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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】焼物器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230509BHJP
   F24C 15/20 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A47J37/06 361
F24C15/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019026360
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020130500
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤川 弘康
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実公平03-025717(JP,Y2)
【文献】特開2011-137580(JP,A)
【文献】実公昭59-011298(JP,Y2)
【文献】特開2001-056128(JP,A)
【文献】実開昭59-180107(JP,U)
【文献】特開2011-179691(JP,A)
【文献】特開2018-170204(JP,A)
【文献】特開平09-089273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J37/00-37/12
F24C 7/00- 7/10
F24C15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に焼成室が形成され、該焼成室から排気するための排気口が上面に開口した箱形の本体ケースと、
前記焼成室内に配置される焼網に載せた食材を加熱する加熱手段と
を備え、前記食材を焼く調理を行う焼物器において、
前記排気口は、前記焼網の上方に位置し、
前記排気口の上方を覆う天板が設置されており、
前記天板は、一の方向に向かって下がる傾斜が付けられた平板であると共に、該天板の傾斜の下端が前記排気口の縁部よりも外側に位置しており、
前記天板の傾斜の上端側を正面とした場合の両側面に、該天板と接して下方に延設された側壁を有すると共に、前記正面における該天板と前記本体ケースとの間に開口部が設けられている
ことを特徴とする焼物器。
【請求項2】
請求項1に記載の焼物器において、
前記天板は、前記本体ケースに対して間隙を有すると共に、該天板の傾斜の下端側が前記本体ケースの上面外縁よりも外方まで延設されており、
前記天板の傾斜の下端の下方に位置して、液体を溜めることが可能な貯留部を有する
ことを特徴とする焼物器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉や魚などの食材を焼く調理を行う焼物器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理器の一つとして、肉や魚などの食材を焼く焼物器が知られている。焼物器では、箱形の本体ケースの内部に焼成室が形成されており、焼成室内に配置される焼網の上に載せた食材を上方および下方の少なくとも一方から加熱するガスバーナや電気ヒータなどの加熱手段を搭載した構造が普及している(例えば、特許文献1)。こうした焼物器では、本体ケースの前面側から焼成室に食材を出し入れすることが可能であると共に、本体ケースの上面には、焼成室から排気するための排気口が開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-227364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような焼物器が設置された調理室では、焼物器で食材を調理中に油が混じった湯気(いわゆる油煙)が排気口から排出されて拡散し、油煙が接した天井やレンジフードなどに油が付着することで汚れの原因となるという問題があった。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、焼物器から排出される油煙による調理室の油汚れを低減することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の焼物器は次の構成を採用した。すなわち、
内部に焼成室が形成され、該焼成室から排気するための排気口が上面に開口した箱形の本体ケースと、
前記焼成室内に配置される焼網に載せた食材を加熱する加熱手段と
を備え、前記食材を焼く調理を行う焼物器において、
