に微生物物質を生じさせる体内のいずれかで進行するあらゆる主要な感染プロセスにも使用することができる。現時点で、一般的な非感染性の炎症と交差反応しない生物学的な感染マーカーは存在しない。したがって、これは、感染が疑われる患者の管理における大きなブレイクスルーである。制約されることを望まないが、操作された微生物結合性分子および/または基質は、対象(例えば、哺乳動物対象)における感染の検出に使用できるだけでなく、それらは、生物医学装置、診療所もしくは病院、池もしくは貯水池、廃水、水利用農場(水耕地を含む)および/または食物処理プラントもしくは機械を含むがこれらに限定されない、微生物が存在し得る任意の環境または任意の装置における微生物の存在または非存在の検出にも使用することができる。
【0143】
実際、本発明者らは、匿名の入院患者から血液を回収し、そしていくつかの態様において、FcMBLアッセイが、血液培養で陰性であった患者において陽性であり、感染の診断と強く相関することを実証した。したがって、いくつかの態様において、FcMBLアッセイは、感染の検出に関して従来の血液培養よりも高感度である。いくつかの態様において、FcMBLアッセイは、感染の早期診断に使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子および/もしくは基質ならびに/または診断/検出プロセスは、以前に伝統的な診断法(例えば、血液培養)によって陰性の結果が得られた被験試料において微生物および/または微生物物質の存在を検出することができる。したがって、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子および/もしくは基質ならびに/または診断/検出プロセスは、伝統的な診断法(例えば、血液培養)よりも高感度かつ迅速な診断を実現することができる。
【0144】
さらに、いくつかの態様において、広スペクトルの操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBL分子またはFcMBLコート磁気マイクロビーズ)が、ほとんどの臨床的に関連する細菌種の捕捉を実現し得る。微生物物質または微生物の断片の存在は、それらは一般に血流にまたは最も可能性がある尿に到達するものなので、深部組織感染を反映するものであり得る。この微生物物質または微生物の断片の捕捉および特徴づけは、所定の微生物種に特異的な証明マーカーとして使用することができ、したがって生物の体内のいずれかで感染を引き起こす微生物を診断および/または同定することができる。
【0145】
例えば、1つまたは複数の特異的抗体の使用により、操作された微生物結合性分子または基質に結合した微生物物質の性質および/またはタイプを特徴づけることができる。さらに、微生物表面に存在する特定の分子(例えば、タンパク質、糖質、脂質)、例えば、大腸菌におけるリピドAまたは関心対象の微生物における任意のその他の分子、の特異的検出により、試料をさらに識別することまたは試料中に存在する微生物を同定することができる。限定を望まないが、実施例16および図33に示されるように、捕捉された微生物および/またはその断片が大腸菌に関連するかどうかを決定するために、捕捉された微生物および/またはその断片を含むFcMBLコート磁気ビーズをさらに、大腸菌のリポ多糖類リピドAに対して惹起された特異的抗体(抗LPSリピドA抗体)と接触させることができる。図33の下パネルに示されるように、FcMBLコート磁気ビーズに捕捉された微生物および/またはその断片は、抗LPS抗体に結合せず、これにより、FcMBLコートマイクロビーズに結合した微生物および/または微生物断片が大腸菌と関連しない可能性が示された。逆に、FcMBLコート磁気マイクロビーズに捕捉された微生物および/またはその断片が抗LPS抗体に結合した場合、FcMBLコートマイクロビーズに結合した微生物および/または微生物断片が大腸菌に関連する可能性が示される。したがって、複数の微生物(病原体を含む)に対する抗体のライブラリのスクリーニングは、磁気分離設備が整っている任意の微生物研究所において3時間以内に利用可能な単純な血液または尿試験により、例えば対象の体内のいずれかにおける、微生物特異的な感染の直接的な診断を実現する。
【0146】
異なる態様においては、「ディップスティック」形式を用いて迅速な試験が実施され得る。例えば、(図13に示されるようなFcMBL分子の代わりに)微生物種特異的な抗体が列をなしてスポットされている膜が、事前に被験試料流体とインキュベートされた微生物結合基質(例えば、FcMBLコートマイクロビーズ)と共にインキュベートされ得る。膜上の適当な抗体によって捕捉された微生物結合基質(例えば、FcMBLコートマイクロビーズ)は、膜上に検出可能な(例えば、FcMBLコート磁気マイクロビーズの場合、サビ色の)バンドを形成し得、それによりどのような種(1つまたは複数)の微生物物質または微生物が捕捉されたかが示され得る。
【0147】
抗体ベースの特徴づけ方法以外の、他の公知の方法、例えば、質量スペクトルによる特徴づけ方法またはPCR分析もまた、操作された微生物結合性分子および/または基質に捕捉された微生物の種を特徴づけおよび/または同定するために使用することができる。いくつかの態様において、捕捉された微生物および/または微生物物質/断片を含む微生物結合性分子および/または基質は、任意のさらなる特徴づけ方法、例えば、質量スペクトルによる特徴づけ方法の前に洗浄され得る。
【0148】
いくつかの態様において、捕捉された微生物および/または微生物物質/断片を含む操作された微生物結合性分子および/または基質は、それに結合した微生物の種および/または微生物物質の特徴づけおよび/または同定のための直接的な分析に供され得る。例えば、捕捉された微生物物質を含む操作された微生物結合性分子および/または基質は、(例えば、捕捉された微生物物質を操作された微生物結合性分子および/または基質から分離せずに)直接的にMALDI-TOF分析に供され得る。
【0149】
あるいは、任意の当技術分野で知られているプロトコルまたは本明細書に記載される方法が、任意の特徴づけ分析の前に、結合した微生物および/または微生物化合物/断片を操作された微生物結合性分子および/または基質から単離するために、操作された微生物結合性分子および/または基質に適用され得る。任意の特徴づけ分析の前に結合した微生物および/または微生物化合物/断片を操作された微生物結合性分子および/または基質から回収または単離するための例示的な方法は、捕捉された物質を操作された微生物結合性分子および/または基質から解放するCa2+キレート化;Fc・プロテインA相互作用により媒介される結合を解放するpH低下;ギ酸およびアセトニトリルを用いるタンパク質抽出、ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。対照マイクロビーズ(例えば、微生物と反応しない分子でコーティングされたマイクロビーズ)は、ベースラインの決定のために、同様に処置され得る。
【0150】
いくつかの態様において、操作された微生物結合性分子および/もしくは基質から抽出された捕捉物質ならびに/または非特異対照に結合した物質は、PCR分析に供され得る。例えば、抽出された捕捉物質の正体は、微生物種に特異的なタンパク質をコードする遺伝子の存在または非存在を検出することによって決定され得る。したがって、1つまたは複数の微生物種特異的な遺伝子の存在は、対応する微生物種が操作された微生物結合性分子に結合したことの指標となり得る。
【0151】
いくつかの態様において、操作された微生物結合性分子および/もしくは基質から抽出された捕捉物質ならびに/または非特異的な対照に結合した物質は、MALDI-TOFまたはMALDI-TOF-TOFを含むがこれらに限定されない質量スペクトル分析に供され得る。非特異的な対照に結合した物質は、試験した媒体の組成のベースラインを構成し得る。このプロフィールは、操作された微生物結合性分子および/または基質に結合した物質の分析における参照基準として使用することができる。対照に結合した試料に存在するピークは、操作された微生物結合性分子および/または基質に結合した物質から得られたプロフィールから差し引かれ得る。(例えば、参照プロフィールを差し引いた後の)微生物結合性分子および/または基質に結合した物質の個々のプロフィールは、微生物/微生物断片の個体識別標(signature)を構成し得る。正および/または負の両方の電荷分析が、情報豊富なピークを同定するために行われ得る。
【0152】
微生物の個体識別標の確認は、当技術分野の任意の公知の方法によって行われ得る。例えば、微生物/微生物断片の個体識別標は、微生物結合性分子および/または基質に結合した物質の個々のプロフィールと、1つまたは複数の微生物/微生物断片の個体識別標のライブラリを、例えばそれまでに蓄積されたプロフィールに基づく照合比較アルゴリズムを用いて比較することによって確認され得る。
【0153】
微生物種の同定のために、微生物の起源ごとに、微生物/微生物断片の個体識別標のライブラリが、インビボまたはインサイチュー試料、例えば、臨床試験由来試料および/または環境由来試料(例えば、臨床状況、培養培地、食物処理プラント、水源から回収された試料)によって、構築され得る。例えば、既知の微生物、例えば病原体、に感染した患者の血液(またはその他の生物学的流体)が分析され得、そして微生物物質の個体識別標が特徴づけられ得る。同じ臨床条件下での個体識別標の確認により、科/属/種診断を行うことができる。
【0154】
加えてまたはあるいは、別の微生物/微生物断片のライブラリが、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子に対する微生物の結合部分のインビトロ分析から構築され得、その際、微生物は、機械的もしくは化学的なまたは抗生物質による溶解または自己消化に供され得る。微生物物質は、異なる培体、緩衝液、尿、血液または任意の適当な媒体中に捕捉され得る。
【0155】
診断プロフィールは、一般感染、分岐レベル、科レベル、属レベルまたは種レベルの同定のための確率スコアによる同定のために、任意の参照プロフィール、例えば特定のインビボもしくはインサイチュー由来の微生物プロフィールおよび/または特定のインビトロ由来の微生物プロフィール、と照合され得る。
【0156】
さらに、環境表面、食物もしくは水、医薬品または医療装置における微生物および/または微生物物質の存在または非存在を、それらに存在する微生物および/または非生存性の微生物物質もしくは粒子の捕捉によって検出する方法もまた、本明細書に記載される範囲内である。いくつかの態様において、本明細書に記載される任意の局面の方法は、微生物および/または微生物物質(微生物、例えば、グラム陰性微生物、例えば大腸菌、および/またはグラム陽性微生物、例えば黄色ブドウ球菌、により産生される内毒素を含むがこれらに限定されない)の存在または非存在について医薬品(例えば、薬物、治療剤もしくは画像化剤)および/または医療装置(例えば、流体送達装置もしくは移植可能な装置)をスクリーニングするために使用され得る。1つの態様において、この方法は、微生物、例えば、グラム陰性微生物、例えば大腸菌、および/またはグラム陽性微生物、例えば黄色ブドウ球菌、により産生される内毒素の存在または非存在について医薬品(例えば、薬物、治療剤もしくは画像化剤)および/または医療装置(例えば、流体送達装置もしくは移植可能な装置)をスクリーニングするために使用され得る。
【0157】
微生物標的化基質の例示的な最適化または改変
本明細書に記載される少なくともいくつかの態様にしたがい、操作された微生物結合性分子および/または基質(例えば、FcMBLが結合した常磁性マイクロビーズ)は、本明細書に記載される様々な微生物および/または微生物物質の表面、例えば、非限定的に、細菌、真菌、寄生生物またはウイルス、に結合し得る。いくつかの態様において、多くの因子、例えば、基質(例えば、常磁性マイクロビーズ)にコンジュゲートまたはコーティングされた操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の配向、基質(例えば、マイクロビーズ)のサイズ、操作された微生物標的化分子を構築するのに使用されるリンカーおよび微生物表面結合ドメインの選択、微生物アッセイの条件およびそれらの任意の組わせが、微生物への微生物標的化基質の結合に関して最適化され得る。
【0158】
基質のサイズおよび基質上の操作された微生物標的化分子の密度の最適化:
加えてまたはあるいは、基質(例えば、マイクロビーズ)にコンジュゲートまたはコーティングされる操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)の密度が、微生物の捕捉のために最適化され得る。
【0159】
操作された微生物結合性分子がFcMBLであるいくつかの態様において、FcMBLは、組み換え野生型MBLと、FcMBLが2つの糖質認識ドメイン(CRD)ヘッドを含む2量体タンパク質であるのに対して野生型MBLは3つのグループに9~18個のヘッドを有する点で、相違する。個々のヘッドの親和性は10-3であり、微生物表面へのMBLの結合は、高い結合力の結合を行うために複数のCRDヘッドの結合を必要とする。2量体のFcMBLタンパク質によってこの高い結合力を達成するために、いくつかの態様において、複数の(例えば、少なくとも約2個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約25個、少なくとも約50個、少なくとも約100個、少なくとも約1000個、少なくとも約104個、少なくとも約105個、少なくとも約106個、少なくとも約107個の)操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)が基質(例えば、磁気マイクロビーズ、例えばLife Technologies製のMYONE(商標)ストレプトアビジンマイクロビーズ)の表面上で多重化され得る。基質にコンジュゲートされる操作された微生物結合性分子の数は、基質において利用可能な表面積によって変化し得る。
【0160】
したがって、基質上の操作された微生物結合性分子の密度、基質のサイズおよび/または操作された微生物結合性分子のサイズを含む多くの因子が、操作された微生物結合基質(例えば、非限定的に、FcMBLコートビーズ)に対する微生物の結合を最適化するために変更され得る。いくつかの例示的な最適化/改変は、異なるサイズの基質(例えば、非限定的に、マイクロビーズ)を使用すること;操作された微生物結合性分子(例えば、非限定的に、FcMBL)を様々な配向のアレイにして基質スキャフォールド、例えば、非限定的に、DNA、アプタマーまたは細胞外マトリックス(例えば、フィブロネクチン)に結合することにより、基質(例えば、非限定的に、マイクロビーズ)上の操作された微生物結合性分子(例えば、非限定的に、FcMBL)の密度を変更すること;異なるサイズの本明細書に記載されるリンカーまたは融合パートナー(もしくは本明細書に記載されるリンカー)(例えば、約100kDa~約1000kDaの間または約250kDa~約750kDaの間)に結合された微生物結合ドメイン(例えば、非限定的に、MBL CRDのヘッドおよびネック領域)の融合タンパク質を作製すること、を含み得るがこれらに限定されない。例示的な融合パートナーは、約500kDaであるIgMのFc部分;微生物結合ドメイン(例えば、非限定的に、MBL CRDのヘッドおよびネック領域)と本明細書に記載される多量体(例えば、少なくとも2量体、少なくとも3量体)リンカーまたは融合パートナー(もしくは本明細書に記載されるリンカー)の融合タンパク質の作製;およびそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「多量体リンカー」または「多量体融合パートナー」という用語は、微生物結合ドメインの付加を提供する2つまたはそれ以上の同一のリンカー単位を含むリンカーまたは融合パートナーを表す。例にすぎないが、3量体リンカーまたは融合パートナーは、微生物結合ドメインの付加のための3つの同一のリンカー単位を含むリンカーまたは融合パートナーである。
【0161】
本明細書に記載される微生物結合基質に対する任意の微生物の結合は、当技術分野で公知のおよび/または本明細書に記載される任意の方法、例えば、実施例に記載されるELISA・比色アッセイまたは抗体ベースの画像化法によって決定することができる。したがって、微生物結合基質は、例えば、その操作された微生物結合性分子の密度および/またはサイズ、その基質の構造および/またはサイズを変更し、次いでその微生物結合基質への微生物の結合に対するそれらの効果を決定することによって、微生物の検出に関して最適化され得る。
【0162】
例えば、実施例18は、異なるサイズを有する微生物標的化磁気マイクロビーズ(例えば、FcMBLコート磁気マイクロビーズ)の微生物捕捉効率を評価する例示的な方法を示している。いくつかの態様において、操作された微生物結合性分子を付加するための基質としてのマイクロビーズ(例えば、磁気マイクロビーズまたは非磁気マイクロビーズ)は、約10nm~10μm、約20nm~約5μm、約40nm~約1μm、約50nm~約500nmまたは約50nm~約200nmのサイズを有し得る。理論に拘束されることを望まないが、マイクロビーズのサイズは、捕捉性を強化し検出感度を向上させるため、2つ以上のマイクロビーズ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10またはそれ以上)が同一の微生物に結合できるよう、微生物のサイズよりも小さいものであり得る。
【0163】
加えて、微生物標的化基質の表面上の操作された微生物結合性分子の密度は、微生物への結合に関して最適化され得る。微生物標的化基質に対する特定の微生物の結合性を強化するため、微生物標的化基質の表面上の任意の2つの微生物結合性分子間の距離は、微生物のサイズよりも小さくされ得る。したがって、微生物は、微生物標的化基質上に存在する2つ以上の微生物結合性分子(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10またはそれ以上)に、足してより大きな結合強度で、結合し得る。
【0164】
いくつかの態様において、微生物標的化基質は、それらの表面上に飽和量の本明細書に記載される操作された微生物結合性分子を含み得る。本明細書で使用される場合、「飽和量」という用語は、基質の表面にコンジュゲートおよび/またはコーティングすることができる操作された微生物結合性分子の最大数または最大量を表す。基質の表面上に存在することができる操作された微生物結合性分子の飽和量は、多くの因子、例えば、操作された微生物結合性分子のサイズおよび/または構造、基質のサイズおよび/または構造、基質上に存在する操作された微生物結合性分子の配向ならびにそれらの任意の組み合わせに依存する。
【0165】
操作された微生物標的化分子を構築するのに使用されるリンカーおよび微生物表面結合ドメインの選択ならびに微生物アッセイの条件:
いくつかの態様において、リンカーは、微生物の結合部位を提供するよう選択され得、ここで、リンカーに対する微生物の結合相互作用は微生物表面結合ドメインに対する微生物の相互作用と異なる。例えば、リンカーがFc分子であり微生物表面結合ドメインがMBLまたはその断片から得られたものである操作された微生物結合性分子において、Fcリンカーは、プロテインAまたはプロテインGとの結合を実現し、これはカルシウム非依存的であり、他方、MBL結合ドメインは、微生物との結合にカルシウムイオンを必要とする。したがって、プロテインA発現(例えば、黄色ブドウ球菌)またはプロテインG発現微生物は、カルシウムイオンの存在下でMBL結合ドメインおよびFcリンカーの両方と結合することができるが、カルシウムイオンの非存在下ではFcリンカーにのみ結合することができる。対照的に、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)は、通常、カルシウムイオンの非存在下でMBL結合ドメインおよびFcリンカーのいずれにも結合しない。そのような態様においては、微生物アッセイに存在するカルシウムイオンの量を制御することにより、プロテインAまたはプロテインG発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)を、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)から識別することができる。そのような態様のさらなる詳細は、後段の「被験試料中の微生物および/または微生物物質を捕捉および/または検出する例示的なプロセス」ならびに「微生物感染を診断する方法の例示的な態様」で見出すことができる。
【0166】
被験試料中の微生物および/または微生物物質を捕捉および/または検出する例示的なプロセス
1つの局面において、被験試料中の微生物および/または微生物物質を検出するプロセスが本明細書に記載されている。図17に示されるように、このプロセス1200は、任意工程1202(試料の前処理)、工程1204(試料の処理)、1208(微生物捕捉)および1210(微生物分離)を含む工程1206、ならびに1212(微生物検出)を含む。これらは別個のプロセスとして議論されるが、前処理、処理、捕捉、微生物分離および検出の1つまたは複数をマイクロ流体装置において実施することができる。マイクロ流体装置の使用により、分析プロセスを自動化することができ、および/または複数の試料の分析を同時に行うことができる。当業者は、本開示を実施する上で使用することができる生物学的流体を回収する、取り扱うおよび処理する当技術分野の方法に精通している。本明細書に記載されるプロセスにより、試料の分析を短期間で行うことができる。例えば、このプロセスは、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満で完了することができる。いくつかの態様において、試料における微生物の存在および同定は、プロセス開始から10分~60分以内に行うことができる。
【0167】
いくつかの態様において、試料は、生物学的流体、例えば、血液、血漿、血清、泌乳生産物、羊水、痰、唾液、尿、精液、脳脊髄液、気管支吸引物(bronchial aspirate)、発汗物、粘液、液状糞便試料、滑液、リンパ液、涙液、気管吸引物(tracheal aspirate)およびそれらの任意の混合物、であり得る。例えば、試料は、対象から得られる全血試料であり得る。
【0168】
本明細書に記載されるプロセスは、任意の所定の容積の試料において微生物の存在を検出するために使用することができる。いくつかの態様において、試料容積は、約0.25ml~約50ml、約0.5ml~約25ml、約1ml~約15ml、約2ml~約10mlである。いくつかの態様において、試料の容積は約5mlである。1つの態様において、試料の容積は8mlである。
【0169】
1202(試料前処理):
被験試料、例えば全血は、本明細書に記載される微生物検出の前に、例えば前処理試薬を用いて、前処理されることが必要とされ得るまたはそれが所望され得る。前処理が必要でない場合であっても、前処理は、場合により、単に利便性のために(例えば、市販のプラットフォームにおけるレジメンの一部として)行われ得る。前処理試薬は、本明細書に記載されるアッセイまたはプロセスと共に使用するのに適した任意の試薬であり得る。
【0170】
試料前処理工程は、通常、1つまたは複数の試薬を試料に添加することを含む。この前処理は、血液細胞の溶血、試料の希釈等を含むがこれらに限定されない多くの様々な目的のために行われ得る。前処理試薬は、試料を試料容器に添加する前から試料容器中に存在し得、または、前処理試薬は、試料容器中にすでに存在する試料に対して添加され得る。試料が生物学的流体である場合、試料容器は、VACUTAINER(登録商標)、例えば、ヘパリン処理されたVACUTAINER(登録商標)であり得る。
【0171】
前処理試薬は、界面活性剤および洗浄剤、塩、細胞溶解試薬、抗凝固剤、分解酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼ、コラゲナーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ等)および溶媒、例えば緩衝溶液を含むがこれらに限定されない。
【0172】
いくつかの態様において、前処理試薬は、界面活性剤または洗浄剤である。1つの態様において、前処理試薬は、Triton X100である。
【0173】
添加する前処理試薬の量は、多くの因子に依存し得る。一般に、前処理試薬は、約0.1mM~約10mMの終濃度で添加され得る。液体の場合、前処理試薬は、試料を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍または少なくとも5倍希釈するよう添加され得る。
【0174】
前処理試薬の添加後、試薬は試料に混合され得る。これは、単純に、試料を撹拌することによって、例えば、試料を振盪もしくはボルテックスするおよび/または、それがマイクロ流体装置内にある場合は、試料を周回移動させることによって、達成され得る。
【0175】
前処理試薬の添加後、試料混合物は、一定期間、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも1時間、インキュベートされ得る。そのようなインキュベートは、任意の適当な温度、例えば、室温(例えば、約16℃~約30℃)、低温(例えば、約0℃~約16℃)または高温(例えば、約30℃~約95℃)であり得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約15分間インキュベートされる。いくつかの態様において、インキュベートは、約5秒間~約60秒間である。いくつかの態様において、インキュベートは行われず、試料混合物が直接試料処理工程で使用される。
【0176】
1204(試料処理):
任意の前処理工程の後、試料は、場合により、1つまたは複数の処理試薬を試料に添加することによって処理され得る。これらの処理試薬は、細胞を溶解、試料中に存在する望ましくない分子を分解および/またはさらなる処理のために試料を希釈する役割を果たし得る。これらの処理試薬は、界面活性剤および洗浄剤、塩、細胞溶解試薬、抗凝固剤、分解酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼ、コラゲナーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ等)および溶媒、例えば緩衝溶液を含むがこれらに限定されない。添加する処理試薬の量は、分析したい個々の試料、試料分析に要する時間、検出したい微生物の正体または分析したい試料中に存在する微生物の量に依存し得る。
【0177】
必須ではないが、1つまたは複数の試薬が添加される場合、それらは適当な濃度で混合物中に(例えば、溶液、「処理緩衝液」中に)存在し得る。処理緩衝液の様々な成分の量は、試料、検出したい微生物、試料中の微生物の濃度または分析における時間的制限に依存して変化し得る。
【0178】
通常、処理緩衝液の添加は、試料の容積を5%、10%、15%、20%またはそれ以上増加させ得る。いくつかの態様において、試料1mlあたり約50μl~約5000μlの処理緩衝液が添加される。いくつかの態様において、試料1mlあたり約100μl~約250μlの処理緩衝液が添加される。1つの態様において、試料200μlあたり約800μlの処理緩衝液が添加される。
【0179】
いくつかの態様において、洗浄剤または界面活性剤は、処理緩衝液の容積の約5%~約20%を占める。いくつかの態様において、洗浄剤または界面活性剤は、処理緩衝液の容積の約5%~約15%を占める。1つの態様において、洗浄剤または界面活性剤は、処理緩衝液の容積の約10%を占める。
【0180】
例示的な界面活性剤および洗浄剤は、硫酸塩/エステル、例えばラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)ミレス硫酸ナトリウム;スルホン酸塩/エステル、例えばスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドキュセート)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロブタンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネートおよび3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS);3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO);リン酸塩/エステル、例えばアルキルアリールエーテルホスフェートおよびアルキルエーテルホスフェート;カルボン酸塩/エステル、例えば脂肪酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、パーフルオロノナノエート、およびパーフルオロオクタノエート(PFOAまたはPFO);オクテニジン二塩酸塩;アルキルトリメチルアンモニウム塩、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)および塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC);塩化セチルピリジニウム(CPC);ポリエトキシ化タローアミン(POEA);塩化ベンザルコニウム(BAC);塩化ベンゼトニウム(BZT);5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン;ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド;ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB);スルタイン(sultaine)、例えばコカミドプロピルヒドロキシスルタイン;セチルアルコール;ステアリルアルコール;セトステアリルアルコール(主としてセチルおよびステアリルアルコールからなる);オレイルアルコール;ポリオキシレングリコールアルキルエーテル(Brij)、例えばオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルおよびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;グルコシドアルキルエーテル、例えばデシルグルコシド、ラウリルグルコシドおよびオクチルグルコシド;ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、例えばTriton X-100;ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、例えばノノキシノール-9;グリセロールアルキルエステル、例えばラウリン酸グリセリル;ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、例えばポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)およびポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート);コカミドME;コカミドDEA;ドデシルジメチルアミンオキシド;ポロキサマー;DOC;ノニルフェノキシポリエトキシルエタノールNP-40(タージトール型NP-40);オクチルフェノキシポリエトキシルエタノール(ノニデット(Noidet)P-40);セチルトリメチルアンモニウムブロミド;ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0181】
いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約1U~約100Uの分解酵素を含み得る。いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約5U~約50Uの分解酵素を含む。1つの態様において、1mlの処理緩衝液は、約10Uの分解酵素を含む。酵素単位(U)は、毎分1μmolの基質の変換を触媒する特定の酵素の量として当技術分野で公知の用語である。
【0182】
いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約1μg~約10μgの抗凝固剤を含み得る。いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約1μg~約5μgの抗凝固剤を含み得る。1つの態様において、1mlの処理緩衝液は、約4.6μgの抗凝固剤を含む。
【0183】
いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約1mg~約10mgの抗凝固剤を含み得る。いくつかの態様において、1mlの処理緩衝液は、約1mg~約5mgの抗凝固剤を含み得る。1つの態様において、1mlの処理緩衝液は、約4.6mgの抗凝固剤を含む。
【0184】
例示的な抗凝固剤は、ヘパリン、ヘパリン代替物、サリチル酸、D-フェニルアラニル-L-プロリル-L-アルギニンクロロメチルケトン(PPACK)、ヒルジン、アンクロッド(ヘビ毒、バイプロナックス(Vipronax))、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミン、血小板減少性抗凝固剤(prothrombopenic anticoagulant)、血小板ホスホジエステラーゼ阻害剤、デキストラン、トロンビンアンタゴニスト/阻害剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸デキストロース(ACD)、クエン酸ナトリウム、クエン酸リン酸デキストロース(CPD)、フッ化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ヨウ化酢酸ナトリウム、ヨウ化酢酸リチウムおよびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0185】
適当なヘパリン抗凝固剤は、天然、合成または生合成源のヘパリンまたはその活性断片および画分を含む。ヘパリンおよびヘパリン代替物の例は、ヘパリンカルシウム、例えばカルシパリン;低分子量ヘパリン、例えばエノキサパリンおよびロベノックス;ヘパリンナトリウム、例えばヘパリン、リポ・ヘパリン、リクエミン(liquaemin)ナトリウムおよびパンヘプリン;ヘパリンナトリウムジヒドロエルゴタミンメシレート;ヘパリンリチウム;ならびにヘパリンアンモニウムを含むがこれらに限定されない。
【0186】
適当な血小板減少性抗凝固剤は、アニシンジオン、ジクマロール、ワルファリンナトリウム等を含むがこれらに限定されない。
【0187】
本明細書で使用するのに適したホスホジエステラーゼ阻害剤の例は、アナグレリド、ジピリダモール、ペントキシフィリンおよびテオフィリンを含むがこれらに限定されない。
【0188】
適当なデキストランは、デキストラン70、例えば、HYSKON(商標)(CooperSurgical, Inc., Shelton, Conn, U.S.A.)およびMACRODEX(商標)(Pharmalink, Inc., Upplands Vasby, Sweden)、ならびにデキストラン75、例えば、GENTRAN(商標)75(Baxter Healthcare Corporation)を含むがこれらに限定されない。
【0189】
適当なトロンビンアンタゴニストは、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトランおよびダビガトランを含むがこれらに限定されない。
【0190】
本明細書で使用される場合、抗凝固剤はまた、Xa因子阻害剤、Ha因子阻害剤およびそれらの混合物も含み得る。Hirsh and Weitz, Lancet, 93: 203-241 (1999); Nagahara et al. Drugs of the Future, 20: 564-566, (1995); Pinto et al, 44: 566-578, (2001); Pruitt et al, Biorg. Med. Chem. Lett., 10: 685-689, (2000); Quan et al, J. Med. Chem. 42: 2752-2759, (1999); Sato et al, Eur. J. Pharmacol, 347: 231-236, (1998); Wong et al, J. Pharmacol. Exp. Therapy, 292: 351-357, (2000)に記載されるものを含む、様々な直接的なXa因子阻害剤が当技術分野で公知である。例示的なXa因子阻害剤は、DX-9065a、RPR-120844、BX-807834およびSELシリーズのXa阻害剤を含むがこれらに限定されない。DX-9065aは、合成性、非ペプチド性のプロパン酸誘導体である、571 D選択的Xa因子阻害剤である。これはナノモル範囲の阻害定数の競合的様式でXa因子を直接阻害する。例えば、Herbert et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. 276: 1030-1038 (1996)およびNagahara et al, Eur. J. Med. Chem. 30(suppl): 140s-143s (1995)を参照のこと。非ペプチド性、合成性のXa因子阻害剤であるRPR-120844(Rhone-Poulenc Rorer)は、中心テンプレートとして3-(S)-アミノ-2-ピロリジノンを組み込んだ新規阻害剤シリーズのうちの1つである。SELシリーズの新規Xa因子阻害剤(SEL1915、SEL-2219、SEL-2489、SEL-2711:セレクチド)は、コンビナトリアル化学により製造されたL-アミノ酸に基づくペンタペプチドである。これらはXa因子に対して高度に選択的であり、pM範囲で効力を示す。
【0191】
Ha因子阻害剤は、DUP714、ヒルログ、ヒルジン、メラガトラン(melgatran)およびそれらの組み合わせを含む。メラガトランは、Hirsh and Weitz, Lancet, 93: 203-241, (1999)およびFareed et al. Current Opinion in Cardiovascular, pulmonary and renal investigational drugs, 1: 40-55, (1999)に記載されるように、プロドラッグであるキシメラガトランの活性形態である。
【0192】
概ね、処理緩衝液の塩濃度は、約10mM~約100mMの範囲であり得る。いくつかの態様において、処理緩衝液は、約25mM~約75mMの濃度で塩を含む。いくつかの態様において、処理緩衝液は、約45mM~約55mMの濃度で塩を含む。1つの態様において、処理緩衝液は、約43mM~約45mMの濃度で塩を含む。
【0193】
処理緩衝液は、当業者に公知の任意の適当な緩衝溶液で作製され得る。そのような緩衝溶液は、TBS、PBS、BIS-TRIS、BIS-TRISプロパン、HEPES、HEPESナトリウム塩、MES、MESナトリウム塩、MOPS、MOPSナトリウム塩、塩化ナトリウム、酢酸アンモニウム溶液、ギ酸アンモニウム溶液、リン酸一アンモニウム溶液、酒石酸二アンモニウム溶液、BICINE緩衝溶液、重炭酸緩衝溶液、クエン酸濃縮溶液、ギ酸溶液、イミダゾール緩衝溶液、MES溶液、酢酸マグネシウム溶液、ギ酸マグネシウム溶液、酢酸カリウム溶液、酢酸カリウム溶液、酢酸カリウム溶液、クエン酸三カリウム溶液、ギ酸カリウム溶液、リン酸二カリウム溶液、リン酸二カリウム溶液、酒石酸カリウムナトリウム溶液、プロピオン酸溶液、STE緩衝溶液、STET緩衝溶液、酢酸ナトリウム溶液、ギ酸ナトリウム溶液、リン酸二ナトリウム溶液、リン酸一ナトリウム溶液、酒石酸二ナトリウム溶液、TNT緩衝溶液、TRISグリシン緩衝溶液、TRIS酢酸・EDTA緩衝溶液、リン酸トリエチルアンモニウム溶液、酢酸トリメチルアンモニウム溶液、リン酸トリメチルアンモニウム溶液、Tris-EDTA緩衝溶液、TRIZMA(登録商標)塩基およびTRIZMA(登録商標)HCLを含むがこれらに限定されない。あるいは、処理緩衝液は、水で作製され得る。
【0194】
いくつかの態様において、処理緩衝液は、Triton-X、DNAse I、ヒトプラスミン、CaCl2およびTween-20の混合物を含む。1つの態様において、処理緩衝液は、TBS緩衝液中のTriton-X、DNAse I、ヒトプラスミン、CaCl2およびTween-20の混合物からなる。
【0195】
1つの態様において、1mlの処理緩衝液は、100μlのTriton-X100、10μlのDNAse(1U/1μl)、10μlの4.6mg/mlヒトプラスミンならびに870μlの、TBS、0.1% Tween-20および50mM CaCl2の混合物を含む。
【0196】
アッセイを行う前に血液を処理するための試薬および処置は、例えば、文献に記載されるようにしてAbbott TDx、AxSYM(登録商標)およびARCHITECT(登録商標)アナライザー(Abbott Laboratories)におけるアッセイで使用されるように(例えば、Yatscoff et al., Abbott TDx Monoclonal Antibody Assay Evaluated for Measuring Cyclosporine in Whole Blood, Clin. Chem. 36: 1969-1973 (1990)およびWallemacq et al., Evaluation of the New AxSYM Cyclosporine Assay: Comparison with TDx Monoclonal Whole Blood and EMIT Cyclosporine Assays, Clin. Chem. 45: 432-435 (1999)を参照のこと)、ならびに/または市販されているように、当技術分野で周知である。加えて、そのすべての内容が参照により本明細書に組み入れられるAbbott社の米国特許第5,135,875号、欧州特許出願公開第0 471 293号および米国特許出願公開第2008/0020401号に記載されるようにして前処置が行われ得る。これらの公知の試薬および/または処置の1つまたは複数が、本明細書に記載される試料処置に加えてまたはそれに代えて使用され得ることを理解されたい。
【0197】
いくつかの態様において、処理緩衝液の添加後、試料は、試料中にすでに存在する成分に加えて、1%Triton-X、10UのDNase、4.6mg/mlのプラスミン、5mMカルシウム、0.01%のTween 20、2.5mMのTris、150mMのNaClおよび0.2mMのKClを含む。
【0198】
処理緩衝液の添加後、試料は混合され得る。これは、単純に、試料を撹拌することによって、例えば、試料を振盪もしくはボルテックスするおよび/または、それがマイクロ流体装置内にある場合は、試料を周回移動させることによって、達成され得る。微生物標的化基質がディップスティックまたは膜の形態である他の態様において、微生物標的化ディップスティックまたは膜は、被験試料ボリュームに浸漬され、そして揺動動作により穏やかに撹拌され得る。
【0199】
処理試薬の添加後、試料は、一定期間、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも1時間、インキュベートされ得る。そのようなインキュベートは、任意の適当な温度、例えば、室温(例えば、約16℃~約30℃)、低温(例えば、約0℃~約16℃)または高温(例えば、約30℃~約95℃)であり得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約15分間インキュベートされる。
【0200】
1206(1208(微生物捕捉)および1210(微生物分離)):
試料の処理後、試料は、微生物捕捉プロセスに供され得る。微生物捕捉プロセス中に、被験試料に添加された微生物標的化基質は、被験試料中に存在する1つまたは複数の微生物を捕捉し得る。いくつかの態様において、微生物捕捉プロセスは、微生物検出の前に被験試料が濃縮および/または浄化されるよう反復および/または十分な時間実施され得る。したがって、本明細書に記載される微生物捕捉および分離プロセスは、試料中の標的成分の分析の前に試料を濃縮および/または浄化するために使用され得る。
【0201】
いくつかの態様において、微生物捕捉プロセスは、試料中の微生物に結合することができる親和性分子(例えば、本明細書に記載されるFcMBLまたは操作された微生物結合性分子)でコーティングされたナノおよび/またはミクロンサイズのビーズまたは粒子を混合することを含む。これらの親和性分子がコーティングされたナノおよび/またはミクロンサイズのビーズまたは粒子は、本明細書で「コートマイクロビーズ」とも称される。これらのコートマイクロビーズは、磁気マイクロビーズまたは非磁気マイクロビーズ(例えば、蛍光マイクロビーズ)であり得る。
【0202】
いくつかの態様において、コートマイクロビーズは、本明細書に記載される微生物標的化磁気マイクロビーズであり得る。
【0203】
試料に添加されるコートマイクロビーズの量は、多くの異なる因子、例えば、各マイクロビーズ上の親和性分子の数、マイクロビーズのサイズ、微生物に対する親和性分子の結合親和性および試料中の微生物の濃度、に依存し得る。加えて、試料に添加されるコートマイクロビーズの量は、微生物の捕捉を最適化するよう調整され得る。いくつかの態様において、試料に添加されるコートマイクロビーズの量は、マイクロビーズが1つの微生物と結合する量である。しかし、各微生物は、2つ以上のコートマイクロビーズに結合され得る。これは、複数の微生物が架橋してひと塊になり、そのような架橋された微生物が試料から凝集および/または沈殿し得るのを減少させ得る。概ね、試料1mlあたり約100~約109個のコートマイクロビーズが添加され得る。いくつかの態様において、試料1mlあたり約104~約5x106個のコートマイクロビーズが添加され得る。別の言い方をすると、いくつかの態様において、被験試料と接触させる微生物結合性分子の総量は、約0.01μg~約1mg、約0.1μg~約500μg、約0.5μg~約250μg、約1μg~約100μgまたは約3μg~約60μgの範囲であり得る。いくつかの態様において、被験試料と接触させる微生物結合性分子の総量は、約500μg~約1000mg、約1mg~約750mg、約5mg~約500mg、約10mg~約250mgまたは約25mg~約100mgの範囲であり得る。
【0204】
いくつかの態様において、複数のコートマイクロビーズを被験試料と接触させることができる。複数のコートマイクロビーズは、少なくとも2つのサブセット(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のサブセット)を含み得、コートマイクロビーズの各サブセットは既定の寸法を有する。いくつかの態様において、複数のコートマイクロビーズは、コートマイクロビーズの第1のサブセットおよびコートマイクロビーズの第2のサブセットを含み得る。そのような態様において、コートマイクロビーズの第1のサブセットは、各々第1の既定の寸法を有し;コートマイクロビーズの第2のサブセットは、各々第2の既定の寸法を有する。
【0205】
コートマイクロビーズの既定の寸法は、一部、操作された微生物結合性分子をコンジュゲートさせる本明細書に記載のマイクロビーズの寸法に依存する。例えば、マイクロビーズは、約10nm~約10μm、約20nm~約5μm、約40nm~約1μm、約50nm~約500nmまたは約50nm~約200nmのサイズを有し得る。
【0206】
加えて、コートマイクロビーズの各々のサブセットは、それらの表面上に、実質的に同一の密度または異なる密度の親和性分子(例えば、本明細書に記載されるFcMBLまたは操作された微生物結合性分子)を含み得る。
【0207】
複数のコートマイクロビーズの異なるサブセットは、任意の様式で被験試料と接触させることができる。例えば、いくつかの態様において、複数のコートマイクロビーズは、被験試料に添加されるコートマイクロビーズの少なくとも2つのサブセットを含む単一の混合物として提供され得る。いくつかの態様においては、コートマイクロビーズの異なるサブセットの間を区別するため、各サブセットのコートマイクロビーズは、別個の検出可能な標識、例えば、例えばフローサイトメトリーによって後で分類することができる別個の蛍光標識を有し得る。
【0208】
他の態様において、複数のコートマイクロビーズは、順次様式で被験試料と接触させることができる。例えば、被験試料を、コートマイクロビーズの第1のサブセットと接触させ、その後にコートマイクロビーズの少なくとも1つのさらなるサブセットと接触させることができる。コートマイクロビーズの前のサブセットは、コートマイクロビーズの別のサブセットを被験試料に添加する前に被験試料から除去され得る。
【0209】
いくつかの態様において、コートマイクロビーズまたは微生物標的化基質は、処理緩衝液中に存在する。1つの態様において、1mlの処理緩衝液は、100μlのTriton-X100、約2500万個のマイクロビーズ(1μm MYONE(商標)Clストレプトアビジンマイクロビーズ上のAKT-FC-MBL)を含む10μlの溶液、10μlのDNAse(1U/1μl)、10μlの4.6mg/mlヒトプラスミンおよび870μlの、TBS、0.1% Tween-20の混合物、を含む。いくつかの態様において、処理緩衝液は、カルシウム塩、例えば、CaCl2(例えば、およそ50mMのCaCl2)を含み得る。いくつかの態様において、処理または捕捉緩衝液は、カルシウム塩、例えば、CaCl2を含まないものであり得る。
【0210】
コートマイクロビーズの添加後、コートマイクロビーズは、微生物がマイクロビーズに結合するよう、試料中で混合され得る。これは、単純に、試料を撹拌することによって、例えば、試料を振盪もしくはボルテックスするおよび/またはマイクロ流体装置内で試料を周回移動させることによって、達成され得る。微生物標的化基質がディップスティックまたは膜の形態である他の態様において、微生物標的化ディップスティックまたは膜は、被験試料ボリュームに浸漬され、そして揺動動作により穏やかに撹拌され得る。
【0211】
微生物標的化基質と接触させるのに必要となる被験試料の容積は、例えば、微生物標的化基質(例えば、マイクロビーズ、繊維、フィルター、フィルター、繊維、スクリーン、メッシュ、チューブ、中空糸)の選択、被験試料中に存在する微生物の濃度、および/またはアッセイを行うために使用されるプラットフォーム(例えば、マイクロ流体装置もしくは採血管、マイクロタイタープレート)によって様々であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイを例えばマイクロ流体プラットフォームで実施するために使用される被験試料の容積は、約1μL~約500μL、約5μL~約250μLまたは約10μL~約100μLの範囲であり得る。他の態様において、本明細書に記載されるアッセイを例えばチューブプラットフォームで実施するために使用される被験試料の容積は、約0.05mL~約50mL、約0.25ml~約50ml、約0.5ml~約25ml、約1ml~約15mlまたは約2ml~約10mlの範囲であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイを実施するために使用される被験試料の容積は、約1mL~約5mLであり得る。1つの態様において、本明細書に記載されるアッセイを実施するために使用される被験試料の容積は、約5ml~約10mLであり得る。
【0212】
(処理緩衝液を含む)被験試料への微生物標的化基質(例えば、コートマイクロビーズ)の添加後、試料混合物は、関心対象の微生物が微生物標的化基質に結合するよう、一定期間インキュベートされ得る、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも約20分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも1時間のインキュベートが行われ得る。1つの態様において、試料混合物は、約10~20分の期間インキュベートされ得る。そのようなインキュベートは、任意の適当な温度、例えば、室温(例えば、約16℃~約30℃)、低温(例えば、約0℃~約16℃)または高温(例えば、約30℃~約95℃)で実施され得る。いくつかの態様において、インキュベートは、ほぼ室温~約37℃の範囲の温度で実施され得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約10分間~約20分間インキュベートされ得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約15分間インキュベートされる。
