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特許7274276分岐管継手用断熱体、分岐管継手ユニット及び分岐管継手の断熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】分岐管継手用断熱体、分岐管継手ユニット及び分岐管継手の断熱方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/147 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
F16L59/147
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018196181
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020063791
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509319904
【氏名又は名称】株式会社ベンカン
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】込山 治良
(72)【発明者】
【氏名】権田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 憲
(72)【発明者】
【氏名】友田 誠志
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-026355(JP,U)
【文献】特開2006-220287(JP,A)
【文献】特許第6336185(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00-59/22
F16L 41/02
F16L 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐管継手を被覆する断熱体であって、
前記分岐管継手は、
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、
前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロックと、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、
前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体は、
前記ブロックと、前記3つの接続部のうちの第2の接続部及び第3の接続部を覆う大きさを有し、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って前記第1の接続部に対応した切り込みが形成されており、
前記第1の断熱体に形成された切り込みの長さは、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3であることを特徴とする、分岐管継手用断熱体。
【請求項2】
分岐管継手を被覆する断熱体であって、
前記分岐管継手は、異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、
前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体の一端部は、前記3つの接続部のうちの第2の接続部が挿入可能であり、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応して前記ブロック部を前記第1の断熱体が被覆可能であり、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部は、前記第1の断熱体で被覆可能であり、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着し、
前記第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させて、前記第2の断熱体が前記第1の断熱体に接着されることを特徴とする、分岐管継手用断熱体。
【請求項3】
前記断熱体は、第1の接続部を覆う筒状の第3の断熱体を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の分岐管継手用断熱体。
【請求項4】
分岐管継手と当該分岐管継手を被覆する断熱体を有し、
前記分岐管継手は、
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、
前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、
前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体は、
前記ブロック部と、前記3つの接続部のうちの第2の接続部及び第3の接続部を覆う大きさを有し、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って前記第1の接続部に対応した切り込みが形成されており、
前記第1の断熱体に形成された切り込みの長さは、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3であることを特徴とする、
分岐管継手ユニット。
【請求項5】
分岐管継手と当該分岐管継手を被覆する断熱体を有し、
前記分岐管継手は、
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、
