(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230508BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20230508BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20230508BHJP
B01D 46/44 20060101ALI20230508BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20230508BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20230508BHJP
【FI】
F24F7/007 B
A61L9/22
B01D46/00 F
B01D46/44
B03C3/28
F24F7/003 100
(21)【出願番号】P 2019149661
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康孝
(72)【発明者】
【氏名】原田 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】小幡 尚令
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-100621(JP,U)
【文献】特開2008-142624(JP,A)
【文献】特開2016-087598(JP,A)
【文献】特開2016-205659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/003
A61L 9/22
B01D 46/00
B01D 46/44
B03C 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風路に空気を吸い込み、前記風路から前記空気を送出するファンと、
前記風路に吸い込まれた空気中の微粒子を捕集する粗塵フィルタと、
空気中の微粒子を検知する微粒子検知部と、
前記微粒子検知部が所定粒径以下の微粒子を検知した場合、前記粗塵フィルタを通過する空気の風速を下げるように前記ファンを制御する制御部と、
を備える、送風機。
【請求項2】
前記微粒子は、PM2.5である、
請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
さらに、前記風路にイオンを発生するイオン発生部を備え、
前記イオン発生部は、前記粗塵フィルタの風上に設ける、
請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
粗塵フィルタは、帯電するフィルタである、
請求項3に記載の送風機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の送風機を備えた換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外気を室内に取り込む場合に、空気が通過する風路にファンとフィルタとイオンを発生するイオン発生部を設けて、空気中の粉塵を捕集し、浄化した空気を送出する送風機が開示される。
【0003】
送風機において、空気中の粉塵を捕集するため例えば高機能なHEPAフィルタを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-53582号公報(2017年3月16日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記送風機では、高機能なフィルタを用いることで粉塵を効率よく捕集することができるものの、フィルタの価格が高いことから、装置自体のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、上記点に鑑みて、装置自体のコストを低減しつつ空気中の粉塵等の微粒子の捕集を向上することができる送風機を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る送風機は、風路に空気を吸い込み、前記風路から前記空気を送出するファンと、前記風路に吸い込まれた空気中の微粒子を捕集する粗塵フィルタと、空気中の微粒子を検知する微粒子検知部と、前記微粒子検知部が所定粒径以下の微粒子を検知した場合、前記粗塵フィルタを通過する空気の風速を下げるように前記ファンを制御する制御部と、備える。
【0008】
(2)本発明の一態様に係る送風機は、前記微粒子がPM2.5である。
【0009】
