(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】不織布の製造方法、これにより製造された不織布を構成部材として含む吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/54 20120101AFI20230501BHJP
D04H 1/542 20120101ALI20230501BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20230501BHJP
【FI】
D04H1/54
D04H1/542
D04H1/4374
(21)【出願番号】P 2022574084
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026197
【審査請求日】2022-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湊崎 真行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】野田 章
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-020667(JP,A)
【文献】特開2006-233365(JP,A)
【文献】特開2006-233364(JP,A)
【文献】特開平11-256464(JP,A)
【文献】特開2004-166831(JP,A)
【文献】特開2020-165000(JP,A)
【文献】特開2011-127259(JP,A)
【文献】特開2011-219873(JP,A)
【文献】特開2015-086501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0256773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
A61F 13/15-13/84
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が15μm以下である熱融着性繊維を含むウエブ
を用いた不織布の製造方法であって、
前記ウエブが、第1ウエブ及び第2ウエブを有し、これら各ウエブにおける熱融着性繊維の含有量が該ウエブの全質量に対して少なくとも50質量%以上であり、
第1ウエブは、繊維径が15μm以下である熱融着性繊維の含有割合が25%以上100%以下であり、
第2ウエブを構成する繊維の平均繊維径が、第1ウエブを構成する繊維の平均繊維径よりも大きく、
第1ウエブを構成する繊維の平均繊維径と第2ウエブを構成する繊維の平均繊維径との差が0.5μm以上25μm以下であり、
前記ウエブにおいて第1ウエブ側の面に前記繊維径が15μm以下である熱融着性繊維が存在しており、
第2ウエブ側の面を熱風の吹き付け面にし、前記ウエブに下記条件で熱風を吹き付けて、該ウエブを構成する繊維の交点を融着させる不織布の製造方法。
(1)前記熱融着性繊維を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点をMpとしたとき、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面と反対側の面の温度T1が、Mp以上Mp+15℃以下である。
(2)温度T1が、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面の温度T2よりも低く且つ温度T1と温度T2との差が10℃以上35℃以下である。
(3)熱風の供給速度が0.30m/秒以上0.60m/秒以下である。
【請求項2】
第1ウエブの繊度に対する第2ウエブの繊度の比(第2ウエブの繊度/第1ウエブの繊度)が、1.1以上3.0以下である、請求項
1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記(1)の条件において、温度T1とMpとの差が、0.5℃以上15℃以下である、請求項
1又は2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
周回する通気性搬送部材上に前記ウエブを連続供給して該ウエブを搬送しながら該ウエブに前記熱風を連続して吹き付ける工程を有し、
前記工程においては、前記ウエブを供給するのに先立ち、前記熱風の連続吹き付けによって加熱された前記通気性搬送部材を冷却する、請求項1
~3の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記冷却後且つ前記熱風の連続吹き付け前の前記通気性搬送部材の温度が、25℃以上130℃以下である、請求項
4に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
Mpと前記冷却後の前記通気性搬送部材の温度との温度差(Mp-前記の冷却された通気性搬送部材の温度)が、0℃超105℃以下である、請求項
4又は
5に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記ウエブに前記熱風を吹き付きつけて得られた不織布に、カレンダー加工を施す、請求項1~
6の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記カレンダー加工を多段で行い、何れかのカレンダー加工を、以下の条件(C1)で行う、請求項
7に記載の不織布の製造方法。
温度:25℃、
線圧:20N/cm以上500N/cm以下、
ロール:一対のカレンダーロールであって、一方を表面が金属製のカレンダーロール及び他方を表面のD硬度(JIS K6253)が40度以上100度以下の樹脂ロールを用いる。
【請求項9】
前記金属製のカレンダーロールとして、鏡面加工された平滑なものであるか、又は微細な凹凸が施されたものを用いる、請求項
8に記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂ロールとして、硬質ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、NBR、又はEPDMの樹脂から構成されたものを用いる、請求項
8又は
9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
前記カレンダー加工を二段で行い、二段目のカレンダー加工を、前記条件(C1)で行う、請求項
8~
10の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項12】
一段目のカレンダー加工における線圧を二段目よりも高くする、請求項
11に記載の不織布の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の不織布の製造方法で製造された不織布を、吸収性物品の構成部材として
用いる、吸収性物品
の製造方法。
【請求項14】
前記不織布は、前記繊維径が15μm以下である熱融着性繊維を含む層を有しており、
前記層側の面が肌当接面となるように前記不織布を
用いる、請求項
13に記載の吸収性物品
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法、これにより製造された不織布、及び該不織布を構成部材として含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、繊維材料からなるシート部材を含んで構成されている。斯かるシート部材の製造方法として、繊維からなるウエブに熱風を吹き付けて不織布化する製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、低融点成分、高融点成分からなる熱融着性繊維を含む繊維集合体に対し、熱処理加工を施した直後に冷却処理する、不織布の製造方法が記載されている。
【0003】
また、本出願人は、先に、エアスルー不織布に、多段でカレンダー加工を施すことにより、扁平に変形した繊維の横断面の長軸方向を該不織布の平面方向に概ね配向させる、不織布の製造方法を開示した(特許文献2)。斯かる製造方法では、何れかのカレンダー加工を、金属製のカレンダーロール及び所定のD硬度を有する樹脂ロールを用いて所定条件にして行う。
