(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】防曇性多層シュリンクフィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230509BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230509BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B5/18
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019113044
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正行
(72)【発明者】
【氏名】黒須 友紀
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-182862(JP,A)
【文献】特開2007-152570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 5/18
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に、深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙を30~200個/400μm
2の密度で有する表面層(S1)を有し、
80℃、100℃又は120℃で4秒間加熱した後、30分保持した後のMD方向の残留収縮応力が、80℃、100℃又は120℃の何れの温度で加熱した後においても120~300g/mm
2であ
り、
前記表面層(S1)がエチレン-αオレフィン共重合体及びシリカ球状微粒子を含み、
前記シリカ球状微粒子の平均粒子径が0.03~1.0μmであり、
前記表面層(S1)中の前記シリカ球状微粒子の質量割合が0.01~0.5質量%であり、
前記空隙が前記シリカ球状微粒子が脱離してできたフィルム表面の空隙である、
ことを特徴とする、防曇性多層シュリンクフィルム。
【請求項2】
さらに、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、及びエチレン-ブテン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる、融点が140℃以上であるプロピレン樹脂(X)を少なくとも1種含む層(X)を含み、
前記防曇性多層シュリンクフィルム100質量%中に含まれる前記プロピレン樹脂(X)の合計質量割合が3質量%以上である、請求項1に記載の防曇性多層シュリンクフィルム。
【請求項3】
前記表面層(S1)が防曇剤を含み、
前記空隙表面の少なくとも一部に前記防曇剤が存在する、請求項1又は2に記載の防曇性多層シュリンクフィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の防曇性多層シュリンクフィルムにより包装されたことを特徴とする、包装体。
【請求項5】
トレー又は台紙にのせた、水分率が1%以上の生鮮食品又は加工食品を包装した、請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体内部が、酸素、窒素、及び二酸化炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種のガスで80%以上置換された、請求項4又は5に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性多層シュリンクフィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物を覆う包装方法として、フィルムを用いた包装が知られている。包装後の食品を長期保存すると、内容物側のフィルム表面に結露が生じ、視認性が低下することがある。
結露が生じにくいフィルムとして、樹脂組成物からなる食品包装フィルムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防曇性に優れるフィルムは、フィルムで包装した包装体を数段積み重ねた場合、下段の包装体は上に積まれた包装体の重みによって、包装体上面のフィルムがゆるみ、上面の中央でフィルムが凹んだ状態となることがあった。そのため、凹んだ部分に水分が集まって水滴が形成され、水滴が内容物に滴下して内容物の変色、劣化等を引き起こすことがあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、フィルム上に荷重をかけた状態でも防曇性に優れるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1]
少なくとも一方の表面に、深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙を30~200個/400μm2の密度で有する表面層(S1)を有し、
80℃、100℃又は120℃で4秒間加熱した後、30分保持した後のMD方向の残留収縮応力が、80℃、100℃又は120℃の何れの温度で加熱した後においても120~300g/mm2であり、
前記表面層(S1)がエチレン-αオレフィン共重合体及びシリカ球状微粒子を含み、
前記シリカ球状微粒子の平均粒子径が0.03~1.0μmであり、
前記表面層(S1)中の前記シリカ球状微粒子の質量割合が0.01~0.5質量%であり、
前記空隙が前記シリカ球状微粒子が脱離してできたフィルム表面の空隙である、
ことを特徴とする、防曇性多層シュリンクフィルム。
[2]
さらに、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、及びエチレン-ブテン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる、融点が140℃以上であるプロピレン樹脂(X)を少なくとも1種含む層(X)を含み、
前記防曇性多層シュリンクフィルム100質量%中に含まれる前記プロピレン樹脂(X)の合計質量割合が3質量%以上である、[1]に記載の防曇性多層シュリンクフィルム。
[3]
前記表面層(S1)が防曇剤を含み、
前記空隙表面の少なくとも一部に前記防曇剤が存在する、[1]又は[2]に記載の防曇性多層シュリンクフィルム。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の防曇性多層シュリンクフィルムにより包装されたことを特徴とする、包装体。
