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特許7271636容器殺菌装置及び殺菌ガスの殺菌効果判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】容器殺菌装置及び殺菌ガスの殺菌効果判定方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/10 20060101AFI20230501BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20230501BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20230501BHJP
   A61L 2/28 20060101ALI20230501BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
B65B55/10 A
B65B55/04 C
A61L2/20 106
A61L2/28
A61L101:22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021172489
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2017148048の分割
【原出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2022023158
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喬俊
(72)【発明者】
【氏名】久保 智
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264251(JP,A)
【文献】特表2009-535215(JP,A)
【文献】特許第2932072(JP,B2)
【文献】特表2003-509165(JP,A)
【文献】特開平04-239434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/10
B65B 55/04
A61L 2/20
A61L 2/28
A61L 101/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を含む殺菌ガスを生成する殺菌ガス生成装置と、
殺菌ガスを容器に噴射するガスノズルと、
殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出する濃度センサと、
前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する判定部と
を備え
前記殺菌ガス生成装置の数が2つ以上であり、前記殺菌ガス生成装置によって生成された殺菌ガスは集合管を介して前記ガスノズルに移送され、前記濃度センサは各殺菌ガス生成装置と前記集合管との間に設けられる、容器殺菌装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、前記殺菌ガス生成装置に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、前記殺菌ガス生成装置に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる、請求項2に記載の容器殺菌装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、前記ガスノズルから前記容器に殺菌ガスを噴射する時間を長くする、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、前記ガスノズルから前記容器に殺菌ガスを噴射する時間を長くする、請求項4に記載の容器殺菌装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、前記殺菌ガス生成装置から前記ガスノズルに殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる、請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、前記殺菌ガス生成装置から前記ガスノズルに殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる、請求項6に記載の容器殺菌装置。
【請求項8】
前記濃度センサは近赤外線分光光度計である、請求項1から7のいずれか1項に記載の容器殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器殺菌装置及び殺菌ガスの殺菌効果判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料、食料等の内容物が充填される容器を内容物の充填前に殺菌することが知られている。特許文献1、2に記載された容器殺菌装置では、過酸化水素を含む殺菌ガスを容器に噴射することで容器を殺菌する。
【0003】
容器に噴射される殺菌ガスの流量が少ないと、容器に供給される過酸化水素の量も少なくなり、殺菌ガスの殺菌効果が低下する。このため、特許文献1に記載された容器殺菌装置では、殺菌ガスの噴射状態が検出装置によって検出される。また、特許文献2に記載された容器殺菌装置では、過酸化水素ガス濃度が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-117256号公報
【文献】特開2014-20826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度と殺菌ガスの殺菌効果との関係について何ら言及していない。容器殺菌装置が長時間作動されると装置トラブルのリスクが高まり、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下し、これに伴って殺菌ガスの殺菌効果が低下する恐れがある。