前記排気口は、前記焼網の上方に位置し、
前記排気口の上方を覆う天板が設置されており、
前記天板は、一の方向に向かって下がる傾斜が付けられた平板であると共に、該天板の傾斜の下端が前記排気口の縁部よりも外側に位置しており、
前記天板の傾斜の上端側を正面とした場合の両側面に、該天板と接して下方に延設された側壁を有すると共に、前記正面における該天板と前記本体ケースとの間に開口部が設けられている
ことを特徴とする。
【0007】
このような本発明の焼物器では、焼成室から立ち上る油煙が排気口から排出されると天板に当たり、天板の傾斜に沿って上へと移動していく。このとき、油煙が接した天板に油が付着することにより、調理室への油煙の拡散が抑制されるので、油煙による調理室の油汚れを低減することができる。そして、天板に付着した油は、傾斜を伝って排気口の縁部よりも外側へと流れるため、傾斜の下端に流れ至った油が滴下しても、その油が排気口から焼成室内に浸入することを抑制できる。また、天板の傾斜に沿って上へと移動する油煙が側面から漏れ出るのを側壁で遮断することにより、天板への油の付着率の向上を図ることができる。
【0008】
上述した本発明の焼物器における天板は、本体ケースに対して間隙を設けると共に、天板の傾斜の下端側を本体ケースの上面外縁よりも外方まで延設することとして、天板の傾斜の下端の下方に位置して、液体を溜めることが可能な貯留部を設けてもよい。
【0009】
このようにすれば、天板に付着した油が傾斜を伝って下へと移動し、傾斜の下端から滴下しても、本体ケースの上面に落下することはないので、排気口から焼成室内への油の浸入を一層抑制できる。そして、天板の傾斜を伝って下端から滴下した油が貯留部に集められるので、清掃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の焼物器1の外観を示した斜視図である。
図2】本実施例の焼物器1の内部構造を示した断面図である。
図3】上部カバー30を取り付けた本体ケース10の上部を拡大して示した斜視図である。
図4】天板35に2方向の傾斜が付けられている例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例の焼物器1の外観を示した斜視図である。本実施例の焼物器1は、箱形の本体ケース10と、本体ケース10の上部に取り付けられる上部カバー30とに分離可能であり、図では、分離した状態が示されている。尚、本実施例の本体ケース10および上部カバー30は、何れも板金で形成されている。本体ケース10は、内部に焼成室11が形成されていると共に、焼成室11の前面側(図中の手前側)を開閉可能な開閉扉12を備えている。
【0018】
開閉扉12は、下端側を軸に上端側を前方に傾けて回動可能であり、開閉扉12が略直立して焼成室11の前面側を閉じた状態と、開閉扉12が前方に回動して焼成室11の前面側を開いた状態とに切り換わる。図では、焼成室11の前面側を開いた状態が示されており、この状態で焼成室11に肉や魚などの食材を出し入れすることが可能である。
【0019】
焼成室11内には、食材を載せる略矩形の焼網13が配置される。焼成室11内の左右には、焼網13を支持するための上下方向に複数段(図示した例では6段)の網棚14が設けられており、焼網13を載置する網棚14の段を変えることで、焼成室11内での焼網13の高さを変更することが可能である。図では、焼網13を網棚14の最下段に配置した状態が示されている。また、焼網13の手前側に持ち手13aが延設されていることから、開閉扉12には持ち手13aを通す挿通孔12aが形成されている。
【0020】
本体ケース10の前面における焼成室11(開閉扉12)の右方には、複数(図示した例では3つ)の操作ツマミ15が設けられている。後述するように本実施例の本体ケース10内には、焼網13に載せた食材を焼くための複数のバーナが搭載されており、各バーナに対応する操作ツマミ15を回転させることで、点火や消火が可能になっている。
【0021】
また、焼成室11の下方には、手前側に引き出すことが可能な水入れトレー17が配置されている。食材を焼く際には、水入れトレー17に水を入れておき、食材から落ちる油などを水入れトレーで受けるようになっている。さらに、本体ケース10の上面には、焼成室11から排気するための排気口18が略矩形に開口している。
【0022】
一方、上部カバー30は、本体ケース10の上部に外嵌する略矩形の外嵌枠31を備えており、外嵌枠31が本体ケース10に外嵌した状態で枠固定ビス32によって固定される。この外嵌枠31には、左側壁33Lおよび右側壁33Rが向かい合わせに立設されている。そして、左側壁33Lと右側壁33Rとの間に亘って上方から天板35が取り付けられる。
【0023】