[5]
トレー又は台紙にのせた、水分率が1%以上の生鮮食品又は加工食品を包装した、[4]に記載の包装体。
[6]
前記包装体内部が、酸素、窒素、及び二酸化炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種のガスで80%以上置換された、[4]又は[5]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防曇性フィルムは、上記構成を有するため、フィルム上に荷重をかけた状態でも防曇性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細説明する。本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0009】
[防曇性多層シュリンクフィルム]
本発明の防曇性多層シュリンク多層フィルムは、少なくとも一方の表面に、深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙を30~200個/400μm2の密度で有する表面層(S1)を有し、80℃、100℃又は120℃で4秒間加熱した後、30分保持した後のMD方向の残留収縮応力が、80℃、100℃又は120℃の何れの温度で加熱した後においても120~300g/mm2である。
なお、本明細書において、防曇性多層シュリンクフィルムを、「防曇性フィルム」と称する場合がある。
また、本明細書において、フィルムに荷重をかけるとは、包装体(例えば、200g程度の生鮮食品の包装体)を積み重ねた際の荷重としてよい。
【0010】
トレーに肉等の生鮮食品を入れて、フィルムで包装し、冷蔵ショーケース等で保存すると、フィルム内面が結露する。フィルムの防曇性が悪い場合は、フィルム内面で水滴となって内容物が見えにくくなり、視認性が低下する。また、フィルム内面に形成された水滴は時間の経過に伴い、水滴同士が集合して、より大きな水滴となり、最後にはトレーに入った生鮮食品等の内容物上に滴下し、内容物を変色、劣化させる等の問題が生じやすくなる。
一方で、本発明の防曇性フィルムは、表面に特定の空隙を特定密度で有するため、フィルム内面に水が膜状に分布しやすくなるため、水滴が形成されたり、形成された水滴が集合したりしにくい。また、包装体を運んだり積み重ねたりしてフィルム内面が傾いた場合でも、空隙で水を移動しにくくすることもできるため、水滴が形成されにくい。
防曇剤がフィルム内面に広がって分布すると、結露した水分がフィルム内面に膜を形成するように分布し、水滴が形成されにくくなり、内容物の視認性が向上する。しかしながら、防曇剤が表面に分布するフィルムであっても、包装体を運んだり積み重ねたりして、フィルム内面が傾くと、フィルム内面の水膜が重力方向に移動する。防曇剤は、水に流されやすいため、水の移動に伴って防曇剤も移動して、フィルム内面の防曇剤の分布が不均一になり、フィルム内面に水滴が形成されやすくなり、視認性、防曇性が低下することがある。本発明の防曇性フィルムは、表面に特定形状の空隙を特定密度で有するため、包装体を傾けた場合でも、水や防曇剤の流れを空隙で止めることができ、フィルム内面の防曇剤の分布を維持することができる。そのため、包装体を傾けた場合でも、水滴が形成されにくく、防曇性、視認性に優れる。
また、温度80~120℃に加熱された後の残留収縮応力が小さいと、フィルムが柔らかく、生鮮食品等を包装した包装体を、冷蔵ショーケース内で数段積み上げると、特に下段の包装体は上に積んだ包装体の重みによって、包装体上面のフィルムが弛み、中央が凹んだ状態になる。防曇性が良いフィルムであっても、徐々に水膜が中央の凹みに集まり、水滴を形成し、生鮮食品等の内容物の上に滴下しやすくなる。
本発明の防曇性フィルムによれば、表面層に特定の空隙を形成して防曇性を向上させ、さらに収縮後張りの強くする(残留収縮応力を向上させる)ことによって、フィルム上に荷重をかけた際に凹みにくく、長期にわたり、優れた防曇性を維持することができる。また、内容物に水滴が滴下することもなく、内容物の保存性にも優れる。
【0011】
本実施形態の防曇性フィルムは、少なくとも表面層(S1)を有し、さらに、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、及びエチレン-ブテン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる、融点が140℃以上であるのプロピレン樹脂(X)を少なくとも1種含む層(X)を含むことが好ましい。層(X)は、例えば、後述の接着性樹脂層(G)、バリア層(B)、他方の表面層(SP)、中間層(M)であってよく、表面層(S1)に隣接する接着性樹脂層(G)、及び/又は他方の表面層(SP)であることが好ましい。
本実施形態の防曇性フィルムは、2層以上の多層フィルムであり、3層であってもよいし、4層であってもよいし、5層であってもよく、中でも、5層であることが好ましい。
本実施形態の防曇性フィルムとしては、例えば、表面層(S1)/接着性樹脂層(G)/バリア層(B)/接着性樹脂層(G)/他方の表面層(SP)の5層積層フィルム;表面層(S1)/中間層(M)/接着性樹脂層(G)/バリア層(B)/接着性樹脂層(G)/他方の表面層(SP)、表面層(S1)/接着性樹脂層(G)/バリア層(B)/接着性樹脂層(G)/中間層(M)/他方の表面層(SP)の6層積層フィルム;表面層(S1)/接着性樹脂層(G)/バリア層(B)/接着性樹脂層(G)/バリア層(B)/接着性樹脂層(G)/他方の表面層(SP)等の多層フィルムが挙げられる。
【0012】
(表面層(S1))
上記表面層(S1)は、本実施形態の防曇性フィルムの一方の表面を形成する層である。
【0013】
表面層(S1)はヒートシール性の観点から、エチレン-αオレフィン共重合体を含むことが好ましい。
上記エチレン-αオレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数6以上20以下のαオレフィンとの共重合体が挙げられ、プロピレンに由来する構成単位を含まないことが好ましい。エチレン-αオレフィン共重合体は、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0014】