【0006】
殺菌ガスの殺菌効果が所定値未満となると、殺菌ガスの殺菌効果が不足し、容器に内容物が充填された後の製品検査により、容器が正常に殺菌されていない製品が発見される懸念がある。この場合、それまでに製造された商品の全量廃棄、全ての装置の点検等を行う必要があるため、生産効率が大きく低下する。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、容器殺菌装置において殺菌ガス中の過酸化水素濃度の低下によって殺菌ガスの殺菌効果が不足していることを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の態様では、過酸化水素を含む殺菌ガスを生成する殺菌ガス生成装置と、殺菌ガスを容器に噴射するガスノズルと、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出する濃度センサと、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する判定部とを備える、容器殺菌装置が提供される。
【0009】
第2の態様では、第1の態様において、濃度センサは近赤外線分光光度計である。
【0010】
第3の態様では、第1又は第2の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、殺菌ガス生成装置に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる。
【0011】
第4の態様では、第3の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、殺菌ガス生成装置に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる。
【0012】
第5の態様では、第1又は第2の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、ノズルから容器にエアを噴射する時間を長くする。
【0013】
第6の態様では、第5の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、ガスノズルから容器に殺菌ガスを噴射する時間を長くする。
【0014】
第7の態様では、第1又は第2の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合に、殺菌ガス生成装置からガスノズルに殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる。
【0015】
第8の態様では、第7の態様において、判定部は、濃度センサによって検出された過酸化水素濃度が低いほど、殺菌ガス生成装置からガスノズルに殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる。
【0016】
第9の態様では、第1~第8のいずれか一つの態様において、判定部は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、殺菌ガス生成装置からガスノズルに殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる。
【0017】
第10の態様では、過酸化水素を含む殺菌ガスを生成する工程と、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出する工程と、過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する工程とを含む、殺菌ガスの殺菌効果判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容器殺菌装置において殺菌ガス中の過酸化水素濃度の低下によって殺菌ガスの殺菌効果が不足していることを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、プラスチックボトルの一つの例を示す図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る容器殺菌装置の概略的な平面図である。
図3図3は、殺菌部の一部を示す図である。
図4図4は、殺菌ガス生成装置の概略的な拡大正面図である。
図5図5は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度と殺菌ガスの殺菌効果との関係を示すグラフである。
図6図6は、ガスノズルからボトルに殺菌ガスが噴射される様子を概略的に示す図である。
図7図7は、エアノズルからボトルにエアが噴射される様子を概略的に示す図である。
図8図8は、温水ノズルからボトルに温水が噴射される様子を概略的に示す図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態に係る殺菌ガスの殺菌効果判定方法を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の第二実施形態における過酸化水素水溶液流量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図11図11は、過酸化水素濃度と過酸化水素水溶液の流量の増加量との関係を示すマップである。
図12図12は、本発明の第三実施形態における殺菌ガス噴射時間制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図13図13は、過酸化水素濃度と殺菌ガスの噴射時間の増加量との関係を示すマップである。