【0213】
試料から微生物を分離する間の凝集(または非特異的結合)を防止するまたは減少させるために、試料混合物に追加の試薬が添加され得る。そのような試薬は、本明細書でブロッキング試薬とも称される。例えば、これらのブロッキング試薬は、コートマイクロビーズ上の親和性分子のリガンドを含み得る。そのようなブロッキング試薬の添加は、親和性分子上の任意の空いているリガンド結合部位と結合することによって、凝集を減少させ得る。したがって、微生物標的化磁気マイクロビーズが微生物の捕捉のために使用される場合、ブロッキング試薬は、糖質、例えば、マンノースであり得る。追加の試薬の量は、試料に添加されたマイクロビーズの量に依存し得る。一般に、この試薬は、約0.1mM~約10mMの終濃度で添加される。必要とされるブロッキング剤の量は、少なくとも部分的に、被験試料と接触させる微生物標的化基質の量および/または表面積によって変化し得る。いくつかの態様において、ブロッキング試薬は、約0.1%(w/v)~約10%(w/v)、約0.5%(w/v)~約7.5%(w/v)または約1%(w/v)~約5%(w/v)の終濃度で添加され得る。いくつかの態様において、約1%のカゼインが、本明細書に記載されるアッセイにおけるブロッキング剤として使用され得る。
【0214】
ブロッキング試薬の添加後、試料混合物は、ブロッキング試薬が親和性分子と結合するよう、一定期間、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも1時間、インキュベートされ得る。そのようなインキュベートは、任意の適当な温度、例えば、室温(例えば、約16℃~約30℃)、低温(例えば、約0℃~約16℃)または高温(例えば、約30℃~約95℃)であり得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約15分間インキュベートされる。いくつかの態様において、インキュベートは、約5秒間~約60秒間である。いくつかの態様において、インキュベートは、ほぼ室温~約37℃の範囲の温度で実施され得る。いくつかの態様において、試料は、室温で約15分間インキュベートされる。
【0215】
微生物標的化基質と被験試料の接触時の非特異的結合を防止するまた減少させるために、いくつかの態様において、微生物標的化基質(例えば、コートマイクロビーズ)および/または被験試料は、互いとの接触の前に、微生物と反応しないブロッキング剤、例えば、カゼイン、正常血清、BSA、脱脂粉乳粉末および任意の当技術分野で知られているブロッキング剤で前処置され得る。場合により、ブロッキング後の微生物標的化基質は、任意の残存するブロッキング剤を除去するため、任意の当技術分野で知られている緩衝液で洗浄され得る。洗浄工程の数は、1~複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上の洗浄工程の範囲であり得る。1つの態様において、ブロッキング後の微生物標的化基質は、少なくとも約1~3回、緩衝液、例えば、TBSTで洗浄され得る。
【0216】
1208(微生物捕捉)に対する例示的な任意の改変:
本明細書に記載される1つの局面にしたがい、被験試料は、キレート剤の存在下で微生物標的化基質と接触させることができる。理論に拘束されることを望まないが、被験試料および/または処理緩衝液へのキレート剤の添加は、被験試料中のプロテインAまたはプロテインG発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)ではなく任意のプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)が少なくとも1つの微生物結合性分子に結合する可能性を減少させ得る。したがって、キレート剤の存在下で本明細書に記載される微生物標的化基質に結合した任意の微生物を検出することにより、被験試料中のプロテインAまたはプロテインG発現微生物の存在または非存在を決定することができる。
【0217】
キレート剤は、被験試料を含む処理緩衝液に添加され得る。キレート剤の量は、遊離カルシウムイオンをキレート化し、それによって微生物に対するカルシウム依存的な糖質認識ドメインの結合(例えば、マンノース結合レクチン)を防止するまたは減少させるのに十分な量である。微生物に対するカルシウム依存的な糖質認識ドメインの結合(例えば、マンノース結合レクチン)を防止するまたは減少させるのに必要なキレート剤の量は、例えば、被験試料中ならびに、場合により、例えばキレート剤および/または被験試料を希釈するために使用される捕捉緩衝液中に存在するカルシウムイオンの濃度に依存し得る。したがって、いくつかの態様において、キレート剤の濃度は、被験試料および捕捉緩衝液を合わせた溶液中に存在する遊離カルシウムイオンの総濃度よりも高いものであり得る。例えば、いくつかの態様において、キレート剤の濃度は、被験試料および捕捉緩衝液を合わせた溶液中に存在する遊離カルシウムイオンの総濃度よりも少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最大100%、または約30%~約100%の間の任意の比率を含む、少なくとも約30%高いものであり得る。他の態様において、キレート剤の濃度は、被験試料および捕捉緩衝液を合わせた溶液中に存在する遊離カルシウムイオンの総濃度よりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍またはそれ以上高いものであり得る。1つの態様において、キレート剤の濃度は、被験試料および捕捉緩衝液を合わせた溶液中に存在する遊離カルシウムイオンの総濃度よりも少なくとも約5倍~約50倍または少なくとも約7倍~約25倍高いものであり得る。
【0218】
いくつかの態様において、被験試料ならびに、場合により、例えばキレート剤および/または試験サプルを希釈するために使用される処理または捕捉緩衝液中に存在するキレート剤の濃度は、約0.1mM~約1M、約10mM~約500mM、約20mM~約250mMまたは約25mM~約125mMの範囲であり得る。1つの態様において、被験試料および場合により捕捉緩衝液中に存在するキレート剤の濃度は、約25mM~約125mMであり得る。
【0219】
いくつかの態様において、微生物標的化基質を含む被験試料中に存在するキレート剤の濃度は、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)が被験試料中に存在する場合に少なくとも1つの微生物結合性分子と結合する可能性を減少させるのに十分な濃度であり得る。例えば、微生物標的化基質を含む被験試料中に存在するキレート剤の濃度は、被験試料中に存在する場合に少なくとも1つの微生物結合性分子に結合するプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の数を、キレート剤の非存在下で微生物結合性分子に結合するプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の数と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれ以上減少させるのに十分な濃度であり得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質を含む被験試料中に存在するキレート剤の濃度は、被験試料中に存在する場合に少なくとも1つの微生物結合性分子に結合するプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の数を、キレート剤の非存在下で微生物結合性分子に結合するプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の数と比較して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、最大100%、または約85%~約100%の間の任意の値、減少させるのに十分な濃度であり得る。
【0220】
プロテインA発現およびプロテインG発現微生物は、通常、2つの独立した(しかし加算的な)メカニズム:Fc媒介結合および微生物表面結合ドメイン(例えば、MBL)媒介結合、を介して微生物結合性分子に結合し得る。理論に拘束されることを望まないが、プロテインA発現およびプロテインG発現微生物は、キレート剤の存在下であっても微生物標的化基質に捕捉され得るが、遊離カルシウムイオンの存在は、カルシウムイオンの存在下では全体結合がカルシウムイオンの非存在下のおよそ2倍強力になり得るため、微生物標的化基質に結合するプロテインA発現およびプロテインG発現微生物の数をさらに増加させ得る。
【0221】
したがって、いくつかの態様において、微生物標的化基質を含む被験試料中に存在するキレート剤の濃度は、微生物標的化基質に結合するプロテインA発現微生物および/またはプロテインG発現微生物の数を減少させ得るが、そのような効果は、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)に対するそれと比較するとずっと小さい、例えば、少なくとも約30%小さい、少なくとも約40%小さい、少なくとも約50%、少なくとも約60%小さい、少なくとも約70%小さいまたは少なくとも約80%小さいものである。例えば、図29に示されるように、キレート剤の濃度(例えば、100mM EDTA)は、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化膜)に対するプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の結合を検出不可能なレベルまで減少させるのに十分であるが、それでもなお検出可能なレベルのプロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)が微生物標的化膜に結合する。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイにおいて使用されるキレート剤の濃度は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、最大100%を含む、少なくとも約80%またはそれ以上のプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の微生物標的化基質に対する結合を妨げるのに十分高いが、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%またはそれ以上を含む、少なくとも約30%またはそれ以上のプロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)またはプロテインG発現微生物の微生物標的化基質に対する結合を許容するよう十分低いものとされるべきである。1つの態様において、本明細書に記載されるアッセイにおいて使用されるキレート剤の濃度は、被験試料中に存在する場合に、少なくとも約90%またはそれ以上のプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の微生物標的化基質に対する結合を妨げるのに十分高いが、被験試料中に存在する場合に、少なくとも約50%のプロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)またはプロテインG発現微生物の微生物標的化基質に対する結合を許容するよう十分低いものとされるべきである。
【0222】
カルシウムイオンキレート剤の例は、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N'N'-四酢酸;エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル) -N,N,N'N'-四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、クエン酸含有緩衝液、N,N-ビス(2-(ビス-(カルボキシメチル)アミノ)エチル)-グリシン(DTPA)、ニトリロ-2,2',2''-三酢酸(NTA)、例えばリン酸緩衝液、炭酸緩衝液および重炭酸緩衝液を含む、被験試料からカルシウムイオンを沈殿させる緩衝液、低pH緩衝液(例えば、pH 7未満またはpH 6未満のpH緩衝液)、クエン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、ピロリン酸アルカリ金属塩、ポリリン酸アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、o-フェナントロリン、シュウ酸ならびにそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0223】
キレート剤は、被験試料に直接添加することも、処理または捕捉緩衝液中で調製し、その後に微生物標的化基質と接触させた被験試料に添加することもできる。処理または捕捉緩衝液は、例えば約6~約10のpH範囲を有する、任意の緩衝溶液であり得る。いくつかの態様において、処理または捕捉緩衝液は、トリス緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水またはそれらの組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、処理または捕捉緩衝液は、例えば微生物標的化基質の微生物表面結合ドメインに対する微生物の非特異的結合を防ぐためおよび/または、存在する場合、微生物標的化基質に存在する非特異的結合部位を飽和させるために、界面活性剤を含み得る。界面活性剤または洗浄剤、例えば前記のもの、は、任意の量、例えば、約0.001%(v/v)~約5%(v/v)、約0.01%(v/v)~約2.5%(v/v)または約0.05%(v/v)~約1%(v/v)の範囲の量で、緩衝溶液に溶解され得る。いくつかの態様において、処理または捕捉緩衝液に添加される界面活性剤は、約0.01%~約0.1%の濃度のTween 80またはポリソルベート80を含み得る。1つの態様において、処理または捕捉緩衝液に添加される界面活性剤は、約0.05%の濃度のTween 80またはポリソルベート80を含み得る。
【0224】
インキュベート後、微生物標的化基質は、次に、以下に記載されるようにして、結合した微生物の存在または非存在について分析され得る。微生物標的化基質に結合した微生物が存在しない場合は、いくつかの態様において、以前と同じ被験試料ボリュームまたは新しい新鮮な被験試料ボリュームを、例えばプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の存在または非存在を決定するために、遊離カルシウムイオンの存在下で新鮮な微生物標的化基質と接触させることができる。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、被験試料に十分量のカルシウム塩を添加することによって生成され得る。被験試料にキレート剤が存在した場合は、通常、遊離カルシウムイオンを得るためにより多量のカルシウム塩が必要となる。
【0225】
本明細書で使用される場合、「遊離カルシウムイオン」という用語は、操作された微生物結合性分子の微生物表面結合ドメイン(例えば、MBL)に対する微生物細胞表面上の糖質パターンの結合を媒介する他の分子またはイオンとの反応を妨げ得る任意の分子または化合物、例えばキレート剤、と錯体化していないカルシウムイオンを表す。したがって、いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、キレート剤の非存在下で存在し得る。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、溶液中に存在するカルシウムイオンの量がその溶液中に存在する実質的にすべてのキレート剤分子と相互作用しキレート錯体を形成するのに十分な量よりも少なくとも約30%多い、キレート剤およびカルシウムイオンを含む溶液中に存在し得る。例えば、いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンを得るために、溶液中に存在するカルシウムイオンの量は、その溶液中に存在する実質的にすべてのキレート剤分子と相互作用しキレート錯体を形成するのに十分な量よりも、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最大100%、および30%~100%の間の任意の比率を含む、少なくとも約30%多いものであり得る。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンを得るために、溶液中に存在するカルシウムイオンの量は、その溶液中に存在する実質的にすべてのキレート剤分子と相互作用しキレート錯体を形成するのに十分な量よりも、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍多いものであり得る。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、溶液中のカルシウムイオンの濃度がそれと同じ溶液中に存在するキレート剤の濃度よりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍またはそれより高い場合、溶液中に存在し得る。
【0226】
いくつかの態様において、カルシウムイオンは、水溶性カルシウム塩から得ることができる。「水溶性カルシウム塩」という用語は、室温の水に対する有意な溶解度、例えば、水100mlあたり少なくとも1グラム、水100mlあたり少なくとも10グラムもしくは水100mlあたり少なくとも25グラムまたはそれ以上の溶解度、を有するカルシウム塩を意味する。カルシウム塩の例は、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリシン酸カルシウムおよびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、塩化カルシウムが、カルシウムイオン源として使用され得る。
【0227】
遊離カルシウムイオンは、微生物表面に対するカルシウム依存的な糖質認識ドメインの結合を媒介するのに十分な濃度または量で存在し得る。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、少なくとも約1μM、少なくとも約10μM、少なくとも約25μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約250μM、少なくとも約500μMもしくは少なくとも約1mMまたはそれ以上の濃度で存在し得る。いくつかの態様において、遊離カルシウムイオンは、少なくとも約1mM、少なくとも約2.5mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約25mM、少なくとも約50mM、少なくとも約75mM、少なくとも約100mMまたはそれ以上の濃度で存在し得る。他の態様において、遊離カルシウムイオンは、少なくとも約100mM、少なくとも約150mM、少なくとも約200mM、少なくとも約300mM、少なくとも約400mM、少なくとも約500mM、少なくとも約600mM、少なくとも約700mM、少なくとも約800mM、少なくとも約900mM、少なくとも約1Mまたはそれ以上の濃度で存在し得る。1つの態様において、遊離カルシウムイオンは、約1mM~約10mMの濃度で存在し得る。1つの態様において、遊離カルシウムイオンは、少なくとも約5mMの濃度で存在し得る。
【0228】
キレート剤は、微生物標的化基質による微生物の初期捕捉の間に添加され得るが、キレート剤はまた、遊離カルシウムイオンの存在下でプロテインAおよびプロテインG陰性微生物を含む任意の微生物を微生物標的化基質に初期捕捉できるよう、最初は除外され、しかし、その捕捉後に、任意の捕捉されたプロテインAまたはプロテインG陰性微生物を微生物標的化基質から除去するために添加され得る。
【0229】
したがって、いくつかの態様において、微生物捕捉は、(i)少なくとも第1の被験試料ボリュームを、遊離カルシウムイオンの存在下で、本明細書に記載される微生物標的化基質と接触させること、および(ii)本明細書に記載される微生物標的化基質の微生物結合性分子を、被験試料と接触させる際に、キレート剤を含む溶液と接触させること、を含み得る。
【0230】
本明細書に記載されるように微生物標的化基質を遊離カルシウムイオンの存在下で被験試料と接触させる場合、Fc媒介結合に関与する微生物、例えば、プロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)およびプロテインG発現微生物に加えて、主としてカルシウム依存的MBL媒介結合に依存する微生物、例えば、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物、例えば大腸菌が、微生物標的化基質に結合し得る。
【0231】
主としてカルシウム依存的MBL媒介結合に依存する捕捉された微生物、例えば、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物、例えば大腸菌、を微生物標的化基質から溶出させるまたは除去するために、微生物標的化基質上の微生物結合性分子を、十分量の本明細書に記載されるキレート剤を含む溶液と接触させることができる。キレート剤を含む溶液は、上記の捕捉緩衝液と同じものであり得る。そのような態様において、微生物標的化基質は、キレート剤を含む溶液と共に、主としてカルシウム依存的MBL媒介結合を介して微生物結合性分子に結合する微生物を微生物標的化基質から溶出させることができる期間、インキュベートされ得る、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも1時間のインキュベートが行われ得る。そのようなインキュベートは、任意の適当な温度、例えば、室温(例えば、約16℃~約30℃)、低温(例えば、約0℃~約16℃)または高温(例えば、約30℃~約95℃)で実施され得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質は、キレート剤を含む溶液と共に、室温で少なくとも約5分間~約15分間インキュベートされ得る。
【0232】
これらの態様において、本明細書に記載されるアッセイで使用されるキレート剤の濃度は、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の少なくとも約30%を微生物標的化基質から溶出させるまたは除去するのに十分な濃度である。例えば、本明細書に記載されるアッセイで使用されるキレート剤の濃度は、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれ以上を含む、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の少なくとも約30%を微生物標的化基質から溶出させるまたは除去するのに十分な濃度である。いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイで使用されるキレート剤の濃度は、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最大100%または約85%~約100%の間の任意の値を含む、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の少なくとも約85%を微生物標的化基質から溶出させるまたは除去するのに十分な濃度である。
【0233】
上記のように、プロテインA発現およびプロテインG発現微生物は、Fc媒介およびカルシウムイオン依存的MBL媒介結合を介して微生物結合性分子に結合し得る。理論に拘束されることを望まないが、本明細書に記載されるアッセイにおいて使用されるキレート剤の濃度はまた、微生物標的化基質からプロテインA発現および/またはプロテインG発現微生物の少なくとも一部分を溶出させ得るまたは除去し得る。例えば、微生物標的化基質からプロテインAおよびプロテインG陰性微生物を溶出させるまたは除去するために使用されるキレート剤の濃度は、結合したプロテインA発現および/またはプロテインG発現微生物の60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下またはそれ未満を溶出させるまたは除去するのに十分な濃度であり得る。いくつかの態様において、結合したプロテインAおよびプロテインG陰性微生物の、少なくとも約90%またはそれ以上を含む、少なくとも約80%またはそれ以上を微生物標的化基質から溶出させるまたは除去するために使用されるキレート剤の濃度は、結合したプロテインA発現および/またはプロテインG発現微生物の50%以下または40%以下を溶出させるまたは除去するのに十分な濃度であり得る。図29に示されるように、キレート剤の濃度(例えば、100mM EDTA)は、実質的にすべてのプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)を微生物標的化基質から検出不可能なレベルまで溶出させるまたは除去するのに十分であるが、検出可能なレベルのプロテインA発現微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)が依然として微生物標的化膜に結合した状態で維持されるものである。
【0234】
当業者が理解しているように、本明細書に記載されるアッセイはさらに、本明細書に記載されるキレート剤を含む溶液とその表面上の微生物結合性分子を接触させる前に、例えば以下に記載されるようにして、被験試料から微生物標的化基質を単離することを含み得る。
【0235】
1210(試料からの微生物分離):
試料混合物は、次に、微生物分離プロセスに供される。いくつかの態様において、微生物は1つまたは複数の磁気マイクロビーズに結合しているので、結合した微生物を被験試料から分離するために磁石が使用され得る。当業者は、磁気分離を実行する方法に精通している。通常、磁場勾配が、磁気マイクロビーズの捕捉を行うために適用され得る。場合により、結合した微生物は、任意の残存する試料および非結合成分を除去するために、緩衝液で洗浄され得る。洗浄工程の数は、1~複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上の洗浄工程の範囲であり得る。理論に拘束されることを望まないが、結合した微生物の試料からの捕捉および分離は、微生物を濃縮し、また、アッセイまたはプロセスと干渉し得る成分を被験試料から除去し得る。
【0236】
磁場の供給源は、捕捉された微生物を試料から抜き取るのに使用される磁場勾配を生成するよう配置される任意の磁石装置であり得る。電磁気制御装置が、磁場およびその勾配を制御および調節するため、ならびに磁気的に結合した微生物の移動、分離および配向を制御するために使用され得る。磁場勾配は、永久磁石によってまたは電磁気信号発生装置によって生成され得る。電磁気信号発生装置は、電磁石もしくは電気的に分極可能な要素または少なくとも1つの永久磁石を含み得る。磁場勾配は、少なくとも部分的に、予めプログラムされたパターンに従い生成され得る。磁場勾配は、定義された磁場強度および/または空間配向を有し得る。いくつかの態様において、磁場勾配は、定義された磁場強度を有する。本明細書で使用される「磁場勾配」という用語は、位置に関する磁場の変化を表す。例にすぎないが、1次元磁場勾配は、1方向に関する磁場の変化であり、2次元磁場勾配は、2方向に関する磁場の変化である。
【0237】
本明細書で使用される場合、「磁場」という用語は、組成物を流れる局所的な磁束を形成する磁気的影響を表し、磁場振幅、2乗振幅または時間平均2乗振幅を表し得る。磁場は、直流(DC)磁場または交流(AC)磁場であり得ることを理解されたい。磁場強度は、単位メートルあたり約0.00001テスラ(T/m)~約105 T/mの範囲であり得る。いくつかの態様において、磁場強度は、約0.0001 T/m~約104 T/mの範囲であり得る。いくつかの他の態様において、磁場強度は、約0.001 T/m~約103 T/mの範囲であり得る。
【0238】
いくつかの態様において、微生物の捕捉および/または微生物標的化基質の分離は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる2011年1月19日出願の国際特許出願第WO2011/091037号に記載される高速微生物診断装置によって実施され得る。2011年1月19日出願の国際特許出願第WO2011/091037号に記載される高速微生物診断装置は、捕捉チャンバーまたは捕捉・可視化チャンバーをs字形流路に置き換えるよう改変され得る。その後に、磁石を使用して、結合した微生物を流路の壁に捕捉し;結合した微生物を試料の残りから分離することができる。
【0239】
いくつかの態様において、微生物の捕捉および/または分離は、その内容がすべて参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2009/0220932号、同第2009/007861号、同第2010/0044232号、同第2007/0184463号、同第2004/0018611号、同第2008/0056949号、同第2008/0014576号、同第2007/0031819号、同第2008/0108120号および同第2010/0323342号に記載される装置または方法によるものである。
【0240】
非限定的に、微生物標的化基質が磁気特性を有していない場合、被験試料からの微生物標的化基質(例えば、粒子、ポスト、繊維、ディップスティック、膜、フィルター、毛細管等)の単離は、非磁気的手段、例えば、遠心分離および濾過によって実行され得る。微生物標的化基質がディップスティックまたは膜の形態であるいくつかの態様において、微生物標的化ディップスティックまたは膜は、存在する場合、被験試料中の微生物がディップスティックまたは膜基質にコンジュゲートされた操作された微生物結合性分子に結合した状態のまま、単純に、被験試料から取り出され得る。
【0241】
場合により、被験試料または処理緩衝液から単離された後の微生物標的化基質は、被験試料の任意の残留物、キレート剤を含む溶液または任意の非結合微生物を除去するために、緩衝液(例えば、TBST)で洗浄され得る。洗浄工程の回数は、1~複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上の洗浄工程の範囲であり得る。1つの態様において、キレート剤を含む溶液および/または被験試料から単離された後の微生物標的化基質は、緩衝液(例えば、TBST)で少なくとも約1~3回洗浄され得る。
【0242】
1212(微生物検出/分析):
検出要素、装置またはシステムが、分離された微生物の存在を、例えば、分光測定、電気化学検出、ポリヌクレオチド検出、蛍光偏光測定、蛍光共鳴エネルギー移動、電子移動、酵素アッセイ、磁性、電気伝導度、等電点電気泳動、クロマトグラフィー、免疫沈降、免疫分離、アプタマー結合、濾過、電気泳動、CCDカメラの使用、イムノアッセイ、ELISA、グラム染色、免疫染色、顕微鏡検査、免疫蛍光法、ウエスタンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT-PCR、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、配列決定、質量分析またはそれらの実質的に任意の組み合わせによって検出および/または分析するために使用され得る。分離された微生物は、検出および/もしくは分析の間、微生物標的化基質との結合状態を維持され得、または、検出および/もしくは分析の前に微生物標的化基質から単離され得る。
【0243】
いくつかの態様において、微生物と結合できる標識分子がまた、検出のために微生物を標識するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「標識分子」は、検出可能な標識を含みかつ標的微生物と結合することができる分子を表す。標識分子は、MBLまたはその一部分、FcMBL、AKT-FcMBL、コムギ胚芽凝集素、レクチン、抗体(例えば、グラム陰性抗体またはグラム陽性抗体、微生物株または微生物種に特異的な抗体)、抗体の抗原結合断片、アプタマー、細胞表面受容体のリガンド(アゴニストまたはアンタゴニスト)等を含み得るがこれらに限定されない。標識分子はまた、試料中のすべての生存細胞を非特異的に染色する非特異的標識分子であり得る。
【0244】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」という用語は、標的の存在を示す検出可能なシグナルを発生させることができる組成物を表す。検出可能な標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。適当な標識は、蛍光分子、放射性同位元素、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、化学発光部分、生物発光部分等を含む。したがって、標識は、本明細書に記載される方法および装置に必要とされる分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。
【0245】
幅広い蛍光レポーター色素が当技術分野で公知である。典型的に、発蛍光団は、芳香族または複素環式芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンゾインドール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチル酸塩/エステル、アントラニル酸塩/エステル、クマリン、フルオレセイン、ローダミンまたはその他の類似化合物であり得る。
【0246】
例示的な発蛍光団は、1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(pH 10);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジン オレンジ;アクリジン レッド;アクリジン イエロー;アクリフラビン;アクリフラビン フォイルゲンSITSA;エクオリン(光タンパク質);Alexa Fluor 350(商標);Alexa Fluor 430(商標);Alexa Fluor 488(商標);Alexa Fluor 532(商標);Alexa Fluor 546(商標);Alexa Fluor 568(商標);Alexa Fluor 594(商標);Alexa Fluor 633(商標);Alexa Fluor 647(商標);Alexa Fluor 660(商標);Alexa Fluor 680(商標);アリザリン コンプレクソン;アリザリン レッド;アロフィコシアニン(APC);AMC、AMCA-S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アニリン ブルー;アントロシルステアレート(anthrocyl stearate);APC-Cy7;APTS;アストラゾン ブリリアント レッド4G;アストラゾン オレンジR;アストラゾン レッド6B;アストラゾン イエロー7GLL;アタブリン;ATTO-TAG(商標)CBQCA;ATTO-TAG(商標)FQ;オーラミン;オーロホスフィン(Aurophosphine)G;オーロホスフィン;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);硫酸ベルベリン;ベータ ラクタマーゼ;BFPブルーシフトGFP(Y66H);BG-647;ビマン;ビスベンズアミド;ブランコフォアFFG;ブランコフォアSV;BOBO(商標)-1;BOBO(商標)-3;ボディピー492/515;ボディピー493/503;ボディピー500/510;ボディピー505/515;ボディピー530/550;ボディピー542/563;ボディピー558/568;ボディピー564/570;ボディピー576/589;ボディピー581/591;ボディピー630/650-X;ボディピー650/665-X;ボディピー665/676;ボディピーFl;ボディピーFL ATP;ボディピーFl-セラミド;ボディピーR6G SE;ボディピーTMR;ボディピーTMR-Xコンジュゲート;ボディピーTMR-X、SE;ボディピーTR;ボディピーTR ATP;ボディピーTR-X SE;BO-PRO(商標)-1;BO-PRO(商標)-3;ブリリアント スルホフラビンFF;カルセイン;カルセイン ブルー;カルシウム クリムゾン(商標);カルシウム グリーン;カルシウム グリーン-1 Ca2+ 色素;カルシウム グリーン-2 Ca2+;カルシウム グリーン-5N Ca2+;カルシウム グリーン-C18 Ca2+;カルシウム オレンジ;カルコフロール ホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);カスケード ブルー(商標);カスケード イエロー;カテコールアミン;CFDA;CFP-シアン蛍光タンパク質;クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CMFDA;セレンテラジン;セレンテラジンcp;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;CPMメチルクマリン;CTC;Cy2(商標);Cy3.1 8;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy 5.1 8;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);シアンGFP;環状AMPフルオロセンサー(FiCRhR);d2;ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシル カダベリン;ダンシルクロリド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル(Dapoxyl);ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸塩);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);ジ-4-ANEPPS;ジ-8-ANEPPS(非放射性);DiA(4-ジ-16-ASP);DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));ドパミン;DsRed;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;エチジウムホモダイマー-1(EthD-1);ユークリシン(Euchrysin);塩化ユーロピウム(III);ユーロピウム;EYFP;ファスト ブルー;FDA;フォイルゲン(パラローザリニン);FITC;FL-645;フラゾ オレンジ;Fluo-3;Fluo-4;フルオレセイン二酢酸塩;フルオロ エメラルド;フルオロ ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);Fluor-Ruby;FluorX;FM 1-43(商標);FM 4-46;Fura Red(商標)(高pH);Fura-2、高カルシウム;Fura-2、低カルシウム;ゲナクリル(Genacryl)ブリリアント レッドB;ゲナクリル ブリリアント イエロー10GF;ゲナクリル ピンク3G;ゲナクリル イエロー5GF;GFP(S65T);GFPレッドシフト(rsGFP);GFP野生型、非UV励起(wtGFP);GFP野生型、UV励起(wtGFP);GFPuv;グリオキサール酸(Gloxalic Acid);グラニュラー ブルー;ヘマトポルフィリン;ヘキスト33258;ヘキスト33342;ヘキスト34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロ ゴールド);ヒドロキシトリプタミン;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイトCf;JC-1;JO-JO-1;JO-PRO-1;レーザープロ;ラロダン(Laurodan);LDS 751;ロイコホール(Leucophor)PAF;ロイコホールSF;ロイコホールWS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;LOLO-1;LO-PRO-1;ルシファー イエロー;マグ グリーン;マグダラ レッド(フロキシンB);マグネシウム グリーン;マグネシウム オレンジ;マラカイト グリーン;マリーナ ブルー;マキシロン(Maxilon)ブリリアント フラビン10GFF;マキシロン ブリリアント フラビン8GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;ミトトラッカー グリーンFM;ミトトラッカー オレンジ;ミトトラッカー レッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイル レッド;ニトロベンゾオキサジドール(Nitrobenzoxadidole);ノルアドレナリン;ニュークリア(Nuclear)ファスト レッド;ニュークリア イエロー;ナイロサン ブリリアント イアビン(Nylosan Brilliant Iavin)E8G;オレゴン グリーン(商標);オレゴン グリーン488-X;オレゴン グリーン(商標)488;オレゴン グリーン(商標)500;オレゴン グリーン(商標)514;パシフィック ブルー;パラローザリニン(フォイルゲン);PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-テキサス レッド(レッド613);フロキシンB(マグダラ レッド);フォーワイト(Phorwite)AR;フォーワイトBKL;フォーワイトRev;フォーワイトRPA;ホスフィン3R;フォトレジスト;フィコエリトリンB[PE];フィコエリトリンR[PE];PKH26;PKH67;PMIA;ポントクロム(Pontochrome)ブルーブラック;POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;プリムリン;プロシオン イエロー;ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodid)(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザル(Pyrozal)ブリリアント フラビン7GF;QSY 7;キナクリン マスタード;レゾルフィン;RH 414;Rhod-2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5GLD;ローダミン6G;ローダミンB540;ローダミンB200;ローダミンBエクストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミン グリーン;ローダミン ファリシジン(Phallicidine);ローダミン ファロイジン;ローダミン レッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコエリトリン(PE);レッドシフトGFP(rsGFP、S65T);S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;セロトニン;セブロン(Sevron)ブリリアント レッド2G;セブロン ブリリアント レッド4G;セブロン ブリリアント レッドB;セブロン オレンジ;セブロン イエローL;sgBFP(商標);sgBFP(商標)(スーパーグローBFP);sgGFP(商標);sgGFP(商標)(スーパーグローGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SPQ(6-メトキシ-N-(3-スルホプロピル)-キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンBおよびC;スルホローダミンGエクストラ;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン;テキサス レッド(商標);テキサス レッド-X(商標)コンジュゲート;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジン レッドR;チアゾール オレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;チオライト(Thiolyte);チオゾール オレンジ;チノポール(Tinopol)CBS(カルコフロール ホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;トリカラー(TriColor)(PE-Cy5);TRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート);トゥルー ブルー(True Blue);TruRed;ウルトラライト(Ultralite);ウラニンB;ユービテックス(Uvitex)SFC;wtGFP;WW 781;XL665;X-ローダミン;XRITC;キシレン オレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;およびYOYO-3を含むがこれらに限定されない。これらの蛍光化合物の多くの適当な形態が入手可能でありかつ使用することができる。
【0247】
他の例示的な検出可能な標識は、発光および生物発光マーカー(例えば、ビオチン、ルシフェラーゼ(例えば、細菌、ホタル、コメツキムシ等)、ルシフェリンおよびエクオリン)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、ガラクトシダーゼ、グルコリニダーゼ、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)、ペルオキシダーゼ(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)およびコリンエステラーゼ)ならびに比色(calorimetric)標識、例えば、金コロイドまたは有色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンおよびラテックス)ビーズを含む。そのような標識の使用について教示する特許は、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号を含み、各々の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0248】
そのような標識を検出する手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出され得、蛍光マーカーは、発せられた光を検出する光検出器を用いて検出され得る。酵素標識は、典型的に、その酵素に酵素基質を提供し、酵素基質に対するその酵素の作用によって生じた反応生成物を検出することによって検出され、そして比色標識は、有色の標識を可視化することによって検出され得る。
【0249】
いくつかの態様において、検出可能な標識は、発蛍光団または量子ドットである。理論に拘束されることを望まないが、蛍光試薬を使用することで、画像化/読み取りの際のシグナル対ノイズを小さくし、それによって感度を維持することができる。したがって、いくつかの態様において、検出の前に、微生物標的化基質から単離されたまたは微生物標的化基質に結合した状態で維持されている微生物は、少なくとも1つの染料、例えば、発蛍光団または量子ドットを含む微生物結合性分子を含む少なくとも1つの蛍光染色試薬で染色され得る。蛍光染料の例は、典型的には発蛍光団または量子ドットとコンジュゲートされた、任意の微生物標的化要素(例えば、微生物特異的抗体または任意の微生物結合タンパク質もしくはペプチドもしくはオリゴヌクレオチド)、および本明細書に記載される検出において使用される任意の蛍光染料を含むがこれらに限定されない。
【0250】
いくつかの態様において、標識分子は、微生物結合性分子とコンジュゲートしているときは検出不可能であるが、微生物酵素の存在下で操作された分子から放出された際には色変化を生じる「スマート標識」を含むよう構成され得る。したがって、微生物が操作された微生物結合性分子に結合した際、微生物は、操作された分子から検出可能な標識を放出させる酵素を放出する。色変化の観察は、試料中の微生物の存在を示す。
【0251】
いくつかの態様において、微生物標的化基質は、標識、例えば、検出可能な標識またはビオチン標識にコンジュゲートされ得る。
【0252】
いくつかの態様において、標識分子は、MBLまたは本明細書に記載される微生物結合性分子を含み得る。1つの態様において、標識分子は、FcMBLを含む。理論に拘束されることを望まないが、MBL、特にFcMBLに基づく標識分子は、幅広い微生物に選択的に結合し、それによって本明細書に記載の方法は、大部分の血液感染微生物を高感度かつ高特異性で検出することができる。
【0253】
個々の標識を検出するための当技術分野で公知の任意の方法が、検出のために使用され得る。例示的な方法は、分光測定、蛍光測定、顕微鏡画像化、イムノアッセイ等を含むがこれらに限定されない。微生物捕捉工程は微生物を特異的に捕捉することができるが、この特異性を強化することができる標識分子を使用するのが有益であり得る。画像化、例えば顕微鏡画像化が標識の検出に使用される場合、染色は、微生物を顕微鏡画像化のためにレイアウトする前またはした後のいずれかに行われ得る。加えて、画像化分析は、自動化された画像取得および分析を通じて実施され得る。
【0254】
蛍光検出を含む光学検出の場合、微生物の検出または同定を強化するために2つ以上の染料または色素が使用され得る。例えば、第1の色素または染料は、ある属の微生物と結合できるものが使用され得、そして第2の色素または染料は、特定の微生物と結合できるものが使用され得る。2つの色素の共局在化は、微生物の擬陽性検出を減少させることにより、強化された微生物検出または同定を提供する。
【0255】
いくつかの態様において、顕微鏡画像化は、標識剤の標識からのシグナルを検出するために使用され得る。一般に、副試料中の微生物が染色試薬で染色され、そして当業者がその視野内に存在する細胞の数を容易に検出することができる1つまたは複数の画像が取得される。
【0256】
特定の態様において、微生物は、1つまたは複数の酵素アッセイ、例えば、酵素連結アッセイ(ELISA)、の使用を通じて検出され得る。多くの酵素アッセイが、検出の提供のために使用され得る。そのような酵素アッセイの例は、ベータ-ガラクトシダーゼアッセイ、ペルオキシダーゼアッセイ、カタラーゼアッセイ、アルカリホスファターゼアッセイ等を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、酵素アッセイは、酵素が蛍光生成物を生成する酵素基質の関与する反応を触媒するよう構成され得る。酵素および蛍光酵素基質は、公知であり、市販されている(例えば、Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)。いくつかの態様において、酵素アッセイは、微生物の検出を提供する結合アッセイとして構成され得る。例えば、いくつかの態様において、標識分子が、酵素アッセイにおいて使用する酵素にコンジュゲートされ得る。酵素基質は、その後、1つまたは複数の固定化された酵素に対して、その酵素が検出可能なシグナルを生成する酵素基質の関与する反応を触媒できるよう、供給され得る。
【0257】
いくつかの態様において、酵素連結アッセイ(ELISA)が、標識分子からのシグナルを検出するのに使用され得る。ELISAにおいて、標識分子は、検出可能な標識として酵素を含み得る。各標識分子は、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の酵素を含み得る。加えて、各標識分子は、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の微生物結合部位を含み得る。理論に拘束されることを望まないが、多量体性のプローブ分子の存在は、ELISAシグナルを強化し得る。