上記炭素数6以上20以下のαオレフィンとしては、例えば、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。中でも、シール強度や低温ヒートシール性に優れ、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0015】
上記αオレフィン以外の他の単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0016】
上記エチレン-αオレフィン共重合体としては、低温シール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、エチレンと炭素数6~8のαオレフィンとの共重合体(VLDPE)が好ましい。
【0017】
上記エチレン-αオレフィン共重合体の密度は、低温シール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、0.875~0.920g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.880~0.915g/cm3、更に好ましくは0.885~0910g/cm3である。
なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0018】
上記エチレン-αオレフィン共重合体のMFR(メルトフローレート)は、フィルムの延伸安定性、低温シール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、0.5~10.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度190℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0019】
表面層(S1)含まれる上記エチレン-αオレフィン共重合体のTcは、フィルムの延伸安定性、フィルムの滑り性、低温シール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、70℃以上110℃未満であることが好ましく、より好ましくは75℃以上であり、低温シール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、100℃以下がより好ましい。
なお、結晶化ピーク温度Tcは、示差操作熱量計の冷却温度プロファイルに現れるピーク値を採用する。
エチレン-αオレフィン共重合体を2種以上使用する場合は、滑り性、低温ヒートシール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、Tcが85~110℃のエチレン-αオレフィン共重合体を60~95質量%、Tcが60℃以上85℃未満のエチレン-αオレフィン共重合体を5~40質量%(但し、少なくとも1種のエチレン-αオレフィン共重合体のTcは70℃以上110℃未満とする)用いることが好ましい。
【0020】
上記表面層(S1)は、上記エチレン-αオレフィン共重合体を含むことが好ましく、低温ヒートシール性、防曇性に一層優れ、また、フィルム上に荷重をかけた際にフィルムが一層凹みにくくなる観点から、樹脂成分が上記エチレン-αオレフィン共重合体のみからなることがより好ましい。
上記エチレン-αオレフィン共重合体の含有量としては、表面層(S1)100質量%に対して、80~100質量%であることが好ましく、より好ましくは90~100質量%である。
【0021】
上記表面層(S1)は、上記エチレン-αオレフィン共重合体以外に、防曇剤、粘着付与樹脂、滑剤、他の樹脂、添加剤等を含んでいてもよい。中でも、防曇性の観点から、防曇剤を含むことが好ましい。耐ブロッキング性に優れ、深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙を30~200個/400μm2の密度で表面層(S1)に形成しやすくなる観点から、滑剤を含むことが好ましい。
【0022】
上記防曇剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸コハク酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン-グリセリン系縮合脂肪酸エステル、ソルビタン-ジグリセリン系縮合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の多価アルコール部分脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等のエチレンオキサイド付加物、ソルビトールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加した後にエステル化して得られるソルビトール誘導体、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド等のアミン、アミド類及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール等が挙げられ、中でも3日以上の長期防曇性を得られやすい点で、ジグリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が好ましい。
上記防曇剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
表面層(S1)中の防曇剤の含有割合は、2時間後程度の初期防曇性から3日以上の長期防曇性を得られる点で、該層100質量%に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0~4.0質量%である。
【0024】
上記防曇剤は、室温大気圧において液体、又は半固体(例えば、クリーム状、ペースト状、ゲル状)であってよく、液体であることがより好ましい。フィルムに滑り性を与える点で融点が30℃以上のグリセリンモノオレート等を適宜加えても良い。
【0025】