図14図14は、本発明の第四実施形態における移送エア流量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図15図15は、過酸化水素濃度と移送エアの流量の減少量との関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0021】
<第一実施形態>
最初に、図1図9を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
【0022】
<プラスチックボトル>
本実施形態では、容器殺菌装置によって殺菌される容器としてプラスチックボトルが用いられる。最初に、プラスチックボトルについて簡単に説明する。なお、本明細書において、プラスチックボトルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)のようなプラスチックから構成されるボトルを意味し、ペットボトルに限定されない。
【0023】
図1は、プラスチックボトル(以下、単に「ボトル」という)の一つの例を示す図である。ボトル10は延伸ブロー成形によってプリフォームから成形される。プリフォームはインジェクション(射出)成形法又はPCM(プリフォームコンプレッションモールディング)成形法によって樹脂から成形される。
【0024】
ボトル10は、キャップが装着される首部11と、首部11と隣接する胴部12と、胴部12の一方の端部を閉塞する底部13とを有する。首部11には、雄ネジ14と、雄ネジ14よりも胴部12側に位置するサポートリング15とが形成される。キャップに形成された雌ネジに雄ネジ14が螺合することで、首部11にキャップが装着される。
【0025】
<容器殺菌装置>
図2は、本発明の第一実施形態に係る容器殺菌装置1の概略的な平面図である。容器殺菌装置1は容器(本実施形態ではボトル10)を殺菌する。容器殺菌装置1はチャンバ20によって覆われる。チャンバ20は減菌され、その後、チャンバ20内の圧力は周囲の圧力よりも高くされる。このため、チャンバ20内は無菌状態が保持される。
【0026】
容器殺菌装置1は複数のホイールから構成される。各ホイールには、ボトル10を把持する複数のグリッパが設けられる。グリッパはボトル10のサポートリング15を介してボトル10を把持する。グリッパは、ホイールの周方向に所定間隔で離間され、ホイールと共に回転する。このため、ボトル10はホイールの回転によって回転搬送される。
【0027】
容器殺菌装置1は、ボトル10が投入される投入部2と、殺菌ガスでボトル10を殺菌する殺菌部3と、ボトル10をエア(空気)で洗浄するエアリンス部4と、ボトル10を温水で洗浄する温水リンス部5とを備える。ボトル10は、容器殺菌装置1において、投入部2、殺菌部3、エアリンス部4、温水リンス部5の順に搬送される。
【0028】
投入部2は、第一投入ホイール21、第二投入ホイール22及び第三投入ホイール23を有する。プリフォームから成形されたボトル10は、第一投入ホイール21に投入され、第二投入ホイール22及び第三投入ホイール23を介して殺菌部3に搬送される。図2には、参考のために、第一投入ホイール21においてボトル10が一つのみ示される。
【0029】
なお、投入部2の上流側には、複数のホイールから構成されると共にプリフォームからボトル10を成形する成形部(図示せず)が連結されてもよい。この場合、ボトル10は成形部から投入部2を介して殺菌部3に連続的に搬送される。また、投入部2のホイールの数は、三つ以外、例えば一つであってもよい。
【0030】
殺菌部3は殺菌ホイール31を有する。殺菌ホイール31は第三投入ホイール23からボトル10を受け取る。図3は、殺菌部3の一部を示す図である。殺菌ホイール31には、殺菌ガスをボトル10に噴射する複数のガスノズル32が設けられる。ガスノズル32は、殺菌ホイール31の周方向に所定間隔で離間され、殺菌ホイール31と共に回転する。ガスノズル32は、殺菌ホイール31に設けられたグリッパ33にボトル10が把持されたときにボトル10の上方に位置するように配置される。ボトル10が殺菌ホイール31によって回転搬送される間、ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスが噴射される。
【0031】
殺菌部3は、殺菌ガスを生成する殺菌ガス生成装置34と、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアを供給する熱風供給装置35とを更に有する。本実施形態では、殺菌ガス生成装置34の数は6つである。殺菌ガス生成装置34によって生成された殺菌ガスは集合管36において混合される。なお、殺菌ガス生成装置34の数は1以上の他の数であってもよい。
【0032】
熱風供給装置35は、ブロア、フィルタ及び加熱器を含む。ブロアから噴射されたエアは、フィルタを通過するときに浄化され、加熱器によって加熱される。このため、高温(100℃以上)の無菌エアが熱風供給装置35から集合管36に供給される。殺菌ガスは、熱風供給装置35から供給されるエアによって、集合管36、供給管37及び分配管38を介して各ガスノズル32に移送される。分配管38は供給管37と各ガスノズル32とを接続する。
【0033】
図4は、殺菌ガス生成装置34の概略的な拡大正面図である。殺菌ガス生成装置34は噴霧部61及び加熱部62を含む。噴霧部61は二流体ノズルである。噴霧部61には、第一配管63、第二配管64及び第三配管65が接続される。第一配管63から噴霧部61に過酸化水素水溶液が供給される。本実施形態では、過酸化水素水溶液の濃度(質量パーセント濃度)は35%である。第二配管64から噴霧部61に無菌エアが供給される。第三配管65から噴霧部61に供給されるエアによって過酸化水素水溶液及び無菌エアが噴霧部61から加熱部62内に噴射される。
【0034】
加熱部62は管状に形成され、管の周囲にヒータ66が設けられる。ヒータ66は、約300℃に昇温され、加熱部62内の過酸化水素水溶液を加熱して気化させる。気化された過酸化水素水溶液及びエア(無菌エア)は加熱部62の先端のノズルから集合管36内に放出される。したがって、殺菌ガス生成装置34によって生成される殺菌ガスは、過酸化水素(H22)、エア及び水を含む。