【0004】
また、本出願人は、先に、熱伸長性繊維を含むウエブにエアスルー方式で熱風を吹き付けて結合ウエブを形成した後、これにエンボス加工を施して、表面に凹凸を有する不織布を製造する方法を開示した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-158499号公報
【文献】特開2006-233365号公報
【文献】特開2011-137249号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、熱融着性繊維を含むウエブに熱風を吹き付けて、該ウエブを構成する繊維の交点を融着させる不織布の製造方法に関する。
前記熱融着性繊維は、繊維径が15μm以下であることが好ましい。
前記製造方法は、前記ウエブに下記条件で熱風を吹き付けることが好ましい。
(1)前記熱融着性繊維を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点をMpとしたとき、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面と反対側の面の温度T1が、Mp以上Mp+15℃以下である。
(2)温度T1が、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面の温度T2よりも低く且つ温度T1と温度T2との差が10℃以上35℃以下である。
(3)熱風の供給速度が0.30m/秒以上0.60m/秒以下である。
【0007】
また本発明は、製造方法で製造された不織布に関する。
【0008】
また本発明は、前記不織布を構成部材として含む、吸収性物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の不織布の製造方法に用いられる装置を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、実施例における単位面積当たりの起毛した繊維の本数の測定方法を説明するための模式図である。
【発明の詳細な説明】
【0010】
特許文献1~3に記載の製造方法では、ウエブに熱風を吹き付けて繊維の交点を融着させることにより不織布を製造する。前記ウエブに繊維径が小さい繊維を用いると、熱風の吹き付けによって不織布化されるものの、得られる不織布の強度や風合いが不十分になる傾向があり、滑らかさや肌触りが低下する虞がある。特許文献1~3は、繊維径が小さい繊維を用いた場合に、肌触りや強度が良好な不織布を得る点からの特段の検討はなされていなかった。
【0011】
したがって本発明は、繊維径が小さい繊維を含み、且つ肌触り及び強度に優れる不織布の製造方法、これにより製造された不織布、及び該不織布を構成部材として含む吸収性物品に関する。
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本実施形態の製造方法は、熱融着性繊維を含むウエブに熱風を吹き付けて、該ウエブを構成する繊維の交点を融着させる熱風処理工程を含む。本実施形態の熱風処理工程は、不織布の前駆体であるウエブに熱風を吹き付ける工程である。ウエブに熱風を吹き付けて不織布を製造する方法としては、熱風がウエブを貫通するエアスルー法が知られているところ、本実施形態の熱風処理工程では、後述する(1)~(3)の条件を採用することで、吹き付けた熱風の全量がウエブを貫通しない程度に、ウエブに熱風を吹き付けて不織布を製造する。以下、熱風処理工程により得られる不織布を「第1不織布14」ともいう。この第1不織布14に対し、後述するカレンダー工程を行い得られる不織布を「第2不織布10」ともいう。本実施形態の製造方法では、最終的に第2不織布10が得られる。
【0013】
本発明の製造の対象物である第1不織布14及び第2不織布10は単層構造のものであってもよく、あるいは多層構造のものであってもよい。以下の説明は、多層構造の第1不織布14及び第2不織布10の製造に係るものであるところ、当該説明は単層構造の第1不織布14及び第2不織布10の製造にも同様に適用される。
第1不織布14及び第2不織布10それぞれは、第1面及びこれと反対側に位置する第2面を有しており、第1面を形成する第1層と、第2面を形成する第2層とが積層した積層構造を有している。第1層は後述する第1ウエブ11を原料とし、第2層は後述する第2ウエブ12を原料とする。本実施形態の不織布10,14において第1層は、第2層よりも構成繊維の平均繊維径が小さく、繊維径が15μm以下の繊維を含んでいる。
【0014】
本実施形態の製造方法を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2において、符号Xは、ウエブ11,12,13等の不織布14,10の形成材料を搬送する搬送方向を示す。
図1には、本発明の不織布の製造方法に用いられる製造装置の一実施形態が示されている。
図1に示す製造装置100は、ウエブ形成部20、熱風処理部30及びカレンダー部40を備えている。
【0015】
ウエブ形成部20は、第1カード機21及び第2カード機22を具備している。第1カード機21は、第1層に対応する第1ウエブ11を製造する。第2カード機22は、第2層に対応する第2ウエブ12を製造するためのものである。原料繊維の供給部(図示せず)から各カード機21,22に原料繊維が供給され繊維がカーディングされる。これによって第1ウエブ11及び第2ウエブ12が形成される。第2ウエブ12は、第1ウエブ11上に重ね合わされる。これによってウエブ11,12が積層した積層ウエブ13が形成される。積層ウエブ13は、後述する熱風処理部30における通気性搬送部材31上に連続供給される。
【0016】
熱風処理部30は、積層ウエブ13に熱風を吹き付けるブロア32と、該熱風を吸引するサクションボックス33と、積層ウエブ13を搬送する搬送装置35を具備している。搬送装置35は、金属製のネット(ワイヤーメッシュ等)のような通気性材料からなる通気性搬送部材31と、該通気性搬送部材31が掛け渡された搬送ロール34a,34b,34c,34dとを具備している。斯かる通気性搬送部材31は無端ベルトとなっている。搬送装置35は、該無端ベルトが一方向に周回するベルトコンベアの態様となっている。
【0017】
ブロア32とサクションボックス33は、通気性搬送部材31を挟んで対向配置している。通気性搬送部材31は、ブロア32とサクションボックス33との間で積層ウエブ13を搬送する。ブロア32は、これと対向配置される通気性搬送部材31に熱風を供給する熱風供給口を具備している(図示せず)。通気性搬送部材31上に載置された積層ウエブ13は、搬送方向Xに沿って搬送されブロア32の下を通過する。積層ウエブ13は、第2ウエブ12がブロア32と対向し、第1ウエブ11が通気性搬送部材31と対向した状態で、該ブロア32の下を通過する。その際、所定温度に加熱された熱風が積層ウエブ13に吹き付けられる。すなわち、積層ウエブ13において第2ウエブ12側の面が熱風の吹き付け面(以下、単に「吹き付け面」という。)となり、第1ウエブ11側の面が熱風の非吹き付け面(以下、単に「非吹き付け面」という。)となる。非吹き付け面は、吹き付け面の反対側の面である。この熱風が吹き付けられるときに付与される熱によって積層ウエブ13に含まれている熱融着性繊維が軟化ないし溶融し、繊維どうしの交点が結合する。これによって第1不織布14が得られる。積層ウエブ13に吹き付けられた熱風はサクションボックス33によって吸引され回収される。
【0018】
搬送装置35においては、ブロア32とサクションボックス33との間における積層ウエブ13の搬送経路の上流側に第1搬送ロール34a及び第4搬送ロール34dが配されており、該搬送経路の下流側に第2搬送ロール34b及び第3搬送ロール34cが配されている。第1搬送ロール34a及び第4搬送ロール34dは、ブロア32よりも上流側に位置している。第1搬送ロール34aは、垂直方向において第4搬送ロール34dよりもブロア32に近い位置に配されている。第2搬送ロール34b及び第3搬送ロール34cは、ブロア32よりも下流側に位置している。第2搬送ロール34bは、垂直方向において第3搬送ロール34cよりもブロア32に近い位置に配されている。