表面層(S1)には粘着付与樹脂を添加してもよい。粘着付与樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン;これらロジン、変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル等のロジン系樹脂;α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン等を主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5/C9系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等の(水添)石油樹脂等の合成樹脂等が挙げられ、中でも取り扱い性やフィルムの滑り性等の点で、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0026】
表面層(S1)中の粘着付与樹脂の含有割合は、フィルムのべたつきを抑制する点で、該層100質量%に対して、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0027】
上記粘着付与樹脂は、室温大気圧において固体であることが好ましい。
【0028】
上記滑剤としては、シリカ、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイロ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、酸化亜鉛、ゼオライト、カオリナイト、ハイドロタルサイト、等の無機滑剤が挙げられ、中でも耐ブロッキング性、製造機器へのフィルムの付着防止性等に優れ、且つ深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙が一層形成しやすくなる観点から、シリカ、タルクが好ましい。
【0029】
表面層(S1)中の滑剤の含有割合は、耐ブロッキング性、製造機器へのフィルムの付着防止性等に優れ、且つ深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙が一層形成しやすくなる観点から、該層100質量%に対して、0.01~0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.02~0.3質量%である。
【0030】
上記滑剤は、室温大気圧において固体であることが好ましい。
上記滑剤の平均粒子径は、深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの空隙が一層形成しやすくなる観点から、0.03~1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.8μmである。
【0031】
表面層(S1)中の防曇剤、粘着付与樹脂、滑剤の合計含有量としては、表面層(S1)100質量%に対して、1~15質量%が好ましく、より好ましくは2~10質量%である。
【0032】
上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、改質剤、帯電防止剤、ミネラルオイル、可塑剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
表面層(S1)は、空隙を有し、本実施形態の防曇性フィルムの表面に空隙を有し、他の層と接する側の表面に空隙を有しないことが好ましい。
本明細書において、空隙とは、防曇性フィルム表面の空隙をいい、フィルム内に閉じ込められた空隙(気泡)は含まないものとする。
また、空隙は、表面層(S1)から粒子(例えば、滑剤)が脱離してできたフィルム表面の空隙としてよい。例えば、上記空隙は、フィルムを延伸する際に、表面層(S1)の表面付近に存在する粒子(例えば、滑剤)の一部が表面層(S1)から脱離して形成された空隙としてよい。上記空隙は、例えば、粒子が完全に脱離し、空隙内部に粒子が残っていない空隙としてよく、粒子の一部が空隙表面に存在する空隙を除いてよい。
【0034】
上記空隙の形状は特に限定されないが、少なくとも一部がフィルム表面で開口した形状であることが好ましく、最深部を通る厚さ方向断面形状としては、半円状、V字状、半多角形状、これらを組み合わせた形状、等が挙げられる。上記空隙は、表面層(S1)を貫通しない形状であることが好ましい。
本実施形態の防曇性フィルムは、表面層(S1)に気泡がないことが好ましく、フィルム内部に気泡がないことがより好ましい。
【0035】
表面層(S1)の空隙の平均深さは、透明性と防曇性の両立の観点から、3~150nmであることが好ましく、より好ましくは10~80nm、さらに好ましくは20~70nmである。
各空隙の深さは、後述の実施例に記載の方法で測定することができ、平均深さは任意の30個の空隙の深さの平均値としてよい。なお、観察視野に30個の空隙が確認できない場合、確認できた空隙の深さの平均値としてよい。
空隙の平均深さは、例えば、滑剤の粒径、延伸倍率、等により調整することができる。
【0036】
表面層(S1)の空隙の平均直径は、防曇性に一層優れる観点から、0.1~3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2~2.0μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。
各空隙の直径は、後述の実施例に記載の方法で測定することができ、平均直径は任意の30個の空隙の直径の平均値としてよい。なお、観察視野に30個の空隙が確認できない場合、確認できた空隙の直径の平均値としてよい。
空隙の平均直径は、例えば、滑剤の粒径、延伸倍率、等により調整することができる。
【0037】
深さ10~100nm、直径0.1~3.0μmの上記空隙の密度は、防曇性の観点から、30~200個/400μm2であり、防曇性に一層優れる観点から、40~190個/400μm2であることがより好ましく、50~180個/400μm2であることがさらに好ましい。
さらに、深さ20~80nm、直径0.3~2.0μmの空隙の密度が、30~200個/400μm2であることが好ましく、40~190個/400μm2であることがより好ましく、50~180個/400μm2であることがさらに好ましい。
また、深さ10nm未満の空隙の密度、及び直径0.1μm未満の空隙の密度は、フィルムの透明性の点から、200個/400μm2以下であることが好ましく、より好ましくは150個/400μm2以下である。
上記密度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
空隙の密度は、例えば、表面層の組成、延伸倍率、延伸温度等により調整することができる。
【0038】