本実施例の天板35は、左側壁33Lおよび右側壁33Rに載置した状態で後方(図中の奥側)に向かって下がる傾斜が付けられており、この傾斜の上端である前面側で天板固定ビス36によって固定されると共に、着脱可能になっている。さらに、上部カバー30の前面の上部には、下方壁37が設置されており、天板35を取り付けた状態で傾斜の上端側から下向きに下方壁37が延設されたようになっている。
【0024】
図2は、本実施例の焼物器1の内部構造を示した断面図である。図では、垂直な平面で焼物器1を手前側から奥側に切断した断面を表しており、開閉扉12で焼成室11の前面側(図中の左側)を閉じた状態を示すと共に、上部カバー30については図示を省略している。図示されるように本体ケース10の内部には、焼成室11内に配置された焼網13の下方から加熱する下火バーナ20と、焼網13の上方から加熱する上火バーナ22とを搭載している。尚、本実施例の下火バーナ20および上火バーナ22は、本発明の「加熱手段」に相当している。
【0025】
下火バーナ20は、ブンゼン式パイプバーナであり、前後に2本設置されている。また、下火バーナ20の上方を覆って、断面が半円形の熱板21が配置されている。下火バーナ20のパイプ上面に形成された多数の炎口から燃料ガスと一次空気との混合ガスを噴射して燃焼させ、赤熱された熱板21から放出される輻射熱によって焼網13上の食材を加熱する。
【0026】
一方、上火バーナ22は、下方に向けたセラミックプレート22aを備えた赤外線バーナであり、前後に2つ設置されている。燃料ガスと一次空気との混合ガスをセラミックプレート22aに浸透させ、セラミックプレート22aの表面(図中の下面)で燃焼させることで赤外線を放射し、焼網13上の食材を加熱する。
【0027】
そして、これら下火バーナ20および上火バーナ22で焼いている食材から落ちる油などは、下方の水を入れた水入れトレー17で受けて発火を防止するようになっている。また、下火バーナ20および上火バーナ22での燃焼に伴って発生する燃焼排ガスは、本体ケース10の上面に開口した排気口18から排出される。
【0028】
さらに、下火バーナ20や上火バーナ22で食材を焼いている間は、燃焼排ガスに加えて、食材の油が混じった湯気(いわゆる油煙)が発生して排気口18から排出される。焼物器1が設置された調理室では、このように排気口18から排出される油煙が拡散し、油煙が接した天井やレンジフードに油が付着することで調理室の油汚れの原因となる。そこで、本実施例の焼物器1では、本体ケース10に上部カバー30を取り付けている。
【0029】
図3は、上部カバー30を取り付けた本体ケース10の上部を拡大して示した斜視図である。図では、垂直な平面で上部カバー30を手前側から奥側に切断して上部カバー30の内部が見えるように表している。図示されるように上部カバー30の天板35は、本体ケース10の上面に開口した排気口18の上方を覆って設置されており、後方(図中の右側)に向かって下がる傾斜が付けられている。
【0030】
焼成室11から立ち上る油煙は、図中の太線矢印で示されるように、排気口18から排出されると天板35に当たり、天板35の傾斜に沿って上端である前面側(図中の右側)へと移動していく。このとき、油煙が接触する天板35に油が付着することにより、調理室への油煙の拡散が抑制されるので、油煙による調理室の油汚れを低減することができる。
【0031】
そして、天板35に付着した油は、傾斜を伝って下端側へと流れる。図示されるように天板35の傾斜の下端は、排気口18の縁部よりも外側に位置しているため、傾斜の下端に流れ至った油が滴下しても、その油が排気口18から焼成室11内に浸入することを抑制できる。特に、本実施例の天板35は、本体ケース10の上面と接しないように間隙を設けつつ、傾斜の下端側が本体ケース10の上面外縁よりも外方まで延設されている。これにより、天板35の傾斜を伝って下端から滴下した油は、本体ケース10の上面に落下することはないので、排気口18から焼成室11内への油の浸入を一層抑制できる。
【0032】
加えて、本実施例の上部カバー30には、図示されるように天板35の傾斜の下端の下方に位置して(外嵌枠31の背面に接して)、樋状の貯留部38が設けられている。これにより、天板35の傾斜を伝って下端から滴下した油が貯留部38に集められるので、清掃性を向上させることができる。
【0033】
一方、天板35の傾斜の上端側には、下向きに下方壁37が延設されている。天板35の傾斜に沿って上へと移動する油煙が上端側から出て行くのを下方壁37で妨げて、天板35の下に油煙を留めることにより、天板35への油の付着率を向上させることができる。そして、下方壁37の下端が、排気口18の縁部よりも外側に位置していることにより、油煙が接して下方壁37に付着した油が下端から滴下しても、その油が排気口18から焼成室11内に浸入することを抑制できる。