【0035】
また、加熱部62には、第四配管67及び第五配管68が接続される。容器殺菌装置1が長時間作動されると、加熱部62の内面に付着物が蓄積する。加熱部62の内面から剥がれた付着物は、熱風供給装置35から供給されたエアによってガスノズル32まで流され、ガスノズル32の閉塞を引き起こす。このため、容器殺菌装置1の作動後等に第四配管67及び第五配管68から加熱部62に水が供給され、加熱部62の内部が水で洗浄される。また、水洗浄で除去できない付着物を除去するために、加熱部62の内部が定期的にブラシで洗浄される。
【0036】
本願の発明者は、鋭意検討の結果、加熱部62の内面に蓄積した付着物により、集合管36に供給される殺菌ガスの流量が低下し、その結果、集合管36における殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下し、ひいては殺菌ガスの殺菌効果が低下することを見出した。
【0037】
また、本願の発明者は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度の殺菌効果に対する影響を調査すべく、過酸化水素濃度を変化させたときの殺菌効果を測定した。図5は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度と殺菌ガスの殺菌効果との関係を示すグラフである。
【0038】
殺菌効果(D)は、log10{(殺菌前の微生物の数)/(殺菌後の微生物の数)}として算出される。殺菌前の微生物の数は殺菌部3における殺菌工程の前に測定され、殺菌後の微生物の数は、後述する温水リンス部5における温水リンス工程の後に測定される。例えば、容器殺菌装置1によって微生物の数が1/10,000に低下した場合、殺菌効果は4Dである。図5から分かるように、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下するにつれて、殺菌ガスの殺菌効果が低くなった。
【0039】
したがって、容器殺菌装置1の作動中に付着物によって殺菌ガス生成装置34から集合管36に供給される殺菌ガスの流量が低下し、集合管36における殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下すると、殺菌ガスの殺菌効果が低下する。このため、本実施形態では、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出し、検出された過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する。
【0040】
図3に示されるように、容器殺菌装置1は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出する濃度センサ81と、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する判定部8とを備える。濃度センサ81は、供給管37から分岐する分岐管82に設けられる。分岐管82の一方の端部は供給管37に接続され、分岐管82の他方の端部はチャンバ20に開放される。
【0041】
供給管37には第一開閉バルブ83が設けられ、分岐管82には第二開閉バルブ84が設けられる。第一開閉バルブ83及び第二開閉バルブ84は、例えば、バタフライバルブである。第一開閉バルブ83は供給管37内の通気路を開閉し、第二開閉バルブ84は分岐管82内の通気路を開閉する。殺菌ガスは、第一開閉バルブ83が開かれ且つ第二開閉バルブ84が閉じられたときには供給管37から各ガスノズル32に供給され、第一開閉バルブ83が閉じられ且つ第二開閉バルブ84が開かれたときには分岐管82からチャンバ20内に放出される。
【0042】
容器殺菌装置1の作動前又は作動後、例えば、容器殺菌装置1によって殺菌される容器の種類が切り替えられるとき、第一開閉バルブ83が閉じられ、第二開閉バルブ84が開かれる。第二開閉バルブ84が開かれると、殺菌ガス生成装置34に生成された殺菌ガスは、熱風供給装置35から供給されたエアによって分岐管82に移送される。分岐管82内の殺菌ガスは濃度センサ81の周りを通過する。
【0043】
本実施形態では、濃度センサ81は近赤外線分光光度計である。濃度センサ81では、光ファイバによって光を殺菌ガスに照射し、近赤外領域の波長(約1420nm)の光の吸光度を、過酸化水素が光を吸収しない波長域の光の吸光度で補正することによって殺菌ガス中の過酸化水素濃度を算出する。
【0044】
判定部8は、中央演算装置(CPU)、メモリ等を含むマイクロコンピュータであり、容器殺菌装置1の各種制御を実行する。判定部8は濃度センサ81に電気的に接続される。濃度センサ81は、検出した過酸化水素濃度を判定部8に送信する。
【0045】
判定部8は、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値以上である場合には殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定し、過酸化水素濃度が基準値未満である場合には殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定する。基準値は、予め定められ、6000~8000ppmの範囲内の値に設定される。例えば、基準値は、約6Dの殺菌効果に相当する7000ppmに設定される。なお、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合、運転状態監視画面(図示せず)上の警告表示、警告音等によって警報を発してもよい。
【0046】