【0258】
ELISAでは、酵素にコンジュゲートされた任意の標識分子が使用され得る。例示的な標識分子は、MBL、FcMBL、AKT-FcMBL、コムギ胚芽凝集素、レクチン、抗体(例えば、グラム陰性抗体またはグラム陽性抗体)、抗体の抗原結合断片、アプタマー、細胞表面受容体のリガンド(アゴニストまたはアンタゴニスト)等を含むものを含む。
【0259】
いくつかの態様において、標識分子は、検出可能な標識で標識されたMBLまたはFcMBLを含み得る。
【0260】
同様に、様々な酵素が、比色性または発蛍光性のいずれかの基質と共に使用され得る。いくつかの態様において、レポーター酵素は、特定波長における光吸収として測定することができる比色性の変化を生じる。例示的な酵素は、ベータ-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、アルカリホスファターゼ等を含むがこれらに限定されない。
【0261】
いくつかの態様において、酵素はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。
【0262】
いくつかの態様において、酵素はアルカリホスファターゼ(AP)である。
【0263】
微生物結合性分子および酵素は、リンカーによって相互に連結され得る。いくつかの態様において、微生物結合性分子と酵素との間のリンカーは、アミド結合である。いくつかの態様において、微生物結合性分子と酵素との間のリンカーは、ジスルフィド(S-S)結合である。
【0264】
微生物結合性分子がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である場合、酵素は、微生物結合性分子のN末端、C末端または中間位置で連結され得る。同様に、酵素は、そのN末端、C末端または中間位置により連結され得る。
【0265】
1つの態様において、ELISAプローブ分子は、HRPに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子を含み得る。任意のタンパク質および抗体へのHRPのコンジュゲートは、当技術分野で公知である。1つの態様において、FcMBL-HRP構築物は、任意の市販のHRPコンジュゲーションキットを用いてHRPをFcMBLに直接カップリングさせることによって作製される。いくつかの態様において、微生物標的化基質から単離されたまたは微生物標的化基質に結合した状態で維持されている微生物は、HRP標識微生物結合性分子、例えば、HRPに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子と共に、一定期間、例えば、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約25分間、少なくとも約30分間、インキュベートされ得る。ELISAアッセイにおいて使用されるHRP標識分子の典型的な濃度は、約1:500~約1:20,000希釈の範囲であり得る。1つの態様において、HRP標識微生物結合性分子、例えば、HRP分子に連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子の濃度は、約1:1000~約1:10000希釈であり得る。
【0266】
1つの態様において、ELISAプローブ分子は、APに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子を含み得る。任意のタンパク質および抗体へのAPのコンジュゲートは、当技術分野で公知である。1つの態様において、FcMBL-AP構築物は、任意の市販のAPコンジュゲーションキットを用いてAPをFcMBLに直接カップリングさせることによって作製される。いくつかの態様において、微生物標的化基質から単離されたまたは微生物標的化基質に結合した状態で維持されている微生物は、AP標識微生物結合性分子、例えば、APに連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子と共に、一定期間、例えば、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約25分間、少なくとも約30分間、インキュベートされ得る。ELISAアッセイにおいて使用されるAP標識分子の典型的な濃度は、約1:1000~約1:20,000希釈の範囲であり得る。1つの態様において、AP標識微生物結合性分子、例えば、AP分子に連結されたMBLもしくはその一部分またはFcMBL分子の濃度は、約1:5000~約1:10000希釈であり得る。
【0267】
ELISAプローブ分子とのインキュベートの後、試料は、任意の非結合プローブを除去するために、1または複数回(例えば、1、2、3、4、5回またはそれ以上)洗浄緩衝液で洗浄され得る。酵素(例えば、HRPまたはAP)に適した基質が、アッセイを実行するために添加され得る。酵素(例えば、HRPまたはAP)に対する発色性の基質は、当業者に公知である。当業者は、その酵素に適した発色性の基質、例えば、HRP酵素の場合はTMB基質またはAP酵素の場合はBCIP/NBT、を選択することができる。いくつかの態様において、ELISAプローブ分子とのインキュベートの後に使用される洗浄緩衝液は、少なくとも約0.01mM、少なくとも約0.05mM、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約2.5mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、少なくとも約50mMまたはそれ以上の濃度のカルシウムイオンを含み得る。代替の態様において、ELISAプローブ分子とのインキュベートの後に使用される洗浄緩衝液は、カルシウムイオンを含まないものであり得る。いくつかの態様において、ELISAプローブ分子とのインキュベートの後に使用される洗浄緩衝液は、キレート剤を含み得る。洗浄緩衝液は、抗体および/または標識分子とのインキュベートの間の洗浄に使用される任意の当技術分野で知られている緩衝液であり得る。例示的な洗浄緩衝液は、TBSTを含み得るがこれらに限定されない。
【0268】
いくつかの態様において、理論に拘束されることを望まないが、界面活性剤または洗浄剤が発色性基質との酵素反応に悪影響を有し得るので、発色性基質の添加前の最後の洗浄においては、界面活性剤または洗浄剤を含まない洗浄緩衝液を使用することが所望され得る。
【0269】
ELISAベースのアプローチの1つの利点は、2次試薬との結合の前に固体基質を分散させるまたは微生物から分離させる必要がないことである。これは、余分な残留する固体基質が画像化時に微生物を不鮮明にし得る顕微鏡技術と異なる点である。さらに、ELISA用の光学読み取り要素は、顕微鏡の場合のそれよりも安価である可能性が高く、かつ合焦する必要または試料が同一の焦点面に存在することを要求する必要がない。ELISAベースのアプローチのさらなる利点は、それが市販の研究用設備を利用できることである。特に、固体基質が磁気基質である場合、磁気分離は、KINGFISHER(登録商標)システムを用いて自動化することができ、簡単な培養は、エアリフト発酵槽を用いて行うことができ、そして比色/蛍光読み取りは、標準的なプレートリーダーを用いて達成することができる。
【0270】
ELISAシグナルのさらなる増幅は、認識分子(例えば、微生物結合性分子)を多量体化させることによってまたは検出酵素(HRP等)を多量体化させることによって、達成することができる。例えば、ファージ発現が、多量体化MBLを生産するため、および(ファージ粒子に対するHRPの直接的カップリングを通じてまたはHRP-抗M13コンジュゲート抗体を用いてのいずれかで)HRPの濃度を増加させるスキャフォールドを提供するために、使用され得る。
【0271】
いくつかの態様において、微生物は、イムノアッセイの使用を通じて検出され得る。多くのタイプの検出法が、イムノアッセイベースの方法と組み合わせて使用され得る。
【0272】
非限定的に、試料中の微生物の検出はまた、光学顕微鏡を用いた位相差画像化により、標的成分、例えば、すべての正常な血液細胞とは異なる微生物、の特徴的なサイズ(5um径)、形状(球形~楕円形)および屈折特性に基づき行われ得る。より大きな特異性は、すべての微生物または個々のサブクラスに特異的な蛍光または細胞化学的染色(例えば、真菌のキチンに対するカルコフロール(1μM~100μM)、真菌の表面分子に対する蛍光抗体、グラム染色、抗酸性染色、蛍光MBL、蛍光Fc-MBL等)による光学画像化を用いることで得ることができる。
【0273】
微生物検出はまた、微生物の特徴的なサイズ(5um径)、形状(球形~楕円形)および染色特性を同定するために落射蛍光顕微鏡を用いて行うことができる。例えば、真菌は、すべての正常な血液細胞と異なるように染色され、カルコフロール(1μM~100μM)に強く結合し、そして任意の他の正常な血液細胞では見られない硬直的な楕円形状を有する。
【0274】
いくつかの態様において、微生物は、分光測定の使用を通じて検出され得る。多くのタイプの分光測定法を使用することができる。そのような方法の例は、紫外線分光測定、可視光分光測定、赤外線分光測定、x線分光測定、蛍光分光測定、質量分析、プラズモン共鳴(例えば、Cherif et al., Clinical Chemistry, 52: 255-262 (2006)および米国特許第7,030,989号;参照により本明細書に組み入れられる)、核磁気共鳴分光測定、ラマン分光測定、蛍光消光、蛍光共鳴エネルギー移動、内部蛍光、リガンド蛍光等を含むがこれらに限定されない。
【0275】
いくつかの態様において、微生物は、蛍光異方性の使用を通じて検出され得る。蛍光異方性は、共焦点配置で画像化された試料蛍光の定常状態偏光の測定に基づくものである。直線偏光レーザー励起源は、入射偏光ベクトルと平行に並ぶ遷移モーメントを有する蛍光標的分子を優先的に励起する。生じた蛍光が回収され、励起ビームのそれに対して平行および垂直の両方に偏光した蛍光の強度を測定する2つのチャネルに送られる。これらの2つの測定を用いて、蛍光異方性rを、式:r = (平行強度 - 垂直強度)/(平行強度 + 2(垂直強度))、式中、強度の項目は入射偏光に対して平行および垂直な強度の測定値を示す、から決定することができる。蛍光分子の蛍光異方性検出は報告されている。したがって、蛍光異方性は、本明細書に記載されるおよび当技術分野で報告されている多くの蛍光標識と組み合わせることができる。
【0276】
いくつかの態様において、微生物は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の使用を通じて検出され得る。蛍光共鳴エネルギー移動は、2つの蛍光分子の間のエネルギー移動のメカニズムを表す。蛍光ドナーは、その蛍光励起波長で励起される。この励起状態は、その後、第2の分子である蛍光アクセプターに非放射的に移される。蛍光共鳴エネルギー移動は、捕捉された微生物を検出する上で、多くの構成で使用され得る。例えば、いくつかの態様において、第1の標識分子が蛍光ドナーで標識され得、そして第2の標識分子が蛍光アクセプターで標識され得る。したがってそのように標識された第1および第2の標識分子は、試料中の微生物の存在および/または濃度を検出するために、競合アッセイにおいて使用することができる。蛍光ドナーおよび蛍光アクセプターの多くの組み合わせが検出に使用され得る。
【0277】
いくつかの態様において、微生物は、ポリヌクレオチド分析の使用を通じて検出され得る。そのような方法の例は、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション、ポリヌクレオチドライゲーション、ポリヌクレオチド増幅、ポリヌクレオチド分解等に基づくものを含むがこれらに限定されない。インターカレート色素、蛍光共鳴エネルギー移動、容量性デオキシリボ核酸検出および核酸増幅を利用する方法が、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,118,910号および同第6,960,437号に記載されている。そのような方法は、1つまたは複数の微生物核酸の検出を提供するよう適合させることができる。いくつかの態様において、蛍光消光、分子ビーコン、電子移動、電気伝導度等が、ポリヌクレオチドの相互作用の分析に使用され得る。そのような方法は公知であり、例えば、Jarvius, DNA Tools and Microfluidic Systems for Molecular Analysis, Digital Comprehensive Summaries of Uppsala Dissertations from the Faculty of Medicine 161, ACTA UNIVERSITATIS UPSALIENSIS UPPSALA 2006, ISBN: 91-554-6616-8; Singh-Zocchi et al, Proc. Natl. Acad. Sci, 100: 7605-7610 (2003); Wang et al. Anal. Chem, 75: 3941-3945 (2003); およびFan et al, Proc. Natl. Acad. Sci, 100: 9134-9137 (2003)ならびに米国特許第6,958,216号;同第5,093,268号;および同第6,090,545号に記載されており、これらすべての内容が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド分析は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるものである。PCRの原理は当業者に周知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられるMcPherson, et al., PCR, A Practical Approach, IRL Press, Oxford, Eng. (1991)を参照されたい。
【0278】
いくつかの態様において、代謝アッセイが、対照に対する試料中の微生物の相対数を決定するために使用される。当業者に明らかなように、細胞に関連し得る任意の代謝指標、例えば、非限定的に、濁度、蛍光色素および酸化還元指標、例えば、非限定的に、アラマーブルー、MTT、XTT、MTSおよびWST、を使用することができる。代謝指標は、細胞に固有の成分または細胞の環境に加えられる成分であり得る。いくつかの態様において、代謝指標の変化または状態は、特定波長の照射を吸収または反射する試料を含む媒体の能力を変化させ得る。
【0279】
例示的な代謝アッセイは、ATP発光、活性酸素種(ROS)アッセイ、レザズリンアッセイ、ルミノール、MTT代謝アッセイ等を含むがこれらに限定されない。さらに、当業者の良く知るところであるが、代謝アッセイを実施するためのキットおよび方法は、市販されている。例えば、Invitrogen製の、2-(N-(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)-2-デオキシグルコース(2-NBDG)、ATP決定キット、AMPLEX(登録商標)レッド ガラクトース/ガラクトースオキシダーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド グルコース/グルコースオキシダーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド グルタミン酸/グルタミン酸オキシダーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド 過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド モノアミンオキシダーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)アッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド ホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼCアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド スフィンゴミエリナーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド 尿酸/ウリカーゼアッセイキット、AMPLEX(登録商標)レッド キサンチン/キサンチンオキシダーゼアッセイキット、THIOLTRACKER(商標)バイオレット(グルタチオン検出試薬)、THIOLTRACKER(商標)バイオレット(グルタチオン検出試薬)およびVYBRANT(登録商標)細胞代謝アッセイキット;アデノシン5'-三リン酸(ATP)発光アッセイキット(Promega製のENLITEN(登録商標);PerkinElmer Life Sciences製のATPLITETM;Boehringer Mannheim, Germany製のATP生物発光アッセイキットHS II;EMD Millipore製のアデノシン5'-三リン酸(ATP)発光アッセイキット;Cell BioLabs, Inc.製の活性酸素種(ROS)アッセイ;ABCAM(登録商標)製の細胞活性酸素種検出アッセイキット;Cell Technology, Inc.製のhROS検出キット;およびBioCat製の、ABTS抗酸化物質アッセイキット、ORAC抗酸化物質アッセイキット、OxiSelect HORAC活性アッセイキット、OxiSelectインビトロROS/RNSアッセイキット(緑色蛍光)、OxiSelect細胞内ROSアッセイキット(緑色蛍光)、OxiSelect ORAC活性アッセイキット、OxiSelect総抗酸化物質量(TAC)アッセイキットおよび総抗酸化物質量アッセイキット。
【0280】
いくつかの態様において、微生物標的化基質から単離されたまたは微生物標的化基質に結合した状態で維持されている微生物は、その後の検出および/または多重検出のために、核酸バーコードで標識され得る。試料中の1つまたは複数の分析物の検出のための核酸バーコード法は、当技術分野で周知である。
【0281】
他の態様において、捕捉された微生物は、2011年1月19日出願の国際特許出願第WO2011/091037号に記載される高速微生物診断装置の捕捉チャンバーまたは捕捉・可視化チャンバーにおいて分析および/または検出され得る。あるいは、捕捉された微生物は、回収され(すなわち、取り出され)そして分析および/または検出され得る。
【0282】
いくつかの態様において、捕捉された微生物は、回収され、そして、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,781,226号に記載される膜アッセイにおいて粒子を用いて分析および/または検出される。米国特許第7,781,226号に記載される膜アッセイにおける粒子は、試料取り扱い工程の数を減らすため、処理を自動化するためならびに/または捕捉、分離および分析/検出工程をマイクロ流体装置に統合するために、国際特許出願第WO2011/091037号の高速微生物診断装置と機能的に連結され得る。
【0283】
いくつかの態様において、微生物の捕捉、分離および分析は、米国特許出願公開第US2011/0039280号に記載されるハイブリッドマイクロ流体SPR・分子イメージング装置を用いて実施され得る。
【0284】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるプロセスまたはアッセイは、24時間以内、12時間以内、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内またはそれより短時間で、被験試料中の微生物の存在もしくは非存在を検出しおよび/または微生物を同定し得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるプロセスまたはアッセイは、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内またはそれより短時間で、被験試料中の微生物の存在もしくは非存在を検出しおよび/または微生物を同定し得る。
【0285】
任意の追加分析または処置 - 培養:
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様において、アッセイまたはプロセスはさらに、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した任意の微生物を一定期間培養することを含み得る。そのような態様において、微生物標的化基質に結合した微生物は、一定期間の培養後に、集団を少なくとも約10%拡張され得る。
【0286】
いくつかの態様において、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した微生物は、一定期間、例えば、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間、少なくとも約9時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間またはそれ以上、培養され得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した微生物は、少なくとも約30分間~少なくとも約3時間培養され得る。
【0287】
いくつかの態様において、特定期間の培養後に微生物標的化基質(例えば微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合している微生物の数は、微生物標的化基質に当初結合していた微生物の数と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%増加または拡張され得る。いくつかの態様において、特定期間の培養後に微生物標的化基質(例えば微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合している微生物の数は、微生物標的化基質に当初結合していた微生物の数と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約10000倍、少なくとも約100000倍増加または拡張され得る。
【0288】
いくつかの態様において、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した微生物は、微生物に適合する培養培地で培養され得る、例えば、寒天プレートにプレーティングまたはLBブロス中で培養され得る。当業者は、インキュベーターならびに/または、必要な場合、例えば細胞を大きな剪断応力にさらさずにそれらの凝集を防ぐためおよび好気撹拌を提供するために、穏やかな撹拌を提供するのに使用される設備、例えば、回転プラットフォームおよびシェーカー、の使用を含むがこれらに限定されない微生物培養技術を容易に把握するであろう。
【0289】
微生物は、本明細書に記載される検出および/もしくは追加分析の間、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した状態で維持され得、または、それらは、本明細書に記載される検出もしくは追加分析の前に微生物標的化基質から脱離、溶出もしくは除去され得る。結合した微生物が微生物標的化基質から脱離、溶出または除去されることが望まれるいくつかの態様においては、微生物標的化基質の微生物結合性分子をさらに、低pH緩衝液、例えば、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1未満またはそれより低いpHの緩衝液と接触させることができる。いくつかの態様において、存在する場合にキレート剤を沈殿させない低pH緩衝液が使用され得る。1つの態様において、低pH緩衝液は、アルギニンであり得る。別の態様において、低pH緩衝液はピロリン酸であり得る。
【0290】
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様においては、微生物標的化基質の微生物結合性分子をさらに、低pH緩衝液およびキレート剤と接触させることができる。いくつかの態様において、低pH緩衝液およびキレート剤に対する微生物標的化基質の微生物結合性分子の接触は、同時または順次あり得る。1つの態様においては、微生物標的化基質の微生物結合性分子をさらに、pH 4.4のEDTAまたはEGTAを含むアルギニン(例えば、2M)と接触させることができる。
【0291】
単離された微生物は、その後、前記の分析または追加処置、例えば、培養による拡張、抗生物質感受性試験、配列決定および/またはDNAもしくはRNA分析に使用され得る。
【0292】
任意の追加分析または処置 - 抗生物質感受性または感度試験:
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載されるプロセスまたはアッセイはさらに、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)に結合した微生物および/または微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)から単離された微生物の拡張培養物を1つまたは複数の抗生物質にさらすことを含み得る。その後、抗生物質に対する微生物の応答が、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、例えば、微生物の生存度を測定することによって、評価され得る。したがって、微生物標的化基質に結合した微生物の具体的な種が当初は未知であったとしても、その微生物により引き起こされる感染の処置に適した抗生物質が同定され得る。抗生物質感受性試験における本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の使用に関するさらなる詳細は、例えば、2012年2月29日出願の米国仮出願第61/604,878号および2012年5月16日出願の同第61/647,860号で見出すことができる。
【0293】
本明細書に記載される任意のプロセスまたは工程は、モジュールまたは装置によって実行され得る。これらは個別のプロセスとして議論されているが、本明細書に記載されるプロセスまたは工程の1つまたは複数を組み合わせて本明細書に記載される任意の局面のアッセイを実施するための1つのシステムにすることができる。
【0294】
微生物感染または汚染を診断または局在化する方法の例示的な態様
概ね、本明細書に記載される任意の局面のアッセイまたはプロセスの態様は、被験試料においてまたはインサイチュー(例えば、微生物が実際に生息している場所、例えば、貯水池または作業表面)で微生物および/または微生物物質の存在または非存在を検出するために使用することができる。例えば、いくつかの態様において、被験試料、例えば、対象もしくは環境源または環境表面から得られた被験試料を、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子または操作された微生物結合基質と接触させることができ、それによって、存在する場合、被験試料または環境表面の任意の微生物を、例えば、上記の例示的なプロセスの任意の態様を用いて、操作された微生物結合性分子または操作された微生物結合基質により捕捉することができる。いくつかの態様において、操作された微生物結合性分子および/または微生物結合基質に結合した捕捉された微生物を、その後、例えば、微生物の属または種を例えばイムノアッセイ(例えば、特定の微生物に対する抗体を用いて)、質量分析、PCR等によって同定するために、上記のような様々な分析に供することができる。操作された微生物結合性分子が画像化剤(例えば、泡状体、リポソーム、球体、診断用造影剤または本明細書に記載される検出可能な標識)を含む代替の態様において、操作された微生物結合性分子に対する微生物の結合は、限局的な微生物感染または汚染の同定のためにおよび感染または汚染の限局的処置を行うために、インサイチューで検出され得る。
【0295】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイまたはプロセスは、対象においてインサイチューで微生物感染を診断または局在化するために使用され得る。例えば、画像化剤を含む操作された微生物標的化マイクロビーズ(例えば、操作された微生物標的化マイクロビーズは、画像化剤、例えば泡状体、リポソーム、球体、診断用造影剤または本明細書に記載される検出可能な標識に連結され得る)が、全身的に(例えば、注射によって)または局所的にのいずれかで、対象に投与され得る。そのような態様において、画像化剤を含む操作された微生物標的化マイクロビーズは、対象における(例えば、組織内の)限局的な微生物感染のポケットを同定および/または局在化するため、ならびに、必要に応じて、以下の「微生物感染を処置および/または予防するための例示的な組成物および方法」の節に記載される、微生物感染の限局的処置を行うために使用され得る。
【0296】
本明細書に記載される操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)は、幅広い微生物に結合することができるが、特定の態様においては、本明細書に記載される操作された微生物結合性分子または基質に対する個々の結合の能力に基づき、ある微生物種(例えば、黄色ブドウ球菌)が別の種(例えば、大腸菌)から単離および/または区別され得る。例えば、本発明者らは、黄色ブドウ球菌がカルシウム依存的MBL媒介相互作用およびカルシウム非依存的Fc媒介相互作用の両方を介してFcMBLに結合できるのに対して、大腸菌は主としてカルシウム依存的MBL媒介相互作用を介してFcMBLに結合できることを実証した。限定されることを望まないが、操作された微生物結合性分子(例えば、FcMBL)に結合する黄色ブドウ球菌のそのような固有の能力に基づき黄色ブドウ球菌により引き起こされる感染を診断する例示的な方法が、以下に例示の目的で記載されている。当業者は、被験試料においてもしくはインサイチューで任意の微生物の存在もしくは非存在を検出するためにおよび/または対象において様々な種類の微生物感染を診断するために、例示された実例に対して任意の必要な修正を容易に行うことができ、かつ/または、本明細書に記載されるアッセイもしくはプロセスの任意の態様を採用することができる。
【0297】
例えば、医師が、準最適なまたは完全に無効な抗生物質から出発することなく、適切な薬物療法を早期に開始できるようにする、少なくとも黄色ブドウ球菌を他の細菌、例えば大腸菌から識別するより高速および/または効率的な診断方法が、強く求められている。微生物感染、例えば、黄色ブドウ球菌の処置の遅れは、その処置の結果に大きく影響し得、時には致命傷となり得る。
【0298】
したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイまたはプロセスは、被験試料中のプロテインA発現微生物またはプロテインG発現微生物をプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)から識別するために使用され得る。具体的に、本発明者らは、本明細書に記載されるアッセイまたはプロセスのいくつかの態様を用いて黄色ブドウ球菌を大腸菌から識別できることを実証した。いくつかの態様において、ヒトIgG1のFc部分とヒトマンノース結合レクチン(MBL)のネックおよび糖質認識ドメイン(CRD)との間の融合タンパク質にカップリングされた基質を含む微生物標的化基質が、そのような微生物の判別に使用され得る。
【0299】
したがって、対象における黄色ブドウ球菌感染の存在または非存在を決定する例示的な方法もまた、本明細書に提供される。例えば、この方法は、キレート剤の存在下で少なくとも第1の被験試料ボリュームと本明細書に記載される微生物標的化基質を接触させることを含み得る。あるいは、この方法は、(i)遊離カルシウムイオンの存在下で少なくとも第1の被験試料ボリュームと本明細書に記載される微生物標的化基質を接触させること、および(ii)被験試料との接触の際に、本明細書に記載される微生物標的化基質の微生物結合性分子を、キレート剤を含む溶液と接触させること、を含み得る。本明細書に記載されるいくつかの態様において、この方法はさらに、結合した微生物の存在または非存在について微生物標的化基質を分析することを含み得る。微生物標的化基質に結合した微生物の存在は、被験試料中のプロテインA発現微生物またはプロテインG発現微生物の存在を示し;微生物標的化基質に結合した微生物の非存在は、被験試料中のプロテインA発現またはプロテインG発現微生物の非存在を示す。
【0300】
いくつかの態様において、この方法はさらに、対象が黄色ブドウ球菌を有することが検出されたときに、その対象に抗菌剤を投与または調剤することを含み得る。抗菌剤の非限定的な例は、黄色ブドウ球菌処置用の任意の治療剤を含み得る。いくつかの態様において、抗菌剤は、ペニシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、バンコマイシンおよびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、黄色ブドウ球菌の処置において一般的に指定される抗生物質であり得る。
【0301】
微生物が微生物標的化基質上に存在しないいくつかの態様において、この方法はさらに、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物の存在または非存在を決定するために、微生物標的化基質の除去後のキレート剤を含む被験試料または溶液を分析することを含み得る。例えば、遊離カルシウムイオンが微生物と微生物標的化基質との間の糖質認識ドメイン(例えば、MBL)媒介結合を媒介できるよう、実質的にすべてのキレート剤分子と反応するのに必要とされる以上の量の追加のカルシウムイオン(例えば、カルシウム塩)が、キレート剤を含む被験試料または溶液に添加され得る。その後、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の存在または非存在を検出するため、新たな微生物標的化基質を、遊離カルシウムイオンの存在下でキレート剤を含む処置された被験試料または溶液と接触させることができる。あるいは、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の存在または非存在を検出するため、新たな微生物標的化基質を、遊離カルシウムイオンの存在下(例えば、例えば少なくとも約1mM、少なくとも約5mMまたはそれ以上の濃度のカルシウム塩の添加)で新しい被験試料ボリュームと接触させることができる。微生物標的化基質に結合したプロテインA発現またはプロテインG発現微生物に対する上記の検出法は、そのような目的でも使用することができる。その内容が参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願第WO2011/090954号に記載される検出法もまた、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)の存在または非存在を決定するために、本明細書で利用され得る。
【0302】
これらの態様において、微生物(例えば、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌))が対象において検出されるとき、この方法はさらに、対応する微生物(例えば、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物、例えば大腸菌)を処置するために本明細書に記載される適切な抗菌剤を対象に投与または調剤することを含み得る。
【0303】
理論に拘束されることを望まないが、操作された微生物結合性分子のいくつかの態様は、微生物をオプソニン化させ、その後に自然免疫応答によって除去させるために使用され得る。いくつかの態様において、FcMBLタンパク質は、Fcまたは野生型MBLよりも強力な、微生物、例えば黄色ブドウ球菌、のオプソニンであり得る。したがって、いくつかの態様において、対象が本明細書に記載される方法を用いて微生物感染を有すると診断されるとき、対象は、少なくとも1つの本明細書に記載される操作された微生物結合性分子を含む組成物を投与または調剤され得る。
【0304】
非限定的に、本明細書に記載される任意の局面の方法は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上の抗生物質に対して耐性の微生物を診断するために使用され得る。例えば、1つの態様において、本明細書に記載される方法は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を診断するために使用され得る。別の態様において、本明細書に記載される方法は、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌を診断するために使用され得る。
【0305】
微生物感染を処置および/または予防するための例示的な組成物および方法
操作された微生物標的化分子への微生物の結合は、感染領域からの微生物および/または微生物物質の単離および除去を容易にし得る。したがって、本明細書に提供される別の局面は、1つまたは複数の本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)を含む、微生物感染または微生物汚染を処置および/または予防するための組成物に関する。
【0306】
いくつかの態様において、組成物は、環境表面に存在する微生物感染または微生物汚染を処置および/または予防するために処方され得る。本明細書で使用される「環境表面」という用語は、任意の環境または物体の表面および/または本体を表す。環境の物体は、非生存性の物体または生存性の物体、例えば、植物プラント、であり得る。環境表面の例は、医療装置、植え込み型装置、病院または診療所(例えば、手術室または集中治療室)内の表面、食品または医薬品(例えば、薬物、治療剤もしくは画像化剤)を製造または加工処理するための機械または作業表面、細胞培養物、水処理プラント、貯水器および植物プラントを含み得るがこれらに限定されない。
【0307】
いくつかの態様において、組成物は、対象の体液、例えば、血液の微生物感染を処置および/または予防するために処方され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物の操作された微生物標的化分子は循環する体液、例えば、血液中の微生物および/または微生物物質を捕捉することができるが、他の態様において、操作された微生物標的化分子は、微生物および/または微生物物質がクリアランスのために自然免疫系に認識され得るように、その微生物および/または微生物物質をオプソニン化することができる。
【0308】
全身性の補体活性化を誘導し得る野生型MBL(例えば、Sprong T. (2009) Clin Infect Dis. 49: 1380-1386を参照のこと)と異なり、いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、下流の炎症カスケードを刺激することなく微生物および/または微生物物質に結合することによりドミナントネガティブ分子として機能し得、したがってインビボで全身性炎症症候群および/または敗血症症候を減少、例えば、播種性血管内凝固(DIC)を減少させ得る。
【0309】
あるいは、操作された微生物標的化分子は、微生物を局在化させることができ、それによってそれが拡散するのを、例えば創傷により深く拡散するのを防ぐことができる。具体的に、本発明者らは、黄色ブドウ球菌が、独立して操作された微生物標的化分子に結合することができるその微生物表面上の糖質パターンおよびプロテインAの両方の存在ゆえに、操作された微生物標的化分子(例えば、微生物結合磁気マイクロビーズ)のいくつかの態様に強く結合できることを実証した。したがって、いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、微生物負荷を局在化させるために使用することができ、その後にこれを感染領域から容易に除去することができる。いくつかの態様において、マイクロビーズは、感染部位の詳細な画像化のために標識され得る。SPECT画像化の場合、典型的に使用されるトレーサー放射性同位元素、例えばヨウ素-123、テクネチウム-99m、キセノン-133、タリウム-201およびフッ素-18、が使用され得る。テクネチウム99mは、シンチグラフィーアッセイで使用され得る。ヨウ素由来のまたは他のX線不透過性の造影剤もまた、X線撮影またはCTスキャン画像化のためにビーズに組み込まれ得る。常磁性または超常磁性マイクロビーズの使用は、感染病巣内の原子の緩和時間を変更するための造影剤として磁気共鳴画像化において使用され得る。別の態様において、マイクロ球体は、感染プロセスの進行を決定するために蛍光染色され、外科的創傷に適用され得る。これは、執刀医が骨髄炎、蜂巣炎または筋膜炎の創傷郭清術中に感染組織と健常組織の間を識別するのを補助する上で有用であり得る。
【0310】
したがって、本明細書に提供される別の局面は、対象の組織における微生物感染を処置および/または予防するための組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載される操作された微生物標的化分子を含む。いくつかの態様において、組成物中に存在する操作された微生物標的化分子および/または微生物標的化基質の量は、対象の組織における微生物の成長および/または拡散を減少させるのに十分な量である。本明細書で使用される「組織における微生物の成長および/または拡散を減少させる」というフレーズは、組織における微生物のコロニーの数および/または微生物の移動を減少させることを表す。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、組織における微生物のコロニーの数を操作された微生物標的化分子の非存在下での場合と比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最大100%減少させることができるように、組織中に存在する微生物を捕捉および局在化させることができる。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、組織における微生物のコロニーの数を操作された微生物標的化分子の非存在下での場合と比較して少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍またはそれ以上減少させることができるように、組織中に存在する微生物を捕捉および局在化させることができる。1つの態様において、微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)に対する操作された微生物標的化分子の結合は、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間または少なくとも約24時間の期間の後に、操作された微生物標的化分子の非存在下での場合と比較してそのコロニーの数を少なくとも約4倍~少なくとも約6倍(例えば、少なくとも約5倍)減少させる。
【0311】
他の態様において、操作された微生物標的化分子は、組織内での微生物の(例えば、組織のより深部に進んだ距離および/または感染部位からの拡散面積の観点での)移動を操作された微生物標的化分子の非存在下での場合と比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最大100%減少させることができるように、組織中に存在する微生物を捕捉および局在化させることができる。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、組織内での微生物の(例えば、組織のより深部に進んだ距離および/または感染部位からの拡散面積の観点での)移動を操作された微生物標的化分子の非存在下での場合と比較して少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍またはそれ以上減少させることができるように、組織中に存在する微生物を捕捉および局在化させることができる。
【0312】
いくつかの態様において、組成物はさらに、抗菌剤および薬物送達媒体の少なくとも一方を含み得る。例えば、いくつかの態様において、組成物はさらに、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたはそれ以上の抗菌剤を含み得る。いくつかの態様において、組成物はさらに、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000またはそれ以上)の送達媒体を含み得る。いくつかの態様において、組成物はさらに、(少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたはそれ以上を含む)少なくとも1つの抗菌剤および(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000またはそれ以上を含む)少なくとも1つの薬物送達媒体の組み合わせを含み得る。本明細書で使用される場合、「薬物送達媒体」という用語は、一般に、活性物質を標的部位に運搬するのに使用することができる任意の材料を表す。薬物送達媒体の例は、細胞、ペプチド粒子、ポリマー粒子、デンドリマー、小胞、リポソーム、ヒドロゲル、核酸スキャフォールド、アプタマーおよびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0313】
薬物送達媒体が含まれるいくつかの態様において、操作された微生物標的化分子および/または抗菌剤は、薬物送達媒体内に分散され得(例えば、カプセル被包され得もしくは埋め込まれ得)、および/または薬物送達媒体の表面上にコーティングされ得る。
【0314】
組成物が少なくとも1つの抗菌剤を含むいくつかの態様において、抗菌剤は、操作された微生物標的化分子とは別個の実体として存在し得、ならびに/またはそれは、例えば、遺伝子改変および/もしくは化学的コンジュゲートにより、少なくとも1つの操作された微生物標的化分子と融合され得る。
【0315】
本明細書で使用される「抗菌剤」という用語は、抗菌活性を有する、すなわち、例えば抗菌剤の非存在下での場合と比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%またはそれ以上、微生物の成長を阻害もしくは減少および/または微生物を殺傷する能力を有する任意の実体を表す。抗菌剤は、例えば、銀ナノ粒子、小分子、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体またはその断片、核酸、酵素(例えば、抗菌メタロエンドペプチダーゼ、例えばリゾスタフィン)、アプタマー、薬物、抗生物質、微生物の成長を阻害するおよび/または微生物を殺傷することができる化学的または任意の実体であり得るがこれらに限定されない。本明細書に記載される組成物に含めることができる抗菌ペプチドの例は、メフロキン、ベンツリシジンA、アンチマイシン、ミキソチアゾール、スティグマテリン、ジウロン、ヨードアセトアミド、テルル酸カリウム水和物、aDL-ビニルグリシン、N-エチルマレイミド、L-アリルグリシン、ジアリルキノリン(diaryquinoline)、ベタインアルデヒドクロリド、アシビシン(acivcin)、サイコフライン(psicofuraine)、ブチオニンスルホキシミン、ジアミノピメリン酸(diaminopemelic acid)、4-ホスホ-D-エリスロンヒドロキサム酸(4-phospho-D-erythronhydroxamic acid)、モテクサフィンガドリニウムおよび/もしくはキシシトリン(xycitrin)またはそれらの修飾型もしくはアナログを含むがこれらに限定されない。
【0316】
いくつかの態様において、組成物に含まれる抗菌剤は、抗生物質であり得る。本明細書で使用される場合、「抗生物質」という用語は、当技術分野で知られており、他の微生物の成長を阻害するもしくは他の微生物を破壊する、微小生物、例えば細菌(バチルス種を含む)、放線菌(ストレプトミセスを含む)もしくは真菌によって自然界で産生される抗菌剤、またはその遺伝子操作されたものおよびそのような天然供給源から単離されたものを含む。類似の構造および作用様式の物質が、化学的に合成され得、または天然化合物が、準合成抗生物質を作製するために修飾され得る。例示的な抗生物質のクラスは、(1)ペニシリン、セファロスポリンモノバクタム、メチシリンおよびカルバペネムを含む、β-ラクタム;(2)アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシンおよびアミカシン;(3)テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンおよびデメクロサイクリン;(4)スルホンアミド(例えば、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジンおよびスルファサラジン)およびトリメトプリム;(5)キノロン、例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン;(6)糖ペプチド(例えば、バンコマイシン、テラバンシン、テイコプラニン);(7)例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシンおよびクラリスロマイシンを含む、マクロライド;(8)カルバペネム(例えば、エルタペネム、ドリペネム、メロペネムおよびイミペネム);(9)セファロスポリン(例えば、セファドロキシル、セフェピムおよびセフトビプロール);(10)リンコサミド(例えば、クリンダマイシンおよびリンコマイシン);(11)モノバクタム(例えば、アズトレオナム);(12)ニトロフラン(例えば、フラゾリドンおよびニトロフラントイン);(13)ペニシリン(例えば、アモキシシリンおよびペニシリンG);(14)ポリペプチド(例えば、バシトラシン、コリスチンおよびポリミキシンB);ならびに(15)その他の抗生物質、例えば、アンサマイシン、ポリミシン(polymycin)、カルバセフェム、クロラムフェニコール、リポペプチドおよびマイコバクテリア(例えば、動物において結核(結核菌(Mycobacterium tuberculosis))およびハンセン病(らい菌(Mycobacterium leprae))を含む疾患を引き起こすもの)に対する薬物ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0317】
さらなる例示的な抗菌剤は、抗細菌剤、抗真菌剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤およびそれらの任意の混合物を含み得るがこれらに限定されない。
【0318】
例示的な抗細菌剤は、アクロソキサシン(Acrosoxacin)、アミフィオキサシン(Amifioxacin)、アモキシシリン、アンピシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アジスロマイシン、アズトレオナム、バロフロキサシン(Balofloxacin)、1cベンジルペニシリン、ビアペネム、ブロジモプリム、セファクロル、セファドロキシル、セファトリジン、セフカペン、セフジニル、セフェタメト、セフメタゾール、セフプロジル、セフロキサジン、セフチブテン、セフロキシム、セファレキシン、セファロニウム、セファロリジン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、クロルキナルドール、クロルテトラサイクリン、シクラシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、ダノフロキサシン、ダプソン、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジフロキサシン、ドキシサイクリン、エンドキサシン、エンロフロキサシン、エリスロマイシン、フレロキサシン、フロモキセフ、フルクロキサシリン、フルメキン、ホスホマイシン、イソニアジド、レボフロキサシン、マンデル酸、メシリナム、メトロニダゾール、ミノサイクリン、ムピロシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ニフイルトイノール(Nifuirtoinol)、ニトロフラントイン、ニトロキソリン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキシテトラサイクリン、パニペネム、ペフロキサシン、フェノキシメチルペニシリン、ピペミド酸、ピロミド酸、ピバンピシリン、ピブメシリナム、プルリフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、スルバクタム、スルファベンズアミド、スルファシチン、スルファメトピラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルアミド、スルファソミジン(Sulphasomidine)、スルファチアゾール、テマフィオキサシン(Temafioxacin)、テトラサイクリン、テトロキソプリム、チニダゾール、トスフロキサシン、トリメトプリムおよびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルを含むがこれらに限定されない。