(3)本発明の一態様に係る送風機は、さらに、前記風路にイオンを発生するイオン発生部を備え、前記イオン発生部は、前記粗塵フィルタの風上に設ける。
【0010】
(4)本発明の一態様に係る送風機は、粗塵フィルタが帯電するフィルタである。
【0011】
(5)本発明の一態様に係る換気システムは、上記(1)~(4)に記載の前記送風機を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る送風機を室内に設置した電気調理装置に適用した場合を示す側面断面図である。
【
図2】(a)イオン発生部を示す斜視図である。(b)イオン発生部を示す平面図である。
【
図3】(a)送風機の制御部の処理のフローの一例を示す図である。(b)送風機の制御部の処理の他のフローの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態2に係る送風機を車両に適用した場合を示す側面断面図である。
【
図5】本実施形態2に係る送風機を示す側面断面図である。
【
図6】フィルタで捕集する粉塵の捕集率を得るための実験装置を示す図である。
【
図7】(a)風速0.7m/sにおける微粒子の粒径サイズとイオン発生部のオンまたはオフ時における捕集率を示す表である。(b)風速0.35m/sにおける微粒子の粒径サイズとイオン発生部のオンまたはオフ時における捕集率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
本開示の実施形態1は、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る送風機を室内に設置した電気調理装置に適用した場合を示す側断面図である。
【0014】
図1に示すように、電気調理装置Cは、調理を行う室内R1に設置するものであり、鍋等を加熱する電磁調理器Dと、加熱により生じた熱や空気を室内R1から室外R2へ排気する換気部Vと、室外の空気を室内に送気する送風機1とを備えている。
【0015】
電磁調理器Dは、電磁誘導部D1,D1を平板なパネルに複数設けている。電磁誘導部D1は、通電されると誘導加熱により金属性の鍋等を加熱することができる。
【0016】
換気部Vは、電磁調理器Dの上方の天井Rと側壁Wとの間に配設している。換気部Vは、室内R1の熱や空気を室外R2に排気するダクトV2を設けた略箱状の換気本体V1と、換気本体V1のダクトV2に設ける送気を行う換気ファンV3と、を備えている。
【0017】
換気本体V1は、電磁調理器Dを覆うように下方向きのフードV4が形成されている。ダクトV2は、一端部をフードV4に開口する吸気用開口部V2-1と連通し、他端部を壁部Wに開口する排気用開口部V2-2と連通している。
【0018】
換気ファンV3は、例えばシロッコファンで構成している。なお、換気ファンV3は、羽根と、羽根を回転駆動する電動モータとで構成してもよい。
【0019】
送風機1は、室外R2等の空気を清浄化して室内R1に取り込むための機構である。送風機1は、内部に室外R2から吸い込んだ空気を室内R1に送気する風路3を設けた本体2と、風路3に空気を吸い込み、風路3から空気を送出するファン4と、空気中の微粒子を捕集する粗塵フィルタ5と、空気中の微粒子を検知する微粒子検知部6と、ファン4を制御する制御部8と、備える。
【0020】
本体2は、略箱状に形成しており、本体2の上部は、天井Rに配設され、本体2の側部は、室内R1の壁部Wに配設される。風路3は、一端部を本体2側部に開口する第1の開口部11と連通し、他端部を壁部Wに開口する第2の開口部12と連通している。また、本体2の下部には、上記換気本体V1が配設される。
【0021】
ファン4は、例えばシロッコファンで構成しており、本体2内の風路3の第2の開口部12側に設けられる。ファン4は、回転すると室外R2の空気を第2の開口部12から風路に吸い込み、第1の開口部11から室内R1へ送気する。また、ファン4は、制御部8の制御により風速を可変することができる。なお、ファン4は、羽根と、羽根を回転駆動する駆動部で構成してもよい。
【0022】
粗塵フィルタ5は、ファン4により送気された室外R2の空気中の微粒子を捕集するものであり、例えば、平らな形状あるいはプリーツ形状の不織布で構成されている。具体的には、粗塵フィルタ5は、粒径が5μmより大きい微粒子を捕集するフィルタである。また、粗塵フィルタ5は、重量法での捕集効率85%以下であり、粉塵保持容量500g/m2~2000g/m2であり、圧力損失3mmH2O~20mmH2Oである(JIS B9908:1976 換気用エアフィルタユニットの形式3)。粗塵フィルタ5は、風路3の空気の吹き出し側の第1の開口部11に設けられている。例えば、不織布は、複数枚重ねて用いてもよい。後述する実験例では、2枚の不織布を重ねて粗塵フィルタ5として使用している。