上記空隙は、持続的に防曇性を発現する観点から、空隙表面の少なくとも一部に防曇剤が存在することが好ましい。中でも、空隙表面の全面積100%に対して、防曇剤が存在する面積が30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。
表面層(S1)が防曇剤を含むと、防曇剤は表面層(S1)の表面に向かってブリードアウトする。表面層(S1)表面及び空隙表面における防曇剤の量や分布は、防曇剤の含有量、製造後のフィルムの保管条件等により調整することができる。
空隙表面に防曇剤が存在することにより、凝着力が大きくなることが推定される。原子間力顕微鏡による観察において、振動している探針のタイミングが加振に対して遅れることを利用し、凝着力をマッピングして、防曇剤の存在を推定する方法などがあげられる。また、空隙表面に防曇剤が存在する面積は、原子間力顕微鏡のオフライン測定により求めることができる。上記面積は、例えば、任意の30個の空隙で求めた面積の平均値としてよい。
【0039】
(層(X))
本実施形態の防曇性フィルムは、さらに、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、及びエチレン-ブテン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれ、融点が140℃以上であるプロピレン樹脂(X)を少なくとも1種含む層(X)を有することが好ましい。上記層(X)中に含まれるプロピレン樹脂(X)は、1種であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記層(X)は、1層であってもよいし複数層あってもよい。層(X)が複数含まれる場合、各層(X)は同じであってもよいし異なっていてもよい。
上記層(X)は、表面層(S1)と接していてもよいし、接していなくてもよい。
【0040】
層(X)を設けることにより、フィルム上に荷重をかけた状態でもフィルムが一層凹みにくくなり、フィルム上に荷重をかけた状態の防曇性に一層優れる。
【0041】
上記プロピレン樹脂(X)は、変性樹脂であってもよく、変性プロピレン単独重合体、変性エチレン-プロピレン共重合体、変性エチレン-ブテン-プロピレン共重合体であってもよい。
上記変性ポリプロピレン単独重合体、上記変性エチレン-αオレフィン共重合体、上記変性エチレン-ブテン-プロピレン共重合体における変性としては、例えば、無水マレイン酸変性、アクリル酸変性等が挙げられる。中でも、表面層以外の層(X)では、層(X)と隣り合う層との接着性が向上し、荷重をかけた際に一層凹みにくくなる観点から無水マレイン酸変性が好ましい。
【0042】
上記プロピレン樹脂(X)の融点としては、耐熱性が向上し、また、フィルムに荷重をかけた際に一層凹みにくくなる観点から、140℃以上であることが好ましく、より好ましくは145~170℃、さらに好ましくは150~165℃である。
【0043】
上記層(X)は、融点が異なる2種類以上のプロピレン樹脂(X)を含むことが好ましく、複数(例えば、2層)の層(X)を含み、何れの層(X)も融点が異なる2種類以上(好ましくは2種類)のプロピレン樹脂(X)を含むことがより好ましい。複数の層(X)は隣接していないことが好ましい。
中でも、層(X)と隣り合う層との接着性が向上し、また、荷重をかけた際に一層凹みにくくなり、更にフィルムがカールすることを抑制する点で、表面層(S1)に近い層(X)に含まれる複数種のプロピレン樹脂(X)の融点の差が、表面層(S1)から遠い層(X)(例えば、他方の表面層(SP))に含まれる複数種のプロピレン樹脂(X)の融点の差より大きいことが好ましい。ここで、融点の差とは、層(X)中に含まれるプロピレン樹脂(X)の最高の融点と最低の融点との差をいう。
【0044】
上記プロピレン樹脂(X)の密度としては、表面層以外の層(X)では、層(X)と隣り合う層との接着性が向上し、荷重をかけた際に一層凹みにくくなる観点から、0.880~0.905g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.885~0.902g/cm3である。
なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0045】
上記プロピレン樹脂(X)のMFRは、表面層以外の層(X)では、層(X)と隣り合う層との接着性が向上し、荷重をかけた際に一層凹みにくくなる観点から、0.5~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。
なお、プロピレン樹脂(X)のMFRは、JIS K7210に準じて、温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0046】
上記層(X)は、プロピレン樹脂(X)以外に、他の樹脂、防曇剤、粘着付与樹脂、滑剤、添加剤等を含んでいてもよい。
上記他の樹脂としては、プロピレンに由来する構成単位を含み、融点が140℃未満である樹脂(例えば、融点が140℃未満のプロピレン-αオレフィンエラストマー等)等が挙げられる。
上記防曇剤、上記粘着付与樹脂、上記滑剤、上記添加剤としては、上述のものが挙げられる。
層(X)中の上記他の樹脂の質量割合としては、層(X)100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましい。また、層(X)中の、上記防曇剤、上記粘着付与樹脂、上記滑剤、及び上記添加剤の合計含有量としては、20質量%以下であることが好ましい。
【0047】
(バリア層(B))
上記バリア層(B)はエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことが好ましい。エチレンに由来する構成単位の含有量としては、延伸性とガスバリア性の観点から、エチレン-ビニルアルコール共重合体100mol%に対して、20~60mol%であることが好ましく、より好ましくは25~55mol%である。
【0048】
上記エチレン-ビニルアルコール共重合体の融点としては、ガスバリア性及びヒートシール時の耐熱性に優れる観点から、140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150~200℃である。
なお、上記融点は、示差操作熱量計の再融解温度プロファイルのピーク値が採用できる。
【0049】