【0319】
例示的な抗真菌剤は、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルフェネシン、シクロピロクスオラミン、クロトリマゾール、エベルコナゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ニフロキシム、チオコナゾール、テルコナゾール、ウンデセン酸およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルを含むがこれらに限定されない。
【0320】
例示的な抗原虫剤は、アセタルゾール、アザニダゾール、クロロキン、メトロニダゾール、ニフラテル、ニモラゾール、オミダゾール(Omidazole)、プロペニダゾール、セクニダゾール、シネフンギン(Sineflngin)、テノニトロゾール、テミダゾール(Temidazole)、チニダゾールおよびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルを含むがこれらに限定されない。
【0321】
例示的な抗ウイルス剤は、アシクロビル、ブリブジン、シドフォビル、クルクミン、デスシクロビル、1-ドコサノール、エドクスジン、gQファムシクロビル(Fameyclovir)、フィアシタビン(Fiacitabine)、イバシタビン、イミキモド、ラミブジン、ペンシクロビル、バラシクロビル、バルガンシクロビルおよびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルを含むがこれらに限定されない。
【0322】
いくつかの態様において、抗菌剤は、任意の形態、例えば、ナノ粒子、コロイド、懸濁物、粉末およびそれらの任意の組み合わせ、で存在する銀を含み得る。
【0323】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載される任意の微生物によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。1つの態様において、組成物は、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。
【0324】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上の抗菌剤に対して耐性の微生物によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。1つの態様において、組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上の抗生物質に対して耐性の微生物によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。例えば、1つの態様において、組成物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。別の態様において、組成物は、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染を処置および/または予防するために使用され得る。
【0325】
例示的な抗菌用途および/または生成物:
本明細書に記載される組成物は、様々な用途および/または生成物、例えば抗菌製品として処方または構成され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、以下に記載されるような薬学的組成物として、例えば治療的処置のための抗生物質または防腐剤として、処方され得る。
【0326】
創傷被覆材:
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、局所適用のために、例えば、創傷、病巣または膿瘍における局所適用のために、処方され得る。例にすぎないが、いくつかの態様において、複数の操作された微生物標的化分子が、創傷被覆材、例えば、非限定的に、絆創膏、粘着剤、ガーゼ、フィルム、ジェル、泡状体、親水コロイド、アルギネート、ヒドロゲル、ペースト(例えば、多糖類ペースト)、スプレー、顆粒およびビーズ、にブレンド、付加またはコーティングされ得る。
【0327】
いくつかの態様において、創傷被覆材は、本明細書に記載される追加の抗菌剤および/または防腐化合物、例えば、ホウ素リント(boracic lint)および/または医療用ヒマシ油を含み得る。
【0328】
1つの態様において、複数の操作された微生物標的化分子(例えば、微生物標的化微粒子または微生物標的化磁気マイクロビーズ)が、創傷被覆材、例えば絆創膏または粘着剤、に付加またはコーティングされ得る。そのような創傷被覆材が創傷または病巣に適用されるとき、その創傷または病巣に存在する任意の微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)および/または微生物物質は創傷被覆材に結合し局在化され得る。したがって、創傷被覆材の定期的な交換により、創傷または病巣から微生物を除去することができ、したがって微生物がさらなる感染のために創傷または病巣のより深部に移動するを防ぐことができる。
【0329】
1つの態様において、複数の操作された微生物標的化分子(例えば、微生物標的化微粒子または微生物標的化磁気マイクロビーズ)は、携帯することができかつどこでも、例えば救急車で移動中に、使用することができる、創傷被覆材スプレーに処方され得る。微生物標的化磁気マイクロビーズを含む創傷被覆材スプレーの場合、微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)と結合した微生物標的化磁気マイクロビーズは、スプレーの再適用の前に、磁場勾配により創傷から除去することができる。
【0330】
創傷郭清液またはスプレー:
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、(場合により病巣領域を研磨する微粒子が懸濁されている)創傷郭清液の一部分として処方され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、創傷郭清スプレーの一部分として処方され得る。本明細書で使用される場合、「創傷郭清」という用語は、一般に、対象の死滅した、損傷したおよび/または感染した組織を完全にまたは部分的に除去し、残りの健常なおよび/または非感染の組織の治癒能力を改善することを表す。例にすぎないが、複数の操作された微生物標的化分子(例えば、微生物標的化微粒子または磁気マイクロビーズ)が、例えば整形外科手術において使用するための、創傷郭清液またはスプレーに懸濁され得る。操作された微生物標的化分子を含む創傷郭清液またはスプレーは、病巣、膿瘍または創傷に適用され得、そこで操作された微生物標的化微粒子または磁気マイクロビーズは病巣、膿瘍または創傷から微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)および/または微生物物質を捕捉し得る。創傷郭清液またはスプレーは、その後、真空除去または吸い取りにより適用部位から除去され得る。いくつかの態様において、操作された微生物標的化磁気マイクロビーズを含む創傷郭清液またはスプレーはまた、適用された微生物標的化磁気マイクロビーズを適用部位から引き寄せるまたは誘引することができる磁場勾配に適用部位を曝露することによって適用部位から除去され得る。
【0331】
医療装置のコーティング:
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、医療装置、例えば、流体送達装置、例えば体外装置における中空糸、チューブもしくはスパイラルミキサー、または移植可能な装置、例えば、留置カテーテル、チップまたはスキャフォールド、の表面にコーティングされ得る。例にすぎないが、複数の操作された微生物標的化分子は、流体(例えば、血液)が操作された微生物標的化分子でコーティングされた流体送達装置を通じて流れ、その流体(例えば、血液)中に存在する任意の微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)および/または微生物物質がその中から抽出され得、それによって微生物感染の機会が減少するように、流体送達装置の表面にコーティングまたはコンジュゲートされ得る。別の態様において、医療装置上にコーティングされた複数の操作された微生物標的化分子は、検出可能な標識、例えば、任意の微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)が医療装置の表面に結合したときに検出可能なシグナルを提供し、その医療装置が汚染および/または感染したこと、したがって使用または移植に適さないことを示すことができる、本明細書に記載される「スマート標識」を含み得る。
【0332】
本明細書には、少なくとも1つの本明細書に記載される組成物を標的領域と接触させることを含む、標的領域から微生物および/または微生物物質を除去する方法も提供される。感染領域からの微生物および/または微生物物質の除去は、微生物感染または微生物汚染を処置および/または予防することができるので、本明細書に提供されるものには、標的領域における微生物感染または微生物汚染を処置および/または予防する方法も含まれる。例示的な方法は、組成物を標的領域と接触させることを含む。標的領域は、任意の場所、例えば、環境表面または対象の体内(例えば、体液および/または組織)であり得る。いくつかの態様において、この方法は、本明細書に記載される組成物の任意の態様と対象の組織を接触させることを含む。いくつかの態様において、組織は、開放創、病巣または膿瘍を有し得る。
【0333】
1つの態様において、組成物は、本明細書に記載される創傷被覆材として使用するために処方され得る。
【0334】
操作された微生物標的化分子は、微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)を組織からの微生物の容易な除去のために局在化させることができるので、いくつかの態様において、この方法はさらに、組織と接触した状態にある以前に適用した組成物を、一定期間の後に、新しい組成物と交換することを含み得る。例えば、微生物感染の状態および/または個々の組成物に依存して、以前に適用した組成物は、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、8時間毎、10時間毎、12時間毎、16時間毎、24時間毎またはそれより長い間隔で交換され得る。
【0335】
いくつかの態様において、この方法はさらに、組織に追加処置を施すことを含み得る。例示的な追加処置は、陰圧処置、減圧補助創傷郭清(vacuum-assisted debridement)、抗菌剤の投与またはそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0336】
非限定的に、本明細書に記載される任意の局面の組成物および/または方法は、インビトロ、インサイチューまたはインビボで微生物感染または汚染を処置および/または予防するために使用され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される任意の局面の組成物および/または方法は、流体中、または組織表面、固体基質表面、例えば医療装置表面、環境表面もしくは食物を含むがこれらに限定されない任意の表面上の微生物感染または汚染を処置および/または予防するために使用され得る。
【0337】
加えて、組成物が本明細書に記載される検出可能な標識または画像化剤にコンジュゲートされた少なくとも1つの操作された微生物標的化分子を含むいくつかの態様においては、インサイチューで、例えば、対象においてまたは環境表面上で、感染を画像化するために使用され得る。
【0338】
黄色ブドウ球菌感染は、黄色ブドウ球菌がその細胞表面上にプロテインAを有しているため、ときどき処置するのが困難であり得る。プロテインAは、各々がIgGのFc領域に結合することができる4つまたは5つのいずれかのドメインを有する細胞壁係留タンパク質である。IgGのFc領域との複合体におけるプロテインAのIgG結合ドメインのX線構造が報告されており、その相互作用に関与するヘリックスIの残基が部位特異的変異誘発によって同定および評価されている。プロテインAとIgGとの間の相互作用により、その細胞表面が、好中球のFc受容体によって認識されるには不正確な配向となったIgG分子で覆われ得る(図22)。このことは、プロテインAの抗貪食作用および黄色ブドウ球菌感染の発病機序におけるその役割を示し得る。黄色ブドウ球菌のプロテインA欠損変異体は、インビトロでより効果的に好中球により貪食されること、およびいくつかの動物感染モデルにおいて減少した毒性を示すことが報告されている(例えば、Fraser T., Nature Reviews Microbiology 2005: 3(12): 948-58を参照のこと)。本明細書に提供されるいくつかの局面にしたがい、本明細書に記載される組成物および/または方法は、黄色ブドウ球菌微生物感染を処置または予防するために使用され得る。
【0339】
薬学的組成物
操作された微生物標的化分子のいくつかの態様は、治療目的で使用され得る。それを必要とする対象への投与のために、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子は、薬学的に許容される組成物として提供され得る。したがって、さらに別の態様において、本明細書には、少なくとも1つの本明細書に記載される操作された微生物標的化分子および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0340】
選択される投与経路に依存して、組成物または調製物は、任意の形態、例えば、錠剤、ロゼンジ、懸濁物、自由流動粉末、エアゾールおよびカプセルであり得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険比が保たれる、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形を表す。
【0341】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載される活性剤の投与のための、薬学的に許容される材料、組成物また媒体を表す。薬学的に許容される担体は、活性成分の活性に対する適合性がありかつ対象にとって生理学的に許容される、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例は:(i)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(ii)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(iii)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロースおよび酢酸セルロース;(iv)トラガカント末;(v)麦芽;(vi)ゼラチン;(vii)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク;(viii)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤用ワックス;(ix)油、例えば、ピーナツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(x)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(xi)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG);(xii)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(xiii)寒天;(xiv)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(xv)アルギン酸;(xvi)発熱物質非含有水;(xvii)等張食塩水;(xviii)リンガー溶液;(xix)エチルアルコール;(xx)pH緩衝溶液;(xxi)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(xxii)充填剤、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸(xxiii)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDL;(xxiv)C2~C12アルコール、例えば、エタノール;ならびに(xxv)薬学的処方物において使用されるその他の非毒性、適合性の物質、を含む。湿潤剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤および抗酸化物質もまた、処方物中に存在し得る。本明細書に記載される組成物または調製物を経口投与する場合、薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤を含むがこれらに限定されない。適当な不活性希釈剤は、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、ならびにラクトースを含み、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が適当な崩壊剤である。結合剤は、デンプンおよびゼラチンを含み得、滑沢剤は、存在する場合、通常、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであろう。望ましい場合、錠剤は、胃腸管における吸収を遅らせるために、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の材料でコーティングされ得る。
【0342】
本明細書に記載される調製物における薬学的に許容される担体は、投与経路および処方に依存して異なり得る。本明細書に記載される組成物および調製物は、当業者に公知の任意の投与様式を通じて送達され得る。例えば、本明細書に記載される組成物および調製物は、全身様式で、経口ならびに静脈内、筋内、腹腔内、皮内および皮下を含む非経口であるがこれらに限定されない投与経路を通じて、送達され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物および調製物は、注射に適した形態である。他の態様において、本明細書に記載される組成物および調製物は、経口投与用に処方される。
【0343】
非経口投与される場合、本明細書に記載される組成物および調製物は、通常、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁物、乳濁物)として処方され得る。注射に適した組成物および調製物は、滅菌性の水溶液または分散物を含む。担体は、例えば、水、細胞培養培地、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。いくつかの態様において、薬学的担体は、緩衝溶液(例えば、PBS)であり得る。
【0344】
経口組成物は、錠剤、カプセル、乳濁物および水性懸濁物、分散物および溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容される剤形で調製され得る。錠剤で一般に使用される担体は、ラクトースおよびトウモロコシデンプンを含む。滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもまた、典型的に、錠剤に添加される。カプセル形態で経口投与する場合、有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンを含む。水性懸濁物または乳濁物が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤または懸濁剤と共に油相に懸濁または溶解され得る。望ましい場合、特定の甘味剤、香味剤または着色剤が添加され得る。経口投与用の液体調製物はまた、使用前に適当な溶媒によって再構成するための乾燥粉末の形態で調製され得る。
【0345】
組成物はまた、所望の投与経路および調製物に依存して、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化または増粘性添加物、保存剤、着色料等を含み得る。標準書、例えば、参照により本明細書に組み入れられる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」、第17版、1985年は、過度の実験なしに適当な調製物を調製するために参考にされ得る。しかし、本明細書に記載される組成物に関しては、使用されるあらゆる媒体、希釈剤または添加物が、本明細書に記載される活性剤と生物適合するものでなければならない。当業者は、組成物の成分を、活性剤に対して生物適合するように選択すべきことを理解しているであろう。これにより当業者は化学および薬学の原理に関する問題に直面しないであろうし、または、問題は標準書を参照することによってもしくは(過度の実験を伴わない)簡単な実験によって容易に回避することができる。
【0346】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物および調製物は、乳濁物またはゲルとして処方され得る。そのようなゲル組成物および調製物は、対象の疾患組織領域に限局的に移植され得る。
【0347】
インビボ投与する際、本明細書に記載される組成物または調製物は、送達装置、例えば注射器によって投与され得る。したがって、本明細書に記載される追加の局面は、送出口を有する少なくとも1つのチャンバーを含み、少なくとも1つのチャンバーが既定量の本明細書に記載される任意の組成物を含み、送出口がチャンバー内に収容された組成物の出口を提供する、送達装置を提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載される送達装置はさらに、送出口を通じた組成物の放出を制御するアクチュエーターを含み得る。そのような送達装置は、本明細書に記載される任意の組成物の対象への投与を容易にする任意の装置、例えば、注射器、乾燥粉末注入器、鼻用スプレー、ネブライザーまたはインプラント、例えば、マイクロチップ、例えば、本明細書に記載される任意の組成物の持続放出または制御放出のためのもの、であり得る。
【0348】
本明細書に記載される生成物のいくつかの態様においては、本明細書に記載される微生物標的化微粒子それ自体が、その分解を、したがって活性剤の放出を制御するために改変され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子、微生物標的化微粒子および/または微生物標的化細胞は、当業者に利用可能かつ公知の他のタイプの送達システムと組み合わされ得る。それらは、例えば、ポリマーベースのシステム、例えば、ポリ乳酸および/もしくはポリグリコール酸、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、コポリオキサレート(copolyoxalates)、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ならびに/またはこれらの組み合わせを含む。薬物を含む上記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。他の例は、ステロール、例えば、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中性脂肪(neuka1 fats)、例えばモノ、ジおよびトリグリセリドを含む脂質ベースである、非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;リポソームベースのシステム;リン脂質ベースのシステム;サイラスティック(silastic)システム;ペプチドベースのシステム;または部分融合インプラントを含む。具体的な例は、(例えば、米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号、同第5,736,152号、同第4,667,014号、同第4,748,034号および同第-29 5,239,660号に記載されるような)組成物がマトリックス中に存在する形態で含まれる浸食システムまたは(例えば、米国特許第3,832,253号、同第3,854,480号、同第5,133,974号および同第5,407,686号に記載されるような)活性成分が放出速度を制御する拡散システムを含むがこれらに限定されない。処方物は、例えば、マイクロ球体、ヒドロゲル、ポリマーリザバー、コレステロールマトリックスまたはポリマーシステムであり得る。いくつかの態様において、このシステムは、例えば、組成物を含む処方物の拡散または浸食/分解速度の制御を通じて、組成物の持続または制御放出を行うことができる。加えて、ポンプベースのハードウェア送達システムが、本明細書に記載される組成物または調製物の1つまたは複数の態様を送達するために使用され得る。長時間持続放出処方物またはインプラントの使用は、いくつかの感染の処置において特に適切であり得る。長時間放出は、本明細書で使用される場合、処方物またはインプラントが治療レベルの本明細書に記載される組成物または調製物を少なくとも30日間または少なくとも60日間送達するよう製造および編成されていることを意味する。いくつかの態様において、長時間放出は、治療レベルの活性剤を数ヶ月にわたって送達するよう構成された処方物またはインプラントを表す。
【0349】
微生物結合基質(例えば、微生物結合マイクロビーズ)の再生
いくつかの用途において、当業者は、操作された微生物標的化分子によって捕捉されたまたは操作された微生物標的化分子に結合した病原体を脱離させるまたは解放することを望む場合がある。本明細書で議論されているように、カルシウムイオンは、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子と微生物表面との結合相互作用に関与する。当業者は、支持体に結合された微生物標的化分子から病原体を脱離させることは、支持体に結合された微生物標的化分子を再生することでもあることを理解するであろう。
【0350】
したがって、本明細書には、相互作用に利用可能なCa2+イオンの量を減少させることによって、例えば複合体における、2つの成分間のCa2+に支援される相互作用を阻害する方法が開示される。これは、その複合体を、カルシウムイオンをキレート化するキレート剤を含む緩衝液または溶液と接触させるまたはインキュベートすることによって達成され得る。例示的なキレート剤は、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA);エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N'N'-四酢酸;およびエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N'N'-四酢酸を含むがこれらに限定されない。
【0351】
いくつかの利用では、キレート剤が問題となり得る。例えば、キレート剤、例えば、EDTAおよびEGTAは、生物学的試料にとって苛酷または危険であり得る。したがって、本発明者らはまた、複合体形成を支援するのに利用可能なCa2+イオンの量を減少させる代替法を発見した。1つの態様において、複合体は、低pH緩衝液と接触またはインキュベートされ得る。理論に拘束されることを望まないが、低pH緩衝液は、カルシウムへの結合を担う操作された微生物標的化分子上の負に荷電したカルボキシル基(グルタミン酸側鎖)をプロトン化する。これらの側鎖のプロトン化により、それらの負電荷を除去することができ、正に荷電したカルシウムイオンに結合するそれらの能力を除去することができる。いくつかの態様において、低pH緩衝液は、約pH6.75、約pH6.5、約pH6.25、約pH6、約pH5.75、約pH5.5、約pH5.25、約pH5、約pH4.5、約pH4、約pH3.5、約pH3、約pH2.5またはそれ以下のものである。1つの態様において、緩衝液は、pHが約2.8のものである。いくつかの態様において、低pH緩衝液はさらに、キレート剤を含み得る。
【0352】
低pH緩衝液に代えてまたはそれに加えて、カルシウムを溶解しない緩衝液も使用され得る。例えば、カルシウムは、その緩衝液の1つまたは複数の成分と相互作用し得、そして緩衝溶液から沈殿し得る。したがって、複合体をそのような緩衝液と接触またはインキュベートすることにより、カルシウムイオンを沈殿させ、それらを標的分子・微生物界面の必要な相互作用に利用できないようにすることができる。一般に、カルシウムを溶解しない緩衝液はCa2+イオンと塩を形成する陰イオンを含む。そのようにして形成される塩は、緩衝液の溶媒中での溶解性が低い。Ca2+と不溶性の塩を生成する例示的な陰イオンは、リン酸イオン、シュウ酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、フッ化物イオン、グルコン酸、オキシド-トリオキソ-マンガン、ステアリン酸等を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、緩衝液はさらに、キレート剤を含み得る。
【0353】
いくつかの態様において、緩衝液は、pH2.8の0.2Mグリシン緩衝液である。いくつかの態様において、緩衝液は、pH6.0の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液である。
【0354】
多くのカルシウム塩は、高温で不溶性が増す。したがって、病原体を脱離させる間、緩衝液の温度は、上昇または低下され得る。いくつかの態様において、緩衝液は、病原体を脱離させる間、加熱される。いくつかの他の態様において、緩衝液は、病原体を脱離させる間、冷却される。緩衝液の温度は、室温に対して少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃またはそれ以上、上昇または低下され得る。
【0355】
2つの成分間のCa2+により支援される相互作用を阻害する本明細書に記載される方法はまた、操作された微生物標的化分子から病原体を脱離させるために使用され得る。例えば、病原体・標的化分子の複合体は、低pH緩衝液またはカルシウムを溶解しない緩衝液と接触またはインキュベートされ得る。
【0356】
1つの態様において、結合した病原体は、pH2.8の0.2Mグリシン緩衝液を用いて標的化分子から脱離され得る。別の態様において、結合した病原体は、pH6.0の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液を用いて標的化分子から脱離され得る。
【0357】
病原体が結合した標的化分子が支持体表面、例えば、微粒子または磁気微粒子に取り付けられている場合、病原体は、支持体を低pH緩衝液またはカルシウムを溶解しない緩衝液とインキュベートするまたは接触させることによって脱離され得る。したがって、本明細書には、支持体に結合された微生物標的化分子から微生物を脱離させる方法も提供される。この方法は、支持体に結合した病原体を、低pH緩衝液またはカルシウムを溶解しない緩衝液と接触、同緩衝液で洗浄または同緩衝液とインキュベートすることを含む。既定の時間(例えば、5分間、10分間、15分間、30分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、1時間、1.25時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間またはそれ以上)が経過した後、緩衝液は除去され得、支持体は、場合により、1または複数回洗浄され得る。理論に拘束されることを望まないが、これにより、試料中の病原体と結合させるための支持体に結合された標的化分子が再生される。換言すると、微生物を脱離させることによって、支持体に結合された標的化分子を再利用できるようになる。脱離された病原体は、分析、検出または任意のその他の用途で使用され得る。
【0358】
キット
試料中の微生物および/または微生物物質の捕捉、検出および/またはその存在もしくは非存在の決定のためのキットもまた、本明細書で提供される。いくつかの態様において、キットは:(a)本明細書に記載される操作された微生物標的化分子の集団を含む1つまたは複数の容器;および(b)少なくとも1つの試薬、を含み得る。これらの態様において、使用者は、提供される操作された微生物標的化分子を、使用者の望む基質に、例えば、当技術分野で知られているコンジュゲーション化学および/または本明細書に記載される方法のいずれかを用いてコンジュゲートすることによって、使用者独自の微生物結合基質を作製することができる。そのような態様において、試薬は、操作された微生物標的化分子を基質にコンジュゲートするためのカップリング剤を含み得るがこれに限定されない。いくつかの態様において、キットはさらに、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子をコンジュゲートさせる1つまたは複数の基質(例えば、マイクロビーズ、例えば、磁気マイクロビーズ)を含み得る。そのような態様において、使用者は、提供される基質の表面化学を、基質に操作された微生物標的化分子をコンジュゲートする前にさらに修飾することができる。
【0359】
他の態様において、キットは、そのまま使用できる微生物標的化基質を提供することができる。したがって、これらの態様において、キットは:(a)1つまたは複数の本明細書に記載される微生物標的化基質;および(b)少なくとも1つの試薬、を含み得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質は、1つまたは複数の微生物結合ディップスティック、例えば、本明細書に記載されるようなもの、を含み得る。他の態様において、微生物標的化基質は、微生物標的化マイクロビーズ(ポリマーマイクロビーズおよび磁気マイクロビーズを含むがこれらに限定されない)の集団を含み得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質は、微生物標的化磁気マイクロビーズの集団を含み得る。微生物標的化マイクロビーズまたは微生物標的化磁気マイクロビーズは、望ましい場合、1つまたは複数の個別の容器で提供され得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の容器に収納された微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズの集団は、凍結乾燥され得る。
【0360】
本明細書に記載されるキットの任意の局面のいくつかの態様において、マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの集団は、それぞれ、マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの少なくとも1つの個別のサブセットを含み得る。例えば、マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの個別のサブセットの各々は、別々の容器で提供され得る。いくつかの態様において、マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの個別のサブセットは、サイズを有し得る。いくつかの態様において、微生物標的化マイクロビーズの別個のサブセットは、それらの表面上に、その集団の残りのものとは異なる密度の操作された微生物標的化分子を含み得る。これらの態様において、異なるサイズおよび/または異なるコーティング密度の操作された微生物結合性分子を有する微生物標的化微生物の2つまたはそれ以上のサブセットは、例えば本明細書に記載される方法を用いて、異なるクラスおよび/またはサイズの微生物を検出および識別するために使用され得る。いくつかの態様において、微生物標的化基質、例えば微生物標的化マイクロビーズ、の個別のサブセットは、他のものとは異なる糖質認識ドメインを含み得る。
【0361】
本明細書に記載されるキットの任意の局面のいくつかの態様において、基質(例えば、マイクロビーズ)または微生物標的化基質(例えば、微生物標的化マイクロビーズ)はさらに、検出可能な標識を含み得る。例にすぎないが、検出法の選択に依存して、マイクロビーズの個別のサブセットは各々、固有の検出標識または同一の検出標識を含み得る。例えば、微生物標的化マイクロビーズの個別のサブセットの各々が異なるサンプリングウェルで使用される場合、同一の検出標識が微生物標的化マイクロビーズで使用され得る。しかし、同一ウェルにおいて複数の異なる微生物標的化マイクロビーズを検出することが望まれる場合、微生物標的化マイクロビーズの個別のサブセットの各々が個別の検出標識を含むことが好ましい。
【0362】
本明細書で提供される任意のキットにおいて使用するのに適した検出可能な標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。任意の当技術分野で知られている検出可能な標識または本明細書に記載されるものが、本明細書に記載されるキットに含まれ得る。
【0363】
そのような標識を検出する手段は当業者に周知であり、例示的な検出法は本明細書に記載されている。例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光マーカーは、発せられた光を検出する光検出器を用いて検出することができる。酵素標識は、典型的に、その酵素に酵素基質を提供し、酵素基質に対するその酵素の作用によって生じた反応生成物を検出することによって検出され、そして比色標識は、有色の標識を可視化することによって検出することができる。
【0364】
本明細書に記載される任意の局面のいくつかの態様において、キットはさらに、分子にコンジュゲートされた検出可能な標識の集団を含む1つまたは複数の容器を含み得る。いくつかの態様において、容器の少なくとも1つは、検出可能な標識の個別の集団を含み得る。
【0365】
検出可能な標識にコンジュゲートされる分子は、関心対象の微生物に結合する任意の分子であり得る。例えば、いくつかの態様において、検出可能な標識にコンジュゲートされる分子は、微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)において使用されるのと同一の糖質認識ドメインを含み得る。そのような態様において、分子・検出可能標識コンジュゲートの少なくとも1つの集団は、例えばマンノース結合レクチンから得られる、少なくとも1つの糖質認識ドメインもしくはその断片、または、例えばSEQ ID NO.4によってコードされる、CRDドメインの少なくとも一部分もしくはその断片を含み得る。いくつかの態様において、検出可能な標識にコンジュゲートされる分子はさらに、免疫グロブリンのFc領域を含み得る。代替の態様において、検出可能な標識にコンジュゲートされる分子は、本明細書に記載される微生物標的化分子によって認識される微生物の少なくとも1つの属、種もしくはタイプ/クラス(例えば、グラム陽性対グラム陰性微生物;プロテインA発現もしくはプロテインG発現微生物対プロテインAもしくはプロテインG陰性微生物)に特異的な抗体、または本明細書に記載される微生物標的化分子において用いられる糖質認識ドメインの少なくとも1つのタイプ(例えば、C型レクチン対S型レクチン)に特異的な抗体、を含み得る。しかし、抗体は、キットに提供される微生物標的化分子によって認識されるすべての微生物または病原体に結合する共通抗体でもあり得る。非限定的に、検出可能な標識に付加される分子はまた、糖質、脂質、レクチン、アプタマー、タンパク質、ペプチド、核酸、ポリヌクレオチド、抗体またはその一部分、抗体様分子、ペプチド模倣体およびそれらの任意の組み合わせを含む、微生物の細胞表面タンパク質または受容体を標的化する任意のリガンドを含み得る。
【0366】
いくつかの態様において、容器の少なくとも1つは、前記の分子・検出可能標識コンジュゲートの個別の集団を含み得る。分子・検出可能標識コンジュゲートの個別の集団は、他と同じ検出可能な標識を有する固有の分子、または個別の検出可能な標識(例えば、固有の蛍光分子)および個別の分子を含むコンジュゲート、を含み得る。個別の検出可能な標識の各々は会合しているタンパク質を特定することができるので、個別の分子に会合された個別の検出可能な標識を含むコンジュゲートは、単一の試料において操作された微生物標的化基質(例えば、微生物標的化磁気マイクロビーズ)の少なくとも2つまたはそれ以上の個別の集団を検出することができる;例えば、操作された微生物標的化磁気マイクロビーズの個別の集団の各々は、個別の属または種またはタイプ/サイズの微生物に結合し得る。代替の態様において、各容器の分子・検出可能標識コンジュゲートは、同一の検出可能な標識を含み得る。例えば、検出可能な標識は、酵素基質の存在下で色変化を生じる酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)を含み得る。そのような態様において、キットはさらに、酵素の存在下で色を変化させる酵素基質を含む1つまたは複数の容器を含み得る。
【0367】
1つの態様において、キットに提供される微生物標的化基質は、1つまたは複数の操作された微生物標的化分子を含むディップスティックまたは試験ストリップまたは膜、例えば、本明細書に記載される微生物結合ディップスティックまたは膜を含み得る。この態様において、キットは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、25、50、75、100、150、200またはそれ以上の本明細書に記載される微生物結合ディップスティックまたは試験ストリップを含み得る。微生物結合ディップスティックまたは試験ストリップを含むこれらのキットは、あらゆる場所で、例えば、家で、診療所または病院で、救急車で、野外環境で、食物処理プラントでならびに微生物の捕捉および/または検出を必要とするあらゆる場所で、微生物の診断具またはプローブとして使用され得る。
【0368】
いくつかの態様において、本明細書に記載される微生物標的化基質または生成物の各々、例えば、微生物結合ディップスティックまたは膜の各々は、それらの滅菌性を維持するために個別に包装され得る。いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の生成物(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、25、50またはそれ以上の生成物、例えば、微生物結合ディップスティックまたは膜)が、1つの単位にされて包装され得る。そのような態様において、使用者は、開封後に、任意の未使用の生成物を、例えば、UV照射、高温、ガンマ線照射、エチレンオキシド滅菌または微生物検出に関する操作された微生物標的化分子の活性に有意に影響しない任意のその他の公知の方法を用いて、滅菌することができる。
【0369】
他の態様において、キットに提供される微生物標的化基質は、微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズの集団を含み得る。いくつかの態様において、微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズは、凍結乾燥され得る。
【0370】
キットに提供される微生物・検出可能標識コンジュゲートの構成/組み合わせに依存して、微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズの異なる集団が、単一の反応において被験試料と混合されひとつにされ得、または、異なる集団は各々、同じ被験試料の異なるアリコートに別々に適用され得る。被験試料を微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズと接触させた後、微生物標的化分子によって認識される任意の微生物または病原体は、微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズに結合するであろう。
【0371】
いくつかの態様において、キットはさらに、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20の血液回収容器または同等の試料容器もしくはチャンバーを含む、少なくとも1つの血液回収容器または任意の同等の試料容器もしくはチャンバーを含み得る。いくつかの態様において、微生物標的化マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズの集団は、少なくとも1つの血液回収容器内に事前添加され得る。いくつかの態様において、血液回収容器はさらに、本明細書に記載される抗凝固剤を含み得る。いくつかの態様において、血液試料は、微生物検出アッセイ、例えば、実施例10および図14に記載されるような微生物検出アッセイを行うために、微生物標的化および/または微生物結合マイクロビーズまたは磁気マイクロビーズの集団を含むそのような血液回収容器に直接添加され得る。実施例10および図14には、微生物の捕捉のための微生物標的化磁気マイクロビーズの使用が示されているが、当業者は、本明細書に記載される(磁気特性を有さない)微生物標的化マイクロビーズのいくつかの態様もまたこのアッセイに適用可能であることを直ちに理解するであろう。例えば、被験試料(例えば、血液試料)との接触後に微生物標的化磁気マイクロビーズを回収するために磁石を使用する代わりに、(磁気特性を有さない)微生物標的化マイクロビーズは、例えば、濾過、遠心分離または当技術分野で公知に任意のその他の方法によっても回収され得る。
【0372】
キットが微生物標的化磁気マイクロビーズを含むいくつかの態様において、キットはさらに、被験試料からの微生物標的化磁気マイクロビーズの単離のためにアッセイにおいて使用するよう適合された磁石を含み得る。例えば、アッセイが採血管において行われる場合、磁石は採血管における使用に適合され得る、例えば、磁石は、被験試料またはアッセイ緩衝液から微生物標的化磁気マイクロビーズを固定化または単離するために採血管を取り囲む磁石環となるよう設計され得る。
【0373】
本明細書に提供されるキットの任意の局面において、キットはさらに、例えばキットを用いて行ったアッセイから得られたシグナルを決定および表示するために、携帯型の読み取り機または装置を含み得る。例えば、読み取り機または装置は、本明細書に記載されるキットを用いて行った病原体検出アッセイから得られた比色シグナルおよび/または蛍光シグナルを検出し得る。
【0374】
本明細書に記載されるキットの任意の局面において、キットはさらに、被験試料から決定された読み取り値との比較のための参照基準を含み得る。例示的な参照基準は、微生物感染の様々な程度または段階に対応する異なる色を示すストリップまたはチャートであり得る。
【0375】
キットに提供される操作された微生物標的化分子および/または生成物の様々な態様に依存して、本明細書に記載されるキットの任意の局面のいくつかの態様はさらに、追加の試薬を含み得る。例えば、基質上に存在する操作された微生物標的化分子が標識されていないいくつかの態様において、キットはさらに、各々が微生物に特異的な標的化剤、例えば、非限定的に、操作された微生物標的化分子またはその断片の1つまたは複数の態様、少なくとも1つの微生物に特異的な抗体(例えば、グラム陽性微生物に特異的な抗体、例えば抗LTA抗体、グラム陰性微生物に特異的な抗体、例えば抗LPS抗体、または真菌に特異的な抗体、およびそれらの任意の組み合わせ)、にコンジュゲートされている、前記の検出可能な標識の集団を含む1つまたは複数の容器を含み得る。検出可能な標識にコンジュゲートされた微生物に特異的な追加の標的化剤の使用は、微生物または病原体の検出を容易にすることができるだけでなく、微生物または病原体の検出の特異性も増大させることができる。
【0376】
本明細書に提供されるキットの任意の局面において、検出標識が酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび比色検出において一般に使用される任意のその他のもの)を含む場合、キットはさらに、その酵素の存在下で色変化を生じる酵素基質を含む1つまたは複数の容器を含み得る。当業者は、比色検出において使用される任意の当技術分野で知られている酵素に適した酵素基質を容易に知ることができる。例にすぎないが、アルカリホスファターゼの例示的な基質は、BCIP/NBTまたはPNPP(p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩)を含み得;セイヨウワサビペルオキシダーゼの例示的な基質はTMBを含み得る。
【0377】
本明細書に提供されるキットの任意の局面において、少なくとも1つの試薬は、洗浄緩衝液、希釈緩衝液、停止緩衝液、例えば発色を停止させるためのもの、本明細書に記載されるキレート剤を含む緩衝溶液またはそれらの任意の組み合わせであり得る。1つの態様において、キットに提供される試薬の少なくとも1つは、キレート剤を含む少なくとも1つの緩衝化溶液を含み得る。キレート剤は、被験試料またはアッセイ緩衝液中に存在する任意のイオン(例えば、2価イオン)をキレート化するために、例えば本明細書に記載される微生物結合性分子のいくつかの態様に対する特定の微生物のカルシウム依存的な結合を阻害し、他のものは阻害しないようそれをキレート化するために、使用され得る。したがって、そのようなキットは、例えば本明細書に記載される方法のいくつかの態様を用いて、被験試料中の1つの微生物(例えば、黄色ブドウ球菌)を別のもの(例えば、大腸菌)から識別するために使用され得る。
【0378】
本明細書に提供されるキットの任意の局面において、キットはさらに、例えば反応および検出を行うために、少なくとも1つのマイクロタイタープレートを含み得る。
【0379】
上記の要素に加えて、本明細書に記載されるキットの任意の態様は、情報資料を含み得る。情報資料は、本明細書に記載される方法および/または本明細書に記載される方法における集合体の使用に関する解説、指示、広告またはその他の資料であり得る。例えば、情報資料は、本明細書に提供されるキットを用いて病原体または微生物を捕捉および/または検出するアッセイを行う方法を解説するものであり得る。キットはまた、例えば被験試料を試験容器に移すために使用することができる、空の容器および/または送達装置を含み得る。
【0380】
キットの情報資料は、その形態に関して限定されない。多くの場合、情報資料、例えば、指示書は、印刷物、例えば、印刷された文書、図面および/または写真、例えば、ラベルまたは印刷シートとして提供される。しかし、情報資料はまた、他の形態、例えば、点字、コンピューター読み取り可能な資料、映像記録または音声記録で提供され得る。別の態様において、キットの情報資料は、キットの使用者がその処方および/または本明細書に記載される方法におけるその使用に関する十分な情報を入手することができるリンクまたは連絡先情報、例えば、現実の住所、電子メールのアドレス、ハイパーリンク、ウェブサイトまたは電話番号である。当然、情報資料はまた、任意の組み合わせ形態で提供され得る。
【0381】
いくつかの態様において、キットは、各要素および情報資料ごとに別々の容器、仕切りまたは区画を含み得る。例えば、異なる要素の各々は、ボトル、バイアルまたは注射器に収納され得、そして情報資料は、プラスチックスリーブまたは小包に収納され得る。他の態様において、キットの別々の要素は、単一の、仕切りされていない容器に収納され得る。例えば、磁気マイクロビーズ群は、ラベルの形態で情報資料が添付されたボトル、バイアルまたは注射器に収納される。