【0023】
さらに、粗塵フィルタ5は、帯電するフィルタで構成してもよい。粗塵フィルタ5は、後述するイオン発生部7により生じるイオンにより帯電させることができる。このように粗塵フィルタ5を帯電するフィルタで構成することにより、微粒子の捕集を向上して空気を浄化することができる。なお、粗塵フィルタ5は、例えば不織布を多孔質の濾過材で構成して予めプラス等に帯電しているフィルタでもよい。
【0024】
微粒子検知部6は、送風機1の風路3の中途部に設けている。具体的には、風路3内に設けたイオン発生部7とファン4との間に微粒子検知部6を設けている。微粒子検知部6は、室外の空気中の所定粒径以下の微粒子、例えば微小粒子状物質PM2.5(particulate matter 2.5)を検知する。微粒子検知部6の検知結果を制御部8に送信する。なお、微粒子検知部6は、微小粒子状物質PM2.5の濃度を検知するものであってもよい。もしくは微粒子検知部6は、微小粒子状物質PM10(particulate matter 10)や他の微粒子の濃度を検知してもよい。あるいは、微粒子検知部6は、微粒子の粒径または濃度を直接検知せずに、外部機器からの微粒子の粒径データまたは濃度データを受信することで、送風機1の周辺(特に、吸込み口付近)に存在する微粒子の粒径または濃度を間接的に検知してもよい。例えば、微粒子検知部6は、送風機1の風路内に設けなくてもよく、気象庁が提供する微小粒子状物質PM2.5の濃度データなどを取得して、制御部8に送信するものであってもよく、または、送風機1と同一空間に設置された微粒子検知センサの検知結果データを取得して、制御部8に送信するものであってもよい。上記所定粒径以下の微粒子とは粒径が約2.5μm以下のPM2.5であることが好ましい。さらに、所定粒径が約1.0μm以下であることがより好ましい。
【0025】
制御部8は、微粒子検知部6が検知した信号を受信し、ファン4の回転数を制御して室内R1へ送気する空気の量を調整することができる。具体的には制御部8は、微粒子検知部6が所定粒径以下の微粒子を検知した場合、粗塵フィルタ5を通過する空気の風速を下げるようにファン4を制御することができる。また、制御部8は、後述のイオン発生部7(
図2参照)を制御することができる。
【0026】
なお、ファンの回転数を変えて、空気の風速を下げるようにしたが、風路の入口または出口の少なくとも一方に開閉ダンパ(図示せず)を設けるようにしてもよい。例えば、かかる開閉ダンパの開閉量を調整することで、所定粒径以下の微粒子を検知した場合には、低開閉ダンパをあけて、風速を下げるようにしてもよい。かかる開閉ダンパを設けることにより、ファンの回転数を一定にしたまま風速を制御することができる。さらに、ファンの回転数制御と開閉ダンパの開閉制御とを協働して、風速を制御するようにしてもよい。かかる開閉ダンパの構造としては、スライド式構造や軸回動式構造等を適宜適用することができる。
【0027】
さらに、本体2内の風路3の中途部には、イオンを発生するイオン発生部7を設けるようにしている。イオン発生部7は、粗塵フィルタ5の風上側に近接して設けている。イオン発生部7は、例えば、マイナスイオンやプラスイオンを発生して風路3に放出する。
【0028】
図2(a)は、イオン発生部7を示す斜視図である。
図2(b)はイオン発生部7を示す平面図である。
【0029】
イオン発生部7は、例えば略細長箱形状の筐体20と、筐体20上部の各開口部20a、20bより突出し、放電を生じさせる放電電極の正電極21と負電極22と、各放電電極に対向し、各開口部20a,20bの周縁に設けられた各誘導電極23,24と、を有している。
【0030】
また、筐体20の上部の長手方向の端部には、正電極21および負電極22への接触を防ぐための門型フレーム25,25をそれぞれ設けている。イオン発生部7の放電電極(正電極21、負電極22)および誘導電極23,24は、制御部8に接続され放電制御される。
【0031】
正電極21および負電極22は、例えば、複数の糸状の導電体を束ねた略ブラシ形状に形成して、下部を筐体20内に固定している。なお、正電極21および負電極22は、例えば、略針形状の構成であってもよい。
【0032】
ブラシ状の電極を備えるイオン発生部7は、正負イオンを発生する領域の面積が増大しているので、針状の電極と比較して、同じ電圧を印加したときのイオン発生量を増大することができる。
【0033】
イオン発生部7では、一方の放電電極の正電極21に正の高圧パルスを印加し、他方の負電極22に負の高圧パルスを印加すると、同放電電極の正電極21と負電極22の先端では、コロナ放電が発生し、正イオンと負イオンを発生する。