したがって、容器殺菌装置1は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度の低下によって殺菌ガスの殺菌効果が不足していることを検出することができる。このことによって、ボトル10に内容物が充填された後の製品検査により、ボトル10が正常に殺菌されていない製品が発見されることを抑制することができ、ひいては生産効率の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、濃度センサ81は、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出できれば、近赤外線分光光度計に限定されない。例えば、濃度センサ81は、照射光として紫外領域の波長の光が用いられる紫外線分光光度計であってもよい。また、濃度センサ81は、電気化学的方法、化学反応を用いた方法等に基づく検出装置であってもよい。
【0048】
また、濃度センサ81は殺菌部3の他の場所に設けられてもよい。例えば、濃度センサ81は、容器殺菌装置1によってボトル10が殺菌されているときにも殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出できるように、両端が供給管37に接続されたバイパス流路に設けられてもよく又は供給管37に直接挿入されてもよい。また、少量(例えば、集合管36から放出された殺菌ガスの1~5%)の殺菌ガスのみが分岐管82に供給されるように分岐管82を構成し、第一開閉バルブ83及び第二開閉バルブ84を省略してもよい。
【0049】
また、濃度センサ81は各殺菌ガス生成装置34と集合管36との間に設けられてもよい。この場合、濃度センサ81及び殺菌ガス生成装置34の数は等しい。このことによって、過酸化水素濃度が低下している殺菌ガス生成装置34を特定することができ、容器殺菌装置1の不良解析及び修理を容易にすることができる。
【0050】
図6は、ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスが噴射される様子を概略的に示す図である。ボトル10はグリッパ33に把持されている。ガスノズル32は、ボトル10内に挿入され、ボトル10の内面に殺菌ガスを噴射する。噴射された殺菌ガスはボトル10の内面に付着し、殺菌ガス中の過酸化水素及び水がボトル10の内面において凝縮する。この結果、ボトル10の内面において過酸化水素水溶液が生成される。このとき、過酸化水素の飽和蒸気圧が水の飽和蒸気圧よりも低いため、過酸化水素が水よりも多く凝縮する。このため、殺菌ガス生成装置において気化される前には35%であった過酸化水素水溶液の濃度が約60%に上昇する。なお、ガスノズル32は、ボトル10内に挿入される代わりに、ボトル10の上方に配置されてもよい。この場合も、ガスノズル32はボトル10の内面に殺菌ガスを噴射する。
【0051】
ボトル10は殺菌ホイール31から第一搬送ホイール6を介してエアリンス部4に搬送される。エアリンス部4はエアリンスホイール41を有する。エアリンスホイール41は第一搬送ホイール6からボトル10を受け取る。エアリンスホイール41には、エアをボトル10に噴射する複数のエアノズルが設けられる。エアノズルは、エアリンスホイール41の周方向に所定間隔で離間され、エアリンスホイール41と共に回転する。エアノズルは、エアリンスホイール41に設けられたグリッパにボトル10が把持されたときにボトル10の上方に位置するように配置される。ボトル10がエアリンスホイール41によって回転搬送される間、エアノズルからボトル10にエアが噴射される。エアは、高温(100℃以上)の無菌エアであり、熱風供給装置35と同様の装置から各エアノズルに供給される。
【0052】
図7は、エアノズル42からボトル10にエアが噴射される様子を概略的に示す図である。ボトル10はグリッパ43に把持されている。エアノズル42は、ボトル10の上方に配置され、ボトル10の内面に向かってエアを噴射する。エアは、ボトル10内に残された殺菌ガスをボトル10内から排出する。
【0053】
また、容器殺菌装置1は、ボトル10の不良品を排除する排除部9を備える。排除部9は、殺菌部3又はエアリンス部4において不良であると判定されたボトル10を排除する。なお、殺菌部3とエアリンス部4との間に検査部が設けられ、カメラ、温度センサ等によってボトル10の状態が検査されてもよい。この場合、排除部9は、検査部において不良と判定されたボトル10も排除する。
【0054】
排除部9は排除ホイール91及び排除コンベア92を有する。排除ホイール91は、エアリンスホイール41の回転方向において第一搬送ホイール6と第二搬送ホイール7との間に配置され、エアリンスホイール41から不良のボトル10を受け取る。排除ホイール91はボトル10を排除コンベア92に向かって回転搬送する。排除ホイール91はボトル10を排除コンベア92上に落下させ、ボトル10は排除コンベア92を介してチャンバ20の外に排出される。
【0055】
一方、良品のボトル10はエアリンスホイール41から第二搬送ホイール7を介して温水リンス部5に搬送される。第二搬送ホイール7では、ボトル10が回転搬送される間に、ボトル10が逆さまにされて倒立状態にされる。
【0056】
温水リンス部5は温水リンスホイール51を有する。温水リンスホイール51は第二搬送ホイール7から倒立状態のボトル10を受け取る。温水リンスホイール51には、温水をボトル10に噴射する複数の温水ノズルが設けられる。温水ノズルは、温水リンスホイール51の周方向に所定間隔で離間され、温水リンスホイール51と共に回転する。温水ノズルは、温水リンスホイール51に設けられたグリッパにボトル10が把持されたときにボトル10の下方に位置するように配置される。ボトル10が温水リンスホイール51によって回転搬送される間、温水ノズルからボトル10に温水が噴射される。温水は、60℃~80℃の無菌水であり、公知の温水供給装置(図示せず)から各温水ノズルに供給される。
【0057】