【0382】
概ね、本明細書に記載されるキットは、被験試料中に存在する微生物を分離、除去および/または検出するために使用され得る。いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載される方法および/またはアッセイを用いることによって、異なる微生物種、クラスおよび/またはサイズの間で識別を行うために使用され得る。例にすぎないが、キットのいくつかの態様は、被験試料中の任意のプロテインA発現微生物または任意のプロテインG発現微生物の存在または非存在を検出するために使用され得る。したがって、本明細書に記載されるキットのいくつかの態様は、被験試料中の、表皮ブドウ球菌を除く少なくとも1つのブドウ球菌種の存在または非存在を検出または決定するために使用され得る。1つの態様において、本明細書に記載されるアッセイ、方法およびキットは、被験試料中の黄色ブドウ球菌の存在または非存在を検出または決定するために使用され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイ、方法およびキットは、被験試料中の少なくとも1つの連鎖球菌種の存在または非存在を検出または決定するために使用され得る。
【0383】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるキットは、微生物物質(微生物によって分泌される内毒素を含むがこれに限定されない)の存在または非存在に関して医薬品(例えば、薬物、治療剤もしくは画像化剤)および/または医療装置(移植可能な装置を含むがこれに限定されない)をスクリーニングするために使用され得る。
【0384】
被験試料
本明細書に記載される様々な態様にしたがい、微生物および/または微生物物質を含んでいることが疑われる任意の流体または試料(処理済みのものまたは未処理のもの)を含む、被験試料または試料が、本明細書に記載されるアッセイまたは方法、キットおよびシステムに供され得る。被験試料または流体は、液体、超臨界流体、溶液、懸濁物、気体、ゲル、スラリーおよびそれらの組み合わせであり得る。被験試料または流体は、水性または非水性であり得る。
【0385】
いくつかの態様において、被験試料は、水性流体であり得る。本明細書で使用される場合、「水性流体」という用語は、微生物および/または微生物物質を含んでいることが疑われる任意の流動性の含水物質を表す。
【0386】
いくつかの態様において、被験試料は、対象から得られる生物学的流体を含み得る。対象から得られる例示的な生物学的流体は、血液(全血、血漿、臍帯血および血清を含む)、泌乳生産物(例えば、母乳)、羊水、痰、唾液、尿、精液、脳脊髄液、気管支吸引物、発汗物、粘液、液状糞便、滑液、リンパ液、涙液、気管吸引物およびそれらの一画分を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、生物学的流体は、対象由来の組織試料(例えば、生検)のホモジネートを含み得る。
【0387】
いくつかの態様において、対象、例えば、哺乳動物対象、例えばヒト対象または家庭用ペット、例えばネコもしくはイヌ、から得られる生物学的流体試料は、対象由来の細胞を含み得る。他の態様において、生物学的流体試料は、血漿/血清バイオマーカーの発現レベルを測定するために使用することができる非細胞性の生物学的物質、例えば、血液、唾液または尿の非細胞画分を含み得る。
【0388】
生物学的流体試料は、対象から新たに回収され得、または、以前に回収された試料であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるアッセイおよび/または方法において使用される生物学的流体試料は、24時間以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内またはそれより短い時間内に対象から回収され得る。
【0389】
いくつかの態様において、生物学的流体試料または本明細書に記載される任意の流体試料は、本明細書に記載されるアッセイおよび/または方法において使用される前に、本明細書に記載される化学的および/または生物学的試薬で処置され得る。いくつかの態様において、化学的および/または生物学的試薬の少なくとも1つは、流体試料が試料容器に添加される前から試料容器中に存在し得る。例えば、血液は、予めヘパリンを含んでいる採血管、例えば、VACUTAINER(登録商標)に回収され得る。化学的および/または生物学的試薬の例は、界面活性剤および洗浄剤、塩、細胞溶解試薬、抗凝固剤、分解酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ)ならびに溶媒、例えば緩衝溶液を含み得るがこれらに限定されない。
【0390】
いくつかの態様において、被験試料は、環境源、例えば、非限定的に、水道(廃水を含む)、池、河川、貯水池、遊泳プール、土壌、食物処理および/または包装プラント、農耕地、水耕農地(水耕食物農園を含む)、薬品製造プラント、動物飼育施設およびそれらの任意の組み合わせ、から得られる流体または試料を含み得る。
【0391】
いくつかの態様において、被験試料は、生物学的培養物由来の流体(例えば、培養培地)を含み得る。生物学的培養物から得られる流体(例えば、培養培地)の例は、培養または発酵、例えば、原核生物(例えば、細菌)および真核生物(例えば、動物細胞、植物細胞、酵母、真菌)を含む、単細胞または多細胞生物の培養または発酵から得られるもの、ならびにそれらの一画分を含む。いくつかの態様において、被験試料は、血液培養物由来の流体を含み得る。いくつかの態様において、培養培地は、任意の供給源、例えば、非限定的に、調査研究所、薬品製造プラント、水耕農地(例えば、水耕食物農園)、診断試験施設、臨床状況およびそれらの任意の組み合わせ、から得ることができる。
【0392】
いくつかの態様において、被験試料は、例えば生物医学および分子生物学用途のために、研究所または臨床状況で使用される媒体または試薬溶液を含み得る。本明細書で使用される場合、「媒体、培地」という用語は、組織、生物または細胞集団の生存性を維持し増殖および成長を支援する栄養素を含む、組織、生物もしくは細胞集団を維持するための媒体、培地を表すか、または、組織、生物もしくは細胞集団を培養するための媒体、培地を表す。
【0393】
本明細書で使用される場合、「試薬」という用語は、研究室または臨床状況において生物医学および分子生物学用途で使用される任意の溶液を表す。試薬は、生理食塩水溶液、PBS溶液、緩衝溶液、例えば、リン酸緩衝液、EDTA、Tris溶液およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。試薬溶液は、他の試薬溶液を作製するために使用され得る。例えば、Tris溶液およびEDTA溶液は、分子生物学用途で使用される「TE」試薬を作製するために、特定の比で組み合わされる。
【0394】
いくつかの態様において、被験試料は、非生物学的流体であり得る。本明細書で使用される場合、「非生物学的流体」という用語は、本明細書で定義される意味で生物学的流体ではない任意の流体を表す。例示的な非生物学的流体は、水、塩水、かん水、緩衝溶液、生理食塩水溶液、糖溶液、糖質溶液、脂質溶液、核酸溶液、炭化水素(例えば、液化炭化水素)、酸、ガソリン、石油、液化試料(例えば、液化試料)およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0395】
例示的な微生物または病原体
本明細書で使用される場合、「微生物(microbesまたはmicrobe)」という用語は、概ね、細菌、真菌、原虫、古細菌、原生生物、例えば、藻類、およびそれらの組み合わせを含む、微小生物を表す。「微生物」という用語は、生きている微生物および死んでいる微生物の両方を包含する。「微生物」という用語はまた、病原性微生物または病原体、例えば、ペスト、結核および炭疽等の疾患を引き起こす細菌;マラリア、睡眠病およびトキソプラズマ症等の疾患を引き起こす原虫;白癬、カンジダ症またはヒストプラズマ症等の疾患を引き起こす真菌;ならびに敗血症等の疾患を引き起こす細菌を含む。
【0396】
微生物により誘導される疾患:
いくつかの他の態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または基質、生成物およびキットは、他のウイルス、細菌、古細菌、原虫および真菌の中でも、疾患を引き起こす以下の微生物および/または関連する微生物物質を検出またはこれらに結合させるために使用され得る:バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacterfetus)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chylamydia psittaci)、シムカニア・ネゲベンシス(Simkania negevensis)、大腸菌(例えば、O157:H7およびK88)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilius ducreyi)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、膣トリコモナス(Trichomatis vaginalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ヘリコバクター・ヘパティカス(Helicobacter hepaticus)、レジオネラ・ニューモフィラ、結核菌、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、らい菌、マイコバクテリウム・アジアティカム(Mycobacterium asiaticum)、鳥型結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・セラタム(Mycobacterium celatum)、マイコバクテリウム・ケローネ(Mycobacterium celonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・ゲナベンス(Mycobacterium genavense)、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophilum)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・マルモエンセ(Mycobacterium malmoense)、マイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・シミエ(Mycobacterium simiae)、マイコバクテリウム・ツルガイ(Mycobacterium szulgai)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、マイコバクテリウム・ゼノピ(Mycobacterium xenopi)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)、リケッチア・エシュリマンニイ(Rickettsia aeschlimannii)、リケッチア・アフリカエ(Rickettsia africae)、リケッチア・コノリイ(Rickettsia conorii)、溶血性アルカノバクテリア(Arcanobacterium haemolyticum)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)、ペスト菌(Yersinia pestis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、髄膜炎菌、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、溶連菌(Streptococcus hemolyticus)、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ニューモニエ(Staphylococcus pneumoniae)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラチフス菌(Salmonella paratyphi)、腸炎菌(Salmonella enteritidis)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ヒトライノウイルス、ヒトコロナウイルス、デングウイルス、フィロウイルス(例えば、マーブルグおよびエボラウイルス)、ハンタウイルス、リフトバレーウイルス、B型、C型およびE型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1、HIV-2)、HHV-8、ヒトパピローマウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HV-IおよびHV-II)、ヒトTリンパ球好性ウイルス(例えば、HTLV-IおよびHTLV-II)、ウシ白血病ウイルス、インフルエンザウイルス、グアナリトウイルス、ラッサウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、水ぼうそう(水痘ウイルス)、サル痘、エプスタインバーウイルス、ノーウォーク(およびノーウォーク様)ウイルス、ロタウイルス、パルボウイルスB19、ハンターンウイルス、シンノンブルウイルス、ベネズエラウマ脳炎、サビアウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、伝達性海綿状脳症の原因因子、クロイツフェルト・ヤコブ病因子、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病因子、カンジダ、クリプトコッカス、クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、微胞子虫、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ(Enterocytozoon bieneusi)、シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、エンセファリトゾーン・ヘレム(Encephalitozoon hellem)、エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)。
【0397】
いくつかの態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または基質、生成物およびキットは、本明細書に記載される方法またはアッセイを用いることによってプロテインA発現またはプロテインG発現微生物をプロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)から区別するために使用され得る。
【0398】
いくつかの態様において、プロテインA発現微生物は、ブドウ球菌種を含む。ブドウ球菌種の例は、黄色ブドウ球菌群(例えば、黄色ブドウ球菌、S.シミエ(S. simiae))、S.アウリクラーリス(S. auricularis)群(例えば、S.アウリクラーリス)、S.カルノーサス(S. carnosus)群(例えば、S.カルノーサス、S.コンディメンティ(S. condimenti)、S.マシリエンシス(S. massiliensis)、S.ピスシファーメンタンス(S. piscifermentans)、S.シミュランス(S. simulans))、表皮ブドウ球菌群(例えば、S.カピティス(S. capitis)、S.カプラエ(S. caprae)、表皮ブドウ球菌、S.サッカロリチカス(S. saccharolyticus))、S.ヘモリチカス(S. haemolyticus)群(例えば、S.デブリエセイ(S. devriesei)、S.ヘモリチカス、S.ホミニス(S. hominis))、S.ヒイカス・インターメジウス(S. hyicus-intermedius)群(例えば、S.クロモゲネス(S. chromogenes)、S.フェリス(S. felis)、S.デルフィニ(S. delphini)、S.ヒイカス、S.インターメジウス、S.ルトラエ(S. lutrae)、S.ミクロチ(S. microti)、S.ムスカエ(S. muscae)、S.プソイドインターメジウス(S. pseudintermedius)、S.ロストリ(S. rostri)、S.スクレイフェリ(S. schleiferi))、S.ルグドゥネンシス(S. lugdunensis)群(例えば、S.ルグドゥネンシス)、腐性ブドウ球菌群(例えば、S.アルレッタエ(S.arlettae)、S.コーニィ(S. cohnii)、S.エクオルム(S. equorum)、S.ガリナルム(S. gallinarum)、S.クローシィ(S. kloosii)、S.リーイ(S. leei)、S.ネパレンシス(S. nepalensis)、腐性ブドウ球菌、S.スクシヌス(S. succinus)、S.キシローサス(S. xylosus))、S.シウリ(S. sciuri)群(例えば、S.フレウレッティ(S. fleurettii)、S.レンタス(S. lentus)、S.シウリ、S.ステパノビシィ(S. stepanovicii)、S.ビツリヌス(S. vitulinus))、S.シミュランス群(例えば、S.シミュランス)およびS.ワーネリ(S. warneri)群(例えば、S.パスツーリ(S. pasteuri)、S.ワーネリ)を含むがこれらに限定されない。
【0399】
いくつかの態様において、黄色ブドウ球菌は、本明細書に記載されるアッセイおよび/または方法を用いて、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)から区別され得る。
【0400】
いくつかの態様において、黄色ブドウ球菌は、本明細書に記載されるアッセイおよび/または方法を用いて、表皮ブドウ球菌から区別され得る。
【0401】
いくつかの態様において、表皮ブドウ球菌は、本明細書に記載されるアッセイおよび/または方法を用いては、プロテインAおよびプロテインG陰性微生物(例えば、大腸菌)から区別できない。
【0402】
いくつかの態様において、プロテインG発現微生物は、連鎖球菌種を含む。連鎖球菌種の例は、肺炎球菌(例えば、肺炎連鎖球菌)およびビリダンス群(例えば、ミュータンス菌、S.ミチス(S. mitis)、S.サングイス(S.sanguinis)、S.サリバリウス(S. salivarius)、S.サリバリウス亜種サーモフィルス(S. salivarius ssp. thermophilus)、S.コンステラータス(S. constellatus))を含むアルファ溶血性種;ならびにA群(例えば、化膿連鎖球菌)、B群(例えば、S.アガラクティエ(S. agalactiae))、C群(例えば、S.エクイ(S. equi)およびS.ズーエピデミクス(S. zooepidemicus))、D群(例えば、腸球菌、ストレプトコッカス・ボビスおよびストレプトコッカス・エクイヌス(Streptococcus equinus))、F群連鎖球菌およびG群連鎖球菌を含むベータ溶血性種を含み得るがこれらに限定されない。
【0403】
いくつかの態様において、プロテインG発現微生物は、C群およびG群連鎖球菌を含む。
【0404】
当業者は、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または基質、生成物およびキットが、関心対象の微小生物の各々に対応して改変された本明細書に記載される微生物表面結合ドメインを用いて任意の微小生物を標的化するために使用できることを理解することができる。当業者は、当技術分野で公知の任意の微生物学技術を用いて関心対象の微小生物の各々の細胞表面タンパク質または糖質を決定することができる。
【0405】
バイオフィルム:
したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載される微生物標的化分子または基質、生成物およびキットは、バイオフィルムに存在する微生物および/もしくは関連する微生物物質を検出するためにまたはバイオフィルムの形成を予防もしくは阻害するよう設備の表面を処置するために使用され得る。例えば、リステリア・モノサイトゲネスは、食物処理設備で使用される様々な材料ならびにその他の食物および非食物接触表面の上にバイオフィルムを形成し得る(Blackman, J Food Prot 1996; 59: 827-31; Frank, J Food Prot 1990; 53: 550-4; Krysinski, J Food Prot 1992; 55: 246-51; Ronner, J Food Prot 1993; 56: 750-8)。バイオフィルムは、広義には、表面に付着した、そしてその微小生物によって産生された細胞外ポリマー物質のマトリックスに埋もれている微生物細胞と定義され得る。バイオフィルムは、多くの環境で発生し、しばしば多様な望ましくない作用を及ぼすことが公知である。例えば、バイオフィルムは、工業設備、例えば、熱交換器、パイプラインおよび船殻を汚損し、熱伝導の低下、エネルギーの損失、流体摩擦抵抗の上昇および腐食の加速をもたらす。歯および歯茎、尿路および腸管ならびに移植された医療装置、例えば、カテーテルおよび補綴、におけるバイオフィルムの蓄積はしばしば感染を引き起こす(Characklis W G. Biofilm processes. In: Characklis W G and Marshall K C eds. New York; John Wiley & Sons, 1990: 195-231; Costerton et al., Annu Rev Microbiol 1995; 49: 711-45)。いくつかの態様において、例えばバイオフィルムの処置のための薬物または化合物をカプセル被包する、操作された微生物標的化微粒子が、汚染された設備の表面に噴霧され得る。バイオフィルムに存在する細菌は、微生物標的化微粒子に結合し、微生物標的化微粒子は、標的化薬物送達のために細菌を処置するための薬物を放出する。
【0406】
加えて、食物処理環境において一般的に使用される材料であるステンレス鋼およびゴム等の表面に付着したL.モノサイトゲネスは、長期間生存することができる(Helke and Wong, J Food Prot 1994; 57: 963-8)。これは、部分的に、処理プラントで存続するそれらの能力を説明するであろう。処理施設におけるL.モノサイトゲネスの共通の供給源は、設備、コンベア、生成物接触表面、手工具、清掃用具、床、配水管、壁および凝縮物(condensate)を含む(Tomkin et al., Dairy, Food Environ Sanit 1999; 19: 551-62; Welbourn and Williams, Dairy, Food Environ Sanit 1999; 19: 399-401)。いくつかの態様において、操作された微生物標的化分子は、操作された微生物標的化分子とコンジュゲートしているときは検出不可能であるが、微生物酵素の存在下で操作された分子から放出された際には色変化を生じる「スマート標識」を含むよう構成され得る。したがって、微生物が操作された微生物標的化分子に結合した際、微生物は、操作された分子から検出可能な標識を放出させる酵素を放出する。色変化の観察は、特定の表面における細菌汚染の危険を示し、したがって操作された微生物標的化分子および生成物のいくつかの態様は、バイオフィルム形成の早期検出のために使用され得る。
【0407】
植物微生物:
なおさらなる態様において、本明細書に記載される操作された微生物標的化分子または基質および生成物は、植物微生物および/または関連する微生物物質を標的化するために使用され得る。植物真菌は、社会的影響の大きな大流行病を引き起こしている。植物真菌の例は、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、クリニペリス・パーニシオサ(Crinipellis perniciosa)、フロスティポッド(frosty pod)(モニリオフトラ・ロレリ(Moniliophthora roreri))、卵菌フィトフトラ・カプサシシ(Phytophthora capsici)、マイコスフェレラ・フィジエンシス(Mycosphaerella fijiensis)、フサリウム・ガノダーマ(Fusarium Ganoderma)種真菌およびフィトフトラを含むがこれらに限定されない。例示的な植物細菌は、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)を含む。例示的な植物ウイルスは、ダイズモザイクウイルス、マメサヤ斑ウイルス(bean pod mottle virus)、タバコ輪点ウイルス、オオムギ黄化萎縮ウイルス、コムギ紡錘条斑ウイルス(wheat spindle streak virus)、土壌伝染性モザイクウイルス、トウモロコシにおけるコムギ条斑ウイルス、トウモロコシ萎縮モザイクウイルス、トウモロコシ白化萎縮ウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、ジャガイモ葉巻ウイルスおよびトマトゴールデンモザイクウイルスを含むがこれらに限定されない。
【0408】
軍事およびバイオテロ用途:
さらに他の態様において、操作された微生物標的化分子およびそれを含む生成物は、バイオテロ剤(例えば、炭疽菌および天然痘)を検出またはこれに対抗するために使用され得る。
【0409】
本明細書に記載されるいくつかの態様にしたがい、操作された微生物結合性分子または微生物結合基質は、関連する微生物物質(例えば、非限定的に、細胞壁、微生物核酸および内毒素の断片)を含む、任意の微生物、例えば、本明細書に記載されるもの、に結合するよう改変され得る。
【0410】
本明細書に記載される様々な局面の態様は、以下の番号が付された項目によって示すことができる。
1.
a.少なくとも1つの微生物表面結合ドメイン;
b.該微生物表面結合ドメインを基質から離して配向させるように適合された基質結合ドメイン;および
c.該微生物表面結合ドメインと該基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカー
を含む、操作された微生物標的化分子。
2.
微生物表面結合ドメインが糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片を含む、項目1記載の操作された分子。
3.
CRDまたはその断片が糖質結合タンパク質の少なくとも一部分をさらに含む、項目1または2記載の操作された分子。
4.
前記糖質結合タンパク質の部分から、補体活性化領域および凝固活性化領域のうち少なくとも1つが除外される、項目3記載の操作された分子。
5.
CRDまたは糖質結合タンパク質がレクチン、フィコリンまたはそれらの断片に由来する、項目2~4のいずれかに記載の操作された分子。
6.
レクチンがC型レクチンまたはその断片である、項目5記載の操作された分子。
7.
C型レクチンがコレクチンまたはその断片である、項目6記載の操作された分子。
8.
コレクチンがマンノース結合レクチン(MBL)またはその断片である、項目7記載の操作された分子。
9.
CRDがSEQ ID NO.4のものまたはその断片である、項目2~8のいずれかに記載の操作された分子。
10.
CRDまたはその断片が糖質結合タンパク質のネック領域またはその断片をさらに含む、項目2~9のいずれかに記載の操作された分子。
11.
基質結合ドメインが少なくとも1つのアミンを含む、項目1~10のいずれかに記載の操作された分子。
12.
基質結合ドメインが、アミノ酸配列AKTを含む少なくとも1つのオリゴペプチドを含む、項目1~11のいずれかに記載の操作された分子。
13.
リンカーが、微生物表面と結合するように糖質認識ドメインの可撓性および配向を与えるように適合されている、項目1~12のいずれかに記載の操作された分子。
14.
リンカーが、発現および精製を容易にするように適合されている、項目1~13のいずれかに記載の操作された分子。
15.
リンカーが免疫グロブリンのFc領域の一部分を含む、項目1~14のいずれかに記載の操作された分子。
16.
免疫グロブリンがIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMからなる群より選択される、項目15記載の操作された分子。
17.
免疫グロブリンがIgG1である、項目15または16記載の操作された分子。
18.
前記Fc領域の部分が、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む、項目15~17のいずれかに記載の操作された分子。
19.
前記Fc領域の部分が、少なくとも1つのヒンジ領域、少なくとも1つのCH2領域および少なくとも1つのCH3領域を含む、項目15~18のいずれかに記載の操作された分子。
20.
前記Fc領域の部分が少なくとも1つの突然変異を含む、項目15~19のいずれかに記載の操作された分子。
21.
少なくとも1つの突然変異が、操作された分子の半減期を延長させるように選択されている、項目20記載の操作された分子。
22.
突然変異が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目20~21のいずれかに記載の操作された分子。
23.
突然変異が、補体依存性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目20~22のいずれかに記載の操作された分子。
24.
突然変異が、SEQ ID NO.9のアミノ酸残基82でアスパラギンからアスパラギン酸へと起こる、項目20~23のいずれかに記載の操作された分子。
25.
Fc領域のN末端が、基質結合ドメインと連結するように適合されている、項目15~24のいずれかに記載の操作された分子。
26.
リンカーが、糖質結合タンパク質、ネック領域、Fc領域またはそれらの任意の組み合わせの一部である、項目1~25のいずれかに記載の操作された分子。
27.
二量体である、項目1~26のいずれかに記載の操作された分子。
28.
二量体が、2つの操作された分子のFc領域を二量体化することによって形成される、項目27記載の操作された分子。
29.
検出可能な標識をさらに含む、項目1~28のいずれかに記載の操作された分子。
30.
検出可能な標識が、ビオチン、蛍光性色素または粒子、発光性または生物発光性マーカー、放射性標識、酵素、微生物酵素基質、量子ドット、イメージング剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目29記載の操作された分子。
31.
酵素が酵素基質の存在下で色変化を生じる、項目30記載の操作された分子。
32.
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼである、項目31記載の操作された分子。
33.
a.少なくとも1つの糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片;
b.該CRDを基質から離して配向させるように適合された基質結合ドメイン;および
c.該CRDと該基質結合ドメインとの間の少なくとも1つのリンカー
を含む、操作されたマンノース結合レクチン分子。
34.
CRDがSEQ ID NO.4のものである、項目33記載の操作されたレクチン。
35.
CRDまたはその断片がマンノース結合レクチン(MBL)の少なくとも一部分をさらに含む、項目33または34記載の操作されたレクチン。
36.
前記MBLの部分から、補体活性化領域および凝固活性化領域のうち少なくとも1つが除外される、項目33~35のいずれかに記載の操作されたレクチン。
37.
CRDがMBLのネック領域をさらに含む、項目33~36のいずれかに記載の操作されたレクチン。
38.
基質結合ドメインが少なくとも1つのアミンを含む、項目33~37のいずれかに記載の操作されたレクチン。
39.
基質結合ドメインが、アミノ酸配列AKTを含む少なくとも1つのオリゴペプチドを含む、項目33~38のいずれかに記載の操作されたレクチン。
40.
リンカーが、微生物表面と結合するように糖質認識ドメインの可撓性および配向を与えるように適合されている、項目33~39のいずれかに記載の操作されたレクチン。
41.
リンカーが、発現および精製を容易にするように適合されている、項目33~40のいずれかに記載の操作されたレクチン。
42.
リンカーが免疫グロブリンのFc領域の一部分を含む、項目33~41のいずれかに記載の操作されたレクチン。
43.
免疫グロブリンがIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMからなる群より選択される、項目42記載の操作されたレクチン。
44.
免疫グロブリンがIgG1である、項目42または43記載の操作されたレクチン。
45.
前記Fc領域の部分が、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む、項目42~44のいずれかに記載の操作されたレクチン。
46.
前記Fc領域の部分が、少なくとも1つのヒンジ領域、少なくとも1つのCH2領域および少なくとも1つのCH3領域を含む、項目42~45のいずれかに記載の操作されたレクチン。
47.
前記Fc領域の部分が少なくとも1つの突然変異を含む、項目42~46のいずれかに記載の操作されたレクチン。
48.
突然変異が、操作された分子の半減期を延長させるように選択されている、項目47記載の操作されたレクチン。
49.
突然変異が、SEQ ID NO.9のアミノ酸残基232でリジンからアラニンへと起こる、項目48記載の操作されたレクチン。
50.
突然変異が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目47~49のいずれかに記載の操作されたレクチン。
51.
突然変異が、補体依存性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目47~50のいずれかに記載の操作されたレクチン。
52.
突然変異が、SEQ ID NO.9のアミノ酸部位82でアスパラギンからアスパラギン酸へと起こる、項目47~51のいずれかに記載の操作されたレクチン。
53.
Fc領域のN末端が、基質結合ドメインと連結するように適合されている、項目47~52のいずれかに記載の操作されたレクチン。
54.
リンカーが、マンノース結合レクチン、ネック領域、Fc領域またはそれらの任意の組み合わせの一部である、項目47~53のいずれかに記載の操作されたレクチン。
55.
操作された分子が二量体である、項目33~54のいずれかに記載の操作されたレクチン。
56.
二量体が、2つの操作されたレクチン分子のFc領域を二量体化することによって形成される、項目55記載の操作されたレクチン。
57.
検出可能な標識をさらに含む、項目33~56のいずれかに記載の操作されたレクチン。
58.
検出可能な標識またはイメージング剤が、ビオチン、蛍光性色素または粒子、発光性または生物発光性マーカー、放射性標識、酵素、微生物酵素基質、量子ドット、イメージング剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目57記載の操作されたレクチン。
59.
酵素が酵素基質の存在下で色変化を生じる、項目58記載の操作されたレクチン。
60.
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼである、項目59記載の操作されたレクチン。
61.
a.少なくとも1つの微生物表面結合ドメイン;および
b.免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部分
を含む、操作された微生物標的化分子。
62.
前記Fc領域の部分が微生物表面結合ドメインのN末端と連結している、項目61記載の操作された分子。
63.
微生物表面結合ドメインが糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片を含む、項目61または62記載の操作された分子。
64.
CRDまたはその断片が糖質結合タンパク質の少なくとも一部分をさらに含む、項目63記載の操作された分子。
65.
前記糖質結合タンパク質の部分から、補体活性化領域および凝固活性化領域のうち少なくとも1つが除外される、項目64記載の操作された分子。
66.
CRDまたは糖質結合タンパク質がレクチン、フィコリンまたはそれらの断片に由来する、項目63~65のいずれかに記載の操作された分子。
67.
レクチンがC型レクチンまたはその断片である、項目66記載の操作された分子。
68.
C型レクチンがコレクチンまたはその断片である、項目67記載の操作された分子。
69.
コレクチンがマンノース結合レクチン(MBL)またはその断片である、項目68記載の操作された分子。
70.
CRDがSEQ ID NO.4のものまたはその断片である、項目63~69のいずれかに記載の操作された分子。
71.
CRDまたはその断片が糖質結合タンパク質のネック領域をさらに含む、項目63~70のいずれかに記載の操作された分子。
72.
前記免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部分が基質結合ドメインをさらに含む、項目61~71のいずれかに記載の操作された分子。
73.
基質結合ドメインが少なくとも1つのアミンを含む、項目72記載の操作された分子。
74.
基質結合ドメインが、アミノ酸配列AKTを含む少なくとも1つのオリゴペプチドを含む、項目61~73のいずれかに記載の操作された分子。
75.
免疫グロブリンがIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMからなる群より選択される、項目61~74のいずれかに記載の操作された分子。
76.
免疫グロブリンがIgG1である、項目61~75のいずれかに記載の操作された分子。
77.
前記Fc領域の部分が、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの領域を含む、項目61~76のいずれかに記載の操作された分子。
78.
前記Fc領域の部分が、少なくとも1つのヒンジ領域、少なくとも1つのCH2領域および少なくとも1つのCH3領域を含む、項目61~77のいずれかに記載の操作された分子。
79.
前記Fc領域の部分が少なくとも1つの突然変異を含む、項目61~78のいずれかに記載の操作された分子。
80.
少なくとも1つの突然変異が、操作された微生物結合性分子の半減期を延長させるように選択されている、項目79記載の操作された分子。
81.
突然変異が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目61~80のいずれかに記載の操作された分子。
82.
突然変異が、補体依存性細胞傷害作用をモジュレートするように選択されている、項目61~81のいずれかに記載の操作された分子。
83.
突然変異が、SEQ ID NO.9のアミノ酸残基82でアスパラギンからアスパラギン酸へと起こる、項目61~82のいずれかに記載の操作された分子。
84.
二量体である、項目61~83のいずれかに記載の操作された分子。
85.
二量体が、2つの操作された分子のFc領域を二量体化することによって形成される、項目84記載の操作された分子。
86.
検出可能な標識をさらに含む、項目61~85のいずれかに記載の操作された分子。
87.
検出可能な標識が、ビオチン、蛍光性色素または粒子、発光性または生物発光性マーカー、放射性標識、酵素、微生物酵素基質、量子ドット、イメージング剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目86記載の操作された分子。
88.
酵素が酵素基質の存在下で色変化を生じる、項目87記載の操作された分子。
89.
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼである、項目88記載の操作された分子。
90.
基質、ならびに項目1~32および61~89のいずれかに記載の少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の少なくとも1つの操作されたマンノース結合レクチン分子を含む、微生物標的化基質または生成物であって、該基質がその表面に該少なくとも1つの操作された微生物標的化分子または少なくとも1つの操作されたマンノース結合レクチン分子を含む、微生物標的化基質または生成物。
91.
操作された微生物標的化分子またはマンノース結合レクチン分子の基質結合ドメインが、基質と結合するように適合されている、項目90記載の微生物標的化基質または生成物。
92.
基質が、核酸スキャフォールド、タンパク質スキャフォールド、脂質スキャフォールド、デンドリマー、微粒子またはマイクロビーズ、ナノチューブ、マイクロタイタープレート、医療器具またはインプラント、マイクロチップ、濾過装置、膜、診断用ストリップ、ディップスティック、体外装置、スパイラルミキサーおよび中空糸型リアクターからなる群より選択される、項目90または91記載の微生物標的化基質または生成物。
93.
基質が微粒子である、項目90~92のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
94.
微粒子が磁性微粒子である、項目93記載の微生物標的化基質または生成物。
95.
微粒子が蛍光性微粒子または量子ドットである、項目93記載の微生物標的化基質または生成物。
96.
微粒子が薬物送達媒体である、項目93記載の微生物標的化基質または生成物。
97.
基質がディップスティックである、項目90~96のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
98.
基質が膜である、項目90~96のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
99.
ディップスティックまたは膜が、その表面に、参照領域として用いるように適合された少なくとも1つの領域を含む、項目97または98記載の微生物標的化基質または生成物。
100.
基質が生細胞または生物学的組織もしくは臓器である、項目90~99のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
101.
基質が官能化されている、項目90~100のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
102.
基質が、生物学的分子に対する接着性がより低くなるように処理されている、項目90~101のいずれかに記載の微生物標的化基質または生成物。
103.
生物学的分子が、血液細胞および血液成分、タンパク質、核酸、ペプチド、小分子、治療剤、細胞またはその断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目102記載の微生物標的化基質または生成物。
104.
項目1~32および61~89のいずれかに記載の少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の少なくとも1つの操作されたマンノース結合レクチン分子、または項目90~103のいずれかに記載の少なくとも1つの微生物標的化基質、ならびに薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
105.
a.項目1~32および61~89のいずれかに記載の操作された微生物標的化分子の集団、または項目33~60のいずれかに記載の操作されたマンノース結合レクチン分子の集団を含有する、1つまたは複数の容器;ならびに
b.少なくとも1つの試薬
を含む、キット。
106.
操作された微生物標的化分子または操作されたマンノース結合レクチン分子がコンジュゲートされた1つまたは複数の基質をさらに含む、項目105記載のキット。
107.
基質が、核酸スキャフォールド、タンパク質スキャフォールド、脂質スキャフォールド、デンドリマー、微粒子またはマイクロビーズ、ナノチューブ、マイクロタイタープレート、医療器具またはインプラント、マイクロチップ、濾過装置、膜、診断用ストリップ、ディップスティック、体外装置、スパイラルミキサーおよび中空糸型リアクターからなる群より選択される、項目105または106記載のキット。
108.
基質がマイクロビーズの集団を含む、項目105~107のいずれかに記載のキット。
109.
マイクロビーズが磁性マイクロビーズである、項目108記載のキット。
110.
a.項目90~104のいずれかに記載の1つまたは複数の微生物標的化基質;および
b.少なくとも1つの試薬
を含む、キット。
111.
1つまたは複数の微生物標的化基質がディップスティックを含む、項目105~108のいずれかに記載のキット。
112.
1つまたは複数の微生物標的化基質が微生物標的化マイクロビーズの集団を含む、項目105~109のいずれかに記載のキット。
113.
微生物または微生物標的化マイクロビーズの集団が、1つまたは複数の別々の容器内で提供される、項目108、109または112記載のキット。
114.
マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの集団が、少なくとも1つの別個のサブセットを含み、該別個のサブセットが、集団の残りのものとは異なる寸法を有するマイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズを含む、項目108、109および112~113のいずれかに記載のキット。
115.
微生物標的化マイクロビーズがそれぞれ、検出用標識をさらに含む、項目110~114のいずれかに記載のキット。
116.
検出可能な標識の集団をそれぞれが含有する1つまたは複数の容器をさらに含む、項目105~115のいずれかに記載のキットであって、該検出可能な標識のそれぞれが分子とコンジュゲートされている、キット。
117.
容器の少なくとも1つが、検出可能な標識の別個の集団を含有する、項目116記載のキット。
118.
分子が、項目1~32および61~89のいずれかに記載の操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の操作されたマンノース結合レクチン分子である、項目116~117のいずれかに記載のキット。
119.
分子が、少なくとも糖質認識ドメイン(CRD)またはその断片を含む、項目118記載のキット。
120.
分子の少なくとも1つの集団が、SEQ ID NO.4またはその断片を含む、項目119記載のキット。
121.
分子が、免疫グロブリンのFc領域をさらに含む、項目116~120のいずれかに記載のキット。
122.
分子が、微生物に対して特異的な抗体を含む、項目116~120のいずれかに記載のキット。
123.
検出可能な標識が、酵素基質の存在下で色変化を生じる酵素を含む、項目116~122のいずれかに記載のキット。
124.
酵素が、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはそれらの任意の組み合わせである、項目123記載のキット。
125.
酵素の存在下で色を変化させる酵素基質を含有する1つまたは複数の容器をさらに含む、項目105~124のいずれかに記載のキット。
126.
検出可能な標識が蛍光性分子を含む、項目116~125のいずれかに記載のキット。
127.
少なくとも1つの試薬が、洗浄緩衝液、希釈緩衝液、停止緩衝液、キレート剤を含む緩衝化溶液、基質に対する操作された分子のコンジュゲーションのために用いられるカップリング剤、またはそれらの任意の組み合わせである、項目105~126のいずれかに記載のキット。
128.
少なくとも1つのマイクロタイタープレートをさらに含む、項目105~127のいずれかに記載のキット。
129.
マイクロビーズまたは微生物標的化マイクロビーズの集団が凍結乾燥されている、項目108~128のいずれかに記載のキット。
130.
少なくとも1つの採血容器をさらに含む、項目105~129のいずれかに記載のキット。
131.
微生物標的化マイクロビーズの集団を少なくとも1つの採血容器内に事前添加する、項目130記載のキット。
132.
採血容器が抗凝固剤をさらに含む、項目130または131記載のキット。
133.
操作された微生物標的化マイクロビーズが微生物標的化磁性マイクロビーズである、項目112~132のいずれかに記載のキット。
134.
微生物標的化磁性マイクロビーズを採血容器内で収集するように適合された磁石をさらに含む、項目133記載のキット。
135.
被験試料から決定された読み取り値との比較のための参照基準をさらに含む、項目105~134のいずれかに記載のキット。
136.
1つまたは複数の微生物標的化基質が個別に包装されている、項目110~135のいずれかに記載のキット。
137.
微生物および/または微生物物質を微生物標的化分子から脱離するための方法であって、基質を、酸性pHを有する緩衝液とともにインキュベートする段階を含む、方法。
138.
緩衝液が約6.5またはそれ未満のpHを有する、項目137記載の方法。
139.
緩衝液が、0.2Mグリシンを含み、かつ約2.8のpHを有する、項目137または138記載の方法。
140.
微生物および/または微生物物質を微生物標的化分子から脱離するための方法であって、基質を、Ca2+イオンと塩を形成するイオンを含む緩衝液とともにインキュベートする段階を含み、かつ該塩が緩衝液中に不溶性である、方法。
141.
前記イオンが、リン酸、シュウ酸、炭酸、硫酸、フッ化物、グルコン酸、オキシド-トリオキソ-マンガン、ステアリン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目140記載の方法。
142.
前記イオンが約0.05M~約5Mの濃度で存在する、項目140または141記載の方法。
143.
緩衝液が、約0.1Mのリン酸ナトリウムを含み、かつ約6.8のpHを有する、項目140~142のいずれかに記載の方法。
144.
微生物と微生物標的化分子との間の相互作用がCa2+イオンによって媒介される、項目140~143のいずれかに記載の方法。
145.
水溶液がキレート剤をさらに含む、項目140~144のいずれかに記載の方法。
146.
キレート剤が、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA);エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)N,N,N',N'-四酢酸(EGTA);エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、ニトリロ-2,2',2'';-三酢酸(NTA)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目145記載の方法。
147.
基質が微粒子である、項目137~146のいずれかに記載の方法。
148.
基質が磁性微粒子である、項目137~147のいずれかに記載の方法。
149.
微生物標的化分子が、項目1~32もしくは61~89のいずれかに記載の操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の操作されたマンノース結合リガンドである、項目137~148のいずれかに記載の方法。
150.
接触中に緩衝液を加熱または冷却する段階をさらに含む、項目137~149のいずれかに記載の方法。
151.
基質を緩衝液中で振盪する段階をさらに含む、項目137~150のいずれかに記載の方法。
152.
インキュベーションが少なくとも5分間にわたる、項目137~151のいずれかに記載一項記載の方法。
153.
微生物の脱離後に基質を洗浄する段階をさらに含む、項目137~152のいずれかに記載の方法。
154.
微生物標的化分子が基質と結合する、項目137~153のいずれかに記載の方法。
155.
微生物感染または微生物汚染を治療および/または予防するための組成物であって、項目1~32もしくは61~89のいずれかに記載の少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の少なくとも1つの操作されたマンノース結合レクチン分子、または項目90~103のいずれかに記載の少なくとも1つの微生物標的化基質を含む、組成物。
156.