【0034】
なお、正イオンは、水素イオン(H+)の周囲に複数の水分子がクラスター化したクラスターイオンであり、H+(H2O)m(mは0以上の任意の整数)と表わされる。負イオンは、酸素イオン(O2
-)の周囲に複数の水分子がクラスター化したクラスターイオンであり、O2
-(H2O)n(nは0以上の任意の整数)と表わされる。
【0035】
また、正イオンおよび負イオンを空気中内に放出すると、両イオンが空気中を浮遊するカビ菌やウイルスの周りを取り囲み、その表面上で互いに化学反応を起こす。その際に生成される放電生成物の水酸化ラジカル(・OH)の作用により、浮遊カビ菌などが除去される。
【0036】
イオン発生部7は、放電により空気中において例えば、電子、イオン、ラジカル、オゾン等の放電生成物を生成する。
【0037】
イオン発生部7は、マイナスイオン及びプラスイオンの両方を風路3に放出する。なお、イオン発生部7は、2種類のイオンを発生する構成としたが、正負いずれか一方のイオンを発生する構成であってもよい。イオン発生部7は、主として粗塵フィルタ5と逆極性のイオンのみを風路3に放出するようにしてもよい。粗塵フィルタ5を例えば予めプラスに帯電させる場合にはイオン発生部7により主としてマイナスイオンのみを風路3に放出するようにしてもよい。
【0038】
次に、本実施形態における送風機の制御部における処理のフローの一例について説明する。
図3(a)は、本実施形態における送風機の制御部の処理のフローの一例を示す図である。
【0039】
ファン4(例えば
図1参照)が駆動されると、室外R2の空気が所定の風量で第2の開口部12から風路3に取り込まれて、風路3内を通気して、第1の開口部11から室内R1内に送出される。また、ファン4の駆動とともにイオン発生部7および微粒子検知部6も駆動される。イオン発生部7は、風路3内にイオンを発生し、例えばマイナスイオン及びプラスイオンが風路3に放出される。これにより、風路3内のマイナスイオン及びプラスイオンが、風路3内の室外R2の空気に含まれる微粒子のPM2.5をマイナス及び/またはプラスに帯電する。また、マイナスイオンまたはプラスイオンが風下の粗塵フィルタ5に送気されて、粗塵フィルタ5をマイナス及び/またはプラスに帯電する。
【0040】
図3(a)に示すように、風路3内の微粒子検知部6は、室外R2の空気中に含まれる所定粒径以下の微粒子である例えばPM2.5を検知して、制御部8に検知信号を送信する。制御部8は、微粒子検知部6の検知信号を取得したか否かを判定する(S101)。
【0041】
次に、制御部8は、検知信号を取得した場合(S101 YES)にはS102に進む。なお、制御部8が検知信号を取得しない場合(S101 NO)には、フローの処理を終了する。
【0042】
制御部8は、ファン4で発生させる風速を下げる制御を行う(S102)。緩やかな送気とともに運ばれる微粒子のPM2.5は風路3内を風下側に送気され、粒径0.3μm以上1.0μm以下の微粒子が粗塵フィルタ5に集塵される。したがって、本実施形態の送風機1によれば、例えば、後述の実施例に示すように、粒子集塵率の高い高機能なフィルタ、例えば粒径0.3μm以上1.0μm以下の微粒子を捕集するHEPAフィルタ、等を用いることなく、風路3内を流通する空気に含まれる微粒子の塵挨や花粉等は粗塵フィルタ5によって効率よく捕集することが可能となる。また、本実施形態の送風機1によれば、装置自体のコストの増加を抑制することができる。
【0043】
しかも、イオン発生部7は、粗塵フィルタ5の風上に設けるので、イオン発生部7によりプラスまたはマイナスに帯電した微粒子のPM2.5は、風路3内を風下側に送気され、イオン発生部7によりマイナスまたはプラスに帯電した粗塵フィルタ5に効率よく集塵することができる。
【0044】
[実施形態2]
本開示の実施形態2は、
図4~
図5を用いて説明する。
図4は、本実施形態2に係る送風機を車両に適用した場合を示す側面断面図である。
図5は、本実施形態2に係る送風機を示す側面断面図である。説明の便宜上、実施形態2では上記実施形態1の各構成と同じ機能のものについては、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、車両101は、エンジンルーム104、機器室105及び車室106に区画されている。エンジンルーム104と機器室105とは隔壁107によって仕切られるとともに、機器室105と車室106とはインストルメントパネル108等によって仕切られている。
【0046】
エンジンルーム104は、所定の空間にエンジン(図示しない)及びラジエータ(図示しない)を収容して、上面をボンネット103で覆う構成としている。車室106は、乗員を収容する空間である。車室106内には座席S,・・,Sを複数配設している。