図8は、温水ノズル52からボトル10に温水が噴射される様子を概略的に示す図である。ボトル10はグリッパ53に把持されている。温水ノズル52は、ボトル10内に挿入され、ボトル10の内部に温水を噴射する。温水は、ボトル10内に残された過酸化水素水溶液等をボトル10内から排出する。
【0058】
ボトル10は温水リンスホイール51から第三搬送ホイール30等を介して充填装置(図示せず)に搬送される。充填装置では、ボトル10に内容物が充填される。
【0059】
<殺菌ガスの殺菌効果判定方法>
次に、図9を参照して、殺菌ガスの殺菌効果判定方法について説明する。図9は、本発明の第一実施形態に係る殺菌ガスの殺菌効果判定方法を示すフローチャートである。
【0060】
最初に、ステップS1において、殺菌ガスを生成する。殺菌ガスは、殺菌ガス生成装置34によって生成され、過酸化水素、エア及び水を含む。次いで、ステップS2において、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を検出する。殺菌ガス中の過酸化水素濃度は濃度センサ81によって検出される。
【0061】
次いで、ステップS3において、殺菌ガス中の過酸化水素濃度に基づいて殺菌ガスの殺菌効果を判定する。殺菌効果の判定は判定部8によって行われる。具体的には、判定部8は、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が予め定められた基準値以上である場合には殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定し、過酸化水素濃度が基準値未満である場合には殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定する。このことによって、殺菌ガス中の過酸化水素濃度の低下によって殺菌ガスの殺菌効果が不足していることを検出することができる。
【0062】
なお、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、容器殺菌装置1の作動を停止し、殺菌ガス生成装置34を洗浄してもよい。この場合、例えば、加熱部62の内部をブラシで洗浄する。このことによって、加熱部62の内面に蓄積した付着物が除去されるため、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下することを抑制することができる。
【0063】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る容器殺菌装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る容器殺菌装置と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0064】
殺菌ガス中の過酸化水素濃度が所定値未満となると、殺菌ガスの殺菌効果が不足する。このため、容器殺菌装置1が作動され続けると、不良のボトル10が生産され続け、ボトル10の生産効率が大きく低下する。一方、容器殺菌装置1を検査して修理するためには、容器殺菌装置1の作動を停止させる必要がある。このことも、ボトル10の生産効率を低下させる。
【0065】
このため、第二実施形態では、容器殺菌装置1の作動を停止させることなく、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を高めるための制御が行われる。具体的には、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合、殺菌ガス生成装置34に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる。一方、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値以上である場合、殺菌ガス生成装置34に供給する過酸化水素水溶液の流量を維持する。
【0066】
殺菌ガス生成装置34に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させると、加熱部62において無菌エアに対する過酸化水素水溶液の量が多くなるため、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を高めることができる。このため、第二実施形態では、ボトル10の殺菌不良が生じることを抑制しつつ、ボトル10の生産効率が低下することを抑制することができる。
【0067】
以下、図10のフローチャートを参照して、第二実施形態において、殺菌ガス生成装置34に供給する過酸化水素水溶液の流量を変更するための制御について説明する。図10は、本発明の第二実施形態における過酸化水素水溶液流量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、殺菌ガスの殺菌効果の判定が行われる間、判定部8によって実行される。
【0068】
最初に、ステップS21において、判定部8は殺菌ガス中の過酸化水素濃度Cを取得する。過酸化水素濃度Cは濃度センサ81によって検出される。次いで、ステップS22において、判定部8は、過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であるか否かを判定する。基準値Crefは、予め定められ、例えば7000ppmである。基準値Crefは、容器殺菌工程において目標とする殺菌力を確保可能な条件である必要があり、その数値を実験的に定めることが可能である。実験方法として公知の方法を用いることができるが、例えば容器に実際に一定量の指標菌を植菌した後に殺菌試験を実施し、目標の殺菌力を確保可能な条件の過酸化水素濃度を算出し、算出された値を基準値Crefとする方法が挙げられる。
【0069】