製造装置100は、熱風によって加熱された通気性搬送部材31を冷却する冷却装置50を具備している。冷却装置50は、第3搬送ロール34c及び第4搬送ロール34d間に位置しており、これら搬送ロール34c,34d間で搬送される通気性搬送部材31を冷却する。冷却装置50としては、冷風を送る送風ファン等の公知の装置を用いることができる。また、冷却装置50として、搬送ロール34a,34b,34c,34dの何れかのロールを冷却ロールとしてもよい。冷却ロールは、その内部に水、気体などの冷媒が配されている。
【0019】
カレンダー部40は、表面が金属製のカレンダーロール41並びに表面が樹脂から構成される第1樹脂ロール42及び第2樹脂ロール43を具備している。第1樹脂ロール42、カレンダーロール41、及び第2樹脂ロール43はこの順で、垂直方向に重なるように配置されている。すなわち、第1樹脂ロール42及び第2樹脂ロール43は、カレンダーロール41に接するように対向して配置されている。第1不織布14の搬送方向Xにおいて、第1樹脂ロール42が上流側に配置され、第2樹脂ロール43が下流側に配置されている。カレンダー部40に、第1不織布14を導入した状態において、第1樹脂ロール42とカレンダーロール41との間では、第1不織布14の第1層がカレンダーロール41と接触する。また、第2樹脂ロール43とカレンダーロール41との間では、第1不織布14の第1層がカレンダーロール41と接触する。斯かるカレンダー部40のカレンダー加工によって、第2不織布10が得られる。なお、金属製のカレンダーロール41並びに第1樹脂ロール42及び第2樹脂ロール43はいずれも、少なくとも軸部分が金属により構成されている。
【0020】
本実施形態の製造方法においては、上述した製造装置100を用いて第2不織布10を製造する。本実施形態の製造方法は、第1ウエブ11及び第2ウエブ12を形成し、これら両ウエブ11,12を積層して積層ウエブ13を得るウエブ形成工程と、積層ウエブ13に後述する(1)~(3)の条件で熱風を吹き付けて、第1不織布14を得る熱風処理工程と、第1不織布14にカレンダー加工を施して第2不織布10を得るカレンダー工程とを具備する。
【0021】
ウエブ形成工程では、先ず、第1ウエブ11及び第2ウエブ12を製造する。これらウエブ11,12は、熱融着性繊維等の原料繊維を開繊機で開繊し、開繊された原料繊維を上述したカード機21,22でウエブ化することで製造される。第1ウエブ11及び第2ウエブ12は、不織布に形成される前の段階のシート状物であり、該ウエブ中では繊維同士は熱融着していない。
【0022】
第1ウエブ11及び第2ウエブ12は、熱融着性繊維を含む。熱融着性繊維は、熱の作用によって互いに融着する繊維であり、熱可塑性樹脂を原料とする。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、熱融着性繊維として、低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる複合繊維を用いてもよい。斯かる複合繊維としては、芯部と鞘部とからなる芯鞘構造を備える芯鞘型や、サイドバイサイド型等が挙げられる。芯鞘型の複合繊維は、同心タイプであってもよく、偏心タイプであってもよい。
【0023】
不織布10,14の強度をより確実に確保する観点から、熱融着性繊維は、構成樹脂としてPEを含むことが好ましく、少なくとも表面にPEを含むことがより好ましく、PEからなることがさらに好ましい。例えば、熱融着性繊維として芯鞘構造を備える繊維を含む場合、芯部の樹脂成分がPETであり、前記鞘部の樹脂成分がPEであることが好ましい。
【0024】
上記と同様の観点から、第1ウエブ11における熱融着性繊維の含有量は、第1ウエブ11の全質量に対して少なくとも50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%以下である。
第2ウエブ12における熱融着性繊維の含有量は、第1ウエブ11における熱融着性繊維の含有量と同じ範囲内であることが好ましい。
【0025】
第1ウエブ11及び第2ウエブ12は、熱融着性繊維に加えて他の繊維を含有していてもよい。他の繊維としては、熱により互いに融着しない繊維が挙げられる。例えば、パルプ、コットン、レーヨン、リヨセル及びテンセル等が挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
第1ウエブ11は、繊維径が15μm以下の熱融着性繊維を含む。以下、「繊維径が15μm以下の熱融着性繊維」を細繊維ともいう。斯かる細繊維を原料として用いた理由は、第1不織布14及び第2不織布10の表面(特に第1層側の面)の肌触りを良好にするためである。
【0027】
不織布10,14における滑らかさをより向上させる観点から、第1ウエブ11は、細繊維の含有割合が、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であり、現実的には100%以下である。細繊維の含有割合は、第1ウエブ11を製造する際の原料繊維の使用量によって調整できる。細繊維の含有割合の測定方法は後述する。
【0028】
不織布10,14の強度及びしなやかさをより向上させる観点から、第2ウエブ12を構成する繊維の平均繊維径は、第1ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径よりも大きいことが好ましい(第2ウエブ12>第1ウエブ11)。
上記と同様の観点から、第1ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径と第2ウエブ12を構成する繊維の平均繊維径との差は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下であり、そして、好ましくは0.5μm以上25μm以下、より好ましくは1μm以上15μm以下である。
【0029】
不織布10,14の第1層側の面における滑らかさをより向上させる観点から、細繊維を含む第1ウエブ11は、該ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径が、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下であり、そして、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは8μm以上15μm以下である。
【0030】
不織布10,14の肌触り及び強度をより向上させる観点から、第2ウエブ12は、該ウエブ12を構成する繊維の平均繊維径が、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下であり、そして、好ましくは5μm以上30μm以下、より好ましくは8μm以上20μm以下である。
【0031】
細繊維の含有割合、第1ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径及び第2ウエブ12を構成する繊維の平均繊維径それぞれは、電子顕微鏡観察によって各ウエブを拡大観察することにより測定する。具体的には、測定対象の各ウエブについて、鋭利なかみそりを用いて、平面視10mm×30mmの領域を厚み方向の全体で切り出し、これを測定サンプルとする。測定サンプルの主面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、JCM-6000Plus 商品名、日本電子株式会社製。本願明細書におけるSEMはすべてこれである。)を用いて倍率200倍で、500μm×400μmの領域(観察領域)を撮影する。このSEMによる撮影では、測定サンプルの撮影視野において最表に位置する繊維に焦点を合わせる。1枚の測定サンプルにつき、互いに位置が異なる5箇所を撮影し、各面計5枚のSEM画像を取得する。取得したSEM画像それぞれについて、以下の方法により繊維径及び細繊維の含有割合を測定する。先ず、SEM画像において、「焦点の合った繊維」を選択する。「焦点の合った繊維」は、前記観察領域内で輪郭がぼやけていない繊維である。次いで、焦点の合った繊維それぞれについて、繊維どうしが熱融着した熱融着部以外の部分を任意で選択する。次いで、その選択した部分における繊維の長手方向と直交する線を引き、当該線に沿う該繊維の差し渡し長さを繊維径として測定する。斯かる測定は、前記焦点の合った繊維において、前記差し渡し長さを示す差し渡し線、即ち繊維の長手方向と直交する線と、繊維の輪郭を示す線とが互いに直交する位置で測定する。次いで、繊維径が15μm以下の細繊維の本数を細繊維の本数としてカウントし、SEM画像における前記焦点の合った繊維の本数に対する該細繊維の本数の割合、即ち「細繊維の本数/焦点の合った繊維の本数」の百分率(%)を求める。斯かる割合を、測定サンプルから取得した計5枚のSEM画像ごとに求め、これらの平均を「細繊維の含有割合」とする。また、焦点の合った繊維の繊維径の平均を、「第1ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径」又は「第2ウエブを構成する繊維の平均繊維径」とする。