環境表面に存在する微生物感染または微生物汚染を治療および/または予防するために製剤化されている、項目155記載の組成物。
157.
環境表面が、医療装置、植え込み型装置、病院または診療所(例えば、手術室または集中治療室)内の表面、食品または医薬品を製造または加工処理するための機械表面または作業表面、細胞培養物、水処理プラント、貯水器または植物プラントを含む、項目156記載の組成物。
158.
対象の体液における微生物感染を治療および/または予防するために製剤化されている、項目155~157のいずれかに記載の組成物。
159.
対象の組織における微生物感染を治療および/または予防するために製剤化されている、項目155~158のいずれかに記載の組成物。
160.
対象が哺乳動物対象である、項目158または159のいずれかに記載の組成物。
161.
少なくとも1つの操作された微生物標的化分子が、微生物の増殖および/または拡散を低減させるのに効果的な量で存在する、項目155~160のいずれかに記載の組成物。
162.
抗菌剤および薬物送達媒体のうち少なくとも1つをさらに含む、項目155~161のいずれかに記載の組成物。
163.
操作された微生物標的化分子および抗菌剤のうち少なくとも1つが、薬物送達媒体の表面にコートされている、項目162記載の組成物。
164.
薬物送達媒体が、ペプチド粒子、ポリマー粒子、デンドリマー、小胞、リポソーム、ヒドロゲル、核酸スキャフォールド、アプタマー、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目162または163記載の組成物。
165.
抗菌剤が、少なくとも1つの操作された微生物標的化分子と融合している、項目162~164のいずれかに記載の組成物。
166.
抗菌剤が、銀ナノ粒子、抗菌メタロエンドペプチダーゼ、抗菌ペプチド、抗生物質、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目162~165のいずれかに記載の組成物。
167.
微生物感染または微生物汚染を引き起こす微生物が、プロテインAを発現する微生物、プロテインGを発現する微生物、またはそれらの任意の組み合わせである、項目155~166のいずれかに記載の組成物。
168.
プロテインAを発現する微生物がブドウ球菌(Staphylococcus)を含む、またはタンパク質Gを発現する微生物が連鎖球菌(Streptococcus)を含む、項目167記載の組成物。
169.
プロテインAを発現する微生物が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む、項目167または168記載の組成物。
170.
微生物が少なくとも1つの抗菌剤に対して耐性である、項目167~169のいずれかに記載の組成物。
171.
抗菌剤が抗生物質である、項目170記載の組成物。
172.
抗生物質が、アミノグリコシド類、アンサマイシン類、カルバセフェム、カルバペネム類、セファロスポリン類、糖ペプチド類、リンコサミド類、リポペプチド、マクロライド類、モノバクタム類、ニトロフラン類、ペニシリン類、ポリペプチド類、キノロン類、スルホンアミド類、テトラサイクリン類、メチシリン、バンコマイシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目171記載の組成物。
173.
プロテインAを発現する微生物がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む、項目167~172のいずれかに記載の組成物。
174.
プロテインAを発現する微生物がバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌を含む、項目167~173のいずれかに記載の組成物。
175.
創傷被覆材として用いるのに適合されている、項目155~174のいずれかに記載の組成物。
176.
免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである、項目155~175のいずれかに記載の組成物。
177.
標的領域から微生物および/または微生物物質を除去するための方法であって、標的領域を項目155~176のいずれかに記載の組成物と接触させる段階を含む、方法。
178.
標的領域における微生物感染または微生物汚染を治療および/または予防するための方法であって、標的領域を項目155~176のいずれかに記載の第1の組成物と接触させる段階を含む、方法。
179.
標的領域が環境表面を含む、項目177または178記載の方法。
180.
環境表面が、医療装置、植え込み型装置、病院または診療所(例えば、手術室または集中治療室)内の表面、食品または医薬品を製造または加工処理するための機械表面または作業表面、細胞培養物、水処理プラント、貯水器または植物プラントを含む、項目179記載の方法。
181.
標的領域が対象の体液中に存在する、項目177または178記載の方法。
182.
標的領域が対象の組織中に存在する、項目177または178記載の方法。
183.
組織と接触している第1の組成物を、ある期間の後に、項目157~178のいずれかに記載の第2の組成物によって置き換える段階をさらに含む、項目182記載の方法。
184.
組織に対してさらなる治療を施す段階をさらに含む、項目182または183記載の方法。
185.
さらなる治療が、陰圧処置、減圧補助創傷郭清(vacuum-assisted debridement)、抗菌剤の投与、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目184記載の方法。
186.
被験試料における微生物および/または微生物物質の有無を判定するためのアッセイであって、
被験試料を、項目90~103のいずれかに記載の微生物標的化基質と接触させる段階
を含む、アッセイ。
187.
被験試料を項目90~103のいずれかに記載の複数の微生物標的化基質と接触させる段階を含む、被験試料における微生物および/または微生物物質の有無を判定するためのアッセイであって、
前記複数の微生物標的化基質が微生物標的化基質の第1のサブセットおよび微生物標的化基質の第2のサブセットを含み;
微生物標的化基質の第1のサブセットがそれぞれ第1の所定の寸法を有し;かつ
微生物標的化基質の第2のサブセットがそれぞれ第2の所定の寸法を有する、アッセイ。
188.
第1のサブセットおよび第2のサブセットを被験試料に添加して、単一の混合物を形成させる、項目187記載のアッセイ。
189.
被験試料に前もって添加された第1のサブセットの単離後に、第2のサブセットを被験試料に添加する、項目187記載のアッセイ。
190.
微生物標的化基質がマイクロビーズの形態にある、項目186~189のいずれかに記載のアッセイ。
191.
マイクロビーズの第1の所定の寸法および第2の所定の寸法が約10nm~約10μmの範囲にある、項目190記載のアッセイ。
192.
マイクロビーズの第1の所定の寸法および第2の所定の寸法が約50nm~約200nmの範囲にある、項目190記載のアッセイ。
193.
マイクロビーズが磁性マイクロビーズである、項目190~192のいずれかに記載のアッセイ。
194.
結合した微生物および/または微生物物質の有無に関して微生物標的化基質を分析する段階をさらに含む、項目186~193のいずれかに記載のアッセイであって、微生物標的化基質に結合した微生物および/または微生物物質の存在により、被験試料が微生物に感染していることが示され;かつ、微生物標的化基質に結合した微生物および/または微生物物質が存在しないことにより、被験試料が検出可能な微生物または微生物物質を含まないことが示される、アッセイ。
195.
微生物物質が内毒素を含む、項目186~194のいずれかに記載のアッセイ。
196.
被験試料におけるプロテインAを発現する微生物、プロテインGを発現する微生物またはそれらの微生物物質の有無を判定するためのアッセイであって、
被験試料を、キレート剤の存在下で項目90~103のいずれかに記載の微生物標的化基質と接触させる段階
を含む、アッセイ。
197.
結合した微生物の有無に関して微生物標的化基質を分析する段階をさらに含む、項目196記載のアッセイであって、微生物標的化基質に結合した微生物の存在により、被験試料におけるプロテインAを発現する微生物またはタンパク質Gを発現する微生物の存在が示され;かつ、微生物標的化基質に結合した微生物が存在しないことにより、被験試料にプロテインAを発現する微生物もタンパク質Gを発現する微生物も存在しないことが示される、アッセイ。
198.
微生物標的化基質に結合した微生物が存在しない場合に、被験試料を遊離カルシウムイオンの存在下で微生物標的化基質とさらに接触させる、項目197記載のアッセイ。
199.
被験試料におけるプロテインAを発現する微生物、プロテインGを発現する微生物またはそれらの微生物物質を検出するためのアッセイであって、
i.被験試料を項目90~103のいずれかに記載の微生物標的化基質と接触させる段階;
ii.微生物結合性分子を、キレート剤を含む溶液と接触させる段階;および
iii.結合した微生物の有無に関して微生物標的化基質を分析する段階であって、微生物標的化基質に結合した微生物の存在により、被験試料におけるプロテインAを発現する微生物またはタンパク質Gを発現する微生物の存在が示され;かつ、微生物標的化基質に結合した微生物が存在しないことにより、被験試料にプロテインAを発現する微生物もプロテインGを発現する微生物も存在しないことが示される、段階
を含む、アッセイ。
200.
キレート剤を含む溶液と接触させる段階の前に、微生物標的化基質を被験試料から単離する段階をさらに含む、項目199記載のアッセイ。
201.
分析する段階の前に、被験試料、またはキレート剤を含む溶液から、微生物標的化基質を単離する段階をさらに含む、項目186~200のいずれかに記載のアッセイ。
202.
分析が、イムノアッセイ、ELISA、グラム染色、免疫染色、顕微鏡検査、分光法、免疫蛍光法、ウエスタンブロット、PCR、RT-PCR、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、配列決定、質量分析、およびそれらの任意の組み合わせを含む、項目201記載のアッセイ。
203.
微生物標的化基質上に結合した微生物を培養する段階をさらに含む、項目186~202のいずれかに記載のアッセイ。
204.
微生物標的化基質上に結合した微生物を抗生物質にさらす段階をさらに含む、項目186~203のいずれかに記載のアッセイ。
205.
接触させる段階の前に、少なくとも1つの基質および少なくとも1つの操作された微生物結合性分子から、微生物標的化基質が前もって形成される、項目186~204のいずれかに記載のアッセイ。
206.
接触させる段階の間に、少なくとも1つの基質および少なくとも1つの操作された微生物結合性分子から、微生物標的化基質が形成される、項目186~204のいずれかに記載のアッセイ。
207.
キレート剤の存在により、被験試料中にプロテインA陰性かつプロテインG陰性の微生物が仮に存在するとして、それが少なくとも1つの操作された微生物結合性分子と結合する尤度が低下する、項目196~206のいずれかに記載のアッセイ。
208.
結合した微生物を微生物標的化基質から脱離する段階をさらに含む、項目186~207のいずれかに記載のアッセイ。
209.
単離された微生物標的化基質を低pH緩衝液と接触させる段階をさらに含む、項目208記載のアッセイ。
210.
キレート剤が金属イオンキレート剤である、項目196~209のいずれかに記載のアッセイ。
211.
キレート剤がカルシウムイオンをキレート化する、項目196~210のいずれかに記載のアッセイ。
212.
カルシウムキレート剤が、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸;エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、クエン酸塩を含む緩衝液、N,N-ビス(2-(ビス-(カルボキシメチル)アミノ)エチル)-グリシン(DTPA)、ニトリロ-2,2',2''-三酢酸(NTA)、被験試料からカルシウムイオンを沈殿させる緩衝液、低pH緩衝液、それらの任意の誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目211記載のアッセイ。
213.
低pH緩衝液が7未満のpHを有する、項目209~212のいずれかに記載のアッセイ。
214.
低pH緩衝液が、アルギニンおよびピロリン酸塩からなる群より選択される、項目209~213のいずれかに記載のアッセイ。
215.
プロテインAを発現する微生物がブドウ球菌を含む、またはタンパク質Gを発現する微生物が連鎖球菌を含む、項目196~214のいずれかに記載のアッセイ。
216.
プロテインAを発現する微生物が黄色ブドウ球菌を含む、項目215記載のアッセイ。
217.
ブドウ球菌種から表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が除外される、項目215記載のアッセイ。
218.
微生物結合性分子をキレート剤を含む溶液と接触させる段階の前に、被験試料と接触させた上で少なくとも1つの微生物標的化基質を分析する段階をさらに含む、項目186~217のいずれかに記載のアッセイ。
219.
微生物標的化基質がマイクロビーズの形態にある、項目186~218記載のアッセイ。
220.
マイクロビーズが磁性マイクロビーズである、項目219記載のアッセイ。
221.
項目190~214のいずれかに記載のアッセイを実施する段階を含む、対象における黄色ブドウ球菌感染の有無を判定する方法であって、キレート剤の存在下における、少なくとも1つの操作された微生物標的化基質に対する微生物の結合によって、対象における黄色ブドウ球菌感染が示される、方法。
222.
対象が黄色ブドウ球菌を有することが検出された場合に、対象に第1の抗菌剤を投与または処方する段階をさらに含む、項目221記載の方法。
223.
被験試料、またはキレート剤を含む溶液を、操作された微生物標的化基質をそれから単離した後に、プロテインA陰性またはプロテインG陰性の微生物の有無を判定するために分析する段階をさらに含む、項目221または222記載の方法。
224.
対象がプロテインA陰性またはプロテインG陰性の微生物を有することが検出された場合に、対象に第2の抗菌剤を投与または処方する段階をさらに含む、項目223記載の方法。
225.
プロテインA陰性またはプロテインG陰性の微生物が大腸菌(E. coli)を含む、項目224記載の方法。
226.
対象に対して、項目1~32もしくは61~89のいずれかに記載の少なくとも1つの操作された微生物標的化分子、または項目33~60のいずれかに記載の少なくとも1つの操作されたマンノース結合レクチン分子を含む組成物を投与または処方する段階をさらに含む、項目221~225のいずれかに記載の方法。
【0411】
いくつかの選択された定義
別のように記述されるか、または文脈から暗に示される場合を除き、以下の用語および語句は、以下に提示される意味を含む。別のように明示的に記述されるか、または文脈から明らかである場合を除き、以下の用語および語句は、その用語または語句がそれが属する技術分野において獲得している意味を除外するものではない。これらの定義は、本明細書に記載された諸局面の個々の態様を説明するのを助けるために提供されるのであって、請求される発明を限定することは意図していないが、それは本発明の範囲は特許請求の範囲のみによって限定されるためである。さらに、文脈によって別のように要請される場合を除き、単数形の用語は複数のものも含むものとし、複数形の用語は単数のものも含むものとする。
【0412】
本明細書で用いる場合、「含むこと」または「含む」という用語は、本発明にとって必須である組成物、方法およびそれらの各々の構成要素に言及して用いられるが、しかしながら、必須であるか否かにかかわらず、明記されていない要素を含めることについては自由である。
【0413】
本明細書で用いる場合、「本質的に、からなる(consisting essentially of)」という用語は、ある所与の態様に対して求められる要素のことを指す。この用語は、本発明のその態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に対して実質的に(materially)影響を及ぼさない、追加的な要素の存在を許容する。
【0414】
「からなる」という用語は、その態様の説明において挙げられていないいかなる要素も含まれない、本明細書に記載されるような組成物、方法および各々の構成要素のことを指す。
【0415】
操作実施例(operating example)以外において、または別のように指示される場合を除き、本明細書において用いられる成分の数量または反応条件を表すすべての数は、いかなる場合にも「約」という用語で修飾されていると解釈されるべきである。「約」という用語は、パーセンテージに関連して用いられる場合、±1%を意味し得る。
【0416】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって明らかに別のことが示される場合を除き、複数形の言及物も含む。同様に、「または」という語は、文脈によって明らかに別のことが示される場合を除き、「および」を含むことを意図している。したがって、例えば、「その方法」への言及は、本明細書に記載されたタイプの、および/または本開示を読むことによって当業者に明らかになるであろう、1つまたは複数の方法、および/または段階を含む。
【0417】
本明細書に記載されたものと同様または同等な方法および材料を、本開示の実施または試験に用い得るものの、適した方法および材料については以下に説明する。「含む(comprise)」という用語は「含む(include)」を意味する。「例えば(e.g.)」という略号は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では、非限定的な例を示すために用いられる。したがって、「例えば(e.g.)」という略号は「例えば(for example)」と同義である。
【0418】
本明細書において互換的に用いられる「微生物結合性」および「微生物標的化」という用語は、分子または組成物が微生物および/または微生物物質と結合する、および/またはそれらを捕捉する能力を指す。
【0419】
「FcMBLマイクロビーズ」という用語は、本明細書で用いる場合、その表面上に少なくとも1つのFcMBL分子を含むマイクロビーズのことを指す。いくつかの態様において、マイクロビーズはその表面上に飽和量のFcMBL分子を含む。マイクロビーズは磁性であっても非磁性であってもよい。
【0420】
「FcMBL磁性マイクロビーズ」という用語は、本明細書で用いる場合、その表面上に少なくとも1つのFcMBL分子を含むマイクロビーズのことを指す。いくつかの態様において、磁性マイクロビーズはその表面上に飽和量のFcMBL分子を含む。
【0421】
「抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分(抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)のことを指し、これにはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体および単鎖抗体(scFv)が含まれる。
【0422】
「ペプチド」という用語は、そのサイズにも機能にも関係なく、アミノ酸またはアミノ酸類似体の重合体のことを指す。いくつかの態様において、「ペプチド」という用語は、小型ポリペプチド、例えば、約15~25アミノ酸の重合体のことを指す。
【0423】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で用いる場合、短い核酸重合体、典型的には20個またはそれ未満の塩基を有するもののことを指す。
【0424】
本明細書で用いる場合、「対象」とは、ヒトまたは動物のことを意味する。通常、動物とは、霊長動物、齧歯動物、家畜または狩猟動物などの脊椎動物のことである。霊長動物には、チンパンジー、カニクイザル(cynomologous monkey)、クモザルおよびマカクザル、例えば、アカゲザル(Rhesus)が含まれる。齧歯動物には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、家飼いネコなどのネコ科動物種、イヌ、キツネ、オオカミなどのイヌ科動物種、ニワトリ、エミュー、ダチョウなどの鳥類種、ならびにマス、ナマズおよびサケなどの魚類が含まれる。患者または対象には、前記の任意のサブセット、例えば、上記のもののすべてが含まれるが、ただし、例えばヒト、霊長動物または齧歯動物といった1つまたは複数の群または種は除外される。本明細書に記載された諸局面のある態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長動物、例えばヒトである。「患者」および「対象」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0425】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであってよいが、これらの例には限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、障害の動物モデルとなる対象として有益に利用することができる。
【0426】
対象は、本明細書に記載の任意の微生物または病原体によって引き起こされる疾患または障害に罹患しているか、またはそれを有すると以前に診断または特定されたものであってよい。あくまで例にすぎないが、対象が敗血症、炎症性疾患または感染症と診断されてもよい。
【0427】
「治療剤」という用語は当技術分野で認知されており、対象において局所的または全身的に作用する、生物学的、生理的または薬理学的に活性のある物質である任意の化学的部分のことを指す。「薬物」とも称される、治療剤の例は、Merck Index, the Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsなどの周知の文献に記載されており、それらには、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは疾病の治療、予防、診断、治癒もしくは緩和のために用いられる物質;身体の構造もしくは機能に影響を及ぼす物質;または生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になるか、もしくはより活性が高くなるプロドラッグが非限定的に含まれる。対象への投与に際して主題組成物から隣接組織または流体の中に放出され得る、様々な形態の治療剤を用いることができる。その例には、ステロイドおよびステロイドのエステル(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アンドロステロン、コレステロール、ノルエチンドロン、ジゴキシゲニン、コール酸、デオキシコール酸、およびケノデオキシコール酸)、ホウ素含有化合物(例えば、カルボラン)、化学療法用ヌクレオチド、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬)、エンジイン類(例えば、カリチアマイシン類、エスペラミシン類、ジネミシン類、ネオカルジノスタチン発色団、およびケダルシジン発色団)、重金属錯体(例えば、シスプラチン)、ホルモン拮抗薬(例えば、タモキシフェン)、非特異的(非抗体性)タンパク質(例えば、糖オリゴマー)、オリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸配列(例えば、mRNA配列)と結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド)、ペプチド、タンパク質、抗体、光力学的作用物質(ローダミン123)、放射性核種(例えば、I-131、Re-186、Re-188、Y-90、Bi-212、At-211、Sr-89、Ho-166、Sm-153、Cu-67およびCu-64)、毒素(例えば、リシン)、および転写ベースの医薬が含まれる。
【0428】
本明細書で用いる場合、「ペプチド模倣物」という用語は、構造的にその基になったペプチドの活性を有するペプチド様分子のことを意味する。そのようなペプチド模倣物には、化学修飾されたペプチド、非天然アミノ酸を含むペプチド様分子、およびペプトイドが含まれ、それらはそのペプチド模倣物の由来となったペプチドの心臓特異性などの活性を有する(例えば、Goodman and Ro, Peptidomimetics for Drug Design, in "Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery", Vol. 1 (ed. M.E. Wolff; John Wiley & Sons 1995), pages 803-861を参照)。
【0429】
例えば、束縛されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド性構成要素、またはアミド結合同配体を含むペプチド様分子を含む、種々のペプチド模倣物が当技術分野において公知であり、本明細書に記載される諸態様の範囲に含まれ得る。束縛された非天然アミノ酸を含むペプチド模倣物には、例えば、α-メチル化アミノ酸;α,α-ジアルキルグリシンまたはα-アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα-Cα環化アミノ酸;Nα-メチル化アミノ酸;αβ-またはγ-アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β-不飽和アミノ酸;β,β-ジメチルまたはβ-メチルアミノ酸;αβ-置換-2,3-メタノアミノ酸;N-CδまたはCα-Cδ環化アミノ酸;置換プロリンまたは別のアミノ酸模倣物が含まれ得る。ペプチド二次構造を模倣するペプチド模倣物には、例えば、非ペプチド性β-ターン模倣物;γ-ターン模倣物;β-シート構造の模倣物;またはヘリックス構造の模倣物が含まれ、これらはそれぞれ当該技術分野において周知である。また、ペプチド模倣物が、例えば、アミド結合同配体、例えば、レトロ-インベルソ(retro-inverso)修飾;還元アミド結合;メチレンチオエーテルまたはメチレンスルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランスオレフィンまたはフルオロオレフィン結合;1,5-二置換テトラゾール環;ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合または別のアミド同配体などを含むペプチド様分子であってもよい。当業者は、これらおよびその他のペプチド模倣物が、本明細書で用いられる「ペプチド模倣物」という用語の意味の範囲に含まれることを理解するであろう。
【0430】
ペプチド模倣物を同定するための方法は当技術分野において周知であり、これには例えば、可能性のあるペプチド模倣物のライブラリを含むデータベースのスクリーニングが含まれる。例えば、Cambridge Structural Databaseは、結晶構造が判明している300,000種を上回る化合物のコレクションを含む(Allen et al., Acta Crystallogr. Section B, 35:2331 (1979))。この構造デポジトリーは、新たな結晶構造が決定されるたびに継続してアップデートされ、適した形状、例えば、本明細書に開示されるペプチドと同じ形状、ならびにコグネイト受容体に対する可能性のある幾何学的および化学的な相補性などを有する化合物についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載のペプチドの結晶構造が入手可能でない場合には、構造を、例えば、プログラムCONCORD(Rusinko et al., J. Chem.lnf. Comput. Sci. 29:251 (1989))を用いて生成することもできる。別のデータベースである、Available Chemicals Directory(Molecular Design Limited, Informations Systems; San Leandro Calif.)は、市販されている約100,000種の化合物を含み、これもまた、例えば、微生物に対する特異性を有する、本明細書に記載のペプチドの可能性のあるペプチド模倣物を同定するために検索することができる。
【0431】
「相同性」という用語は、本明細書で用いる場合、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性のことを指す。相同性は、比較の目的でアラインメントを行い得る各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列中の等価な位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されている場合、分子はその位置で同一である;等価な部位が同じまたは類似の(例えば、例えば立体的および/または電子的性質が類似した)アミノ酸残基によって占有される場合、分子はその位置で相同(類似)であると称することができる。相同性のパーセンテージとしての表現は、比較される配列によって共有される位置での同一または類似のアミノ酸の数の関数のことを指す。「無関係」または「非相同」である配列は、40%未満の同一性しか共有しない。本明細書に記載の遺伝子またはペプチドの相同体の決定は、当業者によって容易に確認され得る。
【0432】
「保存的置換」という用語は、ポリペプチドを説明している場合、ポリペプチドの活性を実質的に変更させないポリペプチドのアミノ酸組成の変化のことを指し、例えば(fore examples)、保存的置換とは、あるアミノ酸残基を、類似の化学的特性を有する異なるアミノ酸残基によって置換することを指す。保存的アミノ酸置換には、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの置き換え、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置き換え、またはセリンによるスレオニンの置き換えが含まれる。「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のものによって置き換えること、例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの置き換え、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置き換え、またはセリンによるスレオニンの置き換えに起因する。したがって、特定のアミノ酸配列の「保存的置換」とは、ポリペプチド活性にとって重要ではないアミノ酸の置換、または、重要なアミノ酸の置換であっても、活性を実質的に変更しないような、あるアミノ酸の、類似の特性(例えば、酸性、塩基性、正または負の荷電、極性または非極性など)を有する他のアミノ酸による置換のことを指す。機能的に類似したアミノ酸を提示している保存的置換の表が当技術分野において周知である。例えば、以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。(Creighton, Proteins, W. H. Freeman and Company (1984)も参照されたい)。さらに、コードされる配列中の単一のアミノ酸または低いパーセンテージのアミノ酸を変更、付加または欠失させる、個々の置換、欠失または付加も、「保存的置換」である。挿入または欠失は、典型的には約1~5アミノ酸の範囲にある。
【0433】
好ましい態様を本明細書に詳細に描写し、説明してきたが、関連する技術分野における当業者には、本発明の趣旨を逸脱することなく様々な改変、追加、置換などを加えることができ、それ故にこれらは以下の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲内にあるとみなされることは明らかであろう。さらに、すでに指示されていない範囲において、本明細書において記載され、例示された様々な態様の任意のものを、本明細書に開示された他の態様のいずれかにおいて示された特徴を組み入れるためにさらに改変し得ることも、当業者には理解されるであろう。
【実施例
【0434】
以下の実施例は、本発明のいくつかの態様および局面を例示している。関連する技術分野の当業者には、本発明の趣旨も範囲も変更することなしに、様々な改変、追加、置換などを加えることができ、そのような改変および変形物が、以下の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲内にあることは明らかであろう。以下の実施例は、本発明を一切限定するものではない。
【0435】
実施例1:例示的な操作されたMBL分子の発現および精製
WT MBLに存在する補体活性化および凝固という副作用を伴わない、病原体に対する最適化された結合のための操作されたMBLを構築した。MBL糖質認識ドメインおよび様々な長さのネックドメインをクローニングして、ヒンジ、CH2およびCH3領域を含むヒトIgG1のFc断片と融合させて、融合タンパク質を形成させた。1つの態様においては、MBL糖質認識ドメインとネックドメインの少なくとも一部分とをクローニングして、ヒトIgG1のFc断片と融合させて、タンパク質FcMBL.81(SEQ ID NO.6)を形成させた。1つの態様においては、ネック領域を伴わないMBL糖質認識ドメインをクローニングして、ヒトIgG1のFc断片と融合させて、タンパク質FcMBL.111(SEQ ID NO.8)を形成させた。MBLの補体活性化領域および凝固活性化領域(例えば、コラーゲン三重ヘリックス領域およびヒンジMASP結合領域)は、融合タンパク質から除去した。
【0436】
いくつかの態様においては、FcMBL.81の単一部位ビオチン化のために、トリペプチドAKTをFcのN末端(ヒンジ領域:図3に示されたFc-XベクターのHの箇所)に挿入した(AKT-FcMBL.81と名付けられた、FcのN末端部分にトリペプチドAKTを融合させた態様に関するアミノ酸配列は、SEQ ID NO.7に示されている)。一ビオチン操作型MBL分子AKT-FcMBL.81を、続いて、ストレプトアビジンでコートされたビーズに対してコンジュゲートさせて、糖質結合性MBL頭部を、病原体に対する最適化された結合のために、基質から離して配向させた。
【0437】
いくつかの態様においては、SEQ ID NO.6のアスパラギンN82(Kabat付番方式ではN297)を、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)の機能性を除去する目的でFcのグリコシル化を除去するために、アスパラギン酸(D)に突然変異させた。
【0438】
4種類の異なる操作されたMBL融合タンパク質構築物を作製した:
(1)Fc MBL.111(SEQ ID NO.8)は、IgGのFc部分(Kabat付番方式216~447)を、MBL CRD頭部(アミノ酸111~228)と融合させたものからなる。
(2)Fc MBL.81(SEQ ID NO.6)は、IgGのFc部分(Kabat付番方式216~447)を、MBL CRD頭部およびネック領域(アミノ酸81~228)と融合させたものからなる。
(3)AKT-Fc MBL.81(SEQ ID NO.7)は、IgGのFc部分(Kabat付番方式216~447)を、MBL CRD頭部およびネック領域(アミノ酸81~228)と融合させたものからなる。3つのアミノ酸からなる断片AKTが、FcのN末端部分に融合されている。
(4)Fc MBL.81 Dは、IgGのFc部分(Kabat付番方式216~447)を、MBL CRD頭部およびネック領域(アミノ酸81~228)と融合させて、さらに、位置82(Kabat付番方式における297)のアスパラギン(N)をアスパラギン酸(D)に置換することによってFcグリコシル化部位を除去したものからなる。
【0439】
Fc融合技術の大きな利点は、融合タンパク質の発現および精製の容易さである(Lo et al. (1998) Protein Engineering. 11: 495-500)。N末端Fcは、融合パートナーの発現レベル、タンパク質フォールディングおよび分泌を向上させることが示されている。加えて、Fcは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる一段階精製のために極めて有用であるブドウ球菌プロテインA結合部位も有する。このように、いくつかの態様において、以上に考察したアミノ酸配列をコードする種々の操作されたMBL核酸配列を、Lo et al. 同上、に開示されたFc-Xベクター中に挿入することができる。続いて、ヒトU 293細胞に、リポフェクタミン試薬(Invitrogen)を用いてFc MBL DNAをトランスフェクトした。操作されたMBL融合タンパク質は、5ml HiTrapプロテインAカラム上で、GE Akta Avant 25システムを用いて精製することができる。
【0440】
タンパク質精製のための、例示的なローディング緩衝液の1つは100mMリン酸塩 150mM NaCl pH 7であり、例示的な溶出緩衝液の1つは100mMリン酸塩 150mM NaCl pH 3である。溶出に続いて、タンパク質を1N NaOHで直ちに中和し、Tween 80(Pierce SurfactAmp)を最終濃度0.01%で添加した。続いて、操作されたMBL融合タンパク質を、0.22ミクロンのナイロンフィルターに通して濾過滅菌して、4℃で貯蔵した。この一段階精製の回収率は、少なくとも約90%であった(データは提示せず)。
【0441】
精製されたタンパク質を分析するために、還元SDS-PAGEをInvitrogen Systemを用いて行った。続いて、PVDF膜上でiBlotシステム(Invitrogen)を用いてウエスタンブロットを行い、続いて当該PVDF膜を、ビオチン化抗ヒトMBL抗体(R&D Systems)を用いてプローブ探索した。精製されたタンパク質FcMBL.81およびMBL野生型(WT)の結果を図4に示している。
【0442】
実施例2.MBL構築物の効力/生物学的活性の試験
マンナンでコートされたELISAプレートに対するFc MBLタンパク質のカルシウム依存的結合を決定するために、96ウェルELISAプレートをまず、0.5mg/mlのマンナン(M3640、Sigma)でコートした。精製されたFc MBL.81およびFc MBL.111融合タンパク質(AKTAシステムを用い、組み換えプロテインAを用いて精製し、SDS-PAGEにより純度が90%を上回ることを確認した、発現293細胞からの上清)を希釈して、マンナンでコートされたELISAプレートに添加した。いくつかの試料ウェルでは、カルシウムをキレート化するためにEDTAも添加した。続いて、二次抗体抗ヒトFc HRP(109-036-098 Jackson Lab)をすべての試料ウェルに添加した。各試料のO.D.値を450nmで測定した。
【0443】
本明細書の提示により、Fc MBL.81融合タンパク質は、カルシウムの存在下ではマンナンと結合するが、EDTAの存在下ではそのような結合がおよそ100分の1に低下することが示された(図5)。これらのアッセイを繰り返して、SinoBiologicalsによるWT MBLと比較することができる。図5に示されているように、FcMBL.111融合タンパク質はカルシウムの存在にかかわらず、マンナン結合に関して不活性であった。理論に拘束されることは望まないが、本明細書に提供されるいくつかの態様においては、病原体上の糖質に対する結合のための、操作された微生物標的化分子(例えば、操作されたMBL分子)の可撓性および配向をもたらすために、ネック領域が必要とされる。本明細書に提供される知見は、マンナンに対するFc MBL.81およびWT MBLの結合がいずれもカルシウム依存的であり、EDTAキレート化によって逆転され得ることを示している。さらに、これらの知見により、Fc MBL.111(MBL CRD頭部をFcと融合させたもの)が、マンナンに対する、Fc MBL.81と比較して相対的に弱い結合剤(binder)であることも示された。
【0444】
AKT-FcMBL.81融合タンパク質は、EDTAの存在下で、マンナンに対して、Fc MBL.81融合タンパク質よりも高度なバックグラウンド結合を示すように思われる。これは、理論に拘束されるわけではないが、ストレプトアビジンビーズ上での配向づけられた結合のためのアミノキシビオチン化のために設計された、融合タンパク質のN末端上の結合部位AKTに起因する。すなわち、AKT-FcMBL.81融合タンパク質は若干粘着性である可能性がある。いくつかの態様において、AKT-FcMBL.81はマンナン結合アッセイに対して理想的ではない場合がある。
【0445】
実施例3:MBLヌル血清を用いた補体アッセイおよび凝固アッセイにおける活性
WT MBLは、MASPタンパク質を介して補体および凝固を活性化する。本明細書に提示するこの例では、MBLヌル血清を補体および凝固タンパク質の供給源として用い、一方、WT MBLおよびFcMBL.81を、凝固機能の補体活性化を活性化するためのMBLの供給源として用いた。
【0446】
補体活性化を測定するためのアッセイは、Michelow et al. (2010) JBC 285: 24729において考察されている。手短に述べると、希釈されたキメラタンパク質の3つずつの試料を、MASPの供給源としての1% MBLヌルヒト血清とともに、マンナンでコートされたマイクロタイタープレートに対して添加した。ネイティブMBLを含む正常ヒト血清補体標準物質(Quidel, San Diego, CA)を、標準曲線を作成するために用いた。37℃でのインキュベーションおよびすすぎ洗いの後に、付着したヒトC4断片(Sigma-Aldrich)を、抗ヒトC4c抗体(Dako Denmark A/S)を用い、その後にビオチン化二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)、アビジン含有ベクタステインABC-アルカリホスファターゼ試薬(VectorLaboratories, Burlingame, CA)およびp-ニトロフェニルリン酸を添加して、A405nmでの測定を行うことによって検出した。
【0447】
凝固を判定するため、およびトロンビン様活性を検索するための方法は以前に確立されており、例えば、Takahashi et al. (2011) Immunobiology 216: 96)に記載されている。手短に述べると、このアッセイは、炭酸塩結合緩衝液、pH 9.5のマンナンでコートされたプレートを用いることによって、MBL-MASP複合体媒介性の活性を検出するために設計された。調製されたマンナンでコートされたプレートを、10mM CaCl2を加えたTBS、pH 7.4(TBS-CaCl2)ですすぎ洗いした後に、ウェルを、MASP供給源としての1% MBLヌル血清の存在下または非存在下で、希釈したMBLタンパク質とともにインキュベートした。ウェルを室温で1時間インキュベートし、続いて、内因性プロトロンビンおよびトロンビンを洗い流すために徹底的にすすぎ洗いした。ウェルを、ローダミン110ベースのトロンビン基質(トシルGly-Phe-Arg-アミド、R22124,Invitrogen)とともにインキュベートすることによって、MBL/MASP複合体のトロンビン様活性を測定した。
【0448】
本明細書に提示された知見は、MBLヌル血清のFc MBL.81活性化によるマンナンでコートされたプレート上へのC4付着はないが、WT MBL対照(データは提示せず)ではC4が付着したことを示している。さらに、Fc MBL.81融合タンパク質による凝固活性化(トロンビン様活性)が見られないことも明らかになった(データは提示せず)。すなわち、WT MBLとは異なり、Fc MBL.81は補体も凝固も活性化しない。
【0449】
実施例4.MBL磁性マイクロビーズの作製のための例示的な方法
種々の微生物標的化分子(例えば、操作されたMBL分子)を、種々のサイズまたはタイプのマイクロビーズおよび表面化学を用いて、磁性マイクロビーズに対してカップリングさせることができる。微生物標的化磁性マイクロビーズのために用い得る磁性マイクロビーズの例には、Invitrogen(DYNABEADS(登録商標))による、1ミクロンのMYONE(商標)T1ストレプトアビジンマイクロビーズ(ストレプトアビジンはトシル基を介してカップリング)、Invitrogen(DYNABEADS(登録商標))による1ミクロンのトシル活性化マイクロビーズ、およびAdemtechによる100nm(平均直径128nm)のストレプトアビジンPlusマイクロビーズ(ストレプトアビジンはカルボキシル基を介してカップリング)が非限定的に含まれる。
【0450】
MYONE(商標)マイクロビーズおよびAdemtechストレプトアビジンマイクロビーズに対する結合のためには、第一級アミン(リジン残基)と反応するThermo EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinを用いて、MBLをビオチン化する(1分子あたりおよそ4個のビオチン)ことができる。例えば、Witus et al. (2010) JACS.132: 16812に記載された方法を用いる、単一部位ビオチン化のためには、AKT-FcMBL.81融合タンパク質を、ストレプトアビジンマイクロビーズに対する配向づけられた結合のために、N末端アミンのみにおいてビオチン化する。手短に述べると、PLP媒介性バイオコンジュゲーションは、PLP媒介性アミノ基転移反応でN末端アミンにまずアルデヒドを付加し、続いてアミノオキシ-ビオチンをアルデヒドに付加する、二段階の過程である。
【0451】
トシル活性化マイクロビーズのためには、トシル基をその第一級アミン(リジン残基)によって置き換えることによって、MBLをマイクロビーズの表面に直接的かつ共有結合性にカップリングさせることができる。または、アミノオキシ化学を用いて、ビオチン-ストレプトアビジンを用いることなしにトシル活性化DYNABEADS(登録商標)マイクロビーズに対する配向づけられた結合を可能にすることもできる。これは、より安定した系につながり、粘着性ストレプトアビジンに対する非特異的結合を低下させるはずである。
【0452】
実施例5.Fc MBL.81でコートされた磁性マイクロビーズによるC.アルビカンス捕捉と、WT MBLでコートされた磁性マイクロビーズによるものとの比較