上記バリア層(B)は、上記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことが好ましく、ガスバリア性に一層優れる観点から、上記エチレン-ビニルアルコール共重合体のみからなることが好ましい。
上記バリア層(B)中の上記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量としては、バリア層(B)100質量%に対して、80~100質量%であることが好ましく、より好ましくは90~100質量%である。
【0050】
上記バリア層(B)は、上記エチレン-ビニルアルコール共重合体以外に、他の樹脂、添加剤等を含んでいてもよい。バリア層(B)に含まれる上記エチレン-ビニルアルコール共重合体は、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0051】
(接着性樹脂層(G))
本実施形態の防曇性フィルムは、上記バリア層(B)の両表面に隣接して、少なくとも2層の接着性樹脂層(G)が設けられることが好ましい。バリア層(B)の両表面に隣接して設けられる2つの接着性樹脂層(G)は、それぞれ異なる組成であってもよいし同じ組成であってもよい。一方の接着性樹脂層(G)は、上記層(X)であることが好ましい。
【0052】
上記接着性樹脂層(G)としては、例えば、変性エチレン-αオレフィン共重合体、変性ポリプロピレン重合体、変性ポリブテン重合体等の接着性樹脂を含む層であることが好ましく、バリア層(B)と表面層(S1、SP)との接着性に優れる観点から、変性エチレン-αオレフィン共重合体、変性ポリプロピレン重合体がより好ましい。中でも、一方の接着性樹脂層(例えば、層(X)である接着性樹脂層)中に含まれる接着性樹脂が変性ポリプロピレン重合体であり、他方の接着性樹脂層(例えば、層(X)に該当しない接着性樹脂層)中に含まれる接着性樹脂が変性エチレン-αオレフィン共重合体であることが好ましい。
上記接着性樹脂は、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0053】
上記接着性樹脂の上記変性エチレン-αオレフィン共重合体、上記変性ポリプロピレン-αオレフィン共重合体における変性としては、例えば、無水マレイン酸変性、芳香族ビニル単量体とエポキシ基含有ビニル単量体をグラフト重合する変性、アクリル酸変性等が挙げられる。中でも、バリア層と他の層との接着性に優れる観点から、無水マレイン酸変性が好ましい。
【0054】
上記接着性樹脂層(G)は、上記接着性樹脂以外にも、他の樹脂、添加剤等が含まれていてもよい。
【0055】
上記接着性樹脂の密度としては、接着性の観点から、0.870~0.925g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.880~0.920g/cm3、更に好ましくは0.890~0.915g/cm3である。
なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0056】
上記接着性樹脂のMFRとしては、接着性の観点から、0.5~10.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~8.0g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度190℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0057】
上記接着性樹脂層中の上記接着性樹脂の含有量としては、接着性に優れる観点から、上記接着性樹脂層100質量%に対して、20~100質量%であることが好ましく、より好ましくは40~100質量%、さらに好ましくは60~100質量%である。
【0058】
上記接着性樹脂層(G)は、ポリプロピレン、ポリオレフィンエラストマー等の他の樹脂、添加剤等を含んでいてもよい。
【0059】
(他方の表面層(SP))
上記他方の表面層(SP)は、本実施形態の防曇性フィルムの他方の表面を形成する層である。上記他方の表面層(SP)は、上記接着性樹脂層(G)(例えば、層(X)に該当しない接着性樹脂層)に隣接していてもよいし、他の層を介して上記接着性樹脂層(G)に積層されていてもよい。上記他方の表面層(SP)は、上記層(X)であることが好ましい。
【0060】
(防曇性フィルムの製造方法)
本実施形態の防曇性フィルムは、各層を構成する樹脂を順に混合押し出しすること等により得ることができる。また、本実施形態の防曇性フィルムは、延伸フィルムであってもよい。
具体的な製造方法の例としては、押出機を用いて各層を構成する樹脂組成物を溶融押出して、1層ずつ環状ダイス内で順次合流させるか、環状ダイス内で1度に合流させて、多層のチューブ状未延伸原反を得る方法が挙げられる。このとき、1層につき1台の押出機を使用してもよいし、1台の押出機から環状ダイスに樹脂組成物が流入するまでに2つ以上に分割して、複数の層としてもよい。これを急冷固化したものを延伸機内に誘導し、目的に応じて、延伸開始点の加熱温度を調整し、速度差を設けたニップロール間でエアー注入を行い、流れ方向、幅方向に延伸を行ってもよい。
流れ方向の延伸倍率としては、表面層(S1)の空隙の深さ、直径、密度を制御する観点から、1.5~5.0倍であることが好ましく、より好ましくは2.0~4.5倍である。
幅方向の延伸倍率としては、表面層(S1)の空隙の深さ、直径、密度を制御する観点から、1.5~5.0倍であることが好ましく、より好ましくは2.0~4.5倍である。
延伸温度としては、表面層(S1)の空隙の深さ、直径、密度を制御する観点から、50~100℃であることが好ましく、より好ましくは60~90℃である。
【0061】
(防曇性フィルムの特性)
本実施形態の防曇性フィルムの厚さは、実用上の耐久性や軽量性の観点から、5~50μmであることが好ましく、より好ましくは8~30μmである。
【0062】
本実施形態の防曇性フィルムの上記表面層(S1)の厚さ比率としては、ヒートシール強度の観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、10~50%であることが好ましく、より好ましくは15~40%である。
【0063】
本実施形態の防曇性フィルムの上記接着性樹脂層(G)の厚さ比率としては、ヒートシール時の耐熱性、包装時の破れにくさ、他の層との接着性の観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、5~35%であることが好ましく、より好ましくは10~30%である。