第1ウエブ11及び第2ウエブ12からなる不織布を用いて、該不織布におけるこれらウエブ11,12を構成する繊維の平均繊維径や細繊維の割合を測定する場合は、該不織布から、鋭利なかみそりを用いて、平面視10mm×30mmの領域を厚み方向の全体で切り出したものを測定サンプルとする。この場合、測定サンプルの第1層側(第1ウエブ11側)及び第2層側(第2ウエブ12側)の面を上述した方法で拡大観察する。
【0032】
不織布10,14のふっくら感をより向上させる観点から、第1ウエブ11及び第2ウエブ12の坪量は以下の範囲内であることが好ましい。
第1ウエブ11の坪量は、第2ウエブ12の坪量よりも低いことが好ましい(第1ウエブ11<第2ウエブ12)。具体的には、第1ウエブ11の坪量と第2ウエブ12の坪量との差は、好ましくは0.5g/m2以上、より好ましくは1g/m2以上であり、また、好ましくは10g/m2以下、より好ましくは8g/m2以下であり、そして、好ましくは0.5g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上8g/m2以下である。
第1ウエブ11の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは7g/m2以上であり、また、好ましくは15g/m2以下、より好ましくは12g/m2以下であり、そして、好ましくは5g/m2以上15g/m2以下、より好ましくは7g/m2以上12g/m2以下である。
第2ウエブ12の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは7g/m2以上であり、また、好ましくは25g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下であり、そして、好ましくは5g/m2以上25g/m2以下、より好ましくは7g/m2以上20g/m2以下である。
【0033】
不織布10,14の柔らか感、ふっくら感及び滑らか感を向上させる観点から、第1ウエブ11及び第2ウエブ12の繊度は以下の範囲であることが好ましい。
第1ウエブ11の繊度は、第2ウエブ12の繊度よりも低いことが好ましい(第1ウエブ11<第2ウエブ12)。具体的には、第1ウエブの繊度に対する第2ウエブの繊度の比(第2ウエブの繊度/第1ウエブの繊度)が、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上であり、そして好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下であり、また好ましくは1.1以上3.0以下、より好ましくは1.1以上2.5以下、さらに好ましくは1.3以上2.0以下である。
第1ウエブ11の繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは1.0dtex以上であり、また好ましくは5.0dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下であり、また好ましくは0.5dtex以上5.0dtex以下、より好ましくは1.0dtex以上4.0dtex以下である。
第2ウエブ12の繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上であり、また好ましくは8.0dtex以下、より好ましくは5.0dtex以下であり、また好ましくは1.0dtex以上8.0dtex以下、より好ましくは1.5dtex以上5.0dtex以下である。
【0034】
繊維の繊度は、以下の方法で測定することができる。第1ウエブ11を50mm×100mm(面積5000mm2)の長方形状に切り出して測定用サンプルを作製する。次いで、測定用サンプルを断面視して、測定用サンプルにおける2つの主面の一方側から厚み方向に0.05mm間隔を空けた位置での標準的な繊維10本を対象として繊維太さを、走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍で撮影し、繊維太さ平均値Dn(μm)を算出する。次いで、測定用サンプルの前記一方の面側から厚み方向に0.05mm間隔を空けた位置での標準的な繊維の構成樹脂を特定し、示差走査熱量測定器(DSC)を用いて、理論繊維存在密度Pn(g/cm3)を求める。得られた繊維太さ平均値Dn(μm)及び理論繊維存在密度Pn(g/cm3)から、繊維長さ10,000m当たりの重さ(g)を算出して、この算出された値を第1ウエブ11の繊度(dtex)とする。
第2ウエブ12の繊度も、第1ウエブ11の繊度と同様の方法で求めることができる。
【0035】
第1ウエブ11及び第2ウエブ12からなる不織布を用いて、該不織布におけるこれらウエブ11,12を構成する繊維の繊度を測定する場合は、該不織布から、鋭利なかみそりを用いて、平面視50mm×100mmの領域(面積5000mm2)を厚み方向の全体で切り出したものを測定サンプルとする。この場合、測定サンプルの第1層(第1ウエブ11)における非吹き付け面から厚み方向に0.05mm間隔を空けた位置における標準的な繊維を対象として、該繊維の繊維太さ平均値Dn(μm)及び理論繊維存在密度Pn(g/cm3)を上述した方法により求め、これらの値から第1ウエブ11の繊度(dtex)を算出する。また、測定サンプルの第2層(第2ウエブ12)における非吹き付け面から厚み方向に0.05mm間隔を空けた位置における標準的な繊維を対象とする点以外は、第1ウエブ11の繊度と同様の方法により、第2ウエブ12の繊度(dtex)を算出する。
【0036】
ウエブ形成工程では、搬送中の第1ウエブ11と第2ウエブ12とを合流させ、第1ウエブ11の上に第2ウエブ12を積層して積層ウエブ13を得る(
図1参照)。得られた積層ウエブ13は、続く熱風処理工程に供される。
【0037】
熱風処理工程は、積層ウエブ13に熱風を吹き付けて、積層ウエブ13を構成する繊維の交点を融着させて第1不織布14を製造する工程である。熱風処理工程では、下記条件(1)~(3)で、積層ウエブ13に熱風を吹き付ける。
(1)積層ウエブ13に含まれる熱融着性繊維を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点をMpとしたとき、ウエブ(積層ウエブ13)における非吹き付け面の温度T1が、Mp以上Mp+15℃以下である。
(2)温度T1が、ウエブ(積層ウエブ13)における熱風の吹き付け面の温度T2よりも低く且つ温度T1と温度T2との差が10℃以上35℃以下である。
(3)熱風の供給速度が0.30m/秒以上0.60m/秒以下である。
【0038】
前記(1)~(3)の条件を満たす熱風処理工程では、積層ウエブ13の厚みが過度に潰れることを抑制しながら、積層ウエブ13の構成繊維(熱融着性繊維)どうしを適度に熱融着させる。これにより、第1不織布14は、第1ウエブ11及び第2ウエブ12の各厚みが良好に維持されるので、柔らかく且つふっくらとした感触が得られる。また、前記熱風処理工程では、第1ウエブ11に含まれる細繊維が過度に熱融着されることが抑制されるので、第1不織布14における非吹き付け面(第1ウエブ11側の面)が、細繊維によって滑らかな感触となる。このように、本実施形態の製造方法では、柔らかく、ふっくらとした感触を有し且つ滑らかな表面を有する、肌触りに優れた不織布14が得られる。さらに、本実施形態の製造方法では、積層ウエブ13における構成繊維どうしを適度に融着させるので、強度に優れたしなやかな不織布14が得られる。