【0034】
また、仮に食材の油で排気口18から炎が上がり、天板35に付着した油に引火したとしても、天板35の傾斜に沿って上端側から炎が噴き出すのを下方壁37によって抑制することができる。尚、下方壁37と外嵌枠31との間には、下火バーナ20および上火バーナ22で発生する燃焼排ガスを排出するのに十分な開放面積が確保されている。
【0035】
さらに、本実施例の上部カバー30では、左側壁33Lおよび右側壁33Rに天板35が載置される(図1参照)。天板35に沿って移動する油煙が側面から漏れ出るのを左側壁33Lおよび右側壁33Rで遮断することにより、天板35への油の付着率の向上を図ることができる。
【0036】
また、焼物器1は、調理室のレンジフードの下方に設置されていることも多く、焼物器1や他の調理器から調理室に拡散された油煙によってレンジフードに蓄積された油が下方の焼物器1へと滴下する場合がある。この場合でも、本実施例の焼物器1では、排気口18の上方が天板35で覆われているため、レンジフードから滴下した油は天板35の上側の面に落ちることになり、油が排気口18から焼成室11内に浸入することを阻むことができる。
【0037】
そして、本実施例の天板35には、図3に示されるように傾斜の下端側を上向きに折り返してV溝35aが形成されている。このため、レンジフードなどから滴下した油が天板35に落ちた場合でも、傾斜を伝って下端側に流れた油をV溝35aに溜めることができる。しかも、天板35は単独で着脱可能になっているため、上部カバー30から天板35だけを取り外して清掃が容易であり、排気口18から排出される油煙によって天板35の下側の面に付着した油や、レンジフードなどから滴下して天板35の上側の面に落ちた油を除去することができる。
【0038】
以上、本実施例の焼物器1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0039】
例えば、前述した実施例では、焼網13に載せた食材を下火バーナ20および上火バーナ22によって加熱するようになっていた。しかし、食材を加熱する加熱手段は、ガスバーナに限られず、電気ヒータであってもよい。また、食材を加熱する方向は、上下両方からでなくてもよく、下方からの加熱だけでもよいし、上方からの加熱だけでもよい。さらに、上下方向の加熱に限られず、左右方向の加熱でもよいし、前後方向の加熱でもよい。
【0040】
また、天板35の傾斜を伝って流れた油を溜めることが可能な貯留部38やV溝35aを、上部カバー30に対して着脱可能に構成してもよい。このようにすれば、上部カバー30から貯留部38やV溝35aだけを取り外して、溜まった油の除去が容易であり、清掃性を向上させることができる。
【0041】
また、前述した実施例の天板35は、後方に向かって下がる傾斜が付けられていた。しかし、天板35の傾斜の方向は、これに限られず、前方に向かって下がる傾斜であってもよいし、左右の何れかの側方に向かって下がる傾斜であってもよい。
【0042】
さらに、天板35の傾斜は、一の方向に限られず、異なる複数の方向に傾斜が付けられていてもよい。例えば、図4に示されるように、左方に向かって下がる左傾斜と、右方に向かって下がる右傾斜との2方向の傾斜を天板35に付けてもよい。この場合、前述した実施例の左側壁33Lおよび右側壁33Rに代えて、図示されるように上部カバー30の前面の左右に配置した支柱40と、上部カバー30の後面を塞ぐ後壁41とを外嵌枠31から立設しておくこととして、天板35を支柱40および後壁41に載置した状態で固定してもよい。そして、左傾斜が付けられた左天板35Lの下端、および右傾斜が付けられた右天板35Rの下端のそれぞれを排気口18の縁部よりも外側に位置させておけばよい。また、上部カバー30の前面の上部に、三角形状の下方壁42を設置してもよい。
【0043】
また、前述した実施例では、天板35が平板であり、傾斜の断面形状が直線状になっていた(図3参照)。しかし、天板35は、平板に限られず、湾曲していてもよく、傾斜の断面形状が弧状に反っていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…焼物器、 10…本体ケース、 11…焼成室、
12…開閉扉、 12a…挿通孔、 13…焼網、
13a…持ち手、 14…網棚、 15…操作ツマミ、
17…水入れトレー、 18…排気口、 20…下火バーナ、
21…熱板、 22…上火バーナ、 30…上部カバー、
31…外嵌枠、 32…枠固定ビス、 33L…左側壁、
33R…右側壁、 35…天板、 36…天板固定ビス、
37…下方壁、 38…貯留部、 40…支柱、
41…後壁、 42…下方壁。
図1
図2
図3
図4