前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、
前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体の一端部は、前記3つの接続部のうちの第2の接続部が挿入可能であり、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応して前記ブロック部を前記第1の断熱体が被覆可能であり、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部は、前記第1の断熱体で被覆可能であり、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着し、
前記第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させて、前記第2の断熱体が前記第1の断熱体に接着されることを特徴とする、
分岐管継手ユニット。
【請求項6】
前記断熱体は、第1の接続部を覆う筒状の第3の断熱体を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の分岐管継手ユニット。
【請求項7】
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロックとを有する分岐管継手を断熱する断熱方法であって、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体の一端部に、前記3つの接続部のうちの第2の接続部を挿入する第1手順と、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応するように前記ブロックを前記第1の断熱体で被覆する第2手順と、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部を、前記第1の断熱体で被覆する第3手順と、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着する第4手順と、
前記第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材である第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させる第5手順と、
前記第2の断熱体を前記第1の断熱体に接着する第6手順と、を有することを特徴とする分岐管継手の断熱方法。
【請求項8】
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部とを有する分岐管継手を断熱する断熱方法であって、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体の一端部に、前記3つの接続部のうちの第2の接続部を挿入する第1手順と、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って、当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3の長さ分切り込まれた切り込みに、前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応するように前記ブロック部を前記第1の断熱体で被覆する第2手順と、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部を、前記第1の断熱体で被覆する第3手順と、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着する第4手順と、
前記第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材である第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させる第5手順と、
前記第2の断熱体を前記第1の断熱体に接着する第6手順と、を有することを特徴とする、分岐管継手の断熱方法。
【請求項9】
樹脂系の断熱材からなる筒状の第3の断熱体に、前記第1の接続部を挿入する第7手順を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の分岐管継手の断熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐管継手用断熱体、分岐管継手ユニット及び分岐管継手の断熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷媒配管の分岐管継手には、その外側に断熱材を施しているが、現場での施工の手間をなるべく少なくするため、従来から特許文献1に示す配管断熱システム部材が提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示された技術は、直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管を断熱するための配管断熱システム部材であって、前記直管または屈曲管の外周面を覆うように配置される樹脂系発泡体成形品で構成された管被覆部材と、前記役物の外側表面を覆うように配置される役物被覆部材とを組み合わせてなり、前記樹脂系発泡体成形品の前記管被覆部材との接合面に粘着加工を施したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3191398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらかかる従来技術によれば、予め樹脂系発泡体成形品を準備しておく必要があるが、管の径は多くの種類があり、それに合わせて多くの樹脂系発泡体成形品を用意する必要がある。