ステップS22において過酸化水素濃度Cが基準値Cref未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS23に進む。ステップS23では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定する。次いで、ステップS24において、判定部8は、殺菌ガス生成装置34に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させる。具体的には、判定部8は、噴霧部61から加熱部62内に噴射される過酸化水素水溶液の流量を増加させる。過酸化水素水溶液の流量の増加量は、予め定められた値に設定される。
【0070】
なお、判定部8は、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が低いほど、殺菌ガス生成装置34に供給される過酸化水素水溶液の流量を増加させてもよい。この場合、判定部8は、図11に示したようなマップを用いて、過酸化水素濃度Cに基づいて、殺菌ガス生成装置34に供給される過酸化水素水溶液の流量の増加量を設定する。過酸化水素水溶液の流量の増加量は、図11に実線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて線形的に多くされる。また、過酸化水素水溶液の流量の増加量は、図11に破線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて段階的(ステップ状)に多くされてもよい。ステップS24の後、本制御ルーチンは終了する。
【0071】
一方、ステップS22において過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS25に進む。ステップS25では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定する。ステップS25の後、本制御ルーチンは終了する。この場合、殺菌ガス生成装置34に供給する過酸化水素水溶液の流量が維持される。
【0072】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る容器殺菌装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る容器殺菌装置と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0073】
第三実施形態では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合、ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を長くする。一方、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値以上である場合、ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を維持する。
【0074】
例えば、殺菌ホイール31の回転速度を遅くすることによって、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を長くすることができる。各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間が長くなると、ガスノズル32からボトル10に噴射される殺菌ガスの総量が多くなり、ボトル10の殺菌が促進される。このため、第三実施形態では、ボトル10の殺菌不良が生じることを抑制しつつ、ボトル10の生産効率が低下することを抑制することができる。
【0075】
以下、図12のフローチャートを参照して、第三実施形態において、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を変更するための制御について説明する。図12は、本発明の第三実施形態における殺菌ガス噴射時間制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、殺菌ガスの殺菌効果の判定が行われる間、判定部8によって実行される。
【0076】
最初に、ステップS31において、判定部8は殺菌ガス中の過酸化水素濃度Cを取得する。過酸化水素濃度Cは濃度センサ81によって検出される。次いで、ステップS32において、判定部8は、過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であるか否かを判定する。基準値Crefは、予め定められ、例えば7000ppmである。
【0077】
ステップS32において過酸化水素濃度Cが基準値Cref未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS33に進む。ステップS33では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定する。次いで、ステップS34において、判定部8は、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を長くする。殺菌ガスの噴射時間の増加量は、予め定められた値に設定される。
【0078】
なお、判定部8は、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が低いほど、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間を長くしてもよい。この場合、判定部8は、図13に示したようなマップを用いて、過酸化水素濃度Cに基づいて、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間の増加量を設定する。殺菌ガスの噴射時間の増加量は、図13に実線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて線形的に多くされる。また、殺菌ガスの噴射時間の増加量は、図13に破線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて段階的(ステップ状)に多くされてもよい。ステップS34の後、本制御ルーチンは終了する。