およそ90kDaという小型のAKT-FcMBL二量体が、CRD頭部をマイクロビーズ基質から離して配向させてDYNABEADS(登録商標)マイクロビーズの表面上に集合したか否か、および、磁性マイクロビーズに(ビオチン-ストレプトアビジンカップリングを介して)コンジュゲートされたAKT-FcMBL.81が、ストレプトアビジンマイクロビーズにランダムに付加されている大型(およそ650kDa)の多量体野生型ビオチン化MBLと同じ結合力(avidity of binding)を有するか否かを明らかにすることを目指した。
【0453】
手短に述べると、Sino Biologicalによる650kDa MBLをビオチン化し、続いて、実施例4に記載されたMYONE(商標)ストレプトアビジンマイクロビーズとカップリングさせた。そのようなマイクロビーズにカップリングさせた野生型MBLを、以下では「Sino MBLマイクロビーズ」と名付けている。また、AKT-FcMBL.81を、MYONE(商標)ストレプトアビジンマイクロビーズにカップリングさせた。等価質量のこれら2種のタンパク質を、同数のマイクロビーズにカップリングさせた。
【0454】
MBLマイクロビーズ捕捉実験を行うためには、1500個のカンジダ菌を、1ulのAKT FcMBLマイクロビーズまたは1ulのSino MBLマイクロビーズのいずれかとともに、5mMカルシウムを加えたTBS-Tween緩衝液中で10分間インキュベートした。カンジダを結合させたマイクロビーズを、それらを磁石上にて2分間捕捉することによって取り出した。続いて、捕捉された材料の約1/10をYEPD Agarプレート上にプレーティングし、30℃で1~2日間インキュベートして、その後に算定を行い、1500個のカンジダ出発培養物の同等な希釈物からの総菌数と比較した。
【0455】
図6Aは、カンジダの95%超がAKT Fc MBL.81マイクロビーズと結合し、一方、92%超がSino MBLマイクロビーズと結合したことを示している。これらの2つのタイプのマイクロビーズを用いた結果に有意差は見られず、このことは本明細書に記載の操作されたMBL磁性マイクロビーズが、指定された病原体密度で、WT MBL磁性マイクロビーズと少なくとも同等であるか、または実際にはより優れた結合を示したことを示している。
【0456】
次に、より高い病原体密度、例えば、108個を上回る酵母細胞での、操作されたMBL磁性マイクロビーズの成績を評価することにした。まず、C.アルビカンスを2日間にわたって終夜培養して、続いてPBSで2回洗浄した。C.アルビカンスの最終的なペレットを、カルシウム添加T-TBS[TBS、0.1% Tween-20、5mM CaCl2]中に再懸濁させたところ、OD600の読み取り値は0.5~0.7前後であった。非標識MYONE(商標)T1ストレプトアビジンマイクロビーズをPBS 0.1% BSA中で2回洗浄し、当初容積PBS 0.1% BSA中に希釈した。1.5mLチューブに対して、約1mLの上記のC.アルビカンス混合物をまず添加し、その後に2μlの非標識マイクロビーズ、2μlのFcMBL標識マイクロビーズ、または2ulのWT MBL標識マイクロビーズのいずれかを添加した。C.アルビカンス混合物を非ビーズ対照として用いた。続いてすべての混合物をHula混合機にて約10分間混合し、その後に磁石上でのマイクロビーズの捕捉を2分間行った。非結合画分(上清)のODを600nmで測定した。
【0457】
代替的に、カンジダをOD600がおよそ0.6の値に達するまで培養した。酵母を、1ulのAKT FcMBLマイクロビーズまたは1ulのWT MBLマイクロビーズのいずれかとともに、5mMカルシウムを加えたTBS-Tween緩衝液中で10分間インキュベートした。マイクロビーズおよび捕捉された酵母を2分間の磁性捕捉によって取り出した。非結合画分を判定するために、残った上清のOD(600nm)を測定した。
【0458】
配向づけられたAKT-FcMBL.81マイクロビーズは、MYONE(商標)ストレプトアビジン1ミクロンビーズを用いるプルダウン結合アッセイにおいて、(sino)WT MBLマイクロビーズよりも有意に優れた結合成績を示した(図6B)。すなわち、この知見は、AKT-FcMBL.81マイクロビーズがWT MBLマイクロビーズよりも高い結合能を有することを示している。
【0459】
実施例6.病原体捕捉の効率に対する磁性マイクロビーズのサイズの影響
真菌および細菌の両方を捕捉するために最適なマイクロビーズのサイズを決定するために、AKT Fc MBLでコートされたマイクロビーズ(サイズがおよそ1μm~およそ128nmの範囲)に対するカンジダの結合を、実施例5に記載されたプルダウンアッセイを用いて評価した。驚いたことに、捕捉効率は磁性マイクロビーズのサイズが小さいほど高かった。このことは、より大きなマイクロビーズの方が真菌に対してより良好であり、およそ100nmは細菌に対してより良好であるが真菌に対しては最適には及ばないと考えられるという仮説を覆す。したがって、いくつかの態様においては、およそ100nmのマイクロビーズ(例えば、およそ128nm)を、細菌および真菌の両方の捕捉のために用いることができる。
【0460】
実施例7.飽和期および対数増殖期のカンジダ培養物における操作されたMBL磁性マイクロビーズの結合成績の比較
実施例5に示されたように、カンジダの静置培養物は、操作されたMBLマイクロビーズによる結合を強く受けた。次に、対数増殖期にあるカンジダを用いたマイクロビーズ成績に差があるか否かを明らかにすることを目指した。
【0461】
まず、C.アルビカンスを2日間終夜培養したもの、および対数期培養物(OD600=およそ0.5)をPBSで2回洗浄した。C.アルビカンスの最終的なペレットをカルシウム添加T-TBS[TBS、0.1% Tween-20、5mM CaCl2]中に再懸濁させたところ、OD600の読み取り値は0.3~0.5前後であった。非標識MYONE(商標)T1ストレプトアビジンマイクロビーズをPBS 0.1% BSA中で2回洗浄し、当初容積PBS 0.1% BSA中に希釈した。1.5mLチューブに対して、約1mLの上記のC.アルビカンス混合物をまず添加し、その後に、2μlの非標識マイクロビーズ、2μlのFcMBL標識マイクロビーズ、または2μlのWT MBL標識マイクロビーズのいずれかを添加した。C.アルビカンス混合物を非ビーズ対照として用いた。続いて、すべての混合物をHula混合機にて約10分間混合し、その後に磁石上でのマイクロビーズの捕捉を2分間行った。非結合画分(上清)のODを600nmで測定した。
【0462】
図8は、AKT-FcMBLおよびWT MBLがC.アルビカンスをプルダウンする能力には酵母の増殖期に応じて差があり得るが、対数増殖期におけるばらつきの方が比較的ノイズが多いことを示している。当業者は、病原体密度が様々である本明細書に記載の操作された微生物標的化磁性マイクロビーズの種々の態様の病原体捕捉効率を、例えば、本明細書に記載の方法を用いて決定することができる。
【0463】
実施例8:ヒト血液試料における操作されたMBL磁性マイクロビーズ成績の評価
細菌および細菌残渣を含む血液試料を、操作されたMBL磁性マイクロビーズを用いて効率的に浄化/捕捉することができる。血液中に存在する細菌および細菌残渣の量を、FcMBL ELISAを用いて高信頼度で決定することができる(図10、実施例9参照)。大腸菌または黄色ブドウ球菌のいずれかをスパイク投与した血液試料に5mMカルシウム(最終濃度)および4mg/mlヘパリンを加え、その後に操作されたMBL磁性マイクロビーズの結合/除去(clearing)を行った。スパイク投与した血液における操作されたMBL磁性マイクロビーズの成績は、下記の通りにFcMBL ELISAによって評価した。
【0464】
血液試料からの細菌/細菌断片の除去は、反復的捕捉を行った場合に向上したが、これは例えば、第1の結合実行におけるFcMBL操作されたビーズの飽和に起因した。
【0465】
実施例9.病原体を検出するための比色ELISA
本明細書に提示するものは、典型的な検査室(例えば、病理検査室)の既存のワークフローおよび能力に組み込むことのできる、病原体を検出するために開発された比色ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)キットである。いくつかの態様において、ELISAキットは、操作された微生物標的化磁性マイクロビーズ(例えば、Fc MBLまたはAKT-Fc MBLでコートされた磁性マイクロビーズ)、HRP標識Fc MBLまたはAKT-Fc MBLを含み得る。また、他の二次試薬(例えば、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)標識抗体)を、本明細書に記載のELISAキットに含めることもできる。HRP標識タンパク質および抗体は、病原体および磁性マイクロビーズの集塊の中に拡散し得る。HRP酵素は、検出シグナルを増幅し、それによってアッセイの感度を向上させることができる。そのようなELISAキットは、マイクロタイタープレートにおいて磁性マイクロビーズを用いて実行される典型的な検査室実験、例えば、KingFisher 96ウェル磁性ビーズ洗浄機とともに用いることができる。
【0466】
本明細書に記載のELISAアッセイのいくつかの態様において、微生物標的化磁性マイクロビーズ、例えば、FcMBL磁性マイクロビーズは、試料における微生物または病原体を捕捉して、その後に微生物標的化HRP(例えば、FcMBL-HRPまたはコムギ胚芽凝集素(WGA)-HRP)による検出を行うことができる。そのようなアッセイを用いることで、未確認病原体の存在を判定することができる。微生物標的化磁性マイクロビーズを含むELISAアッセイの1つまたは複数の態様を示す模式図は、図10に示されている。
【0467】
本明細書に記載のELISAアッセイの他の態様において、微生物標的化磁性マイクロビーズ、例えば、Fc MBL磁性マイクロビーズは、試料における微生物または病原体を捕捉して、その後に、様々な病原体検査に応じた特異的抗体を用いて検出を行うことができる。例えば、抗グラム陽性または抗グラム陰性抗体を迅速グラム検査(Gram test)に用いることができ、または特異的抗サルモネラ抗体をチフス菌検査に用いることができる。
【0468】
本明細書で提供するELISAアッセイは、例えば、典型的な検査室設備の既存の性能を使用することによって、例えば、KINGFISHER(商標)磁性ビーズ洗浄システムと連動させた96ウェルアッセイシステムのように、自動化することができる。
【0469】
そのようなELISAアッセイの検出限界(LOD)を決定するための例示的なプロトコルを以下に説明する:
a.微生物溶液(例えば、大腸菌希釈物)を、本明細書に記載の操作された微生物標的化磁性マイクロビーズ(例えば、FcMBL.81磁性マイクロビーズ)で、約15分間のインキュベーションによって捕捉する。
b.磁性マイクロビーズを磁石上で約2分間単離し、その後に界面活性剤、例えば、TBS-T 5mM Ca2+による4回の洗浄を行う。
c.結合した微生物を、微生物標的化HRP試薬、例えば、FcMBL.81 HRP試薬(約20分間)により、ブロッキング緩衝液、例えば、6% BSA block中で検出する。
d.HRP基質、例えばTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)色原体の添加により、検出アッセイを行う(約5分間のインキュベーション)。
e.酸、例えば4N H2SO4によって、反応を停止させる。
f.O.D.を、用いる酵素基質に応じた特定の波長で測定する(例えば、TMB色原体の場合は450nm)。
【0470】
様々な濃度の微生物または病原体に対するO.D.の例示的なグラフを、データ分析のためにプロットすることができる(図12)。当技術分野において確立されている他の任意のELISAプロトコルを、操作された微生物標的化磁性マイクロビーズとともに用いるように適合し得ることは明らかにしておく必要がある。
【0471】
実施例10.比色アッセイに基づく例示的な迅速病原体検出法
細菌感染および真菌感染による敗血症または「毒血症」は、全世界で年間1800万人の症例が発生しており、その結果、600万人以上が死亡している。特に脆弱なグループは発展途上国における新生児集団である。毎年およそ360万件に上る新生児死亡のうち、全世界での感染症がこれらの死亡の30%の原因であり、そのうち15%が敗血症によるものである。360万件の死亡のうち98%は、医療施設が限られている発展途上国で生じている。
【0472】
患者が菌血症に罹患している疑いがあると考えた場合、医師は迅速に行動しなければならない:細菌は急速に分裂し得るため、適切な治療が投与される前に失われたあらゆる時間が、患者転帰の決定的な違いを生む可能性がある(Gamacho-Montero et al 2006 Critical Care 10:R111)。新生児死亡の最大50%が最初の24時間に起こっていることからみて、速さが特に重要である。したがって、医師は、患者が真に菌血症を有するか否か、そしてもしそうであったならば、どの抗生物質を処方すべきかを迅速に確定しなければならない。感染症の同定のための現在のゴールドスタンダードは血液培養であるが、これは一般に数日を要する上、症例の50%以上では原因病原体を同定することができていない。このため、例えば発展途上国では、持ち運びができ、電気を必要とせず、容易に読み取りができ、費用が安く、かつ/または迅速である、ポイント・オブ・ケア(point-of-care)診断アッセイ/器具に対して強い需要が存在する。
【0473】
さらに、発展途上国での研究では、血流感染症の大半がブドウ球菌、クレブシエラ菌(Klebsiella)およびアシネトバクター菌(Acinetobacter)によって引き起こされ、これらを合わせると分離された病原体の85%超を占める。ボストンでの研究では、主要な病原体はブドウ球菌、腸球菌(Enterococci)、クレブシエラ菌、エシェリキア属菌(Escherichia)およびシュードモナス属菌(Pseudomonas)であり、これらが分離された病原体の85%超を占める。このため、正常であれば無菌で病原体を含まない体液における、細菌または真菌感染を検出して定量化することのできる迅速検査に対して需要がある。加えて、適切な広域スペクトルの治療選択肢を速やかに選択するためには、微生物または病原体をグラム陽性またはグラム陰性微生物に分類することができれば有利であると考えられる。
【0474】
病原体の抽出および濃縮:
本明細書で提示するように、操作されたマンノース結合レクチン(MBL)でコートされた磁性マイクロビーズは、血液からの病原体または微生物の抽出および/または濃縮のために用いることができる。MBLは、ほとんどの血液媒介病原体に固着し得る先天免疫系タンパク質であり、それにより、磁性マイクロビーズが、例えば、血液、CSF、滑膜液および尿といった体液の大量試料から細菌病原体および真菌病原体を抽出して精製するのに好適な選択性を持つことを可能にする。操作された微生物標的化分子、例えば、操作されたMBL(FcをMBLのマンノース結合領域に連結させる)のいくつかの態様は、製造費が1000分の1に安くなる可能性があり、かつ補体/凝固を活性化しない。MBLに代わる他の選択肢には、抗体および他のレクチンが非限定的に含まれる。いくつかの態様において、操作されたMBLでコートされた磁性マイクロビーズは、被験試料における1つまたは複数の微生物および/または病原体を捕捉するために用いることができる。
【0475】
感染を検出および定量するための例示的な比色ELISAアッセイ:
図10は、操作された微生物標的化分子または基質(例えば、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ)の1つまたは複数の態様を用いる、血液媒介病原体の検出および定量のためのELISA法の例示的なスキームを示している。患者試料を、適した捕捉物質でコートされた磁性マイクロビーズ、例えば、FcMBL分子(AKT-FcMBL分子を含む)でコートされた1μmまたは128nmの磁性マイクロビーズ、ならびに適した緩衝液、例えば、5mMカルシウムイオンおよびTween 20界面活性剤を含むTris緩衝食塩水と混合する。いくつかの態様において、適した緩衝液は、Tween 20を含むが5mMカルシウムイオンは含まないTris緩衝食塩水である。例えば、混合機(例えば、InvitrogenによるHULAMIXER(商標))上での約10分間または約20分間の、適したインキュベーションおよび/または混合期間の後に、捕捉された病原体を有する、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを、磁気スタンド(Invitrogen)を用いて収集した上で、血液生成物を除去するために、例えば、5mMカルシウムを伴うがTween 20界面活性剤は伴うかまたは伴わないTris緩衝食塩水中で洗浄する。捕捉された病原体は、当技術分野において公知の、および/または本明細書に記載の、任意の方法、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識FcMBL(任意の微生物、例えば、細菌性または真菌性微生物によって引き起こされる感染を検出し得る)などの発色試薬、またはグラム陽性細菌に対する特異的抗体、例えば抗LTA抗体、またはグラム陰性細菌に対するもの、例えば抗LPS抗体、またはカンジダ真菌に対するもの、例えば抗カンジダ抗体などによって検出および定量することができる。
【0476】
感染のレベル、またはFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ上に捕捉された微生物の量は、例えば、被験試料を、並行して実行した参照基準(例えば、細菌または真菌の検査室株)の標準曲線に対して比較することによって定量することができる。例えば、図20A~20Bは、本明細書に記載した通りのFcMBL ELISAによって評価した臨床分離物の捕捉効率に関するデータを示している。手短に述べると、約10μgのFcMBL磁性マイクロビーズ(およそ1μM)を、カルシウムイオン(例えば、1mL TBST-Ca2+)の存在下で、約10μLの細菌に対して添加する。捕捉物を約900rpmで約10分間、約25℃にて撹拌し、ELISAを、例えば、THERMO-LABSYSTEM KINGFISHER(商標)Magnetic Particle Processorにて、HRP標識FcMBL試薬を用いて行う。
【0477】
血液から捕捉されたC.アルビカンスを検出する、FcMBLベースのELISAの一例は図11に示されており、これは、血液中の500個未満のカンジダ真菌細胞を、FcMBLベースのELISAの態様を用いて検出できたことを示している。
【0478】
適した緩衝液中の大腸菌を検出するためのMBLサンドイッチELISAの感度を評価し、図12に示している。FcMBLベースのELISAアッセイの1つの態様における大腸菌に関する検出限界(LOD)は、細菌約160個またはそれ未満であった。さらに、種々の体液からの臨床分離物の捕捉効率を、本明細書に記載のFcMBL ELISAによって評価した(図21A)。手短に述べると、約10μgのFcMBL磁性マイクロビーズ(およそ1μM)を、流体試料(例えば、血液、尿、CSF、痰)とTBST-Ca2+の容積比1:1でのおよそ1mL~およそ2mLの混合物に約10μLの細菌をスパイク投与したものに添加した。捕捉物を約900rpmで約20分間、約25℃にて撹拌し、ELISAを、例えば、THERMO-LABSYSTEM KINGFISHER(商標)Magnetic Particle Processorにて、HRP標識FcMBL試薬を用いて行った。図21Aは、本明細書に記載のFcMBL ELISAの1つの態様を用いて、検査室株および臨床的メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を血液から単離することができたが、髄膜炎菌は高度のバックグラウンドシグナルを生じるようであったことを示している。図21A~21Bは、血液、CSFおよび尿などの種々の体液中にスパイク投与した黄色ブドウ球菌および大腸菌は、本明細書に記載のFcMBL ELISAの1つまたは複数の態様を用いて検出し得るが、痰は、本明細書に記載のFcMBL ELISAの1つの態様を用いると高度のバックグラウンドシグナルを生じるようであったことを示している。
【0479】
いくつかの態様において、ELISAアッセイは、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズの1つまたは複数の態様(FcMBLタンパク質の1つまたは複数の態様でコートされた128nmまたは1ミクロンのサイズの磁性マイクロビーズ)による、血液からの微生物または病原体の捕捉、および、細菌の非特異的検出のために標識-FcMBL(例えば、HRP標識FcMBL)を用いるか、または例えば、限定はされないものの、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌もしくは真菌などの特異的検出のための標識抗体を用いるかのいずれかである検出を含み得る。
【0480】
1つの態様においては、抗体および他のタンパク質に対する定方向カップリングのための凍結乾燥HRPまたはAP混合物であるLIGHTNING-LINK(商標)HRP Conjugation KitまたはLIGHTNING-LINK(商標)AP Conjugation Kit(Innova Biosciences)を用いて、FcMBL-HRPまたはFcMBL-AP構築物を作製した。FcMBL-HRPまたはFcMBL-APの作出には、当技術分野において周知である抗体に対する任意の標識手順を用い得ることから、他の任意の市販のキットを用いることができる。
【0481】
例示的な手作業によるディップスティック検査またはELISA検査:
例えばポイント・オブ・ケア診断のための、2つの例示的な形態の迅速診断アッセイを開発して、評価した。これらの迅速診断アッセイは、それらが持ち運びができ、読み取りが容易であり、費用が安く、迅速であり、かつ電気を必要としないことから、発展途上国で用いることができる。2つの診断アッセイの例示的な略図は図13~14に示されている。図13は病原体検出のための手作業によるディップスティックアッセイの例示的な略図を示しており、図14は病原体検出のための手作業によるELISA検査の例示的な略図を示している。
【0482】
1つの態様において、ディップスティック検査は、比色読み取り値を決定するための膜に対する病原体の捕捉を必要とする。膜に対するFcMBLの付加は、例えば、膜に対してFcMBLを直接的に架橋させること、配向および濃縮(FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに類似した様式での)のために核酸マトリックス(例えば、DNAマトリックス)を介して膜に対してFcMBLを架橋させること、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを、膜に印加する集束磁場勾配と組み合わせて用いること、または当技術分野で認知された他の任意の方法によるといった、複数のアプローチを用いて行うことができる。
【0483】
図15は、膜上での細菌の一般的なドットブロット検出に関する結果を示している。大腸菌または黄色ブドウ球菌のいずれかの系列希釈物をBiodyne膜に直接的に付加し、続いてそれを1%カゼイン中でブロックし、アルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBLとともに20分間インキュベートし、洗浄して、BCIP/NBT試薬によって比色検出した。アッセイの感度は約200cfu/ml~~約300cfu/mlであった。
【0484】
図16は、FcMBLをカップリングさせた膜上での細菌のドットブロット検出に関する結果を示している。1つの態様においては、膜(例えば、Biodyne膜)に対して、FcMBL分子をある特定の濃度で付加する。細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)をFcMBL-Biodyne膜に添加し、それを続いて1%カゼイン中でブロックし、アルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBLとともに20分間インキュベートし、洗浄して、BCIP/NBT試薬によって比色検出する。図16に示されているように、細菌の捕捉および検出はFcMBL濃度に依存的である。前述した通り、いくつかの態様において、FcMBLを膜上に直接的に固定化することができる。他の態様においては、FcMBLを、核酸マトリックス(例えば、DNAマトリックス)によって膜に対してカップリングさせることができる。代替的な態様において、FcMBLを、膜以外の任意の表面、例えば、ディップスティックアッセイ用の紙基質に対してカップリングさせることもできる。
【0485】
既存の任意のELISAプロトコルを、微生物検出のために、本明細書に記載された通りの操作された微生物標的化分子または基質と組み合わせて用いることができる。以下は、採血チューブ(例えば、任意で、図14に示されたようなクエン酸塩、リン酸塩およびデキストロース(CPD)などの1つまたは複数の抗凝固剤を含有する改変血液VACUTAINER(登録商標))内で行うELISAに基づく微生物検出法のためのプロトコルの一例を示している。以下の番号付きの段階は、図14中に表記された数値に対応する。
1.被験試料、例えば血液を、微生物標的化分子または基質(例えば、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ)の1つまたは複数の態様に対して添加する。例えば、約10μgのFcMBL磁性マイクロビーズ(例えば、濃度約2mg/mL)を被験試料に添加することができる。
2.微生物標的化分子基質(例えば、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ)を、被験試料、例えば血液中に再懸濁させる。
3.およそ5mMのCa2+(例えば、およそ5mM CaCl2)を含むTBST(例えば、0.05% Tween 80を含むTris緩衝食塩水(TBS))を添加する。
4.微生物を捕捉するために、混合物(任意で穏やかに撹拌しながら)を約10分間インキュベートする。
5.微生物標的化分子または基質を収集する。例えば、微生物標的化分子または基質がFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズである場合には、例えばチューブの周りに磁石を配置することによって、マイクロビーズを磁石で収集することができる。
6.TBST洗浄液を所望のレベル(例えば、洗浄用充填ライン)まで添加する。
7.FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを収集する‐洗浄液を除去する‐段階5および6を少なくとも2回繰り返す。
8.再懸濁させたFcMBL-HRP(例えば、約6% BSA緩衝液を含むddH2O中で凍結乾燥させたFcMBL-HRPを再懸濁させる)、または他の所望の検出用物質を、収集したFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに添加して、約10分間インキュベートする。
9.FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを収集する。
10.TBST洗浄液を所望のレベル(例えば、洗浄充填ライン)まで添加する。
11.FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを収集する‐洗浄液を除去する‐段階9および10を繰り返す。
12.検出用物質に適した基質(例えば、HRPに基づく検出のためのTMBなどの発色基質)を添加して、反応を約10分間進めさせる。
13.FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを、例えば磁石によって収集する。
14.反応溶液を読み取りチューブに移して、反応溶液の色を参照基準(例えば、参照ストリップ)と比較する。
【0486】
以上に示した試薬および段階は一例として例示されるものであり、限定的ではないものとする。したがって、当業者による試薬および/または段階に対する適切な改変も、本明細書に記載される範囲内にある。例えば、異なる洗浄緩衝液、検出用物質、および/または発色基質を用いることができる。用いる洗浄緩衝液の容積および/またはインキュベーション時間に応じて、洗浄段階の回数を増やすことも減らすこともできる。アッセイのためのいくつかの試薬(例えば、FcMBL磁性マイクロビーズ)は、凍結乾燥されるか、および/または滅菌瓶の中にある状態で供給されてよい。アッセイの読み取りは、参照基準(例えば、薄層状カラーストリップ)に対する比較に基づき得る。1つの態様において、アッセイの総アッセイ時間はおよそ1時間である。
【0487】
血液培養とは対照的に、本明細書に記載の病原体検出アッセイまたは診断アッセイのいくつかの態様は、細菌および/または真菌を短時間で、例えば、1時間という早さで検出することができる。さらに、診断アッセイのいくつかの態様(例えば、図13~14に示したようなポイント・オブ・ケアディップスティックアッセイおよびELISAアッセイ)のさらなる利点には、例えば、以下のものが含まれる。
・持ち運びできる:新生児死亡の半数は家庭分娩環境で起こる;
・電気を必要としない:手作業による操作;
・読み取りが容易:比色読み取り;
・費用が安い:結果の読み取りに高価な機器を必要としない;
・処分が容易:焼却処理用バイオハザード廃棄物;または
・それらの任意の組み合わせ。
【0488】
したがって、本明細書に記載の病原体検出アッセイまたは診断アッセイのいくつかの態様は、検査室へアクセスできない地域における臨床に基づく診断を強化し、それにより、抗生物質の不適切な使用を減らすことができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの局面は、一度の外来診察時に診断検査および治療投与/処方を可能にすることにより、経過観察されない患者を減らすことができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの局面は、新生児の臨床環境への曝露も減らすことができる。
【0489】
実施例11.リン酸ナトリウム緩衝液および/または酸性緩衝液を用いる、操作されたMBL分子(FcMBL)の再生
本明細書に記載のFcMBLは、環境試料および生物試料から広範囲にわたる微生物を捕捉するために用いることができる。継続的な浄化またはモニタリングが必要な状況では、プロセスの全体を通じて同一の基質(例えば、マイクロビーズ)を用い得ることが有用であると考えられる。これには、捕捉された微生物を放出し、そうすることで基質(例えば、マイクロビーズ)を再利用し得るようにすることが必要と考えられる。しかし、捕捉された微生物をFcMBLマイクロビーズから放出させることは困難な可能性がある。微生物に対するFcMBLマイクロビーズの最初の結合がカルシウム依存性である場合には、微生物が結合した後に、微生物/マイクロビーズ混合物をカルシウムを含まない溶液に移しても、一般に、捕捉された微生物の放出にはつながらない‐これはおそらく、マイクロビーズと微生物との間の結合力が強すぎて、カルシウムに対するFcMBLの親和性が、合理的な時間内の単純希釈によって克服されるには高くなりすぎるためと考えられる。このため、FcMBL-微生物相互作用からカルシウムを積極的に除去する機構について本明細書で評価した。
【0490】
カルシウムを除去するために当技術分野において用いられる最も一般的な戦略は、カルシウムキレート剤(例えば、EDTAまたはEGTA)の使用である。残念ながら、EDTAおよびEGTAなどのキレート剤は生物試料に対する刺激性が強いかまたは危険であることから、カルシウムを積極的に除去するためのさらなる機構について検討した。評価した2つの代替的な戦略には、以下が含まれる:(i)カルシウムとの結合の原因になるFcMBL上の負に荷電したカルボキシル基(グルタミン酸側鎖)にプロトンを付加することのできる低pH緩衝液(酸)の使用(これらの側鎖のプロトン付加により、それらの負電荷をなくすことができ、そのことにより、それらが正に荷電したカルシウムイオンと結合する能力をなくすことができる)、および(ii)カルシウムが可溶性でない緩衝液の使用、そのような緩衝液の導入はカルシウムイオンの沈殿をもたらして、それらがFcMBL-微生物境界面での必要な相互作用に利用できないようにすることができる。具体的には、pH 2.8の0.2Mグリシン緩衝液およびpH 6.0の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(リン酸塩緩衝液中でのカルシウムの溶解度は極めて低い)を用いて、Tris緩衝塩中での0.1M EDTAと比較した。これらの条件を、FcMBLベースのELISAを用いて、大腸菌に結合させたFcMBLマイクロビーズに対して評価した。
【0491】
大腸菌を一晩培養したものの3種類の異なる希釈物を、FcMBLマイクロビーズ上に捕捉させ、TBST対照、EDTA、0.2Mグリシン(pH 2.8)および0.1Mリン酸ナトリウム(pH 6.0)を含む4種の溶出緩衝液のうち1つで洗浄し、続いて標準的なELISAプロトコルを通しで実行した。シグナルの減少は、ELISAアッセイの前にFcMBLマイクロビーズに結合していた大腸菌がより少ないことに対応する。図18Aおよび18Bに見てとれるように、EDTA以外に、低pH緩衝液(例えば、0.2Mグリシン、pH 2.8)およびリン酸ナトリウム緩衝液も、結合した大腸菌をFcMBLマイクロビーズから放出させることができた。放出される微生物の量は、インキュベーション時間を長くすることによって、またはリン酸塩と酸性条件とを組み合わせること(すなわち、低pHのリン酸塩緩衝液)によって、増加させることができる。
【0492】
実施例12.抗生物質または消毒薬としてのFcMBLの使用
黄色ブドウ球菌は、創傷、熱傷および整形外科手術における敗血症の主要原因である。FcMBLマイクロビーズに対する黄色ブドウ球菌の結合によって、寒天プレート培養における細菌コロニーの数および増殖が低減したか否かを明らかにするために、黄色ブドウ球菌の10-4希釈物の2つの同等なアリコートを同一のLB寒天プレート上にプレーティングして、一晩培養した。アリコートの一方をFcMBLマイクロビーズと混合し、マイクロビーズと病原体の混合物をプレーティングした。対照アリコートはFcMBLマイクロビーズを含めずにプレーティングした。
【0493】
図19に示されているように、FcMBLマイクロビーズと混合した黄色ブドウ球菌を入れたプレートでは220個のコロニーが増殖し、一方、対照では1000個を上回るコロニーが増殖した。
【0494】
黄色ブドウ球菌とFcMBLマイクロビーズとの結合は、一晩のプレーティングによるコロニーの数をおよそ5分の1に減少させ、このことは、FcMBLマイクロビーズに付加させた創傷被覆材がFcMBLマイクロビーズに対する黄色ブドウ球菌の結合を可能にし、それにより、病原体負荷量を減少させ、かつ局在化させることができることを示している。そのため、創傷のより深部への黄色ブドウ球菌の移動を減少させることができる。被覆材に付加させた局在化された病原体は、被覆材の定期的な交換時に容易に取り除くことができる。他の態様において、FcMBL局在化処置を、例えば、銀ナノ粒子、陰圧処置、減圧補助創傷郭清などの、ただしこれらには限定されない他の創傷被覆材プロトコルと組み合わせることができる。代替的な態様において、FcMBLマイクロビーズを流体の清浄化のために用いることもできる。
【0495】
いくつかの態様においては、FcMBL分子を、例えば、MBLノックアウトマウスモデル(例えば、米国特許第U.S.7,491,868号を参照、その内容は参照により本明細書に組み入れられる)、黄色ブドウ球菌モデル、および/またはラット敗血症モデル(例えば、Onderdonk AB et al., (1984) Rev Infect Dis; 6 Suppl1:S91-5を参照)を含む、敗血症の動物モデルにおいて、治療薬としての評価を行う。マウスFc g2aおよびヒトIgG1FcとしてのヒトMBLを有する代用分子は、マウスにおいて免疫原性となる。マウスおよびラットの両方で働くマウスMBL-Aおよび-Cを有する完全マウス型のものを構築する。
【0496】
実施例13.様々なキレート化、pHおよび塩類緩衝液による、FcMBL分子と結合した細菌の溶出
キレート剤、pH、塩類含有量の異なる一連の緩衝液を、どの緩衝液が黄色ブドウ球菌または大腸菌をFcMBLマイクロビーズから溶出させ得るかを明らかにするために、96ウェルELISAアッセイにおいて評価した。黄色ブドウ球菌または大腸菌の検出のための例示的なELISAアッセイを本明細書に記載するが、それは限定的であるとはみなされない。当技術分野において公知である他の任意の検出法も、標的細菌の読み取りシグナルを検出するために用いることができる。
【0497】
実施例10に記載したように、図10は、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを用いるELISAアッセイの例示的な基本原理を示している。感染のレベル、またはFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ上に捕捉された微生物の量は、被験試料を、例えば、並行して実行した細菌または真菌の検査室株などの標準曲線に対して比較することによって定量することができる。図23に示されているように、HRP標識FcMBL分子をELISAアッセイにおける検出用物質として用いて、緩衝液中のわずか149個の細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)を検出することができる。いくつかの態様において、ELISAアッセイは1時間未満で行うことができる。
【0498】
評価した緩衝液には、以下が非限定的に含まれる。0.1Mリン酸塩緩衝液(pH 6);約150mMのNaClを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(pH 6);500mM NaClを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(pH 6);0.1Mリン酸塩緩衝液中にある0.1M EDTA;0.1Mリン酸塩緩衝液中にある0.1M EGTA;1Mホウ酸塩緩衝液(pH 7.4);および0.1M炭酸塩-炭酸水素塩緩衝液。1mMを上回る濃度でCa2+を含むTBSTの緩衝液を対照として用いた。理論に拘束されることは望まないが、Ca2+は、FcMBL分子のMBL部分に対する微生物の結合のために一般に必要とされる。室温(または最高37℃まで)での約10~20分間のインキュベーション後に、FcMBL磁性マイクロビーズに結合した微生物の溶出を分析した。図24に示されているように、Ca2+を含むものを除いて、評価した緩衝液はすべて、FcMBL分子および/または磁性マイクロビーズに結合した大腸菌の85%超を溶出させることができたが、それらは黄色ブドウ球菌に対してはほとんどまたは全く影響を及ぼさなかった。しかし、1MおよびpH 7.4のホウ酸塩緩衝液は黄色ブドウ球菌の約33%を溶出させることができた。
【0499】
FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズからの黄色ブドウ球菌および大腸菌細菌の溶出についても、約150mMのNaClを含む0.1M EDTAまたは0.1Mリン酸塩緩衝液(pH 7.4)を用いて評価した。結果は図25Aおよび図25Bに、それぞれOD450および結合した細菌のパーセントとして示されている。図25Bは、EDTAおよびリン酸塩緩衝液は、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズから黄色ブドウ球菌の40%および53%しか溶出させることができず、一方、EDTA緩衝液およびリン酸塩緩衝液は両方とも、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズから大腸菌細菌の90%超を除去して、シグナルをほぼバックグラウンドレベルまで低下させることができたことを示しており、このことは、黄色ブドウ球菌がグラム陰性大腸菌よりも、FcMBL分子/磁性マイクロビーズのFc部分に対してより強固に結合し得ることを示している。
【0500】
実施例14.黄色ブドウ球菌を検出するため、および/または大腸菌と識別するための単一チューブアッセイ
既存の任意のELISAプロトコルを、微生物検出のために、本明細書に記載された通りの微生物標的化基質と組み合わせて用いることができる。例えば、改変採血管(例えば、クエン酸塩、リン酸塩およびデキストロース(CPD)などの1つまたは複数の抗凝固剤を任意で含有する改変血液VACUTAINER(登録商標))内でELISAに基づく微生物検出法を行うための例示的なプロトコルは、実施例10に先に記載され、かつ図14に示されており、黄色ブドウ球菌を検出するため、および/またはそれを大腸菌と識別するために用いることができる。
【0501】
いくつかの態様において、上記の例示的なプロトコルの段階3は、カルシウム塩またはカルシウムイオンを伴わないTBSTを使用することができる。他の態様において、プロトコルの段階3は、カルシウムイオンを伴うかまたは伴わないTBST緩衝液中にキレート剤(例えば、50mM EDTAまたはEGTA)を含めることができる。これらの態様において、TBST緩衝液における遊離カルシウムイオンの欠如(例えば、キレート剤の添加、またはカルシウムイオンをTBST緩衝液に入れないこと)により、黄色ブドウ球菌ではなく、少なくとも大腸菌が微生物標的化基質と結合する尤度を実質的に低下させることができる。このため、大腸菌ではなく黄色ブドウ球菌が、遊離カルシウムイオンの非存在下で微生物標的化基質上に選好的に捕捉される。いくつかの態様において、上記の例示的なプロトコルの段階3は、カルシウム塩またはカルシウムイオンを伴うTBSTを使用することができ、そのことは、少なくとも大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方が微生物標的化基質上に捕捉されることを可能にする。
【0502】
いくつかの態様において、段階6、7および10にかかわる洗浄では、カルシウム塩(例えば、およそ5mMのCaCl2)またはカルシウムイオンを、洗浄緩衝液、例えばTBST中に含めることができる。このため、少なくとも大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方が、微生物標的化基質に対して結合したまま保たれ得る。捕捉された大腸菌を微生物標的化基質から除去することが望ましい他の態様において、段階6、7および10にかかわる洗浄では、カルシウム塩またはカルシウムイオンを除外すること、かつ/またはキレート剤(例えば、およそ50mMのEDTAおよびEGTA)を洗浄緩衝液に含めることができる。
【0503】
前に述べたように、実施例10および図14に示された試薬および段階は一例として例示されるものであり、限定的ではないものとする。したがって、当業者による試薬および/または段階に対する適切な改変も、本明細書に記載される範囲内にある。例えば、異なる洗浄緩衝液、検出用物質、および/または発色基質を用いることができる。用いる洗浄緩衝液の容積および/またはインキュベーション時間に応じて、洗浄段階の回数を増やすことも減らすこともできる。アッセイのためのいくつかの試薬(例えば、FcMBL磁性マイクロビーズ、および/またはFcMBL-HRP)は、凍結乾燥されるか、および/または滅菌瓶の中にある状態で供給されてよい。アッセイの読み取りは、参照基準(例えば、薄層状カラーストリップ)に対する比較に基づき得る。1つの態様において、アッセイの総アッセイ時間はおよそ1時間~1.5時間である。
【0504】
上記の例示的なELISAアッセイプロトコルを用いて、図26A~26Bでは、EDTAキレート化の存在下または非存在下における、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに対する黄色ブドウ球菌および大腸菌の結合に関する、チューブベースの比色ELISAアッセイの結果を示している。黄色ブドウ球菌および大腸菌(10-1希釈は細菌約108個にほぼ対応する)を、カルシウムイオンおよび/またはEDTAの存在下または非存在下で、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズによって捕捉した。例えば、いくつかの態様においては、被験試料、例えば血液中への、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズの再懸濁後に、カルシウム塩(例えば、およそ5mMのCaCl2)を有するTBST緩衝液(例えば、0.05% Tweenを含むTris緩衝食塩水(TBS))を添加することができる。そのような態様においては、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方を、カルシウムイオンの存在下で、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ上に捕捉することができる。捕捉された大腸菌を、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズから除去するためには、細菌を伴う、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを、十分な遊離カルシウムイオンを有しないTBST(例えば、カルシウム塩、例えばCaCl2を有しないTBST;過剰なEDTA(例えば、およそ50mMのEDTA)を有するカルシウム塩の溶液(例えば、およそ5mMのCaCl2);またはEDTA溶液(例えば、およそ50mMのEDTA))で洗浄するとよい。代替的な態様においては、例えば、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに対する大腸菌の結合が可能になるように、十分な遊離カルシウムイオンを有しないTBSTを用いることによって、被験試料をFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズと接触させた時に、大腸菌がFcMBLでコートされた磁性マイクロビーズと結合するのを防ぐことができる。
【0505】