一方、細繊維を含む積層ウエブ13に対し従来のエアスルー法を用いてエアスルー不織布を製造すると、細繊維が過度に融着することにより、細繊維本来の滑らかな感触が低下して、エアスルー不織布の風合いを損なうことがある。また、エアスルー法による熱風が、ウエブを過度に潰して、ふっくら感を損なうことがある。
【0039】
以下、前記(1)~(3)の条件について詳述する。
前記(1)の条件は下記式(i)で表される。
Mp≦T1≦Mp+15℃・・・(i)
Mp:ウエブ(積層ウエブ13)に含まれる熱融着性繊維を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点
T1:ウエブ(積層ウエブ13)における非吹き付け面の温度
【0040】
Mpは、積層ウエブ13に含まれる熱融着性繊維を構成する樹脂のうち、融点が最も低い樹脂の融点である。積層ウエブ13における熱融着性繊維が、芯鞘型複合繊維のように複数種類の樹脂から構成されている場合、Mpは、それらの樹脂の中で最も融点が低い樹脂の融点とする。明確な融点が存在しない樹脂の場合は軟化点とする。
【0041】
温度T1は、温度測定の便宜上、熱風が吹き付けられる熱風処理搬送経路r1における通気性搬送部材31の非吹き付け搬送面f1から法線方向に10cm離間した位置P1の温度とする(
図2参照)。「熱風処理搬送経路r1」は、通気性搬送部材31によって形成される積層ウエブ13の搬送経路のうち、ブロア32の熱風供給口と対向した経路である。「非吹き付け搬送面f1」は、通気性搬送部材31におけるブロア32の熱風供給口と対向する面とは反対側の面である。前記位置P1の温度が、積層ウエブ13における非吹き付け面の温度T1に相当する。
【0042】
温度T1は、不織布10,14における非吹き付け面(第1層側の面)側の熱融着の程度及び風合いに影響する。前記(1)の条件において、温度T1をMp以上とすることで、非吹き付け面の強度を確保しつつ、且つ該温度T1をMp+15℃以下とすることで、細繊維の過度な熱融着を抑制し、非吹き付け面の風合いを良好なものにさせる。斯かる風合いをより向上させる観点から、前記(1)の条件において、温度T1とMpとの差は、15℃以下であり、好ましくは0.5℃以上、より好ましくは1℃以上であり、また、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下であり、そして、好ましくは0.5℃以上15℃以下、より好ましくは1℃以上10℃以下、さらに好ましくは1℃以上5℃以下である。
【0043】
前記(2)の条件は下記式(ii)で表される。
10℃≦T2-T1≦35℃・・・(ii)
T2:ウエブ(積層ウエブ13)における吹き付け面の温度
前記式(ii)においては、T2>T1が前提となる。
【0044】
温度T2は、温度測定の便宜上、熱風処理搬送経路r1における通気性搬送部材31の吹き付け搬送面f2から法線方向に10cm離間した位置P2の温度とする(
図2参照)。「吹き付け搬送面f2」は、通気性搬送部材31におけるブロア32の熱風供給口と対向する面である。前記位置P2の温度が、積層ウエブ13における吹き付け面の温度T2に相当する。
【0045】
温度T1及び温度T2の測定には、熱電対式の温度センサーや温度表示器等の公知の測定手段が用いられる。温度T1及び温度T2の測定は、以下の方法により行われる。熱風処理搬送経路r1を搬送方向Xに四等分して、上流側から順に第1区S1、第2区S2、第3区S3、及び第4区S4の四区間に区分したとき、これら四区間S1,S2,S3,S4それぞれの搬送経路長さの中点における位置P1及び位置P2の温度を測定する。そして、四区間S1,S2,S3,S4における位置P1の平均温度及び位置P2の平均温度を算出し、これを温度T1及び温度T2とする。
【0046】
温度T2は、不織布10,14の構成繊維どうしの熱融着に影響する。前記(2)の条件において、温度T1と温度T2との差(T2-T1)を10℃以上にすることで、積層ウエブ13の構成繊維どうしを熱融着させて不織布10,14全体の強度を確保しつつ、温度T1と温度T2との差(T2-T1)を35℃以下にすることで、積層ウエブ13の吹き付け面側の構成繊維が過度に熱融着することを抑制する。これにより、不織布10,14に、強度及びしなやかさを付与できる。不織布10,14の強度及びしなやかさをより確実に確保する観点から、前記(2)の条件において、温度T1と温度T2との差(T2-T1)は、好ましくは12℃以上、より好ましくは15℃以上であり、また、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下であり、そして、好ましくは12℃以上30℃以下、より好ましくは15℃以上25℃以下である。
【0047】
前記(3)の条件では、熱風処理搬送経路r1における熱風の供給速度を0.30m/秒以上0.60m/秒以下とする。
熱風の供給速度は不織布10,14の厚みに影響する。前記(3)の条件において、熱風の供給速度を0.30m/秒以上とすることで、積層ウエブ13の構成繊維を適度に熱融着させるとともに、熱風の供給速度を0.60m/秒以下とすることで、積層ウエブ13の本来の厚みを良好に維持する。これにより、不織布10,14にクッション性及びふっくらとした感触を付与できる。不織布10,14のクッション性及びふっくらとした感触をより確実に確保する観点から、前記(3)の条件において、熱風の供給速度は、好ましくは0.33m/秒以上、より好ましくは0.35m/秒以上であり、また、好ましくは0.57m/秒以下、より好ましくは0.50m/秒以下であり、そして、好ましくは0.33m/秒以上0.57m/秒以下、より好ましくは0.35m/秒以上0.50m/秒以下である。
なお、熱風の供給速度は、熱風処理搬送経路r1における通気性搬送部材31の吹き付け搬送面f2から法線方向に10cm離間した位置P2の位置において、公知の風速計(例えば、日本カノマックス株式会社製のANEMOMASTERのMODEL6162やMODEL0203等)を用いて測定される。
【0048】
前述したように積層ウエブ13は、第1ウエブ11が細繊維を含んでいる。細繊維が過度に熱融着することをより抑制して、第2ウエブ12における構成繊維どうしを適度に熱融着させる観点から、熱風処理工程は、積層ウエブ13に対し第2ウエブ12側から熱風を吹き付けることが好ましい。これにより、積層ウエブ13の非吹き付け面をより滑らかにするとともに、第1不織布14の強度をより確実に確保できる。
【0049】
本実施形態の熱風処理工程は、周回する通気性搬送部材31上に積層ウエブ13を連続供給して該積層ウエブ13を搬送しながら該積層ウエブ13に熱風を連続して吹き付ける。このように、本実施形態の製造方法では、積層ウエブ13を連続搬送しながら、熱風処理工程を連続的に実施する。前記の熱風処理搬送経路r1は、通気性搬送部材31の周回経路r2の一部に含まれる(
図2参照)。
製造装置100の運転開始直後においては、通気性搬送部材31の温度はほぼ常温であるが、運転を継続すると、ブロア32の熱風によって、通気性搬送部材31の温度が上昇することがある。これに起因して温度T2も上昇する場合がある。熱風処理工程における温度T2の過度の上昇をより抑制して、不織布10,14における吹き付け面側の表面をより滑らかにする観点から、熱風処理工程においては、積層ウエブ13を供給するのに先立ち、熱風の連続吹き付けによって加熱された通気性搬送部材31を冷却することが好ましい。斯かる冷却を行う工程を、以下「冷却工程」ともいう。本実施形態の冷却工程は、通気性搬送部材31の周回経路r2において、熱風処理搬送経路r1以外の経路に配された冷却装置50によって行われる。例えば、冷却装置50は、熱風処理搬送経路r1に入る前に、通気性搬送部材31に対し冷風を吹き付けて、該通気性搬送部材31を冷却する。また、冷却装置50として、搬送ロール34a,34b,34c,34dの何れかのロールを冷却ロールとしてもよい。冷却ロールは、その内部に水、気体などの冷媒が配される。
【0050】