接着性樹脂層(G)が複数層ある場合、各接着性樹脂層は同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。
【0064】
本実施形態の防曇性フィルムの上記バリア層(B)の厚さ比率としては、内容物の保存性の観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、1~20%であることが好ましく、より好ましくは3~10%である。
【0065】
本実施形態の防曇性フィルムの上記他方の表面層(SP)の厚さ比率としては、ヒートシール時の耐熱性、包装時の破れにくさの観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、5~50%であることが好ましく、より好ましくは10~40%である。
【0066】
本実施形態の防曇性フィルムは、表面層(S1)側の接着性樹脂層(G)、及び他方の表面層(SP)が層(X)であることが好ましい。
各層(X)の厚さ比率としては、荷重をかけた際にフィルムが凹みにくくなる観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、5~30%であることが好ましく、より好ましくは10~20%である。
層(X)の合計厚さは、荷重をかけた際にフィルムが凹みにくくなる観点から、防曇性フィルムの全厚さ100%に対して、20~60%であることが好ましく、より好ましくは40~55%である。
【0067】
本実施形態の防曇性フィルムは、包装工程中にフィルムが破れにくくなり、また、内容物を包んでヒートシールをした後でも、フィルム上に荷重をかけた際に凹みにくくなる観点から80℃、100℃、又は120℃で4秒間保持した後、室温で30分保持した後の残留収縮応力が、80℃、100℃又は120℃の何れの温度で加熱した後においても120~300g/mm2である。
上記80℃の残留収縮応力としては、130~280g/mm2であることが好ましく、より好ましくは150~250g/mm2である。
上記100℃の残留収縮応力としては、130~280g/mm2であることが好ましく、より好ましくは150~250g/mm2である。
上記120℃の残留収縮応力としては、130~280g/mm2であることが好ましく、より好ましくは150~250g/mm2である。
上記残留収縮応力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記残留収縮応力は、例えば、融点の高い(例えば、融点140℃以上)ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂(X))を含む層の厚さ、フィルム中に含まれる融点140℃以上のポリプロピレン系樹脂(X)の含有割合、延伸倍率、分子量、延伸温度等により調整することができる。
【0068】
本実施形態の防曇性フィルム100質量%中に含まれる上記プロピレン樹脂(X)の合計質量割合は、内容物を包んでヒートシールをした後でも、フィルム上に荷重をかけた際に凹みにくくなる観点から、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
【0069】
[包装体]
本実施形態の包装体は、上述の本実施形態の防曇性フィルムにより包装した包装体が挙げられる。包装の方法としては、筒状に包装できれば特に限定されないが、上記表面層(S1)を貼り合わせるピロー包装が好ましく、置換ガスを吹き込みながらピロー包装することがより好ましい。
上記包装体は、上記表面層(S1)を貼り合わせた、センターシール部、両端シール部の3方向を熱シールすることが好ましい。
【0070】
包装時のヒートシール温度としては、115~150℃であることが好ましく、シール温度下限と上限の範囲が10℃以上あればよく、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。また、ヒートシール時間としては、0.05~0.2秒であることが好ましい。
【0071】
上記包装体の内部は、酸素、窒素、及び二酸化炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種のガスで80%(体積%)以上置換されていることが好ましい。
上記包装体の内部には、酸素吸収剤、及び/又は炭酸ガス発生剤が封入されていてもよい。
【0072】
上記包装体は、シュリンクトンネル等で短時間の加熱処理をして、フィルムを加熱収縮させ、包装をタイトにすることができる。加熱処理の条件としては、内容物の表面温度の変化が3℃以内となる条件であれば特に限定されず、例えば、シュリンクトンネルの長さが1200~1500mmの場合、設定温度120~130℃で1~5秒間の加熱等が挙げられる。
【0073】
本実施形態の包装体は、内容物としては、生鮮食品、加工食品が挙げられ、水分率が1%以上である生鮮食品又は加工食品であってもよい。上記内容物はトレー又は台紙にのせて包装してよい。なお水分率とは、内容物全質量に対する水分の質量割合をいう。
上記内容物としては、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉等の精肉、鮮魚、魚の切り身、餃子、焼売等の中華総菜、蒲鉾、おでん等の練り製品、から揚げ、天ぷら等の揚げ物等の包装体に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0075】
以下に実施例、比較例において用いた測定方法を記す。
【0076】
[1]空隙の深さ、直径、及び密度
食品と接触する側の表面層(S1)をアサイラムリサーチ社製「Cypher」を使用して、以下の手順で測定を行い、表面形状を観察した。
フィルムを任意の場所で5mm角程度に10箇所切り出し、それらの表面をサンプル固定用ディスクに固定した。それらのサンプルを、原子間力顕微鏡(アサイラムリサーチ製、Cypher)を用いて、ACモードイメージング(カンチレバー=オリンパス社製AC200TS、観察視野=20×20μm2、分解能512×512pixels)により表面形態観察を行い、観察像を得た。それぞれのサンプルに対し、3視野の測定を行った。
次に、得られた観察画像の形態を確認し、深さ10~100nm、直径が0.1~3.0μmの空隙が存在するか確認し、個数をカウントした。空隙の深さは、前記測定における高さ像により、空隙の直径は、平面像により測定した。