しかも分岐管継手に適用する場合、3つの管の径が各々異なっている場合には、それに合わせてさらに多くの樹脂系発泡体成形品を用意する必要があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、分岐管継手に対して断熱処理を施すにあたり、前記したような分岐管継手に合わせて樹脂系発泡体成形品を多数用意することなく、しかも現場での作業を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、分岐管継手(例えば、分岐管継手100)を被覆する断熱体(例えば、分岐管継手用断熱体10)であって、前記分岐管継手は、異なった3方向から各々設けられる3つの接続部(例えば、第1~第3の接続部101、102、103)と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック(例えば、ブロック部104)と、を有し、前記断熱体は、樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体(例えば、第1の断熱体20)と、前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口(例えば、貫通口31)が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体(例えば、第2の断熱体30)と、を有し、前記第1の断熱体は、前記ブロックと、前記3つの接続部のうちの第2の接続部及び第3の接続部を覆う大きさを有し、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って前記第1の接続部に対応した切り込み(例えば、切り込み21)が形成されていることを特徴としている。これによれば、分岐管継手の形状に合わせて型により成形した断熱体を用いることもない。
そして前記第1の断熱体に形成された切り込みの長さは、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3がよい。これによれば、第1の断熱体の切り込みが形成された部分と、切り込みが形成されておらず、筒状に形成された部分とのバランスをとれ、第2の接続部もしくは第3の接続部の少なくとも一方は、第1の断熱体の前記筒状に形成された部分により適切に覆って断熱することができる。また、第2の接続部もしくは第3の接続部の残りの一方は、形成された切り込みの内側相互を接着することにより略筒状となり、適切に断熱を行うことができる。
別な観点によれば、本発明は分岐管継手を被覆する断熱体であって、
前記分岐管継手は、異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体の一端部は、前記3つの接続部のうちの第2の接続部が挿入可能であり、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応して前記ブロック部を前記第1の断熱体が被覆可能であり、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部は、前記第1の断熱体で被覆可能であり、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着し、
前記第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させて、前記第2の断熱体が前記第1の断熱体に接着されることを特徴としている。
さらに前記断熱体は、第1の接続部を覆う筒状の第3の断熱体を有する構成としてもよい。
【0008】
さらに別な観点による本発明は、分岐管継手と当該分岐管継手を被覆する断熱体を有し、
前記分岐管継手は、
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、
前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体は、
前記ブロック部と、前記3つの接続部のうちの第2の接続部及び第3の接続部を覆う大きさを有し、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って前記第1の接続部に対応した切り込みが形成されており、
前記第1の断熱体に形成された切り込みの長さは、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3であることを特徴とする、分岐管継手ユニットである。
分岐管継手ユニットとしては、下記のものも提案できる。
すなわち、分岐管継手と当該分岐管継手を被覆する断熱体を有し、
前記分岐管継手は、
異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部と、を有し、
前記断熱体は、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体と、前記3つの接続部のうちの第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材からなる第2の断熱体と、を有し、