上記と同様の観点から、冷却工程後且つ熱風処理工程前の通気性搬送部材31の温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下であり、そして、好ましくは25℃以上130℃以下、より好ましくは30℃以上120℃以下である。冷却工程後且つ熱風処理工程前の通気性搬送部材31の温度は、熱風処理搬送経路r1の入り口で、熱電対式の温度センサーや温度表示器等の公知の測定手段により測定される。
【0051】
上記と同様の観点から、Mpと冷却工程により冷却された通気性搬送部材31の温度との温度差(Mp-冷却工程により冷却された通気性搬送部材31の温度)は、好ましくは0℃超、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは105℃以下、より好ましくは90℃以下であり、そして、好ましくは0℃超105℃以下、より好ましくは10℃以上90℃以下である。
【0052】
以上の熱風処理工程により第1不織布14が得られる。第1不織布14は、前述したように、肌触り及び強度に優れるものであるが、本実施形態の製造方法では、さらに第1不織布14にカレンダー加工を施すカレンダー工程を実施する。カレンダー加工は、不織布表面を平滑化して、肌で触ったときの滑らかさをより向上できる。また、不織布の構成繊維の密度を向上させて、しなやかさをより向上できる。第1不織布14は、前述したように第1ウエブ11及び第2ウエブ12の各厚みが良好に維持されて、ふっくらとした感触を有する。これに起因して、第1不織布14に対しカレンダー加工を施しても厚みが回復し易いので、カレンダー工程を経て得られる第2不織布10も、良好なふっくらとした感触を有する。
【0053】
カレンダー工程におけるカレンダー加工は、二段又は三段以上の多段で行ってもよく、一段で行ってもよいが、少なくとも一段以上行うことが好ましい。第2不織布10の表面の滑らかさやしなやかさをより向上させる観点から、カレンダー工程は、カレンダー加工を多段で行うことが好ましい。
本実施形態のカレンダー工程は、第1不織布14に対し、二段のカレンダー加工を施す。一段目のカレンダー加工は、カレンダーロール41と第1樹脂ロール42との間に第1不織布14を導入して行う。二段目のカレンダー加工は、カレンダーロール41と第2樹脂ロール43との間に第1不織布14を導入して行う。これら一段目及び二段目のカレンダー加工において、第1不織布14における第1層がカレンダーロール41と当接される。
【0054】
カレンダー加工は、以下の条件(C1)で行うことが好ましい。
温度:25℃
線圧:20N/cm以上500N/cm以下
ロール:一対のカレンダーロールであって、一方を表面が金属製のカレンダーロール及び他方を表面のD硬度(JIS K6253)が40度以上100度以下の樹脂ロールを用いる。
カレンダー工程においてカレンダー加工を多段で行う場合は、何れかのカレンダー加工において条件(C1)を満たすことが好ましい。すなわち、多段のカレンダー加工のうち少なくとも一段のカレンダー加工を前記条件(C1)で行うことが好ましい。
【0055】
条件(C1)を満たすカレンダー加工を行うことにより、カレンダーロール41に当接される第1層の表面がより滑らかとなるとともに、第2不織布10のしなやかさがより向上される。また、構成繊維の過度な圧縮がより抑制されて、第2不織布10のふんわり感をより維持できる。この理由は、カレンダー加工によってカレンダーロール41に対向している第1層側が挟圧されて第1層に含まれる繊維が変形して扁平になるとともに、該挟圧により高密度化されることによる。また、挟圧によって不織布14に「揉み」の作用が加わり、繊維どうしの結合点の一部が変形ないし破壊されて、不織布14がしなやかになる。樹脂ロール42,43に対向している第2層に含まれる繊維は、樹脂ロール42,43が軟質な材料からなるので挟圧力を受けにくく変形しづらく、且つ高密度化しづらくなっている。扁平に変形した第1層に含まれる繊維は、その横断面における長軸方向が、不織布14の平面方向に配向する。
【0056】
カレンダーロール41は鏡面加工された平滑なものであってもよく、あるいは梨地等の微細な凹凸が施されたものであってもよい。カレンダーロール41は金属製のものが好ましい。
第1樹脂ロール42及び第2樹脂ロール43としては、例えば硬質ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、NBR、EPDM等の樹脂から構成されるものを用いることができる。
条件(C1)において、第1樹脂ロール42及び第2樹脂ロール43の一方又は双方は、ロール表面の構成樹脂のD硬度(JIS K6253)が好ましくは40度以上100度以下であるが、より好ましくは70度以上95度以下である。
【0057】
条件(C1)においてカレンダーロール41及び/又は樹脂ロール42,43は加熱状態で用いられても、非加熱状態で用いられてもよい。非加熱状態で用いられる場合、カレンダー加工は室温(25℃)条件下で行われる。
【0058】
条件(C1)において、カレンダー加工における線圧は好ましくは20N/cm以上500N/cm以下であるが、第2不織布10のふんわり感をより向上させる観点から、より好ましくは20N/cm以上300N/cm以下である。また、カレンダーロール41及び/又は樹脂ロール42,43は加熱状態又は非加熱状態で用いられるが、ふんわり感と風合いをともに向上させる観点から、非加熱状態で用いられることが好ましい。
【0059】
本実施形態のように二段のカレンダー加工を行う場合、二段とも条件(C1)を満たしてもよく、どちらか一方が条件(C1)を満たしてもよい。第2不織布10における第1層の表面をより滑らかにする観点から、二段目のカレンダー加工が条件(C1)を満たし、一段目のカレンダー加工における線圧を二段目よりも高くすることが好ましい。上記と同様の観点から、一段目のカレンダー加工における線圧は、好ましくは50N/cm以上700N/cm以下、より好ましくは100N/cm以上300N/cm以下である。
【0060】
ふっくらとした感触をより確実に得る観点から、カレンダー加工後の第2不織布10に、圧縮仕事量WCが1.2mN・cm/cm2以上1.6mN・cm/cm2以下となるように、さらに熱処理又はカレンダー加工を施す付加工程を行うことが好ましい。すなわち、付加工程を、第2不織布10の圧縮仕事量WCが1.2mN・cm/cm2以上1.6mN・cm/cm2以下となるように、該第2不織布10に施すことが好ましい。
【0061】
〔圧縮仕事量の測定〕
圧縮仕事量は、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。圧縮仕事量の測定には、カトーテック株式会社製の圧縮試験装置KES-G5を用いる。先ず、測定対象の不織布を圧縮試験装置の試験台に取り付け、面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。斯かる圧縮工程において、圧縮速度は0.2cm/sec、圧縮最大荷重は2450mN/cm2とする。圧縮仕事量(WC)は下記式(1)で表され、単位は「mN・cm/cm2」である。下記式中、Tmは、2450mN/cm2(24.5kPa)荷重時の厚み、T0は、4.902mN/cm2(49Pa)荷重時の厚みを示す。また、下記式(1)中のPaは、圧縮過程時の測定荷重(mN/cm2)を示す。圧縮仕事量(WC)の値が大きいほどふっくらとした感触となる。
【0062】
【0063】
付加工程においてカレンダー加工を第2不織布10に施す場合、前述したカレンダー工程におけるカレンダー加工と同じ条件としてもよい。例えば、付加工程においてカレンダー加工を一段又は二段以上の多段で行ってもよい。
【0064】
付加工程において熱処理を第2不織布10に施す場合、熱処理は、第2不織布10に含まれる熱融着性繊維の融点Mp未満の温度で、該第2不織布10を加熱処理することが好ましい。斯かる熱処理の方法としては、例えば、第2不織布10に熱風を吹き付ける方法、第2不織布10を無風且つ所定の温度環境下で加熱する方法等が挙げられる。前記熱風を吹き付ける方法には、温度T2をMp未満にすることを条件として、前述した熱風処理部30を用いてもよい。
【0065】