なお、測定はフィルム表面に水分が付着した場合、影響を受けやすいため、厚みが85μmの中性紙に挟んで、相対湿度30%以下のデシケーター中で24時間保管し、コンディショニングした。
なお、実施例、比較例において、深さ100nm超の空隙、直径3.0μm超の空隙は観察されなかった。
【0077】
[2]残留収縮応力
フィルムをMD方向に80mm、TD方向に幅25mmの寸法に切り出して、MD方向の残留収縮応力測定用サンプルを得た。
20℃、無風状態の室内で日理工業株式会社製DN式ストレステスターを用いて、所定の温度(80℃、100℃、又は120℃)に設定した加熱ブロックユニット(ヒーター間距離=6mm)内に残留収縮応力測定用サンプルを挿入し、4秒間静置した後に加熱ブロックユニットから残留収縮応力測定用サンプルを取り出し、そのまま室温で30分間放置した後の残留収縮力を求めた。また、残留収縮力の測定直前のフィルムの厚みとフィルム幅(25mm)を測定し、以下の式から、各温度の残留収縮応力を求めた。
残留収縮応力(g/mm2)=30分後の残留収縮力(g)/(フィルム幅(mm)×フィルム厚み(mm))
【0078】
[3]段積評価
大森機械工業(株)製ガスパック包装機「DW2003G」を用いて包装試験を行った。400mmの幅でスリットしたフィルムで中央化学(株)製トレー「CN20-15F」に200ccの水を入れたものを60パック/分の速度で、各30パック包装し、段積評価用包装体を作製した。表面層(S1)が内容物側となるように、センターシール温度130℃、トップシール温度120℃の条件でヒートシールを行い、包装体を得た。得られた包装体を120℃の温度に設定したシュリンクトンネルDS-1300で4秒間加熱し、フィルムを収縮させた。
得られた収縮後の包装体5個を積み重ねで、温度10℃で24時間放置した。最下段の包装体のトレーの淵から凹み深さを調査し、その凹み深さから以下の基準により段積評価を行った。
(判定基準)
○(良好):トレー淵に対するフィルムの凹み深さが10mm未満であった
×(不良):トレー淵に対するフィルムの凹み深さが10mm以上であった
【0079】
[4]防曇性
大森機械工業(株)製ガスパック包装機「DW2003G」を用いて、400mmの幅でスリットしたフィルムで中央化学(株)製トレー「CN20-15F」に水を200cc入れ、各10パック包装し、130℃に加熱したシュリンクトンネルで4秒間、熱処理を行い、包装体を得た。表面層(S1)が内容物側となるように包装した。得られた包装体を5℃の冷蔵庫内に水平に静置し、この包装体の上部に[3]で得た包装体を4個のせて、荷重をかけ、24時間後に荷重を取り除いて、最上段の包装体と最下段の包装体との、フィルム内側の水膜、水滴の状態を目視により調べ、以下の判定基準により3段階で防曇性を評価した。
(判定基準)
◎(非常に優れる):フィルム内側表面に均一水膜を生成し、水滴がない。
○(優れる):水膜に斑があるが、水滴がない。
△(良好):フィルム全面に1~3個以下の水滴がある。
×(劣る):フィルム中央に大きな水滴がある
【0080】
実施例及び比較例で用いた樹脂は以下のとおりである。
(エチレン-ビニルアルコール共重合体)
・EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン含有量=44mol%、融点=164℃
(エチレン-αオレフィン共重合体)
・VLDPE1:エチレン-αオレフィン共重合体、密度=0.905g/cm3、MFR=2.0g/10分、コモノマー=1-ヘキセン、結晶化ピーク温度=94℃
・VLDPE2:エチレン-αオレフィン共重合体、密度=0.902g/cm3、MFR=3.0g/10分、コモノマー=1-オクテン、結晶化ピーク温度=79℃
(ポリプロピレン)
・PP1:ポリプロピレン、融点=161℃、MFR=3.0g/cm3、融解熱量=79J/g
・PP2:エチレン-プロピレン共重合体、融点=150℃、融解熱量=76J/g
・PP3:エチレン-プロピレン共重合体、融点=141℃、MFR=7.5g/10分、融解熱量=29J/g
・PP4:エチレン-プロピレン共重合体、融点=134℃、MFR=3.0g/10分、結晶化熱量=17J/g
(オレフィンエラストマー)
・POエラストマー1:プロピレン-ブテン共重合体、密度=0.880g/cm3、融点=76℃、MFR=3.0g/10分
(接着性樹脂)
・PE接1:変性エチレン-αオレフィン共重合体、密度0.907g/cm3、融点=120℃、MFR=2.3g/10分
・PP接1:変性ポリプロピレン重合体、密度=0.900g/cm3、融点=140℃、MFR=3.0g/10分、融解熱量=41.2J/g
・PP接2:変性ポリプロピレン重合体、密度=0.900g/cm3、融点=160℃、MFR=3.0g/10分、結晶化熱量=116J/g
・PP接3:変性ポリプロピレン重合体、密度=0.890g/cm3、融点=135℃、MFR=5.7g/10分、結晶化熱量=26J/g
・AF1:ジグリセリンオレート/ジグリセリンラウレート=1/1の混合物
・AF2:ジグリセリンオレート/ポリオキシエチレンアルキルエーテル=3/1の混合物
・TR1:脂環族飽和炭化水素樹脂、軟化点=90℃
・P1:シリカ球状微粒子、平均粒径0.3μm
・P2:シリカ球状微粒子、平均粒径0.5μm
【0081】
[実施例、比較例]
表1に示すように、一方の表面層(S1)としてVLDPE1/VLDPE2/AF1/P1を、接着性樹脂層(G)としてPP1/PP接1/POエラストマー1を、バリア層(B)としてEVOHを、接着性樹脂層(G)としてPE接1を、他方の表面層(SP)として、PP1/PP2/POエラストマー1/AF1を表1記載の組成で各層1台、計5台の押出機を用いて環状ダイより押出し、周囲から20℃の冷水シャワーをかけて、固化した後、ニップロールで半分に折り畳み、幅200mm、厚さ140μmの未延伸原反を得た。これを延伸機内に誘導してEVOHのガラス転移点以上である80℃まで再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成し、流れ方向に3.0倍、幅方向に3.0倍の倍率でそれぞれ延伸を行い、平均厚みが約15μmのシュリンクフィルムを得た。
表1の組成に変更し、実施例1と同様にして、実施例2~6、比較例1~4のフィルムを作製した。なお、比較例3は、空隙がなかった。
【0082】
【0083】