微生物捕捉および洗浄の後に、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ上に結合した残りのすべての細菌を、例えば、FcMBL-HRPおよびTMB比色検出によって続いて検出する。総アッセイ時間は約40分であった。図26A~26Bは、大腸菌とは異なり、黄色ブドウ球菌は、キレート剤、例えばEDTAの存在下でFcMBLと結合することができ、このことはMBL媒介性結合以外に、Fc媒介性結合がかかわり得ることを示している。しかし、カルシウムイオンの存在下では、FcMBLに対する黄色ブドウ球菌の追加的な結合がある可能性があり、これはカルシウムイオンの存在下におけるFcMBLに対する黄色ブドウ球菌の結合が、カルシウムイオンの非存在下におけるもののほとんど2倍の強さであるためである。このことは、Fc結合およびMBL結合がいずれも、FcMBLと黄色ブドウ球菌との安定した結合の原因になる得ることを示している。FcMBLと黄色ブドウ球菌との結合の動態は、例えば、BiaCoreシステムまたはKinExAで明らかにすることができる。
【0506】
次に、キレート剤、例えばEDTAの存在下における黄色ブドウ球菌の捕捉が選択的であるか否かを明らかにすることを目指した。このために、4つの病原体種、例えば大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)およびC.アルビカンスの捕捉を、キレート剤、例えばEDTAの存在下または非存在下において、および様々なCa2+濃度で比較した。図27は、黄色ブドウ球菌は、キレート剤、例えばEDTAの存在下において、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズによって捕捉され得るが、一方、他の病原体種、例えば大腸菌、表皮ブドウ球菌およびC.アルビカンスは、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに対する結合のためにカルシウムイオンを必要とすることを示している。いくつかの態様において、高濃度のCa2+への置き換えは、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ上での黄色ブドウ球菌の捕捉を減少させるように思われる。表皮ブドウ球菌は黄色ブドウ球菌とは異なり、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに対する結合のためにカルシウムイオンを必要とすることに留意されたい。このため、キレート剤、例えばEDTAの存在下における捕捉および/または洗浄は、黄色ブドウ球菌を大腸菌と識別するために用い得るだけでなく、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌とを識別するためにも用い得る。
【0507】
黄色ブドウ球菌は一般にプロテインAを発現し、それはFcMBLとのFc媒介性結合に寄与し得ることから、次に、Fc媒介性結合の妨害によって、黄色ブドウ球菌のFcMBLからの溶出を引き起こせるか否かを明らかにすることを目指した。理論に拘束されることは望まないが、FcのプロテインAとの結合を妨害するためには、低pH緩衝液を一般に用いることができ、例えば、約100mMリン酸塩および150mM NaClを含むpH 3の緩衝液を用いることができる;一方、例えば50mM EDTAなどを用いるキレート化は、一般に、MBL媒介性結合を妨害するために用いることができる。しかし、図28に示されているように、大腸菌は、本明細書に示されているように、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズから、50mM EDTA pH 8を用いて溶出させることができるものの、黄色ブドウ球菌はEDTA pH 8によっても、0.1Mリン酸塩/0.15M Na+ pH 3を含むpH 3緩衝液によっても、EDTAの後に低pHリン酸塩緩衝液を用いる逐次的洗浄によっても、有意には溶出されない。EDTAはリン酸塩を沈殿させることから、MBL媒介性結合およびFc媒介性結合の両方の妨害によって、黄色ブドウ球菌をFcMBLから溶出させ得るか否かを明らかにするために、EDTAおよび低pHリン酸塩緩衝液を合わせて用いることはできなかった。しかしながら、キレート化によってもpHを下げることによっても黄色ブドウ球菌をFcMBLから溶出させることができなかったという知見は、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに対する黄色ブドウ球菌の結合には少なくとも2つの独立した機序が存在し得ることを示している。理論に拘束されることは望まないが、キレート化(MBL依存的結合をなくす)はFcMBLからの黄色ブドウ球菌の溶出を引き起こすには不十分であるが、これはブドウ球菌プロテインAに対するFc依存的結合が影響を受けず、プロテインA結合の低pH溶出はMBL特異的結合を妨害しないためである(このことは、Fcでコートされた磁性マイクロビーズおよび野生型MBLでコートされた磁性マイクロビーズなどの対照を用いることによってさらに評価することができる)。したがって、いくつかの態様においては、黄色ブドウ球菌とFcMBLとの間のFc媒介性結合およびMBL媒介性結合の両方の同時的な妨害により、黄色ブドウ球菌がFcMBLと結合するのを防ぎ得ることが企図される。EDTAキレート化と合わせて働くことのできる例示的な低pH緩衝液には、pH 4.4での2Mアルギニンがある(Arakawa et al. 2004 Protein Expr Purif.; 36(2):244-2488)。1つの態様においては、pH 4.4での2Mアルギニンを用いて、黄色ブドウ球菌をFcMBLから溶出させること、および/または黄色ブドウ球菌がFcMBLと結合するのを防ぐことができる。
【0508】
本明細書における知見は、黄色ブドウ球菌の細胞壁に存在するプロテインAが、キレート剤(例えば、EDTA)の存在下で、Fc媒介性結合に起因して、大腸菌ではなく黄色ブドウ球菌を捕捉し得る能力に、少なくとも部分的には寄与し得ることを示している。このことから、プロテインAを発現する微生物を、キレート剤(例えば、EDTA)の存在下でFcMBL上に捕捉させて、それにより、プロテインA陰性微生物、例えば、大腸菌と識別することが可能であることが企図される。
【0509】
実施例15.黄色ブドウ球菌を検出するため、および/またはそれを大腸菌と識別するための、ドットブロット/ディップスティックアッセイ
FcMBLを架橋させた基質表面上に微生物を捕捉させて、比色読み取りの決定をそこから行うための、ドットブロットおよび/またはディップスティックアッセイを開発することができる。いくつかの態様においては、ドットブロットおよび/またはディップスティックアッセイを用いて、黄色ブドウ球菌を大腸菌と識別することができる。
【0510】
基質表面(例えば、膜表面、ガラス表面、チューブ表面)に対するFcMBLの付加は、例えば、基質表面に対してFcMBLを直接的に架橋させること、検出感度を高めるための配向および濃縮(FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズに類似した様式での)のために核酸マトリックス(例えば、DNAマトリックスまたはDNA/オリゴヌクレオチド折り紙構造)を介して基質表面に対してFcMBLを架橋させること;検出感度を高めるためにデンドリマー様構造(例えば、PEG/キチン-構造)を介して基質表面に対してFcMBLを架橋させること;FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを基質表面に印加する集束磁場勾配を用いて基質表面に引きつけること、または当技術分野で認知された他の任意の方法といった複数のアプローチによって行うことができる。いくつかの態様において、基質表面が「油脂加工(oiled)」されてもよい。理論に拘束されることは望まないが、基質表面をオムニフォビック層(omniphobic layer)で処理することにより、微生物と基質表面との間のその後の疎水性結合がなくても、FcMBLによる微生物に対する結合を可能にすることができる。このことは、必要時に微生物を除去するためのキレート化を可能にする。例えば、Wong TS et al., "Bioinspired self-repairing slippery surfaces with pressure-stable omniphobicity." (2011) Nature 477(7365): 443-447、および国際出願第PCT/US12/21928号を参照されたく、これらの内容は、滑りやすい(slippery)基質表面を作製するための方法に関して、参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様においては、あらゆる非特異的結合を低下させるために、基質表面をブロッキング剤(例えば、およそ1%のカゼインによる約30分間の処理)によってさらに処理することができる。
【0511】
いくつかの態様においては、FcMBLを付加したディップスティックを、被験試料、例えば血液試料に添加して、その後に、TBSTによる1回または複数回の洗浄、およびアルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBLとのインキュベーション(例えば、3% BSAを含むTBST中にあるAP標識FcMBLの1:10,000希釈物とのおよそ20分間のインキュベーション)を行うことができる。アルカリホスファターゼとのインキュベーション後に、ディップスティックを1回または複数回洗浄し(例えば、TBSTで少なくとも3回の洗浄、その後にTBSで少なくとも1回の洗浄)、その後に比色法による発色のためにBCIP/NBT試薬を添加することができる(例えば、およそ20分間)。いくつかの態様において、洗浄緩衝液(例えば、TBSTまたはTBS)は、大腸菌および黄色ブドウ球菌を含むあらゆる微生物がディップスティック上に捕捉され得るように、カルシウムイオンまたはカルシウム塩(例えば、およそ5mMのCalCl2)を含み得る。代替的な態様において、洗浄緩衝液(例えば、TBSTまたはTBS)はカルシウムイオンもカルシウム塩も含まなくてもよい。いくつかの態様において、カルシウムイオンまたはカルシウム塩(例えば、およそ5mMのCaCl2)を含む洗浄緩衝液(例えば、TBSTまたはTBS)は、遊離カルシウムイオンをキレート化するための過剰量のキレート剤(例えば、およそ50mMのEDTAまたはEGTA)を含み得る。本明細書で示されているように、黄色ブドウ球菌は、キレート剤の存在下、またはカルシウムイオンの非存在下において、FcMBL上に結合したままに保たれ得る。したがって、被験試料、例えば血液との接触後のディップスティックを、遊離カルシウムイオンを含まない、かつ/またはキレート剤を含む緩衝液で洗浄する場合には、後に検出されるディップスティック上のあらゆる細菌は、黄色ブドウ球菌である可能性が高い(大腸菌はMBL媒介性結合のためにカルシウムイオンを一般に必要とするため)。
【0512】
図15は、Biodyne膜上の細菌の一般的なドットブロット/ディップスティック検出の結果を示している。大腸菌または黄色ブドウ球菌の系列希釈物(10-1~10-6希釈物)をBiodyne膜上に直接的にスポッティングし、それを1%カゼイン中でブロックし、およそ5mMのCaCl2+を含むTBSTで1回または少なくとも2回洗浄し、アルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBL(3% BSAおよび5mM CaCl2を含むTBST中に1:10,000希釈)とともに20分間インキュベートし、5mM CaCl2を含むTBSTで少なくとも3回洗浄し、その後に5mM CaCl2を含むTBSで少なくとも1回の洗浄を行った上で、BCIP/NBT試薬によって比色検出した。図15は、わずか大腸菌130個または黄色ブドウ球菌343個を、AP標識FcMBLおよびBCIP/NBT検出システムを用いた30分間の発色後に検出することができたことを示している。被験試料中の黄色ブドウ球菌を大腸菌と識別するためには、被験試料、例えば血液をスポッティングしたドットブロットを、キレート剤、例えばEDTAの存在下において洗浄することができる。キレート剤、例えばEDTAの存在下において検出される微生物は、大腸菌ではなく黄色ブドウ球菌である可能性が高い。
【0513】
前述した通り、図16は、FcMBLをカップリングさせた膜上での黄色ブドウ球菌細菌のドットブロット検出の結果を示している。1つの態様においては、膜(例えば、Biodyne膜)に対してFcMBL分子をある特定の濃度で付加する。細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)が、Biodyne膜上に固定化されたFcMBLによって捕捉され、それを続いて1%カゼイン中でブロックし(例えば、約30分間)、アルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBLとともに20分間インキュベートし、洗浄して、BCIP/NBT試薬によって比色検出した。図16に示されているように、細菌の捕捉および検出はFcMBL濃度に依存的である。前述した通り、いくつかの態様において、FcMBLを膜上に直接的に固定化することができる。例えば、約1μg~約1mgのFcMBL、約2μg~約500μgのFcMBL、約5μg~約250μgのFcMBL、または約10μg~約100μgのFcMBLをBiodyne膜上にスポッティングして、乾燥させることができる。1つの態様において、膜上へのスポッティングのために用いられるFcMBL溶液の濃度は、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約15mg/mLであってよい。1つの態様において、膜上へのスポッティングのために用いられるFcMBL溶液の濃度は、約11.5mg/mL前後であってよい。他の態様においては、FcMBLを、核酸マトリックス(例えば、DNAマトリックス)によって膜に対してカップリングさせることができる。代替的な態様において、FcMBLを、膜以外の任意の表面、例えば、ディップスティックアッセイ用の紙基質に対してカップリングさせることもできる。いくつかの態様においては、あらゆる非特異的結合を低下させるために、FcMBLとのカップリング後の基質表面(例えば、Biodyne膜)を、ブロッキング剤(例えば、1%カゼインとの約30分間のインキュベーション)によってさらに処理することができる。いくつかの態様においては、ブロッキングを受けた基質表面を、例えば、カルシウムイオン(例えば、CaCl2などのカルシウム塩からのもの)を有するかまたは有しないTBSTによる1回または複数回の洗浄によって洗浄することができる。いくつかの態様においては、ブロッキングを受けた基質表面を、例えば、カルシウムイオン(例えば、CaCl2などのカルシウム塩からのもの)を含むTBSTによる少なくとも2回の洗浄によって洗浄することができる。
【0514】
大腸菌および/または黄色ブドウ球菌のドットブロット判定のための例示的なプロトコルを以下に提示する:
‐約1~100μg(または約3~15μg)のFcMBLがスポッティングされ、かつ任意で約1%カゼインにより約1時間ブロッキングされ、およそ5mMのCa2+を含むTBST中で少なくとも2回洗浄されたBiodyne膜を用意する。
‐FcMBLがスポッティングされた膜を、被験試料、例えば血液試料の中に浸す。
‐およそ5mMのカルシウムイオン、および/またはキレート剤(例えば、およそ100mMのEDTA)を含むTBST中に添加して、細菌がFcMBLによって捕捉されるように約20分間インキュベートする。キレート剤(例えば、EDTA)の添加により、カルシウムイオンのキレート化を引き起こすことができ、それは続いてMBL媒介性結合を阻害/妨害するが、Fc媒介性結合に対してはそうではない。いくつかの態様においては、およそ5mMのカルシウムイオンを含むTBSTを用いて大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方を捕捉し、続いて、キレート剤(例えば、EDTA)を含むTBST洗浄緩衝液によって大腸菌を溶出させることができる。
‐およそ5mMのカルシウムイオンおよび/またはおよそ100mMのEDTAを含むTBST中で少なくとも2回洗浄し、各洗浄を少なくとも約10分間続ける。捕捉用または洗浄緩衝液へのEDTAの添加により、カルシウムイオンのキレート化を引き起こすことができ、それは続いてMBL媒介性結合を阻害/妨害するが、Fc媒介性結合に対してはそうではない。このため、大腸菌は、キレート剤、例えばEDTAの存在下においては、FcMBLと結合することができない。
‐任意で、およそ5mMのカルシウムイオンを含むTBST中で少なくとも2回洗浄する。
‐約3% BSAおよびおよそ5mMのカルシウムイオンを含むTBST中に希釈したアルカリホスファターゼ(AP)標識FcMBL(例えば、1:5000希釈)中で、例えば約30分間インキュベートする。
‐およそ5mMのカルシウムイオンを含むTBSTで少なくとも3回洗浄する。
‐およそ5mMのカルシウムイオンを含むTBSで1回または複数回洗浄する。
‐比色検出のために、NBT/BCIPによって、例えば4分間発色させる。
【0515】
当業者の範囲内にある例示的なプロトコルに対するあらゆる改変も、本明細書に記載の様々な局面および/または態様の範囲内にある。例えば、用いる洗浄緩衝液の容積、各洗浄がどの程度長くかかるか、および/またはFcMBLに対する細菌の結合親和性の強さに基づいて、洗浄の回数を増やすことも減らすこともできる。さらに、HRPおよび/または発色基質(例えば、TMB、DABおよびABTS)を非限定的に含む、APおよびNBT/BCIP以外の異なる検出酵素および対応する酵素基質を用いることもできる。いくつかの態様においては、カルシウムイオンをキレート化し得る任意のキレート剤(例えば、EGTAおよびEDTA)を用いることができる。いくつかの態様においては、ELISAアッセイおよびFcMBLに対する細菌の結合との適合性のある、カルシウムイオンの任意の供給源(例えば、フッ化カルシウムなどの異なるカルシウム塩)を用いることもできる。
【0516】
図29は、上記の例示的なプロトコルを用いると、黄色ブドウ球菌はFc媒介性結合に寄与し得るプロテインAを発現し得るが、大腸菌はそうでないことから、黄色ブドウ球菌はキレート剤、例えばEDTAの存在下において、FcMBLがスポッティングされたドットブロット上に捕捉され得るが、一方で、大腸菌は捕捉されないことを示している。このように、キレート剤の存在下およびカルシウムイオンの下での、FcMBLに対する黄色ブドウ球菌および大腸菌の結合挙動の違いに基づいて、黄色ブドウ球菌を大腸菌と識別することができる。
【0517】
理論に拘束されることは望まないが、プロテインGは一般にIgGのFcと結合し得るため、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、プロテインGを発現する微生物(例えば、連鎖球菌)を検出するため、およびそれらをプロテインG陰性微生物、例えば大腸菌と識別するために用いることができる。
【0518】
実施例16.FcMBLに結合した微生物物質または成分からの微生物の迅速同定
感染症の診断は、間接的または直接的な証拠に依拠している。間接的な証拠は、病原体を対象とする適応性かつ特異的な宿主応答の検出に依拠している。直接的な証拠は、感染部位からの微生物の培養、病原体特異的な核酸の増幅および検出、または血液または尿における特異的抗原の検出に依拠している。
【0519】
特異的抗原の検出は、種々の感染性疾患に対して広く用いられており、最も一般的なものにはレジオネラ症(尿中のレジオネラ菌(Legionella pneumophila)血清型1)、マラリア(血液中の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum))があり、成功率は低くなるが肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)感染症(尿中)もある。しかし、直接的な抗原検出は、特定の病因を可能性に含めるため、または除外するために用い得るのみであり、ほとんどの細菌を同定することはできない。
【0520】
本明細書に記載されたように、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBLを結合させた常磁性マイクロビーズ)は、例えば、細菌、真菌、寄生虫またはウイルスなどの、ただしこれらには限定されない病原体を含む、多種多様な微生物の表面に結合することができる。例えば、いくつかの態様において、血液または尿または他の任意の生物学的流体を、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズ、および適切な対照(例えば、関連性のないタンパク質でコートされた磁性マイクロビーズによる非特異的結合対照)による微生物捕捉に供することができる。したがって、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBL)を用いて、診断用途または治療用途のために、細菌などの微生物を結合させることができる。
【0521】
操作された微生物結合性分子または基質は、微生物の細胞表面の少なくとも一部分と結合し得るだけでなく、操作された微生物結合性分子は、生物学的流体中に見出される、微生物から派生した微生物由来の循環している細胞断片または物質をも、例えば、感染症の経過において、菌血症が存在しない場合でさえも、捕捉することができる。そのような要素の存在は診断用途に用いることができ、例えば、病原体から派生した病原体由来の細胞断片または物質の存在により、感染性疾患の診断を下すことができる。さらに、結合産物の生化学的/プロテオミクス的(MALDI-TOF、多重質量分析(例えば、MSn)または特異的抗体もしくはアプタマーに基づく)分析により、ほとんどの重要な病原体に関して疾病特異的な要素の認識が可能となる。したがって、血液中を循環しているか、または尿などの他の液体、または任意の適した手段(例えば、生検、穿刺、吸引および洗浄、ただしこれらには限定されない)によって試料採取された他の任意の臓器中に見出される、生きていない微生物物質または粒子の捕捉によって、対象の体内の任意の臓器(血液、正常な無菌の流体または事実上の空洞を含む)で起こっている感染の診断のための方法も、本明細書において提供される。
【0522】
微生物またはその断片(微生物に由来する物質も含む)の結合は、試料採取した臓器または組織または細胞(血液または別のもの)の感染に対して用い得るだけでなく、十分な細菌破壊または異化が、血流、尿または他の任意の簡便に入手し得る液体における微生物物質の存在をもたらす、体内のあらゆる箇所で進行しているあらゆる重大な感染プロセスに対しても用いることができる。
【0523】
FcMBLの広域性により、臨床的に重要なほとんどの細菌種の捕捉が可能である。微生物物質または微生物の断片の存在は、それらが一般に血流および最も可能性の高いものとして尿に入り込むことから、深部組織感染を反映し得るため、この微生物物質または微生物の断片の捕捉および特徴づけを、所与の微生物種に対して特異的な証拠マーカーとして用いて、それにより、生物におけるいずれかの箇所で感染症を引き起こしている微生物の診断および/または同定を可能にすることができる。
【0524】
この目的に向けて、FcMBLが、内毒素を含む、微生物に由来する生きていない断片または物質を含む微生物物質と結合し得るか否かを明らかにすることを目指した。FcMBLでコートされたマイクロビーズ(例えば、FcMBLでコートされた磁性または蛍光性マイクロビーズ)を細菌培養物とともにインキュベートして、その後に顕微鏡下で検出した。具体的には、FcMBLでコートされた常磁性マイクロビーズ(直径1μm、MYONE(商標),Invitrogen)を用いて、TBST Ca2+ 5mM中に希釈された大腸菌および/またはその細菌断片を約10分間かけて捕捉し、その後に約3回の洗浄を行った(洗浄の回数は、試料処理条件に応じて、より少なくてもより多くてもよい)。FcMBLでコートされた常磁性マイクロビーズを明視野下で観察した。捕捉された大腸菌および/または細菌断片を、FcMBLでコートされたフルオロスフェア(FluoroSphere)で標識することもできた(例えば、5mM Ca2+および3% BSAを含むTBST中に1:100:約2時間のインキュベーション)。すべてのFcMBL結合性物質を、FcMBLでコートされたフルオロスフェア(Invitrogen)を用いて画像化した。無傷の微生物およびその断片の両方が、FcMBLでコートされたマイクロビーズによって捕捉されたことを容易に視認することができ、このことは、結合した微生物断片からの増生が観察されなかったのに対して、結合した無傷微生物からは増生が観察されたことからも明らかであった(図30A)。さらに、FcMBLでコートされたマイクロビーズを、生細胞の検出のために、Alamar Blue(AB)色素の存在下で、例えば約1時間インキュベートして、適切な光励起波長で画像化した(例えば、SP5:黄色/緑色‐フルオロスフェア;赤‐AB)。図30Bに示されているように、FcMBLでコートされたフルオロスフェアおよび/または磁性マイクロビーズに結合した物質または材料は、生きた微生物(中央のパネル)、および微生物、例えば大腸菌に由来する生きていない物質(左のパネル)の両方を含み得る。
【0525】
特異的抗体の使用により、FcMBLに結合した微生物材料の性質および/または性質の特徴づけが可能となる。限定的ではないものの、大腸菌リポ多糖リピドAに対して産生された特異的抗体(抗LPSリピドA抗体)または関心対象の病原体に対して特異的な他の抗体を、この実施例では用いた。本明細書に記載した通りの1μm FcMBLマイクロビーズによって大腸菌を捕捉し、その後に大腸菌に対して特異的な一次抗体とのインキュベーション、任意で画像化のために一次抗体に対する標識二次抗体とのインキュベーションを行った(一次抗体が検出可能な標識を含まない場合)。1つの態様においては、FcMBLマイクロビーズ上に結合して捕捉された大腸菌を、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約500倍に希釈した抗LPSリピドA抗体(例えば、ポリクローナル抗体)とともに約20分間インキュベートし、その後に、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約2000倍に希釈した抗ヤギIgG Cy3標識抗体とのインキュベーションを約20分間行った。FcMBLでコートされたマイクロビーズ上に結合した標識された大腸菌を、続いて、蛍光顕微鏡によって画像化した。図31A~31Bに示されているように、大腸菌特異的抗体(例えば、抗LPSリピドA抗体)は、FcMBLでコートされた基質(例えば、磁性マイクロビーズ、または蛍光性マイクロビーズ)に結合した大腸菌と首尾良く結合していることが示された。この結合は、FcMBLでコートされた磁性ビーズ(例えば、AKT-FcMBLでコートされたMYONE(商標)磁性マイクロビーズ)上での大腸菌の捕捉を緩衝液中で行うか、またはヘパリン(図31A)もしくはEDTA(図31B)などの抗凝固剤とともに血液中で行うかにかかわらず観察された。大腸菌(E. coil)を伴わずに(例えば、大腸菌をスパイク投与せずに)血液中または緩衝液中でインキュベートしたマイクロビーズは、抗LPSリピドA抗体による結合を受けないことが見出された。さらに、大腸菌株と反応しない他の抗体(例えば、抗LTA抗体)もマイクロビーズと結合しなかった。このように、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBLまたはFcMBLでコートされたマイクロビーズ)上に結合した微生物またはその断片の特徴づけおよび/または同定を、例えば、関心対象の微生物に対して特異的な抗体を用いることによって達成することができる。
【0526】
ラット敗血症モデルにおいて、24時間の感染後に動物から収集した血液および胸水の試料(例えば、200μL)を、本明細書に記載した通りの1μm FcMBLマイクロビーズとともにインキュベートした。いくつかの態様においては、FcMBLマイクロビーズとのインキュベーションの前に血液をEDTAで処理した。
【0527】
いくつかの態様においては、図10に示されているように、生物学的流体試料(例えば、血液または胸水)とのインキュベーション後のFcMBLマイクロビーズを、ELISAアッセイのためにFcMBL-HRPとともにさらにインキュベートした。24時間の感染後にラットから収集した血液-EDTA試料はOD450nmでおよそ0.8のELISAシグナルを生じ、一方、同じ時点に収集した胸水試料は、ELISAシグナルのオーバーフローを生じた。72時間試料から得られた結果でも、同様の傾向が観察された。
【0528】
他の態様において、生物学的流体試料(例えば、血液または胸水)とのインキュベーション後のFcMBLマイクロビーズを、上記のような、抗体に基づく特徴づけにさらに供した。例えば、FcMBLマイクロビーズ上に結合して捕捉された微生物を、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約500倍に希釈した抗LPSリピドA抗体(例えば、ポリクローナル抗体)とともに約20分間インキュベートし、その後に、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約2000倍に希釈した抗ヤギIgG Cy3標識抗体とのインキュベーションを約20分間行った。FcMBLでコートされたマイクロビーズ上に結合した標識された大腸菌を、続いて、蛍光顕微鏡によって画像化した。ラット敗血症モデルからの試料を、FcMBLでコートされたマイクロビーズ上のLPSの存在に関して特徴づけた(図32A~32Bを参照)。胸水(ELISA OD-オーバーフロー)では、抗LPS抗体の広汎な結合が見られたが、一方、ラットからの血液試料(ELISA OD‐0.8)では、無傷の大腸菌を表すと考えられる明確なシグナルがいくつか見られた(図32A~32B)。
【0529】
FcMBL ELISAによって陽性である臨床試料に対して適用した場合に、リピドAなどのように微生物表面に存在するある特定の分子(例えば、タンパク質、糖質、脂質)の特異的検出により、陽性試料のさらなる鑑別、または陽性試料中に存在する微生物の同定が可能となる。この点に関して、病院からの非特定化された血液試料の試料を、本明細書に記載した通りの1μm FcMBLマイクロビーズとともにインキュベートした。血液とのインキュベーション後のFcMBLマイクロビーズを、図10に示されているようなELISAアッセイのためにFcMBL-HRPとともにさらにインキュベートすることによって、まずスクリーニングした。続いて、FcMBLマイクロビーズを、上記のような、抗体に基づく特徴づけにさらに供した。例えば、大腸菌を同定するためには、FcMBLマイクロビーズ上に結合して捕捉された微生物を、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約500倍に希釈した抗LPSリピドA抗体(例えば、ポリクローナル抗体)とともに約20分間インキュベートし、その後に、例えば、Ca2+ 5mMおよび3% BSAを含むTBST中に約2000倍に希釈した抗ヤギIgG Cy3標識抗体とのインキュベーションを約20分間行った。FcMBLでコートされたマイクロビーズ上に結合した標識された大腸菌を、続いて、図33に示されているように、蛍光顕微鏡によって画像化した。
【0530】
FcMBLマイクロビーズに結合した微生物または微生物断片におけるLPSの特異的検出がいくつかの陽性試料には存在したが、FcMBL ELISA試料では陰性または無視し得る程度のシグナルしか生じなかったことが本明細書において実証された(図33):このことは、微生物系統群に特異的な抗体の使用により、捕捉された材料の派生元である微生物の鑑別が可能になることを示している。例えば、陽性FcMBL ELISAシグナルを伴う試料(下のパネル)では、FcMBLでコートされたマイクロビーズに対する抗LPS抗体の結合は全く示されず、このことはFcMBLでコートされたマイクロビーズに結合した微生物および/または微生物断片が大腸菌と関連しないことを示している(例えば、試料がグラム陽性微生物に感染している場合)。対照的に、陽性FcMBL ELISAシグナルを伴う試料(中央のパネル)では、FcMBLでコートされたマイクロビーズに対する抗LPS抗体の実質的な結合が明らかに示され、このことはFcMBLでコートされたマイクロビーズに結合した微生物および/または微生物断片が大腸菌またはグラム陰性微生物と関連していることを示している。このため、そのような試料は、大腸菌および/またはグラム陰性微生物感染症に感染していると判定された。より重要なこととして、これらの非特定化された試料のそれぞれが、感染の臨床的証拠はあるが微生物学的な証拠資料はない患者において従来の方法を用いたところ培養陰性と判定されたことに注目すべきである。したがって、操作された微生物結合性分子または基質(例えば、FcMBLまたはFcMBLでコートされたマイクロビーズ)の使用は、感染症の診断に関して、培養法よりも高感度であって、かつ信頼性が高い。
【0531】
ほとんどの一般的な微生物(病原体を含む)を対象とする抗体のライブラリのスクリーニングにより、磁性分離を備えているあらゆる微生物学検査室において、実施し得る単純な血液検査または尿検査により、3時間未満で、体内のいずれかの箇所にある微生物特異的感染症の直接診断が可能になる。
【0532】
1つの異なる態様において、迅速検査を「ディップスティック」形式を用いて行うことができた。例えば、数系統の微生物種特異的抗体(図13に示されているようなFcMBL分子の代わりに)をスポッティングした膜を、検査する液体とともに予めインキュベートした、FcMBLでコートされたマイクロビーズとともにインキュベートすることができる。適正な抗体によって捕捉された、FcMBLでコートされたマイクロビーズは、捕捉された微生物物質または微生物の種(1つまたは多数)を示す、検出可能なバンド(例えば、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズの場合は赤褐色)を膜上に形成することができる。
【0533】
拘束されることは望まないが、本実施例は、試料中に存在する微生物を特徴づけるため、および/または同定するための特異的抗体の使用を実証してはいるものの、質量分析による特徴づけの方法といった他の特徴づけ方法も用いることができる。いくつかの態様においては、微生物および/または微生物物質/断片が捕捉されたFcMBLマイクロビーズを洗浄して、その後に質量分析特徴づけ方法などの任意の特徴づけ方法を行うことができる。
【0534】
いくつかの態様においては、微生物および/または微生物物質/断片が捕捉された、FcMBLでコートされたマイクロビーズを、FcMBLでコートされたマイクロビーズに結合した微生物および/または微生物物質の特徴づけおよび/または種の同定のために直接的なMALDI-TOF分析に供することができる。例えば、微生物材料が捕捉された、FcMBLでコートされたマイクロビーズを、MALDI-TOF分析に直接的に供することができる。または、MALDI-TOF分析の前に、結合した微生物および/または微生物化合物/断片を回収するために、当技術分野で認知されている任意のプロトコルを、FcMBLでコートされたマイクロビーズに対して適用することもできる。MALDI-TOF分析の前に、結合した微生物および/または微生物化合物/断片を回収するための例示的な方法には、MBLと結合した材料を放出させるための、FcMBLでコートされたマイクロビーズのCa2+キレート化;Fcと結合したプロテインAを放出させるためにpHを低下させること;ギ酸およびアセトニトリルを用いるタンパク質抽出、およびそれらの任意の組み合わせが非限定的に含まれる。ベースラインの決定のために、対照マイクロビーズ(例えば、FcMBLでコートされていないマイクロビーズ)を同様に処理することができる。
【0535】
FcMBLでコートされたマイクロビーズから抽出された捕捉された材料、および/または非特異的対照に結合した材料を、MALDI-TOFまたはMALDI-TOF-TOFを非限定的に含む質量分析に供することができる。非特異的対照に結合した材料から、検査する媒体の組成に関するベースラインを確定することができる。このプロファイルを、FcMBLに結合した材料の分析のための参照基準として用いることができる。対照に結合した試料中に存在するピークを、FcMBLに結合した材料から得られたプロファイルから差し引くことができる。
【0536】
特異的なFcMBL結合材料のプロファイル(例えば、参照プロファイルの差し引き後)は、微生物シグネチャーとなり得る。情報的価値のあるピークを同定するために、正電荷および/または負電荷分析を行うことができる。
【0537】
微生物シグネチャー認識は、例えば、適合性比較アルゴリズムのようなこれまでに蓄積されたプロファイルに基づくアルゴリズムを用いて、特異的FcMBL結合材料プロファイルを微生物シグネチャーライブラリと比較することによって分析することができる。
【0538】
微生物種の同定のためには、微生物の起源に応じて、微生物シグネチャーライブラリを、臨床試験由来の試料および/または環境由来の試料(例えば、臨床環境、培地、食品加工プラント、水源から収集した試料)などのインビボまたはインサイチューの試料によって確立することができる。例えば、既知の微生物、例えば病原体に感染した患者の血液(または他の生物学的流体)を分析して、微生物材料シグネチャーを特徴づけることができる。同じ臨床的状況におけるシグネチャーの認識により、科/属/種の診断を確立することができる。
【0539】
追加的または代替的に、機械的もしくは化学的もしくは抗生物質性の溶解または自己溶解を行わせた微生物のFcMBL結合部分のインビトロ分析によって、別の微生物ライブラリを確立することもできる。微生物材料は、種々の培地、緩衝液、尿、血液または任意の適切な媒体中で捕捉することができる。
【0540】
全般的感染、クレードのレベル、科のレベル、属のレベルまたは種のレベルでの同定のための、確率スコア付きでの同定のために、診断プロファイルを、任意の参照プロファイル、例えば、特異的なインビボもしくはインサイチュー由来の微生物プロファイルおよび/または特異的なインビトロ由来の微生物プロファイルに対して適合させることができる。
【0541】
実施例17.FcMBL磁性マイクロビーズを用いる比色ELISAと従来の血液培養との成績比較
ラットの大腸または盲腸の内容物を骨盤領域に移植することによって、腹腔内敗血症を模した動物モデルを作製した。腸または盲腸の内容物は、牛肉飼料を2週間与えたラットから採取した。MALDI-TOF分析によれば、盲腸内容物は、ウェルシュ菌(Clostridium perfringiens)、エンテロバクター属(Enterobacteria)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)/エンテロコッカス・ラフィノーサス(Enterococcus raffinosus)および腸球菌属(Enterococcus spp.)を含む、種々の病原体を含んでいた。腹腔内敗血症を有する動物モデル(例えば、ラット)の作出に関するさらなる詳細については、Weinstein et al (1974) Infection and Immunity. 10: 1250-1255、およびOnderdonk et al. (1974) Infection and Immunity. 10: 1256-1259に記載がある。
【0542】
1つの実験では、盲腸内容物(細菌細胞109個)を、5匹のラットの骨盤領域に移植した。ラットを移植後の病的状態に従って種々の時点で屠殺し、それらの病的状態ランクを表1に示している。
【0543】
(表1)ラットの骨盤領域への盲腸内容物の移植後の病的状態ランク
【0544】
ラットを屠殺して、さらなる分析のために血液を収集した。従来の血液培養と本明細書に記載のFcMBL磁性マイクロビーズを用いる比色ELISA(例えば、実施例10における)の成績とを比較するために、ラットから収集した血液を2種類の方法によって分析した。従来の血液培養法に関しては、ラット血液を、種々の細菌培地(例えば、チョコレート寒天、ヒツジ血液寒天(SBA)、ルリアブロス(LB)、およびグラム陽性球菌の選択的分離のために一般に用いられるコリスチンナリジクス酸寒天(CNA))中で嫌気的に4日間培養した。FcMBLベースのELISA法に関しては、ラット血液を希釈した上で、実施例10に記載したFcMBLベースの比色ELISAに供したが、この際には、FcMBL磁性ビーズに、生きた病原体および死滅した病原体の両方を、希釈したラット血液から直接的に捕捉させ、続いて、捕捉された物質をHRP-FcMBL検出試薬とともにインキュベートして、その後にTMB基質を用いてOD450の比色読み取りを行った。FcMBLベースの比色ELISAは、1時間未満で行った。
【0545】
図34Aは、腹腔内膿瘍を発症した5匹のラットから収集した血液の第4日時点の嫌気的培養の結果を示している。ラット#1はラット#2よりも重病であるように見え、最初に屠殺する必要があるように思われたが、血液培養から、ラット#2の血液中に存在する細菌はラット#1よりも多いことが示された。さらに、ラット#3は移植から48時間後には病的であるように見えたものの、血液培養法はラット#3に存在する細菌を検出するのに十分な感度がなかった。
【0546】
対照的に、図34Bに示されているように、FcMBLベースのELISAアッセイからは、血液培養によって示されたものよりも、病原体負荷量(生きた病原体/微生物物質および死滅したものを含む)と病的状態ランクとのより良い相関が得られた。図34Cは、FcMBL磁性マイクロビーズを用いるELISAによって決定された病原体負荷量と病的状態ランクとの実質的に直線的な相関を示している。さらに、FcMBLベースのELISAアッセイは、血液培養では4日間の培養後にも検出不能なレベルであったのとは対照的に、FcMBLベースのELISAアッセイを用いた病原体負荷量が検出可能なレベルであったことから明らかになったように、血液培養法よりも高感度であった(図34B)。
【0547】
上記のものに類似したラット動物試験を別に行った。ラットを移植後の病的状態に従って種々の時点で屠殺し、それらの病的状態ランクを表2に示している。
【0548】
(表2)ラットの骨盤領域への盲腸内容物の移植後の病的状態ランク
【0549】
前の実験と同様に、図34Dに示されているように、血液培養が陽性であったラットは敗血症のために死亡し、それらはまた、FcMBLベースのELISAによる検出で、微生物(生きたもの、および死滅したもの)および微生物物質(例えば、内毒素および微生物残渣)も高レベルで有していた。図34Bおよび34Dによれば、生き延びたラットは、敗血症のために死亡したラットよりも、血液中の微生物(生きたもの、および死滅したもの)および微生物物質(例えば、内毒素および微生物残渣)が約2 log少なかった。FcMBLベースのELISAは、血液培養によっては通常なら検出不能である、生き延びたラットの血液中のそのような低レベルの微生物および微生物物質を検出し得る程度に十分に高感度であった。
【0550】
したがって、この実施例は、FcMBLマイクロビーズが、この腹腔内敗血症モデルに用いられた盲腸内微生物と結合し得ることを示している。さらに、FcMBL試薬を用いるELISAを用いることで、血液試料中の生きた微生物および/または生きていない微生物物質(死滅した微生物および内毒素を含む)を迅速に検出することができる(例えば、ELISAアッセイの1時間に対比して、血液培養は4日間)。さらに、FcMBL試薬を用いるELISAは、血液培養よりも高感度であることが実証されている。
【0551】
実施例18.FcMBLでコートされた種々のサイズの磁性マイクロビーズを用いての微生物枯渇
FcMBLでコートされた種々のサイズの磁性マイクロビーズが被験試料中の微生物を捕捉する成績を評価するために、飽和量のビオチン化FcMBL分子を、種々のサイズの磁性マイクロビーズ:(1)1μm MYONE(商標)T1ストレプトアビジンマイクロビーズ;(2)ストレプトアビジンがコートされた128nm Ademtechマイクロビーズ;および(3)抗ビオチンIgGがコートされた50nm Miltenyiマイクロビーズ、とコンジュゲートさせることによって、FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズを作製した。続いて、適切な容積(例えば、およそ20μL)の、FcMBLでコートされた種々のサイズの磁性マイクロビーズを、大腸菌細胞または黄色ブドウ球菌細胞を含む試料のアリコート(例えば、およそ1mL)に添加した。続いて、この混合物を約10分間混合し(例えば、HULAMIXER(商標)試料混合機で)、その後にマイクロビーズの磁性分離を行った。続いて、マイクロビーズの除去後の上清をLB寒天上にプレーティングし、それを続いておよそ37℃で一晩インキュベートした。FcMBLでコートされた磁性マイクロビーズによって捕捉されなかったいかなる微生物も、LB寒天上で一晩かけて増殖すると考えられる。図35は、FcMBLでコートされた種々のサイズの磁性マイクロビーズを用いた、被験試料中に存在する微生物(例えば、大腸菌または黄色ブドウ球菌)の枯渇が首尾良く行われたことを示している。
【0552】
本明細書および実施例において特定されたすべての特許および他の刊行物は、目的を問わず、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の提出日よりも前のそれらの開示のみを目的として提供される。この点において、いかなるものも、先行発明という理由でまたは他の任意の理由で、本発明者らがそのような開示に先行する権利を付与されないことを承認するものとはみなされるべきでない。これらの文献の日付に関するすべての記述、またはそれらの内容に関する表示は、本出願人らに入手可能であった情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確性を何ら是認するものではない。
【0553】
配列表:
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
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図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図33
図34A
図34B
図34C
図34D
図35
【配列表】
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