以上の製造方法により第2不織布10が得られる。第2不織布10、及び前述の熱風処理工程で得られる第1不織布14それぞれは、不織布製品に好適に用いられる。不織布製品は、不織布からなる製品又は、該不織布を構成部材として備えた製品である。不織布製品としては、例えば、使い捨ておむつやナプキン等の吸収性物品、アイマスクタイプ等の温熱具、外科用衣類やマスク、清掃シート、清拭シート等が挙げられる。前記「吸収性物品」には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。
【0066】
吸収性物品は、典型的には、着用者の肌から相対的に近い位置に配された液透過性の表面シートと、着用者の肌から相対的に遠い位置に配された液透過性又は液難透過性若しくは撥水性の裏面シートと、両シート間に介在配置された液保持性の吸収体とを具備する。吸収性物品は、その外面を形成する外装体を具備するものであってもよい。
【0067】
第1不織布14及び第2不織布10それぞれを吸収性物品の構成部材として用いる場合、該不織布10,14は、着用者等の使用者の肌と当接する構成部材に用いられることが好ましい。この場合、第1不織布14及び第2不織布10の第1層側の面が、肌当接面となるように用いられることがより好ましい。これら不織布10,14の第1層側が平坦で滑らかであることから、良好な着用感が得られる。着用者等の使用者の肌と当接する構成部材としては、表面シートや外装体等が挙げられる。
【0068】
第1不織布14及び第2不織布10それぞれは、長手方向が搬送方向X(MD方向)と一致する帯状の不織布として製造される(
図1参照)。これら不織布10,14における長手方向に直交する方向(短手方向)は、搬送方向Xと直交する方向(CD方向)と一致する。強度をより確実に確保する観点から、製造される第1不織布14及び第2不織布10の何れか一方又は双方は、MD方向における引張強度が、好ましくは10N/50mm以上、より好ましくは20N/50mm以上であり、また、好ましくは100N/50mm以下、より好ましくは70N/50mm以下であり、そして、好ましくは10N/50mm以上100N/50mm以下、より好ましくは20N/50mm以上70N/50mm以下である。上記と同様の観点から、製造される第1不織布14及び第2不織布10それぞれは、CD方向における引張強度が、好ましくは4N/50mm以上、より好ましくは5N/50mm以上であり、また、好ましくは15N/50mm以下、より好ましくは12N/50mm以下であり、そして、好ましくは4N/50mm以上15N/50mm以下、より好ましくは5N/50mm以上12N/50mm以下である。
【0069】
MD方向における引張強度及びCD方向における引張強度の各測定方法は、後述する実施例の〔引張強度の測定〕で詳述する。この〔引張強度の測定〕において、測定サンプルを切り出すとき、後述する大きさが取れない場合は、短手方向の長さを50mmとし、長手方向の長さを50mm刻みで短くして(例えば、50mm×150mm、又は50mm×100mm)、測定サンプルを切り出す。この場合、引張試験機のチャック間距離は、測定サンプルの長手方向の長さよりも50mm短くする。このように測定サンプルの長手方向の長さを変更しても、引張強度の測定結果はそのまま対比可能である。
【0070】
外観上の毛羽立ちを抑え、不織布の風合いをより向上させる観点から、製造される第1不織布14及び第2不織布10の何れか一方又は双方は、単位面積当たりの起毛した繊維の本数が、好ましくは20本以下、より好ましくは10本以下であり、0本であることが最も好ましい。すなわち、上記の観点から、単位面積当たりの起毛した繊維の本数は少ないほど好ましい。斯かる繊維の本数の測定方法は、後述する実施例の〔単位面積当たりの起毛した繊維の本数の測定〕で詳述する。この〔単位面積当たりの起毛した繊維の本数の測定〕において、不織布から10cm×10cmの測定片が切り出せない場合、測定片の大きさは7cm×7cmとする。
【0071】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。また上述した各構成を適宜組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施形態における製造方法では、第1ウエブ11及び第2ウエブ12が積層した積層ウエブ13を用いていたが、これに代えて単層のウエブを用いてもよい。この場合、単層のウエブは細繊維を含有する。
また、上述した実施形態における製造方法では、冷却工程を具備していたが、熱風処理工程における前記の(1)~(3)の条件を満たすことを前提として、冷却工程を具備していなくともよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0073】
〔実施例1〕
図1に示す製造装置100を用いて第2不織布10を製造した。先ず、ウエブ形成工程を実施した。第1ウエブ11の原料繊維には、芯成分がPET、鞘成分がPEからなる同心の芯鞘型複合繊維(芯鞘比50質量%:50質量%)からなる熱融着性繊維を用いた。斯かる第1ウエブ11の原料繊維は、繊維径が12.4μmの細繊維であり、繊度が1.3dtexであり、構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂(鞘成分のPE)の融点Mpが130℃であった。この原料繊維を第1カード機21に導入して第1ウエブ11(坪量10g/m
2)を製造した。
第2ウエブ12の原料繊維は、芯成分がPET、鞘成分がPEからなる同心の芯鞘型複合繊維(芯鞘比50質量%:50質量%)からなる熱融着性繊維を用いた。斯かる第2ウエブ12の原料繊維は、繊維径が16.7μmであり、繊度が2.0dtexであり、構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂(鞘成分のPE)の融点Mpが130℃であった。この原料繊維を第2カード機22に導入して第2ウエブ12(坪量15g/m
2)を製造した。第1ウエブ11を構成する繊維の平均繊維径は12.4μmであり、第2ウエブ12を構成する繊維の平均繊維径は16.7μmであった。平均繊維径は上述した方法により測定した。そして、第1ウエブ11の上に第2ウエブ12を積層して積層ウエブ13を製造した。
【0074】
次に、熱風処理部30を用いて積層ウエブ13に対し熱風処理工程を行った。この際、積層ウエブ13において第2ウエブ12側の面を吹き付け面とし、第1ウエブ11側の面を非吹き付け面とした。熱風処理工程の条件(温度T1、温度T1とMpとの差、温度T2、温度T1と温度T2との差、及び熱風の供給速度)を下記表1に示す。
熱風処理工程においては、積層ウエブ13を供給するのに先立ち、通気性搬送部材31を冷却する冷却工程を行った。冷却工程後且つ熱風処理工程前の通気性搬送部材31の温度は、105℃であった。上記の熱風処理工程により、第1不織布14を製造した。
【0075】
次に、カレンダー部40を用いてカレンダー工程を行った。カレンダー工程は、
図1に示すように、第1不織布14に対し二段のカレンダー加工を行った。カレンダーロール41には、金属製の表面が鏡面加工された平滑なものを用いた。第1樹脂ロール42の表面には、硬質ゴム製の、構成樹脂のD硬度(JIS K6253)が40度以上100度以下であるロールを用いた。第2樹脂ロール43には、第1樹脂ロール42と同じものを用いた。一段目及び二段目のカレンダー加工は室温(25℃)で行った。一段目及び二段目のカレンダー加工の各線圧を下記表1に示す。上記のカレンダー工程により、第2不織布10を製造した。
【0076】
〔実施例2~5〕
実施例2~4では、熱風処理工程の条件を異ならせた点以外は、実施例1と同様の方法により、第2不織布10を製造した。
また、実施例1においてカレンダー工程を行う前に得られた第1不織布14を、実施例5で得られた不織布とした。
【0077】
〔比較例1~4〕
比較例1~3では、熱風処理工程の条件を異ならせた点以外は、実施例1と同様の方法により、第2不織布10を製造した。
比較例4では、熱風処理工程の条件を異ならせた点、及び冷却工程を行わなかった点以外は、実施例1と同様の方法により、第2不織布10を製造した。
【0078】
〔評価〕