【0047】
また、車両101は、車室106内に空気を送気するための送風機31を備える。
図5に示すように、送風機31は、機器室104(
図4参照)に配される本体32と、本体32内に設けた風路33に配されるファン34と、粗塵フィルタ5と、微粒子検知部6と、イオン発生部7と、を備え、さらに制御部38を有する。
【0048】
本体32の風路33は、車内に空気を送気するために開口した第1の開口部41と、車外R4(例えば
図4参照)および車内R3(例えば
図4参照)の空気を吸い込むために開口した第2の開口部42および第3の開口部43を有している。第2の開口部42は、車両101の外部に連通して車外R4の空気を風路33内に吸い込む。第3の開口部43は、車室106に連通して車室106内の空気を風路33内に吸い込む。第1の開口部41は、車室106に連通して車室内に調和空気を吹き出す。
【0049】
風路33内には、第2の開口部42または第3の開口部43から第1の開口部41に向かって(空気流通方向で上流側から下流側に向かって)、切換ダンパ30、微粒子検知部6、イオン発生部7、粗塵フィルタ5、ファン34、蒸発器35、ヒータコア36、を順に配している。
【0050】
切換ダンパ30は、車外R4の空気を吸い込むための第2の開口部42および車内R3の空気を吸い込むための第3の開口部43を択一的に開放して、車外R4の空気及び車内R3の空気の吸い込みの切換えを行う。
【0051】
微粒子検知部6は、送風機31の風路33に設けている。具体的には、風路33内に設けたイオン発生部7と切換ダンパ30との間に微粒子検知部6を設けている。微粒子検知部6は、室外の空気中の例えば微小粒子状物質PM2.5(particulate matter 2.5)の濃度を光散乱方式によって検知する。微粒子検知部6の検知結果を制御部38に送信する。制御部38は微粒子検知部6の検知結果によりファン34の風量を制御する。
【0052】
さらに、本体2内の風路33の中途部には、イオンを発生するイオン発生部7を設けるようにしている。具体的には、イオン発生部7は、風路33内の微粒子検知部6と粗塵フィルタ5との間であって、粗塵フィルタ5に近接するように設けている。イオン発生部7は、冷房運転、暖房運転及び送風運転の際に例えば、マイナスイオン及びプラスイオンを発生して風路33に放出する。このようにイオン発生部7がマイナスイオン及びプラスイオンの両方を発生して風路33内に放出することにより、微粒子をマイナスに帯電する一方で、粗塵フィルタ5をプラスに帯電することができる。また、車室106内の除菌、ウイルスの不活化及び臭い除去を行うことができる。
【0053】
なお、イオン発生部7は、主として粗塵フィルタ5と逆極性のイオンを風路33に放出するようにしてもよい。イオン発生部7は、主としてマイナスイオンのみを風路33に放出する一方で、粗塵フィルタ5を例えば予めプラスに帯電させるようにしてもよい。
【0054】
粗塵フィルタ5は、ファン34により送気された車内R3や車外R4の空気を浄化するものであり、実施形態1と同様の構成である。粗塵フィルタ5は、風路33内のイオン発生部7とファン34との間に設けている。
【0055】
ファン34は例えばシロッコファンで構成しており、風路33内の粗塵フィルタ5と蒸発器35との間に設けている。ファン34の駆動により第2の開口部42または第3の開口部43から風路33内に車外R4の空気または車内R3の空気が取り込まれ、風路33内に第1の開口部41へ向かう気流が発生する。
【0056】
蒸発器35は、ファン34の下流側に配され、冷媒が流通する冷媒管(図示しない)に複数のフィン(図示しない)を接合して形成される。また、蒸発器35は冷凍サイクルを運転する圧縮機(不図示)に接続され、エンジンからVベルト(図示しない)を介して圧縮機に動力が伝達されると冷媒管を冷媒が流通する。これにより、冷媒が蒸発器35で蒸発しながらフィン間を流通する空気を吸熱により冷却して冷房運転が行われる。
【0057】
ヒータコア36は、エンジンの冷却水が流通するラジエータと並列に配されたコルゲートチューブ(図示しない)に複数のフィンを接合して形成される。エンジンにより昇温された冷却水をコルゲートチューブに流通させることにより、フィン間を流通する空気を加熱して暖房運転が行われる。また、エンジンから圧縮機への動力伝達を遮断するとともに、ヒータコア36のコルゲートチューブに対して冷却水の流通を遮断することにより、送風運転が行われる。
【0058】