前記第1の断熱体の一端部は、前記3つの接続部のうちの第2の接続部が挿入可能であり、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応して前記ブロック部を前記第1の断熱体が被覆可能であり、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部は、前記第1の断熱体で被覆可能であり、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着し、
前記第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させて、前記第2の断熱体が前記第1の断熱体に接着されることを特徴とする、分岐管継手ユニット。
これらの分岐管継手ユニットにおいて、前記断熱体は、第1の接続部を覆う筒状の第3の断熱体を有するようにしてもよい。
【0009】
前記分岐管継手の前記ブロックは、前記第1の接続部が突出して設けられる面部(例えば、平坦面104a)をさらに有し、前記第2の断熱体は、前記面部に対応する被覆面を有していてもよい。これによれば、第2の断熱体をより安定して貼り付けることができ、第1の断熱体の切り込み部分に発生した隙間を好適に塞ぐことができる。なお、ブロックの面部の形状は問わず、平面でもよく、曲面であってもよい。
【0010】
前記分岐管継手において前記第2の接続部と第3の接続部とのなす角度は135度であるように設定してもよい。これによれば、第1の断熱体を折り曲げる角度が緩くなるので、負担が掛かりにくい。また、たわみなどが小さくなるのでより好適に分岐管継手を断熱することができる。
【0011】
さらにまた前記第1の断熱体における切り込みには前記第1の接続部に対応する切欠き(例えば、切欠き21b)が形成されているようにしてもよい。これによれば、第1の断熱体の切り込みが第1の接続部を挟み込んだ場合に、第1の断熱体の切断面の変形を抑えることができる。
【0012】
前記第2の断熱体には、当該第2の断熱体の一端部から前記貫通口に達する切り込み(例えば、切り込み32)が形成されていてもよい。これによれば、第2の断熱体を接着する場合に、第1の接続部の端から通すことがなくなるので作業効率が向上する。
【0013】
別な観点によれば、本発明は異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロックとを有する分岐管継手を断熱する断熱方法であって、樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体の一端部に、前記3つの接続部のうちの第2の接続部を挿入する第1手順と、前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って形成された切り込みに前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応するように前記ブロックを前記第1の断熱体で被覆する第2手順と、前記3つの接続部のうちの第3の接続部を、前記第1の断熱体で被覆する第3手順と、前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着する第4手順と、前記第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材である第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させる第5手順と、前記第2の断熱体を前記第1の断熱体に接着する第6手順と、を有することを特徴としている。
また次のように構成してもよい。すなわち、異なった3方向から各々設けられる3つの接続部と、前記3つの接続部のそれぞれに連通する合流部を内部に形成したブロック部とを有する分岐管継手を断熱する断熱方法であって、
樹脂系の断熱材からなる筒状の第1の断熱体の一端部に、前記3つの接続部のうちの第2の接続部を挿入する第1手順と、
前記第1の断熱体の一端部から当該第1の断熱体の長手方向に沿って、当該第1の断熱体の全長の1/3~2/3の長さ分切り込まれた切り込みに、前記3つの接続部のうちの第1の接続部が対応するように前記ブロック部を前記第1の断熱体で被覆する第2手順と、
前記3つの接続部のうちの第3の接続部を、前記第1の断熱体で被覆する第3手順と、
前記第1の接続部を挟む形になった前記切り込みの前記一端部を接着する第4手順と、
前記第1の接続部が挿通可能な貫通口が形成された樹脂系の断熱材である第2の断熱体の前記貫通口に、前記第1の接続部を挿通させる第5手順と、
前記第2の断熱体を前記第1の断熱体に接着する第6手順と、を有することを特徴とする、分岐管継手の断熱方法。
これらの分岐管継手の断熱方法においては、樹脂系の断熱材からなる筒状の第3の断熱体に、前記第1の接続部を挿入する第7手順を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分岐管継手に対して断熱処理を施すにあたり、前記したような樹脂系発泡体成形品を分岐管の形状に合わせて多数用意する必要はない。また現場での断熱作業も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体で被覆する分岐管継手の斜視図である。
図2図1の分岐管継手の側面図である。
図3】実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体の斜視図であり、(a)は第1の断熱体、(b)は第2の断熱体を示している。
図4】第1の断熱体の取付け開始の様子を示す斜視図である。
図5】第1の断熱体の取付け途中の様子を示す斜視図である。
図6】第2の断熱体の取付けの様子を示す斜視図である。
図7】実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体で被覆した分岐管継手ユニットの斜視図である。