実施例1~4及び比較例1~4の第2不織布10並びに実施例5の第1不織布14について、厚み、圧縮仕事量WC及び引張強度を測定した。圧縮仕事量WCは、上述した方法により測定した。また、各不織布の第1層側の面について、摩擦係数の平均偏差MMDを測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0079】
〔厚みの測定〕
測定対象の不織布に4.9N/cm2の荷重を負荷し、その状態でレーザー変位計(オムロン株式会社製、高精度変位センサZS-LD80(商品名))を用いて、5箇所以上を測定した。この測定値の算術平均値を厚み(mm)とした。
【0080】
〔引張強度の測定〕
各実施例及び各比較例の不織布は、帯状の不織布であり、長手方向が搬送方向X(MD方向)と一致する。また、不織布における長手方向に直交する方向(短手方向)が、搬送方向Xと直交する方向(CD方向)と一致する。測定対象の不織布から、長手方向に200mm、短手方向に50mmの大きさを切り出し、これをMD方向における引張強度の測定片とした。この測定片の長手方向が引張方向と一致するように、該測定片を引張試験機(株式会社島津製作所社製、機種「AUTOGRAPH AG-X」)のチャック間に取り付けた。チャック間距離は150mmとした。次いで、取り付けた測定片を300mm/minの速度で引っ張り、引張距離に伴い変化する引張強度のグラフを得た。得られたグラフから、最大引張強度を求めた。斯かる最大引張強度の測定を3回繰り返し、それらの平均値を、MD方向における引張強度とした。
また、測定対象の不織布から、長手方向に50mm、短手方向に200mmの大きさを切り出し、これをCD方向における引張強度の測定片とした。この測定片を用いた点以外は、MD方向における引張強度と同様の方法によって、CD方向における引張強度を測定した。
【0081】
〔摩擦係数の平均偏差MMDの測定〕
第1ウエブ11側の面(第1層側の面)を測定面として、KES-FB4表面試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、測定対象上に接触子により5kPa(50gf/cm2)の荷重を加えた状態下に、該接触子を0.1cm/secの一定速度で水平方向に3cm移動させ、該接触子を移動させた領域の摩擦係数の平均偏差MMDを測定した。測定は不織布における異なる3点で行い、その平均値を不織布の摩擦係数の平均偏差MMDとした。摩擦係数の平均偏差MMDが低いほど、第1層側の面が滑らかであると評価できる。
【0082】
実施例1~4及び比較例1~4の第2不織布10並びに実施例5の第1不織布14について、毛羽立ちを評価するため、単位面積当たりの起毛した繊維を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0083】
〔単位面積当たりの起毛した繊維の本数の測定〕
図3は、22℃65%RH環境下にて、不織布を構成する繊維の中で起毛した繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。先ず、測定対象の不織布から、鋭利なかみそりで、10cm×10cmの測定片104を切り出した。次いで、
図3(a)に示すように、測定片104を山折りにし、これをA4サイズの黒い台紙(不図示)の上に載せ、
図3(b)に示すように、台紙上の測定片104に、縦1cm×横1cmの穴107をあけたA4サイズの黒い台紙101を載せた。このとき、測定片104の折り目105が、上側の黒い台紙の穴107から見えるように配置した。測定片104の上下に配する台紙には、例えば富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いた。
図3では、説明の便宜上、台紙101を白色で示す。次いで、測定片104の上に配された台紙101上に50gの錘102を2個載せた。このとき、測定片104の折り目105上であって、測定片104の上に配された台紙101の穴107の両側縁それぞれから該折り目105に沿う方向の外方に5cm離れた位置に前記錘102を載せた。これにより、測定片104を完全に折り畳んだ状態にした。次いで、
図3(c)に示すように、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX-900)を用いて、30倍の倍率で、台紙の穴107内を観察する。斯かる観察により、測定片104の折り目105から1mm上方に平行移動した仮想線108よりも上方に先端が位置する繊維の本数を、起毛した繊維の本数としてカウントした。仮想線108を2回横切る繊維106aがある場合〔
図3(c)参照〕、その繊維は2本と数えた。
図3(c)に示す例では、仮想線108を1回横切る繊維が4本、仮想線108を2回横切る繊維106aが1本存在するが、2回横切る繊維106aは2本と数えるので、起毛した繊維の本数は6本となる。この起毛した繊維の本数のカウントを、測定対象の不織布から切り出した9枚の測定片について行い、これらの平均(整数桁に四捨五入)を、単位面積(1cm×1cm)当たりの起毛した繊維の本数とした。第1ウエブ11側の面(第1層側の面)を測定面とした。
【0084】
また、実施例1~4及び比較例1~4の第2不織布10並びに実施例5の第1不織布14について、その柔らかさとふっくらとした感触を官能評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0085】
〔柔らかさ及びふっくらとした感触の評価〕
評価対象の不織布から、10cm×10cmの大きさで切り出したものを試験片とした。不織布の感触の評価に関して熟練した成人男性3名をパネラーとして、第1ウエブ11側の面(第1層側の面)を測定面として、該パネラーが試験片を触ることで、その柔らかさ及びふっくらとした感触を評価した。具体的には、1~5点の5段階評価で評価した。5点が最も評価が高いことを示す。試験片の触り方は規定しておらず、パネラー各々が自由に試験片を触って評価した。評価点は、パネラー3名の平均値を小数点以下一桁に四捨五入して算出した。評価結果を下記表1に示す。
【0086】
【0087】
表1に示すとおり、実施例1~5の不織布は、比較例1、3及び4の不織布よりも厚みが大きく、比較例1及び4の不織布よりも圧縮仕事量WCが大きい結果となった。また、実施例1~5の不織布は、MD方向の引張強度が40.0N以上であり、CD方向の引張強度が6.4以上であった。実施例5の不織布は、比較例2の不織布よりも厚みが大きい上、該比較例2よりも毛羽立ちが少なく、外観上においても肌触りにおいても風合いが良い結果であった。
実施例1~5の不織布は、比較例1~4の不織布よりも、第1層側の面における摩擦係数の平均偏差MMDが小さかった。斯かる結果から、実施例1~5の不織布は、第1層側の表面が滑らかであることが示された。
実施例1~5の不織布は、第1層側の面における単位面積当たりの起毛した繊維の数が9本以下であり、表面の毛羽立ちが少ないことが示された。
実施例1~5の不織布は、柔らかさの官能評価が5.3以上であり、ふっくらとした感触の官能評価が4.6以上であった。
以上の結果から、実施例1~5の不織布は、滑らかさ、柔らかさ及びふっくらさといった肌触りが総合的に優れており、比較例1~4の不織布よりも、肌触り及び強度を両立していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の不織布の製造方法によれば、繊維径が小さい繊維を含み、且つ肌触り及び強度に優れる不織布が得られる。
【要約】
本発明の製造方法では、繊維径が15μm以下の熱融着性繊維を含むウエブに、下記条件で熱風を吹き付けて、該ウエブを構成する繊維の交点を融着させる。
前記製造方法は、前記ウエブに下記条件で熱風を吹き付けることが好ましい。
(1)前記熱融着性繊維を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点をMpとしたとき、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面と反対側の面の温度T1が、Mp以上Mp+15℃以下である。
(2)温度T1が、前記ウエブにおける熱風の吹き付け面の温度T2よりも低く且つ温度T1と温度T2との差が10℃以上35℃以下である。
(3)熱風の供給速度が0.30m/秒以上0.60m/秒以下である。