インストルメントパネル108上には複数の操作スイッチ(図示しない)及び複数の表示器(図示しない)から成る表示部(図示しない)が設けられている。使用者が操作スイッチを操作することにより、冷房運転、暖房運転及び送風運転を切り換えることができる。また、各表示器は点灯して冷房運転、暖房運転または送風運転を報知する。
【0059】
次に、本実施形態における送風機の制御部における処理のフローの一例について説明する。送風機の制御部の処理のフローは、上述した
図3を参照しながら説明する。車両101のエンジンを始動して操作スイッチの操作により例えば送風運転が選択され、切換ダンパ30により第2の開口部42が開かれるとともに第3の開口部43が閉じられる。
【0060】
ファン34(例えば
図5参照)が駆動されると、車外R4の空気が所定の風量で第2の開口部42から風路33に取り込まれて、風路33内を通気して、第1の開口部41から車室106内に送出される。また、ファン4の駆動とともにイオン発生部7および微粒子検知部6も駆動される。イオン発生部7は、風路33内にイオンを発生し、例えば主としてマイナスイオンが風路33に放出される。これにより、風路33内に主としてマイナスイオンが放出され、風路33内の車外R4の空気に含まれる微粒子のPM2.5はマイナスに帯電する。また、プラスイオンが風下の粗塵フィルタ5に送気されて、粗塵フィルタ5をプラスに帯電する。
【0061】
図3(a)に示すように、風路33内の微粒子検知部6は、車外R2の空気中に含まれる所定粒径以下の微粒子である例えばPM2.5を検知して、制御部38に検知信号を送信する。制御部38は、微粒子検知部6の検知信号を取得したか否かを判定する(S101)。
【0062】
次に、制御部38は、検知信号を取得した場合(S101 YES)にはS102に進む。なお、制御部8が検知信号を取得しない場合(S101 NO)には、フローの処理を終了する。
【0063】
制御部38は、ファン4で発生させる風速を下げる制御を行う(S10)。緩やかな送気とともに運ばれる微粒子のPM2.5は風路33内を風下側に送気され、粒径0.3μm以上1.0μm以下の微粒子が粗塵フィルタ5に集塵される。したがって、本実施形態の送風機31によれば、上記実施形態1と同様の効果を奏する。
【0064】
なお、ファンの回転数を変えて、空気の風速を下げるようにしたが、風路の第1の開口部、第2の開口部または第3の開口部の少なくとも1ケ所に風量調整のための開閉ダンパ(図示せず)を設けるようにしてもよい。例えば、かかる開閉ダンパの開閉量を調整することで、微粒子が所定値より高い場合には、低い場合と比べて開閉ダンパをあけて、風速を下げるようにしてもよい。かかる開閉ダンパを設けることにより、ファンの回転数を一定にしたまま風速を制御することができる。さらに、ファンの回転数制御と開閉ダンパの開閉制御とを協働して、風速を制御するようにしてもよい。かかる開閉ダンパの構造としては、スライド式構造や軸回動式構造等を適宜適用することができる。
【0065】
なお、微粒子検知部6は、風路33内に設けるようにしたが、車内106のインストルメントパネル108に設けるようにしてもよい。
【0066】
なお、冷房運転の場合には、圧縮機が循環流路内で冷媒を循環させ、蒸発器35に冷媒が流れ込む。蒸発器35を通過した空気は冷却されて第1の開口部41から車室106内に冷気が送出される。なお、暖房運転または送風運転を行う際に、切換ダンパ31により外気を吸入する第2の開口部42を閉じるとともに第3の開口部43を開き内気循環が行われ、車室106内の空気に含まれる微粒子のPM2.5を微粒子検知部6が検知すると、ファン34の風量を下げて粗塵フィルタ5で効率よく集塵することができる。
【0067】
上述した各実施形態の微粒子検知部6は、所定粒径以下の微粒子を検知するものであったが、微粒子量(濃度)を検知するものであってもよし、さらに、微粒子検知部6は粒径および微粒子量の両方を検知するものであってもよい。具体的には、微粒子検知部が微粒子の量(濃度)を検知して、その検知信号を制御部へ送信する。次に、
図3(b)に示すように、制御部は、検知信号を取得する(S201)と、検知した微粒子のPM2.5が所定値(例えば20μg/m
3)以上であるか否かを判定する(S202)。空気中の微粒子のPM2.5が所定値以上の場合(S202 YES)にはS203に進む。なお、空気中の微粒子のPM2.5が所定値未満の場合(S202 NO)には、フローの処理を終了する。制御部8は、ファン4で発生させる風速を下げる制御を行う(S203)。緩やかな送気とともに運ばれる微粒子のPM2.5は風路3内を風下側に送気され、粒径0.3μm以上1.0μm以下の微粒子が粗塵フィルタ5に集塵されることができる。
【0068】