図8図7の分岐管継手ユニットに他の接続管が接続された状態を示す側面断面図である。
図9】他の実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体の斜視図であり、(a)は第1の断熱体、(b)は第2の断熱体を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
まず、実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体によって被覆される分岐管継手について説明する。図1及び図2はそれぞれ、例えば冷媒の配管に用いられる分岐管継手100の斜視図及び側面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように分岐管継手100は、略三角柱の形状を有するブロック部104の平坦面104a、104b、104cに、管形状からなる第1の接続部101、第2の接続部102、第3の接続部103が各々垂直に設けられた構造を有している。そしてブロック部104の内部には、これら3つの接続部101、102、103に連通する流路の略Y字形の合流部Gが形成されている。なお、ブロック部104の前記略三角柱の各部は丸く成形されている。すなわち、三角柱の頂点となる平坦面104a、104b、104cの交点は、それぞれ面取り加工され、丸く成形されている。
【0019】
ブロック部104の平坦面104aと平坦面104bとがなす角度θ1は、90度であり、平坦面104bと平坦面104cとのなす角度θ2は45度である。したがって、第1の接続部101及び第2の接続部102のなす角度は90度であり、そして第2の接続部102と第3の接続部103とのなす角度は135度であり、また第3の接続部103と第1の接続部101とのなす角度は135度となっている。
【0020】
分岐管継手100においては、流路の上流となる第3の接続部103から通流してくる冷媒の流体を、それぞれ流路の下流となる第1の接続部101及び第2の接続部102の延伸方向へと分岐して通流させる。すなわち、第3の接続部103から通流してくる冷媒の流れは、第3の接続部103の延伸方向から進行方向を45度変えて、それぞれ第1の接続部101及び第2の接続部102へ流れていくことになる。かかる際、第3の接続部103の延伸方向から変化させる角度が小さいほど、分岐による損失が小さくなるとともに、後述の第1の断熱体20により分岐管継手100を覆うことが容易になる。
【0021】
従来、分岐管継手100における前記第1の接続部101、第2の接続部102及び第3の接続部103との合流部Gは、例えば略U字形状や略十手形状に形成されていた。かかる場合、例えば合流部Gが略U字形状(第1の接続部101と第2の接続部102とがU字を形成している場合)である場合には、第3の接続部103からの冷媒の流れがU字の曲線部に衝突することで一旦阻害されてしまっていた。また例えば合流部Gが略十字形状(第2の接続部102と第3の接続部103とが直線状に配置され、そこから第1の接続部101が枝分かれしているような形)である場合には、第3の接続部103からの冷媒の流れが、第1の接続部101へと流れにくくなっていた。
【0022】
これに対し、本実施例における分岐管継手100においては、前記合流部GはY字形状に形成されている。これにより、合流部Gにおける圧力損失を低減することができ、冷媒の好適な流れを実現することができる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、第1の接続部101の径は第2の接続部102及び第3の接続部103の径よりも小さいものであるが、かならずしもそのような設定に限られず、3つの接続部の径は同一であってもよいし、各々異なっていてもよい。要は本発明においては、各接続部の径の大小は、本発明の本質とは関係がない。
【0024】
分岐管継手100は任意の材料により成形することができるが、例えばアルミニウムや銅などの材料を用いることができる。
【0025】
続いて、本実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体の構成について説明する。図3(a)は、実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体10の第1の断熱体20の斜視図であり、図3(b)は第2の断熱体30の斜視図である。本実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体10は、図3(a)に示す第1の断熱体20と、図3(b)に示す第2の断熱体30との組み合わせにより構成される。
【0026】
図3(a)に示すように、第1の断熱体20は、全体として筒状であり、その材質は、例えば発泡ゴムやウレタン等の樹脂系の断熱材料からなる。また第2の接続部102とブロック部104、並びに第3の接続部103とを覆う大きさ、を有している。また第2の接続部102と第3の接続部103を覆うように挿入できる内径を有している。
【0027】
そして第1の断熱体20には、一端部20aから長手方向に沿って切り込み21が形成されている。切り込み21の全長は、第1の断熱体20の全長の半分程度、好ましくは1/3~2/3の長さに亘って一端部20aから形成されている。なお、切り込み21の一端部20aとは逆側の端部を、端部21aとする。
【0028】
図3(b)に示すように、第2の断熱体30は、第1の接続部101を内側に挿通する貫通口31が形成された略板形状からなり、発泡ゴムやウレタン等の樹脂系の断熱材料から構成されている。