【0079】
一方、ステップS32において過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS35に進む。ステップS35では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定する。ステップS35の後、本制御ルーチンは終了する。この場合、各ガスノズル32からボトル10に殺菌ガスを噴射する時間が維持される。
【0080】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る容器殺菌装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る容器殺菌装置と同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0081】
第四実施形態では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値未満である場合、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる。一方、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定した場合、すなわち濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が基準値以上である場合、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量を維持する。
【0082】
殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させると、エアに対する過酸化水素の量が多くなるため、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を高めることができる。このため、第四実施形態では、ボトル10の殺菌不良が生じることを抑制しつつ、ボトル10の生産効率が低下することを抑制することができる。
【0083】
以下、図14のフローチャートを参照して、第四実施形態において、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量を変更するための制御について説明する。図14は、本発明の第四実施形態における移送エア流量制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、殺菌ガスの殺菌効果の判定が行われる間、判定部8によって実行される。
【0084】
最初に、ステップS41において、判定部8は殺菌ガス中の過酸化水素濃度Cを取得する。過酸化水素濃度Cは濃度センサ81によって検出される。次いで、ステップS42において、判定部8は、過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であるか否かを判定する。基準値Crefは、予め定められ、例えば7000ppmである。
【0085】
ステップS42において過酸化水素濃度Cが基準値Cref未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS43に進む。ステップS43では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が不足していると判定する。次いで、ステップS44において、判定部8は、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させる。具体的には、判定部8は、熱風供給装置35から供給されるエアの流量を減少させる。エアの流量の減少量は、予め定められた値に設定される。
【0086】
なお、判定部8は、濃度センサ81によって検出された過酸化水素濃度が低いほど、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量を減少させてもよい。この場合、判定部8は、図15に示したようなマップを用いて、過酸化水素濃度Cに基づいて、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量の減少量を設定する。エアの流量の減少量は、図15に実線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて線形的に多くされる。また、エアの流量の減少量は、図15に破線で示したように、過酸化水素濃度Cが低くなるにつれて段階的(ステップ状)に多くされてもよい。ステップS44の後、本制御ルーチンは終了する。
【0087】
一方、ステップS42において過酸化水素濃度Cが基準値Cref以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS45に進む。ステップS45では、判定部8は、殺菌ガスの殺菌効果が十分であると判定する。ステップS45の後、本制御ルーチンは終了する。この場合、殺菌ガス生成装置34から各ガスノズル32に殺菌ガスを移送するエアの流量が維持される。
【0088】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、容器殺菌装置1によって殺菌される容器は、瓶、缶等の他の容器であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 容器殺菌装置
8 判定部
10 プラスチックボトル(容器)
32 ガスノズル
34 殺菌ガス生成装置
81 濃度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15