さらに、上述した各実施形態の送風機を備えた換気システムであってもよい。本開示の換気システムは、少なくとも風路に空気を吸い込み、風路から前記空気を送出するファンと、風路に吸い込まれた空気中の微粒子を捕集する粗塵フィルタと、空気中の微粒子を検知する微粒子検知部と、微粒子検知部が所定粒径以下の微粒子を検知した場合、粗塵フィルタを通過する空気の風速を下げるように前記ファンを制御 する制御部と、を備える送風機を、例えば、建物の天井裏のスペースに設けて、建物内の各部屋に外部から取り込んだ空気を、清浄化して供給することが可能なものである。従来の換気システムの粗塵フィルタの構成では、微粒子のPM2.5等を捕捉できずに、室内へ取り込んでしまうものであった。しかも、換気システム自体が24時間換気を行うものである場合に外気中の微粒子を常にろ過するためには、高価なHEPAフィルタを使用する必要があるが、HEPAフィルタの使用頻度が高いとすぐに汚れてしまい微粒子を捕捉する性能が低下してしまい、同フィルタの交換頻度が高くなってしまうことからも、非常に不経済であった。かかる換気システムによれば、高価なHEPAフィルタを使用することなく、安価な粗塵フィルタで微粒子を効果的に補足できることからもシステム自体の価格も安価とすることができ、フィルタ交換にともなうメンテナンス費用も抑えることができる。換気システムは、キッチンダクト、車両用ダクト、建物などの住宅の換気ダクトや浴室ダクト等に適用可能である。
【0069】
[実験例]
図6はファンの風量の変化により粗塵フィルタで捕集する粉塵の捕集率を得るための実験装置である。
図7(a)は、風速0.7m/sにおける微粒子の粒径サイズとイオン発生部(PCI)のオンまたはオフ時における捕集率および捕集率の差を示す表である。
図7(b)は、風速0.35m/sにおける微粒子の粒径サイズとイオン発生部(PCI)のオンまたはオフ時における捕集率および捕集率の差を示す表である。
【0070】
図6に示すように、実験装置には、中央に粗塵フィルタを設けており、側部に気流を発生させるファンを設けている。粗塵フィルタの風上側には、イオン発生部(以下、PCIと称する)を配置している。ファン近傍において放出される微粒子を粉塵Aとし、粗塵フィルタを通過した微粒子を粉塵Bとしている。
【0071】
捕集率の式は次にように表すことできる。
捕集率(%)=(粉塵Aの個数濃度-粉塵Bの個数濃度)/(粉塵Aの個数濃度)×100%
【0072】
粗塵フィルタは、不織布(厚さ:t=10mm×2枚)を2枚重ねて使用している。
図7(a)に示すように、風速0.7m/sにおいて、微粒子の粒径0.3μmでPCI(OFF)の場合の捕集率は23.21%である。一方、
図8(b)に示すように、風速0.35m/sにおいて、微粒子の粒径0.3μmでPCI(OFF)の場合の捕集率は36.64%である。このようにファンの風速を0.7m/sから0.35m/sに下げることにより捕集率が高くなる効果が明らかとなり、その他の粒径においても同様の効果が確認できる。
【0073】
次に、
図7(a)に示すように、風速0.7m/sにおいて、微粒子の粒径0.3μmでPCI(ON)の場合の捕集率は29.55%である。一方、風速0.35m/sにおいて、微粒子の粒径0.3μmでPCI(ON)の場合の捕集率は58.09%である。このように、PCIをオンにして、ファンの風速を0.7m/sから0.35m/sに下げることにより、さらに捕集率が高くなる効果が明らかとなり、その他の粒径においても同様の効果が確認できる。
【0074】
実験例において、粗塵フィルタ5で捕集されにくい粒径の微粒子であっても、風速を下げることにより捕集率が高くなる効果が確認できる。さらに、PCIをオンとした場合にはより捕集率が高くなる効果が確認できる。
【0075】
なお、イオン発生部は、放電電極としての複数の正電極および負電極を有するものであってもよい。また、誘導電極は複数有するものであってもよい。
【0076】
上記実施形態では一例として、主に、送風機が、電気調理装置や車両に取り付けられている場合について説明したが、上記における送風機は、例えば、除湿機、加湿機、空気清浄機、エアーコンディショナー、脱臭機、冷蔵庫、掃除機、調理家電などの電子機器等に取り付けてもよい。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
C 電気調理装置
D 電磁調理器
V 換気部
1、31 送風機
2、32 本体
3、33 風路
4、34 ファン
5 粗塵フィルタ
6 微粒子検知部
7 イオン発生部
8、38 制御部
11 第1の開口部
12 第2の開口部
20 筐体
21 正電極
22 負電極
23 誘導電極
24 誘導電極
25 門型フレーム
30 切換ダンパ
35 蒸発器
36 ヒータコア