【0029】
本実施の形態にかかる分岐管継手100及び分岐管継手用断熱体10は以上のように構成されており、続いて、分岐管継手用断熱体10によって分岐管継手100を断熱する断熱方法について説明する。
【0030】
まず、図4に示すように、第1の断熱体20における切り込み21が形成された一端部20a内に、分岐管継手100の第3の接続部103を挿入する(第1手順)。
【0031】
続いて図5に示すように、そのまま第1の断熱体20をさらにブロック部104側へ向けて押し込み、切り込み21の内側に第1の接続部101を入れるようにする。その後、さらに第1の断熱体20を押し込み、第1の断熱体20の一端部20aを第2の接続部102の端部近傍に到達させる(第2手順)。
【0032】
そしてさらに第1の断熱体20を押し込み、図6に示したように、第1の断熱体20の切り込み21の端部21aを第1の接続部101の近傍に到達させて、第2の接続部102及び第3の接続部103を覆うように被覆させる(第3手順)。その後、第1の接続部101を挟む形になった第1の断熱体20の切り込み21の内側相互をたとえば接着剤などによって接着する(第4手順)。
【0033】
その後図6に示したように、第2の断熱体30の貫通口31内に第1の接続部101が挿通するようにしてブロック部104の上に被せ(第5手順)、当該第2の断熱体30の第1の断熱体20の表面と対向する被覆面を、第1の断熱体20の表面と接着剤などによって接着する(第6手順)。これによって、第1の接続部101近傍に発生していた隙間Sも完全に被覆、閉止することができる。
【0034】
以上のようにして、図7に示すように分岐管継手100の全表面が分岐管継手用断熱体10によって適切に被覆された分岐管継手ユニットUを製作することができる。
【0035】
なお、以上のように構成された分岐管継手ユニットUに対しては、例えば図8に示すように、3本の冷媒管51~53が接続される。この冷媒管51~53の外周には、通常の筒状の断熱体51a~53aを設けておけばよい。
【0036】
図8に示すように断熱体51a~53aは、当該断熱体51aと第2の断熱体30との間、または断熱体52a、53aと第1の断熱体20との間に、隙間が形成されないように密着して設けられる。すなわち、第2の断熱体30は、被覆面が第1の断熱体20に対して接着され、表面は断熱体51aと接触する。また、第1の断熱体20の両端部は、断熱体52a及び53aに接触する。これにより、分岐管継手100の断熱効果を更に適切に享受することができる。
【0037】
なお、前記断熱効果を更に適切に享受するため、第2の断熱体30と断熱体51a、及び、第1の断熱体20と断熱体52a、53aとの接触部に例えば断熱テープ等を巻いてもよい。これにより、分岐管継手用断熱体10と断熱体51a~53aとの間で隙間が発生することを適切に防止することができ、分岐管継手100の断熱効果を更に適切に享受することができる。
【0038】
以上の分岐管継手100の断熱方法によれば、従来のように分岐管継手に対して断熱処理を施すにあたり予め用意していた、分岐管継手の形状に合わせた断熱材の成形品を用意する必要がない。また現場での断熱作業も容易である。
より具体的に言えば、切り込み21を有する筒状の第1の断熱体20と、貫通口31を有する第2の断熱体30を用意するだけでよい。また第1の断熱体20や第2の断熱体30の材質に、柔軟性、可撓性、弾力性のある断熱材を適宜選択することで、3つの接続部101、102、103の径の大きさ、ブロック部104の大きさにさほど留意しなくても、そのまま適用することができる。
【0039】
たとえば、流路の上流となる第3の接続部の管径以上の径を有する第1の断熱体20と、挿通する第1の接続部の管径以上の孔径を有する貫通口31をもった第2の断熱体30を用意すれば、分岐管継手100の断熱を適切に行うことができる。すなわち、分岐管継手の形状(接続部の径の組み合わせ)に応じた専用の断熱材用の金型を多数用意する必要がない。
【0040】
また、本実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体10による断熱方法によれば、分岐管継手100に対して第1の断熱体20を被せるようにして挿入して切り込み21の一端部の内側相互を接着し、その後、第2の断熱体30を挿通して接着するだけで、断熱体で覆われた分岐管継手ユニットUを完成させることができる。したがって現場での作業が極めて容易であり、熟練性を要しない。
【0041】
また更に、第1の断熱体20に形成された切り込み21は、その全長は、第1の断熱体20の全長の半分程度、好ましくは1/3~2/3の長さに亘って一端部20aから形成されている。すなわち、第1の断熱体20は、切り込み21が形成されていない筒状を有した筒状領域と、切り込み21が形成された切り込み領域とを備えている。このように、切り込み21が形成される長さを適切に設定することにより、分岐管継手100の前記筒状領域により覆われる部分(上記実施形態においては第3の接続部103)をより適切に断熱することができる。また、分岐管継手100の前記切り込み領域により覆われる部分(上記実施形態においては第2の接続部102)においても、切り込み21の内側相互を接着することにより略筒状となり、適切に断熱を行うことができる。
【0042】
なお、以上の説明においては第1の断熱体20内に第3の接続部103を挿入し、第2の接続部102及び第3の接続部103を覆うように設置されたが、もちろん第2の接続部102側から挿入するようにしてもよい。
【0043】
また、以上の実施の形態によれば、分岐管継手用断熱体10は、第1の断熱体20を設けた後に第2の断熱体30を接着したが、例えば予め第2の断熱体30を第1の接続部101に挿通した後に、第1の断熱体20を被せていくように手順前後させて被覆するようにしてもよい。この場合も前記した実施の形態と同様な作業容易性、断熱性を得ることができる。
【0044】
なお、本実施の形態にかかる分岐管継手用断熱体10によって被覆される分岐管継手100の形状は、以上の構成には限定されない。すなわち、例えば第1の接続部101と第2の接続部102とがなす角度は90度には限定されず、任意の角度のものであってもよい。
【0045】
但し、第1の断熱体20内に最初に挿入される接続部(実施の形態では第3の接続部103)と、最後に挿入されて覆われる接続部(実施の形態では第2の接続部102)とがなす角度は、第1の断熱体20によるブロック部104とこれら2つの接続部を被覆する際の円滑性を考慮すれば、第2の接続部102と第3の接続部103とのなす角度は120度~150度、好ましくは135度である。すなわち、平坦面104bと平坦面104cとのなす前記角度θ2は、30度~60度、好ましくは45度以下である。
【0046】
また第2の断熱体30の被覆面を被せて接着することになるブロック部104の面部としての平坦面104aは、平坦面であることが好ましい。これにより、第2の断熱体30をより安定して貼り付けることができ、第1の断熱体20の切り込み21に発生した前記隙間Sを好適に塞ぐことができる。
【0047】
また更に、上記実施形態において分岐管継手100のブロック部104は、平坦面104a、104b、104cを有していたが、起伏や角の少ない形状、内部を通流する流体の流路に沿った、すなわち滑らかな曲面からなる表面を有していることが好ましい。これにより、分岐管継手用断熱体10の内面と分岐管継手100の表面との密着面積を増加させることができ、分岐管継手100からの熱ロスを低減させることができる。
【0048】
なお、図9(a)に示すように、第1の断熱体20の切り込み21の端部21a側には、第1の接続部101を係止するための切欠き21bが形成されていてもよい。また、かかる切欠き21bの径は、挿通される第1の接続部101の径と略一致する大きさ以下であることが好ましい。このように切欠き21bが形成されることにより、切り込み21に第1の接続部101が挿入されることにより発生する前記隙間Sの大きさを抑えたり切り込み21が不用意に延長してしまうことを防止できる。
【0049】
また、図9(b)に示すように、第2の断熱体30には貫通口31に達する切り込み32が形成されていてもよい。このように切り込み32が形成されることにより、第1の接続部101に対する第2の断熱体30の施工性を更に向上させることができる。すなわち、第2の断熱体30の貫通口31に第1の接続部101を挿通するにあたり、貫通口31の大きさを拡げることができるようになるため、より容易に第2の断熱体30を取り付けすることができる。
【0050】
また更に、第2の断熱体30の形状は、図3図9に示すような略正方形の板形状には限られず、例えば略長方形を有していてもよい。これにより、第1の断熱体20に形成された隙間Sだけでなく、切り込み21に沿って接着を行うようにしてもよい。また、当然に板形状にも限られない。
【0051】
更にこのように第2の断熱体30に切り込み32が形成されることにより、例えば第1の接続部101に対して既に冷媒管51が接続されてしまった後であっても、第2の断熱体30を設置することができる。
【0052】
なお、第1の断熱体20は、第3の接続部103と第1の接続部101の組み合わせか、第3の接続部103と第2の接続部102の組み合わせで分岐管継手100を被覆することになる。これは、第3の接続部103と第1の接続部101、第2の接続部102とのなす角度が緩やか(例えば135度)であるからであり、第1の接続部101と第2の接続部102とを第1の断熱体20で覆うことはしない。
【0053】
この場合において、第3の接続部103の管径と、第1の接続部101及び第2の接続部102の管径とを比較し、より第3の接続部103の管径に近い方(上記実施例では第2の接続部102)を第1の断熱体20で覆うことが好ましい。これによれば、元々1本の筒体として構成された第1の断熱体20により管径の近い二つの接続部(本例においては第3の接続部103と第2の接続部102)を覆うことができるので、第1の断熱体20の内面と第2の接続部102の外面との間の隙間が少なくなり、より好適に分岐管継手100の断熱をすることができる。なお、第1の接続部101のように、第3の接続部103に比べて著しく管径が小さい場合は、ブロック部104の平坦面104aを大きくすることにより、第2の断熱体30による安定的に密着できる領域を広くすることができる。これにより、結果として分岐管継手100を好適に断熱することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、分岐管継手を断熱する際に有用であり、分岐管継手の接続管の径の大きさの組み合わせに依らず、容易に施工することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 分岐管継手用断熱体
20 第1の断熱体
20a 一端部
21 切り込み
21a 端部
21b 切欠き
30 第2の断熱体
31 貫通口
32 切り込み
100 分岐管継手
101 第1の接続部
102 第2の接続部
103 第3の接続部
104 ブロック部
104a 平坦面
104b 平坦面
104c 平坦面
G 合流部
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9